JPWO2011158510A1 - ドリル孔あけ用エントリーシート - Google Patents
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Abstract
Description
加えて、グローバル化による競争の激化と新興国需要を取り込むべく、生産性向上及びコスト低減については、これまでより格段に強く要求されている。そのため、孔位置精度をさらに向上させ、一度に孔あけできる重ね枚数を増やせるように、より孔位置精度に優れたドリル孔あけ用エントリーシートの開発が切望されている。
(1)金属支持箔の少なくとも片面に、結晶性の水溶性樹脂組成物からなる厚さ0.02〜0.3mmの層が形成されたドリル孔あけ用エントリーシートであって、前記水溶性樹脂組成物の結晶粒は、平均粒径が5〜70μmの範囲で、その標準偏差が25μm以下であり、前記水溶性樹脂組成物からなる層のドリルビット進入面の表面粗さSmが8μm以下であり、前記水溶性樹脂組成物からなる層は、前記金属支持箔上に、直接、前記水溶性樹脂組成物の熱溶解物を塗工した後、又は、前記水溶性樹脂組成物を含有する溶液を塗工して乾燥させた後、120℃〜160℃の温度から60秒以内に25℃〜40℃の温度へと、1.5℃/秒以上の冷却速度で冷却して形成されることを特徴とするドリル孔あけ用エントリーシート。
また、前記水溶性樹脂組成物の結晶粒径の平均値を測定する方法としては、ドリル孔あけ用エントリーシートの樹脂組成物層の表面を、V-LASER顕微鏡(型番VK-9700、KEYENCE CORPORATION)を用いて200倍の視野で観察し、任意に選択した50個の結晶粒の各最大直径について同顕微鏡により実測し、その平均値(個数平均)を前記水溶性樹脂組成物の平均粒径とする。なお、本発明では、結晶粒径が1μm未満のものは除外して算出している。
前記ポリアルキレンオキサイドの例としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどが好ましい。さらには分子構造中に立体障害を生じないポリエチレンオキサイドが、より好ましい。ポリアルキレングリコールのポリエステルとは、ポリアルキレングリコールと二塩基酸とを反応させて得られる縮合物である。ポリアルキレングリコールの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールやこれらの共重合物で例示されるグリコール類などが好ましい。また二塩基酸として、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、セバシン酸、及び、ピロメリット酸などの多価カルボン酸の部分エステル、酸無水物、等から選択することが好ましい。さらには、分子構造中に立体障害を生じないポリエチレングリコールを主鎖とする縮合物が、より好ましい。
前記水溶性樹脂組成物に、該水溶性樹脂(A)よりも融点の高い物質(B2)を配合することで、前記水溶性樹脂組成物が冷却で固化する際の固化速度に差が生じさせることができる。すなわち、融点の高い物質(B2)が早いタイミングで固化する作用は、結晶生成の核として機能し、前記水溶性樹脂組成物の結晶粒を小さく多数析出させることができる。前記水溶性樹脂(A)よりも融点の高い物質(B2)のなかには、結晶粒を小さくするだけでなく、さらに、前記水溶性樹脂組成物層の表面粗さSmを低減させる効果の高い物質がある。
前記水溶性樹脂組成物に、該水溶性樹脂(A)と溶媒との相溶性を高める物質(B3)を配合することで、(B3)の分子構造に含まれるヒドロキシ基が、該水溶性樹脂(A)を溶媒中に均一に分散させるため、水溶性樹脂組成物が乾燥、冷却で固化する際に、結晶粒を小さく多数生成させることができる。また、前記水溶性樹脂(A)と溶媒との相溶性を高める物質(B3)の中には、結晶粒を小さくするだけでなく、前記水溶性樹脂組成物層の表面粗さSmを低減させる効果の高い物質がある。
