JP2010190329A - ビスカスカップリング、およびサスペンション装置 - Google Patents

ビスカスカップリング、およびサスペンション装置 Download PDF

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Abstract

【課題】サスペンション装置に好適に採用可能なビスカスカップリングを提供する。
【解決手段】ビスカスカップリング10は、粘性流体を収容する作動室を形成するケース体と、ケース体に相対回転可能に挿通されたシャフト20と、シャフト20に連結されたインナープレート30と、ケース体に連結され、作動室においてインナープレート30と、シャフト20の軸方向に間隔を開けて配置されたアウタープレート50と、インナープレート30またはアウタープレート50に連結され、シャフト20またはケース体の回転方向に応じて開位置と閉位置とに変位可能な複数の可動プレート70と、を備える。開位置にある可動プレート70と、可動プレート70が連結されていないプレートとの間で発生する減衰力は、閉位置にある可動プレート70と、可動プレート70が連結されていないプレートとの間で発生する減衰力よりも大きい。
【選択図】図3

Description

本発明は、ビスカスカップリング、およびビスカスカップリングを搭載したサスペンション装置に関する。
従来、ビスカスカップリングをロールダンパ装置に採用した構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このロールダンパは、ロッド(シャフト)に対して回転自在に設けられた中空ケーシング内において、中空ケーシングの内周面に固着されたドーナツ盤状のアウタープレートと、ロッドの外周面に固着されたドーナツ盤状のインナープレートとが交互に重合されてそれぞれ複数枚配設されるとともに、ケーシング内にシリコンオイルが封入されている。そして、封入オイルの粘性抵抗によって減衰力を発生させている。
特許第2803870号公報
上述の状況において、本発明者は以下の課題を認識するに至った。
すなわち、ビスカスカップリングでは、シリコンオイル等の粘性流体が封入された作動室内でインナープレートとアウタープレート(以下、総称してプレートと呼ぶ場合がある)とが差動回転し、その回転差に応じて粘性流体にせん断力が生じてトルクが発生する。当該ビスカスカップリングをショックアブソーバとしてサスペンション装置に搭載した場合、この発生トルクがサスペンション装置における減衰力となる。そして、サスペンション装置のサスペンション特性は、車両が路面に対して上方に移動したとき、すなわち伸び側で減衰力が高く、車両が路面に対して下方に移動したとき、すなわち圧側で減衰力が低いことが、車両の乗り心地を向上させる面から好ましい。
しかしながら、ビスカスカップリングで発生する減衰力は、プレート間隔、およびプレートの重なり合う面積などに応じて決定される。そして、従来のビスカスカップリングでは、プレート間隔、およびプレート重なり面積は設計段階で予め定められた一つのものに固定されていた。そのため、従来のビスカスカップリングでは、伸び側と圧側とで発生させる減衰力を異ならせることはできなかった。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サスペンション装置に好適に採用可能なビスカスカップリングを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様のビスカスカップリングは、粘性流体を収容する作動室を形成するケース体と、前記ケース体に相対回転可能に挿通されたシャフトと、前記シャフトに連結された複数の第1プレートと、前記ケース体に連結され、前記作動室において前記第1プレートと、前記シャフトの軸方向に間隔を開けて配置された複数の第2プレートと、前記第1プレートまたは前記第2プレートに連結され、前記シャフトまたは前記ケース体の回転方向に応じて第1位置と第2位置とに変位可能な複数の可動プレートと、を備え、前記第1位置にある前記可動プレートと、前記可動プレートが連結されていないプレートとの間で発生する減衰力は、前記第2位置にある前記可動プレートと、前記可動プレートが連結されていないプレートとの間で発生する減衰力よりも大きいことを特徴とする。
この態様によれば、サスペンション装置に好適に採用可能なビスカスカップリングを提供することができる。
上記態様において、前記可動プレートは、その一端を軸にして回動するように前記第1プレートまたは前記第2プレートに設けられ、その可動端は、前記可動プレートが前記第2位置にあるときよりも前記第1位置にあるときに、連結されたプレートの連結端から離れてもよい。これによれば、サスペンション装置に好適に採用可能なビスカスカップリングを提供することができる。
上記態様において、前記可動プレートは、前記開位置において、前記第1プレートと前記第2プレートとの間隔よりも狭い間隔で、連結されていないプレートと対向してもよい。これによれば、伸び側と圧側とで異なる減衰力を発生させることができる。
上記態様において、前記可動プレートは、前記開位置において、連結されたプレートの開放端よりも外側に突出してもよい。これによれば、伸び側と圧側とで異なる減衰力を発生させることができる。
上記態様において、前記シャフトと平行に延び、前記シャフトの軸方向から見て連結されていないプレートが存在しない領域において、連結されたプレートを貫通する連結シャフトを備え、前記連結シャフトによって、前記可動プレートが前記第1プレートまたは前記第2プレートに連結されるとともに、各可動プレートが互いに連結されてもよい。これによれば、安定的に減衰力を発生させることができる。
上記態様において、前記可動プレートは、前記シャフトまたは前記ケース体が一方向に回転したら開位置に変位し、前記シャフトまたは前記ケース体が他方向に回転したら閉位置に変位してもよい。これによれば、伸び側と圧側とで発生させる減衰力を異ならせることができる。
上記態様において、前記可動プレートは、前記シャフトの軸方向から見て開位置側の面に、開位置方向に突出する突起部を有してもよい。これによれば、より確実に伸び側と圧側の減衰力を異ならせることができる。
上記態様において、可動範囲外への前記可動プレートの変位を妨げるストッパ部材を備えていてもよい。これによれば、安定的に減衰力を発生させることができる。
上記態様において、前記可動プレートは、その一端を軸にして回動するように前記第1プレートまたは前記第2プレートに連結されており、前記ストッパ部材は、前記可動プレートが開位置にあるときに前記一端の側面に当接する係止突起を含んでいてもよい。これによれば、安定的に減衰力を発生させることができる。
