JPWO2012035624A1 - 車両用ベルト式無段変速機 - Google Patents
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Abstract
軸長および軸径を短縮することができ、且つ、制御性の低下を抑制することができる車両用ベルト式無段変速機の構造を提供する。プライマリプーリ58にプライマリ可動シーブ74のプライマリ固定シーブ72と反対側への移動を阻止するスペーサ81が設けられるため、第1プーリ溝64の最大溝幅が規定される。ここで、プライマリプーリ58に第1プーリ溝64の最小溝幅を規定するよく知られた段付部134、136が入力軸56およびプライマリ可動シーブ74に設けられることで、セカンダリプーリ62の第2プーリ溝65の最小溝幅および最大溝幅は、プライマリプーリ58の最小溝幅および最大溝幅に応じて一義的に決定される。したがって、セカンダリプーリ62において、第2プーリ溝65の最小溝幅を規定する段付部を設ける必要がなくなるため、出力軸40の軸径が段付部を設ける分だけ大きくなることが防止される。
Description
本発明は、車両用ベルト式無段変速機に係り、特に、可動シーブが固定シーブに対して相対回転不能、且つ、軸心方向の相対移動可能にスプライン嵌合された構造に関するものである。
車両用無段変速機の1つとして、従来よりベルト式無段変速機がよく知られている。このベルト式無段変速機は、互いに平行に配置された回転軸にそれぞれプライマリプーリおよびセカンダリプーリが備えられており、互いのプーリに伝動ベルトが巻き掛けられることで動力が伝達される。プライマリプーリおよびセカンダリプーリは、それぞれ固定シーブおよび可動シーブで主に構成されており、可動シーブが回転軸に対して軸心方向に相対移動されることで、固定シーブと可動シーブとの間に形成されている溝幅が変更される。そして、その溝幅が変更されることで、伝動ベルトの巻き掛け位置、言い換えれば、伝動ベルトの巻き掛け半径が変更されるため、ベルト式無段変速機の変速比が無段階的に変更される。例えば、特許文献1乃至特許文献3のベルト式無段変速機がその一例である。特許文献1乃至特許文献3のベルト式無段変速機の基本的な構成を、図16に示すベルト式無段変速機600の断面図を用いて説明する。
図16に示すように、ベルト式無段変速機600は、ケース602内において互いに平行に配設されている入力軸604および出力軸606、入力軸604側に設けられているプライマリプーリ608、出力軸606側に設けられているセカンダリプーリ610、プライマリプーリ608とセカンダリプーリ610との間に巻き掛けられている伝動ベルト612を主に備えて構成されている。
入力軸604は、トルクコンバータ614および前後進切替機構616と同軸心C1上に並んで配置されており、図示しないエンジンの回転がトルクコンバータ614および前後進切替機構616を介して伝達される。
プライマリプーリ608は、入力軸604の外周部に一体的に形成されている円盤状の固定シーブ618と、入力軸604に相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能にスプライン嵌合されている可動シーブ620とから構成されており、固定シーブ618と可動シーブ620との間にV溝622が形成されている。このV溝622は、油圧アクチュエータ623によって可動シーブ620が軸心方向へ相対移動させられることで、その溝幅が変更される。なお、図16において、プライマリプーリ608の軸心C1に対して上側がV溝622の溝幅が最も広い状態、言い換えれば、ベルト式無段変速機600が最大変速比γmaxの状態を示しており、プライマリプーリ608の軸心C1に対して下側がV溝622が最も狭い状態、言い換えれば、ベルト式無段変速機600が最小変速比γminの状態を示している。
セカンダリプーリ610は、出力軸606の外周部に一体的に形成されている円盤状の固定シーブ624と、出力軸606に相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能にスプライン嵌合されている可動シーブ626とから構成されており、固定シーブ624と可動シーブ626との間にV溝628が形成されている。このV溝628は、油圧アクチュエータ630によって可動シーブ626が軸心方向へ相対移動させられることで、その溝幅が変更される。なお、図16において、セカンダリプーリ610の軸心C2に対して上側がV溝628が最も広い状態、言い換えれば、ベルト式無段変速機600が最小変速比γminの状態を示しており、セカンダリプーリ610の軸心C2に対して下側がV溝628が最も狭い状態、言い換えれば、ベルト式無段変速機600が最大変速比γmaxの状態を示している。
伝動ベルト612は、プライマリプーリ608に形成されているV溝622およびセカンダリプーリ610に形成されているV溝628に跨って巻き掛けられており、互いのV溝622、628の溝幅が変更されることにより、伝動ベルト612の巻き掛け位置、言い換えれば巻き掛け半径が変更される。
このように、ベルト式無段変速機600では、油圧アクチュエータ623、630によって可動シーブ620、626が軸心方向へ移動させられることで、各プーリ608、610のV溝622、628の溝幅が調整される。これより、各プーリ608、610の伝動ベルト612の巻き掛け半径が無段階的に変更されることで、ベルト式無段変速機600の変速比が無段階的に変更される。
図17は、図16のプライマリプーリ608において入力軸604および可動シーブ620周辺を拡大して示した拡大断面図である。図17に示すように、プライマリプーリ608の可動シーブ620の内周部において、軸心方向の伝動ベルト612側にシール部632が形成されており、軸心方向の伝動ベルト612とは反対側すなわち油圧アクチュエータ623側に雌スプライン634が形成されている。また、入力軸604の雄スプライン635および可動シーブ620の雌スプライン634がスプライン嵌合されることでトルク伝達されるトルク伝達部636および油圧アクチュエータ623の油圧室638に作動油を供給するための油路部640が形成されている。
ところで、プライマリプーリ608において伝動ベルト612を狭圧する際に作用するラジアル荷重(反力荷重)を受ける必要があり、図17に示す雌スプライン634およびシール部632がラジアル荷重を受けるラジアル荷重受面として機能する。なお、ラジアル荷重とは、面に対して垂直に作用する荷重である。このラジアル荷重は、軸心方向において伝動ベルト612から遠ざかるに従って大きくなることが知られており、シール部632に比べて雌スプライン634が受けるラジアル荷重が大きくなる。ここで、プライマリプーリ608では、ラジアル荷重が大きくなる雌スプライン634にスプライン歯が形成されていることから、可動シーブ620の雌スプライン634の歯先面のみ入力軸604の外周面と接触するため、入力軸604と可動シーブ620との接触面積が小さくなっている。しかしながら、ラジアル荷重を受けるために所定の接触面積を確保する必要があるため、雌スプライン634の軸長を長くする必要があり、結果としてプライマリプーリ608が軸心方向に長くなる問題があった。
また、図17に示すように、プライマリプーリ608において、ベルト式無段変速機600の最小変速比γminが達成される可動シーブ620の位置を規定するために、入力軸604および可動シーブ620には、それぞれ段付部642、646がそれぞれ形成されている。この段付部642、646が、図16のプライマリプーリ608において軸心C1の下側に示すように互いに当接することで最小変速比γminが達成される。このようにして、最小変速比γminが達成される可動シーブ620の位置決めが為されるが、入力軸604および可動シーブ620にそれぞれ段付部642、646を形成する必要がある。ここで、入力軸604に段付部642が形成されると、その段付部642分だけ軸径を太くする必要が生じ、入力軸604が径方向に大きくなってしまう問題があった。
さらに、シール部632は、入力軸604の外周面と可動シーブ620の内周面とが互いに摺接されることでシールされる構造であるが、上記シール構造は金属同士が接触するだけであるため、必ず作動油の漏れが発生する。この油の漏れ量は、ベルト式無段変速機600の変速比γに応じて変化する。例えば、ベルト式無段変速機600が最大変速比γmaxの状態では、図16に示すプライマリプーリ608が軸心C1の上側に示す位置となり、シール部632の軸心方向の長さ、すなわち入力軸604の外周面と可動シーブ620の内周面とが接触することで形成されるシール部632のシール幅が最も短くなる。一方、ベルト式無段変速機600が最小変速比γminの状態では、プライマリプーリ608が軸心C1の下側に示す位置となり、シール部632の軸心方向の長さ、すなわち入力軸604の外周面と可動シーブ620の円周面とが接触することで形成されるシール部632のシール幅が最も長くなる。このようにベルト式無段変速機600の変速比γに応じてシール部632のシール幅が変化するため、それに従ってシール部632からの作動油の漏れ量が複雑に変化する。これより、シール部632のシール幅が変化するに従って作動油の漏れ量が複雑に変化するため、プライマリプーリ608の油圧アクチュエータ623において油圧の制御性が低下する問題があった。なお、上述した各問題は、セカンダリプーリ610においても同様に発生する。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両用ベルト式無段変速機において、軸長および軸径を短縮することができ、且つ、制御性の低下を抑制することができる車両用ベルト式無段変速機の構造を提供することにある。
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)入力軸に固定されている第1固定シーブと、内周部に形成されている雌スプラインが入力軸に形成されている雄スプラインとスプライン嵌合されることで入力軸に相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能な第1可動シーブとを有するプライマリプーリと、前記入力軸に平行な出力軸に固定されている第2固定シーブと、内周部に形成されている雌スプラインが出力軸に形成されている雄スプラインとスプライン嵌合されることで出力軸に相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能な第2可動シーブとを有するセカンダリプーリと、前記第1固定シーブと前記第1可動シーブとの間に形成されるV字形状の第1プーリ溝および前記第2固定シーブと前記第2可動シーブとの間に形成されるV字形状の第2プーリ溝に巻き掛けられる伝動ベルトとを備える車両用ベルト式無段変速機であって、(b)前記プライマリプーリの第1可動シーブの内周部に形成される前記雌スプラインは、前記伝動ベルトが前記第1プーリ溝に巻き掛けられた状態において、軸心方向の伝動ベルト側に形成される一方、その第1可動シーブの軸心方向の伝動ベルト側と反対側には、内周面が前記入力軸の外周面に摺接される円筒状の第1円筒部が形成されており、(c)前記セカンダリプーリの第2可動シーブの内周部に形成される前記雌スプラインは、前記伝動ベルトが前記第2プーリ溝に巻き掛けられた状態において、軸心方向の伝動ベルト側に形成される一方、その第2可動シーブの軸心方向の伝動ベルト側と反対側には、内周面が前記出力軸の外周面に摺接される円筒状の第2円筒部が形成されており、(d)前記プライマリプーリに設けられて第1プーリ溝の最大溝幅を規定するための第1溝幅規定手段、および、前記セカンダリプーリに設けられて第2プーリ溝の最大溝幅を規定するための第2溝幅規定手段の少なくとも一方が設けられていることを特徴とする。
このようにすれば、プライマリプーリに第1溝幅規定手段が設けられた場合、第1プーリ溝の最大溝幅が規定される。ここで、さらにプライマリプーリに第1プーリ溝の最小溝幅を規定するよく知られた段付部が入力軸および第1可動シーブに設けられれば、セカンダリプーリの第2プーリ溝の最小溝幅および最大溝幅は、プライマリプーリの最小溝幅および最大溝幅に応じて一義的に決定される。したがって、セカンダリプーリにおいて、第2プーリ溝の最小溝幅および最大溝幅を規定する段付部を設ける必要がなくなるため、出力軸の軸径が段付部を設ける分だけ大きくなることが防止される。
また、セカンダリプーリに第2溝幅規定手段が設けられた場合、第2プーリ溝の最大溝幅が規定される。ここで、さらにセカンダリプーリに第2プーリ溝の最小溝幅を規定するよく知られた段付部が出力軸および第2可動シーブに設けられれば、プライマリプーリの第1プーリ溝の最小溝幅および最大溝幅は、セカンダリプーリの最小溝幅および最大溝幅に応じて一義的に決定される。したがって、プライマリプーリにおいて、第1プーリ溝の最小溝幅および最大溝幅を規定する段付部を設ける必要がなくなるため、入力軸の軸径が段付部を設ける分だけ大きくなることが防止される。
また、プライマリプーリに第1溝幅規定手段が設けられると共に、セカンダリプーリに第2溝幅規定手段が設けられる場合、第1プーリ溝の最大溝幅が規定されると共に、第2プーリ溝の最大溝幅が規定される。ここで、第1プーリ溝が最大溝幅となると第2プーリ溝は最小溝幅となり、第2プーリ溝が最大溝幅となると第1プーリ溝は最小溝幅となることから、入力軸および出力軸にそれぞれのプーリ溝の最小溝幅を規定するための段付部を設ける必要がなくなる。これより、入力軸および出力軸にそれぞれのプーリ溝の最小溝幅を規定するための段付部を設ける必要がなくなるため、入力軸および出力軸の軸径が段付部を設ける分だけ大きくなることが防止される。
また、第1可動シーブの軸心方向の伝動ベルト側と反対側には、前記入力軸の外周面に摺接される円筒状の第1円筒部が形成されるため、伝動ベルトと反対側において第1可動シーブの内周面と入力軸の外周面とが接触する接触面積が、従来構造である可動シーブの雌スプラインの歯先面と入力軸の外周面とが接触する場合に比較して大きくなる。同様に、第2可動シーブの軸心方向の伝動ベルト側と反対側には、前記出力軸の外周面に摺接される円筒状の第2円筒部が形成されるため、伝動ベルトと反対側において第2可動シーブの内周面と出力軸の外周面とが接触する接触面積が、従来構造である可動シーブの雌スプラインの歯先面と出力軸の外周面とが接触する場合に比較して大きくなる。ここで、プライマリプーリおよびセカンダリプーリが伝動ベルトを挟持する際、その反力が第1円筒部の内周面と入力軸の外周面との接触面、および第2円筒部の内周面と出力軸の外周面との接触面に垂直に作用するラジアル荷重として作用するが、これに対して、それぞれの接触面ではその接触面積が大きく確保されているため、その荷重を受け持つことができる。すなわち、前記接触面積を確保するためにプライマリプーリおよびセカンダリプーリの軸長を長くする必要がなくなり、その軸長を短縮化することも可能となる。
また、第1円筒部が入力軸の外周面と接触する軸心方向の長さは、入力軸に段付部等が形成されないことで、第1円筒部が入力軸の外周面を摺動する範囲において一定とすることができる。これより、第1円筒部の内周面と入力軸の外周面との摺接面が作動油の漏れを抑制するシール面として機能する際、そのシール幅が第1可動シーブの位置に拘わらず変化しないため、シール面からの作動油の漏れ量が第1可動シーブの位置に応じて複雑に変化せず、油圧の制御性を向上させることができる。同様に、第2円筒部が出力軸の外周面と接触する軸心方向の長さは、出力軸に段付部等が形成されないことで、第2円筒部が出力軸の外周面を摺動する範囲において一定とすることができる。これより、第2円筒部の内周面と出力軸の外周面との摺接面が作動油の漏れを抑制するシール面として機能する際、そのシール幅が第2可動シーブの位置に拘わらず変化しないため、シール面からの作動油の漏れ量が第2可動シーブの位置に応じて複雑に変化せず、油圧の制御性を向上させることができる。
また、好適には、前記第1可動シーブが前記第1固定シーブ側に移動した際には、その第1可動シーブの内周部に形成されている前記雌スプラインと前記第1円筒部との境界に形成される端面が、前記入力軸に形成されている前記雄スプラインの端面と当接する位置において、前記第1シーブ溝の最小溝幅が規定されるものである。このようにすれば、第1可動シーブに形成される端面と入力軸の雄スプラインに形成される端面とが当接する位置で第1プーリ溝の最小溝幅が規定され、入力軸および第1可動シーブに段付部を設けることなく、第1プーリ溝の最小溝幅を規定することができる。
また、好適には、前記第2可動シーブが前記第2固定シーブ側に移動した際には、その第2可動シーブの内周部に形成されている前記雌スプラインと前記第2円筒部との境界に形成される端面が、前記出力軸に形成されている前記雄スプラインの端面と当接する位置において、前記第2シーブ溝の最小溝幅が既定されるものである。このようにすれば、第2可動シーブに形成される端面と出力軸の雄スプラインに形成される端面とが当接する位置で前記第2プーリ溝の最小溝幅が規定され、出力軸および第2可動シーブに段付部を設けることなく、第2プーリ溝の最小溝幅を規定することができる。
また、好適には、前記プライマリプーリに、前記第1プーリ溝の最大溝幅を規定する第1溝幅規定手段が設けられ、前記入力軸の外周面および前記第1可動シーブの内周面には、それぞれ段付部が設けられ、その第1可動シーブの段付部の端面がその入力軸の段付部の端面に当接する位置において、前記第1プーリ溝の最小溝幅が規定される。このようにすれば、セカンダリプーリに第2プーリ溝の最小溝幅および最大溝幅を規定する機械的な機構を設ける必要がなくなり、例えば出力軸に第2プーリ溝の最小溝幅を規定するための段付部を設けることを防止することができる。なお、第1プーリ溝が最小溝幅である場合には、伝動ベルトの巻き掛け径の変化に応じて、セカンダリプーリにおいて第2プーリ溝が最大溝幅となる。一方、第1プーリ溝が最大溝幅である場合には、伝動ベルトの巻き掛け径の変化に応じて、セカンダリプーリにおいて第2プーリ溝が最小溝幅となる。このように、プライマリプーリに設けられている機械的な機構によって、第2プーリ溝の最小溝幅および最大溝幅が規定される。
また、好適には、前記セカンダリプーリに、前記第2プーリ溝の最大溝幅を規定する第2溝幅規定手段が設けられ、前記出力軸の外周面および前記第2可動シーブの内周面には、それぞれ段付部が設けられ、その第2可動シーブの段付部の端面がその出力軸の段付部の端面に当接する位置において、前記第2プーリ溝の最小溝幅が規定される。このようにすれば、プライマリプーリに第1プーリ溝の最小溝幅および最大溝幅を規定する機械的な機構を設ける必要がなくなり、例えば入力軸に第1プーリ溝の最小溝幅を規定するための段付部を設けることを防止することができる。なお、第2プーリ溝が最小溝幅である場合には、伝動ベルトの巻き掛け径の変化に応じて、プライマリプーリにおいて第1プーリ溝の溝幅が最大溝幅となる。一方、第2プーリ溝が最大溝幅である場合には、伝動ベルトの巻き掛け径の変化に応じて、プライマリプーリにおいて第1プーリ溝の溝幅が最小となる。このように、セカンダリプーリに設けられている第2プーリ溝の溝幅を規定する機械的な機構によって、第1プーリ溝の最小溝幅および最大溝幅が規定される。
