JPWO2011086954A1 - ポリエステルモノフィラメントパッケージ - Google Patents

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Abstract

本発明は、ポリエチレンテレフタレートからなるポリエステルモノフィラメントが巻き取られたパッケージであって、下記要件(a)〜(d)を全て満たすモノフィラメントパッケージである。(a)ポリエステルモノフィラメントの糸−糸動摩擦係数が0.13μd以下(b)パッケージ端部がテーパー形状であり、テーパー角θが75°以下(c)解舒張力変動勾配ΔTが0.02cN/dtex・m以下(d)パッケージ内層の巻厚1mm部分のポリエステルモノフィラメントの収縮応力変動が3.0cN/dtex以下本発明により、スレ毛羽、ヒケ、織り段などの欠点が発生しない良好な品質の印刷用スクリーン紗が得られるポリエステルモノフィラメントパッケージが提供される。

Description

印刷用スクリーン紗に用いるに良好な品質が得られるポリエステルモノフィラメントパッケージに関するものである。
従来、スクリーン印刷用織物としては、シルクなどの天然繊維やステンレスなどの無機繊維からなるメッシュ織物が広く使用されてきた。しかし、近年は、柔軟性や耐久性、コストパフォーマンスに優れる合繊メッシュが広く用いられている。中でもポリエステルからなるモノフィラメントは寸法安定性に優れるなどスクリーン紗適性が高い。ポリエステルからなるモノフィラメントはコンパクトディスクのレーベル印刷などグラフィックデザイン印刷や電子基板回路印刷などにも使用されている。
近年、電子機器の高性能化やコンパクト化が著しく進行している。そのため、電子機器を構成する電子基板のコンパクト化や基板回路の精密化の要求に応えるべく、よりハイメッシュ、ハイモジュラス、かつ織物欠点が少ないスクリーン紗への要求が高まっている。従って、これらのスクリーン紗要求特性を満足するポリエステルモノフィラメントとして、より細繊度かつハイモジュラスであることの他、スクリーン紗製造時にヒケや織段等の欠点が生じないことが特に重要である。通常の合成繊維と比較し単糸繊度が太く、ハイモジュラスであるモノフィラメントは巻き取り時に糸落ちやフォーム不良が発生し易いばかりか、スクリーン紗にヒケ等の欠点を生じ易い。そのため、これらを改善するパッケージの技術確立が待ち望まれている。
モノフィラメント巻き取り経時の巻き締まりによるヒケ状のスクリーン紗欠点を解消しつつ、解舒性・巻取安定性が良好なモノフィラメントパッケージとして、チーズ状に巻き取ったパッケージが開示されている(特許文献1)。
また、スクリーン紗の寸法安定性に優れた高強度、高モジュラスのポリエステルモノフィラメントを糸落ち、糸削れ、パーン引けなく容易に効率的に製造するポリエステルモノフィラメントの製造方法も開示されている(特許文献2)。この製造方法では、直接紡糸延伸方法により紡出、延伸して巻き取るに際して、延伸系を出て走行する糸条の進行方向に対して回転軸が直角となるようにスピンドルを配置し、スピンドルに装着されたボビン上に糸条をパッケージの両端部がテーパー状になるように巻き上げる。
特開平8−199424号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2004−225224号広報(特許請求の範囲)
しかしながら、特許文献1のパッケージは、糸落ち、タルミが少なく解舒時の糸切れを回避することはできるが、チーズ状に巻き取るために糸−鏡面動摩擦係数0.27〜0.28μd程度となる高摩擦性油剤を用いている。そのため、よりハイメッシュ、ハイモジュラスのスクリーン紗を製織しようとすると糸表面が筬によって削り取られスレ毛羽が織物に混入する欠点が生じる問題がある。また、糸切れなく解舒できるものの、解舒張力変動を十分に抑制するには至らず、それに起因する織段を回避出来ないという問題がある。特に細繊度・ハイモジュラスの原糸ほど、この織段の問題が顕著であるために、高品質・高精細なスクリーン紗を得ることが困難である。
また、特許文献2には、モノフィラメントパッケージ形状に関して、パッケージの両端部がテーパー状であり、テーパー角が30℃以下であることが記載されているのみである(請求項1、請求項3)。特許文献2には、後述するスクリーン紗の製織におけるスレ毛羽、ヒケ、織段などの欠点を抑制するためのパッケージ品質および形態について記載されていない。さらに、特許文献2には、このようなパッケージ品質および形態に重要な指標となる糸−糸動摩擦係数、解舒張力変動勾配、1トラバース当たりの糸長、パッケージ最内層の巻幅、最内層の巻径についても記載されていない。特許文献2に開示されているポリエステルモノフィラメントパッケージは、スクリーン紗の製織時における要求特性を満足できるものではない。
本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、スクリーン紗の製織においてスレ毛羽、ヒケ、織段などの欠点が発生しないモノフィラメントパッケージを提供することである。
前記目的を達成するため、本発明のポリエステルモノフィラメントパッケージは下記要件(a)〜(d)を全て満たす。
(a)ポリエステルモノフィラメントの糸−糸動摩擦係数が0.13μd以下
(b)パッケージ端部がテーパー形状であり、テーパー角θが75°以下
(c)解舒張力変動勾配ΔTが0.02cN/(dtex・m)以下
(d)パッケージ内層の巻厚1mm部分のポリエステルフィラメントの湿熱収縮応力変動が3.0cN/dtex以下
本発明により、スレ毛羽、ヒケ、織り段などの欠点が発生しない良好な品質の印刷用スクリーン紗が得られるポリエステルモノフィラメントパッケージが提供される。
図1は、本発明のポリエステルモノフィラメントパッケージの概略図である。 図2は、トラバースガイドにより供給糸条Yを左右に往復させながら巻き取る方式を説明する図である。 図3は、綾振り支点からトラバースガイドまでの距離を変えたときの糸長差を比較する図である。 図4は、糸−糸動摩擦係数測定の方法を説明する図である。 図5は、実施例1で使用した糸条巻取装置の正面の概略図である。 図6は、実施例22で使用した糸条巻取装置の正面および右側面の概略図である。
本発明におけるポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)は、繰り返し単位の90モル%以上がエチレンテレフタレートであるものを対象とする。PETの固有粘度(IV)としては高強度化およびハイモジュラス化という観点から0.7以上が好ましく、さらに好ましくは0.8以上である。一方、溶融紡糸における溶融ポリマーの流動性という観点からは1.4以下が好ましく、さらに好ましくは1.3以下である。
