JPWO2008123565A1 - ポリ乳酸組成物およびそれよりなる繊維 - Google Patents
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Abstract
Description
さらに本発明は実用的強度及び耐熱性を有し、毛羽数が少なく後加工あるいは繊維製品製造に好適で且つ経済的に有利なポリ乳酸繊維およびその製造方法に関する。
しかし、ポリ乳酸は通常、融点が160℃程度と低く融解や変形などの耐熱性に課題があった。さらに生分解性や湿熱環境下での劣化が比較的速い速度で進行し、物性の安定性に課題があるために、用途が限られる欠点を有していた。
一方、L−乳酸単位からなるポリL−乳酸とD−乳酸単位からなるポリD−乳酸を溶液あるいは溶融状態で混合することにより、ステレオコンプレックス結晶を有するポリ乳酸が得られることが知られている(特許文献1および非特許文献1)。このステレオコンプレックスポリ乳酸は、結晶融解温度が200〜230℃とポリL−乳酸やポリD−乳酸に比べて高融点であり、高結晶性を示す興味深い現象が発見されている。
ステレオコンプレックスポリ乳酸を使用することで樹脂の高温加工や耐熱用途等での使用が可能となり、さらに生分解性や湿熱環境下における劣化の改良、またその透明性を活かした光学用フィルム、包装用フィルムなどの高透明フィルムでの長寿命化等が期待されている。
しかしながら、一般にステレオコンプレックスポリ乳酸は、ステレオコンプレックスポリ乳酸の単一結晶を示すことはなく、ポリL−乳酸およびポリD−乳酸単独のホモ結晶部分とステレオコンプレックス結晶部分の混合組成物であり、DSC測定では通常、ホモ結晶の融解に対応する190℃以下の低融点結晶融解ピークとステレオコンプレックス結晶の融解に対応する190℃以上の高融点結晶融解ピークとの2本のピークが測定される。特に分子量の高い領域においては、溶融混練によってステレオコンプレックスポリ乳酸を得ることは不可能である。
すなわちステレオコンプレックスポリ乳酸は、ステレオコンプレックス結晶とホモ結晶が共存しているため、ステレオコンプレックスポリ乳酸本来の耐熱性を十分発揮しにくい問題が存在している。この問題に対し燐酸エステル金属塩などの結晶化核剤の適用が提案され、ホモ結晶を含有しない、結晶融点200℃以上のステレオコンプレックス結晶のみを含有する耐熱性組成物および成形品が提案されている(特許文献2)。しかしかかる剤を適用した場合、溶融時、ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)が低下するという新たな問題が発生、その解決が待たれている。
また特許文献3には、Mwが10万未満の鎖長の比較的に短いポリL−乳酸とポリD−乳酸とよりなるセグメント数3以上のマルチブロックコポリマーの製造方法が教示されている。該コポリマーはステレオコンプレックス結晶のみを含むステレオコンプレックスポリ乳酸であるとされる。然しながら該方法では、コポリマーのブロック数を増やす度にモノマー除去のため、煩瑣な再沈殿、乾燥処理を繰り返し実施する必要がある。またこの方法では、L−、D−乳酸の光学純度に起因するランダム化率は別にしてブロック構造形成時に生成するL/Dランダム構造のため、ランダム化率が2以上に増大し、融点、結晶性およびステレオコンプレックス結晶含有率が損なわれる欠点がある。ブロック化反応を同一の縦型反応装置で実施する場合は、反応のたびに装置洗浄を行わず、反応サイクルを繰り返すと前サイクルの影響で次第にランダム化率が高まり、ポリ乳酸の融点と結晶性が損なわれる問題が顕著となる。
また洗浄操作を頻繁に繰り返す場合、溶剤費用、洗浄費用の問題が発生する。また複数の反応装置を連結して実施する場合、ランダム化の問題はある程度解決されるが、製造コスト、生産性など、その実用化に関しては、解決すべき課題は少なくない。
また、ポリ乳酸繊維に関して、特許文献1には、ポリL−乳酸とポリD−乳酸を等モル量含む組成物を用いた溶融紡糸についての提案があり、ステレオコンプレックスポリ乳酸繊維が開示されているが、得られた繊維の強度は0.5cN/dTex程度で実用的強度を有する繊維を得るには至っていない。
また、非特許文献2では、溶融紡糸によりステレオコンプレックスポリ乳酸繊維を得たことが開示されている。ここでは、ポリL−乳酸とポリD−乳酸の溶融ブレンド物を溶融紡糸した未延伸糸を熱固定することでステレオコンプレックスポリ乳酸繊維を得ているが、熱固定時に分子配向が緩和し得られる繊維の強度は高々2.3cN/dTexにとどまっている。
これらの文献を含め従来のステレオコンプレックス繊維の形成方法は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸のブレンド物を溶融紡糸して得られる非晶性未延伸糸を延伸、熱固定するものであり、この時ステレオコンプレックスを十分成長させるために、ポリL−乳酸或いはポリD−乳酸単独結晶の融点以上の温度で熱固定することが効率的であるとの理念に基づき、熱固定を上記単独結晶の融点より高い温度で実施するものが主流であった。
ステレオコンプレックス結晶生成にこの高温熱固定は有効であったが、熱処理工程で単独結晶の融解に起因する糸の部分融解、粗硬化及び低強度化などが発生するなどの問題があった。
これに対し、紡糸条件の検討により、例えば特許文献4では、紡速5000m/分以上の高速紡糸により紡糸線上でポリ乳酸溶融体から一気にステレオコンプレックス結晶を形成する方法を提案し、広角X線回折法(XRD)測定による試料が完全ステレオコンプレックス結晶化した場合に対するステレオコンプレックス結晶化の割合であるステレオコンプレックス結晶含有率を規定し、該ステレオコンプレックス結晶含有率が10から35%の結晶化未延伸糸を1.4から2.3倍の(多段)延伸を行うことで、繊維強度、糸の部分融着、170℃アイロン耐熱性などの問題の解決を提案している。
しかしながらアイロン温度は170℃に調節しても実際は175℃程度となることもあり、実用上はさらに高温度での耐熱性が必要と判断される。加えて、結晶化未延伸糸の延伸は、延伸、配向に問題があり、繊維構造がルーズになる問題が指摘される。しかも特許文献4の方法を実施するためには、3000m/分程度の紡速では不十分で、5000m/分以上の紡速で紡糸するための特殊な紡糸設備を必要し、工業的に安価に実施するためには超えなければならない問題点も残されている。
また、特許文献5には高ドラフト条件で溶融紡糸した未延伸糸をいったん巻き取った後、延伸を行うか、または巻き取ることなく延伸、熱固定する方法が提案されているが、本提案で得られる繊維はDSC測定でポリ乳酸ホモ結晶とステレオコンプレックス結晶との2個のピークが存在するため、該単独結晶の融解のため170℃アイロン耐熱性でも不十分で、170℃超の温度での耐熱性は不十分と判定せざるを得ない。
特許文献5を含め、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)が90%以上で、(XRD)測定によるステレオコンプレックス結晶化比率(Cr)が0%の未延伸糸より高強度且つ170℃を超える高耐熱性の繊維を作る提案はいまだなされていない。
また、上述の特許文献3に記載のマルチブロックコポリマーでも、コポリマーの重量平均分子量が10万未満であるため実用的な強度、伸度を有するポリ乳酸繊維を得ることは問題があると判断される。
上述の如く紡糸、延伸条件を検討する方法にせよ、ポリマー高次構造を検討する方法にせよ、工業的に容易に実施できる方法での高強度、実用的に有意な170℃を超える高耐熱性のステレオコンプレックスポリ乳酸繊維の開発が待たれている。
(i)L−乳酸単位とD−乳酸単位との比(L/D)が30/70〜70/30で、
(ii)重量平均分子量(Mw)が10万〜30万で、
(iii)ステレオコンプレックス結晶含有率(S)が80%以上で、
(iv)ステレオコンプレックス結晶融点(Tm)が200℃以上で、
(v)ランダム化率(R)が0.001%以上2.5%未満であるポリ乳酸組成物によって達成することができる。
[但し、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)は、下記式で表される値である。
S={△Hb/(△Ha+△Hb)}×100(%)