上記態様において、前記シャフトに近づくように傾斜する傾斜面と、前記シャフトに近い方の前記傾斜面の端部側で前記シャフトの半径方向に略平行に延びる流体剥離面とを含む切り欠き部が、前記第1プレートの開放端側の端面に設けられてもよい。これによれば、相対回転速度に応じてより適切な減衰力を発生させることができる。
本発明の別の態様は、サスペンション装置である。このサスペンション装置は、衝撃を緩衝するための減衰力発生手段として上述のいずれかの態様のビスカスカップリングを備えている。このサスペンション装置によれば、乗り心地の向上を図ることができる。
本発明によれば、サスペンション装置に好適に採用可能なビスカスカップリングを提供することができる。
実施形態1に係るサスペンション装置の取付構造を示す図である。 実施形態1に係るビスカスカップリングの概略断面図である。 一組のインナープレートとアウタープレートを含む領域の部分拡大図である。 図4(A)は、図3に示す部分の概略平面図であり、図4(B)は、図4(A)におけるA−A線上の断面図である。 一組のインナープレートとアウタープレートを含む領域の部分拡大図である。 図6(A)は、図5に示す部分の概略平面図であり、図6(B)は、図6(A)におけるB−B線上の断面図である。 図7(A)は、実施形態2に係るビスカスカップリングにおける一組のインナープレートとアウタープレートを含む領域の部分拡大図であり、図7(B)は、図7(A)に示す部分の概略側面図である。 図8(A)は、可動プレートが閉位置にあるときの図7(A)に示す部分の概略平面図であり、図8(B)は、可動プレートが開位置にあるときの図7(A)に示す部分の概略平面図である。 図9(A)は、実施形態3に係るビスカスカップリングにおける一組のインナープレートとアウタープレートを含む領域の部分拡大図であり、図9(B)は、インナープレートの切り欠き部近傍の部分拡大図である。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るサスペンション装置の取付構造を示す図である。図1に示すように、サスペンション装置1は、車輪2を回転可能に支持するキャリア3と、キャリア3を上下に揺動可能に支持するロアアーム4およびアッパアーム5を備える。車両本体6、ロアアーム4、アッパアーム5およびキャリア3はリンク機構7を構成し、ロアアーム4およびアッパアーム5は、車両本体6に回転可能に取り付けられる。
本実施形態において、サスペンション装置1は、リンク機構7のジョイント部にビスカスカップリング10を備えて構成される。本実施形態におけるリンク機構7は、4節リンク機構を構成しており、ビスカスカップリング10は、車両本体6とロアアーム4とのジョイント部8a、車両本体6とアッパアーム5とのジョイント部8b、アッパアーム5とキャリア3とのジョイント部8c、ロアアーム4とキャリア3とのジョイント部8dのいずれに設けられてもよい。図1に示す例では、ビスカスカップリング10が、車両本体6とロアアーム4のジョイント部8aを構成している。以下、ジョイント部8a〜8dを総称する場合には、「ジョイント部8」と呼ぶ。
ビスカスカップリング10は、ケース体と、ケース体に挿通されたシャフトを有する。ケース体が1つのリンクに取り付けられ、またシャフトが当該リンクに隣接するリンクに取り付けられることで、隣り合う2つのリンクを相対回転可能に連結するジョイント部8が構成される。図1に示す例では、ケース体が車両本体6に固定され、またシャフトがロアアーム4に連結されることで、ロアアーム4の上下動に応じてシャフトとケース体とが相対回転し、減衰力を発生する。
なお本実施形態において、リンク機構7の構造は例示であり、サスペンション装置1が他のリンク機構を有してもよい。さらに、図1に示す例ではビスカスカップリング10がジョイント部8aを構成しているが、他のジョイント部8b、8c、8dを構成してもよく、また複数のビスカスカップリング10が複数のジョイント部8を構成してもよい。
図2は、実施形態1に係るビスカスカップリングの概略断面図である。ビスカスカップリング10は、ロアアーム4(図1参照)に連結されてロアアーム4の上下動に応じて回転するシャフト20と、シャフト20が挿通される円筒状のケース体12とを備える。ケース体12は、環状張出部14において車両本体6(図1参照)に連結されている。なおシャフト20が車両本体6に連結され、ケース体12がロアアーム4に連結されてもよく、またシャフト20およびケース体12が、リンク機構7における他の隣り合うリンクに連結されてもよい。
シャフト20は、軸受18a、軸受18bにより、ケース体12に対して相対回転可能に支持されている。ケース体12は中空の円筒状部材であり、シャフト20の外周面とケース体12の内周面との間には作動室16が形成されて、シリコンオイル等の粘性流体が充填されている。作動室16は、オイルシール22a、オイルシール22bにより封止されている。
シャフト20の外周面には、複数枚のインナープレート30(第1プレート)が連結され、またケース体12の内周面には、複数枚のアウタープレート50(第2プレート)が連結されている。複数枚のインナープレート30と複数枚のアウタープレート50とは、ともに円盤状の部材であり、作動室16においてシャフト20の軸方向に所定の間隔を開けて配置されている。本実施形態では、複数枚のインナープレート30と複数枚のアウタープレート50が、作動室16において交互に配置されている。インナープレート30の径は、ケース体12の内周面で形成される円の径よりも小さく、そのためシャフト20に連結されていない側のインナープレート30の端部は開放端30aとなっている。また、アウタープレート50の中心にはシャフト20が挿通される開口51が形成されている。そのため、ケース体12の内周面に連結されていない側のアウタープレート50の端部は開放端50aとなっている。
また、ビスカスカップリング10は、ストッパ部材60と、可動プレート70と、連結シャフト80と、スペーサ90とを備える。ストッパ部材60、可動プレート70、連結シャフト80、スペーサ90の構成については後に詳細に説明する。
ここで、従来のビスカスカップリングをサスペンション装置に適用した場合における差動回転速度と発生トルクとの関係を説明する。図1に示すように、ビスカスカップリングをサスペンション装置に組み込んだ場合、差動回転速度はサスペンションストローク速度、発生トルクは減衰力に対応する。
車輪2(図1参照)の挙動によりロアアーム4(図1参照)が上下動すると、シャフトが回転して、シャフトとケース体が相対回転する。これにより、それぞれに連結されている複数枚のインナープレートとアウタープレートとが差動回転(相対回転)し、その回転差に応じて粘性流体にせん断力が発生してトルク(抵抗)が発生する。この発生トルクは、サスペンション装置1における減衰力となる。
