JPWO2009075362A1 - 防振装置 - Google Patents
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Abstract
Description
本願は、2007年12月12日に日本に出願された特願2007−320617号及び2008年6月17日に日本に出願された特願2008−158350号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
この防振装置においては従来から、路面の凹凸等により大きな振動(荷重)が入力されて主液室の液圧が急激に上昇した後、例えば第1ゴム弾性体のリバウンド等によって逆方向に振動が入力されたときに、主液室が負圧になることがある。この際、主液室内の液中に多数の気泡が生成されるキャビテーションが発生する。その後、主液室内の液圧が上昇するのに伴って気泡が液中から消滅する時に衝撃波が発生し、この衝撃波が第1取付け部材等の金属材料に伝播して異音が生ずる。
このような異音の発生を防ぐ手段として、例えば下記特許文献1に示されるように、仕切り部材に主液室と副液室とを連通する連通孔をオリフィス通路とは別に形成して、この連通孔に弁を設ける構成が知られている。この構成を有する装置では、主液室の液圧が急激に上昇した後、負圧になろうとしたときに、この弁を開いて主液室と副液室とを短絡させて主液室の液圧が低下するのを抑えることにより、キャビテーションが発生するのを未然に防止する。
したがって、路面の凹凸等により大きな振動(荷重)が入力されて主液室の液圧が急激に上昇した後、例えば第1ゴム弾性体のリバウンド等によって逆方向に振動が入力されて主液室内の液圧が低下する過程で、前記液体中において第1液体と第2液体との界面領域でキャビテーションが発生し始める液圧が、主液室および副液室に第1液体単体若しくは第2液体単体を封入した場合と比べて高くなる。
したがって、第1液体中にキャビテーションが発生するのを抑えることが可能になり、液体中における第2液体の重量比率が第1液体の重量比率よりも小さいことと相俟って、前記液体全体で気泡が生成されるのを抑制することができる。
また、第1液体よりも蒸気圧が高くキャビテーションが発生し易い第2液体の前記液体中に含まれる重量比率が、第1液体よりも小さいことから、前述の作用効果が奏される反面、例えばアイドル振動やシェイク振動が加えられる通常時にもキャビテーションが発生し易くなり前記オリフィス通路で奏される液柱共振作用が発揮され難くなるのを防ぐことが可能になり、防振装置の減衰性能を確実に確保することができる。
さらに、例えば弁機構等といった新たな機構を追加しなくてもよいので、この防振装置の複雑化を回避することができるとともに、前記従来技術のように弁を開いて主液室と副液室とを短絡させることなく、発生する異音の大きさを低減することが可能になる。その結果、このような作用効果が奏される一方で、減衰性能の低下を防ぐことが可能になり、減衰性能を安定させることができる。
この場合、第2液体が第1液体よりも蒸発潜熱が小さくなっているので、主液室の液圧が上昇して元の液圧に戻る過程で前述の気泡が潰されたとき、つまり第2液体が気相状態から液相状態に相変化したときに放出されるエネルギーを、第1液体中で前述の気泡が発生し潰されたときに放出されるエネルギーと比べて低減することが可能になる。したがって、前述のように第1液体中で気泡が生成されるのを抑えられることと相俟って、前記液体全体で発生する前記エネルギーを確実に抑制することができる。
さらに、前記液体は、第1液体を60重量%以上99.9重量%以下含有し、第2液体を0.1重量%以上40重量%以下含有してもよい。
これらの場合、減衰性能を低下させることなく前述の作用効果が確実に奏される。
さらにまた、シリコーンオイルおよびフッ素オイルは、エチレングリコールおよびプロピレングリコールと比べて高価であるものの、第2液体は、第1液体よりも液体中に含まれる重量比率が小さい。そのため、この防振装置のコストが上昇するのを抑えることができる。
