JPWO2008149835A1 - 集積型薄膜太陽電池の製造方法 - Google Patents

集積型薄膜太陽電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

集積型薄膜太陽電池において、透明絶縁基板(11)上に順次積層された透明電極層(12)、1以上の光電変換ユニットを含む半導体層(20)、および裏面電極層(4)が、複数の光電変換セルを形成するように直線状で互いに平行な複数の透明電極層分離溝(903)、半導体層分離溝(905)、および裏面電極層分離溝(9040)によってそれぞれ分割され、かつそれらの複数の光電変換セルが半導体層分離溝を介して互いに電気的に直列接続されており、透明電極層が低温で層形成可能な透明導電材料からなり、透明電極層分離溝、半導体層分離溝、および裏面電極層分離溝の少なくとも一部は所定ピッチで形成された実質的に同形状のピットのつながりによって構成されており、各ピットにおいて溝の幅方向の最大長Wが溝の長手方向の最大長Lより大きい。

Description

本発明は集積型薄膜太陽電池とその製造方法に関し、特にその集積化のための分離溝とその形成方法の改善に関する。
太陽電池は、地球に優しいエネルギ源の一つとして脚光を浴びており、近年の環境問題に対する関心の高まりと各国の導入加速政策によって、太陽電池の普及が急速に進んでいる。そして、太陽電池の低コスト化と高効率化を両立させるために、少ない原材料で製造可能な薄膜太陽電池が注目され、その開発が精力的に行なわれている。特に、ガラスなどの安価な基板上に低温プロセスで良質の半導体層を形成する方法が、太陽電池の低コスト化を実現させ得る方法として期待されている。
高電圧で高出力を生じ得る大面積の電力用薄膜太陽電池を製造する場合、基板上に形成された薄膜太陽電池の複数個を配線で直列接続して用いるのではなく、歩留りをよくするために、大きな基板上に形成される薄膜太陽電池をパターニングによって複数の光電変換セルに分割し、かつそれらのセルを直列接続して集積化するのが一般的である。特に、ガラス基板側から受光する薄膜太陽電池においては、ガラス基板上の透明導電性酸化物(TCO)電極層の電気抵抗による損失を低減させるために、レーザスクライブによってその透明電極層を複数の短冊状領域に分割し、その短冊状領域の長手方向に直行する方向に各セルを直列接続して集積化するのが一般的である。
図4は、このような集積型薄膜太陽電池の一例を概念的な平面図で示している。そして、図5は、図4中の楕円4Pで囲まれた領域の積層構造の一例を模式的な断面図で示している。さらに、図6は、図5中の楕円5Pで囲まれた領域の積層構造のより詳細な一例を模式的な断面図で示している。なお、本願の図面において、長さ、幅、厚さなどの寸法関係は、図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を表してはいない。また、本願の図面において、同一の参照符号は同一部分または相当部分を表している。
図4と図5に図解されているような集積型薄膜太陽電池の製造においては、透光性絶縁基板11として一般にガラス基板が用いられる。ガラス基板上には透明電極層12として、例えば厚さ700nmのSnO2膜が熱CVD(化学気相堆積)法にて形成される。透明電極層12は、レーザスクライブで形成される幅約100μmの透明電極分離溝903によって、各々が約10mmの幅Xを有する複数の短冊状透明電極に分離される。スクライブ後の残滓は、水または有機溶媒を用いた超音波洗浄で除去される。なお、洗浄方法としては、粘着剤や噴射ガスなどを用いて残滓を除去することも可能である。
透明電極層12上には、1以上の非晶質光電変換ユニットおよび/または結晶質光電変換ユニットを含む半導体層20を形成する。この半導体層20は、レーザスクライブによって形成される半導体層分離溝905によって、複数の短冊状半導体領域に分割される。なお、半導体層分離溝905は互いに隣接するセル902間で透明電極12と裏面電極4を電気的に接続するために利用されるものなので、その溝内で部分的にスクライブの残滓が残っていても問題とならず、超音波洗浄は省略されてもよい。引き続いて裏面電極層4が形成されれば、半導体層分離溝905は裏面電極層4の金属材料で埋め込まれ、隣り合う光電変換セル902間で一方のセルの裏面電極4と他方のセルの透明電極12とが半導体層分離溝905を介して電気的に直列接続される。
裏面電極層4は半導体層20の場合と同様のレーザスクライブによってパターニングされる。すなわち、レーザビームによって半導体層20とともに裏面電極層4を局所的に吹き飛ばすことによって複数の裏面電極層分離溝904が形成され、その後に超音波洗浄が行なわれる。これによって複数の短冊状光電変換セル902が形成され、それらのセルは半導体層分離溝905を介して互いに電気的に直列接続されていることになる。最後に、薄膜太陽電池の裏面側は、封止樹脂(図示せず)によって保護される。
レーザスクライブとしては、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ光をパルス照射して行なうのが一般的である。その場合に、透明電極層分離溝903のレーザスクライブにはYAGレーザの基本波(波長1064nm)を利用し、半導体層分離溝905および裏面電極層分離溝904のレーザスクライブにはYAGレーザの第二高調波(波長532nm)を利用する。レーザビーム照射スポットと基板とを相対的に移動させながらレーザ光をパルス照射することによって、略同形状のピットが所定ピッチで連なったピット列からなる分離溝が形成される。
すなわち、図17の模式的な平面図に示されているように、透明電極層分離溝903、半導体層分離溝905、および裏面電極層分離溝904は、略同形状のピット9031、9051、9041のそれぞれの連なりによって形成されるのが一般的である。これらの略同形状のピットの各々は、図2の模式的平面図に示すような円形の平面形状を有することが一般的である。しかし、後述の特許文献1の特開2002−33495号公報においては、図3の模式的平面図に示すように、分離溝の長手方向に沿った長軸を有する楕円形の平面形状を有するピット列が開示されている。
透明電極層分離溝の形成過程では、透明電極層における吸収係数が大きい赤外光(例えば波長1064nm)のレーザビームを照射することによって、透明電極層がレーザビームを吸収してその温度が上昇し、そして透明電極層が蒸発して透明電極層分離溝が形成される。
半導体層分離溝の形成過程では、透明電極層における吸収係数が低くかつ半導体層における吸収係数が大きい可視光(例えば波長532nm)のレーザビームを照射することによって、主に半導体層がレーザビームを吸収してその温度が上がり、そして半導体層が蒸発して半導体層分離溝が形成される。
裏面電極層分離溝の形成過程では、透明絶縁基板を透過する可視光のレーザビームを照射することによって、主に半導体層がレーザビームを吸収してその温度が上がって、半導体層が蒸発した蒸気とともに裏面電極層も吹き飛んで裏面電極層分離溝が形成される。
通常では、大面積の集積型薄膜太陽電池の光電変換効率(Eff)は、集積構造を含まない小面積の薄膜太陽電池のEffより低くなる。この原因としては、面積差に基づく理由と、集積構造の有無に基づく理由に分けられる。
薄膜太陽電池の面積が大きい場合にEffが低下する原因として、透明電極層、半導体層、および裏面電極層のそれぞれの膜質と膜厚の均一性の低下、さらにはピンホールなどの欠陥を含む確率の増加などが考えられる。
他方、集積構造を含む場合にEffが低下する原因として、透明電極層分離溝や裏面電極層分離溝に起因するリーク電流の増大や短絡の発生によって、開放電圧(Voc)の減少や曲線因子(FF)の減少が起こってEffが低下することが考えられる。また、半導体層分離溝や裏面電極層分離溝に起因する直列抵抗の増加によって、FFが減少してEffが低下し得る。さらに、分離溝を形成することによる有効発電面積のロスによって、短絡電流密度(Jsc)が減少してEffが低下し得る。
図5に示されているような透明電極層12にはSnO2やZnOなどの透明導電酸化物(TCO)が用いられ、それは一般にCVD、スパッタ、蒸着などの方法で形成される。透明電極層12は、その表面に微細な凹凸を有することによって、入射光の散乱を増大させる効果を有することが好ましい。
半導体層20は少なくとも一つの光電変換ユニットを含み、その一つのユニットはpn接合またはpin接合を含んでいる。半導体層には、非晶質シリコン、結晶質シリコン、CuInSe2(略称CIS)、CdTeなどが用いられ得る。なお、本願明細書において、「結晶質」と「微結晶」の用語は、部分的に非晶質を含む材料をも意味するものとする。
シリコン系薄膜太陽電池の場合、光電変換ユニットは、p型層、実質的に真性のi型光電変換層、およびn型層で形成されるpin接合を含んでいる。そして、非晶質シリコンのi型層光電変換層を含むユニットは非晶質シリコン光電変換ユニットと称され、結晶質シリコンのi型光電変換層を含むユニットは結晶質シリコン光電変換ユニットと称される。なお、非晶質または結晶質のシリコン系材料としては、主要元素としてシリコンのみを含む材料だけでなく、炭素、酸素、窒素、ゲルマニウムなどの元素をも含む合金材料を用いることもできる。また、導電型層は、必ずしもi型層と同質の半導体材料で形成される必要はない。例えば、i型層が非晶質シリコンである場合に、p型層に非晶質シリコンカーバイドを用い得るし、n型層に微結晶含有シリコン層(μc−Si層とも呼ばれる)を用いることもできる。
半導体層20上に形成される裏面電極層4としては、例えば、Al、Agなどの金属層がスパッタ法または蒸着法により形成され得る。また、図6に示されているように、半導体層20と裏面電極層4に含まれる金属層42との間に、ITO(インジュウム錫酸化物)、SnO2、ZnOなどの導電性酸化物層41が形成されてもよい。
非晶質シリコン薄膜太陽電池においては、バルクの単結晶や多結晶の太陽電池に比べて初期光電変換効率が低く、光劣化現象(Staebler-Wronsky効果)によって変換効率が低下するという問題もある。そこで、多結晶や微結晶を含む結晶質シリコン薄膜を光電変換層に利用した結晶質シリコン薄膜太陽電池が、低コスト化と高効率化とを両立させ得る太陽電池として期待されて検討されている。なぜならば、結晶質シリコン薄膜太陽電池は非晶質シリコン薄膜太陽電池と同様にプラズマCVD法にて比較的低温で作製でき、ほとんど光劣化現象を生じることもないからである。また、非晶質シリコン光電変換層が長波長側において800nm程度の波長までの光を光電変換し得るのに対し、結晶質シリコン光電変換層はそれより長い約1200nm程度の波長までの光を光電変換することができる。
さらに、薄膜太陽電池の変換効率を向上させる方法として、2以上の積層された光電変換ユニットを含む積層型薄膜太陽電池が知られている。この積層型薄膜太陽電池においては、光入射側に大きなエネルギバンドギャップを有する光電変換層を含む前方ユニットを配置し、その後ろに順に小さなバンドギャップを有する光電変換層を含む後方ユニットを配置する。これによって、入射光の広い波長範囲にわたる光電変換を可能にして、積層型薄膜太陽電池全体としての変換効率の向上が図られている。積層型薄膜太陽電池の中でも、非晶質光電変換ユニットと結晶質光電変換ユニットを積層したものはハイブリッド型薄膜太陽電池と称される。
ところで、薄膜太陽電池は、従来のバルクの単結晶や多結晶のシリコンを使用した太陽電池に比べて光電変換層を薄くすることができるが、その反面において薄膜全体の光吸収が膜厚によって制限されるという問題がある。そこで、半導体層に入射した光をより有効に利用するために、半導体層に接する透明電極層または裏面電極層の表面を凹凸化(テクスチャ化)し、その界面で光を散乱させて半導体層内の光路長を延長せしめ、そうして光電変換層内での光吸収量を増加させる工夫がなされている。この技術は「光閉じ込め」と呼ばれており、高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池を実用化する上で重要な要素技術となっている。
薄膜太陽電池に最適な透明電極層の表面凹凸形状を求めるために、その凹凸形状を定量的に表す指標が必要である。そのような表面凹凸形状を表す指標として、ヘイズ率と表面面積比(Sdr)が知られている。
ヘイズ率は透明な基板の表面凹凸を光学的に評価する指標であり、(拡散透過率/全光線透過率)×100[%]で表される(JIS K7136)。このようなヘイズ率は、市販されているヘイズメータによって自動測定され得る。その測定用の光源としては、一般的にC光源が用いられる。
表面面積比は、表面凹凸の高低差の大きさだけでなく、凹凸の形状も含めて表す指標である。透明導電膜の表面凹凸が先鋭化すれば薄膜太陽電池の開放電圧や曲線因子が低下する場合があるので、表面面積比は薄膜太陽電池における透明導電膜の表面凹凸の指標として有効である。表面面積比は、ディベロップト・サーフェス・エリア・レシオ(Developed Surface Area Ratio)とも呼ばれ、略称としてSdrが用いられる。
薄膜太陽電池はガラスなどの透明基体上に形成され、透明電極層としては表面凹凸を有する酸化錫(SnO2)膜がよく用いられている。この透明電極層の表面凹凸は、光電変換層内への光閉じ込めに寄与する。したがって、光閉じ込め効果を高めるためには表面凹凸の増大が望ましいが、SnO2膜単独では、太陽電池に必要な透光性や導電性を維持したままで表面凹凸形状を顕著にすることが容易でない。
また、光閉じ込めに有効な表面凹凸を有する透明電極層として常圧熱CVD法で形成されたSnO2膜を有するガラス基体は、その透明電極層を形成するために約550〜650℃の比較的高温のプロセスを必要とするので製造コストが高くなる。そして、そのCVD温度が高いので、通常のガラスやプラスチックフィルムなどの安価な基体が使えない。また、強化ガラスを高温プロセスにさらせば強化効果が消失するので強化ガラスを基体に使えず、大面積太陽電池においてガラス基体の強度を確保するためにはその厚さを大きくする必要があり、その結果として太陽電池が重くなる。
さらに、SnO2膜は耐プラズマ性が低く、水素を含む高密度のプラズマを利用する半導体層の堆積環境下ではSnO2膜が還元され得る。SnO2膜は、還元されれば黒化して透明度が低下する。すなわち、黒化したSnO2電極層は入射光を吸収し、光電変換層への透過光量を減少させ、薄膜太陽電池の変換効率の低下を招く原因となる。特に、ハイブリッド薄膜太陽電池を作製する場合、非晶質シリコン層の堆積に比べて結晶質シリコン層の堆積の際に高いプラズマ密度が必要であり、SnO2膜を透明電極層に用いた場合には大幅な変換効率の向上が困難である。
薄膜太陽電池のコストを下げるためには、透明電極層は低温で形成され得ることが望ましい。特にガラス基体に強化ガラスを用いるためには、透明電極層を200℃以下の温度で形成する必要がある。透明電極層を200℃以下の低温で形成する方法としては、スパッタ法によるITO、ZnO、またはSnO2の堆積、イオンプレーティング法によるITOまたはZnOの堆積、ゾルゲル法によるITOまたはZnOの堆積、さらには低圧熱CVD法によるZnOの堆積が挙げられる。
低温で形成可能な透明電極層に関して、酸化亜鉛(ZnO)は、透明電極層の材料として広く用いられているSnO2またはITOよりも安価であり、また耐プラズマ性が高いという利点を有しており、薄膜太陽電池用の透明電極材料として好適である。特に、酸化亜鉛層は、非晶質シリコン層に比べて堆積時に多量の水素を含む高密度のプラズマを必要とする結晶質シリコン層を含む結晶質シリコン薄膜太陽電池またはハイブリッド薄膜太陽電池の透明電極層として好ましい。
特許文献1においては、透明基板上に透明電極層、非晶質半導体層、裏面電極層を順次積層した集積型薄膜太陽電池に関して、レーザスクライブによる分離溝の形成時間を短縮して製造コストを抑制する方法が開示されている。この方法では、レーザスクライブで形成する裏面電極層分離溝において所定ピッチで連なった略同形状の各ピットの平面形状がその分離溝の長手方向に長軸を有する楕円形にされ、レーザビームの1パルスあたりの加工長さを長くして加工速度を向上させている。図3は、この特許文献1による分離溝を模式的な平面図で示している。なお、特許文献1の集積型薄膜太陽電池における具体的材料としては、透明電極層として酸化錫(SnO2)、半導体層として非晶質シリコン、さらに裏面電極層として金属膜が用いられている。
ところで、特許文献2の特開2001−274446号は、相対的に大きな面積の薄膜太陽電池の集積化に伴う変換効率の低下の抑制を目的として、透明絶縁基板上に透明電極層、1以上の非晶質光電変換ユニットと1以上の結晶質光電変換ユニットを含む半導体層、および裏面電極層が順に積層された集積型薄膜太陽電池の製造方法を開示している。この特許文献2においては、第1レーザビームの照射で形成した裏面電極層分離溝の所定側の側壁の熱影響部が、第1レーザビームより低いパワーの第2レーザビームの照射で除去され、それによってリーク電流の発生や短絡の防止が図られている。
特開2002−33495号公報 特開2001−274446号公報
上述のように、特許文献1においては、集積型薄膜太陽電池の透明電極層に酸化錫が用いられている。しかし、低温で形成可能な透明電極層としての例えばZnO層に比べて、SnO2層はその形成コストが高い。SnO2層は比較的高温のプロセスで形成されるので、安価な基板が使用できない。SnO2層は耐プラズマ性が低いので、水素を含む高密度のプラズマによる光電変換層の堆積環境下では黒化する傾向にある。さらに、SnO2層は、その透光性と導電性を維持したままで表面凹凸形状を顕著にすることが容易でない。
以上のような観点から、本発明者は、特許文献1における透明電極層用のSnO2ではなくて、低温で形成可能な透明電極層のために例えばZnOを用いることを試みた。その結果、レーザビームパルスによって裏面電極層分離溝のピットを形成する際に、レーザエネルギを強くしすぎればピット内に暗色の変色部が生成するという問題が見出された。また、レーザビームパルスによって楕円形ピットを長軸方向に連ねて裏面電極層分離溝を形成した場合に、集積型薄膜太陽電池の開放電圧(Voc)、曲線因子(FF)、および光電変換効率(Eff)が低くなり、また集積型薄膜太陽電池の歩留まりも低下することが見出された。
