JPWO2010087377A1 - ジチオカルバミン酸エステルの変換によるチオ化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
これまでにも、ジチオカルバメート基から他の官能基への変換の例としては水素化リチウムアルムニウムや或いはヒドラジンを用いることによるチオールの合成や、臭素を用いた臭素化等の反応例が提案されている(非特許文献1および非特許文献2)。
そしてジチオカルバメート基の他の官能基への変換技術は、多様な化合物の合成に影響を与える工業的に重要な技術であり、新たな技術の開発が望まれていた。
すなわち、本発明は、第1観点として、下記式(1)で表されるジチオカルバメート基を含有する化合物を、塩基で処理することにより前記ジチオカルバメート基をチオールアニオン(−S-)に変換する工程
前記チオールアニオンに求電子剤を反応させる工程、
を含む、チオ化合物の製造方法。
第2観点として、前記塩基がアルカリ金属アルコキシドである、第1観点記載のチオ化合物の製造方法。
第3観点として、前記求電子剤が下記式(2)で表される化合物である、第1観点または第2観点記載のチオ化合物の製造方法。
Xはハロゲン原子、メタンスルホン酸基またはp−トルエンスルホン酸基を表す。)
第4観点として、前記求電子剤が下記式(3)で表される化合物である、第1観点または第2観点記載のチオ化合物の製造方法。
Yはハロゲン原子、または−O(CO)R4基(式中、R4は上記定義と同義を表す。)を表す。)
第5観点として、前記式(1)で表されるジチオカルバメート基を含有する化合物が下記式(6)で表される分枝状高分子化合物であって、該分枝状高分子化合物の重量平均分子量が500〜5,000,000である、第1観点ないし第4観点のうちいずれか一項に記載のチオ化合物の製造方法。
第6観点として、前記式(1)で表されるジチオカルバメート基を含有する化合物が下記式(9)で表される直鎖状高分子化合物であって、該直鎖状高分子化合物の重量平均分子量が500〜5,000,000である、第1観点ないし第4観点のうちいずれか一項に記載のチオ化合物の製造方法。
第7観点として、前記式(1)で表されるジチオカルバメート基を含有する化合物が下記式(10)で表される化合物または下記式(11)で表される構造を有する化合物である、第1観点ないし第4観点のうちいずれか一項に記載のチオ化合物の製造方法。
第8観点として、下記式(1)で表されるジチオカルバメート基を含有する化合物を、塩基で処理することにより前記ジチオカルバメート基をチオールアニオン(−S-)に変換する工程
を含む、チオールアニオンの製造方法。
第9観点として、前記式(1)で表されるジチオカルバメート基を含有する化合物が下記式(6)で表される分枝状高分子化合物であって、該分枝状高分子化合物の重量平均分子量が500〜5,000,000である、第8観点に記載のチオールアニオンの製造方法。
第10観点として、前記式(1)で表されるジチオカルバメート基を含有する化合物が下記式(9)で表される直鎖状高分子化合物であって、該直鎖状高分子化合物の重量平均分子量が500〜5,000,000である、第8観点に記載のチオールアニオンの製造方法。
第11観点として、前記式(1)で表されるジチオカルバメート基を含有する化合物が下記式(10)で表される化合物または下記式(11)で表される構造を有する化合物である、第8観点に記載のチオールアニオンの製造方法。
特に、本発明の製造方法では、ジチオカルバメート基のチオールアニオンへの変換並びに該アニオンへの求電子剤の反応を連続して実施すること、すなわち、ワンポットで実施することができ、複雑な反応操作を必要とせず、また、経済性にも優れたものとすることができる。
また、上記工程1を含むチオールアニオンの製造方法も本発明の対象である。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
<ジチオカルバメート基含有化合物>
本発明において使用するジチオカルバメート基含有化合物は、下記式(1)で表されるジチオカルバメート基を含有する化合物である。
上記炭素原子数1ないし5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
上記炭素原子数7ないし12のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
R1とR2が互いに結合し、それらと結合する窒素原子と共に形成する環の具体例としては、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ホモピペリジン環等が挙げられる。
nは繰り返し単位構造の数であって2ないし100,000の整数を表す。
U1、U2、U3およびU4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数1ないし20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基またはシアノ基を表す
あるいは、U1、U2、U3およびU4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数1ないし20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基またはシアノ基を表す。
また環状アルキレン基としては、炭素数3ないし30の単環式、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。以下に脂環式脂肪族基における、脂環式部分の構造例(a)ないし(s)を示す。