また、本発明のポリエステルモノフィラメントは高強度、ハイモジュラスおよび耐磨耗性を満足させる目的で芯鞘状の複合糸としても構わない。通常、PET繊維の高強度化には繊維の配向度、結晶化度を向上させる必要があるため、同時にフィブリル状の削れ(スレ毛羽)が発生しやすくなる。そのため、強度6cN/dtex以上を求める場合、芯鞘複合糸とすることが好ましい。芯鞘複合糸では、強度を担う芯成分PETは前述の通りの固有粘度(IV)とすればよい。鞘成分のPETは、芯成分PETの固有粘度(IV)よりも0.2以上小さくするとスレ毛羽が発生し難くなるので好ましい。一方、溶融押出機や紡糸口金内での安定計量性の観点から、鞘成分の固有粘度(IV)は0.4以上が好ましい。鞘成分のPETはポリエステルモノフィラメントの耐磨耗性を担うため、酸化チタンに代表される無機粒子を0.1〜0.5wt%程度添加させることが好ましい。
また芯鞘複合糸とする際の芯/鞘面積比は60/40〜95/5であることが好ましい。前述の通り、芯成分は強度を担い、鞘成分は耐磨耗性を担うため、この範囲であればいずれも損なうことなく両立することができる。さらに好ましくは70/30〜90/10である。
また、いずれのPETにも、本発明の効果を損なわない限り共重合成分を加えてもよい。共重合成分の例として、酸成分にはイソフタル酸、フタル酸、ジブロモテレフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルキシエンタンカルボン酸、オキシエトキシ安息香酸等の二官能性芳香族カルボン酸、セバシン酸、アジピン酸、シュウ酸等の二官能性脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。グリコール成分にはプロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAや、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。さらに、添加物として酸化防止剤、制電剤、可塑剤、紫外線吸収剤、着色剤等を適宜添加してもよい。
本発明のポリエステルモノフィラメントの繊度は3〜40dtexであることが好ましい。スクリーン紗を精密印刷に適したメッシュ数に設計するには40dtex以下が好ましく、より好ましくは18dtex以下、さらに好ましくは10dtex以下である。一方、製織性、特に緯糸飛走性を十分とするため3dtex以上が好ましく、より好ましくは4dtex以上である。
ポリエステルモノフィラメントからスクリーン紗を得る製織工程での負荷や、スクリーン印刷にかかる負荷に耐えるという観点から、本発明のポリエステルモノフィラメントの強度は5cN/dtex以上であることが好ましい。スクリーン紗としての強力レベル確保の点で繊度が細いほど強度は高い方がよく、繊度18dtex以下では5.5cN/dtex以上がより好ましい。繊度10dtex以下では6cN/dtex以上がより好ましく、さらに好ましくは7.2cN/dtex以上、最も好ましくは8.5cN/dtex以上である。強度は高ければ高いほどよいが、一般的に高強度に伴い伸度が低下するので、製織性良好な伸度を確保する観点から10cN/dtex以下が好ましい。強度の値は必要なスクリーン紗特性によって適宜調整すればよい。
スクリーン紗の印刷精度を向上させる観点から、ポリエステルモノフィラメントの10%モジュラスは3.6cN/dtex以上が好ましい。10%モジュラスとは引張試験における10%伸長時の荷重を繊度で除したものであり、モノフィラメントの剛性を表す。繊度が細いほど10%モジュラスは高い方が、すなわちハイモジュラスの方がよく、18dtex以下では4.0cN/dtex以上とするとより好ましい。繊度10dtex以下では5.0cN/dtex以上がより好ましく、さらに好ましくは6.0cN/dtex以上、最も好ましくは7.5cN/dtex以上である。
本発明のポリエステルモノフィラメントは糸−糸動摩擦係数が0.13μd以下である。糸−糸動摩擦係数が高いほど、パッケージ形成やパッケージ運搬の際に崩れや端面の糸落ちが発生しにくくなるが、製織時にスレ毛羽が発生し易くなる。糸−糸動摩擦係数が0.13μd以下であると、スレ毛羽の発生が抑えられる。好ましくは0.05〜0.10μdである。この範囲であればよりスレ毛羽の発生が少なく、かつパッケージ端面での糸落ちやフォーム崩れなどが発生し難く、良好な形態で巻き取ることができる。
本発明のポリエステルモノフィラメントパッケージは、端面テーパー角θが75°以下である。端面テーパー角とは、ポリエステルモノフィラメントパッケージを側面から観察した際に、巻心の中心軸方向と端面の傾斜線方向とがつくる角度(鋭角)である。具体的には、図1のθに該当する角度である。モノフィラメントはいわゆる通常の繊維に比較して単糸繊度が太く、ハイモジュラスであるため、パッケージ端面部で糸落ちが発生し易い。特に本発明のように糸−糸動摩擦係数が低い場合は顕著である。そのため、テーパー角θを75°以下として糸落ちを抑制する。好ましくは60°以下、より好ましくは45°以下である。テーパー角θの下限は、5°以上であればパッケージ当りの巻取可能糸量が多くなるため工業生産上好ましい。
本発明のポリエステルモノフィラメントパッケージからモノフィラメントを引き出す際の解舒張力変動勾配ΔTは0.02cN/(dtex・m)以下である。ここで解舒張力とは、水平に静置されたパッケージから巻芯の中心軸方向に糸条を引き出し、巻芯中心軸の延長上かつ巻芯から10cmの距離に設置された解舒ガイドを通過し、200m/分の速度で走行する糸条の張力を指す。尚、パッケージからの糸条解舒方法としては、前述した巻芯軸方向から引き出す方法と、パッケージを回転させながら巻芯軸に略直角方向に引き出す方法があるが、モノフィラメントの製織においては前者の方が装置の簡便性、解舒糸条張力調整の容易性の両面で優れる。通常、解舒張力は、パッケージ手前側を解舒する際は低く、奥側は高い。解舒張力変動とは解舒張力を連続的にモニターした際の振幅する極大値(パッケージ奥側)と極小値(パッケージ手前側)の張力差を指す。解舒張力変動勾配ΔTは、この張力差をその間の糸長および繊度で除した値を指す。
通常の繊維よりもハイモジュラスであるスクリーン紗用のモノフィラメントは、スクリーン紗製造工程において、この解舒張力変動をテンサーなどの張力制御器などで吸収しきれず、整経工程であればタルミやツリ、製織時の緯入れでは織段などの品質異常を生じ易い。しかし、解舒張力変動が同等であっても解舒張力変動勾配ΔTを小さくすることで張力制御器の制御追従性が実質的に上がり該品質異常が発生し難くなる。そのため、解舒張力変動勾配ΔTは0.02cN/(dtex・m)以下であり、好ましくは0.01cN/(dtex・m)以下、さらに好ましくは0.005cN/(dtex・m)以下である。
例えば解舒張力変動勾配ΔTを小さくする手法として、パッケージ形態が下記(1)、(2)の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(1)パッケージのトラバース一往復当りに巻き取られた糸長(1トラバース糸長)を25m以上とする。
(2)パッケージの最内層巻幅を150〜300mmとする。
