JPWO2009072283A1 - 燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
加湿装置16は、被加湿ガスが内部を流通する中空糸モジュール42と、中空糸モジュール42を収容する筒状のケース30とを備えている。ケース30には、流路30hに加湿ガスを導入するための導入口32が一端側の周面に形成され、流路30hから加湿ガスを排出するための排出口が他端側の周面に形成されている。ケース30は湾曲部分37を含み、その湾曲部分37に沿う形状に中空糸モジュール42が湾曲している。
Description
本発明は、加湿装置およびこれを用いた燃料電池システムに関する。
燃料電池は、水素と酸素とを電気化学的に反応させることで、電力と熱を発生させる装置である。近年注目されている高分子電解質形燃料電池においては、高分子電解質膜のイオン伝導性を保つために、水素を含む燃料ガスおよび酸素を含む酸化剤ガス(これらを反応ガスという)の少なくとも一方のガスを加湿してスタックに供給することが必要である。一般的な燃料電池システムでは、スタックから排出される高湿度の排気ガスまたは冷却水を熱源および水源として、全熱交換型加湿装置により反応ガスの加湿を行っている。
従来の加湿装置として、透湿性を有する中空糸を用いたものが知られている。特開2004−6100号公報に開示された加湿装置を図8に示す。図8に示す加湿装置100においては、中空糸モジュール101の外周面に沿って湿潤空気または水を流通させ、中空糸モジュール101の内部(中空糸の内部)に反応ガスを流通させることによって、全熱交換が行われる。
以下、加湿装置において、水を供給する側のガス(例えば湿潤空気)を加湿ガスと定義し、水を受け取る側のガス(反応ガス)を被加湿ガスと定義する。
加湿ガスが凝縮性を有する場合、加湿ガスは加湿装置の内部で冷却され、凝縮する。凝縮水は、圧力損失の増大の原因になりやすい。そのため、従来の加湿装置では、加湿ガスが上から下に流れる構造になっている。そのようにすれば、凝縮水が重力の助けを借りて加湿装置の外部に排出されるので、圧力損失の増大を防ぐ観点で有利である。例えば、図8に示す加湿装置100によれば、導入口105がケース103の上部に形成され、排出口107がケース103の下部に形成されている。湿潤空気などの加湿ガスは、導入口105からケース103の内部の空間109に導入され、排出口107から排出される。
図8に示す加湿装置100は、圧力損失の面では有利であるが、全熱交換効率(=水の回収効率)の面では改善の余地がある。全熱交換効率を向上させるためには、加湿ガスから生ずる凝縮水と中空糸モジュールとの接触時間をどれだけ稼げるかが重要となる。
本発明は、高い全熱回収効率を達成しうる加湿装置およびそれを用いた燃料電池システムを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、
被加湿ガスが内部を流通する中空糸モジュールと、
中空糸モジュールを収容する筒状のケースとを備え、
ケース内に加湿ガスを導入するための導入口がケースの一端側の周面に形成され、ケースから加湿ガスを排出するための排出口がケースの他端側の周面に形成され、
導入口が形成されている位置でのケースの底面が、導入口から排出口に向かう経路上で上面へと切り替わるように形状が定められた湾曲部分をケースが含み、その湾曲部分に沿う形状に中空糸モジュールが湾曲している、加湿装置を提供する。
被加湿ガスが内部を流通する中空糸モジュールと、
中空糸モジュールを収容する筒状のケースとを備え、
ケース内に加湿ガスを導入するための導入口がケースの一端側の周面に形成され、ケースから加湿ガスを排出するための排出口がケースの他端側の周面に形成され、
導入口が形成されている位置でのケースの底面が、導入口から排出口に向かう経路上で上面へと切り替わるように形状が定められた湾曲部分をケースが含み、その湾曲部分に沿う形状に中空糸モジュールが湾曲している、加湿装置を提供する。
他の側面において、本発明は、
被加湿ガスが内部を流通する中空糸モジュールと、
中空糸モジュールを収容する筒状のケースとを備え、
ケース内に加湿ガスを導入するための導入口がケースの一端側の周面に形成され、ケースから加湿ガスを排出するための排出口がケースの他端側の周面に形成され、
導入口が排出口よりも上方に位置する設置状態での縦断面に現れるケースの内周面の接線と、鉛直方向に平行かつ縦断面に直交する基準面とのなす角度が加湿ガスの流れ方向の下流側に進むにつれて連続的または段階的に小さくなり、ゼロを跨いで再び増加に転じるように湾曲した部分をケースが含み、その湾曲部分に沿う形状に中空糸モジュールが湾曲している、加湿装置を提供する。
被加湿ガスが内部を流通する中空糸モジュールと、
中空糸モジュールを収容する筒状のケースとを備え、
ケース内に加湿ガスを導入するための導入口がケースの一端側の周面に形成され、ケースから加湿ガスを排出するための排出口がケースの他端側の周面に形成され、
導入口が排出口よりも上方に位置する設置状態での縦断面に現れるケースの内周面の接線と、鉛直方向に平行かつ縦断面に直交する基準面とのなす角度が加湿ガスの流れ方向の下流側に進むにつれて連続的または段階的に小さくなり、ゼロを跨いで再び増加に転じるように湾曲した部分をケースが含み、その湾曲部分に沿う形状に中空糸モジュールが湾曲している、加湿装置を提供する。
さらに、他の側面において、本発明は、
燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて発電する燃料電池と、
燃料ガスおよび酸化剤ガスから選ばれる少なくとも一方の燃料電池への供給経路に配置された加湿装置とを備え、
加湿装置として、上記本発明の加湿装置を用いた、燃料電池システムを提供する。
燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて発電する燃料電池と、
燃料ガスおよび酸化剤ガスから選ばれる少なくとも一方の燃料電池への供給経路に配置された加湿装置とを備え、
加湿装置として、上記本発明の加湿装置を用いた、燃料電池システムを提供する。
本発明の加湿装置によれば、中空糸モジュールを収容するケースが湾曲部分を含む。そのため、従来のストレート形状の加湿装置に比べ、凝縮水と中空糸モジュールとの接触時間を稼ぐことができ、水の回収効率が高まる。言い換えれば、ブロワやコンプレッサのような補機の動力増に頼ることなく、被加湿ガスを効率よく加湿することができる。したがって、本発明の加湿装置を燃料電池システム、特に、電解質膜の乾燥によって劣化しやすい高分子電解質形燃料電池(PEFC)システムに用いることにより、燃料電池システムの運転範囲の拡大と信頼性の向上を図ることができる。
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の燃料電池システムの構成図である。燃料電池システム200は、燃料電池12、空気供給装置14、加湿装置16、改質装置18および冷却系統20を備えている。燃料電池システム200を構成するこれらの機器は、加湿装置16を除いて公知のものであるため、その詳細な説明は省略する。