そして、この防振装置10が例えば自動車に装着された場合、第2取付け部材12が振動発生部としてのエンジンに連結される一方、第1取付け部材11が図示されないブラケット等を介して振動受部としての車体に連結されることにより、エンジンの振動を車体に伝達するのを抑えることができる。
図示の例では、仕切り部材16は円環状に形成され、その外周面に形成された周溝が前記オリフィス通路24とされ、このオリフィス通路24は、前記径方向の外側から第1取付け部材11の内周面に被覆されたゴム膜18によって閉塞されている。なお、ゴム膜18は第1ゴム弾性体13と一体に形成され、第1取付け部材11の内周面は第1ゴム弾性体13およびゴム膜18により全域にわたって覆われている。また、仕切り部材16の径方向内側には円板状のゴム部材16aが配設されており、円環状に形成された仕切り部材16の径方向中央部を閉塞している。
さらに、本実施形態では、この防振装置10は、主液室14が鉛直方向上側に位置しかつ副液室15が鉛直方向下側に位置するように取り付けられて用いられる圧縮式となっている。
さらに、前記液体Lは、少なくともこの防振装置10に路面の凹凸等により大きな振動(荷重)が入力されたときに、第1液体中に第2液体が第1液体に対して分離した状態で多数箇所に分散された態様になる。
したがって、路面の凹凸等により大きな振動が入力されて主液室14の液圧が急激に上昇した後、例えば第1ゴム弾性体13のリバウンド等によって逆方向に振動が入力されて主液室14内の液圧が低下する過程で、前記液体L中において第1液体と第2液体との界面領域でキャビテーションが発生し始める液圧が、主液室14および副液室15に第1液体単体若しくは第2液体単体を封入した場合と比べて高くなる。
したがって、第1液体中におけるキャビテーションの発生を抑えることが可能になり、液体中における第2液体の重量比率が第1液体の重量比率よりも小さいことと相俟って、前記液体L中におけるキャビテーションによる気泡の生成を抑制することができる。
また、第1液体よりも蒸気圧が高くキャビテーションが発生し易い第2液体の前記液体L中に含まれる重量比率が、第1液体よりも小さいので、前述の作用効果が奏される反面、例えばアイドル振動やシェイク振動が加えられる通常時にもキャビテーションが発生し易くなりオリフィス通路24で奏される液柱共振作用が発揮され難くなってしまうことを防ぐことが可能になり、防振装置10の減衰性能を確実に確保することができる。
さらにまた、第2液体に使用されるシリコーンオイルおよびフッ素オイルは、エチレングリコールおよびプロピレングリコールと比べて高価であるものの、第2液体は、第1液体よりも液体L中に含まれる重量比率が小さいので、この防振装置10のコストが上昇するのを抑えることができる。
なお、液体L中における第2液体の重量比率が0.1重量%未満となると、異音の制御が不十分となる可能性がある。一方、第2液体の重量比率が40重量%を超えると。異音を抑制することは可能だが、減衰性能が低下する可能性がある。また、高価な第2液体の添加量が増えるため、コスト的にも不利となる。
したがって、前記衝撃波の発生箇所を主液室14内の液体L中で分散させることが可能になり、この衝撃波が液体L中を進行して例えば防振装置10において金属材料で形成された部分に伝播するまでの間に、そのエネルギーを衝撃波相互間で干渉させ合うことにより減衰させることができる。
これにより、衝撃波が防振装置10において金属材料で形成された部分に伝播しても、この部分が振動するのを抑制することが可能になり、発生する異音の大きさをより一層確実に低減することができる。
例えば、第1液体および第2液体は、前述したものに限らず、動粘度が比較的低く(25℃において1×10−4m2/s以下)、沸点が比較的高く(80℃以上)かつ凝固点が比較的低い(0℃以下)液体であれば、適宜変更してもよい。
また、防振装置10として圧縮式を示したが、主液室14が鉛直方向下側に位置しかつ副液室15が鉛直方向上側に位置するように取り付けられて用いられる吊り下げ式の防振装置にも適用可能である。
さらに、前記液体Lは、二種類の液体に限らず、三種類以上の液体を含有してもよい。