さらに、上述の背景技術に関して説明されたように、集積型薄膜太陽電池においては、集積構造を含まない薄膜太陽電池に比べて一般的に光電変換効率(Eff)が低くなる傾向にあるという課題がある。
そこで、本発明者は、特許文献2におけるように、第1レーザビームで裏面電極層分離溝を形成し、つづいてその第1レーザビームで形成された裏面電極層分離溝の所定側の側壁を相対的に低エネルギ密度の第2レーザビームで削る工程を経て集積型ハイブリッド薄膜太陽電池を作製することを試みた。その結果、特許文献2の記述とは異なって、第2レーザビームを利用しない場合に比べてEffが低くなる問題が見出された。より具体的には、50段の光電変換セルが集積される集積型ハイブリッド薄膜太陽電池に関して、特許文献2の方法のように全ての裏面電極層分離溝が第1と第2のレーザビームを用いて形成された場合に、第1レーザビームのみを用いて形成された場合に比べてFFが減少してEffが低下する問題が見出された。
そこで、本発明は、低温で形成可能な透明電極層を含む集積型薄膜太陽電池の光電変換効率、コスト、および歩留まりを改善することを目的としている。
本発明の集積型薄膜太陽電池においては、透明絶縁基板上に順次積層された透明電極層、1以上の光電変換ユニットを含む半導体層、および裏面電極層が、複数の光電変換セルを形成するように直線状で互いに平行な複数本の透明電極層分離溝、半導体層分離溝、および裏面電極層分離溝によってそれぞれ分割され、かつそれらの複数の光電変換セルが半導体層分離溝を介して互いに電気的に直列接続されており、透明電極層分離溝、半導体層分離溝、および裏面電極層分離溝の少なくとも一部は所定ピッチで形成された実質的に同形状のピットのつながりによって構成されており、各ピットにおいて溝の幅方向の最大長Wが溝の長手方向の最大長Lより大きく、透明電極層は裏面電極層を切断し得る最小エネルギ密度の3倍以上のエネルギ密度を有するレーザビームで裏面電極層分離溝に含まれるピットを形成した場合に、そのピット内において裏面電極側から白色光を照射して光学顕微鏡で観察され得る暗色の変色部が形成される透明導電材料で形成されていることを特徴としている。なお、透明電極層は、特に酸化亜鉛で形成されていることが好ましい。ピット内の暗色の変色部は、その周囲部に比べて凸状になることによって生じ得る。
また、W/Lは、1.25以上7.2以下の範囲内にあることが好ましい。隣り合うピットが溝の長手方向に重なる最大長dは、Lの6%以上33%以下の範囲内にあることが好ましい。より具体的には、各ピットの平面形状は楕円状であり得る。各ピットの平面積は、3×10-102以上4×10-82以下の範囲内にあることが好ましい。
上述のような集積型薄膜太陽電池を製造する方法においては、各ピットはレーザビームのパルス照射によって好ましく形成され得る。また、酸化亜鉛の透明電極層は、低圧CVD法で好ましく形成され得る。さらに、裏面電極層分離溝に含まれるピットを形成するためのレーザビームのエネルギ密度は、裏面電極層を切断し得る最小エネルギ密度の1.1倍以上2倍以下の範囲内にあることが好ましい。
上述のような集積型薄膜太陽電池を製造する方法の他の態様では、複数本の裏面電極層分離溝を形成すべき全領域に第1レーザビームを照射する工程と、裏面電極層分離溝の全本数から選択された部分的本数の各溝の少なくとも一部へ付加的に第2レーザビームを照射する工程とを含み、第1レーザビームの照射領域Mに対して第2レーザビームの照射領域Nが部分的に重なるように、照射領域Nの中心がその最近接の半導体層分離溝から遠ざかる方向へ照射領域Mの中心から変位させられていることを特徴としている。
なお、裏面電極層分離溝において、第1レーザビームの照射のみで形成された部分の溝幅の極大値に対して、付加的に第2レーザビームをも照射されて形成された部分の溝幅の極大値の比は、1.15以上1.8以下の範囲内にあることが好ましい。第1レーザビームに比べて、第2レーザビームのエネルギ密度は低いことが好ましい。第1と第2のレーザビームはパルス状に照射され、裏面電極層分離溝の単位長さに関して第2レーザビームの照射パルス数は第1レーザビームに比べて多いことが好ましい。
本発明による集積型薄膜太陽電池の他の態様においては、複数本の裏面電極層分離溝のうちで部分的本数の各溝の少なくとも一部は第1ピッチで連なっている実質的に同形状の第1種ピットの列と第2ピッチで連なっている実質的に同形状の第2種ピットの列とによって構成されており、第1種ピット列と第2種ピット列は溝幅方向において部分的に重なっており、第1種ピット列の溝幅方向の極大長Wmに比べて第2種ピット列の溝幅方向の極大長Wnが小さく、第2種ピット列の中心線はその最近接の半導体層分離溝から遠ざかる方向へ第1種ピット列の中心線から変位させられていることを特徴としている。
なお、第1種ピット列と第2種ピット列との両方で構成される溝幅の極大長Woと第1種ピット列の溝幅方向の極大長Wmとの比Wo/Wmは、1.15以上1.8以下であることが好ましい。第1種ピット列の第1ピッチに比べて、第2種ピット列の第2ピッチは短いことが好ましい。
以上のような本発明によれば、分離溝の少なくとも一部を構成する一連のピットの各々において溝幅方向の最大長Wが溝長手方向の最大長Lより大きく設定されることによって、低温形成可能な透明電極層を含む集積型薄膜太陽電池のVoc、FF、およびEffを向上させ、また歩留まりを向上させて製造コストを改善することができる。
また、本発明によれば、第1レーザビーム照射で形成された裏面電極層分離溝のうちで電流リークまたは短絡を生じている欠陥部分へ選択的に付加的な第2レーザビームを照射してそれらの欠陥部分を除去することができ、それによって集積型薄膜太陽電池のVoc、FF、およびEffを向上させ、また歩留まりを向上させて製造コストを改善することができる。
本発明においてレーザビームパルスによって形成されたピット列の一例を示す模式的平面図である。 従来から慣用されているレーザビームパルスによって形成されたピット列の一例を示す模式的平面図である。 特許文献1によるレーザビームパルスによって形成されたピット列の一例を示す模式的平面図である。 集積型薄膜太陽電池の一例を示す概念的平面図である。 図4中の楕円4Pで示された領域における積層構造の一例を示す模式的断面図である。 図5中の楕円5Pで示された領域における積層構造の一例をより詳細に示す模式的断面図である。 先行技術による薄膜太陽電池おける透明電極層のダメージ発生を説明するための模式的断面図である。 本発明の一実施例におけるレーザビームパルスによって形成された分離溝の一部領域を示す光学顕微鏡写真である。 図8と同じ分離溝における他の領域を示す光学顕微鏡写真である。 従来のレーザビームパルスによって形成された分離溝の一部領域を示す光学顕微鏡写真である。 本発明の実施例1〜4および比較例1〜4による集積型薄膜太陽電池に関して、裏面電極層分離溝を構成する各ピットの溝幅方向最大長Wと溝長手方向最大長Lとの比W/Lに対する光電変換効率Effの関係を示すグラフである。 隣り合うピットが溝長手方向に重なる最大長さdとピットの溝長手方向の最大長さLとの比d/Lに対する分離溝の最小幅Vの関係を示すグラフである。 比d/Lがピットの重なり長さの合計Σdと分離溝の全長Yとの比Σd/Yに及ぼす影響を示すグラフである。 本発明の一実施形態による集積型薄膜太陽電池における透明電極層分離溝、半導体層分離溝、および裏面電極層分離溝の形態を示す模式的平面図である。 本発明の一実施形態による集積型薄膜太陽電池を示す模式的断面図である。 図15中の楕円領域2Qを拡大して示す模式的断面図である。 従来の典型的な集積型薄膜太陽電池における透明電極層分離溝、半導体層分離溝、および裏面電極層分離溝の形態を示す模式的平面図である。 集積型薄膜太陽電池において第1レーザビーム照射で形成された裏面電極層分離溝におけるピット抜けの一例を示す光学顕微鏡写真である。 図18におけるピット抜けが第2レーザビームの付加的照射によって改修されている状態を示す光学顕微鏡写真である。 集積型薄膜太陽電池の裏面電極層分離溝に関して、本発明において設定されたパラメータWo/WmとΔVflとの関係を示すグラフである。 集積型薄膜太陽電池の裏面電極層分離溝に関して、本発明において設定されたパラメータE2/E1とΔVflとの関係を示すグラフである。 集積型薄膜太陽電池の裏面電極層分離溝に関して、本発明において設定されたパラメータP2/P1とΔVflとの関係を示すグラフである。 本発明の一実施例による集積型薄膜太陽電池の一部の断面を示すSEM写真である。 本発明の他の実施例による集積型薄膜太陽電池の一部の断面を示すSEM写真である。 集積型薄膜太陽電池の裏面電極層分離溝に関して、本発明において設定されたパラメータVfl1と(Vfl2−Vfl1)との関係を示すグラフである。 ZnO透明電極層を含む集積型薄膜太陽電池の裏面電極層分離溝の一部の上面を示す光学顕微鏡写真である。 SnO2透明電極層を含む集積型薄膜太陽電池の裏面電極層分離溝の一部の上面を示す光学顕微鏡写真である。
符号の説明
1 薄膜太陽電池用基板、11 透明絶縁基板、111 透光性基体、112 透光性下地層、1121 透光性微粒子、1122 透光性バインダ、12 透明電極層、20 半導体層、2 前方光電変換ユニット、21 一導電型層、22 光電変換層、23 逆導電型層、3 後方光電変換ユニット、31 一導電型層、32 光電変換層、33 逆導電型層、4 裏面電極層、41 導電性酸化物層、42 金属層、5 積層型薄膜太陽電池、6 中間透過反射層、901 集積型薄膜太陽電池、902 光電変換セル、903 透明電極層分離溝、904 裏面電極層分離溝、905 半導体層分離溝。9031 ピット、9040 裏面電極層分離溝、9041 ピット、9043 第1種ピット、9044 第1種ピット列、9045 第2種ピット、9046 第2種ピット列、9051 ピット。
前述のように、特許文献1における透明電極層にSnO2層ではなくて低温形成可能なZnO層を用いることを本発明者は試みた。その結果、分離溝の長手方向に長軸を有する楕円形などのように、ピットの平面形状が分離溝の幅方向の最大長Wより大きな長手方向の最大長Lを有する場合、集積型太陽電池の開放電圧(Voc)、曲線因子(FF)、および光電変換効率(Eff)が低くなることが見出され、集積型薄膜太陽電池の歩留まりが低下することも見出された。
そこで、低温形成可能な透明電極層を含む集積型薄膜太陽電池を作製するためにレーザビームで分離溝を形成する場合を検討したところ、SnO2層に比べて低温形成可能な透明電極層においては分離溝の形成が困難で、直列抵抗の増大によるFFの低下、および電気的短絡またはリーク電流の増大によるVocとFFの低下によって、Effが低下することがわかった。また、透明電極層分離溝、半導体層分離溝、および裏面電極層分離溝のうちで、特に裏面電極層分離溝の形成が最も困難であることがわかった。
この理由は必ずしも明らかではないが、図7の模式的断面図に示すようなモデルで説明することができる。まず、ZnO層はSnO2層に比べて低温で形成可能な利点を有するが、他方において、低温で蒸発しやすいので分離溝を形成する際にZnO層がダメージを受けやすい傾向にある。
透明電極層分離溝903の形成時には、レーザビームを照射した位置においてZnO層12が蒸発して除去されるだけでなく、その周りに熱が伝わって溶けたZnOが再凝固して透明電極分離溝903の底面や側壁に残渣Aとして残り得る。この残滓Aによって、リーク電流の増加や電気的短絡が発生し得ると考えられる。
また、半導体層分離溝905の形成時には、レーザビームを照射した位置において半導体層20が蒸発して除去されるだけでなく、その下のZnO層12が部分的に蒸発して薄い部分Bができ、この部分Bにおいて抵抗が増加すると考えられる。ただし、半導体層分離溝905は互いに隣接するセル間で透明電極12と裏面電極4を電気的に接続するために利用されるものなので、半導体層分離溝905内で部分的にZnOの残滓Cが残っていても問題とならない。
さらに、裏面電極層分離溝904の形成時には、半導体層分離溝905の形成の場合と同様にZnO層12が部分的に蒸発して薄い部分Dができるのでその部分の抵抗が増加するだけでなく、蒸発したZnOが裏面電極層分離溝904の底面や側壁に残渣Eとして残り得る。この残滓Eによって、リーク電流の増加や電気的短絡が発生し得ると考えられる。特に、図7中の楕円7P内に示すように裏面電極層分離溝の右側壁に残渣Eがあれば、顕著なリーク電流の増加や短絡の原因となり得る。
実際に、200℃以下の低温で形成したZnO層を透明電極層に用いた場合と500℃以上の高温で形成したSnO2層を透明電極層に用いた場合とにおいて、レーザビームのエネルギ密度を意図的に変化させて裏面電極層分離溝を形成したときに異なる結果が得られた。
図26は、ZnO透明電極層を含む集積型薄膜太陽電池の裏面電極層分離溝の一部の上面を示す光学顕微鏡写真である。裏面電極層を切断し得るレーザビームの最小エネルギ密度をEminで表して、図26(a)、(b)、および(c)はそれぞれEminの85%、100%、および300%(3倍)のエネルギ密度で裏面電極層分離溝を形成した場合の光学顕微鏡写真を示している。これらの光学顕微鏡写真は、裏面電極側からピット内に白色光を照射して、株式会社キーエンス製の高精細ディジタルマイクロスコープ型式VH−6300を用いて撮影された。もちろん、光学顕微鏡としては、株式会社キーエンス製の代替機種である型式VHX−900を用いてもよいし、実体顕微鏡のような他の光学顕微鏡を用いることもできる。
Eminの85%のエネルギ密度を利用した図26(a)の場合、溝幅の中央の1/3幅ほどの明るい部分だけで裏面電極層材料が除去されており、溝幅の両側に裏面電極層材料が残っていている。そして、裏面電極層分離溝はその全面積の半分以上で切れ残っており、正常な分離機能を果し得ない。
Eminのエネルギ密度を利用した図26(b)の場合、溝領域内で裏面電極層材料がバリ状に多少残っているが、レーザビームを照射した領域の裏面電極層材料がほぼ除去されており、裏面電極層分離溝が形成されている。
Eminの3倍のエネルギ密度を利用した図26(c)の場合、形成されたピットの中央部に暗色の変色部が観察される。これは、裏面電極層分離溝の形成時にEminの3倍のレーザビームを使用したことによって、半導体層の下のZnO透明電極層がダメージを受けているといえる。この図26(c)の場合、図26(b)の場合に比べて、集積型薄膜太陽電池のVocとFFが低下してEffが減少した。
なお、ピット内の暗色の変色部をオリンパス社製の走査型レーザ顕微鏡LEXTOLS3000(現在はLEXTOLS3100の後継機種になっている)を用いてで観察したところ、暗色の変色部はその周囲部に比べて凸状になっていることが判明した。他方、Eminのエネルギ密度のレーザビームを照射した場合には、ピット内の底面がほぼ平らであった。
図27は、SnO2透明電極層を用いた集積型薄膜太陽電池の裏面電極層分離溝の一部の上面を示す光学顕微鏡写真である。図26(a)、(b)、および(c)の場合と同様に、図27(a)、(b)、および(c)はそれぞれEminの85%、100%、および300%(3倍)のエネルギ密度で裏面電極層分離溝を形成した場合の光学顕微鏡写真を示している。
Eminの85%のエネルギ密度を利用した図27(a)の場合、溝の両側に裏面電極層材料が残っている。そして、裏面電極層分離溝はその全面積の半分以上で切れ残っており、正常な分離機能を果し得ない。
Eminのエネルギ密度を利用した図27(b)の場合、溝領域内で裏面電極層材料がバリ状に多少残っているが、レーザビームを照射した領域の裏面電極層材料がほぼ除去されており、裏面電極層分離溝が形成されている。
Eminの3倍のエネルギ密度を利用した図27(c)の場合、ZnO層と異なって、SnO2層ではピットの中央部に暗色の変色部が観察されない。すなわち、SnO2層を透明電極層に用いた場合、裏面電極層分離溝の形成時にレーザビームのエネルギ密度を高くしても、半導体層下のSnO2透明電極層がダメージを受けにくいといえる。この場合のピットも走査型レーザ顕微鏡で観察したところ、ピット内の底面がほぼ平らであることが確認された。
図7では図面の明瞭化のために水平方向の長さの寸法に対して厚さ方向の寸法が顕著に拡大されて描かれている。しかし、実際には半導体層20の厚さは数百nmから数μmの範囲内にあり、各分離溝の幅は数十から数百μmの範囲内にある。すなわち、半導体層20の厚さは、各分離溝の幅の約1/100から1/10の範囲内の小さな寸法である。透明電極層分離溝903はその幅方向においてリーク電流や短絡を抑制すればよいが、裏面電極層分離溝904はその幅方向だけなくて深さ方向でもリーク電流や短絡を抑制する必要がある。すなわち、透明電極層分離溝903に比べて裏面電極層分離溝904は1〜2桁短い距離でリーク電流や短絡を防止する必要があり、3種類の分離溝のうちで裏面電極層分離溝904を良好に形成することが最も困難である。
上述のようなZnO層のダメージを避けるために、分離溝の形成条件について本発明者がさらに検討したところ、レーザビームのエネルギ密度をできるだけ低下させる必要があることがわかった。しかし、レーザビームのエネルギ密度を低下させれば、分離溝の切れ残りによる不良が発生しやすくなる。分離溝の切れ残りによる不良の種類としては、分離溝にバリの残る不良、ピットが一部とぎれる不良(ピット抜け)、ピット列が部分的に曲がる不良(ピット列曲がり)が挙げられる。分離溝の幅は隣接するピット間のくびれ部分で最も細いので、この部分で切れ残りの不良が起こりやすい。特に裏面電極層分離溝904においては、裏面電極層4のわずかな切れ残りがあっても、隣接する光電変換セル間で短絡が生じてしまう。
例えば、裏面電極層4に含まれる金属のバリが裏面電極層分離溝904をまたいで存在すれば短絡が生じ、その右側の光電変換セルのVocが0Vになる。
ピット抜けは、ガラス基板や膜に付着した異物またはガラス基板中の異物などに起因して、レーザビームが分離溝の位置に至らない場合に発生すると考えられる。レーザビームのエネルギ密度が低い場合には、わずかな異物が存在してもピット抜けが発生しやすくなると考えられる。図10の光学顕微鏡写真は、ピット抜けによって分離溝が中断している例を示している。
