本発明は、薄膜光電変換装置用基板の改善およびその改善された基板を含む薄膜光電変換装置の製造方法に関する。
光電変換装置は、受光センサ、太陽電池などの様々な分野で用いられている。なかでも、太陽電池は、地球に優しいエネルギ源の一つとして脚光を浴びている。そして、近年の環境問題に対する関心の高まりと各国における太陽電池の導入加速政策によって、太陽電池の普及が急速に進んでいる。
近年では、光電変換装置の低コスト化と高効率化を両立させるために、原材料が少なくてすむ薄膜光電変換装置が注目され、その開発が精力的に行なわれている。特に、ガラス板などの安価な基体上に低温プロセスを用いて良質の半導体層を形成する方法が、光電変換装置を低コストで実現し得る方法として期待されている。
高電圧で高出力を生じ得る大面積の電力用薄膜光電変換装置を製造する場合、基体上に形成された薄膜光電変換装置の複数個を配線で直列接続して用いるのではなく、歩留りをよくするために大きな基体上に形成された薄膜光電変換ユニット層を複数のセルに分割し、それらのセルをパターニングによって直列接続して集積化するのが一般的である。たとえば、ガラス基体側から光を入射させるタイプの薄膜光電変換装置においては、ガラス基体上の透明電極層の抵抗による電気的損失を低減するために、その透明電極を複数の所定幅の短冊形状に分割する分離溝をレーザスクライブで形成し、それらの短冊形状の長手方向に直交する方向に各セルを直列接続して集積化する。
また、薄膜光電変換装置を形成するためには、その一部に透明電極層を備えることが不可欠である。すなわち、薄膜光電変換装置は、透明電極層と裏面電極層の間に1以上の光電変換ユニットを含んでいる。そして、光は透明電極層側から入射される。透明電極層としては、たとえば、SnO2、ZnOなどの導電性金属酸化物が用いられ、それはCVD、スパッタ、蒸着などの方法で形成される。透明電極層は、微細な表面凹凸を有することによって、入射光の散乱を増大させる効果を有することが望ましい。
光電変換ユニットは、pn接合またはpin接合を含む半導体層で形成されている。光電変換ユニットがpin接合を含む場合、p型層、i型層、およびn型層がこの順、またはその逆順に積層されており、そのユニットの主要部を占めるi型の光電変換層が非晶質のものは非晶質光電変換ユニットと呼ばれ、i型層が結晶質のものは結晶質光電変換ユニットと呼ばれている。半導体層には、シリコン系薄膜として非晶質シリコン層または結晶質シリコン層が用いることができ、また化合物半導体薄膜としてCuInSe2(略称CIS)またはCdTeなどの薄膜が用いられ得る。なお、本願明細書における「結晶質」と「微結晶」の用語は、部分的に非晶質を含んでいるものをも意味する。
シリコン系薄膜光電変換装置に含まれる光電変換ユニットは、p型層、実質的に真性半導体のi型光電変換層、およびn型層で形成されるpin接合を含んでいる。その光電変換ユニットは、i型層が非晶質シリコンである場合に非晶質シリコン光電変換ユニットと称され、i型層が結晶質を含むシリコンである場合に結晶質シリコン光電変換ユニットと称される。なお、非晶質または結晶質のシリコン系材料としては、主要元素としてシリコンのみを含む材料だけでなく、炭素、酸素、窒素、ゲルマニウムなどをも主要元素として含む合金材料をも用い得る。また、導電型層は、必ずしもi型層と同じ主要元素で構成されている必要はなく、たとえば非晶質シリコン光電変換ユニットのp型層に非晶質シリコンカーバイドを用い得るし、n型層に微結晶シリコン(μc−Si層とも呼ばれる)を用いることもできる。
光電変換ユニット上に形成される裏面電極層としては、たとえば、Al、Agなどの金属層をスパッタ法または蒸着法によって形成することができる。一般的には、光電変換ユニットと金属電極層との間に、ITO、SnO2、またはZnOなどの導電性酸化物層が形成される。
ところで、非晶質シリコン薄膜光電変換装置では、単結晶や多結晶のシリコンを利用した光電変換装置に比べて初期光電変換効率が低く、さらに長時間の光照射を受けた場合に光劣化現象によって変換効率が低下するという問題がある。そこで、多結晶シリコンや微結晶シリコンのような結晶質シリコンの薄膜を光電変換層として利用する結晶質シリコン薄膜光電変換装置が、生産の低コスト化と光電変換の高効率化とを両立させ得るものとして期待されて検討されている。なぜならば、結晶質シリコン薄膜光電変換装置は非晶質シリコン薄膜光電変換層の場合と同様に低温のプラズマCVDを利用して形成でき、さらに結晶質シリコン光電変換層はほとんど光劣化現象を生じないからである。また、非晶質シリコン光電変換層が長波長側において800nm程度の波長までの光を光電変換し得るのに対して、結晶質シリコン光電変換層はそれより長い約1200nm程度の波長までの光を光電変換することができる。
さらに、薄膜光電変換装置の変換効率を向上させる方法として、2つ以上の光電変換ユニットを積層して積層型薄膜光電変換装置にすることが知られている。この方法においては、薄膜光電変換装置の光入射側に大きなエネルギバンドギャップを有する光電変換層を含む前方ユニットを配置し、その後ろに順に小さなバンドギャップを有する光電変換層を含む後方ユニットを配置することによって、入射光の広い波長範囲にわたる光電変換を可能にして、装置全体としての変換効率の向上が図られている。積層型薄膜光電変換装置の中でも、非晶質光電変換ユニットと結晶質光電変換ユニットを積層したものはハイブリッド型薄膜光電変換と称される。
上述のような薄膜光電変換装置においては、従来のバルクの単結晶や多結晶のシリコン基板を利用する光電変換装置に比べて光電変換層を薄くすることが可能であるが、光吸収が膜厚によって制限されるという問題がある。そこで、光電変換層を含む光電変換ユニットに入射した光をより有効に利用するために、光電変換ユニットに接する透明電極層または金属層の表面が微細に凹凸化(テクスチャ化)される。すなわち、その微細凹凸界面で光を散乱させた後に光電変換ユニット内へ入射させることによって、光電変換層内での光路を長くして光吸収量を増加させることが意図されている。この表面凹凸(表面テクスチャ)技術は「光閉じ込め」技術とも呼ばれており、高い光電変換効率を有する薄膜光電変換装置を実用化する上で重要な基本的技術となっている。
ここで、薄膜光電変換装置に最適な透明電極層の表面凹凸形状を求めるために、その表面凹凸形状を定量的に代表する指標が望まれる。表面凹凸形状を代表する指標として、ヘイズ率、表面面積比(Sdr)などが知られている。
ヘイズ率とは、透光性板の表面凹凸を光学的に評価する指標であって、(拡散透過率/全光線透過率)×100[%]で表わされる(JIS K7136)。ヘイズ率の測定に関しては、自動測定可能なヘイズメータが市販されており、その測定は容易である。その測定用の光源としては、一般的にC光源が用いられる。