以下、ビスカスカップリングにおける発生トルクTの計算式を示す。
Figure 2010190329
Sn:プレート間隔(ピッチ)
N:流体粘度(動粘度)
e:密度
:インナープレートの外径
:アウタープレートの内径
Δn:差動回転速度
式1から分かるように、ビスカスカップリングでは、インナープレートの外径rの4乗とアウタープレートの内径rの4乗との差に比例の関係でトルクが発生する。すなわち、シャフト20の軸方向から見たインナープレート30とアウタープレート50とが重なり合う領域(以下、プレート重なり領域という場合がある)の大きさに比例してトルクが発生する。また、プレート間隔Snの大きさに反比例してトルクが発生する。すなわち、プレート間隔Snが小さいほど、発生トルクTは大きくなる。
また、ビスカスカップリングによる差動回転速度と発生トルクとの関係は、以下の式2(クエット流れの式)でも表すことができる。
Figure 2010190329
τ:抵抗
μ:摩擦係数
U:回転速度
h:プレート間隔
ここで、τが式1のTに、Uが式1のΔnに、hが式1のSnにそれぞれ相当する。式2から分かるように、ビスカスカップリングでは、プレート間隔hの大きさに反比例して抵抗τが発生する。すなわち、プレート間隔hが小さいほど、抵抗τは大きくなる。
従来のビスカスカップリングでは、車両が路面に対して上方に移動し、シャフトとケース体が伸び側に相対回転したときと、車両が路面に対して下方に移動し、シャフトとケース体が圧側に相対回転したときとで、プレート重なり領域の大きさおよびプレート間隔は不変であった。そのため、従来のビスカスカップリングでは、伸び側と圧側とで発生させる減衰力を異ならせることはできなかった。
そこで、本発明者は、シャフト20またはケース体12の回転方向に応じて変位する可動プレート70をインナープレート30またはアウタープレート50に設け、これにより伸び側と圧側とで発生させる減衰力を異ならせることとした。
以下、ストッパ部材60、可動プレート70、連結シャフト80、スペーサ90の構成について説明する。図3および図5は、本実施形態に係るビスカスカップリングにおける一組のインナープレートとアウタープレートを含む領域の部分拡大図である。図3は可動プレートが閉位置にある状態を示し、図5は可動プレートが開位置にある状態を示している。図4(A)は、図3に示す部分の概略平面図であり、図4(B)は、図4(A)におけるA−A線上の断面図である。図6(A)は、図5に示す部分の概略平面図であり、図6(B)は、図6(A)におけるB−B線上の断面図である。
図3〜図6(B)に示すように、ストッパ部材60は、リング状の部材であり、インナープレート30とスペーサ90との間に配置され、シャフト20に連結されている。ストッパ部材60の外周面には、シャフト20の半径方向外側に突出する係止突起62が設けられている。係止突起62は、可動プレート70が後述する開位置(第1位置)にある状態で、可動プレート70の係止面76に当接する。これにより、ストッパ部材60は、可動プレート70が開位置から可動範囲外に変位するのを防いでいる。また、可動プレート70が後述する閉位置(第2位置)にある状態で、ストッパ部材60の外周面に可動プレート70のシャフト20側の面が当接する。これにより、ストッパ部材60は、可動プレート70が閉位置から可動範囲外に変位するのを防いでいる。ストッパ部材60により、可動プレート70がケース体12やシャフト20と緩衝するのを防ぐことができる。係止突起62が設けられる位置および数は、可動プレート70が設けられる位置および数に対応している。
可動プレート70は、略円弧状の部材であり、シャフト20側の面がストッパ部材60の外周面に接するように配置されている。本実施形態では、シャフト20の軸周りに、等間隔に3枚の可動プレート70が設けられている。可動プレート70は、シャフト20またはケース体12の回転方向に応じて開位置(第1位置)と閉位置(第2位置)とに変位可能である。
具体的には、可動プレート70の一端に連結シャフト80が挿通される挿通孔72が形成されており、可動プレート70は、挿通孔72に挿通された連結シャフト80によってインナープレート30に連結されている。これにより、可動プレート70は、連結シャフト80を軸にして、言い換えれば、可動プレート70の一端を軸にして回動し、インナープレート30の開放端30a側の開位置と(図6(A)参照)、連結端側(シャフト20側)の閉位置と(図4(A)参照)の間で変位可能にインナープレート30に連結されている。可動プレート70の可動端(連結シャフト80が挿通された側と反対側の端部)は、可動プレート70が閉位置にあるときよりも開位置にあるときに、インナープレート30の連結端から離れる。
可動プレート70は、閉位置にある状態で、シャフト20の軸方向から見てケース体12側の面(外周面)がスペーサ90の外周面よりも内側に含まれる。また、可動プレート70は、ケース体12側の面に、シャフト20の半径方向外側(ケース体12側)に突出する突起部74を有する。突起部74は、可動プレート70が閉位置にある状態で、スペーサ90の外周面よりも外側に突出している。可動プレート70の挿通孔72が設けられた一端の側面は、可動プレート70が開位置に変位した際に係止突起62に当接する係止面76となっている。
連結シャフト80は、シャフト20と平行に延び、シャフト20の軸方向から見てアウタープレート50(連結されていないプレート)が存在しない領域、すなわち開放端50aよりもシャフト20側(開口51内)において、インナープレート30(連結されたプレート)を貫通している。インナープレート30、可動プレート70、およびスペーサ90には、同軸状にそれぞれ挿通孔32、挿通孔72、および挿通孔92が形成されており(図4(B)参照)、連結シャフト80は、これらの挿通孔に挿通されてシャフト20に平行に延びている。連結シャフト80は、可動プレート70をインナープレート30に連結し、また、各可動プレート70を互いに連結している。
スペーサ90は、アウタープレート50に形成された開口51の径よりも小さい径を有する円盤状の部材である。スペーサ90は、アウタープレート50の開口51内に配置されて、シャフト20に連結されている。また、スペーサ90は、可動プレート70と接していない側の面(図4(B)における左側の面)が、アウタープレート50の可動プレート70が配置されていない側の面(図4(B)における左側の面)と略同一平面上に配置されている。また、スペーサ90の厚さはアウタープレート50の厚さよりも厚い。そのため、スペーサ90の厚さとアウタープレート50の厚さの差によって、可動プレート70とアウタープレート50とのプレート間隔が形成されている。また、上述のようにスペーサ90の所定位置には、連結シャフト80が挿通される挿通孔92が形成されている。
