JP6395214B2 - ポリスチレン系樹脂発泡体 - Google Patents
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Description
HBCDは、汎用性があり、比較的少量の添加で難燃効果が得られる優れた難燃剤である。
しかし、HBCDへの化審法やREACHによる規制の動きから、HBCD難燃剤を使用しない難燃剤代替発泡体製造技術の開発が行なわれてきた。
たとえば、特許文献1には、難燃剤としてテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)等のハロゲン化芳香族アルキルアリールエーテル類のハロゲン化物を使用することが開示されている。
しかし、テトラブロモビスフェノールA−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)は発泡体に高い難燃性を付与することができるものの発泡体を回収してリペレット化する工程においてポリスチレン系樹脂を分解させやすく、この回収原料を製品の一部として使用する場合、発泡させる為に必要な圧力を保持することができない、或いは押出条件が安定しない等の問題が生じることがあった。
しかし、臭素化イソシアヌレートやテトラブロモビスフェノールA−(2,3−ジブロモプロピルエーテル)は、HBCDまたはテトラブロモビスフェノールA−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)に比べ、ポリスチレン系樹脂発泡体への難燃性付与効果が劣るため、添加量を増やした上で、更にジフェニルアルカン等の難燃助剤を添加することが必要になった。
さらに、この臭素化ブタジエン−スチレン共重合体を多量に添加すると押出発泡時に黒点が発生したり、リサイクル時に再生原料ペレットに黒点が発生したり、黄変色が生じたりするので、外観に優れるとともに再生原料として再利用可能な発泡体とすることが難しかった。もっともこの臭素化ブタジエン−スチレン共重合体の多量添加による黒点の発生や黄変色現象等の不具合はその添加量を少量とすることにより軽減することはできる。しかし、この場合には、前記したJIS A9521:2014の燃焼性の規格をクリアするような高度な難燃性を有し、かつ酸素指数が高い発泡体を得ることが困難となってしまう。
(a)臭素化ブタジエン−スチレン共重合体は、多量に添加すれば、JIS A9521の燃焼性の規格をクリアするポリスチレン系樹脂発泡体を得ることは可能ではある。しかし、多量に添加すると、押出発泡時に黒点、黄変色現象が発生しやすくなり、外観に優れる発泡体を得ることが難しくなる。
(b)臭素化ブタジエン−スチレン共重合体が多量添加された発泡体又は発泡体製造時の端材などを溶融してリペレット化する際に黒点や黄変色が生じやすくなり、良好な再生原料を得ることが難しい。リペレット時の温度を低くすれば、黒点や黄変色の発生を防止することはできるが、リペレットの生産性が低下してしまう。
(c)臭素化ブタジエン−スチレン共重合体の添加量を少量にすれば、黒点の発生や黄変色は抑制できるものの高度の難燃性を有する発泡体を得ることができなくなる。
[1]難燃剤を含有するポリスチレン系樹脂発泡体において、該難燃剤が、(A)臭素化ブタジエン−スチレン共重合体、(B)テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、及び(C)トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートのみからなる複合難燃剤であり、該複合難燃剤中の(A)臭素化ブタジエン−スチレン共重合体の配合量がポリスチレン系樹脂100重量部に対して2重量部以下であり、該複合難燃剤中の(A)臭素化ブタジエン−スチレン共重合体の配合割合が20〜90重量%であり(ただし、(A)と(B)と(C)との合計が100重量%である。)、(B)テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)と(C)トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートとの配合重量比が10:90〜90:10であることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡体。
[2]前記発泡体がさらにポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼンを含み、ポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼンの配合量が前記複合難燃剤の配合量100重量部に対して1〜20重量部であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
[3](A)臭素化ブタジエン−スチレン共重合体の配合量が発泡体を構成するポリスチレン系樹脂100重量部に対して0.2重量部以上1重量部未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