また、好適には、前記プライマリプーリに、前記第1プーリ溝の最大溝幅を規定する第1溝幅規定手段が設けられると共に、前記セカンダリプーリに、前記第2プーリ溝の最大溝幅を規定する第2溝幅規定手段が設けられる。このようにすれば、プライマリプーリの第1プーリ溝の最小溝幅を規定するための段付部、およびセカンダリプーリの第2プーリ溝の最小溝幅を規定するための段付部を設ける必要がなくなるため、例えば入力軸および出力軸にそれぞれプーリ溝の最小溝幅を規定するための段付部を設けることを防止することができる。なお、第1プーリ溝が最大溝幅である場合には、伝動ベルトの巻き掛け径の変化に応じて、セカンダリプーリにおいて第2プーリ溝の溝幅が最小溝幅に規定される。一方、第2プーリ溝が最大溝幅である場合には、伝動ベルトの巻き掛け径の変化に応じて、プライマリプーリにおいて第1プーリ溝の溝幅が最小溝幅に規定される。このようにして、第1プーリ溝の最小溝幅および第2プーリ溝の最小溝幅が規定される。
また、好適には、前記第1溝幅規定手段は、前記第1可動シーブの軸心方向において前記第1固定シーブと反対側の端面が所定の部材と当接することで、その第1可動シーブの軸心方向においてその第1固定シーブと反対側への移動を阻止するものである。このようにすれば、第1可動シーブの第1固定シーブと反対側に形成される端面が所定の部材と当接すると、第1可動シーブのそれ以上の軸心方向への移動が阻止されて、第1プーリ溝の最大溝幅が規定される。
また、好適には、前記第2溝幅規定手段は、前記第2可動シーブの軸心方向において前記第2固定シーブと反対側の端面が所定の部材と当接することで、その第2可動シーブの軸心方向においてその第2固定シーブと反対側への移動を阻止するものである。このようにすれば、第2可動シーブの第2固定シーブと反対側に形成される端面が所定の部材と当接すると、第2可動シーブのそれ以上の軸心方向への移動が阻止されて、第2プーリ溝の最大溝幅が既定される。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が好適に適用された車両用動力伝達装置10の骨子図である。図1において、車両用動力伝達装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両用のものであり、車両用の駆動源として良く知られたエンジン12に連結されている。この車両用動力伝達装置10は、流体を媒体としてエンジン12のトルクを伝達する流体伝動装置として良く知られたトルクコンバータ14と、そのトルクコンバータ14から伝達されたトルクの回転方向を、車両前進用の回転方向とその反対向きである車両後進用の逆回転方向との間で切り換える前後進切替装置16と、その前後進切替装置16を介して伝達されたトルクを負荷に応じたトルクに変換する車両用ベルト式無段変速機(以下、無段変速機と記載する)18と、その無段変速機18の出力側に連結された減速歯車装置20と、その減速歯車装置20を介して伝達されたトルクを、左右一対の車輪22に対してそれらの回転差を許容しつつ伝達する良く知られた所謂傘歯車式の差動歯車装置24とを備えている。上記トルクコンバータ14のポンプ翼車26には、例えば無段変速機18の変速制御や前後進切替装置16の前後進切替制御に用いられる油圧等を発生させる機械式のオイルポンプ28が設けられている。
上記前後進切替装置16は、トルクコンバータ14のタービン軸30に連結されたサンギヤ32と、無段変速機18の入力軸56に連結され且つタービン軸30に対して前進用クラッチCを介して選択的に連結されるキャリヤ34と、非回転部材としてのトランスアクスルケース36に対して後進用ブレーキBを介して選択的に連結されるリングギヤ38とを、含むダブルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されている。上記前進用クラッチCおよび後進用ブレーキBは、何れもオイルポンプ28から油圧が供給されることによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。このような前後進切替装置16では、前進用クラッチCが係合されると共に後進用ブレーキBが解放されることにより、前記遊星歯車装置が一体回転状態とされて前進用動力伝達経路が成立するようになっている。上記前進用動力伝達経路が成立した場合には、トルクコンバータ14から伝達されたトルクがそのままの回転方向で無段変速機18に出力される。また、前後進切替装置16では、後進用ブレーキBが係合させられると共に前進用クラッチCが解放されることにより、前記遊星歯車装置が入出力逆回転状態とされて後進用動力伝達経路が成立するようになっている。上記後進用動力伝達経路が成立した場合には、トルクコンバータ14から伝達されたトルクが、その回転方向が逆回転にされて無段変速機18に出力される。また、前後進切替装置16は、前進用クラッチCおよび後進用ブレーキBが共に解放されることにより、動力伝達を遮断するニュートラル状態(遮断状態)とされる。
前記減速歯車装置20は、無段変速機18の出力軸40の外周面に相対回転不能に嵌合された第1ドライブギヤ42と、出力軸40と平行に設けられ且つ回転可能に支持された伝達軸44と、その伝達軸44の外周面に相対回転不能に嵌合されて第1ドライブギヤ42に噛み合わされた第1ドリブンギヤ46と、伝達軸44の外周面から外周側へ突設された第2ドライブギヤ48と、伝達軸44と平行に設けられ且つ回転可能に支持された差動歯車装置24のデフケース50の外周面に相対回転不能に嵌合されて、第2ドライブギヤ48に噛み合わされた第2ドリブンギヤ(デフリングギヤ)52とを、備えている。上記第1ドライブギヤ42および第2ドライブギヤ48は、上記第1ドリブンギヤ46および第2ドリブンギヤ52よりも小径に形成されている。このような減速歯車装置20では、車両の加速時には、無段変速機18の出力軸40から第1ドライブギヤ42に伝達されたトルクが、第1ドリブンギヤ46、伝達軸44、第2ドライブギヤ48、および第2ドリブンギヤ52をそれぞれ介して差動歯車装置24のデフケース50に出力される。また、車両の減速時には、左右一対の車輪22から伝達される逆駆動力が、差動歯車装置24および減速歯車装置20を介して無段変速機18の出力軸40に伝達される。
図2は、図1に示す車両用動力伝達装置10の一部を示す断面図である。図2において、無段変速機18は、一対の軸受54を介してトランスアクスルケース36によって軸心C1まわりの回転可能に支持された入力軸56と、その入力軸56の外周側に設けられたプライマリプーリ(入力側溝幅可変プーリ)58と、入力軸56と平行に設けられ一対の軸受60を介してトランスアクスルケース36によって軸心C2まわりの回転可能に支持された出力軸40と、その出力軸40の外周側に設けられたセカンダリプーリ(出力側溝幅可変プーリ)62と、プライマリプーリ58およびセカンダリプーリ62にそれぞれ巻き掛けられて両プーリ間において摩擦力により動力伝達を行う良く知られた無端環状の伝動ベルト66とを備えている。
上記プライマリプーリ58は、入力軸56の外周側に固設されている円盤状のプライマリ固定シーブ72(第1固定シーブ)と、そのプライマリ固定シーブ72との間にV字形状の第1プーリ溝64を形成するように、入力軸56に相対回転不能且つ軸心C1方向に相対移動可能にスプライン嵌合されるプライマリ可動シーブ74(第1可動シーブ)と、供給される油圧に応じてプライマリ可動シーブ74を軸心C1方向に移動させてプライマリ可動シーブ74とプライマリ固定シーブ72とを接近または離間させることにより、第1プーリ溝64の溝幅を変化させるプライマリ油圧アクチュエータ76とを備えている。
上記プライマリ固定シーブ72は、入力軸56の外周面から外周側に突き出して入力軸56に一体に設けられた円盤状の部材である。このプライマリ固定シーブ72には、外周側に向かうほどプライマリ可動シーブ74から離間する円錐状のテーパ面78がプライマリ可動シーブ74との対向面に形成されている。
前記プライマリ可動シーブ74は、入力軸56に軸心C1方向の相対移動可能且つ軸心C1まわりの相対回転不能にスプライン嵌合された内側筒部74aと、その内側筒部74aのプライマリ固定シーブ72側の一端部から外周側に突き出して一体に設けられた円盤部74bと、その円盤部74bの外周部からプライマリ固定シーブ72とは反対側に向けて軸心C1方向に突設された外側筒部74cとを有している。上記円盤部74bには、外周側に向かうほどプライマリ固定シーブ72から離間する円錐状のテーパ面80がプライマリ固定シーブ72との対向面に形成されている。上記テーパ面80は、プライマリ固定シーブ72のテーパ面78とともに第1プーリ溝64を形成している。
前記プライマリ油圧アクチュエータ76は、入力軸56のプライマリ可動シーブ74に対するプライマリ固定シーブ72とは反対側の一端部に配設されてプライマリ可動シーブ74と共に油密な油圧室84を形成するための有底円筒状のシリンダ部材82を備えている。シリンダ部材82は、その内周部が入力軸56に形成されている段付端面に嵌め付けられているスペーサ81と軸受54との間に挟まれることで軸心方向への移動が阻止されている屈曲形状の壁部82aと、その壁部82aの外周部からプライマリ可動シーブ74の外側筒部74cの外周側に周方向に連続して突設され、プライマリ可動シーブ74の外側筒部74cの外周面に対してオイルシールを介して摺動する筒部82bとを備えている。このシリンダ部材82とプライマリ可動シーブ74と入力軸56とによって油密に囲まれる空間には、油圧室84が形成される。この油圧室84には、トランスアクスルケース36に形成された第1油路86と、入力軸56の内周側に形成されて第1油路86に連通された第2油路88と、その第2油路88から入力軸56を径方向に貫通して形成された第3油路90とをそれぞれ通じて、前記オイルポンプ28から圧送された油圧が図示しない油圧制御回路により適宜調圧されて供給されるようになっている。
このようなプライマリプーリ58では、油圧室84に供給される油圧に応じてプライマリ可動シーブ74が軸心C1方向においてプライマリ固定シーブ72に接近または離間して、第1プーリ溝64の幅が変化させられるようになっている。図2において、軸心C1の下側に実線で示すプライマリ可動シーブ74は、プライマリ固定シーブ72との間に形成される第1プーリ溝64が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態において、伝動ベルト66の巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機18の変速比γが最小変速比γminとなる。また、軸心C1の上側に実線で示すプライマリ可動シーブ74は、プライマリ固定シーブ72との間に形成される第1プーリ溝64が最小溝幅Wmaxとされた状態を示している。この状態において、伝動ベルト66の巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機18の変速比γが最大変速比γmaxとなる。
前記セカンダリプーリ62は、出力軸40の外周側に固設されたセカンダリ固定シーブ92(第2固定シーブ)と、そのセカンダリ固定シーブ92との間にV字形状の第2プーリ溝65を形成するように、出力軸40に相対回転不能且つ軸心C2方向に相対移動可能にスプライン嵌合されるセカンダリ可動シーブ94(第2可動シーブ)と、供給される油圧に応じてセカンダリ可動シーブ94を軸心C2方向に移動させてセカンダリ可動シーブ94とセカンダリ固定シーブ92とを接近または離間させることにより、第2プーリ溝65の溝幅を変化させるセカンダリ油圧アクチュエータ96とを備えている。
上記セカンダリ固定シーブ92は、出力軸40の外周面から外周側に突き出して出力軸40に一体に設けられた円盤状の部材である。このセカンダリ固定シーブ92には、外周側に向かうほどセカンダリ可動シーブ94から離間する円錐状のテーパ面98がセカンダリ可動シーブ94との対向面に形成されている。
前記セカンダリ可動シーブ94は、出力軸40に対して軸心方向の相対移動可能且つ軸心C2まわりの相対回転不能にスプライン嵌合された内側筒部94aと、その内側筒部94aのセカンダリ固定シーブ92側の一端部から外周側に突き出して一体に設けられた円盤状の円盤部94bと、その円板部94bの外周部からセカンダリ固定シーブ92とは反対側に向けて軸心C2方向に突設された外側筒部94cとを有している。上記円盤部94bには、外周側に向かうほどセカンダリ固定シーブ92から離間する円錐状のテーパ面102がセカンダリ固定シーブ92との対向面に形成されている。上記テーパ面102は、セカンダリ固定シーブ92のテーパ面98とともに第2プーリ溝65を形成している。
前記セカンダリ油圧アクチュエータ96は、出力軸40のセカンダリ可動シーブ94に対するセカンダリ固定シーブ92とは反対側の一端部に配設されてセカンダリ可動シーブ94と共に油密な油圧室108を形成するための有底円筒状のシリンダ部材106を備えている。シリンダ部材106は、その内周部が出力軸40に形成されている段付端面と円筒部材104との間に挟まれることで軸心方向への移動が阻止されている内周壁部106aと、その内周壁部106aの外周部からセカンダリ可動シーブ94の円盤部94b側に向けて延設された筒部106bと、その筒部106bのセカンダリ可動シーブ94側の一端部から周方向に連続して外周側に突設され、セカンダリ可動シーブ94の外側筒部94cの内周面に対してオイルシールを介して摺動する外周壁部106cとを有するシリンダ部材106を備えている。このシリンダ部材106とセカンダリ可動シーブ94と出力軸40とによって油密に囲まれる空間には、油圧室108が形成されている。この油圧室108には、トランスアクスルケース36に形成された第4油路110と、出力軸40の内周側に形成されて第4油路110に連通された第5油路112と、その第5油路112から出力軸40を径方向に貫通して形成された第6油路114とをそれぞれ通じて、前記オイルポンプ28から圧送された油圧が図示しない油圧制御回路により適宜調圧されて供給されるようになっている。また、セカンダリ可動シーブ94の内側筒部94aの外周面に形成された段付端面とシリンダ部材106の内周壁部106aとの間には、セカンダリ可動シーブ94をセカンダリ固定シーブ92側へ付勢するコイルスプリング116が設けられている。
このようなセカンダリプーリ62では、油圧室108に供給される油圧に応じてセカンダリ可動シーブ94にセカンダリ固定シーブ92へ向かう推力すなわち伝動ベルト66を挟圧する方向の推力が付与されるようになっている。図2において、軸心C1の下側に実線で示すセカンダリプーリ62は、セカンダリ固定シーブ92とセカンダリ可動シーブ94との間に形成される第2プーリ溝65が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ62への巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機18の変速比γが最大変速比γmaxとなる。また、軸心C1の上側に実線で示すセカンダリプーリ62は、セカンダリ固定シーブ92とセカンダリ可動シーブ94との間に形成される第2プーリ溝65が最小溝幅Wmaxとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ62への巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機18の変速比γが最小変速比γminとなる。
以上のように構成されたベルト式無段変速機18では、プライマリプーリ58の第1プーリ溝64およびセカンダリプーリ62の第2プーリ溝65をそれぞれ変化させて、伝動ベルト66のプライマリプーリ58およびセカンダリプーリ62における巻掛半径をそれぞれ変化させることにより、変速比(入力軸56の回転速度/出力軸40の回転速度)が無段階に変化するようになっている。伝動ベルト66のプライマリプーリ58における巻掛半径が小さくされると共に、セカンダリプーリ62における巻掛半径が大きくされた場合には、ベルト式無段変速機18の変速比γが大きくなる。また、伝動ベルト66のプライマリプーリ58における巻掛半径が大きくされると共に、セカンダリプーリ62における巻掛半径が小さくされた場合には、ベルト式無段変速機18の変速比が小さくなる。
図3は、図2のプライマリプーリ58のスプライン構造を説明するためにプライマリ可動シーブ74のスプライン嵌合部近傍を拡大した拡大断面図である。図3に示すように、プライマリ可動シーブ74の内周部の軸心方向において伝動ベルト66側には、雌スプライン120が軸心C1と平行に形成されている。この雌スプライン120が入力軸56の外周面128に形成されている雄スプライン122とスプライン嵌合されることで、プライマリ可動シーブ74が入力軸56と一体的に回転させられる。なお、入力軸56には、後述する段付部が形成されているため、入力軸56の外周面128が2段に形成されている。本実施例では、入力軸56の軸径の小さい側を外周面128aとし、軸径の大きい側を外周面128bとする。
また、プライマリ可動シーブ74の軸心方向において軸受54側すなわち伝動ベルト66と反対側には、内周面126(円筒面)が入力軸56の外周面128aと摺接される円筒状の円筒部130(第1円筒部)が形成されており、その円筒部130の内周面126と入力軸56の外周面128aとが隙間なく摺接されることでシール部132が形成される。シール部132は、円筒部130の内周面126と入力軸56の外周面128aとが隙間なく金属接触されることで、プライマリ油圧アクチュエータ76の油圧室84へ供給される作動油の漏れを抑制するものである。
前記プライマリ可動シーブ74の雌スプライン120と円筒部130との境界には、段付部134が形成されている。また、入力軸56の雄スプライン122近傍において入力軸56の軸径が変化する段付部136が形成されており、前記段付部134の端面135と段付部136の端面137が当接することで、プライマリ可動シーブ74のプライマリ固定シーブ72への移動が阻止される。具体的には、図2において軸心C1の下側に示す状態となり、この状態で第1プーリ溝64の溝幅が最小溝幅Wminとなる。なお、第1プーリ溝が最小溝幅Wminとなる位置において、ベルト式無段変速機18が最小変速比γminとなるように設定されており、段付部134、136は、ベルト式無段変速機18が最小変速比γminとなるプライマリ可動シーブ74の軸心方向の位置を規定する位置決め機構として機能する。
一方、プライマリプーリ58の第1プーリ溝64の最小溝幅Wmaxは、プライマリ可動シーブ74の軸心方向において軸受54側(プライマリ固定シーブ72と反対側)の端面138がスペーサ81の端面と当接する位置で規定される。具体的には、図2において軸心C1の上側に示す状態となり、プライマリ可動シーブ74の端面138がスペーサ81の端面と当接されており、プライマリ可動シーブ74の軸受54側への移動が阻止されている。この第1プーリ溝64が最小溝幅Wmaxとなる位置において、ベルト式無段変速機18の変速比γが最大変速比γmaxとなるり、プライマリ可動シーブ74の端面138がスペーサ81の端面と当接されることで、ベルト式無段変速機18の最大変速比γmaxが達成される。このように、本実施例では、ベルト式無段変速機18において最小変速比γminが達成されるプライマリ可動シーブ74の位置を規定する機構、および最大変速比γmaxが達成されるプライマリ可動シーブ74の位置を規定する機構がプライマリプーリ58側に設けられている。なお、スペーサ81が、本発明の第1可動シーブの軸心方向において前記第1固定シーブと反対側の端面が当接する所定の部材に対応しており、プライマリ可動シーブ74の端面138とそのスペーサ81の端面によって、本発明の第1溝幅規定手段が構成される。