このような構成において、ロアアーム4(図1参照)の上下動によってシャフト20が回転すると、シャフト20とケース体12が相対回転する。これにより、それぞれに連結された複数枚のインナープレート30とアウタープレート50とが差動回転する。また、可動プレート70は、シャフト20またはケース体12が一方向に回転したら開位置に変位し、シャフト20またはケース体12が他方向に回転したら閉位置に変位する。具体的には、たとえば図4(A)に示すように、可動プレート70が閉位置にある状態で、シャフト20がケース体12に対して伸び側(図4(A)における右回り方向)に相対回転する。すると、粘性流体の抵抗によって、連結シャフト80に連結されていない側の可動プレート70の端部(可動端)がシャフト20から離れる方向の力、すなわち連結シャフト80を軸として左回りに回転する方向の力が可動プレート70にかかる。これにより、可動プレート70は閉位置から開位置に変位し、図4(A)に示す状態から図6(A)に示す状態となる。可動プレート70の外周面には突起部74が形成されているため、可動プレート70は、粘性流体の抵抗によって生じる力を受けやすくなっている。そのため、突起部74がない場合と比べて、可動プレート70は開位置に変位しやすい。
一方、図6(A)に示すように、可動プレート70が開位置にある状態で、シャフト20がケース体12に対して圧側(図6(A)における左回り方向)に相対回転したとする。すると、粘性流体の抵抗によって、連結シャフト80に連結されていない側の可動プレート70の端部がシャフト20に近づく方向の力、すなわち連結シャフト80を軸として右回りに回転する方向の力が可動プレート70にかかる。これにより、可動プレート70は、開位置から閉位置に変位し、図6(A)に示す状態から、図4(A)に示す状態となる。
図4(A)に示すように、可動プレート70が閉位置にある状態では、シャフト20の軸方向から見て、可動プレート70はスペーサ90内に収容されている。そのため、この状態では、可動プレート70は減衰力の発生に寄与していない。一方、図6(A)に示すように、可動プレート70が開位置にある状態では、可動プレート70がスペーサ90の外側に突出してアウタープレート50と対向する。そのため、可動プレート70とアウタープレート50との間で減衰力が発生する。このように、可動プレート70は、閉位置にあるときよりも開位置にあるときに、アウタープレート50との間で大きい減衰力を発生させることができる。
可動プレート70が閉位置にあるときは、ビスカスカップリング10は、インナープレート30とアウタープレート50との差動回転のみにより減衰力を発生させる。一方、可動プレート70が開位置にあるときは、ビスカスカップリング10は、インナープレート30とアウタープレート50との差動回転とともに、可動プレート70とアウタープレート50との差動回転により減衰力を発生させる。可動プレート70は、開位置に変位すると、インナープレート30とアウタープレート50とのプレート間隔よりも狭い間隔でアウタープレート50と対向する。そのため、シャフト20とともに回転する部分(インナープレート30および可動プレート70)と、ケース体12とともに回転する部分(アウタープレート50)とが重なり合う領域の間隔を部分的に狭くすることができる。その結果、可動プレート70が開位置にある状態では、可動プレート70が閉位置にある状態と比べて、ビスカスカップリング10はより大きい減衰力を発生させることができる。したがって、本実施形態に係るビスカスカップリング10によれば、圧側と比べて伸び側で減衰力を大きくすることができ、車両の乗り心地を向上させることができる。
さらに本実施形態では、可動プレート70が開位置に変位すると、連結シャフト80に連結されていない側の可動プレート70の端部がインナープレート30の開放端30aよりも外側に突出する。そのため、シャフト20とともに回転する部分と、ケース体12とともに回転する部分とが重なり合う領域の面積を大きくすることができる。その結果、可動プレート70が開位置にある状態では、可動プレート70が閉位置にある状態と比べて、ビスカスカップリング10はより大きい減衰力を発生させることができる。したがって、本実施形態に係るビスカスカップリング10によれば、圧側と比べて伸び側で減衰力を大きくすることができ、車両の乗り心地を向上させることができる。
また、各可動プレート70は、連結シャフト80で連結されている。そのため、全ての可動プレート70の変位を一律に制御することができる。したがって、たとえば作動室16内の一部の領域で温度が上昇して粘性流体の粘度が低下し、その領域にある可動プレート70が変位しにくい状態にあっても、粘性流体の粘性が低下していない他の領域における可動プレート70の変位に併せて当該領域の可動プレート70を変位させることができる。これにより、全ての可動プレート70の変位を統一することができるため、ビスカスカップリング全体としてより安定した減衰力を発生させることができる。
続いて、ビスカスカップリング10の組み立て方法の一例を説明する。
まず、ケース体12が、図示しない蓋体が外された状態で、開口が上になるように配置される。そして、オイルシール22bと軸受18bとを貫通するようにシャフト20が挿入される。続いて、所定位置に連結シャフト80が配置されるとともに、インナープレート30がシャフト20および連結シャフト80に挿嵌され、予め規定された位置に固定される。次に、ストッパ部材60がシャフト20に挿嵌され、ストッパ部材60の下面がインナープレート30に当接した位置でシャフト20に固定される。また、可動プレート70が連結シャフト80に挿嵌され、可動プレート70の下面がインナープレート30に当接する。さらに、スペーサ90がシャフト20および連結シャフト80に挿嵌され、スペーサ90の下面がストッパ部材60および可動プレート70に当接した位置でシャフト20に固定される。また、アウタープレート50がケース体12の予め規定された位置に取り付けられ、固定される。
これが繰り返されて全てのインナープレート30、アウタープレート50、ストッパ部材60、可動プレート70、スペーサ90が取り付けられたら、粘性流体としてのシリコンオイルがケース体12の筺体部内に充填されて、蓋体が取り付けられ、ビスカスカップリング10が完成する。なお、蓋体を取り付けた後に、オイル孔よりシリコンオイルを充填して、充填後オイル孔を封止することでビスカスカップリング10を形成してもよい。