パッケージ巻幅が小さいほど手前と奥の解舒張力差が小さくなるため、パッケージの最内層巻幅L1は好ましくは300mm以下である。さらに、パッケージ当りの巻量を大きくする観点から、パッケージの最内層巻幅L1は好ましくは150mm以上である。
本発明におけるポリエステルモノフィラメントパッケージは、パッケージ内層の巻厚1mm部分のポリエステルモノフィラメントの繊維長手方向の湿熱収縮応力変動が3.0cN/dtex以下である。ここで繊維長手方向の湿熱収縮応力変動とは、10m/分の速度で走行する2対のローラ間に湿熱を付与する部位と張力計を設けた装置で、トラバース1往復分以上の糸長を連続的にモニターした張力の最大値と最小値の差を糸条の繊度で除した値を指す。通常の繊維よりも高強度、ハイモジュラスのスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントはPET非晶部位の配向度が大きいため、巻取り後に応力緩和(収縮)が発生し易い。その応力緩和によって糸が収縮しパッケージの中心に向かって巻締まりが発生する。この巻締まりがパッケージ全体で均一に進まず、モノフィラメント長手方向に差異が生じると、スクリーン紗のヒケ状の欠点の原因となる。その応力緩和の状態は、その繊維を湿熱収縮させた際に発生する応力を測定することで確認できる。その湿熱収縮時の応力が繊維長手方向で差異が認められるということは、ある部分は応力緩和が進んでおり、一方ある部分は応力緩和が進んでいないことを示している。なお、巻厚1mm、すなわちパッケージ最内層で湿熱収縮応力変動を測定する理由は次のとおりである。パッケージ最内層の糸は、そのすぐ内層側にボビンが存在するため、糸の収縮が阻害され応力緩和が進みにくく、パッケージの中で最も繊維長手方向の収縮応力変動が大きくなる。そのため、このパッケージ最内層の湿熱収縮応力変動を、スクリーン紗の製織時の要求特性にあわせて規定する必要がある。この湿熱収縮時の応力差が3.0cN/dtexを超えるとヒケが発生しやすくなる。好ましくは1.5cN/dtex以下であり、さらに好ましくは0.8cN/dtex以下であり、特に好ましくは0.3cN/dtex以下である。
また、本発明のポリエステルモノフィラメントパッケージに巻き取られた糸条は、残留トルク試験で得られる残留トルクが4個/m以下であることが好ましい。ここで残留トルクとは、パッケージの巻芯軸の垂直方向に撚りが入らないように糸条を引き出し、ピンを支点に糸条を2つ折りにした試料1mを作成し、糸条の端を固定した後、ピンを外して糸条が旋回して生じた撚数をカウントするものである。残留トルクが4個/m以下であれば、整経工程での解舒スナールが抑制され、ポリエステルモノフィラメントが整経ビーム内へ巻き込まれる現象が発生しにくくなり、スクリーン紗の品位が向上する。残留トルクは少なければ少ないほど、すなわち0に近づけば近づくほど好ましく、より好ましくは2個/m以下である。
本発明のポリエステルモノフィラメントパッケージの最内層巻径dは75〜200mmであることが好ましい。最内層巻径dが75mm以上であれば解舒によって発生する撚りが少なく、前述の残留トルク低減と同様の効果が得られるのに加え、巻き取り糸の応力緩和・収縮による締め付け力が分散するため湿熱収縮時の応力差が低減され易い。一方、最内層巻径dが200mm以下であれば、パッケージのサイズが小さくなるためハンドリング効率が良好となり好ましい。より好ましくは150mm以下である。
次に本発明のポリエステルモノフィラメントパッケージの製造方法について説明する。ポリエステルモノフィラメントパッケージの製造工程は、主にPETを溶融させ、口金より吐出、冷却させた上、一定速度のローラで引き取る紡糸工程、引き取った未延伸糸を延伸・熱処理する延伸工程、延伸した糸条を巻き取りパッケージ形成する巻取工程、の3つに分かれる。
紡糸工程は公知の溶融紡糸方法を採用すればよく、押出機によって溶融させたPETを所望の繊度となるように計量ポンプを用いて紡糸口金に供給し糸条を吐出させる。溶融紡糸温度としてはPETを十分に溶融させ、かつ過度の熱付与による熱分解を抑制するという観点から280〜310℃とすることが好ましい。芯鞘複合とする場合は、2台の押出機を用いて芯鞘別々に溶融、計量させ、公知の芯鞘複合口金により両成分を複合させた後に吐出させる。糸条の配向抑制、配向均一化を目的とし、吐出された糸条が冷却されるまでの部位に加熱筒を用いてもよい。加熱筒を使用する場合、加熱筒内雰囲気温度は200〜330℃とすることが好ましい。加熱筒内雰囲気温度が200℃以上であれば加熱筒の効果が十分得られる。加熱筒内雰囲気温度が330℃以下であれば糸長手方向の繊径ムラが抑制される。冷却方式はチムニーエアーによる冷却を採用することが好ましい。チムニーエアーによる冷却は、例えば糸条の走行方向に対して略直角方向かつ一方向から吹き付ける方式や糸条の走行と略直角方向かつ全周方向から吹き付ける方式を用いることができる。冷却した糸条をローラで引き取る前に、紡糸油剤を付与することが好ましい。紡糸油剤の組成は特に限定するものではないが、平滑性を向上し、スクリーン紗製織時のスレ毛羽を抑制する観点から脂肪酸エステル系平滑剤を30%以上含有する油剤を用いることが好ましい。また、油剤中にポリエーテル変性シリコーンを0.1〜5%程度添加すると、さらに平滑性が向上するため好ましい。油剤は水と混合・エマルション化し、給油ガイドやオイリングローラによって糸条に付与すればよい。その際の給油量は、延伸糸に対し油剤付着量が0.1〜2.0%とすれば平滑性が良好かつ、パッケージ形成の際の糸落ち、崩れが抑制されるため好ましい。給油した糸条は、好ましくは表面速度300〜3000m/分の引取りローラで引取る。その後、一旦未延伸糸として巻き取ってから延伸する二工程法、そのまま延伸工程に給糸する直接紡糸延伸法のどちらを用いてもよい。生産効率や得られるモノフィラメントの配向均一性の観点から直接紡糸延伸法の方が好ましい。
延伸工程では、均一延伸を目的に、糸条をガラス転移点以上に加熱するホットローラと、このホットローラよりも表面速度が速く、結晶化温度以上に加熱するホットローラに順次引き回し延伸を施す方法が好ましい。ホットローラの温度や延伸倍率は目標とする物性によって選択すればよい。例えば高強度、ハイモジュラスを求める場合、最終ローラの表面温度を好ましくは120℃以上、さらに好ましくは200℃以上とし、延伸倍率を4〜6倍とするのが好ましい。また、そのホットローラ間に、さらにホットローラを設置し、いわゆる多段延伸とすれば延伸均一性が向上するためより好ましい。多段延伸の場合、1段目の延伸倍率は総延伸倍率の0.5〜0.9倍とする。また、最終ホットローラから巻き取り部の間に冷ローラを設けてもよい。最終ホットローラよりも冷ローラの速度が速い場合、得られるモノフィラメントのモジュラスは高くなるため、スクリーン紗の印刷精度が向上し易い。最終ホットローラよりも冷ローラの速度が遅い場合、得られるモノフィラメントのモジュラスは低下するが、湿熱収縮時の応力差が低減し、また製織時のスレ毛羽が発生しにくくなる。最終ホットローラと冷ローラとの速度産は、所望の特性に応じて調整すればよい。最終ホットローラの速度に対し、冷ロールの速度は−7〜2%であることが好ましい。