炭素原子数1ないし20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ペンチルオキシ基およびシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子である。
上記U1、U2、U3およびU4としては、水素原子または炭素原子数1ないし20のアルキル基が好ましい。
また、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)としては1.0ないし7.0であり、または1.1ないし6.0であり、または1.2ないし5.0である。
本発明において、ジチオカルバメート基のチオールアニオンへの変換に使用する塩基としては、アルカリ金属無機酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属アルコキシド、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミンなどを挙げることができ、これらは一種単独で、或いは二種以上を組合せて使用することができる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属水素化物としては、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属アルコキシドとしては、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムブトキシド、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムブトキシド、カリウムtert−ブトキシド等が挙げられる。
脂環式アミンとしては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン等が挙げられる。
芳香族アミンとしては、ピリジン、5−エチル−2−メチルピリジン、2−フェニルピリジン等が挙げられる。
アルカリ金属アルコキシドの中でも、アルカリ金属としてカリウムを用いたもの、特にカリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシドがより好ましい。
上記数値範囲より少ない量で使用すると、ジチオカルバメート基含有化合物の一部をチオールに変換でき、特にジチオカルバメート含有化合物が高分子化合物である場合には、分子内に複数ないし多数存在するジチオカルバメート基の一部を変換できる。
また上記数値範囲より多い量で使用すると、ジチオカルバメート基のチオールへの変換自体には影響を与えないが、未反応の塩基が後の工程(工程2)で投入する求電子剤と反応してしまうなど、経済性が悪くなる。
本発明のジチオカルバメート基のチオールへの変換工程、並びに後述する求電子剤との反応工程のいずれも溶媒中で実施される。
本発明において使用する溶媒は特に限定されず、一般的な有機合成に用いられる種々の溶媒のうち、上記の工程に影響を及ぼさないものを適宜選択して使用することができる。
具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミド化合物系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等のニトリル化合物系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル化合物系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物系溶媒;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカン、デカリン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル化合物系溶媒;ジメチルスルホキシド、テトラメチルウレア、スルホラン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のその他の非プロトン性極性有機溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は一種を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
THFとアセトニトリルの混合溶媒を用いる場合、THFを1としたときのアセトニトリルの混合割合を0.5以下とすることが好ましい。
本工程は、溶媒の沸点以下の任意の温度で実施され得、短時間で収率よく目的物を得るという観点から40ないし70℃で実施することが好ましく、より望ましくは50ないし60℃で実施される。
上記温度範囲を超えても沸点以下の温度であれば実施可能であるが、後述の求電子剤との反応工程が高温では不利となり、冷却操作が必要となるため経済的でない。
ジチオカルバメート基含有化合物と塩基の反応時間は、ジチオカルバメート基含有化合物の種類、塩基の種類、使用する溶媒種、適用する反応温度等によって種々なものとなるが、通常1ないし24時間程度である。
本工程終了後、溶媒を留去、ろ過、再沈殿等の公知の手法によってチオール塩の形態で分離収集することができるが、得られた反応溶液をそのまま、工程2に使用することができる。
<求電子剤>
本発明において、前述の工程1で得られたチオールアニオン(含有化合物)に反応させる求電子剤としては、下記式(2)または式(3)で表される化合物が挙げられる。
またXはハロゲン原子、メタンスルホン酸基またはp−トルエンスルホン酸基を表す。
エーテル基を含んでいても良い炭素原子数3ないし30の脂環式炭化水素基としては、単環式、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができ、脂環部分の構造例として前記(a)ないし(s)の構造を挙げることができる(段落[0050]参照)。
