本開示の特徴および利点は、例として開示される実施形態に関する以下の詳細な説明と添付図の参照とにより明らかになるであろう。
種々の実施形態による、PBAWデバイス例の横断面図である。
種々の実施形態による、オイラー角(λ,μ,θ)を示す斜視図である。
種々の実施形態による、スプリアスモードを有していても有していなくてもよいPBAWデバイス通過帯域内の電気的応答例を示すグラフである。
種々の実施形態による、PBAWデバイスの通過帯域と阻止帯域、およびフィルタの並列共振器のうちの1つのBrillion図に対する関係を示す図である。
種々の実施形態による、銅電極を用いた共振器での共振係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、銅電極を用いた共振器でのカットオフマージン係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、銅電極を用いた共振器での結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、銅電極を用いた共振器でのスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、金電極を用いた共振器での共振係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、金電極を用いた共振器での結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、金電極を用いた共振器でのスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、タングステン電極を用いた共振器での共振係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、タングステン電極を用いた共振器での結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、タングステン電極を用いた共振器でのスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、電極高さと電極周期との関係例を示すグラフである。
種々の実施形態による、デューティファクタが40%の金電極を用いた共振器でのスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、デューティファクタが45%の金電極を用いた共振器でのスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、デューティファクタが50%の金電極を用いた共振器でのスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、デューティファクタが55%の金電極を用いた共振器でのスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、デューティファクタが60%の金電極を用いた共振器でのスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、18°y回転−x伝搬基板上の、金電極を用いた共振器での結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、18°y回転−x伝搬基板上の、金電極を用いた共振器でのスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、20°y回転−x伝搬基板上の、金電極を用いた共振器での結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、20°y回転−x伝搬基板上の、金電極を用いた共振器でのスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、22°y回転−x伝搬基板上の、金電極を用いた共振器での結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、22°y回転−x伝搬基板上の、金電極を用いた共振器でのスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、24°y回転−x伝搬基板上の、金電極を用いた共振器での結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、24°y回転−x伝搬基板上の、金電極を用いた共振器でのスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数のY−回転基板と電極厚みとに対する関係例を示すグラフである。
種々の実施形態による、周波数変動とY−回転基板との関係例を示すグラフである。
種々の実施形態による、結合係数とY−回転基板との関係例を示すグラフである。
種々の実施形態による、デューティファクタが40%の金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、デューティファクタが45%の金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、デューティファクタが50%の金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、デューティファクタが55%の金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、デューティファクタが60%の金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、金電極を用いた共振器の電極のデューティファクタとPBAWデバイスの層厚みとの関係例を示すグラフである。
種々の実施形態による、金電極を用いた共振器におけるデューティファクタと電極周期との関係例を示すグラフである。
種々の実施形態による、金電極を用いた共振器におけるデューティファクタと電極周期との関係例を示すグラフである。
種々の実施形態による、金電極を用いた共振器での、共振周波数のスプリアスフリー範囲の推定例を示すグラフである。
種々の実施形態による、金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、金電極を用いた共振器の周波数係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、金電極を用いた共振器の結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、金電極を用いた共振器の周波数係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、金電極を用いた共振器の結合係数例を示すグラフである。
