JPWO2009078089A1 - 弾性波素子、通信モジュール、および通信装置 - Google Patents

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Abstract

本発明の弾性波素子は、圧電基板14と、圧電基板14上に形成された櫛歯型の電極13と、電極13を被覆するように形成されたSiO2膜12とを備えた弾性波素子であって、SiO2膜12上に形成された変位調整膜11を備え、変位調整膜11は、SiO2膜12を形成する物質よりも音速が遅い物質で形成されたものである。この構成により、不要波を抑えることができるとともに、温度特性を向上させることができる。また、このような弾性波素子を通信モジュール及び通信装置に搭載することで、信頼性を向上させることができる。

Description

本発明は、携帯電話端末、PHS(Personal Handy-phone System)端末、無線LANシステムなどの移動体通信機器(高周波無線通信機器)に搭載される弾性波素子に関する。特に、圧電基板上にインターデジタル電極(以下、IDT電極と称する。IDT:Interdigital Transducer)が形成されており、該インターデジタル電極を覆うように絶縁層が形成された弾性表面波装置の温度特性と不要波抑制方法の両立に関する。また、そのような弾性波素子を備えた通信モジュール、および通信装置に関する。
移動体通信システムに用いられるデュプレクサーやRFフィルタでは、広帯域かつ良好な温度特性の双方が満たされることが求められている。従来、デュプレクサーやRFフィルタに使用されてきた弾性表面波装置では、36°〜50°回転Y板X伝搬タンタル酸リチウム(LiTaO3)から構成された圧電基板が用いられている。この圧電基板は、周波数温度係数(TCF:Temperature coefficient of frequency)が−40〜−30ppm/℃程度であった。また、温度特性を改善するために、圧電基板上においてIDT電極を被覆するようにTCFが正である酸化シリコン(SiO2)膜を成膜する方法が知られている。
他方、上記周波数温度係数の改善とは別の目的で、弾性表面波装置のIDT電極を被覆するように絶縁性または半導電性の保護膜が形成されている弾性表面波装置の製造方法が特許文献1に開示されている。図15は、特許文献1に記載の弾性表面波装置を示す模式的断面図である。図15において、弾性表面波装置100では、圧電基板101上に、アルミニウム(Al)またはAlを主成分とする合金から構成されたIDT電極102が形成されている。IDT電極102が形成されている領域以外の領域には、絶縁性または半導電性の電極指間膜103が形成されている。また、IDT電極102及び電極指間膜103を被覆するように、絶縁性または半導電性の保護膜104が形成されている。特許文献1には、電極指間膜103及び保護膜104が、SiO2などの絶縁物やシリコンなどの半導電性物質により構成される旨が記載されている。特許文献1に開示されている構成によれば、電極指間膜103を形成することにより、圧電基板101が有する焦電性に起因する電極指間の放電による特性の劣化が抑制される。
また、特許文献2には、水晶またはニオブ酸リチウム(LiNbO3)からなる圧電基板上に、アルミニウムや金などの金属からなる電極が形成されており、さらにSiO2膜を形成した後、該SiO2膜を平坦化して構成された1ポート型弾性表面波共振子が開示されている。このようにSiO2膜を平坦化することにより、良好な共振特性が得られる。
また、特許文献3には、電気機械結合係数(k2)が0.025以上のLiNbO3から構成された圧電基板と、圧電基板上に形成されAlよりも密度の大きい金属もしくは該金属を主成分とする合金またはAlよりも密度の大きい金属もしくは該金属を主成分とする合金と他の金属とから構成された積層膜からなる少なくとも1つの電極と、前記少なくとも1つの電極が形成されている領域を除いた残りの領域において、電極と略等しい膜厚に形成された第1絶縁物層と、電極及び第1絶縁物層を被覆するように形成された第2絶縁物層とを備え、電極の密度が第1絶縁物層の1.5倍以上であり、第2の絶縁物層の厚みが表面波の波長をλとしたときに0.18λ〜0.34λの範囲にあり、第2の絶縁物層の表面の凸部の突出高さが、表面波の波長をλとしたときに、0.03λ以下である構成が開示されている。特許文献3に開示されている構成では、IDT電極の反射係数が十分に大きく、共振特性などに現れるリップルによる特性の劣化が生じ難くなる。