巻き取り工程では、延伸されたモノフィラメントを以下の巻き取り方法で巻き取り、所望のパッケージを得る。まず、パッケージ端面をテーパー形状とする手法は特に限定するものではないが、例えば特開2002−284447号記載の巻取方法が挙げられる。具体的には、スピンドルに装着したボビンに連続的に糸条を巻き取りながら、この糸条をトラバースガイドによってボビン軸方向に相対的に往復トラバースさせるようにする糸条巻取機において(請求項1)、スピンドル側を静置し、糸条をトラバースガイドを介して往復トラバースさせる方法(請求項4)や、糸条の給糸位置を固定し、スピンドル側を往復トラバースさせるようにする方法(請求項5)である。いずれも、巻き始めから巻き終わりにかけて所望のテーパー角になるように、トラバースの往復幅を漸減させ、ボビン上にパーン上のパッケージを形成する(0015)。また、パッケージ最内層の巻幅および1トラバースあたりの糸長は、所望の巻幅および糸長となるように、巻き始めのトラバースの往復幅、トラバース速度を設定できることが好ましい。
また、本発明のポリエステルモノフィラメントの巻き取り方式は、残留トルクを小さくする観点から、公知のリングツイスター方式ではなく、延伸工程を出て走行する糸条の進行方向に対して回転軸が直角となるようにスピンドルを配置し、前記スピンドルに装着されたボビン上に糸条を巻き上げる方式を採用するのが好ましい。なぜなら、リングツイスター方式では、一般的に糸条をリングによってボビン軸方向にトラバースさせ、リング上にボビン周方向に回転自在に取り付けられたトラベラーによって糸条の走行方向を90°方向転換し、ボビンに巻き付けるが、このトラベラーのしごきによってモノフィラメントに撚りが入り、残留トルクが大きくなるためである。
なお、本発明のポリエステルモノフィラメントパッケージを巻き取る際の巻き取り張力は、繊維長手方向における湿熱収縮時の応力差を低減させる観点で、0.1〜0.7cN/dtexであることが好ましい。前述の通り、本発明のポリエステルモノフィラメントは、通常の繊維よりも巻き取り後に応力緩和(収縮)が発生し易いため、巻き取り張力が高いと、応力差も大きくなるためである。よって、好ましくは0.1〜0.5cN/dtex、さらに好ましくは0.1〜0.3cN/dtexである。
なお、本発明のポリエステルモノフィラメントは、巻き取り中にパッケージ表面を押圧しないことが好ましい。本発明のポリエステルモノフィラメントは、前述のとおり、パッケージ端面で糸落ちが発生しやすいため、巻き取り中にパッケージ表面を押圧すると、糸落ちを助長することになる。しかし、やむを得ず、巻き取り中のパッケージ表面に、ボビンの回転軸に略平行な回転軸をもつローラ、いわゆるタッチローラやローラベイルなどで押圧させる場合は、巻き始めから巻き終わりにかけて、パッケージ表面とローラの接触長の単位長さあたりの押圧力を、60gf/cm以下とすることが好ましい。より好ましくは30gf/cm以下である。なお、本発明のパッケージの端部はテーパー形状であるため、巻き太るに従い、パッケージ表面とローラの接触長は、次第に短くなる。したがって、ローラの押圧力を好ましい押圧力範囲に収めるために、巻き取り中に押圧力を連続的もしくは段階的に調節させてもよい。
さらには、供給糸条を、ローラの表面を経由して、ボビンに巻き取る場合においては、ローラを電動機と直接的もしくは間接的に連結し、ボビンホルダとは別に積極駆動させることが好ましい。ローラの駆動速度は、ローラの表面速度をパッケージ表面速度×1.00〜1.10とすることが望ましい。さらに望ましくは、パッケージの表面速度×1.05〜1.08である。ローラの表面速度がパッケージ速度×1.00未満の場合、例えばローラが電動機と連結されておらず、いわゆるパッケージ表面とローラ表面の摩擦力だけでローラが回転する方式では、実質的には、パッケージ表面とローラ表面の間で滑りが生じるため、ローラ表面速度がパッケージ表面速度よりも小さくなる。そのため、ローラ表面を経由してボビンに巻き取られる糸条は、ローラとパッケージ間で延伸されるため巻取張力が高くなり、前記のとおり、湿熱収縮時の応力差が大きくなる。逆に、ローラ表面速度がパッケージ表面速度×1.10より速いと、ローラとパッケージの間の張力が低くなり過ぎ、ゆるく巻き取られるため、巻き取り中にパッケージが崩れる恐れがある。
また、本発明のポリエステルモノフィラメントを、図2に示すような綾振り支点3を中心とし、トラバースガイド4により供給糸条Yを左右に往復させながら巻き取る方式で巻き取る場合には、綾振り支点3とトラバースガイド4までの距離L2を、パッケージの最内層巻き幅L1の4倍以上とすることが好ましい。本発明のポリエステルモノフィラメントは、前述の通り10%モジュラスが高いため、工程中のわずかな糸長差により大きく巻取張力が変化し、繊維長手方向における湿熱収縮時の応力差が大きくなる。図3(1)は綾振り支点3とトラバースガイド4までの距離L2が長い場合、図3(2)は距離L2が短い場合を示している。図3に示すように、綾振り支点3からトラバースガイド4までの距離L2が短いと、巻き取り中のトラバースガイド4がパッケージ中央位置の時と、パッケージ端部の時で、綾振り支点3からトラバースガイド4まで糸長差L3がより大きく生じ、その結果、より湿熱応力差が大きくなる。距離L2は長ければ長い方がよいが、レイアウトの制約上、パッケージの最内層巻き幅の4〜10倍が妥当であり、好ましくは8〜10倍である。また、このような観点からすれば、綾振りを行わないで巻き取る方法、すなわち、前述の特開2002−284447号の請求項5記載の巻き取り方法がより好ましい。
以下本発明を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中の評価は以下の方法に従った。
(1)固有粘度(IV)
25℃の温度の純度98%以上のo−クロロフェノール10mL中に試料ポリマーを0.8g溶かし、25℃の温度にてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを次式により求めた。この相対粘度ηrを用いて、次式により固有粘度(IV)を算出した。
ηr=η/η0=(t×d)/(t0×d0)
固有粘度(IV)=0.0242ηr+0.2634
ここで、
・η:ポリマー溶液の粘度
・η0:o−クロロフェノールの粘度
t:溶液の落下時間(秒)
d:溶液の密度(g/cm
t0:o−クロロフェノールの落下時間(秒)
d0:o−クロロフェノールの密度(g/cm)。
(2)糸−糸動摩擦係数
ランニングヤーン法にて糸と糸とを撚り合わせつつ走行させて測定する。すなわち、図4に示すように、パッケージ(図示せず)から解舒ガイド(図示せず)を通して解舒される糸条Yを、バランサー20にて荷重T1(=10g)を加えた後、方向転換ガイド21と回転ローラ22との間で2回の撚りを加えて通す。その後、張力計23を経由し引き取りローラ24で引き取る。糸条Yを55m/分で解舒走行させて、張力計23で測定したT2を測定し、次式により算出する。