種々の実施形態による、無線通信デバイス例のブロック図である。
種々の実施形態による、PBAWデバイスの製造プロセス例を示す図である。(詳細な説明)
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を成す添付図面を参照する。図面中、同じ符号は同じ部品を示し、本開示の主題が実施され得る実施形態が例示される。他の実施形態を用いることも可能であり、また、構造や論理的な変更が本開示の範囲を逸脱することなく可能であることは理解されるべきである。従って、以下の詳細な説明は制限的な意味合いで捉えられるものではなく、実施形態の範囲は、添付の請求項およびその均等物によって画定されるものである。
特許請求された主題の理解に最も有用な順番と方法で、種々の操作が複数の別個の操作として説明される。しかしながら、説明の順番は、これらの操作が必ず順番依存であることを示唆するように解釈されるべきでない。これらの操作は、特に提示の順番に行われなくてもよい。記載の実施形態と異なる順番で、記載された操作を行ってもよい。追加の実施形態では、種々の追加の操作を行ってもよく、およびまたは記載の操作を省略してもよい。
本開示の目的のために、「AおよびまたはB」と「AまたはB」は、(A)、(B)または(AおよびB)を意味する。本開示の目的のために、「A、BおよびまたはC」は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、BおよびC)を意味する。
以下の説明では、「ある実施形態では」または「実施形態では」が使用されるが、これらはそれぞれ、1つまたは複数の同じであっても異なっていてもよい実施形態を指す。また、本開示の実施形態に関して使用される「備える」、「含む」、「有する」などは同意語である。また、本明細書での温度、質量、体積、時間間隔、範囲、その他の測定値、量および数値表現はいずれも、明らかにそうでないことが明記されない限り、近似であり、正確な値あるいは臨界値ではないものと意図されることも理解されるべきである。適切な場合には、測定された、約、実質的に、本質的に、含み、などの慣用の近似や相対用語、程度用語を用いて種々の実施形態を説明することが妥当であり得る。
一部の実施形態では、図3に関して以下に非常に詳しく説明するように、PBAWデバイスは、特定の通過帯域を有するフィルタとして作用させてもよい。すなわち、PBAWデバイスは、特定の周波数帯の信号を通過させるように作用してもよい。しかしながら、ある場合には上記のように、PBAWデバイスの性能に悪影響を及ぼすスプリアスモードが該通過帯域に導入され得る。スプリアスモードは、通過帯域内のバルク弾性波(BAW)の放射などの要因によるものであり得る。
具体的には、一部のPBAWデバイスでは、実質的にスプリアスモードの影響がない広いフィルタ帯域幅を有する大きな結合係数を維持することが困難であり得る。例えば、一部のPBAWデバイスでは、弾性波の伝搬方向がx方向から反れるように共振器を回転させることによって、スプリアスモードを低減し得る。しかしながら、この回転によって、PBAWデバイスの結合係数が低減し得る。他のPBAWデバイスでは、共振器の電極周期の変動のために、PBAWデバイスの各共振器に対してスプリアスモードの影響が実質的にない状態を維持することが困難であり得る。
一部の既存のPBAWデバイスは、携帯電話用途での使用を好適なものとする、好都合なせん断水平偏波(SH)型境界弾性波を有し得る。PBAWデバイスは一般に、例えば、図1に関連して以下に説明する基板と誘電体オーバーコート間などの2つの材料間に配置された、せん断波速度が小さい電極で構成され得る。一部のPBAWデバイスでは、下記に詳細に説明する電気機械結合係数K2は0〜16%であり得る。これらのPBAWデバイスは、ある場合には、36°〜46°y回転−x伝搬タンタル酸リチウム(LiTaO3)基板で構成され得る漏洩表面弾性波(LSAW)フィルタの正規化帯域幅より0.67〜1.85倍大きな正規化帯域幅を有し得る。LiTaO3を有するLSAWフィルタは、LT−LSAWフィルタとも呼ばれ得る。さらに、一部のPBAWデバイスの周波数温度特性(TCF)は、0〜約−25ppm/℃あり得る。
しかしながら、上記のPBAWデバイスの一部のものには、基板の表面あるいは基板の層間の界面に誘導され得る種々の分極モードが存在するという問題があり得る。これらの種々の音響形波動(acoustic mode)はPBAWデバイスの通過帯域に存在し得、上記のように、スプリアス歪みを誘導し得る。上記した現在のPBAWデバイスの構成では、スプリアスフリーな通過帯域を有するフィルタは構成し得ない。既存のPBAWデバイスがそのように制限されている理由の1つは、それらが一般的にそうであるように、電極厚みとオーバーコート厚みとが固定され、電極周期が数パーセント以上変動すると、スプリアス応答が少なくとも一部の共振器で出現し得るためである。
本開示の実施形態は、PBAWデバイスのスプリアス応答を低減あるいは除去するように、より好適に構成され得る。実施形態では、該デバイス上の共振器の電極のデューティファクタを共振器の電極周期に基づいて調節することにより、PBAWデバイスのスプリアスモードを抑制し得る。具体的には、より大きな周期の電極を有する共振器のデューティファクタはより大きくしてもよく、より小さな周期の電極を有する共振器のそれはより小さくしてもよい。この方法でスプリアスモードを制御することによって、もたらされるPBAWデバイスは、とりわけ、潜在的なハーメチックパッケージ、ベアダイとほぼ同様のサイズ、低温度ドリフト、下記に詳細に説明するように、約16%のK2と同様の比較的大きな結合係数およびスプリアスフリーな広通過帯域などの利点を有し得る。
まず図1を参照して、PBAWデバイス10は、弾性波を伝搬させるための単結晶圧電基板などの基板12を備えていてもよい。実施形態では、基板12の表面22上の第1電極パターン18および第2電極パターン20によって、第1共振器14および第2共振器16を形成してもよい。PBAWデバイス10は、正の周波数温度特性(TCF)を有する誘電体オーバーコート24を備えていてもよい。実施形態では、誘電体オーバーコート24は、厚みhox26を有してもよく、酸化シリコン(SiO2)で構成してもよい。他の実施形態では、誘電体オーバーコート24は他の誘電材料であってもよい。図1に示したPBAWデバイス10などの実施形態では、第1共振器14と第2共振器16は音響経路(acoustic path)を共有してもよい。しかしながら、2個以上の共振器を有するPBAWデバイスの他の実施形態では、共振器は音響経路を共有しなくてもよい。
