以下、添付図面を用いて本発明の実施形態に係る容器の蓋材を説明する。
(第1の実施形態)
図1〜3を参照して、第1の実施形態に係る容器を説明する。図1は、本実施形態に係る容器の蓋材の一例を平面で透視した説明図、図2Aは、図1のII−II線に沿った断面図である。
図1に示す容器CTは、焼きそばやスパゲッティなどの湯熱による調理をした後、湯切りをする即席食品のためのプラスチック製の容器である。この容器CTは、略四角形の面を有するボックス形を成しており、事前に焼きそばやスパゲッティなどの食品を乾燥状態で収めた容器本体BDと、この容器本体BDの上面を成す開口部OPのフランジFRに剥離可能に密着させた蓋材1とを備えている。
図1に示すように、容器本体BDの開口部OPを周回するフランジFRは、外縁aと内縁bとを有する。蓋材1は、容器本体の開口部のフランジの外縁aとほぼ同じ外形を有する蓋本体2と、その端縁に延設された1つ又は複数の開封用プルタブ3(第1のプルタブ)と、湯切り用プルタブ4(第2のプルタブ)を有する。図1では、3つの開封用プルタブ3と、1つの湯切り用プルタブ4とを示す。
蓋材1は、図2Aのように、下シート5とこれを被覆する上シート6が接着層7を介して積層される。その一方で、下シート5と上シート6との層間の特定の局所部分に剥離剤の塗布により形成された剥離層8が設けられている。
この剥離層8は、図1の例では、仮想線ILで囲まれた部分に形成されており(図2A参照)、この部分領域は剥離領域Aとして設定される。このため、この剥離領域Aはそれ以外の非剥離領域Bに面上で隣接し且つ当該領域Bに囲まれるように位置している。
蓋材1を平面視(蓋本体2を上から見たときの視野を言う)すれば、その長方形の一方の対角線に湯切り用プルタブ4の角部を2分するように延びる2分線PGが交わる交点(以下、中心点)Oが存在する。この蓋材1の形が正方形であれば、この中心点Oは2つの対角線の交点となる。また、蓋材1が円形であれば、その円の中心が中心点Oとなる。そこで、剥離領域Aはこの中心点Oと湯切り用プルタブ4との間の範囲に収まる略矩形に形成されている。加えて、この剥離領域Aは1つの2分線PGに対して線対称に形成されている。
また、図1のように、湯切り用プルタブ4を挟んだ蓋材1の両側の外縁から蓋材1の中心点Oを含む中心域の方へ平行に伸び、屈曲あるいは湾曲して接続されて一本となる、所謂、半切りと呼ばれる線状の部分剥離用ハーフカット9(第2のハーフカット)が、上シート6を切断して接着層7に至るように設けられている。
さらに、湯切り用プルタブ4の近傍の蓋本体2には、下シート5を切断して接着層7に至るプルタブ用ハーフカット10(第1のハーフカット)が、部分剥離用ハーフカット9と、蓋材1の外縁との2つの交点11a、11bを結ぶ線分cよりも、湯切り用プルタブ4の寄りに、プルタブ用ハーフカット10の両側の蓋材1の外縁の2点10a,10bを結ぶように設けられている。2分線PGは、この2点10a、10b間の長さを等分に2分している。
このプルタブ用ハーフカット10は、本実施形態では直線であって、フランジFRの外縁aに接する接線として形成されている。しかしながら、これに限られずに、このハーフカット10は外縁aに対して、その当接位置から若干前後した直線であってもよいし、また外縁aの丸みに沿った湾曲した半切りであってもよい。
また、剥離領域Aの一部である、部分剥離用ハーフカット9と2つの交点11a、11bを結ぶ線分cで囲まれた領域の内部には、下面から下シート5を切断し接着層7に到達する複数の湯切り孔用ハーフカット12(排出孔用ハーフカット)が設けられている。
この複数の湯切り孔用ハーフカット12の形状は平面視において矩形状を成している。また、これらのハーフカット12の平面視時の矩形に位置合わせして接着層7が夫々形成されている。このため、個々のハーフカット12で囲まれる矩形状の領域(平面視の領域)は、剥離領域Aの内部に更に細かい矩形状の非剥離領域Cが形成されている。
さらに、図1から分かるように、蓋材1の平面視において、矩形状の複数のハーフカット12は、湯切り用プルタブ4の中心と蓋材1の上面(表面)の仮想的な中心点Oとを結ぶ2分線PGに対し、左右対称に配置されている。
以上のことから、本実施形態に係る蓋材1では、その主要な構成として、湯切り用プルタブ4の根本部分を横断する両側のそれぞれに位置する、下シート5の外縁の2点10a、10bを結ぶように下シート5の下面からプルタブ用ハーフカット10が形成される。また、湯切り用プルタブ4の根本部分の両側において当該根本部分からそれぞれ等距離のフランジの外縁aの上の2つの位置であって、前記2点10a、10bよりも湯切り用プルタブ10から離れた2つの起点11a、11bからそれぞれ蓋本体2の面上の内方に向かって延びて相互に合流して部分的な領域を当該蓋本体2に画成するように上シート6の上面から部分剥離用ハーフカット9が形成される。さらに、部分剥離用ハーフカット9で画成された部分的な領域において前記下シートの下面から当該下シートを貫通するように、複数の湯切り孔12Aにそれぞれ対応した形状を有し且つ当該領域内で所望の配列を有する複数の湯切り孔用ハーフカット12が形成される。このため、湯切り用プルタブ4の引き剥がし動作により、湯切り孔用ハーフカット12が付された下シート5の部分を上シート6の前記部分的な領域の部分に付着させた状態で、当該上シート6のプルタブ用ハーフカット10、フランジFRの外縁上の2点10a、10bそれぞれから2つの起点11a、11bのそれぞれに至る当該外縁の一部、及び、部分剥離用ハーフカット9で囲まれる閉領域の部分が当該湯切り用プルタブ4と共に下シート5から部分的に剥離可能になっている。
そこで、図2Bに示すように、湯切り時にユーザは湯切り用プルタブ4をめくるように引き上げる。この引き上げ動作により、プルタブ用ハーフカット10の部分で湯切り用プルタブ4(上下シート6、5)が蓋体1から分離可能になっている。
そこで、ユーザはそのまま湯切り用プルタブ4を持ってそれを蓋本体の面の内方に向けて剥がすと、このプルタブ4と一緒にそれ以降の上シート6が下シートから捲れ上がって剥離される。この捲れ上がる部分は、部分剥離用ハーフカット9が形成されているため、このハーフカット9で囲まれている領域、すなわち剥離領域Aに限られる。したがって、この湯切りに伴うプルタブ引き上げ動作は、最終的に、図2Bに示すように、湯切り用プルタブ4を頂点としてこれに一体に連なる略長方形状の上シート片SHが蓋体1から分離される。この分離された上シート片SHには各湯切り孔用ハーフカット12で囲まれた下シート部分も一体に付着している。つまり、下シート5の剥離領域Aにおいて、この付着により抜けた孔が湯切り孔12Aとして残される。これにより、湯切り用プルタブ4の引き上げから上シート6の剥離領域Aの部分の捲り上げまで一気に進めることで、蓋体1の下シート5が露出した剥離領域Aに複数の湯切り孔12Aが出現することになる。したがって、ユーザは、この湯切り孔12Aを使って従来と同様に湯熱により内容物の調理後の残湯を排出させることができる。
本実施形態に係る蓋材1を製造方法は、以下のとおりである。
まず、紙の表面に絵柄印刷を施し、裏面に剥離剤を印刷し剥離層8形成する。剥離剤は、部分剥離用ハーフカット9とプルタブ用ハーフカット10とその間の蓋材1の外縁で囲まれた範囲に、湯切り孔用ハーフカット12で囲まれた部分を塗りつぶさないように塗布する。
必要に応じて、剥離剤が紙に吸収されて、剥離効果がなくならないように、あらかじめ、目止剤を剥離剤が印刷される面に塗布してもよい。
次にアルミニウム箔を接着層7となるポリエチレンを用いて、サンドイッチラミネーションにより、剥離剤が印刷された紙の裏面に積層する。次に、この積層したアルミニウム箔面にシーラント層を設ける。
このようにして、アルミニウム箔とシーラント層からなる下シート5と、これを被覆する、絵柄印刷層と紙からなる上シート6が、剥離層8や、接着層7となるポリエチレンを介して積層され、蓋材1の積層体ができる。
次に、ロータリーダイカッターにより下シート5を切断して、接着層7まで、あるいは、紙層の途中までのハーフカット加工を行い、プルタブ用ハーフカット10と湯切り孔用ハーフカット12を設ける。
また同様に、上シート6を切断して、接着層7までのハーフカット加工を行い、部分剥離用ハーフカット9を設ける。次に、蓋材1の外形に打ち抜いて、枚葉の蓋材1が得られる。尚、ハーフカット加工と、外形の打ち抜きは同時に行ってもよい。
本例の蓋材1の製造に用いられる紙としては、坪量50g/m2 〜150g/m2 の紙が好ましく用いられる。紙の種類は、絵柄印刷を施す表面が白色で多色印刷適正を有するものが好ましく、印刷用下地コート層が積層された、両アート紙、片アート紙、あるいは、両コート紙、片コート紙などを好適に使用することができる。また、純白ロールなども用いることができる。
坪量が50g/m2 未満の場合は、剛性や機械的強度がやや不足し、150g/m2を超える場合は、剛性は既に充分であり、それ以上の必要性がなく、ヒートシールに時間を要し、紙の層間強度の低下、開封時の紙の折れ易さの低下などもあるため好ましくない。
絵柄印刷には、紙用のグラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキなどを用いて、それぞれのインキの印刷方式で設けることができる。また、箔押しなどで金属光沢部分を設けてもよい。また、絵柄印刷を保護するために、保護ニスを表面に塗布したり、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの延伸フィルムを表面に積層したりしてもよい。
また、使用する剥離層8の材質は、特に限定されず、上シート6と下シート5を剥離可能とすればよい。例えば、ウレタン系樹脂やポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂、もしくは、硝化綿系樹脂、ワックスなどを主成分とする剥離剤を使用できる。
下シート5としては、厚さが6μmから25μmの軟質アルミニウム箔を好適に使用できる。このアルミニウム箔5の厚さが6μm未満の場合、そのラミネート加工での取り扱いが難しく、反対に25μmを超えると、出来上がった蓋材1の腰が強くなり過ぎる。このため、アルミニウム箔5を容器本体から剥がすときに、剥がしにくく、ハーフカット加工も刃が入りにくく、コストも過剰になる。
剥離剤が印刷された紙の裏面とアルミニウム箔の積層に用いる、接着層7となるポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレンと酸のコポリマー樹脂、合成ゴムの何れか一以上を主体とする熱可塑性樹脂が好ましく使用できる。また、接着層7として、ポリエチレンではなく、ウェットラミネート用接着剤、ドライラミネート用接着剤、ノンソルベントラミ接着剤、ホットメルト剤を使用してもよい。
シーラント層は、単層でも多層でもよいが、シーラント層の最内面は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂などの酸コポリマー樹脂を主成分としたイージーピールシーラント層であることが好ましい。これらのシーラント層の素材は、いずれにしても被着体容器の少なくとも開口周縁部の接合面側の素材に応じて選択される。
本発明の蓋材1は、以上のような構成であるので、湯切り用プルタブ4を持って、排湯口を現すために上シート6を剥がすときに、下シート5を切ってしまい、剥離領域の下シート5を容器本体から剥がしてしまうことがない。
(変形形態)
図3に、第1の実施形態に係る蓋材の変形形態を説明する。図3は、この変形形態に係る蓋材100の上面を説明する図である。