図1は、本実施形態の燃料電池システムの構成図である。燃料電池システム200は、燃料電池12、空気供給装置14、加湿装置16、改質装置18および冷却系統20を備えている。燃料電池システム200を構成するこれらの機器は、加湿装置16を除いて公知のものであるため、その詳細な説明は省略する。
燃料電池12(燃料電池スタック)には、改質装置18から水蒸気改質された改質ガス(水素濃度75〜80%)が燃料ガスとして供給され、空気供給装置14から空気が酸化剤ガスとして供給される。燃料電池12は、改質ガスに含まれる水素と空気に含まれる酸素とを反応させて発電する。燃料電池12を所定の温度条件に保つために、冷却系統20より、所定温度および所定水量の冷却水が燃料電池12に供給される。
燃料電池12は、例えば高分子電解質形燃料電池である。燃料電池12に水和電解質が用いられているので、燃料電池12に供給される改質ガスおよび空気は、適切に加湿されていることが必要である。本実施形態において、改質ガスは水蒸気改質によるものであるから、そのS/C比(スチームカーボン比)に応じて自動的に加湿がなされる。他方、空気の加湿は、加湿装置16で行われる。もちろん、水素を含む燃料ガスを加湿するために加湿装置16を用いてもよい。加湿装置16は、燃料ガスおよび酸化剤ガスから選ばれる一方または両方のガスの燃料電池12への供給経路に配置される。
図2Aは、第1実施形態の加湿装置16の縦断面図であり、図2Bは、図2Aに示す加湿装置16のA矢視図である。加湿装置16は、中空糸モジュール42とケース30とを備えている。中空糸モジュール42は、ケース30に収容されている。ケース30の内部の空間が、被加湿ガスを加湿する加湿ガスの流路30hとして用いられる。流路30hは、中空糸モジュール42の長手方向に沿って形成されている。中空糸モジュール42の内部(厳密には中空糸モジュール42を構成する多数の中空糸の内部)を流通する被加湿ガスと、ケース30の内部の流路30hを流通する加湿ガスとの間で全熱交換が行われ、加湿ガスから被加湿ガスへと水分が補給される。
ケース30は、筒状の形状を有する部品である。ケース30には、流路30hに加湿ガスを導入するための導入口32が一端側の周面に形成され、流路30hから加湿ガスを排出するための排出口34が他端側の周面に形成されている。導入口32と排出口34との間において、流路30hの断面積および断面形状は一定である。導入口32と排出口34との間の2箇所でケース30が湾曲することにより、第1の湾曲部分37および第2の湾曲部分39が形成されている。第1の湾曲部分37は、導入口32が形成されている上流側の直線部分40から続いている部分である。第1の湾曲部分37と、排出口34が形成されている下流側の直線部分41との間の部分が第2の湾曲部分39である。ケース30の内部において、中空糸モジュール42が、これら湾曲部分37,39に沿って湾曲している。これらの湾曲部分37,39を設けることにより、加湿ガスから生成する凝縮水と中空糸モジュール42との接触時間を長くすることができる。
なお、ケース30の一端側の周面とは、ケース30の中央部から一方の開口部(開口部36)までの間の周面を指す。ケース30の他端側の周面とは、ケース30の中央部から他方の開口部(開口部38)までの間の周面を指す。
ケース30は、第1の湾曲部分37および第2の湾曲部分39が、それぞれ180°の角度の円弧状をなすように湾曲しているとよい。そのようにすれば、凝縮水と中空糸モジュール42との接触時間を長くする効果が高まる。また、本実施形態において、ケース30は、2つの湾曲部分37,39を含み、かつS字形状を有する。言い換えれば、流路30hがS字を描くようにケース30が湾曲している。さらに言い換えれば、ケース30は、U字状に湾曲した部分を2箇所に有する。複数の湾曲部分37,39を設けることにより、凝縮水と中空糸モジュール42との接触時間を長くする効果がさらに高まる。なお、湾曲部分を設ける箇所は2箇所に限定されるものではなく、例えば偶数箇所に設けることができる。
本実施形態の加湿装置16は、直線部分40を水平に保ち、導入口32が排出口34よりも上方に位置する姿勢で設置され、使用されることを想定している。したがって、本明細書では、導入口32が形成されている直線部分40を水平に保ったまま、鉛直方向に関する導入口32と排出口34との距離が最大となるように導入口32を排出口34よりも上方に位置させた状態を加湿装置16の設置状態(実際の使用状態)と定義する。
導入口32は、加湿装置16が設置状態となったときに上方に向かって開口しているとよい。言い換えれば、加湿装置16の上面図に導入口32の全部が現れているとよい。そのようにすれば、燃料電池12の排気に凝縮水が含まれていても、その凝縮水を導入口32から流路30hにスムーズに導くことができる。他方、排出口34は、加湿装置16が上記設置状態となったときに下方に向かって開口しているとよい。言い換えれば、加湿装置16の下面図に排出口34の全部が現れているとよい。そのようにすれば、ケース30から凝縮水をスムーズに排出できるので、ブロワの動力増を抑制する観点では有利である。
ただし、第2実施形態で説明するように、排出口34は、上方に向かって開口していてもよい。また、導入口32はケース30の周面の複数箇所に形成されていてもよいし、本実施形態のように1つのみ形成されていてもよい。排出口34についても同様である。導入口32の数および排出口34の数をそれぞれ1つに制限すると、導入口32および排出口34のそれぞれに配管を接続しやすく、設計も容易である。
ケース30の一方の開口部36には、被加湿ガスを中空糸モジュール42に供給するための配管が図示しないヘッド(給排気ブロック)を介して接続され、他方の開口部38には、加湿されたガスを燃料電池12に供給するための配管が接続される。したがって、加湿装置16においては、加湿ガスの流れ方向と被加湿ガスの流れ方向とが互いに向かい合う交換系が形成されている。Oリング35は、加湿装置16と、図示しないヘッド(給排気ブロック)とのシールに用いられる。
ケース30は、金属や樹脂のような材料で構成されているとよい。樹脂は射出成形などの成形方法によって様々な形状に容易に成形でき、湾曲部分37,39を容易に設けることができるので、ケース30の材料として好適である。また、ケース30を構成するべき部品として2つの樋状の部品を準備し、一方に中空糸モジュール42を嵌め込み、その後、他方で蓋をして一体化することにより、加湿装置16を組み立てるようにしてもよい。2つの樋状の部品を一体化する方法は特に限定されず、超音波溶着、熱溶着、接着剤の使用などの方法を例示できる。これらの方法によれば、ケース30の内部に中空糸モジュール42を簡単に収容できる。