実施形態では、誘電体オーバーコート24は、共振器14と共振器16の電極30および電極30a間およびそれらの上にあってもよい。共振器14は、電極周期28(p1とも呼ぶ)を有していてもよく、それは、電極30の幅32(a1とも呼ぶ)と隣接する電極30間のスペースとを示し得る。共振器16は、第1共振器18と共に誘電体オーバーコート24を共有し、電極周期28A(p2とも呼ぶ)と、電極幅が32A(a2とも呼ぶ)の電極30Aとを有する。実施形態では、電極30などの電極は高さhmを有してもよい。
実施形態では、銅(Cu)、金(Au)およびタングステン(W)電極が説明され得るが、それらが電極30あるいは30Aと同様であってもよい。特定の電極の態様を説明する場合、その材料は上記のものの内の1つで表示され得る。一般的な電極の態様を説明する場合、その材料は「m」で表示され得る。例えば、hmは一般的な電極の高さであってもよく、hcuは銅電極の高さを指していてもよい。hmの例は、一般的な電極30および30aの高さについて議論する図1に見られ得る。同様に、表示「ox」は、誘電体オーバーコート24を指すために使用され得る。その例として、hox26が図1に見られ得る。
他の実施形態では、PBAWデバイス10は、単独の共振器、例えば、共振器14または共振器16だけを備えていてもよい。あるいは、実施形態によっては、図49に関してさらに詳細に説明するように、それぞれ関連する電極周期と幅を有する3個以上の共振器を備えていてもよい。実施形態では、PBAWデバイス10は、誘電体オーバーコート24を覆う付加的な材料40をさらに備えていてもよい。実施形態では、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)およびまたは他の材料で付加的な材料40を構成してもよい。実施形態では、誘電体オーバーコート24より大きなせん断波速度を有するように、付加的な材料40を特定的に選択してもよい。付加的な材料40を通過するより大きなせん断波速度を有することにより、付加的な材料40の頂面42上の音響運動(acoustic motion)を抑制し得る。実施形態では、付加的な材料40は、図1に示すように平坦であってもよいが、他の実施形態では、丸みを帯びているなどの他の形状であってもよい。
図48は、PBAWデバイス10などのPBAWデバイスの製造方法を示す。4800において、基板12などの基板をまず堆積してもよい。次に4810において、電極30または30Aなどの1つまたは複数の電極を基板12の表面22上に堆積してもよい。電極堆積後に、4820において、誘電体オーバーコート24などの誘電体オーバーコートを、実質的に電極30と30Aおよび基板12上に堆積してもよい。最終的に4830において、付加的な材料40を誘電体オーバーコート上に堆積してもよい。該堆積ステップの1つまたは複数を、これに限定されないが、ラミネーション、スプレー、エッチングなどを含む任意の手段または方法を用いて行なってもよく、また、これらのステップは、フォトレジスト層、ソルダレジスト層あるいは他の層の1つまたは複数の使用を含んでいてもよい。
種々の実施形態では、PBAWデバイス10の効率的な作動が促進されるように、電極周期28と28Aおよび電極幅32と32A間の関係を特定的に構成してもよい。効率的な作動とは、例えば、高い電気機械結合係数、低減された周波数温度係数(TCF)、およびまたは堅調なスプリアスモードの抑制などの発揮が含まれ得る。一部の実施形態では、電極幅32と電極周期28との関係は、各電極周期28(例えばp1)が電極の幅と周期とのそれぞれの比(例えばa1/p1)と関連するものであってもよい。電極の幅と周期との比を「デューティファクタ」と呼んでもよい。したがって、例えば、ある実施形態は、それぞれが電極の幅と周期とのそれぞれの比に関連した複数の異なる電極周期を有する電極を備えていてもよい。図1に示す実施形態は一般に、共通の電極周期28および28Aと幅32および32Aとを有する電極30および30Aを備えた2つの共振器14および16を示す。しかしながら、他の実施形態は、異なる数の共振器を有していてもよく、その中の1つまたは複数が異なる電極周期およびまたは電極幅を有していてもよい。
一部の実施形態では、以下に詳細に説明するように、基板12はy−回転であってもよい。図2は、y−回転に対する参照を提供し得るオイラー角の例を示す。これらの実施形態では、せん断波はx−方向に伝搬し得る。一部の実施形態では、基板12をy回転−x伝搬ニオブ酸リチウム(YX−LN)基板と呼んでもよいが、上記のように、他の実施形態では、基板12は他の成分、材料あるいは化合物であってもよい。
上記のように一部の実施形態では、PBAWデバイス10には、例えば図3に見られるように、バンドパス応答内にスプリアスモードが存在するという問題があり得る。実施形態では、電極厚みhmと誘電体オーバーコート厚みhoxが固定された場合、スプリアスモードが生じ得るが、電極周期は、PBAWデバイス10の共振器間で変動する。ライン50は、PBAWデバイス10内のスプリアスモードの応答として、バンドパスフィルタ中の鋸歯状パターンの存在を示す。該スプリアスモードによって、ある周波数、例えば図3の約928MHzにおいて、PBAWデバイス10中の信号応答が著しく低下し得る。対照的に、ライン55は、スプリアスモードが抑制されているPBAWデバイス10のより好適な応答を示す。スプリアスモードが抑制されている場合、フィルタ応答はより滑らかであり、より予測可能であることが分かるであろう。実施形態では、ライン55で示されるような、ある程度の抑制は、本明細書でさらに詳細に説明されるように、電極厚みと誘電体オーバーコート厚みを適切に選択し組み合わせることによって実現され得る。
図49は、PBAW10などのPBAW4900のハイレベルな例を示す。実施形態では、PBAW4900は、共振器14または16と同様なものであり得る直列共振器4905や、共振器14または16と同様なものであり得る並列共振器4910などの数個の共振器を有していてもよい。一般に、直列共振器4905のそれぞれは、同様の電極周期およびまたは周波数特性を有していてもよい。同様に、並列共振器4910のそれぞれは、同様の電極周期およびまたは周波数特性を有していてもよい。ここでは、ある数および構成の直列共振器4905と並列共振器4910が示されているが、他の実施形態は、違った数及び構成の直列および並列共振器4905および4910を備えていてもよい。