図4は、図2のセカンダリプーリ62のスプライン構造を説明するためにセカンダリ可動シーブ94のスプライン嵌合部近傍を拡大した拡大断面図である。図4において、セカンダリ可動シーブ94の軸心方向において伝動ベルト66側の内周部には、雌スプライン140が軸心C2と平行に形成されている。この雌スプライン140が出力軸40の外周面148に形成されている雄スプライン142とスプライン嵌合されることで、セカンダリ可動シーブ94が出力軸40と一体的に回転させられる。
また、セカンダリ可動シーブ94の軸心方向において円筒部材104側すなわち軸心方向において伝動ベルト66と反対側には、内周面146(円筒面)が出力軸40の外周面148と摺接される円筒部150(第2円筒部)が形成されており、その円筒部150の内周面146と出力軸40の外周面148とが隙間なく摺接されることでシール部152が形成されている。シール部152は、円筒部150の内周面146と出力軸40の外周面148とが隙間なく金属接触されることで、セカンダリ油圧アクチュエータ96の油圧室108へ供給される作動油の漏れを抑制するものである。
ここで、図4に示すように、セカンダリプーリ62においては、出力軸40の雄スプライン142が形成されている部位を除いて、セカンダリ可動シーブ94が軸心方向に移動する範囲において、出力軸40の軸径が一定に設定されている。例えば、出力軸40には、段付部等が形成されていない。これは、ベルト式無段変速機18では、プライマリプーリ58において最小変速比γminおよび最大変速比γmaxを達成するための第1可動シーブ74の軸心方向の位置を規定する機構(位置決め機構)が設けられているためである。
上記のようにベルト式無段変速機18のプライマリプーリ58およびセカンダリプーリ62のスプライン構造が形成されることによって生じる作用効果について以下説明する。
プライマリプーリ58が伝動ベルト66を挟持する際、その反力がプライマリ可動シーブ74を介して入力軸56に作用する。これに従い、入力軸56の外周面128がプライマリ可動シーブ74との接触面よりその反力(ラジアル荷重)を受けることとなる。図5は、本実施例に類似したプライマリプーリにおいて、伝動ベルトを挟持した際に発生するプライマリ可動シーブと入力軸との接触面の間で作用する面圧の大きさを解析的に計算した計算結果である。図5において、横軸はベルト式無段変速機の変速比γを示し、縦軸が面圧Ps(MPa)の大きさを示している。また、Fr側面圧Psは、図3において伝動ベルト66側で作用する面圧Psを示している。一方、Rr側面圧Psは、図3においてシール部132側で作用する面圧Psを示している。図5に示すように、Fr側面圧Psはベルト式無段変速機の変速比γが変化しても殆ど変化しない一方、Rr側面圧Psはベルト式無段変速機の変速比γが大きくなるに従って、Rr側面圧Psが小さくなっている。また、Rr側面圧Psは、Fr側面圧Psと比べると大幅に大きくなっている。すなわち、本実施例に当てはめると、シール部132側で作用するRr面圧Psは、伝動ベルト66側で作用するFr面圧Psよりも大きくなる。言い換えれば、シール部132側で作用するラジアル荷重が、伝動ベルト66側で作用するラジアル荷重よりも大幅に大きくなる。
上記より、シール部132にかかるラジアル荷重が大きくなるが、そのラジアル荷重を受けるために、シール部132においてプライマリ可動シーブ74と入力軸56とが接触する接触面積を確保しなければならない。これに対して、シール部132は、円筒部130の内周面126と入力軸56の外周面128aとが隙間なく接触しているために接触面積が大きく、大きなラジアル荷重を受けることができる。なお、従来では、本実施例のシール部132の位置に、プライマリ可動シーブの雌スプラインが形成されており、雌スプラインの歯先面のみ入力軸と接触されていた。したがって、接触面積が大幅に小さくなるため、接触面積を確保するために雌スプラインの軸心方向の長さを長くする必要があった。これより、本実施例では、接触面積が大きくなるため、シール部132の軸心方向の長さを延長することなくシール部132に作用するラジアル荷重を受けることができる。
また、図3に示すように、プライマリ可動シーブ74が軸心方向に移動されるに従って、円筒部130の内周面126が入力軸56の外周面128a上を摺動するが、この円筒部130の内周面126と入力軸56の外周面128aとが接触する軸心方向の長さすなわちシール部132のシール幅は、プライマリ可動シーブ74の位置に拘わらず一定となる。具体的には、円筒部130が軸心方向に摺動する範囲では、入力軸56の外周面128aには段付部等が形成されないため、上記シール幅が変化しない。なお、第3油路90が形成されている部位のみ、円筒部130の内周面126と接触されないが、本実施例の第3油路90の断面積は小さいものであるため、接触面積は殆ど変化しない。ところで、シール部132は、円筒部130の内周面126と入力軸56の外周面128aとが金属接触することで、作動油の漏れが抑制されているが、オイルシール等が設けられないため、完全には作動油の漏れを抑制することができず、少量の作動油の漏れが生じる。ここで、シール部132のシール幅(接触面積)は、プライマリ可動シーブ74の位置すなわちベルト式無段変速機18の変速比γに拘わらず変化しないため、シール部132からの作動油の漏れ量は、油圧室84内の作動油の油圧に基づいてある程度予測することができる。したがって、その漏れ量を考慮したプライマリ油圧アクチュエータ76の油圧制御が実行されることで、油圧制御の制御性が向上する。
また、本実施例では、プライマリプーリ58側にベルト式無段変速機18の最小変速比γminおよび最大変速比γmaxを達成するプライマリ可動シーブ74の位置を規定する機械的な位置決め構造が設けられている。すなわち、セカンダリプーリ62において、それらの位置決めを行う構造が形成されない。したがって、図4に示すように、セカンダリ可動シーブ94が摺動する範囲では、出力軸40の雄スプライン142が形成されている部位を除いてその軸径が一定とされている。これより、段付部等が形成されることでその段付部分だけ出力軸40が太くなり、出力軸40が大型化されることが防止される。なお、第1プーリ溝64が最小溝幅Wminである場合には、伝動ベルト66の巻き掛け径の変化に応じて、セカンダリプーリ62において第2プーリ溝65が最小溝幅Wmaxとなり、ベルト式無段変速機18が最小変速比γminとなる。一方、第1プーリ溝64が最小溝幅Wmaxである場合には、伝動ベルト66の巻き掛け径の変化に応じて、セカンダリプーリ62において第2プーリ溝65が最小溝幅Wminとなり、ベルト式無段変速機18が最大変速比γmaxとなる。このように、プライマリプーリ58に設けられている機械的な機構によって、第2プーリ溝65の最小溝幅Wminおよび最小溝幅Wmaxが規定される。
また、セカンダリプーリ62においても伝動ベルト66が挟持されると、シール部152にかかるラジアル荷重が大きくなる。これに対して、プライマリプーリ58と同様に、円筒部150の内周面146と出力軸40の外周面148との接触面がそのラジアル荷重を受けるため、雌スプライン歯等が形成されている場合に比較して接触面積が大きくなるに従い、出力軸40の軸長が長くなることなくそのラジアル荷重を受けることができる。言い換えれば、シール部152に作用するラジアル荷重を円周面全体で受けることができるため、シール部152の軸心方向の長さを延長することなくラジアル荷重を受けることができる。
また、セカンダリ可動シーブ94が軸心方向に移動されるに従って、円筒部150の内周面146が出力軸40の外周面148上を摺動するが、この円筒部150の内周面146と出力軸40の外周面148との間の軸心方向の接触幅すなわちシール幅は、セカンダリ可動シーブ94の位置に拘わらず一定となる。具体的には、円筒部150が軸心方向に摺動する範囲では、出力軸40の外周面148には、段付部等が形成されないため、上記シール幅が変化しない。このように、セカンダリ可動シーブ94の軸心方向の位置が変化してもシール幅が一定であるため、プライマリプーリ58と同様に、シール部152からの作動油の漏れ量は、セカンダリ油圧アクチュエータ96の油圧に応じた漏れ量となる。したがって、その漏れ量を考慮してセカンダリ油圧アクチュエータ96の油圧制御が実行されることで、油圧制御の制御性が向上する。
上述のように、本実施例によれば、プライマリプーリ58にプライマリ可動シーブ74のプライマリ固定シーブ72と反対側への移動を阻止するスペーサ81が設けられるため、第1プーリ溝64の最小溝幅Wmaxが規定される。ここで、さらにプライマリプーリ58に第1プーリ溝64の最小溝幅Wminを規定するよく知られた段付部134、136が入力軸56およびプライマリ可動シーブ74に設けられることで、セカンダリプーリ62の第2プーリ溝65の最小溝幅Wminおよび最小溝幅Wmaxは、プライマリプーリ58の最小溝幅Wminおよび最小溝幅Wmaxに応じて一義的に決定される。したがって、セカンダリプーリ62において、第2プーリ溝65の最小溝幅Wminを規定する段付部を設ける必要がなくなるため、出力軸40の軸径が段付部を設ける分だけ大きくなることが防止される。
また、本実施例によれば、プライマリ可動シーブ74の軸心方向の伝動ベルト66側と反対側には、入力軸56の外周面128aに摺接される円筒状の円筒部130が形成されるため、伝動ベルト66と反対側においてプライマリ可動シーブ74の内周面126と入力軸56の外周面128aとが接触する接触面積が、従来構造である可動シーブの雌スプラインの歯先面と入力軸の外周面とが接触する場合に比較して大きくなる。同様に、セカンダリ可動シーブ94の軸心方向の伝動ベルト66側と反対側には、出力軸40の外周面148に摺接される円筒状の円筒部150が形成されるため、伝動ベルト66と反対側においてセカンダリ可動シーブの内周面146と出力軸40の外周面148とが接触する接触面積が、従来構造である可動シーブの雌スプラインの歯先面と出力軸の外周面とが接触する場合に比較して大きくなる。ここで、プライマリプーリ58およびセカンダリプーリ62が伝動ベルト66を挟持する際、その反力が円筒部130の内周面146と入力軸56の外周面128aとの接触面、および円筒部150の内周面146と出力軸40の外周面148との接触面に垂直に作用するラジアル荷重として作用するが、これに対して、それぞれの接触面ではその接触面積が大きく確保されているため、そのラジアル荷重を受け持つことができる。すなわち、接触面積を確保するためにプライマリプーリ58およびセカンダリプーリ62の軸長を長くする必要がなくなり、その軸長を短縮化することも可能となる。
また、本実施例によれば、円筒部130が入力軸56の外周面128aと接触する軸心方向の長さは、入力軸56に段付部等が形成されないことで、円筒部130が入力軸56の外周面128aを摺動する範囲において一定とすることができる。これより、円筒部130の内周面126と入力軸56の外周面128aとの摺接面が作動油の漏れを抑制するシール面として機能する際、そのシール幅がプライマリ可動シーブ74の位置に拘わらず変化しないため、シール面からの作動油の漏れ量がプライマリ可動シーブ74の位置に応じて複雑に変化せず、油圧の制御性を向上させることができる。同様に、円筒部150の内周面146が出力軸40の外周面148と接触する軸心方向の長さは、出力軸40に段付部等が形成されないことで、円筒部150が出力軸40の外周面148を摺動する範囲において一定とすることができる。これより、円筒部150の内周面146と出力軸40の外周面148との摺接面が作動油の漏れを抑制するシール面として機能する際、そのシール幅がセカンダリ可動シーブ94の位置に拘わらず変化しないため、シール面からの作動油の漏れ量がセカンダリ可動シーブ94の位置に応じて複雑に変化せず、油圧の制御性を向上させることができる。
また、本実施例によれば、プライマリプーリ58に、第1プーリ溝64の最小溝幅Wmaxを規定するスペーサ81が設けられ、入力軸56の外周面128aおよびプライマリ可動シーブ74の内周面126には、それぞれ段付部134、136が設けられ、プライマリ可動シーブ74の段付部134の端面135が入力軸56の段付部136の端面137に当接する位置において、第1プーリ溝64の最小溝幅Wminが規定される。このようにすれば、セカンダリプーリ62に第2プーリ溝65の最小溝幅Wminおよび最小溝幅Wmaxを規定する機械的な機構を設ける必要がなくなり、例えば出力軸40に第2プーリ溝65の最小溝幅Wminを規定するための段付部を設けることを防止することができる。
また、本実施例によれば、プライマリ可動シーブ74の軸心方向においてプライマリ固定シーブ72と反対側の端面138がスペーサ81の端面と当接することで、プライマリ可動シーブ74の軸心方向においてプライマリ固定シーブ72と反対側への移動が阻止される。このようにすれば、プライマリ可動シーブ74の端面138がスペーサ81と当接すると、プライマリ可動シーブ74のそれ以上の軸心方向への移動が阻止されるため、第1プーリ溝64の最小溝幅Wmaxが規定される。
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図6は、本発明の他の実施例である車両用動力伝達装置200の一部を示す断面図であり、図2に対応するものである。本実施例の車両用動力伝達装置200には、ベルト式無段変速機202が備えられている。ベルト式無段変速機202は、一対の軸受54を介してトランスアクスルケース36によって軸心C1まわりの回転可能に支持された入力軸204と、その入力軸204の外周側に設けられたプライマリプーリ(入力側溝幅可変プーリ)206と、入力軸204と平行に設けられ一対の軸受60を介してトランスアクスルケース36によって軸心C2まわりの回転可能に支持された出力軸208と、その出力軸208の外周側に設けられたセカンダリプーリ(出力側溝幅可変プーリ)210と、プライマリプーリ206およびセカンダリプーリ210にそれぞれ巻き掛けられて両プーリ間において摩擦力により動力伝達を行う良く知られた無端環状の伝動ベルト66とを備えている。
プライマリプーリ206は、入力軸204の外周側に固設された円盤状のプライマリ固定シーブ212(第1固定シーブ)と、そのプライマリ固定シーブ212との間に第1プーリ溝64を形成するように、入力軸204に相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能に設けられたプライマリ可動シーブ214(第1可動シーブ)と、供給される油圧に応じてプライマリ可動シーブ214を軸心C1方向に移動させてプライマリ可動シーブ214とプライマリ固定シーブ212とを接近または離間させることにより、第1プーリ溝64の溝幅を変化させるプライマリ油圧アクチュエータ216とを備えている。
プライマリ固定シーブ212は、入力軸204の外周面から外周側に突き出して入力軸204に一体に設けられた円盤状の部材である。このプライマリ固定シーブ212には、外周側に向かうほどプライマリ可動シーブ214から離間する円錐状のテーパ面78がプライマリ可動シーブ214との対向面に形成されている。
プライマリ可動シーブ214は、入力軸204に軸心方向の相対移動可能且つ軸心C1まわりの相対回転不能にスプライン嵌合された内側筒部214aと、その内側筒部214aのプライマリ固定シーブ212側の一端部から外周側に突き出して一体に設けられた円盤部214bと、その円盤部214bの外周部からプライマリ固定シーブ214とは反対側に向けて軸心C1方向に突設された外側筒部214cとを有している。上記円盤部214bには、外周側に向かうほどプライマリ固定シーブ212から離間する円錐状のテーパ面80がプライマリ固定シーブ212との対向面に形成されている。上記テーパ面80は、プライマリ固定シーブ212のテーパ面78とともに第1プーリ溝64を形成している。
前記プライマリ油圧アクチュエータ216は、入力軸204のプライマリ可動シーブ214に対するプライマリ固定シーブ212とは反対側の一端部に配設されてプライマリ可動シーブ214と共に油密な油圧室84を形成するための有底円筒状のシリンダ部材218を備えている。シリンダ部材218は、その内周部が入力軸204に形成されている段付端面に嵌め付けられているスペーサ81と軸受54との間に挟まれることで軸心方向への移動が阻止されている屈曲形状の壁部218aと、その壁部218aの外周部からプライマリ可動シーブ214の外側筒部214cの外周側に周方向に連続して突設され、プライマリ可動シーブ214の外側筒部214cの外周面に対してオイルシールを介して摺動する筒部218bとを備えている。このシリンダ部材218とプライマリ可動シーブ214と入力軸204とによって油密に囲まれる空間には、油圧室84が形成される。この油圧室84には、トランスアクスルケース36に形成された第1油路86と、入力軸204の内周側に形成されて第1油路86に連通された第2油路88と、その第2油路88から入力軸204を径方向に貫通して形成された第3油路90とをそれぞれ通じて、前記オイルポンプ28から圧送された油圧が図示しない油圧制御回路により適宜調圧されて供給されるようになっている。
また油圧室84内には、スペーサ81とプライマリ可動シーブ214との間に介挿されて、プライマリ可動シーブ214をプライマリ固定シーブ212側へ付勢するスプリング220が設けられている。
このようなプライマリプーリ206では、油圧室84に供給される油圧に応じてプライマリ可動シーブ214が軸心C1方向においてプライマリ固定シーブ212に接近または離間して、第1プーリ溝64の溝幅が変化させられるようになっている。図6において、軸心C1の下側に実線で示すプライマリ可動シーブ214は、プライマリ固定シーブ212との間に形成される第1プーリ溝が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機18の変速比γが最小変速比γminとなる。また、軸心C1の上側に実線で示すプライマリ可動シーブ214は、プライマリ固定シーブ212との間に形成される第1プーリ溝64が最小溝幅Wmaxとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機18の変速比γが最大変速比γmaxとなる。
セカンダリプーリ210は、出力軸208の外周側に固設されたセカンダリ固定シーブ222(第2固定シーブ)と、そのセカンダリ固定シーブ222との間に第2プーリ溝65を形成するように、出力軸208に相対回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に設けられたセカンダリ可動シーブ224(第2可動シーブ)と、供給される油圧に応じてセカンダリ可動シーブ224を軸心C2方向に移動させてセカンダリ可動シーブ224とセカンダリ固定シーブ222とを接近または離間させることにより、第2プーリ溝65の溝幅を変化させるセカンダリ油圧アクチュエータ226とを備えている。