特開平11−186866号公報 特開昭61−136312号公報 特許第3885824号公報
しかしながら各特許文献に開示された構成では、弾性波素子のアドミッタンス(S係数)の絶対値の周波数応答において、図16に示すように、目的とする主応答Aよりも高い周波数で不要波Bが発生するという欠点があった。図16に示す特性は、図17に示すように圧電基板203上に周期λが2μmのIDT電極202を備え、さらにIDT電極202を覆うようにSiO2膜201を備えた弾性波素子200において、(表1)に示す物性値を用い有限要素法(FEM:Finite Element Method)でシミュレーションを行った結果である。
Figure 2009078089
図16に示すように、不要応答(不要波B)が存在すると、弾性波素子を用いてフィルタを形成した際に、通過帯域外での抑制が悪くなるという問題が生じる。
不要波の大きさとSiO2膜の膜厚とは図18に示す関係があり、不要波の抑制のためにSiO2膜の膜厚を薄膜化するとよいが、SiO2膜の膜厚を薄膜化すると図19に示すように温度特性が劣化するという問題が生じる。なお、図19は、SiO2膜の膜厚とTCFとの関係を示す。
本発明の目的は、不要波を抑えることができるとともに、温度特性を向上させることができる弾性波素子を実現することである。また、本発明の目的は、信頼性が高い通信モジュール、通信装置を実現することである。
本発明の弾性波素子は、圧電基板と、前記圧電基板上に形成された櫛歯型の電極と、前記電極を被覆するように形成された絶縁層とを備えた弾性波素子であって、前記絶縁層上に形成された変位調整膜を備え、前記変位調整膜は、前記絶縁層を形成する物質よりも音速が遅い物質で形成されたものである。
本発明によれば、不要波を抑えることができるとともに、温度特性を向上させることができる弾性波素子を実現することができる。また、信頼性が高い通信モジュール、通信装置を実現することができる。
図1は、実施の形態における弾性波素子の断面図である。 図2Aは、変位調整膜の膜厚が1nmの時の共振周波数のエネルギー分布を示す分布図である。 図2Bは、変位調整膜の膜厚が1nmの時の反共振周波数のエネルギー分布を示す分布図である。 図2Cは、変位調整膜の膜厚が1nmの時の不要波のエネルギー分布を示す分布図である。 図3Aは、変位調整膜の膜厚が10nmの時の共振周波数のエネルギー分布を示す分布図である。 図3Bは、変位調整膜の膜厚が10nmの時の反共振周波数のエネルギー分布を示す分布図である。 図3Cは、変位調整膜の膜厚が10nmの時の不要波のエネルギー分布を示す分布図である。 図4Aは、変位調整膜の膜厚が30nmの時の共振周波数のエネルギー分布を示す分布図である。 図4Bは、変位調整膜の膜厚が30nmの時の反共振周波数のエネルギー分布を示す分布図である。 図4Cは、変位調整膜の膜厚が30nmの時の不要波のエネルギー分布を示す分布図である。 図5は、SiO2膜の膜厚とTCFとの関係を示す特性図である。 図6は、図5に示す変位調整膜の各条件における、SiO2膜の膜厚とTCFとの関係を示す特性図である。 図7は、図5に示す変位調整膜の各条件における、共振周波数のTCFと不要波のレベルとの関係を示す特性図である。 図8は、図5に示す変位調整膜の各条件における、反共振周波数のTCFと不要波のレベルとの関係を示す特性図である。 図9は、変位調整膜を様々な物質で形成した場合の、変位調整膜の膜厚と不要波の大きさとの関係を示す特性図である。 図10は、変位調整膜を様々な物質で形成した場合の、変位調整膜の音速と不要波の大きさとの関係を示す特性図である。 図11は、変位調整膜を様々な物質で形成した場合の、変位調整膜の膜厚と不要波の大きさとの関係を示す特性図である。 図12Aは、実施の形態の弾性波素子の製造工程を説明するための断面図である。 図12Bは、実施の形態の弾性波素子の製造工程を説明するための断面図である。 図12Cは、実施の形態の弾性波素子の製造工程を説明するための断面図である。 