JP2008231590A - スクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法およびスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメント - Google Patents

スクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法およびスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメント Download PDF

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Abstract

【課題】CD印刷やグラフィック印刷、プラズマディスプレイ製造時に基板に誘電体や電極として使われるペーストを塗布する際のスクリーン紗印刷に用いた際に、紗張り強度均一性に優れたスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法およびスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントを提供する。
【解決手段】ポリエステルを溶融紡糸して、未延伸糸をボビンに一旦巻取る第1工程と、該未延伸糸をホットロール間で延伸した後、最終ゴデットロールで引き取り、ワインダーで巻取る第2工程を用いてモノフィラメントを製造するに際して、第2ホットロール以降で最終ゴデットロールを除くホットロールにおいて、ロール表面に微小の凹凸が、軸方向にも円周方向にも分布して、その凸部の平均間隔が40〜80μmであり、凸部の近似平面が表面粗度0.8S以下の鏡面で、該凸部の近似平面部の面積比が全体の60〜90%を占めるホットローラを用いて延伸熱処理することを特徴とするスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法。
【選択図】図5

Description

本発明は、スクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法およびスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントに関するものであり、詳しくはコンパクトディスク(CD)印刷やグラフィック印刷、プラズマディスプレイ製造時の感熱孔版印刷などに使用する長手方向の強度均一性を特に重要視されるスクリーン紗に用いられる繊度40dtex以下で10%伸張時強度3.5cN/dtex以上のポリエステルモノフィラメントの製造方法およびスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントに関するものである。
印刷スクリーン用織物としては、従来はシルクなどの天然繊維やステンレスなどの無機繊維からなるメッシュ織物が広く使用されてきたが、近年は、柔軟性や耐久性、コストパフォーマンスに優れる合繊メッシュが好んで使用され、中でもポリエステルモノフィラメントは寸法安定性に優れるなどスクリーン用適正が高く、広く普及している。
近年、家電業界におけるCDの普及や、コンピューターグラフィックによるデザイン物の印刷・刊行物が主流となり、さらにはプラズマディスプレイの普及が進む中で、感熱孔版印刷などに合繊メッシュを用いる試みがなされており、メッシュがより細かく、紗張り時の紗伸びが少なく、寸法安定性に優れたスクリーン紗が要求される。殊に、精細な印刷を行う際には紗張り時に10%程度の伸張を紗に付与するため、紗織物を構成するモノフィラメントの単糸間や単糸内長手方向の強度均一性が要求され、一本でも紗張り時に破断したり紗伸びしてしまった場合には、直ちに印刷欠点となり、商品価値が失われてしまうことが知られている。
すなわち、前記用途における要求品質を満足するためには、スカム発生などが無いことは勿論のこと、細繊度かつ高強度、高モジュラス化するとともに、長手方向の強度均一性の優れたスクリーン紗用原糸を提供することが重要な課題となる。
従来、スクリーン紗用モノフィラメントの製造方法については、種々の提案がなされている。
例えば、第1工程において固有粘度が0.6〜1.0の範囲にあるポリエステルポリマーを290〜304℃で溶融紡糸し、吐出糸条を冷却固化させて700〜1600m/分で一旦未延伸糸を巻き取った後、第2工程において該未延伸糸を非加熱の供給ローラーと同じく非加熱の延伸ローラー間で3〜5倍の延伸倍率の下に延伸し、その間に予熱ローラーおよび非接触ヒーターで熱処理するものである(例えば、特許文献1参照)。