表面面積比は、凹凸の高低差だけでなく、凹凸の形状も含めて代表し得る指標である。透明導電膜の表面凹凸の変動が先鋭化すれば薄膜光電変換装置の開放電圧や曲線因子が低下する場合があるので、表面面積比は薄膜光電変換装置用の透明導電膜の表面凹凸を代表する指標として有効である。表面面積比は、ディベロップト・サーフェス・エリア・レシオ(Developed Surface Area Ratio)とも呼ばれ、その略称としてSdrが用いられる。このSdrは、式1および式2で定義される(K. J. Stout, P. J. Sullivan, W. P. Dong, E. Manisah, N. Luo, T. Mathia: "The development of methods for characterization of roughness on three dimensions", Publication no.EUR 15178 EN of the Commission of the European Communities, Lucembourg, 1994)。
ただし、Ajkは次式2で示される。
ここで、ΔXとΔYはそれぞれX方向とY方向の測定間隔の距離を表わす。
すなわち、Sdrは、平坦なXY平面の面積に対して、表面積が増加した割合を表わす。換言すれば、表面凹凸における高低差が大きくて、凸部が鋭く尖っているほど、Sdrが大きくなる。
従来の非晶質シリコン薄膜光電変換装置では、ガラス板などの透明基体上に形成される透明電極層として、表面凹凸を有する酸化錫(SnO2)膜がしばしば用いられる。この透明電極層の表面凹凸は、光電変換層内への光閉じ込めに有効に寄与している。しかしながら、さらに光閉じ込め効果を高めるためには表面凹凸の増大が望ましいが、SnO2膜単独では、光電変換装置に必要な透光性と導電性を維持したままで表面凹凸形状を顕著に変えることは困難である。
また、光閉じ込めに有効な表面凹凸を有する透明電極層として常圧熱化学的気相堆積法(常圧熱CVD法)によってガラス板上にSnO2膜を形成する場合、その熱CVD法が約550〜650℃の高温プロセスであるので、透明電極層の形成コストが高くなるという問題がある。そして、成膜温度が高い場合に、通常のガラス板やプラスチックフィルムなどの安価な基体を利用することが困難であるという問題がある。また、強化ガラス板を高温プロセスにさらせば、その強化効果が失われてしまう。したがって、高温プロセスにおいてガラス板の基体を大面積太陽電池に適用する場合には、ガラス板の強度を確保するためにその厚さを大きくすることが必要となり、結果としてガラス板が重くなってしまうという問題がある。
さらに、SnO2膜は耐プラズマ性が低いので、光電変換層の堆積環境における水素を含む高プラズマ密度の下では、SnO2膜が還元され得る。そして、SnO2膜は還元されれば黒化するので、その黒化した電極層で入射光が吸収されて光電変換層内への透過光量が減少し、その結果として光電変換効率の低下を招く。
他方、酸化亜鉛(ZnO)は、透明電極層の材料として広く用いられているSnO2または酸化インジウム錫(ITO)よりも安価であり、耐プラズマ性が高いという利点をも有しており、薄膜太陽電池に含まれる透明電極層の材料として好適である。特に、非晶質シリコン層の堆積条件に比べて多量の水素を使用しかつ高いプラズマ密度を必要とする薄膜多結晶シリコン層や微結晶シリコン層のような結晶質シリコン層を光電変換ユニットの一部として含む結晶質シリコン薄膜光電変換装置において、透明電極層の材料として酸化亜鉛(ZnO)を用いることは有効である。
特許文献1の特許3706835号公報においては、低コストで光閉じ込め効果の高い透明電極層を形成するために、ガラス板上に絶縁性微粒子とバインダを含む下地層を設けかつその下地層の80%以上の領域を絶縁性微粒子で占めることによって、下地層上に形成される透明電極層の表面凹凸を増大させることが開示されている。その絶縁性微粒子としては粒径0.1〜1μmのシリカ(SiO
2)が用いられ、バインダとしてはシリコン酸化物が用いられている。より具体的には、ロールコータを用いたゾルゲル法で下地層を形成し、透明電極層としてZnO層をスパッタ法によって形成している。
特許3706835号公報
上述のように、特許文献1においては、透明電極層としてのZnO層がスパッタ法によって堆積されている。しかし、スパッタ法はCVD(化学気相堆積)法に比べて高コストのプロセスであり、またCVD法はスパッタ法に比べて大面積の基体を覆う成膜に適しておりかつ成膜速度が速い。さらに、スパッタ法によって堆積されたZnO層はキャリア密度が過剰な膜になりやすくて、透光度が低い膜になりやすいという問題もある。
このような観点から、本発明者は、特許文献1の発明におけるZnO層をスパッタ法ではなくて低圧熱CVD法で堆積することを試みた。その結果、ガラス板上に絶縁性微粒子とバインダを含む下地層を設けかつその下地層の80%以上の領域を絶縁性微粒子で占める場合に、その下地層上に低圧熱CVD法で堆積されたZnO導電層を含んで作製された薄膜光電変換装置が必ずしも高い光電変換効率を有しないという問題のあることが見出された。
そこで、本発明は、薄膜光電変換装置に含まれるZnO透明電極層が低圧熱CVD法で堆積された基板を提供し、その基板を用いることによってコストおよび光電変換効率が改善された薄膜光電変換装置を提供することを目的としている。
なお、「低圧熱CVD法」の用語は、大気圧より低い圧力の反応ガスを用いたCVD法を意味し、減圧CVD法、ロー・プレッシャー・CVD法(略称:LP−CVD法)とも呼ばれる。また、「CVD」の用語は「プラズマCVD」、「光CVD」などのようにエネルギ源を明示した場合以外に通常では「熱CVD」を意味するので、「低圧CVD法」の用語は「低圧熱CVD法」と同義である。さらに、低圧熱CVD法は、減圧下の有機金属CVD法(略称:MO−CVD法)も抱合することが明らかである。
本発明による薄膜光電変換装置用基板は、透光性基体と、その一主面上に順次積層された透光性下地層と透明電極層とを含み、その下地層は透光性絶縁微粒子と透光性バインダを含み、透光性絶縁微粒子は30%以上80%未満の被覆率で透光性基体の一主面を覆うように分散させられており、透明電極層は低圧CVDによって堆積された酸化亜鉛を含んでいることを特徴としている。なお、透光性絶縁微粒子の平均粒径は、50nm以上200nm以下であることが好ましい。
このような薄膜光電変換装置用透光性基板の透明電極層上に1以上の光電変換ユニットを設けることによって、良好な光電変換特性を有する薄膜光電変換装置を低コストでかつ高い生産効率で得ることができる。その1以上の光電変換ユニットは、非晶質光電変換ユニットを含むことができる。また、その1以上の光電変換ユニットは、結晶質光電変換ユニットを含むこともできる。
薄膜光電変換装置用基板の透明電極層の上に順に積層された1以上の光電変換ユニット層と裏面電極層とを含む薄膜光電変換装置は集積型であり得て、その場合には、透明電極層、光電変換ユニット層、および裏面電極層が複数の光電変換セルを形成するように複数の分離溝によって分離されており、かつそれらの複数の光電変換セルが複数の接続溝を介して互いに電気的に直列接続されている。