ポリスチレン系樹脂発泡体を構成するポリスチレン系樹脂としては、例えばポリスチレンや、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレンを主成分とするスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−メチルスチレン共重合体、スチレン−ジメチルスチレン共重合体、スチレン−エチルスチレン共重合体、スチレン−ジエチルスチレン共重合体等やこれら2種以上の混合物が挙げられる。該スチレン系共重合体におけるスチレン単位成分含有量は50モル%以上が好ましく、特に好ましくは80モル%以上である。なお、ポリスチレン系樹脂には、ジビニルベンゼンや多分岐状マクロモノマーなどの多官能性モノマー単位成分が含まれていてもよい。これらのポリスチレン系樹脂の中でも、発泡性の観点からポリスチレンが好ましい。
該難燃剤は、(A)臭素化ブタジエン−スチレン共重合体(以下、難燃剤(A)ともいう。)と、(B)テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(以下、難燃剤(B)ともいう。)と、(C)トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート(以下、難燃剤(C)ともいう。)とを含有する複合難燃剤である。
なお、スチレン系単量体としては、スチレン、臭素化スチレン、塩素化スチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチルスチレンなどが例示でき、これらの中でも、スチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン又はこれらの混合物が好ましく、より好ましくはスチレンである。
(式中、X、Y及びZは、正の整数である。)
なお、難燃剤(B)が配合されない場合には難燃剤(A)の発泡体への配合量を多くしなければならないことにより黒点が発生する虞がある。また、難燃剤(B)が、単一の難燃剤とし発泡体の製造に用いられた場合、得られる発泡体は、黒点や黄変がないものの、難燃性に劣るものとなる。
なお、難燃剤(C)が配合されない場合には十分な難燃性が得られないか、或いは、難燃性の不足を補うために難燃剤(A)の配合量を多くしなければならないことにより黒点が発生する虞がある。また、難燃剤(C)が、単一の難燃剤として発泡体の製造に用いられた場合、得られる発泡体は、黒点や黄変がないものの、充分な難燃性が発現しないものとなる。
難燃剤(A)の配合割合がこの範囲内である場合には、他の難燃剤との相互作用により、安定的に黒点や黄変色のない発泡体が得られ、かつ、得られた発泡体に高度の難燃性を付与することが可能となる。難燃剤(A)の配合割合が少なすぎると、所望される難燃性が得られないおそれがある。一方、該配合割合が多すぎると、黒点の発生、樹脂の黄変色が激しくなるおそれがある。
かかる観点から、難燃剤(A)の配合割合は25〜70重量%が好ましく、より好ましくは30〜50重量%である。
熱安定剤としては、例えばエポキシ樹脂系安定剤、ホスファイト系安定剤、フェノール系安定剤及びヒンダードアミン系安定剤から選ばれる一種以上のものが挙げられる。
これらの熱安定剤の総配合量は、該複合難燃剤100重量部に対して、1〜35重量部とすることが好ましく、より好ましくは2〜25重量部である。
これらは、単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、押出安定性、難燃性の点から、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
また、前記以外の他の熱安定剤としては、金属石鹸、有機スズ化合物、鉛化合物、ハイドロタルサイト、多価アルコール、β−ケトン、イオウ系化合物などが挙げられる。
本発明の発泡体の見掛け密度は、優れた断熱性と機械的強度の観点から、20〜60kg/m3が好ましく、より好ましくは22〜50kg/m3である。また、該発泡体の厚みは、10〜150mmであることが好ましく、より好ましくは20〜100mmである。該発泡体の幅は、600mm〜1500mmが好ましい。また、厚み方向の平均気泡径は、より高い断熱性を有する発泡体とする上で1.0mm以下、更に0.75mm以下であることが好ましい。該気泡径が小さすぎる場合は、厚みが厚く、低見掛け密度の板状の押出発泡体を得ること自体が難しくなる。かかる観点から、厚み方向の平均気泡径は0.05mm以上、更に0.06mm以上、特に0.07mm以上であることが好ましい。
本発明の発泡体は、種々の方法によって製造することができるが、前記ポリスチレン系樹脂と、前記複合難燃剤などを加熱溶融し、得られた溶融樹脂組成物に発泡剤を圧入し、混練して得られる発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡する方法が好ましく採用される。
溶融混練時の温度は、(A)臭素化ポリブタジエン系重合体からの臭素の遊離を効果的に抑制するためには溶融混合時の樹脂温度は低いほど好ましく、概ね190℃以下、好ましくは185℃以下である。
また、難燃剤溶融混合物は、計量性、取扱の容易性等からカットするなどしてペレット状にしておくことが好ましい。
炭素数3〜5の飽和炭化水素としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタン、ネオペンタンなどが挙げられる。これらの飽和炭化水素は、単独又は2種以上混合して使用することができる。これらの飽和炭化水素の中では、発泡性の点からプロパン、n−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましい。また、発泡体の断熱性能の点からn−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましく、特に好ましくはi−ブタンである。
