JPWO2009031578A1 - 水素発生材料組成物、水素発生材料成形体及び水素の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明の水素発生材料組成物は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム及び前記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属材料と、ヒドロキシ酸の水溶性塩とを含み、前記金属材料と前記ヒドロキシ酸の水溶性塩との総量中、前記ヒドロキシ酸の水溶性塩の割合が1質量%以上であることを特徴とする。また、本発明の水素の製造方法は、上記本発明の水素発生材料組成物に水を供給し、前記金属材料と前記水とを反応させて水素を発生させることを特徴とする。
Description
本発明は、水と反応して水素を発生させる水素発生材料組成物とその成形体及びそれらを用いた水素の製造方法に関する。
近年、パーソナルコンピューター、携帯電話等のコードレス機器の普及に伴い、その電源である二次電池は、ますます小型化、高容量化が要望されている。現在、エネルギー密度が高く、小型軽量化を図り得る二次電池としてリチウムイオン二次電池が実用化されており、ポータブル電源としての需要が増大している。しかし、使用されるコードレス機器の種類によっては、このリチウムイオン二次電池では未だ十分な連続使用時間を保証するまでには至っていない。
このような状況の中で、上記要望に応え得る電池の一例として、固体高分子型燃料電池が挙げられる。電解質に固体高分子電解質、正極活物質に空気中の酸素、負極活物質に燃料(水素、メタノール等)を用いる固体高分子型燃料電池は、リチウムイオン電池よりも高エネルギー密度化が期待できる電池として注目されている。
燃料電池は、燃料及び酸素の供給さえ行えば連続的に使用することができるが、その燃料に関していくつかの候補が挙げられている。しかし、各燃料にはそれぞれ種々の問題点があり、最終的な決定が未だなされていない。
燃料として水素を用いる燃料電池としては、例えば、高圧タンク或いは水素吸蔵合金タンクに蓄えた水素を燃料として供給する方法が一部で実用化されているが、全体の体積及び質量が大きくなりエネルギー密度が低下するため、ポータブル電源の用途には適さないという欠点を有している。
また、燃料電池の燃料として、炭化水素系燃料を用い、それを改質して水素を取り出す方法もあるが、改質装置が必要となり改質装置への熱の供給及び断熱等の問題があるため、やはりポータブル電源の用途には適さない。この他、燃料としてメタノールを用い、直接電極でメタノールを燃料として反応させる直接メタノール型燃料電池もあり、これは小型化が容易で、将来のポータブル電源として期待されているが、負極のメタノールが電解質を透過して正極に達するクロスオーバーによる電圧の低下及びエネルギー密度の減少という問題がある。
このような状況において、燃料電池の燃料源である水素を製造する方法として、水と、例えばアルミニウム、マグネシウム、ケイ素、亜鉛等の金属材料とを、100℃以下の低温で化学反応させて水素を発生させる方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
中でも、特許文献3には、水素発生材料の粒径を調整することにより、反応効率を向上させて発熱剤等の含有割合を低減させることが記載されており、水素発生材料の充填密度を高くするために、水素発生材料をペレット状に圧縮成形したり、顆粒状に圧縮成形したりすることも提案されている。
一方、特許文献4には、アルミニウムと、反応促進剤としてのアルミニウム化合物と、上記アルミニウム1モルに対して3モル以上の割合で混合される水又はアルコールとを有する水素発生材料が記載されており、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム等を添加することにより、水素発生速度のコントロールが可能となることが開示されている。また、特許文献5には、酸素吸収性組成物であって用途は異なるものの、特許文献4と同様に、アルミニウムと、アルミニウム化合物と、リン酸、クエン酸、酒石酸及びこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤とを有する組成物が開示されているが、上記添加剤は水素発生の好適な抑制剤として作用することが明らかにされている。
しかしながら、特許文献1及び2の方法によれば、水素発生反応を効率的に進行させるためには多量の発熱剤や触媒の添加を必要としており、そのため、金属材料の割合が減少し、実質的に製造される水素量が低下するという問題を生じてしまう。
また、特許文献3の方法によれば、水素発生材料中の金属材料の割合を高め、取り出せる水素の量を多くすることができるが、水素発生材料を成形体とした場合には、成形体の内部に水が浸透しにくくなり、水と金属材料との反応が阻害されるため、反応効率の向上について検討の余地が残されている。
また、添加剤を水素発生材料に加える特許文献4の方法では、添加剤が水素発生を抑制してしまうため、効率的に水素を発生させるには至らない。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、容易に効率よく水素を発生させ得る水素発生材料組成物とその成形体及びそれらを用いて水素を発生させる水素の製造方法を提供するものであり、特に、水素発生材料組成物の成形体での反応効率を向上させ、携帯化に適する水素発生材料組成物と水素の製造方法を提供しようとするものである。
本発明者らは、クエン酸や酒石酸といったヒドロキシ酸の水溶性塩を一定量以上アルミニウム等の金属材料に添加した場合には、前述の特許文献4或いは5の開示とは逆に、上記金属材料と水との反応が促進され、水素発生の効率が向上すること、特に、上記金属材料と上記ヒドロキシ酸の水溶性塩とを含む水素発生材料組成物の充填密度が大きくなった場合に、上記ヒドロキシ酸の水溶性塩の添加の効果が顕著になることを知見し、本発明をなしたものである。
本発明の水素発生材料組成物は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム及び上記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属材料と、ヒドロキシ酸の水溶性塩とを含み、前記金属材料と前記ヒドロキシ酸の水溶性塩との総量中、前記ヒドロキシ酸の水溶性塩の割合が1質量%以上であることを特徴とする。
また、本発明の第1の水素発生材料成形体は、上記本発明の水素発生材料組成物を成形してなることを特徴とする。
また、本発明の第2の水素発生材料成形体は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム及び前記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属材料を含む水素発生材料組成物を成形してなる水素発生材料成形体であって、水に接触させた場合にその形状が崩れ、内部に水が浸透することを特徴とする。
さらに、本発明の水素の製造方法は、上記本発明の水素発生材料組成物又は上記本発明の水素発生材料成形体に水を供給し、前記金属材料と前記水とを反応させて水素を発生させることを特徴とする。
本発明の水素発生材料組成物を用いることにより、容易に効率よく水素を発生させることができる。また、本発明の水素発生材料組成物を成形体とし、水素発生材料組成物の充填密度を大きくしても、反応効率の低下を防ぐことができ、携帯に適した水素発生材料を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(実施形態1)
先ず、本発明の水素発生材料組成物及び水素発生材料成形体について説明する。本発明の水素発生材料組成物は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム及び上記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属材料と、ヒドロキシ酸の水溶性塩とを含有する。上記水素発生材料組成物では、上記金属材料と上記ヒドロキシ酸の水溶性塩との総量中、上記ヒドロキシ酸の水溶性塩の割合が1質量%以上となるよう混合比が調整されており、水と接触した場合に、上記金属材料と水との反応により水素を発生する水素発生源となる組成物である。
先ず、本発明の水素発生材料組成物及び水素発生材料成形体について説明する。本発明の水素発生材料組成物は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム及び上記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属材料と、ヒドロキシ酸の水溶性塩とを含有する。上記水素発生材料組成物では、上記金属材料と上記ヒドロキシ酸の水溶性塩との総量中、上記ヒドロキシ酸の水溶性塩の割合が1質量%以上となるよう混合比が調整されており、水と接触した場合に、上記金属材料と水との反応により水素を発生する水素発生源となる組成物である。
上記金属材料は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属が用いられるが、上記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金であってもよく、水素発生量を多くするために、合金中の上記金属元素の含有量(2種以上含有する場合はその合計量)は60質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上である。ここで、上記金属元素を主体とする合金とは、当該金属元素を50質量%以上含む合金を意味する。また、上記金属元素とともに合金を形成する元素としては、Si、Fe、Cu、Mn、Ni、Ti、Sn、Cr等が例示されるが、特に限定はされない。上記金属材料は、表面に比較的安定な酸化皮膜が形成されるため、板状、ブロック状等のバルクの形状では、水との反応はほとんど進行しないが、粉末状とすることにより、常温或いは加熱された状態で水との発熱反応が進行しやすくなり、水素を生成することのできる材料である。ここで、本明細書において常温とは、20〜30℃の範囲の温度である。
上記金属材料の1つであるアルミニウムと水との反応は、下記式(1)〜(3)のいずれかによって進行すると考えられる。下記式(1)による発熱量は、419kJ/molである。
2Al+6H2O→Al2O3・3H2O+3H2 (1)
2Al+4H2O→Al2O3・H2O+3H2 (2)
2Al+3H2O→Al2O3+3H2 (3)
2Al+4H2O→Al2O3・H2O+3H2 (2)
2Al+3H2O→Al2O3+3H2 (3)
本発明の水素発生材料組成物に使用される金属材料は、一般に、上記金属元素やその合金を金属状態で含有する粒子内部と、該粒子内部の少なくとも一部を被覆する表面皮膜(酸化皮膜)とで構成されている。そして、このような金属材料と水との反応の際には、上記表面皮膜に水が浸透して、粒子内部の金属や合金にまで水が到達すると、上記式(1)〜(3)のような反応が生じて水素が発生する。このうち、100℃以下の低温で優先的に起こると考えられる上記式(1)〜(2)の反応では、反応生成物として水和物を生成する。この水和物も難水溶性であるので、そのまま金属材料の粒子表面に析出し、表面皮膜は厚くなる。そして、粒子表面に析出した上記水和物と、未反応の金属材料とが凝結する現象が起こる。この現象によって、未反応の金属材料の粒子内部まで水が浸透しにくくなる。特に、ペレット状又は顆粒状等に成形された充填密度の高い水素発生材料においては、成形体の外表面で上記現象が起こりやすくなり、成形体の内部の金属材料にまで水が浸透することが困難となり、水素発生効率が顕著に悪くなるといった不都合が生じやすい。
しかしながら、本発明においては、水素発生材料組成物にヒドロキシ酸の水溶性塩を、上記金属材料と上記ヒドロキシ酸の水溶性塩との総量中、1質量%以上含有させているため、上記金属材料と水との反応が効率よく進行する。このヒドロキシ酸の水溶性塩の添加剤としての作用についての詳細は不明だが、金属材料と水との接触が良好になる、反応生成物と未反応の金属材料とが凝結するのを防ぐなどの働きがあるのではないかと思われる。
また、水素発生材料組成物が成形されて充填密度が高くなった場合でも、その成形体が上記水溶性塩を含有しているため、水と接触した時に上記水溶性塩が容易に水和し、成形体の形状を崩しながら成形体の内部に水を速やかに浸透させることができる。成形体における上記作用は、必ずしもヒドロキシ酸の水溶性塩を含む成形体に限定されるものではないが、前述した金属材料と水との反応促進の効果も期待できるため、水素発生材料組成物の成形体においても、ヒドロキシ酸の水溶性塩を含むことが好ましい。
添加剤として用いる上記ヒドロキシ酸(オキシ酸)の水溶性塩は、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、乳酸、タルトロン酸等で例示されるヒドロキシ酸の、例えば、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アルミニウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩等の金属塩や、アンモニウム塩等を例示することができる。この中でも特にクエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩及びグリコール酸塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。詳細は不明であるが、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩及びグリコール酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を添加することにより、上記金属材料と水との反応がより促進され、水素発生の効率がより向上するためである。
上記ヒドロキシ酸は、分子内にカルボキシル基と水酸基とを有するものの総称であり、カルボキシル基及び/又は水酸基を複数有していてもよい。クエン酸のように複数のカルボキシル基を有するヒドロキシ酸の水溶性塩を用いる場合は、全てのカルボキシル基が反応して形成される正塩以外に、一部のカルボキシル基の水素がそのまま残存している酸性塩を用いてもよい。また、水溶性塩を構成するカチオンは、一種のみに限定されず、複数種のカチオンが混在する水溶性塩であってもよい。さらに、不斉炭素を有し複数の光学異性体が存在する化合物では、それらのいずれを用いても構わない。例えば、酒石酸においては、D体、L体、DL体及びメソ体のいずれであってもよい。
上記ヒドロキシ酸の水溶性塩としては、水に対する溶解性の高い化合物が多いことから、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好ましく用いられる。より具体的には、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸水素マグネシウム、酒石酸二ナトリウム、グリコール酸ナトリウム等を好ましく用いることができる。この中でも、上記金属材料と水との反応を促進する効果の高いクエン酸又はグリコール酸のアルカリ金属塩が、特に好ましく用いられる。
また、本発明においては、水への溶解度の点から脂肪族オキシ酸の水溶性塩が好ましく用いられるが、これに限定されるものではなく、サリチル酸の水溶性塩のように芳香族オキシ酸の水溶性塩であってもよい。