本発明によれば、下地層中の透光性絶縁微粒子が30%以上80%未満の被覆率で透光性基体の一主面を覆うように分散させられることによって、その下地上に作製される薄膜光電変換装置のフィルファクタ(FF)や光電変換効率(Eff)を向上させることができる。すなわち、微粒子による被覆率を80%未満に設定することによってそれら微粒子が部分的に多段に積み重なることを抑制でき、かつその被覆率を30%以上に設定することによって光閉じ込めに有効な表面凹凸を有する酸化亜鉛透明電極層を形成し得るとともにその電極層の密着性を向上させることができる。また、絶縁微粒子が部分的に多段に積み重なることを抑制できれば、集積型薄膜光電変換装置の作製時におけるレーザスクライブの不良を抑制することができ、このことによっても集積型薄膜光電変換装置のFFやEffを向上させることができる。
なお、下地層中の透光性絶縁微粒子の平均粒径を50nm以上200nm以下の範囲内に設定することによって、それら粒子による被覆率を30%以上80%未満にすることが容易になる。また、酸化亜鉛透明電極層を低圧CVD法で堆積することによって、微粒子を含む下地層上に好ましい表面凹凸を有するZnO層を容易にかつ高い成膜速度で形成することができる。
前述のように、特許文献1におけるZnO透明電極層をスパッタ法ではなくて低圧CVD法で堆積することを本発明者が試みた。その結果、ガラス板上の下地層の面積に対する微粒子の投影面積割合を「粒子被覆率」と定義すれば、その粒子被覆率が高すぎる場合に、下地層上にスパッタ法ではなくて低圧CVD法で堆積されたZnO透明電極層を含む薄膜光電変換装置の曲線因子(FF)と開放電圧(Voc)が低下して、変換効率(Eff)が低くなることが見出された。
この理由は必ずしも明らかではないが、スパッタ法で堆積したZnO層と低圧CVD法で堆積したZnO層とが互いに異なる膜特性を有していることに関係していると考えられる。すなわち、一般的にはスパッタ法にて堆積された膜は下地の微細な表面凹凸を緩和させた上表面を有する傾向にあるのに対して、低圧CVD法にて堆積された膜は下地の微細な表面凹凸を増大させた上表面を有する傾向にあると考えられる。
また、下地層の粒子被覆率が高すぎれば、微粒子の分布を単層に保つことが困難になり、部分的に微粒子が多段階に積み重なって、相対的に大きくて鋭い凸部が形成されると考えられる。そのように大きな表面凹凸を有する下地層上に低圧CVD法にてZnO透明電極層を堆積すれば、得られる透明電極層も相対的に大きな表面凹凸を有するであろう。
相対的に大きな表面凹凸を有するZnO透明電極層上に半導体層をプラズマCVDで堆積する場合、その透明電極層上における半導体層のカバレッジが不完全になり得るであろう。たとえば、荒い表面凹凸の深い凹部の底において、半導体層の充填が不完全になる可能性がある。他方、荒い表面凹凸の鋭い凸部の先端において、半導体層による被覆が不完全となって、透明電極層と裏面電極との局所的短絡が生じる可能性もある。
さらに、下地層の粒子被覆率が高すぎる場合に、レーザスクライブによって分離された複数のセルが直列接続された構造を有する集積型薄膜光電変換装置においては、そのレーザスクライブが不完全になって、曲線因子(FF)と開放電圧(Voc)が低下して、変換効率(Eff)が低くなることもある。
他方、下地層の粒子被覆率が低すぎれば、ZnO透明電極層の表面凹凸が小さくなって光閉じ込め効果が小さくなる結果として、薄膜光電変換装置の短絡電流密度(Jsc)が低下して、変換効率(Eff)が低くなる。また、下地層の粒子被覆率が低すぎれば、ZnO透明電極層の密着性が低下して、それが剥離しやすくなるという問題を生じる。特に集積型薄膜光電変換装置では、レーザスクライブで形成した分離溝を起点にして透明電極層の剥離が起こりやすい。
以上のような本発明者による詳細な検討に基づいて、本発明の好ましい実施の形態が、以下において図面を参照しつつ説明される。なお、本願の図面において、厚さや幅などの寸法関係は、図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を表してはいない。また、本願の図面において、同一の参照符号は同一部分または相当部を表わしている。
基本的には、薄膜光電変換装置において、透明電極層の表面凹凸を増大させて光閉じ込め効果を増大させることが、光電変換特性の向上のために重要である。すなわち、一般的には、下地層中の微粒子はできるだけ密に詰まっているほうが、光閉じ込め効果が大きくて薄膜光電変換装置の特性が高くなると考えられている。しかし、本発明者の検討によれば、意外にも下地層中の微粒子間にある程度の隙間を設けたときに薄膜光電変換装置の特性が高くなる条件のあることが分かった。具体的には、下地層の粒子被覆率80%未満であって、その下地層上にZnO透明電極層を低圧CVD法で堆積した場合に薄膜光電変換装置の特性が高くなる。
また、光閉じ込めに十分な表面凹凸を有する透明電極層と絶縁基体との密着性を得るためには、下地層の粒子被覆率が高いことが必要であると考えられていた(たとえば特許文献1では粒子被覆率が80%以上)。しかし、本発明者は、下地層の粒子被覆率がかなり低い場合でも、低圧CVD法によるZnO透明電極層の良好な表面凹凸と密着性を実現ができることを見出した。具体的には、下地層の粒子被覆率が30%以上であれば、光閉じ込めに十分表面凹凸を有しかつ良好な密着性を有するZnO透明電極層を低圧CVD法で堆積することができる。
図1は、本発明の一実施形態による薄膜光電変換装置用基板およびその基板を含む薄膜光電変換装置を模式的断面図で示している。この図においては、薄膜光電変換装置用基板1は透明絶縁基体11上に堆積された透明電極層12含んでおり、その基板1上に前方光電変換ユニット2、透光性かつ反射性の中間層6、後方光電変換ユニット3、および裏面電極層4をこの順に積層することによって薄膜光電変換装置5が形成されている。
透明絶縁基体11は、透光性基礎基体111とその上の透光性下地層112とを含んでいる。透光性基礎基体111としては、ガラス板や、透明樹脂から成る板状部材またはシート状部材などが主に用いられる。特に、透光性基礎基体111としてガラス板を用いれば、それが高い透過率を有しかつ安価であるので好ましい。
すなわち、透明絶縁基体11は薄膜光電変換装置5の光入射側に位置するので、より多くの太陽光を透過させて光電変換ユニット2、3に吸収させるために、できるだけ透明であることが好ましい。同様の意図から、太陽光の入射面における光反射ロスを低減させるために、透明絶縁基体11の光入射面上に無反射コーティングを設けることが好ましい。
透光性下地層112は、たとえば溶媒を含んだバインダ形成材料と共に透光性微粒子1121を透光性基礎基体111上に塗布することによって形成することができる。具体的には、透光性のバインダ1122として、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、およびタンタル酸化物などの金属酸化物を利用することができる。また、透光性微粒子1121としては、シリカ(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化インジウム錫(ITO)、またはフッ化マグネシウム(MgF2)などが用いられ得る。
