JP2010127366A - ビスカスカップリング、およびサスペンション装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】サスペンション装置に好適に採用可能なビスカスカップリングを提供する。
【解決手段】ビスカスカップリング10は、粘性流体を収容する作動室16を形成するケース体12と、ケース体12に相対回転可能に挿通されたシャフト20と、シャフト20に連結された複数のインナープレート30と、ケース体12に連結されて作動室16においてインナープレート30と交互に配置された複数のアウタープレート50とを備える。ビスカスカップリング10は、インナープレート30およびアウタープレート50の少なくとも一方を、シャフト20またはケース体12の回転に応じて変形させることで、シャフト20の軸方向から見たインナープレート30とアウタープレート50とが重なり合う領域の範囲を調整可能である。
【選択図】図2
【解決手段】ビスカスカップリング10は、粘性流体を収容する作動室16を形成するケース体12と、ケース体12に相対回転可能に挿通されたシャフト20と、シャフト20に連結された複数のインナープレート30と、ケース体12に連結されて作動室16においてインナープレート30と交互に配置された複数のアウタープレート50とを備える。ビスカスカップリング10は、インナープレート30およびアウタープレート50の少なくとも一方を、シャフト20またはケース体12の回転に応じて変形させることで、シャフト20の軸方向から見たインナープレート30とアウタープレート50とが重なり合う領域の範囲を調整可能である。
【選択図】図2
Description
本発明は、ビスカスカップリング、およびビスカスカップリングを搭載したサスペンション装置に関する。
従来、ビスカスカップリングを車両に設けた構成が提案されている(例えば、特許文献1または2参照)。これらのビスカスカップリングでは、粘性流体を収容する作動室内でインナープレートとアウタープレートとが差動回転し、その回転差に応じて粘性流体にせん断力が生じてトルクが発生する。当該ビスカスカップリングをショックアブソーバとしてサスペンション装置に搭載した場合、この発生トルクがサスペンション装置における減衰力となる。
実開平5−3660号公報
特開平10−281186号公報
サスペンション装置のサスペンション特性には、一般にストローク速度に対して減衰力が比例の関係で、すなわちリニアに発生することが要求される。ストローク速度に対して減衰力を比例の関係で発生させることで、サスペンション特性を簡単に精度良く調整することが可能となる。
また、このサスペンション特性は、乗り心地と共に車両の操縦安定性、すなわち操安性に影響を与える。例えば、ショックアブソーバ(減衰力発生手段)の減衰力を大きく設定すると、車両の操安性は向上するが乗り心地は悪くなる。反対にショックアブソーバの減衰力を小さく設定すると、車両の操安性は低下するが乗り心地は良くなる。そこで、サスペンション特性には、一般に低域ストローク速度で減衰力を大きくして操安性を確保し、中高域ストローク速度で減衰力を小さくして乗り心地を確保することが要求される。
しかしながら、サスペンション装置に従来型のビスカスカップリングを採用すると、ビスカスカップリングにより発生される減衰力はストローク速度に比例するため、次のような問題が生じる。すなわち、中高域ストローク速度での乗り心地を確保するために減衰力を小さく設定した場合には、低域ストローク速度での減衰力不足が生じてしまう。一方、低域ストローク速度での操安性を確保するために減衰力を大きく設定した場合には、中高域ストローク速度での減衰力過大が生じてしまう。そのため、従来のビスカスカップリングをサスペンション装置のショックアブソーバとして用いた場合には、乗り心地と操安性の両立が困難であった。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サスペンション装置に好適に採用可能なビスカスカップリングを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様のビスカスカップリングは、粘性流体を収容する作動室を形成するケース体と、前記ケース体に相対回転可能に挿通されたシャフトと、前記シャフトに連結された複数の第1プレートと、前記ケース体に連結されて前記作動室において前記第1プレートと交互に配置された複数の第2プレートと、を備え、前記第1プレートおよび前記第2プレートの少なくとも一方を、前記シャフトまたは前記ケース体の回転に応じて変形させることで、前記シャフトの軸方向から見た前記第1プレートと前記第2プレートとが重なり合う領域の範囲を調整可能としたことを特徴とする。