この蓋材100は、湯切り孔12Aを形成する剥離領域の形状を除いて、前述した実施形態に係る蓋材1と同一の構造を有しているので、その説明を省略又は簡略化する。
部分剥離用ハーフカット9は、前述した蓋材1のそれと異なり、湯切り用プルタブ4を挟んだ蓋材100の外縁と部分剥離用ハーフカット9とが交わる2つの交点11aと11bの間の間隔よりも間隔が広がるように蓋材100の内方へ伸び、屈曲あるいは湾曲して接続されて一本となるように、上シート6を切断して接着層7に至るハーフカット加工により設けられている。
また、部分剥離用ハーフカット9の形状が上述のように第1の実施形態のそれとは異なるため、湯切り孔用ハーフカット12の数及び位置も、第1の実施形態のそれとは異なっている。
上述した以外の構成は、第1の実施形態の蓋材の構成と同じである。
この変形形態に係る蓋材100は、以上のような構成であるので、湯切り用プルタブ4を持って、湯切り孔を現すために上シート6を剥がすときに、部分剥離用ハーフカット9が、前記湯切り用プルタブ4の両側より間隔が広がるように前記蓋材100の内方へ伸びているので、剥離がスムーズに行われ、下シート5を切ることがなく、且つ、湯切り孔を形成可能な面積、すなわち剥離領域を広く取ることができる。
上述の実施形態及び変形形態において、剥離層8を用いて、接着力が弱い領域を作ったが、剥離層8を用いずに、接着層7と異なる樹脂の層を、下シート5あるいは上シート6の接着層7側に設けて、下シート5と上シート6を完全接着させず、剥離可能に積層した構成としてもよい。これにより、剥離層を省略してもよい。
たとえば、下シート5を、ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面に接着剤を介して、アルミニウム箔を積層し、このアルミニウム箔面にシーラント層を積層した層構成とし、この下シート5のポリエチレンテレフタレートフィルムの未処理面に、紙の表面に絵柄印刷を施した上シート6の裏面に、剥離層8を用いずに、接着層7となる低密度ポリエチレンを押出し、サンドイッチラミネーション法により積層してもよい。これにより、蓋材の下シート5と上シート6は完全接着せずに、剥離可能に積層した構成となる。
以下に、前述した実施形態で説明した構成を実際に実施した実施例を説明する。
(実施例1)
片アート紙(坪量104.7g/m2、厚さ100μm)を用意し、その表面に多色グラビア印刷機を用いて文字、絵柄、光沢ニス等の絵柄印刷を施し、続いて、片アート紙の裏面に目止剤と剥離剤を、図1の部分剥離用ハーフカット9とプルタブ用ハーフカット10とその間の蓋材1の外縁で囲まれた範囲に、湯切り孔用ハーフカット12で囲まれた部分を塗りつぶさないように、表面の絵柄印刷と見当をあわせ、印刷により塗布した。
片アート紙の剥離剤を塗布した面に、コロナ放電処理を施し、Tダイ方式押出しラミネート機を用い、接着層7として低密度ポリエチレン(厚さ15μm)を押出し、軟質アルミニウム箔15μmをサンドイッチラミネーション法により積層した。
次に、アルミニウム箔の面に、Tダイ方式押出しラミネート機を用い、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(厚さ10μm)、最内面にエチレン−メタクリル酸共重合体系のイージーピールシーラント樹脂(厚さ10μm)の2層を共押出して、総厚が20μmのシーラント層を設け積層体を得た。
この積層体を、ロータリーダイカッターにより、シーラント層側から、片アート紙まであるいは片アート紙の途中まで、刃が入るようにハーフカット加工を行い、図1の湯切り孔用ハーフカット12とプルタブ用ハーフカット10を設けた。
さらに、ロータリーダイカッターにより、片アート紙の絵柄印刷側から、接着層7の低密度ポリエチレンまであるいは低密度ポリエチレンの途中まで、刃が入るようにハーフカット加工を行い、図1の部分剥離用ハーフカット9を設けた。
次に、図1の蓋材1の外形に打ち抜いて、実施例1の蓋材を得た。
(実施例2)
片アート紙(坪量104.7g/m2、厚さ100μm)を用意し、その表面に多色グラビア印刷機を用いて文字、絵柄、光沢ニス等の絵柄印刷を施した。
別途、ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmを用意し、このニ軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面に、接着剤を塗布して、ドライラミネーション法によって、軟質アルミニウム箔15μmを積層した。
印刷を施した片アート紙の裏面に、コロナ放電処理を施し、Tダイ方式押出しラミネート機を用い、接着層7として低密度ポリエチレン(厚さ15μm)を押出し、別途積層したニ軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとアルミニウム箔のニ軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの未処理面にアンカー剤なしでサンドイッチラミネーション法により積層し積層体を得た。
次に、この積層体のアルミニウム箔の面に、Tダイ方式押出しラミネート機を用い、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(厚さ10μm)、最内面にエチレン−メタクリル酸共重合体系のイージーピールシーラント樹脂(厚さ10μm)の2層を共押出して、総厚が20μmのシーラント層を設け積層体を得た。
この積層体を、ロータリーダイカッターにより、下シート5を切断し、片アート紙の手前まであるいは片アート紙の途中まで、刃が入るようにハーフカット加工を行い、図3の湯切り孔用ハーフカット12とプルタブ用ハーフカット10を設けた。
さらに、ロータリーダイカッターにより、上シート6を切断し、接着層7の低密度ポリエチレンを切断して、ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの手前まであるいはニ軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの途中まで、刃が入るようにハーフカット加工を行い、図3の部分剥離用ハーフカット9を設けた。
次に、図3の蓋材100の外形に打ち抜いて、実施例2の蓋材を得た。
以下に本発明の比較例について説明する。
(比較例1)
片アート紙(坪量104.7g/m2、厚さ100μm)を用意し、その表面に多色グラビア印刷機を用いて文字、絵柄、光沢ニス等の絵柄印刷を施し、続いて、図45の剥離領域Aの位置になるように、片アート紙の裏面に目止剤と剥離剤を、表面の絵柄印刷と見当をあわせ、印刷により塗布した。
片アート紙の剥離剤を塗布した面にコロナ放電処理を施し、Tダイ方式押出しラミネート機を用い、接着層として低密度ポリエチレン(厚さ15μm)を押出し、軟質アルミニウム箔15μmをサンドイッチラミネーション法により積層した。
次に、アルミニウム箔の面に、Tダイ方式押出しラミネート機を用い、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(厚さ10μm)、最内面にエチレン−メタクリル酸共重合体系のイージーピールシーラント樹脂(厚さ10μm)の2層を共押出して、総厚が20μmのシーラント層を設け積層体を得た。
この積層体を、ロータリーダイカッターにより、シーラント層側から、片アート紙まであるいは片アート紙の途中まで、刃が入るようにハーフカット加工を行い、図45の湯切り孔用ハーフカット12とプルタブ用ハーフカット10を設けた。
さらに、ロータリーダイカッターにより、片アート紙の絵柄印刷側から、接着層の低密度ポリエチレンまであるいは低密度ポリエチレンの途中まで、刃が入るようにハーフカット加工を行い、図45の部分剥離用ハーフカット9を設けた。
次に、図45の蓋材200の外形に打ち抜いて、比較例1の蓋材を得た。この図45に示す蓋材は、前述した特開2000−109141号で開示された構成に基づくものである。
(評価)
実施例1から実施例2、および比較例1の蓋材をそれぞれ100枚、容器本体となる発泡ポリスチレンカップの開口部にカップシーラーを用いてシールした。次に、開封用プルタブ3を持って、容器本体の開口部が半分開くように開封し、沸騰水を、容器の高さの半分まで来るように入れ、容器の開口部に蓋材を戻して、開封用プルタブ3を折って、容器開口部のふちに止めて、3分間放置した。
放置後、湯切り用プルタブ4を持って剥離領域Aの上シート6を剥がし、湯切り孔を露出させた。このとき、問題なく上シート6を剥がせるかどうかについて評価した。
(比較結果)
以下、実施例と比較例との比較結果について説明する。
実施例1から実施例2の蓋材は、湯切り用プルタブ4を持って剥離領域Aの上シート6を剥がしても、すべて問題なく剥がすことができた。
一方、比較例1の蓋材は、湯切り用プルタブ4を持って剥離領域Aの上シート6を剥がすときに、下シートが切れて破れてしまうものが2枚あった。
以上のことから、ユーザが湯切り用プルタブを操作するときに要求される操作上の条件を緩和できる。つまり、湯切り用プルタブ4をそのまま容器本体BDの方向に引き剥がすことで、その力は蓋材1の中心部に向かうので、そのままの勢いで剥離領域Aに在る上シート片SHを蓋材1から剥離させることができる。
つまり、第1の実施形態及びその変形形態に係る蓋材1の場合、従来のタブ及びハーフカットの位置関係とは異なり、部分剥離用ハーフカットが蓋材の円弧の両端を繋ぐ直線ではなく、また湯切り用タブの位置がその両端の一方に偏移していない。湯切り用プルタブ4の位置は剥離領域Aに対して正対しており、且つ、2分線PGに対して左右に線対称を成すように位置決めされている。したがって、湯切り用プルタブ4を引き上げるときにユーザの操作に要求される条件、すなわち、タブ引き上げに加える力の方向や加減に対する条件は緩和され、個人差がそれほど問題とならなくなる。つまり、湯切り用プルタブ4を引き上げさえすれば、その力は蓋材の面の中心方向に向かい、簡単に且つ安定して湯切り孔12Aを出現させることができる。
従来のように、力の入れ加減の違いから生じる下シートの破損、プルタブの離脱といった事態に陥ることが少なくなる。蓋材にせっかく用意されている湯切り機能を損なうことがなく、この機能を利用して確実に且つ迅速に湯切り孔を出現させることで、ユーザの湯切り動作そのものが容易になり且つ短時間化される。これにより、信頼性の高い蓋材を提供することができる。
(第2の実施形態)
以下、図4〜図23を参照して、第2の実施形態に係る容器の蓋材を説明する。
図4及び図5Aに示すように、上シート21と下シート22との間で剥離が可能な湯切り孔付き蓋26が提供される。この蓋26は、前述した実施形態と同様に、平面視で矩形状を成す蓋本体BDと、後述する開封用プルタブ27及び湯切り用プルタブ28とを備える。
蓋本体BDは上シート21、下シート22、及びそれらのシート間に介挿される剥離層24を備える。上シート21は、剥離層24を塗工領域に対応して区画される剥離領域Aと、剥離領域以外の非剥離領域Bとを有する。また、上シート21には部分剥離用ハーフカット29が剥離領域に対応するように形成されている。さらに、剥離領域A内の下シート22には、湯切り用ハーフカット30と湯切り孔23を出現させるための湯切り孔用ハーフカット31とが形成されている。この場合であっても、剥離領域Aは中心点Oに向かう方向に向けられており、しかも、平面視において2分線PGに対してほぼ左右対称に配置されている。
