JP6092675B2 - 気泡含有樹脂成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
有機系添加剤を用いる方法としては、例えば、アゾジカルボンアミド、塩素フッ素化炭化水素(HCFC)、フッ素化炭化水素(HFC)、ハロゲン化炭化水素やその他プロパン、ブタン等の炭化水素を押出機内に添加することで発泡させる方法が用いられてきた(特許文献2)。
また、水を発泡剤として利用する方法が検討されており、特許文献4では、押出機内の溶融樹脂中に水を圧入し、水の蒸発により樹脂を発泡させる方法が開示されている。また、特許文献5では、水をケイ酸マグネシウムや親水性樹脂などの吸水媒体に担持させ、樹脂内に吸水媒体を分散させた後に水を発泡させる方法が開示されている。
100℃以上の温度に加熱して、前記樹脂を溶融させるとともに、水分の蒸発による気泡を発生させながら成形を行うことを特徴とする、気泡含有樹脂成形体の製造方法である。
本発明において、「吸水性」とは、標準状態(20℃、65%RH)における平衡吸湿量が0.5%(重量)以上であることを意味している。また、本発明において、「非吸水性」とは、上記の吸水性の定義において、平衡吸湿率が0.5%(重量)未満であることを意味している。
(a)吸水性のA成分(島)と、非吸水性で、かつ、A成分よりも低融点のB成分(海)とからなる海島型複合繊維を準備する工程、
(b)前記海島型複合繊維に水分を含有させる工程、
(c)水分を含有させた海島型複合繊維を熱可塑性樹脂と混合し、100℃以上に加熱して、前記樹脂を溶融させるとともに、水分の蒸発による気泡を発生させながら、成形を行う工程とから構成される。
本発明において用いられる海島型複合繊維における、吸水性のA成分(島)としては、吸水性であり、熱可塑性であるポリマーであれば特に限定されないが、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が好ましく用いられる。なかでも、エチレン含有量が25〜70モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(融点:120〜190℃)が好ましい。
本発明において用いられる海島型複合繊維における、非吸水性であり、かつ、A成分よりも低融点であるB成分(海)としては、非吸水性であり、A成分よりも低融点であれば特に限定されないが、ポリエチレン(低密度、直鎖低密度、中密度または高密度)、低融点ポリプロピレン、エチレン−プロピレンブロック共重合体などのポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
低融点ポリプロピレンとしては、上記のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の融点よりも低い、例えば、融解ピーク温度が115〜153℃の範囲であるプロピレン重合体(例えば、プロピレンとプロピレン以外のαオレフィンとの共重合体である、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体)が挙げられる。
本発明において用いられる海島型複合繊維を構成するA成分とB成分との比率(重量比)は、(A)/(B)=10/90〜90/10の範囲内にあるのが好ましく、(A)/(B)=30/70〜90/10の範囲内にあるのがより好ましく、(A)/(B)=50/50〜80/20の範囲内にあるのがさらに好ましい。成分(A)の比率が10%未満であると、複合比率のバランスが良くないため、紡糸ノズルから放出された糸条が屈曲しやすく、紡糸性が不十分となる上、得られた複合繊維中の吸水性を与える部位の割合が少ないため水分含有量が少なくなり、このため気泡の量も少なくなり好ましくない。また、一方、成分(A)の比率が90%を超えると同様に紡糸性が困難になるだけでなく、吸水した段階で複合繊維が成形のために用いられる熱可塑性樹脂と均一な混合が行いにくくなるので好ましくない。
本発明に用いられる複合繊維には、本発明に効果を損なわない範囲内において、必要に応じて、酸化チタン、シリカ、酸化バリウム等の無機物、カーボンブラック、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの添加剤を含有させてよい。
上記の(A)成分および(B)成分からなる海島型複合繊維の製造は、すでに公知の紡糸・延伸装置を用いて、公知の方法により行うことができる。(A)成分のポリマーおよび(B)成分のポリマーのペレットを別々の溶融押出機に供給して溶融し、複合口金内で合流させ、上記の(A成分)/(B成分)の比率で、ノズルから吐出させ、通常、500〜4000m/分で引き取ることにより、糸条を得ることができる。島数は、口金を選択することにより変更可能であり、島数1〜1000個、好ましくは、4〜200個の複合繊維であってよい。引取り後の繊維は、必要に応じてさらに延伸(乾熱延伸、湿熱延伸)を行ってもよい。