この態様によれば、サスペンション装置に好適に採用可能なビスカスカップリングを提供することができる。
上記態様において、前記第1プレートおよび前記第2プレートの少なくとも一方は、その開放端側に、前記シャフトを中心として放射状に延びる複数の小プレートを有し、前記シャフトまたは前記ケース体の回転に応じて前記小プレートが変位して前記重なり合う領域の範囲が変化するようにしてもよい。これによれば、サスペンション装置に好適に採用可能なビスカスカップリングを提供することができる。
上記態様において、前記小プレートは、前記シャフトまたは前記ケース体が非回転状態で、前記重なり合う領域の範囲が最大となる位置をとるように設けられており、前記シャフトまたは前記ケース体の回転に応じて前記小プレートにかかる力によって前記小プレートが変位して前記重なり合う領域の範囲が小さくなるようにしてもよい。これによれば、発生させる減衰力を簡単な構成で精度良く調整することができる。
上記態様において、前記第1プレートは、前記シャフトを中心として放射状に延びるスリットにより複数の前記小プレートに分割されており、当該小プレートが前記シャフトの回転方向と反対方向に変位して、前記第1プレートの外径が小さくなるようにしてもよい。これによれば、より簡単な構成で減衰力を調整することができる。
上記態様において、前記第2プレートが前記シャフトを中心として放射状に延びるスリットにより複数の前記小プレートに分割されており、当該小プレートが前記ケース体の回転方向と反対方向に変位して、前記第2プレートの内径が大きくなるようにしてもよい。これによれば、より簡単な構成で減衰力を調整することができる。
上記態様において、前記小プレートの根元部分は、前記シャフトの軸周り方向の幅が他の部分よりも細くなっていてもよい。これによれば、より簡単に小プレートを変位させることができる。
上記態様において、前記小プレートの根元部分は、前記シャフトの軸方向の厚さが他の部分よりも厚くなっていてもよい。これによれば、小プレートが軸方向に隣り合う他のプレートと接触する可能性を低減できる。
本発明の別の態様は、サスペンション装置である。このサスペンション装置は、衝撃を緩衝するための減衰力発生手段として上述のいずれかの態様のビスカスカップリングを備えている。このサスペンション装置によれば、乗り心地と操安性の両立を図ることができる。
本発明によれば、サスペンション装置に好適に採用可能なビスカスカップリングを提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るサスペンション装置の取付構造を示す図である。図1に示すように、サスペンション装置1は、車輪2を回転可能に支持するキャリア3と、キャリア3を上下に揺動可能に支持するロアアーム4およびアッパアーム5を備える。車両本体6、ロアアーム4、アッパアーム5およびキャリア3はリンク機構7を構成し、ロアアーム4およびアッパアーム5は、車両本体6に回転可能に取り付けられる。
図1は、本発明の実施形態1に係るサスペンション装置の取付構造を示す図である。図1に示すように、サスペンション装置1は、車輪2を回転可能に支持するキャリア3と、キャリア3を上下に揺動可能に支持するロアアーム4およびアッパアーム5を備える。車両本体6、ロアアーム4、アッパアーム5およびキャリア3はリンク機構7を構成し、ロアアーム4およびアッパアーム5は、車両本体6に回転可能に取り付けられる。
本実施形態において、サスペンション装置1は、リンク機構7のジョイント部にビスカスカップリング10を備えて構成される。本実施形態におけるリンク機構7は、4節リンク機構を構成しており、ビスカスカップリング10は、車両本体6とロアアーム4とのジョイント部8a、車両本体6とアッパアーム5とのジョイント部8b、アッパアーム5とキャリア3とのジョイント部8c、ロアアーム4とキャリア3とのジョイント部8dのいずれに設けられてもよい。図1に示す例では、ビスカスカップリング10が、車両本体6とロアアーム4のジョイント部8aを構成している。以下、ジョイント部8a〜8dを総称する場合には、「ジョイント部8」と呼ぶ。
