JP5452484B2 - 防振装置 - Google Patents
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Description
本願は、2008年6月17日に日本国に出願された特願2008−158351号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
この防振装置においては従来から、路面の凹凸等により大きな振動(荷重)が入力されて主液室の液圧が急激に上昇した後、例えば第1ゴム弾性体のリバウンド等によって逆方向に振動が入力されたときに、主液室が負圧になることがある。この際、主液室内の液中に多数の気泡が生成されるキャビテーションが発生する。その後、主液室内の液圧が上昇するのに伴って気泡が液中から消滅する時に衝撃波が発生し、この衝撃波が第1取付け部材等の金属材料に伝播することで異音が生ずる。
このような異音の発生を防ぐ手段として、例えば下記特許文献1に示されるように、仕切り部材に主液室と副液室とを連通する連通孔をオリフィス通路とは別に形成して、この連通孔に弁を設け、主液室の液圧が急激に上昇した後、負圧になろうとしたときに、この弁を開いて主液室と副液室とを短絡させて主液室の液圧が低下するのを抑えることにより、キャビテーションが発生するのを未然に防止する構成が知られている。
これにより、主液室内において特に液体の流速が高くなる制限通路の開口付近で、第1液体のみならず第2液体でもキャビテーションが発生することになり、液体が第2液体を含有していない場合に比べて、第1液体中に発生する気泡の成長が抑えられる。したがって、第1液体中のキャビテーション崩壊に起因して発生する衝撃波を小さく抑えることができる。なお、上述の第1液体と第2液体とが互いに不溶な状態は、極性流体と、非極性流体とを混合することで得られる。
以上より、液体が第2液体を含有せず第1液体のみを含有している場合と比べて、液室内の液体全体で発生する衝撃波を小さく抑えることが可能になり、発生する異音の大きさを低減することができる。
なお、その後さらに振動(荷重)が繰り返し入力されると、第2液体が第1液体中でより一層細かくかつ全域にわたって均等に分散されることとなり、前述の作用効果が効果的に奏功される。
この場合、前記液体が、互いに不溶でかつ同一温度での蒸気圧が異なる第1液体および第2液体を含有しているので、この液体全体の蒸気圧が、第1液体単体の蒸気圧および第2液体単体の蒸気圧よりも高くなる。
したがって、前述のように主液室内の液圧が低下する過程で、前記液体中において第1液体と第2液体との界面領域でキャビテーションが発生し始める液圧が、主液室および副液室に第1液体単体若しくは第2液体単体を封入した場合と比べて高くなる。
さらに、前記液体は、第1液体を60重量%以上99.9重量%以下含有し、第2液体を0.1重量%以上40重量%以下含有してもよい。
これらの場合、減衰性能を低下させることなく前述の作用効果が確実に奏されることになる。
さらにまた、シリコーンオイルおよびフッ素オイルは、エチレングリコールおよびプロピレングリコールと比べて高価であるものの、第2液体は、第1液体よりも液体中に含まれる重量が少ないので、この防振装置のコストが上昇するのを抑えることができる。
11 第1取付け部材
12 第2取付け部材
13 第1ゴム弾性体
14 主液室
15 副液室
16 仕切り部材
24 オリフィス通路
L 液体
O 中心軸線
そして、この防振装置10が例えば自動車に装着された場合、第2取付け部材12が振動発生部としてのエンジンに連結される一方、第1取付け部材11が図示されないブラケット等を介して振動受部としての車体に連結されることにより、エンジンの振動を車体に伝達するのを抑えられる。
図示の例では、仕切り部材16は円環状に形成され、その外周面に形成された周溝が前記オリフィス通路24とされ、このオリフィス通路24は、前記径方向の外側から第1取付け部材11の内周面に被覆されたゴム膜18によって閉塞されている。なお、ゴム膜18は第1ゴム弾性体13と一体に形成され、第1取付け部材11の内周面は第1ゴム弾性体13およびゴム膜18により全域にわたって覆われている。また、仕切り部材16の径方向内側には円板状のゴム部材16aが配設されており、円環状に形成された仕切り部材16の径方向中央部を閉塞している。
さらに、本実施形態では、この防振装置10は、主液室14が鉛直方向上側に位置しかつ副液室15が鉛直方向下側に位置するように取り付けられて用いられる圧縮式である。