式中△Haと△Hbは、それぞれ示差走査熱量計(DSC)の昇温過程において150℃以上190℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Ha)と190℃以上250℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Hb)である。
ランダム化率(R)は下記式で表される数値である。
R={1−(P1/P2)}×100(%)
式中P1、P2はそれぞれポリ乳酸組成物の10重量%重クロロホルム/1,1,1,2,2,2−ヘキサフルオロ−2−プロパノール=9/1混合溶液中で測定した同核デカップリング1H−NMRにおいて、ケミカルシフト5.175ppmのIII四連子ピークの積分強度と、ケミカルシフト5.250〜5.150ppmに現れるメチンプロトンピークの4連子(SIS、SII、IIS、III、ISI)合計積分強度である。なお四連子のSはシンジオタクティック二連子を、Iはアイソタクティック二連子を指す。]
さらに本発明の他の目的は実用的強度及び耐熱性を有し、毛羽数が少なく後加工あるいは繊維製品製造に好適で且つ経済的に有利なポリ乳酸繊維およびその製造方法を提供することにあり、
上記に記載のポリ乳酸組成物からなり、示差走査熱量計(DSC)測定において、ステレオコンプレックス結晶に由来する単一融解ピークのみを示し、融解熱が40から80J/g、融解ピーク温度が195℃以上で、且つ下記要件をみたすポリ乳酸繊維により達成することができる。
1)繊維長1000m換算での毛羽数が10未満であること。
2)175℃、耐アイロン性を満たすこと。
3)強度が3.5cN/dTex以上、伸度が25から50%であること。
4)広角X線回折法(XRD)測定によるステレオコンプレックス結晶化比率(Cr)が90%以上であること。
ここにおいてステレオコンプレックス結晶化比率(Cr)は:
Cr率(%)=ΣISCi/(ΣISCi+IHM)×100 (1)
[式中ΣISCi=ISC1+ISC2+ISC3,ISCi(i=1〜3)はそれぞれ2θ=12.0°,20.7°,24.0°付近の各回折ピークの積分強度、IHMはポリ乳酸ホモ結晶に由来する回折ピークの積分強度を表す。]
第2図は、本発明で用いる、無軸籠型反応装置の開口円板(13)の正面図を示す。
ポリ乳酸組成物
本発明のポリ乳酸組成物は、下記式で表されるL−乳酸単位およびD−乳酸単位を含有する。
L−乳酸単位とD−乳酸単位の比(L/D)は、30/70〜70/30、好ましくは40/60〜60/40である。さらにL/Dが上記範囲を逸脱して光学純度が偏った場合、ポリ乳酸組成物の結晶化度が著しく低下するために好ましくない。
本発明のポリ乳酸組成物の重量平均分子量(Mw)は、10万〜30万、好ましくは13万〜30万、より好ましくは15万〜30万、さらに好ましくは17万〜25万である。重量平均分子量(Mw)は、溶離液にクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算の値である。
本発明のポリ乳酸組成物のステレオコンプレックス結晶含有率(S)は、80%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは100%である。ステレオコンプレックス結晶含有率(S)は、下記式で表される値である。
S={△Hb/(△Ha+△Hb)}×100(%) (1)
式中△Haと△Hbは、それぞれ示差走査熱量計(DSC)の昇温過程において150℃以上190℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Ha)と190℃以上250℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Hb)である。
△Haは、好ましくは4J/g未満、より好ましくは2J/g未満である。また△Hbは、好ましくは20J/g以上、より好ましくは30J/g以上、さらに好ましくは40J/gである。
本発明のポリ乳酸組成物は、DSC測定において、20℃〜250℃の昇温過程と250℃〜20℃の急冷過程からなるプログラムを3回以上繰り返しても、昇温過程で観測される結晶融点(Tm)が190℃以上250℃未満である。即ち、溶融と結晶化を繰り返してもステレオコンプレックス結晶のみが成長することを意味する。
本発明のポリ乳酸組成物のDSC測定におけるステレオコンプレックス結晶の融点(Tm)は、200℃以上、好ましくは200〜250℃、より好ましくは200〜225℃である
本発明のポリ乳酸組成物は、ランダム化率(R)が0.001%以上2.5%未満、好ましくは0.001〜2%、より好ましくは0.001〜1%である。ランダム化率(R)は下記式で表される数値である。
R={1−(P1/P2)}×100(%)
式中P1、P2はそれぞれポリ乳酸組成物の10重量%重クロロホルム/1,1,1,2,2,2−ヘキサフルオロ−2−プロパノール=9/1混合溶液中で測定した同核デカップリング1H−NMRにおいて、ケミカルシフト5.175ppmのIII四連子ピークの積分強度と、ケミカルシフト5.250〜5.150ppmに現れるメチンプロトンピークの4連子(SIS、SII、IIS、III、ISI)合計積分強度である。なお四連子のSはシンジオタクティック二連子を、Iはアイソタクティック二連子を指す。
本発明のポリ乳酸組成物のL−ラクチドおよびD−ラクチドの合計含有量は、好ましくは100〜10000ppmである。
ポリ乳酸組成物の製造方法
本発明のポリ乳酸組成物は、以下の工程(1)〜(4)により製造することができる。
(工程(1))
工程(1)は、乳酸(A)またはラクチド(A)を重合してプレポリマーを得る工程である。乳酸(A)は、L−乳酸またはD−乳酸である。ラクチド(A)は、L−ラクチドまたはD−ラクチドである。
プレポリマーは、例えばL−またはD−乳酸を直接脱水縮合する方法、L−またはD−乳酸オリゴマーを固相重合する方法、L−またはD−乳酸などを一度脱水環化してラクチドとした後、溶融開環重合する方法などにより製造することができる。
工程(1)は、乳酸(A)の直接重縮合またはラクチド(A)の溶融開環重合によりプレポリマーを得る工程であることが好ましい。特に溶融開環重合する方法が好ましい。
これらの重合法においては、従来公知の製造装置を用いればよく、例えば縦型攪拌槽、横型攪拌装置例えば、一軸、二軸の押出機、ニーダー、無軸籠型攪拌槽、住友重機械工業株式会社製バイボラック、三菱重工業株式会社製N−SCR、株式会社日立製作所製めがね翼、格子翼あるいはケニックス式攪拌機を単独、または並列して使用することができる。
プレポリマーを溶融開環重合法により製造する場合、重合開始剤としてアルコール類を用いてもよい。かかるアルコールとしては、プレポリマーの重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなどを好適に用いることができる。
プレポリマーは、主としてL−乳酸単位を含有するポリL−乳酸、または主としてD−乳酸単位を含有するポリD−乳酸である。ポリL−乳酸は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上のL−乳酸単位を含有する。ポリD−乳酸は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上のD−乳酸単位を含有する。他の単位として、光学対掌体および乳酸以外の単位がある。他の単位は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
乳酸以外の単位として、2個以上のエステル結合形成性官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位およびこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール等あるいはビスフェノールにエチレンオキシドが付加させたものなどの芳香族多価アルコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
プレポリマーの反応性末端基は、ラクチドの開環反応を開始させる官能基であればいずれも使用可能であるが、なかでもヒドロキシル基またはカルボキシル基が、とりわけヒドロキシル基が反応活性およびポリ乳酸組成物の色調そのほかの物性などの点から好ましい。プレポリマー中の反応性末端基の数は、プレポリマー1分子中少なくとも1個有することが必要である。また反応性官能基数が3またはそれ以上の時でもブロックポリマーを製造することは可能であるが、ブロックポリマーが分岐状ポリマーとなるため、特別の物性、例えば、流動性を改良するため等のためには好適に使用されるが、本発明の目的を達成するためには、プレポリマー1分子中の官能基数は1およびまたは2が好ましい。