飽和炭化水素以外の有機物理発泡剤としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチルなどの蟻酸エステル類、塩化メチル、塩化エチルなどの塩化アルキル類などが挙げられる。また、オゾン破壊係数が0、かつ地球温暖化係数の小さいトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンなどのフッ化不飽和炭化水素、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンなどの塩化フッ化不飽和炭化水素を用いることもできる。
前記他の発泡剤の中では、発泡性、発泡体成形性などの点からは、塩化メチル、塩化エチル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、メタノール、エタノール、水、二酸化炭素が好ましい。
これらの他の発泡剤は、単独又は2種以上混合して使用することができる。
ポリスチレン系樹脂としてポリスチレン(重量平均分子量27.3万)を用いた。
なお、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めた。その測定条件を以下に示す。
<GPC分析の測定条件>
使用機器:株式会社ジーエルサイエンス製GPC仕様高速液体クロマトグラフ
カラム:昭和電工株式会社製カラム、商品名ShodexGPC KF−806、同KF−805、同KF−803をこの順に直列に連結して使用
カラム温度:40℃
溶媒:THF
流速:1.0mL/分
濃度:0.15w/v%
注入量:0.2ml
検出器:株式会社ジーエルサイエンス製紫外可視検出器、商品名UV702型(測定波
長254nm)
分子量分布の計算に用いた較正曲線の分子量範囲:1.2×107〜5.2×103
(1)難燃剤(A):臭素化スチレン−ブタジエン共重合体、ケムチュラ製、商品名「Emerald3000」(臭素含有率65重量%)
(2)難燃剤(B):テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、第一工業製薬製、商品名「ピロガードSR720」(臭素含有率67重量%)
(3)難燃剤(C):トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、鈴裕化学製、商品名「FCP660」(臭素含有率66重量%)
(1)ノボラック型エポキシ系安定剤:DIC製、商品名「EPICLON N680」(2)リン系安定剤:ADEKA製、商品名「PEP36」(ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト)
(3)ヒンダードフェノール系安定剤:BASF製、商品名「Irganox1010」(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
前記第1押出機に、表1に示す配合量となるように前記した、ポリスチレン系樹脂、難燃剤(A)、難燃剤(B)、難燃剤(C)、難燃助剤(D)、熱安定剤及び気泡調整剤(タルク)を供給し、第1押出機内で220℃まで加熱して、これらを混練し、第1押出機の先端付近に設けられた物理発泡剤注入口から、表1に示す配合組成、量の物理発泡剤を圧入した。
なお、難燃剤(A)、難燃剤(B)、難燃剤(C)、難燃助剤(D)、熱安定剤は、これらを二軸押出機(内径20mm、L/D=48)にポリスチレン系樹脂100重量部に対し、複合難燃剤が2重量部となるように供給し、溶融混練部の最高温度190℃、押出時の樹脂温度175℃となるように温度を調整して、吐出10kg/hrでストランド状に押出し、ペレット状にカットすることにより作製した難燃剤溶融混練物として、前記押出機に供給した。
難燃剤(A)、(B)、(C)を表1に示す配合量で用いた以外、実施例1と同様にして板状の発泡体を製造した。得られたポリスチレン系樹脂発泡体の、見掛け密度、厚み、厚み方向の平均気泡径、独立気泡率、難燃性、黒点の発生状況、および再生樹脂の黒点の発生状況を表1に示す。
難燃剤(A)、(B)、(C)を表1に示す配合量で用い、難燃助剤(D)を用いない以外、実施例1と同様にして板状の発泡体を製造した。得られたポリスチレン系樹脂発泡体の、見掛け密度、厚み、厚み方向の平均気泡径、独立気泡率、難燃性、黒点の発生状況、および再生樹脂の黒点の発生状況を表1に示す。
実施例1で得られた押出発泡板を粉砕した後、内径90mm、L/D=50の単軸押出機に供給して最高温度230℃で混練し、その溶融樹脂を吐出量250kg/hrでストランド状に押出し、ペレット状にカットすることによって再生ポリスチレン系樹脂(重量平均分子量26.8万)を得た。この再生ポリスチレン系樹脂をポリスチレン系樹脂100重量部に対して50重量部添加した以外は、実施例1と同様にして板状の発泡体を製造した。なお、難燃剤、難燃助剤、熱安定剤及び気泡調整剤の配合量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対する値である。得られたポリスチレン系樹脂発泡体の、見掛け密度、厚み、厚み方向の平均気泡径、独立気泡率、難燃性、黒点の発生状況、および再生樹脂の黒点の発生状況を表1に示す。
