JPWO2010103570A1 - ビスカスカップリング、およびサスペンション装置 - Google Patents

ビスカスカップリング、およびサスペンション装置 Download PDF

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Abstract

ビスカスカップリング10は、粘性流体を収容する作動室16を形成するケース体12と、ケース体12に相対回転可能に挿通されたシャフト20と、シャフト20に連結された複数のインナープレート30と、ケース体12に連結され、作動室16においてインナープレート30と、シャフト20の軸方向に間隔を開けて配置された複数のアウタープレート50と、を備える。ビスカスカップリング10は、インナープレート30およびアウタープレート50の一方を、シャフト20またはケース体12の回転速度に応じて変形させることで、インナープレート30とアウタープレート50との間隔を調整可能とした。

Description

本発明は、ビスカスカップリング、およびビスカスカップリングを搭載したサスペンション装置に関する。
従来、ビスカスカップリングをロールダンパ装置に採用した構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このロールダンパは、ロッド(シャフト)に対して回転自在に設けられた中空ケーシング内において、中空ケーシングの内周面に固着されたドーナツ盤状のアウタープレートと、ロッドの外周面に固着されたドーナツ盤状のインナープレートとが交互に重合されてそれぞれ複数枚配設されるとともに、ケーシング内にシリコンオイルが封入されている。そして、封入オイルの粘性抵抗によって減衰力を発生させている。
特許第2803870号公報 特開平10−109529号公報 特開平10−109528号公報 特開平2−62431号公報
上述の状況において、本発明者は以下の課題を認識するに至った。
すなわち、ビスカスカップリングでは、シリコンオイル等の粘性流体が封入された作動室内でインナープレートとアウタープレート(以下、総称してプレートと呼ぶ場合がある)とが差動回転し、その回転差に応じて粘性流体にせん断力が生じてトルクが発生する。当該ビスカスカップリングをショックアブソーバとしてサスペンション装置に搭載した場合、この発生トルクがサスペンション装置における減衰力となる。ビスカスカップリングで発生する減衰力は、プレート間隔、およびプレートの重なり合う面積などに応じて決定される。
ここで、サスペンション装置のサスペンション特性は、乗り心地と共に車両の操縦安定性、すなわち操安性に影響を与える。たとえば、ショックアブソーバ(減衰力発生手段)の減衰力を大きく設定すると、車両の操安性は向上するが乗り心地は悪くなる。反対にショックアブソーバの減衰力を小さく設定すると、車両の操安性は低下するが乗り心地は良くなる。そこで、たとえばサスペンション特性を以下のように設定することで、車両の操安性と乗り心地を向上させることができる。すなわち、低域ストローク速度で減衰力を大きくして操安性を確保し、中高域ストローク速度で減衰力を小さくして乗り心地を確保する。
しかしながら、従来のビスカスカップリングは、プレート間隔、およびプレート重なり面積は設計段階で予め定められた一つのものに固定されていた。したがって、従来のビスカスカップリングでは、プレートの差動回転速度に対して比例の関係で、すなわちリニアに減衰力を発生させることしかできず、差動回転速度に応じて最適な減衰力を発生させることができなかった。そのため、たとえば、中高域ストローク速度での乗り心地を確保するために減衰力を小さく設定した場合には、低域ストローク速度での減衰力不足が生じてしまうおそれがあった。一方、低域ストローク速度での操安性を確保するために減衰力を大きく設定した場合には、中高域ストローク速度での減衰力過大が生じてしまうおそれがあった。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サスペンション装置に好適に採用可能なビスカスカップリングを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様のビスカスカップリングは、粘性流体を収容する作動室を形成するケース体と、前記ケース体に相対回転可能に挿通されたシャフトと、前記シャフトに連結された複数の第1プレートと、前記ケース体に連結され、前記作動室において前記第1プレートと、前記シャフトの軸方向に間隔を開けて配置された複数の第2プレートと、を備え、前記第1プレートおよび前記第2プレートの一方を、前記シャフトまたは前記ケース体の回転速度に応じて変形させることで、前記第1プレートと前記第2プレートとの間隔を調整可能としたことを特徴とする。
この態様によれば、回転速度に応じて減衰力を変化させることができるため、サスペンション装置に好適に採用可能なビスカスカップリングを提供することができる。
上記態様において、前記第1プレートは、前記シャフトの軸に平行な断面視で軸方向に傾斜した傾斜部を含み、前記第1プレートの開放端と前記傾斜部を含む領域は前記シャフトを中心として放射状に延びるスリットにより複数の可動プレートに分割されており、
前記可動プレートの開放端側の端部は、連結端側の端部よりも質量が大きく、前記第2プレートは、前記傾斜部と対向する領域が前記傾斜部と平行に延びるように傾斜し、前記シャフトまたは前記ケース体の回転に応じて前記可動プレートにかかる力によって前記可動プレートが変位して、前記間隔が変化してもよい。これによれば、回転速度に応じて減衰力を変化させることができる。
上記態様において、前記第1プレートは、前記スリットの延在する範囲内に前記シャフトの軸周り方向に延びる肉薄部を有してもよい。これによれば、回転速度に応じて第1プレートまたは第2プレートをより確実に変位させることができる。
上記態様において、前記シャフトおよび前記ケース体が非回転状態で、前記第1プレートと、当該第1プレートと隣り合う2枚の第2プレートのうち一方の第2プレートとの間隔は、当該第1プレートと他方の第2プレートとの間隔よりも狭くてもよい。これによれば、回転速度の増加にともなう減衰力の過剰な増加を抑えることができる。