透光性基礎基体111上にコーティング液を塗布する方法としては、ディッピング法、スピンコート法、バーコート法、スプレー法、ダイコート法、ロールコート法、フローコート法などを利用し得るが、透光性微粒子を緻密かつ均一に形成するためにはロールコート法が好ましく用いられ得る。コーティング液の塗布が完了したら、そのコーティング液を直ちに加熱乾燥させる。なお、下地層112において微細な表面凹凸を均一に形成するために、微粒子1121の形状は球状であることが好ましい。
透光性下地層112の粒子被覆率は、30%以上80%未満の範囲内に設定される。すなわち、粒子被覆率を80%未満にすることによって、微粒子1121が局所的に多段に積み重なることを抑制でき、それによって薄膜光電変換装置5のFFとEffを向上させることができるとともに、集積型薄膜光電変換装置の場合にはレーザスクライブの不良を抑制してそのFFとEffを向上させることができる。他方、粒子被覆率を30%以上にすることによって、光閉じ込めに有効な表面凹凸を有する透明電極層12を形成し得るとともに、その透明電極層の密着性が向上する。なお、後述の本発明の実施例で示すように、粒子被覆率44%以上77%以下であれば、集積型ハイブリッドモジュールの変換効率が12.5%以上の高い値を示すのでより好ましい。
本発明者が透光性微粒子1121の平均粒径の影響を実験的に調べたところ、平均粒径が小さければ粒子被覆率が高くなり易く、平均粒径が大きければ粒子被覆率が小さくなり易い。そして、粒子被覆率を30%以上80%未満の範囲内に設定するためには、平均粒径が50nm以上200nm以下の範囲内にあることが好ましく、80nm以上120nm以下の範囲内にあることがより好ましい。
下地層112の粒子被覆率の制御は、コーティング液中の透光性微粒子、バインダ、および溶媒の質量比を調整することによって可能である。このほかに、コーティング液の塗布時の温度、湿度、塗布速度、塗布回数、加熱乾燥条件などによっても粒子被覆率を調整可能である。コーティング液全体に対する微粒子の質量濃度は、0.1%から10%の範囲内にあることが好ましく、1から6%の範囲内にあることがより好ましい。
粒子被覆率は、原子間力顕微鏡(AFM)や走査トンネル顕微鏡(STM)などの走査型顕微鏡、または走査型電子顕微鏡(SEM)で測定することができる。たとえば、AFMを利用して、以下のような手順で粒子被覆率を求めることができる。すなわち、微粒子を含む下地層の表面のAFM像を得て、その表面の高さ分布を反映する3次元データを求める。その表面高さについてヒストグラムを作成し、最も頻度の多い表面高さを平均粒径(d)とする。そして、表面の3次元情報を表示し得るAFM像において、d/2より高い領域(少なくとも1段の粒子によって被覆されている領域を意味し、2段以上に積み重なった粒子によって被覆されている領域をも含む)の面積の割合が粒子被覆率に相当する。本発明では、AFM測定において、Nano−Rシステム(Pacific Nanotechnology社製)のノンコンタクトモードを用いた。
透明絶縁基体11上の透明電極層12の材料としては、ZnOが用いられるる。そのドーピング不純物として、B、Al、およびGaの少なくとも1種を含むことが好ましく、特にB原子を2×1019個/cm3以上の濃度で含むことが好ましい。また、ドーピング不純物のほかに、H原子を2×1020個/cm3以上の濃度で含むことも好ましい。Hを含むZnO層においては、光閉じ込め効果を生じ得る表面凹凸が形成され易いので、薄膜光電変換装置用の透明電極層として好適である。
薄膜光電変換装置用基板1のZnO透明電極層12は、低圧熱CVD法によって200℃以下の堆積温度で形成することができる。なお、この透明電極層12の堆積温度とは、基体11がCVD装置の加熱部と接している面の温度を意味する。
このZnO透明電極層12の堆積では、有機金属蒸気としてのジエチル亜鉛(DEZ)またはジメチル亜鉛、酸化剤蒸気としての水、およびドーピングガスとしてのB2H6が用いられ、希釈ガスとしてのH2、He、およびArの少なくとも1種が加えられ、そうして得られた混合ガスが5〜200Paの圧力下の減圧槽内に導入されることが好ましい。堆積温度は200℃以下であることが好ましく、140度以上170℃以下であることがより好ましい。DEZの流量は10〜1000sccm、水の流量は10〜1000sccm、H2の流量は100〜10000sccm、そしてArの流量は100〜10000sccmにそれぞれ設定される。B2H6は、DEZに対して0.1%〜10%の濃度に設定されることが好ましい。
堆積されるZnO層12としては、概ね50〜500nmの結晶粒径を有しかつ概ね20〜200nmの高低差の表面凹凸を有する薄膜であることが、薄膜光電変換装置の光閉じ込め効果を得る点で好ましい。また、そのZnO層12を含む基板1のヘイズ率は、光閉じ込め効果を得る観点から、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。
ZnO層12のシート抵抗は、抵抗損失を抑制する観点から、15Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることがより好ましい。
ZnO層12の平均厚さは0.7〜5μmであることが好ましく、1〜3μmであることがより好ましい。なぜならば、ZnO膜が薄すぎれば、光閉じ込め効果に有効に寄与するに十分な表面凹凸を生じること自体が困難となり、また透明電極層として必要な導電性が得られにくくなるからである。他方、ZnO膜が厚すぎれば、その膜自体による光吸収に起因して光電変換ユニットへ到達する光量が減り、光電変換効率が低下するからである。また、ZnO膜が厚すぎる場合には、成膜時間の増大によって成膜コストが増大する。
堆積されたZnO層12の表面面積比(Sdr)は、55%以上95%以下であることが望ましい。Sdrが大きすぎる場合には、開放電圧(Voc)と曲線因子(FF)が低下して、変換効率(Eff)が低下する。なお、場合によっては、短絡電流密度(Jsc)が低下して、変換効率(Eff)が低下する。Sdrが大きいときにVocとFFが低下する理由としては、基板1の表面凹凸のレベル変化が鋭角的になって、透明電極層12上のシリコン半導体層のカバレッジが悪くなり、薄膜光電変換装置中の接触抵抗の増加またはリーク電流の増加が生じるからと考えられる。また、Sdrが大きいときにJscが低下する理由としては、透明導電膜12上の半導体層の成長が阻害されて、半導体層の膜質が低下し、その半導体層中のキャリア再結合による損失が多くなるからと考えられる。
他方、Sdrが小さすぎる場合には、基板1の表面凹凸が小さくなるので光閉じ込めの効果が弱くなり、Jscが低下してEffが低下するといえる。ZnO層12の表面面積比は、その成膜条件を制御して最適な値に調整することが可能である。たとえば、低圧熱CVD法において、ZnO層の表面面積比は、堆積温度、原料ガス流量、圧力などの成膜条件に依存して顕著に変わるので、それらの条件を制御して表面面積比を所望の値に調整することが可能である。