以上説明した構成による作用効果を総括すると、本実施形態に係るビスカスカップリング10では、インナープレート30に可動プレート70が設けられている。可動プレート70は、シャフト20またはケース体12の回転方向に応じて開位置と閉位置とに変位可能である。可動プレート70は、その一端を軸にして回動するようにインナープレート30に連結されており、その可動端は、閉位置にあるときよりも開位置にあるときに、インナープレート30の連結端から離れる。また、可動プレート70は、シャフト20またはケース体12が一方向に回転したら開位置に変位し、シャフト20またはケース体12が他方向に回転したら閉位置に変位する。そして、可動プレート70は、開位置にあるときに、閉位置にあるときよりも大きい減衰力をアウタープレート50との間で発生させている。そのため、シャフト20およびケース体12の回転方向に応じて異なる大きさの減衰力を発生させることができる。これにより、伸び側と圧側とで発生させる減衰力を異ならせることができ、その結果、本実施形態にかかるビスカスカップリングはサスペンション装置に好適に用いることができる。
また、可動プレート70は開位置において、インナープレート30とアウタープレート50との間隔よりも狭い間隔で、アウタープレート50と対向している。また、可動プレート70は開位置において、その一部がインナープレート30の開放端30aよりも外側に突出し、その結果、相対回転するプレート重なり領域の面積が増大する。これにより、伸び側と圧側とで異なる減衰力を発生させることができる。
また、可動プレート70は、シャフト20の軸方向から見てアウタープレート50の開放端50aよりもシャフト20側、すなわちアウタープレート50が存在しない領域において、シャフト20と平行に延びる連結シャフト80によってインナープレート30と連結されている。また、連結シャフト80によって、各可動プレート70が互いに連結されている。そのため、全ての可動プレート70が閉位置と開位置との間で一律に同じ位置をとることができる。これにより、安定した減衰力の発生を実現することができる。
さらに、可動プレート70は、シャフト20の軸方向から見て開位置側の端面、すなわちケース体12側の面に、開位置方向に突出する突起部74を有する。そのため、シャフト20とケース体12との差動回転速度が遅い場合や、粘性流体の粘度が低い場合など、可動プレート70にかかる力が小さい場合であっても、より確実に伸び側と圧側の減衰力を異ならせることができる。
また、ビスカスカップリング10は、可動範囲外への可動プレート70の変位を抑制するストッパ部材60を備えている。そのため、可動プレート70がケース体12やシャフト20と緩衝するのを防ぐことができ、安定した減衰力の発生を実現することができる。また、ストッパ部材60は、可動プレート70の回動軸近傍に係止突起62を有し、可動プレート70が開位置にあるときに係止突起62を可動プレート70の係止面76に当接させることで可動プレート70の変位を停止させている。したがって、より簡単な構成で可動範囲外への可動プレート70の変位を抑制することができる。
さらに、本実施形態に係るサスペンション装置1は、衝撃を緩衝するための減衰力発生手段として、伸び側と圧側とで減衰力を異ならせることが可能なビスカスカップリング10を採用している。これにより、車両の乗り心地を向上させることができる。
(実施形態2)
実施形態2に係るビスカスカップリングは、可動プレート70の取り付け位置が実施形態1と異なる。以下、本実施形態について説明する。なお、サスペンション装置の構成、およびビスカスカップリングのその他の構成、ビスカスカップリングの組み立て方法等は実施形態1と基本的に同一である。実施形態1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
図7(A)は、実施形態2に係るビスカスカップリングにおける一組のインナープレートとアウタープレートを含む領域の部分拡大図であり、図7(B)は、図7(A)に示す部分の概略側面図である。図8(A)は、可動プレートが閉位置にあるときの図7(A)に示す部分の概略平面図であり、図8(B)は、可動プレートが開位置にあるときの図7(A)に示す部分の概略平面図である。
図示は省略するが、本実施形態に係るビスカスカップリング10は、実施形態1と同様に、シャフト20と、ケース体12とを備える。シャフト20は、ケース体12に対して相対回転可能に支持されている。ケース体12は中空の円筒状部材であり、シャフト20の外周面とケース体12の内周面との間には作動室16が形成されて、シリコンオイル等の粘性流体が充填されている。シャフト20の外周面には、複数枚のインナープレート30(第1プレート)が連結され、またケース体12の内周面には、複数枚のアウタープレート50(第2プレート)が連結されている。複数枚のインナープレート30と複数枚のアウタープレート50とは、作動室16においてシャフト20の軸方向に所定の間隔を開けて配置されている。本実施形態では、複数枚のインナープレート30と複数枚のアウタープレート50とは、作動室16において交互に配置されている。
図7(A)〜図8(B)に示すように、本実施形態に係るビスカスカップリング10では、インナープレート30は、サブプレート30A、およびサブプレート30Bで構成され、サブプレート30Aとサブプレート30Bとが可動プレート70の厚さに相当する間隔を開けてシャフト20に連結されている。
また、ビスカスカップリング10は可動プレート70を備えている。可動プレート70は、サブプレート30Aとサブプレート30Bとの間に挟まれるように配置されている。そして、連結ピン82が、サブプレート30A、可動プレート70、サブプレート30Bに挿通され、これにより可動プレート70がインナープレート30に対して連結されている。可動プレート70は略円弧状の部材であり、その一端部領域において連結ピン82が挿通されている。そのため、可動プレート70は、連結ピン82を軸として、言い換えれば、可動プレート70の一端を軸として回動し、インナープレート30の開放端30a側の開位置と(図8(B)参照)、連結端側(シャフト20側)の閉位置と(図8(A)参照)の間で変位可能にインナープレート30に連結されている。可動プレート70の可動端(連結ピン82が挿通された側と反対側の端部)は、可動プレート70が閉位置にあるときよりも開位置にあるときに、インナープレート30の連結端から離れる。