次に、中空糸モジュール42について説明する。中空糸モジュール42は、1つまたは複数の束に束ねられた多数の中空糸によって構成されている。中空糸が散開しないように、中空糸モジュール42の両端部43,43は、樹脂などの材料で固められている。ケース30の内部において、中空糸モジュール42は、流路30hと同じ形状に保持される。ケース30から加湿ガスが漏れないように、中空糸モジュール42の両端部43,43とケース30との隙間は封止材で埋められている。
中空糸は、透湿性を有するものであれば種類は問わず、樹脂多孔質材料から製造される一般的なものでよい。例えば、ポリスルフォン系の多孔質中空糸は、紡糸後の熱処理によって膜から溶剤が抜けて多孔質となり、透湿性が付与される。紡糸直後は可撓性に富む一方、熱処理によって硬化して安定な形状となる中空糸を用いて中空糸モジュールを製造する場合、次のような操作を行えばよい。まず、紡糸直後に予備乾燥を行う(例えば50℃で1時間)。予備乾燥後、可撓性のある状態で中空糸を結束して、中空糸モジュールを得る。さらに、中空糸モジュールを金型(例えばS字の金型)に嵌めて、金型とともに熱処理する(例えば160℃で30分間)。このようにすれば、S字状に硬化した中空糸モジュール42を製造することができる。
なお、透湿性を獲得した後も可撓性を有する中空糸、例えば、パーフルオロスルホン酸樹脂(Du Pond社製 商品名Nafion)等の材料でできた中空糸を用いて中空糸モジュール42を製造すると、ケース30に収容する前の成形が不要となる。その他、ポリテトラフルオロエチレンに代表されるフッ素樹脂でできた多孔質中空糸を用いてもよい。
次に、図3を参照して加湿装置16の作用を説明する。空気などの被加湿ガスは、白抜き矢印で示すように、ケース30の下側の開口部38から中空糸モジュール42の内部に導かれる。中空糸モジュール42の内部を下から上へと流通した被加湿ガスは、ケース30の上側の開口部36から加湿装置16の外部へと排出され、燃料電池12に送られる。一方、加湿ガスは、導入口32からケース30の内部の流路30hへと導かれ、下流側の排出口34に向かって流通する。中空糸モジュール42の内部を流通する被加湿ガスと、流路30hを流通する加湿ガスとの間で全熱交換が行われ、加湿ガスから被加湿ガスに水分が補給される。
加湿ガスは、水蒸気で飽和していたり、それに近い状態であったりする。さらに、後述するように、燃料電池12の排気には、加湿装置16に導入される以前に凝縮水が含まれることがある。導入口32から流路30hに導入された凝縮水は、自重により、導入口32が形成されている側とは反対側の内周面30pに達する(破線(1))。このとき、凝縮水は、中空糸モジュール42を貫通する経路をたどり、中空糸モジュール42の中心部に位置する中空糸および導入口32に向かい合う側とは反対側に位置する中空糸にも接することとなる。
さらに、凝縮水は、ケース30の内周面30pに沿って流れる。第1の湾曲部分37に達した凝縮水は、自重により、ケース30の内周面30pから離れ、中空糸モジュール42を貫通する経路をたどる形で反対側の内周面30qに達する(破線(2))。凝縮水は、第2の湾曲部分39でも同様の経路をたどり(破線(3))、排出口34からケース30の外部へと排出される。このように、湾曲部分37,39が設けられていることにより、凝縮水が壁伝いに流れにくくなり、結果として、凝縮水と中空糸モジュール42との接触機会が増える(接触時間が長くなる)。
従来のストレート形状の加湿装置(図8参照)では凝縮水と中空糸モジュールの接触機会が限られるので、凝縮水の有効利用を図りにくい。これに対し、本実施形態の加湿装置16によれば、凝縮水が中空糸モジュール42の長手方向を何度も横切るような形で流れるので、凝縮水からも効率的に水を回収することができる。
図3に破線で示すような凝縮水の流れが形成されるには、次のような条件を満足すればよい。まず、図4に示すように、加湿装置16の姿勢を上述した設置状態に定める。この設置状態での縦断面(加湿装置16の縦断面)に現れるケース30の内周面30pの接線TL(図4の例では接線TL1および接線TL2)と、鉛直方向に平行かつ上記縦断面に直交する基準面BLとのなす角度θが加湿ガスの流れ方向の下流側に進むにつれて連続的または段階的に小さくなり、ゼロを跨いで再び増加に転じるように、湾曲部分37,39の形状が定められているとよい。
なお、「角度θが段階的に小さくなる」とは、中空糸モジュール40を構成する中空糸の折れが顕在化しない範囲内であれば、湾曲部分37,39の形状は、当該湾曲部分37,39における内周面30p,30qが縦断面で直線を示すように定められていてもよいことを意味する。縦断面において湾曲部分37,39の内周面30p,30qが直線を示す場合、厳密には接線を定義することができないので、その直線自体を図4に示す接線TLとして取り扱うものとする。
なお、上記「縦断面」とは、ケース30が2次元の湾曲形状を有する場合には、加湿ガスの流れ方向に沿ってケース30を左右2つの樋状部分に分割する断面のことである。ケース30が3次元の湾曲形状を有する場合には、加湿ガスの流れ方向に沿ってケース30を左右2つの樋状部分に分割する曲面状の断面の平面への投影図が、上記「縦断面」となる。そして、これらの縦断面において、上記接線がそれぞれ定義されうる。
別の視点から、第1の湾曲部分37は、以下のような条件を満足する形状を有していてもよい。すなわち、上述した設置状態において、導入口32が形成されている位置でのケース30の底面(内周面30p)が、導入口32から排出口34に向かう経路上で上面へと切り替わるように、湾曲部分37の形状が定められているとよい。導入口32が形成されている位置でのケース30の底面(内周面30p)が、導入口32から排出口34に向かう経路上で上面へと切り替わり、その後さらに底面へと切り替わることにより、第2の湾曲部分39が形成される。底面が上面へと変化するような切り替わり部分、すなわち、湾曲部分37,39があると、凝縮水は壁伝いに流れにくくなり、図3に示すような経路をたどりやすくなる。
また、図2Bに示すA矢視図から理解できるように、本実施形態の加湿装置16は、横断面の形状が扁平状となっている。中空糸モジュール42の長手方向に直交する断面を横断面と定義したとき、導入口32を含む位置における中空糸モジュール42の横断面は、水平方向の長さWが鉛直方向の長さHよりも大である扁平形状をなしている。ただし、水平方向および鉛直方向は、加湿装置16の設置状態で定まる方向である。
図5Aに示すように、例えば、ケース29および中空糸モジュール46が円筒形の場合、凝縮水は、中空糸モジュール46の外周面およびケース29の内周面を伝って流れ落ちやすいので、中空糸モジュール46を貫通する経路をたどる量(画分)が少なくなる。これに対し、図5Bに示すように、本実施形態によれば、中空糸モジュール42を貫通する経路をたどる凝縮水の量を増やすことができるため、凝縮水からの水の回収効率が高まる。
(第2実施形態)
図6Aは、第2実施形態の加湿装置56の縦断面図であり、図6Bは、図6Aに示す加湿装置56のA矢視図である。本実施形態は、ケースの湾曲部分が奇数箇所である点で第1実施形態と相違する。