実施形態では、共振器のそれぞれは、共振周波数fRおよび反共振周波数fAを有していてもよい。実施形態では、並列共振器4910はすべて、互いに同様の共振周波数および反共振周波数を有していてもよく、直列共振器4905はすべて、互いに同様の共振周波数および反共振周波数を有していてもよい。実施形態では、直列共振器のfRおよびfA間の差は、並列共振器のfRおよびfA間の差とほぼ等しくてもよい。一部の実施形態では、並列共振器のfAは、直列共振器のfRとほぼ等しくてもよい。
図4は、上部スカート(skirt)(2*fA−fR)と下部スカートfRとを有するPBAWデバイス10のスプリアスモードフリーな通過帯域60の例を示す。図4では、図示のように、fAおよびfRは、例えば並列共振器4910などの、1つまたは複数の並列共振器の反共振周波数と共振周波数に対応していてもよい。一部の実施形態において、ここでは(2*fA−fR)で表される並列共振器の上部スカートは、例えば直列共振器4905などの、PBAWデバイス10の直列共振器に対してはfAと表示してもよい。
図4は、フィルタの下部スカートを形成する並列共振器4910に対するブリルアン(Brillouin)領域例も示す。ブリルアン領域の波数はDで表わされる。図4では、PBAWデバイス10のブリルアン領域阻止帯域65の例を示す。阻止帯域65はIm(D)で表示され、下部阻止帯域端fRと上部阻止帯域端fU間に存在する。図4では、阻止帯域65のわずかに上方に、基板内に下方へ伝搬するBAW内にPBAWが散乱することで形成されるカットオフ周波数fBが示される。
実施形態では、通過帯域60の上部スカート(2*fA−fR)が、PBAWデバイスカットオフfBおよび上部阻止帯域端fUより小さいことが望ましいものであり得る。例えば、上部スカート(2*fA−fR)をPBAWデバイスカットオフfBおよび上部阻止帯域端fUより小さく設定することで、PBAWデバイス10の過度の損失およびまたは通過帯域歪を防止あるいは低減してもよい。一般に、通過帯域60の上部スカート(2*fA−fR)がPBAWデバイスカットオフfBおよびまたは上部阻止帯域端fUのいずれかより大きい場合、PBAWデバイス10にスプリアスモードが導入され得る。
一部の実施形態では、音響エネルギー(acoustic energy)を共振器14または16などの共振器内に縦方向に閉じ込めるために、また、阻止帯域の上端に関連するスプリアスモードがPBAWデバイス10の通過帯域に出現するのを防止するために、下部スカートを形成する並列共振器の阻止帯域中心fCを、これらの同様な共振器の反共振周波数fAより大きく設定することも望ましいものであり得る。実施形態では、基板12のy−回転および共振器14および16の電極30および30Aのデューティファクタの1つまたは複数に基づいて、fR、fA、fUおよびfBを選択してもよい。実施形態では、カットオフマージンΔfCは、ΔfC=fB−(2*fA−fR)、またはカットオフ周波数fBと上部通過帯域スカート(2*fA−fR)間の差として定義してもよい。
ここでの実施形態は、有限要素法/境界要素法(FEM/BEM)あるいは有限要素法/スペクトル領域解析(FEM/SDA)を用いた分析を適用して、YX−LN基板上の所望モードおよびスプリアスモードの挙動を求めるものとして示される。特に、FEM/BEM方法およびまたはFEM/SDA方法の1つまたは複数を用いて、各モードの結合と速度の依存性を推定してもよい。
以下の図では、説明した曲線(等高線:contour)が示される。一般に、また、そうでないことが明記されない限り、曲線は、図の少なくともy軸およびx軸上の変数の関数の結果として解釈され得る。少なくとも一部の図では、一点鎖線(−・−・−)は、図中のカットオフマージンが0に近いかまたは0である点を表わす。また、少なくとも一部の図では、破線(−−−)は、スプリアスモードが0かまたは0に近い点を表す。
電極物質
実施形態では、PBAWデバイス10は、電極30および30Aの材料の選択によって、図4に関して上記に説明した通過帯域60の望ましい特性の少なくとも一部と、その後のスプリアスモード除去または低減と、を達成してもよい。具体的には、共振器の電極の電極高さhmまたは周期pの1つまたは複数を設定すると、次に、電極を構成する材料を変えてもよい。
図5は、一実施形態での、銅電極を用いた共振器での共振係数例を示す。該係数は(fR*p/vB)単位で示される。fRは共振器の共振周波数、pは共振器の銅電極の周期、vBは共振器内のバルク波のせん断速度であり、一部の実施形態では、約4,029.3m/sであり得る。特に、図5の値は、正規化単位または無単位で与えられる。つまり、値0.4は、(hox/p)単位のオーバーコート厚みとhcu/p単位の電極厚みに対して、バルク波のせん断速度で割った共振周波数/周波数が、0.4、0.41、0.42あるいは図5に示す他の数値の1つであり得ることを表す。
図6は、一実施形態での、銅電極を用いた共振器でのカットオフマージン係数例を示す。該係数は(ΔfC*p/vB)単位で示される(ΔfC:共振器のカットオフマージン、p:は銅電極の周期、vB:上記のバルク波速度)。図6に示される値は無単位であり、図5に関連して上記のように解釈される。
図7は、一実施形態での、銅電極を用いた共振器での結合係数K2例を示す。該係数は一般にパーセントで表され、12.5は12.5%に相当し、13は13%に相当する。実施形態では、該パーセントは、K2の値を100で割ったパーセントであると解釈されてもよい。つまり、12.5%はK2=0.125に相当し得る。実施形態では、結合係数が高いほど望ましく、PBAWデバイス10と銅電極のより望ましい構成に関連し得る。
図8は、一実施形態での、銅電極を用いた共振器でのスプリアスモード結合係数例を示す。該スプリアスモード結合係数はK2で示され、(log10)単位で表される。言い換えれば、−5の値はlog10(K2)=−5、すなわちK2=0.0001として解釈され得る。上記のように、スプリアスモードはPBAWデバイス10の性能に悪影響を与え得るため、スプリアスモード結合係数ができるだけ低いことが望ましいものであり得る。
実施形態では、銅電極の密度Δcuは約8.94kg/m3であってもよい。また、銅電極のせん断弾性率ccuは約48GPaであってもよい。例えば図8では、共振器内の銅電極のhcu/pは、hox/pが1.5の時に約0.259であることがわかるであろう。
図9は、上記の図5と同様な方法における一実施形態での、金電極を用いた共振器での周波数係数例を示す。同様に、図10は、上記の図7と同様な方法における一実施形態での、金電極を用いた共振器での結合係数例を示す。同様に、図11は、上記の図8と同様な方法における一実施形態での、金電極を用いた共振器でのスプリアスモード結合係数例を示す。実施形態では、金電極の密度Δauは約19.3kg/m3であってもよい。また、金電極のせん断弾性率cauは約27GPaであってもよい。例えば図11では、共振器内の金電極のhau/pは、hox/pが1.5の時に約0.085であることがわかるであろう。