前記水溶性樹脂組成物を混練する方法は、一般的な混練手段を用いて構わず、例えば、2軸ロール、ミキサー、双腕式ニーダー、プランジャー押出機等を用いることが好ましい。また、水溶性樹脂組成物を混練する際、水溶性樹脂組成物の分解を抑制するため、窒素雰囲気下で混練することが好ましい。さらに、前記水溶性樹脂組成物を均一に分散させるために、水溶性樹脂組成物を120℃〜160℃の温度で混練することが好ましい。混練の温度が120℃未満の場合、水溶性樹脂組成物が不均一になり、外観および孔位置精度等の特性に悪影響を及ぼす可能性があり、160℃を超える場合、水溶性樹脂組成物の分解が起こり、孔位置精度等の特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
一般的なコーティング装置を使用してよく、例えば、ナイフコーター、押出コーター、ダイコーター、カーテンコーター等を用いることが好ましい。水溶性樹脂組成物層の厚みが不均一の場合、孔位置精度等の特性に悪影響を及ぼす可能性があるため、上記コーターを用いて、水溶性樹脂組成物の熱溶解物を均一に塗工することが好ましい。
具体的には、温度120℃〜160℃を、10秒〜600秒間保持して乾燥させることを要し、温度120℃〜160℃を、10秒〜500秒間保持して乾燥させることが好ましく、温度120℃〜160℃を、15秒〜400秒間保持して乾燥させることがより好ましく、温度120℃〜150℃を、20秒〜300秒間保持して乾燥させることが特に好ましい。乾燥温度が120℃未満の場合、又は、乾燥温度での保持時間が10秒未満の場合、水溶性樹脂組成物層の内部に溶媒が残留する可能性があり、あるいは、水溶性樹脂組成物を溶融させるために必要な熱量が不足するため、不均一な水溶性樹脂組成物層になる可能性がある。一方、乾燥温度が200℃を超えて高い場合、又は、保持時間が600秒を超えた場合には、前記水溶性樹脂組成物の分解を生じ、外観に問題が生じるおそれがある。
なお、水溶性樹脂組成物の溶液を、金属支持箔の上に塗工し、乾燥する際、乾燥後に得られる水溶性樹脂組成物層に残留する溶媒濃度は、5%未満であることが好ましい。
前記冷却終了温度が40℃を超える場合、本願の特徴である結晶粒の小径化及び均一化を達成できない。同様に、前記冷却時間が60秒を超えた場合にも、本願の特徴である結晶粒の小径化及び均一化を達成できない。一方、前記冷却終了温度が15℃を超えて低い場合には、前記エントリーシートに反りが生じ、また、後工程で結露の原因になることがあるため好ましくない。前記冷却速度が1.5℃/秒未満の場合、冷却時間が長くなり、60秒を超えるおそれがあるため好ましくない。
<実施例1>
数平均分子量 150,000のポリエチレンオキサイド(アルトップMG-150、明成化学工業株式会社製) 80重量部と数平均分子量 20,000ポリエチレングリコール(PEG20000、三洋化成工業株式会社製) 20重量部を樹脂固形分が30%になるように、水に溶解させた。さらに、この水溶性樹脂混合物の固形分に対して0.5重量部のギ酸ナトリウム(三菱ガス化学株式会社製)を添加し完全に溶解させた。この水溶性樹脂組成物の溶液を片面に厚み0.01mmのエポキシ樹脂皮膜を形成したアルミニウム箔(使用アルミニウム箔:1100、(厚さ0.07mm)三菱アルミニウム株式会社製)にバーコーターを用いて乾燥後の水溶性樹脂組成物層が0.03mmになるように塗工し、乾燥機にて120℃、3分間乾燥させ、さらに3.1℃/秒の冷却速度で冷却することで、ドリル孔あけ用エントリーシートを作製した(表2を参照。)。
得られたドリル孔あけ用エントリーシートを、厚さ 0.1mmの銅張積層板(CCL−HL832HS、銅箔両面5μm、三菱ガス化学株式会社製)を 6枚重ねた上に、水溶性樹脂組成物の層を上にして配置し、重ねた銅張積層板の下側には当て板(ベーク板)を配置してドリルビット:0.105mmφ(KMC L518A 0.105x1.8 ユニオンツール株式会社製)、回転数:330,000rpm、送り速度:8μm/rev.の条件でドリルビット1本につき 3,000hitsで、20本のドリル孔あけ加工を行った(表2を参照。)。