上記セカンダリ固定シーブ222は、出力軸208の外周面から外周側に突き出して出力軸208に一体に設けられた円盤状の部材である。このセカンダリ固定シーブ222には、外周側に向かうほどセカンダリ可動シーブ224から離間する円錐状のテーパ面98がセカンダリ可動シーブ94との対向面に形成されている。
前記セカンダリ可動シーブ224は、出力軸208に対して軸心方向の相対移動可能且つ軸心C2まわりの相対回転不能にスプライン嵌合された内側筒部224aと、その内側筒部224aのセカンダリ固定シーブ222側の一端部から外周側に突き出して一体に設けられた円盤状の円盤部224bと、その円盤部224bの外周部からセカンダリ固定シーブ222とは反対側に向けて軸心C2方向に突設された外側筒部224cとを有している。上記円盤部224bには、外周側に向かうほどセカンダリ固定シーブ222から離間する円錐状のテーパ面102がセカンダリ固定シーブ222との対向面に形成されている。上記テーパ面102は、セカンダリ固定シーブ222のテーパ面98とともに第2プーリ溝を形成している。
前記セカンダリ油圧アクチュエータ226は、出力軸208のセカンダリ可動シーブ224に対するセカンダリ固定シーブ222とは反対側の一端部に配設されてセカンダリ可動シーブ224と共に油密な油圧室108を形成するための有底円筒状のシリンダ部材228を備えている。シリンダ部材228は、その内周部が出力軸208に形成されている段付端面と円筒部材104との間に挟まれることで軸心方向への移動が阻止されている内周壁部228aと、その内周壁部228aの外周部からセカンダリ可動シーブ224の円盤部224b側に向けて延設された筒部228bと、その筒部228bのセカンダリ可動シーブ224側の一端部から周方向に連続して外周側に突設され、セカンダリ可動シーブ224の外側筒部224cの内周面に対してオイルシールを介して摺動する外周壁部228cとを備えている。このシリンダ部材228とセカンダリ可動シーブ224と出力軸208とによって油密に囲まれる空間には、油圧室108が形成されている。この油圧室108には、トランスアクスルケース36に形成された第4油路110と、出力軸208の内周側に形成されて第4油路110に連通された第5油路112と、その第5油路112から出力軸208を径方向に貫通して形成された第6油路114とをそれぞれ通じて、前記オイルポンプ28から圧送された油圧が図示しない油圧制御回路により適宜調圧されて供給されるようになっている。また、セカンダリ可動シーブ224の内側筒部224aの外周面に形成された段付端面とシリンダ部材228の内周壁部228aとの間には、セカンダリ可動シーブ224をセカンダリ固定シーブ222側へ付勢するコイルスプリング116が設けられている。
このようなセカンダリプーリ210では、油圧室108に供給される油圧に応じてセカンダリ可動シーブ224にセカンダリ固定シーブ222へ向かう推力すなわち伝動ベルト66を挟圧する方向の推力が付与されるようになっている。図6において、軸心C1の下側に実線で示すセカンダリプーリ210は、セカンダリ固定シーブ222とセカンダリ可動シーブ224との間に形成される第2プーリ溝65が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ210への巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機202の変速比γが最大変速比γmaxとなる。また、軸心C1の上側に実線で示すセカンダリプーリ210は、セカンダリ固定シーブ222とセカンダリ可動シーブ224との間に形成される第2プーリ溝65が最小溝幅Wmaxとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ210への巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機202の変速比γが最小変速比γminとなる。
図7は、図6のプライマリプーリ206のスプライン構造を説明するためにプライマリ可動シーブ214のスプライン嵌合部近傍を拡大した拡大断面図である。図7に示すように、プライマリ可動シーブ214の軸心方向において伝動ベルト66側の内周部には、雌スプライン230が軸心C1と平行に形成されている。この雌スプライン230が入力軸204の外周面232に形成されている雄スプライン234とスプライン嵌合されることで、プライマリ可動シーブ214が入力軸204と一体的に回転させられる。
また、プライマリ可動シーブ214の軸心方向において軸受54側すなわち伝動ベルト66と反対側には、内周面236が入力軸204の外周面232と摺接される円筒部238(第1円筒部)が形成されており、その円筒部238の内周面236と入力軸204の外周面232とが隙間なく摺接されることでシール部240が形成されている。シール部240は、円筒部238の内周面236と入力軸204の外周面232とが隙間なく金属接触されることで、プライマリ油圧アクチュエータ216の油圧室84へ供給される作動油の漏れを抑制するものである。
図8は、図6のセカンダリプーリ210のスプライン構造を説明するためにセカンダリ可動シーブ224のスプライン嵌合部近傍を拡大した拡大断面図である。図8において、セカンダリ可動シーブ224の軸心方向において伝動ベルト66側の内周面には、雌スプライン250が軸心C2と平行に形成されている。この雌スプライン250が出力軸208の外周面に形成されている雄スプライン252とスプライン嵌合されることで、セカンダリ可動シーブ224が出力軸208と一体的に回転させられる。
また、セカンダリ可動シーブ224の軸心方向においてシリンダ部材228側すなわち軸心方向において伝動ベルト66と反対側には、内周面256が出力軸208の外周面258と摺接される円筒部260(第2円筒部)が形成されており、その円筒部260の内周面256と出力軸208の外周面258とが隙間なく金属接触されることでシール部261が形成され、そのシール部261によって、セカンダリ油圧アクチュエータ226の油圧室108へ供給される作動油の漏れが抑制される。
また、前記セカンダリ可動シーブ224の雌スプライン250と円筒部260との境界には、段付部262が形成されている。また、出力軸208の雄スプライン252近傍においても段付部264が形成されており、前記段付端面262の端面263と段付部264の端面266が当接することで、セカンダリ可動シーブ224のセカンダリ固定シーブ222側への移動が阻止される。具体的には、図6において、軸心C2の下側に示す状態となり、この状態で第2プーリ溝の溝幅が最小溝幅Wminに規定される。この第2プーリ溝が最小溝幅Wminとなる位置において、ベルト式無段変速機202が最大変速比γmaxとなるように設定されており、段付部262、264は、ベルト式無段変速機202が最大小変速比γmaxとなるセカンダリ可動シーブ224の軸心方向の位置を規定する位置決め機構として機能する。なお、このとき、プライマリプーリ206においては、スプリング220によってプライマリ可動シーブ214がプライマリ固定シーブ214側に付勢されることで、伝動ベルト66が挟持される。
一方、セカンダリプーリ210の第2プーリ溝65の最小溝幅Wmaxは、セカンダリ可動シーブ224の軸心方向において軸受60側すなわちセカンダリ固定シーブ222と反対側の端面268がシリンダ部材228の内周壁部228aの端面と当接する位置に規定される。具体的には、図6において軸心C2の上側に示す状態となり、セカンダリ可動シーブ224がシリンダ部材228側に移動されることで、セカンダリ可動シーブ224の端面268がシリンダ部材228の内周壁部228aの端面と当接されて、セカンダリ可動シーブ224のシリンダ部材228側への移動が阻止されている。この第2プーリ溝65が最小溝幅Wmaxとなる位置において、ベルト式無段変速機202が最小変速比γminとなるように設定されており、セカンダリ可動シーブ224の端面268が内周壁部228aの端面と当接されることで、ベルト式無段変速機202の最小変速比が達成される。このように、本実施例では、ベルト式無段変速機202において最小変速比γminが達成されるセカンダリ可動シーブ224の位置を規定する機構、および、最大変速比γmaxが達成されるセカンダリ可動シーブ224の位置を規定する機構がセカンダリプーリ210側に設けられている。なお、第2プーリ溝65が最小溝幅Wminである場合には、伝動ベルト66の巻き掛け径の変化に応じて、プライマリプーリ206において第1プーリ溝64が最小溝幅Wmaxとなる。一方、第2プーリ溝65が最小溝幅Wmaxである場合には、伝動ベルト66の巻き掛け径の変化に応じて、プライマリプーリ206において第1プーリ溝64の最小溝幅Wminとなる。このように、セカンダリプーリ210に設けられている第2プーリ溝65の溝幅を規定する機械的な機構によって、第1プーリ溝64の最小溝幅Wminおよび最小溝幅Wmaxが規定される。なお、内周壁部228aが、本発明の第2可動シーブの軸心方向において前記第2固定シーブと反対側の端面が当接する所定の部材に対応しており、セカンダリ可動シーブ224の端面268および内周壁部228aの端面によって第2溝幅規定手段が構成される。
ここで、本実施例では、図7に示したようにプライマリプーリ206の雄スプライン234が形成されている部位を除いて、プライマリ可動シーブ224が軸心方向に移動する範囲において、入力軸204の軸径が一定に設定されている。例えば、入力軸204側には、第1プーリ溝64の最小溝幅Wmaxおよび最小溝幅Wminを規定する段付部等の機構が設けられていない。これは、ベルト式無段変速機202では、セカンダリプーリ210にベルト式無段変速機202の最小変速比γminおよび最大変速比γmaxを達成するためのセカンダリ可動シーブ224の位置決め機構が設定されているためである。
上記のように構成されるベルト式無段変速機202において、伝動ベルト66が狭圧される際には、前述の実施例と同様に、プライマリ可動シーブ214のシール部240およびセカンダリ可動シーブ224のシール部261に反力荷重すなわちラジアル荷重が大きく作用する。これに対して、プライマリプーリ206のシール部240は、円筒部238の内周面236と入力軸204の外周面232とが接触されているため、スプライン歯が形成されている場合と比較して接触面積が大きくなり、大きなラジアル荷重を受けることが可能となる。また、セカンダリプーリ210のシール部261は、円筒部260の内周面256と出力軸208の外周面258とが接触されているため、スプライン歯が形成されている場合と比較して接触面積大きくなり、大きなラジアル荷重を受けることが可能となる。したがって、接触面積を確保するためにシール部240、261の軸心方向の長さを延長することなくシール部240、261に作用する荷重を受けることができる。
また、プライマリプーリ206のシール部240の軸心方向の長さすなわちシール幅は、円筒部236が摺接する範囲において入力軸204に段付部等が形成されないため、プライマリ可動シーブ214の軸心方向の位置の変化に拘わらず変化しない。したがって、シール部240からの作動油の漏れ量は、プライマリ油圧アクチュエータ216の油圧室84の油圧に応じた漏れ量となり、漏れ量を油圧に基づいて予測することで、油圧制御の制御性を向上させることができる。同様に、セカンダリプーリ210のシール部261の軸心方向の長さすなわちシール幅は、円筒部261が摺接する範囲において出力軸208に段付部等が形成されないため、セカンダリ可動シーブ224の軸心方向の位置の変化に拘わらず変化しない。したがって、シール部261からの作動油の漏れ量は、セカンダリ油圧アクチュエータ226の油圧室108の油圧に応じた漏れ量となり、漏れ量を油圧に応じて予測するで、油圧制御の制御性を向上させることができる。
また、本実施例では、セカンダリプーリ210側にベルト式無段変速機202の最小変速比γmin時および最大変速比γmax時の位置決め構造が設定されているため、プライマリプーリ206において、それらの位置決め構造が設けられていない。したがって、図7に示すように、プライマリ可動シーブ214が軸心方向に摺動する範囲では、入力軸204は、雄スプライン234が形成されている範囲を除いてその軸径が一定とされている。これより、段付部等が形成されることで入力軸204の軸径が細くなって入力軸204の強度が低下することが防止されている。或いは、入力軸204が段付部等を設けた分だけ軸径が大きくなり、入力軸204が径方向に大型化することが防止されている。
上述のように、本実施例によれば、セカンダリプーリ210に、セカンダリ可動シーブ224の移動を阻止して第2プーリ溝65の最小溝幅Wmaxを規定するためのシリンダ部材228が設けられ、出力軸208の外周面258およびセカンダリ可動シーブ224の内周面には、それぞれ段付部262、264が設けられ、セカンダリ可動シーブ224の段付部262の端面263が出力軸208の段付部264の端面266に当接する位置において、第2プーリ溝65の最小溝幅Wminが規定される。このようにすれば、プライマリプーリ206に第1プーリ溝64の最小溝幅Wminおよび最小溝幅Wmaxを規定する機械的な機構を設ける必要がなくなり、例えば入力軸204に第1プーリ溝64の最小溝幅Wminを規定するための段付部を設けることを防止することができる。
また、本実施例によれば、セカンダリ可動シーブ224の軸心方向においてセカンダリ固定シーブ222と反対側の端面268が、シリンダ部材228の内周壁部228aと当接することで、セカンダリ可動シーブ224の軸心方向においてセカンダリ固定シーブ222と反対側への移動が阻止される構造である。このようにすれば、セカンダリ可動シーブ224のセカンダリ固定シーブ222と反対側に形成される端面268が内周壁部228aと当接すると、セカンダリ可動シーブ224のそれ以上の軸心方向への移動が阻止されるため、第2プーリ溝65の最小溝幅Wmaxが既定される。
図9は、本発明の他の実施例である車両用動力伝達装置300の一部を示す断面図であり、図2および図6に対応するものである。本実施例の車両用動力伝達装置300には、ベルト式無段変速機302が備えられている。ベルト式無段変速機302は、一対の軸受54を介してトランスアクスルケース36によって軸心C1まわりの回転可能に支持されている入力軸304と、その入力軸304の外周側に設けられたプライマリプーリ(入力側溝幅可変プーリ)306と、入力軸304の平行に設けられた一対の軸受60を介してトランスアクスルケース36によって軸心C2回りの回転可能に支持された出力軸308と、その出力軸308の外周側に設けられたセカンダリプーリ310(出力側溝幅可変プーリ)と、プライマリプーリ306およびセカンダリプーリ310の第1プーリ溝64にそれぞれ巻き掛けられて両プーリ間において摩擦力により動力伝達を行う無端環状の伝動ベルトとを備えている
プライマリプーリ306は、入力軸304の外周側に固設された円盤状のプライマリ固定シーブ312(第1固定シーブ)と、そのプライマリ固定シーブ312との間に第1プーリ溝64を形成するように、入力軸304に相対回転不能且つ軸心方向の相相対移動可能に設けられたプライマリ可動シーブ314(第1可動シーブ)と、供給される油圧に応じてプライマリ可動シーブ314とプライマリ固定シーブ312とを接近または離間させることにより、第1プーリ溝の溝幅を変化させるプライマリ油圧アクチュエータ316とを備えている。
プライマリ固定シーブ312は、入力軸304の外周面から外周側に突き出して入力軸304と一体的に設けられた円盤状の部材である。このプライマリ固定シーブ312には、外周側に向かう程プライマリ可動シーブ314から離間する円錐状のテーパ面78がプライマリ可動シーブ314との対向面に形成されている。
プライマリ可動シーブ314は、入力軸304に軸心方向の相対移動可能且つ軸心C1まわりの相対回転不能にスプライン嵌合された内側筒部314aと、その内側筒部314aのプライマリ固定シーブ312側の一端部から外周側に突き出して一体に設けられた円盤部314bと、その円盤部314bの外周部からプライマリ固定シーブ314とは反対側に向けて軸心方向に突設された外側筒部314cとを有している。前記円盤部314bには、外周側に向かうほどプライマリ固定シーブ312から離間する円錐状のテーパ面80がプライマリ固定シーブ312との対向面に形成されている。上記テーパ面80は、プライマリ固定シーブ312のテーパ面78とともに第1プーリ溝64を形成している。
前記プライマリ油圧アクチュエータ316は、入力軸304のプライマリ可動シーブ314に対するプライマリ固定シーブ312とは反対側の一端部に配設されてプライマリ可動シーブ314と共に油密な油圧室84を形成するための有底円筒状のシリンダ部材318を備えている。シリンダ部材318は、その内周部が入力軸304に形成されている段付端面に嵌め付けられているスペーサ81と軸受54との間に挟まれることで軸心方向への移動が阻止されている屈曲形状の壁部318aと、その壁部318aの外周部からプライマリ可動シーブ314の外側筒部314cの外周側に周方向に連続して突設され、プライマリ可動シーブ314の外側筒部314cの外周面に対してオイルシールを介して摺動する筒部318bとを備えている。このシリンダ部材318とプライマリ可動シーブ314と入力軸304とによって油密に囲まれる空間には、油圧室84が形成される。この油圧室84には、トランスアクスルケース36に形成された第1油路86と、入力軸304の内周側に形成されて第1油路86に連通された第2油路88と、その第2油路88から入力軸304を径方向に貫通して形成された第3油路90とをそれぞれ通じて、前記オイルポンプ28から圧送された油圧が図示しない油圧制御回路により適宜調圧されて供給されるようになっている。
このようなプライマリプーリ306では、油圧室84に供給される油圧に応じてプライマリ可動シーブ314が軸心方向においてプライマリ固定シーブ312に接近または離間して、第1プーリ溝64の幅が変化させられるようになっている。図9において、軸心C1の下側に実線で示すプライマリ可動シーブ314は、プライマリ固定シーブ312との間に形成される第1プーリ溝64が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機302の変速比γが最小変速比γminとなる。また、軸心C1の上側に実線で示すプライマリ可動シーブ314は、プライマリ固定シーブ312との間に形成される第1プーリ溝64が最小溝幅Wmaxとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機302の変速比γが最大変速比γmaxとなる。
セカンダリプーリ310は、出力軸308の外周側に固設されたセカンダリ固定シーブ322(第2固定シーブ)と、そのセカンダリ固定シーブ322との間に第2プーリ溝65を形成するように、出力軸308に相対回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に設けられたセカンダリ可動シーブ324(第2可動シーブ)と、供給される油圧に応じてセカンダリ可動シーブ324を軸心方向に移動させてセカンダリ可動シーブ324とセカンダリ固定シーブ322とを接近または離間させることにより、第2プーリ溝65の溝幅を変化させるセカンダリ油圧アクチュエー326とを備えている。