上記態様において、前記可動プレートの開放端側の端部は、前記第1プレートの回転方向の端面のうち一方の端面が他方の端面よりも面積が大きくてもよい。これによれば、シャフトまたはケース体の回転方向に応じて減衰力を異ならせることができる。
上記態様において、前記可動プレートは、開放端側の端部が折り曲げられていてもよい。これによれば、より簡単にビスカスカップリングを形成することができる。
上記態様において、前記第1プレートは、前記第2プレートの開放端よりもシャフト側の領域に一体または別体に設けられた小プレートを含み、前記第2プレートは、開放端からシャフト側に突出する突出部を含み、前記小プレートと前記突出部とは、前記第1プレートと前記第2プレートとの間隔よりも狭い間隔で対向してもよい。これによれば、シャフトまたはケース体の回転角度に応じて発生させる減衰力を調整することができるため、サスペンション装置により好適に適用可能となる。
上記態様において、前記小プレートおよび前記突出部は、前記ケース体に対する前記シャフトの回転角度が回転範囲の限界領域にあるときに互いが対向するように設けられていてもよい。これによれば、シャフトまたはケース体の回転角度が回転範囲の限界領域にあるときに、減衰力を増大させることができる。
本発明の別の態様は、サスペンション装置である。このサスペンション装置は、車両が上下に変位した際に当該車両に伝わる衝撃を緩衝するための減衰力発生手段として上述のいずれかの態様のビスカスカップリングを備えている。このサスペンション装置によれば、乗り心地および操舵安定性の向上を図ることができる。
上記態様において、前記第1プレートは、前記第2プレートの開放端よりも前記シャフト側の領域に一体または別体に設けられた小プレートを含み、前記第2プレートは、開放端から前記シャフト方向に突出し、前記第1プレートと前記第2プレートとの間隔よりも狭い間隔で前記小プレートと対向する突出部を含み、前記小プレートおよび前記突出部は、前記車両が変位上端領域または変位下端領域にあるときに互いに対向するように配置されてもよい。これによれば、車両のトッピングおよびボトミングを低減することができる。
上記態様において、前記第1プレートは、前記シャフトの軸に平行な断面視で軸方向に傾斜した傾斜部を含み、前記第1プレートの開放端と前記傾斜部を含む領域は前記シャフトを中心として放射状に延びるスリットにより複数の可動プレートに分割されており、前記可動プレートの開放端側の端部は、前記第1プレートの回転方向の端面のうち前記車両の上方への変位によって前記シャフトが回転したときに前進する側の端面が、前記車両の下方への変位によって前記シャフトが回転したときに前進する側の端面よりも面積が大きくてもよい。これによれば、車両の乗り心地をより向上させることができる。
本発明によれば、サスペンション装置に好適に採用可能なビスカスカップリングを提供することができる。
実施形態1に係るサスペンション装置の取付構造を示す図である。 実施形態1に係るビスカスカップリングの概略断面図である。 図3(A)は、インナープレートの概略斜視図であり、図3(B)は、インナープレートの概略平面図であり、図3(C)は、インナープレートの概略側面図である。 図4(A)は、インナープレートの可動プレート近傍の拡大図であり、図4(B)は、可動プレート近傍の概略断面図である。 図5(A)は、アウタープレートの概略斜視図であり、図5(B)は、アウタープレートの概略平面図であり、図5(C)は、アウタープレートの概略側面図である。 図6(A)は、シャフトとケース体とが非回転の状態を示す概略断面図であり、図6(B)は、シャフトとケース体とが回転した状態を示す概略断面図である。 図7(A)は、シャフトとケース体との差動回転速度vと減衰力Fとの関係を示す図であり、図7(B)は、シャフトとケース体との差動回転角度θと減衰力Fとの関係を示す図である。 図8(A)は、実施形態2に係るビスカスカップリングにおける可動プレートの開放端近傍の拡大図であり、図8(B)は、図8(A)に示す部分を図8(A)とは別の視点から見たときの拡大図である。 変形例に係るビスカスカップリングにおけるインナープレートの一部を示す概略断面図である。
符号の説明
1 サスペンション装置、 10 ビスカスカップリング、 12 ケース体、 16 作動室、 20 シャフト、 30 インナープレート、 30a 開放端、 32 垂直部、 34 傾斜部、 35 連結部、 36 重り部、 38 小プレート、 40 可動プレート、 50 アウタープレート、 50a 開放端、 52 垂直部、 54 傾斜部、 58 突出部、 70 スリット。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るサスペンション装置の取付構造を示す図である。図1に示すように、サスペンション装置1は、車輪2を回転可能に支持するキャリア3と、キャリア3を上下に揺動可能に支持するロアアーム4およびアッパアーム5を備える。車両本体6、ロアアーム4、アッパアーム5、およびキャリア3はリンク機構7を構成し、ロアアーム4およびアッパアーム5は、車両本体6に回転可能に取り付けられる。
本実施形態において、サスペンション装置1は、リンク機構7のジョイント部にビスカスカップリング10を備えて構成される。本実施形態におけるリンク機構7は、4節リンク機構を構成しており、ビスカスカップリング10は、車両本体6とロアアーム4とのジョイント部8a、車両本体6とアッパアーム5とのジョイント部8b、アッパアーム5とキャリア3とのジョイント部8c、ロアアーム4とキャリア3とのジョイント部8dのいずれに設けられてもよい。図1に示す例では、ビスカスカップリング10が、車両本体6とロアアーム4のジョイント部8aを構成している。以下、ジョイント部8a〜8dを総称する場合には、「ジョイント部8」と呼ぶ。