図12Dは、実施の形態の弾性波素子の製造工程を説明するための断面図である。 図12Eは、実施の形態の弾性波素子の製造工程を説明するための断面図である。 図12Fは、実施の形態の弾性波素子の製造工程を説明するための断面図である。 図13は、実施の形態の弾性波素子を備えた通信モジュールの構成を示すブロック図である。 図14は、実施の形態の弾性波素子または通信モジュールを備えた通信装置の構成を示すブロック図である。 図15は、特許文献1に記載の表面波装置を示す模式的断面図である。 図16は、従来の弾性波素子の周波数応答特性を示す特性図である。 図17は、従来の弾性波素子の構成を示す断面図である。 図18は、不要波の大きさとSiO2膜の膜厚との関係を示す特性図である。 図19は、SiO2膜の膜厚と周波数温度係数との関係を示す特性図である。
本発明の弾性波素子の第1の構成は、圧電基板と、前記圧電基板上に形成された櫛歯型の電極と、前記電極を被覆するように形成された絶縁層とを備えた弾性波素子であって、前記絶縁層上に形成された変位調整膜を備え、前記変位調整膜は、前記絶縁層を形成する物質よりも音速が遅い物質で形成されたものである。このような構成とすることで、不要波を抑えることができるとともに、温度特性を向上することができる。
本発明の弾性波素子は、上記構成を基本として、以下のような様々な態様をとることができる。
すなわち、本発明の弾性波素子において、前記電極は、金属もしくは該金属を主成分とする合金、または金属と他の金属とから構成された積層膜で構成することができる。
また、本発明の弾性波素子は、前記絶縁層がSiO2により形成され、前記変位調整膜がSiO2よりも音速が遅い物質の単層、またはSiO2よりも音速が遅い物質のうちいずれかの物質を主成分とする積層膜により形成されている構成とすることができる。
また、本発明の弾性波素子において、前記変位調整膜は、Au,Ag,Pt,Ta,Cu,W,Ti,Niの単層、またはAu,Ag,Pt,Ta,Cu,W,Ti,Niのうちいずれかの物質を主成分とする積層膜により形成されている構成とすることができる。
また、本発明の弾性波素子の第2の構成は、圧電基板と、前記圧電基板上に形成された櫛歯型の電極と、前記電極間において、前記電極と略等しい膜厚に形成された第1の絶縁層と、前記電極及び第1の絶縁層を被覆するように形成された第2の絶縁層とを備えた弾性波素子であって、前記第2の絶縁層上に形成された変位調整膜を備え、前記変位調整膜は、前記第2の絶縁層を形成する物質よりも音速が遅い物質で形成されたものである。このような構成とすることで、不要波を抑えることができるとともに、温度特性を向上することができる。また、製造時に研磨工程が不要であるため、製造が容易であるとともに製造コストを削減することができる。
また、本発明の弾性波素子の製造方法は、圧電基板と、前記圧電基板上に形成された櫛歯型の電極と、前記電極を被覆するように形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成され、前記絶縁層よりも音速が遅い物質で構成された変位調整膜とを備えた弾性波素子の製造方法であって、前記圧電基板上に前記電極を形成する工程と、前記圧電基板上に、前記電極を被覆するように前記絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層上に前記変位調整膜を形成する工程とを含むものである。このような方法によれば、製造時に研磨工程が不要であるため、製造が容易であるとともに製造コストを削減することができる。
また、本発明の通信モジュールは、上記弾性波素子を備えたものである。
また、本発明の通信装置は、上記通信モジュールを備えたものである。
(実施の形態)
〔1.弾性波素子の構成〕