また、他の提案として、第2工程においてポリエステル未延伸糸を80〜120℃の予熱ローラーで予熱後、予熱ローラーと延伸ローラー間で延伸ヒーターで加熱しながら延伸後、さらに延伸ローラーと弛緩ローラーとの間に弛緩熱処理ヒーターを配して弛緩熱処理を行った後に巻き取る方法である(例えば、特許文献2参照)。他の提案として、第1工程において290〜300℃で溶融紡糸し、冷却固化後900〜1200m/分で未延伸糸を巻き取った後、第2工程において90℃の第1ホットロール、150℃の第2ホットロールでトータル倍率3.50倍以上、最終延伸倍率1.05倍以下で延伸する方法である(例えば、特許文献3参照)。
さらに他の提案として、紡出糸条を冷却・油剤付与後に、張力付与ローラーと加熱ローラー間で1〜3%のストレッチを付与した後に、加熱供給ローラーと加熱延伸ローラー間で延伸し、ドラムに巻き取る直接紡糸延伸方法いわゆる1工程法である(例えば、特許文献4参照)。
これらの方法では、単に延伸熱処理工程に熱処理ヒーターを追加したり、弛緩熱処理を施して、繊維構造固定を強化し、スナールやパーンヒケなど、延伸応力緩和に起因する製織欠点を抑制しようとする方法であったり、単に通常のホットローラーを用いて多段延伸する方法や張力制御しながら直接紡糸延伸する方法であり、延伸応力緩和による欠点を解消したり、ハレーション防止やスカム抑制あるいは良好なパッケージフォームは得られるものの、延伸熱処理における走行糸条の把持力不足による熱処理不均一や繊維表面擦過による長手方向の強度バラツキを十分に抑制することができず、得られたモノフィラメントをスクリーン紗織物にした際には、比較的精密性の求められないTシャツ印刷などの捺染用途には使用できたとしても、高精密性を要求されるCD印刷やグラフィック印刷あるいはプラズマディスプレイ用印刷に用いるには紗張り時の強度均一性の不十分なスクリーン紗織物となる。
この他、ローラの表面を特殊加工する方法として、軸方向に鏡面帯と梨地帯とを交互に配置したことを特徴とするローラ(例えば、特許文献5参照)や、ローラ軸方向に溝を設けることを特徴とするローラ(例えば、特許文献6参照)などが提案されている。しかしながら、これらは通常のマルチフィラメントを対象として、かつ1工程法の提案であり、本発明のような特殊モノフィラメントには向いていない。
特開平8−267948号公報 特開平11−100720号公報 特開2001−279526号公報 特開2002−038330号公報 特開平03−161546号公報 特開昭56−169806号公報
本発明の目的は、上記従来の問題点を解決し、CD印刷やグラフィック印刷、プラズマディスプレイ製造時に基板に誘電体や電極として使われるペーストを塗布する際のスクリーン紗印刷に用いた際に、紗張り強度均一性に優れたスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法およびスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントを提供することにある。
前記目的を達成するための本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)ポリエステルを溶融紡糸して、未延伸糸をボビンに一旦巻取る第1工程と、該未延伸糸をホットロール間で延伸した後、最終ゴデットロールで引き取り、ワインダーで巻取る第2工程を用いてモノフィラメントを製造するに際して、第2ホットロール以降で最終ゴデットロールを除くホットロールにおいて、ロール表面に微小の凹凸が、軸方向にも円周方向にも分布して、その凸部の平均間隔が40〜80μmであり、凸部の近似平面が表面粗度0.8S以下の鏡面で、該凸部の近似平面部の面積比が全体の60〜90%を占めるホットローラを用いて延伸熱処理することを特徴とするスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法。
(2)前記第1工程の紡糸速度が500〜1500m/分で、第2工程の巻き取り速度が800〜1200m/分であることを特徴とする前記(1)に記載のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法。
(3)前記(1)〜(2)のいずれかに記載の製造方法によって得られることを特徴とする繊度40dtex以下で10%伸張時強度3.5cN/dtex以上のポリエステルモノフィラメント。