複合繊維の断面形状はどのようなものであってもよく、通常は、円形断面であるが、必要に応じて異形断面(扁平、楕円、三角形、T字型、多葉形、中空状など)とすることができる。
本発明において用いられる複合繊維の単繊維の直径は、必要に応じて適宜設定可能であるが、通常、1〜300μm、好ましくは、5〜200μm、さらに好ましくは、10〜100μmの範囲にある。また、島成分の1本当たりの直径は、0.1〜100μm、好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは、2.0〜10μmの範囲にある。単繊維の直径が細すぎると熱可塑性樹脂中への分散が不十分となり、直径が大きすぎると、微細気泡の発生という点から好ましくない。
上記の複合繊維は、熱可塑性樹脂に混合配合されて用いられることから、短繊維で使用されることが好ましく、繊維長0.5〜30mm程度に切断されて使用されるのが好ましい。繊維長が長すぎると熱可塑性樹脂中への分散が難しくなり、繊維長が短すぎると切断することが技術的に困難になり、また、コストもかかることになる。
本発明においては、上記の海島複合繊維に水分を含有させて、熱可塑性樹脂と混合して溶融成形して、成形時に気泡を発生させることが特徴である。含有させる水分量(JIS L1015に準拠)としては、2〜30重量%(対繊維重量)の範囲内であることが好ましく、2%未満であると、気泡の発生が少なく、溶融成形時に繊維塊が発生する場合があり、また、30%を超えると、気泡の発生量が大きくなりすぎて、微細な気泡が均一に分散した成形物を得にくくなるおそれがある。
本発明において用いられる気泡含有樹脂成形体を形成するために用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(低密度、高密度、直鎖状低密度)、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン1ランダム共重合体、プロピレン−4メチルペンテン1ランダム共重合体、ポリブテン、エチレン−ビニルアルコール系共重合体などのポリビニルアルコール系樹脂、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、ポリウレタンエラストマ−、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリルゴムなどが挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、100℃以上、好ましくは150〜200℃の成形温度で成形される。水の蒸発による気泡生成のため、成形温度は100℃以上であることを必要であるが、成形温度が150℃以下では気泡の形成に時間を要し、また、一方、200℃を超えると複合繊維の島成分であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体がメルトしてゲル化が起こり、気泡が均一に分散しにくくなる傾向がある。
上記したように、0.5〜30mmに切断され、水分調整された複合繊維は、上記の熱可塑性樹脂を粒子状にして、または熱可塑性樹脂を軟化させながら混合され、常法により押出成形、射出成形などの成形法による成形により所望の成形品に成形することができる。
水分調整された複合繊維は、所定温度、好ましくは150〜200℃に加熱されながら熱可塑性樹脂と混合される過程において、複合繊維中の吸水性A成分の溶融に伴う、複合繊維内部に含まれる結晶水、自由水に由来する水分が蒸発して気泡となり、気泡含有の熱可塑性樹脂成形体を得ることができる。複合繊維は0.5〜3.0mmと短繊維に切断されて熱可塑性樹脂中に配合されることにより、発生した気泡が均一に分散した熱可塑性樹脂成形体を得ることができる。
本発明においては、複合繊維が、吸水性のA成分(島)を、非吸水性で、かつ、A成分よりも低融点のB成分(海)で覆った海島型複合繊維となっているため、A成分が島状に分散しつつ、気泡を発生させる。このため、A成分のサイズに応じた微細な気泡を均一に形成することができる。すなわち、第1段階では、未溶融の繊維が樹脂中に均一に分散され、第2段階で少なくとも100℃以上に加熱されることにより、まず、B成分の溶融が起こり、これによりA成分が分散しつつ気泡を発生させ、熱可塑性樹脂成形体内に微細な気泡が均一に分散した成形体を得ることができる。
樹脂に対する複合繊維の添加量は、0.1〜20重量%、好ましくは、0.2〜10重量%、より好ましくは、0.5〜5重量%の範囲内にあるのが好ましく、添加量が少なすぎると、気泡含有による効果(軽量性、断熱性、吸音性など)が十分でなく、添加量が多すぎると、もろくなる、成形性が不良になるなどの成形品としての性能が不十分となる傾向にある。