実施例7では、回収時の押出機の最高温度を230℃に設定して得られた再生ポリスチレン系樹脂を使用して発泡体を製造したところ、黒点の発生が抑制されていた。さらに、その回収原料にも黒点の発生が殆どなく、高効率でのリペレット化が可能であった。
難燃剤として難燃剤(A)のみを表2に示す配合量で用い、難燃剤(B)、(C)、難燃助剤(D)を用いないこと以外、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。比較例1で得られた発泡体は、難燃性には優れるが、再生原料に黒点が発生しやすいものであった。
比較例1と実施例全体との対比から、難燃剤(A)のみを用いると実施例と同等の難燃性は得られるが、再生原料への黒点の発生を防止できないことが判る。
難燃剤として難燃剤(B)のみを表1に示す配合量で用い、これに難燃助剤(D)を表2に示す配合量で加えたこと以外、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。得られた発泡体は、再生原料に黒点が発生しないものの、酸素指数が低く、また、ろうそく試験における炎が消えるまでの時間が長く、実施例に比べ難燃性に劣るものであった。
比較例2と実施例全体との対比から、難燃剤(A)を使用しないと再生原料への黒点の発生は防止できるが、難燃助剤(D)を併用しても難燃性に劣ることが判る。
難燃剤として難燃剤(C)のみを表1に示す配合量で用い、これに難燃助剤(D)を表2に示す配合量で加えたこと以外、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。
比較例3と実施例との対比から、難燃剤(A)を使用しないと再生原料への黒点の発生は防止できるが、難燃剤(C)のみを用い、これに難燃助剤(D)を併用しても難燃性に劣ることが判る。
難燃剤として難燃剤(A)と難燃剤(B)の組合せを表2に示す配合量で用い、難燃剤(C)を用いないと共に、難燃助剤(D)も用いないこと以外、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。比較例4で得られた発泡体は、難燃性に劣る上に、再生原料に黒点が発生しやすいものであった。
比較例4から、難燃剤(C)を用いないと難燃剤(A)の配合量を増やしても実施例と同レベルの難燃性を得られないこと、難燃剤(A)の配合量を増やしたことにより再生原料への黒点の発生を防止できないことが判る。
難燃剤として難燃剤(A)と難燃剤(C)の組合せを表2に示す配合量で用い、難燃剤(B)を用いないと共に、難燃助剤(D)も用いないこと以外、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡体を製造した。比較例5で得られた発泡体は、比較例4の発泡体の難燃性よりは優れているが、実施例で得られた発泡体の難燃性には劣り、再生原料に黒点が発生しやすいものであった。
比較例5から、難燃剤(C)の難燃性は難燃剤(B)の難燃性より優れているが、難燃剤(C)を用いないと難燃剤(A)の配合量を増やしても、実施例程度の難燃性を得られないこと、難燃剤(A)の配合量を増やしたことにより再生原料への黒点の発生を防止できないことが判る。
発泡体の見掛け密度は、次のようにして求めた。得られた発泡体の幅方向の中央部、両端部付近から50×50×20mmの直方体の試料を各々切り出して重量を測定し、該重量を体積で割算することにより夫々の試料の見掛け密度を求め、それらの算術平均値を当該見掛け密度とした。
発泡体の幅方向中央部付近において、等間隔に5点の厚みを測定し、それらの測定値の算術平均値を発泡体の厚み(mm)とした。
発泡体の独立気泡率は、次のようにして求めた。まず、発泡体を幅方向に5等分し、それらの中央部付近から25mm×25mm×20mmのサイズに成形表皮を持たないカットサンプル(計5個)を切り出した。次に、ASTM−D2856−70の手順Cに従って、各カットサンプルの真の体積Vxを測定し、下記(1)式により独立気泡率S(%)を計算し、それら計算値の算術平均値を発泡体の独立気泡率とした。なお、測定装置として東芝ベックマン株式会社の空気比較式比重計930型を使用した。
ただし、Vx:上記空気比較式比重計による測定により求められるカットサンプルの真の体積(cm3)(発泡体のカットサンプルを構成する樹脂組成物の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
Va:測定に使用されたカットサンプルの外形寸法から算出されたカットサンプルの見掛け上の体積(cm3)
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:発泡体を構成する樹脂組成物の密度(g/cm3)
前記方法により、発泡体から各部位の厚み方向の平均気泡径を測定し、それらの測定値の算術平均値を発泡体の平均気泡径(mm)とした。
製造直後の発泡体を気温23℃、相対湿度50%の部屋に移し、その部屋で4週間放置した後、発泡体の中央部から約1gの測定用試験片を切り出し、ガスクロマトグラフ分析を行って、発泡体中に残存する発泡剤(イソブタン)の量を求めた。
<ガスクロマトグラフ分析の測定条件>
カラム:信和加工株式会社製
担体:chromosorb W、60〜80メッシュ、AW−DMCS処理品
液相:Silicone DC550(液相量20%)
カラム寸法:カラム長さ4.1m、カラム内径3.2mm
カラム素材:ガラス
カラム温度:40℃
注入口温度:200℃
キャリヤーガス:窒素
キャリヤーガス速度:50ml/min.