炭素原子数5ないし12のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フラニルメチル基、チエニルメチル基、ピリジルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
またハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
またYはハロゲン原子、または−O(CO)R4基(式中、R4は上記定義と同義を表す。)を表す。
エーテル基を含んでいてもよい炭素原子数3ないし30の脂環式炭化水素オキシ基としては、上記単環式、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族オキシ基が挙げられる。具体的には、炭素数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有するオキシ基を挙げることができ、脂環部分の構造例として前記(a)ないし(s)の構造を挙げることができる(段落[0050]参照)。
炭素原子数5ないし12のアリールアルコキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェニルエトキシ基、フラニルメトキシ基、チエニルメトキシ基、ピリジルメトキシ基、ナフチルメトキシ基が挙げられる。
置換されていても良い5個ないし18個の環原子より構成されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントリル基、ピレニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、トリル基、キシリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ベンゾチエニル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
置換されていても良い5個ないし18個の環原子より構成されるアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、クロロフェノキシ基、ブロモフェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、フリルオキシ基、チエニルオキシ基、ピリジルオキシ基等が挙げられる。
また−O(CO)R4基の具体例は特に限定されないが、例えばアセトキシ基やブトキシカルボニル基等が挙げられる。
他の求電子剤の具体例としては下記式(4)または式(5)で表される化合物;ならびにN−ベンジルオキシカルボニルピロリドン等の環状アミド;ブチロラクトン、γ−スルトン等の環状エステル;コハク酸無水物等の環状酸無水物;そしてオキシラン、オキセタン等の3ないし4員環の環状エーテルが挙げられる。
エーテル基を含んでいても良い炭素原子数3ないし30の脂環式炭化水素基としては、単環式、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができ、脂環部分の構造例として前記(a)ないし(s)の構造を挙げることができる(段落[0050]参照)。
炭素原子数7ないし12のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
置換されていても良い5個ないし18個の環原子より構成されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
本工程において用いる溶媒は、前述の工程1で使用した溶媒と同じものを用いることができる。
また本工程は、反応温度を室温ないし60℃として実施することが好ましい。したがって、工程1および工程2を連続して実施する場合には50ないし60℃の温度で実施することが望ましい。
また、チオールアニオン(含有化合物)と求電子剤の反応時間は、チオールアニオン(含有化合物)の種類、求電子剤の種類、使用する溶媒種、適用する反応温度等によって種々なものとなるが、通常1ないし24時間程度である。
以下に工程1および工程2の模式図を示す。
[1H NMR]
装置:JEOL製Lambda 600(600MHz)
測定溶媒:CDCl3
基準物質:CHCl3(δ7.26ppm)
[13C NMR]
装置:JEOL製Lambda 600(125MHz)
測定溶媒:CDCl3
基準物質:CHCl3(δ77.0ppm)
[GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)]
装置:東ソー(株)製 HLC−8220 GPC
カラム:Shodex(登録商標) KF−804L+KF−803L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV(254nm)、RI
検量線:標準ポリスチレン
ジムロート冷却管を付けた300mLの二口フラスコに、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム3水和物[関東化学(株)製]24.8gを仕込み、反応系内を窒素置換した。次いで、アセトン200mLを加え均一になるまで撹拌した。溶解後、ベンジルブロミド[東京化成工業(株)製]17.1gを加え、加熱還流下、撹拌しながら4時間反応させた。反応液を水200mLで洗浄した後、酢酸エチル100mLで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。残渣物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/1(体積比))により精製し、油状物のBnDCを25.8g得た。収率96%。