なお、この剥離領域Aの湯切り用プルタブに対する位置取り、中心点Oを含む蓋部中心部へ向かう方向性、及び、2分線PGに対する左右対称性は、特に図示しないが、後述する他の実施形態においても同様に採用されている。
上記の上シート21は、湯切り孔付き蓋26の最外部になり、製品の内容を表示して購買者に訴える役割を有するため、印刷適正の良好な材料から構成されることが好ましい。この材料としては紙等の蓋として必要な剛性のあるものが挙げられる。この紙の例としては、坪量が50〜150g/m2の片アート紙やコート紙、晒クラフト、上質紙等が挙げられる。また、上シート21として耐水性や耐久性を持たせるために、紙以外に合成樹脂フィルム、あるいは紙と合成樹脂フィルムとの複合フィルムであってもよい。
合成樹脂フィルムの例として、セロハン、ポリエステルフィルム、一軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム等のフィルム材料を、上記の紙類の層に接着剤で貼り合わせた複合フィルムであるとより望ましい。上記ポリエステルフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが挙げられる。また、上記の紙類の層と上記フィルム材料等を貼り合わせる接着剤としては、例えば押出ラミネート法による低密度ポリエチレンやポリウレタン系接着剤等が挙げられる。
上記の下シート22は、少なくとも最内層側からシーラント層、基材層が積層されている。下シート22は、3次元的に撓むために柔軟性を付与されていることが好ましい。
上記シーラント層は、ヒートシールが可能な樹脂の層であり、この樹脂としては、例えば、容器本体とのイージーピール性を有するポリエチレン等のポリオレフィンが挙げられる。また、シーラント層は溶融押出により基材層に共押し出しした積層構成でもよく、特に、接着性ポリオレフィン系樹脂およびエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)を溶融押出により基材層に共押し出ししたシーラント層は、接着性かつ易剥離性に優れているために好ましい。また、接着性ポリオレフィン系樹脂を単層でシーラント層設けるよりもEMAAとの二層構成にすることで加工適性に優れる。
上記基材層は、湯切り孔付き蓋6の密封性を確保するために必要である。このような基材層の例としては、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着された二軸延伸PETフィルム、酸化アルミニウム蒸着された二軸延伸PETフィルム、酸化珪素蒸着された二軸延伸PETフィルムなどが挙げられる。アルミニウム箔、アルミニウム蒸着等は、外部からの遮光性を付与し、特にアルミニウム箔は湯切り孔付き蓋26にデットホールド性を付与することができる。基材層に二軸延伸PETフィルムを設けることで、基材層に強化性を付与することができるので、湯切り孔付き蓋26を容器から剥離する際に剥離残りが残らない。
また、二軸延伸PETフィルムにアルミニウム箔をドライラミネート法等の公知の貼合わせ方法により積層することもできる。
上記下シート22にプルタブ用ハーフカット30が設けられている。このプルタブ用ハーフカット30は、後述する湯切り用プルタブ28と湯切り孔23の出現のための湯切り孔用ハーフカット31との間に設けられている。この湯切り孔23は、湯切り用プルタブ28に最も近い湯切り孔23である。プルタブ用ハーフカット30の位置で、湯切り孔付き蓋26は、上シート21と下シート22との間で剥離することになる。
剥離領域Aに対応する下シート22の一部に、複数の湯切り孔23を出現させるための湯切り孔用ハーフカット31が複数、設けられている。
湯切り孔23は、内容物の食品を落下させることなく湯切りを行うために、複数の湯切り孔が開孔している必要があり、特に図5Bに示すように、湯切り孔の幅広の寸法をaとし、湯切り孔の幅狭の寸法をbとした場合、孔の寸法は、2mm≦b≦a≦10mmであり、隣接する孔と孔との間隔が1mm以上b/2以下であることが必要である。隣接する孔と孔との間隔をWとする。
湯切り孔の寸法が2mm以下であると、湯が湯切り孔を通過する際、湯切り孔周囲と湯との間の摩擦力による圧力損失により、湯切りに十分な流速が得られない。湯切り孔の寸法が10mm以上であると内容物の食品が落下してしまう。また、隣接する孔と孔との間隔が1mm以下の場合、湯切り孔周辺の下シート22の強度が弱く、湯切り孔部剥離や湯切り作業の際に破れが発生する可能性がある。
これに対し、隣接する孔と孔との間隔が1mm以上b/2以下の場合、湯切り孔から流出した湯が孔幅より広がりながら落下すると、隣接する湯切り孔から流出する湯と交わるので、湯切り孔周囲が濡れることにより湯切り孔周囲の表面張力による圧力損失が解消され、湯切り孔周囲と湯と間の摩擦力が低減し、湯切り孔から流出する湯の流速が改善されることにより湯切速度が改善できる。
なお、隣接する孔と孔との間隔がb/2以上であると湯が交差できないため、隣接する孔と孔との間隔はb/2以下で配置をする必要がある。
湯切り孔の形状は特に限定はしないが、例えば、正円、正方形、横トラック、縦トラック等がある。
また、図6A及び図6Bに示すように、湯切り孔23の重心の位置が直交する座標上に配置することで、湯切り孔周囲の下シート22の形状は、直線が交差する網目形状になる。湯切り時に内容物および湯によって湯切り孔周囲の下シート22が3次元的に撓むことにより、内容物で湯切り孔が塞がれることなく湯切りが可能である。特に湯切り作業の最後で、残湯量を少なくすることができる。
湯切り孔23は、剥離領域A内のシーラント層と基材層とを貫通して上シート1にまで達する湯切り孔用ハーフカット31で区画されてなる。
湯切り孔用ハーフカット31で区画されている領域を除く剥離領域の上シート21と下シート22との間の剥離層24は、特に限定しないが、網目状パターン(又は網点パターン状、あるいは市松模様パターン状又は砂目パターン状)に塗布して形成されている。
剥離層24としては、ウレタン系樹脂、硝化綿(セルロース)系樹脂、硝化綿とウレタン系樹脂とのブレンド樹脂などによる剥離剤が使用できる。特に、剥離剤としては、シリコン・ポリエチレン系ワックス・ポリエステル系ワックス・脂肪酸アマイド系ワックスから選ばれる一種以上のワックスをワニス全量(固形分)に対して添加しているのが好ましい。
目止め層は、前述した剥離層24を紙に積層させるために設ける。片アート紙のコート剤で処理されていない面に剥離層24を直接塗布すると、紙が剥離剤を吸収してしまうので剥離層24を紙に積層させることは困難である。目止め層を成すワニスがポリアミド樹脂とニトロセルロース樹脂とをバインダーとして含有しているのを用いるのが好ましい。
この発明にかかる湯切り孔付き蓋26について説明する。図4に示すように、湯切り孔付き蓋26には、非剥離領域Bと剥離領域Aとの境界部分に沿って部分剥離用ハーフカット29が形成されている。部分剥離用ハーフカット29は、上シート1側から剥離層24に達する深さ半分程度の切込みであり、ミシン目または連続線等で形成されている。また、剥離領域Aから蓋の一部外縁の外側方向に突出するように延設した、湯切り孔23を形成する際に使用する湯切り用プルタブ28が設けられている。また、非剥離領域Bにおける少なくとも下シート22側から蓋の一部外縁の外側方向に突出するように延設した、蓋を剥離する際に使用する開封用プルタブ27が設けられている。
湯切り用プルタブ28を引っ張り上げると、プルタブ用ハーフカット30に達するまで上シート21と下シート22とは同時に容器から剥がされ、プルタブ用ハーフカット30に達すると、上シート31と下シート32との間で剥離し、下シート32は容器側に残る。その後、部分剥離用ハーフカット29に達すると、剥離領域Aと非剥離領域Bとの切り離しが進み、同時に湯切り孔用ハーフカット31で区画されている領域は、剥離層24を設けていないので、下シート22も剥がされることで、湯切り孔23が形成される。
湯切り孔付き蓋26を設けた容器を傾けて、中にある湯を湯切り孔3から排出することができる。
(実施例)
以下、実施例によりこの発明をさらに詳細に説明する。それぞれの素材として以下のものを使用した。
・上シート:片アート紙(王子製紙(株)製(104.9g/m2 ))
・基材層:二軸延伸PETフィルム(東レ(株)製(12μm))とアルミニウム(三菱アルミニウム製:15μm)とをドライラミネートしたもの積層体。
・シーラント層:接着性ポリオレフィン系樹脂(三井・デュポンポリケミカル(株)製(VN503 10μm))およびエチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル(株)製:N1108C(10μm))を溶融押出により共押し出した積層体。
・目止め層および剥離層:
<ポリアミドワニスの調整>軟化点が105℃〜111℃であるポリアミド樹脂(花王(株)製:レオマイドS−2110PL)30部をトルエン50部、イソプロピルアルコール20部に混合溶解させて、固形分30%の試験用ポリアミドワニス(樹脂A)を得た。
<ニトロセルロースワニスの調整>平均重合度が50であるニトロセルロース(旭化成(株)製:1/8H)30部を、酢酸エチル30部とイソプロピルアルコール40部に混合溶解させて、固形分30%の試験用ニトロセルロースワニス(樹脂B)を得た。樹脂Aと樹脂Bとを重量%で7:3の割合で混合し、目止め層および剥離層を得た。
本実施形態に係る湯切り孔付き蓋の作製は以下の手順により行った。まず、片アート紙のコート剤で処理されている面に絵柄の印刷を施し、片アート紙のコート剤で処理されていない面の剥離領域内に目止め層および剥離層を塗工した。ただし後述する湯切り孔内は、目止め層および剥離層を塗工しない。続いて基材層を、二軸延伸PETフィルムとアルミニウムとをドライラミネートして作製した。続いて片アート紙の剥離層塗工面と基材層の二軸延伸PETフィルム面とを、溶融押出温度を320℃に設定した押出ラミネート法によって低密度ポリエチレン(三井化学(株)製:ミラソン)を厚さ20μmで貼り合わせた。続いて、溶融押出により基材層のアルミニウム面に共押し出しでシーラント層を積層した。
ロータリーダイカッターにより、シーラント層側から上シートまでのハーフカット加工で湯切り孔とプルタブ用ハーフカットとを形成した。また、同加工機で上シート側から低密度ポリエチレン層までのハーフカット加工で連続線の切離線を形成した。切離線内に湯切り孔が形成されている。
湯切り用プルタブを剥離領域に設け、開封用プルタブは湯切り用プルタブの対角位置で非剥離領域が隣接する外周縁に設けるように、抜き加工により、湯切り孔付き蓋の形状を得た。
〔湯切り適性〕
湯切り孔の幅狭、幅広、形状、湯切り孔の間隔、孔配置、麺の太さをまとめたのを表1に示す。なお、この適正評価のために使用した実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例7の湯切り孔の形状及び位置関係を図7〜図23に示す。
(評価方法)
本発明の湯切り孔付き蓋を使用した容器で、開封用プルタブから湯切り孔付き蓋を剥がして、お湯を標線まで300ml注ぎ、3分間再封して蒸らした後、剥離領域の上シートを分離して湯切り孔を露出させた後、容器を90°傾けて湯切りを行った。その際に、以下の評価を行った。結果を表2に示す。なお、この評価のために使用した実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例7の湯切り孔の形状及び位置関係を図7〜図23に示す。
(1)湯切適性:破れなく湯切り可能な場合(○印)とそうでない場合(×印)との2つの態様で評価した。