上記セカンダリ固定シーブ322は、出力軸308の外周面から外周側に突き出して出力軸308に一体に設けられた円盤状の部材である。このセカンダリ固定シーブ322には、外周側に向かうほどセカンダリ可動シーブ324から離間する円錐状のテーパ面98がセカンダリ可動シーブ324との対向面に形成されている。
前記セカンダリ可動シーブ324は、出力軸308に対して軸心方向の相対移動可能且つ軸心C2まわりの相対回転不能にスプライン嵌合された内側筒部324aと、その内側筒部324aのセカンダリ固定シーブ322側の一端部から外周側に突き出して一体に設けられた円盤状の円盤部324bと、その円板部324bの外周部からセカンダリ固定シーブ322とは反対側に向けて軸心C2方向に突設された外側筒部324cとを有している。上記円盤部324bには、外周側に向かうほどセカンダリ固定シーブ322から離間する円錐状のテーパ面102がセカンダリ固定シーブ322との対向面に形成されている。上記テーパ面102は、セカンダリ固定シーブ422のテーパ面98とともに第2プーリ溝65を形成している。
前記セカンダリ油圧アクチュエータ326は、出力軸308のセカンダリ可動シーブ324に対するセカンダリ固定シーブ322とは反対側の一端部に配設されてセカンダリ可動シーブ324と共に油密な油圧室108を形成するための有底円筒状のシリンダ部材328を備えている。シリンダ部材328は、その内周部が出力軸308に形成されている段付端面と円筒部材104との間に挟まれることで軸心方向への移動が阻止されている内周壁部328aと、その内周壁部328aの外周部からセカンダリ可動シーブ324の円盤部324b側に向けて延設された筒部328bと、その筒部328bのセカンダリ可動シーブ324側の一端部から周方向に連続して外周側に突設され、セカンダリ可動シーブ324の外側筒部324cの内周面に対してオイルシールを介して摺動する外周壁部328cとを備えている。このシリンダ部材328とセカンダリ可動シーブ324と出力軸308とによって油密に囲まれる空間には、油圧室108が形成されている。この油圧室108には、トランスアクスルケース36に形成された第4油路110と、出力軸308の内周側に形成されて第4油路110に連通された第5油路112と、その第5油路112から出力軸308を径方向に貫通して形成された第6油路114とをそれぞれ通じて、前記オイルポンプ28から圧送された油圧が図示しない油圧制御回路により適宜調圧されて供給されるようになっている。また、セカンダリ可動シーブ324の内側筒部324aの外周面に形成された段付端面とシリンダ部材328の内周壁部328aとの間には、セカンダリ可動シーブ324をセカンダリ固定シーブ322側へ付勢するコイルスプリング116が設けられている。
このようなセカンダリプーリ310では、油圧室108に供給される油圧に応じてセカンダリ可動シーブ324にセカンダリ固定シーブ322へ向かう推力すなわち伝動ベルト66を挟圧する方向の推力が付与されるようになっている。図9において、軸心C1の下側に実線で示すセカンダリプーリ310は、セカンダリ固定シーブ322とセカンダリ可動シーブ324との間に形成される第2溝幅5が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ310への巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機302の変速比γが最大変速比γmaxとなる。また、軸心C1の上側に実線で示すセカンダリプーリ310は、セカンダリ固定シーブ322とセカンダリ可動シーブ324との間に形成される第2プーリ溝65が最大幅とされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ310への巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機303が最小変速比γminとなる。
図10は、図9のプライマリプーリ306のスプライン構造を説明するためにプライマリ可動シーブ324のスプライン嵌合部近傍を拡大した拡大断面図である。図10において、プライマリ可動シーブ314の軸心方向において伝動ベルト66側の内周面には雌スプライン330が軸心C1と平行に形成されている。この雌スプライン330が入力軸304の外周面332に形成されている雄スプライン334とスプライン嵌合されることで、プライマリ可動シーブ314が入力軸304と一体的に回転させられる。
また、プライマリ可動シーブ314の軸心方向において軸受54側すなわち伝動ベルト66と反対側には、内周面336が入力軸304の外周面332と摺接される円筒部338(第1円筒部)が形成されており、その円筒部338の内周面336と入力軸304の外周面332とが隙間なく摺接されることでシール部340が形成されている。シール部340は、円筒部338の内周面336と入力軸304の外周面332とが隙間なく金属接触されることで、プライマリ油圧アクチュエータ316の油圧室84へ供給される作動油の漏れを抑制するものである。
図11は、図9のセカンダリプーリ310のスプライン構造を説明するためにセカンダリ可動シーブ324のスプライン嵌合部近傍を拡大した拡大断面図である。図11において、セカンダリ可動シーブ324の軸心方向において伝動ベルト66側の内周面には、雌スプライン350が軸心C2と平行に形成されている。この雌スプライン350が出力軸308の外周面358に形成されている雄スプライン352とスプライン嵌合されることで、セカンダリ可動シーブ324が出力軸308と一体的に回転させられる。
また、セカンダリ可動シーブ324の軸心方向においてシリンダ部材328側すなわち軸心方向において伝動ベルト66と反対側には、内周面356が出力軸308の外周面358と摺接される円筒部360(第2円筒部)が形成されており、その円筒部360の内周面356と出力軸308の外周面358とが隙間なく金属接触されることでシール部361が形成される。このシール部361によって、セカンダリ油圧アクチュエータ326の油圧室108へ供給される作動油の漏れが抑制される。
本実施例では、ベルト式無段変速機302のプライマリプーリ306において第1プーリ溝64の最小溝幅Wmaxが規定されると共に、セカンダリプーリ310において第2プーリ溝の最小溝幅Wminが規定される。具体的には、第1プーリ溝64が最小溝幅Wmaxの状態は、図9において軸心C1の上側に示す状態となり、プライマリ可動シーブ314のシリンダ部材318側の端面362がスペーサ81の端面に当接させられることで、プライマリ可動シーブ314のシリンダ部材318側(プライマリ固定シーブ314と反対側)への移動が阻止される。このとき、第1プーリ溝64が最小溝幅Wmaxに規定される。この状態において、伝動ベルト66のプライマリプーリ306への巻掛け半径が最小となり、ベルト式無段変速機302の変速比γが最大変速比γmaxとなる。なお、なお、スペーサ81が、本発明の第1可動シーブの軸心方向において前記第1固定シーブと反対側の端面が当接する所定の部材に対応しており、プライマリ可動シーブ314の端面362とそのスペーサ81の端面によって、本発明の第1溝幅規定手段が構成される。
一方、第2プーリ溝が最小溝幅Wmaxの状態は、図9において、軸心C2の上側に示す状態となり、セカンダリ可動シーブ324のシリンダ部材328側(セカンダリ固定シーブ322と反対側)の端面364がシリンダ部材328の内周壁部328aの端面と当接させられることで、セカンダリ可動シーブ324のシリンダ部材328側(セカンダリ固定シーブ322と反対側)への移動が阻止される。このとき、第2プーリ溝が最小溝幅Wmaxに規定される。この状態において、伝動ベルト66のセカンダリプーリへの巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機302の変速比γが最小変速比γminとなる。このように、本実施例では、プライマリプーリ306においてベルト式無段変速機302の最大変速比γmaxが達成されるプライマリ可動シーブ314の位置が規定され、セカンダリプーリ310においてベルト式無段変速機302の最小変速比γminが達成されるセカンダリ可動シーブ324の位置が規定される。なお、第1プーリ溝64が最小溝幅Wmaxである場合には、伝動ベルト66の巻き掛け径の変化に応じて、セカンダリプーリ310において第2プーリ溝64の溝幅が最小溝幅Wminに規定される。一方、第2プーリ溝65が最小溝幅Wmaxである場合には、伝動ベルト66の巻き掛け径の変化に応じて、プライマリプーリ306において第1プーリ溝64の溝幅が最小溝幅Wminに規定される。このようにして、第1プーリ溝64の最小溝幅Wminおよび第2プーリ溝65の最小溝幅Wminが規定される。なお、内周壁部328aが、本発明の第2可動シーブの軸心方向において前記第2固定シーブと反対側の端面が当接する所定の部材に対応しており、セカンダリ可動シーブ324の端面364および内周壁部328aの端面によって第2溝幅規定手段が構成される。
上記のように構成されるベルト式無段変速機302において、伝動ベルト66が狭圧される際には、前述の実施例と同様に、プライマリ可動シーブ314のシール部340およびセカンダリ可動シーブ324のシール部361に反力荷重すなわちラジアル荷重が大きく作用する。これに対して、プライマリプーリ306のシール部340は、円筒部338の内周面336と入力軸304の外周面332とが接触されているため、例えば円筒部338にスプライン歯が形成されている場合と比較して接触面積が大きくなり、大きな荷重を受けることが可能となる。また、セカンダリプーリ310のシール部361は、円筒部360の内周面356と出力軸308の外周面358とが接触されているため、スプライン歯が形成されている場合と比較して接触面積大きくなり、大きな荷重を受けることが可能となる。したがって、接触面積を確保するためにシール部340、361の軸心方向の長さを延長することなくシール部340、361に作用する荷重を受けることができる。
また、プライマリプーリ306のシール部340の軸心方向の長さすなわちシール幅は、円筒部336が摺接する範囲において入力軸304に段付部等が形成されないため、プライマリ可動シーブ314の軸心方向の位置の変化に拘わらず変化しない。したがって、シール部340からの作動油の漏れ量は、プライマリ油圧アクチュエータ316の油圧室84の油圧に応じた漏れ量となり、漏れ量を油圧に基づいて予測することで、プライマリプーリ306の制御性を向上させることができる。同様に、セカンダリプーリ310のシール部361の軸心方向の長さすなわちシール幅は、円筒部361が摺接する範囲において出力軸308に段付部等が形成されないため、セカンダリ可動シーブ324の軸心方向の位置の変化に拘わらず変化しない。したがって、シール部361からの作動油の漏れ量は、セカンダリ油圧アクチュエータ326の油圧室108の油圧に応じた漏れ量となり、漏れ量を油圧に応じて予測するで、セカンダリプーリ310の制御性を向上させることができる。
また、本実施例では、プライマリプーリ306において、円筒部338が軸心方向に摺動する範囲では、雄スプライン330が形成されている部位を除いて入力軸304の軸径が一定とされている。これより、段付部等が形成されることで入力軸304が細くなって入力軸304の強度が低下することが防止される。或いは、段付部等が形成されることで、その段付部分だけ入力軸304の軸径が大きくなることが防止される。さらに、セカンダリプーリ310において、円筒部360が軸心方向に摺動する範囲では、出力軸308の軸径が一定とされている。これより、段付部等が形成されることで出力軸308が細くなって出力軸308の強度が低下することが防止される。或いは、段付部等が形成されることで、その段付部形成分だけ出力軸308の軸径が大きくなることが防止される。
上述のように、本実施例によれば、プライマリプーリ306に、第1プーリ溝の最小溝幅Wmaxを規定するスペーサ81が設けられると共に、セカンダリプーリ310に、第2プーリ溝の最小溝幅Wmaxを規定するシリンダ部材328の内周壁部328aが設けられる。このようにすれば、プライマリプーリ306の第1プーリ溝64の最小溝幅Wminを規定するための段付部、およびセカンダリプーリ310の第2プーリ溝65の最小溝幅Wminを規定するための段付部を設ける必要がなくなるため、例えば入力軸304および出力軸308にそれぞれプーリ溝の最小溝幅Wminを規定するための段付部を設けることを防止することができる。
図12は、本発明の他の実施例である車両用動力伝達装置500の一部を示す断面図であり、図2等に対応するものである。本実施例の車両用動力伝達装置500には、ベルト式無段変速機502が備えられている。ベルト式無段変速機500は、一対の軸受54を介してトランスアクスルケース36によって軸心C1まわりの回転可能に支持された入力軸504と、その入力軸504の外周側に設けられたプライマリプーリ(入力側溝幅可変プーリ)506と、入力軸504と平行に設けられ一対の軸受60を介してトランスアクスルケース36によって軸心C2まわりの回転可能に支持された出力軸508と、その出力軸508の外周側に設けられたセカンダリプーリ(出力側溝幅可変プーリ)510と、プライマリプーリ506およびセカンダリプーリ510にそれぞれ巻き掛けられて両プーリ間において摩擦力により動力伝達を行う良く知られた無端環状の伝動ベルト66とを備えている。
プライマリプーリ506は、入力軸504の外周側に固設された円盤状のプライマリ固定シーブ512(第1固定シーブ)と、そのプライマリ固定シーブ512との間に前記第1プーリ溝64を形成するように、入力軸504に相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能に設けられたプライマリ可動シーブ514(第1可動シーブ)と、供給される油圧に応じてプライマリ可動シーブ514を軸心C1方向に移動させてプライマリ可動シーブ514とプライマリ固定シーブ512とを接近または離間させることにより、第1プーリ溝64の溝幅を変化させるプライマリ油圧アクチュエータ516とを備えている。
プライマリ固定シーブ512は、入力軸504の外周面から外周側に突き出して入力軸504に一体に設けられた円盤状の部材である。このプライマリ固定シーブ512には、外周側に向かうほどプライマリ可動シーブ514から離間する円錐状のテーパ面78がプライマリ可動シーブ514との対向面に形成されている。
プライマリ可動シーブ514は、入力軸504に軸心方向の相対移動可能且つ軸心C1まわりの相対回転不能にスプライン嵌合された内側筒部514aと、その内側筒部514aのプライマリ固定シーブ512側の一端部から外周側に突き出して一体に設けられた円盤部514bと、その円盤部514bの外周部からプライマリ固定シーブ514とは反対側に向けて軸心C1方向に突設された外側筒部514cとを有している。上記円盤部514bには、外周側に向かうほどプライマリ固定シーブ512から離間する円錐状のテーパ面80がプライマリ固定シーブ512との対向面に形成されている。上記テーパ面80は、プライマリ固定シーブ512のテーパ面78とともに第1プーリ溝64を形成している。
前記プライマリ油圧アクチュエータ516は、入力軸504のプライマリ可動シーブ514に対するプライマリ固定シーブ512とは反対側の一端部に配設されてプライマリ可動シーブ514と共に油密な油圧室84を形成するための有底円筒状のシリンダ部材518を備えている。シリンダ部材518は、その内周部が入力軸504に形成されている段付端面に嵌め付けられているスペーサ81と軸受54との間に挟まれることで軸心方向への移動が阻止されている屈曲形状の壁部518aと、その壁部518aの外周部からプライマリ可動シーブ514の外側筒部514cの外周側に周方向に連続して突設され、プライマリ可動シーブ514の外側筒部514cの外周面に対してオイルシールを介して摺動する筒部518bとを備えている。このシリンダ部材518とプライマリ可動シーブ514と入力軸504とによって油密に囲まれる空間には、油圧室84が形成される。この油圧室84には、トランスアクスルケース36に形成された第1油路86と、入力軸504の内周側に形成されて第1油路86に連通された第2油路88と、その第2油路88から入力軸504を径方向に貫通して形成された第3油路90とをそれぞれ通じて、前記オイルポンプ28から圧送された油圧が図示しない油圧制御回路により適宜調圧されて供給されるようになっている。
このようなプライマリプーリ506では、油圧室84に供給される油圧に応じてプライマリ可動シーブ514が軸心C1方向においてプライマリ固定シーブ512に接近または離間して、第1プーリ溝64の幅が変化させられるようになっている。図12において、軸心C1の下側に実線で示すプライマリ可動シーブ514は、プライマリ固定シーブ512との間に形成される第1プーリ溝64が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機502の変速比γが最小変速比γminとなる。また、軸心C1の上側に実線で示すプライマリ可動シーブ514は、プライマリ固定シーブ512との間に形成される第1プーリ溝64が最小溝幅Wmaxとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機502の変速比γが最大変速比γmaxとなる。
セカンダリプーリ510は、出力軸508の外周側に固設されたセカンダリ固定シーブ522(第2固定シーブ)と、そのセカンダリ固定シーブ522との間に前記第2プーリ溝65を形成するように、出力軸508に相対回転不能且つ軸心C2方向に相対移動可能に設けられたセカンダリ可動シーブ524(第2可動シーブ)と、供給される油圧に応じてセカンダリ可動シーブ524を軸心方向に移動させてセカンダリ可動シーブ524とセカンダリ固定シーブ522とを接近または離間させることにより、第2プーリ溝65の溝幅を変化させるセカンダリ油圧アクチュエータ526とを備えている。
上記セカンダリ固定シーブ522は、出力軸508の外周面から外周側に突き出して出力軸508に一体に設けられた円盤状の部材である。このセカンダリ固定シーブ522には、外周側に向かうほどセカンダリ可動シーブ524から離間する円錐状のテーパ面98がセカンダリ可動シーブ524との対向面に形成されている。
前記セカンダリ可動シーブ524は、出力軸508に対して軸心方向の相対移動可能且つ軸心C2まわりの相対回転不能にスプライン嵌合された内側筒部524aと、その内側筒部524aのセカンダリ固定シーブ522側の一端部から外周側に突き出して一体に設けられた円盤状の円盤部524bと、その円盤部524bの外周部からセカンダリ固定シーブ522とは反対側に向けて軸心C2方向に突設された外側筒部524cとを有している。上記円盤部224bには、外周側に向かうほどセカンダリ固定シーブ522から離間する円錐状のテーパ面102がセカンダリ固定シーブ522との対向面に形成されている。上記テーパ面102は、セカンダリ固定シーブ522のテーパ面98とともに第2プーリ溝65を形成している。
