JP6965648B2 - 遠心振り子ダンパの設計方法 - Google Patents
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Description
ロータ33に形成された軌道溝37と、振り子35に形成された軌道溝39には、ピン41が挿入される。振り子35が周方向に移動すると、ピン41が軌道溝37と軌道溝39との間で転動することにより、振り子35が軌道溝37、39により設定される揺動軌道に沿って移動する。
一般的な遠心振り子ダンパの制振特性を図14、図15に示す。図14と図15は、横軸を振動次数、縦軸をトルクとして表したグラフであり、図15は図14における振動次数の範囲を一部拡大して示している。
これらのグラフは、角速度が任意に制御可能な駆動源により回転軸を駆動し、回転軸に生じる振動次数ごとのトルクをセンサにより取得した結果をプロットして、特性関数として得たものである。
振動次数を1から増加させると、遠心振り子ダンパが発生するトルクが上昇する。この場合、トルクのピークは、振動次数が2.05〜2.12付近にある。これ以降の振動次数でのトルクは、ピーク値から一旦減少して、ピーク前のトルクと同等となる特徴がある。
上記した事情から、遠心振り子ダンパは、振動を緩和したい振動次数から敢えて励起振動次数をずらして設計し、利用するのが一般的であった。その場合、振動を緩和したい振動次数に関して、遠心振り子ダンパの制振能力を直接設定することは難しく、結果として、遠心振り子ダンパの制振能力を必要以上に抑制した状態に設計することになっていた。
ロータと、前記ロータの回転中心から半径方向に離間して、それぞれ周方向へ揺動可能に前記ロータに支持された振り子とを有する遠心振り子ダンパの設計方法であって、
前記振り子の励起振動次数を、前記振り子の振り角が特定範囲の領域では一定にし、前記特定範囲を超える領域では前記振り角に応じて変化させ、
前記励起振動次数を変化させる場合に、
前記振り子の振動次数に対する前記遠心振り子ダンパのトルク吸収量の変化を表す特性線をトルク吸収特性としたとき、
前記特性線の前記励起振動次数よりも前記振動次数の低次側における変化勾配を小さくし、前記特性線を前記振動次数の低次側へオフセットさせて、振動を軽減させる特定振動次数における前記トルク吸収量を増加させる遠心振り子ダンパの設計方法。
遠心振り子ダンパは、ロータと、ロータの回転中心から半径方向に離間して、それぞれ周方向へ揺動可能にロータに支持された振り子とを有する。遠心振り子ダンパの構成として、例えば、図12に示すようなロータ33と複数の振り子35とを備える構成が挙げられるが、本発明に適用可能な遠心振り子ダンパの構成は、これに限らない。また、振り子の数、形状、支持形態等も任意である。
図1は遠心振り子ダンパのロータと振り子との関係を模式的に示すモデル図である。
図示例の遠心振り子ダンパ10は、ロータの回転中心ORから半径方向に距離Lだけ離間して、振り子の揺動中心OPが位置する。振り子は、ロータに揺動可能に支持され、揺動中心OPから揺動半径Rの位置に振り子の重心Gが配置される。振り子は、ロータの回転に伴って、周方向に沿った振り角θで揺動(往復運動)する。
本遠心振り子ダンパの設計方法においては、概略的には、振り子の揺動による振り角θが、図中にΔθで示す特定範囲の領域では、振り子の揺動半径Rを一定にしたり、揺動軌跡をエピサイクロイド曲線にしたり、サイクロイド曲線にして、振り子の励起振動次数を一定にする。また、振り子の振り角θが特定範囲Δθを超える領域では、振り角θに応じて振り子の揺動半径Rを変化させる等の手法により、励起振動次数を変更する(第1の手順)。図示例では、振り角θが特定範囲Δθを超える領域で、振り子の揺動半径Rを振り角θに応じて短くしている。
次に、遠心振り子ダンパの設計方法のより具体的な手順を、シミュレーション結果を用いて説明する。
図3は振り角θに対する振り子の揺動半径の比を示すグラフである。
振り子の揺動半径Rは、振り角θが特定範囲Δθ(一例として、−0.3rad≦θ≦0.3rad)の領域では、一定の励起振動次数となるような揺動半径R0に設定される。また、振り角θが特定範囲Δθを超える領域では、振り角θが0°の場合の揺動半径をR0、揺動半径Rの揺動半径R0に対する比をR/R0とすると、比(R/R0)が、振り角θが0°から離れるほど小さく設定される。つまり、揺動半径Rを、基準となる揺動半径R0よりも小さく設定する。
第1の手順では、トルク吸収特性の振動次数に対する変化勾配を小さくしたが、特に振動を緩和させたい特定振動次数(ここでは、4気筒エンジンの場合の振動次数2.0)においては、トルク吸収量は大きく増加することはない。そのため、遠心振り子ダンパの制振性能が特段に向上することもない。
次の第2の手順では、特定振動次数におけるトルク吸収量を増加させて、遠心振り子ダンパの制振性能を向上させる。
n2=(L/R) ・・・(1)
図9、図10に示すL/R変更(微調整)構造は、図7、図8に示すL/R変更構造に対し、更に図4と図5に示す概念を再度施して微調整した結果である。具体的には、図7、図8で得られた構造に対し、特定範囲Δθの外側の領域の比R/R0の最適化を更に施す。これにより、オフセットに起因するトルク吸収特性の変化が生じても、この最適化によって更に最適なトルク吸収特性の変化勾配が得られる。なお、この微調整を複数回実施することで、より良いトルク吸収特性が得られることもある。