(2)湯切速度:湯が容器からなくなるまでにかかる時間が20秒以下の場合(○印)とそうでない場合(×印)との2つの態様で評価した。
(3)残湯量:湯切り後の残湯量が10ml以下の場合(○印)とそうでない場合(×印)との2つの態様で評価した。
(4)麺零れ:内容物の麺が零れ落ちることが無い場合(○印)とそうでない場合(×印)との2つの態様で評価した。
なお、上述のように良い(丸印)又は良くない(×印)の何れとも判定し難い評価の場合、「−」印を付した。
この表2から分かるように、この第2の実施形態の特徴に基づいて実施した実施例1〜実施例10(図7〜図16)の湯切り孔の構成によれば、湯切り適正、湯切り速度、湯切り後の残湯量、及び麺雫れの何れの評価項目についても満足のできる結果を得た。これは、比較例1〜比較例7(図17〜図23)の湯切り孔の構成の場合、満足できない項目や何れの評価もできない項目が必ずあったことと比べて非常に良い結果を示している。
したがって、本実施形態の湯切り孔の構成を採用すれば、前述した第1の実施形態及びその変形形態で得られた利点に加え、従来知られた特開2000−229674公報や特許第4435515号公報に記載された構成のものとは異なり、本実施形態独自の優れた湯切り性能を発揮することができる。
すなわち、孔間隔の上限値を限定することにより個々の湯切り孔から流出する湯が合流し、湯切り孔の周辺を濡らしながら湯が流出する状態となる。これにより、湯切り時に湯切り孔の周囲の表面張力による圧力損失が解消され、湯切り孔の周囲と湯間との摩擦力が低減し、湯切り孔から流出する湯の流速が改善されることにより湯切速度を改善することができる。また、孔間隔の下限値を限定することにより、湯切り孔周辺の下シートの強度を強化し、湯切り時に下シートが破れることなく安全に湯切り作業を行なうことができる。
さらに、孔の寸法の上限値および下限値を限定することにより、形状を限定することなく、また麺等の内容物が流出することなく、高い排湯性能を得ることができる。
また、湯切り孔の重心の位置が直交する座標上に配置することにより、湯切り孔の周囲の下シートは、直線が交差する網目形状になる。このため、湯切り時に内容物および湯の重量により湯切り孔の周囲の下シートが3次元的に撓むことができる。したがって、内容物で湯切り孔が塞がれることなく3次元的隙間から湯を切ることができる。3次元的隙間から湯を切ることができるという効果により、特に湯切り作業の最後で、残湯量を少なくすることができる。
さらに、湯切りをする際は、麺が絡まった状態になり、湯切り孔の寸法が麺の太さより大きくても、内容物が流出することなく湯切りすることは可能である。しかし、湯切り孔の寸法が麺の太さよりも4倍以上になると、麺が絡まった状態でも流出してしまうことが多い。この点、本実施形態によれば、湯切り時の麺の太さと孔の寸法の関係を限定することにより、内容物の流出を回避することができる。
(第3の実施形態)
以下、図24〜図29を参照して、第3の実施形態に係る容器の蓋材を説明する。
本実施形態に係る蓋材について説明する。
図24および図25に、本実施形態に係る容器CTの蓋材41の概観および断面を示す。これらの図に示すように、この蓋材41は、容器本体BDの開口部OPのフランジFRの外縁とほぼ同じ外形を有する蓋本体42と、開封用プルタブ43と、湯切り用プルタブ45を有する蓋材である。
蓋材41は、下シート52とこれを被覆する上シート51が、全領域にわたりほぼ均一な接着力で剥離可能に積層されている。なお、後述するように、この下シート52と上シート51との間には、界面剥離による剥離層(接着界面)が形成される。つまり、この界面剥離による剥離層を以って上シート51及び下シート52が相互に積層されている。
また、湯切り用プルタブ45の近傍には、湯切り孔47を形成するための、下シート52を垂直方向に貫通する湯切り孔用ハーフカット47aが複数個配置されており、湯切り用プルタブ45と湯切り孔47を含む剥離領域Aと、開封用プルタブ43を含む非剥離領域Bとを区分する位置に上シート51を垂直方向に貫通する部分剥離用ハーフカット46aが配置されている。
湯切り用プルタブ45を引っ張って、剥離領域Aの上シート51を剥離することにより、湯切り孔用ハーフカット47aの内側部分の下シート52を上シート51に随伴させて除去することで湯切り孔47を露出させることができる。
図25および図26を参照しながら、本実施形態に係る蓋材41を使用した容器CTの使用方法について説明する。
容器本体BDに内容物53を収納し、容器本体のフランジFRに蓋材1を熱シールする。喫食時には、まず開封用プルタブ43を少し開封し、所定量の湯54を注ぐ。開封用プルタブ43は、フランジFRに引っ掛けて再封止するのが好ましい。規定時間経過後、湯切り用プルタブ45を引き上げて上シート51のみを除去する。この時、湯切り用プルタブ45の付け根部分に、下シートのみを貫通するハーフカットであるプルタブ用ハーフカット45aを設けておくと、円滑に上シートのみを剥離することができる。この操作によって湯切り孔47が露出するので、容器を傾けて湯切り孔から湯を排出する。
図27は、図24に示す剥離領域の拡大図である。
本実施形態係る蓋材1の特徴として、湯切り孔用ハーフカット47aの形状が細長い形状をなし、その中心線47cは、湯切り用プルタブ45から剥離領域Aを剥離する方向dに対して、直角もしくは平行方向のいずれでもない、斜め方向に配置されていることを特徴とする。
図27の例では、剥離領域Aを剥離する方向dとプルタブ中心線45cは一致している。剥離方向dと湯切り孔用ハーフカットの中心線47cとのなす角度である湯切り孔中心線の角度θは、図27の例では約60°である。この角度θとしては、0°や90°でなく、わずかにずれていればよいが、45°±30°程度が好ましく、45°±15°程度が最も好ましい。
蓋材1においては、湯切り孔(湯切り孔用ハーフカット)の中心線47cに対して斜め方向に上シート51が剥離されることになる結果、湯切り孔用ハーフカット47aの内側の下シート部分が大きく撓むことがなく、剥離形状により連続的に変異する剥離強度を発揮することにより、湯切り孔部分の下シート52を確実に剥離除去できる。
図28は、本実施形態に係る蓋材の変形態様を示した平面模式図である。なお断面の構造は、図25、図26に示したものと共通であるので、その詳細な説明は省略又は簡略化する。
この変形形態に係る蓋材41は、湯切り孔用ハーフカット47aは、湯切り用プルタブ45から剥離領域Aを剥離する方向dに対して左右対称に湾曲した形状であることを特徴とする。
このように、湯切り用プルタブ45から湯切り領域6を剥離する方向dに対して湯切り孔形状を湾曲させることにより、剥離起点の直線と交わる湯切り孔の周縁長さを低減することができ、安定した剥離強度で上シート51を剥離することができる。
図29は、上述した第3の実施形態及びその変形形態に係る蓋材41の層構成の一例を示した断面説明図である。図示するように、蓋材41は、下シート52とこれを被覆する上シート51が、全領域にわたりほぼ均一な接着力で接着界面55において剥離可能に積層されて積層体LAを形成している。上シート51と下シート52の材質、構成については、特に制限はなく、剥離可能でありさえすればよいが、蓋材全体として要求される諸性能や上シートを剥離する際の操作性、さらには経済性等を満足するために、最も好ましい構成が決定される。
上シート51と下シート52の接着界面55において、一方の側は二軸延伸フィルムであり、他の側はポリオレフィン系の接着性樹脂である構成とする。これにより、適度な剥離性を安定して発揮させる事が容易に可能となる。この場合、どちらが上シート側に来るか、下シート側に来るかは、目的とする層構成に応じてどちらの場合もあり得る。
また、この場合、二軸延伸フィルムの、前記接着性樹脂との接着界面側一面に剥離強度を高めるためのコーティング層を積層することにより、剥離性をさらに最適に設定することが可能となる。
蓋材の最も一般的な層構成としては、上シートとして上から順に紙/ポリオレフィン系接着性樹脂、下シートとして上から順に二軸延伸フィルム/接着剤/ガスバリア層/接着性樹脂層/シーラント層である。
紙としては、坪量79.4g/m2 〜127.9g/m2程度の片面アート紙や片面コート紙、上質紙等が使用される。また紙の表面には通常、最終商品として必要な印刷や、保護ニス等が施される。
ポリオレフィン系の接着性樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂が用いられる。
二軸延伸フィルムとしては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルム、二軸延伸PPフィルム(OPP)、二軸延伸ナイロンフィルム等が用いられる。
ガスバリア層としては、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ガスバリア性ナイロンフィルム、ガスバリア性ポリエチレンテレフタレートフィルム等のガスバリア性フィルムや、PETフィルム等に酸化アルミニウムや酸化珪素等の無機酸化物を蒸着させた無機酸化物蒸着フィルム、あるいは、ポリ塩化ビニリデンコーティング、水溶性樹脂と無機層状化合物を含有する被膜や金属アルコキシドあるいはその加水分解物とイソシアネート化合物を反応させた被膜からなる樹脂層などのガスバリアコーティング層、あるいはアルミニウム箔等の金属箔などを用いることができる。
ガスバリア層として、厚さ5μm以上且つ12μm以下のアルミニウム箔を下シートに用いる。これにより、ガスバリア性に加えて遮光性も十分に確保される。特に軟質のアルミニウム箔を用いた場合には、湯切り孔部分の上シートを剥離する際、湯切り孔ハーフカット内部の下シートに上シートから分離される方向に発生する弾性反発力を低減し、且つ注湯口を開口する際に必要な開口保持性を付与する他、一旦開封して湯を注いだ後に、開封部分を再封止する時のデッドホールド性が良好となる。アルミニウム箔の厚さとしては、5μm未満では取り扱いが困難であり、またデッドホールド性が劣る。12μmを超える厚さであると、腰がありすぎて好ましくない上、経済的にも劣る。
シーラント層としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン−メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。
シーラント層としては、上記材料の単層でもよいが、高価なイージーピールシーラントを用いる場合などには、シーラント層を薄くするために接着性樹脂との共押出しとしてもよい。
図29に示した積層体LAの層構成としては、上シート51として紙63とポリオレフィン系接着性樹脂64が積層されており、下シート52として二軸延伸フィルム67と、アルミニウム箔68と、接着性樹脂69aとイージーピールシーラント69bの2層からなるシーラント層69が積層されており、上シート51と下シート52とが接着界面55を形成している。
図29の例では、二軸延伸フィルム67の表面に剥離強度を高めるためのコーティング層66が設けられている。これらのコーティング層としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)系ヒートシールニスやPET系ヒートシールニス、ポリブタジエン系アンカーコート(AC)剤、イミン系AC剤、イソシアネート系化合物、有機チタネート系化合物等が使用できる。
以下、実施例に基づいて、本実施形態係る蓋材41についてさらに具体的に説明する。
(実施例1)