得られた気泡含有熱可塑性樹脂成形体は、気泡含有により断熱性、軽量性、緩衝性、吸音性などの特性が向上するので、これらの特性が要求される用途に好適に適用される。
(1)海島型複合繊維の作製
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、エチレン含有量44モル%、けん化度99%、融点:165℃)(EVOH)とポリエチレン(融点:125℃)(PE)とをそれぞれの溶融押出機に供給し、EVOHを230℃、PEを260℃で溶融して、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が島成分、ポリエチレンが海成分となるように海島型複合紡糸ノズル(紡糸ノズルの単孔断面の形状:円形)から吐出して紡糸し(紡糸温度270℃)、表1に示すような、海島比率、島数、島繊維径、繊維径(複合繊維)を有する海島型複合繊維を作製した。
(2)含水複合繊維の調整
得られた複合繊維(フィラメントヤーン)を束ねて、カッターで表1に示す繊維長(mm)に切断し、切断した繊維の集合体をかき混ぜながらスプレーにより水分を供給して、複合繊維の水分含有率を表1に示すように調整した。
(3)熱可塑性樹脂成形体の作製
水分を含有した前記複合繊維を表1に示す添加量(水分を含まない繊維の樹脂に対する
重量比)で熱可塑性樹脂(IPA変性ポリエステル、融点100℃)と混合し、成形温度190℃で成形体(幅:10cm、長さ:10cm、厚み:5mm)を成形した。
(4)成形体の評価
得られた成形品の気泡状況、繊維の分散状況を観察により判定し、判定結果および気泡率(気泡容積率)、気泡径の測定結果を表1に示した。
島成分としてポリプロピレン(融点:170℃)、海成分として実施例1と同じポリエチレンを用いて、表1に示す条件で実施例1と同様の海島型複合繊維を得た。この複合繊維に実施例1と同様の水分供給処理を行った後(繊維の水分率:0%)、熱可塑性樹脂に混合して成形体を得た。
島成分としてナイロン6(融点:230℃)、海成分として実施例1と同じポリエチレンを用いて、表1に示す条件で実施例1と同様の海島型複合繊維を得て、この複合繊維に実施例1と同様の水分供給処理を行った後(繊維の水分率:8%)、熱可塑性樹脂に混合して成形体を得た。
島成分として、実施例1と同じエチレン−ビニルアルコール系共重合体、海成分として、ポリプロピレン(融点:170℃)を用いて、表1に示す条件で、実施例1と同様に複合繊維を作製し、実施例1と同様に水分供給を行った後(繊維の水分率:8%)、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂成形体を得た。
得られた成形品の気泡状況、繊維の分散状況を観察により判定し、判定結果および気泡率(気泡容積率)、気泡径の測定結果を表1に示した。
実施例2では、複合繊維の繊維径が小さい(10μm)ために成形体の気泡径は小さく(7.6μm)、一方、実施例3では、複合繊維の繊維径が大きい(300μm)ために成形体の気泡径が大きく(232μm)、繊維径により気泡のサイズが変えられることがわかる。
また、実施例8では、島繊維径が大きい(28μm)複合繊維が用いられているが、この場合の気泡径は大きく(112μm)、実施例9は、島数が大きく(1000)、島繊維径が小さい(0.9μm)複合繊維が用いられているが、この場合の気泡径は小さい(3.6μm)。実施例10では、複合繊維の水分率を低く(2%)しており、実施例11では逆に水分率を高く(30%)しているが、水分率が低いと気泡率が低く(2.7%)、水分率が高くなると気泡率が高く(29.0%)なっている。実施例12では、複合繊維の添加量が少なく(0.2%)、このため得られた成形体の気泡率が低く(2.1%)なっているが、実施例13では、添加量が多く(20%)、このため成形体の気泡率の高い(68.6%)の成形体が得られている。
Claims (5)
- 吸水性のA成分(島)と、非吸水性で、かつ、A成分よりも低融点のB成分(海)とからなる海島型複合繊維に水分を含有させて、熱可塑性樹脂と混合し、
100℃以上の温度に加熱して、前記樹脂を溶融させるとともに、水分の蒸発による気泡を発生させながら成形を行うことを特徴とする、気泡含有樹脂成形体の製造方法。 - A成分が、エチレン−ビニルアルコール系ポリマーである、請求項1記載の製造方法。
- B成分が、ポリオレフィン系ポリマーである、請求項1または2に記載の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法により成形された気泡含有樹脂成形体。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法に使用される海島型複合繊維であって、短繊維である海島型複合繊維。
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