そして、表3に、水溶性樹脂組成物の結晶粒の平均粒径(μm)、結晶粒径の標準偏差(μm)、エントリーシートの表面粗さSm(μm)の結果を示す。
実施例2〜20及び比較例1〜36については、実施例1に準じて、表1及び表2に示す水溶性樹脂組成物を調製し、アルミニウム箔に塗工、乾燥、冷却して、ドリル孔あけ用エントリーシートを作製し、孔あけ加工を行った。
例えば、実施例2では、数平均分子量 150,000のポリエチレンオキサイド(アルトップMG−150、明成化学工業株式会社製) 80重量部と数平均分子量 20,000ポリエチレングリコール(PEG20000、三洋化成工業株式会社製)20重量部を樹脂固形分が30%になるように、水/MeOH(メタノール)混合溶液に溶解させた。この時の水とMeOHとの比率を90重量部/10重量部としている。このように、水よりも沸点の低い低沸点溶媒を用いる例もある。
なお、比較例26は、市販のSang−A Flontec Co.,Ltd製「LX120」、比較例27は、市販のYong Li Chuan Industrial Co.,Ltd製「AL−100040」、比較例29は、市販のUniplus Electronics Co.,Ltd製「LAE−1007」を用いた。
そして、表3に、水溶性樹脂組成物の結晶粒の平均粒径(μm)、結晶粒径の標準偏差(μm)、エントリーシートの表面粗さSm(μm)の結果を示す。また、図1に、特定のサンプル(実施例2、3、10、12及び19、並びに、比較例2、10、20、26及び28)についての、水溶性樹脂組成物層の表面状態を拡大して示す。
実施例及び比較例で作製したドリル孔あけ用エントリーシートの各サンプルについて、以下の評価を行った。
(孔あけ加工)
得られた各サンプルについて評価を行うべく、以下の条件で孔あけ加工を行った。
ドリルビット径0.15mmφの孔あけ加工は、厚さ 0.2mmの銅張積層板(CCL−HL832、銅箔両面 12μm、三菱ガス化学株式会社製)を 4枚重ねた上に、各サンプルの水溶性樹脂組成物の層を上にして配置し、重ねた銅張積層板の下側には当て板(ベーク板)を配置してドリルビット:0.15mmφ(NEU L004 0.15x2.5 ユニオンツール株式会社製)、回転数:200,000rpm、送り速度:20μm/rev.の条件でドリルビット1本につき 3,000hitsで、20本のドリル孔あけ加工を行った。
ドリルビット径0.105mmφの孔あけ加工は、厚さ 0.1mmの銅張積層板(CCL−HL832HS、銅箔両面5μm、三菱ガス化学株式会社製)を 6枚重ねた上に、水溶性樹脂組成物の層を上にして配置し、重ねた銅張積層板の下側には当て板(ベーク板)を配置してドリルビット:0.105mmφ(KMC L518A 0.105x1.8 ユニオンツー株式会社製)、回転数:330,000rpm、送り速度:8μm/rev.の条件でドリルビット1本につき 3,000hitsで、20本のドリル孔あけ加工を行った。
ドリルビット0.08mmφの孔あけ加工は、厚さ 0.1mmの銅張積層板(CCL−HL832HS、銅箔両面5μm、三菱ガス化学株式会社製)を 4枚重ねた上に、水溶性樹脂組成物の層を上にして配置し、重ねた銅張積層板の下側には当て板(ベーク板)を配置してドリルビット:0.08mmφ(KMV J948 0.08x1.2 ユニオンツール株式会社製)、回転数:330,000rpm、送り速度:6μm/rev.の条件でドリルビット1本につき3,000hitsで、20本のドリル孔あけ加工を行った。
積み重ねた銅張積層板の最下板の裏面における3,000hitsの孔位置と、指定座標とのズレをホールアナライザー(型番HA−1AM、日立ビアメカニクス株式会社製)を用いて測定し、ドリルビット1本分ごとに平均値及び標準偏差(σ)を計算し、平均値+3σを算出した。そして、ドリル孔あけ加工20回分の“平均値+3σ”の平均値について算出した。
表3に孔位置精度の評価結果を示す。また、図4、図5、及び、図6に、それぞれ、結晶粒の平均粒径、結晶平均粒径の標準偏差及び表面粗さSmと、孔位置精度との関係についてのグラフを示す。