・糸−糸動摩擦係数(μd)=1/(2πn・sinβ)×1/loge×log(T2/T1)
n:加撚数
β:撚り角度(回転ローラ直径D/折り返し点から撚り部までの距離L4)
e:自然対数(2.71828)。
(3)解舒張力変動勾配ΔT
得られたドラム状パッケージから、糸条をドラム端部から第一解舒ガイドまでの解舒距離10cm、解舒速度200m/分の条件で解舒する。解舒する際の糸条張力を第1解舒ガイドから20cmの位置で測定する。巻厚5mmの層から解舒する糸条の張力変動を連続的にチャート化する。チャート上の振幅する極大値と極小値の差(cN)をその間の糸長(m)および繊度で除した値が解舒張力変動勾配ΔT(cN/(dtex・m))である。
(4)湿熱収縮応力変動
東レ(株)製フィラメントサーマルアナライスシステム(略称:FTA−500)を用い、巻厚1mmの層から解舒する糸条について下記の測定条件にて測定を行い、熱収縮により繊維に発生する収縮応力を張力計で連続的に測定しチャート化した。チャート上の最大応力と最小応力の差異(cN)を読みとり、その数値を繊度で割った値(cN/dtex)が湿熱収縮応力変動である。
湿熱温度:100℃
給糸速度:10m/min
給糸糸長:400m。
(5)繊度
糸条を500mかせ取り、かせの重量に20を乗じた値を繊度とした。
(6)強度、10%モジュラス
JIS L1013(1999)に従い、オリエンテックス製テンシロンUCT−100を用いて測定した破断時の荷重を繊度で除した値を強度、10%伸張時の荷重を繊度で除した値を10%モジュラスとした。
(7)残留トルク
測定試料とするモノフィラメントを解舒撚りが加わらないように、また撚りもどりが起こらないようにしてピンを支点に試料をU字に二つ折りにし、0.1cN/dtexの初荷重下でその試料長が1mになるように両上端を固定した。支えピンの試料部分に0.4cN/dtexの微荷重をかけてから測定試料から支えピンを外し、懸垂状態のまま自己旋回させた。自己旋回が止まってから検撚し、旋回数を測ってトルクとした。同一試料にて10回測定し、その平均値を算出し単位を「個/m」で表した。ただし、測定雰囲気は温度20℃、相対湿度65%とした。
(8)解舒性
巻き上がったポリエステルモノフィラメントパッケージ10本を30cm間隔のクリールに並べ、パッケージ端部側から引き出した解舒糸条を筬に導き等間隔で5mm幅に並べ、100m/分の速度のローラで引き取った。10hr連続で解舒した際の解舒糸切れ回数や筬出口以降の糸寄付き状態を下記基準で評価した。合格レベルはA、BまたはCである。
A :寄付きなし、かつ糸切れなし。
B :糸条が振動するが寄付きは発生しない、かつ糸切れなし。
C :糸条が寄付き易いが直ぐに回復する、かつ糸切れなし。
D :糸条がほとんど寄付いた状態のまま、もしくは糸切れが発生する。
(9)パッケージ糸落ち
巻き上がったポリエステルモノフィラメントパッケージの両端面を目視にて検査し、パッケージ当りの平均糸落ち数(N=10)を数えた。合格レベルはA、BまたはCである。
A :糸落ちなし
B :長さ1cm未満の軽微な糸落ち1〜2箇所
C :長さ1cm未満の軽微な糸落ち3〜5箇所
D :長さ1cm以上の糸落ちあり、もしくは長さ1cm未満の軽微な糸落ち6箇所以上。
(10)スレ毛羽
スルーザ型織機により織機の回転数120回転/分にて以下の密度で幅2.54m、全長30mのメッシュ織物を製作した。得られたスクリーン紗を検反し、目視でスレ毛羽個数の評価を行った。合格レベルはA、BまたはCである。尚、後述する実施例11〜26、比較例4〜10は緯糸のみであり本評価は省略した。
繊度13dtex :密度300本/2.54cm
繊度8dtex :密度380本/2.54cm
繊度5dtex :密度420本/2.54cm
A :0〜1箇所/30m
B :2〜3箇所/30m
C :4〜6箇所/30m
D :7箇所/30m以上。
(11)ヒケ、織段
スルーザ型織機により織機の回転数120回転/分にて幅2.54m、全長30mのメッシュ織物を製作した。得られたスクリーン紗を検反し、目視でヒケ、織段の評価を行った。合格レベルはA、BまたはCである。尚、後述する実施例11〜26、比較例4〜10は緯糸のみであり、繊度が13dtexのものには実施例1、8dtexのものには実施例4、5dtexのものには実施例7を経糸として使用した。
繊度13dtex :密度300本/2.54cm
繊度8dtex :密度380本/2.54cm
繊度5dtex :密度420本/2.54cm
A :ヒケ・織段が全くない
B :軽微なヒケ・織段があり、全長の0%超10%以下が製品にならない
C :軽微なヒケ・織段があり、全長の10%超30%以下が製品にならない
D :強いヒケ・織段が存在する、もしくは軽微なヒケ・織段があり、全長の30%超が製品にならない。
(12)印刷評価
実施例1〜7にて得られたポリエステルモノフィラメントパッケージから得たメッシュ織物を30cm×30cmの版枠に紗張りした。そして、以下の幅のストライプパターンを印刷した。印刷状態を走査型電子顕微鏡にて確認した。
ストライプライン幅
繊度13dtex :200μm
繊度5dtex、8dtex :100μm
A :ライン太さのバラツキがライン幅の10%未満
B :ライン太さのバラツキがライン幅の10%以上〜20%未満
C :ライン太さのバラツキがライン幅の20%以上〜30%未満。
(実施例1)
常法によって重合およびペレット化した固有粘度(IV)=0.78で酸化チタンを0.5wt%含有するPETをエクストルーダーによって溶融させた。
その後、溶融したポリマーを、295℃に保温されたスピンブロック内に設けた配管および所望のポリマー流量に計量する計量ポンプを通過させ、スピンパックに導いた。スピンパック内には順にフィルタ、公知の紡糸口金が設けられている。この紡糸口金から糸条を紡出させた。
このとき、口金面から加熱筒下端までの距離191mm、加熱筒軸心方向の長さ100mm、加熱筒内径89mm、加熱筒内雰囲気温度273℃の加熱筒を配設し、口金から紡出された糸条を通過させた。その後、糸条に対し冷却機を用いて略直角かつ1方向から25℃のエアーを20m/分の風速で糸条に吹き付け、冷却固化させた。冷却固化された糸条に、オイリングロールにより紡糸油剤を延伸糸に対して0.3%となるように給油した。
油剤の成分は、公知の脂肪酸エステル系平滑剤50%、水溶性ポリエーテル変性シリコーンを1%、その他公知の金属磨耗剤、制電剤、界面活性剤からなる混合油剤を蒸留水に対して10%の濃度でエマルション化したものである。