ビスカスカップリング10は、ケース体と、ケース体に挿通されたシャフトを有する。ケース体が1つのリンクに取り付けられ、またシャフトが当該リンクに隣接するリンクに取り付けられることで、隣り合う2つのリンクを相対回転可能に連結するジョイント部8が構成される。図1に示す例では、ケース体が車両本体6に固定され、またシャフトがロアアーム4に連結されることで、ロアアーム4の上下動に応じてシャフトとケース体とが相対回転し、減衰力を発生する。
なお本実施形態において、リンク機構7の構造は例示であり、サスペンション装置1が他のリンク機構を有してもよい。さらに、図1に示す例ではビスカスカップリング10がジョイント部8aを構成しているが、他のジョイント部8b、8c、8dを構成してもよく、また複数のビスカスカップリング10が複数のジョイント部8を構成してもよい。
図2は、実施形態1に係るビスカスカップリングの概略断面図である。ビスカスカップリング10は、ロアアーム4(図1参照)に連結されてロアアーム4の上下動に応じて回転するシャフト20と、シャフト20が挿通された円筒状のケース体12とを備える。シャフト20は、ケース体12に相対回転可能に挿通されている。ケース体12は、環状張出部14において車両本体6(図1参照)に連結されている。なおシャフト20が車両本体6に連結され、ケース体12がロアアーム4に連結されてもよく、またシャフト20およびケース体12が、リンク機構7における他の隣り合うリンクに連結されてもよい。
シャフト20は、軸受18a、軸受18bにより、ケース体12に対して相対回転可能に支持されている。ケース体12は中空の円筒状部材であり、シャフト20の外周面とケース体12の内周面との間には作動室16が形成されている。作動室16は、シリコンオイル等の粘性流体が充填されており、オイルシール22a、オイルシール22bにより封止されている。
シャフト20の外周面には、複数枚のインナープレート30(第1プレート)が連結されている。ケース体12の内周面には、複数枚のアウタープレート50(第2プレート)が連結されている。複数枚のインナープレート30と複数枚のアウタープレート50とは、ともに円盤状の部材であり、作動室16においてシャフト20の軸方向に所定の間隔を開けて配置されている。本実施形態では、複数枚のインナープレート30と複数枚のアウタープレート50が、作動室16において交互に配置されている。インナープレート30の径は、ケース体12の内周面で形成される円の径よりも小さく、そのためシャフト20に連結されていない側のインナープレート30の端部は開放端30aとなっている。また、アウタープレート50の中心にはシャフト20が挿通される開口51が形成されている。開口51の径は、シャフト20の径よりも大きく、そのため、ケース体12の内周面に連結されていない側のアウタープレート50の端部は開放端50aとなっている。
また、インナープレート30は、後述する小プレート38を含み、アウタープレート50は、後述する突出部58を含む。インナープレート30およびアウタープレート50の構成については後に詳細に説明する。
ここで、従来のビスカスカップリングをサスペンション装置に適用した場合における差動回転速度と発生トルクとの関係を説明する。図1に示すように、ビスカスカップリングをサスペンション装置に組み込んだ場合、差動回転速度はサスペンションストローク速度、発生トルクは減衰力に対応する。
車輪2(図1参照)の挙動によりロアアーム4(図1参照)が上下動すると、シャフトが回転して、シャフトとケース体が相対回転する。これにより、それぞれに連結されている複数枚のインナープレートとアウタープレートとが差動回転(相対回転)し、その回転差に応じて粘性流体にせん断力が発生してトルク(抵抗)が発生する。この発生トルクは、サスペンション装置1における減衰力となる。
以下、ビスカスカップリングにおける発生トルクTの計算式を示す。
Figure 2010103570
Sn:プレート間隔(ピッチ)
N:流体粘度(動粘度)
e:密度
:インナープレートの外径
:アウタープレートの内径
Δn:差動回転速度
また、ビスカスカップリングによる差動回転速度と発生トルクとの関係は、以下の式2(クエット流れの式)で表すことができる。
Figure 2010103570
τ:抵抗
μ:摩擦係数
U:回転速度
h:プレート間隔
式1および式2から分かるように、ビスカスカップリングでは、プレート間隔Sn(プレート間隔h)の大きさに反比例してトルク(抵抗τ)が発生する。すなわち、プレート間隔Sn(プレート間隔h)が小さいほど、発生トルクT(抵抗τ)は大きくなる。
サスペンション装置のサスペンション特性としては、ストローク速度に応じて調整可能であることが望ましい。一例として、サスペンション特性は、低域ストローク速度で減衰力を大きくして操安性を確保し、中高域ストローク速度で減衰力を小さくして乗り心地を確保するために減衰力を大きくすることが好ましい。しかしながら、従来のビスカスカップリングは、プレート間隔、およびプレート重なり面積がプレートの差動回転速度によらず不変であったため、減衰力をリニアに発生させることしかできなかった。
そこで、本発明者は、インナープレート30およびアウタープレート50の一方を、シャフト20またはケース体12の回転速度に応じて変形させることで、インナープレート30の少なくとも一部の領域と、当該領域に対向するアウタープレート50の領域との間隔を調整可能とした。そして、これにより、プレートの差動回転速度に応じて発生させる減衰力を異ならせることとした。
以下、インナープレート30およびアウタープレート50の構成について詳細に説明する。図3(A)は、インナープレートの概略斜視図であり、図3(B)は、インナープレートの概略平面図であり、図3(C)は、インナープレートの概略側面図である。図4(A)は、インナープレートの可動プレート近傍の拡大図であり、図4(B)は、可動プレート近傍の概略断面図である。図5(A)は、アウタープレートの概略斜視図であり、図5(B)は、アウタープレートの概略平面図であり、図5(C)は、アウタープレートの概略側面図である。
図3(A)〜図3(C)に示すように、インナープレート30の中心には、シャフト20が挿嵌される開口31が設けられている。また、インナープレート30は、垂直部32と、傾斜部34と、連結部35と、重り部36と、小プレート38とを含む。