ビスカスカップリング10は、ケース体と、ケース体から突設されるシャフトを有する。ケース体が1つのリンクに取り付けられ、またシャフトが当該リンクに隣接するリンクに取り付けられることで、隣り合う2つのリンクを相対回転可能に連結するジョイント部8が構成される。図1に示す例では、ケース体が車両本体6に固定され、またシャフトがロアアーム4に連結されることで、ロアアーム4の上下動に応じてシャフトとケース体とが相対回転し、減衰力を発生する。
なお本実施形態において、リンク機構7の構造は例示であり、サスペンション装置1がボールねじ機構、ラック・アンド・ピニオン機構、ハイポイドギア機構等の、他のリンク機構を有してもよい。さらに、図1に示す例ではビスカスカップリング10がジョイント部8aを構成しているが、他のジョイント部8b、8c、8dを構成してもよく、また複数のビスカスカップリング10が複数のジョイント部8を構成してもよい。
図2は、実施形態1に係るビスカスカップリング10の概略構成図である。ビスカスカップリング10は、ロアアーム4(図1参照)に連結されてロアアーム4の上下動に応じて回転するシャフト20と、シャフト20が挿通されるように設けられた円筒状のケース体12とを備える。ケース体12は、環状張出部14において車両本体6(図1参照)に連結されている。なおシャフト20が車両本体6に連結され、ケース体12がロアアーム4に連結されてもよく、またシャフト20およびケース体12が、リンク機構7における他の隣り合うリンクに連結されてもよい。
シャフト20は、軸受18a、軸受18bにより、ケース体12に対して相対回転可能に支持されている。ケース体12は中空の円筒状部材であり、シャフト20の外周面とケース体12の内周面との間には作動室16が形成されて、シリコンオイル等の粘性流体が充填されている。作動室16は、オイルシール22a、オイルシール22bにより封止されている。
シャフト20の外周面には、複数枚のインナープレート30が連結され、またケース体12の内周面には、複数枚のアウタープレート50が連結されている。複数枚のインナープレート30と複数枚のアウタープレート50とは、作動室16において交互に所定の間隔をあけて配置されている。インナープレート30が本発明の第1プレートに相当し、アウタープレート50が本発明の第2プレートに相当する。
上述のような構成において、車輪2(図1参照)の挙動によりロアアーム4(図1参照)が上下動すると、シャフト20が回転して、シャフト20とケース体12が相対回転する。これにより、それぞれに連結されている複数枚のインナープレート30とアウタープレート50とが差動回転(相対回転)し、その回転差に応じて粘性流体にせん断力が発生してトルクが発生する。この発生トルクは、サスペンション装置1における減衰力となる。
ここで、ビスカスカップリングによる差動回転速度と発生トルクとの関係を説明する。図3は、従来型のビスカスカップリングによる差動回転速度(差回転速度)と発生トルクとの関係を示す図である。図1に示すようにビスカスカップリングをサスペンション装置に組み込むと、差動回転速度はサスペンションストローク速度、発生トルクは減衰力に対応する。
以下、ビスカスカップリングにおける発生トルクT0の計算式を示す。
Sn:プレート間隔(ピッチ)
N:流体粘度(動粘度)
e:密度
ra:インナープレートの外径
ri:アウタープレートの内径
Δn:差動回転速度
N:流体粘度(動粘度)
e:密度
ra:インナープレートの外径
ri:アウタープレートの内径
Δn:差動回転速度
式1から分かるように、ビスカスカップリングでは、差動回転速度に対してトルクがリニアに発生する。そのため、図3に示すように、従来型のビスカスカップリングの発生トルクT0(図中太実線)は、差動回転速度に比例した関係となる。一方、図3において差動回転数がRより小さい場合を低域側、R以上の場合を高域側としたときに、推奨される発生トルクT(図中細実線)は、一般に、差動回転速度の低域側では差動回転速度と発生トルクとが比例の関係を維持しながら、高域側ではその傾きを小さくするように設定される。
従来型のビスカスカップリングの発生トルクT0は、低域側では推奨される発生トルクTとほぼ同じ発生態様であるが、高域側では推奨される発生トルクTよりも大きくなり、差動回転速度が大きくなるにつれてその差は大きくなる。そのため、従来型のビスカスカップリングをサスペンション装置に組み入れると、差動回転速度の低域側では良好な操安性が得られるが、高域側で乗り心地が悪化するという問題があった。