図1は、実施の形態1における弾性波素子の構成を示す。図1において、弾性波素子1は、圧電基板14上に櫛形のIDT電極13が形成され、さらにIDT電極13を覆うようにSiO2膜12が形成されている。本実施の形態では、さらにSiO2膜12の上部に変位調整膜11が形成されている。変位調整膜11は、SiO2膜12を形成する物質よりも音速が遅い物質の単層膜か、SiO2膜12を形成する物質よりも音速が遅い物質を主成分とする積層膜により形成されている。例えば、変位調整膜11は、金(Au),銀(Ag),白金(Pt),タンタル(Ta),銅(Cu),タングステン(W),チタン(Ti),ニッケル(Ni)のうちのいずれかの単層膜か、いずれかの物質を主成分とする積層膜により形成されていることが好ましい。特に、Ta及びWは、SiO2の音速に近い音速を有するため、共振周波数の変動が少なく好ましい。また、Tiは、SiO2との密着性に優れているため好ましい。なお、SiO2膜12は、絶縁層の一例である。
通常の物質の線膨張係数は正で、一般的な製法を用いて弾性波素子を形成すると、その弾性波素子のTCFは負となり、素子の温度が変化すると特性が変動してしまう。そのため、TCFが正であるSiO2と組み合わせてTCFを0に近くなるようにしている。ところが、TCFを改善するためにSiO2膜の膜厚を厚くすると、前述の図18に示すように不要波のレベルが大きくなる。すなわち、TCFと不要波のレベルとの間には、トレードオフの関係がある。
図2Aは、変位調整膜11がAuで形成され、その厚さを1nmとした時の主応答の共振周波数のエネルギーの分布を示す。図2Bは、同様の構成における反共振周波数のエネルギー分布を示す。図2Cは、同様の構成における不要波の共振周波数でのエネルギー分布を示す。図3A〜図3Cは、変位調整膜11の膜厚を10nmとした時の主応答の共振周波数(図3A)、反共振周波数(図3B)、不要波の共振周波数(図3C)でのエネルギー分布を示す。図4A〜図4Cは、変位調整膜11の膜厚を30nmとした時の主応答の共振周波数(図4A)、反共振周波数(図4B)、不要波の共振周波数(図4C)でのエネルギー分布を示す。各図において、領域21は変位調整膜11におけるエネルギー分布、領域22はSiO2膜12におけるエネルギー分布、領域23はIDT電極13におけるエネルギー分布、領域24は圧電基板14におけるエネルギー分布を示す。
図2A及び図2Bに示すように、変位調整膜11が薄い場合は、主応答の共振周波数及び反共振周波数でのエネルギーが高い領域が、SiO2膜12の領域22と圧電基板14の領域24との界面近傍まで到達しているが、図4A及び図4Bに示すように、変位調整膜11が厚い場合は、主応答の共振周波数及び反共振周波数でのエネルギーが高い領域が、弾性波素子1の表面(変位調整膜11の領域21)に集中する。これは、SiO2の音速よりもAuの音速の方が遅いためである。例えば、シリコンカーバイト(SiC)のように、SiO2の音速よりも音速が速い物質で変位調整膜11を形成した場合は、逆にエネルギーが高い領域が圧電基板14の内部側に移動し、圧電基板14の線膨張係数の影響度が高くなり、TCFが劣化する。図5に示すように、Auを10nmの膜厚で形成した場合とSiCを10nmの膜厚で形成した場合とを比較すると、Auを形成した方がTCFが改善される。すなわち、変位調整膜11をAuで形成した場合、応答時の共振周波数及び反共振周波数のエネルギーが高い領域が弾性波素子1の表面に集中するため、圧電基板14の線膨張係数の影響度が低くなり、TCFが改善される。
なお、図5は、変位調整膜11を膜厚5nmのAuで形成した場合、膜厚10nmのAuで形成した場合、膜厚20nmのAuで形成した場合、膜厚10nmのSiCで形成した場合、変位調整膜11を形成しない場合(従来公知例)の、SiO2膜12の膜厚とTCFとの関係を示す。図5に示すグラフにおいて、横軸はSiO2膜12の膜厚である。
ところが、図6に示すように、SiO2膜12の膜厚を同一として不要波のレベルを比較した場合、SiO2膜12上に変位調整膜11を形成することにより不要波のレベルが大きくなる。これは、エネルギーが高い領域が弾性波素子1の表面に移動し、不要波が発生しやすくなるためである。なお、図6は、図5に示す変位調整膜11の各条件における、SiO2膜12の膜厚と不要波との関係を示す。
しかし、図7及び図8に示すように、同じTCFで比較すると、SiO2膜12の膜厚を薄膜化できるので、不要波は改善されることがわかる。図示の例では、TCFがゼロに近いほど良いので、Auを膜厚10nmで形成する構成が最も良い。なお、図7は、図5に示す変位調整膜11の各条件における、共振周波数のTCFと不要波のレベルとの関係を示す。また、図8は、図5に示す変位調整膜11の各条件における、反共振周波数のTCFと不要波のレベルとの関係を示す。