垂直部32は、インナープレート30がシャフト20に連結された状態で、シャフト20の軸に垂直な方向に延びている。垂直部32の内側の端部はインナープレート30の連結端であって、シャフト20に連結されている。垂直部32の外側の端部、すなわちケース体12側の端部は、連結部35を介して傾斜部34に連結されている。
傾斜部34は、シャフト20の軸に平行な断面視で、シャフト20の軸方向に傾斜しており、シャフト20の軸周りに設けられている。傾斜部34は、連結部35を介して垂直部32の外側の端部に連結されている。そのため、インナープレート30は、略傘状、もしくは略皿状となっている。
連結部35は、垂直部32の外側の端部と傾斜部34の内側の端部とを連結している。図4(A)および図4(B)に示すように、連結部35は、シャフト20の軸に平行な断面視で、両側の面が厚さ方向に凹んでおり、これによりシャフト20の軸周り方向に延びる括れ(肉薄部)が形成されている。本実施形態の連結部35は、複数の括れが設けられて蛇腹状となっている。括れは、シャフト20の軸周り全周にわたって設けられている。連結部35に括れが設けられたことで、後述する可動プレート40がシャフト20の軸方向に変位しやすくなっている。
傾斜部34の外側の端部には重り部36が連結されている。重り部36の外側の端部は、インナープレート30の開放端30aである。重り部36は垂直部32および傾斜部34よりも肉厚となっている。そのため、重り部36が設けられたことで、後述する可動プレート40の外側の端部(開放端側の端部)が内側の端部(連結端側の端部)よりも質量が大きくなっている。
小プレート38は、平面視略扇形状の部材であり、アウタープレート50の開放端50aよりもシャフト20側において、インナープレート30と一体または別体に設けられている。言い換えれば、インナープレート30は、小プレート38が設けられた領域において、板厚が厚くなっている。小プレート38は、内側の端部がシャフト20に連結され、外側の端部は開放端50aよりも内側の領域にある。また、小プレート38は、垂直部32におけるシャフト20の軸周り方向の所定領域に設けられており、インナープレート30とアウタープレート50とのプレート間隔よりも狭い間隔で突出部58と対向する(図2参照)。
インナープレート30の開放端30aと傾斜部34を含む領域は、シャフト20を中心として放射状に延びるスリット70によって複数の可動プレート40に分割されている。本実施形態では、スリット70が開放端30aから連結部35まで延びており、可動プレート40は、開放端と反対側の端部(シャフト20側の端部)が連結部35に連結されており、連結部35側の端部を支点にして、シャフト20の軸方向に変位可能となっている。可動プレート40は、上述のように、開放端側の端部が重くなっている。そのため、可動プレート40は、シャフト20とケース体12の相対回転によって可動プレート40にかかる慣性力、または遠心力により、連結端側の端部を支点としてシャフト20の軸方向に変位しやすくなっている。また、上述のように、連結部35には括れが設けられているため、可動プレート40は連結部35側の端部を支点にしてシャフト20の軸方向により変位しやすくなっている。
なお、スリット70が垂直部32まで延び、垂直部32が可動プレート40の一部を構成していてもよい。さらに、スリット70がインナープレート30の連結端まで延び、可動プレート40がインナープレート30の開放端30aから連結端にまで延在する構成であってもよい。また、インナープレート30は、垂直部32を含まず、傾斜部34がシャフト20まで延びていてもよい。なお、括れが設けられる位置は、連結部35に限定されず、インナープレート30の径方向におけるスリット70の延在する範囲内であればよい。
図5(A)〜図5(C)に示すように、アウタープレート50は、垂直部52と、傾斜部54と、突出部58とを含む。
垂直部52は、アウタープレート50がケース体12に連結された状態で、シャフト20の軸に垂直な方向に延びている。垂直部52の内側の端部、すなわちシャフト20側の端部はアウタープレート50の開放端50aである。垂直部52の外側の端部は、傾斜部54に連結されている。
傾斜部54は、インナープレート30の傾斜部34と対向する領域に設けられ、傾斜部34と平行に延びるように傾斜している。傾斜部54は、垂直部52の外側の端部に連結されている。
突出部58は、平面視略扇形状であり、アウタープレート50の開放端50aからシャフト20側に突出している。突出部58は、外側の端部が開放端50aに連結され、内側の端部がシャフト20と緩衝しない状態で、開口51内に設けられている。本実施形態では、突出部58は、シャフト20の軸周りの所定位置に2つ設けられており、インナープレート30とアウタープレート50とのプレート間隔よりも狭い間隔で小プレート38と対向する(図2参照)。
ここで、小プレート38と突出部58とは、ケース体12に対するシャフト20の回転角度が回転範囲の限界領域にあるときに互いが対向するように、それぞれインナープレート30の垂直部32とアウタープレート50の開放端50aとに配置されている。ビスカスカップリング10を備えたサスペンション装置1では、小プレート38と突出部58とが設けられる位置は、車両が概ね変位上端領域または変位下端領域、すなわち、ストローク上下限領域にあるときに互いが対向する位置である。
小プレート38と突出部58とをこのような位置に設けることで、シャフト20の回転角度が回転範囲の限界領域に達したときに、小プレート38と突出部58との間で減衰力を発生させることができる。そして、小プレート38と突出部58とは、インナープレート30とアウタープレート50との間隔よりも狭い間隔で対向するため、シャフト20の回転角度が回転範囲の限界領域に達したときに減衰力が増大する。そのため、ビスカスカップリング10を搭載したサスペンション装置1では、車両が変位上端または下端に達したときに減衰力を増大させることができ、車両のボトミングやトッピングを防止することができる。これにより、車両の乗り心地を向上させることができる。