本発明のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法は、長手方向の強度均一性を得るために特に重要な延伸熱処理に用いるローラー表面形態とモノフィラメントとの動摩擦係数を適正なものとすることにより、従来の製造方法で達成し得なかった高い強度均一性を有する、CD印刷やグラフィック印刷、プラズマディスプレイ製造時に基板に誘電体や電極として使われるペーストを塗布する際のスクリーン紗印刷などの、あらゆる高精密印刷に好適なスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントを得ることができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法は、ポリエステルを溶融紡糸して、未延伸糸をボビンに一旦巻取る第1工程と、該未延伸糸を2個以上のホットロール間で延伸した後、最終ゴデットロールで引き取り、ワインダーで巻取る第2工程を用いてモノフィラメントを製造するに際して、第2ホットロール以降で最終ゴデットロールを除くホットロールにおいて、ロール表面に微小の凹凸が、軸方向にも円周方向にも分布して、その凸部の平均間隔が40〜80μmであり、凸部の近似平面が表面粗度0.8S以下の鏡面で、該凸部の近似平面部の面積比が全体の60〜90%を占めるホットローラを用いて延伸熱処理することを特徴とするものである。
本発明におけるポリエステルとしては、例えば繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)を用いて、溶融紡糸するものであり、芯鞘複合糸や単成分糸でも良いが、芯鞘複合糸の芯成分、あるいは単成分糸に用いるPETの極限粘度は0.70〜1.25であることが高いモノフィラメント強度を得るのに好ましい。芯鞘複合糸の鞘成分については、スクリーン紗製織時のスカム抑制の観点から、共重合PETやポリアミドは不適であり、極限粘度0.40〜0.70のPETであることが好ましい。
また、本発明におけるモノフィラメントの断面形状は、安定した製糸性やスクリーン製織性を得やすいという点や、製織後乳剤を塗布して感光させる際にハーレーションの発生を抑えるため、スクリーン紗の目開き、すなわちタテ糸とヨコ糸の交差により形成される格子状空間の形状の安定性などより、丸断面とすることが好ましい。また、前記ハーレーション抑制効果を向上させるために、モノフィラメント中に紫外線吸収剤を含有させても良く、紫外線吸収剤を含有せしめる場合、スクリーン紗製織時の筬羽根でのスカム発生を抑制するために、有機化合物系のものが好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物やアンスラキノン系化合物が好ましい。より好ましくは、アンスラキノン系イエロー顔料を用いることが好ましく、スクリーン紗製織後の染色加工を不要とし、製織コストを低減することができるものである。
スクリーン紗の紗張り工程においては、印刷時のメッシュの歪みによる塗布ムラを抑制するために5〜10%の伸張を付与することが知られており、高い印刷精度を得るためには、10%伸張時応力を均一にすることが重要であり、モノフィラメントとしては単糸間および単糸内長手方向の10%伸張時強度のバラツキが0.15cN/dtex以下であることが好ましい。より好ましくは0.10cN/dtex以下、さらに好ましくは0.05cN/dtex以下である。また、紗張り工程においては、紗の寸法安定上、一定値以上の張力が必要であり、張力は強度(cN/dtex)×メッシュにより定まる。高密度化を図る場合、一般的には細繊度のモノフィラメントを用いれば良いが、モノフィラメント繊度とメッシュ密度は完全には反比例しないため、細繊度化するほど破断強度は高くする必要がある。このため、本発明におけるモノフィラメントの場合、10%伸張時強度は3.5cN/dtex以上であり、好ましくは4.0cN/dtex以上、より好ましくは5.0cN/dtex以上である。
本発明におけるモノフィラメントの繊度は、一般的にスクリーン紗用途に用いるモノフィラメントは捺染用途では、繊度40dtex以下、特にCD印刷やグラフィック印刷、プラズマディスプレイ基板へのペースト塗布に用いるスクリーン紗用途では、モノフィラメント繊度は18dtex以下であることがより好まれる。繊度40dtexを上回るモノフィラメントを溶融紡糸する際には、冷却風で均一に糸条を固化することが非常に難しくなり、実質的には吐出糸条を冷却水層に通過させて固化させる水冷法を採用せざるを得ず、スクリーン紗用モノフィラメントとして必要な繊径均一性を得ることが難しくなる。