前記セカンダリ油圧アクチュエータ526は、出力軸508のセカンダリ可動シーブ524に対するセカンダリ固定シーブ522とは反対側の一端部に配設されてセカンダリ可動シーブ524と共に油密な油圧室108を形成するための有底円筒状のシリンダ部材528を備えている。シリンダ部材528は、その内周部が出力軸508に形成されている段付端面と円筒部材104との間に挟まれることで軸心方向への移動が阻止されている内周壁部528aと、その内周壁部528aの外周部からセカンダリ可動シーブ524の円盤部524b側に向けて延設された筒部528bと、その筒部528bのセカンダリ可動シーブ524側の一端部から周方向に連続して外周側に突設され、セカンダリ可動シーブ524の外側筒部524cの内周面に対してオイルシールを介して摺動する外周壁部528cとを備えている。このシリンダ部材528とセカンダリ可動シーブ524と出力軸508とによって油密に囲まれる空間には、油圧室108が形成されている。この油圧室108には、トランスアクスルケース36に形成された第4油路110と、出力軸508の内周側に形成されて第4油路110に連通された第5油路112と、その第5油路112から出力軸508を径方向に貫通して形成された第6油路114とをそれぞれ通じて、前記オイルポンプ28から圧送された油圧が図示しない油圧制御回路により適宜調圧されて供給されるようになっている。また、セカンダリ可動シーブ524の内側筒部524aの外周面に形成された段付端面とシリンダ部材528の内周壁部528aとの間には、セカンダリ可動シーブ524をセカンダリ固定シーブ522側へ付勢するコイルスプリング116が設けられている。
このようなセカンダリプーリ510では、油圧室108に供給される油圧に応じてセカンダリ可動シーブ524にセカンダリ固定シーブ522へ向かう推力すなわち伝動ベルト66を挟圧する方向の推力が付与されるようになっている。図12において、軸心C1の下側に実線で示すセカンダリプーリ510は、セカンダリ固定シーブ522とセカンダリ可動シーブ524との間に形成される第2プーリ溝65が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ510への巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機502の変速比γが最大変速比γmaxとなる。また、軸心C1の上側に実線で示すセカンダリプーリ510は、セカンダリ固定シーブ522とセカンダリ可動シーブ524との間に形成される第2プーリ溝65が最小溝幅Wmaxとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ510への巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機502の変速比γが最小変速比γminとなる。
図13は、図12のプライマリプーリ506のスプライン構造を説明するためにプライマリ可動シーブ514のスプライン嵌合部近傍を拡大した拡大断面図である。図13において、プライマリ可動シーブ214の軸心方向において伝動ベルト66側の内周部には雌スプライン530が軸心C1と平行に形成されている。この雌スプライン530が入力軸504の外周面532に形成されている雄スプライン534とスプライン嵌合されることで、プライマリ可動シーブ514が入力軸504と一体的に回転させられる。
また、プライマリ可動シーブ514の軸心方向において軸受54側すなわち伝動ベルト66と反対側には、内周面536が入力軸504の外周面532と摺接される円筒部538(第1円筒部)が形成されており、その円筒部538の内周面536と入力軸504の外周面532とが隙間なく摺接されるシール部540が形成されている。シール部540は、円筒部538の内周面536と入力軸504の外周面532とが隙間なく金属接触されることで、プライマリ油圧アクチュエータ516の油圧室84へ供給される作動油の漏れを抑制するものである。
図14は、図12のセカンダリプーリ510のスプライン構造を説明するためにセカンダリ可動シーブ524のスプライン嵌合部近傍を拡大した拡大断面図である。図14において、セカンダリ可動シーブ524の軸心方向において伝動ベルト66側の内周面には、雌スプライン550が軸心C2と平行に形成されている。この雌スプライン550が出力軸508の外周面に形成されている雄スプライン552とスプライン嵌合されることで、セカンダリ可動シーブ524が出力軸508と一体的に回転させられる。
また、セカンダリ可動シーブ524の軸心方向においてシリンダ部材528側すなわち軸心方向において伝動ベルト66と反対側には、内周面556が出力軸508の外周面558と摺接される円筒部560(第2円筒部)が形成されており、その円筒部560の内周面556と出力軸508の外周面558とが隙間なく金属接触されることでシール部561が形成され、セカンダリ油圧アクチュエータ526の油圧室108へ供給される作動油の漏れを抑制する。
セカンダリ可動シーブ524の雌スプライン550と円筒部560との境界には、段付端面562が形成されている。また、出力軸508の雄スプライン552近傍においても段付端面564が形成されており、前記段付部562の端面563と段付部564の端面565が当接することで、ベルト式無段変速機502の最大変速比γmaxが達成されるセカンダリ可動シーブ524の位置が規定される。具体的には、図12において軸心C2の下側に示す状態となり、セカンダリ可動シーブ524の段付端面562の端面563と出力軸508の段付端面564の端面565とが当接されることで、セカンダリ可動シーブ524のセカンダリ固定シーブ522側への移動が阻止されている。この状態において、第2プーリ溝65が最小溝幅Wminに規定され、ベルト式無段変速機502が最大変速比γmaxとなる。
また、本実施例では、ベルト式無段変速機502の最小変速比γminの位置決めが、油圧制御によって実行される。具体的には、プライマリプーリ506の油圧室84およびセカンダリプーリ510の油圧室108に供給される油圧を予め設定された油圧に制御することで、セカンダリプーリ510において第2プーリ溝65の最小溝幅Wmaxが規定され、ベルト式無段変速機502が最小変速比γminとなる。上記のように、セカンダリプーリ510の第2プーリ溝65の最小溝幅Wmaxを油圧制御によって規定することもできる。なお、本実施例においては、油圧制御よって第2プーリ溝65の最小溝幅Wmaxを規定する手段が、本発明の第2溝幅規定手段となる。
上記のように構成されるベルト式無段変速機502であっても、前述した各実施例と同様の効果を得ることができる。なお、本実施例では、セカンダリプーリ510の最小溝幅Wmaxを油圧制御によって規定したが、プライマリプーリ506の第1プーリ溝64の最小溝幅Wmaxを油圧制御よって規定することもできる。
図3に示すプライマリプーリ58において、第1プーリ溝64の最小溝幅Wminの位置を、プライマリ可動シーブ74に形成されている段付端面134と入力軸56に形成されている段付端面136とが当接する位置に規定していたが、図15に示すように、第1プーリ溝64の最小溝幅Wminの位置を、プライマリ可動シーブ74に形成されている雌スプライン120の端面580と入力軸56に形成されている雄スプライン122の端面582とが当接する位置に規定しても構わない。ここで、プライマリ可動シーブ74の端面580とは、プライマリ可動シーブ74の雌スプライン120と円筒部130との境界に形成される端面である。また、入力軸56の端面582とは、入力軸56に形成されている雄スプライン122の伝動ベルト66とは反対側(軸受54側)の端面である。プライマリ可動シーブの端面580が入力軸56の雄スプライン122の端面582と当接されると、プライマリ可動シーブ74のプライマリ固定シーブ72側への移動が阻止される。この位置がプライマリプーリ58の第1プーリ溝64が最小溝幅Wminとなる位置に規定される。この状態においてベルト式無段変速機18が最小変速比γminとなるように設定される。なお、端面580および端面582は、お互いの端面が乗り越えることのないように、それぞれ軸心C1に対して垂直に形成されている。また、端面580および端面582の径方向の高さも同様に、お互いの端面が乗り越えない寸法に設計されている。
これより、プライマリプーリ58の第1プーリ溝64の最小溝幅Wminを規定するに際して、プライマリ可動シーブ74および入力軸56においても段付部を設ける必要がなくなり、特に、入力軸56の強度低下、或いは、段付部を設けることによる軸径増加を防止することができる。すなわち、プライマリプーリ58およびセカンダリプーリ62共に段付部をなくすことができる。さらに、段付部が形成される場合、例えば図3に示す段付部134と段付部136との間では、プライマリ可動シーブ74と入力軸56との間に間隙が形成され、伝動ベルト66を挟持した際に発生するラジアル荷重を受けない部位が形成されるが、本実施例では、プライマリ可動シーブ74と入力軸56とが軸心方向において何れの部位においても接触するため、ラジアル荷重を受けない無駄な部位が形成されない。したがって、ラジアル荷重を受け持つ面積が増加するに従い、その面積確保のためにプライマリプーリ58を軸心方向に延長することが防止される。
なお、上記構成は、プライマリプーリ58だけでなく、セカンダリプーリにおいても適用することができる。例えば、図11のセカンダリプーリ310において、セカンダリ可動シーブ324の雌スプライン350と円筒部360との間に形成される端面を、出力軸308の雄スプライン352の軸心方向においてシリンダ部材328側の端面とを当接させる構成とし、その当接させた位置が第2プーリ溝56の最小溝幅Wminに規定される。このように構成されることで、セカンダリプーリにおいても段付部等を設けることなく、第2プーリ溝56の最小溝幅Wminを規定することができる。すなわち、プライマリプーリおよびセカンダリプーリ共に段付部をなくすことができる。なお、この場合においても、互いの端面が乗り越えることのないように、それぞれの端面が軸心C2に対して垂直に形成され、その端面の径方向の高さも同様に、互いの端面が乗り越えない寸法に設計されている。
上述のように、本実施例によれば、プライマリ可動シーブ74がプライマリ固定シーブ72側に移動した際には、プライマリ可動シーブ74の内周部に形成されている雌スプライン120と円筒部130との境界に形成される端面580が、入力軸56に形成されている雄スプライン122の端面582と当接する位置において、前記第1シーブ溝の最小溝幅Wminが規定される構成とすることができる。このようにすれば、プライマリ可動シーブ74に形成される端面580と入力軸56の雄スプライン122に形成される端面582とが当接する位置で第1プーリ溝64の最小溝幅Wminを規定することで、入力軸56およびプライマリ可動シーブ74に段付部を設けることなく、第1プーリ溝64の最小溝幅Wminを規定することができる。
また、本実施例によれば、セカンダリ可動シーブ324がセカンダリ固定シーブ322側に移動した際には、セカンダリ可動シーブ324の内周部に形成されている雌スプライン350と円筒部360との境界に形成される端面が、出力軸308に形成されている雄スプライン352の端面と当接する位置において、第2シーブ溝65の最小溝幅Wminが既定される構成とすることができる。このようにすれば、セカンダリ可動シーブ324に形成される端面と出力軸308の雄スプライン352に形成される端面とが当接する位置において、第2プーリ溝65の最小溝幅Wminを規定することで、出力軸308およびセカンダリ可動シーブ324に段付部を設けることなく、第2プーリ溝の最小溝幅Wminを規定することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例において、セカンダリプーリ510の第2プーリ溝65の最小溝幅Wmaxを油圧制御よって規定するとしたが、例えばプライマリプーリ514の第1プーリ溝64の最小溝幅Wmaxを油圧制御によって規定する構成であっても構わない。さらには、第1プーリ溝64の最小溝幅Wmaxおよび第2プーリ溝65の最大溝幅Wmaxの両方を油圧によって制御する構成であっても構わない。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
18、202、302、502:ベルト式無段変速機
40、208、308、508:出力軸
56、204、304、504:入力軸
64:第1プーリ溝
65:第2プーリ溝
66:伝動ベルト
72、212、312、512:プライマリ固定シーブ(第1固定シーブ)
74、214、314、514:プライマリ可動シーブ(第1可動シーブ)
81:スペーサ(第1溝幅規定手段、所定の部材)
92、222、322、522:セカンダリ固定シーブ(第2固定シーブ)
94、224、324、524:セカンダリ可動シーブ(第2可動シーブ)
120、140、230、250、330、350、530、550:雌スプライン
122、142、234、252、334、352、534、552:雄スプライン
130、238、338、538:円筒部(第1円筒部)
134、136、262、264、562、564:段付部
150、260、360、560:円筒部(第2円筒部)
228a、328a:内周壁部(第2溝幅規定手段、所定の部材)
40、208、308、508:出力軸
56、204、304、504:入力軸
64:第1プーリ溝
65:第2プーリ溝
66:伝動ベルト
72、212、312、512:プライマリ固定シーブ(第1固定シーブ)
74、214、314、514:プライマリ可動シーブ(第1可動シーブ)
81:スペーサ(第1溝幅規定手段、所定の部材)
92、222、322、522:セカンダリ固定シーブ(第2固定シーブ)
94、224、324、524:セカンダリ可動シーブ(第2可動シーブ)
120、140、230、250、330、350、530、550:雌スプライン
122、142、234、252、334、352、534、552:雄スプライン
130、238、338、538:円筒部(第1円筒部)
134、136、262、264、562、564:段付部
150、260、360、560:円筒部(第2円筒部)
228a、328a:内周壁部(第2溝幅規定手段、所定の部材)
【0006】
車両用ベルト式無段変速機であって、(b)前記プライマリプーリの第1可動シーブの内周部に形成される前記雌スプラインは、前記伝動ベルトが前記第1プーリ溝に巻き掛けられた状態において、軸心方向の伝動ベルト側に形成される一方、その第1可動シーブの軸心方向の伝動ベルト側と反対側には、内周面が前記入力軸の外周面に摺接される円筒状の第1円筒部が形成されており、(c)前記セカンダリプーリの第2可動シーブの内周部に形成される前記雌スプラインは、前記伝動ベルトが前記第2プーリ溝に巻き掛けられた状態において、軸心方向の伝動ベルト側に形成される一方、その第2可動シーブの軸心方向の伝動ベルト側と反対側には、内周面が前記出力軸の外周面に摺接される円筒状の第2円筒部が形成されており、(d)前記プライマリプーリに設けられて第1プーリ溝の最大溝幅を規定するための第1溝幅規定手段、および、前記セカンダリプーリに設けられて第2プーリ溝の最大溝幅を規定するための第2溝幅規定手段の少なくとも一方が設けられており、(e)前記入力軸および前記出力軸のうち、前記第1溝幅規定手段または前記第2溝幅規定手段が設けられた一方の軸とは反対側の他方の軸は、前記雄スプラインが形成されている部位を除いて、前記第1可動シーブまたは前記第2可動シーブが軸心方向に摺動する範囲において軸径が等しくされていることを特徴とする。
発明の効果
[0016]
このようにすれば、プライマリプーリに第1溝幅規定手段が設けられた場合、第1プーリ溝の最大溝幅が規定される。ここで、さらにプライマリプーリに第1プーリ溝の最小溝幅を規定するよく知られた段付部が入力軸および第1可動シーブに設けられれば、セカンダリプーリの第2プーリ溝の最小溝幅および最大溝幅は、プライマリプーリの最小溝幅および最大溝幅に応じて一義的に決定される。したがって、セカンダリプーリにおいて、第2プーリ溝の最小溝幅および最大溝幅を規定する段付部を設ける必要がなくなるため、出力軸の軸径が段付部を設ける分だけ大きくなることが防止される。
[0017]
また、セカンダリプーリに第2溝幅規定手段が設けられた場合、第2プーリ溝の最大溝幅が規定される。ここで、さらにセカンダリプーリに第2プーリ溝の最小溝幅を規定するよく知られた段付部が出力軸および第2可動シーブに設けられれば、プライマリプーリの第1プーリ溝の最小溝幅および最大溝幅は、セカンダリプーリの最小溝幅および最大溝幅に応じて一義的に決定
車両用ベルト式無段変速機であって、(b)前記プライマリプーリの第1可動シーブの内周部に形成される前記雌スプラインは、前記伝動ベルトが前記第1プーリ溝に巻き掛けられた状態において、軸心方向の伝動ベルト側に形成される一方、その第1可動シーブの軸心方向の伝動ベルト側と反対側には、内周面が前記入力軸の外周面に摺接される円筒状の第1円筒部が形成されており、(c)前記セカンダリプーリの第2可動シーブの内周部に形成される前記雌スプラインは、前記伝動ベルトが前記第2プーリ溝に巻き掛けられた状態において、軸心方向の伝動ベルト側に形成される一方、その第2可動シーブの軸心方向の伝動ベルト側と反対側には、内周面が前記出力軸の外周面に摺接される円筒状の第2円筒部が形成されており、(d)前記プライマリプーリに設けられて第1プーリ溝の最大溝幅を規定するための第1溝幅規定手段、および、前記セカンダリプーリに設けられて第2プーリ溝の最大溝幅を規定するための第2溝幅規定手段の少なくとも一方が設けられており、(e)前記入力軸および前記出力軸のうち、前記第1溝幅規定手段または前記第2溝幅規定手段が設けられた一方の軸とは反対側の他方の軸は、前記雄スプラインが形成されている部位を除いて、前記第1可動シーブまたは前記第2可動シーブが軸心方向に摺動する範囲において軸径が等しくされていることを特徴とする。
発明の効果
[0016]
このようにすれば、プライマリプーリに第1溝幅規定手段が設けられた場合、第1プーリ溝の最大溝幅が規定される。ここで、さらにプライマリプーリに第1プーリ溝の最小溝幅を規定するよく知られた段付部が入力軸および第1可動シーブに設けられれば、セカンダリプーリの第2プーリ溝の最小溝幅および最大溝幅は、プライマリプーリの最小溝幅および最大溝幅に応じて一義的に決定される。したがって、セカンダリプーリにおいて、第2プーリ溝の最小溝幅および最大溝幅を規定する段付部を設ける必要がなくなるため、出力軸の軸径が段付部を設ける分だけ大きくなることが防止される。
[0017]
また、セカンダリプーリに第2溝幅規定手段が設けられた場合、第2プーリ溝の最大溝幅が規定される。ここで、さらにセカンダリプーリに第2プーリ溝の最小溝幅を規定するよく知られた段付部が出力軸および第2可動シーブに設けられれば、プライマリプーリの第1プーリ溝の最小溝幅および最大溝幅は、セカンダリプーリの最小溝幅および最大溝幅に応じて一義的に決定