図6Aは、第2実施形態の加湿装置56の縦断面図であり、図6Bは、図6Aに示す加湿装置56のA矢視図である。本実施形態は、ケースの湾曲部分が奇数箇所である点で第1実施形態と相違する。
図6Aおよび図6Bに示すように、ケース31は、湾曲部分47を1箇所含み、かつU字形状を有する。湾曲部分47の上流側と下流側には、それぞれ、直線部分57,58がある。上流側の直線部分57に導入口32が形成され、下流側の直線部分58に排出口34が形成されている。本実施形態によれば、湾曲部分47が1箇所にのみ設けられているため、第1実施形態の加湿装置16よりも小型化の面で有利である。
導入口32の位置は、本実施形態と第1実施形態とで同じであるが、排出口34の位置が本実施形態と第1実施形態とで相違している。具体的には、加湿装置56を設置状態としたときに、排出口34が上方に向かって開口している。排出口34は、直線部分58に収容されている中空糸モジュール42よりも高い位置にある。
図7に示すように、導入口32から流路31hに導入された凝縮水は、自重により、導入口32が形成されている側とは反対側の内周面31pに達する(破線(1))。このとき、凝縮水は、中空糸モジュール42を貫通する経路をたどり、中空糸モジュール42の中心部に位置する中空糸にも接することとなる。さらに、凝縮水は、ケース31の内周面31pに沿って流れる。湾曲部分47に達した凝縮水は、自重により、ケース31の内周面31pから離れ、中空糸モジュール42を貫通する経路をたどる形で反対側の内周面31qに達する(破線(2))。排出口34が上方を向いているので、凝縮水はケース31の底部(直線部分58の流路31h)に貯留ないし滞留しやすい。凝縮水が貯留ないし滞留すると、中空糸モジュール42が凝縮水に浸漬された状態となるので、加湿効率が高まる。
(燃料電池の排気について)
次に、燃料電池の排気について説明する。定置コージェネレーション用1kW級の燃料電池システムの典型的な仕様および運転条件を表1に示す。なお、このシステムでは高分子電解質形燃料電池が用いられている。
次に、燃料電池の排気について説明する。定置コージェネレーション用1kW級の燃料電池システムの典型的な仕様および運転条件を表1に示す。なお、このシステムでは高分子電解質形燃料電池が用いられている。
この燃料電池システムは、1.2kWの出力を得るために、毎分11.5リットル(slpm:standard liter per minutes)の水素と5.7リットルの酸素とを消費する。適切な燃料利用率(75%)および酸素利用率(50%)を勘案し、実際にスタックに供給される水素量は毎分15.3リットル、空気量は54.6リットルである。また、発生する熱を除去するために、60℃の冷却水が毎分1.6リットルの流量でスタックに供給される。スタックに供給された冷却水は、スタックの内部で約11℃昇温し、71℃の温水となって排出される。
前述の通り、水素の加湿は不要であり、空気の加湿はスタックからの排気を用いて行われる。ここで、スタックからの排気の熱条件について表2に示す。スタックに供給された毎分54.6リットルの空気に含まれる酸素は、その半分が消費される(酸素利用率50%)。したがって、ドライガス換算で毎分49リットルのガスがスタックから排出される。排気の温度は70.5℃であり、この排気が水蒸気で飽和していると仮定すると、スタックから排出される水量は毎分18.1gとなる。
ところが、表1および表2の条件を満足する現実の燃料電池システムの排気を氷冷凝縮して回収される水量は毎分21.6gであり、上述の計算値よりも3.5g多かった。すなわち、この3.5gに相当する水は、水蒸気ではなく温水としてスタックから排出されていた。なお、仮にこの3.5gに相当する水が水蒸気として排出された場合の蒸気圧は35800Paであり、そのときの露点は73.2℃である。この数値を換算露点と定義し、以降の試験で二相流を作るときの装置制御パラメータとした。
まず、外径が1.0mm、長さが300mmのポリスルフォン中空糸(NOK社製(試作品))を500本用いて中空糸モジュールを製造した。この中空糸モジュールを用いて、図2Aに示す加湿装置(実施例)と、図8に示す従来の加湿装置(比較例)とを製造した。
次に、表1および表2に示す加湿ガスおよび被加湿ガス(空気)を模擬できる試験装置を作り、その試験設備を用いて加湿装置の評価を行った。具体的には、ドライガス換算で毎分49.1リットルの流量の加湿ガスを換算露点である露点73℃になるようにバブラーで加湿した後、70.5℃まで冷却して加湿装置に供給した。一方、被加湿ガスとして、毎分54.6リットルの流量の乾燥空気を加湿装置に供給した。そして、加湿装置の出口での被加湿ガスの露点を計測することにより、加湿装置の性能を評価した。露点の計測には、鏡面式露点計を用いた。表3に結果を示す。
実施例の加湿装置での被加湿ガスの露点は比較例の加湿装置でのそれに比べて高かった。これは、効率に換算して約7%の改善に相当する。一般的に、水蒸気を加湿ガスとして用いたときの全熱交換効率は70%程度が限界とされており、比較例では概ねこれに準じた効率(68.7%)が得られたが、実施例ではこれを上回る効率(74.1%)が得られた。実施例の加湿装置によれば、供給された水蒸気以外の水源、つまり、二相流に含まれる凝縮水からも水を回収することができた。
本発明は、加湿装置およびこれを用いた燃料電池システムに関する。
燃料電池は、水素と酸素とを電気化学的に反応させることで、電力と熱を発生させる装置である。近年注目されている高分子電解質形燃料電池においては、高分子電解質膜のイオン伝導性を保つために、水素を含む燃料ガスおよび酸素を含む酸化剤ガス(これらを反応ガスという)の少なくとも一方のガスを加湿してスタックに供給することが必要である。一般的な燃料電池システムでは、スタックから排出される高湿度の排気ガスまたは冷却水を熱源および水源として、全熱交換型加湿装置により反応ガスの加湿を行っている。
従来の加湿装置として、透湿性を有する中空糸を用いたものが知られている。特開2004−6100号公報に開示された加湿装置を図8に示す。図8に示す加湿装置100においては、中空糸モジュール101の外周面に沿って湿潤空気または水を流通させ、中空糸モジュール101の内部(中空糸の内部)に反応ガスを流通させることによって、全熱交換が行われる。
以下、加湿装置において、水を供給する側のガス(例えば湿潤空気)を加湿ガスと定義し、水を受け取る側のガス(反応ガス)を被加湿ガスと定義する。
加湿ガスが凝縮性を有する場合、加湿ガスは加湿装置の内部で冷却され、凝縮する。凝縮水は、圧力損失の増大の原因になりやすい。そのため、従来の加湿装置では、加湿ガスが上から下に流れる構造になっている。そのようにすれば、凝縮水が重力の助けを借りて加湿装置の外部に排出されるので、圧力損失の増大を防ぐ観点で有利である。例えば、図8に示す加湿装置100によれば、導入口105がケース103の上部に形成され、排出口107がケース103の下部に形成されている。湿潤空気などの加湿ガスは、導入口105からケース103の内部の空間109に導入され、排出口107から排出される。