検出器:FID
検出器温度:200℃
定量:内部標準法
製造直後の発泡体を気温23℃、相対湿度50%の部屋に移し、その部屋で4週間放置した後、発泡体から試験片を切り出し、JIS K7201−2:2007に準拠して測定し、難燃性を評価した。点火器の熱源の種類は、液化石油ガス(LPG)を使用し、点火手順はA法を使用し、試験片を試験機内の所定の位置に自立させて行った。試験場所の温度は23℃、湿度50%で行った。
製造直後の発泡体を気温23℃、相対湿度50%の部屋に移し、その部屋で4週間放置した後、発泡体から試験片を無作為に5個切り出して(N=5)、JIS A9521:2014のB.2.1「測定方法A」に基づいて燃焼性を測定し、5個の試験片の平均燃焼時間により、発泡体の難燃性を評価した。
発泡体を押出方向に対して垂直に切断した断面5箇所において目視にて観察した。
○:0〜1個
△:2〜5個
×:6個以上
該発泡体を粉砕した後、内径90mm、L/D=50の単軸押出機に供給して表1に記された最高温度220℃、または230℃で混練し、その溶融樹脂を吐出量50kg/hrでストランド状に押出し、ペレット状にカットすることによりポリスチレン系樹脂組成物のペレットを作製した。油圧プレス機と180℃に加熱された1mm厚さで100×100mmの形状の金型を用い、樹脂プレートの作製を行い、プレートに含まれる黒点の数を目視にて計測した。
○:0〜1個
△:2〜5個
×:6個以上
再生回数1回目で得られたペレット(最高温度220℃のもの)を更に内径90mm、L/D=50の単軸押出機に供給して表1に記された最高温度220℃、または230℃で混練し、その溶融樹脂を吐出量50kg/hrでストランド状に押出し、ペレット状にカットすることによりポリスチレン系樹脂組成物のペレットを作製した。油圧プレス機と180℃に加熱された1mm厚さで100×100mmの形状の金型を用い、樹脂プレートの作製を行い、プレートに含まれる黒点の数を目視にて計測した。
○:0〜1個
△:2〜5個
×:6個以上
再生樹脂の黒点:再生回数1回目で作製した樹脂プレートの色を目視にて確認した。
○:透明で有り、色調が変わらないもの
△:わずかに黄色味がかっているもの
×:黄色味が著しく強いもの
再生樹脂の黒点:再生回数2回目で作製した樹脂プレートの色を目視にて確認した。
○:透明で有り、色調が変わらないもの
△:わずかに黄色味がかっているもの
×:黄色味が著しく強いもの
Claims (3)
- 難燃剤を含有するポリスチレン系樹脂発泡体において、該難燃剤が、(A)臭素化ブタジエン−スチレン共重合体、(B)テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、及び(C)トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートのみからなる複合難燃剤であり、該複合難燃剤中の(A)臭素化ブタジエン−スチレン共重合体の配合量がポリスチレン系樹脂100重量部に対して2重量部以下であり、該複合難燃剤中の(A)臭素化ブタジエン−スチレン共重合体の配合割合が20〜90重量%であり(ただし、(A)と(B)と(C)との合計が100重量%である。)、(B)テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)と(C)トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートとの配合重量比が10:90〜90:10であることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡体。
- 前記発泡体がさらにポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼンを含み、ポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼンの配合量が前記複合難燃剤の配合量100重量部に対して1〜20重量部であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
- (A)臭素化ブタジエン−スチレン共重合体の配合量が発泡体を構成するポリスチレン系樹脂100重量部に対して0.2重量部以上1重量部未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
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