本発明の水素発生材料組成物においては、上記金属材料と上記ヒドロキシ酸の水溶性塩との合計質量を100としたときに上記水溶性塩の質量が1%以上となるよう、それぞれの含有割合を調整すればよい。上記水溶性塩の割合が多くなるほどその効果が大きくなり、反応効率が向上するので、上記金属材料と上記水溶性塩との総量中、上記水溶性塩の割合は3質量%以上であるのが好ましく、5質量%以上であるのがより好ましく、10質量%以上であるのが最も好ましい。一方、上記金属材料の割合を多くして、反応により取り出すことのできる水素の総量を多くするために、上記水溶性塩の割合は40質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましく、20質量%以下であるのが最も好ましい。上記水溶性塩を複数種用いる場合は、その合計量が上記範囲になるよう調整すればよい。
本発明における上記金属材料の形状や粒径は、特に限定されるものではないが、下記(1)〜(3)のいずれかを満たす材料が好ましく用いられる。そのような金属材料は、取り扱い性に優れ、また反応効率が高い材料となるためである。下記(1)〜(3)の2つ以上の項目を満たす材料であればより好ましい。
(1)粒径が0.1〜60μmの粒子を80体積%以上含む。
(2)平均粒径が0.1〜30μmである。
(3)粒子形状が鱗片状であり、かつその厚みが0.1〜5μmである。
(1)粒径が0.1〜60μmの粒子を80体積%以上含む。
(2)平均粒径が0.1〜30μmである。
(3)粒子形状が鱗片状であり、かつその厚みが0.1〜5μmである。
上記金属材料の形状は、粒子の中心まで水との反応が進行しやすいことから、上記鱗片状であることが望まれるが、略球状、ラグビーボール状、液滴状など他の形状であってもよい。
上記(1)及び(2)における「粒径」と「平均粒径」は、レーザー回折・散乱法を用いて測定される値である。即ち、水等の液相又は気相に分散させた測定対象物質にレーザー光を照射することによって検出される散乱強度分布を利用した粒子径分布から求まるもので、体積基準での積算分率に基づく。本発明では、「平均粒径」は、体積基準の積算分率50%における直径の値(d50)を意味している。レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定装置としては、例えば、日機装社製の“マイクロトラックHRA”等を用いることができる。
また、上記(3)における鱗片状の金属材料の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより求めることができる。
本発明における上記金属材料は、燃焼赤外吸収法により測定される粒子表面での炭素含有量が、0.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましい。粒子表面における炭素含有量が少なくなることにより、水との親和性が向上して、水素発生反応が進行しやすくなる。上記炭素含有量を0質量%とすることは、現実的に困難であるため、炭素含有量の下限値は、0.01質量%程度となる。
本発明の水素発生材料組成物は、反応容器内で水と反応させて水素を発生させるための組成物である。即ち、水が添加される前の実質的に乾燥状態にある組成物であるが、ヒドロキシ酸の水溶性塩や後述する発熱材料等の添加剤に起因して、若干量の水分が空気中等から上記組成物に取り込まれる場合もある。上記組成物に取り込まれる水分量が多くなり過ぎると、反応が進んでしまうことも考えられるので、含有する水分量が多い場合は、必要に応じて上記組成物を乾燥させるなどの処理を行うのが望ましい。
本発明の水素発生材料組成物に水を添加する場合、金属材料と水との反応は、温度が高くなるほど進行しやすいので、反応に際し、水素発生材料組成物又は水を加熱することが望ましい。水素発生材料組成物又は水の加熱は、反応容器を外部から加熱する方法、水をあらかじめ加熱してから添加する方法、水と反応して発熱する発熱材料を水素発生材料組成物に含有させておき、その反応熱を利用する方法等を用いることができる。発熱材料を水素発生材料組成物に含有させる場合は、水素を発生させるために水素発生材料組成物に対して供給される水が、上記発熱材料とも反応して発熱し、水素発生材料組成物中の金属材料や水を加熱して反応を促進することになる。
このような発熱材料としては、水と反応して発熱し水酸化物や水和物を生じる物質、水と反応して発熱し水素を生成する物質等を用いることができる。
水と反応して発熱し水酸化物や水和物を生じる物質としては、例えば、アルカリ金属の酸化物や水酸化物(酸化リチウム、酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム等)、アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物(酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ土類金属の塩化物(塩化カルシウム、塩化マグネシウム等)、アルカリ土類金属の硫酸化合物(硫酸カルシウム等)等を用いることができる。
水と反応して発熱し水素を生成する物質としては、例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム等)、アルカリ金属水素化物(水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化リチウム等)等を用いることができる。これらの物質は、1種単独で用いることもでき、2種以上を併用することもできる。また、発熱材料が塩基性物質であれば、水素発生反応に用いられる水に溶解して高濃度のアルカリ水溶液を形成し、上記金属材料の表面に形成された酸化皮膜を溶解させ、水との反応性を大きくすることができるので好ましい。この酸化皮膜を溶解する反応は、金属材料と水との反応の起点となることもある。特に、発熱材料がアルカリ土類金属の酸化物であれば、塩基性物質でありかつ取り扱いが容易であるのでより好ましい。
水素発生材料組成物における上記発熱材料の含有割合は、反応による発熱量を大きくするために、上記金属材料と上記発熱材料との総量中、上記発熱材料を0.5質量%以上とするのが好ましく、3質量%以上とするのがより好ましい。一方、上記金属材料の割合を多くして、反応により取り出すことのできる水素の総量を多くするために、上記発熱材料の含有割合は15質量%以下とするのが好ましく、10質量%以下とするのがより好ましい。上記発熱材料の含有量により、反応時の温度や水素発生速度をある程度制御することができるが、反応時の温度があまり高くなりすぎると、水素発生反応が急激に進行して制御できなくなるため、反応温度が120℃以下になるように発熱材料の添加量を調整することが好ましく、反応に用いる水が蒸発して失われるのを防ぐため、反応温度が100℃以下になるように発熱材料の添加量を調整することがより好ましい。一方、水素発生反応の効率の点からは、反応温度が40℃以上となることが好ましい。
本発明の水素発生材料組成物は、上記金属材料、上記ヒドロキシ酸の水溶性塩及び必要に応じて添加される上記発熱材料等を混合することにより得ることができる。或いは、上記金属材料の表面に上記ヒドロキシ酸の水溶性塩等の添加剤をコーティングし、複合化された水素発生材料組成物とすることもできる。これらの材料はできるだけ均一に混合されることが望ましいが、構成材料の1種以上が上記組成物中の一部の領域に偏在するよう上記組成物を構成してもよい。例えば、上記発熱材料が上記組成物中の一部に高濃度で存在する場合、その部分では水と発熱材料との反応による発熱が大きくなるため、水素発生反応は上記偏在部分を起点として生じやすくなる。このため、水の供給開始から反応開始までの時間を短縮することができる。上記ヒドロキシ酸の水溶性塩を偏在させる場合にも、同様の効果が期待できる。
本発明の水素発生材料組成物は、そのまま用いることもできるが、携帯に便利な形状とするため、又は、充填密度を高くして体積あたりの水素発生量を多くするために、ペレット状又は顆粒状に成形することもできる。本発明の水素発生材料組成物の見かけ密度は、組成にもよるが、およそ0.7g/cm3程度である。一方、成形体とした場合には、見かけ密度をおよそ1.0〜2.5g/cm3とすることができ、単位体積あたりの上記組成物の量を多くすることができる。成形性を良好にするために、上記組成物にカルボキシメチルセルロース等のバインダーを添加してもよい。
(実施形態2)
次に、本発明の水素の製造方法について説明する。本発明の水素の製造方法は、実施形態1で説明した本発明の水素発生材料組成物又は水素発生材料成形体に水を供給し、前述の金属材料と水とを反応させ水素を発生させるものである。また、本発明の水素の製造方法は、実施形態1で述べたように、上記水素発生材料組成物、上記水素発生材料成形体又は上記水を加熱する工程を含むことが好ましい。
次に、本発明の水素の製造方法について説明する。本発明の水素の製造方法は、実施形態1で説明した本発明の水素発生材料組成物又は水素発生材料成形体に水を供給し、前述の金属材料と水とを反応させ水素を発生させるものである。また、本発明の水素の製造方法は、実施形態1で述べたように、上記水素発生材料組成物、上記水素発生材料成形体又は上記水を加熱する工程を含むことが好ましい。
以下、本発明の水素の製造方法を図面に基づき説明する。図1は、本発明の水素の製造方法の実施に用いる水素製造装置の一例を示す模式断面図である。図1において、水素製造装置10は、水素発生材料組成物12と水とを内部に密閉しかつ両者を反応させるための反応容器11と、水供給口13と、水素導出口14とを備え、マイクロポンプ19により、水供給パイプ15を通じて、水供給口13から水素発生材料組成物12に水を連続的に供給できるようになっている。また、反応容器11は、容器本体11aと蓋11bとで構成されている。供給された水は、反応容器11内で水素発生材料組成物12と反応して水素を発生させる。生成した水素は、水素導出口14を通じて水素導出パイプ17により外部に取り出される。図1に示す本実施形態では、反応中の反応容器11内の温度が低下するのを防ぎ、水素発生反応を持続させるため、反応容器11は保温材18で覆われている。
反応容器11に用いる材質は水及び水素を透過しにくく、かつ100℃程度に加熱しても破損しない材質であれば特に限定されるものではなく、アルミニウム、チタン、ニッケル等の金属や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の樹脂、或いはアルミナ、シリカ、チタニア等のセラミックス、ガラス(特に耐熱ガラス)等の材料を用いることができる。また、水供給パイプ15及び水素導出パイプ17についても同様である。保温材18は、発泡スチロール等の断熱性の高い材料を用いればよい。さらに、水素以外の内容物が外に漏れ出すのを防ぐため、水素導出口14に、必要に応じて気液分離膜等のフィルターを設置してもよい。
また、水素製造装置を小型燃料電池或いは携帯電子機器に組み込む場合、携帯性を考慮して、例えば図2に示すような携帯型の燃料カートリッジとすることもできる。図2において、燃料カートリッジ20は、反応容器21の内部に水素発生材料組成物22を封入したものであり、前述の図1の水素製造装置と同様に、水素発生材料組成物22に水を供給するための水供給口23と、反応容器21内で生成する水素を外部に取り出すための水素導出口24とを備えている。燃料電池或いは携帯電子機器に装着された燃料カートリッジ20には、マイクロポンプ等を使い、水供給パイプ25を通じて内部に水が供給される。或いは、水を充填した別の容器を燃料カートリッジ20の一部にあらかじめ備えておき、燃料電池或いは携帯電子機器に燃料カートリッジ20が装着された後、その水が反応容器21内に供給されるような構造であってもよい。
供給された水の一部は、吸水材26a、26bにより保持され、残部は水素発生材料組成物22を濡らし、水素発生反応が開始される。発生した水素は、水素導出パイプ27を通じて燃料電池の負極に供給される。吸水材26a、26bは必ずしも必要ではないが、水素発生反応による水の消費に応じて、吸水材26a、26bにより保持された水も水素発生材料組成物22に供給されるため、水素発生速度の時間変動をある程度抑制することが可能となる。吸水材26a、26bは、水を吸って保持することのできる材質のものであれば特に限定されるものではなく、一般には脱脂綿や不織布等を用いることができる。
また、前述のヒドロキシ酸の水溶性塩を水素発生材料組成物に添加する場合、水と上記組成物との反応により生じる生成物の体積が、上記水溶性塩を含まない水素発生材料組成物による反応生成物に比べて大きくなる。このため、反応が進行し反応生成物が多く析出した段階では、上記反応生成物により、水素発生材料組成物の内部への水の浸透が抑制され、反応速度が低下するおそれが生じる。これを防ぐために、反応により生じる上記組成物の体積変化に応じて形状を変えられるように、反応容器11、21を、アルミニウム等の金属と樹脂とのラミネートフィルム等で構成してもよい。また、水素発生材料組成物の成形体を用いる場合には、上記組成物の体積膨張に対応するために、成形体と反応容器11、21との間に空隙を設けてもよい。
上記変形可能な反応容器を用いること、或いは、反応容器内に水素発生材料組成物の体積変化を許容する空隙を設けることにより、反応が進行しても、水素発生材料組成物の内部に水が容易に浸透するため、本発明の効果をより高めることができる。
更に、上記水素製造装置には、圧力逃がし弁を設けることが好ましい。例えば水素発生速度が増大して、装置の内圧が上昇した場合でも、圧力逃がし弁から水素を装置外に排出することにより、破裂等による装置の破損を防止することができる。圧力逃がし弁の設置箇所は、水素発生材料組成物を収容した容器内で発生した水素が排出できる箇所であればよい。例えば図2に示す装置であれば、水素導出管27から、燃料電池或いは携帯電子機器までの間のいずれの箇所に圧力逃がし弁を設けても構わない。
炭化水素系燃料の改質により得られる水素では、CO及びCO2が含まれることにより、100℃以下で作動する固体高分子型燃料電池において、上記ガスによる被毒の問題が生じる。一方、本発明の水素発生材料組成物を用いて発生させた水素は、上記ガスを含まないため、そのような問題が発生せず、また、反応に水が関与するため、ガス中に適度な水分を含んでおり、水素を燃料とする燃料電池において好ましく用いることができる。
水素発生材料組成物を外部から加熱する場合、例えば、発熱源として、抵抗体に通電することによる電気的発熱、発熱反応による化学的発熱等を用い、水素発生材料組成物及び水を収容した反応容器を外部から加熱する方法を採用することができる。上記抵抗体の種類については特に限定されず、例えば、ニクロム線、白金線等の金属発熱体、炭化ケイ素、PTCサーミスタ等が使用できる。また、上記発熱反応としては特に限定されず、例えば、前述の発熱材料と水との反応、或いは、鉄と酸素との反応等により発生する熱を用いる方法が使用できる。
また、金属材料と水との反応も発熱反応であるため、図1に示した保温材18によりその反応熱の放熱を防ぎ、水素発生材料組成物や水の温度上昇に利用すれば、上記発熱源を有さずとも連続的に水素を発生させることもできる。即ち、反応初期に加熱を行うのみで、水素発生が始まった後は加熱を止めても、水素発生反応の発熱により加温状態を維持することができる。
更に、水素発生材料組成物と反応させる水の供給量を制御することによって、水素発生量を制御することができる。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
金属材料としてガスアトマイズ法により作製された平均粒径6μmのアルミニウム粉末(但し、粒径が60μm以下の粒子の割合:100質量%)と、添加剤としてのクエン酸三ナトリウム粉末とを、表1に示す割合となるよう乳鉢で混合し、水素発生材料組成物を得た。次に、それぞれの水素発生材料組成物を加圧成形することにより、直径10mm、厚み約3.7mm、見かけ密度1.7g/cm3のペレット状の成形体0.5gを作製した。ここで、成形体の見かけ密度は、成形体の質量を、その厚みと直径とから求まる体積で除すことにより求めた。