下記式(I)で表される分枝状高分子(HPS)を、Koji Ishizu,Akihide Mori,Macromol.Rapid Commun.21,665−668(2000)に記載の方法を参考に合成した。
このHPSのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは20,000、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は3.4であった。このHPSの1H NMRスペクトルを図1に示す。
<1,2−ビス(N,N−ジエチルジチオカルバミル)エタン(EDC2)の合成>
1Lの反応フラスコに、1,2−ジクロロエタン20g、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム3水和物[関東化学(株)製]109gおよびアセトン400gを仕込み、撹拌下、40℃で18時間反応させた。反応後、析出した塩化ナトリウムを濾過して除き、その後ロータリーエバポレーターで反応溶液からアセトンを留去し残渣物を得た。この残渣物をトルエンに再溶解させ、トルエン/水系で分液後、トルエンを留去し白色の粗結晶を得た。この粗結晶をトルエン180gを用いて再結晶を行い、白色結晶のEDC2を48g得た。
500mLの内部照射フラスコに、クロロメチルスチレン[AGCセイミケミカル(株)製、CMS−14(商品名)]100g、前記EDC2 1.2gおよびトルエン100gを仕込み、1分間窒素バブリングを行い反応系内を窒素置換した。次いで、反応容器の中心に設置した100Wの高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製、HL−100]を点灯させ、内部照射による光重合反応を、撹拌下、室温で19時間行なった。反応終了後、反応液にメタノール500gを加えて再沈精製を実施し、減圧濾過を行い、白色固体を得た。得られた固体をトルエン100gに再溶解させ、同様の再沈精製をさらに2回繰り返し、減圧濾過、減圧乾燥して白色固体のLPS−Clを52.3g得た。
300mLの反応フラスコに、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム3水和物[関東化学(株)製]22.1gおよびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gを仕込み、溶解後40℃に加熱した。この溶液へ、前記LPS−Cl 5.0gをNMP10gに溶解させた溶液を、撹拌下40℃で滴下した。続けて、撹拌下40℃で6時間、20℃で16時間反応させた。反応終了後、この反応液に蒸留水1000gを加えて再沈精製を実施し、減圧濾過を行い、白色固体を得た。得られた固体をテトラヒドロフラン(THF)50gに再溶解させ、メタノール300gを用いてさらに再沈精製を実施し、減圧濾過、減圧乾燥して、下記式(II)で表される直鎖状高分子(LPS)5.3gを白色固体として得た。
このLPSのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは72,400、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は4.5であった。このLPSの1H NMRスペクトルを図2に示す。
30mLの反応シュレンク管に、ベンジルメルカプタン[東京化成工業(株)製]372mgおよび水素化カリウム[関東化学(株)製]80mgを仕込み、系内をアルゴン置換した。その後、アルゴン気流下、無水THF10mLを加え、50℃で6時間撹拌した。反応終了後、生成した固体をアルゴン気流下で減圧濾過により濾別し、減圧乾燥して、白色固体のベンジルチオール−カリウム塩を283mg得た。
1H NMR(DMSO−d6,基準物質DMSO(ジメチルスルホキシド):δ2.49ppm)
δ 3.42(S,2H,ArCH2−),6.89−6.95(m,1H,ArH),7.03−7.09(m,2H,ArH),7.19−7.24(m,2H,ArH)
13C NMR(DMSO−d6,基準物質DMSO:δ39.7ppm)
δ 33.1,123.2,126.8,128.3
30mLの反応シュレンク管に、参考例1で合成したBnDC230mgおよびカリウムメトキシド[Aldrich社製]119mgを仕込み、系内をアルゴン置換した。その後、アルゴン気流下、無水THF10mLを加え、50℃で6時間撹拌した。反応終了後、生成した固体をアルゴン気流下で減圧濾過により濾別し、減圧乾燥して、白色固体のベンジルチオール−カリウム塩を129mg得た。収率83%。
1H NMR(DMSO−d6,基準物質DMSO:δ2.49ppm)
δ 3.42(s,2H,ArCH2−),6.88−6.92(m,1H,ArH),7.03−7.08(m,2H,ArH),7.18−7.23(m,2H,ArH)
13C NMR(DMSO−d6,基準物質DMSO:δ39.7ppm)
δ 33.3,123.2,126.8,128.3
続けてベンジルブロミド[東京化成工業(株)製]258mgを加え、50℃で12時間撹拌した。反応溶液をメンブランフィルターで濾過した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し油状物を得た。
この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)により精製し、無色液体のジベンジルチオエーテル147mgを得た。収率65%。
1H NMR
δ 4.51(s,4H,ArCH2−),7.20−7.44(m,10H,ArH)