したがって本発明者は、差動回転速度が高くなったときに発生トルクの上昇度を低下させることで、ビスカスカップリングを好適にサスペンション装置に組み込めるという技術思想を想到するに至った。式1から分かるように、ビスカスカップリングでは、インナープレートの外径raの4乗とアウタープレートの内径riの4乗との差に比例の関係でトルクが発生する。すなわち、シャフト20の軸方向から見たインナープレート30とアウタープレート50とが重なり合う領域(以下、プレート重なり領域という場合がある)の大きさに比例してトルクが発生する。
そこで、本実施形態では、インナープレート30およびアウタープレート50をシャフト20およびケース体12の回転に応じて変形させることで、差動回転速度に応じてプレート重なり領域の範囲を調整可能な構成とした。そして、差動回転速度が大きくなったときにプレート重なり領域の範囲を小さくすることで、差動回転速度の高域側における発生トルクの上昇度を低下させることとした。具体的には、インナープレート30の外径raを小さくし、また、アウタープレート50の内径riを大きくすることで、プレート重なり領域の範囲を小さくすることとした。ここで、プレート重なり領域の範囲とは、シャフト20の軸方向から見てインナープレート30の外径raとアウタープレート50の内径riとで挟まれた部分である。
図4は、本実施形態に係るビスカスカップリング10におけるインナープレート30の概略平面図である。図5(A)、(B)は、インナープレート30の変形した状態を説明するための図である。
図4に示すように、インナープレート30には、その中心にシャフト20が挿通される挿通孔31が設けられており、挿通孔31の周囲が連結部33を構成している。また、インナープレート30は、その開放端側、すなわちシャフト20に連結された側と反対側に、シャフト20を中心として放射状に延びる複数の小プレート34を有している。小プレート34は、シャフト20が非回転の状態で、プレート重なり領域の範囲が最大となる位置、すなわちインナープレート30の外径raが最大となる位置をとるように設けられている。本実施形態では、シャフト20を中心として放射状に延びるスリット32によって、インナープレート30が複数の小プレート34に分割されている。スリット32は、インナープレート30の連結部33の外側端からインナープレート30の外周面にわたって設けられており、スリット32の連結部33側の端部は連結部33によって閉塞され、他方の端部はインナープレート30の外周面において開放されている。したがって、複数の小プレート34は、連結部33によって互いに連結されている。言い換えれば、インナープレート30は、リング状の連結部33の外周面に、複数の小プレート34が間隔をおいて突設された構造を有している。
このような構成において、ロアアーム4(図1参照)の上下動によってシャフト20が回転すると、シャフト20に固定されたインナープレート30もシャフト20の回転にともなって回転する。そして、図5(A)に示すように、各小プレート34がシャフト20の回転に応じてシャフト20の回転方向と反対の方向に変位する。図5(A)では、シャフト20が時計回り(図中右回り)に回転した場合の小プレート34の変位状態を示している。具体的には、インナープレート30が回転すると、粘性流体の抵抗により小プレート34にインナープレート30の回転方向と反対方向の力がかかり、小プレート34は、連結部33と接する根元部分36を支点として、シャフト20の回転方向と反対方向にたわんで変位する。これにより、インナープレート30が変形し、図5(B)に示すように、変形後のインナープレート30の外径ra’が変形前の外径raよりも小さくなる。インナープレート30の外径は、例えば各小プレート34におけるインナープレート30の中心点から最も離れた点を結んでできた円の直径である。
インナープレート30の変位は、インナープレート30の根元部分36の弾性変形によって起こる。そのため、シャフト20の回転速度が所定値未満となって、インナープレート30にかかる力が根元部分36の弾性力よりも小さくなると、インナープレート30はインナープレート30の外径raが最大となる位置に戻る。
スリット32は、連結部33と接する領域、すなわち根元部分36と隣接する領域に、間隙幅が大きくなる幅広部38を有していてもよい。スリット32が幅広部38を有する場合には、根元部分36におけるシャフト20の軸周り方向の幅が狭くなる。これにより、小プレート34がより変位しやすくなる。