金属材料としてガスアトマイズ法により作製された平均粒径6μmのアルミニウム粉末(但し、粒径が60μm以下の粒子の割合:100質量%)と、添加剤としてのクエン酸三ナトリウム粉末とを、表1に示す割合となるよう乳鉢で混合し、水素発生材料組成物を得た。次に、それぞれの水素発生材料組成物を加圧成形することにより、直径10mm、厚み約3.7mm、見かけ密度1.7g/cm3のペレット状の成形体0.5gを作製した。ここで、成形体の見かけ密度は、成形体の質量を、その厚みと直径とから求まる体積で除すことにより求めた。
続いて、上記成形体と純水10gとを、外側に抵抗体を配置したガラス製容器(内容積50cm3)に入れ、抵抗体に通電することにより容器を50℃に加熱した。それぞれの水素発生材料組成物の成形体は、水と接触することにより形状が崩れ、内部まで水が浸透したため、金属材料と水とが容易に反応し、水素を発生させることができた。生成した水素は水上置換法により捕集し、反応開始から50時間後までに発生した水素の総量、及びアルミニウムの反応率を求めた。アルミニウムの反応率は、25℃、1気圧でのアルミニウム1g当りの理論水素発生量(1360ml)を基準とし、上記成形体に含まれるアルミニウムの質量から計算される水素発生量の理論値に対する、実際の水素発生量の割合として求めた。
(実施例2)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、クエン酸三カリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、クエン酸三カリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
(実施例3)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、酒石酸二ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、酒石酸二ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
(実施例4)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、グリコール酸ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、グリコール酸ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
(実施例5)
実施例1で用いたアルミニウム粉末とクエン酸三ナトリウム粉末とを90:10(質量比)の割合で含有する水素発生材料組成物について、直径10mm、厚み約3.2mm、見かけ密度2.0g/cm3の成形体となるよう加圧成形を行った以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体0.5gを作製し、水素を発生させた。
実施例1で用いたアルミニウム粉末とクエン酸三ナトリウム粉末とを90:10(質量比)の割合で含有する水素発生材料組成物について、直径10mm、厚み約3.2mm、見かけ密度2.0g/cm3の成形体となるよう加圧成形を行った以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体0.5gを作製し、水素を発生させた。
(比較例1)
添加剤を混合せず、実施例1のアルミニウム粉末0.5gをそのまま用いた以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
添加剤を混合せず、実施例1のアルミニウム粉末0.5gをそのまま用いた以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
(比較例2)
アルミニウム粉末とクエン酸三ナトリウム粉末との割合を、99.5:0.5(質量比)とした以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
アルミニウム粉末とクエン酸三ナトリウム粉末との割合を、99.5:0.5(質量比)とした以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
(比較例3)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、酸化カルシウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例3では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、発熱材料を含有させて水素発生材料組成物とした。
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、酸化カルシウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例3では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、発熱材料を含有させて水素発生材料組成物とした。
(比較例4)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、クエン酸粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例4では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、ヒドロキシ酸自身を含有させて水素発生材料組成物とした。
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、クエン酸粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例4では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、ヒドロキシ酸自身を含有させて水素発生材料組成物とした。
(比較例5)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、酢酸ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例5では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、カルボキシル基は有するが水酸基を持たないカルボン酸の水溶性塩を含有させて水素発生材料組成物とした。
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、酢酸ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例5では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、カルボキシル基は有するが水酸基を持たないカルボン酸の水溶性塩を含有させて水素発生材料組成物とした。
(比較例6)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、コハク酸二ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例6では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、カルボキシル基は有するが水酸基を持たない多価カルボン酸の水溶性塩を含有させて水素発生材料組成物とした。
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、コハク酸二ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例6では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、カルボキシル基は有するが水酸基を持たない多価カルボン酸の水溶性塩を含有させて水素発生材料組成物とした。
(比較例7)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、二クエン酸三マグネシウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例7では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、水に不溶であるヒドロキシ酸の塩を含有させて水素発生材料組成物とした。
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、二クエン酸三マグネシウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例7では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、水に不溶であるヒドロキシ酸の塩を含有させて水素発生材料組成物とした。
実施例2〜5及び比較例1〜7についても実施例1と同様にして発生した水素の総量とアルミニウムの反応率とを求めた。実施例1〜5及び比較例1〜7の水素発生材料組成物の成形体について、添加剤の種類、添加剤の含有割合、発生した水素の総量(水素発生量)及びアルミニウム(金属材料)の反応率をそれぞれ表1に示す。
添加剤として、ヒドロキシ酸の水溶性塩を1質量%以上含有させた実施例1〜5の水素発生材料組成物の成形体では、ヒドロキシ酸の水溶性塩を添加しなかった比較例1の成形体に比べ、アルミニウムの反応率を向上させ、水素発生量を増加させることができた。上記添加剤の含有割合が増加するほどアルミニウムの反応率は向上したが、それに伴い水素発生源となるアルミニウム粉末の割合が減少するため、添加剤の割合が好適範囲より多くなると、水素発生量は極大値から減少に転じた。
比較例1の水素発生材料組成物の成形体は、水が供給された後も容器の中でその形状を維持していたことから、水素発生反応に必要とされる量の水が成形体の内部まで浸透せず、水素発生反応が成形体の外表面付近のみで停止したため、アルミニウムの反応率が低くなり水素発生量が少なくなったものと思われる。
また、ヒドロキシ酸の水溶性塩の含有量を1質量%未満とした比較例2の成形体も、上記添加剤の作用が充分に発揮されず、反応効率を向上させることはできなかった。
また、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、反応を促進させる作用が期待できる発熱材料としての酸化カルシウムを含有させた比較例3の成形体では、成形体の外表面付近に存在する発熱材料が水と反応して発熱するため、比較例1に比べて反応効率が多少向上したが、成形体の内部まで水が浸透せず水素発生量を増加させることはできなかった。
更に、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、ヒドロキシ酸の水溶性塩に近い構造を有する化合物を含有させた比較例4〜7でも、反応効率を大きく向上させることはできず、充分な水素発生量を確保することができなかった。比較例4〜7の成形体も、反応容器の中で形状が維持されていたことから、成形体の内部まで水が浸透しなかったものと思われる。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
以上説明したように、本発明により、100℃以下の低温で、容易に効率よく水素を発生させることができる。特に、本発明の水素発生材料組成物を成形体とし、充填密度を大きくした場合にも、反応効率の低下を防ぐことができるので、携帯に適した水素発生材料組成物を提供することができる。従って、燃料電池、特に小型携帯機器用の燃料電池の水素燃料源等に幅広く利用可能である。
【書類名】明細書
【発明の名称】水素発生材料組成物、水素発生材料成形体及び水素の製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と反応して水素を発生させる水素発生材料組成物とその成形体及びそれらを用いた水素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューター、携帯電話等のコードレス機器の普及に伴い、その電源である二次電池は、ますます小型化、高容量化が要望されている。現在、エネルギー密度が高く、小型軽量化を図り得る二次電池としてリチウムイオン二次電池が実用化されており、ポータブル電源としての需要が増大している。しかし、使用されるコードレス機器の種類によっては、このリチウムイオン二次電池では未だ十分な連続使用時間を保証するまでには至っていない。
【0003】
このような状況の中で、上記要望に応え得る電池の一例として、固体高分子型燃料電池が挙げられる。電解質に固体高分子電解質、正極活物質に空気中の酸素、負極活物質に燃料(水素、メタノール等)を用いる固体高分子型燃料電池は、リチウムイオン電池よりも高エネルギー密度化が期待できる電池として注目されている。
【0004】
燃料電池は、燃料及び酸素の供給さえ行えば連続的に使用することができるが、その燃料に関していくつかの候補が挙げられている。しかし、各燃料にはそれぞれ種々の問題点があり、最終的な決定が未だなされていない。
【0005】
燃料として水素を用いる燃料電池としては、例えば、高圧タンク或いは水素吸蔵合金タンクに蓄えた水素を燃料として供給する方法が一部で実用化されているが、全体の体積及び質量が大きくなりエネルギー密度が低下するため、ポータブル電源の用途には適さないという欠点を有している。
【0006】
また、燃料電池の燃料として、炭化水素系燃料を用い、それを改質して水素を取り出す方法もあるが、改質装置が必要となり改質装置への熱の供給及び断熱等の問題があるため、やはりポータブル電源の用途には適さない。この他、燃料としてメタノールを用い、直接電極でメタノールを燃料として反応させる直接メタノール型燃料電池もあり、これは小型化が容易で、将来のポータブル電源として期待されているが、負極のメタノールが電解質を透過して正極に達するクロスオーバーによる電圧の低下及びエネルギー密度の減少という問題がある。
【0007】
このような状況において、燃料電池の燃料源である水素を製造する方法として、水と、例えばアルミニウム、マグネシウム、ケイ素、亜鉛等の金属材料とを、100℃以下の低温で化学反応させて水素を発生させる方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0008】
中でも、特許文献3には、水素発生材料の粒径を調整することにより、反応効率を向上させて発熱剤等の含有割合を低減させることが記載されており、水素発生材料の充填密度を高くするために、水素発生材料をペレット状に圧縮成形したり、顆粒状に圧縮成形したりすることも提案されている。
【0009】
一方、特許文献4には、アルミニウムと、反応促進剤としてのアルミニウム化合物と、上記アルミニウム1モルに対して3モル以上の割合で混合される水又はアルコールとを有する水素発生材料が記載されており、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム等を添加することにより、水素発生速度のコントロールが可能となることが開示されている。また、特許文献5には、酸素吸収性組成物であって用途は異なるものの、特許文献4と同様に、アルミニウムと、アルミニウム化合物と、リン酸、クエン酸、酒石酸及びこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤とを有する組成物が開示されているが、上記添加剤は水素発生の好適な抑制剤として作用することが明らかにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−231466号公報
【特許文献2】特表2004−505879号公報
【特許文献3】特開2006−306700号公報
【特許文献4】特開2007−131481号公報