プレポリマーのD−乳酸およびL−乳酸の合計含有量は、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。プレポリマーのD−ラクチドおよびL−ラクチドの合計含有量は、好ましくは1〜10000ppm、より好ましくは1〜5000ppm、さらに好ましくは1〜500ppmである。
D−乳酸およびL−乳酸の合計含有量、またはD−ラクチドおよびL−ラクチドの合計含有量が、かかる範囲を満足することにより、本発明のポリ乳酸組成物のランダム化率(R)を0.001%以上2.5%未満、好ましくは0.001〜1%未満にすることができる。ランダム化率が2.5%を超える場合、ステレオコンプレックス結晶融点(Tm)が200℃を下回る、ステレオコンプレックス結晶そのものが少なくより非晶性に近くなってしまう等の問題が生じる。
プレポリマーの重量平均分子量(M)は、好ましくは3万〜20万、より好ましくは5万〜20万、さらに好ましくは8万〜18万である。プレポリマーの分子量が該範囲をこえて高分子量であるとブロック形成反応が進行しにくくなり、3万未満であるとポリ乳酸組成物のランダム化率が2.5%以上に増大する。
よって、プレポリマーの反応性末端基がヒドロキシル基およびまたはカルボキシル基であり、重量平均分子量が3万〜20万であり、L−乳酸およびD−乳酸の合計含有量が500ppm以下、L−ラクチドおよびD−ラクチドの合計含有量が1〜10000ppmであることが好ましい。
(工程(2))
工程(2)は、プレポリマー中の残留ラクチドを除去する工程である。
残留ラクチドの除去は、180℃以上260℃以下、好ましくは200℃以上240℃以下、より好ましくは210℃以上230℃以下で実施する。温度条件が上記未満である場合、ラクチド除去効率が悪く、場合によってはプレポリマーが結晶化するといった問題が生じる。逆に260℃を超える範囲では、プレポリマー特有の解重合が顕著化し、却ってラクチド量を増大させてしまう。またラクチド除去は1kPa以上13.3kPa以下の減圧状態下で実施する。1kPaよりも低い圧力下でラクチド除去を行った場合、平衡の原理により前述した解重合が加速される。逆に13.3kPaを超える圧力下でラクチド除去を行った場合、目的達成に長時間を要し、プレポリマーの分子量低下や着色を惹起する。
よって、工程(2)は、180℃以上260℃以下で、1kPa以上13.3kPa以下で行うことが好ましい。
(工程(3))
工程(3)は、プレポリマーの存在下で、ラクチド(B)を重合しポリ乳酸組成物を得る工程である。
工程(3)は、190℃以上280℃以下で、10分以上10時間以下行う。
乳酸(A)またはラクチド(A)を構成する乳酸単位と、ラクチド(B)を構成する乳酸単位とは、光学対掌体である。即ち、乳酸(A)がL−乳酸またはL−ラクチドのとき、ラクチド(B)はD−ラクチドである。また、乳酸(A)がD−乳酸またはD−ラクチドのとき、ラクチド(B)はL−ラクチドである。
重合は、溶融開環重合法で行うことが好ましい。工程(3)は、金属触媒の存在下、プレポリマーを開始剤とするラクチドの溶融開環重合法により製造することが好ましい。
金属触媒として、アルカリ土類金属、希土類金属、第三周期の遷移金属、アルミニウム、ゲルマニウム、スズおよびアンチモンからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素を含む化合物が挙げられる。アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなどが挙げられる。希土類元素として、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウムなどが挙げられる。第三周期の遷移金属として、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、チタンが挙げられる。金属触媒は、これらの金属のカルボン酸塩、アルコキシド、アリールオキシド、或いはβ−ジケトンのエノラート等として組成物に添加することができる。重合活性や色相を考慮した場合、オクチル酸スズ、チタンテトライソプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシドが特に好ましい。
触媒添加量は、ラクチド100重量部に対して、好ましくは0.001重量部以上0.1重量部未満、より好ましくは0.003重量部以上0.01重量部未満である。触媒添加量を上記範囲外にした場合、重合に長時間を要するか、或いは得られたポリ乳酸組成物の溶融安定性が乏しくなる。添加雰囲気としては窒素、アルゴン等の不活性気体雰囲気が好ましい。
反応温度は、190℃以上280℃以下、好ましくは200℃以上260℃以下である。上記反応時間、および温度範囲外で重合を実施した場合、得られるポリ乳酸組成物の重合に長時間を要し、その間に着色が顕著になる。温度が190℃未満の場合、反応中にブロックポリマーがステレオコンプレックス結晶を形成し、固化する可能性が高い。280℃を超える場合、解重合が顕著化する。
反応時間は、10分以上10時間以下、好ましくは30分以上5時間以下、より好ましくは1時間以上3時間以下である。反応時間が上記範囲よりも短い場合は十分にブロックポリマーが成長せず、長い場合もまた分子量低下により高分子量のブロックポリマーが得難い。
ラクチドの量は、プレポリマー100重量部に対して30重量部以上200重量部未満、好ましくは50重量部以上150重量部未満である。添加量が上記範囲を外れる場合はブロックコポリマーが生成せず、ホモポリL−乳酸やホモポリD−乳酸のみが生成する場合がある。
ポリ乳酸組成物中の金属触媒は、従来公知の方法、例えば、溶媒で洗浄除去する方法、あるいは触媒失活剤を適用し触媒活性を失活する方法などにより不活性化しておくことが、ポリ乳酸組成物の重量平均分子量の低下抑制、溶融安定性などのため好ましい。
失活剤としては従来公知の剤が好適に使用されるが、例えば以下の化合物が好ましい化合物として例示される。
すなわちイミノ基を有し、且つ特定金属系重合触媒に配位し得るキレート配位子の群からなる有機リガンド、リンオキソ酸、リンオキソ酸エステルおよび有機リンオキソ酸化合物の群から選択される、少なくとも1種を含有し、金属触媒の金属元素1当量あたり1〜200当量添加される。
(工程(4))
工程(4)は、ポリ乳酸組成物中の残留ラクチドを除去する工程である。
工程(4)は、180℃以上260℃以下で、1kPa以上13.3kPa以下で行う。
ポリ乳酸組成物製造後にも残留ラクチドを除去することが、ポリ乳酸組成物の溶融安定性、長期保存性の観点から好ましい。
(無軸籠型反応装置)
本発明において、工程(2)〜(4)は、下記(ア)〜(オ)を有する円筒状の無軸籠型反応装置を使用して行う。
(ア)両端部近傍にある反応物質の入口と出口、
(イ)反応装置内部の両端にそれぞれ対向して設けられた回転自在の端部円板、
(ウ)端部円板間に配置され、その中央部に開口を有する開口円板、
(エ)端部円板と開口円板の間、および開口円板同士の間に架設されるとともに、無軸籠型反応装置の長手方向に沿って反応装置の内周壁面と密接または近接して設けられた攪拌翼、および
(オ)攪拌翼の反応装置内部に向けた延長線上に設けられた自由表面形成部材、
かかる無軸籠型反応装置を上記条件で運転することにより、経済的に有利で、ランダム化が少なく且つステレオコンプレックス結晶が高度に形成されるポリ乳酸組成物を製造することができる。
以下、無軸籠型反応装置について図面を参照しながら詳細に説明する。第1図は、本発明を実施するための横型反応槽を例示した側面断面図である。
該図において、1は横型反応槽本体であり、2は被反応物質入口、3は被反応物質出口であり、それぞれ図示したように反応槽1の両端部あるいは両端部近傍に設けられている。4,5は反応槽1の両端に設けられた軸である。6は排気口であり反応槽外殻上方に開口し、必要であれば反応槽内を減圧に保つための吸引口を兼ねている。7は反応槽1の内周壁面であり、必要に応じて該内周壁面7に撹拌翼10と干渉しないように配慮した突起を設けることもできる。