また、ガラス基板中に気泡が存在したりガラス基板や透明膜の一部にピットの大きさと同程度以上の凹凸があれば、それが凹レンズや凸レンズのような働きをし、レーザビームが設計位置からそれてピット列の曲がりが発生すると考えられる。レーザビームのエネルギ密度が低い場合には、わずかな凹凸の存在によってもピット列の曲がりが発生しやすくなると考えられる。
上述の状況に鑑みて、本発明者はZnO透明電極層を含む集積型薄膜太陽電池についてさらに鋭意検討した。その結果、分離溝を構成する各ピットにおいて溝幅方向の最大長Wを溝長手方向の最大長Lより大きくすることによって、レーザビームのエネルギ密度を低下させてZnO層のダメージを抑制しかつ分離溝の切れ残りの不良を抑制することが可能となり、集積型薄膜太陽電池の変換効率と歩留まりを改善し得ることが見出された。
図2の模式的な平面図に示されているように、分離溝を構成する各ピットの平面形状としては一般的には円形が採用されている。ただし、前述の特許文献1では、図3に示すように溝長手方向の長軸を有する楕円形の平面形状を有するピットの列が開示されている。他方、分離溝を構成するピットの平面形状を溝幅方向に大きな横長の形状にすることは、光電変換セルの発電面積ロスが増えること、および分離溝の単位長さ当たりに要するピット数が増大して加工速度が低下することなどの理由から、従来から行なわれた例がない。しかしながら、本発明では、工業的に許容し得る発電面積ロスと加工速度の低下の範囲内でピットの平面形状を横長にすることによって、ZnO透明電極層を含む集積型薄膜太陽電池の光電変換効率とコストを改善することが可能となった。
また、前述のように、本発明者は、特許文献2の教示に従って第1レーザビームで裏面電極層分離溝を形成し、つづいてその第1レーザビームで形成された裏面電極層分離溝の所定側の側壁を相対的に低パワーの第2レーザビームで削る工程を含めて集積型ハイブリッド薄膜太陽電池を作製することを試みた。その結果、特許文献2の記述とは異なって、第2レーザビームを利用しない場合に比べてEffが低くなる問題が見出された。
具体的には、リーク電流の増大や短絡の発生によってVocやFFが減少してEffが低下するか、または直列抵抗(Rs)の増大によって主にFFが減少してEffが低下する問題が見出された。また、集積型薄膜太陽電池の歩留まりが低下する問題も見出された。
特許文献2に開示された方法においては、裏面電極層分離溝904の形成の際の第1レーザビーム照射領域と第2レーザビーム照射領域は同一ではないが部分的重なりが存在するので、その重なり部分において透明電極層12がダメージを受けると考えられる。そして、その結果として、透明電極層12の薄い部分Dが生じたり、裏面電極層分離溝904の底面や側壁に残渣Eが発生すると考えられる。また、特許文献2では透明電極層12のダメージを軽減するために第1レーザビームに比べて第2レーザビームのエネルギ密度を低くしているが、それでも透明電極層12の薄い部分Dが生じたり裏面電極層分離溝904の底面や側壁に残渣Eが発生する確率は0ではない。
そこで、裏面電極層分離溝904の形成の際における透明電極層12の薄い部分Dの発生およびその分離溝904の底面上や側壁上の残渣Eの発生を抑制するために、本発明者はレーザビームの照射条件についてさらに詳細に検討した。その結果、第1レーザビームの照射によって形成された裏面電極層分離溝904のうちで電流リークや短絡を生じる欠陥領域を含む溝またはその欠陥領域のみについて付加的に第2レーザビームを照射することによって、集積型薄膜太陽電池の変換効率の向上および歩留まりを改善し得ることが分かった。
より具体的には、裏面電極層分離溝904の形成の際に第1レーザビームの照射領域Mに対して第2レーザビームの照射領域Nが部分的に重なるように照射領域Nの中心がその最近接の半導体層分離溝905から遠ざかる方向へ照射領域Mの中心から変位させられることによって、裏面電極層分離溝904の深さ方向の電流リークや溝の切れ残りの不良を解消することが可能となる。この場合に、第1レーザビームと第2レーザビームが重複して照射される局所的領域において透明電極層12がダメージを受けやすいと考えられる。しかし、第1レーザビームと第2レーザビームが重複して照射されるのは、裏面電極層分離溝904のうちで電流リークや短絡を生じる欠陥領域を含む溝またはその欠陥領域のみであって、欠陥領域を含まない裏面電極層分離溝904には第2レーザビームが照射されない。したがって、欠陥領域を含む裏面電極層分離溝内における透明電極層12の局所的ダメージによる不利益よりも欠陥領域が除去される利益の方が大きく、結果として集積型薄膜太陽電池の変換効率の向上および歩留まりを改善し得る。すなわち、必要最小限の本数の裏面電極層分離溝または欠陥領域のみについて第2レーザビームを付加的に照射することによって、集積型薄膜太陽電池の変換効率の向上および歩留まりを改善することができる。
ここで、特定の裏面電極層分離溝904内に欠陥領域が存在するか否かは、例えばカーブトレーサなどを用いて、セルごとにその特性を検査しなければならない。そして、欠陥領域を含むと判断された裏面電極層分離溝またはその欠陥領域に対して選択的に付加的な第2レーザビームを照射しなければならない。すなわち、第1レーザビームに加えて第2レーザビームを付加的に照射する領域は作製中の集積型薄膜太陽電池ごとに異なり、レーザビーム照射の制御が複雑になるので、常識的に当業者はそのような製造方法を考えないであろう。
しかしながら、本発明者による検討の結果として、各セルの特性検査の必要性やレーザビーム照射の制御の複雑化を伴うとしても、欠陥領域を含む裏面電極層分離溝904のみまたはそれらの欠陥領域のみに第2レーザビームを付加的に照射することによって、集積型薄膜太陽電池のEffおよび歩留まりを顕著に改善することができ、工程の複雑化の不利益を補って余りある利益の得られることが判明した。
以上のような本発明者の詳細な検討に基づいて、本発明の好ましい実施の形態が、図面を参照しつつ以下において説明される。
図4から図6は、本発明の一実施形態による集積型薄膜太陽電池に関しても参照することができる。すなわち、本発明の一実施形態による集積型薄膜太陽電池も、透明絶縁基板11とその上に形成された透明電極層12を含む薄膜太陽電池用基板1を備えている(図5、図6参照)。その基板1上には、順に積層された前方光電変換ユニット2、中間透過反射層6、および後方光電変換ユニット3を含む半導体層20が形成され、その上には裏面電極層4が形成されている。
また、本発明の一実施形態による集積型薄膜太陽電池においても、図6に示されているように、透明絶縁基板11は、透光性基体111と透光性下地層112を含んでいる。透光性基体111には、ガラスや透明樹脂などの板状部材やシート状部材などが用いられ得る。透明絶縁基板11は、薄膜太陽電池5の光入射側に位置することから、より多くの太陽光を透過させて光電変換ユニット2、3に吸収させるために、できるだけ透明であることが好ましい。特に、ガラス基板は、透過率が高くかつ安価であることから、透光性基体11として望ましい。同様の意図から、薄膜太陽電池5の光入射面における光反射ロスを低減させるように、透明絶縁基板11の光入射面に無反射コーティング(図示せず)を施すことが望ましい。なお、透明絶縁基板11は透光性基体111のみで構成されていても使用可能であるが、透光性基体111と透光性下地層112を含むことがより好ましい。なぜならば、透光性下地層112によって、透明電極層の密着性の向上および透明電極層の表面凹を増大させる効果が得られるからである。
透光性下地層112は、例えば溶媒を含むバインダ材料と共に透光性微粒子1121を含む塗布液から形成され得る。より具体的には、透光性のバインダ1122として、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、タンタル酸化物などの金属酸化物を利用することができる。また、透光性微粒子1121としては、シリカ(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化インジウム錫(ITO)、またはフッ化マグネシウム(MgF2)などが用いられ得る。透光性基体111の表面に上述の塗布液を付与する方法としては、ディッピング法、スピンコート法、バーコート法、スプレー法、ダイコート法、ロールコート法、フローコート法などを利用し得るが、透光性微粒子1121を緻密かつ均一に分布させるにはロールコート法が好適に用いられ得る。付与された塗布液膜は、直ちに加熱乾燥される。なお、下地層112おいて微細な表面凹凸を均一に形成するために、微粒子の形状は球状であることが好ましい。
透明電極層の材料としては、200℃以下の温度で層形成が可能な材料が好ましい。透明電極層の形成温度が200℃以下の場合、基板に強化ガラスを使うことが可能であり、同じ強度条件でガラス基板を薄くして薄膜太陽電池を軽量化することができる。透明電極層を200℃以下の低温で形成する方法としては、スパッタ法によるITO、ZnO、またはSnO2の堆積、イオンプレーティング法によるITOまたはZnOの堆積、ゾルゲル法によるITOまたはZnOの堆積、さらには低圧熱CVD法によるZnOの堆積が挙げられる。
透明絶縁基板11上に配置される透明電極層12の材料としては、ZnOが好ましい。そのドーピング不純物として、B、Al、およびGaの少なくとも1種を含むことが望ましく、特にB原子を2×1019/cm3以上の濃度で含むことが望ましい。また、透明電極層12は、ドーピング不純物のほかに2×1020/cm3以上のH原子を含むことが好ましい。Hを含むZnO層は、200℃以下の低い基板温度における低圧熱CVDによっても、光閉じ込め効果を有する表面凹凸が形成され得るので、薄膜太陽電池用の透明電極層として好適である。なお、本願明細書における基板温度は、基板が成膜装置の加熱部と接している面の温度を意味する。
ZnO層は、低圧熱CVD法によって200℃以下の低温で容易に堆積され得るので好ましい。また、そうして堆積されたZnO層は、好ましい微細な表面凹凸を含み得る。ZnO層の具体的な堆積条件として、5〜200Paに減圧された低圧熱CVD反応室内へ、有機金属蒸気としてジエチル亜鉛(DEZ)またはジメチル亜鉛、酸化剤として水蒸気、ドーピングガスとしてB26、そして希釈ガスとしてH2、He、およびArの少なくとも一種を含む混合ガスを導入することが好ましい。その成膜時の基板温度は200℃以下が好ましく、140℃以上170℃以下がさらに好ましい。DEZの流量は10〜1000sccm、水蒸気の流量は10〜1000sccm、H2の流量は100〜10000sccm、そしてArの流量は100〜10000sccmに設定され得る。B26は、DEZに対して0.1%〜10%に設定されることが好ましい。
透明電極層12に含まれるZnO結晶粒径は概ね50〜500nmで、かつ表面凹凸の高低差が概ね20〜200nmであることが薄膜太陽電池の光閉じ込め効果の観点から好ましい。また、薄膜太陽電池用基板1のヘイズ率は、光閉じ込め効果の観点から、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。
ZnO電極層12のシート抵抗は、抵抗損失を抑制する観点から、15Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることがより好ましい。
ZnO電極層12の平均厚さは0.7〜5μmであることが好ましく、1〜3μmであることがより好ましい。なぜならば、ZnO層が薄すぎれば、光閉じ込め効果に寄与する表面凹凸を十分に付与すること自体が困難となり、また透明導電膜として必要な導電性が得にくくなるからである。逆に、ZnO層が厚すぎれば、それ自体による光吸収に起因して光電変換ユニットへ到達する光量が減って変換効率が低下し、さらには成膜時間の増大によるコストの増大を生じる。
また、ZnO電極層12の表面面積比(Sdr)は、55%以上95%以下であることが望ましい。Sdrが大きすぎる場合は、開放電圧(Voc)と曲線因子(FF)が低下し、その結果としてEffが低下する。また、場合によっては、短絡電流密度(Jsc)が低下して、その結果として変換効率(Eff)が低下する。Sdrが大きい場合にVocとFFが低下するのは、薄膜太陽電池用基板1の表面凹凸が鋭角的であり、透明導電層12上の半導体層20のカバレッジが悪くなって、接触抵抗の増加またはリーク電流の増加が起きるからである考えられる。また、Sdrが大きい場合にJscが低下するのは、透明導電層12上の半導体層20の成長が阻害されて膜質が低下し、これに起因してキャリア再結合による損失が多くなるからであると考えられる。逆に、Sdrが小さすぎる場合には、薄膜太陽電池用基板1の表面凹凸がなだらかになって光閉じ込め効果が弱くなり、それによって短絡電流密度(Jsc)が低下してEffが低下すると考えられる。Sdrは、ZnO層の成膜条件を制御して最適な値とすることが可能である。例えば、低圧熱CVD法で堆積されるZnO層の表面面積比は、基板温度、原料ガス流量、圧力などの成膜条件によって大きく変わるので、それらを制御して表面面積比を所望の値とすることができる。
前方光電変換ユニット2に非晶質シリコン系材料を利用すれば、それは約360〜800nmの波長の光に対して感度を有し、後方光電変換ユニット3に結晶質シリコン系材料を利用すれば、それはより長い約1200nmまでの波長の光に対して感度を有する。したがって、光入射側から順に非晶質シリコン系材料の前方光電変換ユニット2と結晶質シリコン系材料の後方光電変換ユニット3を含む積層型薄膜太陽電池5は、入射光をより広い波長範囲で有効利用し得ることになる。
積層型薄膜太陽電池5の変換効率のさらなる向上のために、半導体光電変換ユニット2と3の間に、それらのユニット2、3の構成材料より低い屈折率を有する導電性の中間透過反射層6を形成する方法がある(図6参照)。このような中間透過反射層6によって、短波長側の光を反射しかつ長波長側の光を透過させることが可能となり、薄膜光電変換ユニット2、3の各々における効率的な光電変換が可能となる。
例えば、前方の非晶質シリコン光電変換ユニット2と後方の結晶質シリコン光電変換ユニット3を含むハイブリッド型薄膜太陽電池5に中間透過反射層6を挿入した場合、非晶質シリコン光電変換層22の厚さを増やすことなく、その前方ユニット2によって発生する電流を増加させることができる。また、中間透過反射層6を含む場合には、それを含まない場合に比べて、同一の出力電流値を得るために必要な非晶質シリコン光電変換層22の厚さを小さくし得ることから、非晶質シリコン層の厚さの増加に応じて顕著となる光劣化(Staebler-Wronsky効果)による非晶質シリコン光電変換ユニット2の特性低下を抑制することも可能となる。
なお、中間透過反射層は前方光電変換ユニットの裏面側導電型層の一部に設けてもよく、また後方光電変換ユニットの前面側導電型層の一部に設けてもよい。
前方光電変換ユニット2は、例えばプラズマCVD法によってp型、i型、およびn型の順に各半導体層を積層して形成され得る。より具体的には、例えばボロンが0.01原子%以上ドープされたp型非晶質シリコンカーバイド層21、真性非晶質シリコン光電変換層22、およびリンが0.01原子%以上ドープされたn型微結晶シリコン層23がこの順に堆積されて、非晶質シリコン光電変換ユニット2が形成され得る。
中間透過反射層6の材料としては、酸化亜鉛、ITOなどの導電性酸化物を利用することができ、またプラズマCVDで形成可能な微結晶シリコンと酸化シリコンを含むシリコン複合層を用いることもできる。集積型薄膜太陽電池5の場合、中間透過反射層6として導電性酸化物層を用いれば後方光電変換ユニット3の短絡の問題が生じ得るが、シリコン複合層はその問題を生じないので好ましい。シリコン複合層は、例えば反応ガスとしてSiH4、CO2、H2、およびPH3を用いて、H2/SiH4比が大きい条件でかつCO2/SiH4比が2以上の範囲を利用するプラズマCVDで形成されることが好ましい。このときのプラズマCVDにおいては、例えば容量結合型の平行平板電極を用いて、電源周波数10〜100MHz、高周波パワー密度0.01〜0.5W/cm2、圧力50〜1500Pa、および基板温度150〜250℃の条件を利用することが好ましい。CO2/SiH4比を増加させれば、シリコン複合層中の酸素濃度が単調に増加し、中間透過反射層6の屈折率を下げることができる。
後方光電変換ユニット3も、例えばプラズマCVD法によってp型、i型、およびn型の順に各半導体層を積層して形成され得る。より具体的には、例えばボロンが0.01原子%以上ドープされたp型微結晶シリコン層31、真性結晶質シリコン光電変換層32、およびリンが0.01原子%以上ドープされたn型微結晶シリコン層33がこの順に堆積されて、結晶質シリコン光電変換ユニット3が形成され得る。
裏面電極層4は、Al、Ag、Au、Cu、Pt、およびCrの少なくとも一種を含む少なくとも一層の金属層42として、スパッタ法または蒸着法により形成されることが好ましい。また、後方光電変換ユニット3と金属層42との間に、ITO、SnO2、ZnOなどの導電性酸化物層41を裏面電極層4の一部として形成することが好ましい。この導電性酸化物層41は、後方光電変換ユニット3と裏面電極層4との密着性を高めるとともに、裏面電極層4の光反射率を高め、さらには金属層42から光電変換ユニット3、2へ金属元素が拡散することを防止するように作用し得る。
薄膜太陽電池は図6の積層型薄膜太陽電池のように2段の光電変換ユニットを含んでいてもよいが、1段の光電変換ユニットのみを含むいわゆるシングルセルの薄膜太陽電池であってもよく、3段の光電変換ユニットを含むいわゆるトリプルセルの薄膜太陽電池であってもよく、さらには4段以上の光電変換ユニットが積層されてもよい。例えば、図6の前方光電変換ユニット2に相当する非晶質シリコン光電変換ユニットのみを形成し、中間透過反射層6と後方光電変換ユニット3が省略された非晶質シングルセルであってもよい。また、SnO2に比べて耐プラズマ性が高いZnOで透明電極層を形成する場合、その透明電極層上に直接に結晶質シリコン光電変換ユニットを形成することも可能である。すなわち、図6の前方光電変換ユニット2と中間透過反射層6を含むことなく、結晶質シリコン光電変換ユニットのみを含む結晶質シングルセルを形成してもよい。また、トリプルセルとしては、非晶質シリコン光電変換ユニット/非晶質シリコンゲルマニウムのi層を含む非晶質シリコンゲルマニウム光電変換ユニット/結晶質シリコン光電変換ユニットの順に積層する例、非晶質シリコン光電変換ユニット/結晶質シリコン光電変換ユニット/結晶質シリコン光電変換ユニットの順に積層する例などがある。さらに、図6では中間透過反射層6を含む積層形薄膜太陽電池が示されているが、中間透過反射層6が省略された積層型薄膜太陽電池にも本発明を適用し得ることが明らかであろう。