また、前記液体Lには、例えば乳化剤等の界面活性剤を混入してもよい。この場合、前記液体L中で防振装置10を組み立てることでこの組み立てと同時に主液室14および副液室15に液体Lを封入する場合に、効率よくこの防振装置10を製造することができる。
さらに、例えば仕切り部材16の表面においてオリフィス通路24を除く主液室14内に位置する部分をゴム膜等で覆う等して、異音の発生を防ぐようにしてもよい。
また、前記実施形態では、第2液体として、第1液体よりも蒸発潜熱が小さい材質を示したが、第1液体の蒸発潜熱の大きさ以上の材質を採用してもよい。
以下、実施例を示し、本発明において、液体中における第2液体の重量比を0.1重量%以上40重量%とした理由について説明する。
まず、液体中における第2液体の重量比を0.1重量%以上とした理由を、図2〜図5とともに説明する。図2〜図5は、液体に対する第2液体の添加量と振動加速度との関係を示すもので、グラフの横軸が第2液体の添加量(重量%)、縦軸が振動加速度(m/s2)である。また、図中、「Max」、「Min」、「Ave」はそれぞれデータの最大値、最小値、平均値を示す。また、図2の例では、第1液体としてエチレングリコール、第2液体としてフッ素オイルを、図3の例では、第1液体としてエチレングリコール、第2液体としてシリコーンオイルを、図4の例では、第1液体としてエチレングリコールおよびプロピレングリコール、第2液体としてフッ素オイルを、図5の例では、第1液体としてエチレングリコールおよびプロピレングリコール、第2液体としてシリコーンオイルをそれぞれ用いた。
なお、上記「振動加速度」とは、防振装置を加振した際に発生する振動加速度を示し、加振時における異音の発生と相関がある。すなわち、振動加速度が大きいほど、異音が発生しやすくなる。
なお、上記「損失係数低下率」は、防振装置を加振した際の減衰性能を示し、低下率が低いほど、減衰性能が高くなる。本実施例の場合、加振量はいずれも10Hzプラスマイナス1mmである。
エチレングリコール
沸点(℃):197
25℃における蒸気圧(Pa):13.40
25℃における蒸発潜熱(kJ/kg):1220
フッ素オイル(ハイドロフルオロエーテル(HFE))
沸点(℃):100
25℃における蒸気圧(Pa):6000
25℃における蒸発潜熱(kJ/kg):100
シリコーンオイル(ジメチルシロキサン)
沸点(℃):150
25℃における蒸気圧(Pa):170
25℃における蒸発潜熱(kJ/kg):180
Claims (5)
- 振動発生部および振動受部のいずれか一方に連結される筒状の第1取付け部材と、
振動発生部および振動受部のいずれか他方に連結される第2取付け部材と、
これらの第1、第2取付け部材同士を弾性的に連結する第1ゴム弾性体と、
前記第1取付け部材の内部を、前記第1ゴム弾性体を隔壁の一部として液体が封入され、かつ第1ゴム弾性体の変形により内容積が変化する主液室と、隔壁の少なくとも一部が変形可能に形成され、かつ液体が封入される副液室と、に区画する仕切り部材と、を備え、
前記仕切り部材の外周面側と第1取付け部材の内周面側との間に、主液室と副液室とを連通するオリフィス通路が形成されるとともに、これらの主液室および副液室に液体が封入され、
前記液体は、互いに不溶な第1液体および第2液体を含有し、この第2液体は、第1液体よりも蒸気圧が高くかつ液体中に含まれる重量比率が小さい防振装置。 - 前記第2液体は、第1液体よりも蒸発潜熱が小さい請求項1記載の防振装置。
- 前記第1液体はエチレングリコール単体若しくはエチレングリコールとプロピレングリコールとを含有し、前記第2液体はシリコーンオイル若しくはフッ素オイルを含有する請求項1記載の防振装置。
- 前記第1液体はエチレングリコール単体若しくはエチレングリコールとプロピレングリコールとを含有し、前記第2液体はシリコーンオイル若しくはフッ素オイルを含有する請求項2記載の防振装置。
- 前記液体は、第1液体を60重量%以上99.9重量%以下含有し、第2液体を0.1重量%以上40重量%以下含有している請求項1ないし4記載の防振装置。
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