【特許文献5】特開2007−117786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1及び2の方法によれば、水素発生反応を効率的に進行させるためには多量の発熱剤や触媒の添加を必要としており、そのため、金属材料の割合が減少し、実質的に製造される水素量が低下するという問題を生じてしまう。
【0012】
また、特許文献3の方法によれば、水素発生材料中の金属材料の割合を高め、取り出せる水素の量を多くすることができるが、水素発生材料を成形体とした場合には、成形体の内部に水が浸透しにくくなり、水と金属材料との反応が阻害されるため、反応効率の向上について検討の余地が残されている。
【0013】
また、添加剤を水素発生材料に加える特許文献4の方法では、添加剤が水素発生を抑制してしまうため、効率的に水素を発生させるには至らない。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、容易に効率よく水素を発生させ得る水素発生材料組成物とその成形体及びそれらを用いて水素を発生させる水素の製造方法を提供するものであり、特に、水素発生材料組成物の成形体での反応効率を向上させ、携帯化に適する水素発生材料組成物と水素の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、クエン酸や酒石酸といったヒドロキシ酸の水溶性塩を一定量以上アルミニウム等の金属材料に添加した場合には、前述の特許文献4或いは5の開示とは逆に、上記金属材料と水との反応が促進され、水素発生の効率が向上すること、特に、上記金属材料と上記ヒドロキシ酸の水溶性塩とを含む水素発生材料組成物の充填密度が大きくなった場合に、上記ヒドロキシ酸の水溶性塩の添加の効果が顕著になることを知見し、本発明をなしたものである。
【0016】
本発明の水素発生材料組成物は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム及び上記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属材料と、ヒドロキシ酸の水溶性塩とを含み、前記金属材料と前記ヒドロキシ酸の水溶性塩との総量中、前記ヒドロキシ酸の水溶性塩の割合が1質量%以上であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第1の水素発生材料成形体は、上記本発明の水素発生材料組成物を成形してなることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第2の水素発生材料成形体は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム及び前記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属材料を含む水素発生材料組成物を成形してなる水素発生材料成形体であって、水に接触させた場合にその形状が崩れ、内部に水が浸透することを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明の水素の製造方法は、上記本発明の水素発生材料組成物又は上記本発明の水素発生材料成形体に水を供給し、前記金属材料と前記水とを反応させて水素を発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水素発生材料組成物を用いることにより、容易に効率よく水素を発生させることができる。また、本発明の水素発生材料組成物を成形体とし、水素発生材料組成物の充填密度を大きくしても、反応効率の低下を防ぐことができ、携帯に適した水素発生材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の水素の製造方法の実施に用いる水素製造装置の一例を示す模式断面図である。
【図2】図2は、本発明の水素発生材料組成物を充填した燃料カートリッジの一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(実施形態1)
先ず、本発明の水素発生材料組成物及び水素発生材料成形体について説明する。本発明の水素発生材料組成物は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム及び上記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属材料と、ヒドロキシ酸の水溶性塩とを含有する。上記水素発生材料組成物では、上記金属材料と上記ヒドロキシ酸の水溶性塩との総量中、上記ヒドロキシ酸の水溶性塩の割合が1質量%以上となるよう混合比が調整されており、水と接触した場合に、上記金属材料と水との反応により水素を発生する水素発生源となる組成物である。
【0024】
上記金属材料は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属が用いられるが、上記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金であってもよく、水素発生量を多くするために、合金中の上記金属元素の含有量(2種以上含有する場合はその合計量)は60質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上である。ここで、上記金属元素を主体とする合金とは、当該金属元素を50質量%以上含む合金を意味する。また、上記金属元素とともに合金を形成する元素としては、Si、Fe、Cu、Mn、Ni、Ti、Sn、Cr等が例示されるが、特に限定はされない。上記金属材料は、表面に比較的安定な酸化皮膜が形成されるため、板状、ブロック状等のバルクの形状では、水との反応はほとんど進行しないが、粉末状とすることにより、常温或いは加熱された状態で水との発熱反応が進行しやすくなり、水素を生成することのできる材料である。ここで、本明細書において常温とは、20〜30℃の範囲の温度である。
【0025】
上記金属材料の1つであるアルミニウムと水との反応は、下記式(1)〜(3)のいずれかによって進行すると考えられる。下記式(1)による発熱量は、419kJ/molである。
【0026】
2Al+6H2O→Al2O3・3H2O+3H2 (1)
2Al+4H2O→Al2O3・H2O+3H2 (2)
2Al+3H2O→Al2O3+3H2 (3)
【0027】
本発明の水素発生材料組成物に使用される金属材料は、一般に、上記金属元素やその合金を金属状態で含有する粒子内部と、該粒子内部の少なくとも一部を被覆する表面皮膜(酸化皮膜)とで構成されている。そして、このような金属材料と水との反応の際には、上記表面皮膜に水が浸透して、粒子内部の金属や合金にまで水が到達すると、上記式(1)〜(3)のような反応が生じて水素が発生する。このうち、100℃以下の低温で優先的に起こると考えられる上記式(1)〜(2)の反応では、反応生成物として水和物を生成する。この水和物も難水溶性であるので、そのまま金属材料の粒子表面に析出し、表面皮膜は厚くなる。そして、粒子表面に析出した上記水和物と、未反応の金属材料とが凝結する現象が起こる。この現象によって、未反応の金属材料の粒子内部まで水が浸透しにくくなる。特に、ペレット状又は顆粒状等に成形された充填密度の高い水素発生材料においては、成形体の外表面で上記現象が起こりやすくなり、成形体の内部の金属材料にまで水が浸透することが困難となり、水素発生効率が顕著に悪くなるといった不都合が生じやすい。
【0028】
しかしながら、本発明においては、水素発生材料組成物にヒドロキシ酸の水溶性塩を、上記金属材料と上記ヒドロキシ酸の水溶性塩との総量中、1質量%以上含有させているため、上記金属材料と水との反応が効率よく進行する。このヒドロキシ酸の水溶性塩の添加剤としての作用についての詳細は不明だが、金属材料と水との接触が良好になる、反応生成物と未反応の金属材料とが凝結するのを防ぐなどの働きがあるのではないかと思われる。
【0029】
また、水素発生材料組成物が成形されて充填密度が高くなった場合でも、その成形体が上記水溶性塩を含有しているため、水と接触した時に上記水溶性塩が容易に水和し、成形体の形状を崩しながら成形体の内部に水を速やかに浸透させることができる。成形体における上記作用は、必ずしもヒドロキシ酸の水溶性塩を含む成形体に限定されるものではないが、前述した金属材料と水との反応促進の効果も期待できるため、水素発生材料組成物の成形体においても、ヒドロキシ酸の水溶性塩を含むことが好ましい。
【0030】
添加剤として用いる上記ヒドロキシ酸(オキシ酸)の水溶性塩は、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、乳酸、タルトロン酸等で例示されるヒドロキシ酸の、例えば、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アルミニウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩等の金属塩や、アンモニウム塩等を例示することができる。この中でも特にクエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩及びグリコール酸塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。詳細は不明であるが、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩及びグリコール酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を添加することにより、上記金属材料と水との反応がより促進され、水素発生の効率がより向上するためである。
【0031】
上記ヒドロキシ酸は、分子内にカルボキシル基と水酸基とを有するものの総称であり、カルボキシル基及び/又は水酸基を複数有していてもよい。クエン酸のように複数のカルボキシル基を有するヒドロキシ酸の水溶性塩を用いる場合は、全てのカルボキシル基が反応して形成される正塩以外に、一部のカルボキシル基の水素がそのまま残存している酸性塩を用いてもよい。また、水溶性塩を構成するカチオンは、一種のみに限定されず、複数種のカチオンが混在する水溶性塩であってもよい。さらに、不斉炭素を有し複数の光学異性体が存在する化合物では、それらのいずれを用いても構わない。例えば、酒石酸においては、D体、L体、DL体及びメソ体のいずれであってもよい。
【0032】
上記ヒドロキシ酸の水溶性塩としては、水に対する溶解性の高い化合物が多いことから、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好ましく用いられる。より具体的には、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸水素マグネシウム、酒石酸二ナトリウム、グリコール酸ナトリウム等を好ましく用いることができる。この中でも、上記金属材料と水との反応を促進する効果の高いクエン酸又はグリコール酸のアルカリ金属塩が、特に好ましく用いられる。
【0033】
また、本発明においては、水への溶解度の点から脂肪族オキシ酸の水溶性塩が好ましく用いられるが、これに限定されるものではなく、サリチル酸の水溶性塩のように芳香族オキシ酸の水溶性塩であってもよい。
【0034】
本発明の水素発生材料組成物においては、上記金属材料と上記ヒドロキシ酸の水溶性塩との合計質量を100としたときに上記水溶性塩の質量が1%以上となるよう、それぞれの含有割合を調整すればよい。上記水溶性塩の割合が多くなるほどその効果が大きくなり、反応効率が向上するので、上記金属材料と上記水溶性塩との総量中、上記水溶性塩の割合は3質量%以上であるのが好ましく、5質量%以上であるのがより好ましく、10質量%以上であるのが最も好ましい。一方、上記金属材料の割合を多くして、反応により取り出すことのできる水素の総量を多くするために、上記水溶性塩の割合は40質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましく、20質量%以下であるのが最も好ましい。上記水溶性塩を複数種用いる場合は、その合計量が上記範囲になるよう調整すればよい。
【0035】
本発明における上記金属材料の形状や粒径は、特に限定されるものではないが、下記(1)〜(3)のいずれかを満たす材料が好ましく用いられる。そのような金属材料は、取り扱い性に優れ、また反応効率が高い材料となるためである。下記(1)〜(3)の2つ以上の項目を満たす材料であればより好ましい。
(1)粒径が0.1〜60μmの粒子を80体積%以上含む。
(2)平均粒径が0.1〜30μmである。
(3)粒子形状が鱗片状であり、かつその厚みが0.1〜5μmである。
【0036】
上記金属材料の形状は、粒子の中心まで水との反応が進行しやすいことから、上記鱗片状であることが望まれるが、略球状、ラグビーボール状、液滴状など他の形状であってもよい。
【0037】
上記(1)及び(2)における「粒径」と「平均粒径」は、レーザー回折・散乱法を用いて測定される値である。即ち、水等の液相又は気相に分散させた測定対象物質にレーザー光を照射することによって検出される散乱強度分布を利用した粒子径分布から求まるもので、体積基準での積算分率に基づく。本発明では、「平均粒径」は、体積基準の積算分率50%における直径の値(d50)を意味している。レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定装置としては、例えば、日機装社製の“マイクロトラックHRA”等を用いることができる。
【0038】
また、上記(3)における鱗片状の金属材料の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより求めることができる。
【0039】
本発明における上記金属材料は、燃焼赤外吸収法により測定される粒子表面での炭素含有量が、0.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましい。粒子表面における炭素含有量が少なくなることにより、水との親和性が向上して、水素発生反応が進行しやすくなる。上記炭素含有量を0質量%とすることは、現実的に困難であるため、炭素含有量の下限値は、0.01質量%程度となる。
【0040】
本発明の水素発生材料組成物は、反応容器内で水と反応させて水素を発生させるための組成物である。即ち、水が添加される前の実質的に乾燥状態にある組成物であるが、ヒドロキシ酸の水溶性塩や後述する発熱材料等の添加剤に起因して、若干量の水分が空気中等から上記組成物に取り込まれる場合もある。上記組成物に取り込まれる水分量が多くなり過ぎると、反応が進んでしまうことも考えられるので、含有する水分量が多い場合は、必要に応じて上記組成物を乾燥させるなどの処理を行うのが望ましい。
【0041】
本発明の水素発生材料組成物に水を添加する場合、金属材料と水との反応は、温度が高くなるほど進行しやすいので、反応に際し、水素発生材料組成物又は水を加熱することが望ましい。水素発生材料組成物又は水の加熱は、反応容器を外部から加熱する方法、水をあらかじめ加熱してから添加する方法、水と反応して発熱する発熱材料を水素発生材料組成物に含有させておき、その反応熱を利用する方法等を用いることができる。発熱材料を水素発生材料組成物に含有させる場合は、水素を発生させるために水素発生材料組成物に対して供給される水が、上記発熱材料とも反応して発熱し、水素発生材料組成物中の金属材料や水を加熱して反応を促進することになる。
【0042】
このような発熱材料としては、水と反応して発熱し水酸化物や水和物を生じる物質、水と反応して発熱し水素を生成する物質等を用いることができる。
【0043】