図8に示す加湿装置100は、圧力損失の面では有利であるが、全熱交換効率(=水の回収効率)の面では改善の余地がある。全熱交換効率を向上させるためには、加湿ガスから生ずる凝縮水と中空糸モジュールとの接触時間をどれだけ稼げるかが重要となる。
本発明は、高い全熱回収効率を達成しうる加湿装置およびそれを用いた燃料電池システムを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、
被加湿ガスが内部を流通する中空糸モジュールと、
中空糸モジュールを収容する筒状のケースとを備え、
ケース内に加湿ガスを導入するための導入口がケースの一端側の周面に形成され、ケースから加湿ガスを排出するための排出口がケースの他端側の周面に形成され、
導入口が形成されている位置でのケースの底面が、導入口から排出口に向かう経路上で上面へと切り替わるように形状が定められた湾曲部分をケースが含み、その湾曲部分に沿う形状に中空糸モジュールが湾曲している、加湿装置を提供する。
被加湿ガスが内部を流通する中空糸モジュールと、
中空糸モジュールを収容する筒状のケースとを備え、
ケース内に加湿ガスを導入するための導入口がケースの一端側の周面に形成され、ケースから加湿ガスを排出するための排出口がケースの他端側の周面に形成され、
導入口が形成されている位置でのケースの底面が、導入口から排出口に向かう経路上で上面へと切り替わるように形状が定められた湾曲部分をケースが含み、その湾曲部分に沿う形状に中空糸モジュールが湾曲している、加湿装置を提供する。
他の側面において、本発明は、
被加湿ガスが内部を流通する中空糸モジュールと、
中空糸モジュールを収容する筒状のケースとを備え、
ケース内に加湿ガスを導入するための導入口がケースの一端側の周面に形成され、ケースから加湿ガスを排出するための排出口がケースの他端側の周面に形成され、
導入口が排出口よりも上方に位置する設置状態での縦断面に現れるケースの内周面の接線と、鉛直方向に平行かつ縦断面に直交する基準面とのなす角度が加湿ガスの流れ方向の下流側に進むにつれて連続的または段階的に小さくなり、ゼロを跨いで再び増加に転じるように湾曲した部分をケースが含み、その湾曲部分に沿う形状に中空糸モジュールが湾曲している、加湿装置を提供する。
被加湿ガスが内部を流通する中空糸モジュールと、
中空糸モジュールを収容する筒状のケースとを備え、
ケース内に加湿ガスを導入するための導入口がケースの一端側の周面に形成され、ケースから加湿ガスを排出するための排出口がケースの他端側の周面に形成され、
導入口が排出口よりも上方に位置する設置状態での縦断面に現れるケースの内周面の接線と、鉛直方向に平行かつ縦断面に直交する基準面とのなす角度が加湿ガスの流れ方向の下流側に進むにつれて連続的または段階的に小さくなり、ゼロを跨いで再び増加に転じるように湾曲した部分をケースが含み、その湾曲部分に沿う形状に中空糸モジュールが湾曲している、加湿装置を提供する。
さらに、他の側面において、本発明は、
燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて発電する燃料電池と、
燃料ガスおよび酸化剤ガスから選ばれる少なくとも一方の燃料電池への供給経路に配置された加湿装置とを備え、
加湿装置として、上記本発明の加湿装置を用いた、燃料電池システムを提供する。
燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて発電する燃料電池と、
燃料ガスおよび酸化剤ガスから選ばれる少なくとも一方の燃料電池への供給経路に配置された加湿装置とを備え、
加湿装置として、上記本発明の加湿装置を用いた、燃料電池システムを提供する。
本発明の加湿装置によれば、中空糸モジュールを収容するケースが湾曲部分を含む。そのため、従来のストレート形状の加湿装置に比べ、凝縮水と中空糸モジュールとの接触時間を稼ぐことができ、水の回収効率が高まる。言い換えれば、ブロワやコンプレッサのような補機の動力増に頼ることなく、被加湿ガスを効率よく加湿することができる。したがって、本発明の加湿装置を燃料電池システム、特に、電解質膜の乾燥によって劣化しやすい高分子電解質形燃料電池(PEFC)システムに用いることにより、燃料電池システムの運転範囲の拡大と信頼性の向上を図ることができる。
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の燃料電池システムの構成図である。燃料電池システム200は、燃料電池12、空気供給装置14、加湿装置16、改質装置18および冷却系統20を備えている。燃料電池システム200を構成するこれらの機器は、加湿装置16を除いて公知のものであるため、その詳細な説明は省略する。
図1は、本実施形態の燃料電池システムの構成図である。燃料電池システム200は、燃料電池12、空気供給装置14、加湿装置16、改質装置18および冷却系統20を備えている。燃料電池システム200を構成するこれらの機器は、加湿装置16を除いて公知のものであるため、その詳細な説明は省略する。
燃料電池12(燃料電池スタック)には、改質装置18から水蒸気改質された改質ガス(水素濃度75〜80%)が燃料ガスとして供給され、空気供給装置14から空気が酸化剤ガスとして供給される。燃料電池12は、改質ガスに含まれる水素と空気に含まれる酸素とを反応させて発電する。燃料電池12を所定の温度条件に保つために、冷却系統20より、所定温度および所定水量の冷却水が燃料電池12に供給される。
燃料電池12は、例えば高分子電解質形燃料電池である。燃料電池12に水和電解質が用いられているので、燃料電池12に供給される改質ガスおよび空気は、適切に加湿されていることが必要である。本実施形態において、改質ガスは水蒸気改質によるものであるから、そのS/C比(スチームカーボン比)に応じて自動的に加湿がなされる。他方、空気の加湿は、加湿装置16で行われる。もちろん、水素を含む燃料ガスを加湿するために加湿装置16を用いてもよい。加湿装置16は、燃料ガスおよび酸化剤ガスから選ばれる一方または両方のガスの燃料電池12への供給経路に配置される。
図2Aは、第1実施形態の加湿装置16の縦断面図であり、図2Bは、図2Aに示す加湿装置16のA矢視図である。加湿装置16は、中空糸モジュール42とケース30とを備えている。中空糸モジュール42は、ケース30に収容されている。ケース30の内部の空間が、被加湿ガスを加湿する加湿ガスの流路30hとして用いられる。流路30hは、中空糸モジュール42の長手方向に沿って形成されている。中空糸モジュール42の内部(厳密には中空糸モジュール42を構成する多数の中空糸の内部)を流通する被加湿ガスと、ケース30の内部の流路30hを流通する加湿ガスとの間で全熱交換が行われ、加湿ガスから被加湿ガスへと水分が補給される。