第1図において、8および9は端部円板であり軸4および5と固定されており、軸4および5を駆動装置(図示せず)の動力によって駆動することで端部円板8および9を回転させることができる。10は内周壁面7の長手方向に近接或いは密接して設けられた撹拌翼、11および12は撹拌翼10の反応物の落下縁に並列して2列に配設された自由表面形成部材である。
ここで、撹拌翼はらせん状に設けることもでき、具体的には、開口円板13に挟まれた撹拌翼を、軸4および5の軸方向と並行に設置することなく、任意の角度を持って設置するか、撹拌翼自体は軸4および5の軸方向とは並行に設置し、開口円板13で仕切られている、隣の領域の撹拌翼とは設置位置を回転中心からの距離は同じまま任意の角度でずらして、反応装置内部全体として略らせん形状となるように設置してもよく、さらには上記を組み合わせてもよい。このように設置することによって、反応物の送り効果(あるいは戻り効果)を発現させることができる。この送り効果(あるいは戻り効果)の度合いは、らせん形状そのものの他に、駆動装置による回転速度、反応装置内の温度によって、所望に応じて制御することができる。
第1図では径が異なる丸棒が例示されている。13は開口円板であって、該開口円板13は撹拌翼10と自由表面形成部材である丸棒11および12によって長手方向に所定間隔で連結固定され、且つその中央部に開口を有し、さらには反応槽1の内部を複数の室に仕切る役割を持っている。14は不活性ガスあるいはスチームの注入口、15は反応槽内で気化する液体の添加口である。14および15は必要に応じて反応槽外殻に設ければよく、さらに14は反応槽外殻上部に設ければよい。
なお、前記の自由表面形成部材である丸棒11および12は、撹拌翼10より反応液が落下を開始する撹拌翼の落下縁に沿って、落下する反応液の少なくとも一部と接触可能な位置に、該落下縁に略並行して複列または単列に設ける。
ここで、撹拌翼10は回転して反応槽1内の気相部を上昇中には内周壁面7に近接または密接する側の縁を下向き、これと反対側の落下縁が上向きとなるように、撹拌翼10が傾斜させられている。そして、反応槽1内の気相部を下降中には内周壁面7に近接または密接する側の縁を上向き、これと反対側の落下縁が下向きとなるように、撹拌翼10を傾斜させることが好ましい。このようにすることで、撹拌翼10が反応槽内の気相部を上昇中には反応液を内周壁面7に沿って掻き揚げ、下降中には反応液を撹拌翼10の上に沿って薄膜状態で流下させることができ、さらには必要があれば撹拌翼10から流下した反応液を自由表面形成部材に接触させることができる。なお、該撹拌翼10を内周壁面7に密接させる場合においては、さらに尾翼(図示せず)を補助的に設けることもでき、この尾翼によって内周壁面7に付着した反応液の更新を促進することもできる。
第2図は開口円板13の正面図である。該図において、10は回転方向と逆方向に傾斜したプレート状の撹拌翼であり、反応槽1の円周方向に90度ずつ、ずらして4枚設置されている。この撹拌翼10の設置枚数は必要により4枚より増減することは可能であり、その際も配置を周方向に均等にすることが好ましい。各撹拌翼10の延長線上には自由表面形成部材として、撹拌翼10の落下縁に沿って、丸棒11および12を略並行してそれぞれ2列に配設することもできる。その際、最も撹拌翼の回転中心に近い位置に配設された丸棒12の径は該回転中心より遠い位置に配設された丸棒11よりも大きくすることが好ましい。
なお、丸棒11、12の径が等しいか、あるいは逆に丸棒11の径が丸棒12の径よりも大きい場合は、反応物の液流を多層膜として形成させることが困難となる。何故ならば、このような場合には大部分の反応液が撹拌翼10と丸棒11の隙間から合体した形で垂れ落ちるようになることが多く、目的とする安定した多層膜のような自由表面を多く持った液流の形成を十分に行うことが困難となるからである。なお、丸棒の代わりにその横断面が多角形、卵円形、楕円形等の棒状体を用いることもでき、平面板、曲面板等の板状体を用いることもでき、さらに該板状体を格子状や網状としたり、穴開き板としたりすることもできる。このような場合においても、反応液が流下する際に多くの自由表面が形成されるような条件とすることが好ましいことはいうまでもない。従って、液体が流下する際に合体して自由表面が少なくならないように配慮した自由表面形成部材を用いることはいうまでもない。
ここで、撹拌翼および自由表面形成部材の数量、形状、およびサイズ、あるいは設置する間隔等の条件については、製造条件等によって異なる。ただし、これらの条件においては落下する反応液が自由表面形成部材に接触して多層膜のような自由表面積が大きな液流を形成させながら流下させることが肝要である。また、反応槽入口から出口に向かって反応液の溶融粘度が変化する場合には、粘度変化に応じて撹拌翼および自由表面形成部材の数量、形状、およびサイズ、あるいは設置する間隔等の条件を変えることができることはいうまでもない。
本横型反応槽は、所望の温度に加熱するための加熱手段(図示せず)を有しており、反応装置外殻を電熱熱源により直接加熱することもできるし、製造装置外殻を第1図に示すように二重ジャケット構造となし、ジャケット内部に適当なる加熱媒体、例えばダウサム等の熱媒体液あるいは熱媒体蒸気を存在せしめて加熱する方法、反応室中に伝熱面を設置する方法等を適宜採用することができる。前記加熱は開口円板によって仕切られた各反応室毎および/またはさらに反応室内を分割して各分割領域毎に独立して加熱しうるようにしてもよく、また2つ以上の反応室を一体として加熱することもできる。さらに、必要に応じて本発明の横型反応槽の内部または別個に設けた熱交換器を有する循環手段を設けることもできる。なお、反応圧力については特に限定することはなく、減圧下あるいは大気圧下あるいは大気圧以上の加圧下で行うことができる。
連続反応装置としては、上記の無軸籠型反応装置以外に一軸、二軸の押出機、ニーダー、住友重機械工業株式会社製バイボラック、三菱重工業株式会社製N−SCR、株式会社日立製作所製めがね翼、格子翼あるいはケニックス式攪拌機等が知られているが、三菱重工業株式会社製N−SCRは市販されておらず、株式会社日立製作所製めがね翼、格子翼、ケニックス式攪拌装置は、セルフクリーニング性が劣るため反応装置器壁で生成する分解劣化物が製品中に混入することがあるので本発明には不適である。
また一軸、二軸の押出機は、セルフクリーニング性は良好であるが、装置生産性が悪く、経済性に問題があるため本発明には不適である。
無軸籠型反応装置での反応は回分式に行うことも可能であるが、連続的に実施する方法が経済的に有利であることは、当該業者にとっては容易に理解できることであるが、加えて重合反応をピストンフローに近く進めることができ、ポリ乳酸組成物の熱履歴を小さな分散領域に抑えることにより、ポリ乳酸組成物のランダム化率を低く維持できる利点も有する。
本発明により得られるポリ乳酸組成物は、L−乳酸ブロックとD−乳酸ブロックを有するブロックポリマーを含有する。本発明方法によれば、高い分子量を有し、且つ、溶融と結晶化を繰り返してもステレオコンプレックス結晶のみが成長するポリ乳酸組成物が得られる。
本発明のポリ乳酸組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、通常の添加剤、すなわち各種安定剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、末端封止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など、各種成形助剤あるいは物性改良剤例えば、潤滑剤、滑剤、離形剤、静電密着改良剤、可塑剤、各種フィラー、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、染料、顔料を含む着色剤さらにポリ乳酸以外の各種熱可塑性樹脂等を所望に応じて含有することができる。
成形品
本発明のポリ乳酸組成物は、従来公知の各種成形法により優れた物性を有する成形品にすることができる。成形法として、押し出し成形、インフレーション成形、ブロー成形品、射出成形などがある。成形品として、フィルム、シート、繊維などが挙げられる。これらの成形品は、耐熱性、経済性、透明性、耐久性などに優れる。
ポリ乳酸繊維
以下、成形品としての本発明のポリ乳酸組成物からなる繊維について述べる。
本発明のポリ乳酸繊維は、示差走査熱量計(DSC)測定において、ステレオコンプレックス結晶に由来する単一融解ピークのみを示し、融解熱が40から80J/g、融解ピーク温度が195℃以上で、且つ下記要件を満たすポリ乳酸繊維である。
