JP5331605B2 - 防振装置の製造方法および防振装置 - Google Patents
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Description
本発明に係る防振装置の製造方法は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付け部材、および他方に連結されるとともに前記第1取付け部材に弾性的に連結された第2取付け部材を備え、前記第1取付け部材内の液室に、互いに非相溶性を有する第1液体および第2液体を少なくとも含有する封入液が封入された防振装置を形成する防振装置の製造方法であって、前記第1取付け部材および前記第2取付け部材を弾性的に連結するとともに、第2液体を保持する液保持ゴムをその少なくとも一部が液室内に位置するように配設し、前記液室内に第1液体を封止する組立工程と、前記液保持ゴムに保持された第2液体を前記液室内に解放させる第2液体解放工程と、を備えていることを特徴とする。
そして、液室の液圧が低下するときに、第1液体の主たる成分よりも蒸気圧が高い第2液体で優先的にキャビテーションが発生する。これにより、液室内の大きな液圧低下が抑えられて第1液体にキャビテーションが発生するのが抑制され、たとえこの第1液体にキャビテーションが発生したとしても、気泡の成長が抑えられることとなる。したがって、第1液体中のキャビテーション崩壊に起因して発生する衝撃波を小さく抑えることができる。
以上より、液室内の封入液全体で発生する衝撃波を小さく抑えることが可能になり、キャビテーション崩壊時に発生する異音の大きさを低減することができる。
なお、その後さらに振動(荷重)が繰り返し入力されると、第2液体が第1液体中でより一層細かくかつ全域にわたって均等に分散されることとなり、前述の作用効果が効果的に奏功される。
図1に示すように、防振装置10は、振動発生部および振動受部のいずれか一方に連結される筒状の第1取付け部材11、および他方に連結される第2取付け部材12と、これらの第1取付け部材11と第2取付け部材12とを弾性的に連結する弾性体13と、第1取付け部材11の内部に形成された液室17を後述する主液室14と副液室15とに区画する仕切り部材16と、内面が後述する副液室15の壁面の一部を構成するダイヤフラム19と、を備えている。
そして、この防振装置10が例えば自動車に装着された場合、第2取付け部材12が振動発生部としてのエンジンに連結される一方、第1取付け部材11が図示しないブラケット等を介して振動受部としての車体に連結されることにより、エンジンの振動が車体に伝達されるのを抑えられるようになっている。
第2取付け部材12は、前記中心軸線O方向に延在し前記振動発生部に連結される取付け筒部12aと、この取付け筒部12aの前記中心軸線O方向の他方側の他端部に前記他方側に向けて突設された補強筒部12bと、を備えている。取付け筒部12aの内周面には、雌ねじ部が形成されており、前記振動発生部は、該雌ねじ部に螺着されることで第2取付け部材12に連結される。また、取付け筒部12aは、前記中心軸線O方向の一方側の一端部が、第1取付け部材11の前記中心軸線O方向の一方側の一端開口面よりも前記中心軸線O方向の外側(一方側)に突出している。補強筒部12bは、有底筒状に形成されており、その底壁部が取付け筒部12aの前記中心軸線O方向の他方側の開口部を閉塞している。また、補強筒部12bの周壁部は、前記中心軸線O方向の一方側から他方側に向かうに従って漸次拡径している。
そして、ダイヤフラムリング19aが、第1取付け部材11の大径部11bにおける前記中心軸線O方向の他方側の他端部がその全周にわたって径方向の内側に向けて屈曲されて形成されたカシメ部11dにカシメ固定されることで、ダイヤフラム19は、第1取付け部材11の他端開口部11Bを閉塞している。