図29に示した層構成の積層体を作製した。まず、アルミニウム箔(住友アルミニウム社製:軟質アルミニウム箔(厚さ7μm))とPETフィルム(東洋紡績社製:E5100(厚さ12μm、片面コロナ処理))をドライラミネート接着剤にて貼り合わせ、アルミニウム箔面にシーラント層として接着性樹脂(三井デュポン社製:EMAA N1108C(厚さ10μm))とイージーピールシーラント層(三井デュポン社製:VN503(厚さ10μm))とを共押出ラミネート法によって積層し、この積層体を下シートとして得た。
この得られた下シートのPET面と紙(王子製紙社製:片面アート紙(グラビアアート坪量84.9g/m2))とをLDPE(住友化学社製:L2340E(厚さ20μm))の押出ラミネートによって積層して積層体を得た。押出時のダイ下温度は320℃とした。なお、PET面には、コーティング層は設けなかった。
この得られた積層体のシーラント面の側から図24に示した形状の湯切り孔用ハーフカットとプルタブ用ハーフカットとをLDPE層に到達する深さの切込み線として形成した。一方、この積層体の表面側からは、部分用ハーフカットをPETフィルムに到達する深さの切込み線として形成した。なお、湯切り孔の幅は3mmで、長さは25mmとした。
同様にして、図28に示した形状の湯切り孔用ハーフカットとプルタブ用ハーフカット、および部分剥離用ハーフカットを同様に形成した。得られた積層体の外周を抜き加工して図24および図28に示したような2種類の蓋材を作成した。
(実施例2)
延伸フィルムとしてPETフィルム(東レフィルム加工社製:P60(厚さ12μm))を使用し、アルミニウム箔の厚さを12μmとした。これ以外は実施例1と同様とし、図24と図28の構成に基づく2種類の蓋材を作成した。
(実施例3)
延伸フィルムとしてOPPフィルム(東セロ社製:U−1(厚さ20μm))を使用し、アルミニウム箔の厚さを9μmとした。これ以外は実施例1と同様の構成とし、図24と図28の構成に基づく2種類の蓋材を作成した。なお、OPPフィルムのLDPEとの接着界面は、コロナ処理面とした。
(実施例4)
紙の坪量を104.7g/m2とし、ダイ下温度を300℃とした。これ以外は実施例1と同様の構成とし、図24と図28の構成に基づく2種類の蓋材を作成した。
(実施例5)
LDPEに替えてLLDPE(東ソー社製:08L51)を用いた。これ以外は実施例1と同様の構成とし、図24と図28の構成に基づく2種類の蓋材を作成した。
(実施例6)
PETフィルムのLDPEとの接着界面にコーティング層(大日精化社製:EVA系ヒートシールニス:1001−B93(塗布量5g/m2))を設けた。これ以外は実施例1と同様の構成とし、図24と図28の構成に基づく2種類の蓋材を作成した。
(実施例7)
PETフィルムのLDPEとの接着界面にコーティング層(DIC社製:PET系ヒートシールニス:A−928(塗布量3g/m2))を設けた。これ以外は実施例1と同様の構成とし、図24と図28の構成に基づく2種類の蓋材を作成した。
(実施例8)
PETフィルムのLDPEとの接着界面にコーティング層(日本触媒化学社製:ポリブタジエン系AC剤:EL−451(塗布量1g/m2))を設けた。これ以外は、実施例1と同様の構成にし、図24と図28の構成に基づく2種類の蓋材を作成した。
(比較例1)
実施例1に用いたのと同じ材料を用いて、まず紙の裏面の湯切り孔部を除く剥離領域に剥離ニスを塗布した。これ以外は実施例と同様に構成し、図24と図28の構成に基づく2種類の蓋材を作成した。この蓋材の場合、剥離面は紙とLDPEの接着界面である。
以上の実施例および比較例に関わる蓋材の製造条件をまとめて表3に示す。
以上の各条件の下で製造された蓋材を発泡ポリスチレン樹脂製のカップのフランジにヒートシールして容器として完成させた。この後、容器の開口部の一部から熱湯を標線まで注ぎ、開口部を再封止して3分間保持する。湯切り用プルタブを持ち上げ、湯切り領域(剥離領域A)の上シートを剥離除去した。このときの剥離性と、紙破れ発生の有無、湯切り孔部の接着強度の低下による孔の落下または孔残りの有無を確認した。その結果を表4に示す。
この評価に際して剥離強度は、JIS−K6854に従って測定した。つまり、15mm幅短冊形状のサンプルのT字剥離強度をN=12の平均値として測定した。また、剥離性などの評価は、シール条件が160℃、0.25MPa、0.55sec、N=100の元で行い、以下のような態様で評価分けした。
剥離性:これは剥離の総合評価であり、良好(○印)及び不可(×印)の2つの態様で評価した。
紙切れ:剥離を行ったときに紙切れが生じなかった場合(丸印)及び紙切れを生じた場合(×印)の2つの態様で評価した。
孔残り:湯切り孔を成す下シートの部分が剥離に伴って上シートに付随して湯切り孔が開く場合(丸印)及び付随せずに残る(湯切り孔がきっちりと開かない)場合(×印)の2つの態様で評価した。
孔落ち:湯切り孔を成す下シートの部分が剥離に伴って上シートから落下した場合(×印)及び落下せずに付随した(湯切り孔がきっちりと開いた)場合(○印)の2つの態様で評価した。
表4の結果から、図24及び図28に示す構成を有する蓋材は、剥離領域の剥離性が良好であり、孔落ち、孔残りもなく、安定した性能を発揮することが分かる。
なお、適正な剥離強度としては、孔部の落下を回避する観点から、常態ならびに注湯後において0.1N/15mm以上が望ましく、剥離適性の観点からは注湯後において1.0N/15mm以下であることが望ましい。
したがって、本実施形態の湯切り孔の構成を採用すれば、前述した第1の実施形態及びその変形形態で得られた利点に加え、従来知られた特開2000−203653号公報に記載された構成のものとは異なり、本実施形態に独自の優れた作用効果を発揮することができる。これを以下に述べる。
すなわち、全面剥離可能な積層構成を採用することにより、加工時の見当精度を軽減しているものであり、これにより製品品質を大幅に改善できるものである。従来、湯切り孔用ハーフカットが規定する湯切り孔の形状が細長い形状の場合、湯切り孔の長さ方向に上シートを剥離すると、湯切り孔用ハーフカットの内側の下シート部分が大きく撓みながら上シートから分離される方向に弾性反発力が働く。加えて、湯から発生する蒸気が上下シート間の接着界面に付着するので接着強度も弱まる。この結果、上シートから下シートが剥離・落下して下シート側に残留してしまうことがあった。一方、湯切り孔の長さ方向の直角方向に上シートを剥離すると、その剥離が孔の長辺に差し掛かったとき、ユーザの剥離動作が局所的に止まったり、再開したりするという動作を繰り返すことになる。これでは、安定した剥離感を得られない。また、上下シート間の剥離強度と上シートの材質強度の関係によっては、上シートが破れ、剥離機能上の不具合が生じることもあった。
これに対し、本実施形態に係る蓋材は、湯切り孔の長辺方向に平行な中心線に対して斜め方向に上シートを剥離することになる。このため、湯切り孔用ハーフカットの内側下シート部分が大きく撓むことがない。したがって、剥離形状により連続的に変異する剥離強度を発揮することにより、湯切り孔部分の下シートを確実に剥離除去できる。
また、上シートを剥離するときに、剥離起点となるハーフカットと湯切り孔の周縁の重なりが多いと、剥離強度の脈動が発生し、連続した剥離強度を得られない。しかし、本実施形態の一例によれば、湯切り用プルタブから剥離領域を剥離する方向に対して湯切り孔の形状を湾曲させている。このため、剥離起点となるハーフカットと交わる湯切り孔の周縁長さを低減することができ、安定した剥離強度で上シートを剥離することができる。
また、本実施形態では、上シートと下シートが剥離可能に積層された接着界面において、一方の側が二軸延伸フィルムであり、他の側がポリオレフィン系の接着性樹脂である。このため、適度な剥離性を安定して発揮させることが容易になる。これは、被着容器との熱接着を行う際、剥離界面が接着性樹脂同士の界面であると、熱による接着強度への影響が大きいが、二軸延伸フィルムと接着性樹脂の界面においては二軸延伸フィルム層の熱安定性により接着強度が保たれ、安定した剥離適性を発揮できる。
さらに、接着界面に剥離強度を高めるためのコーティング層を含む場合、湯上シートを部分的に剥離するときの剥離の重さを最適に且つ容易に設計することができる。特に、注湯後の剥離適性において、剥離界面に蒸気が介在したときの剥離強度の低減を回避することができる。
また、本実施形態によれば、下シートにアルミニウム箔を含むので、以下のような様々な利点もある。つまり、蓋材のガスバリア性及び遮光性が向上し、内容物の保存性が高まる。また、剥離領域の上シートを部分的に剥離するときに、湯切り孔用ハーフカットの内部の下シートに上シートから分離される方向に発生する弾性反発力を低減できる。また、注湯口を開口する際に必要な開口保持性を付与できる。さらに、一旦開封して湯を注いだ後に、開封部分を再封止するときのデッドホールド性も良好である。
以上のように本実施形態によれば、全面剥離可能な積層構成の蓋材において、湯切り孔用ハーフカットが規定する湯切り孔の形状を細長い形状にしても、上シートの剥離時に、そのハーフカットの内側の下シート部分を確実に上シートに随伴させ、安定した剥離強度で剥離除去して湯切り孔を出現させることができる。この結果、湯切り孔の形状として円形以外の形状を採用することが可能であり、それにより、排湯速度の改善、デザイン面における自由度の向上などの利点が得られる。
(第4の実施形態)
以下、図30〜図35を参照して、第4の実施形態に係る容器の蓋材を説明する。
図30は、本実施形態の蓋材71が取り付けられた食品容器CTを示す斜視図である。食品容器CTは、例えば熱湯を注いで調理する即席焼きそば等の容器として使用できるものであり、内部に食品が充填される容器本体BDの開口した上部を覆うように蓋材71が取り付けられて構成されている。蓋材71には、前述したと同様に、部分剥離用ハーフカット72及びプルタブ用ハーフカット74Aが形成されている。部分剥離用ハーフカット72に沿って蓋材71の一部を剥離して除去することにより、図31に示すように、容器本体BDの内部に連通する湯切り孔73を所定の部位に形成することができる。
図32は、蓋材71の平面図である。蓋材71は、平面視において略矩形に形成されている。湯切り孔73が形成される部位(角部)からは湯切り用プルタブ74が延出しており、蓋材71の一部を剥離して除去する際のツマミとして用いることができる。湯切り用プルタブ74の根本付近には、湯切り用プルタブ74の幅方向に延びて蓋材71を厚さ方向に貫通するスリット75が形成されている。なお、このスリット75は形成しないようにしてもよい。
湯切り用プルタブ74が形成された角部と対角となる角部には、開封用プルタブ76が延出しており、容器本体BDに熱湯を注ぐ際に蓋材71を容器本体BDから剥離するためのツマミとして用いることができる。開封用プルタブ76の幅方向寸法は、スリット75の長手方向の寸法以下に設定されており、開封用プルタブ76はスリット75に挿通可能である。
図33は、図32のAA−AA線における断面図である。蓋材71は、表面層81と、プラスチックからなる中間層82と、表面層81と中間層82とを接合する接合層83と、容器本体BDと接合するための易剥離層84とを備えている。このうち、表面層81及び接合層83が蓋材の上シートを構成し、一方、中間層82及び易剥離層84が下シートを構成している。