図5は、本発明の一実施形態による薄膜太陽電池の集積構造説明するための概略的な断面図である。この集積型薄膜太陽電池901においては、ガラス基体111と下地層112を含む透明絶縁基板11上に透明電極層12が積層され、その上に非晶質シリコン光電ユニット2、中間透過反射層6、および結晶質シリコン光電変換ユニット3を含む半導体層20が積層され、さらにその上に裏面電極層4が積層されている(図6をも参照)。
図5に示すように、集積型薄膜太陽電池901には、透明電極層分離溝903、裏面電極層分離溝904、および半導体層分離溝905が設けられている。これらの透明電極層分離溝903、裏面電極層分離溝904、および半導体層分離溝905は、互いに平行であって、図面に対して垂直な方向に延在している。なお、隣り合う光電変換セル902間の境界は、透明電極層分離溝903と裏面電極層分離溝904によって規定されている。
半導体層分離溝905は裏面電極層4に含まれる金属材料で埋め込まれており、隣り合う光電変換セル902間で一方のセルの裏面電極4と他方のセルの透明電極12とを電気的に接続している。すなわち、半導体層分離溝905とそれを埋め込む金属材料は、隣接する光電変換セル902同士を直列接続する役割を担っている。
透明電極層分離溝、半導体層分離溝、および裏面電極層分離溝の少なくとも一部は、図1の模式的な平面図に示すように、分離溝の幅方向の最大長Wと長手方向の最大長Lを有する各ピットのつながりによって構成されている。すなわち、W>Lとすることによって、各ピットを形成するエネルギを増加させずに、分離溝の幅を広くすることがでる。そして、隣接するピット間における分離溝のくびれ部の幅を広くすることができるので、溝にバリが残る不良、ピット列が部分的に途切れる不良(ピット抜け)、およびピット列が部分的に曲がる不良(ピット列曲がり)を抑制し、集積型薄膜太陽電池の出力特性、歩留まり、およびコストの改善が可能となる。
他方、従来のように平面形状が円形のピットまたは特許文献1におけるように縦長の楕円のピットを連続させて分離溝を形成する場合、その分離溝の幅を広くするためにはピットの平面積を広くしなければならないので、同じレーザエネルギ密度を利用する場合に、レーザ光の1パルスあたりのエネルギ量を大きくする必要がある。例えば、特許文献1においてW/L=0.5の縦長楕円の場合に、本発明におけるW/L=2の横長楕円の場合と同じ分離溝幅を実現するためには4倍の面積が必要となるので、1パルスあたりのレーザエネルギ量も4倍にする必要がある。しかし、必要なレーザエネルギ量が大きくなれば、レーザ装置のコストが増加するので好ましくない。また、通常ではレーザビーム断面におけるエネルギ分布は必ずしも均一ではなく、その断面の中央付近にピークを有するガウス分布に近い。したがって、レーザ光の1パルスあたりのエネルギ量を増加させれば、ピット内のエネルギピークが高くなって、ZnO層へのダメージが大きくなるので好ましくない。
透明電極層分離溝903、半導体層分離溝905、および裏面電極層分離溝904の中でも、特に裏面電極層分離溝904を構成するピットをW>Lの横長形状にすることが、集積型薄膜太陽電池のVoc、FF、およびEffを向上させかつ歩留まりを向上させるために好ましい。
また、分離溝の分離不良を抑制するためにW/Lを1.25以上にすることが望ましく、発電面積ロスと分離溝の抵抗損失とを抑制するためにW/Lを7.2以下にすることが望ましい。隣り合うピットが分離溝の長手方向に重なる最大長さdをLの5%以上にすることによって、隣接するピット間の境目における溝幅が広くなって、分離溝の分離不良が抑制され得る。逆に、重なりの最大長dをLの30%以下にすることによって、レーザビームが重複照射される部分の面積が大きくなりすぎず、透明電極層へのダメージおよび分離溝中の残渣の発生が抑制され得る。
ピットの平面形状はW>Lを満たす限りにおいて種々の形状であり得るが、楕円状であればレーザ光学系を容易に構成することができ、エネルギ量や焦点距離などレーザ条件の最適化が容易であるので好ましい。ピットの典型的な平面形状としては、W>Lの条件下においてWが50〜200μmでLが20〜150μmである楕円形が好ましい。また、隣接するピットにおいて分離溝の長手方向に重なる最大長さdは、Lの6%以上33%以下であることが好ましく、典型的には5〜40μmであることが好ましい。
各ピットの平面積を3×10-102以上にすることによって、各ピットを形成するエネルギ密度が高くなりすぎず、透明電極層へのダメージと分離溝中の残渣の発生が抑制され得る。他方、ピットの平面積を4×10-82以下にすることによって、各ピットを形成するエネルギ量が大きくなりすぎず、レーザ装置のコストの増加を抑制し、また分離溝による発電面積ロスを抑制することができる。
本発明による集積型薄膜太陽電池の製造方法において、分離溝はレーザビームをパルス的に照射することによって形成され得る。レーザ装置としては、容易に市販品を入手し得るYAGレーザを用いることができる。その場合、透明電極層分離溝の形成にはYAGレーザの基本波である波長1064nmのレーザ光を用い、半導体層分離溝および裏面電極層分離溝の形成にはYAGレーザの第二高調波である波長532nmのレーザ光を用いる。レーザビーム照射スポットと基板との相対的位置を変化させながらレーザ光をパルス的に照射することによって、略同形状のピットが一定ピッチで連なった分離溝が形成され得る。
YAGレーザのパルスの周波数としては、典型的には3〜15kHzが用いられ得る。また、YAGレーザと同じ波長1064nmのレーザ光を射出し得るYVO4(イットリウム・バナデート)レーザも分離溝の形成に用いることができ、その場合はパルス周波数を30kHzまで増加させることができる。なお、分離溝の形成方法は、レーザビーム照射に限定されず、その他のエネルギビーム照射などであってもよい。ピットの平面形状においてW>Lを満たすために、通常のレーザ光学系に加えて、反射鏡、シリンドリカルレンズ、XY方向のスリットなどの少なくとも1つを適宜に用いることができ、これによって所望の平面形状のピットを実現することが可能である。
裏面電極層分離溝を形成するためのレーザビームのエネルギ密度は裏面電極層を切断し得る最小エネルギ密度の1.1倍以上2倍以下に設定され、これによって透明電極層へのダメージと分離溝中の残渣の発生が抑制され得る。
本発明の他の実施形態が、図4、6および図14〜16を参照しつつ以下において説明される。図15の断面図は、図4中の楕円4Pで囲まれた領域に関して、この実施形態による集積型薄膜太陽電池を模式的に示している。そして、図14と図16は、図15中の楕円2Qで囲まれた領域に関して、透明電極層分離溝903、半導体層分離溝905、および裏面電極層分離溝9040をそれぞれ模式的平面図と模式的断面図で拡大して示している。図6は、図15中の楕円2Pで囲まれた領域の積層構造をより詳細に示す模式的断面図としても参照し得る。
図15に示された集積型薄膜太陽電池901においては、ガラス基体111と下地層112を含む透明絶縁基板11上に透明電極層12が積層され、その上に非晶質シリコン光電ユニット2、中間透過反射層6、および結晶質シリコン光電変換ユニット3を含む半導体層20が積層され、さらにその上に裏面電極層4が積層されている(図6をも参照)。
図15に示すように、集積型薄膜太陽電池901には、透明電極層分離溝903、裏面電極層分離溝9040、および半導体層分離溝905が設けられている。これらの透明電極層分離溝903、裏面電極層分離溝9040、および半導体層分離溝905は、互いに平行であって、図面に対して垂直な方向に延在している。なお、隣り合う光電変換セル902間の境界は、透明電極層分離溝903と裏面電極層分離溝9040によって規定されている。
半導体層分離溝905は裏面電極層4に含まれる金属材料で埋め込まれており、隣り合う光電変換セル902間で一方のセルの裏面電極4と他方のセルの透明電極12とを電気的に接続している。すなわち、半導体層分離溝905とそれを埋め込む金属材料は、隣接する光電変換セル902同士を直列接続する役割を担っている。
図14から図16を参照して、裏面電極層分離溝9040の形成方法が図解されている。まず、図15と図16において第1レーザビーム71として示されているように、例えばYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームが透明絶縁基板11を通して領域Mに照射され、図7に示された裏面電極層分離溝904と同等の裏面電極層分離溝が形成される。
その後、第2レーザビーム72を照射すべき裏面電極層分離溝が選定される。すなわち、第1レーザビームの照射のみによって十分良好な裏面電極層分離溝が形成されている場合、第2レーザビームを照射すれば透明電極層のダメージが増大する可能性があるので、これを抑制するために第2レーザビームを照射する裏面電極層分離溝の本数を必要最小限にすることが重要である。そのために、集積される各光電変換セルについて短絡やリーク電流の有無を検査し、出力特性が基準値に満たない光電変換セルに接する裏面電極層分離溝についてのみ、付加的な第2レーザビームを用いて欠陥部の除去を行なう。
検査の方法としては、(1)ソーラーシミュレータで各セルのVoc、Jsc、FF、Effなどを実際に測定する;(2)各セルに逆方向の直流電圧または周期電圧をかけてリーク電流の値で判断する(これは逆バイアス処理と呼ばれている);(3)カーブトレーサで電圧電流特性がダイオード特性を示すかどうかで判断する;(4)蛍光灯などで10mW/cm2程度の強度の光をあててテスターなどでVocの相対値を測定する;(5)顕微鏡などで形態観察を行なうなどの少なくとも一つの方法を採用することができる。その検査後に、出力特性が基準値に満たない光電変換セルに隣接する裏面電極層分離溝について、溝長手方向全体にわたって第2レーザビームを照射してもよいし、顕微鏡観察などで欠陥箇所が特定できる場合はその欠陥部分だけに第2レーザビームを照射してもよい。なお、検査方法の例がここに列挙されたが、欠陥領域の存在を判断できるのであれば他の方法をも採用し得ることは言うまでもない。
ここで例示された検査方法のうちで、逆バイアス処理は、通常の薄膜太陽電池モジュールの製造工程で用いられている。したがって、逆バイアス処理装置を用いれば、新たな検査装置を導入しなくても、第2レーザビームを照射すべき裏面電極層分離溝を特定することができる。
逆バイアス処理においては、セルの正負の電極間に逆方向電圧(逆バイアス電圧)を印加することによって短絡部が除去される。すなわち、セル中の半導体層に逆方向電圧を印加することによって短絡部に電流を集中させ、発生したジュール熱によって短絡部の導電物を飛散させまたは酸化して絶縁体にして短絡部を除去する。短絡部は、セル内のピンホール、透明電極層分離溝、裏面電極層分離溝などにおいて生じやすい。逆バイアス処理装置は、互いに隣り合う3〜6段のセルの電極に接する複数段のプローブを備え、それら複数段のプローブを一体的に下降させて裏面電極層に接触させる。
より詳細には、プローブの接触抵抗を下げるために、各セル用に10〜100mm間隔で複数のプローブ(これをプローブ群と呼ぶ)が設けられている。このようなプローブ群の4〜7段分を設けることによって、3〜6段分のセルごとに処理することができる。すなわち、隣り合う任意の一対のセルに逆バイアス電圧を印加する一対のプローブ群を切り替えスイッチによって選択し、逆バイアス電圧を印加してリーク電流が測定される。プローブ群が接している各段のセルの逆バイアス処理が終了したら、全プローブを一体的に上昇させ、次に処理すべき複数段のセルが複数段のプローブ下に配置されるように薄膜太陽電池モジュールを相対的に移動させ、そしてそれら複数段のプローブを一体的に下降させる。
逆バイアス処理による判定においては、例えば最初に2V以下のピーク値を有する直流電圧または周期波形電圧(半波整流正弦波、矩形波、のこぎり波など)をセルに印加してリーク電流を測定し、リーク電流が許容値以下なら逆バイアス処理を終了し、そのセルが合格であると判定される。また、2V以下の電圧印加においてリーク電流が許容値を超えているセルであっても、さらに逆バイアス電圧を増大させてリーク電流が許容値以下になった場合、そのセルも合格と判定される。他方、予め設定された最大値まで逆バイアス電圧を印加してもリーク電流が許容値以下にならないセルは、不合格であると判定される。そして、逆バイアス処理において不合格と判定されたセルに接する裏面電極層分離溝において、第2レーザビームが付加的に照射される。
図16に示すように、第1レーザビーム71と同様に、波長532nmの第2レーザビーム72が透明絶縁基板11を通して領域Nに照射され、これによって裏面電極層分離溝9040が完成する。この際に、領域Nはその一部が領域Mと重ねられ、領域Nの中心はその最近接の半導体層分離溝から遠ざかる方向へ領域Mの中心から変位させられている。なお、レーザビームの断面形状としては、円形や楕円形などが好ましく用いられ得るが、任意の形状を用いることも可能である。
ところで、第1レーザビーム71のみで裏面電極層分離溝を形成した段階では、その溝の両側の壁に残渣Eが付着しており(図7参照)、集積型薄膜太陽電池のリーク電流の増大や短絡の原因となる。残渣Eを含む裏面電極層分離溝において、図7の楕円7Pの部分を含む領域Nに第2レーザビームを照射することによって、その裏面電極層分離溝の右側の壁に付着した残渣Eが図16に示されているように除去される。
ここで、裏面電極層分離溝9040の左側の壁に付着している残渣Eは、その左側の半導体層分離溝905が金属材料で埋め込まれるので、除去される必要がない。しかし、裏面電極層分離溝の右側の壁に付着している残渣Eは、その右側のセルにおける厚さ方向の電流リーク経路になるので、第2レーザビームの照射領域Nを右側にずらすことが重要である。すなわち、第2レーザビーム照射領域Nを右側にずらすことによって、領域Mに比べて領域Nの幅を拡大しなくても、裏面電極層分離溝の右側の壁における残渣Eを除去することができる。領域Mと領域Nの形状と面積を同じにする場合、第1レーザビームと第2レーザビームのための光学系を同じにすることができ、光学系や制御系が簡便になってレーザ装置のコストが低減され得る。また、領域Mに比べて領域Nを小さくすることもでき、この場合に第1レーザビームと第2レーザビームのエネルギ密度を同じにして、エネルギコストを抑制することができる。
以上のように、本発明によれば、半導体層の厚さ方向のリーク電流や短絡の発生が抑制されて、VocまたはFFの増加によってEffの向上した集積型薄膜太陽電池を高い歩留まりで提供することができる。
なお、第2レーザビームが付加的に照射された裏面電極層分離溝に接するセルは、再度逆バイアス処理されることが望ましい。なぜならば、第2レーザビームの照射後にも微小な残渣などの短絡部が残っている場合、その再度の逆バイアス処理によってその短絡部が除去され得るからである。
図14の模式的平面図は、本発明においてパルスレーザ照射で形成されたピット列を含む透明電極層分離溝903、半導体層分離溝905、および裏面電極層分離溝9040の一部を示している。透明電極層分離溝903は、所定ピッチで連なった略円形状のピット9031によって形成されている。同様に、半導体層分離溝905も、所定ピッチで連なった略円形状のピット9051によって形成されている。
他方、裏面電極層分離溝9040は、略楕円形状の第1種ピット9043が所定ピッチで連なった第1種ピット列9044と略楕円形状の第2種ピット9045が所定ピッチで連なったと第2種ピット列9046との重複によって形成されている。第2種ピット列9046の溝幅方向の極大長Wnは、第1種ピット列9044の溝幅方向の極大長Wmより小さい。また、第2種ピット列9046の中心線はその最近接の半導体層分離溝905から遠ざかる方向へ第1種ピット列9043の中心線から変位させられている。
本発明では、第1種ピット列9044の右側壁に存在していた残渣が第2種ピット列9046の形成の際に除去され、このことによってVocまたはFFの増加によってEffの向上した集積型薄膜太陽電池を改善された歩留まりで提供することができる。
なお、第1種ピット列9044に含まれる第1種ピット9043の相互間で±20%程度の寸法の差異や端部の裏面電極層の剥離がある場合があるが、100〜1000倍程度の光学顕微鏡で観察する限りにおいてそれらのピットはほぼ相似形である。
図14において、裏面電極層分離溝9040の幅Woと第1レーザビームのみで形成された第1種ピット列9044の溝幅方向の極大長Wmとの比Wo/Wmは、1.15以上1.8以下であることが好ましい。この比を1.15以上にすることによって、第1レーザビームの照射領域Mと、第2レーザビームの照射領域Nが重なりすぎず(図16参照)、実質的にレーザビームが2回照射される面積が減るので、透明電極層へのダメージが抑制され得る。また、この比を1.8以下にすることによって、第1レーザビームで形成された第1種ピット列9044における切れ残りや残渣などのスクライブ不良部(欠陥部)の改善や除去が容易になるとともに、有効発電面積の減少(面積ロス)を抑制することができる。
また、透明電極層に酸化亜鉛(ZnO)を用いた場合には、第2レーザビーム照射を利用することは特に効果的である。この理由として、SnOに比べてZnOが低温でも蒸発しやすいので、ZnO層が第1レーザビームによるダメージを受けて蒸発しやすく、蒸発したZnOが再固体化して残渣として残りやすいと考えられる。また、SnO層に比べてZnO層のヘイズ率と厚さが大きいことに起因して、ZnO層においてレーザ光吸収量が大きくなってダメージを受けやすいことが考えられる。