続けてn−オクタノイルクロリド[Aldrich社製]246mg(DC基に対し1.5mol倍)を加え、50℃で12時間撹拌した。
反応終了後、反応液に2−プロパノール/水=4/1(体積比)混合溶液50mLを加えて再沈精製を行い、減圧濾過、減圧乾燥して、目的化合物217mgを白色粉末として得た。1H NMRスペクトルを図3に示す。
また、この導入率を考慮して算出した収率(以下、単に“収率”とも称する)は79%であった。
1)得られた化合物の単位構造あたりの分子量(MwC)の算出
MwC=MwA×(1−0.83)+MwB×0.83=274.57
・HPSの単位構造(下記式(A))あたりの分子量:MwA:265.55
・HPSの使用量:MA:265mg
・オクタノイル基を100%導入した場合の単位構造(下記式(B))あたりの分子量:MwB:276.44
・オクタノイル基の導入率:Ir:0.83(83%)
・得られた化合物の単位構造あたりの分子量:MwC
Y=[(MC/MwC)/(MA/MwA)]×100=79%
・得られた化合物の単位構造あたりの分子量:MwC:(上式より)274.57
・得られた化合物の質量:MC:217mg
・収率:Y
実施例3において、塩基をナトリウムメトキシド[Aldrich社製]65mgに変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、目的化合物199mgを得た。得られた化合物の1H NMRスペクトルを図3に示す。
実施例3と同様の方法で算出したオクタノイル基の導入率は6%(=(0.2/3)÷(2.3/2)×100)であった。また、導入率を考慮した収率は75%であった。
実施例3において、塩基との反応時間および求電子剤との反応時間をそれぞれ6時間に変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、目的化合物103mgを得た。得られた化合物の1H NMRスペクトルを図4に示す。
実施例3と同様の方法で算出したオクタノイル基の導入率は77%(=(2.3/3)÷(2.0/2)×100)であった。また、導入率を考慮した収率は76%であった。
実施例3において、塩基の量および求電子剤の量をそれぞれ表1に示す値に変更した以外は実施例3と同様の操作を行った。得られた化合物の1H NMRスペクトルを図5に示す。
実施例3と同様の方法で算出したオクタノイル基の導入率、および導入率を考慮した収率を表1に示す。
続けてベンゾイルクロリド[Aldrich社製]246mg(DC基に対し3.0mol倍)を加え、50℃で8時間撹拌した。
反応終了後、反応液に2−プロパノール/水=4/1(体積比)混合溶液25mLを加えて再沈精製を行い、減圧濾過、減圧乾燥して目的化合物を得た。1H NMRスペクトルを図6に示す。
一方、実施例12(溶媒:THF+CH3CN)の1H NMRスペクトルにおいては、DC基由来のシグナルが観測されないことから、ベンゾイル基の導入率は100%であった。収率71%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、アリル基の導入率は100%であった。収率72%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、β−メタリル基の導入率は100%であった。収率84%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、ベンジル基の導入率は100%であった。収率82%。
1H NMRスペクトルにおいて、ベンジル基CH2のシグナル(δ4.06ppm,2.5H)、および未反応DC基由来エチル基CH2のシグナル(非等価のため2H相当、δ4.50ppm,0.8H)の積分比から、アセチル基の導入率は68%(=(1−0.8÷2.5)×100)であった。また、導入率を考慮した収率は52%であった。
1H NMRスペクトルにおいて、ベンジル基CH2のシグナル(δ4.25ppm,1.9H)、および未反応DC基由来エチル基CH2のシグナル(非等価のため2H相当、δ4.46ppm,0.2H)の積分比から、ベンゾイル基の導入率は89%(=(1−0.2÷1.9)×100)であった。また、導入率を考慮した収率は84%であった。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、4−クロロベンゾイル基の導入率は100%であった。収率86%。
1H NMRスペクトルにおいて、ベンジル基CH2のシグナル(δ4.23ppm,1.9H)、および未反応DC基由来エチル基CH2のシグナル(非等価のため2H相当、δ4.46ppm,0.2H)の積分比から、4−ブロモベンゾイル基の導入率は89%(=(1−0.2÷1.9)×100)であった。また、導入率を考慮した収率は100%であった。
1H NMRスペクトルにおいて、ナフトイル基で置換された部位のベンジル基CH2のシグナル(δ4.27ppm,2.2H)、および未反応部位のベンジル基CH2のシグナル(δ3.58ppm,1.1H)の積分比から、2−ナフトイル基の導入率は67%(=2.2÷(2.2+1.1)×100)であった。また、導入率を考慮した収率は93%であった。
1H NMRスペクトルにおいて、ナフトイル基で置換された部位のベンジル基CH2のシグナル(δ4.24ppm,1.9H)、および未反応部位のベンジル基CH2のシグナル(δ3.67ppm,0.6H)の積分比から、2−テノイル基の導入率は76%(=1.9÷(1.9+0.6)×100)であった。また、導入率を考慮した収率は93%であった。
1H NMRスペクトルにおいて、ベンジル基CH2のシグナル(δ4.05ppm,2.0H)、および未反応DC基由来エチル基CH2のシグナル(非等価のため2H相当、δ4.46ppm,0.5H)の積分比から、アセチル基の導入率は75%(=(1−0.5÷2.0)×100)であった。また、導入率を考慮した収率は83%であった。