前方光電変換ユニット2用に非晶質シリコン系材料を選択すれば、それは約360〜800nmの波長の光に対して感度を有する。他方、後方光電変換ユニット3用に結晶質シリコン系材料を選択すれば、それはより長い約1200nmまでの波長の光に対して感度を有する。したがって、光入射側から非晶質シリコン系材料の前方光電変換ユニット2と結晶質シリコン系材料の後方光電変換ユニット3がこの順で積層されるハイブリッド型薄膜光電変換装置5においては、より広い波長範囲において入射光を有効利用することが可能となる。ここで、「シリコン系」の材料には、シリコンのみならず、シリコンカーバイドやシリコンゲルマニウムなどのようなシリコン合金半導体材料も含まれる。
積層型薄膜光電変換装置の変換効率向上のためには、薄膜光電変換ユニット2、3間において、導電性を有しかつ光電変換ユニット2、3を構成する材料よりも低い屈折率を有する材料からなる中間透過反射層6形成する方法がある。このような中間透過反射層6は、短波長側の光は反射して長波長側の光は透過させる設計が可能であり、薄膜光電変換ユニット2、3の各々によるさらに有効な光電変換が可能となる。
たとえば、前方の非晶質シリコン光電変換ユニット2と後方の結晶質シリコン光電変換ユニット3との間に中間透過反射層6を挿入した場合、非晶質シリコン光電変換層22の膜厚を増やすことなく、その前方ユニット2によって発生する電流を増加させることができる。また、中間透過反射層6を含む場合には、それを含まない場合に比べて、同一の電流値を得るために必要な非晶質シリコン光電変換層22の厚さを小さくし得ることから、非晶質シリコン層の厚さの増加に応じて顕著となる光劣化(Staebler-Wronsky効果)による非晶質シリコン光電変換ユニット2の特性低下を抑制することが可能となる。
中間透過反射層は、前方光電変換ユニットと後方光電変換ユニットの間に挿入されてもよいが、前方光電変換ユニット中の後方導電形層の一部として設けられてもよく、また後方光電変換ユニット中の前方導電形層の一部として設けられてもよい。
前方光電変換ユニット2は、プラズマCVD法によって、たとえばp層、i層、およびn層の順に積層して形成される。具体的には、ボロンが0.01原子%以上ドープされたp型非晶質シリコンカーバイド層21、実質的にi型の非晶質シリコンの光電変換層22、およびリンが0.01原子%以上ドープされたn型微結晶シリコン層23がこの順に堆積される。
中間透過反射層6の材料としては、酸化亜鉛、ITOなどの導電性金属酸化物を用いることができ、また、非晶質シリコン層や結晶質シリコン層と同様にプラズマCVDで形成可能な微結晶シリコンと酸化シリコンを含むシリコン系複合材を用いることができる。集積型モジュールの場合、中間透過反射層6に導電性酸化物を用いれば後方光電変換ユニットの短絡の問題が生じ得るが、比較的高抵抗のシリコン系複合材を用いればその問題を回避し得るで好ましい。シリコン系複合層は、反応ガスとしてたとえばSiH4、CO2、H2、およびPH3を用い、いわゆるシリコン微結晶形成条件である大きなH2/SiH4比に設定し、かつ酸化シリコンに関連するCO2/SiH4比を2以上に設定してプラズマCVD法で形成されることが好ましい。このプラズマCVDにおいては、たとえば容量結合型の平行平板電極を用いて、電源周波数10〜100MHz、高周波パワー密度0.01〜0.5W/cm2、圧力50〜1500Pa、そして堆積温度150〜250℃の条件が好ましい。CO2/SiH4比を増加させれば膜中酸素濃度が単調に増加し、中間透過反射層6の屈折率を下げることができる。
後方光電変換ユニット3も、プラズマCVD法によって、たとえばp層、i層、およびn層の順に積層して形成される。具体的には、ボロンが0.01原子%以上ドープされたp型微結晶シリコン層31、実質的にi型の結晶質シリコン光電変換層32、およびリンが0.01原子%以上ドープされたn型微結晶シリコン層がこの順に堆積される。
裏面電極層4としては、Al、Ag、Au、Cu、Pt、およびCrから選ばれる少なくとも一種の材料が、少なくとも一層の金属層42としてスパッタ法または蒸着法により堆積されることが好ましい。また、金属層42とこれに隣接する光電変換ユニット3との間に、ITO、SnO2、ZnOなどの導電性酸化物層41を裏面電極層4の一部として形成することが好ましい。この導電性酸化物層41は、裏面電極層4とこれに隣接する光電変換ユニット3と間の密着性を高めるとともに、裏面電極層4の光反射率を高め、さらに光電変換ユニット3、2の化学変化を防止する機能をも有する。
なお、薄膜光電変換装置は図1に示したように2段の光電変換ユニットを含んでいてもよいが、1段の光電変換ユニットのみを含むいわゆるシングルセル、3段の光電変換ユニットを含むいわゆるトリプルセル、さらには4段以上の光電変換ユニットを含む多段セルであってもよいことは言うまでもない。たとえば、図1の前方光電変換ユニット2に相当する非晶質シリコン光電変換ユニットのみを形成し、中間透過反射層6と後方光電変換ユニット3を省略した非晶質シングルセルであってもよい。また、本発明の透明電極層12にはZnOを用いており、これはSnO2に比べて耐プラズマ性が高いので、透明電極層12上に直接に結晶質シリコン光電変換ユニットを形成することも可能である。すなわち、本発明では、図1における結晶質シリコン光電変換ユニット3のみを含んで前方光電変換ユニット2と中間透過反射層6が省略された結晶質シングルセルも可能である。さらに、トリプルセルの例として、非晶質シリコン光電変換ユニット/実質的にi型の非晶質シリコンゲルマニウム層を含む非晶質シリコンゲルマニウム光電変換ユニット/結晶質シリコン光電変換ユニットの順に3つの光電変換ユニットを積層してもよい。さらにまた、非晶質シリコン光電変換ユニット/結晶質シリコン光電変換ユニット/結晶質シリコン光電変換ユニットの順に3つの光電変換ユニットが積層されてもよい。
図2は、本発明の他の実施形態による集積型薄膜光電変換モジュールを概略的に示す断面図である。この集積型薄膜光電変換モジュール901においては、ガラス板111と下地層112を含む透明絶縁基体11上に、透明電極層12、非晶質シリコン光電ユニットである前方ユニット2、中間透過反射層6、結晶質シリコン光電変換ユニットである後方ユニット3、および裏面電極層4を順次積層されている。
また、図2の集積型薄膜光電変換モジュール901においては、第1と第2の分離溝903、904および接続溝905が設けられている。これら第1と第2の分離溝903、904および接続溝905は互いに平行であって、図2の紙面に対して垂直な方向に延在している。なお、隣り合う光電変換セル902間の境界領域は、近接する第1と第2の分離溝903、904によって規定されている。
第1の分離溝903は、それぞれの光電変換セル902に対応して、透明電極層12を分割している。第2の分離溝904は、それぞれの光電変換セル902に対応して、前方光電変換ユニット2、中間透過反射層6、後方光電変換ユニット3、および裏面電極層4を分割している。接続溝905は、前方光電変換ユニット2、中間透過反射層6、および後方光電変換ユニット3を貫通しており、裏面電極層4を構成する金属材料で埋め込まれていて、隣り合う光電変換セル902の一方の裏面電極層4と他方の透明電極層12とを電気的に接続している。すなわち、接続溝905は、透明絶縁基体11上に並置された光電変換セル902同士を直列接続するために設けられている。