また、変位調整膜11の膜厚を10nmとし、変位調整膜のヤング率と密度とを(表2)に示す条件で変化させ、不要波の大きさを測定した。共振周波数のTCFが0ppm/℃の時の不要波の大きさは、図9〜図11に示すような分布になり、変位調整膜11を音速が遅い物質で形成するほど不要波が抑制されることがわかる。また、変位調整膜11の膜厚は、最適値があることがわかる。
Figure 2009078089
なお、図9及び図11は、変位調整膜11を様々な物質で形成した場合の、変位調整膜11の膜厚と不要波の大きさとの関係を示す。図10は、変位調整膜11を様々な物質で形成した場合の、変位調整膜11の音速と不要波の大きさとの関係を示す。図9及び図10に示す測定結果が得られた測定に用いた物質は、WSSTレジスト、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、タンタル(Ta)、銅(Cu)、タングステン(W)、チタン(Ti)である。図9に示す測定結果が得られた測定では、上記物質に加えてAuと密着層(Ti1、Ti2、Ti3)との積層膜についても測定を行った。また、図11に示す測定結果が得られた測定に用いた物質は、Au、Ti、AuとTiとの積層膜である。また、ニッケル(Ni)についても測定を行い、(表2)に示すようにSiO2よりも音速が遅いことを確認した(図9及び図11へのプロットは省略)。
以上のように、SiO2膜12上に、SiO2膜12の音速よりも遅い音速を有する変位調整膜11を形成したことにより、エネルギーが弾性波素子1の表面に集中することになる。よって、圧電基板14の線膨張係数の影響が少なくなり、TCFを改善することができる。また、SiO2膜12を薄くすることができるので、不要波の発生を抑えることができる。
なお、本実施の形態では、SiO2膜12は単層としたが、IDT電極13と略等しい膜厚に形成された第1の絶縁層(例えばSiO2膜)と、第1の絶縁層を被覆するように形成された第2の絶縁層(例えば第1の絶縁層と同じSiO2膜)との積層構造としても、同様の効果が得られる。このように構成することで、製造時の研磨工程が不要になるため、製造コストを削減することができる。
〔2.弾性波素子の製造方法〕
図12A〜図12Fは、本実施の形態の弾性波素子の製造工程を示す断面図である。図12A〜図12Fに示す製造工程において用いた変位調整膜11は、AuとTiの積層膜である。
まず、図12Aに示す圧電基板14を用意する。
次に、図12Bに示すように、圧電基板14の表面上に密着層であるTi膜13aを介し、Ti膜13a上にCu膜13bを形成する。なお、本実施の形態では、Ti膜13aの膜厚は20nmとし、Cu膜13bの膜厚は100nmとした。
次に、図12Cに示すように、Ti膜13a及びCu膜13b上に電極パターニング用のフォトレジストを形成し、フォトリソグラフィーによるパターニングを行う。次に、Ti膜13a及びCu膜13bをエッチング処理し、フォトレジストを除去し、IDT電極13を形成する。
次に、図12Dに示すように、Ti膜13a及びCu膜13bを覆うように、圧電基板11上にSiO2膜12を形成する。本実施の形態では、SiO2膜12はCVD法(化学蒸着法)を用いて、膜厚が550nmになるまで成長させて成膜した。成膜後のSiO2膜12は、IDT電極12の上部位置に突起部12aが形成される。
次に、図12Eに示すように、SiO2膜12の突起部12aを除去し、SiO2膜12の表面を平坦化する。なお、本実施の形態では、平坦化処理にはCMP法(化学機械研磨法)を用いた。
次に、図12Fに示すように、SiO2膜12の表面に密着層であるTi膜11bを形成し、Ti膜11b上にAu膜11aを蒸着処理によって成長させ、変位調整膜11を形成する。なお、本実施の形態では、Au膜11aの膜厚を15nm、Ti膜11bの膜厚を5nmとした。
また、SiO2膜12の膜厚が0.3μm以上の時には、変位調整膜11の電位の影響が少ないので、Au/Tiの積層膜で構成された変位調整膜11はアースまたはフローティングのいずれでも特性に差は見られない。また、図9に示すように、Auの代わりにAg,Pt,Ta,Cu,W,Ti,WSSTレジスト、Niなどを用いる構成であっても、本実施の形態と同様の製造方法で製造することができる。また、本実施の形態では、Au/Tiの積層膜で構成された変位調整膜11を形成する製造方法について説明したが、単層の変位調整膜11を形成する場合も同様の製造方法を用いることができる。