本発明のモノフィラメントの製造方法は、目的の強度や強度均一性を得るため、第2工程における延伸前の予熱および延伸後の熱処理には、積極駆動するネルソン型のホットロールを用いることが重要であり、熱処理に熱板型ヒーターを用いると繊維表面を擦過するために強度低下を誘発したり、非接触型ヒーターでは熱処理を均一に施すことができない。また、第1工程における紡糸速度は、目的の強度を得るための十分な延伸倍率を付与するために、500〜1500m/分の範囲とすることが好ましく、特に800〜1200m/分の範囲とすることが好ましい。
図1は、一般的な第2工程延伸機の糸道図である。図1において、第1工程で巻き取られた未延伸糸は、図1に示す第2工程である、フィードロール1とニップロール2、第1ホットロール3、第2ホットロール10、第3ホットロール11、および最終ゴデットロール4間で延伸及び弛緩され、パーン5に巻き取らる。
第2工程において未延伸糸を均一に予熱し、延伸時に走行糸条を十分把持して繊維横断面に均一に延伸応力を伝播するためには、第1ホットロールの表面は鏡面であることが重要である。鏡面とは、表面粗度0.8S以下を示すが、工業的な繊維製糸工程で用いる鏡面ロールは、表面粗度0.2〜0.8Sの範囲のものであることが好ましい。第1ホットロールの表面を梨地とすると、走行糸条が滑りを生じて予熱ムラを誘発し、延伸ムラが生じたり、目的の強度レベルを得るための高い延伸倍率付与ができなくなる。梨地とは、表面粗度(Rmax)2S以上のものを示し、表面処理方法は特に限定するものではないが、工業的な繊維製糸工程で用いる梨地ロールは、表面粗度(Rmax)2〜3Sの範囲のものである。
本発明の第2工程における第1ホットロールより後工程のホットロールは、例えば第2ホットロールでは、第1ホットロールとの間で延伸後の熱処理に用いるか、多段延伸を行う場合には、1段目延伸後の2段目の延伸前予熱を行う目的のものであるが、第1ホットロールより後工程のホットロール表面では繊維表面を擦過することなく、適度に走行糸条が把持され、適度に滑りを生じさせることが単糸間あるいは単糸内長手方向の強度均一性を得るのに重要である。
本発明の第1ホットロールより後工程のホットロールの糸条走行部の表面は、前記強度均一性を得るために、第2ホットロール以降で最終ゴデットロールを除くホットロールにおいて、ロール表面に微小の凹凸が、軸方向も円周方向にも分布して、その凸部の平均間隔が40〜80μmであり、凸部の近似平面が表面粗度0.8S以下の鏡面で、該凸部の近似平面部の面積比が全体の60〜90%を占めるホットローラを用いることが重要である。
ここでの微小の凹凸とは、深さが20〜80μ程度で、大きさが直径あるいは対角線で40〜80μのものであることが好ましい。
図5は、本発明のホットロールの表面状態の一例を示す平面模式図であり、凸部が矩形である場合を示し、図中、符号7は凸部の鏡面部、8は凹部を示す。また、図6は、図5における断面を示す。
凸部の平均間隔とは、図5の符号9で示すように、凸部の中心から隣接する凸部の中心までの間隔であり、バラツキもあるが長さ0.8mmで測定したときの平均値である。
また、図3は、本発明のホットロールの表面状態の一例を示す平面模式図であり、凸部が円形である場合を示し、図中7は凸部の鏡面部を示し、図4は、本発明のホットロールの表面状態の一例を示す断面模式図であり、図3における断面を示す。図5においては、凸部が矩形である場合を示したが、図3に示すように、凸部の形状は円形であってもよく、また、矩形や円形に限らず、他の形状であってもよい。
図9は、本発明のホットロールの表面状態の面積比を説明する図である。「凸部の近似平面部の面積比が全体の60〜90%」とは、図9に示す例において、A×Bの面積を全体の面積としたとき、凸部の近似平面部の面積とは、X×Y×9の面積である。この面積比が60〜90%であることを示す。
凹部の表面粗度は、特に指定はないが、例えば梨地クロムメッキをした後に表面を研磨する方法であれば、研磨実施以外の残りの表面の粗度となる。
糸条走行方向の全周が鏡面では糸離れ性が悪いため、製糸操業性が劣るものとなる。また、ボビンに所定の重量が巻き取られた後、製品をドッフし、さらに再スタートする時に糸切れする確率が高く、生産性として問題であった。また、単に梨地メッキ粗度を調整したものではメッキ加工のバラツキやモノフィラメントを構成するポリマー種類、さらにはモノフィラメントに付与する油剤の種類などにより、大きく動摩擦係数が変化してしまい、単糸間の強度均一性が劣位であったり、モノフィラメントを構成するポリマーの種類が限定的となるため、工業的に汎用性が劣るという問題を有する。さらに工夫して、軸方向に鏡面帯と梨地帯とを交互に配置したことを特徴とするローラ、あるいはローラ軸方向に溝を設けるなどしても連続性に欠けるために微妙な把持力は得られない。