図6は、本実施形態に係るビスカスカップリング10におけるアウタープレート50の概略平面図である。図7(A)、(B)は、アウタープレート50の変形した状態を説明するための図である。
図6に示すように、アウタープレート50は、その中心にシャフト20が通る開口51が設けられ、その外側にケース体12(図2参照)の内周面と接する連結部53が設けられている。また、アウタープレート50は、その開放端側、すなわちケース体12に連結された側と反対側の周縁部に、シャフト20を中心として放射状に延びる複数の小プレート54を有している。小プレート54は、ケース体12が非回転の状態で、プレート重なり領域の範囲が最大となる位置、すなわちアウタープレート50の内径riが最小となる位置をとるように設けられている。本実施形態では、シャフト20を中心として放射状に延びるスリット52によって、アウタープレート50が複数の小プレート54に分割されている。スリット52は、アウタープレート50の連結部53の内周面から開口51にわたって設けられており、スリット52の連結部53側の端部は連結部53によって閉塞され、開口51側の端部は開口51において開放されている。したがって、複数の小プレート54は、連結部53によって互いに連結されている。言い換えれば、アウタープレート50は、リング状の連結部53の内周面に、複数の小プレート54が間隔をおいて突設された構造を有している。
このような構成において、車両本体6(図1参照)の上下動によってケース体12が回転すると、ケース体12の内周面に固定されたアウタープレート50もケース体12の回転にともなって回転する。そして、図7(A)に示すように、各小プレート54がケース体12の回転に応じてケース体12の回転方向と反対の方向に変位する。図7(A)では、ケース体12が時計回り(図中右回り)に回転した場合の小プレート54の変位状態を示している。具体的には、アウタープレート50が回転すると、粘性流体の抵抗により小プレート54にアウタープレート50の回転方向と反対方向の力がかかり、小プレート54は、連結部53と接する根元部分56を支点として、ケース体12の回転方向と反対方向にたわんで変位する。これにより、アウタープレート50が変形し、図7(B)に示すように、変形後のアウタープレート50の内径ri’が変形前の内径riよりも大きくなる。アウタープレート50の内径は、例えば開口51の直径であり、言い換えれば、各小プレート54におけるアウタープレート50の中心点に最も近い点を結んでできた円の直径である。
アウタープレート50の変位は、アウタープレート50の根元部分56の弾性変形によって起こる。そのため、ケース体12の回転速度が所定値未満となって、アウタープレート50にかかる力が根元部分56の弾性力よりも小さくなると、アウタープレート50はアウタープレート50の内径riが最小となる位置に戻る。
また、スリット52は、連結部53と接する領域、すなわち根元部分56と隣接する領域に、間隙幅が大きくなる幅広部58を有していてもよい。スリット52が幅広部58を有する場合には、根元部分56におけるシャフト20の軸周り方向の幅が狭くなる。そのため、小プレート54がより変位しやすくなる。
根本部分36、56は、シャフト20の軸方向における厚さが、他の部分よりも厚くなっていてもよい。これによれば、小プレート34、54が軸方向に変位しにくくなるため、小プレート34、54が軸方向に隣り合う他のプレートと接触する可能性を低減できる。
本実施形態にかかるビスカスカップリング10による差動回転速度と発生トルクとの関係を説明する。図8は、本実施形態にかかるビスカスカップリング10による差動回転速度(差回転速度)と発生トルクとの関係を示す図である。
まず、差動回転初期では、小プレート34、54にかかる力が小さいため、小プレート34、54は変位しないか、その変化量は小さい。したがって、インナープレート30の外径raおよびアウタープレート50の内径riの大きさはほとんど変化せず、ビスカスカップリング10の発生トルクT0’(図中破線)は、図5に示すように、従来型のビスカスカップリングと同程度の大きさのトルクをリニアに発生させている。