1)繊維長1000m換算での毛羽数が10未満であること。
2)175℃、耐アイロン性を満たすこと。
3)強度が3.5cN/dTex以上、伸度が25から50%であること。
4)広角X線回折法(XRD)測定によるステレオコンプレックス結晶化比率(Cr率)が90%以上であること。
ここにおいてステレオコンプレックス結晶化比率(Cr率)は:
Cr率(%)=ΣISCi/(ΣISCi+IHM)×100 (3)
[式中ΣISCi=ISC1+ISC2+ISC3,ISCi(i=1〜3)はそれぞれ2θ=12.0°,20.7°,24.0°付近の各回折ピークの積分強度、IHMはポリ乳酸ホモ結晶に由来する回折ピークの積分強度を表す。]
以下、各要件について説明する。
本発明のポリ乳酸繊維はDSC測定で実質的にステレオコンプレックス結晶の融解ピークのみを有し、該ピークの結晶融解熱が40から80J/g、該融解ピーク温度が195℃以上である。
該ピークの結晶融解熱が上記範囲内にあると、繊維におけるステレオコンプレックス結晶の結晶化度を十分に高くすることができ、実用に耐えうる強度を発現することが可能である。また、融解ピーク温度が195℃以上であると、175℃の耐アイロン性を保有することができる。
本発明のポリ乳酸繊維は、繊維長1000m換算での毛羽数が10未満である。毛羽数が少ないポリ乳酸繊維はさらに捲縮などの後加工に供するとき、工程上の問題が少なく、また該繊維よりなる繊維製品の品質も良好となるため極めて重要な品質である。
本発明のポリ乳酸繊維は、175℃、耐アイロン性を満たすことが必要である。従来提案されている170℃の耐アイロン性に比較し本発明で特定する175℃での耐アイロン性はより実用的意義が大きく、特に、本発明のポリ乳酸繊維をポリエチレンテレフタレート繊維などの汎用繊維と混用するために好適であり本発明においては必須の物性である。
ポリ乳酸繊維は強度が3.5cN/dTex以上、伸度が25%から50%あることが必須であり、好ましくは3.8cN/dTex以上、さらに好ましくは4.0cN/dTex以上である。伸度はあまり大きいことも好ましくなく50%が上限である。
衣料用および産業用として使用するにあたり、4.0cN/dTex以上の強度と上記範囲の伸度を有している繊維は実用面での使用範囲が広くなり好ましい。
本発明のポリ乳酸繊維は150℃における熱収縮率が0.1%から7%であることが好ましい。収縮率は0%であることが理想であるが、0.1%以下にするのは実際上、困難であり、ここまで小さくする必要性も少ない。実用上は0.2%から6.5%、より好ましくは0.3%から6%の範囲が選択される。
熱収縮率が大きいと繊維製品がアイロン掛けをはじめ、高温にさらされたとき、収縮して小さくなり実用に耐えなくなる問題が発生することが懸念される。
本発明のポリ乳酸繊維はさらに、広角X線回折法(XRD)測定におけるCr率が90%以上であることが必要であり、さらに好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上であるが完全に100%である必要もない。
ステレオコンプレックス結晶を形成してなるポリ乳酸組成物は、作製条件等に応じて、DSC測定で通常は、ポリ乳酸単独結晶の低温結晶融解ピークとステレオコンプレックスポリ乳酸結晶の高温結晶融解ピークの少なくとも2つの吸熱ピークを示すことが知られているが、本発明のポリ乳酸繊維はXRD測定によるCr率が90%以上で完全には100%ではないにもかかわらず、DSC測定で実質的にステレオコンプレックスポリ乳酸結晶の単一融解ピークのみを示し、該融点が200℃以上であることにより繊維製品の布質や風合いを175℃でのアイロン掛けにより損ねることがない。
本発明のポリ乳酸繊維は、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)が90%以上で、ステレオコンプレックス結晶化比率(Cr率)が実質的に0である未延伸糸を延伸、熱固定することにより好適に得ることができる。
さらに好ましくは未延伸糸のステレオコンプレックス結晶含有率(S)は実質的に100%であり、ステレオコンプレックス結晶化比率(Cr率)が実質的に0である。
かかるステレオコンプレックス結晶含有率(S)とステレオコンプレックス結晶化比率(Cr率)の未延伸糸より得られる延伸糸が上記物性を好適に発揮できる。
本発明のポリ乳酸繊維は溶融紡糸法により得られることを特徴とする。乾式あるいは湿式などの溶液紡糸では工業的な観点から見ると生産性が低く、またポリL−乳酸とポリD−乳酸をブレンドした溶液の安定性が低いために、安定した糸が得られにくいためである。
本発明のポリ乳酸繊維は例えば以下の方法により製造することができる。即ち、ポリ乳酸組成物はエクストルーダー型やプレッシャーメルター型の溶融押出機で溶融された後、ギアポンプにより計量され、パック内で濾過された後、口金に設けられたノズルからモノフィラメンント、マルチフィラメント等として吐出される。
ポリ乳酸組成物中の固形異物、高粘度異物、とりわけ紡糸、延伸を阻害する直径1μm超の異物を効果的に除去するため、サンドパックあるいは100から500メッシュの金網フィルターあるいはこれらの併用により異物が濾過除去されることが好ましい。
かかる処理により紡糸、延伸時の断糸或いは毛羽の生成を抑制できるからである。
本発明のポリ乳酸組成物を溶融紡糸するにあたっては220℃から290℃の温度範囲で行われる。好ましくはポリ乳酸が溶融し且つポリ乳酸組成物の分解がおこりにくい温度、すなわち235℃から280℃、さらに好ましくは240℃から270℃の範囲が選択される。
口金の形状、口金数は特に制限されるものではなく、円形、異形、中実、中空等のいずれの繊維断面を形成する口金であっても採用することができる。
吐出されたポリ乳酸繊維は直ちに冷却・固化された後、集束され、油剤を付加されて未延伸糸として巻き取られる。
ここで、冷却は、好ましくは40℃以下の冷風、より好ましくは−10℃から40℃の冷風、さらに好ましくは0から30℃の冷風により行われ、冷却された糸条の温度が口金下3mの位置において結晶化開始温度以下にまで冷却されていることが好ましい。この処理によって、未延伸状態の糸条におけるポリ乳酸結晶の成長を大幅に抑制することができる。
本発明において、ポリ乳酸繊維はガラス転移温度以下の温度で未延伸糸として巻き取られるが、巻き取り速度はステレオコンプレックス結晶が形成され易くなることより300m/分から5000m/分の範囲が好ましい。巻き取られた未延伸糸はその後、延伸工程に供されるが、紡糸工程と延伸工程とは必ずしも分離する必要はなく、紡糸後いったん巻き取ることなく引き続き延伸を行う直接紡糸延伸法を採用しても構わない。
延伸では1段延伸でも、2段以上の多段延伸でも良く、高強度の繊維を作製する観点から、延伸倍率は3倍以上が好ましく、さらには4倍以上が好ましい。好ましくは3から10倍が選択される。しかし、延伸倍率が高すぎると繊維が失透し白化するため、繊維の強度の低下あるいは染色斑などが引き起こされることがあり好ましくない。
延伸の予熱方法としては、ロールの昇温のほか、平板状あるいはピン状の接触式加熱ヒータ、非接触式熱板、熱媒浴などが挙げられるが、通常用いられる方法を用いればよい。延伸はポリ乳酸のガラス転移温度からホモポリ乳酸の結晶融点の範囲で行われる。
ホモ結晶融点以上の温度で延伸すると、未延伸糸中のホモポリ乳酸が溶融し配向結晶化が好適に進行しないことがあるからである。延伸温度は70℃から170℃、好ましくは70℃から140℃、特に好ましくは80℃から130℃の範囲が選択される。
延伸に引き続き、延伸糸の巻き取り前に繊維構造を固定化するため熱固定が行われる。熱固定にはホットローラーのほか、接触式加熱ヒータ、非接触式熱板など任意の方法を採用することができる。
熱固定温度は通常ポリマーの融点より低い温度で且つできるだけポリマーの融点に近い温度で熱固定が行われることが好ましく、本発明においては、具体的には170℃から220℃で熱固定することにより、耐アイロン性を有するとともに強度3.5cN/dTex以上のポリ乳酸繊維を得ることができる。
本発明のポリ乳酸組成物よりなる繊維では、ステレオコンプレックス結晶の形成を促進するための剤、例えば燐酸エステル金属塩などを添加する必要がなく、溶融混練することにより高度にステレオコンプレックス結晶を形成することができるため前述した未延伸糸を好適に得ることができる。