図12は、上記の図5と同様な方法における一実施形態での、タングステン電極を用いた共振器での周波数係数例を示す。同様に、図13は、上記の図7と同様な方法における一実施形態での、タングステン電極を用いた共振器での結合係数例を示す。同様に、図14は、上記の図8と同様な方法における一実施形態での、タングステン電極を用いた共振器でのスプリアスモード結合係数例を示す。実施形態では、タングステン電極の密度Δwは約19.25kg/m3であってもよい。また、タングステン電極のせん断弾性率cwは約161GPaであってもよい。例えば図14では、タングステン電極を用いた共振器内の電極のhw/pは、hox/pが1.5の時に約0.129であることがわかるであろう。
図5〜14に対する考察から、特に図8、図11および図14に対する考察から、スプリアスモードを低減または除去するように、電極厚みを電極周期で除した値hm/pを近似させてもよい。上記のように、hoxが1.5であってもよい実施形態では、hm/pは、
であってもよい。
実施形態では、cmは、上記のような金属電極のせん断弾性率であってもよい。coxは、上記のような誘電体オーバーコート24のせん断弾性率であってもよい。同様に、Δmは金属電極の密度であってもよく、Δoxは、上記のような誘電体オーバーコート24の密度であってもよい。実施形態では、coxは約32GPaであってもよく、Δoxは約2.2kg/m3であってもよい。上記のように、下付きcuが銅電極を表し、下付き−wがタングステン電極を表し、下付きauが金電極を表すように、下付きm(xm)表記を拡張してもよい。図15は、上記の式と図5〜14の曲線から、より具体的には上記のように、図8、図11およびまたは図14の曲線から求められるデータとの典型的な適合度を表わす。
上記のように、上式は、hox/pが1.5の時に最も適用可能である。他の実施形態では、誘電体オーバーコート24が薄ければ薄いほど、電極は厚くなり得る。言いかえれば、誘電体オーバーコート24の高さは、共振器内の電極高さに反比例し得、図8、図11およびまたは図14を参照して、上式を適切に修正してもよい。
デューティファクタ
実施形態では、電極30または30Aなどの共振器内の電極でのデューティファクタa/pは、PBAWデバイス10における該共振器により生じるスプリアスモードの抑制量に影響し得る。一部の実施形態では、電極高さhmは、PBAWデバイス上の共振器間で不変であってもよい。また、電極周期pも同様に、共振器内で、あるいは共振器間で不変であってもよい。従って、デューティファクタを変えてスプリアスモードを抑制し得るように、電極幅を変更してもよい。
図16は、一実施形態での、金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数のグラフ例を示す。図8に関する上記の係数と同様に、スプリアスモード結合係数はK2で示され(log10)単位で表される。図16に示す実施形態では、金電極のデューティファクタa/pは、0.40すなわち40%であってもよい。図17は同様に、この実施形態ではデューティファクタa/pが0.45すなわち45%であり得る金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数のグラフ例である。図18は同様に、この実施形態ではデューティファクタa/pが0.50すなわち50%であり得る金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数のグラフ例である。図19は同様に、この実施形態ではデューティファクタa/pが0.55すなわち55%であり得る金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数のグラフ例である。図20は同様に、この実施形態ではデューティファクタa/pが0.60すなわち60%であり得る金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数のグラフ例である。
Y−回転の影響
一部の実施形態では、基板12のy−回転は、PBAWデバイス10のスプリアスモードの存在または抑制に同様に影響し得る。図21は、一実施形態による基板12などの、18°y−回転YX−LN基板上における金電極を用いた共振器の結合係数のグラフ例である。結合係数は、図7に関する上記の結合係数と同様に解釈され得る。図22は、一実施形態による基板12などの、18°y−回転YX−LN基板上における金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数のグラフ例である。図8に関する上記の係数と同様に、スプリアスモード結合係数はK2で示され、(log10)単位で表わされる。
図21と同様に、図23、図25および図27は、一実施形態による基板12などの、20°、22°および24°y−回転YX−LN基板上における金電極を用いた共振器の結合係数のグラフ例である。図22と同様に、図24、図26および図28は、一実施形態による基板12などの、20°、22°および24°y−回転YX−LN基板上における金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数のグラフ例である。
図29は、図21、図23、図25および図27のデータをまとめたものと理解され得るグラフ例である。具体的には、図29は、hox/pがほぼ0の実施形態における基板12などの18°、20°、22°および24°y−回転YX−LN基板に対して、ほぼ0に近いスプリアスモード結合係数が実現され得る場合の電極厚み(hau/p)を示す。実施形態では、破線は、スプリアスモード結合係数が0に接近し得る場合の電極厚みの範囲を表わすと解釈され得る。
図30は、hox/pが1にほぼ等しい実施形態における基板12などのYX−LN基板における、y−回転の機能としてのPBAWデバイスに対する正規化周波数係数、例えば、図5に関する上記の正規化周波数係数を示すグラフ例である。具体的には、図4に関する上記のfB、fU、2*fA−fR、fAおよびfRに対する正規化係数を示す。約0.39〜0.5間の正規化周波数係数からわかるように、YX−LN基板のy−回転が18°〜24°間にある実施形態では、通過帯域歪は見られない。YX−LNのy−回転が約24°より大きい実施形態では、通過帯域歪が見られ得る。一部の実施形態では、該通過帯域歪は、PBAWデバイス10へのスプリアスモードの導入によるものであり得る。
図31は、金電極を用いた共振器の結合係数、例えば図7に関する上記の結合係数と、hox/pがほぼ1の実施形態での基板12などのYX−LN基板のy−回転との関係を示すグラフ例である。具体的には、図31には、例えば、図21、図23、図25および図27に示すような、スプリアスモード結合係数が最小であり得る結合係数が示され得る。