本発明のモノフィラメントの製造方法における延伸方法は、第1ホットロールと第2ホットロール間で延伸付与後に延伸糸を巻き取る1段延伸でも良く、第1ホットロールと第2ホットロール間で1段目の倍率を付与後に、さらに第2ホットロールと第3ホットロール間で2段目の倍率付与を施す2段延伸でも良く、さらには第3ホットロールと第4ホットロール間で3段目の倍率付与を施す3段延伸でも良い。延伸熱処理後の巻き取りについては、最終ホットロールより後工程に最終ゴデットロールを介して延伸糸をワインダーで巻き取ることで、巻き取り前に十分に糸条を冷却し、延伸後の繊維構造緩和を抑制して製織時のヒケ欠点やパッケージフォーム不良を回避することが好ましいものである。
好ましくは、第1ホットロールと第2ホットロール間で延伸付与後に延伸糸を巻き取る1段延伸である。1段で一気に延伸をした後、最終ゴデットロールを介して延伸糸をワインダーで巻き取ることで、外乱要因が少ないので、よりヒケ欠点やパッケージフォーム不良のない糸が得られる。
最終ゴデットロールの温度は、特別コントロールすることはなく、室温と同程度となる。
なお、本発明のモノフィラメントの製造方法における延伸においては、目的の強度を得るために、第1ホットロールは十分に糸条を予熱することが重要であり、表面温度は85〜95℃の範囲とすることが好ましい。また、第2ホットロールについては、例えば1段延伸に用いる場合には、熱処理を十分かつ均一に施すために、表面温度は120〜150℃の範囲とすることが好ましいが、2段延伸に用いる場合には、第2ホットロールは90〜130℃、好ましくは100〜120℃の範囲とし、1段目の延伸で配向性の高くなった繊維構造を破壊することなく安定的に2段目の延伸を施すなど、多段で延伸倍率を付与する場合には、第1ホットロールより後工程のホットロールの表面温度を適宜調整することが好ましい。
また、第3ホットロールの表面温度は、繊維構造の結晶性を向上し、高い強度を発揮しやすくするため、150〜220℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは180〜200℃の範囲である。また、多段延伸時の倍率配分については、溶融紡糸に用いるポリマーの粘度や紡糸速度、目的とする強度特性により、適宜調整することが好ましい。例えば、第1工程においてIV=0.78のPETを用いて、紡糸速度1100m/分で一旦未延伸糸を巻き取った後、第2工程において表面温度90℃の第1ホットロールと表面温度100℃の第2ホットロール間で、3.76倍で延伸後、第2ホットロールと表面温度200℃の第3ホットロール間で1.001倍で延伸した後にワインダーで巻き取ることで、10%伸張時強度3.6cN/dtexのモノフィラメントを得ることが可能である。
以下本発明を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中の評価は以下の方法に従った。
1.極限粘度(IV)
オルソクロロフェノール中25℃で測定された値より算出した。
2.延伸糸繊度
周長100cmの検尺器を用いて、100回カセを電子天秤で測定した値(g)に100を乗じた。1本の延伸糸について、これを5回繰り返し、平均値を実測繊度(dtex)とした。
3.強伸度、10%伸張時強度
オリエンテックス社製テンシロン引張試験機を用い、初期試料長20cm、引張速度2cm/分で1本の延伸糸当たり5回測定した強伸度曲線において、10%伸張時の応力(cN)の平均値を延伸糸繊度(dtex)で除した値を用いた。
4.10%伸張時強度のバラツキ
延伸糸100本を無作為に抽出し、前項で測定した10%伸張時強度を測定し、標準偏差を単糸間のバラツキとした。また、そのうち30本については、強伸度測定の繰り返し数を30回とし、その標準偏差の平均値を単糸内長手方向のバラツキとした。
5.製糸操業性
一旦未延伸糸を巻き取った後に延伸する2工程法で延伸する場合は、延伸糸製品数量5,000kgを、延伸糸製品5,000kgを採取するのに用いた未延伸糸数量(kg)で除した値に100を乗じて収率(%)として評価し、○および△を合格とした。なお、一旦未延伸糸を巻き取ること無く延伸する直接紡糸延伸法の場合は、延伸糸製品数量5,000kgを採取するのに要した紡糸時間(hr)とポリマー吐出量(kg/hr)を乗じた値を原料使用量とし、延伸糸製品数量5,000kgを原料数量で除した値に100を乗じて収率(%)とした。