以下において、本発明による種々の実施例が、種々の比較例とともに、より具体的に説明される。なお、本発明の範囲は、その趣旨を超えない限りにおいて以下の実施例に限定されないことは言うまでもない。
(実施例1)
本発明の実施例1として、図1に示されているような薄膜光電変換装置用基板1が作製された。まず、4mmの厚みと910mm×455mmの面積を有するガラス板111上に、SiO2微粒子1121とバインダ1122を含む透光性下地層112を形成して、透明絶縁基体11を得た。透光性下地層112を形成する際に用いたコーティング液は、平均粒径100nmの球状シリカの分散液、水、およびエチルセロソルブの混合液にテトラエトキシシランを加え、その後に塩酸を添加してテトラエトキシシランを加水分解させ、さらに希釈液としてジアセトンアルコールとプロピレングリコールを加えて調製された。コーティング液全体に対する球状シリカの質量濃度は6%であった。ガラス板111上にコーティング液を印刷機にて塗布した後、90℃で30分乾燥させ、その後に450℃で5分加熱することにより、微細な表面凹凸を有する透明絶縁基体11を得た。
図3は、得られた透明絶縁基体11の上面の原子間力顕微鏡(AFM)像を示している。この正方形の画像の一辺は約5μm(5.06μm)に相当し、その右側に示された明度スケールは表面高さに対応している。すなわち、AFM像において、明度の高い点ほど高い表面位置であることを表わしている。図3においてシリカ粒子間に隙間が観察され、前述のAFM測定による粒子被覆率は76.7%であった。
図4は、参考のために、本実施例1において得られた透明絶縁基体11の上面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示している。図4のSEM像においても、図3のAFM像と同様の粒子分布を示していることが観察される。すなわち、前述のように、粒子被覆率はAFM測定のみならず、SEM像からも得ることが理解されよう。
透明絶縁基体11上には、ZnOからなる透明電極層12が低圧熱CVD法で形成された。この透明電極層12は、堆積温度160℃、圧力30Pa、ジエチル亜鉛(DEZ)蒸気流量200sccm、水蒸気流量700sccm、ジボラン(B2H6)流量2sccm、そして水素流量1000sccmの条件の下で形成された。
得られたZnO透明電極層12において、反射スペクトルの干渉から求めた厚さは1.7μm、シート抵抗は12.1Ω/□、C光源を用いて測定したヘイズ率は21.6%、そしてAFM測定による表面面積比(Sdr)は75.5%であった。また、2次イオン質量分析(SIMS)で測定したZnO透明電極層12のH濃度は、膜厚方向に分布を有していたが、9×1020〜3×1021個/cm3の範囲内であった。なお、SIMS測定には、Cs+イオン源が用いられた。
(実施例2)
本発明の実施例2においても、実施例1に類似の薄膜光電変換装置用基板1が作製された。すなわち、実施例2においては、コーティング液全体に対する球状シリカの質量濃度が6%から2%に変更されたことのみにおいて実施例1と異なっていた。
図5は、図3に類似しているが、本実施例2で得られた透明絶縁基体11の上面のAFM像を示している。実施例1の図3に比べて、実施例2の図5では、シリカ粒子間の隙間が広くなっていることが明らかであり、この場合の粒子被覆率は49.3%であった。
図6は、参考のために、本実施例2において得られた透明絶縁基体11の上面のSEM像を示している。図6のSEM像においても、図5のAFM像と同様の粒子分布を示していることが観察される。
本実施例2で得られた透明絶縁基体11上に、ZnOからなる透明電極層12が実施例1の場合と同じ方法で堆積された。その結果、本実施例2で得られたZnO膜透明電極層12において、反射スペクトルの干渉から求めた厚さは1.7μm、シート抵抗は11.1Ω/□、C光源を用いて測定したヘイズ率は22.2%、そしてAFM測定による表面面積比(Sdr)は70.2%であった。また、SIMSで測定したZnO透明電極層12のH濃度は、9×1020〜3×1021個/cm3の範囲内であった。
(比較例1)
比較例1においても、実施例1に類似の薄膜光電変換装置用基板1が作製された。すなわち、比較例1においては、球状シリカの平均粒径が100nmから50nmに変更され、かつコーティング液全体に対する球状シリカの質量濃度が6%から4%に変更されたことのみにおいて実施例1と異なっていた。
この比較例1において得られた透明絶縁基体11の表面をAFMで測定したところ、その粒子被覆率は98.9%であった。
本比較例1における透明絶縁基体11上に、ZnOからなる透明電極層12が実施例1の場合と同じ方法で堆積された。その結果、本比較例1で得られたZnO膜透明電極層12において、反射スペクトルの干渉から求めた厚さは1.7μm、シート抵抗は10.1Ω/□、C光源を用いて測定したヘイズ率は26.8%、そしてAFM測定による表面面積比(Sdr)は85.4%であった。また、SIMSで測定したZnO透明電極層12のH濃度は、9×1020〜3×1021個/cm3の範囲内であった。
(実施例3)
本発明の実施例3として、図1に示されているような積層型薄膜光電変換装置5が実施例1による基板1を利用して作製された。すなわち、本実施例3においては、実施例1の基板1の上に非晶質シリコン光電変換ユニット2、中間透過反射層6、結晶質シリコン光電変換ユニット3、および裏面電極層4を順次形成することによってハイブリッド型薄膜光電変換装置が作製された。ただし、本実施例3の薄膜光電変換装置は、レーザスクライブを利用して、図2に示されているような集積型薄膜光電変換モジュール901として作製された。
その集積型薄膜光電変換モジュール901の作製においては、波長1064nmのYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザを用いて、透明電極層12に分離溝903を形成し、その後に基板1の洗浄と乾燥を行なった。
そのレーザ加工された透明電極層12上には、厚さ10nmのp型微結晶シリコン層と厚さ15nmのp型非晶質シリコンカーバイド層との積層からなるp型層21、厚さ350nmのi型非晶質シリコン光電変換層22、および厚さ15nmのn型微結晶シリコン層23を順次プラズマCVDで積層して前方光電変換ユニット2を形成した。つづけて、プラズマCVDによって、厚さ50nmのシリコン系複合層からなる中間透過反射層6を形成した。さらに、厚さ15nmのp型微結晶シリコン層31、厚さ2.5μmのi型結晶質シリコン光電変換層32、および厚さ15nmのn型微結晶シリコン層33を順次プラズマCVDで積層して後方光電変換ユニット3を形成した。
その後、YAGレーザの第二高調波(波長:532nm)を用いて、前方光電変換ユニット2、中間透過反射層6、および後方光電変換ユニット3を貫通する接続溝905を形成した。
接続溝905の形成後においては、後方光電変換ユニット3上の裏面電極層4として、厚さ90nmのAlドープZnO層41と厚さ200nmのAg層42をスパッタ法にて順次堆積した。このとき、接続溝905は、その裏面電極層によって埋め込まれる。