用途
図1を参照して、実施形態では、複数の周期28および28Aそれぞれを有する共振器14および16などの広範な共振器を用いて、PBAWデバイス10などのPBAWデバイスを構成してもよい。実施形態では、共振器14の周期28を、共振器14を備えるPBAWデバイス10の共振周波数fRに直接に関係付けてもよい。また、PBAWデバイス10の電極周期28および28Aを当デバイスの比帯域幅に比例的に関係付けてもよい。具体的には、PBAWデバイスの電極周期28および28Aの変動を、PBAWデバイス10の比帯域幅に比例的に関係付けてもよい。さらに、PBAWデバイス10の帯域幅を、PBAWデバイス10の結合係数、例えば、図7に関する上記の結合係数の1/4〜1/2に近似させてもよい。一部の実施形態では、最終的に、18°〜24°y−回転を有する基板12などのYX−LN基板を備えるPBAWデバイス10に対して、電極周期28および28Aを少なくとも共振器ごとの比帯域幅と同じ程度に変動させてもよい。ある場合には、この変動は4〜8%であってもよい。上記のように、スプリアスモードの結合係数は周期と密接に関係し得るため、PBAWデバイスの共振器周期の変動に対して、スプリアスモード抑制を4%〜8%に維持することは困難であり得る。
しかしながら、上記のように、PBAWデバイス10の共振器14または16などの共振器のデューティファクタ(a/p)を変えることによって、図16〜20に関して上記に議論したように、PBAWデバイス10のほぼスプリアスフリーな応答場所のシフトが生じ得る。一般に、デューティファクタが大きければ大きいほど、相対的により大きな電極周期を有する共振器で、ほぼスプリアスフリーな応答モードが得られ得る。同様に、デューティファクタが小さいほど、相対的により小さな電極周期を有する共振器で、ほぼスプリアスフリーな応答が得られ得る。実施形態では、共振器の周期が変化するにつれて、電極幅を変えることで電極のデューティファクタを変動させてもよい。共振器のデューティファクタを変化させることによって、PBAWデバイスの一部のまたはすべての共振器で、ほぼスプリアスフリーな応答を得てもよい。これらの実施形態では、誘電体オーバーコート24の高さhoxと電極厚みhmとの比は、PBAWデバイスのすべての共振器でほぼ一定であると考えてもよい。
図32は、一実施形態による、デューティファクタ(a/p)が40%の金電極を用いた共振器の、hau/pとhox/hauの関数としてのスプリアスモード結合係数のグラフ例を示す。図8に関する上記の係数と同様に、該スプリアスモード結合係数はK2として示され、(log10)単位で表される。同様に、図33、図34、図35および図36はそれぞれ、種々の実施形態による、デューティファクタ(a/p)が45%、50%、55%および60%の金電極を用いた共振器のスプリアスモード結合係数のグラフ例を示す。図37は、一実施形態による、40%、45%、50%、55%および60%のデューティファクタでほぼスプリアスフリーな応答を得るための、hau/pとhox/hauとを比較したグラフ例によって、図32〜36のデータをまとめたものである。
一部の実施形態では、共振器の周期、例えば、図1の共振器14の周期28を特定することによって、PBAWデバイス10を設計してもよい。これらの実施形態では、共振器14のデューティファクタ(a/p)を特定してもよい。これらの実施形態では、周期対誘電体オーバーコート厚みの関数であるグラフを考慮する方がより便利であり得る。これらの実施形態では、基準周期prefと基準電極幅arefを定義してもよい。実施形態では、aref/prefは0.5であってもよい。基準周期prefと基準幅arefは、共振器14、PBAWデバイス10または他の値の公称値であってもよい。基準周期prefおよび基準幅arefのデューティファクタは、電極材料高さhmおよびオーバーコート厚みhoxの共振器に使用された場合に、スプリアス内容がほとんどないか、あるいは全くない応答が得られる50%であってもよい。
図38は、図37のデータを上記で検討した基準値を用いて説明したものである。具体的には、図37は上記のように、一実施形態による、40%、45%、50%、55%および60%のデューティファクタでほぼスプリアスフリーな応答を得るための、hau/pとhox/hauとを比較したグラフ例によって、図32〜36のデータをまとめたものである。図38は、一実施形態による、40%、45%、50%、55%および60%のデューティファクタでほぼスプリアスフリーな応答を得るための、p/prefとhox/hauとを比較したグラフ例によって、図32〜36のデータをまとめたものである。図38では、ほぼスプリアスフリーな応答を得るデューティファクタは、与えられた電極周期では直線に近いことがわかり得る。
ほぼスプリアスフリーな応答をデューティファクタの関数と考えることによって、ほぼスプリアスフリーな応答でのデューティファクタの周期への公称の依存関係を示す範囲を求めてもよい。具体的には、図39は、ある実施形態の金電極のデューティファクタ(a/p)を正規化周期(p/pref)の関数とした例を示す。図39に示すように、一部の実施形態では、a/pが0.5+1.0*(p/pref−1)にほぼ等しくなるように、デューティファクタは近似し得る。他の実施形態では、a/pが0.5+1.2*(p/pref−1)にほぼ等しくなるように、デューティファクタは近似し得る。
追加の実施形態では、基準共振周波数fR,refの例を導入してもよい。この基準共振周波数は、PBAWデバイス上に、一部の実施形態ではPBAWデバイス上の公称の共振器であってもよい共振器の共振周波数であってもよい。実施形態では、正規化周波数fR/fR,refは、一部の実施形態では図40に示すように、ほぼスプリアスフリーな応答を得るために、金電極を用いた共振器の正規化基準周期p/prefと反比例関係を有するように示されてもよい。
図39と図40に関して上記に見られ得るように、デューティファクタの調節によって、金電極を用いた共振器に対して、比帯域幅25%に亘ってほぼスプリアスフリーな応答が得られ得る。具体的には、p<prefの場合、a/pを0.5+1.0*(p/pref−1)に近似させてもよい。また、p>prefの場合、a/pを0.5+1.2*(p/pref−1)に近似させてもよい。狭い範囲の場合は、デューティファクタの調節でのより単純な近似を用いてもよい。具体的には、a−pをaref−prefに近似させてもよい。これらの近似によって、PBAWデバイスの共振器、例えば、PBAWデバイス10の共振器14および16はそれぞれ、ほぼ等しい電極間隔(p−a)を有していてもよいことが示唆され得る。