水と反応して発熱し水酸化物や水和物を生じる物質としては、例えば、アルカリ金属の酸化物や水酸化物(酸化リチウム、酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム等)、アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物(酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ土類金属の塩化物(塩化カルシウム、塩化マグネシウム等)、アルカリ土類金属の硫酸化合物(硫酸カルシウム等)等を用いることができる。
【0044】
水と反応して発熱し水素を生成する物質としては、例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム等)、アルカリ金属水素化物(水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化リチウム等)等を用いることができる。これらの物質は、1種単独で用いることもでき、2種以上を併用することもできる。また、発熱材料が塩基性物質であれば、水素発生反応に用いられる水に溶解して高濃度のアルカリ水溶液を形成し、上記金属材料の表面に形成された酸化皮膜を溶解させ、水との反応性を大きくすることができるので好ましい。この酸化皮膜を溶解する反応は、金属材料と水との反応の起点となることもある。特に、発熱材料がアルカリ土類金属の酸化物であれば、塩基性物質でありかつ取り扱いが容易であるのでより好ましい。
【0045】
水素発生材料組成物における上記発熱材料の含有割合は、反応による発熱量を大きくするために、上記金属材料と上記発熱材料との総量中、上記発熱材料を0.5質量%以上とするのが好ましく、3質量%以上とするのがより好ましい。一方、上記金属材料の割合を多くして、反応により取り出すことのできる水素の総量を多くするために、上記発熱材料の含有割合は15質量%以下とするのが好ましく、10質量%以下とするのがより好ましい。上記発熱材料の含有量により、反応時の温度や水素発生速度をある程度制御することができるが、反応時の温度があまり高くなりすぎると、水素発生反応が急激に進行して制御できなくなるため、反応温度が120℃以下になるように発熱材料の添加量を調整することが好ましく、反応に用いる水が蒸発して失われるのを防ぐため、反応温度が100℃以下になるように発熱材料の添加量を調整することがより好ましい。一方、水素発生反応の効率の点からは、反応温度が40℃以上となることが好ましい。
【0046】
本発明の水素発生材料組成物は、上記金属材料、上記ヒドロキシ酸の水溶性塩及び必要に応じて添加される上記発熱材料等を混合することにより得ることができる。或いは、上記金属材料の表面に上記ヒドロキシ酸の水溶性塩等の添加剤をコーティングし、複合化された水素発生材料組成物とすることもできる。これらの材料はできるだけ均一に混合されることが望ましいが、構成材料の1種以上が上記組成物中の一部の領域に偏在するよう上記組成物を構成してもよい。例えば、上記発熱材料が上記組成物中の一部に高濃度で存在する場合、その部分では水と発熱材料との反応による発熱が大きくなるため、水素発生反応は上記偏在部分を起点として生じやすくなる。このため、水の供給開始から反応開始までの時間を短縮することができる。上記ヒドロキシ酸の水溶性塩を偏在させる場合にも、同様の効果が期待できる。
【0047】
本発明の水素発生材料組成物は、そのまま用いることもできるが、携帯に便利な形状とするため、又は、充填密度を高くして体積あたりの水素発生量を多くするために、ペレット状又は顆粒状に成形することもできる。本発明の水素発生材料組成物の見かけ密度は、組成にもよるが、およそ0.7g/cm3程度である。一方、成形体とした場合には、見かけ密度をおよそ1.0〜2.5g/cm3とすることができ、単位体積あたりの上記組成物の量を多くすることができる。成形性を良好にするために、上記組成物にカルボキシメチルセルロース等のバインダーを添加してもよい。
【0048】
(実施形態2)
次に、本発明の水素の製造方法について説明する。本発明の水素の製造方法は、実施形態1で説明した本発明の水素発生材料組成物又は水素発生材料成形体に水を供給し、前述の金属材料と水とを反応させ水素を発生させるものである。また、本発明の水素の製造方法は、実施形態1で述べたように、上記水素発生材料組成物、上記水素発生材料成形体又は上記水を加熱する工程を含むことが好ましい。
【0049】
以下、本発明の水素の製造方法を図面に基づき説明する。図1は、本発明の水素の製造方法の実施に用いる水素製造装置の一例を示す模式断面図である。図1において、水素製造装置10は、水素発生材料組成物12と水とを内部に密閉しかつ両者を反応させるための反応容器11と、水供給口13と、水素導出口14とを備え、マイクロポンプ19により、水供給パイプ15を通じて、水供給口13から水素発生材料組成物12に水を連続的に供給できるようになっている。また、反応容器11は、容器本体11aと蓋11bとで構成されている。供給された水は、反応容器11内で水素発生材料組成物12と反応して水素を発生させる。生成した水素は、水素導出口14を通じて水素導出パイプ17により外部に取り出される。図1に示す本実施形態では、反応中の反応容器11内の温度が低下するのを防ぎ、水素発生反応を持続させるため、反応容器11は保温材18で覆われている。
【0050】
反応容器11に用いる材質は水及び水素を透過しにくく、かつ100℃程度に加熱しても破損しない材質であれば特に限定されるものではなく、アルミニウム、チタン、ニッケル等の金属や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の樹脂、或いはアルミナ、シリカ、チタニア等のセラミックス、ガラス(特に耐熱ガラス)等の材料を用いることができる。また、水供給パイプ15及び水素導出パイプ17についても同様である。保温材18は、発泡スチロール等の断熱性の高い材料を用いればよい。さらに、水素以外の内容物が外に漏れ出すのを防ぐため、水素導出口14に、必要に応じて気液分離膜等のフィルターを設置してもよい。
【0051】
また、水素製造装置を小型燃料電池或いは携帯電子機器に組み込む場合、携帯性を考慮して、例えば図2に示すような携帯型の燃料カートリッジとすることもできる。図2において、燃料カートリッジ20は、反応容器21の内部に水素発生材料組成物22を封入したものであり、前述の図1の水素製造装置と同様に、水素発生材料組成物22に水を供給するための水供給口23と、反応容器21内で生成する水素を外部に取り出すための水素導出口24とを備えている。燃料電池或いは携帯電子機器に装着された燃料カートリッジ20には、マイクロポンプ等を使い、水供給パイプ25を通じて内部に水が供給される。或いは、水を充填した別の容器を燃料カートリッジ20の一部にあらかじめ備えておき、燃料電池或いは携帯電子機器に燃料カートリッジ20が装着された後、その水が反応容器21内に供給されるような構造であってもよい。
【0052】
供給された水の一部は、吸水材26a、26bにより保持され、残部は水素発生材料組成物22を濡らし、水素発生反応が開始される。発生した水素は、水素導出パイプ27を通じて燃料電池の負極に供給される。吸水材26a、26bは必ずしも必要ではないが、水素発生反応による水の消費に応じて、吸水材26a、26bにより保持された水も水素発生材料組成物22に供給されるため、水素発生速度の時間変動をある程度抑制することが可能となる。吸水材26a、26bは、水を吸って保持することのできる材質のものであれば特に限定されるものではなく、一般には脱脂綿や不織布等を用いることができる。
【0053】
また、前述のヒドロキシ酸の水溶性塩を水素発生材料組成物に添加する場合、水と上記組成物との反応により生じる生成物の体積が、上記水溶性塩を含まない水素発生材料組成物による反応生成物に比べて大きくなる。このため、反応が進行し反応生成物が多く析出した段階では、上記反応生成物により、水素発生材料組成物の内部への水の浸透が抑制され、反応速度が低下するおそれが生じる。これを防ぐために、反応により生じる上記組成物の体積変化に応じて形状を変えられるように、反応容器11、21を、アルミニウム等の金属と樹脂とのラミネートフィルム等で構成してもよい。また、水素発生材料組成物の成形体を用いる場合には、上記組成物の体積膨張に対応するために、成形体と反応容器11、21との間に空隙を設けてもよい。
【0054】
上記変形可能な反応容器を用いること、或いは、反応容器内に水素発生材料組成物の体積変化を許容する空隙を設けることにより、反応が進行しても、水素発生材料組成物の内部に水が容易に浸透するため、本発明の効果をより高めることができる。
【0055】
更に、上記水素製造装置には、圧力逃がし弁を設けることが好ましい。例えば水素発生速度が増大して、装置の内圧が上昇した場合でも、圧力逃がし弁から水素を装置外に排出することにより、破裂等による装置の破損を防止することができる。圧力逃がし弁の設置箇所は、水素発生材料組成物を収容した容器内で発生した水素が排出できる箇所であればよい。例えば図2に示す装置であれば、水素導出管27から、燃料電池或いは携帯電子機器までの間のいずれの箇所に圧力逃がし弁を設けても構わない。
【0056】
炭化水素系燃料の改質により得られる水素では、CO及びCO2が含まれることにより、100℃以下で作動する固体高分子型燃料電池において、上記ガスによる被毒の問題が生じる。一方、本発明の水素発生材料組成物を用いて発生させた水素は、上記ガスを含まないため、そのような問題が発生せず、また、反応に水が関与するため、ガス中に適度な水分を含んでおり、水素を燃料とする燃料電池において好ましく用いることができる。
【0057】
水素発生材料組成物を外部から加熱する場合、例えば、発熱源として、抵抗体に通電することによる電気的発熱、発熱反応による化学的発熱等を用い、水素発生材料組成物及び水を収容した反応容器を外部から加熱する方法を採用することができる。上記抵抗体の種類については特に限定されず、例えば、ニクロム線、白金線等の金属発熱体、炭化ケイ素、PTCサーミスタ等が使用できる。また、上記発熱反応としては特に限定されず、例えば、前述の発熱材料と水との反応、或いは、鉄と酸素との反応等により発生する熱を用いる方法が使用できる。
【0058】
また、金属材料と水との反応も発熱反応であるため、図1に示した保温材18によりその反応熱の放熱を防ぎ、水素発生材料組成物や水の温度上昇に利用すれば、上記発熱源を有さずとも連続的に水素を発生させることもできる。即ち、反応初期に加熱を行うのみで、水素発生が始まった後は加熱を止めても、水素発生反応の発熱により加温状態を維持することができる。
【0059】
更に、水素発生材料組成物と反応させる水の供給量を制御することによって、水素発生量を制御することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。
【0061】
(実施例1)
金属材料としてガスアトマイズ法により作製された平均粒径6μmのアルミニウム粉末(但し、粒径が60μm以下の粒子の割合:100質量%)と、添加剤としてのクエン酸三ナトリウム粉末とを、表1に示す割合となるよう乳鉢で混合し、水素発生材料組成物を得た。次に、それぞれの水素発生材料組成物を加圧成形することにより、直径10mm、厚み約3.7mm、見かけ密度1.7g/cm3のペレット状の成形体0.5gを作製した。ここで、成形体の見かけ密度は、成形体の質量を、その厚みと直径とから求まる体積で除すことにより求めた。
【0062】
続いて、上記成形体と純水10gとを、外側に抵抗体を配置したガラス製容器(内容積50cm3)に入れ、抵抗体に通電することにより容器を50℃に加熱した。それぞれの水素発生材料組成物の成形体は、水と接触することにより形状が崩れ、内部まで水が浸透したため、金属材料と水とが容易に反応し、水素を発生させることができた。生成した水素は水上置換法により捕集し、反応開始から50時間後までに発生した水素の総量、及びアルミニウムの反応率を求めた。アルミニウムの反応率は、25℃、1気圧でのアルミニウム1g当りの理論水素発生量(1360ml)を基準とし、上記成形体に含まれるアルミニウムの質量から計算される水素発生量の理論値に対する、実際の水素発生量の割合として求めた。
【0063】
(実施例2)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、クエン酸三カリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
【0064】
(実施例3)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、酒石酸二ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
【0065】
(実施例4)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、グリコール酸ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
【0066】
(実施例5)
実施例1で用いたアルミニウム粉末とクエン酸三ナトリウム粉末とを90:10(質量比)の割合で含有する水素発生材料組成物について、直径10mm、厚み約3.2mm、見かけ密度2.0g/cm3の成形体となるよう加圧成形を行った以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体0.5gを作製し、水素を発生させた。
【0067】
(比較例1)
添加剤を混合せず、実施例1のアルミニウム粉末0.5gをそのまま用いた以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
【0068】
(比較例2)
アルミニウム粉末とクエン酸三ナトリウム粉末との割合を、99.5:0.5(質量比)とした以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
【0069】
(比較例3)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、酸化カルシウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例3では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、発熱材料を含有させて水素発生材料組成物とした。
【0070】
(比較例4)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、クエン酸粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例4では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、ヒドロキシ酸自身を含有させて水素発生材料組成物とした。
【0071】
(比較例5)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、酢酸ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例5では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、カルボキシル基は有するが水酸基を持たないカルボン酸の水溶性塩を含有させて水素発生材料組成物とした。
【0072】
(比較例6)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、コハク酸二ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例6では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、カルボキシル基は有するが水酸基を持たない多価カルボン酸の水溶性塩を含有させて水素発生材料組成物とした。