そして、液室17は、仕切り部材16によって、弾性体13を壁面の一部に有しこの弾性体13の変形により内容積が変化する主液室14と、ダイヤフラム19を壁面の一部に有しこのダイヤフラム19の変形により内容積が変化する副液室15と、に区画されている。
また、第1仕切り板16bおよび第2仕切り板16cにおいてメンブラン16dと対向する位置には、各仕切り板16b、16cを前記中心軸線O方向に貫通する複数の流通孔が形成されている。
図示の例では、仕切り部材本体16aの外周面には、前記制限通路24となる周溝が形成されており、この周溝が前記被覆膜13c(第1取付け部材11の大径部11b)によって径方向の外側から閉塞されることで制限通路24が形成されている。
なお、−30℃以上100℃以下の温度範囲のうちの少なくとも一点で、第2液体は、第1液体L1の主たる成分よりも蒸気圧が高くなっているとともに第1液体L1よりも表面張力が小さくなっている。また例えば、第2液体の蒸気圧は、第1液体L1の主たる成分の蒸気圧の2倍以上とされている。
なお図示の例では、封入液Lにおいて、粒状になった無数の第2液体が第1液体L1中で互いに独立した状態で分散されている。
メンブラン16dは、基材であるゴム材料に第2液体が配合されて形成されている。なお基材としては、例えばスチレン−ブタジエンゴム(SBR)やブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)、イソプレンゴム(IR)等の合成ゴムや天然ゴム(NR)を採用することができる。これらのうち、例えばNRやSBR、BR等が強度に優れており、好適に採用することができる。
なお、封入液Lが含有する第2液体は、後述する防振装置の製造方法における第2液体解放工程が行われることで、メンブラン16dから液室17内に解放されたものである。
そして、この防振装置10においては、振動の入力に伴って弾性体13が変形して主液室14の内容積が変化して主液室14の液圧が変動することで、封入液Lが主液室14と副液室15との間で制限通路24を通って流通し、この流通時に生じる液柱共振により振動が吸収および減衰される。
まず、第1取付け部材11および第2取付け部材12を弾性的に連結するとともに、第2液体を保持するメンブラン16dを液室17内に位置するように配設し、液室17内に第1液体L1を封止する組立工程を行う。
この工程では、図2に示すように、第1取付け部材11と第2取付け部材12とが弾性体13で連結されてなる防振装置本体20を作製する防振装置本体作製工程を行う。
具体的に説明すると、まず、弾性体13および被覆膜13cを形成するための図示しない防振装置本体金型の中に第1取付け部材11および第2取付け部材12をそれぞれ所定位置に配置するとともに、第1取付け部材11および第2取付け部材12にそれぞれ接着下地処理を施した後に接着剤を塗布する。その後、前記防振装置本体金型の中に未加硫ゴムを射出して弾性体13を成形するとともに、この弾性体13と一体に被覆膜13cを成形する。続いて、これらの弾性体13および被覆膜13cに硫黄ガス、圧力および熱をそれぞれ加えて加硫する。そして、前記防振装置本体金型の脱型を行うことにより、防振装置本体20が作製される。
具体的に説明すると、まず、仕切り部材本体16aおよび第1仕切り板16bと、第2仕切り板16cおよび収容筒部16eと、をそれぞれ一体に形成する。その後、第1仕切り板16b、第2仕切り板16cおよび収容筒部16eによって画成されるメンブラン収容空間16fに、第2液体を保持するメンブラン16dを配置した状態で第1仕切り板16bと収容筒部16eとを互いに接合して仕切り部材16を作製する。
具体的に説明すると、ダイヤフラム19を形成するための図示しないダイヤフラム金型の中にダイヤフラムリング19aを所定位置に配置するとともに、ダイヤフラムリング19aの表面に接着下地処理を施した後に接着剤を塗布する。その後、前記ダイヤフラム金型の中に未加硫ゴムを射出してダイヤフラム19を成形した後、そのダイヤフラム19に硫黄ガス、圧力および熱をそれぞれ加えて加硫する。そして、前記ダイヤフラム金型の脱型を行うことにより、外周縁部にダイヤフラムリング19aが埋設されたダイヤフラム19が作製される。