ここで、図5〜図8は、異なる第1液体と第2液体との組合せを用いた場合の前記液体L中での第2液体の重量%の変化と、本発明に係る一実施形態として示した防振装置に大きな振動が入力された場合に防振装置に作用する加速度(振動加速度)との相関関係を横軸に第2液体の重量%、縦軸に加速度を表示して示したグラフである。図9〜図10は、異なる第1液体と第2液体との組合せを用いた場合の前記液体L中での第2液体の重量%の変化と、本発明に係る一実施形態として示した防振装置の損失係数低下率との相関関係を横軸に第2液体の重量%、縦軸に損失係数低下率を表示して示したグラフである。図5は、第1液体にエチレングリコール、第2液体にフッ素オイル(住友スリーエム社製、商品名:ノベックHFE7300)を用いた場合である。図6は、第1液体にエチレングリコール、第2液体にシリコーンオイルを用いた場合である。図7は、第1液体にエチレングリコールとプロピレングリコールの混合液、第2液体にフッ素オイル(住友スリーエム社製、商品名:ノベックHFE7300)を用いた場合である。図8は、第1液体にエチレングリコールとプロピレングリコールの混合液、第2液体にシリコーンオイルを用いた場合である。図9は、第1液体にエチレングリコール、第2液体にフッ素オイル(住友スリーエム社製、商品名:ノベックHFE7300)を用いた場合である。図10は、第1液体にエチレングリコール、第2液体にシリコーンオイルを用いた場合である。図5〜8より、第2液体の含有量が0.1重量%以上で上記防振装置に作用する加速度の低減効果が現れ、第2液体の含有量が1重量%以上では上記防振装置に作用する加速度の低減効果が更に顕著に現れることが分かる。また、図9,10より、第2液体の含有量が20重量%以上で上記防振装置の損失係数低下率の低減効果が落ち始め、第2液体の含有量が40重量%以上では上記防振装置の損失係数低下率の低減効果が更に顕著に落ちることが分かる。これらのことから、上述の第1液体、第2液体の好ましい重量%での含有量を決定することができる。
さらに、前記液体Lは、少なくともこの防振装置10に路面の凹凸等により大きな振動(荷重)が入力されたときに、第1液体中に第2液体が第1液体に対して分離した状態で多数箇所に分散された態様になる。
したがって、前記液体Lが第2液体を含まない場合と比べて、第1液体中に気泡が生成されるのを抑制することが可能になり、主液室14の液圧が上昇して元の液圧に戻る過程で、この第1液体中で気泡が潰されて衝撃波が発生するのを抑えることができる。
したがって、前述のように第1液体中で衝撃波が発生するのを抑えられることと同時に、前記液体L全体に発生する衝撃波のエネルギーを低くすることが可能になり、発生する異音の大きさを低減することができる。
したがって、前述のように主液室14内の液圧が低下する過程で、前記液体L中において第1液体と第2液体との界面領域でキャビテーションが発生し始める液圧が、主液室14および副液室15に第1液体単体若しくは第2液体単体を封入した場合と比べて高くなる。
さらにまた、シリコーンオイルおよびフッ素オイルは、エチレングリコールおよびプロピレングリコールと比べて高価であるものの、第2液体は、第1液体よりも液体L中に含まれる重量が少ないので、この防振装置10のコストが上昇するのを抑えることができる。
したがって、前記衝撃波の発生箇所を主液室14内の液体L中で分散させることが可能になり、この衝撃波が液体L中を進行して例えば防振装置10において金属材料で形成された部分に伝播するまでの間に、そのエネルギーを衝撃波相互間で干渉させ合うことにより減衰させることができる。
これにより、衝撃波が防振装置10において金属材料で形成された部分に伝播しても、この部分が振動するのを抑制することが可能になり、発生する異音の大きさをより一層確実に低減することができる。
ここで、図2は本発明に係る一実施形態として示した防振装置において、第2液体が第1液体中で分散していない状態、即ち第1液体と第2液体が分離している状態において、大きな振動が防振装置に入力された場合に防振装置に作用する加速度を、横軸に時間、縦軸に加速度を表示して測定したグラフである。図3は、本発明に係る一実施形態として示した防振装置において、第2液体が第1液体中で分散している状態において、図2の場合と同様の大きな振動が防振装置に入力された場合に防振装置に作用する加速度を、横軸に時間、縦軸に加速度を表示して測定したグラフである。図4は、従来の防振装置において、図2の場合と同様の大きな振動が防振装置に入力された場合に作用する加速度を、横軸に時間、縦軸に加速度を表示して測定したグラフである。
なお、図2及び図3に示す本実施形態による防振装置は、第1液体であるエチレングリコール(沸点:197.1℃、表面張力:48mN/m)197.5ccに、第2液体としてフッ素オイルHFE7300(沸点:98℃、表面張力:15.0mN/m)を2.5cc注入し、総液量を200ccとした防振装置の場合の実施例である。
上述のような本実施形態によれば、図3に示すように、第2液体が第1液体中で分散している状態において防振装置に作用する加速度を最も低減することが可能である。即ち、発生する異音の大きさを一層確実に低減することができる。
また、図2に示すように、第2液体が第1液体中で分散していなくとも、第1液体に第2液体を混合するだけでも、図4に示す従来の防振装置に比べて、防振装置に作用する加速度の低減効果が顕著に現れることが分かる。