【0073】
(比較例7)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、二クエン酸三マグネシウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例7では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、水に不溶であるヒドロキシ酸の塩を含有させて水素発生材料組成物とした。
【0074】
実施例2〜5及び比較例1〜7についても実施例1と同様にして発生した水素の総量とアルミニウムの反応率とを求めた。実施例1〜5及び比較例1〜7の水素発生材料組成物の成形体について、添加剤の種類、添加剤の含有割合、発生した水素の総量(水素発生量)及びアルミニウム(金属材料)の反応率をそれぞれ表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
添加剤として、ヒドロキシ酸の水溶性塩を1質量%以上含有させた実施例1〜5の水素発生材料組成物の成形体では、ヒドロキシ酸の水溶性塩を添加しなかった比較例1の成形体に比べ、アルミニウムの反応率を向上させ、水素発生量を増加させることができた。上記添加剤の含有割合が増加するほどアルミニウムの反応率は向上したが、それに伴い水素発生源となるアルミニウム粉末の割合が減少するため、添加剤の割合が好適範囲より多くなると、水素発生量は極大値から減少に転じた。
【0077】
比較例1の水素発生材料組成物の成形体は、水が供給された後も容器の中でその形状を維持していたことから、水素発生反応に必要とされる量の水が成形体の内部まで浸透せず、水素発生反応が成形体の外表面付近のみで停止したため、アルミニウムの反応率が低くなり水素発生量が少なくなったものと思われる。
【0078】
また、ヒドロキシ酸の水溶性塩の含有量を1質量%未満とした比較例2の成形体も、上記添加剤の作用が充分に発揮されず、反応効率を向上させることはできなかった。
【0079】
また、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、反応を促進させる作用が期待できる発熱材料としての酸化カルシウムを含有させた比較例3の成形体では、成形体の外表面付近に存在する発熱材料が水と反応して発熱するため、比較例1に比べて反応効率が多少向上したが、成形体の内部まで水が浸透せず水素発生量を増加させることはできなかった。
【0080】
更に、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、ヒドロキシ酸の水溶性塩に近い構造を有する化合物を含有させた比較例4〜7でも、反応効率を大きく向上させることはできず、充分な水素発生量を確保することができなかった。比較例4〜7の成形体も、反応容器の中で形状が維持されていたことから、成形体の内部まで水が浸透しなかったものと思われる。
【0081】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、本発明により、100℃以下の低温で、容易に効率よく水素を発生させることができる。特に、本発明の水素発生材料組成物を成形体とし、充填密度を大きくした場合にも、反応効率の低下を防ぐことができるので、携帯に適した水素発生材料組成物を提供することができる。従って、燃料電池、特に小型携帯機器用の燃料電池の水素燃料源等に幅広く利用可能である。
【0083】
【符号の説明】
10 水素製造装置
11、21 反応容器
11a 容器本体
11b 蓋
12、22 水素発生材料組成物
13 水供給口
14 水素導出口
15 水供給パイプ
17 水素導出パイプ
18 保温材
19 マイクロポンプ
20 燃料カートリッジ
23 水供給口
24 水素導出口
25 水供給パイプ
26a、26b 吸水材
27 水素導出パイプ
【発明の名称】水素発生材料組成物、水素発生材料成形体及び水素の製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と反応して水素を発生させる水素発生材料組成物とその成形体及びそれらを用いた水素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューター、携帯電話等のコードレス機器の普及に伴い、その電源である二次電池は、ますます小型化、高容量化が要望されている。現在、エネルギー密度が高く、小型軽量化を図り得る二次電池としてリチウムイオン二次電池が実用化されており、ポータブル電源としての需要が増大している。しかし、使用されるコードレス機器の種類によっては、このリチウムイオン二次電池では未だ十分な連続使用時間を保証するまでには至っていない。
【0003】
このような状況の中で、上記要望に応え得る電池の一例として、固体高分子型燃料電池が挙げられる。電解質に固体高分子電解質、正極活物質に空気中の酸素、負極活物質に燃料(水素、メタノール等)を用いる固体高分子型燃料電池は、リチウムイオン電池よりも高エネルギー密度化が期待できる電池として注目されている。
【0004】
燃料電池は、燃料及び酸素の供給さえ行えば連続的に使用することができるが、その燃料に関していくつかの候補が挙げられている。しかし、各燃料にはそれぞれ種々の問題点があり、最終的な決定が未だなされていない。
【0005】
燃料として水素を用いる燃料電池としては、例えば、高圧タンク或いは水素吸蔵合金タンクに蓄えた水素を燃料として供給する方法が一部で実用化されているが、全体の体積及び質量が大きくなりエネルギー密度が低下するため、ポータブル電源の用途には適さないという欠点を有している。
【0006】
また、燃料電池の燃料として、炭化水素系燃料を用い、それを改質して水素を取り出す方法もあるが、改質装置が必要となり改質装置への熱の供給及び断熱等の問題があるため、やはりポータブル電源の用途には適さない。この他、燃料としてメタノールを用い、直接電極でメタノールを燃料として反応させる直接メタノール型燃料電池もあり、これは小型化が容易で、将来のポータブル電源として期待されているが、負極のメタノールが電解質を透過して正極に達するクロスオーバーによる電圧の低下及びエネルギー密度の減少という問題がある。
【0007】
このような状況において、燃料電池の燃料源である水素を製造する方法として、水と、例えばアルミニウム、マグネシウム、ケイ素、亜鉛等の金属材料とを、100℃以下の低温で化学反応させて水素を発生させる方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0008】
中でも、特許文献3には、水素発生材料の粒径を調整することにより、反応効率を向上させて発熱剤等の含有割合を低減させることが記載されており、水素発生材料の充填密度を高くするために、水素発生材料をペレット状に圧縮成形したり、顆粒状に圧縮成形したりすることも提案されている。
【0009】
一方、特許文献4には、アルミニウムと、反応促進剤としてのアルミニウム化合物と、上記アルミニウム1モルに対して3モル以上の割合で混合される水又はアルコールとを有する水素発生材料が記載されており、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム等を添加することにより、水素発生速度のコントロールが可能となることが開示されている。また、特許文献5には、酸素吸収性組成物であって用途は異なるものの、特許文献4と同様に、アルミニウムと、アルミニウム化合物と、リン酸、クエン酸、酒石酸及びこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤とを有する組成物が開示されているが、上記添加剤は水素発生の好適な抑制剤として作用することが明らかにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−231466号公報
【特許文献2】特表2004−505879号公報
【特許文献3】特開2006−306700号公報
【特許文献4】特開2007−131481号公報
【特許文献5】特開2007−117786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1及び2の方法によれば、水素発生反応を効率的に進行させるためには多量の発熱剤や触媒の添加を必要としており、そのため、金属材料の割合が減少し、実質的に製造される水素量が低下するという問題を生じてしまう。
【0012】
また、特許文献3の方法によれば、水素発生材料中の金属材料の割合を高め、取り出せる水素の量を多くすることができるが、水素発生材料を成形体とした場合には、成形体の内部に水が浸透しにくくなり、水と金属材料との反応が阻害されるため、反応効率の向上について検討の余地が残されている。
【0013】
また、添加剤を水素発生材料に加える特許文献4の方法では、添加剤が水素発生を抑制してしまうため、効率的に水素を発生させるには至らない。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、容易に効率よく水素を発生させ得る水素発生材料組成物とその成形体及びそれらを用いて水素を発生させる水素の製造方法を提供するものであり、特に、水素発生材料組成物の成形体での反応効率を向上させ、携帯化に適する水素発生材料組成物と水素の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、クエン酸や酒石酸といったヒドロキシ酸の水溶性塩を一定量以上アルミニウム等の金属材料に添加した場合には、前述の特許文献4或いは5の開示とは逆に、上記金属材料と水との反応が促進され、水素発生の効率が向上すること、特に、上記金属材料と上記ヒドロキシ酸の水溶性塩とを含む水素発生材料組成物の充填密度が大きくなった場合に、上記ヒドロキシ酸の水溶性塩の添加の効果が顕著になることを知見し、本発明をなしたものである。
【0016】
本発明の水素発生材料組成物は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム及び上記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属材料と、ヒドロキシ酸の水溶性塩とを含み、前記金属材料と前記ヒドロキシ酸の水溶性塩との総量中、前記ヒドロキシ酸の水溶性塩の割合が1質量%以上であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第1の水素発生材料成形体は、上記本発明の水素発生材料組成物を成形してなることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第2の水素発生材料成形体は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム及び前記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属材料を含む水素発生材料組成物を成形してなる水素発生材料成形体であって、水に接触させた場合にその形状が崩れ、内部に水が浸透することを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明の水素の製造方法は、上記本発明の水素発生材料組成物又は上記本発明の水素発生材料成形体に水を供給し、前記金属材料と前記水とを反応させて水素を発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水素発生材料組成物を用いることにより、容易に効率よく水素を発生させることができる。また、本発明の水素発生材料組成物を成形体とし、水素発生材料組成物の充填密度を大きくしても、反応効率の低下を防ぐことができ、携帯に適した水素発生材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の水素の製造方法の実施に用いる水素製造装置の一例を示す模式断面図である。
【図2】図2は、本発明の水素発生材料組成物を充填した燃料カートリッジの一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(実施形態1)
先ず、本発明の水素発生材料組成物及び水素発生材料成形体について説明する。本発明の水素発生材料組成物は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム及び上記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属材料と、ヒドロキシ酸の水溶性塩とを含有する。上記水素発生材料組成物では、上記金属材料と上記ヒドロキシ酸の水溶性塩との総量中、上記ヒドロキシ酸の水溶性塩の割合が1質量%以上となるよう混合比が調整されており、水と接触した場合に、上記金属材料と水との反応により水素を発生する水素発生源となる組成物である。
【0024】
上記金属材料は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属が用いられるが、上記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金であってもよく、水素発生量を多くするために、合金中の上記金属元素の含有量(2種以上含有する場合はその合計量)は60質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上である。ここで、上記金属元素を主体とする合金とは、当該金属元素を50質量%以上含む合金を意味する。また、上記金属元素とともに合金を形成する元素としては、Si、Fe、Cu、Mn、Ni、Ti、Sn、Cr等が例示されるが、特に限定はされない。上記金属材料は、表面に比較的安定な酸化皮膜が形成されるため、板状、ブロック状等のバルクの形状では、水との反応はほとんど進行しないが、粉末状とすることにより、常温或いは加熱された状態で水との発熱反応が進行しやすくなり、水素を生成することのできる材料である。ここで、本明細書において常温とは、20〜30℃の範囲の温度である。
【0025】
上記金属材料の1つであるアルミニウムと水との反応は、下記式(1)〜(3)のいずれかによって進行すると考えられる。下記式(1)による発熱量は、419kJ/molである。
【0026】
2Al+6H2O→Al2O3・3H2O+3H2 (1)
2Al+4H2O→Al2O3・H2O+3H2 (2)
2Al+3H2O→Al2O3+3H2 (3)
【0027】
本発明の水素発生材料組成物に使用される金属材料は、一般に、上記金属元素やその合金を金属状態で含有する粒子内部と、該粒子内部の少なくとも一部を被覆する表面皮膜(酸化皮膜)とで構成されている。そして、このような金属材料と水との反応の際には、上記表面皮膜に水が浸透して、粒子内部の金属や合金にまで水が到達すると、上記式(1)〜(3)のような反応が生じて水素が発生する。このうち、100℃以下の低温で優先的に起こると考えられる上記式(1)〜(2)の反応では、反応生成物として水和物を生成する。この水和物も難水溶性であるので、そのまま金属材料の粒子表面に析出し、表面皮膜は厚くなる。そして、粒子表面に析出した上記水和物と、未反応の金属材料とが凝結する現象が起こる。この現象によって、未反応の金属材料の粒子内部まで水が浸透しにくくなる。特に、ペレット状又は顆粒状等に成形された充填密度の高い水素発生材料においては、成形体の外表面で上記現象が起こりやすくなり、成形体の内部の金属材料にまで水が浸透することが困難となり、水素発生効率が顕著に悪くなるといった不都合が生じやすい。
【0028】
しかしながら、本発明においては、水素発生材料組成物にヒドロキシ酸の水溶性塩を、上記金属材料と上記ヒドロキシ酸の水溶性塩との総量中、1質量%以上含有させているため、上記金属材料と水との反応が効率よく進行する。このヒドロキシ酸の水溶性塩の添加剤としての作用についての詳細は不明だが、金属材料と水との接触が良好になる、反応生成物と未反応の金属材料とが凝結するのを防ぐなどの働きがあるのではないかと思われる。