ケース30は、筒状の形状を有する部品である。ケース30には、流路30hに加湿ガスを導入するための導入口32が一端側の周面に形成され、流路30hから加湿ガスを排出するための排出口34が他端側の周面に形成されている。導入口32と排出口34との間において、流路30hの断面積および断面形状は一定である。導入口32と排出口34との間の2箇所でケース30が湾曲することにより、第1の湾曲部分37および第2の湾曲部分39が形成されている。第1の湾曲部分37は、導入口32が形成されている上流側の直線部分40から続いている部分である。第1の湾曲部分37と、排出口34が形成されている下流側の直線部分41との間の部分が第2の湾曲部分39である。ケース30の内部において、中空糸モジュール42が、これら湾曲部分37,39に沿って湾曲している。これらの湾曲部分37,39を設けることにより、加湿ガスから生成する凝縮水と中空糸モジュール42との接触時間を長くすることができる。
なお、ケース30の一端側の周面とは、ケース30の中央部から一方の開口部(開口部36)までの間の周面を指す。ケース30の他端側の周面とは、ケース30の中央部から他方の開口部(開口部38)までの間の周面を指す。
ケース30は、第1の湾曲部分37および第2の湾曲部分39が、それぞれ180°の角度の円弧状をなすように湾曲しているとよい。そのようにすれば、凝縮水と中空糸モジュール42との接触時間を長くする効果が高まる。また、本実施形態において、ケース30は、2つの湾曲部分37,39を含み、かつS字形状を有する。言い換えれば、流路30hがS字を描くようにケース30が湾曲している。さらに言い換えれば、ケース30は、U字状に湾曲した部分を2箇所に有する。複数の湾曲部分37,39を設けることにより、凝縮水と中空糸モジュール42との接触時間を長くする効果がさらに高まる。なお、湾曲部分を設ける箇所は2箇所に限定されるものではなく、例えば偶数箇所に設けることができる。
本実施形態の加湿装置16は、直線部分40を水平に保ち、導入口32が排出口34よりも上方に位置する姿勢で設置され、使用されることを想定している。したがって、本明細書では、導入口32が形成されている直線部分40を水平に保ったまま、鉛直方向に関する導入口32と排出口34との距離が最大となるように導入口32を排出口34よりも上方に位置させた状態を加湿装置16の設置状態(実際の使用状態)と定義する。
導入口32は、加湿装置16が設置状態となったときに上方に向かって開口しているとよい。言い換えれば、加湿装置16の上面図に導入口32の全部が現れているとよい。そのようにすれば、燃料電池12の排気に凝縮水が含まれていても、その凝縮水を導入口32から流路30hにスムーズに導くことができる。他方、排出口34は、加湿装置16が上記設置状態となったときに下方に向かって開口しているとよい。言い換えれば、加湿装置16の下面図に排出口34の全部が現れているとよい。そのようにすれば、ケース30から凝縮水をスムーズに排出できるので、ブロワの動力増を抑制する観点では有利である。
ただし、第2実施形態で説明するように、排出口34は、上方に向かって開口していてもよい。また、導入口32はケース30の周面の複数箇所に形成されていてもよいし、本実施形態のように1つのみ形成されていてもよい。排出口34についても同様である。導入口32の数および排出口34の数をそれぞれ1つに制限すると、導入口32および排出口34のそれぞれに配管を接続しやすく、設計も容易である。
ケース30の一方の開口部36には、被加湿ガスを中空糸モジュール42に供給するための配管が図示しないヘッド(給排気ブロック)を介して接続され、他方の開口部38には、加湿されたガスを燃料電池12に供給するための配管が接続される。したがって、加湿装置16においては、加湿ガスの流れ方向と被加湿ガスの流れ方向とが互いに向かい合う交換系が形成されている。Oリング35は、加湿装置16と、図示しないヘッド(給排気ブロック)とのシールに用いられる。
ケース30は、金属や樹脂のような材料で構成されているとよい。樹脂は射出成形などの成形方法によって様々な形状に容易に成形でき、湾曲部分37,39を容易に設けることができるので、ケース30の材料として好適である。また、ケース30を構成するべき部品として2つの樋状の部品を準備し、一方に中空糸モジュール42を嵌め込み、その後、他方で蓋をして一体化することにより、加湿装置16を組み立てるようにしてもよい。2つの樋状の部品を一体化する方法は特に限定されず、超音波溶着、熱溶着、接着剤の使用などの方法を例示できる。これらの方法によれば、ケース30の内部に中空糸モジュール42を簡単に収容できる。
次に、中空糸モジュール42について説明する。中空糸モジュール42は、1つまたは複数の束に束ねられた多数の中空糸によって構成されている。中空糸が散開しないように、中空糸モジュール42の両端部43,43は、樹脂などの材料で固められている。ケース30の内部において、中空糸モジュール42は、流路30hと同じ形状に保持される。ケース30から加湿ガスが漏れないように、中空糸モジュール42の両端部43,43とケース30との隙間は封止材で埋められている。
中空糸は、透湿性を有するものであれば種類は問わず、樹脂多孔質材料から製造される一般的なものでよい。例えば、ポリスルフォン系の多孔質中空糸は、紡糸後の熱処理によって膜から溶剤が抜けて多孔質となり、透湿性が付与される。紡糸直後は可撓性に富む一方、熱処理によって硬化して安定な形状となる中空糸を用いて中空糸モジュールを製造する場合、次のような操作を行えばよい。まず、紡糸直後に予備乾燥を行う(例えば50℃で1時間)。予備乾燥後、可撓性のある状態で中空糸を結束して、中空糸モジュールを得る。さらに、中空糸モジュールを金型(例えばS字の金型)に嵌めて、金型とともに熱処理する(例えば160℃で30分間)。このようにすれば、S字状に硬化した中空糸モジュール42を製造することができる。
なお、透湿性を獲得した後も可撓性を有する中空糸、例えば、パーフルオロスルホン酸樹脂(Du Pont社製 商品名Nafion)等の材料でできた中空糸を用いて中空糸モジュール42を製造すると、ケース30に収容する前の成形が不要となる。その他、ポリテトラフルオロエチレンに代表されるフッ素樹脂でできた多孔質中空糸を用いてもよい。
次に、図3を参照して加湿装置16の作用を説明する。空気などの被加湿ガスは、白抜き矢印で示すように、ケース30の下側の開口部38から中空糸モジュール42の内部に導かれる。中空糸モジュール42の内部を下から上へと流通した被加湿ガスは、ケース30の上側の開口部36から加湿装置16の外部へと排出され、燃料電池12に送られる。一方、加湿ガスは、導入口32からケース30の内部の流路30hへと導かれ、下流側の排出口34に向かって流通する。中空糸モジュール42の内部を流通する被加湿ガスと、流路30hを流通する加湿ガスとの間で全熱交換が行われ、加湿ガスから被加湿ガスに水分が補給される。
加湿ガスは、水蒸気で飽和していたり、それに近い状態であったりする。さらに、後述するように、燃料電池12の排気には、加湿装置16に導入される以前に凝縮水が含まれることがある。導入口32から流路30hに導入された凝縮水は、自重により、導入口32が形成されている側とは反対側の内周面30pに達する(破線(1))。このとき、凝縮水は、中空糸モジュール42を貫通する経路をたどり、中空糸モジュール42の中心部に位置する中空糸および導入口32に向かい合う側とは反対側に位置する中空糸にも接することとなる。