最後に、YAGレーザの第二高調波を用いて、前方光電変換ユニット2、中間透過反射層6、後方光電変換ユニット3、および裏面電極層4を貫通する分離溝904を形成した。
こうして得られた実施例3の薄膜光電変換モジュール901にAM(エアマス)1.5の光を100mW/cm2の光量で照射して出力特性を測定したところ、開放電圧(Voc)が1.334V、短絡電流密度(Jsc)が13.30mA/cm2、曲線因子(FF)が0.710、そして変換効率(Eff)が12.59%であった。
このことから、30%以上80%未満の範囲内である76.7%の粒子被覆率を有する実施例1の基板1を利用することによって、12%を超える高いEffを有する薄膜光電変換装置が得られることが分かる。
(実施例4)
本発明の実施例4においても、実施例3に類似の集積型薄膜光電変換モジュールが作製された。すなわち、実施例4の集積型薄膜光電変換モジュールは、実施例1ではなく実施例2の基板1を用いて作製されたことのみにおいて実施例3と異なっていた。
得られた本実施例4の薄膜光電変換モジュールの出力特性を実施例3の場合と同様に測定したところ、Vocが1.331V、Jscが13.11mA/cm2、FFが0.728、そしてEffが12.70%であった。
本実施例4と実施例3との対比から、76.7%より低い49.3%の粒子被覆率を有する基板1を利用することによって、むしろEffが12.59%から12.70%に向上していることが分かる。
(比較例2)
比較例2においても、実施例3に類似の集積型薄膜光電変換モジュールが作製された。すなわち、比較例2の集積型薄膜光電変換モジュールは、実施例1ではなく比較例1の基板1を用いて作製されたことのみにおいて実施例3と異なっていた。
得られた本比較例2の薄膜光電変換モジュールの出力特性を実施例3の場合と同様に測定したところ、Vocが1.311V、Jscが12.93mA/cm2、FFが0.682、そしてEffが11.55%であった。
本比較例2と実施例3との対比から、80%以上である98.9%の高い粒子被覆率を有する基板1を用いた場合には、Effが12%未満に低下することが分かる。また、顕微鏡でレーザスクライブの結果を観察したところ、粒子被覆率が高い本比較例2の場合に、分離溝904および接続溝905において、溝幅が細くなったり完全には溝が形成されていない部分が複数箇所で観察された。
(比較例3)
比較例3においても、実施例3に類似の集積型薄膜光電変換モジュールが作製された。より具体的には、比較例3の集積型薄膜光電変換モジュールは、基板1中の下地層112が省略されて作製されたことのみにおいて実施例3と異なっていた。すなわち、本比較例3における粒子被覆率は0%に相当している。
得られた本比較例3の薄膜光電変換モジュールの出力特性を実施例3の場合と同様に測定したところ、Vocが1.222V、Jscが12.35mA/cm2、FFが0.655、そしてEffが9.89%であった。
実施例3、4、および比較例2に対する本比較例3の比較から、基板1が下地層112を含まない場合には、Voc、Jsc、およびFFいずれのパラメータも減少して、Effが顕著に低下しすることが分かる。また、基板1が下地層112を含まない本比較例3の場合には、レーザスクライブで形成された分離溝903を起点にして、透明電極層12の剥離が複数箇所で観察され、下地層112が無い場合に透明電極層12の密着性の低下することが確認された。
(実施例5)
本発明のさらなる実施例5においても、実施例3に類似の集積型薄膜光電変換モジュールが作製された。より具体的には、本実施例5の集積型薄膜光電変換モジュールは、コーティング液全体に対する球状シリカの質量濃度が6%から1.5%に変更され、かつ粒子被覆率が76.7%から43.9%に変更されて作製されたことのみにおいて実施例3と異なっていた。
得られた本実施例5の薄膜光電変換モジュールの出力特性を実施例3の場合と同様に測定したところ、Vocが1.314V、Jscが13.45mA/cm2、FFが0.709、そしてEffが12.53%であった。
(実施例6)
本発明のさらなる実施例6においても、実施例3に類似の集積型薄膜光電変換モジュールが作製された。より具体的には、本実施例6の集積型薄膜光電変換モジュールは、コーティング液全体に対する球状シリカの質量濃度が6%から1%に変更され、かつ粒子被覆率が76.7%から32.6%に変更されて作製されたことのみにおいて実施例3と異なっていた。
得られた本実施例6の薄膜光電変換モジュールの出力特性を実施例3の場合と同様に測定したところ、Vocが1.310V、Jscが13.53mA/cm2、FFが0.699、そしてEffが12.38%であった。
(比較例4)
さらなる比較例4においても、実施例3に類似の集積型薄膜光電変換モジュールが作製された。より具体的には、本比較例4の集積型薄膜光電変換モジュールは、コーティング液全体に対する球状シリカの質量濃度が6%から8%に変更され、かつ粒子被覆率が76.7%から87.6%に変更されて作製されたことのみにおいて実施例3と異なっていた。
得られた本比較例4の薄膜光電変換モジュールの出力特性を実施例3の場合と同様に測定したところ、Vocが1.275V、Jscが13.39mA/cm2、FFが0.686、そしてEffが11.70%であった。
(実施例3−6および比較例2−4のまとめ)
図7は、上述の実施例3−6および比較例2−4に関して、下地層112の粒子被覆率(%)に対する集積型のハイブリッド型薄膜光電変換モジュールの変換効率Eff(%)を示すグラフである。なお、上述の実施例3−6および比較例2−4から分かるように、下地層の粒子被覆率は、下地層を形成するためのコーティング液に含まれる球状シリカの粒径および質量%を調整することによって制御することができる。
図7から明らかなように、粒子被覆率が30%以上80%未満の範囲内でEffが12%より高い値を示しており、実施例3−6はその範囲内の粒子被覆率を有していることが分かる。換言すれば、比較例2−4は30%未満または80%以上の範囲の粒子被覆率を有し、その場合には12%未満のEffしか得られていない。また、図7では、粒子被覆率44%以上77%以下の範囲内において、Effが12.5%以上のより高い値を示していることが分かる。このことから、下地層の粒子被覆率は、30%以上80%未満の範囲であることが望まれ、44%以上77%以下の範囲内にあることが好ましいと理解されよう。なお、図7において、粒子被覆率に対してEffは極大値を有しており、約50%に粒子被覆率においてEffが最大となっている。
(実施例7)
本発明のさらなる実施例7として、1段の非晶質シリコン光電変換ユニット(シングルセル)のみを含む薄膜光電変換装置を作製した。より具体的には、本実施例7では、厚み0.7mmで面積125mm×125mmのガラス板を用いかつ下地層112の形成のためのコーティング液が小型のロールコータを用いて塗布されたことを除いて、実施例1の場合と同様の条件で薄膜光電変換装置用基板1を作製した。