また、好適には、前記第1可動シーブが前記第1固定シーブ側に移動した際には、その第1可動シーブの内周部に形成されている前記雌スプラインと前記第1円筒部との境界に形成される端面が、前記入力軸に形成されている前記雄スプラインの端面と当接する位置において、前記第1プーリ溝の最小溝幅が規定されるものである。このようにすれば、第1可動シーブに形成される端面と入力軸の雄スプラインに形成される端面とが当接する位置で第1プーリ溝の最小溝幅が規定され、入力軸および第1可動シーブに段付部を設けることなく、第1プーリ溝の最小溝幅を規定することができる。
また、好適には、前記第2可動シーブが前記第2固定シーブ側に移動した際には、その第2可動シーブの内周部に形成されている前記雌スプラインと前記第2円筒部との境界に形成される端面が、前記出力軸に形成されている前記雄スプラインの端面と当接する位置において、前記第2プーリ溝の最小溝幅が既定されるものである。このようにすれば、第2可動シーブに形成される端面と出力軸の雄スプラインに形成される端面とが当接する位置で前記第2プーリ溝の最小溝幅が規定され、出力軸および第2可動シーブに段付部を設けることなく、第2プーリ溝の最小溝幅を規定することができる。
このようなプライマリプーリ58では、油圧室84に供給される油圧に応じてプライマリ可動シーブ74が軸心C1方向においてプライマリ固定シーブ72に接近または離間して、第1プーリ溝64の幅が変化させられるようになっている。図2において、軸心C1の下側に実線で示すプライマリ可動シーブ74は、プライマリ固定シーブ72との間に形成される第1プーリ溝64が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態において、伝動ベルト66の巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機18の変速比γが最小変速比γminとなる。また、軸心C1の上側に実線で示すプライマリ可動シーブ74は、プライマリ固定シーブ72との間に形成される第1プーリ溝64が最大溝幅Wmaxとされた状態を示している。この状態において、伝動ベルト66の巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機18の変速比γが最大変速比γmaxとなる。
このようなセカンダリプーリ62では、油圧室108に供給される油圧に応じてセカンダリ可動シーブ94にセカンダリ固定シーブ92へ向かう推力すなわち伝動ベルト66を挟圧する方向の推力が付与されるようになっている。図2において、軸心C2の下側に実線で示すセカンダリプーリ62は、セカンダリ固定シーブ92とセカンダリ可動シーブ94との間に形成される第2プーリ溝65が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ62への巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機18の変速比γが最大変速比γmaxとなる。また、軸心C2の上側に実線で示すセカンダリプーリ62は、セカンダリ固定シーブ92とセカンダリ可動シーブ94との間に形成される第2プーリ溝65が最大溝幅Wmaxとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ62への巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機18の変速比γが最小変速比γminとなる。
一方、プライマリプーリ58の第1プーリ溝64の最大溝幅Wmaxは、プライマリ可動シーブ74の軸心方向において軸受54側(プライマリ固定シーブ72と反対側)の端面138がスペーサ81の端面と当接する位置で規定される。具体的には、図2において軸心C1の上側に示す状態となり、プライマリ可動シーブ74の端面138がスペーサ81の端面と当接されており、プライマリ可動シーブ74の軸受54側への移動が阻止されている。この第1プーリ溝64が最大溝幅Wmaxとなる位置において、ベルト式無段変速機18の変速比γが最大変速比γmaxとなるり、プライマリ可動シーブ74の端面138がスペーサ81の端面と当接されることで、ベルト式無段変速機18の最大変速比γmaxが達成される。このように、本実施例では、ベルト式無段変速機18において最小変速比γminが達成されるプライマリ可動シーブ74の位置を規定する機構、および最大変速比γmaxが達成されるプライマリ可動シーブ74の位置を規定する機構がプライマリプーリ58側に設けられている。なお、スペーサ81が、本発明の第1可動シーブの軸心方向において前記第1固定シーブと反対側の端面が当接する所定の部材に対応しており、プライマリ可動シーブ74の端面138とそのスペーサ81の端面によって、本発明の第1溝幅規定手段が構成される。
また、本実施例では、プライマリプーリ58側にベルト式無段変速機18の最小変速比γminおよび最大変速比γmaxを達成するプライマリ可動シーブ74の位置を規定する機械的な位置決め構造が設けられている。すなわち、セカンダリプーリ62において、それらの位置決めを行う構造が形成されない。したがって、図4に示すように、セカンダリ可動シーブ94が摺動する範囲では、出力軸40の雄スプライン142が形成されている部位を除いてその軸径が一定とされている。これより、段付部等が形成されることでその段付部分だけ出力軸40が太くなり、出力軸40が大型化されることが防止される。なお、第1プーリ溝64が最小溝幅Wminである場合には、伝動ベルト66の巻き掛け径の変化に応じて、セカンダリプーリ62において第2プーリ溝65が最大溝幅Wmaxとなり、ベルト式無段変速機18が最小変速比γminとなる。一方、第1プーリ溝64が最大溝幅Wmaxである場合には、伝動ベルト66の巻き掛け径の変化に応じて、セカンダリプーリ62において第2プーリ溝65が最小溝幅Wminとなり、ベルト式無段変速機18が最大変速比γmaxとなる。このように、プライマリプーリ58に設けられている機械的な機構によって、第2プーリ溝65の最小溝幅Wminおよび最大溝幅Wmaxが規定される。
上述のように、本実施例によれば、プライマリプーリ58にプライマリ可動シーブ74のプライマリ固定シーブ72と反対側への移動を阻止するスペーサ81が設けられるため、第1プーリ溝64の最大溝幅Wmaxが規定される。ここで、さらにプライマリプーリ58に第1プーリ溝64の最小溝幅Wminを規定するよく知られた段付部134、136が入力軸56およびプライマリ可動シーブ74に設けられることで、セカンダリプーリ62の第2プーリ溝65の最小溝幅Wminおよび最大溝幅Wmaxは、プライマリプーリ58の最小溝幅Wminおよび最大溝幅Wmaxに応じて一義的に決定される。したがって、セカンダリプーリ62において、第2プーリ溝65の最小溝幅Wminを規定する段付部を設ける必要がなくなるため、出力軸40の軸径が段付部を設ける分だけ大きくなることが防止される。
また、本実施例によれば、プライマリ可動シーブ74の軸心方向の伝動ベルト66側と反対側には、入力軸56の外周面128aに摺接される円筒状の円筒部130が形成されるため、伝動ベルト66と反対側においてプライマリ可動シーブ74の内周面126と入力軸56の外周面128aとが接触する接触面積が、従来構造である可動シーブの雌スプラインの歯先面と入力軸の外周面とが接触する場合に比較して大きくなる。同様に、セカンダリ可動シーブ94の軸心方向の伝動ベルト66側と反対側には、出力軸40の外周面148に摺接される円筒状の円筒部150が形成されるため、伝動ベルト66と反対側においてセカンダリ可動シーブの内周面126と出力軸40の外周面148とが接触する接触面積が、従来構造である可動シーブの雌スプラインの歯先面と出力軸の外周面とが接触する場合に比較して大きくなる。ここで、プライマリプーリ58およびセカンダリプーリ62が伝動ベルト66を挟持する際、その反力が円筒部130の内周面146と入力軸56の外周面128aとの接触面、および円筒部150の内周面146と出力軸40の外周面148との接触面に垂直に作用するラジアル荷重として作用するが、これに対して、それぞれの接触面ではその接触面積が大きく確保されているため、そのラジアル荷重を受け持つことができる。すなわち、接触面積を確保するためにプライマリプーリ58およびセカンダリプーリ62の軸長を長くする必要がなくなり、その軸長を短縮化することも可能となる。
また、本実施例によれば、プライマリプーリ58に、第1プーリ溝64の最大溝幅Wmaxを規定するスペーサ81が設けられ、入力軸56の外周面128aおよびプライマリ可動シーブ74の内周面126には、それぞれ段付部134、136が設けられ、プライマリ可動シーブ74の段付部134の端面135が入力軸56の段付部136の端面137に当接する位置において、第1プーリ溝64の最小溝幅Wminが規定される。このようにすれば、セカンダリプーリ62に第2プーリ溝65の最小溝幅Wminおよび最大溝幅Wmaxを規定する機械的な機構を設ける必要がなくなり、例えば出力軸40に第2プーリ溝65の最小溝幅Wminを規定するための段付部を設けることを防止することができる。
また、本実施例によれば、プライマリ可動シーブ74の軸心方向においてプライマリ固定シーブ72と反対側の端面138がスペーサ81の端面と当接することで、プライマリ可動シーブ74の軸心方向においてプライマリ固定シーブ72と反対側への移動が阻止される。このようにすれば、プライマリ可動シーブ74の端面138がスペーサ81と当接すると、プライマリ可動シーブ74のそれ以上の軸心方向への移動が阻止されるため、第1プーリ溝64の最大溝幅Wmaxが規定される。
このようなプライマリプーリ206では、油圧室84に供給される油圧に応じてプライマリ可動シーブ214が軸心C1方向においてプライマリ固定シーブ212に接近または離間して、第1プーリ溝64の溝幅が変化させられるようになっている。図6において、軸心C1の下側に実線で示すプライマリ可動シーブ214は、プライマリ固定シーブ212との間に形成される第1プーリ溝が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機202の変速比γが最小変速比γminとなる。また、軸心C1の上側に実線で示すプライマリ可動シーブ214は、プライマリ固定シーブ212との間に形成される第1プーリ溝64が最大溝幅Wmaxとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機202の変速比γが最大変速比γmaxとなる。
上記セカンダリ固定シーブ222は、出力軸208の外周面から外周側に突き出して出力軸208に一体に設けられた円盤状の部材である。このセカンダリ固定シーブ222には、外周側に向かうほどセカンダリ可動シーブ224から離間する円錐状のテーパ面98がセカンダリ可動シーブ224との対向面に形成されている。
このようなセカンダリプーリ210では、油圧室108に供給される油圧に応じてセカンダリ可動シーブ224にセカンダリ固定シーブ222へ向かう推力すなわち伝動ベルト66を挟圧する方向の推力が付与されるようになっている。図6において、軸心C2の下側に実線で示すセカンダリプーリ210は、セカンダリ固定シーブ222とセカンダリ可動シーブ224との間に形成される第2プーリ溝65が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ210への巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機202の変速比γが最大変速比γmaxとなる。また、軸心C2の上側に実線で示すセカンダリプーリ210は、セカンダリ固定シーブ222とセカンダリ可動シーブ224との間に形成される第2プーリ溝65が最大溝幅Wmaxとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ210への巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機202の変速比γが最小変速比γminとなる。
また、前記セカンダリ可動シーブ224の雌スプライン250と円筒部260との境界には、段付部262が形成されている。また、出力軸208の雄スプライン252近傍においても段付部264が形成されており、前記段付端面262の端面263と段付部264の端面266が当接することで、セカンダリ可動シーブ224のセカンダリ固定シーブ222側への移動が阻止される。具体的には、図6において、軸心C2の下側に示す状態となり、この状態で第2プーリ溝の溝幅が最小溝幅Wminに規定される。この第2プーリ溝が最小溝幅Wminとなる位置において、ベルト式無段変速機202が最大変速比γmaxとなるように設定されており、段付部262、264は、ベルト式無段変速機202が最大小変速比γmaxとなるセカンダリ可動シーブ224の軸心方向の位置を規定する位置決め機構として機能する。なお、このとき、プライマリプーリ206においては、スプリング220によってプライマリ可動シーブ214がプライマリ固定シーブ212側に付勢されることで、伝動ベルト66が挟持される。
一方、セカンダリプーリ210の第2プーリ溝65の最大溝幅Wmaxは、セカンダリ可動シーブ224の軸心方向において軸受60側すなわちセカンダリ固定シーブ222と反対側の端面268がシリンダ部材228の内周壁部228aの端面と当接する位置に規定される。具体的には、図6において軸心C2の上側に示す状態となり、セカンダリ可動シーブ224がシリンダ部材228側に移動されることで、セカンダリ可動シーブ224の端面268がシリンダ部材228の内周壁部228aの端面と当接されて、セカンダリ可動シーブ224のシリンダ部材228側への移動が阻止されている。この第2プーリ溝65が最大溝幅Wmaxとなる位置において、ベルト式無段変速機202が最小変速比γminとなるように設定されており、セカンダリ可動シーブ224の端面268が内周壁部228aの端面と当接されることで、ベルト式無段変速機202の最小変速比が達成される。このように、本実施例では、ベルト式無段変速機202において最小変速比γminが達成されるセカンダリ可動シーブ224の位置を規定する機構、および、最大変速比γmaxが達成されるセカンダリ可動シーブ224の位置を規定する機構がセカンダリプーリ210側に設けられている。なお、第2プーリ溝65が最小溝幅Wminである場合には、伝動ベルト66の巻き掛け径の変化に応じて、プライマリプーリ206において第1プーリ溝64が最大溝幅Wmaxとなる。一方、第2プーリ溝65が最大溝幅Wmaxである場合には、伝動ベルト66の巻き掛け径の変化に応じて、プライマリプーリ206において第1プーリ溝64の最小溝幅Wminとなる。このように、セカンダリプーリ210に設けられている第2プーリ溝65の溝幅を規定する機械的な機構によって、第1プーリ溝64の最小溝幅Wminおよび最大溝幅Wmaxが規定される。なお、内周壁部228aが、本発明の第2可動シーブの軸心方向において前記第2固定シーブと反対側の端面が当接する所定の部材に対応しており、セカンダリ可動シーブ224の端面268および内周壁部228aの端面によって第2溝幅規定手段が構成される。
ここで、本実施例では、図7に示したようにプライマリプーリ206の雄スプライン234が形成されている部位を除いて、プライマリ可動シーブ224が軸心方向に移動する範囲において、入力軸204の軸径が一定に設定されている。例えば、入力軸204側には、第1プーリ溝64の最大溝幅Wmaxおよび最小溝幅Wminを規定する段付部等の機構が設けられていない。これは、ベルト式無段変速機202では、セカンダリプーリ210にベルト式無段変速機202の最小変速比γminおよび最大変速比γmaxを達成するためのセカンダリ可動シーブ224の位置決め機構が設定されているためである。
上述のように、本実施例によれば、セカンダリプーリ210に、セカンダリ可動シーブ224の移動を阻止して第2プーリ溝65の最大溝幅Wmaxを規定するためのシリンダ部材228が設けられ、出力軸208の外周面258およびセカンダリ可動シーブ224の内周面には、それぞれ段付部262、264が設けられ、セカンダリ可動シーブ224の段付部262の端面263が出力軸208の段付部264の端面266に当接する位置において、第2プーリ溝65の最小溝幅Wminが規定される。このようにすれば、プライマリプーリ206に第1プーリ溝64の最小溝幅Wminおよび最大溝幅Wmaxを規定する機械的な機構を設ける必要がなくなり、例えば入力軸204に第1プーリ溝64の最小溝幅Wminを規定するための段付部を設けることを防止することができる。
また、本実施例によれば、セカンダリ可動シーブ224の軸心方向においてセカンダリ固定シーブ222と反対側の端面268が、シリンダ部材228の内周壁部228aと当接することで、セカンダリ可動シーブ224の軸心方向においてセカンダリ固定シーブ222と反対側への移動が阻止される構造である。このようにすれば、セカンダリ可動シーブ224のセカンダリ固定シーブ222と反対側に形成される端面268が内周壁部228aと当接すると、セカンダリ可動シーブ224のそれ以上の軸心方向への移動が阻止されるため、第2プーリ溝65の最大溝幅Wmaxが既定される。
図9は、本発明の他の実施例である車両用動力伝達装置300の一部を示す断面図であり、図2および図6に対応するものである。本実施例の車両用動力伝達装置300には、ベルト式無段変速機302が備えられている。ベルト式無段変速機302は、一対の軸受54を介してトランスアクスルケース36によって軸心C1まわりの回転可能に支持されている入力軸304と、その入力軸304の外周側に設けられたプライマリプーリ(入力側溝幅可変プーリ)306と、入力軸304の平行に設けられた一対の軸受60を介してトランスアクスルケース36によって軸心C2回りの回転可能に支持された出力軸308と、その出力軸308の外周側に設けられたセカンダリプーリ310(出力側溝幅可変プーリ)と、プライマリプーリ306およびセカンダリプーリ310にそれぞれ巻き掛けられて両プーリ間において摩擦力により動力伝達を行う無端環状の伝動ベルトとを備えている
プライマリ可動シーブ314は、入力軸304に軸心方向の相対移動可能且つ軸心C1まわりの相対回転不能にスプライン嵌合された内側筒部314aと、その内側筒部314aのプライマリ固定シーブ312側の一端部から外周側に突き出して一体に設けられた円盤部314bと、その円盤部314bの外周部からプライマリ固定シーブ312とは反対側に向けて軸心方向に突設された外側筒部314cとを有している。前記円盤部314bには、外周側に向かうほどプライマリ固定シーブ312から離間する円錐状のテーパ面80がプライマリ固定シーブ312との対向面に形成されている。上記テーパ面80は、プライマリ固定シーブ312のテーパ面78とともに第1プーリ溝64を形成している。
このようなプライマリプーリ306では、油圧室84に供給される油圧に応じてプライマリ可動シーブ314が軸心方向においてプライマリ固定シーブ312に接近または離間して、第1プーリ溝64の幅が変化させられるようになっている。図9において、軸心C1の下側に実線で示すプライマリ可動シーブ314は、プライマリ固定シーブ312との間に形成される第1プーリ溝64が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機302の変速比γが最小変速比γminとなる。また、軸心C1の上側に実線で示すプライマリ可動シーブ314は、プライマリ固定シーブ312との間に形成される第1プーリ溝64が最大溝幅Wmaxとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機302の変速比γが最大変速比γmaxとなる。