【0029】
また、水素発生材料組成物が成形されて充填密度が高くなった場合でも、その成形体が上記水溶性塩を含有しているため、水と接触した時に上記水溶性塩が容易に水和し、成形体の形状を崩しながら成形体の内部に水を速やかに浸透させることができる。成形体における上記作用は、必ずしもヒドロキシ酸の水溶性塩を含む成形体に限定されるものではないが、前述した金属材料と水との反応促進の効果も期待できるため、水素発生材料組成物の成形体においても、ヒドロキシ酸の水溶性塩を含むことが好ましい。
【0030】
添加剤として用いる上記ヒドロキシ酸(オキシ酸)の水溶性塩は、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、乳酸、タルトロン酸等で例示されるヒドロキシ酸の、例えば、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アルミニウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩等の金属塩や、アンモニウム塩等を例示することができる。この中でも特にクエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩及びグリコール酸塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。詳細は不明であるが、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩及びグリコール酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を添加することにより、上記金属材料と水との反応がより促進され、水素発生の効率がより向上するためである。
【0031】
上記ヒドロキシ酸は、分子内にカルボキシル基と水酸基とを有するものの総称であり、カルボキシル基及び/又は水酸基を複数有していてもよい。クエン酸のように複数のカルボキシル基を有するヒドロキシ酸の水溶性塩を用いる場合は、全てのカルボキシル基が反応して形成される正塩以外に、一部のカルボキシル基の水素がそのまま残存している酸性塩を用いてもよい。また、水溶性塩を構成するカチオンは、一種のみに限定されず、複数種のカチオンが混在する水溶性塩であってもよい。さらに、不斉炭素を有し複数の光学異性体が存在する化合物では、それらのいずれを用いても構わない。例えば、酒石酸においては、D体、L体、DL体及びメソ体のいずれであってもよい。
【0032】
上記ヒドロキシ酸の水溶性塩としては、水に対する溶解性の高い化合物が多いことから、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好ましく用いられる。より具体的には、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸水素マグネシウム、酒石酸二ナトリウム、グリコール酸ナトリウム等を好ましく用いることができる。この中でも、上記金属材料と水との反応を促進する効果の高いクエン酸又はグリコール酸のアルカリ金属塩が、特に好ましく用いられる。
【0033】
また、本発明においては、水への溶解度の点から脂肪族オキシ酸の水溶性塩が好ましく用いられるが、これに限定されるものではなく、サリチル酸の水溶性塩のように芳香族オキシ酸の水溶性塩であってもよい。
【0034】
本発明の水素発生材料組成物においては、上記金属材料と上記ヒドロキシ酸の水溶性塩との合計質量を100としたときに上記水溶性塩の質量が1%以上となるよう、それぞれの含有割合を調整すればよい。上記水溶性塩の割合が多くなるほどその効果が大きくなり、反応効率が向上するので、上記金属材料と上記水溶性塩との総量中、上記水溶性塩の割合は3質量%以上であるのが好ましく、5質量%以上であるのがより好ましく、10質量%以上であるのが最も好ましい。一方、上記金属材料の割合を多くして、反応により取り出すことのできる水素の総量を多くするために、上記水溶性塩の割合は40質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましく、20質量%以下であるのが最も好ましい。上記水溶性塩を複数種用いる場合は、その合計量が上記範囲になるよう調整すればよい。
【0035】
本発明における上記金属材料の形状や粒径は、特に限定されるものではないが、下記(1)〜(3)のいずれかを満たす材料が好ましく用いられる。そのような金属材料は、取り扱い性に優れ、また反応効率が高い材料となるためである。下記(1)〜(3)の2つ以上の項目を満たす材料であればより好ましい。
(1)粒径が0.1〜60μmの粒子を80体積%以上含む。
(2)平均粒径が0.1〜30μmである。
(3)粒子形状が鱗片状であり、かつその厚みが0.1〜5μmである。
【0036】
上記金属材料の形状は、粒子の中心まで水との反応が進行しやすいことから、上記鱗片状であることが望まれるが、略球状、ラグビーボール状、液滴状など他の形状であってもよい。
【0037】
上記(1)及び(2)における「粒径」と「平均粒径」は、レーザー回折・散乱法を用いて測定される値である。即ち、水等の液相又は気相に分散させた測定対象物質にレーザー光を照射することによって検出される散乱強度分布を利用した粒子径分布から求まるもので、体積基準での積算分率に基づく。本発明では、「平均粒径」は、体積基準の積算分率50%における直径の値(d50)を意味している。レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定装置としては、例えば、日機装社製の“マイクロトラックHRA”等を用いることができる。
【0038】
また、上記(3)における鱗片状の金属材料の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより求めることができる。
【0039】
本発明における上記金属材料は、燃焼赤外吸収法により測定される粒子表面での炭素含有量が、0.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましい。粒子表面における炭素含有量が少なくなることにより、水との親和性が向上して、水素発生反応が進行しやすくなる。上記炭素含有量を0質量%とすることは、現実的に困難であるため、炭素含有量の下限値は、0.01質量%程度となる。
【0040】
本発明の水素発生材料組成物は、反応容器内で水と反応させて水素を発生させるための組成物である。即ち、水が添加される前の実質的に乾燥状態にある組成物であるが、ヒドロキシ酸の水溶性塩や後述する発熱材料等の添加剤に起因して、若干量の水分が空気中等から上記組成物に取り込まれる場合もある。上記組成物に取り込まれる水分量が多くなり過ぎると、反応が進んでしまうことも考えられるので、含有する水分量が多い場合は、必要に応じて上記組成物を乾燥させるなどの処理を行うのが望ましい。
【0041】
本発明の水素発生材料組成物に水を添加する場合、金属材料と水との反応は、温度が高くなるほど進行しやすいので、反応に際し、水素発生材料組成物又は水を加熱することが望ましい。水素発生材料組成物又は水の加熱は、反応容器を外部から加熱する方法、水をあらかじめ加熱してから添加する方法、水と反応して発熱する発熱材料を水素発生材料組成物に含有させておき、その反応熱を利用する方法等を用いることができる。発熱材料を水素発生材料組成物に含有させる場合は、水素を発生させるために水素発生材料組成物に対して供給される水が、上記発熱材料とも反応して発熱し、水素発生材料組成物中の金属材料や水を加熱して反応を促進することになる。
【0042】
このような発熱材料としては、水と反応して発熱し水酸化物や水和物を生じる物質、水と反応して発熱し水素を生成する物質等を用いることができる。
【0043】
水と反応して発熱し水酸化物や水和物を生じる物質としては、例えば、アルカリ金属の酸化物や水酸化物(酸化リチウム、酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム等)、アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物(酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ土類金属の塩化物(塩化カルシウム、塩化マグネシウム等)、アルカリ土類金属の硫酸化合物(硫酸カルシウム等)等を用いることができる。
【0044】
水と反応して発熱し水素を生成する物質としては、例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム等)、アルカリ金属水素化物(水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化リチウム等)等を用いることができる。これらの物質は、1種単独で用いることもでき、2種以上を併用することもできる。また、発熱材料が塩基性物質であれば、水素発生反応に用いられる水に溶解して高濃度のアルカリ水溶液を形成し、上記金属材料の表面に形成された酸化皮膜を溶解させ、水との反応性を大きくすることができるので好ましい。この酸化皮膜を溶解する反応は、金属材料と水との反応の起点となることもある。特に、発熱材料がアルカリ土類金属の酸化物であれば、塩基性物質でありかつ取り扱いが容易であるのでより好ましい。
【0045】
水素発生材料組成物における上記発熱材料の含有割合は、反応による発熱量を大きくするために、上記金属材料と上記発熱材料との総量中、上記発熱材料を0.5質量%以上とするのが好ましく、3質量%以上とするのがより好ましい。一方、上記金属材料の割合を多くして、反応により取り出すことのできる水素の総量を多くするために、上記発熱材料の含有割合は15質量%以下とするのが好ましく、10質量%以下とするのがより好ましい。上記発熱材料の含有量により、反応時の温度や水素発生速度をある程度制御することができるが、反応時の温度があまり高くなりすぎると、水素発生反応が急激に進行して制御できなくなるため、反応温度が120℃以下になるように発熱材料の添加量を調整することが好ましく、反応に用いる水が蒸発して失われるのを防ぐため、反応温度が100℃以下になるように発熱材料の添加量を調整することがより好ましい。一方、水素発生反応の効率の点からは、反応温度が40℃以上となることが好ましい。
【0046】
本発明の水素発生材料組成物は、上記金属材料、上記ヒドロキシ酸の水溶性塩及び必要に応じて添加される上記発熱材料等を混合することにより得ることができる。或いは、上記金属材料の表面に上記ヒドロキシ酸の水溶性塩等の添加剤をコーティングし、複合化された水素発生材料組成物とすることもできる。これらの材料はできるだけ均一に混合されることが望ましいが、構成材料の1種以上が上記組成物中の一部の領域に偏在するよう上記組成物を構成してもよい。例えば、上記発熱材料が上記組成物中の一部に高濃度で存在する場合、その部分では水と発熱材料との反応による発熱が大きくなるため、水素発生反応は上記偏在部分を起点として生じやすくなる。このため、水の供給開始から反応開始までの時間を短縮することができる。上記ヒドロキシ酸の水溶性塩を偏在させる場合にも、同様の効果が期待できる。
【0047】
本発明の水素発生材料組成物は、そのまま用いることもできるが、携帯に便利な形状とするため、又は、充填密度を高くして体積あたりの水素発生量を多くするために、ペレット状又は顆粒状に成形することもできる。本発明の水素発生材料組成物の見かけ密度は、組成にもよるが、およそ0.7g/cm3程度である。一方、成形体とした場合には、見かけ密度をおよそ1.0〜2.5g/cm3とすることができ、単位体積あたりの上記組成物の量を多くすることができる。成形性を良好にするために、上記組成物にカルボキシメチルセルロース等のバインダーを添加してもよい。
【0048】
(実施形態2)
次に、本発明の水素の製造方法について説明する。本発明の水素の製造方法は、実施形態1で説明した本発明の水素発生材料組成物又は水素発生材料成形体に水を供給し、前述の金属材料と水とを反応させ水素を発生させるものである。また、本発明の水素の製造方法は、実施形態1で述べたように、上記水素発生材料組成物、上記水素発生材料成形体又は上記水を加熱する工程を含むことが好ましい。
【0049】
以下、本発明の水素の製造方法を図面に基づき説明する。図1は、本発明の水素の製造方法の実施に用いる水素製造装置の一例を示す模式断面図である。図1において、水素製造装置10は、水素発生材料組成物12と水とを内部に密閉しかつ両者を反応させるための反応容器11と、水供給口13と、水素導出口14とを備え、マイクロポンプ19により、水供給パイプ15を通じて、水供給口13から水素発生材料組成物12に水を連続的に供給できるようになっている。また、反応容器11は、容器本体11aと蓋11bとで構成されている。供給された水は、反応容器11内で水素発生材料組成物12と反応して水素を発生させる。生成した水素は、水素導出口14を通じて水素導出パイプ17により外部に取り出される。図1に示す本実施形態では、反応中の反応容器11内の温度が低下するのを防ぎ、水素発生反応を持続させるため、反応容器11は保温材18で覆われている。
【0050】
反応容器11に用いる材質は水及び水素を透過しにくく、かつ100℃程度に加熱しても破損しない材質であれば特に限定されるものではなく、アルミニウム、チタン、ニッケル等の金属や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の樹脂、或いはアルミナ、シリカ、チタニア等のセラミックス、ガラス(特に耐熱ガラス)等の材料を用いることができる。また、水供給パイプ15及び水素導出パイプ17についても同様である。保温材18は、発泡スチロール等の断熱性の高い材料を用いればよい。さらに、水素以外の内容物が外に漏れ出すのを防ぐため、水素導出口14に、必要に応じて気液分離膜等のフィルターを設置してもよい。
【0051】
また、水素製造装置を小型燃料電池或いは携帯電子機器に組み込む場合、携帯性を考慮して、例えば図2に示すような携帯型の燃料カートリッジとすることもできる。図2において、燃料カートリッジ20は、反応容器21の内部に水素発生材料組成物22を封入したものであり、前述の図1の水素製造装置と同様に、水素発生材料組成物22に水を供給するための水供給口23と、反応容器21内で生成する水素を外部に取り出すための水素導出口24とを備えている。燃料電池或いは携帯電子機器に装着された燃料カートリッジ20には、マイクロポンプ等を使い、水供給パイプ25を通じて内部に水が供給される。或いは、水を充填した別の容器を燃料カートリッジ20の一部にあらかじめ備えておき、燃料電池或いは携帯電子機器に燃料カートリッジ20が装着された後、その水が反応容器21内に供給されるような構造であってもよい。
【0052】
供給された水の一部は、吸水材26a、26bにより保持され、残部は水素発生材料組成物22を濡らし、水素発生反応が開始される。発生した水素は、水素導出パイプ27を通じて燃料電池の負極に供給される。吸水材26a、26bは必ずしも必要ではないが、水素発生反応による水の消費に応じて、吸水材26a、26bにより保持された水も水素発生材料組成物22に供給されるため、水素発生速度の時間変動をある程度抑制することが可能となる。吸水材26a、26bは、水を吸って保持することのできる材質のものであれば特に限定されるものではなく、一般には脱脂綿や不織布等を用いることができる。
【0053】