続いて、上述の構成を備えたビスカスカップリング10の動作について説明する。図6(A)は、シャフトとケース体とが非回転の状態を示す概略断面図であり、図6(B)は、シャフトとケース体とが回転した状態を示す概略断面図である。図6(A)および図6(B)では、インナープレート30の可動プレート40近傍を示している。図7(A)は、シャフトとケース体との差動回転速度vと減衰力Fとの関係を示す図であり、図7(B)は、シャフトとケース体との差動回転角度θと減衰力Fとの関係を示す図である。図7(A)および図7(B)において、実線Eは、本実施形態に係るビスカスカップリング10の減衰力特性を示し、破線Cは、従来のビスカスカップリングの減衰力特性を示している。
図6(A)に示すように、シャフト20とケース体12とが非回転の状態では、インナープレート30と、隣り合う2枚のアウタープレート50との間隔が異なるように配置されている。すなわち、インナープレート30と、隣り合う2枚のアウタープレート50のうち一方のアウタープレート50との間隔が、他方のアウタープレート50との間隔よりも狭くなっている。具体的には、インナープレート30と、可動プレート40が変位したときに遠ざかる側のアウタープレート50B(図6(A)中、右側のアウタープレート)との間隔bが、インナープレート30と、可動プレート40が変位したときに近づく側のアウタープレート50A(図6(A)中、左側のアウタープレート)との間隔aよりも狭くなっている。たとえば、間隔bが約1mmであり、間隔aが約1.4mmである。
そして、ロアアーム4(図1参照)の上下動によってシャフト20が回転すると、シャフト20とケース体12が相対回転する。これにより、それぞれに連結された複数枚のインナープレート30とアウタープレート50とが差動回転する。差動回転速度が低速域にあるときにはインナープレート30にかかる慣性力が小さいため、インナープレート30は図6(A)に示す状態のまま回転する。そして、インナープレート30と、当該インナープレート30に対して間隔bを開けて配置されたアウタープレート50Bとの間で主に減衰力が発生する。そのため、図7(A)に示すように、差動回転速度が低速域にあるときには、差動回転速度に比例してリニアに減衰力が発生する。なお、インナープレート30と、間隔aを開けて配置されたアウタープレート50Aとの間ではほとんど減衰力が発生しない。
差動回転速度が増加するとインナープレート30にかかる慣性力が大きくなり、差動回転速度が中高速域になると、可動プレート40が連結部35側の端部を支点としてシャフト20の軸方向(図6(B)中の白抜き矢印の方向)に変位し始める。これにより、インナープレート30とアウタープレート50Bとの間隔bが広がっていく。可動プレート40の変位量は、差動回転速度の増加にともなって増大し、したがって間隔bも差動回転速度の増加にともなって大きくなっていく。これにより、中高速域においては、図7(A)に示すように、差動回転速度が増加しても減衰力はリニアに増加せず、中高速域における減衰力の過剰な増加を抑えることができる。可動プレート40は、差動回転速度の増加にともなって徐々に変位していくため、差動回転速度が低速域から中高速域に、もしくは中高速域から低速域に移行したときに減衰力はなめらかに変化する。そのため、減衰力が急激に変化することによる乗り心地の悪化を回避することができる。
可動プレート40は、たとえば、変位量が最大となった状態で、近づく側のアウタープレート50Aと最短距離にある傾斜部34の領域と、アウタープレート50A、50Bとの間隔a、間隔bがほぼ等しくなるまで変位する。たとえば、間隔bが約1mmであり、間隔aが約1.4mmの場合、最大変位量は約0.2mmであり、変位した状態での間隔aおよび間隔bが約1.2mmとなる。なお、可動プレート40の変位量が増大すると、インナープレート30とアウタープレート50Aとの間隔aが狭まっていき、インナープレート30とアウタープレート50Aとの間で減衰力が発生し始める。しかしながら、可動プレート40の変位量が最大となった状態、すなわち、インナープレート30とアウタープレート50Aとの間で発生する減衰力が最大となった状態であっても、インナープレート30とアウタープレート50Aとの間で発生する減衰力と、インナープレート30とアウタープレート50Bとの間で発生する減衰力との合計の減衰力が、従来のビスカスカップリングで発生する減衰力を上回ることはない。
また、ケース体12とシャフト20との差動回転角度が増大すると、小プレート38と突出部58とが重なり始め、差動回転角度の増大にともなって小プレート38と突出部58との重なり領域が増加していく。ここで、上記式1から分かるように、ビスカスカップリングでは、インナープレートの外径rの4乗とアウタープレートの内径rの4乗との差に比例の関係でトルクが発生する。すなわち、シャフト20の軸方向から見て、差動回転する2枚のプレートが重なり合う領域の大きさに比例してトルクが発生する。したがって、小プレート38と突出部58とのプレート重なり領域が大きくなるほど小プレート38と突出部58との間で発生する減衰力も増大する。これにより、図7(B)に示すように、差動回転角度が回転範囲の限界領域にあるときに、減衰力が立ち上がる。なお、小プレート38と突出部58との重なり領域の大きさは、差動回転角度の増加にともなって徐々に増加するため、回転範囲限界領域の境界において減衰力はなめらかに変化する。そのため、減衰力が急激に変化することによる乗り心地の悪化を回避することができる。
なお、差動回転速度の低速域および中高速域の範囲、および差動回転角度の回転範囲限界領域の範囲は、車両の乗り心地や操安性の向上を考慮して適宜設定されるものであり、設計者がシミュレーションや各種の実験に基づいて適宜設定することが可能である。
続いて、ビスカスカップリング10の組み立て方法の一例を説明する。