具体的に説明すると、まず、プールP内に貯留された第1液体L1中に、仕切り部材16、ダイヤフラム19および防振装置本体20を入れるとともに、各部材の内部および表面などに空気が残留しないように、例えば仕切り部材16、ダイヤフラム19および防振装置本体20を各別に第1液体L1中で適宜揺動させる。
具体的に説明すると、まず、プールP内に貯留された第1液体L1中で、仕切り部材16を防振装置本体20の第1取付け部材11内に進入させた後、第1取付け部材11の大径部11bを縮径加工して仕切り部材16を第1取付け部材11内に嵌合させる。その後、プールP内に貯留された第1液体L1中で、ダイヤフラム19を第1取付け部材11内に進入させた後、大径部11bの前記他端部を全周にわたって径方向の内側に屈曲させてカシメ部11dを形成し、ダイヤフラムリング19aをカシメ固定する。
なお、組立工程後、形成された前記中間部材を第1液体L1中から取り出し、中間部材の表面の第1液体L1を洗い流す。
具体的に説明すると、前記中間部材を、図示しない恒温槽の内部に配置した後、一定の加熱温度で一定の加熱時間、加熱することによって、第2液体を保持するメンブラン16dを加熱する。本実施形態では、前記中間部材を、例えば約65℃で24時間加熱する。
これにより、メンブラン16dに保持された第2液体が液室17内に解放され、防振装置10が形成される。
また、メンブラン16dの全体が液室17内に位置しているので、第2液体解放工程時にメンブラン16dから解放される第2液体を全て液室17内に解放させることが可能になり、第1液体L1および第2液体を所定の比率で高精度に液室17内に封入することができる。
以上より、主液室14内の封入液L全体で発生する衝撃波を小さく抑えることが可能になり、キャビテーション崩壊時に発生する異音の大きさを低減することができる。
なお、その後さらに振動(荷重)が繰り返し入力されると、第2液体が第1液体L1中でより一層細かくかつ全域にわたって均等に分散されることとなり、前述の作用効果が効果的に奏功される。
例えば、前記実施形態では、第2液体解放工程は、前記中間部材(メンブラン16d)を一定の加熱温度で一定の加熱時間、加熱することでメンブラン16dに保持された第2液体を液室17内に解放するものとしたが、これに代えて、前記中間部材を加振してメンブラン16dを加圧することによって、メンブラン16dに保持された第2液体を液室17内に解放しても良い。
また、前記実施形態では、第2液体は、第1液体L1よりも封入液L中に含まれる重量が少なく、かつ第1液体L1の主たる成分よりも同一温度において蒸気圧が高いものとしたが、これに限られるものではない。
また、第2液体は、第1液体L1よりも表面張力が小さくなくても良い。さらに、第2液体は、第1液体L1よりも極性が低くなくても良い。さらにまた、第2液体は、第1液体L1よりも分子量が高くなくても良い。
また、第2液体の蒸気圧が水単体の蒸気圧よりも高い場合には、第1液体L1として水単体を用いることもできる。つまり、第1液体L1は、水、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのうち少なくとも1つを含有していても良い。
この防振装置30によれば、液保持ゴム31が、主液室32を画成する壁面の少なくとも一部を構成しているので、主液室32内でのキャビテーション崩壊によって発生した衝撃波が液保持ゴム31に伝播されることとなり、発生する異音の大きさをより一層低減することができる。
なお、液保持ゴム31を、弾性体13において前記中心軸線O方向の他方側を向く面の一部に配設しても良い。また、液保持ゴム31を、仕切り部材16において主液室32側に位置する部分のうち、制限通路24における主液室側開口の周縁部に配設することで、主液室32を画成する壁面の少なくとも一部を液保持ゴム31で構成しても良い。また、液保持ゴム31が、主液室32を画成する壁面の全部を構成していても良い。