燐酸エステル金属塩などのステレオコンプレックス結晶の形成を促進する剤を添加する必要がないため、ポリ乳酸中の金属イオンを100ppm以下とすることができる。
ここでいう金属イオンとは、アルカリ土類金属、希土類、第三周期の遷移金属類、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモンからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属である。
一般に、ポリ乳酸のステレオコンプレックス結晶の形成に好適に使用できる燐酸エステル金属塩はポリ乳酸に対して難溶性あるいは不溶性であり紡糸延伸時、繊維の破断原因となることが少なくない。
本発明においてはかかる燐酸エステル金属塩をはじめとする剤を使用しないため、紡糸、延伸時の繊維破断を抑制でき、繊維の毛羽数を好適に抑制することができる。
また、本発明の溶融紡糸に供するポリ乳酸組成物は水分率が100ppm以下であることが好ましい。水分率が高いとポリ乳酸組成物の加水分解が促進され、分子量が著しく低下し、紡糸が困難になるばかりでなく、得られた糸の物性が低下して好ましくない。
またポリ乳酸組成物中に残留するラクチド量を400ppm以下とした後に溶融紡糸することが好ましい。ラクチド法によって得られるポリ乳酸組成物の場合には、ポリ乳酸組成物に含有されるラクチドは溶融紡糸時に気化して糸斑の原因になることがあるため、ラクチド量を400ppm以下に抑えることが良好な繊維を得る目的からすると好ましい。
また本発明に用いるポリ乳酸組成物は260℃において溶融させた場合の重量平均分子量の低下が20%以下であるのが好ましい。高温での分子量低下が激しいと、紡糸が困難になるばかりでなく、得られた繊維の物性が低下し好ましくない。
本発明のポリ乳酸繊維には、本発明の目的を損なわない範囲内で、通常の添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離形剤、各種フィラー、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、染料、顔料を含む着色剤等を所望に応じて含有することができる。
なお、本発明のポリ乳酸繊維は毛羽が少ないため、仮撚り加工糸や機械捲縮加工糸或いは押し込み捲縮糸などの加工糸用の原糸として好適に用いることができる。また長繊維のみならず短繊維及びそれを使用した紡績糸とすることもできる。
本発明のポリ乳酸繊維は具体的にはシャツ、ブルゾン、パンツ、コートといった衣料用途、カップ、パッド等の衣料資材用途、カーテン、カーペット、マット、家具等のインテリア用途、さらにベルト、ネット、ロープ、重布、袋類、フェルト、フィルター等の産業資材用途、車両内装用途にも好適に使用することができる。
なお、本実施例における、各種測定・評価は以下の方法を用いた。
(1)重量平均分子量(Mw)の測定:
重量平均分子量(Mw)はショーデックス製GPC−11を使用し、組成物50mgを5mlのクロロホルムに溶解させ、40℃のクロロホルムにて展開した。重量平均分子量(Mw)、はポリスチレン換算値として算出した。
(2)DSCの測定:
試料片5mgを専用アルミニウムパンに入れ、TAインスツルメンツ社製示差走査熱量計(DSC2920)を用いて測定を行った。測定条件は下記の通りとし、結晶融解エンタルピーは、DSCチャートに現れる結晶融解ピークとベースラインで囲まれる領域の面積によって算出した。
(a)20℃〜250℃を20℃/分で昇温。
(b)250℃到達後ドライアイスで20℃まで急冷。
(c)上記(a)および(b)の繰り返しを計3回実施。
(3)ステレオコンプレックス結晶含有率の算出法:
ステレオコンプレックス結晶含有率(S)は、DSCにおいて150℃以上190℃未満に現れる結晶融解エンタルピーΔHaと、190℃以上250℃未満に現れる結晶融解エンタルピーΔHbから下記式にて算出した。
S={ΔHb/(ΔHa+ΔHb)}×100(%)
(4)L−乳酸単位とD−乳酸単位の比(L/D)の測定:
L/Dは、25℃、クロロホルム/ヘキサフルオロ−2−プロパノールの95/5(v/v)溶液中で測定した比旋光度[α]を使用し、下記式に従い求めた。
L/D=([α]/320+0.5)/(0.5+[α]/(−320))
式中320は純粋なL−乳酸の比旋光度、−320は純粋なD−乳酸の比旋光度である。
(5)ランダム化率:
ランダム化率Rは下記式から算出した。
R={1−(P1/P2)}×100(%)
式中P1は、ポリ乳酸組成物の10重量%重クロロホルム/1,1,1,2,2,2−ヘキサフルオロ−2−プロパノール=9/1混合溶液中で測定した同核デカップリング1H−NMRにおいて、ケミカルシフト5.175ppmのIII四連子ピークの積分強度である。P2はケミカルシフト5.250〜5.150ppmに現れるメチンプロトンピークの四連子(SIS、SII、IIS、III、ISI)合計積分強度である。
なお四連子のSはシンジオタクティック二連子を、Iはアイソタクティック二連子を指す。
(6)フィルム静電キャスト性:
ポリ乳酸組成物をフィルム状に溶融押し出しする際、口金部の近くで且つ押し出しフィルムの上部に設置したワイヤー電極により冷却ドラムとの間に7000Vの電圧を印加して厚さ210μmのフィルムをキャスティングする際、キャスティング速度50m/分でピン状欠陥(pinner bubble)を生ずることなく、厚みの均一性を低下することなく安定的に製膜できるか否かで判断した。
厚み均一性は試料長、5mの厚み(Rμm)を電子マイクロメーターで測定、厚み変動値(△R)がRの7%以内のものを合格とした。
ピン状欠陥は上記試料につきのピン状欠陥の有無を目視判断により判定した。ピン状欠陥が認められないものを合格とした。
(7)ヘーズの測定:
日本電色株式会社製Hazemeter MDH2000を使用し、ポリ乳酸組成物をフィルム状に溶融押し出して得た50μm厚のフィルムを使用し、JIS K7105−1981の6.4に準拠して測定した。
ヘーズ10%を超えると透明性不良と判断。ヘーズ1〜7%の時、透明フィルムとして使用可能と判断、また1%以下の時は光学用フィルムに使用可能な透明性と判断した。
(8)寸法安定性:
ポリ乳酸組成物をフィルム状に溶融押し出して得たフィルムを150℃の熱収縮率にて判定した。収縮率5%超の試料、或いは溶融収縮した試料を寸法安定性不合格、収縮率5%未満の試料を寸法安定性合格と判定した。
(9)成形品機械的物性−強度、伸度:
株式会社オリエンテック社製“テンシロン”引っ張り試験機にて糸試料においては試料長25cm、引張速度30cm/分の条件で測定した。
フィルム試料においては、幅1cm、長さ10cmの試料を引張速度10cm/分の条件で測定した。
(10)ステレオコンプレックス結晶化比率(Cr率)(%):
理化学電気社製ROTA FLEX RU200B型X線回折装置用いて透過法により、以下条件でX線回折図形をイメージングプレートに記録した。得られたX線回折図形において赤道方向の回折強度プロファイルを求め、ここで2θ=12.0°,20.7°,24.0°付近に現れるステレオコンプレックス結晶に由来する各回折ピークの積分強度の総和ΣISCiと2θ=16.5°付近に現れるホモ結晶に由来する回折ピークの積分強度IHMから下式に従いステレオコンプレックス結晶化比率(Cr率)を求めた。尚、ΣISCiならびにIHMは、赤道方向の回折強度プロファイルにおいてバックグランドや非晶による散漫散乱を差し引くことによって見積もった。
X線源:Cu−Kα線(コンフォーカル ミラー)
出力:45kV×70mA
スリット:1mmΦ−0.8mmΦ
カメラ長:120mm
積算時間:10分
サンプル:長さ3cm、35mg
Cr率(%)=ΣISCi/(ΣISCi+IHM)×100
ここで、ΣISCi=ISC1+ISC2+ISC3,ISCi(i=1〜3)はそれぞれ2θ=12.0°,20.7°,24.0°付近の各回折ピークの積分強度。
(11)耐アイロン性評価:
テストする繊維にて10cm角の布巾を作成し表面温度175℃に調整したアイロンで30秒アイロン掛けを行い、布巾形状、寸法、風合いの変化より耐熱性を判定した。
合格:○単糸の融着もなく処理前の布巾の形状、寸法、風合いを良好に保つ。
不合格:×単糸の融着あるいは処理前の布巾の熱変形、ごわごわした風合いへの変化がみられる。
(12)150℃熱収縮率の測定:
JIS L−1013 8.18.2項a)に準じて測定した。
(13)毛羽数:
繊維長1000mの試料を黒色紙上、走査し目視により毛羽数を数えた。毛羽数10未満のものを合格、10以上のものを不合格と判断した。