表面層81は、蓋材71の上面を形成する層であり、紙を含む材料で形成されている。表面層81の材料としては、アート紙、コート紙、上質紙、晒クラフト紙などを用いることができるが、特に限定されるものではなく、各種紙材料を使用することが可能である。紙材料を使用する場合、紙坪量についても特に制限はないが、1平方メートルあたり50〜250グラム(g/m2)以上のものが好ましく、80〜150g/m2のものがより好ましい。秤量がこれより大きくなると、表面層が厚くなりすぎ、注湯時の開封保持性が悪化してしまうことがわかっている。また、秤量がこれより小さくなると、表面層が薄くなりすぎ、後述のように易剥離層側からハーフカットを入れた場合のハーフカットの精度調整が困難であり、貫通してしまう恐れが大きい。
表面層81は、食品容器CTの外観や充填された食品の保存性に大きく影響する部位であるため、必要に応じてその上面または下面(接合層83側の面)に絵柄を印刷したり、遮光性を付与する印刷が施されたりしてもよい。
中間層82は、プラスチックからなるフィルム状の材料で形成されている。中間層82を形成するプラスチック材料には特に制限はなく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)や二軸延伸ポリプロピレン(OPP)等を好適に使用することができる。中間層82のうち、接合層83と接合される第1の面82Aは、後述する所定の剥離強度を実現するために、材質の選択などにより、JIS−K6768に従って測定した濡れ性が40ダイン(Dyne)以下に設定されている。
中間層82の一部は、湯切り孔73が形成される際に、表面層81の一部に追随して除去されるため、10マイクロメートル(μm)以上30μm以下の厚みとされると、容器本体BD側に残留しにくく、好ましい。
接合層83は、ポリオレフィン系プラスチック樹脂からなる。ポリオレフィン系プラスチック樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられるが、取り扱いの面から低密度ポリエチレン(LDPE)の使用がより好ましい。
表面層81と中間層82とは、接合層83を形成するポリオレフィン系プラスチック樹脂を用いたエクストルージョンラミネート法により、接合層83を介して一体に接合される。接合層83の形成材料の押出し温度としては280℃以上340℃以下が好ましい。押出し温度が280℃より低い場合、製膜性が劣るだけでなく、形成材料自身の表面酸化が不足し、表面層81と中間層82との剥離強度の著しい低下を引き起こしてしまう。また、押出し温度が340℃よりも高い場合、形成材料の分解が進んでしまうため、均一な加工ができないだけでなく、やはり剥離強度の著しい低下を引き起こしてしまい、好ましくない。
易剥離層84は、蓋材71と容器本体BDとを接合するための層であり、ベース樹脂とブレンド用樹脂とを含む公知の構成を有する。易剥離層84は、中間層82において、第1の面82Aと反対側の第2の面82B上に形成される。
中間層82と易剥離層84の接着方法としては、例えば、ウェットラミネーション法、ドライラミネーション法、ノンソルベントドライラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、エクストルージョンラミネーション法、及びエクストルージョンラミネーション法を利用したサンドイッチラミネーション法などの公知の各種方法を適宜選択して使用することができる。
易剥離層84におけるベース樹脂とブレンド用樹脂との組み合わせは、容器本体BDの材質等にもとづいて適宜決定されればよい。例えば、容器本体BDがポリエチレン(PE)で形成される場合は、ベース樹脂/ブレンド用樹脂の組合せとしては、PE/エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、PE/エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、PE/エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、およびPE/エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)等の組合せが好ましい。
また、容器本体BDがポリスチレン樹脂(PS)で形成される場合は、EVA/ポリブテン樹脂(PB)や、PE+エラストマー+石油樹脂/PB等の組合せが好ましい。
さらに、容器本体BDがポリプロピレン樹脂(PP)で形成される場合は、PP/PSやPP/PE等の組合せが好ましい。
易剥離層84の厚さは、シール強度、加工性を考慮すると、15μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上70μm以下であるとより好ましい。また、易剥離層84は、低温シール性に優れたものが好ましく、シール温度の変化によらず、シール強度に変化のないものであると、充填される食品の種類によらず安定した接合が行えるため、好ましい。
易剥離層84の剥離特性については特に限定されず、凝集剥離タイプ、層間剥離タイプ、界面剥離タイプのいずれのタイプであってもよい。
湯切り孔73を形成するための湯切り孔用ハーフカット77は、図33に示すように、蓋材71の易剥離層84側から表面層81の厚さ方向中間部まで延び、表面層81を貫通しないように形成されている。湯切り孔用ハーフカット77は、図32に示すように、蓋材71の平面視において湯切り孔73に対応した形状とされており、湯切り孔用ハーフカット77および平面視において湯切り孔用ハーフカット77に囲まれた接合層83、中間層82、及び易剥離層84の一部が湯切り孔形成部78となっている。
なお、湯切り孔用ハーフカット77は必ずしも表面層81に達していなくてもよく、少なくとも中間層を貫通していればよい。
蓋材71は、容器本体BDに食品が充填された後、容器本体BD上部の周縁に易剥離層84が熱融着されることにより、容器本体BDの内部空間を密閉するように取り付けられる。蓋材71が所定の形状に抜き加工されることにより食品容器CTが完成する。この抜き加工は、蓋材71が容器本体BDに取り付けられる前に行ってもよいし、容器本体BDへの取り付け後に行われてもよい。
上記のように構成された食品容器CTおよび蓋材71の使用時の動作について、充填された食品が即席焼きそばである場合を例にとり説明する。
ユーザは、開封用プルタブ76を把持して、蓋材71の一部を容器本体BDから剥離し、食品容器CTを開封する。次にユーザは内部のかやくや調味料等を取り出し、かやくを乾麺の上にあける等の必要な手順を行う。このとき、開封用プルタブ76をスリット75に挿入して係止しておくと、剥離された蓋材71の一部が安定して保持されるため、好ましい。ユーザは必要な手順を終えた後、容器本体BDに熱湯を注ぎ、開封用プルタブ76を容器本体BDに係止して蓋を閉じる。
所定の調理時間が経過したら、ユーザは湯切り用プルタブ74を把持し、容器本体BDから離間する方向に引っ張る。すると、部分剥離用ハーフカット72に囲まれた剥離領域A(図32参照)内の表面層81および接合層83が中間層82から剥離される。このとき、湯切り孔用ハーフカット77に囲まれた湯切り孔形成部78は、図34に示すように、剥離される剥離領域A内の表面層81に追随して除去される。こうして、容器本体BDに接着された蓋材の平面視における剥離領域Aの内側に湯切り孔73が形成される。
ユーザは湯切り孔73が低くなるように食品容器CTを傾けて、不要な湯等の液体を湯切り孔73から排出する。その後、蓋材71すべてを容器本体BDから剥離して除去し、取り出しておいた調味料を混ぜる等の所定の作業を行うと、即席焼きそばが完成する。
本実施形態の蓋材71によれば、中間層82において、JIS−K6768の測定方法によって測定した第1の面82Aの濡れ性が40ダイン以下に設定されているため、エクストルージョンラミネート法により接合を行う際に、第1の面82Aと接合層83との接合が適度に緩和され、過度に強固に接合されることが抑制される。その結果、中間層82と接合層83との剥離強度が低く抑えられて湯切り孔73を形成する際に剥離領域A内の表面層81を除去するのに必要な力量が小さくなる。したがって、ユーザは容易に剥離領域A内の表面層81を除去して湯切り孔73を形成することができる。
また、剥離ニス等を用いた蓋材と異なり、中間層82と接合層83との剥離強度は蓋材71自身および周囲の温度によって変化しない。そのため、蓋材71が加熱されて高温となった状態でも、加熱されない又は冷やされたような、例えば0℃以上30℃以下の温度範囲にある状態であっても、剥離領域A内の表面層81を容易に剥離除去することができる。したがって、湯を用いて調理するような即席焼きそば等の食品だけでなく、例えばところてん、みつ豆、ゼリーなどの、加熱せずに又は冷やして食べるような食品が充填される場合であっても好適に用いることができる。
さらに、剥離ニス等を用いた蓋材の場合、剥離ニスを塗布した部位のみ剥離強度が低下するため、剥離ニスを塗布した部位と湯切り孔を形成するためのハーフカットの形成位置とを蓋材の平面視において整合させる、いわゆる見当合わせという作業が必要になる。この見当合わせは、蓋材の製造効率向上においてボトルネックとなる場合があるが、本実施形態の蓋材71においては、中間層82と接合層83との剥離強度は部位によって異なるものではなく、すべての部位において剥離強度が低く抑えられている。このため、湯切り孔73を形成するためのハーフカットの形成位置が多少ずれても、剥離領域A内の表面層
10が剥離しにくくなることはなく、ユーザは問題なく湯切り孔73を形成することができる。したがって、上述した見当合わせはほぼ不要となり、製造効率を著しく向上させることができる。
さらに、剥離ニスを用いないため、湯切り孔の配置や個数、形状等が異なる蓋材を製造する場合でも、剥離ニスの塗布態様を変更する等の余分な作業が必要なく、ハーフカット形状を変更するだけで容易に対応できる。したがって、同一材料を用いて多種多様な蓋材を製造する場合にも好適に対応することができる。
本実施形態に係る蓋材において、中間層82の第1の面82Aの濡れ性は、JIS−K6768の測定方法において、20ダイン以上40ダイン以下とされるのが好ましい。濡れ性が20ダイン未満となると、中間層82と接合層83との接合が弱くなりすぎ、表面層81と中間層82とを一体に接合することが困難となる場合がある。
また、中間層82と接合層83との剥離強度は、JIS−Z1707に従って測定した値が0.1N/15mm以上1.0N/15mm以下に設定されるのが好ましく、0.15N/15mm以上0.5N/15mm以下に設定されるのがより好ましい。剥離強度が0.1N/15mm以上1.0N/15mm以下であれば、ほとんどのユーザが剥離領域内の表面層を容易に剥離除去して湯切り孔を形成することができる。一方、剥離強度が0.1N/15mm未満となると、剥離領域内の表面層を剥離したときに、湯切り孔形成部の一部が接合層83から剥離してしまい、湯切り孔が形成されない場合があるため、避けた方がよい。
以下、本発明の実施例の蓋材と、構成の異なる比較例の蓋材とを用いて、中間層第一面の濡れ性と、中間層と接合層との剥離強度を測定した結果を示す。この実験では、3つの実施例と2つの比較例とを用いたので、まずこれらの蓋材の製造手順について説明する。
(実施例1)