即ち、第1の手順では、振り子の揺動半径を振り角に応じて変化させ、これにより、振動次数に対するトルク吸収量の変化を表すトルク吸収特性の、特に励起振動次数よりも振動次数の低次側における変化勾配を小さくする。第2の手順では、変化勾配が小さくなったトルク吸収特性の特性線を、振動次数の低次側にシフトして、振動を緩和させたい振動次数におけるトルク吸収量を増加させる。
上記した遠心振り子ダンパの設計方法は、適宜な変更が可能である。
上記の設計方法においては、振り角θが特定範囲Δθを超える領域の励起振動次数は、振り子の揺動半径R、ロータの回転中心から揺動中心までの距離Lを調整することで変化させたが、励起振動次数の変更方法はこれに限らない。
図11(A)に示すように、振り子11を揺動させる際に、揺動中心OPから延びる腕部13の先端が振り子11に回転不能に接続されると、振り子11は、腕部13と一体となって揺動する。この場合、振り子11は、揺動に伴って振り子11が重心Gを中心に矢印P方向に自転するため、振り子11は回転エネルギを消費する。
(1) ロータと、前記ロータの回転中心から半径方向に離間して、それぞれ周方向へ揺動可能に前記ロータに支持された振り子とを有する遠心振り子ダンパの設計方法であって、
前記振り子の励起振動次数を、前記振り子の振り角が特定範囲の領域では一定にし、前記特定範囲を超える領域では前記振り角に応じて変化させ、
前記励起振動次数を変化させる場合に、
前記振り子の振動次数に対する前記遠心振り子ダンパのトルク吸収量の変化を表す特性線をトルク吸収特性としたとき、
前記特性線の前記励起振動次数よりも前記振動次数の低次側における変化勾配を小さくし、前記特性線を前記振動次数の低次側へオフセットさせて、振動を軽減させる特定振動次数における前記トルク吸収量を増加させる遠心振り子ダンパの設計方法。
この遠心振り子ダンパの設計方法によれば、振動を緩和させたい特定振動次数におけるトルク吸収量を、トルク吸収特性の変化勾配を小さくし、特性線を振動次数の低次側へオフセットすることで、効率よく増加させることができる。
この遠心振り子ダンパの設計方法によれば、振り子の振り角の増加に伴って振り子の揺動半径を短く設定することで、振り子の励起振動次数が高められる。これにより、トルク吸収特性の変化勾配を揺動半径が一定の場合と比較して小さくできる。
この遠心振り子ダンパの設計方法によれば、揺動中心までの距離と揺動半径とを調整することにより、トルク吸収特性の特性線をオフセットできる。
n2=(L/R)
を満たすように前記距離Lと前記揺動半径Rを決定することにより実施する(3)に記載の遠心振り子ダンパの設計方法。
この遠心振り子ダンパの設計方法によれば、距離Lと揺動半径Rによって、所望の励起振動次数を得ることができ、遠心振り子ダンパの幾何学的構造を決定できる。
この遠心振り子ダンパの設計方法によれば、振り子の自転動作も含めて励起振動次数を変化させるため、励起振動次数の変更代が広がり、設計自由度が向上する。
この遠心振り子ダンパの設計方法によれば、振り子の重心回りの回転だけを変化させるので、ロータの回転中心から振り子の揺動中心までの距離と、振り子の揺動半径の設計自由度を高めることができる。
G 重心
L ロータ中心から揺動中心までの距離
OP 振り子の揺動中心
OR ロータの回転中心
R 揺動半径
θ 振り角
Claims (6)
- ロータと、前記ロータの回転中心から半径方向に離間して、それぞれ周方向へ揺動可能に前記ロータに支持された振り子とを有する遠心振り子ダンパの設計方法であって、
前記振り子の励起振動次数を、前記振り子の振り角が特定範囲の領域では一定にし、前記特定範囲を超える領域では前記振り角に応じて変化させ、
前記励起振動次数を変化させる場合に、
前記振り子の振動次数に対する前記遠心振り子ダンパのトルク吸収量の変化を表す特性線をトルク吸収特性としたとき、
前記特性線の前記励起振動次数よりも前記振動次数の低次側における変化勾配を小さくし、前記特性線を前記振動次数の低次側へオフセットさせて、振動を軽減させる特定振動次数における前記トルク吸収量を増加させる遠心振り子ダンパの設計方法。 - 前記トルク吸収特性の変化勾配を、前記振り子の揺動半径を短くすることにより小さくする請求項1に記載の遠心振り子ダンパの設計方法。
- 前記オフセットは、前記ロータの回転中心から前記振り子の揺動中心までの距離と、前記振り子の揺動半径との調整により実施する請求項1又は請求項2に記載の遠心振り子ダンパの設計方法。
- 前記オフセットは、前記ロータの回転中心から前記振り子の揺動中心までの距離をL、前記振り子の揺動半径をR、前記振り子の前記励起振動次数をnとしたときに、
n2=(L/R)
を満たすように前記距離Lと前記揺動半径Rを決定することにより実施する請求項3に記載の遠心振り子ダンパの設計方法。 - 前記振り子を該振り子の重心回りに回転させる前記振り子の自転動作を更に含めて前記励起振動次数を変化させる請求項3に記載の遠心振り子ダンパの設計方法。
- 前記振り子を該振り子の重心回りに回転させる前記振り子の自転動作を、回転自在又は回転不能のいずれかにして、前記励起振動次数を変化させる請求項1に記載の遠心振り子ダンパの設計方法。
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