給油後の糸条はそのまま表面速度800m/分の引取ロールで引き取った。その後、一旦巻き取ることなく、表面速度808m/分、表面温度90℃の第1ホットロール、表面速度2840m/分、表面温度90℃の第2ホットロール、表面速度3520m/分、表面温度140℃の第3ホットロール、表面速度3520m/分のゴデットロールを介した後、巻取張力0.2cN/dtexで制御された糸条巻取装置にて巻き取った。得られたポリエステルモノフィラメントパッケージは、繊度13dtex、パッケージの端部がテーパー形状であり、そのテーパー角が40°、1トラバース糸長100m、パッケージ最内層巻幅250mm、パッケージ最内層巻径75mm、巻量2.0kgであった。
糸条巻取装置は、特開2002−284447号の請求項5記載の糸条巻取装置を使用した。この糸条巻取装置は、スピンドルに装着したボビンに連続的に糸条を巻き取りながら、糸条をサーボ機構によりボビン軸方向に相対的に往復トラバースさせるようにする糸条巻取装置において、糸条の給糸位置を固定し、スピンドル側を往復トラバースさせるようにする糸条巻取装置である。具体的には、図5に示す様に、スピンドル42は誘導モータ41およびトラバース駆動装置に連結され、そのスピンドル42にボビン2が装着されている。糸条Yの給糸位置を糸道ガイド33によって固定し、誘導モータ41によりスピンドル42が回転駆動され、かつスピンドル42がトラバース駆動装置によりボビン軸方向にトラバースされると、ボビン2の上に糸条Yが巻き付けられる。上記スピンドル42に連結されたトラバース駆動装置の駆動源として、正転、逆転を交互に行うサーボモータ35が設けられている。サーボモータ35にはカップリング40を介してボールねじ36が連結され、ボールねじ37は両端部がボールベアリング(図示せず)を介してブラケット39に回転自在に支持されている。ボールねじ36にはボールナット37が螺合して軸方向に移動可能になっており、そのボールナット37に誘導モータ41が取り付けられている。そのボールナット37は、ボールねじ36と平行に設けられた2本の案内ガイド38に摺動自在に支持されている。各案内ガイド38の両端部はブラケット39に固定されている。サーボモータ35が正逆に回転するとボールねじ36が正逆に回転し、正転か逆転かに応じてボールナット37がボールねじ36の軸方向に往復移動する。したがって、ボールナット上の誘導モータ41に連結されたスピンドル42は、ボビン2の軸方向に往復トラバースし、給糸位置が固定された糸条Yは、そのボビン2の上に巻き取られる。このようにスピンドルが往復トラバースするトラバース区間は、糸条Yの巻取中において変化するように制御され、ボビン上にパーン状のパッケージを形成する。
(実施例2)
引取りロールの表面速度を1000m/分、第1ホットロールの表面速度を1010m/分、第2ホットロールの表面速度を3200m/分、第3ホットロールの表面速度を4000m/分、ゴデットロールの表面速度4000m/分に変更し、得られるモノフィラメントの繊度が13dtexとなるよう計量ポンプからの吐出量を調整した以外、実施例1と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(実施例3)
引取りロールの表面速度を1100m/分、第1ホットロールの表面速度を1111m/分、第2ホットロールの表面速度を3280m/分、第3ホットロールの表面速度を4100m/分、ゴデットロールの表面速度4100m/分に変更し、得られるモノフィラメントの繊度が13dtexとなるよう計量ポンプからの吐出量を調整した以外、実施例1と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(実施例4)
常法によって重合およびペレット化した固有粘度(IV)=0.78のPETを芯成分、固有粘度(IV)=0.51で酸化チタンを0.3wt%含有するPETを鞘成分となるよう、それぞれ個別のエクストルーダーによって溶融させた。
その後、溶融したポリマーを295℃に保温されたスピンブロック内に設けた配管および所望のポリマー流量に計量する計量ポンプを通過させ、スピンパックに導いた。スピンパック内には順にフィルタ、公知の芯鞘型複合紡糸口金が設けられている。この紡糸口金から、芯/鞘の面積比が80/20となるよう芯鞘型複合糸条を紡出させた。次いで、実施例1と同様の加熱筒を通過させ、エアーによる冷却、給油を行った後、表面速度1200m/分の引取ロールで引き取った。さらに一旦巻き取ることなく、表面速度1212m/分、表面温度90℃の第1ホットロール、表面速度3930m/分、表面温度90℃の第2ホットロール、表面速度4910m/分、表面温度140℃の第3ホットロール、表面速度4860m/分のゴデットロールを介した後、実施例1と同様の糸条巻取方法にて巻き取った。得られたポリエステルモノフィラメントパッケージは、繊度8.0dtex、パッケージの端部がテーパー形状であり、そのテーパー角が40°、1トラバース糸長100m、パッケージ最内層巻幅250mm、パッケージ最内層巻径75mm、巻量2.0kgであった。
(実施例5)
第2ホットロールの表面速度を3650m/分、第3ホットロールの表面速度を4560m/分、ゴデットロールの表面速度4510m/分に変更し、得られるモノフィラメントの繊度が8.0dtexとなるよう計量ポンプからの吐出量を調整した以外、実施例4と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(実施例6)
芯成分のPETを固有粘度(IV)=1.00とし、引取りロールの表面速度を1000m/分、第1ホットロールの表面速度を1010m/分、第2ホットロールの表面速度を3150m/分、第3ホットロールの表面温度200℃、表面速度を4500m/分、ゴデットロールの表面速度4450m/分に変更し、得られるモノフィラメントの繊度が8dtexとなるよう計量ポンプからの吐出量を調整した以外、実施例4と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(実施例7)
引取りロールの表面速度を500m/分、第1ホットロールの表面速度を505m/分、第2ホットロールの表面速度を1800m/分、第3ホットロールの表面速度を2850m/分、ゴデットロールの表面速度2850m/分に変更し、得られるモノフィラメントの繊度が5dtexとなるよう計量ポンプからの吐出量を調整した以外、実施例4と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(実施例1〜7の評価)
実施例1〜7の結果を表1に示す。実施例1〜3の比較、実施例4〜6の比較いずれにおいてもよりモジュラスの高いものほど印刷精度が高く、繊度が細いものほど細いラインの再現が可能であった。実施例7は最も繊度が細く、モジュラスが高いため、解舒張力変動勾配・内層収縮応力変動ともにやや大きく、得られたメッシュ織物に軽微なヒケ、織段があったが、極めて良好な印刷精度を有していた。
Figure 2011086954
(実施例8)
油剤の付着量を延伸糸に対し0.1%に調整した以外、実施例1と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(比較例1)