なお、本実施の形態では、SiO2膜12は単層としたが、IDT電極13と略等しい膜厚に形成された第1の絶縁層(例えばSiO2膜)と、第1の絶縁層を被覆するように形成された第2の絶縁層(例えば第1の絶縁層と同じSiO2膜)との積層構造としてもよい。その場合の製造方法は、図12Cに示すIDT電極13を形成後、IDT電極13間にIDT電極13の膜厚に略等しい第1の絶縁層を形成する。この時、IDT電極13及び第1の絶縁層の表面は略平面である。次に、IDT電極13及び第1の絶縁層を被覆するように第2の絶縁層を形成する。このように製造することで、図12Dに示すような突起部12aが形成されないため、突起部12aの除去工程が不要になる。よって、研磨作業が不要になるため、製造が容易になるとともに製造コストを削減することができる。
〔3.通信モジュールの構成〕
図13は、本実施の形態の弾性波素子を備えた通信モジュールの一例を示す。図13に示すように、デュプレクサー52は、受信フィルタ54と送信フィルタ55とを備えている。また、受信フィルタ54には、例えばバランス出力に対応した受信端子62a及び62bが接続されている。また、送信フィルタ55には、パワーアンプ63が接続されている。ここで、受信フィルタ54及び送信フィルタ55には、本実施の形態における弾性波素子1が含まれている。
受信動作を行う際、受信フィルタ54は、アンテナ端子61を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、受信端子62a及び62bから外部へ出力する。また、送信動作を行う際、送信フィルタ55は、送信端子64から入力されてパワーアンプ63で増幅された送信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、アンテナ端子61から外部へ出力する。
なお、図13に示す通信モジュールの構成は一例であり、他の形態の通信モジュールに本発明の弾性波素子あるいはデュプレクサーを搭載しても、同様の効果が得られる。
〔4.通信装置の構成〕
図14は、本実施の形態の弾性波素子を備えた通信装置の一例として、携帯電話端末のRFブロックを示す。また、図14に示す構成は、GSM(Global System for Mobile Communications)通信方式及びW−CDMA(Wideband Code Divition Multiple Access)通信方式に対応した携帯電話端末の構成を示す。また、本実施の形態におけるGSM通信方式は、850MHz帯、950MHz帯、1.8GHz帯、1.9GHz帯に対応している。また、携帯電話端末は、図14に示す構成以外にマイクロホン、スピーカー、液晶ディスプレイなどを備えているが、本実施の形態における説明では不要であるため図示を省略した。ここで、受信フィルタ54,76,77,78,79,送信フィルタ55には、本実施の形態における弾性波素子1が含まれている。
まず、アンテナ71を介して入力される受信信号は、その通信方式がW−CDMAかGSMかによってアンテナスイッチ回路72で、動作の対象とするLSIを選択する。入力される受信信号がW−CDMA通信方式に対応している場合は、受信信号をデュプレクサー52に出力するように切り換える。デュプレクサー52に入力される受信信号は、受信フィルタ54で所定の周波数帯域に制限されて、バランス型の受信信号がLNA73に出力される。LNA73は、入力される受信信号を増幅し、LSI75に出力する。LSI75では、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御する。
一方、信号を送信する場合は、LSI75は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ74で増幅されて送信フィルタ55に入力される。送信フィルタ55は、入力される送信信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させる。送信フィルタ55から出力される送信信号は、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