また、可動プレート70は、インナープレート30の開放端30aよりに配置されている。または、可動プレート70は、アウタープレート50の開放端50aよりもケース体12側でインナープレート30に連結されている。インナープレート30の開放端30aにより近い位置に可動プレート70を連結した場合、シャフト20とケース体12の相対回転によってより大きな力が可動プレート70にかかるようになる。そのため、可動プレート70がより変位しやすくなり、より確実に伸び側と圧側の減衰力を異ならせることができる。また、インナープレート30の開放端30aにより近い位置に可動プレート70が連結された場合には、変位量を同じくした場合、インナープレート30の開放端30aから外側に突出する可動プレート70の面積をより大きくすることができる。したがって、可動プレート70のより少ない変位量で減衰力を増加させることができるようになり、より確実に伸び側と圧側の減衰力を異ならせることができる。
可動プレート70は、閉位置にある状態で、シャフト20の軸方向から見てケース体12側の面(外周面)がインナープレート30の外周面よりも内側に含まれる。また、可動プレート70は、ケース体12側の面に、シャフト20の半径方向外側(ケース体12側)に突出する突起部74を有する。突起部74は、可動プレート70が閉位置にある状態で、インナープレート30の開放端30aよりも外側に突出している。本実施形態では、シャフト20の軸周りに、等間隔に3枚の可動プレート70が設けられている。
このような構成において、ロアアーム4(図1参照)の上下動によってシャフト20が回転すると、シャフト20とケース体12が相対回転する。これにより、それぞれに連結された複数枚のインナープレート30とアウタープレート50とが差動回転する。また、可動プレート70は、シャフト20またはケース体12が一方向に回転したら開位置に変位し、シャフト20またはケース体12が他方向に回転したら閉位置に変位する。具体的には、たとえば図8(A)に示すように、可動プレート70が閉位置にある状態で、シャフト20がケース体12に対して伸び側(図8(A)における右回り方向)に相対回転したとする。すると、粘性流体の抵抗によって、連結ピン82に連結されていない側の可動プレート70の端部(可動端)がシャフト20から離れる方向の力、すなわち連結ピン82を軸として左回りに回転する方向の力が可動プレート70にかかる。これにより、可動プレート70は閉位置から開位置に変位し、図8(A)に示す状態から、図8(B)に示す状態となる。可動プレート70の外周面には突起部74が形成されているため、可動プレート70は粘性流体の抵抗によって生じる力を受けやすく、突起部74がない場合と比べて、可動プレート70は開位置により変位しやすい。
一方、図8(B)に示すように、可動プレート70が開位置にある状態で、シャフト20がケース体12に対して圧側(図8(B)における左回り方向)に相対回転したとする。この場合、粘性流体の抵抗によって、連結ピン82に連結されていない側の可動プレート70の端部がシャフト20に近づく方向の力、すなわち連結ピン82を軸として右回りに回転する方向の力が可動プレート70にかかる。これにより、可動プレート70は開位置から閉位置に変位し、図8(B)に示す状態から図8(A)に示す状態となる。
図8(A)に示すように、可動プレート70が閉位置にある状態では、シャフト20の軸方向から見て、可動プレート70はインナープレート30内に収容されている。そのため、この状態では、可動プレート70は、減衰力の発生に寄与していない。一方、図8(B)に示すように、可動プレート70が開位置にある状態では、可動プレート70がインナープレート30の外側に突出してアウタープレート50と対向し、可動プレート70とアウタープレート50との間で減衰力を発生させることができる。このように、可動プレート70は、閉位置にあるときよりも開位置にあるときに、アウタープレート50との間で大きい減衰力を発生させることができる。
可動プレート70が閉位置にあるときは、ビスカスカップリング10は、インナープレート30とアウタープレート50との差動回転のみにより減衰力を発生させる。一方、可動プレート70が開位置にあるときは、ビスカスカップリング10は、インナープレート30とアウタープレート50との差動回転とともに、可動プレート70とアウタープレート50との差動回転により減衰力を発生させる。可動プレート70は、開位置に変位すると、連結ピン82に連結されていない側の可動プレート70の端部がインナープレート30の開放端30aよりも外側に突出する。そのため、シャフト20とともに回転する部分と、ケース体12とともに回転する部分とが重なり合う領域の面積を大きくすることができる。その結果、可動プレート70が開位置にある状態では、可動プレート70が閉位置にある状態と比べて、ビスカスカップリング10がより大きい減衰力を発生させることができる。したがって、本実施形態に係るビスカスカップリング10によれば、圧側と比べて伸び側で減衰力を大きくすることができ、車両の乗り心地を向上させることができる。
なお、図示を省略しているが、本実施形態に係るビスカスカップリング10も、可動プレート70がケース体12やシャフト20と緩衝するのを防ぐストッパ部材を備えている。たとえば、サブプレート30Aまたはサブプレート30Bの少なくとも一方の、可動プレート70と当接する側の面に、ストッパ部材として複数の突起部が設けられる。突起部は、開位置にあるときの可動プレート70が当接する位置と、閉位置にあるときの可動プレート70が当接する位置とに配置される。これにより、可動プレート70が変位して開位置または閉位置に到達すると、可動プレート70は突起部に当接して開位置または閉位置で停止する。
以上説明した構成による作用効果を総括すると、本実施形態に係るビスカスカップリング10では、インナープレート30に可動プレート70が設けられている。そして、可動プレート70は、シャフト20またはケース体12の回転方向に応じて開位置と閉位置とに変位可能である。具体的には、可動プレート70は、その一端を軸にして回動するようにインナープレート30に連結されており、その可動端は、閉位置にあるときよりも開位置にあるときに、インナープレート30の連結端から離れる。そして、可動プレート70は、開位置において、閉位置にあるときよりも大きい減衰力をアウタープレート50との間で発生させている。これにより、伸び側と圧側とで発生させる減衰力を異ならせることができ、その結果、本実施形態にかかるビスカスカップリングはサスペンション装置に好適に用いることができる。
また、可動プレート70は開位置において、その一部がインナープレート30の開放端30aよりも外側に突出し、その結果、相対回転するプレート重なり領域の面積が増大する。これにより、伸び側と圧側とで異なる減衰力を発生させることができる。また、可動プレート70は、インナープレート30の開放端30aよりに配置されているため、より大きな力が可動プレート70にかかるようになる。そのため、より確実に伸び側と圧側の減衰力を異ならせることができる。また、インナープレート30の開放端30aから外側に突出する可動プレート70の面積をより大きくすることができるため、可動プレート70のより少ない変位量で減衰力を増加させることができるようになり、より確実に伸び側と圧側の減衰力を異ならせることができる。