まず、ケース体12が、図示しない蓋体が外された状態で、開口が上になるように配置される。そして、オイルシール22bと軸受18bとを貫通するようにシャフト20が挿入される。続いて、小プレート38が予め設けられたインナープレート30がシャフト20に挿嵌され、予め規定された位置に固定される。次に、アウタープレート50がケース体12の予め規定された位置に取り付けられ、固定される。これが繰り返されて全てのインナープレート30、およびアウタープレート50が取り付けられたら、粘性流体としてのシリコンオイルがケース体12の筺体部内に充填されて、蓋体が取り付けられ、ビスカスカップリング10が完成する。なお、蓋体を取り付けた後に、オイル孔よりシリコンオイルを充填して、充填後オイル孔を封止することでビスカスカップリング10を形成してもよい。
以上説明した構成による作用効果を総括すると、本実施形態に係るビスカスカップリング10では、インナープレート30を、シャフト20またはケース体12の回転速度に応じて変形させている。そして、これによりインナープレート30と、アウタープレート50との間隔を調整可能としている。そのため、シャフト20とケース体12の差動回転速度に応じて減衰力を調整することができ、その結果、本実施形態にかかるビスカスカップリングはサスペンション装置に好適に用いることができる。
具体的には、インナープレート30にスリット70を入れて複数の可動プレート40に分割し、可動プレート40がシャフト20の軸方向に折り曲げられて傾斜部34が形成されている。また、可動プレート40の開放端側には重り部36が設けられている。また、アウタープレート50には、傾斜部34と平行に延びる傾斜部54が形成されている。そして、シャフト20またはケース体12の回転に応じて可動プレート40にかかる慣性力により可動プレート40が変位して外側に開き、インナープレート30とアウタープレート50との間隔が変化する。このような構成によっても、シャフト20とケース体12の差動回転速度に応じて減衰力を調整することができる。
また、インナープレート30は垂直部32を含み、可動プレート40が連結部35を介して垂直部32に連結されている。そして、連結部35には括れが設けられて蛇腹状になっており、そのため、可動プレート40が変位しやすくなっている。これにより、差動回転速度に応じて可動プレート40をより確実に変位させることができ、また、可動プレート40の変位量をより自由に調整することができる。また、シャフト20とケース体12とが非回転状態で、インナープレート30と、隣り合うアウタープレート50のうち一方のアウタープレート50の間隔が、他方のアウタープレート50との間隔よりも狭くなっている。これにより、差動回転速度が中高速域にあるときに、差動回転速度に対して減衰力の増加量が徐々に小さくなる飽和型特性で減衰力を発生させることができる。そのため、中高速域における減衰力の過剰な増加を抑えることができ、差動回転速度に応じて最適な減衰力を発生させることができる。
また、インナープレート30はアウタープレート50の開放端50aよりも内側の領域に小プレート38を含み、アウタープレート50は、開放端50aから突出する突出部58を含んでいる。そして、小プレート38と突出部58とは、インナープレート30とアウタープレート50との間隔よりも狭い間隔で対向する。これにより、シャフト20またはケース体12が回転して小プレート38と突出部58とが重なった時に、より大きい減衰力を発生させることができる。そのため、差動回転角度に応じて最適な減衰力を発生させることができる。特に、小プレート38と突出部58が、シャフト20の回転角度が回転範囲の限界領域にあるときに互いが対向する位置に設けられた場合には、シャフト20の回転角度が限界領域に達した時に減衰力を増大させることができる。また、ビスカスカップリング10をサスペンション装置1に適用した場合、小プレート38と突出部58とを、車両が変位上端または下端にあるときに互いに対向する位置に設けることで、車両のトッピングおよびボトミングを低減することができる。
さらに、本実施形態に係るサスペンション装置1は、車両が上下に変位した際に当該車両に伝わる衝撃を緩衝するための減衰力発生手段として、差動回転速度に応じて減衰力を調整することが可能なビスカスカップリング10を採用している。これにより、車両の乗り心地の向上と、操舵安定性の向上とを図ることができる。
(実施形態2)
実施形態2に係るビスカスカップリングは、インナープレートに設けられた重り部の形状が実施形態1と異なる。以下、本実施形態について説明する。なお、サスペンション装置の構成、およびビスカスカップリングのその他の構成、ビスカスカップリングの組み立て方法等は実施形態1と基本的に同一である。実施形態1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
図8(A)は、実施形態2に係るビスカスカップリングにおける可動プレートの開放端近傍の拡大図であり、図8(B)は、図8(A)に示す部分を図8(A)とは別の視点から見たときの拡大図である。
図示は省略するが、本実施形態に係るビスカスカップリング10は、実施形態1と同様に、シャフト20と、ケース体12とを備える。シャフト20は、ケース体12に対して相対回転可能に支持されている。ケース体12は中空の円筒状部材であり、シャフト20の外周面とケース体12の内周面との間には作動室16が形成されて、シリコンオイル等の粘性流体が充填されている。シャフト20の外周面には、複数枚のインナープレート30(第1プレート)が連結され、またケース体12の内周面には、複数枚のアウタープレート50(第2プレート)が連結されている。複数枚のインナープレート30と複数枚のアウタープレート50とは、作動室16においてシャフト20の軸方向に所定の間隔を開けて配置されている。本実施形態では、複数枚のインナープレート30と複数枚のアウタープレート50とは、作動室16において交互に配置されている。