○:90%以上
△:85〜90%未満
×:85%未満
6.ヨコヒケ
得られたモノフィラメントを用いて、250〜330メッシュのスクリーン紗を30反製織し、ヨコヒケが1箇所/反を1点とて欠点数を評価し、○および△を合格とした。
○:5点未満
△:5〜10点
×:11点以上
7.紗張り寸法安定性
得られたモノフィラメントを用いて、250〜330メッシュのスクリーン紗を製織後、紗張り時テンション1.1mm、枠サイズ950×950mm、乳剤厚み5μmで、MT−1000TVC印刷機を用いて、5000枚の印刷テストを実施し、寸法変化を評価し、○および△を合格とした。
○:寸法変化が0.03%以下
△:寸法変化が0.06%以下
×:寸法変化が0.07%以上
8.表面の粗さ(表面粗度)については、(株)ミツトヨ製 表面粗度計 SV−400、CODE No176−881を使用した。
実施例1
第1工程において、エクストルダー押し出し機からなる複合紡糸機を用いて、芯部ポリマーにIV=0.71のPET、鞘部ポリマーにIV=0.51、酸化チタン0.3wt%含有のPETを用いて、複合断面積比80:20となるようにポリマー吐出量を調整して、紡糸温度295℃にて口金から糸条を吐出した後、内壁温度300℃で糸条との距離が4.5cm、長さ10cmの加熱帯を通過させた後に、冷却固化し、紡糸速度1200m/分で芯鞘複合モノフィラメント未延伸糸を一旦巻き取った。
この未延伸糸を第2工程において、糸条走行部表面全周が表面粗度0.6Sの実質的に鏡面である表面温度90℃の第1ホットロールと、凸部の平均間隔が50μmであり、凸部の近似平面が表面粗度0.6Sの鏡面で、その凸部の近似平面部の面積比が全体の60%を占める、表面温度130℃の第2ホットロール間で4.27倍で延伸し、次いで第2ホットロールと最終ゴデットロール間で0.987倍、すなわち1.3%のリラックスを付与して繊度9.9dtexの芯鞘複合モノフィラメントを巻き取った。
この結果、収率は92%であり、製糸操業性は良好であった。得られたモノフィラメントの破断強度は6.1cN/dtex、破断伸度23%、10%伸張時強度は5.4cN/dtex、10%伸張時強度のバラツキは0.08cN/dtexであった。このモノフィラメントを用いて、スルーザー製織機で315メッシュのスクリーン紗を製織した結果、ヨコヒケ欠点は4点であり、良好な紗品位を有しており、印刷テスト時の寸法変化は0.04%と、良好な紗張り寸法安定性を有するものであった。結果を表1に示す。
実施例2
実施例1と同様の第1工程の条件で巻き取り、第2工程の第2ホットロールを、凸部の平均間隔が80μmであり、凸部の近似平面が表面粗度0.6Sの鏡面で、その凸部の近似平面部の面積比が全体の90%を占めるホットローラとした以外は全て実施例1と同一とした。
この結果、収率は90%であり、工業的にモノフィラメントを生産するには問題のない製糸操業性であった。得られたモノフィラメントの破断強度は6.3cN/dtex、破断伸度21%、10%伸張時強度は5.6cN/dtex、10%伸張時強度のバラツキは0.07cN/dtexであった。このモノフィラメントを用いた315メッシュのスクリーン紗を製織した結果、ヨコヒケ欠点は4点で問題のない紗品位を有し、印刷テスト時の寸法変化は0.03%と良好な紗張り寸法安定性を有するものであった。結果を表1に示す。
実施例3
第1工程において、実施例1と同様として、紡糸して一旦巻き取った。
この未延伸糸を第2工程において、第2ホットロールの条件を、凸部の平均間隔が60μmであり、凸部の近似平面が表面粗度0.6Sの鏡面で、その凸部の近似平面部の面積比が全体の80%を占めるホットローラとした以外は、実施例1と同様条件で芯鞘複合モノフィラメントを巻き取った。
この結果、収率は93%であり、工業的にモノフィラメントを生産するには問題のない製糸操業性であった。得られたモノフィラメントの破断強度は6.2cN/dtex、破断伸度22%、10%伸張時強度は5.5cN/dtex、10%伸張時強度のバラツキは0.02cN/dtexであった。このモノフィラメントを用いて、スルーザー製織機で330メッシュのスクリーン紗を製織した結果、ヨコヒケ欠点は5点で紗品位は問題なく、印刷テスト時の寸法変化は0.04%と問題のない紗張り寸法安定性であった。結果を表1に示す。
比較例1