表面層81の材料として坪量が105g/m2の紙基材を、中間層82の材料として厚み12μmのPETフィルム(商品名E5100:東洋紡績(株)製)を準備した。次に、エクストルージョンラミネート法により接合層83となるLDPEを320℃で押出し、表面層81と中間層82とを一体に接合した。接合層83と接合される中間層82の第1の面82Aは、コロナ処理の施されていない側の面とした。さらに中間層の第2の面82Bにポリスチレン系樹脂を含む材料をエクストルージョンラミネート法により280℃で押出し、易剥離層84を形成して積層品を得た。続いて、この積層品に対して表面層81側からハーフカットを施して部分剥離用ハーフカット72を形成し、易剥離層84側から湯切り孔用ハーフカット77を形成して湯切り孔形成部78を設けた。最後に積層品に抜き加工を施して略矩形の蓋材を作製した。
(実施例2)
中間層82の材料として片面にコロナ処理が施された厚み12μmのPETフィルム(商品名FE2001:フタムラ化学(株)製)を用いた。第1の面82Aは、コロナ処理の施されていない側の面とした。後述するように当該材料の第1の面82Aの濡れ性が高めであったため、接合層83となるLDPEを300℃で押し出して表面層81と中間層82とを接合した。それ以外は実施例1と同様の手順で蓋材を作製した。
(実施例3)
中間層82の材料として片面にコロナ処理が施された厚み20μmのOPPフィルム(商品名FOR:フタムラ化学(株)製)を用いた。第1の面82Aは、コロナ処理の施されていない側の面とした。それ以外は実施例1と同様の手順で蓋材を作製した。
(比較例1)
中間層82の材料として片面にコロナ処理が施された厚み12μmのPETフィルム(商品名エンブレット(登録商標)PET:ユニチカ(株)製)を用いた。第1の面82Aは、コロナ処理の施されていない側の面とした。それ以外は実施例1と同様の手順で蓋材を作製した。
(比較例2)
中間層82の材料として片面にコロナ処理が施された厚み12μmのPETフィルム(商品名テトロン(登録商標)PC:帝人デュポンフィルム(株)製)を用いた。第1の面82Aは、コロナ処理の施されていない側の面とした。それ以外は実施例1と同様の手順で蓋材を作製した。
上述した実施例1から3および比較例1および2に関して、以下の2項目について測定を行った。
1.中間層第一面の濡れ性
蓋材製造前の中間層82の材料において、第1の面82Aとなる面の濡れ性を測定した。測定には濡れ張力試験用混合液(和光純薬工業(株)製)を用い、JIS−K6768に従って測定を行った。
2.非加熱下における湯切り孔形成時の剥離強度
加熱されていない状態(すなわち、測定時の室温と同程度の温度)の各例の蓋材について、部分剥離用ハーフカット72に囲まれた剥離領域内の表面層81を除去するときの中間層82と接合層83との剥離強度を測定した。測定には引張・圧縮試験機(商品名テンシロンRTF−1250:(株)エー・アンド・デイ製)を用い、JIS−Z1707に従って測定を行った。各例について5つの蓋材を用意し、5回の測定の平均値を測定値とした。
結果を表5に示す。実施例においては、中間層82の第1の面82Aの濡れ性はいずれも40ダイン以下であったが、比較例においてはいずれも40ダインを超えていた。
実施例の剥離強度はいずれも0.15N/15mm以上0.5N/15mm以下の範囲内におさまっており、平均的なユーザが手で容易に剥離できる強度であった。また、各実施例とも、5回の測定において良好に湯切り孔73が形成され、湯切り孔形成部78が表面層81および接合層83とともに除去されずに残留する事態は発生しなかった。
一方、比較例では、いずれも剥離強度が1N/15mmを大きく上回る3.8N/15mmおよび4.5N/15mmであり、平均的なユーザが剥離するには困難な強度であった。
以上より、本実施形態に係る蓋材は、熱が加えられなくても容易に一部を剥離して湯切り孔を形成することができることが確認された。また、実施例2のように、中間層を形成する材料の第一面の濡れ性が比較的高い場合は、エクストルージョンラミネートに使用する樹脂の押し出し温度を低めに設定することにより、剥離強度を低下させることができることも確認された。したがって、中間層材料の第一面の濡れ性と接合層を形成する樹脂材料の押し出し温度とを適宜設定することにより、湯切り孔形成時の剥離強度を、ユーザが容易に剥離できる所望の範囲に設定できることが示された。
このように、本実施形態の湯切り孔の構成を採用すれば、前述した第1の実施形態及びその変形形態で得られた利点に加え、従来知られた特開2000−203655号公報や特許第4190625号公報に記載された構成のものとは異なり、本実施形態独自の優れた湯切り性能を発揮することができる。
なお、上述した実施形態は更に様々な態様に変形可能である。
例えば、上述の実施形態では、表面層が紙材料からなる例を説明したが、本発明の蓋材において、表面層の材料は紙には限定されない。例えば、図6に示す変形例のように、表面層81に代えて樹脂からなる表面層85が設けられてもよい。表面層を樹脂で形成する場合の材料としては、ポリエステル(PET、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミドなど、あるいはこれらの高分子の共重合体など、容器本体BDへの取り付けに耐えうる耐熱性を有する各種材料を使用することができる。その厚みについても特に規定はないが、10〜300μmのものが好ましく、10〜50μmがより望ましい。また、上記材料には、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤などの添加剤を必要に応じて加えてもよい。
さらに、形成された表面層の内面に遮光性を付与する印刷、若しくは遮光性材質のフィルムがラミネートされてもよいし、水蒸気バリア等の各種バリア性が付与されてもよい。これらの加工は、表面層が樹脂からなる場合、紙からなる場合のいずれにおいても可能である。
さらに、紙と樹脂の両方を用いて表面層が形成されてもよい。
また、中間層と易剥離層との間にアルミニウム箔などの金属層が設けられてもよい。即席麺のように注水または注湯が必要な場合、金属層を設けることによって蓋材の剛性が高くなり、開封した状態を保持しやすくなる。その結果、調理時等におけるユーザの作業性が向上され、使いやすい蓋材とすることができる。また、金属層を設けることにより蓋材に遮光性を付与することができるため、内容物の保存性が向上できるという利点もある。
さらに、部分剥離用ハーフカットの形状や湯切り孔の形状、個数、配置等は、充填される食品の種類や調理条件等により適宜設定されてよい。また、部分剥離用ハーフカットを設けずに表面層すべてを剥離除去して湯切り孔を形成するように本発明の蓋材を構成してもよい。
(第5の実施形態)
以下、図36〜図44を参照して、第5の実施形態に係る容器の蓋材を説明する。
以下、本実施形態に係る食品容器CTの蓋材ついてより詳しく説明する。この蓋材90は、図36の部分断面図に示すように、周縁部に湯切り用プルタブ90Aを有する蓋材である。この蓋材90は、上シート91と下シート92とを、一部領域に易剥離層93を介して積層して構成される。
下シート92と上シート91との境界面が剥離領域Aと非剥離領域Bとに区分されている。両者の境界は、上シート91に設けられた切り込みによる部分剥離用ハーフカット94である。なお、この部分剥離用ハーフカット94については後述する。
易剥離層93は、剥離領域Aに設けられている。また、この易剥離層93は、部分剥離用ハーフカット94を越えて、図中の符号ADで示す如く、その周辺の非剥離領域Bにも設けられている。すなわち、易剥離層93は、剥離領域Aと、部分剥離用ハーフカット94近傍の非剥離領域Bにも設けられている。なお、易剥離層93は全面ベタに設けられている必要はないが、上シート91を引き剥がしたとき、その剥離領域Aの略全面で下シート92から剥離できるように設けられている必要がある。
剥離領域Aの1カ所ないし複数箇所には、上シート91を剥離したときに湯切り孔95Aを形成する湯切り孔用ハーフカット95が設けられている。この湯切り孔用ハーフカット95は、下シート92の垂直断面方向に切設され、下シート92を貫通して易剥離層93に達する深さのハーフカット線で構成されていることが望ましい。
この湯切り孔用ハーフカット95は、湯切り孔を囲む閉曲線形状に設けられていてもよいし、周縁の一部の下シートを切り残した形状を構成してもよい。
湯切り孔用ハーフカット95が閉曲線形状に設けられている場合には、閉曲線状湯切り孔用ハーフカット95で囲まれた部位に剥離剤を塗布していない部位(剥離剤非塗布部)を設ける必要がある。前述のように、この場合には、上シート91を下シート92から引き剥がすと、下シート92は湯切り孔用ハーフカット95から切断され、この閉曲線状の湯切り孔用ハーフカット95に囲まれた部位(湯切り孔)は上シート91に接着したまま、下シート92から分離されて、引き剥がされる。
また、湯切り孔用ハーフカット95が周縁の一部の下シート92を切り残した形状を有している場合には、前述の剥離剤非塗布部を設ける必要がない。この場合には、上シート91を下シート92から引き剥がすことにより下シート92が湯切り孔用ハーフカット95から切断された後も、湯切り孔用ハーフカット95によって囲まれた部位が下シート92から分離されることがなく、その切り残し部分によって下シート92に接続された状態で残存する。湯切り孔用ハーフカット95の形状としては、例えば、U字形状、あるいは、C字形状などの開曲線形状である。
次に、部分剥離用ハーフカット94は、上シート91の垂直方向に切設されて、これを貫通する深さの切り込み線によって構成されている。前述のように、部分剥離用ハーフカット94は剥離領域Aと非剥離領域Bとを区分する境界線を示すもので、上シート91を引き剥がす際には、前記プルタブから部分剥離用ハーフカット94までの剥離領域Aにおいて上シート91を引き剥がし、部分剥離用ハーフカット94で上シート91を切断して除去する。なお、この部分剥離用ハーフカット94としては、後述する例のように、長方形などの各種形状に設けることができる。この部分剥離用ハーフカット94が長方形の場合には、前記湯切り用プルタブ90Aから引き剥がしを開始して、この長方形状の部分剥離用ハーフカット94で囲まれた領域を剥離する。
本実施形態に係る上シート91としては、例えば上質紙からなる表面シート96の裏面に目止め層97を塗布したものが使用できる。下シート92としては、例えば、接着性樹脂層98、樹脂フィルム99、金属箔層100、シーラント層101の順で積層した積層体が使用できる。また、易剥離層93は、上シート91の目止め層97の上に離型剤を塗布することで設けることができる。離型剤は、特には限定しないが、易剥離性を持たせるため、樹脂強度の脆いポリアミド樹脂とニトロセルロース樹脂とをバインダーとして用いる、WAXを添加して易剥離性を持たせることが一般的である。易剥離層93はグラビア印刷法やオフセット印刷法によって設けることが可能である。
目止め層97に使用する目止めコート剤も、特には限定しないが、基本的には離型剤と近い成分を含み、紙層への染み込みを防止するためにニトロセルロースの比率を上げたり、ウレタン樹脂を添加したりした処方が一般的である。目止め層97もグラビア印刷法やオフセット印刷法によって設けることが可能である。
次に、本実施形態係る蓋材90の製造方法を説明する。すなわち、まず、上シート91に離型剤を塗布して易剥離層93を設け、下シート92を重ねて両者を接着する。なお、下シート92のうち樹脂フィルム99と金属箔層100から構成される積層フィルムを上シート91と積層した後、シーラント層101を積層してもよい。
次に、こうして得られた積層体に必要な印刷を施した後、湯切り孔用ハーフカット95及び第二切り込みによる部分剥離用ハーフカット94を、順次又は同時に設ける。湯切り孔用ハーフカット95及び第二切り込みによる部分剥離用ハーフカット94を順次設ける場合でも、同じ加工機を使用してインラインで設けることが可能である。そして、最後に製品の外周縁の抜き加工を行うことにより、本実施形態に係る蓋材90を製造することができる。この抜き加工も、湯切り孔用ハーフカット95や部分剥離用ハーフカット94の形成工程とインラインで可能である。