第1レーザビームに比べて、第2レーザビームのエネルギ密度を低くすることがより望ましい。本発明者の検討では、第2レーザビームのエネルギ密度を低くしても残渣Eを除去することが可能であり、透明電極層へのダメージも軽減され得る。これによって、VocやFFがさらに増加してEffがさらに向上し、集積型薄膜太陽電池の歩留まりも向上し得る。第2レーザビームのエネルギ密度を第1レーザビームのエネルギ密度の44%以上にすれば残渣Eが容易に除去されてリーク電流が抑制され、95%以下にすればレーザビームが2回照射される領域における透明電極層のダメージが容易に抑制され得るので、44%以上95%以下の範囲にすることが望ましい。さらに、第2レーザビームのエネルギ密度を第1レーザビームのエネルギ密度の50%以上70%以下にすれば、大面積の基板を用いた場合においてエネルギ密度のばらつきの影響が軽減され、集積型薄膜太陽電池での歩留まりがさらに向上し得る。なお、エネルギ密度は、レーザのパワーを減少させて低くしてもよいし、レーザビームの焦点深さを変えて照射位置におけるビーム断面積の縮小を抑制して低くしてもよい。
また、裏面電極層分離溝の単位長さあたりの第2レーザビーム照射回数(パルス数)を第1レーザビーム照射回数より多くすることによって、第1レーザビームで形成された裏面電極層分離溝における切れ残りや残渣などのスクライブ不良部(欠陥部)の改善や除去をし得る確率が高くなる。なお、単位長さあたりの第2レーザビーム照射回数は、第1レーザビーム照射回数の整数倍を避けることが望ましい。
パルスレーザで形成されたピット列中で隣接するピットの境界おいては狭幅部分が形成され、この部分で残渣Eや切れ残りの不良が発生しすい。単位長さあたりの第2レーザビーム照射回数が第1レーザビーム照射回の数整倍である場合、第2レーザビームで形成された隣接する第2種ピット9045の境界の狭幅部分も、第1レーザビームで形成された隣接する第1種ピット9044の境界の狭幅部と同じ位置にくる場合がある。そこで、単位長さあたりの第2レーザビーム照射回数として第1レーザビーム照射回数の整数倍を避けることによって、第1レーザビームの照射スポット位置に対して第2レーザビームの照射スポット位置が溝長手方向にずれるので、残渣Eがより効率的に除去され得る。
以下においては、本発明による種々の具体的な実施例が、種々の比較例とともに詳細に説明されて検討される。
(実施例1)
本発明の実施例1として、集積型薄膜太陽電池を作製した。この実施例1の集積型薄膜太陽電池に関しても、図4から図6を参照することができる。まず、透明絶縁基板11を得るために、4mm×360mm×465mmのガラス基体111上にSiO2微粒子1121を含む透光性下地層112を形成した。透光性下地層112を形成する際に用いた塗布液としては、平均粒径100nmの球状シリカの分散液、水、およびエチルセロソルブの混合液にテトラエトキシシランを加え、そして塩酸を添加してテトラエトキシシランを加水分解させ、さらに希釈液としてジアセトンアルコールとプロピレングリコールが加えられた。塗布液全体に対する球状シリカの割合は、6質量%であった。塗布液を印刷機にてガラス基体上に塗布した後に90℃で30分乾燥し、その後に450℃で5分加熱することによって、微細な表面凹凸を有する透明絶縁基板11を得た(図6参照)。
この透明絶縁基板11上にZnOの透明電極層12を低圧熱CVD法で形成した。この透明電極層12は、基板温度160℃、圧力30Pa、気化したジエチル亜鉛(DEZ)の流量200sccm、水蒸気流量700sccm、ジボラン(B26)流量2sccm、および水素流量1000sccmの条件下で形成された。
得られたZnO透明電極層12に関して種々の物理的特性を測定したところ、反射スペクトルの干渉から求めた厚さは1.7μm;シート抵抗は12.1Ω/□;C光源を用いて測定したヘイズ率は21.6%;ホール効果測定から求めたキャリア密度は基板面内のばらつきを含んで5×1019〜3×1020/cm3の範囲内;そして表面面積比(Sdr)は75.5%であった。なお、本願におけるSdrは、一辺が5μmの正方形領域を観察した原子間力顕微鏡(AFM)像から求められている。このAFM測定には、Nano−Rシステム(Pacific Nanotechnology社製)のノンコンタクトモードが用いられた。
さらに、2次イオン質量分析(SIMS)として、ZnO透明電極層12中の不純物濃度がCs+イオン源を用いて測定された。このSIMSによって、ZnO層中の不純物として、H、B、およびCの元素が明確に検出された。各不純物濃度はZnO層の厚さ方向において分布を有しているが、H原子濃度は9×1020〜3×1021/cm3、B原子濃度は1×1020〜4×1020/cm3、そしてC原子濃度は5×1019〜2×1020/cm3の範囲内であった。液体原料のDEZには約0.1〜2%のAlが混入しているが、SIMSの高分解能測定で求めたZnO膜中のAl原子濃度は、5×1018/cm3以下であった。したがって、Al原子濃度がキャリア密度より1桁以上低いので、AlはZnO層中で実質的にキャリアとして作用していないといえる。
上述のようなZnO透明電極層12上に、非晶質シリコン光電変換ユニット2、中間透過反射層6、結晶質シリコン光電変換ユニット3、および裏面電極層4を順次形成することによって、図6に示すような積層型薄膜太陽電池が作製された。ただし、この薄膜太陽電池は、レーザスクライブを利用することによって、図5に示すような集積型薄膜太陽電池901として作製された。本実施例1の集積型薄膜太陽電池901においては、50段の光電変換セルが直列接続された。
具体的には、波長1064nmのYAGレーザビームを用いて、透明電極層12において透明電極層分離溝903を形成した。その溝を構成する各ピットの平面形状は図2に示すような円形とし、溝幅方向の最大長W=80μmかつ溝長手方向の最大長L=80μmに設定された。すなわち、W/L=1であって、各ピットの面積は5.0×10-92であった。隣接するピットが溝長手方向に重なる最大長さdはLの50%にされ、レーザビームのエネルギ密度は13J/cm2に設定された。透明電極層分離溝903の形成後に、薄膜太陽電池用基板1は、洗浄されて乾燥された。
透明電極層12上には、厚さ10nmのp型微結晶シリコン層と厚さ15nmのp型非晶質シリコンカーバイド層を含むp型層21、厚さ350nmの真性非晶質シリコン光電変換層22、および厚さ15nmのn型微結晶シリコン層23からなる非晶質光電変換ユニット2がプラズマCVDによって形成された。つづけて、プラズマCVDによって、厚さ50nmのシリコン複合層からなる中間透過反射層6を形成した。さらに、厚さ15nmのp型微結晶シリコン層31、厚さ2.5μmの真性結晶質シリコン層32、および厚さ15nmのn型微結晶シリコン層33からなる結晶質シリコン光電変換層ユニット3をプラズマCVDで形成した。すなわち、半導体層20は、前方光電変換ユニット2、中間透過反射層6、および後方光電変換ユニット3を含んでいる。
その後、YAGレーザの第二高調波(波長532nm)を用いるレーザスクライブによって、半導体層20を貫通する半導体層分離溝905を形成した。この溝を構成する各ピットの平面形状は図3に示すような溝長手方向に長軸を有する縦長楕円形とし、溝幅方向の最大長W=50μmで溝長手方向の最大長L=80μmに設定された。すなわち、W/L=0.63であって、各ピットの面積は3.1×10-92であった。隣接するピットが溝長手方向に重なる最大長さdはLの50%にされ、レーザビームのエネルギ密度は0.7J/cm2に設定された。
半導体層分離溝905が形成された半導体層20上には、裏面電極層4としてAlドープされた厚さ90nmのZnO層41と厚さ200nmのAg層42がスパッタ法にて順次形成された。
最後に、YAGレーザの第二高調波(波長532nm)を用いるレーザスクライブによって、前方光電変換ユニット2、中間透過反射層6、後方光電変換ユニット3、および裏面電極層4を貫通する裏面電極層分離溝904を形成した。この溝を構成する各ピットの平面形状は図1に示すように溝長手方向に短軸を有する横長楕円形とし、溝幅方向の最大長W=75μmで溝長手方向の最大長L=60μmに設定された。すなわち、W/L=1.25であって、各ピットの面積は3.3×10-92であった。隣接するピットが溝長手方向に重なる最大長さdはLの20%にされ、レーザビームのエネルギ密度は0.7J/cm2に設定された。
こうして得られた本実施例1の集積型薄膜太陽電池にエアマス(AM)1.5の光を100mW/cm2の光強度で照射して出力特性を測定したところ、開放電圧(Voc)が1.313V、短絡電流密度(Jsc)が12.59mA/cm2、曲線因子(FF)が0.712、そして変換効率(Eff)が11.77%であった。
この実施例1の集積型薄膜太陽電池の裏面側を樹脂封止する前に、カーブトレーサを用いて各光電変換セルの短絡の有無を調べたところ、全50段の光電変換セル中で短絡しているセルはなかった。すなわち、裏面電極層分離溝904を構成する各ピットの平面形状において溝幅方向の最大長Wと溝長手方向の最大長LとがW/L=1.25の関係に設定されることによって、11.5%をこえる高いEffを有する集積型薄膜太陽電池が得られることが分かる。
なお、裏面電極層分離溝904を形成する際のレーザビームのエネルギ密度を0.6J/cm2未満設定した場合には、裏面電極層に切れ残りが発生した。すなわち、本実施例1において裏面電極層分離溝904の形成に使用したレーザビームのエネルギ密度は、裏面電極層を切断し得るレーザビームの最小エネルギ密度の1.17倍に相当する。
(実施例2)
本発明の実施例2においても、実施例1に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。すなわち、実施例2の集積型薄膜太陽電池は、裏面電極層分離溝904を構成する各ピットの平面形状を変更したことのみにおいて、実施例1と異なっていた。
本実施例2では、裏面電極層分離溝904を構成する各ピットの平面形状が図1に示されているように溝の長手方向に短軸を有する横長楕円形にされ、溝幅方向の最大長W=90μmで溝長手方向の最大長L=50μmに設定された。すなわち、W/L=1.80であり、各ピットの面積は3.5×10-92であった。隣接するピットが溝長手方向に重なる最大長さdはLの20%にされ、レーザビームのエネルギ密度は0.7J/cm2に設定された。
得られた本実施例2の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例1の場合と同様に測定したところ、Vocが1.328V、Jscが12.65mA/cm2、FFが0.714、そしてEffが12.00%であった。また、実施例1と同様の方法によって本実施例2でも光電変換セルの短絡の有無を調べたところ、全50段の光電変換セル中で短絡しているセルはなかった。
本実施例2と実施例1との対比から、裏面電極層分離溝904を構成する各ピットにおいてW/Lを1.25から1.8に増大させることによって、Effが11.77%から12.00%へさらに向上することが分かる。
図8は、本実施例2における裏面電極層分離溝904の一部の上面を示す光学顕微鏡写真である。この光学顕微鏡写真から、裏面電極層分離溝904の近傍において裏面電極層4に含まれる金属材料のバリが認められるが、W/L>1にすることによって溝幅が充分に大きくなってバリの大きさが溝幅よりも小さくなっており、短絡は発生しないことが分かる。
図9は、本実施例2における裏面電極層分離溝904の他の一部を示す光学顕微鏡写真である。この図9においては、裏面電極層分離溝904を構成すべきピットの1つが小さくなって、部分的ピット抜け発生している。しかし、W/L>1にすることによってピットの幅が十分に大きくなっているので、分離溝が完全には途切れなくて、短絡は発生していないことが分かる。すなわち、W/L>1にすることによって、たとえバリやピット抜けが発生しても、短絡に至る確率を低減し得ることが分かる。
(比較例1)
比較例1においても、実施例1に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。すなわち、比較例1の集積型薄膜太陽電池は、裏面電極層分離溝904を構成する各ピットの平面形状を変更したことのみにおいて、実施例1と異なっていた。
本比較例1では、裏面電極層分離溝904を構成する各ピットの平面形状が図2に示されているように円形にされ、溝幅方向の最大長W=63μmで溝長手方向の最大長L=63μmに設定された。すなわち、W/L=1.00であり、各ピットの面積は3.3×10-92であった。隣接するピットが溝長手方向に重なる最大長さdはLの20%にされ、レーザビームのエネルギ密度は0.7J/cm2に設定された。
得られた本比較例1の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例1の場合と同様に測定したところ、Vocが1.272V、Jscが12.69mA/cm2、FFが0.643、そしてEffが10.38%であった。また、実施例1と同様の方法によって本比較例1でも光電変換セルの短絡の有無を調べたところ、全50段の光電変換セル中で2つのセルが短絡していた。
本比較例1と実施例1および2との対比から、裏面電極層分離溝904においてW/L=1にすれば、VocとFFが低下して、Effが10.5%未満の低い値に低下することが分かる。そして、この原因として、光電変換セルの短絡が考えられる。
(比較例2)
比較例2においても、実施例1に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。すなわち、比較例2の集積型薄膜太陽電池は、裏面電極層分離溝904を構成するピットの平面形状を変更したことのみにおいて、実施例1と異なっていた。
本比較例2における各ピットの形状は図3に示すように溝長手方向に長軸を有する縦長楕円形にされ、溝幅方向の最大長W=50μmで溝長手方向の最大長L=80μmに設定された。すなわち、W/L=0.63であり、各ピットの面積は3.1×10-92であった。隣接するピットが溝長手方向に重なる最大長さdはLの20%にされ、レーザビームのエネルギ密度は0.7J/cm2に設定された。
得られた本比較例2の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例1の場合と同様に測定したところ、Vocが1.306V、Jscが12.72mA/cm2、FFが0.623、そしてEffが8.84%であった。また、実施例1と同様の方法で本比較例2においても光電変換セルの短絡の有無を調べたところ、全50段の光電変換セル中で6つのセルが短絡していた。
本比較例2と比較例1との対比から、W/L<1にすれば、比較例1のW/L=1の場合よりさらにVocとFFが低下して、Effが9%未満の低い値に低下することが分かる。そして、光電変換セルが短絡する確率が高いことが、そのEff低下の原因として考えられる。
図10は、本比較例2の裏面電極層分離溝904の一部の上面を示す光学顕微鏡写真である。この光学顕微鏡写真では、裏面電極層分離溝904において、溝を構成すべきピットの1つが欠落しており、ピット抜けが発生している。すなわち、連続するピット列が一箇所で途切れており、この裏面電極層分離溝904の両側の光電変換セル間で短絡が発生している。本比較例2において、その他の短絡している光電変換セルを調べたところ、ピット抜けの発生、または裏面電極層分離溝をまたぐバリが確認された。すなわち、W/L<1の場合、ピット抜けやバリが発生しやすくて、光電変換セルの短絡に至りやすいと考えられる。
(比較例3)
比較例3においては、実施例2に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。すなわち、比較例3の集積型薄膜太陽電池は、透光性下地層112がないこと、透明電極層としてZnO層に代えてSnO2層を用いたこと、および裏面電極層分離溝形成時のレーザビームのエネルギ密度を0.8J/cm2に変更したことの3点のみにおいて、実施例2と異なっていた。薄膜太陽電池用基板1としてはSnO2電極層12が熱CVD法で形成された市販品を用い、そのヘイズ率は13.2%であり、SnO2電極層のシート抵抗は12.5Ω/□であった。なお、本比較例3における裏面電極層分離溝904を構成する各ピットの平面形状は、実施例2の場合と同じであり、すなわち溝幅方向の最大長W=90μmで溝長手方向の最大長L=50μmであってW/L=1.80であった。
得られた本比較例3の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例1の場合と同様に測定したところ、Vocが1.362V、Jscが11.63mA/cm2、FFが0.722、そしてEffが11.44%であった。また、実施例1と同様の方法で本比較例3においても光電変換セルの短絡の有無を調べたところ、全50段の光電変換セル中で短絡しているセルはなかった。
本比較例3と実施例2との対比から、透光性下地層112上のZnO層の代わりにその下地層を要しないSnO2層を透明電極層12として用いた場合、Jscが低下することによって、Effが低下することが分かる。この原因として、下地層上のZnO層の代わりに下地層を要しないSnO2層を透明電極層として含む薄膜太陽電池用基板ではヘイズ率が低くなって、光閉じ込め効果が弱くなったことが考えられる。
(比較例4)
比較例4においては、比較例3に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。すなわち、比較例4の集積型薄膜太陽電池は、裏面電極層分離溝904を構成する各ピットの平面形状を変更したことのみにおいて、比較例3と異なっていた。本比較例4における各ピットの平面形状は、比較例2の場合と同であり、すなわち溝幅方向の最大長W=50μmで長手方向の最大長L=80μmであってW/L=0.63であった。
得られた本比較例4の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例1の場合と同様に測定したところ、Vocが1.362V、Jscが11.63mA/cm2、FFが0.722、そしてEffが11.44%であった。また、実施例1と同様の方法で本比較例4においても光電変換セルの短絡の有無を調べたところ、全50段光電変換セル中で短絡しているセルはなかった。