なお、試料長が1000mに満たない場合には1000m当たりに換算した。
実施例1
(工程(1))
真空配管、窒素ガス配管、触媒添加配管、ラクチド溶液添加配管、アルコール開始剤添加配管を具備したフルゾーン翼具備縦型攪拌槽(40L)を窒素置換後、純度99.5%のL−ラクチド30重量部、ステアリルアルコール0.9重量部、オクチル酸スズ6.1×10−3重量部を仕込んだ。その後、窒素圧106.4kPaの雰囲気下、150℃に昇温し内容物が溶解した時点で、攪拌を開始し内温をさらに190℃に昇温した。内温が180℃を超えると反応が始まるので185℃〜190℃に保持し1時間反応を継続した。
さらに攪拌しつつ、窒素圧106.4kPa、内温200℃〜210℃で、0.5時間反応を行った。その後、内圧を常圧より徐々に減圧して600Paとし30分保持しL−ラクチドを除去し、内圧を窒素圧で200〜300kPaに昇圧し、溶融物をチップカッターに押し出し、プレポリマー(ポリL−乳酸)の半径3mm、長さ4mmの円柱状チップを得た。
(工程(2))
プレポリマーをホッパーに充填し、第1図に示す無軸籠型反応装置に供給した。反応装置を1kPaに減圧しつつ1時間かけて15重量部のプレポリマーを充填させた。反応物は熱媒を封入したジャケットからの加熱によって出口(3)で230℃になるように制御した。また、反応圧力は図示しないエジェクターにより内部のガスを吸引することで1kPaの真空に保持した。
軸(4、5)の回転数は10rpmと一定回転になるようにモーターで制御し、端部円板(8、9)を回転させるとともに端部円板(8、9)に連結固定されている撹拌翼(10)および開口円板(13)を回転させた。1kPaの減圧状態を維持し、低分子化合物の除去を30分間継続させた後、反応装置内に窒素を導通させて大気圧に戻した。
(工程(3))
次に排気口に繋がる配管を外し、その開口部からD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、純度99.9%)20重量部とオクチル酸スズ0.004重量部を加え、1気圧下、240℃で2時間重合を行いポリ乳酸組成物を得た。
(工程(4))
最後に反応装置内を1kPaに減圧しつつ1時間にわたって低分子化合物の除去を行い溶融状態のポリ乳酸組成物を得た。これを反応装置の吐出口からストランド状に引き出し、水冷バスにて冷却しつつチップカッターで半径=3mm、長さ4mmの円柱状チップに裁断した。
プレポリマー、ポリ乳酸組成物の重量平均分子量(Mw)ラクチド含量を表1に、DSC三回繰り返しによるステレオコンプレックス結晶融点(Tm)、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)、並びに同核デカップリング1H−NMRによるランダム化率(R)を表2に示す。
実施例2
実施例1におけるプレポリマー(ポリL−乳酸)に替え三井化学株式会社製「レイシア」を使用し、その他の条件は実施例1と同様にして組成物を製造した。
プレポリマー、ポリ乳酸組成物の重量平均分子量(Mw)ラクチド含量を表1に、DSC三回繰り返しによるステレオコンプレックス結晶融点(Tm)、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)、並びに同核デカップリング1H−NMRによるランダム化率(R)を表2に示す。
実施例3
開始剤をエチレングリコールに変えた以外は実施例1と同様の操作を行い組成物を得た。プレポリマー、ポリ乳酸組成物の特性を表1および表2に示す。
実施例4
実施例1で製造したポリ乳酸組成物100重量部に、0.5重量部の平均粒径3ミクロンに粉砕した3,5−ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を窒素雰囲気下、混合した。
その後、シリンダー温度220℃の2軸押出機で溶融混練し、ダイ温度220℃、キャスティング速度10m/分で210μmのフィルム状に溶融押し出した。押し出したフィルムは、白金コート線状電極を用い、静電キャスト法によって鏡面冷却ドラム表面に密着、固化した。
得られたフィルムの厚み均一性は良好な合格レベルであり、ピン状欠陥などの表面欠陥の発生もなかった。
得られた未延伸フィルムはさらに120℃で、縦方向に3.6倍、横方向に3.9倍延伸、150℃で熱固定を行い厚さ15μmの2軸延伸フィルムとした。
フィルム試料をDSC測定したところステレオコンプレックス結晶含有率は100%、広角X線回折法による結晶化度は45%、ヘーズは1%、強度(MD/TD)は54/55MPa、伸度(MD/TD)は71/72%、収縮率は(MD/TD)平均で3%の良好なフィルムであった。
実施例5
実施例2で製造したポリ乳酸組成物を、110℃で5時間真空乾燥後、2軸ルーダー付溶融紡糸機を用い230℃で溶融し、0.40Φの吐出口を168ホール持つ口金から250g/分で吐出させた。
吐出直下の紡糸筒により冷却した後、集束し油剤を付加して、1000m/分の速度で未延伸糸を巻き取った。
この未延伸糸は示差走査熱量計(DSC)測定においてステレオコンプレックス結晶の単一融解ピークを示し、融点219℃であった。
この未延伸糸を70℃で3.5倍に延伸し引き続き180℃で熱セットを行い879dTex/168filのポリ乳酸繊維を得た。繊維強度は4.2cN/dTex、150℃熱収縮率は2.5%で衣料用途には十分な強度であった。
得られた繊維を筒網にして175℃でのアイロンテストを行ったところ、破れ穴あき、粗硬化、縮みなどは発生せず十分な耐熱性を有していた。
実施例6
実施例1〜3で得られたポリ乳酸組成物を、各々、110℃で5時間乾燥し、射出成形機(住友重機械工業株式会社製SG150U型)を使用して、シリンダー温度220℃、金型温度110℃、成形サイクルは100秒の条件で厚さ3mmのASTM測定用の成形片を作成した。
また試験片を変形なく確実に得られる最短の時間を成形サイクルとした。得られた成形片の外観はいずれも良好で問題なかった。試験片はいずれも、DSCで219、218、219℃の単一の結晶融点(Tm)を示した。
比較例1
(工程(1))
真空配管、窒素ガス配管、触媒、光学純度99.5%のD−ラクチド溶液添加配管、アルコール開始剤添加配管を具備したフルゾーン翼具備縦型攪拌槽(40L)を窒素置換後、L−ラクチド30重量部、ステアリルアルコール0.9重量部、オクチル酸スズ6.1×10−3重量部を仕込んだ。
窒素圧106.4kPaの雰囲気下、150℃に昇温し内容物が溶解した時点で、攪拌を開始し内温をさらに190℃に昇温した。内温が180℃を超えると反応が始まるので冷却を開始し、内温を185℃〜190℃に保持し1時間反応を継続した。さらに攪拌しつつ、窒素圧106.4kPa、内温200℃〜210℃で、0.5時間反応を行いプレポリマー(ポリL−乳酸)を得た。
(工程(2))
その後、内圧を常圧より徐々に減圧して600Paとし30分保持しL−ラクチドを除去した。
(工程(3))
内圧を窒素で常圧にもどすとともにD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、純度99.9%)30重量部を添加して、内温220℃で1時間反応しポリ乳酸組成物を得た。
(工程(4))
その後、無軸籠型反応装置に移送し、230℃にて1時間L、およびD−ラクチドの除去を実施した。ポリ乳酸組成物の重量平均分子量、ラクチド含量を表1に、DSC三回繰り返し測定結果とランダム化率(R)を表2に示す。
冷却留出管を備えた重合反応容器の原料仕込み口から、窒素気流下でL−ラクチド100重量部およびステアリルアルコール0.15重量部を仕込んだ。続いて反応容器内を5回窒素置換し、L−ラクチドを190℃にて融解させた。L−ラクチドが完全に融解した時点で、原料仕込み口から2−エチルヘキサン酸スズ0.05重量部をトルエン500μLと共に添加し、190℃で1時間開環重合してポリL−乳酸を得た。
開環重合終了後、反応容器内を133kPaに減圧し、系内から余剰のL−ラクチドを除去した。
続いて原料仕込み口から窒素気流下でD−ラクチド100重量部を仕込んだ。反応容器を190℃に維持し、開環重合反応を2時間続けた。重合終了後、反応容器を230℃に昇温し、133kPaに減圧しつつ余剰のD−ラクチドを除去した。最後に反応容器の吐出口からポリ乳酸組成物を非晶ストランドとして吐出し、水冷しながらペレット状に裁断した。L−ラクチド開環重合直後と吐出直後のポリ乳酸組成物のMwを表3に示す。またL/Dを表3に併せて示す。