インナープレート30は、垂直部32と、傾斜部34と、連結部35と、重り部36と、小プレート38とを含む。垂直部32は、シャフト20の軸に垂直な方向に延びている。傾斜部34は、シャフト20の軸方向に傾斜している。連結部35は、垂直部32の外側の端部と傾斜部34の内側の端部とを連結している。連結部35には、シャフト20の軸周り方向に延びる括れ(肉薄部)が形成されている。傾斜部34の外側の端部には重り部36が連結されている。重り部36が設けられたことで、可動プレート40の外側の端部が内側の端部よりも質量が大きくなっている。小プレート38は、アウタープレート50の開放端50aよりもシャフト20側において、インナープレート30と一体または別体に設けられている。インナープレート30は、シャフト20を中心として放射状に延びるスリット70によって複数の可動プレート40に分割されている。可動プレート40は、開放端と反対側の端部が連結部35に連結されており、連結部35側の端部を支点にして、シャフト20の軸方向に変位可能となっている。
アウタープレート50は、垂直部52と、傾斜部54と、突出部58とを含む。垂直部52は、シャフト20の軸に垂直な方向に延びている。傾斜部54は、インナープレート30の傾斜部34と対向する領域に設けられ、傾斜部34と平行に延びるように傾斜している。傾斜部54は、垂直部52の外側の端部に連結されている。突出部58は、アウタープレート50の開放端50aからシャフト20側に突出している。
小プレート38と突出部58とは、ケース体12に対するシャフト20の回転角度が回転範囲の限界領域にあるときに互いが対向するように、それぞれインナープレート30とアウタープレート50とに配置されている。ビスカスカップリング10を備えたサスペンション装置1では、小プレート38と突出部58とが設けられる位置は、車両が概ね変位上端領域または変位下端領域にあるときに互いが対向する位置である。小プレート38と突出部58とは、インナープレート30とアウタープレート50とのプレート間隔よりも狭い間隔で対向する。
本実施形態では、可動プレート40の開放端側の端部、すなわち重り部36において、インナープレート30の回転方向の端面のうち一方の端面が他方の端面よりも面積が大きくなっている。具体的には、重り部36は、略円錐形状であり、その底面と先端がインナープレート30の回転方向に向くように配置された形状である。なお、重り部36の形状は特にこれに限定されず、たとえば四角錐形状などであってもよい。
ここで、ビスカスカップリングにおける発生トルクは、以下の式3で表すことができる。
Figure 2010103570
F:発生トルク
:抵抗係数
ρ:流体密度
V:回転速度
A:進行方向から見たときの回転する物体の面積
式3から分かるように、抵抗係数Cが大きいほど発生トルクは大きくなる。ここで、サスペンション装置のサスペンション特性は、車両が路面に対して上方に移動したとき、すなわち伸び側で減衰力が高く、車両が路面に対して下方に移動したとき、すなわち圧側で減衰力が低いことが、車両の乗り心地を向上させる面から好ましい。しかしながら、従来のビスカスカップリングでは、プレートの形状が単純な円盤状であったため、伸び側と圧側とで発生させる減衰力を異ならせることはできなかった。
これに対し、本実施形態のビスカスカップリング10では、可動プレート40を有し、可動プレート40の開放端に円錐形状の重り部36が設けられている。そして、粘性流体が円錐の底面側から先端側に流動した場合の抵抗係数は、粘性流体が円錐の先端側から底面側に流動した場合の抵抗係数よりも大きくなる。たとえば、粘性流体が円錐の底面側から先端側に流動した場合の抵抗係数は約1.1であり、粘性流体が円錐の先端側から底面側に流動した場合の抵抗係数は約0.5である。したがって、本実施形態に係るビスカスカップリング10によれば、インナープレート30の回転方向、すなわちシャフト20またはケース体12の回転方向に応じて発生させる減衰力を異ならせることができる。なお、面積Aは、インナープレート30の回転方向がどちらであっても、円錐の底面の面積と等しくなる。
本実施形態では、車両の上方への変位によってシャフト20が回転したときに前進する方向に円錐の底面が向けられ、車両の下方への変位によってシャフト20が回転したときに前進する方向に円錐の先端が向けられる。これにより、車両が伸び側に変位したときに相対的に大きい減衰力を発生させ、車両が圧側に変位したときに相対的に小さい減衰力を発生させることができる。
以上説明した構成による作用効果を総括すると、本実施形態に係るビスカスカップリング10では、可動プレート40の開放端側の端部におけるインナープレート30の回転方向の端面のうち、一方の端面が他方の端面よりも面積が大きくなっている。したがって、実施形態1の効果に加えて、インナープレート30の回転方向に応じて減衰力を異ならせることができるという効果が得られる。すなわち、本実施形態にかかるビスカスカップリングは、シャフト20またはケース体12の回転方向に応じて適切な減衰力を発生させることができるため、サスペンション装置に好適に用いることができる。
また、車両の伸び側への変位によってシャフト20が回転したときに前進する側の端面の面積を、車両の圧側への変位によってシャフト20が回転したときに前進する側の端面の面積よりも大きくした場合、圧側よりも伸び側で減衰力を大きくすることができる。これにより、車両の乗り心地をより向上させることができる。
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施の形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれ得る。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
たとえば、可動プレート40は、図9に示すように、開放端側の端部が折り曲げられていてもよい。図9は、変形例に係るビスカスカップリングにおけるインナープレートの一部を示す概略断面図である。すなわち、可動プレート40の開放端側の端部が折り返されて重ねられ、これにより重り部36が形成されている。重り部36をこのような形状とすることで、重り部36をより簡単に形成することができ、ひいてはビスカスカップリング10を簡単に製造することができる。また、可動プレート40の開放端側の端部が連結端側の端部よりも重くなる構造であれば、重り部36の形状は特に限定されない。たとえば、可動プレート40を連結端側の端部から開放端側の端部にかけて、段階的もしくは無段階に板厚が厚くなる形状とし、可動プレート40の外側の端部が重り部36を構成していてもよい。また重り部36が傾斜部34を構成する材料よりも密度の高い材料で形成されることで、可動プレート40の開放端側の端部が連結端側の端部より重くなっていてもよい。