第2工程において表面粗度0.6Sで鏡面部の比率がロール表面積の100%の第2ホットロールを用いたこと以外、実施例1と同様の方法で、繊度9.9dtexの芯鞘複合モノフィラメントを巻き取った。収率は80%と製糸操業性が劣るものであった。また、ボビンに所定の重量が巻き取られた後、製品をドッフし、さらに再スタートする時に糸切れする確率が30〜40%もあり、生産性として問題であった。得られたモノフィラメントの破断強度は6.4cN/dtex、破断伸度22%、10%伸張時強度は5.7cN/dtex、10%伸張時強度のバラツキが0.28cN/dtexとなった。結果を表2に示す。
比較例2
第2工程おいて糸条走行部表面全周が表面粗度3Sの梨地メッキが施してある、平面部が全くない第2ホットロールを用いたこと以外、実施例1と同様の方法で、繊度9.9dtexの芯鞘複合モノフィラメントを巻き取った。得られたモノフィラメントの破断強度は5.5cN/dtex、破断伸度19%、10%伸張時強度は5.0cN/dtex、10%伸張時強度のバラツキは1.17cN/dtexとなり、強伸度特性やその均一性が著しく低下したものであった。このモノフィラメントを用いて、困難ながらも315メッシュのスクリーン紗を製織したが、ヨコヒケ欠点は問題ないものの、良好な紗品位を有しており、印刷テスト時の寸法変化は0.12%と、紗張り寸法安定性が著しく劣るだけでなく、スキージの際に紗を構成するモノフィラメントの糸切れやスカムが頻発した。結果を表2に示す。
比較例3
第2工程において、凸部の平均間隔が30μmであり、凸部の近似平面が表面粗度0.6Sの鏡面で、その凸部の近似平面部の面積比が全体の40%を占める第2ホットローラを用いたこと以外、実施例1と同様の方法で繊度9.9dtexの芯鞘複合モノフィラメントを巻き取った。収率は88%と製糸操業性は問題ないものであったが、得られたモノフィラメントの破断強度は5.7cN/dtex、破断伸度20%、10%伸張時強度は5.2cN/dtex、10%伸張時強度のバラツキは0.32cN/dtexと強伸度特性やその均一性が劣るものとなった。このモノフィラメントを用いて、スルーザー製織機で330メッシュのスクリーン紗を製織した結果、ヨコヒケ欠点は5点と紗品位は問題ないものの、印刷テスト時の寸法変化は0.09%と紗張り寸法安定性の劣るものであった。結果を表2に示す。
Figure 2008231590
Figure 2008231590
一般的な第2工程延伸機糸道図である。 本発明のホットロール表面のイメージ図であり、ロール表面に微小の凹凸が、軸方向も円周方向にも分布していることを示す。 本発明のホットロールの表面状態の一例を示す平面模式図であり、凸部が円形である場合を示す。 図3における断面を示す。 本発明のホットロールの表面状態の一例を示す平面模式図であり、凸部が矩形である場合を示す。 図5における断面を示す。 従来のホットロールの表面状態の例を示す平面模式図であり、通常の梨地形状の模式図であり鏡面部がない状態を示す。 図7における断面を示す。 本発明のホットロールの表面状態の面積比を説明する図である。
符号の説明
1:フィードロール
2:ニップロール
3:第1ホットロール
4:最終ゴデットロール
5:パーン
6:凸部
7:鏡面部
8:凹部
9:凸部間隔
10:第2ホットロール
11:第3ホットロール

Claims (3)

  1. ポリエステルを溶融紡糸して、未延伸糸をボビンに一旦巻取る第1工程と、該未延伸糸をホットロール間で延伸した後、最終ゴデットロールで引き取り、ワインダーで巻取る第2工程を用いてモノフィラメントを製造するに際して、第2ホットロール以降で最終ゴデットロールを除くホットロールにおいて、ロール表面に微小の凹凸が、軸方向にも円周方向にも分布して、その凸部の平均間隔が40〜80μmであり、凸部の近似平面が表面粗度0.8S以下の鏡面で、該凸部の近似平面部の面積比が全体の60〜90%を占めるホットローラを用いて延伸熱処理することを特徴とするスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法。
  2. 前記第1工程の紡糸速度が500〜1500m/分で、第2工程の巻き取り速度が800〜1200m/分であることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法。
  3. 請求項1〜2のいずれかに記載の製造方法によって得られることを特徴とする繊度40dtex以下で10%伸張時強度3.5cN/dtex以上のポリエステルモノフィラメント。
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