3,000 hitsの孔あけ加工後のドリルビット 20本のそれぞれについて、倍率25倍のマイクロスコープ(型番VHK−100、株式会社キーエンス製)を用いて、ドリルビット径に対する樹脂の巻き付き量を観察した。観察した結果について以下の基準に基づいて評価を行い、評価結果を表3に示す。
○: 樹脂の巻き付いた最大直径が、ドリルビット直径の1.5倍未満である
△: 樹脂の巻き付いた最大直径が、ドリルビット直径の1.5倍以上である
×: ドリルビットに巻き付いた樹脂が、孔あけ加工中にエントリーシート表面に落下する
ドリルビット20本を使用して孔あけ加工を行い、ドリルビットの折損数を数えた。表3にドリルビット折損数の結果を示す。
◎ :結晶粒の平均粒径40μm以下/結晶粒の平均粒径の標準偏差17μm以下/表面粗さSm7μm以下で、孔位置精度が23μm以下、ドリルビットの折損なし、樹脂の巻き付きなし
○ :結晶粒の平均粒径70μm以下/結晶粒の平均粒径の標準偏差25μm以下/表面粗さSm8μm以下で、孔位置精度が25μm以下、ドリルビットの折損なし、樹脂の巻き付きなし
△ :結晶粒の平均粒径/結晶粒の平均粒径の標準偏差/表面粗さSmが、クレーム要件を満足せず、 孔位置精度が25μm以下、ドリルビットの折損なし、樹脂の巻き付きなし
× :結晶粒の平均粒径/結晶粒の平均粒径の標準偏差/表面粗さSmが、クレーム要件を満足せず、孔位置精度が25μm超、ドリルビットの折損なし、樹脂の巻き付きなし
××:結晶粒の平均粒径/結晶粒の平均粒径の標準偏差/表面粗さSmが、クレーム要件を満足せず、ドリルビットの折損あり、ないしは、樹脂の巻き付きあり
また、前記水溶性樹脂組成物の結晶粒径の平均粒径及びその標準偏差が小さい場合には、孔位置精度が優れる傾向があり、前記エントリーシートの表面粗さSmが小さい場合には、樹脂の巻き付きが低減される傾向があることがわかった。
2、20 樹脂組成物層
3 金属支持箔
Claims (6)
- 金属支持箔の少なくとも片面に、結晶性の水溶性樹脂組成物からなる厚さ0.02〜0.3mmの層が形成されたドリル孔あけ用エントリーシートであって、
前記水溶性樹脂組成物の結晶粒は、平均粒径が5〜70μmの範囲で、その標準偏差が25μm以下であり、
前記水溶性樹脂組成物からなる層のドリルビット進入面の表面粗さSmが8μm以下であり、
前記水溶性樹脂組成物からなる層は、前記金属支持箔上に、直接、前記水溶性樹脂組成物の熱溶解物を塗工した後、又は、前記水溶性樹脂組成物を含有する溶液を塗工して乾燥させた後、120℃〜160℃の温度から60秒以内に25℃〜40℃の温度へと、1.5℃/秒以上の冷却速度で冷却して形成されることを特徴とするドリル孔あけ用エントリーシート。 - 前記水溶性樹脂組成物の結晶粒は、平均粒径が5〜40μmの範囲で、且つその標準偏差が17μm以下であり、
前記水溶性樹脂組成物からなる層は、ドリルビット進入面の表面粗さSmが7μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。 - 前記水溶性樹脂組成物は、水溶性樹脂(A)を含有し、さらに、疎水性物質(B1)、前記水溶性樹脂(A)よりも融点が高い物質(B2)、及び、前記水溶性樹脂(A)との相溶性を高める物質(B3)から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
- 前記水溶性樹脂組成物を含有する溶液は、水、及び、水よりも沸点の低い溶媒を、さらに含有することを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
- 前記金属支持箔は、厚さが0.05〜0.5mmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
- 銅張積層板の加工に用いられることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
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