また、前述のヒドロキシ酸の水溶性塩を水素発生材料組成物に添加する場合、水と上記組成物との反応により生じる生成物の体積が、上記水溶性塩を含まない水素発生材料組成物による反応生成物に比べて大きくなる。このため、反応が進行し反応生成物が多く析出した段階では、上記反応生成物により、水素発生材料組成物の内部への水の浸透が抑制され、反応速度が低下するおそれが生じる。これを防ぐために、反応により生じる上記組成物の体積変化に応じて形状を変えられるように、反応容器11、21を、アルミニウム等の金属と樹脂とのラミネートフィルム等で構成してもよい。また、水素発生材料組成物の成形体を用いる場合には、上記組成物の体積膨張に対応するために、成形体と反応容器11、21との間に空隙を設けてもよい。
【0054】
上記変形可能な反応容器を用いること、或いは、反応容器内に水素発生材料組成物の体積変化を許容する空隙を設けることにより、反応が進行しても、水素発生材料組成物の内部に水が容易に浸透するため、本発明の効果をより高めることができる。
【0055】
更に、上記水素製造装置には、圧力逃がし弁を設けることが好ましい。例えば水素発生速度が増大して、装置の内圧が上昇した場合でも、圧力逃がし弁から水素を装置外に排出することにより、破裂等による装置の破損を防止することができる。圧力逃がし弁の設置箇所は、水素発生材料組成物を収容した容器内で発生した水素が排出できる箇所であればよい。例えば図2に示す装置であれば、水素導出管27から、燃料電池或いは携帯電子機器までの間のいずれの箇所に圧力逃がし弁を設けても構わない。
【0056】
炭化水素系燃料の改質により得られる水素では、CO及びCO2が含まれることにより、100℃以下で作動する固体高分子型燃料電池において、上記ガスによる被毒の問題が生じる。一方、本発明の水素発生材料組成物を用いて発生させた水素は、上記ガスを含まないため、そのような問題が発生せず、また、反応に水が関与するため、ガス中に適度な水分を含んでおり、水素を燃料とする燃料電池において好ましく用いることができる。
【0057】
水素発生材料組成物を外部から加熱する場合、例えば、発熱源として、抵抗体に通電することによる電気的発熱、発熱反応による化学的発熱等を用い、水素発生材料組成物及び水を収容した反応容器を外部から加熱する方法を採用することができる。上記抵抗体の種類については特に限定されず、例えば、ニクロム線、白金線等の金属発熱体、炭化ケイ素、PTCサーミスタ等が使用できる。また、上記発熱反応としては特に限定されず、例えば、前述の発熱材料と水との反応、或いは、鉄と酸素との反応等により発生する熱を用いる方法が使用できる。
【0058】
また、金属材料と水との反応も発熱反応であるため、図1に示した保温材18によりその反応熱の放熱を防ぎ、水素発生材料組成物や水の温度上昇に利用すれば、上記発熱源を有さずとも連続的に水素を発生させることもできる。即ち、反応初期に加熱を行うのみで、水素発生が始まった後は加熱を止めても、水素発生反応の発熱により加温状態を維持することができる。
【0059】
更に、水素発生材料組成物と反応させる水の供給量を制御することによって、水素発生量を制御することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。
【0061】
(実施例1)
金属材料としてガスアトマイズ法により作製された平均粒径6μmのアルミニウム粉末(但し、粒径が60μm以下の粒子の割合:100質量%)と、添加剤としてのクエン酸三ナトリウム粉末とを、表1に示す割合となるよう乳鉢で混合し、水素発生材料組成物を得た。次に、それぞれの水素発生材料組成物を加圧成形することにより、直径10mm、厚み約3.7mm、見かけ密度1.7g/cm3のペレット状の成形体0.5gを作製した。ここで、成形体の見かけ密度は、成形体の質量を、その厚みと直径とから求まる体積で除すことにより求めた。
【0062】
続いて、上記成形体と純水10gとを、外側に抵抗体を配置したガラス製容器(内容積50cm3)に入れ、抵抗体に通電することにより容器を50℃に加熱した。それぞれの水素発生材料組成物の成形体は、水と接触することにより形状が崩れ、内部まで水が浸透したため、金属材料と水とが容易に反応し、水素を発生させることができた。生成した水素は水上置換法により捕集し、反応開始から50時間後までに発生した水素の総量、及びアルミニウムの反応率を求めた。アルミニウムの反応率は、25℃、1気圧でのアルミニウム1g当りの理論水素発生量(1360ml)を基準とし、上記成形体に含まれるアルミニウムの質量から計算される水素発生量の理論値に対する、実際の水素発生量の割合として求めた。
【0063】
(実施例2)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、クエン酸三カリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
【0064】
(実施例3)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、酒石酸二ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
【0065】
(実施例4)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、グリコール酸ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
【0066】
(実施例5)
実施例1で用いたアルミニウム粉末とクエン酸三ナトリウム粉末とを90:10(質量比)の割合で含有する水素発生材料組成物について、直径10mm、厚み約3.2mm、見かけ密度2.0g/cm3の成形体となるよう加圧成形を行った以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体0.5gを作製し、水素を発生させた。
【0067】
(比較例1)
添加剤を混合せず、実施例1のアルミニウム粉末0.5gをそのまま用いた以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
【0068】
(比較例2)
アルミニウム粉末とクエン酸三ナトリウム粉末との割合を、99.5:0.5(質量比)とした以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。
【0069】
(比較例3)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、酸化カルシウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例3では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、発熱材料を含有させて水素発生材料組成物とした。
【0070】
(比較例4)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、クエン酸粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例4では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、ヒドロキシ酸自身を含有させて水素発生材料組成物とした。
【0071】
(比較例5)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、酢酸ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例5では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、カルボキシル基は有するが水酸基を持たないカルボン酸の水溶性塩を含有させて水素発生材料組成物とした。
【0072】
(比較例6)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、コハク酸二ナトリウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例6では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、カルボキシル基は有するが水酸基を持たない多価カルボン酸の水溶性塩を含有させて水素発生材料組成物とした。
【0073】
(比較例7)
クエン酸三ナトリウム粉末に代えて、二クエン酸三マグネシウム粉末を表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料組成物の成形体を作製し、水素を発生させた。即ち、比較例7では、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、水に不溶であるヒドロキシ酸の塩を含有させて水素発生材料組成物とした。
【0074】
実施例2〜5及び比較例1〜7についても実施例1と同様にして発生した水素の総量とアルミニウムの反応率とを求めた。実施例1〜5及び比較例1〜7の水素発生材料組成物の成形体について、添加剤の種類、添加剤の含有割合、発生した水素の総量(水素発生量)及びアルミニウム(金属材料)の反応率をそれぞれ表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
添加剤として、ヒドロキシ酸の水溶性塩を1質量%以上含有させた実施例1〜5の水素発生材料組成物の成形体では、ヒドロキシ酸の水溶性塩を添加しなかった比較例1の成形体に比べ、アルミニウムの反応率を向上させ、水素発生量を増加させることができた。上記添加剤の含有割合が増加するほどアルミニウムの反応率は向上したが、それに伴い水素発生源となるアルミニウム粉末の割合が減少するため、添加剤の割合が好適範囲より多くなると、水素発生量は極大値から減少に転じた。
【0077】
比較例1の水素発生材料組成物の成形体は、水が供給された後も容器の中でその形状を維持していたことから、水素発生反応に必要とされる量の水が成形体の内部まで浸透せず、水素発生反応が成形体の外表面付近のみで停止したため、アルミニウムの反応率が低くなり水素発生量が少なくなったものと思われる。
【0078】
また、ヒドロキシ酸の水溶性塩の含有量を1質量%未満とした比較例2の成形体も、上記添加剤の作用が充分に発揮されず、反応効率を向上させることはできなかった。
【0079】
また、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、反応を促進させる作用が期待できる発熱材料としての酸化カルシウムを含有させた比較例3の成形体では、成形体の外表面付近に存在する発熱材料が水と反応して発熱するため、比較例1に比べて反応効率が多少向上したが、成形体の内部まで水が浸透せず水素発生量を増加させることはできなかった。
【0080】
更に、ヒドロキシ酸の水溶性塩に代えて、ヒドロキシ酸の水溶性塩に近い構造を有する化合物を含有させた比較例4〜7でも、反応効率を大きく向上させることはできず、充分な水素発生量を確保することができなかった。比較例4〜7の成形体も、反応容器の中で形状が維持されていたことから、成形体の内部まで水が浸透しなかったものと思われる。
【0081】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、本発明により、100℃以下の低温で、容易に効率よく水素を発生させることができる。特に、本発明の水素発生材料組成物を成形体とし、充填密度を大きくした場合にも、反応効率の低下を防ぐことができるので、携帯に適した水素発生材料組成物を提供することができる。従って、燃料電池、特に小型携帯機器用の燃料電池の水素燃料源等に幅広く利用可能である。
【0083】
【符号の説明】
10 水素製造装置
11、21 反応容器
11a 容器本体
11b 蓋
12、22 水素発生材料組成物
13 水供給口
14 水素導出口
15 水供給パイプ
17 水素導出パイプ
18 保温材
19 マイクロポンプ
20 燃料カートリッジ
23 水供給口
24 水素導出口
25 水供給パイプ
26a、26b 吸水材
27 水素導出パイプ
Claims (17)
- アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム及び前記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属材料と、ヒドロキシ酸の水溶性塩とを含み、
前記金属材料と前記ヒドロキシ酸の水溶性塩との総量中、前記ヒドロキシ酸の水溶性塩の割合が1質量%以上であることを特徴とする水素発生材料組成物。 - 前記ヒドロキシ酸の水溶性塩として、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩及びグリコール酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の水素発生材料組成物。
- 前記ヒドロキシ酸の水溶性塩として、前記ヒドロキシ酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む請求項1に記載の水素発生材料組成物。
- 前記ヒドロキシ酸の水溶性塩として、クエン酸又はグリコール酸のアルカリ金属塩を含む請求項1に記載の水素発生材料組成物。
- 前記金属材料と前記ヒドロキシ酸の水溶性塩との総量中、前記ヒドロキシ酸の水溶性塩の割合が20質量%以下である請求項1に記載の水素発生材料組成物。
- 前記金属材料は、下記(1)〜(3)のいずれかを満たす請求項1に記載の水素発生材料組成物。
(1)粒径が0.1〜60μmの粒子を80体積%以上含む。
(2)平均粒径が0.1〜30μmである。
(3)粒子形状が鱗片状であり、かつその厚みが0.1〜5μmである。 - 水と反応して発熱する発熱材料をさらに含む請求項1に記載の水素発生材料組成物。
- 水素発生材料組成物を成形してなる水素発生材料成形体であって、
前記水素発生材料組成物は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム及び前記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属材料と、ヒドロキシ酸の水溶性塩とを含み、
前記金属材料と前記ヒドロキシ酸の水溶性塩との総量中、前記ヒドロキシ酸の水溶性塩の割合が1質量%以上であることを特徴とする水素発生材料成形体。 - 見かけ密度が1.0〜2.5g/cm3である請求項8に記載の水素発生材料成形体。
- アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム及び前記金属元素の少なくとも1種を主体とする合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属材料を含む水素発生材料組成物を成形してなる水素発生材料成形体であって、
水に接触させた場合にその形状が崩れ、内部に水が浸透することを特徴とする水素発生材料成形体。 - ヒドロキシ酸の水溶性塩をさらに含み、前記金属材料と前記ヒドロキシ酸の水溶性塩との総量中、前記ヒドロキシ酸の水溶性塩の割合が1質量%以上である請求項10に記載の水素発生材料成形体。
- 請求項1に記載の水素発生材料組成物に水を供給し、前記金属材料と前記水とを反応させて水素を発生させることを特徴とする水素の製造方法。
- 前記水素発生材料組成物又は前記水を加熱する工程を含む請求項12に記載の水素の製造方法。
- 請求項8に記載の水素発生材料成形体に水を供給し、前記金属材料と前記水とを反応させて水素を発生させることを特徴とする水素の製造方法。
- 前記水素発生材料成形体又は前記水を加熱する工程を含む請求項14に記載の水素の製造方法。
- 請求項10に記載の水素発生材料成形体に水を供給し、前記金属材料と前記水とを反応させて水素を発生させることを特徴とする水素の製造方法。
- 前記水素発生材料成形体又は前記水を加熱する工程を含む請求項16に記載の水素の製造方法。
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