実施形態では、これらのデューティファクタを用いて、金電極の場合にほぼスプリアスフリーな応答を有するPBAWデバイス10などのPBAWデバイスを得てもよい。例えば、一実施形態では、hau/prefは0.083であってもよい。図41は、図39に関する上記の議論のように、hau/prefが0.083であり、a/pが0.5+(p/pref−1)に近似し得る実施形態での、金電極のスプリアスモード結合係数の例を示す。該スプリアスモード結合係数は、図8に関して上記したように、log10スケールで解釈され得る。図41では、スプリアスモード結合係数を、hau/p、hox/hauおよび電極のデューティファクタ(a/p)の関数として示す。log10(K2,spur)オーダのスプリアスモード結合係数をほぼ≦−4とすることによって、図41の実質的な部分はほぼスプリアスフリーな応答を示すことが、図41から分かり得る。
図42は、図39に関する上記の検討のように、hau/prefが0.083であり、a/pが0.5+(p/pref−1)に近似し得る実施形態での、金電極を用いた共振器の正規化周波数係数の例を示す。図43は、図39に関する上記の検討のように、hau/prefが0.083であり、a/pが0.5+(p/pref−1)に近似し得る実施形態での、金電極を用いた共振器の結合係数の例を示す。図43では、該結合係数を、図7に関して上記に検討した結合係数と同様に解釈してもよい。図41と同様に、図42および図43を、hau/p、hox/hauおよび共振器のデューティファクタ(a/p)の関数として示す。hau/prefを約0.083とすることにより、約30%超という実質的に広範囲の周期に亘って、スプリアスモードを抑制し得、hau/prefが約0.083のフィルタは、スプリアスモード応答をほとんど、あるいは全く示さないことが図41〜43から分かり得る。
一方、図44〜46はそれぞれ図41〜43と同様であるが、主要な相違点は、図44〜46が、hau/prefが0.09に近似し得る実施形態を示す点である。図41〜43と図44〜46の比較によって、基準電極の相対的な金属厚みが上昇すると、厚みがより薄いオーバーコートに対し、ほぼスプリアスフリーな応答が得られることがわかる。言いかえれば、基準共振器の相対的な金属厚みをオーバーコート厚みに反比例させてもよい。
上記の一部の実施形態は、金電極を用いた共振器に関して記載されていることに留意されるであろう。しかしながら、他の実施形態では、該電極はさらにあるいはその代替として、銅、タングステンおよびまたは他の適切な材料を含んでいてもよい。一般に、上記および種々の図における式および値を、異なる材料の材料差異を説明するように適切に修正してもよい。
上記の実施形態の考察によって、PBAWデバイスの共振器における電極の厚み、例えばPBAWデバイス10における電極30または30Aの厚みを、図15に関する上記の検討のように、電極密度と弾性率に応じた実験的な関係を用いて一括してもよいことがわかる。具体的には、hmを約
の値としてもよい。また、図30に関して上記したように、PBAWデバイス10の基板12などのYX−LN基板のy−回転に、通過帯域に生じるBAW放射により通過帯域歪を与えてもよい。
実施形態では、YX−LN基板のy−回転が約18°〜24°の間にあることが望ましいものであり得る。一部の実施形態では、y−回転の上昇と共にPBAWデバイスの共振周波数が上昇するように、PBAWデバイスの共振周波数を基板のy−回転に比例させて、ほぼスプリアスフリーな応答を維持してもよい。
一部の実施形態では、図39に関して、またその他で金電極に関して上記したように、共振器の一般的な電極の望ましいデューティファクタa/pは、約0.5+(p/pref−1)であり得る。一部の実施形態では、望ましいデューティファクタa/pは、約0.5+0.5*(p/pref−1)と約0.5+1.5*(p/pref−1)の間に存在するように外挿されてもよい。上記の範囲で示されるように、PBAWデバイス10の電極30または30Aなどの電極のデューティファクタを、電極周期28または28Aの上昇と共に上昇させてもよい。一部の実施形態では、PBAWデバイスの通過帯域と一致しないスプリアスモード応答を有する共振器についてはこの例外となり得る。
一部の実施形態による無線通信デバイス4700を図47に示す。無線通信デバイス4700は、アンテナ構造4704、デュプレクサ4708(RXフィルタ4712とTXフィルタ4713を備える)、電力増幅器(PA)4716、低雑音増幅器(LNA)4715、トランシーバ4720、プロセッサ4724、およびメモリ4728を有していてもよく、それぞれは少なくとも図示のように接続されている。
アンテナ構造4704は、無線通信により無線周波数(RF)信号を送受信するために、1つまたは複数のアンテナを備えていてもよい。アンテナ構造4704は、アンテナ構造をLNA4715またはPA4716に選択的に接続するように作動するデュプレクサ4708と接続されていてもよい。発信RF信号を送信する場合、デュプレクサ4708のTXフィルタ4713は、アンテナ構造4704をPA4716に接続してもよい。着信RF信号を受信する場合、デュプレクサ4708のRXフィルタ4712は、アンテナ構造4704をLNA4715に接続してもよい。RXフィルタ4712およびTXフィルタ4713は、1つまたは複数の、PBAWデバイス10または4900などのPBAWデバイスを備えていてもよい。一部の実施形態では、RXフィルタ4712とTXフィルタ4713は、第1の複数の直列共振器と第2の複数の共振器とを備えていてもよい。RXフィルタ4712は、アンテナ4704から受信したRFシグナルをフィルタリングし、所定のバンドパス内のRF信号部分をトランシーバ4720に渡してもよい。
発信RF信号を送信する場合、デュプレクサ4708は、アンテナ構造4704をPA4716に接続してもよい。PA4716は、トランシーバ4720からのRF信号を受信・増幅して、無線通信のためにアンテナ構造4708に供給する。
プロセッサ4724は、メモリ4728に記憶されている基本オペレーティングシステムプログラムを実行して、無線通信デバイス4700の全面的な作動を制御する。例えば、メインプロセッサ4724は、トランシーバ4720による信号の送受信を制御してもよい。メインプロセッサ4724は、メモリ4728に存在する他のプロセスおよびプログラムを実行でき、実行プロセスで要求されるように、メモリ4728へのまたはそれからのデータの出し入れを行ってもよい。