さらに、可動プレート70は、シャフト20の軸方向から見て開位置側の縁部、すなわちケース体12側の面に、開位置方向に突出する突起部74を有する。そのため、より確実に可動プレート70を開位置に変位させることが可能となり、よって、より確実に伸び側と圧側の減衰力を異ならせることができる。
さらに、本実施形態に係るサスペンション装置1は、衝撃を緩衝するための減衰力発生手段として、伸び側と圧側とで減衰力を異ならせることが可能なビスカスカップリング10を採用している。これにより、車両の乗り心地を向上させることができる。
(実施形態3)
実施形態3に係るビスカスカップリングは、インナープレート30の形状が実施形態1と異なる。以下、本実施形態について説明する。なお、サスペンション装置の構成、およびビスカスカップリングのその他の構成、ビスカスカップリングの組み立て方法等は実施形態1と基本的に同一である。実施形態1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
図9(A)は、実施形態3に係るビスカスカップリングにおける一組のインナープレートとアウタープレートを含む領域の部分拡大図であり、図9(B)は、インナープレートの切り欠き部近傍の部分拡大図である。なお、図9(A)および図9(B)では、可動プレート70の図示を省略している。
図9(A)に示すように、インナープレート30は、開放端30aの端面に切り欠き部34が設けられている。本実施形態のインナープレート30は、外周に等間隔で4つの切り欠き部34が設けられており、シャフト20の軸方向から見て略卍形状となっている。
図9(B)に示すように、切り欠き部34は、シャフト20に近づくようになだらかに傾斜する傾斜面36と、シャフト20に近い側の傾斜面36の端部側で、シャフト20の半径方向に略平行に延びる流体剥離面38とを有する。流体剥離面38には、稜線がシャフト20の軸方向に平行な複数の凸部39が形成されている。凸部39により、後述する粘性流体の流れの乱れと剥離をより確実に行うことができる。なお、凸部39の形状は、特にこれに限定されない。
このような構成において、流体剥離面38が前進する方向(図9(A)における左回り方向)にシャフト20がケース体12に対して相対回転すると、作動室16内の粘性流体はインナープレート30にせん断される。このとき、インナープレート30の外周近傍の粘性流体は、傾斜面36に沿ってシャフト20の軸心方向に流動する。そして、傾斜面36に沿って流動した粘性流体は流体剥離面38に衝突し、その流れが乱されて、インナープレート30から剥離する方向に変化する。粘性流体がインナープレート30から剥離する方向に流動すると、インナープレート30と粘性流体との間の摩擦抵抗が小さくなるため、シャフト20とケース体12との相対回転により発生するトルクの大きさを小さくすることができる。そして、この流体剥離面38による粘性流体の剥離作用は、シャフト20の相対回転速度に比例して大きくなるため、差動回転速度が中高域にあるときの減衰力の上昇を特に抑えることができる。
ここで、サスペンション装置のサスペンション特性には、一般に低域ストローク速度で減衰力を大きくして操安性を確保し、中高域ストローク速度で減衰力を小さくして乗り心地を確保することが要求されている。しかしながら、従来のビスカスカップリングでは、差動回転速度に対して減衰力が比例の関係で、すなわちリニアに発生していた。そのため、サスペンション装置に従来のビスカスカップリングを採用すると、次のような問題が生じる。すなわち、中高域回転速度での乗り心地を確保するために減衰力を小さく設定した場合には、低域回転速度での減衰力不足が生じてしまう。一方、低域回転速度での操安性を確保するために減衰力を大きく設定した場合には、中高域回転速度での減衰力過大が生じてしまう。
これに対し、本実施形態のインナープレート30は、上述のように切り欠き部34を有し、切り欠き部34によって粘性流体がインナープレート30から剥離する方向に流動するため、インナープレート30と粘性流体との間の摩擦抵抗を小さくして発生トルクを小さくすることができる。そして、シャフト20とケース体12との相対回転速度が大きくなるにつれて切り欠き部34による摩擦抵抗の低減効果は大きくなるため、低域回転速度での減衰力を確保するとともに、中高域回転速度での減衰力の過度な増大を防ぐことができる。本実施形態のインナープレート30によれば、差動回転速度に対して減衰力が比例の関係で増加するリニア特性ではなく、中高域回転速度のときに差動回転速度に対して減衰力の増加量が徐々に小さくなる飽和型特性とすることができる。
ビスカスカップリング10は、伸び側と圧側とで異なる減衰力を発生させることが可能である。高い減衰力が発生する側にシャフト20が相対回転した場合には、シャフト20とケース体12との相対回転速度が中高域回転速度にあるときに、減衰力がより過大となりやすい。そこで、本実施形態のインナープレート30は、高い減衰力を発生させる側にシャフト20が相対回転したときに切り欠き部34による摩擦抵抗の低減効果が得られるように、切り欠き部34を設けることが好ましい。たとえば、一般に伸び側で減衰力が高く、圧側で減衰力が低いことが車両の乗り心地を向上させる面から好ましいため、本実施形態のインナープレート30では、シャフト20の回転方向が伸び側のときに摩擦抵抗低減効果が得られるように切り欠き部34が設けられる。もちろん、シャフト20の回転方向が圧側のときに摩擦抵抗の低減効果が得られるように切り欠き部34を設けてもよい。また、一部の切り欠き部34は、シャフト20の回転方向が伸び側のときに摩擦抵抗低減効果が得られるように設け、残りの切り欠き部34は、シャフト20の回転方向が圧側のときに摩擦抵抗の低減効果が得られるように設けてもよい。この場合には、摩擦抵抗の低減効果は若干低下するが、シャフト20の回転方向がどちらの場合にも中高域回転速度での減衰力を低減できるという効果が得られる。
以上説明した構成による作用効果を総括すると、本実施形態に係るビスカスカップリング10では、インナープレート30に切り欠き部34が設けられている。そして、切り欠き部34によってインナープレート30に接する粘性流体をインナープレート30から剥離する方向に流動させている。そのため、低域での減衰力を確保しつつ中高域回転速度で減衰力が過度に増大するのを防ぐことができる。すなわち、相対回転速度に応じて適切な減衰力を発生させることができる。これにより、車両の操安性と乗り心地の両立を図ることができる。また、可動プレートによって伸び側と圧側とで減衰力を異ならせるとともに、相対回転速度に応じて適切な減衰力を発生させることができるため、本実施形態にかかるビスカスカップリングはサスペンション装置に好適に用いることができる。