差動回転速度が上がると、それにつれて小プレート34、54にかかる力が大きくなるため、小プレート34、54がそれぞれシャフト20またはケース体12の回転方向と反対方向に変位し始める。図8では、差動回転速度がAとなったときに小プレート34、54が変位し始めている。小プレート34、54が変位すると、インナープレート30の外径raが小さくなり、また、アウタープレート50の内径riが大きくなるため、プレート重なり領域の範囲が小さくなり、発生トルクT0’は小さくなる。また、小プレート34、54の変位量は、変位限界に至るまで差動回転速度の上昇にともなって増大し、プレート重なり領域の範囲は徐々に小さくなっていく。そのため、差動回転速度が上がるにつれて発生トルクT0’の上昇度が低下し、ビスカスカップリング10の発生トルクT0’は、従来型のビスカスカップリングの発生トルクT0(図中太実線)よりも、推奨される発生トルクT(図中細実線)により近い発生態様となる。
よって、ビスカスカップリング10によれば、差動回転速度、すなわちサスペンションストローク速度が低域にあるときの操安性を確保するとともに、中高域における乗り心地の悪化を解消できる。なお、発生トルクの上昇度を変化させ始めるタイミング、および変化量等は、例えば小プレート34、54の根本部分36、56の形状を調整することで適宜調整可能である。例えば、根本部分36、56の幅を広げて小プレート34、54を変位させにくくさせることで、発生トルクの発生タイミングを遅らせ、また、変化量を小さくすることができる。
以上説明した構成による作用効果を総括すると、本実施形態に係るビスカスカップリング10では、インナープレート30およびアウタープレート50をシャフト20およびケース体12の回転に応じて変形させることで、プレート重なり領域の範囲を調整可能としている。そのため、差動回転速度に応じて減衰力の発生態様を変えることができる。これにより、低域ストローク速度での操安性を確保するために減衰力を大きく設定した場合であっても、高域ストローク速度での減衰力過大を解消することができ、したがって、乗り心地と操安性の両立を図ることができる。よって、ビスカスカップリング10はサスペンション装置1に好適に用いることができる。また、高域ストローク速度での減衰力過大が解消されるため、サスペンション装置1に過度の負荷がかからなくなるため、サスペンション装置1の小型化が可能となる。
また、ビスカスカップリング10では、インナープレート30およびアウタープレート50が、その開放端側に、シャフト20を中心として放射状に延びる複数の小プレート34、54を有する。そして、ビスカスカップリング10は、小プレート34、54がシャフト20またはケース体12の回転に応じて変位し、プレート重なり領域の範囲が変化するように構成されている。このような構成によっても、差動回転速度に応じて減衰力の発生態様を変えることができ、乗り心地と操安性の両立を図ることができる。
また、ビスカスカップリング10では、小プレート34、54が、シャフト20およびケース体12が非回転状態でプレート重なり領域の範囲が最大となる位置をとるように設けられ、シャフト20およびケース体12の回転によりかかる力によって小プレート34、54が変位するように構成されている。そのため、差動回転速度に応じた発生トルクの変化を簡単な構成で精度良く調整することができる。
さらに、インナープレート30およびアウタープレート50は、スリット32、52により複数の小プレート34、54に分割されている。そのため、より簡単な構成で乗り心地と操安性の両立を図ることができる。
また、小プレート34、54の根元部分36、56は、シャフト20の軸周り方向の幅が他の部分よりも細くなっているため、より簡単に小プレート34、54を変位させることができる。また、根元部分36、56におけるシャフト20の軸方向の厚さを他の部分よりも厚くすることで、小プレート34、54が軸方向に隣り合う他のプレートと接触する可能性を低減できる。
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施の形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれ得る。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