前述のようにZnO透明電極層を用いる実施例2と比較例2との対比では裏面電極層分離溝904を構成する各ピットの平面形状においてW/L>1の場合に比べてW/L<1の場合に著しくEffが低下するが、SnO2透明電極層を用いる本比較例4と比較例3との対比ではW/L>1の場合に比べてW/L<1の場合であってもVoc、Jsc、およびFFがほぼ同等であってEffが変化しないことが分かる。これは、透明電極層12がSnO2の場合では、裏面電極層分離溝904の形成時にそのSnO2透明電極層12がダメージを受けにくく、レーザビームのエネルギ密度を0.7J/cm2から0.8J/cm2へ高く変更できたからであると考えられる。
(実施例3)
本発明のさらなる実施例3においても、実施例1に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。すなわち、実施例3の集積型薄膜太陽電池は、裏面電極層分離溝904を構成する各ピットの平面形状を変更したことのみにおいて、実施例1と異なっていた。本実施例3における各ピットの平面形状は溝長手方向に短軸を有する横長楕円形であって、溝幅方向の最大長W=110μmで溝長手方向の最大長L=35μmに設定された。すなわち、W/L=3.14であり、各ピットの面積は3.0×10-92であった。隣接するピットが溝長手方向に重なる最大長さdはLの20%にされ、レーザビームのエネルギ密度は0.7J/cm2に設定された。
得られた本実施例3の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例1の場合と同様に測定したところ、Vocが1.326V、Jscが12.52mA/cm2、FFが0.711、そしてEffが11.82%であった。また、実施例1と同様の方法で本実施例3においても光電変換セルの短絡の有無を調べたところ、全50段の光電変換セル中で短絡しているセルはなかった。
本実施例3と実施例2との対比から、裏面電極層分離溝904を構成する各ピットにおいてW/Lを1.80からさらに増加して3.14にしても、なお11.5%以上の高いEffが得られることが分かる。
(実施例4)
本発明のさらなる実施例4においても、実施例1に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。すなわち、実施例4の集積型薄膜太陽電池は、裏面電極層分離溝904を構成する各ピットの平面形状を変更したことのみにおいて、実施例1と異なっていた。本実施例4におけるピットの平面形状は溝長手方向に短軸を有する横長楕円形であって、溝幅方向の最大長W=170μmで溝長手方向の最大長L=25μmに設定された。すなわち、W/L=6.80であり、各ピットの面積は3.5×10-92であった。隣接するピットが溝長手方向に重なる最大長さdはLの20%にされ、レーザビームのエネルギ密度は0.7J/cm2に設定された。
得られた本実施例4の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例1の場合と同様に測定したところ、Vocが1.327V、Jscが12.43mA/cm2、FFが0.711、そしてEffが11.73%であった。実施例1と同様の方法で本実施例4においても光電変換セルの短絡の有無を調べたところ、全50段の光電変換セル中で短絡しているセルはなかった。
本実施例4と実施例3の対比から、裏面電極層分離溝904の構成する各ピットにおいてW/Lを3.14からさらに増加して6.80にしても、なお11.5%以上の高いEffが得られることが分かる。
(実施例1〜4および比較例1〜4のまとめ)
図11は、上述の実施例1〜4および比較例1〜4に関して、裏面電極分離溝を構成する各ピットにおけるW/Lに対する集積型薄膜太陽電池のEff(%)の関係を示すグラフである。上述の実施例と比較例から分かるように、このグラフにおいては、各ピットの面積が3.0〜3.5×10-9cm2の範囲内でほぼ一定に維持され、他方でW/Lは種々に変化させられている。
図11から明らかなように、ZnOを透明電極層に用いた場合は、W/Lを増加させれば急激にEffが向上し、W/L>1にすることによってEffが10.5%以上の比較的高い値に増加している。さらに、W/Lが1.25以上7.2以下の範囲において、11.5%以上の高いEffが得られていることが分かる。すなわち、ZnOを透明電極層に用いた集積型太陽電池において、W/L>1にすることが好ましく、W/Lを1.25以上7.2以下にすることがより好ましいことが理解されよう。なお、図11においてW/Lに関してEffは極大値を有しており、約1.8のW/LにおいてEffが最大となっている。
他方、比較例3と4におけるようにSnO2の透明電極層を用いた場合、W/L>1の比較例3とW/L<1の比較例4との間でEffがほぼ同等であって有意な差異が認められない。また、比較例3と4とにおいて、Voc、Jsc、およびFFに関しても有意な差異が存在しない。したがって、裏面電極分離溝を構成する各ピットに関するW/Lが集積型薄膜太陽電池のEffに与える効果は、ZnOを透明電極層に用いた場合に特有の効果であることが理解されよう。
(実施例5)
本発明の実施例5においては、実施例2に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。すなわち、実施例5の集積型薄膜太陽電池は、裏面電極層分離溝904に加えて、半導体層分離溝905を構成する各ピットにもW/L>1の条件を適用したことのみにおいて、実施例2と異なっていた。より具体的には、本実施例5において、半導体層分離溝905を構成する各ピットの平面形状は図1に示すように溝長手方向に短軸を有する横長楕円形であって、溝幅方向の最大長W=90μmで溝長手方向の最大長L=50μmに設定された。すなわち、W/L=1.80であり、各ピットの面積は3.5×10-92であった。隣接するピットが溝長手方向に重なる最大長さdはLの20%にされ、レーザビームのエネルギ密度は0.7J/cm2に設定された。
得られた本実施例5の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例1の場合と同様に測定したところ、Vocが1.345V、Jscが12.80mA/cm2、FFが0.717、そしてEffが12.34%であった。実施例1と同様の方法によって本実施例5においても光電変換セルの短絡の有無を調べたところ、全50段の光電変換セル中で短絡しているセルはなかった。
本実施例5と実施例2との対比から、裏面電極層分離溝904に加えて、半導体層分離溝905を構成する各ピットとにもW/L>1の条件を適用することによって、Effが12.00%から12.34%へさらに向上することが分かる。
(実施例6)
本発明の実施例6においては、実施例5に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。すなわち、実施例5の集積型薄膜太陽電池は、裏面電極層分離溝904および半導体層分離溝905に加えて、透明電極層分離溝903を構成する各ピットにもW/L>1の条件を適用したことのみにおいて、実施例5と異なっていた。より具体的には、本実施例6において、透明電極層分離溝903を構成する各ピットの平面形状は図1に示すように溝長手方向に短軸を有する横長楕円形であって、溝幅方向の最大長W=90μmで溝長手方向の最大長L=50μmに設定された。すなわち、W/L=1.80であり、各ピットの面積は3.5×10-92であった。隣接するピットが溝長手方向に重なる最大長さdはLの20%にされ、レーザビームのエネルギ密度は13J/cm2に設定された。
得られた本実施例6の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例1の場合と同様に測定したところ、Vocが1.345V、Jscが12.83mA/cm2、FFが0.722、そしてEffが12.45%であった。実施例1と同様の方法によって本実施例6においても光電変換セルの短絡の有無を調べたところ、全50段の光電変換セル中で短絡しているセルはなかった。
本実施例6と実施例2および5との対比から、裏面電極層分離溝904および半導体層分離溝905に加えて、透明電極層分離溝903を構成する各ピットにもW/L>1の条件を適用することによって、Effが12.00%または12.34%から12.45%へさらに向上することが分かる。
(実施例7)
実施例7においては、隣り合うピットが溝長手方向に重なる最大長さdと各ピットの溝長手方向の最大長さLとの比d/Lが溝幅に及ぼす影響に関して、計算によって検討された。その計算において、図11で最も高いEffを有する実施例2のピットに関するW=90μm、L=50μm、およびW/L=1.80の条件が仮定された。
本実施例7では、d/Lとの関係において分離溝の最小幅Vが求められた。この最小幅Vは、隣接するピット間の境界部における溝のくびれ部の幅に相当する。ピットの平面形状である楕円の中心を原点として、x軸を溝幅方向にしてy軸を溝長手方向にすれば、隣接する楕円の交点のy座標は、次式(1)で表される。
y=L/2−d/2 式(1)
ここで、媒介変数θを用いれば、y座標は次式(2)で表され得る。
y=(L/2)×sinθ 式(2)
式(1)と(2)は等しいので、次式(3)が得られる。
L/2−d/2=(L/2)×sinθ 式(3)
この式(3)から、次式(4)が得られる。
θ=arcsin{(L−d)/d} 式(4)
他方、隣接する楕円の交点のx座標は正負2つあって、次式(5)で表され得る。
x=(W/2)×cosθ、x=−(W/2)×cosθ 式(5)
式(3)、(4)、および(5)から、Vは次式(6)で表され得る。
V=(W/2)×cosθ−{−(W/2)×cosθ}
=Wcosθ
=Wcos(arcsin{(L−d)/d}) 式(6)
図12は、d/Lに対するVの関係を表すグラフである。このグラフから分かるように、d/Lの増加にともなって、Vは増加して徐々に飽和する傾向を示す。図8から図10に示した顕微鏡写真におけるバリやピット抜けの大きさから、Vは最低でも30μmは必要と考えられる。図12のグラフにおいて、Vを30μmにするためには、d/Lを6%以上にする必要があることが分かる。
(実施例8)
実施例8においては、隣り合うピットが溝長手方向に重なる最大長さdとピットの溝長手方向の最大長さLとの比d/LがZnO透明電極層に与える影響に関して、計算によって検討された。その計算において、ピットの重なり長さの合計Σdと分離溝の全長Yとの比Σd/Yを計算により求めた。レーザビームスの走査が1パルスごとに進む距離は(L−d)なので、分離溝1本あたりのパルス数をnとすれば、次式(7)と(8)が得られる。
Y=(L−d)×n 式(7)
Σd=d×n 式(8)
したがって、式(7)と(8)から、次式(9)が得られる。
Σd/Y=d/(L−d) 式(9)
図13は、d/L(%)に対するΣd/Y(%)の関係を表すグラフである。このグラフにおいて、d/Lの増大に伴って、Σd/Yは傾きを増大しながら増加している。隣接するピットが重なる部分においては、レーザビームが2回照射されるので、ZnO透明電極層に与えるダメージが大きいと考えられる。このようなダメージを軽減するために、ピットが重なる部分は分離溝全長の半分以下にすることが望まれ、すなわちΣd/Yは50%以下であることが望まれる。そして、図13のグラフから、Σd/Yを50%以下にするためには、d/Lを33%以下にする必要があることが分かる。
(実施例9)
実施例9においても、実施例1に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。すなわち、シリコン複合層からなる中間透過反射層6の膜厚を70nmとし、結晶質光電変換ユニット3の真性結晶質シリコン層32の膜厚を2.9μmとし、そして裏面電極層分離溝の製造方法と構造を変更したことの3点のみにおいて実施例1と異なっていた。
透明絶縁基板11上に、ZnO透明電極層12、非晶質シリコン光電変換ユニット2、中間透過反射層6、結晶質シリコン光電変換ユニット3、および裏面電極層4を順次形成することによって、図6に示すような積層型薄膜太陽電池が作製された。ただし、この薄膜太陽電池は、レーザスクライブを利用することによって、図15に示すような集積型薄膜太陽電池901として作製された。本実施例9の集積型薄膜太陽電池901においては、50段の光電変換セルが直列接続された。
裏面電極層4を形成した後、YAGレーザの第二高調波(波長532nm)を用いるレーザスクライブによって、前方光電変換ユニット2、中間透過反射層6、後方光電変換ユニット3、および裏面電極層4を貫通する裏面電極層分離溝9040を形成した。まず、第1レーザビーム71を溝の長手方向を短軸とする横長楕円形(溝幅方向の最大長約70μm、溝長手方向の最大長約50μm)の照射領域Mに照射し、図14に示すように溝幅方向の最大長70μm、溝長手方向の最大長50μmの第1種楕円形状ピット9043が所定ピッチで連なった第1種ピット列9044が得られた。すなわち、この第1種ピット列9044の極大幅Wmは約70μmであった。この際に、第1レーザビーム71のエネルギ密度は0.7J/cm2に設定され、加工速度は600mm/sに設定された。
その後、逆バイアス処理を行なったところ、リーク電流が許容値を超えて不合格となったセルが2つ存在していた。そして、これら不合格になった2つのセルに接する裏面電極層分離溝だけについて、第2レーザビーム72が付加的に照射された。この際に、第1レーザビームの照射領域Mに対して第2レーザビームの照射領域Nが部分的に重なるように、溝の長手方向を短軸とする横長楕円形(溝幅方向の最大長約70μm、溝長手方向の最大長約50μm)の照射領域Nの中心がその最近接の半導体層分離溝905から遠ざかる方向へ照射領域Mの中心から約35μmだけ変位させられていた。こうして、図14に示すように、第2種ピット9045が所定ピッチで連なった第2種ピット列9046が得られた。なお、第2レーザビーム72のエネルギ密度は0.7J/cm2に設定され、加工速度は600mm/sに設定された。第2種ピット列9046の溝幅方向の極大長Wnは、第1種ピット列9044との重複によって縮小されていて41μmであった。そして、裏面電極層分離溝9040の極大幅Woは105μmであって、Wo/Wmは1.5であった。
第2レーザビームの照射前に不合格であった2つのセルについて、第2レーザビームの照射後に再び逆バイアス処理したところ、それら2つのセルのいずれにおいてもリーク電流が許容値以下となり、両セルとも合格と判定された。
こうして得られた本実施例9の集積型薄膜太陽電池にエアマス(AM)1.5の光を100mW/cm2の光強度で照射して出力特性を測定したところ、1セルの1cm2あたりに開放電圧(Voc)が1.364V、短絡電流密度(Jsc)が13.49mA/cm2、曲線因子(FF)が0.734、そして変換効率(Eff)が13.50%であった。また、本実施例9において集積型薄膜太陽電池を100個作製したところ、12%以上のEffを有する集積型薄膜太陽電池の歩留りは94%であった。
この実施例9の集積型薄膜太陽電池の裏面側を樹脂封止する前に、カーブトレーサを用いて各光電変換セルのリーク電流と短絡の有無を調べたところ、全50段の光電変換セル中で短絡やリーク電流を生じているセルはなかった。
また、蛍光灯の光を約10mW/cm2の強度で照射して、テスターで各光電変換セルの出力電圧(Vfl)を測定しところ、Vflは蛍光灯の光量分布によって少しばらつくが、本実施例9ではいずれのセルにおいても0.8V以上のVflが得られた。すなわち、短絡やリーク電流が少ない正常な光電変換セルは0.8V以上のVflを有すると判断でき、逆にVflが0.8V未満の光電変換セルはリーク電流が大きいと判断できる。光電変換セルに含まれる光電変換ユニットの種類や積層数が変わらなければ正常なセルのVflもほぼ変化しないので、Vflによって簡易にセルの検査を行なうことができる。
本実施例9においては、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、集積型薄膜太陽電池の断面SEM像の撮影と組成分析をも行なった。組成分析には、SEMに付属のエネルギ分散型X線分光器(EDX)を用いた。
図23は断面SEM像を示しており、図15中の楕円領域2Rに対して左右を反転した関係にある。すなわち、図23中の左側の段差部が、図15中の裏面電極層分離溝9040の右側壁に相当する。図23から、裏面電極層分離溝の壁面は滑らかであって、大きな残渣が存在していないことが分かる。
表1は図23中の測定点006、007、および009におけるEDX分析の結果を示している。裏面電極層分離溝の側壁上のZn濃度は、測定点006において2.5原子%、測定点007において0.95原子%、そして測定点009において0.46原子%である。透明電極層12のダメージに由来する残渣Eが存在すれば裏面電極層分離溝の壁面上でZnが検出されるはずであるが、本実施例9においては最大でもZnは2.5原子%しか検出されなかった。したがって、本発明によって裏面電極層分離溝の壁面におけるZn含有残渣の発生が抑制されていることが分かる。なお、図23中の測定点008はSi半導体層内の位置に対応している。
(実施例10)
実施例10においても、実施例9に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。すなわち、裏面電極層分離溝を第1レーザビームのみで形成したことのみにおいて、実施例9と異なっていた。本実施例10における裏面電極層分離溝9040は、溝幅方向最大長70μmで溝長手方向最大長50μmの楕円形ピット9041が所定ピッチで連なることによって形成され、その極大幅は70μmであった。この実施例10において作製された集積型薄膜太陽電池において逆バイアス処理を行なったところ、2つのセルが不合格であると判定された。
この逆バイアス処理後に実施例10の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例9の場合と同様に測定したところ、Vocが1.325V、Jscが13.57mA/cm2、FFが0.729、そしてEffが13.11%であった。また、実施例9の場合と同様に本実施例10においてもVfl測定によってリーク電流および短絡の有無を調べたところ、全50段の光電変換セル中にリーク電流が大きい2つのセルが存在していた。なお、本実施例10において集積型薄膜太陽電池を100個作製したところ、12%以上のEffを有する集積型薄膜太陽電池の歩留りは78%であった。