油剤中の水溶性ポリエーテル変性シリコーンを0%とした以外、実施例8と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(実施例9,10,比較例2)
テーパー角を表2の通り変更した以外、実施例4と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(比較例3)
テーパー角を表2の通り変更した以外、比較例1と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(実施例8〜10、比較例1〜3の評価)
実施例8〜10、比較例1〜3の結果を表2に示す。実施例8、比較例1は糸−糸動摩擦係数の増大と共に製織でのスレ毛羽が増加する傾向にあり、比較例1では欠点が多発し、品質の劣るものであった。実施例9、10、比較例2はテーパー角の増加と共に糸落ちが発生し易くなる傾向にあり、比較例2では解舒糸切れが多発した。また、糸−糸動摩擦係数とテーパー角が共に高い比較例3は、糸落ちが少なく巻き取ることが可能であったが、製織でのスレ毛羽が多発した。
Figure 2011086954
(実施例11〜14、比較例4)
表3の通り、糸条巻取装置の往復トラバース速度およびトラバース幅を調整し、1トラバース糸長と最内層巻幅を変更した以外、実施例1と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(実施例15)
表3の通り、糸条巻取装置の往復トラバース速度およびトラバース幅を調整し、1トラバース糸長と最内層巻幅を変更した以外、実施例3と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(実施例16)
表3の通り、糸条巻取装置の往復トラバース速度を調整し、1トラバース糸長を変更した以外、実施例4と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(比較例5)
表3の通り、糸条巻取装置の往復トラバース速度を調整し、1トラバース糸長を変更した以外、実施例7と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(実施例11〜16、比較例4,5の評価)
実施例11〜16、比較例4,5の結果を表3に示す。実施例11〜14、比較例4では、1トラバース糸長がより大きく、最内層巻幅が小さいほど解舒張力変動勾配が小さく、メッシュ織物のヒケ・織段品位も良好となる傾向にあるが、比較例4は強いヒケ・織り段が発生した。実施例12,16,比較例5では、同一巻き形態であっても、細繊度・ハイモジュラスであるほど解舒張力変動勾配が大きくなり易く、比較例5は強いヒケ・織段が発生した。
Figure 2011086954
(実施例17,18)
表4の通り、パッケージの最内巻径を変更した以外、実施例1と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(実施例19,比較例6)
表4の通り、パッケージの最内巻径を変更した以外、実施例4と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(比較例7)
表4の通り、パッケージの最内巻径を変更した以外、実施例7と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(実施例17〜19、比較例6,7の評価)
実施例17〜19、比較例6,7の結果を表4に示す。それぞれ比較すると最内巻径が小さく、細繊度・ハイモジュラスのものほど内層収縮応力変動が大であり、比較例6、7はメッシュ織物に強いヒケが発生した。
Figure 2011086954
(実施例20,21)
表5の通り、巻取張力を変更した以外、実施例1と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(比較例8)
表5の通り、巻取張力を変更した以外、実施例4と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(比較例9)
表5の通り、巻取張力を変更した以外、実施例7と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(実施例20,21、比較例8,9の評価)
実施例20,21、比較例8,9の結果を表5に示す。それぞれ比較すると巻取張力が高いほど内層収縮応力変動が大きく、細繊度・ハイモジュラスのものほど顕著であった。比較例8,9では強いヒケ・織段が発生した。
Figure 2011086954
(実施例22)
糸条巻取装置を変更し、かつ、ボビンの回転軸に略平行な回転軸をもつローラベイルを巻き取り中のパッケージ表面に押圧させながら巻き取ったこと以外、実施例1と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。変更後の糸条巻取装置は、特開2002−284447号の請求項4記載の糸条巻取装置である。具体的には、図6に示す糸条巻取装置である。図6に示す様に、スピンドル62は、誘導モータ61に連結され、そのスピンドル62にボビン2が装着されている。誘導モータ61によりスピンドル62が回転駆動されると、ボビン2の上に糸条Yがトラバースガイド54に案内されながら巻き取られる。他方、上記トラバースガイド54のトラバース駆動装置の駆動源として、正転、逆転を交互に行うサーボモータ55が設けられている。サーボモータ55には、カップリング60を介してボールねじ56が連結され、ボールねじ56は、両端部がボールベアリング(図示せず)を介してブラケット59に支持されている。ボールねじ56にはボールナット57が螺合して軸方向に移動可能になっており、そのボールナット57にトラバースガイド54が取り付けられている。そのボールナット57は、ボールねじ56と平行に設けられた2本の案内ガイド58に摺動自在に支持されている。各案内ガイド58の両端部は、ブラケット59に固定されている。サーボモータ55が正逆に回転するとボールねじ56が正逆に回転し、正転か逆転に回転かに応じてボールナット57がボールねじ56の軸方向に往復移動する。したがって、ボールナット57上のトラバースガイド54に糸条Yが案内されながら、ボビン2の上に巻き取られる。このように糸条Yが往復トラバースするトラバース区間は、糸条Yの巻き取り中において変化するように制御され、ボビン2上にパーン状のパッケージを形成する。
なお、トラバースガイド54とパッケージの間にボビンの回転軸に略平行な回転軸をもつローラベイル63が設けられ、巻き取り中のパッケージ表面を押圧する。ローラベイル63には、誘導モータ64がスピンドル62を回転駆動する誘導モータ61とは別に連結され、さらに誘導モータ64に連結されたブラケット65に取り付けられたエアシリンダ66が設けられる。エアシリンダは、流体によって駆動され、その流体の圧力を減圧弁(図示せず)によって調節することで、パッケージ表面とローラベイル63の接触長の単位長さ当たりの押圧力を調節する。