例えば、上述の実施形態では、インナープレート30とアウタープレート50の双方にスリット32、52を設けて、インナープレート30とアウタープレート50の双方を変形させる構成としたが、インナープレート30およびアウタープレート50の少なくとも一方を変形させるようにしてもよい。その場合、インナープレート30を変形可能とすることが好ましい。インナープレート30にスリット32を設けてインナープレート30を変形させる場合、小プレート34の変位の支点となる根本部分36は、アウタープレート50に設けられる小プレート54の根元部分56よりもシャフト20の軸心に近い位置となるため、小プレート34は小プレート54よりもより変位しやすい。また、式1より、アウタープレート50の内径riが大きくなるよりも、インナープレート30の外径raが小さくなる方が、発生トルクの変化量を大きくすることができる。そのため、インナープレート30を変形可能とすることが好ましい。もちろん、アウタープレート50を変形可能としてもよい。
また、インナープレート30およびアウタープレート50は、連結部33、53を備えていなくてもよく、その場合には、小プレート34がシャフト20に直接連結され、小プレート54がケース体12に直接連結された構成となる。
1 サスペンション装置、 10 ビスカスカップリング、 12 ケース体、 16 作動室、 20 シャフト、 30 インナープレート、 32、52 スリット、 34、54 小プレート、 36、56 根元部分、 50 アウタープレート。
Claims (8)
- 粘性流体を収容する作動室を形成するケース体と、
前記ケース体に相対回転可能に挿通されたシャフトと、
前記シャフトに連結された複数の第1プレートと、
前記ケース体に連結されて前記作動室において前記第1プレートと交互に配置された複数の第2プレートと、
を備え、前記第1プレートおよび前記第2プレートの少なくとも一方を、前記シャフトまたは前記ケース体の回転に応じて変形させることで、前記シャフトの軸方向から見た前記第1プレートと前記第2プレートとが重なり合う領域の範囲を調整可能としたことを特徴とするビスカスカップリング。 - 前記第1プレートおよび前記第2プレートの少なくとも一方は、その開放端側に、前記シャフトを中心として放射状に延びる複数の小プレートを有し、前記シャフトまたは前記ケース体の回転に応じて前記小プレートが変位して前記重なり合う領域の範囲が変化することを特徴とする請求項1に記載のビスカスカップリング。
- 前記小プレートは、前記シャフトまたは前記ケース体が非回転状態で、前記重なり合う領域の範囲が最大となる位置をとるように設けられており、前記シャフトまたは前記ケース体の回転に応じて前記小プレートにかかる力によって前記小プレートが変位して前記重なり合う領域の範囲が小さくなることを特徴とする請求項2に記載のビスカスカップリング。
- 前記第1プレートは、前記シャフトを中心として放射状に延びるスリットにより複数の小プレートに分割されており、当該小プレートが前記シャフトの回転方向と反対方向に変位して、前記第1プレートの外径が小さくなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のビスカスカップリング。
- 前記第2プレートが前記シャフトを中心として放射状に延びるスリットにより複数の小プレートに分割されており、当該小プレートが前記ケース体の回転方向と反対方向に変位して、前記第2プレートの内径が大きくなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のビスカスカップリング。
- 前記小プレートの根元部分は、前記シャフトの軸周り方向の幅が他の部分よりも細くなっていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載のビスカスカップリング。
- 前記小プレートの根元部分は、前記シャフトの軸方向の厚さが他の部分よりも厚くなっていることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1項に記載のビスカスカップリング。
- 衝撃を緩衝するための減衰力発生手段として請求項1ないし7のいずれか1項に記載のビスカスカップリングを備えたことを特徴とするサスペンション装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008301964A JP2010127366A (ja) | 2008-11-27 | 2008-11-27 | ビスカスカップリング、およびサスペンション装置 |
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