1H NMRスペクトルにおいて、エトキシカルボニル基で置換された部位のベンジル基CH2のシグナル(δ4.27ppm,1.4H)、および未反応DC基由来エチル基CH2のシグナル(非等価のため2H相当、δ4.46ppm,0.5H)の積分比から、エトキシカルボニル基の導入率は74%(=1.4÷(1.4+0.5)×100)であった。また、導入率を考慮した収率は88%であった。
1H NMRスペクトルにおいて、ベンジル基CH2のシグナル(δ4.04ppm,2.0H)、および未反応DC基由来エチル基CH2のシグナル(非等価のため2H相当、δ4.46ppm,0.2H)の積分比から、ベンジルオキシカルボニル基の導入率は90%(=(1−0.2÷2.0)×100)であった。また、導入率を考慮した収率は89%であった。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、ブチル基の導入率は100%であった。収率73%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、アリル基の導入率は100%であった。収率25%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、ベンジル基の導入率は100%であった。収率57%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、オクタノイル基の導入率は100%であった。収率25%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、ベンゾイル基の導入率は100%であった。収率73%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、2−ナフトイル基の導入率は100%であった。収率94%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、2−テノイル基の導入率は100%であった。収率71%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、ベンジルオキシカルボニル基の導入率は100%であった。収率38%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、アリル基の導入率は100%であった。収率93%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、ベンジル基の導入率は100%であった。収率96%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、アセチル基の導入率は100%であった。収率91%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、ベンゾイル基の導入率は100%であった。収率96%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、ベンジル基の導入率は100%であった。収率97%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、tert−ブトキシカルボニル基の導入率は100%であった。収率95%。
続けてベンゾイルクロリド[Aldrich社製]210mg(DC基に対し3.0mol倍)を加え、50℃で8時間撹拌した。
反応終了後、反応液に2−プロパノール/水=4/1(体積比)混合溶液25mLを加えて再沈精製を行い、減圧濾過、減圧乾燥して目的化合物を得た。1H NMRスペクトルを図33に示す。
一方、実施例40(溶媒:THF+CH3CN)の1H NMRスペクトルにおいては、DC基由来のシグナルが観測されないことから、ベンゾイル基の導入率は100%であった。収率71%。
1H NMRスペクトルにおいて、DC基由来のシグナルが観測されないことから、アリル基の導入率は100%であった。収率72%。
Claims (13)
- 前記塩基がアルカリ金属アルコキシドである、請求項1記載のチオ化合物の製造方法。
- 前記求電子剤が下記式(3)で表される化合物である、請求項1または請求項2記載のチオ化合物の製造方法。
Yはハロゲン原子、または−O(CO)R4基(式中、R4は上記定義と同義を表す。)を表す。) - 前記式(1)で表されるジチオカルバメート基を含有する化合物が下記式(6)で表される分枝状高分子化合物であって、該分枝状高分子化合物の重量平均分子量が500〜5,000,000である、請求項1ないし請求項4のうちいずれか一項に記載のチオ化合物の製造方法。
- 前記式(1)で表されるジチオカルバメート基を含有する化合物が下記式(6)で表される分枝状高分子化合物であって、該分枝状高分子化合物の重量平均分子量が500〜5,000,000である、請求項8に記載のチオールアニオンの製造方法。
- 前記式(1)で表されるジチオカルバメート基を含有する化合物が下記式(6)で表される分枝状高分子化合物であって、該分枝状高分子化合物の重量平均分子量が500〜5,000,000である、請求項1ないし請求項4のうちいずれか一項に記載のチオ化合物の製造方法。
- 前記式(1)で表されるジチオカルバメート基を含有する化合物が下記式(6)で表される分枝状高分子化合物であって、該分枝状高分子化合物の重量平均分子量が500〜5,000,000である、請求項8に記載のチオールアニオンの製造方法。
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