さらに、図1に示す防振装置10において、弾性体13を液保持ゴムとすることで、主液室14を画成する壁面の少なくとも一部を液保持ゴムで構成しても良い。
また、前記実施形態では、防振装置10、30は、弾性体13、仕切り部材16、ダイヤフラム19を備える構成としたが、これらを備えていない防振装置にも本発明を適用することが可能である。
・天然ゴム 100
・亜鉛基 5
・ステアリン酸 1
・イオウ 2
・加硫促進剤(CBS) 1
・カーボンブラック 50
・パラフィンワックス 2
・フッ素(第2液体となるもの) 8
はじめに、第1の検証試験では、液保持ゴムを一定の加熱温度で一定の加熱時間、加熱することで液保持ゴムから第2液体が解放されること、および液保持ゴムを加熱する加熱温度の違いによる第2液体の解放量の違いに関して検証した。
この検証試験では、複数の液保持ゴムを、加硫直後から24時間、互いに異なる加熱温度で各別に加熱し、加熱終了後に各液保持ゴムから解放(浸出)された第2液体の解放量(ブルーム量)を計測した。
この検証試験では、液保持ゴムを加硫直後から48時間加熱し、加熱終了までの間に時間をあけて複数回、この液保持ゴムから解放された第2液体の解放量を計測した。なお、この第2の検証試験では、加熱温度が50℃の場合と60℃の場合との2つの場合についてそれぞれ、第2液体の解放量を計測した。
この検証試験では、複数の液保持ゴムを、前記放置時間を互いに異ならせた上で、放置時間経過後24時間、60℃で各別に加熱し、加熱終了後に各液保持ゴムから解放された第2液体の解放量を計測した。
まず、実施例として、液保持ゴムを加硫直後10秒間水中に入れて冷却した後、50℃で24時間加熱し、加熱終了後に水中で再度冷却する方法を採用した。一方、比較例として、実施例と同様に液保持ゴムの加熱まで行い、加熱終了後に冷却しない方法を採用した。そして、実施例および比較例についてそれぞれ、液保持ゴムから解放された第2液体の解放量を計測した。
この結果、実施例は比較例よりも第2液体の解放量が約12.3%増加したことが確認された。
11 第1取付け部材
12 第2取付け部材
14、32 主液室
15 副液室
16 仕切り部材
16d メンブラン(液保持ゴム)
17、33 液室
31 液保持ゴム
L 封入液
L1 第1液体
Claims (4)
- 振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付け部材、および他方に連結されるとともに前記第1取付け部材に弾性的に連結された第2取付け部材を備え、
前記第1取付け部材内の液室に、互いに非相溶性を有する第1液体および第2液体を少なくとも含有する封入液が封入された防振装置を形成する防振装置の製造方法であって、
前記第1取付け部材および前記第2取付け部材を弾性的に連結するとともに、第2液体を保持する液保持ゴムをその少なくとも一部が液室内に位置するように配設し、前記液室内に第1液体を封止する組立工程と、
前記液保持ゴムに保持された第2液体を前記液室内に解放させる第2液体解放工程と、を備えていることを特徴とする防振装置の製造方法。 - 請求項1記載の防振装置の製造方法であって、
前記液保持ゴムは、全体が前記液室内に位置していることを特徴とする防振装置の製造方法。 - 請求項1又は2記載の防振装置の製造方法で製造された防振装置であって、
前記第2液体は、第1液体よりも前記封入液中に含まれる重量が少なく、かつ第1液体の主たる成分よりも同一温度において蒸気圧が高いことを特徴とする防振装置。 - 請求項3記載の防振装置であって、
前記液室を、振動の入力に伴って液圧が変動する一方側の主液室と他方側の副液室とに区画する仕切り部材を備え、
前記液保持ゴムは、前記主液室を画成する壁面の少なくとも一部を構成していることを特徴とする防振装置。
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