さらに、凝縮水は、ケース30の内周面30pに沿って流れる。第1の湾曲部分37に達した凝縮水は、自重により、ケース30の内周面30pから離れ、中空糸モジュール42を貫通する経路をたどる形で反対側の内周面30qに達する(破線(2))。凝縮水は、第2の湾曲部分39でも同様の経路をたどり(破線(3))、排出口34からケース30の外部へと排出される。このように、湾曲部分37,39が設けられていることにより、凝縮水が壁伝いに流れにくくなり、結果として、凝縮水と中空糸モジュール42との接触機会が増える(接触時間が長くなる)。
従来のストレート形状の加湿装置(図8参照)では凝縮水と中空糸モジュールの接触機会が限られるので、凝縮水の有効利用を図りにくい。これに対し、本実施形態の加湿装置16によれば、凝縮水が中空糸モジュール42の長手方向を何度も横切るような形で流れるので、凝縮水からも効率的に水を回収することができる。
図3に破線で示すような凝縮水の流れが形成されるには、次のような条件を満足すればよい。まず、図4に示すように、加湿装置16の姿勢を上述した設置状態に定める。この設置状態での縦断面(加湿装置16の縦断面)に現れるケース30の内周面30pの接線TL(図4の例では接線TL1および接線TL2)と、鉛直方向に平行かつ上記縦断面に直交する基準面BLとのなす角度θが加湿ガスの流れ方向の下流側に進むにつれて連続的または段階的に小さくなり、ゼロを跨いで再び増加に転じるように、湾曲部分37,39の形状が定められているとよい。
なお、「角度θが段階的に小さくなる」とは、中空糸モジュール40を構成する中空糸の折れが顕在化しない範囲内であれば、湾曲部分37,39の形状は、当該湾曲部分37,39における内周面30p,30qが縦断面で直線を示すように定められていてもよいことを意味する。縦断面において湾曲部分37,39の内周面30p,30qが直線を示す場合、厳密には接線を定義することができないので、その直線自体を図4に示す接線TLとして取り扱うものとする。
なお、上記「縦断面」とは、ケース30が2次元の湾曲形状を有する場合には、加湿ガスの流れ方向に沿ってケース30を左右2つの樋状部分に分割する断面のことである。ケース30が3次元の湾曲形状を有する場合には、加湿ガスの流れ方向に沿ってケース30を左右2つの樋状部分に分割する曲面状の断面の平面への投影図が、上記「縦断面」となる。そして、これらの縦断面において、上記接線がそれぞれ定義されうる。
別の視点から、第1の湾曲部分37は、以下のような条件を満足する形状を有していてもよい。すなわち、上述した設置状態において、導入口32が形成されている位置でのケース30の底面(内周面30p)が、導入口32から排出口34に向かう経路上で上面へと切り替わるように、湾曲部分37の形状が定められているとよい。導入口32が形成されている位置でのケース30の底面(内周面30p)が、導入口32から排出口34に向かう経路上で上面へと切り替わり、その後さらに底面へと切り替わることにより、第2の湾曲部分39が形成される。底面が上面へと変化するような切り替わり部分、すなわち、湾曲部分37,39があると、凝縮水は壁伝いに流れにくくなり、図3に示すような経路をたどりやすくなる。
また、図2Bに示すA矢視図から理解できるように、本実施形態の加湿装置16は、横断面の形状が扁平状となっている。中空糸モジュール42の長手方向に直交する断面を横断面と定義したとき、導入口32を含む位置における中空糸モジュール42の横断面は、水平方向の長さWが鉛直方向の長さHよりも大である扁平形状をなしている。ただし、水平方向および鉛直方向は、加湿装置16の設置状態で定まる方向である。
図5Aに示すように、例えば、ケース29および中空糸モジュール46が円筒形の場合、凝縮水は、中空糸モジュール46の外周面およびケース29の内周面を伝って流れ落ちやすいので、中空糸モジュール46を貫通する経路をたどる量(画分)が少なくなる。これに対し、図5Bに示すように、本実施形態によれば、中空糸モジュール42を貫通する経路をたどる凝縮水の量を増やすことができるため、凝縮水からの水の回収効率が高まる。
(第2実施形態)
図6Aは、第2実施形態の加湿装置56の縦断面図であり、図6Bは、図6Aに示す加湿装置56のA矢視図である。本実施形態は、ケースの湾曲部分が奇数箇所である点で第1実施形態と相違する。
図6Aは、第2実施形態の加湿装置56の縦断面図であり、図6Bは、図6Aに示す加湿装置56のA矢視図である。本実施形態は、ケースの湾曲部分が奇数箇所である点で第1実施形態と相違する。
図6Aおよび図6Bに示すように、ケース31は、湾曲部分47を1箇所含み、かつU字形状を有する。湾曲部分47の上流側と下流側には、それぞれ、直線部分57,58がある。上流側の直線部分57に導入口32が形成され、下流側の直線部分58に排出口34が形成されている。本実施形態によれば、湾曲部分47が1箇所にのみ設けられているため、第1実施形態の加湿装置16よりも小型化の面で有利である。
導入口32の位置は、本実施形態と第1実施形態とで同じであるが、排出口34の位置が本実施形態と第1実施形態とで相違している。具体的には、加湿装置56を設置状態としたときに、排出口34が上方に向かって開口している。排出口34は、直線部分58に収容されている中空糸モジュール42よりも高い位置にある。
図7に示すように、導入口32から流路31hに導入された凝縮水は、自重により、導入口32が形成されている側とは反対側の内周面31pに達する(破線(1))。このとき、凝縮水は、中空糸モジュール42を貫通する経路をたどり、中空糸モジュール42の中心部に位置する中空糸にも接することとなる。さらに、凝縮水は、ケース31の内周面31pに沿って流れる。湾曲部分47に達した凝縮水は、自重により、ケース31の内周面31pから離れ、中空糸モジュール42を貫通する経路をたどる形で反対側の内周面31qに達する(破線(2))。排出口34が上方を向いているので、凝縮水はケース31の底部(直線部分58の流路31h)に貯留ないし滞留しやすい。凝縮水が貯留ないし滞留すると、中空糸モジュール42が凝縮水に浸漬された状態となるので、加湿効率が高まる。
(燃料電池の排気について)
次に、燃料電池の排気について説明する。定置コージェネレーション用1kW級の燃料電池システムの典型的な仕様および運転条件を表1に示す。なお、このシステムでは高分子電解質形燃料電池が用いられている。
次に、燃料電池の排気について説明する。定置コージェネレーション用1kW級の燃料電池システムの典型的な仕様および運転条件を表1に示す。なお、このシステムでは高分子電解質形燃料電池が用いられている。