本実施例7において、下地層112の粒子被覆率は73.8%であった。また、ZnO透明電極層12に関して、反射スペクトルの干渉から求めた厚さは2.0μmであって、シート抵抗は7.9Ω/□であった。さらに、C光源を用いて測定した基板1のヘイズ率は44.2%であった。
本実施例7で得られた基板1上に、非晶質光電変換ユニット2を形成した。具体的には、厚さ10nmのp型微結晶シリコン層と厚さ15nmのp型非晶質シリコンカーバイド層からなるp型層21、厚さ300nmのi型非晶質シリコン光電変換層22、および厚さ30nmのn型微結晶シリコン層23を順次にプラズマCVD法で堆積して非晶質光電変換ユニット2を形成した。
その非晶質光電変換ユニット2上に、結晶質光電変換ユニット3を積層することなく、裏面電極層4として厚さ90nmのAlドープZnO層41と厚さ200nmのAg層42を順次にスパッタ法にて堆積した。
最後に、YAGレーザの第二高調波(波長:532nm)を用いて加工することによって、受光面積10mm×10mmの薄膜光電変換装置が作製された。
こうして得られた本実施例7の薄膜光電変換装置にAM1.5の光を100mW/cm2の光量で照射して出力特性を測定したところ、Vocが0.875V、Jscが15.94mA/cm2、FFが0.687、そしてEffが9.57%であった。
(実施例8)
本発明のさらなる実施例8においても、実施例7に類似してシングルセルの薄膜光電変換装置を作製した。具体的には、本実施例8の薄膜光電変換装置は、下地層を形成するためのコーティング液中の球状シリカ質量濃度が6%から1%に変更されて作製されたことのみにおいて実施例7と異なっていた。
本実施例8において、下地層112の粒子被覆率は34.3%であった。また、ZnO透明電極層12の厚さは2.0μmでそのシート抵抗は6.3Ω/□であった。さらに、C光源を用いて測定した基板1のヘイズ率は40.7%であった。
こうして得られた本実施例8の薄膜光電変換装置にAM1.5の光を100mW/cm2の光量で照射して出力特性を測定したところ、Vocが0.879V、Jscが15.78mA/cm2、FFが0.689、そしてEffが9.56%であった。
(比較例5)
比較例5においても、実施例7に類似してシングルセルの薄膜光電変換装置を作製した。具体的には、本比較例5の薄膜光電変換装置は、下地層を形成するためのコーティング液中の球状シリカ質量濃度が6%から9%に変更されて作製されたことのみにおいて実施例7と異なっていた。
本比較例5において、下地層112の粒子被覆率は93.8%であった。また、ZnO透明電極層12の厚さは2.0μmで、そのシート抵抗は5.8Ω/□であった。さらに、C光源を用いて測定した基板1のヘイズ率は41.8%であった。
こうして得られた本比較例5の薄膜光電変換装置にAM1.5の光を100mW/cm2の光量で照射して出力特性を測定したところ、Vocが0.870V、Jscが15.88mA/cm2、FFが0.639、そしてEffが8.84%であった。
(比較例6)
比較例6においても、実施例7に類似してシングルセルの薄膜光電変換装置を作製した。具体的には、本比較例6の薄膜光電変換装置は、下地層を形成するためのコーティング液中の球状シリカ質量濃度が6%から11%に変更されて作製されたことのみにおいて実施例7と異なっていた。
本比較例6において、下地層112の粒子被覆率は94.5%であった。また、ZnO透明電極層12の厚さは2.0μmで、そのシート抵抗は5.1Ω/□であった。さらに、C光源を用いて測定した基板1のヘイズ率は38.2%であった。
こうして得られた比較例6の薄膜光電変換装置にAM1.5の光を100mW/cm2の光量で照射して出力特性を測定したところ、Vocが0.792V、Jscが15.39mA/cm2、FFが0.612、そしてEffが7.45%であった。
(比較例7)
比較例7においても、実施例7に類似してシングルセルの薄膜光電変換装置を作製した。具体的には、本比較例7の薄膜光電変換装置は、下地層を形成するためのコーティング液中の球状シリカ質量濃度が6%から0.5%に変更されて作製されたことのみにおいて実施例7と異なっていた。
本比較例7において、下地層112の粒子被覆率は12.4%であった。また、ZnO透明電極層12の厚さは2.0μmで、そのシート抵抗は7.2Ω/□であった。さらに、C光源を用いて測定した基板1のヘイズ率は23.4%であった。
こうして得られた本比較例7の薄膜光電変換装置にAM1.5の光を100mW/cm2の光量で照射して出力特性を測定したところ、Vocが0.872V、Jscが14.68mA/cm2、FFが0.643、そしてEffが8.23%であった。
(実施例7−8および比較例5−7のまとめ)
実施例7−8と比較例5−7とを比べれば、下地層112の粒子被覆率が30%以上80%未満の範囲にある実施例7−8では、非晶質シリコン光電変換層を含むシングルセルとしては比較的高い9.5%以上のEffが得られている。これに対して、粒子被覆率が80%を超えた93.8%である比較例5では、まず主としてFFが減少してEffが8.84%に低下している。また、粒子被覆率がさらに増加した94.5%である比較例6では、FF、Voc、およびJscのいずれもが顕著に減少して、その結果としてEffが7.45%へ大きく低下していることが分かる。他方、粒子被覆率が30%未満の12.4%である比較例8では、主としてJscとFFが減少して、Effが8.23%に低下している。このことから、集積化されなくてかつシングルセルのみを含む薄膜光電変換装置においても、粒子被覆率は30%以上80%未満の範囲内にあることが好ましいといえる。
以上のように、本発明によれば、薄膜光電変換装置に含まれるZnO透明電極層が低圧熱CVD法で堆積された基板を提供し、その基板を用いることによってコストおよび光電変換効率が改善された薄膜光電変換装置を提供することができる。
本発明の一実施形態による薄膜光電変換装置用基板およびそれを含む薄膜光電変換装置を示す模式的断面図である。
本発明の他の実施形態による集積型薄膜光電変換モジュールを示す模式的断面図である。
本発明の実施例1における透明絶縁基体上の粒子被覆状態を示すAFM像である。
実施例1における透明絶縁基体上の粒子被覆状態を示すSEM像である。
実施例2における透明絶縁基体上の粒子被覆状態を示すAFM像である。
実施例2における透明絶縁基体上の粒子被覆状態を示すSEM像である。
実施例3−6および比較例2−4による集積型薄膜光電変換モジュールの変換効率とそのモジュール用基板における粒子被覆率との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 薄膜光電変換装置用基板、11 透明絶縁基体、111 透光性基礎基体、112 透光性下地層、1121 透光性微粒子、1122 透光性バインダ、12 透明電極層、2 前方光電変換ユニット、21 一導電型層、22 光電変換層、23 逆導電型層、3 後方光電変換ユニット、31 一導電型層、32 光電変換層、33 逆導電型層、4 裏面電極層、41 導電性酸化物層、42 金属層、5 薄膜光電変換装置、6 中間透過反射層、901 集積型薄膜光電変換モジュール、902 光電変換セル、903 第1の分離溝、904 第2の分離溝、905 接続溝。