例えば、第1液体および第2液体は、前述したものに限らず、動粘度が比較的低く(25℃において1×10−4m2/s以下)、沸点が比較的高く(80℃以上)かつ凝固点が比較的低い(0℃以下)液体であれば、適宜変更してもよい。
また、防振装置10として圧縮式を示したが、主液室14が鉛直方向下側に位置しかつ副液室15が鉛直方向上側に位置するように取り付けられて用いられる吊り下げ式の防振装置にも適用可能である。
さらに、前記液体Lは、二種類の液体に限らず、三種類以上の液体を含有してもよい。
また、前記液体Lには、例えば乳化剤等の界面活性剤を混入してもよい。この場合、前記液体L中で防振装置10を組み立てることでこの組み立てと同時に主液室14および副液室15に液体Lを封入する場合に、効率よくこの防振装置10を製造することができる。
さらに、例えば仕切り部材16の表面においてオリフィス通路24を除く主液室14内に位置する部分をゴム膜等で覆う等して、異音の発生を防ぐようにしてもよい。
また、前記実施形態では、第2液体として、第1液体の主たる成分の蒸気圧よりも同一温度での蒸気圧が高い材質を示したが、同一温度での第1液体の蒸気圧の大きさ以下の材質を採用してもよい。この場合の作用及び効果は以下のように説明できる。
即ち、主液室および副液室に封入された液体が互いに不溶な第1液体および第2液体を含有し、かつ第2液体の含有量が第1液体よりも少ないので、大きな振動(荷重)が入力されると、例えば液体が制限通路を通過したり、液室の内容積が変動したり、さらには液体にキャビテーションが発生したりすること等に起因して、粒状になった無数の第2液体が第1液体中に分散される。
そして、主液室内において特に液体の流速が高くなる制限通路の開口付近で、第1液体および第2液体のうち蒸気圧の高い第1液体で優先的にキャビテーションが発生し始めるが、この際、発生した気泡を覆う第1液体の熱が気化熱により奪われ、第1液体の温度が低下することで、第1液体の蒸気圧が低下し、気泡の成長が抑えられ、さらにこの第1液体の温度が第2液体の温度よりも大きく低下したときに、第2液体中でキャビテーションが発生し始めることで第1液体の気泡の成長が抑えられる。なお、第2液体の蒸発潜熱が、第1液体の蒸発潜熱よりも小さいものを選ぶことで、この効果をより一層顕著にできる。この際、第2液体は、第1液体中で前述のように分散しているので、この第2液体中で発生する気泡が大きく成長するのが抑えられる。したがって、凝縮時における気泡の収縮速度が高くなるのが抑制されることとなり、第2液体中のキャビテーション崩壊に起因して発生する衝撃波を小さく抑えることができる。
以上より、液室内の液体全体で発生する衝撃波を小さく抑えることが可能になり、発生する異音の大きさを低減することができる。
さらに、第1液体中で分散されている個々の第2液体からの無数の衝撃波同士が、互いに干渉し合いそのエネルギーを打ち消し合うこととなり、前述のように第2液体中で発生する衝撃波が小さく抑えられることと同時に、この第2液体からの衝撃波が防振装置の外側に伝播するのを防ぐことができる。
なお、その後さらに振動(荷重)が繰り返し入力されると、第2液体が第1液体中でより一層細かくかつ全域にわたって均等に分散されることとなり、前述の作用効果が効果的に奏功される。
Claims (4)
- 振動発生部および振動受部のいずれか一方に連結される筒状の第1取付け部材と、
振動発生部および振動受部のいずれか他方に連結される第2取付け部材と、
これらの第1、第2取付け部材同士を弾性的に連結する第1ゴム弾性体と、
前記第1取付け部材の内部を、前記第1ゴム弾性体を隔壁の一部として液体が封入され、かつ第1ゴム弾性体の変形により内容積が変化する主液室と、隔壁の少なくとも一部が変形可能に形成され、かつ液体が封入される副液室と、に区画する仕切り部材と、が備えられ、
前記仕切り部材の外周面側と第1取付け部材の内周面側との間に、主液室と副液室とを連通するオリフィス通路が形成されるとともに、これらの主液室および副液室に液体が封入された防振装置であって、
前記液体は、互いに不溶な第1液体および第2液体を含有し、この第2液体は、第1液体よりも表面張力が小さくかつ前記液体中に含まれる重量が少ないことを特徴とする防振装置。 - 請求項1記載の防振装置であって、
前記第2液体は、第1液体の主たる成分の蒸気圧よりも蒸気圧が高いことを特徴とする防振装置。 - 請求項1または2に記載の防振装置であって、
前記第1液体はエチレングリコール単体若しくはエチレングリコールとプロピレングリコールとを含有し、前記第2液体はシリコーンオイル若しくはフッ素オイルを含有することを特徴とする防振装置。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の防振装置であって、
前記液体は、第1液体を60重量%以上99.9重量%以下含有し、第2液体を0.1重量%以上40重量%以下含有していることを特徴とする防振装置。
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