本実施例10において、Vflが0.8V未満の光電変換セルを切り出して、実施例9の場合と同様に断面SEM像の撮影とEDX分析を行なった。図24は、この実施例10における断面SEM像を示しており、裏面電極層分離溝の壁面に大きな残渣(測定点001の位置)が認められる。
表2は図24中の測定点001、002、および004におけるEDX分析の結果を示している。裏面電極層分離溝の側壁上のZn濃度は、測定点001において21.44原子%、測定点002において13.79原子%、そして測定点004において1.25原子%である。すなわち、実施例10では、裏面電極層分離溝の壁面上に最大で21.44原子%のZnが検出された。このことから、実施例10においてVflが低くてリーク電流の大きい光電変換セルに接している裏面電極層分離溝の壁面には、レーザビームによる透明電極層ダメージに由来するZn含有残渣が付着していることが分かる。また、測定点001と測定点002においてZnとOの原子濃度比が1:1でないので、透明電極層の材料であるZnOから変質した物質が残渣Eとして付着していることが分かる。なお、図24中の測定点003はSi半導体層内の位置に対応している。
実施例9と比較すれば、本実施例10ではVocとFFが減少してEffが低下している。より具体的には、実施例9では13.50%の高いEffが得られているが、本実施例10ではEffが13.11%に低下している。換言すれば、実施例9では裏面電極層分離溝において第1種ピット列に加えて部分的に第2種ピット列も形成されたので、実施例10に比べて実施例9では発電面積ロスによってJscがやや減少しているが、VocとFFの増加率が大きいのでEffが向上していることが分かる。また、Effが12%以上の集積型薄膜太陽電池の歩留まりに関しては、実施例9における94%に比べて、本実施例10では上述のように78%に低下している。
(実施例11)
実施例11においても、実施例9に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。すなわち、本実施例11は、実施例9に比べて、第1レーザビームと第2レーザビームが複数の裏面電極層分離溝の全てにおいて照射されたれたことにおいてのみにおいて異なっていた。本実施例11において、第1レーザビームを用いて裏面電極層分離溝が形成された集積型薄膜太陽電池に逆バイアス処理を行なったところ、3つのセルが不合格であると判定された。
この逆バイアス処理後に、実施例11の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例9の場合と同様に測定したところ、Vocが1.300V、Jscが13.71mA/cm2、FFが0.712、そしてEffが12.69%であった。
その後、第2レーザビームが複数の裏面電極層分離溝の全てにおいて照射されたれた。すなわち、本実施例11における全ての裏面電極層分離溝に対して、実施例9における第1レーザビームと第2レーザビームの両方が照射された。そして、逆バイアス処理を再度行なったところ、6つのセルが不合格であった。
本実施例11において、第2レーザビームの照射後に、集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例9の場合と同様に測定したところ、Vocが1.286V、Jscが13.58mA/cm2、FFが0.665、そしてEffが11.60%であった。
また、本実施例11による集積型薄膜太陽電池を100個作製したところ、12%以上のEffを有する集積型薄膜太陽電池の歩留りは53%であった。
実施例9および実施例10と比較すれば、本実施例11においてはVoc、Jsc、およびFFが減少して、Effが実施例10に比べても低い11.66%に低下していることが分かる。また、集積型薄膜太陽電池の歩留りに関しても、本実施例11では実施例10に比べても低下している。すなわち、全ての裏面電極層分離溝に第2レーザビームを付加的に照射した本実施例11では、第1レーザビームのみを用いて全ての裏面電極層分離溝を形成した実施例10に比べてもEffおよび歩留まりが低下することが分かった。
(実施例12)
実施例12においても、実施例9に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。具体的には、本実施例12は、実施例9に比べて、第1レーザビームと第2レーザビームが複数の裏面電極層分離溝の全てにおいて照射されたれたことと、第1レーザビームのエネルギ密度が0.9J/cm2に増大されたことのみにおいて異なっていた。すなわち、本実施例12では、第1レーザビームのエネルギ密度を高くすることによって、それが裏面電極層分離溝における電流リークに及ぼす影響が調べられた。そして、本実施例12においても、実施例9の場合と同様に蛍光灯の光の照射下で各セルの出力電圧(Vfl)が測定された。
図25のグラフは、第1レーザビームの照射のみで裏面電極層分離溝を形成した後における蛍光灯光照射下のセルの出力電圧をVfl1とし、かつ付加的な第2レーザビームの照射後における蛍光灯光照射下のセルの出力電圧Vfl2として、Vfl1に対する出力電圧の増加(Vfl2−Vfl1)を全50段のセルに関して示している。このグラフでは、セルのVfl1の増大に伴って(Vfl2−Vfl1)がほぼ単調に減少し、Vfl1が約0.6V以上において(Vfl2−Vfl1)が負の値になっている。
図25のグラフから、第1レーザビームの照射のみで裏面電極層分離溝を形成した後において十分大きいVflを有するセルに関しては、第2レーザビームの付加的照射によって出力電圧Vflが却って減少することが分かる。すなわち、第1レーザビーム照射によって良好な裏面電極層分離溝が形成されている場合には、第2レーザビームの付加的照射を行なわない方がよいと言える。逆に、Vfl1が約0.6V未満のセルでは(Vfl2−Vfl1)が正の値になっているので、第2レーザビームの付加的照射によって裏面電極層分離溝における電流リークが抑制されていると言える。特にVfl1が0.3V以下のセルに関してはばらつきの範囲を考慮しても(Vfl2−Vfl1)が常に正になっているので、Vfl1が0.3V以下のセルに接する裏面電極層分離溝には第2レーザビームの付加的照射の望ましいことが分かる。
(比較例5)
比較例5においても、実施例9に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。より具体的には、比較例5は、実施例9に比べて、下地層112が省略され、透明電極層12がSnO2で形成され、そしてp型層21が厚さ15nmのp型非晶質シリコンカーバイド層のみで形成されたことのみにおいて異なっていた(図6参照)。
透明絶縁基板11とその上の透明電極層12としては、市販品であるガラス基板とその上のSnO2電極層が用いられた。SnO電極層における厚さは約0.8μmでシート抵抗は13.1Ω/□であり、ガラス基板とSnO2電極層の光透過に関するヘイズ率は14.7%であった。
本比較例5における裏面電極層分離溝の形成においても、第1レーザビームの照射によって実施例9の場合と同様の第1種ピット列9044が得られた。その後、逆バイアス処理を行なったところ、リーク電流が許容値を超えて不合格となったセルは1つであった。そして、その不合格のセルに接する裏面電極層分離溝のみにおいて、第2レーザビームの付加的照射が行なわれた。この第2レーザビームの照射によって、実施例9の場合と同様の第2種ピット列9046が本比較例5においても得られた。
第1レーザビーム照射後では不合格であったセルにおいて、第2レーザビームの付加的照射後に再び逆バイアス処理したところ、リーク電流が許容値以下となって合格と判定された。
得られた本比較例5の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例9の場合と同様に測定したところ、Vocが1.380V、Jscが13.14mA/cm2、FFが0.711、そしてEffが12.89%であった。また、実施例9の場合と同様にVflの測定によってリーク電流および短絡の有無を調べたところ、本比較例5において全50の光電変換セル中にリーク電流が大きいセルは存在しなかった。
本比較例5と実施例9の比較において、透明電極層12の材料をZnOからSnO2に変更したことに起因して、JscとFFの減少によってEffが低くなっている。しかし、透明電極層12にSnO2を用いた場合にも、裏面電極層分離溝の形成にともなうリーク電流および短絡を抑制することができ、本発明は透明電極層12の材料にかかわらす効果的であることが分かる。
(実施例13)
実施例13においては、実施例10に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。より具体的には、本実施例13は、実施例10に比べて、裏面電極層分離溝を形成する際の第1レーザビームの楕円状照射領域Mの長軸長が70μmから90μmに変更され、かつ樹脂封止が省略されたことのみにおいて異なっていた。そして、裏面電極層分離溝は、短軸長が50μmで長軸長が90μmの横長の楕円形ピットが連なって形成され、その溝の極大幅は90μmであった。
本実施例13において、第1レーザビーム照射で裏面電極層分離溝を形成した後に逆バイアス処理を行なったところ、4つのセルが不合格であった。
得られた本実施例13の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例9の場合と同様に測定したところ、Vocが1.306V、Jscが13.47mA/cm2、FFが0.726、そしてEffが12.77%であった。
また、本実施例13においても実施例9の場合と同様にVflの測定によってリーク電流および短絡の有無を調べたところ、全50のセル中でリーク電流の大きいセルが4つ存在していた。特に、それら4セル中の1セルにおいては、Vflが0Vであって、完全に短絡していた。
そこで、短絡しているセルの裏面電極層分離溝を顕微鏡で観察したところ、図18に示すように、ピットが欠落している「ピット抜け」が1箇所で見つかった。この場合、裏面電極分離溝の両側のセル間で短絡していることが分かる。このピット抜けは、レーザビームの経路中におけるごみなどの異物の付着によってレーザビームが偏倚、散乱、または遮蔽などされたために発生したと考えられる。
(実施例14)
本発明の実施例14では、実施例13の集積型薄膜太陽電池中で不合格だった4つのセルに接する裏面電極層分離溝のみにおいて、さらに第2レーザビームが付加的に照射された。
この際に、第1レーザビームの照射領域Mに対して第2レーザビームの照射領域Nが部分的に重なるように、短軸長が50μmで長軸長が90μmの横長楕円形の照射領域Nの中心がその最近接の半導体層分離溝905から遠ざかる方向へ照射領域Mの中心から約45μmだけ変位させられていた。こうして、形成された第2種ピットの溝幅方向の極大長Wnは、第1種ピット列との重複によって縮小されていて90μmであった。そして、裏面電極層分離溝の極大幅Woは135μmであって、Wo/Wmは1.5であった。
第2レーザビームの照射前に不合格であった4つのセルについて、第2レーザビームの照射後に再び逆バイアス処理したところ、それら4つのセルのいずれにおいてもリーク電流が許容値以下となり、いずれのセルも合格と判定された。
得られた本実施例14の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例9の場合と同様に測定したところ、Vocが1.334V、Jscが13.35mA/cm2、FFが0.743、そしてEffが13.23%であった。また、本実施例14において、実施例9と同様にVflの測定によってリーク電流および短絡の有無を調べたところ、全50のセル中でリーク電流が大きいセルは存在しなかった。
図19の顕微鏡写真は、実施例13の裏面電極層分離溝中のピット抜け位置に関して、本実施例14において第2レーザビームが照射された後の状態を示している。この図19において、付加的な第2レーザビーム照射で形成された第2種ピット列によって、第1種ピット列中のピット抜けに起因して裏面電極層が切れ残っていた部分が分離されて、溝幅方向の短絡が改修されていることが分かる。そして、実施例13に比べて、本実施例14では、VocとFFが増加してEffが向上していることが分かる。すなわち、本発明は、裏面電極層分離溝の深さ方向のリークや短絡の抑制だけでなく、溝幅方向のリークや短絡の抑制にも効果があることが分かる。
(実施例15)
本発明の実施例15においては、実施例9に類似した複数の集積型薄膜太陽電池を作製して、裏面電極層分離溝の幅方向の極大長Woと第1種ピット列の幅方向の極大長Wmとの比Wo/Wmの望ましい条件が調べられた。より具体的には、本実施例15では、実施例9に類似の集積型薄膜太陽電池の複数を作製し、実施例9の場合と同様の方法でVflを測定することによって、リーク電流が大きくてVflが0.6V未満のセルが選定された。それらの選定された光電変換セルに接する裏面電極層分離溝に関して、Wo/Wmが種々の値になるように照射領域Nを調整して第2レーザビームを付加的に照射し、その後にVflの増加率ΔVfl=100×(Vfl2−Vfl1)/Vfl1[%]が測定された。
すなわち、本実施例15における複数の集積型薄膜太陽電池は、実施例9に比べて、第2レーザビームが付加的に照射された裏面電極層分離溝においてWo/Wmが種々に変更されていることのみにおいて異なっていた。なお、形成された裏面電極層分離溝において、第1レーザビームのみが照射された領域における溝幅の極大長は第1種ピット列の幅の極大長Wmに略一致し、第1レーザビームに加えて第2レーザビームも付加的に照射された領域の溝幅の極大長はWoに一致している。
図20は、ΔVflに対するWo/Wmの影響を示すグラフである。このグラフ中の各測定値点は、測定サンプル数3以上に関する平均値を示している。図20のグラフにおいて、ΔVflはWo/Wmの増大に伴って増大してWo/Wm=1.6付近で極大値を有し、Wo/Wmのさらなる増大に伴って減少している。すなわち、10%以上の高いΔVflを得るためには、Wo/Wmを1.15以上1.8以下の範囲内に設定することが望まれる。また、Wo/Wmを1.2以上1.7以下の範囲内に設定することは、14%以上のΔVflが得られるのでより望ましい。
(実施例16)
本発明の実施例16では、実施例9に類似した複数の集積型薄膜太陽電池を作製し、裏面電極層分離溝の形成の際における第1レーザビームのエネルギ密度E1と第2レーザビームのエネルギ密度E2との比E2/E1[%]の望ましい条件が調べられた。より具体的には、本実施例16は、実施例15に比べて、Wo/Wmを1.6に固定した状態でE2/E1を種々に変化させてΔVflを測定したことのみにおいて異なっていた。
図21は、ΔVflに対するE2/E1の影響を示すグラフである。このグラフ中の各測定値点も、測定サンプル数3以上に関する平均値を示している。図21のグラフにおいて、E2/E1が100%から減少するに伴ってΔVflが増大している。これは、E1に比べてE2を小さくすることが望ましいことを意味している。また、E2/E1を44%以上95%以下の範囲内に設定することは、20%以上のΔVflが得られるので望ましい。
(実施例17)
本発明の実施例17では、実施例9に類似の複数の集積型薄膜太陽電池を作製し、裏面電極層分離溝の単位長さあたりにおける第1レーザビームの照射回数(パルス数)P1と第2レーザビームの照射回数P2との比P2/P1の望ましい条件が調べられた。より具体的には、本実施例17は、実施例15に比べて、Wo/Wmを1.6に固定した状態でP2/P1を種々に変化させてΔVflを測定したことのみにおいて異なっていた。P2/P1を変化させるためには、裏面電極層に対する第2レーザビームの相対的走査速度を変化させた。より具体的には、第1レーザビームに比べて、第2レーザビームの走査速度を種々に減少させた。
図22は、ΔVflに対するP2/P1の影響を示すグラフである。このグラフ中の各測定値点も、測定サンプル数3以上に関する平均値を示している。図22のグラフから分かるように、P2/P1を1より大きく設定することによって、良好なΔVflが得られている。すなわち、単位長さあたりにおける第2レーザビームの照射回数は、第1レーザビームに比べて多く設定することが望ましい。また、P2/P1を1より大きくすることによって、裏面電極層分離溝における残渣や切れ残りの欠陥の発生を抑制し得る確率が高まると言える。なお、P2/P1が1より大きい場合には、単位長さあたりにおいて第1レーザビームで形成された第1種ピット数に比べて、第2レーザビームで形成された第2種ピット数が多くなることは言うまでもない。
図22に示されているように、P2/P1が1より大きい範囲で増大させれば、ΔVflは極大値と極小値を繰返しながら増大する。より具体的には、ΔVflが極小値を示す時には、P2/P1の値が整数のときである。すなわち、単位長さあたりにおいて、第1種ピットに比べて、第2種ピットの個数が整数倍になっている場合である。
P2/P1が整数のときにΔVflが極小値になる理由は、以下のように考えることができる。すなわち、第1レーザビームで形成された互いに隣接する第1種ピット間の境界において第1種ピット列の幅が極小になる狭幅部が形成され、この部分において残渣や切れ残りの不良が発生しすい。P2/P1が整数の場合、第2レーザビームで形成された互いに隣接する第2種ピット間の境界における狭幅部も、第1種ピット列の狭幅部と同じ位置に生じ得る。したがって、第1レーザビーム照射において残渣が存在しやすい位置と、第2レーザビーム照射において残渣が生じやすい位置が一致して、裏面電極層分離溝中の残渣が完全には除去しきれないと考えられる。換言すれば、P2/P1が整数になることを避けることによって、残渣Eがより有効に除去され得ると言える。
なお、本実施例17ではP2/P1を変更するために第2レーザビームの走査速度を減少させたが、その代わりに第2レーザビームのパルス周波数を増加させても同様の効果が得られることは言うまでもない。