この燃料電池システムは、1.2kWの出力を得るために、毎分11.5リットル(slpm:standard liter per minutes)の水素と5.7リットルの酸素とを消費する。適切な燃料利用率(75%)および酸素利用率(50%)を勘案し、実際にスタックに供給される水素量は毎分15.3リットル、空気量は54.6リットルである。また、発生する熱を除去するために、60℃の冷却水が毎分1.6リットルの流量でスタックに供給される。スタックに供給された冷却水は、スタックの内部で約11℃昇温し、71℃の温水となって排出される。
前述の通り、水素の加湿は不要であり、空気の加湿はスタックからの排気を用いて行われる。ここで、スタックからの排気の熱条件について表2に示す。スタックに供給された毎分54.6リットルの空気に含まれる酸素は、その半分が消費される(酸素利用率50%)。したがって、ドライガス換算で毎分49リットルのガスがスタックから排出される。排気の温度は70.5℃であり、この排気が水蒸気で飽和していると仮定すると、スタックから排出される水量は毎分18.1gとなる。
ところが、表1および表2の条件を満足する現実の燃料電池システムの排気を氷冷凝縮して回収される水量は毎分21.6gであり、上述の計算値よりも3.5g多かった。すなわち、この3.5gに相当する水は、水蒸気ではなく温水としてスタックから排出されていた。なお、仮にこの3.5gに相当する水が水蒸気として排出された場合の蒸気圧は35800Paであり、そのときの露点は73.2℃である。この数値を換算露点と定義し、以降の試験で二相流を作るときの装置制御パラメータとした。
まず、外径が1.0mm、長さが300mmのポリスルフォン中空糸(NOK社製(試作品))を500本用いて中空糸モジュールを製造した。この中空糸モジュールを用いて、図2Aに示す加湿装置(実施例)と、図8に示す従来の加湿装置(比較例)とを製造した。
次に、表1および表2に示す加湿ガスおよび被加湿ガス(空気)を模擬できる試験装置を作り、その試験設備を用いて加湿装置の評価を行った。具体的には、ドライガス換算で毎分49.1リットルの流量の加湿ガスを換算露点である露点73℃になるようにバブラーで加湿した後、70.5℃まで冷却して加湿装置に供給した。一方、被加湿ガスとして、毎分54.6リットルの流量の乾燥空気を加湿装置に供給した。そして、加湿装置の出口での被加湿ガスの露点を計測することにより、加湿装置の性能を評価した。露点の計測には、鏡面式露点計を用いた。表3に結果を示す。
実施例の加湿装置での被加湿ガスの露点は比較例の加湿装置でのそれに比べて高かった。これは、効率に換算して約7%の改善に相当する。一般的に、水蒸気を加湿ガスとして用いたときの全熱交換効率は70%程度が限界とされており、比較例では概ねこれに準じた効率(68.7%)が得られたが、実施例ではこれを上回る効率(74.1%)が得られた。実施例の加湿装置によれば、供給された水蒸気以外の水源、つまり、二相流に含まれる凝縮水からも水を回収することができた。
Claims (18)
- 被加湿ガスが内部を流通する中空糸モジュールと、
前記中空糸モジュールを収容する筒状のケースとを備え、
前記ケース内に加湿ガスを導入するための導入口が前記ケースの一端側の周面に形成され、前記ケースから前記加湿ガスを排出するための排出口が前記ケースの他端側の周面に形成され、
前記導入口が形成されている位置での前記ケースの底面が、前記導入口から前記排出口に向かう経路上で上面へと切り替わるように形状が定められた湾曲部分を前記ケースが含み、その湾曲部分に沿う形状に前記中空糸モジュールが湾曲している、加湿装置。 - 前記湾曲部分が180°の角度の円弧状をなすように前記ケースが湾曲している、請求項1に記載の加湿装置。
- 前記導入口が前記排出口よりも上方に位置する設置状態において、前記導入口が上方に向かって開口している、請求項1に記載の加湿装置。
- 前記導入口が前記排出口よりも上方に位置する設置状態において、前記排出口が下方に向かって開口している、請求項1に記載の加湿装置。
- 前記導入口が前記排出口よりも上方に位置する設置状態において、前記排出口が上方に向かって開口している、請求項1に記載の加湿装置。
- 前記中空糸モジュールの長手方向に直交する断面を横断面と定義したとき、
前記導入口が前記排出口よりも上方に位置する設置状態において、前記導入口を含む位置での前記中空糸モジュールの横断面は、水平方向の長さが鉛直方向の長さよりも大である扁平形状をなす、請求項1に記載の加湿装置。 - 前記ケースが、前記湾曲部分を2箇所含み、かつS字形状を有する、請求項1に記載の加湿装置。
- 前記ケースが、前記湾曲部分を1箇所含み、かつU字形状を有する、請求項1に記載の加湿装置。
- 燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて発電する燃料電池と、
前記燃料ガスおよび前記酸化剤ガスから選ばれる少なくとも一方のガスの前記燃料電池への供給経路に配置された加湿装置とを備え、
前記加湿装置として、請求項1に記載の加湿装置を用いた、燃料電池システム。 - 被加湿ガスが内部を流通する中空糸モジュールと、
前記中空糸モジュールを収容する筒状のケースとを備え、
前記ケース内に加湿ガスを導入するための導入口が前記ケースの一端側の周面に形成され、前記ケースから前記加湿ガスを排出するための排出口が前記ケースの他端側の周面に形成され、
前記導入口が前記排出口よりも上方に位置する設置状態での縦断面に現れる前記ケースの内周面の接線と、鉛直方向に平行かつ前記縦断面に直交する基準面とのなす角度が前記加湿ガスの流れ方向の下流側に進むにつれて連続的または段階的に小さくなり、ゼロを跨いで再び増加に転じるように湾曲した部分を前記ケースが含み、その湾曲部分に沿う形状に前記中空糸モジュールが湾曲している、加湿装置。 - 前記湾曲部分が180°の角度の円弧状をなすように前記ケースが湾曲している、請求項10に記載の加湿装置。
- 前記設置状態において、前記導入口が上方に向かって開口している、請求項10に記載の加湿装置。
- 前記設置状態において、前記排出口が下方に向かって開口している、請求項10に記載の加湿装置。
- 前記設置状態において、前記排出口が上方に向かって開口している、請求項10に記載の加湿装置。
- 前記中空糸モジュールの長手方向に直交する断面を横断面と定義したとき、
前記設置状態において、前記導入口を含む位置での前記中空糸モジュールの横断面は、水平方向の長さが鉛直方向の長さよりも大である扁平形状をなす、請求項10に記載の加湿装置。 - 前記ケースが、前記湾曲部分を2箇所含み、かつS字形状を有する、請求項10に記載の加湿装置。
- 前記ケースが、前記湾曲部分を1箇所含み、かつU字形状を有する、請求項10に記載の加湿装置。
- 燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて発電する燃料電池と、
前記燃料ガスおよび前記酸化剤ガスから選ばれる少なくとも一方のガスの前記燃料電池への供給経路に配置された加湿装置とを備え、
前記加湿装置として、請求項10に記載の加湿装置を用いた、燃料電池システム。
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