前記セカンダリ可動シーブ324は、出力軸308に対して軸心方向の相対移動可能且つ軸心C2まわりの相対回転不能にスプライン嵌合された内側筒部324aと、その内側筒部324aのセカンダリ固定シーブ322側の一端部から外周側に突き出して一体に設けられた円盤状の円盤部324bと、その円板部324bの外周部からセカンダリ固定シーブ322とは反対側に向けて軸心C2方向に突設された外側筒部324cとを有している。上記円盤部324bには、外周側に向かうほどセカンダリ固定シーブ322から離間する円錐状のテーパ面102がセカンダリ固定シーブ322との対向面に形成されている。上記テーパ面102は、セカンダリ固定シーブ322のテーパ面98とともに第2プーリ溝65を形成している。
このようなセカンダリプーリ310では、油圧室108に供給される油圧に応じてセカンダリ可動シーブ324にセカンダリ固定シーブ322へ向かう推力すなわち伝動ベルト66を挟圧する方向の推力が付与されるようになっている。図9において、軸心C1の下側に実線で示すセカンダリプーリ310は、セカンダリ固定シーブ322とセカンダリ可動シーブ324との間に形成される第2プーリ溝65が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ310への巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機302の変速比γが最大変速比γmaxとなる。また、軸心C1の上側に実線で示すセカンダリプーリ310は、セカンダリ固定シーブ322とセカンダリ可動シーブ324との間に形成される第2プーリ溝65が最大幅とされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ310への巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機302が最小変速比γminとなる。
図10は、図9のプライマリプーリ306のスプライン構造を説明するためにプライマリ可動シーブ314のスプライン嵌合部近傍を拡大した拡大断面図である。図10において、プライマリ可動シーブ314の軸心方向において伝動ベルト66側の内周面には雌スプライン330が軸心C1と平行に形成されている。この雌スプライン330が入力軸304の外周面332に形成されている雄スプライン334とスプライン嵌合されることで、プライマリ可動シーブ314が入力軸304と一体的に回転させられる。
本実施例では、ベルト式無段変速機302のプライマリプーリ306において第1プーリ溝64の最大溝幅Wmaxが規定されると共に、セカンダリプーリ310において第2プーリ溝の最小溝幅Wminが規定される。具体的には、第1プーリ溝64が最大溝幅Wmaxの状態は、図9において軸心C1の上側に示す状態となり、プライマリ可動シーブ314のシリンダ部材318側の端面362がスペーサ81の端面に当接させられることで、プライマリ可動シーブ314のシリンダ部材318側(プライマリ固定シーブ312と反対側)への移動が阻止される。このとき、第1プーリ溝64が最大溝幅Wmaxに規定される。この状態において、伝動ベルト66のプライマリプーリ306への巻掛け半径が最小となり、ベルト式無段変速機302の変速比γが最大変速比γmaxとなる。なお、なお、スペーサ81が、本発明の第1可動シーブの軸心方向において前記第1固定シーブと反対側の端面が当接する所定の部材に対応しており、プライマリ可動シーブ314の端面362とそのスペーサ81の端面によって、本発明の第1溝幅規定手段が構成される。
一方、第2プーリ溝が最大溝幅Wmaxの状態は、図9において、軸心C2の上側に示す状態となり、セカンダリ可動シーブ324のシリンダ部材328側(セカンダリ固定シーブ322と反対側)の端面364がシリンダ部材328の内周壁部328aの端面と当接させられることで、セカンダリ可動シーブ324のシリンダ部材328側(セカンダリ固定シーブ322と反対側)への移動が阻止される。このとき、第2プーリ溝が最大溝幅Wmaxに規定される。この状態において、伝動ベルト66のセカンダリプーリへの巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機302の変速比γが最小変速比γminとなる。このように、本実施例では、プライマリプーリ306においてベルト式無段変速機302の最大変速比γmaxが達成されるプライマリ可動シーブ314の位置が規定され、セカンダリプーリ310においてベルト式無段変速機302の最小変速比γminが達成されるセカンダリ可動シーブ324の位置が規定される。なお、第1プーリ溝64が最大溝幅Wmaxである場合には、伝動ベルト66の巻き掛け径の変化に応じて、セカンダリプーリ310において第2プーリ溝65の溝幅が最小溝幅Wminに規定される。一方、第2プーリ溝65が最大溝幅Wmaxである場合には、伝動ベルト66の巻き掛け径の変化に応じて、プライマリプーリ306において第1プーリ溝64の溝幅が最小溝幅Wminに規定される。このようにして、第1プーリ溝64の最小溝幅Wminおよび第2プーリ溝65の最小溝幅Wminが規定される。なお、内周壁部328aが、本発明の第2可動シーブの軸心方向において前記第2固定シーブと反対側の端面が当接する所定の部材に対応しており、セカンダリ可動シーブ324の端面364および内周壁部328aの端面によって第2溝幅規定手段が構成される。
また、本実施例では、プライマリプーリ306において、円筒部338が軸心方向に摺動する範囲では、雄スプライン334が形成されている部位を除いて入力軸304の軸径が一定とされている。これより、段付部等が形成されることで入力軸304が細くなって入力軸304の強度が低下することが防止される。或いは、段付部等が形成されることで、その段付部分だけ入力軸304の軸径が大きくなることが防止される。さらに、セカンダリプーリ310において、円筒部360が軸心方向に摺動する範囲では、出力軸308の軸径が一定とされている。これより、段付部等が形成されることで出力軸308が細くなって出力軸308の強度が低下することが防止される。或いは、段付部等が形成されることで、その段付部形成分だけ出力軸308の軸径が大きくなることが防止される。
上述のように、本実施例によれば、プライマリプーリ306に、第1プーリ溝の最大溝幅Wmaxを規定するスペーサ81が設けられると共に、セカンダリプーリ310に、第2プーリ溝の最大溝幅Wmaxを規定するシリンダ部材328の内周壁部328aが設けられる。このようにすれば、プライマリプーリ306の第1プーリ溝64の最小溝幅Wminを規定するための段付部、およびセカンダリプーリ310の第2プーリ溝65の最小溝幅Wminを規定するための段付部を設ける必要がなくなるため、例えば入力軸304および出力軸308にそれぞれプーリ溝の最小溝幅Wminを規定するための段付部を設けることを防止することができる。
図12は、本発明の他の実施例である車両用動力伝達装置500の一部を示す断面図であり、図2等に対応するものである。本実施例の車両用動力伝達装置500には、ベルト式無段変速機502が備えられている。ベルト式無段変速機502は、一対の軸受54を介してトランスアクスルケース36によって軸心C1まわりの回転可能に支持された入力軸504と、その入力軸504の外周側に設けられたプライマリプーリ(入力側溝幅可変プーリ)506と、入力軸504と平行に設けられ一対の軸受60を介してトランスアクスルケース36によって軸心C2まわりの回転可能に支持された出力軸508と、その出力軸508の外周側に設けられたセカンダリプーリ(出力側溝幅可変プーリ)510と、プライマリプーリ506およびセカンダリプーリ510にそれぞれ巻き掛けられて両プーリ間において摩擦力により動力伝達を行う良く知られた無端環状の伝動ベルト66とを備えている。
このようなプライマリプーリ506では、油圧室84に供給される油圧に応じてプライマリ可動シーブ514が軸心C1方向においてプライマリ固定シーブ512に接近または離間して、第1プーリ溝64の幅が変化させられるようになっている。図12において、軸心C1の下側に実線で示すプライマリ可動シーブ514は、プライマリ固定シーブ512との間に形成される第1プーリ溝64が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機502の変速比γが最小変速比γminとなる。また、軸心C1の上側に実線で示すプライマリ可動シーブ514は、プライマリ固定シーブ512との間に形成される第1プーリ溝64が最大溝幅Wmaxとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機502の変速比γが最大変速比γmaxとなる。
前記セカンダリ可動シーブ524は、出力軸508に対して軸心方向の相対移動可能且つ軸心C2まわりの相対回転不能にスプライン嵌合された内側筒部524aと、その内側筒部524aのセカンダリ固定シーブ522側の一端部から外周側に突き出して一体に設けられた円盤状の円盤部524bと、その円盤部524bの外周部からセカンダリ固定シーブ522とは反対側に向けて軸心C2方向に突設された外側筒部524cとを有している。上記円盤部524bには、外周側に向かうほどセカンダリ固定シーブ522から離間する円錐状のテーパ面102がセカンダリ固定シーブ522との対向面に形成されている。上記テーパ面102は、セカンダリ固定シーブ522のテーパ面98とともに第2プーリ溝65を形成している。
このようなセカンダリプーリ510では、油圧室108に供給される油圧に応じてセカンダリ可動シーブ524にセカンダリ固定シーブ522へ向かう推力すなわち伝動ベルト66を挟圧する方向の推力が付与されるようになっている。図12において、軸心C1の下側に実線で示すセカンダリプーリ510は、セカンダリ固定シーブ522とセカンダリ可動シーブ524との間に形成される第2プーリ溝65が最小溝幅Wminとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ510への巻掛半径が最大となり、ベルト式無段変速機502の変速比γが最大変速比γmaxとなる。また、軸心C1の上側に実線で示すセカンダリプーリ510は、セカンダリ固定シーブ522とセカンダリ可動シーブ524との間に形成される第2プーリ溝65が最大溝幅Wmaxとされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ510への巻掛半径が最小となり、ベルト式無段変速機502の変速比γが最小変速比γminとなる。
図13は、図12のプライマリプーリ506のスプライン構造を説明するためにプライマリ可動シーブ514のスプライン嵌合部近傍を拡大した拡大断面図である。図13において、プライマリ可動シーブ514の軸心方向において伝動ベルト66側の内周部には雌スプライン530が軸心C1と平行に形成されている。この雌スプライン530が入力軸504の外周面532に形成されている雄スプライン534とスプライン嵌合されることで、プライマリ可動シーブ514が入力軸504と一体的に回転させられる。
また、本実施例では、ベルト式無段変速機502の最小変速比γminの位置決めが、油圧制御によって実行される。具体的には、プライマリプーリ506の油圧室84およびセカンダリプーリ510の油圧室108に供給される油圧を予め設定された油圧に制御することで、セカンダリプーリ510において第2プーリ溝65の最大溝幅Wmaxが規定され、ベルト式無段変速機502が最小変速比γminとなる。上記のように、セカンダリプーリ510の第2プーリ溝65の最大溝幅Wmaxを油圧制御によって規定することもできる。なお、本実施例においては、油圧制御よって第2プーリ溝65の最大溝幅Wmaxを規定する手段が、本発明の第2溝幅規定手段となる。
上記のように構成されるベルト式無段変速機502であっても、前述した各実施例と同様の効果を得ることができる。なお、本実施例では、セカンダリプーリ510の最大溝幅Wmaxを油圧制御によって規定したが、プライマリプーリ506の第1プーリ溝64の最大溝幅Wmaxを油圧制御よって規定することもできる。
上述のように、本実施例によれば、プライマリ可動シーブ74がプライマリ固定シーブ72側に移動した際には、プライマリ可動シーブ74の内周部に形成されている雌スプライン120と円筒部130との境界に形成される端面580が、入力軸56に形成されている雄スプライン122の端面582と当接する位置において、前記第1プーリ溝の最小溝幅Wminが規定される構成とすることができる。このようにすれば、プライマリ可動シーブ74に形成される端面580と入力軸56の雄スプライン122に形成される端面582とが当接する位置で第1プーリ溝64の最小溝幅Wminを規定することで、入力軸56およびプライマリ可動シーブ74に段付部を設けることなく、第1プーリ溝64の最小溝幅Wminを規定することができる。
また、本実施例によれば、セカンダリ可動シーブ324がセカンダリ固定シーブ322側に移動した際には、セカンダリ可動シーブ324の内周部に形成されている雌スプライン350と円筒部360との境界に形成される端面が、出力軸308に形成されている雄スプライン352の端面と当接する位置において、第2プーリ溝65の最小溝幅Wminが既定される構成とすることができる。このようにすれば、セカンダリ可動シーブ324に形成される端面と出力軸308の雄スプライン352に形成される端面とが当接する位置において、第2プーリ溝65の最小溝幅Wminを規定することで、出力軸308およびセカンダリ可動シーブ324に段付部を設けることなく、第2プーリ溝の最小溝幅Wminを規定することができる。
例えば、前述の実施例において、セカンダリプーリ510の第2プーリ溝65の最大溝幅Wmaxを油圧制御よって規定するとしたが、例えばプライマリプーリ506の第1プーリ溝64の最大溝幅Wmaxを油圧制御によって規定する構成であっても構わない。さらには、第1プーリ溝64の最大溝幅Wmaxおよび第2プーリ溝65の最大溝幅Wmaxの両方を油圧によって制御する構成であっても構わない。
Claims (9)
- 入力軸に固定されている第1固定シーブと、内周部に形成されている雌スプラインが該入力軸に形成されている雄スプラインとスプライン嵌合されることで該入力軸に相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能な第1可動シーブとを有するプライマリプーリと、前記入力軸に平行な出力軸に固定されている第2固定シーブと、内周部に形成されている雌スプラインが該出力軸に形成されている雄スプラインとスプライン嵌合されることで該出力軸に相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能な第2可動シーブとを有するセカンダリプーリと、前記第1固定シーブと前記第1可動シーブとの間に形成されるV字形状の第1プーリ溝および前記第2固定シーブと前記第2可動シーブとの間に形成されるV字形状の第2プーリ溝に巻き掛けられる伝動ベルトとを備える車両用ベルト式無段変速機であって、
前記プライマリプーリの第1可動シーブの内周部に形成される前記雌スプラインは、前記伝動ベルトが前記第1プーリ溝に巻き掛けられた状態において、軸心方向の該伝動ベルト側に形成される一方、該第1可動シーブの軸心方向の該伝動ベルト側と反対側には、内周面が前記入力軸の外周面に摺接される円筒状の第1円筒部が形成されており、
前記セカンダリプーリの第2可動シーブの内周部に形成される前記雌スプラインは、前記伝動ベルトが前記第2プーリ溝に巻き掛けられた状態において、軸心方向の該伝動ベルト側に形成される一方、該第2可動シーブの軸心方向の該伝動ベルト側と反対側には、内周面が前記出力軸の外周面に摺接される円筒状の第2円筒部が形成されており、
前記プライマリプーリに設けられて前記第1プーリ溝の最大溝幅を規定するための第1溝幅規定手段、および、前記セカンダリプーリに設けられて前記第2プーリ溝の最大溝幅を規定するための第2溝幅規定手段の少なくとも一方が設けられていることを特徴とする車両用ベルト式無段変速機。 - 前記第1可動シーブが前記第1固定シーブ側に移動した際には、該第1可動シーブの内周部に形成されている前記雌スプラインと前記第1円筒部との境界に形成される端面が、前記入力軸に形成されている前記雄スプラインの端面と当接する位置において、前記第1シーブ溝の最小溝幅が規定されることを特徴とする請求項1の車両用ベルト式無段変速機。
- 前記第2可動シーブが前記第2固定シーブ側に移動した際には、該第2可動シーブの内周部に形成されている前記雌スプラインと前記第2円筒部との境界に形成される端面が、前記出力軸に形成されている前記雄スプラインの端面と当接する位置において、前記第2シーブ溝の最小溝幅が規定されることを特徴とする請求項1の車両用ベルト式無段変速機。
- 前記プライマリプーリに、前記第1プーリ溝の最大溝幅を規定する第1溝幅規定手段が設けられ、
前記入力軸の外周面および前記第1可動シーブの内周面には、それぞれ段付部が設けられ、該第1可動シーブの段付部の端面が該入力軸の段付部の端面に当接する位置において、前記第1プーリ溝の最小溝幅が規定されることを特徴とする請求項1の車両用ベルト式無段変速機。 - 前記セカンダリプーリに、前記第2プーリ溝の最大溝幅を規定する第2溝幅規定手段が設けられ、
前記出力軸の外周面および前記第2可動シーブの内周面には、それぞれ段付部が設けられ、該第2可動シーブの段付部の端面が該出力軸の段付部の端面に当接する位置において、前記第2プーリ溝の最小溝幅が規定されることを特徴とする請求項1の車両用ベルト式無段変速機。 - 前記プライマリプーリに、前記第1プーリ溝の最大溝幅を規定する第1溝幅規定手段が設けられると共に、前記セカンダリプーリに、前記第2プーリ溝の最大溝幅を規定する第2溝幅規定手段が設けられていることを特徴とする請求項1の車両用ベルト式無段変速機。
- 前記第1溝幅規定手段は、前記第1可動シーブの軸心方向において前記第1固定シーブと反対側の端面が所定の部材と当接することで、該第1可動シーブの軸心方向において該第1固定シーブと反対側への移動を阻止するものであることを特徴とする請求項1、4、6のいずれか1の車両用ベルト式無段変速機。
- 前記第2溝幅規定手段は、前記第2可動シーブの軸心方向において前記第2固定シーブと反対側の端面が所定の部材と当接することで、該第2可動シーブの軸心方向において該第2固定シーブと反対側への移動を阻止するものであることを特徴とする請求項1、5、6のいずれか1の車両用ベルト式無段変速機。
- 前記入力軸および出力軸の少なくとも一方は、前記雄スプラインが形成されている部位を除いて、前記第1可動シーブまたは前記第2可動シーブが軸心方向に摺動する範囲において、軸径が等しくされることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1の車両用ベルト式無段変速機。
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