また、切り欠き部34によってインナープレート30から剥離する方向に流動した粘性流体は、インナープレート30とアウタープレート50との間に流れ込む。そして、この流れ込んだ粘性流体は、インナープレート30とアウタープレート50との間でせん断され、減衰力の発生に寄与する。そのため、たとえば温度上昇によって粘性流体の粘度が低下した場合など、ビスカスカップリング10の減衰力が低下してしまうような場合であっても、減衰力の過度の低下を抑えることができる。
なお、本実施形態のインナープレートは、上述の実施形態1および2のどちらにも適用可能であり、各実施形態同士の組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態それぞれの効果をあわせもつ。
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施の形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれ得る。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
例えば、上述の各実施形態では、インナープレート30に可動プレート70を設けたが、アウタープレート50に可動プレート70を設けてもよい。また、求められるサスペンション特性に応じて、圧側で開位置に変位するように可動プレート70を設けてもよい。また、可動プレート70をインナープレート30またはアウタープレート50に設ける構成は、連結シャフト80または連結ピン82を軸にして回動するように設ける構成に限定されない。たとえば、インナープレート30またはアウタープレート50の半径方向に平行にスライドするように可動プレート70が設けられた構成であってもよい。さらに、可動プレート70の枚数は特に限定されない。
また、実施形態2において、インナープレート30は1枚のプレートからなる構成であってもよい。ただし、2枚のサブプレートで可動プレート70を挟む構成とした場合は、可動プレート70の軸方向への変位をより確実に防ぐことができるため、インナープレート30は2枚のサブプレートからなる構成であることが好ましい。
1 サスペンション装置、 10 ビスカスカップリング、 12 ケース体、 16 作動室、 20 シャフト、 30 インナープレート、 30a 開放端、 34 切り欠き部、 50 アウタープレート、 50a 開放端、 60 ストッパ部材、 62 係止突起、 70 可動プレート、 74 突起部、 76 係止面、 80 連結シャフト。

Claims (11)

  1. 粘性流体を収容する作動室を形成するケース体と、
    前記ケース体に相対回転可能に挿通されたシャフトと、
    前記シャフトに連結された複数の第1プレートと、
    前記ケース体に連結され、前記作動室において前記第1プレートと、前記シャフトの軸方向に間隔を開けて配置された複数の第2プレートと、
    前記第1プレートまたは前記第2プレートに連結され、前記シャフトまたは前記ケース体の回転方向に応じて第1位置と第2位置とに変位可能な複数の可動プレートと、
    を備え、前記第1位置にある前記可動プレートと、前記可動プレートが連結されていないプレートとの間で発生する減衰力は、前記第2位置にある前記可動プレートと、前記可動プレートが連結されていないプレートとの間で発生する減衰力よりも大きいことを特徴とするビスカスカップリング。
  2. 前記可動プレートは、その一端を軸にして回動するように前記第1プレートまたは前記第2プレートに設けられ、その可動端は、前記可動プレートが前記第2位置にあるときよりも前記第1位置にあるときに、連結されたプレートの連結端から離れることを特徴とする請求項1に記載のビスカスカップリング。
  3. 前記可動プレートは、前記第1位置において、前記第1プレートと前記第2プレートとの間隔よりも狭い間隔で、連結されていないプレートと対向することを特徴とする請求項1または2に記載のビスカスカップリング。
  4. 前記可動プレートは、前記第1位置において、連結されたプレートの開放端よりも外側に突出することを特徴とする請求項1または3に記載のビスカスカップリング。
  5. 前記シャフトと平行に延び、前記シャフトの軸方向から見て連結されていないプレートが存在しない領域において、連結されたプレートを貫通する連結シャフトを備え、
    前記連結シャフトによって、前記可動プレートが前記第1プレートまたは前記第2プレートに連結されるとともに、各可動プレートが互いに連結されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のビスカスカップリング。
  6. 前記可動プレートは、前記シャフトまたは前記ケース体が一方向に回転したら第1位置に変位し、前記シャフトまたは前記ケース体が他方向に回転したら第2位置に変位することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のビスカスカップリング。
  7. 前記可動プレートは、前記シャフトの軸方向から見て第1位置側の面に、第1位置方向に突出する突起部を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のビスカスカップリング。
  8. 可動範囲外への前記可動プレートの変位を妨げるストッパ部材を備えたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のビスカスカップリング。
  9. 前記可動プレートは、その一端を軸にして回動するように前記第1プレートまたは前記第2プレートに連結されており、
    前記ストッパ部材は、前記可動プレートが第1位置にあるときに前記一端の側面に当接する係止突起を含むことを特徴とする請求項8に記載のビスカスカップリング。
  10. 前記シャフトに近づくように傾斜する傾斜面と、前記シャフトに近い方の前記傾斜面の端部側で前記シャフトの半径方向に略平行に延びる流体剥離面とを含む切り欠き部が、前記第1プレートの開放端側の端面に設けられたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のビスカスカップリング。
  11. 衝撃を緩衝するための減衰力発生手段として請求項1ないし10のいずれか1項に記載のビスカスカップリングを備えたことを特徴とするサスペンション装置。
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