(実施例)
坪量84.9/m2の片面アート紙の裏面に、グラビア印刷機を利用し、ポーシェル版40μ版にて目止めコート剤を塗布し、ヘリオ版70Lにて離型剤を塗布して、易剥離層93付きの上シート91とした。
下シート92として、PETフィルム(厚さ12μm)/ドライラミ接着層/アルミ箔(厚さ7μm)の層構成を有する積層フィルムを準備した。そして、前記上シート91の易剥離層93面に、溶融した低密度ポリエチレン樹脂を15μmの厚みで押し出し、前記積層フィルムのPETフィルムを重ねて積層した。そして、次に、アルミ箔面に2層構成のシーラント樹脂層(厚さ20μm)を押し出した積層体を得た。
なお、紙、目止め剤、離型剤、PETフィルム、アルミ箔、低密度ポリエチレン樹脂及びシーラント樹脂の具体的材質は次のとおりである。
紙:片面アート紙「グラビアアート」(王子製紙(株)製(坪量84.9g))、
2)目止め剤:ポリアミド樹脂(花王(株)製:レオマイド−2110PL)とニトロセルロース(旭化成(株)製:1/8H)を溶剤に溶解・分散させたワニス、
3)離型剤:ポリアミド樹脂(花王(株)製:レオマイド−2110PL)とニトロセルロース(旭化成(株)製:1/8H)及びポリエチレンワックスを溶剤に溶解・分散させたワニス、
4)PETフィルム:片面コロナ処理PETフィルム(東洋紡(株)製:E5100(厚さ12μm))、
5)アルミ箔:軟質アルミ(住友アルミ(株)製(厚さ7μm))、
6)低密度ポリエチレン樹脂:住友化学(株)製:L2340E)、及び、
5)シーラント:
1層目:EMAA「N1108C」(三井・デュポン ポリケミカル(株)製(厚さ10μm))、及び
2層目:イージーピールシーラント(三井デュポン ポリケミカル(株)製:VN503(厚さ10μm))、
次に、加工機として、イズミ産業(株)製のロータリーダイカッターを使用して、第1ユニットにてシーラント面から易剥離層までの深さの切込み線で湯切り孔用ハーフカット95を形成し、第2ユニットにて紙面から易剥離層までの深さの切込み線で部分剥離用ハーフカット94を形成し、更に製品の外周縁の抜き加工を行ない、蓋材90を得た。
なお、部分剥離用ハーフカット94の形状、易剥離領域の位置及び形状、目止め層97の形状によって、次の実施例1〜6、比較例1〜2の8種類の蓋材90を図37〜図44に示すように製造した。なお、これらの図37〜図44は、図36中のBB−BB線に沿った面、すなわち上シートを下シートから剥離した状態を示している。
(実施例1)
図37に示すように、部分剥離用ハーフカット94を角の丸い矩形状とし、その内部を剥離領域として設定した。その上で、易剥離領域を、剥離領域を超えて広く設けた。易剥離領域の形状は部分剥離用ハーフカット94で囲まれた剥離領域と相似形である。なお、剥離領域の内部に9カ所の湯切り孔用ハーフカット95を閉曲線状に設け、その内部に剥離剤を塗布していない部位(剥離剤非塗布部)を設けた。剥離剤非塗布部は、湯切り孔用ハーフカット95で囲まれた部位よりわずかに小さく設けられている。また、目止め剤の塗布形状は易剥離領域の形状と同一である。
(実施例2)
図38に示すように、易剥離領域の形状を囲む線の一部を部分剥離用ハーフカット94の一部と平行にしたが、相似形とはしなかった。その他は実施例1と同様である。
(実施例3)
図39に示すように、易剥離領域を、蓋材を横断する直線とこの蓋材の周縁とで囲まれた領域とした。前記直線は部分剥離用ハーフカット94の一部と平行である。その他は実施例1と同様である。
(実施例4)
図40に示すように、易剥離領域を円形とした。その他は実施例1と同様である。
(実施例5)
図41に示すように、部分剥離用ハーフカット94を、円の周に沿ってジグザグに屈折した折り曲げ線とした。なお、易剥離領域は実施例1と同様の形状である。また、その他も実施例1と同様である。
(実施例6)
図42に示すように、目止め層の塗布領域を、蓋材を横断する直線とこの蓋材の周縁とで囲まれた領域とした。その他は実施例1と同様である。
(比較例1)
図43に示すように、易剥離領域を剥離領域と一致させた。すなわち、両者は同一形状で、かつ、位置も同じである。その他は実施例1と同様である。
(比較例2)
図44に示すように、易剥離領域を剥離領域と一致させた。すなわち、両者は同一形状で、かつ、位置も同じである。その他は実施例5と同様である。
次に、これら実施例1〜6、比較例1〜2を被着容器(発泡PSカップ)に135℃×0.2MPa×0.55secの条件でシールした後、剥離領域に隣接した剥離用プルタブから部分剥離用ハーフカットに沿って剥離領域の上シート材を剥離する評価を行った。
剥離外観:下記状態を目視判定した。
この結果を表1に示す。なお、評価の基準は次のとおりである。
○:部分剥離用ハーフカットの周辺で紙破れ等の不具合が発生せず剥離可能。
×:紙破れ、孔残り等の剥離領域の剥離適性不具合の発生。
この評価の結果を表6に示す。
この表6から分かるように、本実施形態に係る実施例1〜6の蓋材は、比較例のそれと比べて、剥離した後の概観検査で良好な結果が得られた。
したがって、本実施形態の湯切り孔の構成を採用すれば、前述した第1の実施形態及びその変形形態で得られた利点に加え、従来知られた特許第4369713号公報に記載された構成のものとは異なり、本実施形態独自の優れた湯切り性能を発揮することができる。
すなわち、本実施形態では、剥離領域Aのみではなく、その周辺の非剥離領域Bにも離型剤を塗り足し、易剥離領域をより広げている。これにより、易剥離層を形成するコーティング加工の位置と、部分剥離用ハーフカットを形成する加工の位置の見当がずれた場合にも、剥離領域の上シートや下シートの破れなどの不具合を生じることなく剥離除去することができる。これにより製品品質を大幅に改善することができる。
なお、離型剤を蓋材外周縁まで塗り足した場合、蓋材製品端面において剥離強度の弱い易剥離層が露出することになる。これにより、外周縁抜き加工時および輸送時、充填機上での層間剥離が発生するという不具合が発生ことがある。また、離型剤の多くは熱によりブリードアウトする特性を持ったワックス等の成分を含んでいる。このため、製品外周縁に近い内側に設けられた被着容器との熱シール接合部で易剥離層が剥離する可能性が高く、これを起点として上シートと下シートの層間が剥離し、容器の密封性や衛生性に問題が生じる。このことから、非剥離領域において被着容器とのシール領域においても、離型剤の塗り足しは回避した方が望ましい。
また、閉曲線状ハーフカットによって剥離剤非塗布部を囲んだ場合には、上シートを下シートから引き剥がしたとき、この複数の湯切り孔用ハーフカットに囲まれた湯切り孔を露出させた領域は、下シートから分離し、上シートに接着した状態で引き剥がされる。これに対し、本実施形態では、湯切り孔用ハーフカットが周縁の一部の下シートを切り残した形状とすることができる。つまり、例えばU字形状あるいはC字形状の湯切り孔用ハーフカットとしている。そして、このため、上シートを下シートから引き剥がすことにより下シートが湯切り孔用ハーフカットから切断された後も、湯切り孔用ハーフカットによって囲まれた部位が下シートから分離されることがなく、その切り残し部分によって下シートに接続されている。すなわち、上シートを下シートから引き剥がしたとき、湯切り孔用ハーフカットによって囲まれた部位を下シートに接続した状態で、上シートと下シートとは、湯切り孔用ハーフカットによって囲まれた部位を含めて、剥離領域の全面で剥離するのである。このため、剥離領域に剥離剤非塗布部を設ける必要がない。もちろん、剥離剤非塗布部と湯切り孔用ハーフカットとの位置精度に関する配慮も殆ど不要である。
さらに、即席麺容器用の蓋材の多くは、蓋材製品の外周を枚葉状に抜き加工した後、充填機に用いるものであり、枚葉状でのハンドリング性、製品の流通適性を付与する目的で、70〜120g/m2坪量の紙層を含むことが多い。紙の状態は紙の水分量によって変異し、且つ、易剥離層が非常に薄い層であるため、紙の状態によっては適切な剥離状態が得られない。これに対し、本実施形態においては、易剥離層を設ける前に、紙層に目止め層を設けてその表面状態を平滑にし、その後易剥離層を積層するようにしている。このため、易剥離性能を安定化させることができる。なお、目止め層は易剥離層と必ずしも同じ領域に設ける必要はなく、易剥離層の塗布領域より広く目止め層を設けたり、全面に目止め層を設けたりすることが可能である。
以上のように、本実施形態によれば、易剥離層を形成するコーティング加工の領域と部分剥離用ハーフカットの加工上の位置との見当がずれた場合にも、開口領域の上シートや下シートの破れなどの不具合を生じることなく剥離除去することを可能なる。これにより製品品質を大幅に改善することができる。
(変形例)
ここで、上述した各実施形態及びその変形形態に係る蓋材で実施可能な、ハーフカットの位置と部分的に画成される剥離領域との位置関係を図46A〜46Cを用いて説明する。なお、符号は図1に用いたものを再度用いる。
図46Aに示す第1の変形例は、部分剥離用ハーフカット9が完全な閉領域を画成していない状態を示している。つまり、このハーフカット9は、図1にて幾何学的に説明した2つの起点11a、11bから蓋本体の面に沿って内方に延びた後、中央部付近で切残しLFを挟んで互いに対峙した終点9A,9Bで終わっている。このように、2つの起点11a、11bから出た半切りの切込み線が完全に合流する前に切残しLFを持たせ、その内部の領域を剥離領域Aとして設定することもできる。
図46Bに示す第2の変形例は、第1の変形例を発展したもので、図1におけるプルタブ用ハーフカット10の両端の2点10a、10bの位置と上記2つの起点11a、11bとを平面視において一致させたものである。これにより、上下シート6,5の縁、つまり、容器本体のフランジFRの外縁aを使用しないで、部分的な領域である剥離領域Aを設定できる。
さらに、図46Cに示す第3の変形例では、図1に示した部分剥離用ハーフカット9を使用していない。その代わり、プルタブ用ハーフカット10、上下シート6,5の縁、及び、剥離剤の塗布により形成された剥離層8Aにより剥離領域Aを設定している。この剥離領域Aにおいて詳述しないが、湯切り孔に相当する部分には剥離剤は塗布していない。この点は、第1、第2の変形例の場合も同様である。この第3の変形例の場合、前述した部分剥離用ハーフカットをフランジFRの外縁まで移動させ、その前述した切残しLFを作るための終点9A´、9B´を上シート6の縁に置いたものとも考えることもできる。
これらの第1〜第3の変形例に示す位置関係を考慮することで、蓋材の設計に伴う自由度を上げることができる。
以上の実施形態及びその変形形態に係る蓋材は、即席食品などの食品容器の蓋材として説明してきた。しかしながら、本発明に係る蓋材は必ずしもこれに限定されるものではなく、容器本体に水や湯、或いは、触媒などの様々な溶液を注入し、それらの液体により内容物を処理した後、その液体だけを、本発明に係る蓋材に出現させて排出孔を介して排出させる構造であればよく、液体の種類や温度、更には内容物に対する処理の態様などに限定されるもではない。
(産業上の利用可能性)
本発明に係る容器の蓋を用いれば、ユーザは簡単に且つ確実に液体排出孔(湯切り孔など)をその蓋に出現させることができる。このため、この蓋を湯熱により調理する即席食品の容器などに好適に適用できる。