なお、この糸条巻取装置では、ローラベイル63によるパッケージへの押圧力は、巻き始めから巻き終わりにかけて50±3gf/mとなるようにエアシリンダ66を駆動する流体圧力を5分毎に調整し、また、ローラベイル63の表面速度は、パッケージ表面速度×1.05とした。
(実施例23)
実施例22の糸条巻取装置を用いた以外、実施例4と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(比較例10)
実施例22の糸条巻取装置を用いた以外、実施例7と同様の方法でポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。
(実施例22,23、比較例10の評価)
実施例22,23、比較例10の結果を表6に示す。巻取形式をガイドトラバース、ローラベイル有りとすることで、内層収縮応力変動は大になる傾向あり、比較例10ではメッシュ織物に強いヒケ・織段が発生した。
Figure 2011086954
(実施例24)
実施例1と同様の方法で給油、引取りまで行った後、一旦未延伸糸を巻き取った。その後、給糸ロール、第1、第2、第3ホットロール、冷ロール、ドローツイスター型巻取り機からなる延伸機にて延伸、巻き取り、ポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。その際の詳細条件は以下の通りである。
第1ホットロール :温度90℃、表面速度138m/分
第2ホットロール :温度90℃、表面速度484m/分
第3ホットロール :温度140℃、表面速度600m/分
冷ロール :室温、表面速度600m/分
ドローツイスター :スピンドル回転数8000rpm、冷ロール出張力0.2cN/dtex 。
(実施例25)
実施例4と同様の方法で給油、引取りまで行った後、一旦未延伸糸を巻き取った。その後、実施例24の延伸機にて延伸、巻取り、ポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。その際の詳細条件は以下の通りである。
第1ホットロール :温度90℃、表面速度151m/分
第2ホットロール :温度90℃、表面速度485m/分
第3ホットロール :温度140℃、表面速度606m/分
冷ロール :室温、表面速度600m/分
ドローツイスター :スピンドル回転数8000rpm、冷ロール出張力0.2cN/dtex 。
(実施例26)
実施例4と同様の方法で給油、引取りまで行った後、一旦未延伸糸を巻き取った。その後、実施例24の延伸機にて延伸、巻取り、ポリエステルモノフィラメントパッケージを得た。その際の詳細条件は以下の通りである。
第1ホットロール :温度90℃、表面速度106m/分
第2ホットロール :温度90℃、表面速度379m/分
第3ホットロール :温度200℃、表面速度600m/分
冷ロール :室温、表面速度600m/分
ドローツイスター :スピンドル回転数8000rpm、冷ロール出張力0.2cN/dtex
(実施例24〜26の評価)
実施例24〜26の結果を表7に示す。実施例24〜26はいずれも残留トルクが大であり、特に繊度が細いものほど解舒時の寄付きが発生し易い傾向にあった。
Figure 2011086954
1:ポリエステルモノフィラメントパッケージ
2:ボビン
3:綾振り支点
4、54:トラバースガイド
5、35、55:サーボモータ
6、36、56:ボールねじ
7、37、57:ボールナット
8、38、58:案内ガイド
9、39、59:ブラケット
10、40、60:カップリング
11、41、61:誘導モータ
12、42、62:スピンドル
20:バランサー
21:方向転換ガイド
22:回転ローラ
23:張力計
24:引き取りローラ
33:糸道ガイド
63:ローラベイル
64:誘導モータ
65:ブラケット
66:エアシリンダ
θ:テーパー角
L1:パッケージ最内層の巻幅
L2:綾振り支点〜トラバースガイド間距離
L3:巻き取り中のトラバース位置による糸長差
L4:折り返し点から撚り部までの距離
d:パッケージ最内層の巻径
D:回転ローラ直径
Y:糸条
A:トラバースガイドの往復方向
B:スピンドルの往復方向

Claims (7)

  1. ポリエチレンテレフタレートからなるポリエステルモノフィラメントが巻き取られたパッケージであり、下記要件(a)〜(d)を全て満たすポリエステルモノフィラメントパッケージ。
    (a)ポリエステルモノフィラメントの糸−糸動摩擦係数が0.13μd以下
    (b)パッケージ端部がテーパー形状であり、テーパー角θが75°以下
    (c)解舒張力変動勾配ΔTが0.02cN/(dtex・m)以下
    (d)パッケージ内層の巻厚1mm部分のポリエステルモノフィラメントの湿熱収縮応力変動が3.0cN/dtex以下
  2. 下記要件(e)〜(h)のうち少なくとも1つを満たす、請求項1のポリエステルモノフィラメントパッケージ。
    (e)トラバース一往復当りに巻き取られた糸長が25m以上
    (f)パッケージ最内層の巻幅が150〜300mm
    (g)パッケージ最内層の巻径が75〜200mm
    (h)巻き取られたポリエステルモノフィラメントの残留トルクが4個/m以下
  3. 下記要件(i)を満たす、請求項1または2のポリエステルモノフィラメントパッケージ。
    (i)パッケージ内層の巻厚1mm部分のポリエステルモノフィラメントの湿熱収縮応力変動が0.3cN/dtex以下
  4. 巻き取られたポリエステルモノフィラメントが下記要件(j)〜(k)のうち少なくとも1つを満たす、請求項1〜3のいずれかのポリエステルモノフィラメントパッケージ。
    (j)繊度が3〜40dtex
    (k)10%伸張時の応力(10%モジュラス)が3.6cN/dtex以上
  5. 巻き取られたポリエステルモノフィラメントが下記構成要件(l)を満たす、請求項1〜4のいずれかのポリエステルモノフィラメントパッケージ。
    (l)ポリエステルモノフィラメントが芯鞘複合糸であり、かつ芯成分および鞘成分がポリエチレンテレフタレートである。
  6. 巻き取られたポリエステルモノフィラメントが下記要件(m)および(n)を満たす、請求項5のポリエステルモノフィラメントパッケージ。
    (m)芯成分の固有粘度(IV)が0.70以上、鞘成分の固有粘度(IV)が0.4以上、かつ鞘成分の固有粘度(IV)が芯成分の固有粘度(IV)より0.2以上低い
    (n)10%モジュラスが5.0cN/dtex以上
  7. 巻き取られたポリエステルモノフィラメントが下記要件(o)を満たす、請求項1〜6のいずれかのポリエステルモノフィラメントパッケージ。
    (o)繊度が3〜18dtex
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