また、入力される受信信号がGSM通信方式に対応した信号である場合は、アンテナスイッチ回路72は、周波数帯域に応じて受信フィルタ76〜79のうちいずれか一つを選択し、受信信号を出力する。受信フィルタ76〜79のうちいずれか一つで帯域制限された受信信号は、LSI82に入力される。LSI82は、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御する。一方、信号を送信する場合は、LSI82は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ80または81で増幅されて、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
〔5.実施の形態の効果、他〕
本実施の形態によれば、SiO2膜12上に、SiO2膜12を形成している物質よりも音速が遅い物質で構成された変位調整膜11を形成することにより、不要波の発生を抑えることができるとともに、TCFを向上することができる。よって、信頼性が高い弾性波素子、通信モジュール、通信装置を実現することができる。
なお、本発明の弾性波素子またはそれを備えた通信モジュールを適用可能な通信装置は、携帯電話端末、PHS端末などがあるが、これらに限定されない。
本発明は、弾性波を応用したデバイスの1つとして弾性表面波素子(SAWデバイス:Surface Acoustic Wave Device)などの弾性波素子に有用である。また、そのような弾性波素子を備えた通信モジュール、通信装置に有用である。

Claims (8)

  1. 圧電基板と、
    前記圧電基板上に形成された櫛歯型の電極と、
    前記電極を被覆するように形成された絶縁層とを備えた弾性波素子であって、
    前記絶縁層上に形成された変位調整膜を備え、
    前記変位調整膜は、前記絶縁層を形成する物質よりも音速が遅い物質で形成された、弾性波素子。
  2. 前記電極は、
    金属もしくは該金属を主成分とする合金、または金属と他の金属とから構成された積層膜で構成された、請求項1記載の弾性波素子。
  3. 前記絶縁層がSiO2により形成され、
    前記変位調整膜は、SiO2よりも音速が遅い物質の単層膜、またはSiO2よりも音速が遅い物質のうちいずれかの物質を主成分とする積層膜により形成されている、請求項2記載の弾性波素子。
  4. 前記変位調整膜は、
    Au,Ag,Pt,Ta,Cu,W,Ti,Niのうちいずれかの単層膜、またはAu,Ag,Pt,Ta,Cu,W,Ti,Niのうちいずれかの物質を主成分とする積層膜により形成されている、請求項3記載の弾性波素子。
  5. 圧電基板と、
    前記圧電基板上に形成された櫛歯型の電極と、
    前記電極間において、前記電極と略等しい膜厚に形成された第1の絶縁層と、
    前記電極及び第1の絶縁層を被覆するように形成された第2の絶縁層とを備えた弾性波素子であって、
    前記第2の絶縁層上に形成された変位調整膜を備え、
    前記変位調整膜は、前記第2の絶縁層を形成する物質よりも音速が遅い物質で形成された、弾性波素子。
  6. 圧電基板と、
    前記圧電基板上に形成された櫛歯型の電極と、
    前記電極を被覆するように形成された絶縁層と、
    前記絶縁層上に形成され、前記絶縁層よりも音速が遅い物質で構成された変位調整膜とを備えた弾性波素子の製造方法であって、
    前記圧電基板上に前記電極を形成する工程と、
    前記圧電基板上に、前記電極を被覆するように前記絶縁層を形成する工程と、
    前記絶縁層上に前記変位調整膜を形成する工程とを含む、弾性波素子の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の弾性波素子を備えた、通信モジュール。
  8. 請求項7に記載の通信モジュールを備えた、通信装置。
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