また、上述の各実施形態では、括れにより肉薄部を形成しているが、一方の面に凹みを設けて肉薄部を形成してもよい。さらに、肉薄部を設ける構成に限らず、インナープレート30の一部に可撓性を持たせることで、当該部分を支点にして可動プレート40が変位できるようにしてもよい。また、小プレート38は、シャフト20の全周にわたって設けるとともに、その厚さを段階的もしくは無段階に変化させ、シャフト20の回転角度が限界領域にあるときに突出部58と対向する部分が最も厚くなるようにしてもよい。
また、上述の各実施形態では、インナープレート30にスリット70を設けて可動プレート40を形成したが、求められるサスペンション特性に応じて、アウタープレート50に可動プレート40を形成してもよい。これによっても、シャフト20とケース体12の差動回転速度に応じて減衰力を調整することができる。また、各実施形態では可動プレート40をシャフト20の軸周り全周に設けているが、求められるサスペンション特性に応じて、シャフト20の軸周り所定領域のみに設けてもよい。
本発明は、サスペンション装置に利用できる。

Claims (11)

  1. 粘性流体を収容する作動室を形成するケース体と、
    前記ケース体に相対回転可能に挿通されたシャフトと、
    前記シャフトに連結された複数の第1プレートと、
    前記ケース体に連結され、前記作動室において前記第1プレートと、前記シャフトの軸方向に間隔を開けて配置された複数の第2プレートと、
    を備え、前記第1プレートおよび前記第2プレートの一方を、前記シャフトまたは前記ケース体の回転速度に応じて変形させることで、前記第1プレートと前記第2プレートとの間隔を調整可能としたことを特徴とするビスカスカップリング。
  2. 前記第1プレートは、前記シャフトの軸に平行な断面視で軸方向に傾斜した傾斜部を含み、前記第1プレートの開放端と前記傾斜部を含む領域は前記シャフトを中心として放射状に延びるスリットにより複数の可動プレートに分割されており、
    前記可動プレートの開放端側の端部は、連結端側の端部よりも質量が大きく、
    前記第2プレートは、前記傾斜部と対向する領域が前記傾斜部と平行に延びるように傾斜し、
    前記シャフトまたは前記ケース体の回転に応じて前記可動プレートにかかる力によって前記可動プレートが変位して、前記間隔が変化することを特徴とする請求項1に記載のビスカスカップリング。
  3. 前記第1プレートは、前記スリットの延在する範囲内に前記シャフトの軸周り方向に延びる肉薄部を有することを特徴とする請求項2に記載のビスカスカップリング。
  4. 前記シャフトおよび前記ケース体が非回転状態で、前記第1プレートと、当該第1プレートと隣り合う2枚の第2プレートのうち一方の第2プレートとの間隔は、当該第1プレートと他方の第2プレートとの間隔よりも狭いことを特徴とする請求項2または3のいずれか1項に記載のビスカスカップリング。
  5. 前記可動プレートの開放端側の端部は、前記第1プレートの回転方向の端面のうち一方の端面が他方の端面よりも面積が大きいことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のビスカスカップリング。
  6. 前記可動プレートは、開放端側の端部が折り曲げられていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のビスカスカップリング。
  7. 前記第1プレートは、前記第2プレートの開放端よりもシャフト側の領域に一体または別体に設けられた小プレートを含み、
    前記第2プレートは、開放端からシャフト側に突出する突出部を含み、
    前記小プレートと前記突出部とは、前記第1プレートと前記第2プレートとの間隔よりも狭い間隔で対向することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のビスカスカップリング。
  8. 前記小プレートおよび前記突出部は、前記ケース体に対する前記シャフトの回転角度が回転範囲の限界領域にあるときに互いが対向するように設けられたことを特徴とする請求項7に記載のビスカスカップリング。
  9. 車両が上下に変位した際に当該車両に伝わる衝撃を緩衝するための減衰力発生手段として請求項1ないし8のいずれか1項に記載のビスカスカップリングを備えたことを特徴とするサスペンション装置。
  10. 前記第1プレートは、前記第2プレートの開放端よりも前記シャフト側の領域に一体または別体に設けられた小プレートを含み、
    前記第2プレートは、開放端から前記シャフト方向に突出し、前記第1プレートと前記第2プレートとの間隔よりも狭い間隔で前記小プレートと対向する突出部を含み、
    前記小プレートおよび前記突出部は、前記車両が変位上端領域または変位下端領域にあるときに互いに対向するように配置されたことを特徴とする請求項9に記載のビスカスカップリング。
  11. 前記第1プレートは、前記シャフトの軸に平行な断面視で軸方向に傾斜した傾斜部を含み、前記第1プレートの開放端と前記傾斜部を含む領域は前記シャフトを中心として放射状に延びるスリットにより複数の可動プレートに分割されており、
    前記可動プレートの開放端側の端部は、前記第1プレートの回転方向の端面のうち前記車両の上方への変位によって前記シャフトが回転したときに前進する側の端面が、前記車両の下方への変位によって前記シャフトが回転したときに前進する側の端面よりも面積が大きいことを特徴とする請求項9または10に記載のビスカスカップリング。
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