(実施例18)
本発明の実施例18においても、実施例9に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。より具体的には、本実施例18は、実施例9に比べて、実施例15〜17で求められた望ましい条件としてWo/Wm=1.6、E2/E1=60%、およびP2/P1=1.33に設定されたことのみにおいて異なっていた。
本実施例18において、第1レーザービーム照射のみによって裏面電極層分離溝を形成した後に逆バイアス処理をしたところ、3つのセルが不合格であった。それら3つのセルに接する裏面電極層分離溝において上述の最適条件を満たすように第2レーザビームを付加的に照射したところ、再度の逆バイアス処理において3つのセルとも合格となった。この場合、裏面電極層分離溝の極大幅は112μmであった。
得られた実施例18の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例9の場合と同様に測定したところ、Vocが1.378V、Jscが13.39mA/cm2、FFが0.742、そしてEffが13.69%であった。また、本実施例18においても実施例9と同様にVflの測定によってリーク電流と短絡の有無を調べたところ、全50のセル中にリーク電流が大きいセルは存在しなかった。
すなわち、本実施例18では、Wo/Wn、E2/E1、およびP2/P1を最適化することによってVocとFFが増加してEffが向上し、実施例9と比較しても高い13.69%のEffが得られている。
(実施例19)
実施例19においても、実施例9に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。より具体的には、本実施例19は、実施例9に比べて、第1レーザビームの照射領域Mに対して第2レーザビームの照射領域Nが重ならないように、照射領域Nの中心がその最近接の半導体層分離溝から遠ざかる方向へ照射領域Mの中心から約80μmだけ変位させられたことのみにおいて異なっていた。すなわち、本実施例19では、第1種ピット列と第2種ピット列との間に10μm以上の隙間が生じた。
本実施例19において、第1レーザビームのみで裏面電極層分離溝を形成した後に逆バイアス処理をしたところ、3つのセルが不合格であった。それら3つのセルに接する裏面電極層分離溝において第2レーザビームを付加的に照射したところ、その後の再度の逆バイアス処理において3つのセルとも依然として不合格であった。
得られた本実施例19の集積型薄膜太陽電池の出力特性を実施例9の場合と同様に測定したところ、Vocが1.320V、Jscが13.41mA/cm2、FFが0.712、そしてEffが12.61%であった。また、本実施例19においても実施例9と同様にVflの測定によってリーク電流と短絡の有無を調べたところ、全50のセル中でリーク電流が大きいセルが3つ存在していた。
以上から明らかなように、領域Mと領域Nが全く重ならない本実施例19では、実施例9のみならず実施例10と比べてもEffが低下している。この理由として、本実施例19では領域Mと領域Nが重ならないので、図7中の楕円領域7P内に示されているような残渣Eを除去できなくなることが考えられる。この理由によって、本実施例19では、第2レーザビームを付加的に照射しているにもかかわらず、溝深さ方向の電流リークの抑制に効果が生じなくて、VocとFFを向上させることができないと考えられる。また、第1種ピット列の全幅、第2種ピット列の全幅、および第1種ピット列と第2種ピット列の間の隙間が発電領域として寄与しないので、面積ロスによるJscの減少と抵抗損失の増加によるFFの減少が発生し、その結果としてもEffが低下していると考えられる。
なお、以上のような種々の実施例において、p型層とn型層とを互いに反転されてもよいことが当業者にとって容易に理解されよう。
以上のように、本発明によれば、ZnO透明電極層を含む集積型薄膜太陽電池の光電変換効率、コスト、および歩留まりを改善することができる。
本発明は集積型薄膜太陽電池の製造方法に関し、特にその集積化のための分離溝とその形成方法の改善に関する。
高電圧で高出力を生じ得る大面積の電力用薄膜太陽電池を製造する場合、基板上に形成された薄膜太陽電池の複数個を配線で直列接続して用いるのではなく、歩留りをよくするために、大きな基板上に形成される薄膜太陽電池をパターニングによって複数の光電変換セルに分割し、かつそれらのセルを直列接続して集積化するのが一般的である。特に、ガラス基板側から受光する薄膜太陽電池においては、ガラス基板上の透明導電性酸化物(TCO)電極層の電気抵抗による損失を低減させるために、レーザスクライブによってその透明電極層を複数の短冊状領域に分割し、その短冊状領域の長手方向に直する方向に各セルを直列接続して集積化するのが一般的である。
本発明の集積型薄膜太陽電池においては、透明絶縁基板上に順次積層された透明電極層、1以上の光電変換ユニットを含む半導体層、および裏面電極層が、複数の光電変換セルを形成するように直線状で互いに平行な複数本の透明電極層分離溝、半導体層分離溝、および裏面電極層分離溝によってそれぞれ分割され、かつそれらの複数の光電変換セルが半導体層分離溝を介して互いに電気的に直列接続されており、裏面電極層分離溝の少なくとも一部は所定ピッチで形成された実質的に同形状のピットのつながりによって構成されており、各ピットにおいて溝の幅方向の最大長Wが溝の長手方向の最大長Lより大きく、透明電極層は裏面電極層を切断し得る最小エネルギ密度の3倍以上のエネルギ密度を有するレーザビームで裏面電極層分離溝に含まれるピットを形成した場合に、そのピット内において裏面電極側から白色光を照射して光学顕微鏡で観察され得る暗色の変色部が形成される透明導電材料で形成されていることを特徴としている。なお、透明電極層は、酸化亜鉛が低圧CVD法により形成され。ピット内の暗色の変色部は、その周囲部に比べて凸状になることによって生じ得る。
上述のような集積型薄膜太陽電池を製造する方法においては、各ピットはレーザビームのパルス照射によって形成される。また、酸化亜鉛の透明電極層は、低圧CVD法で形成される。さらに、裏面電極層分離溝に含まれるピットを形成するためのレーザビームのエネルギ密度は、裏面電極層を切断し得る最小エネルギ密度の1.1倍以上2倍以下の範囲内にある。
また、本発明の一実施形態による集積型薄膜太陽電池においても、図6に示されているように、透明絶縁基板11は、透光性基体111と透光性下地層112を含んでいる。透光性基体111には、ガラスや透明樹脂などの板状部材やシート状部材などが用いられ得る。透明絶縁基板11は、薄膜太陽電池5の光入射側に位置することから、より多くの太陽光を透過させて光電変換ユニット2、3に吸収させるために、できるだけ透明であることが好ましい。特に、ガラス基板は、透過率が高くかつ安価であることから、透光性基体111として望ましい。同様の意図から、薄膜太陽電池5の光入射面における光反射ロスを低減させるように、透明絶縁基板11の光入射面に無反射コーティング(図示せず)を施すことが望ましい。なお、透明絶縁基板11は透光性基体111のみで構成されていても使用可能であるが、透光性基体111と透光性下地層112を含むことがより好ましい。なぜならば、透光性下地層112によって、透明電極層の密着性の向上および透明電極層の表面凹を増大させる効果が得られるからである。
透明電極層の材料としては、200℃以下の温度で層形成が可能な材料が好ましい。透明電極層の形成温度が200℃以下の場合、基板に強化ガラスを使うことが可能であり、同じ強度条件でガラス基板を薄くして薄膜太陽電池を軽量化することができる。透明電極層を200℃以下の低温で形成する方法としては、低圧熱CVD法によるZnOの堆積が挙げられる。
透明絶縁基板11上に配置される透明電極層12の材料は、ZnOである。そのドーピング不純物として、B、Al、およびGaの少なくとも1種を含むことが望ましく、特にB原子を2×1019/cm3以上の濃度で含むことが望ましい。また、透明電極層12は、ドーピング不純物のほかに2×1020/cm3以上のH原子を含むことが好ましい。Hを含むZnO層は、200℃以下の低い基板温度における低圧熱CVDによっても、光閉じ込め効果を有する表面凹凸が形成され得るので、薄膜太陽電池用の透明電極層として好適である。なお、本願明細書における基板温度は、基板が成膜装置の加熱部と接している面の温度を意味する。
面電極層分離溝の少なくとも一部は、図1の模式的な平面図に示すように、分離溝の幅方向の最大長Wと長手方向の最大長Lを有する各ピットのつながりによって構成されている。すなわち、W>Lとすることによって、各ピットを形成するエネルギを増加させずに、分離溝の幅を広くすることがでる。そして、隣接するピット間における分離溝のくびれ部の幅を広くすることができるので、溝にバリが残る不良、ピット列が部分的に途切れる不良(ピット抜け)、およびピット列が部分的に曲がる不良(ピット列曲がり)を抑制し、集積型薄膜太陽電池の出力特性、歩留まり、およびコストの改善が可能となる。
本発明による集積型薄膜太陽電池の製造方法において、分離溝はレーザビームをパルス的に照射することによって形成される。レーザ装置としては、容易に市販品を入手し得るYAGレーザを用いることができる。その場合、透明電極層分離溝の形成にはYAGレーザの基本波である波長1064nmのレーザ光を用い、半導体層分離溝および裏面電極層分離溝の形成にはYAGレーザの第二高調波である波長532nmのレーザ光を用いる。レーザビーム照射スポットと基板との相対的位置を変化させながらレーザ光をパルス的に照射することによって、略同形状のピットが一定ピッチで連なった分離溝が形成され得る。
パルスレーザで形成されたピット列中で隣接するピットの境界おいては狭幅部分が形成され、この部分で残渣Eや切れ残りの不良が発生しすい。単位長さあたりの第2レーザビーム照射回数が第1レーザビーム照射回の数整倍である場合、第2レーザビームで形成された隣接する第2種ピット9045の境界の狭幅部分も、第1レーザビームで形成された隣接する第1種ピット9043の境界の狭幅部と同じ位置にくる場合がある。そこで、単位長さあたりの第2レーザビーム照射回数として第1レーザビーム照射回数の整数倍を避けることによって、第1レーザビームの照射スポット位置に対して第2レーザビームの照射スポット位置が溝長手方向にずれるので、残渣Eがより効率的に除去され得る。
(実施例1〜4および比較例1〜4のまとめ)
図11は、上述の実施例1〜4および比較例1〜4に関して、裏面電極分離溝を構成する各ピットにおけるW/Lに対する集積型薄膜太陽電池のEff(%)の関係を示すグラフである。上述の実施例と比較例から分かるように、このグラフにおいては、各ピットの面積が3.0〜3.5×10−9 の範囲内でほぼ一定に維持され、他方でW/Lは種々に変化させられている。
(実施例6)
本発明の実施例6においては、実施例5に類似の集積型薄膜太陽電池が作製された。すなわち、実施例の集積型薄膜太陽電池は、裏面電極層分離溝904および半導体層分離溝905に加えて、透明電極層分離溝903を構成する各ピットにもW/L>1の条件を適用したことのみにおいて、実施例5と異なっていた。より具体的には、本実施例6において、透明電極層分離溝903を構成する各ピットの平面形状は図1に示すように溝長手方向に短軸を有する横長楕円形であって、溝幅方向の最大長W=90μmで溝長手方向の最大長L=50μmに設定された。すなわち、W/L=1.80であり、各ピットの面積は3.5×10-92であった。隣接するピットが溝長手方向に重なる最大長さdはLの20%にされ、レーザビームのエネルギ密度は13J/cm2に設定された。
実施例9および実施例10と比較すれば、本実施例11においてはVoc、Jsc、およびFFが減少して、Effが実施例10に比べても低い11.60%に低下していることが分かる。また、集積型薄膜太陽電池の歩留りに関しても、本実施例11では実施例10に比べても低下している。すなわち、全ての裏面電極層分離溝に第2レーザビームを付加的に照射した本実施例11では、第1レーザビームのみを用いて全ての裏面電極層分離溝を形成した実施例10に比べてもEffおよび歩留まりが低下することが分かった。

Claims (17)

  1. 透明絶縁基板(11)上に順次積層された透明電極層(12)、1以上光電変換ユニット(2、3)を含む半導体層(20)、および裏面電極層(4)が、複数の光電変換セルを形成するように直線状で互いに平行な複数本の透明電極層分離溝(903)、半導体層分離溝(905)、および裏面電極層分離溝(9040)によってそれぞれ分割され、かつそれらの複数の光電変換セルが前記半導体層分離溝を介して互いに電気的に直列接続されている集積型薄膜太陽電池であって、
    前記透明電極層分離溝、前記半導体層分離溝、および前記裏面電極層分離溝の少なくとも一部は所定ピッチで形成された実質的に同形状のピット(9031、9051、9043、9045)のつながりによって構成されており、各前記ピットにおいて前記溝の幅方向の最大長Wが前記溝の長手方向の最大長Lより大きく、
    前記透明電極層は、前記裏面電極層を切断し得る最小エネルギ密度の3倍以上のエネルギ密度を有するレーザビームで裏面電極層分離溝に含まれるピットを形成した場合に、そのピット内において裏面電極側から白色光を照射して光学顕微鏡で観察され得る暗色の変色部が形成される透明導電材料で形成されていることを特徴とする集積型薄膜太陽電池。
  2. 前記透明電極層が酸化亜鉛で形成されていることを特徴とする請求の範囲1に記載の集積型薄膜太陽電池。
  3. W/Lが1.25以上7.2以下の範囲内にあることを特徴とする請求の範囲1または2に記載の集積型薄膜太陽電池。
  4. 隣り合う前記ピットが前記溝の長手方向に重なる最大長dは、Lの6%以上33%以下の範囲内にあることを特徴とする請求の範囲1から3のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池。
  5. 各前記ピットの平面形状が楕円状であることを特徴とする請求の範囲1から4のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池。
  6. 各前記ピットの平面積が3×10-102以上4×10-82以下の範囲内にあることを特徴とする請求の範囲1から5のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池。
  7. 前記ピット内の暗色の変色部はその周囲部に比べて凸状になっていることを特徴とする請求の範囲1から6のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池。
  8. 請求の範囲1から7のいずれかの集積型薄膜太陽電池を製造するための方法であって、各前記ピットはレーザビームのパルス照射によって形成されることを特徴とする集積型薄膜太陽電池の製造方法。
  9. 前記酸化亜鉛の透明電極層が低圧CVD法で形成されることを特徴とする請求の範囲8に記載の集積型薄膜太陽電池の製造方法。
  10. 前記裏面電極層分離溝に含まれる前記ピットを形成するためのレーザビームのエネルギ密度は、前記裏面電極層を切断し得る最小エネルギ密度の1.1倍以上2倍以下の範囲内にあることを特徴とする請求の範囲8または9に記載の集積型薄膜太陽電池の製造方法。
  11. 請求の範囲1から7のいずれかの集積型薄膜太陽電池を製造するための方法であって、
    前記複数本の裏面電極層分離溝を形成すべき全領域に第1レーザビームを照射する工程と、
    前記裏面電極層分離溝の全本数から選択された部分的本数の各溝の少なくとも一部へ付加的に第2レーザビームを照射する工程とを含み、
    前記第1レーザビームの照射領域Mに対して前記第2レーザビームの照射領域Nが部分的に重なるように、前記照射領域Nの中心がその最近接の半導体層分離溝から遠ざかる方向へ前記照射領域Mの中心から変位させられていることを特徴とする集積型薄膜太陽電池の製造方法。
  12. 前記裏面電極層分離溝において、前記第1レーザビームの照射のみで形成された部分の溝幅の極大値に対して、付加的に前記第2レーザビームをも照射されて形成された部分の溝幅の極大値の比が、1.15以上1.8以下の範囲内にあることを特徴とする請求の範囲11に記載の集積型薄膜太陽電池の製造方法。
  13. 前記第1レーザビームに比べて前記第2レーザビームのエネルギ密度が低いことを特徴とする請求の範囲11または12に記載の集積型薄膜太陽電池の製造方法。
  14. 前記第1と第2のレーザビームはパルス状に照射され、前記裏面電極層分離溝の単位長さに関して前記第2レーザビームの照射パルス数が前記第1レーザビームに比べて多いことを特徴とする請求の範囲11から13のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池の製造方法。
  15. 請求の範囲1から7のいずれかに記載の集積型薄膜太陽電池であって、
    前記複数本の裏面電極層分離溝のうちで部分的本数の各溝の少なくとも一部は第1ピッチで連なっている実質的に同形状の第1種ピットの列と第2ピッチで連なっている実質的に同形状の第2種ピットの列とによって構成されており、
    前記第1種ピット列と前記第2種ピット列は溝幅方向において部分的に重なっており、
    前記第1種ピット列の溝幅方向の極大長Wmに比べて前記第2種ピット列の溝幅方向の極大長Wnが小さく、
    前記第2種ピット列の中心線はその最近接の半導体層分離溝から遠ざかる方向へ前記第1種ピット列の中心線から変位させられていることを特徴とする集積型薄膜太陽電池。
  16. 前記第1種ピット列と前記第2種ピット列との両方で構成される溝幅の極大長Woと前記第1種ピット列の溝幅方向の極大長Wmとの比Wo/Wmが1.15以上1.8以下であることを特徴とする請求の範囲15に記載の集積型薄膜太陽電池。
  17. 前記第1種ピット列の前記第1ピッチに比べて前記第2種ピット列の前記第2ピッチが短いことを特徴とする請求の範囲15または16に記載の集積型薄膜太陽電池。
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