トランシーバ4720は、プロセッサ4724から発信データ(例えば音声データ、ウェブデータ、電子メール、シグナリングデータなど)を受信して、該発信データを表すRF信号を生成してPA4716に提供してもよい。反対に、トランシーバ4720は、着信データを表わすRF信号をフィルタ4712から受信してもよい。トランシーバ4720は、該RFシグナルを処理して、さらなる処理のために着信信号をプロセッサ4724に送ってもよい。
種々の実施形態では、無線通信デバイス4700は、これに限定されないが、携帯電話、ページングデバイス、携帯情報端末、テキストメッセージ装置、ポータブルコンピュータ、デスクトップコンピュータ、基地局、加入者局、アクセスポイント、レーダ、衛星通信装置、あるいは無線でのRF信号送/受信が可能な他の任意の装置であってもよい。
当業者であれば、無線通信デバイス4700が例示として与えられ、簡潔性と明白性のために、実施形態の理解に必要な程度に、該デバイスの構成と操作が示され説明されていることを理解するであろう。種々の実施形態では、特別のニーズに応じて、無線通信デバイス4700に関連する適切な任意のタスクを行う任意の適切な構成要素あるい構成要素の組み合わせが考慮される。また、無線通信デバイス4700は、実施形態が組込まれたデバイスのタイプを限定するように解釈されるべきではないことも理解される。
実施形態では、PBAWは、基板と;前記基板表面に接続され、周期を有する複数の電極を備え、複数の電極におけるある電極がその電極の周期に少なくとも部分的に基づいた幅を有する共振器と;前記基板および前記共振器に接続されてこれらの上部に配置され、せん断波速度を有する誘電体オーバーコートと;前記誘電体オーバーコートの表面に接続され、前誘電体オーバーコートのせん断波速度より大きなせん断波速度を有する付加的な材料と、を備えていてもよい。実施形態では、前記幅と前記周期との比は、0.5*(p/pref−1)≦a/p−0.5≦1.5*(p/pref−1)に等しくてもよい。式中、pは前記周期、aは前記幅、prefは前記PBAWデバイスの基準周期である。実施形態では、前記幅と前記周期との前記比は、0.5+(p/pref−1)に等しくてもよい。実施形態では、前記基板はニオブ酸リチウム(LiNbO3)を含んでいてもよい。実施形態では、前記誘電体オーバーコートは、酸化シリコン(SiOx)を含んでいてもよい。実施形態では、前記共振器の電気機械結合係数は約16%であってもよい。実施形態では、前記基板のY−回転は18〜24°であってもよい。実施形態では、前記複数の電極中の電極は、前記電極の材料の測定密度とその材料のせん断弾性率とに少なくとも部分的に基づいた高さを有していてもよい。実施形態では、前記電極の高さを
に等しくてもよい。式中、hmは前記電極の高さであり、cmは前記電極のせん断弾性率であり、coxは前記誘電体オーバーコートのせん断弾性率であり、Δ m は前記電極の密度であり、Δ ox は前記誘電体オーバーコートの密度である。実施形態では、前記電極は、金(Au)、銅(Cu)あるいはタングステン(W)を含んでいてもよい。
実施形態では、プロセスは、圧電境界波(PBAW)デバイスの基板上に、複数の電極の内のそれぞれが、それぞれの周期に少なくとも部分的に基づいた幅を有する複数の電極を備えた共振器を堆積するステップと;前記複数の電極と前記基板上に、せん断波速度を有する誘電体オーバーコートを堆積するステップと;前記誘電体オーバーコート上に、前記誘電体オーバーコートのせん断波速度より大きなせん断波速度を有する付加的な材料を堆積するステップと、を備えていてもよい。実施形態では、前記複数の電極の内のある電極の幅と前記周期との比は、0.5*(p/pref−1)≦a/p−0.5≦1.5*(p/pref−1)に等しくてもよい。式中、pは前記周期、aは前記幅、prefは前記PBAWデバイスの基準周期である。実施形態では、前記電極の幅と周期との前記比は、0.5+(p/pref−1)に等しくてもよい。実施形態では、前記基板はニオブ酸リチウム(LiNbO3)を含んでいてもよい。実施形態では、前記誘電体オーバーコートは、酸化シリコン(SiOx)を含んでいてもよい。実施形態では、前記共振器の電気機械結合係数は約16%であってもよい。実施形態では、前記基板のY−回転は18〜24°であってもよい。実施形態では、前記複数の電極の内のある電極は、前記電極の材料の測定密度とその材料のせん断弾性率とに少なくとも部分的に基づいた高さを有していてもよい。実施形態では、前記電極の高さを
に等しくてもよい。式中、hmは前記電極の高さであり、cmは前記電極のせん断弾性率であり、coxは前記誘電体オーバーコートのせん断弾性率であり、Δ m は前記電極の密度であり、Δ ox は前記誘電体オーバーコートの密度である。実施形態では、前記複数の電極の内のある電極は、金(Au)、銅(Cu)あるいはタングステン(W)を含んでいてもよい。
実施形態では、システムは、電源と、前記電源に接続された圧電境界波(PBAW)デバイスとを含んでいてもよい。前記PBAWデバイスは、基板と;前記基板の表面に接続され、周期と、少なくとも部分的に前記周期に基づいた幅とを有する第1の電極を備えた第1の共振器と;前記基板の表面に接続され、前記第1の電極の周期とは異なる周期と、少なくとも部分的に前記周期に基づくが前記第1の電極の前記幅とは異なる幅と、を有する第2の電極を備えた第2の共振器と;前記基板、前記第1の電極、および前記第2の電極上に配置され、せん断波速度を有する誘電体オーバーコートと;前記誘電体オーバーコート上に配置され、前記誘電体オーバーコートのせん断波速度より大きなせん断波速度を有する付加的な材料と、を備えていてもよい。実施形態では、前記第1の電極の前記幅と周期との比は、最初の電極の時間に対する最初の電極の幅の比率は、0.5*(p/pref−1)≦a/p−0.5≦1.5*(p/pref−1)に等しくてもよい。式中、pは前記周期、aは前記幅、prefは基準周期である。実施形態では、前記第1の共振器の電気機械結合係数は約16%であってもよい。実施形態では、前記基板のY−回転は18〜24°であってもよい。実施形態では、前記第1の電極の高さは、
に等しくてもよい。式中、hmは前記第1の電極の高さであり、cmは前記第1の電極のせん断弾性率であり、coxは前記誘電体オーバーコートのせん断弾性率であり、Δ m は前記第1の電極の密度であり、Δ ox は前記誘電体オーバーコートの密度である。実施形態では、前記第1の電極は金(Au)、銅(Cu)あるいはタングステン(W)を含んでいてもよい。
本開示を上記の実施形態の観点から説明したが、当業者であれば、同じ目的を達成するように意図された代替となるおよびまたは均等な種々の実施によって、本開示の範囲から逸脱することなく、提示された特定の実施形態が置換され得ることは理解するであろう。当業者であれば、本開示の教示は、広範な実施形態において実施され得ることは容易に理解するであろう。本明細書は、限定するものではなく、例示と見なされるように意図される。