上記方法で得られたポリ乳酸組成物の非晶ストランドを180℃に加熱した熱風循環型乾燥機中で1時間静置した。得られたポリ乳酸組成物のDSCの三回繰り返し測定結果とステレオコンプレックス結晶含有率(S)を表4に示す。
上記操作で得られたポリ乳酸組成物をチップ化し110℃で5時間真空乾燥後、二軸ルーダー付溶融紡糸機を用い230℃で溶融し、0.40Φの吐出口を、168ホール持つ口金から250g/分で吐出させた。
吐出直下の紡糸筒中、10℃の冷風により冷却、パック下2mでの糸条温度は結晶化開始温度以下である100℃以下であった。糸条は集束し油剤を付加して、1000m/分の速度で未延伸糸を巻き取った。
この未延伸糸はDSC測定においてステレオコンプレックス結晶の単一融解ピークを示し、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)は100%、ステレオコンプレックス結晶化比率(Cr率)は0%、融点は220℃であった。
この未延伸糸を70℃で3.5倍に延伸、引き続き180℃で熱セットを行い879dtex/168filのポリ乳酸繊維を得た。繊維強度は3.8cN/dTex、伸度は31%、毛羽数は2、DSC測定によりステレオコンプレックス結晶の単一融解ピークを示し、結晶融解ピーク温度は220℃、結晶融解熱は45J/g、150℃熱収縮率は6.5%で衣料用途には十分な強度であった。
XRD測定によるステレオコンプレックス結晶化比率(Cr率)は98%であり、得られた繊維を筒網にして175℃でのアイロンテストを行ったところ、破れ穴あき、粗硬化、縮みなどは発生せず十分な耐アイロン性(○)を有していた。
実施例8
実施例7において、紡糸温度、延伸温度、延伸倍率、熱セット温度を表5中の条件に変更して、紡糸、延伸、熱セットを行った。
この未延伸糸はDSC測定においてステレオコンプレックス結晶の単一融解ピークを示し、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)は100%、ステレオコンプレックス結晶化比率(Cr)は0%、融点は220℃であった。
これらの得られた繊維の物性、150℃熱収縮率、毛羽数、175℃アイロン耐熱性を評価した。結果をあわせて表5中に記載する。
実施例9
実施例7において、ステアリルアルコール0.15重量部を0.2重量部に変更したこと以外は同様の操作を行った。結果を表3〜表5に示す。
比較例2
冷却留出管を備えた重合反応容器の原料仕込み口から、窒素気流下でL−ラクチド100重量部およびステアリルアルコール0.15重量部を仕込んだ。続いて反応容器内を5回窒素置換し、L−ラクチドを190℃にて融解させた。L−ラクチドが完全に融解した時点で、原料仕込み口から2−エチルヘキサン酸スズ0.05重量部をトルエン500μLと共に添加し、190℃で1時間開環重合してポリL−乳酸を得た。
開環重合終了後、反応容器内を133kPaに減圧し、系内から余剰のL−ラクチドを除去した。
一方、冷却留出管を備えた重合反応容器の原料仕込み口から、窒素気流下でD−ラクチド100重量部およびステアリルアルコール0.15重量部を仕込んだ。続いて反応容器内を5回窒素置換し、D−ラクチドを190℃にて融解させた。D−ラクチドが完全に融解した時点で、原料仕込み口から2−エチルヘキサン酸スズ0.05重量部をトルエン500μLと共に添加し、190℃で1時間開環重合してポリD−乳酸を得た。
開環重合終了後、反応容器内を133kPaに減圧し、系内から余剰のD−ラクチドを除去した。
上記の操作によって得られたポリL−乳酸50重量部と、ポリD−乳酸50重量部と、株式会社ADEKA製燐酸エステル金属塩、「アデカスタブNA‐21」0.2重量部とを2軸ルーダーを使用し、225℃で3分間の滞留時間で混練することでステレオコンプレックスポリ乳酸組成物の製造を行った。
得られた組成物を用いて、実施例7と同様にして紡糸、延伸、熱固定を行い繊維化を試みたところ熱セット時、熱融着、断糸が頻発し良好な繊維を得ることができなかった。
この未延伸糸はDSC測定において2本の融解ピークを示し、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)は95%、ステレオコンプレックス結晶化比率は15%、融点は209℃であった。良好な延伸糸が得られなかったため、強度、伸度および熱収縮率の物性測定にはいたらなかった。
比較例3
比較例2において、熱セット条件のみ、融着、断糸の見られない155℃に変更した。この未延伸糸はDSC測定において2本の融解ピークを示し、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)は95%、ステレオコンプレックス結晶化比率は15%、融点は210℃であった。
得られた繊維の強度は2.6cN/dTex、伸度32%であったが、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)は95%あったがステレオコンプレックス結晶化比率は65%に過ぎず、175℃アイロン耐熱性は不合格であった。
実施例10
実施例9において、ポリ乳酸組成物100重量部あたりTinubin840(Ciba Speciality Chemicals製)を0.2重量部ブレンドしたこと以外は同様にして紡糸、延伸、熱セットを行った。
繊維強度3.8cN/dTex、伸度30%、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)、ステレオコンプレックス結晶化比率(Cr率)はともに100%、結晶融解熱は46J/g、熱収縮率6%、175℃アイロン耐熱性は良好であった。
実施例11
実施例10において、Tinubin840(Ciba Speciality Chemicals製)に代えて、ポリ乳酸組成物100重量部あたりIrganox1330 0.5重量部(Ciba Speciality Chemicals製)及びIrgafos1680.2重量部(Ciba Speciality Chemicals製)を0.2重量部ブレンドしたこと以外は同様にして紡糸、延伸、熱セットを行った。
繊維強度3.9cN/dTex、伸度32%、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)、ステレオコンプレックス結晶化比率はともに100%、結晶融解熱は45J/g、熱収縮率5%、175℃アイロン耐熱性は良好であった。
Claims (17)
- (i)L−乳酸単位とD−乳酸単位との比(L/D)が30/70〜70/30で、
(ii)重量平均分子量(Mw)が10万〜30万で、
(iii)ステレオコンプレックス結晶含有率(S)が80%以上で、
(iv)ステレオコンプレックス結晶融点(Tm)が200℃以上で、
(v)ランダム化率(R)が0.001%以上2.5%未満であるポリ乳酸組成物。
[但し、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)は、下記式で表される値である。
S={△Hb/(△Ha+△Hb)}×100(%)
式中△Haと△Hbは、それぞれ示差走査熱量計(DSC)の昇温過程において150℃以上190℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Ha)と190℃以上250℃未満に現れる結晶融点の融解エンタルピー(△Hb)である。
ランダム化率(R)は下記式で表される数値である。
R={1−(P1/P2)}×100(%)
式中P1、P2はそれぞれポリ乳酸組成物の10重量%重クロロホルム/1,1,1,2,2,2−ヘキサフルオロ−2−プロパノール=9/1混合溶液中で測定した同核デカップリング1H−NMRにおいて、ケミカルシフト5.175ppmのIII四連子ピークの積分強度と、ケミカルシフト5.250〜5.150ppmに現れるメチンプロトンピークの4連子(SIS、SII、IIS、III、ISI)合計積分強度である。なお四連子のSはシンジオタクティック二連子を、Iはアイソタクティック二連子を指す。] - ランダム化率(R)が0.001〜2%である請求の範囲第1項に記載のポリ乳酸組成物。
- ランダム化率(R)が0.001〜1%である請求の範囲第1項記載のポリ乳酸組成物。
- 重量平均分子量(Mw)が15〜30万である請求の範囲第1項記載のポリ乳酸組成物。
- L−ラクチドおよびD−ラクチドの合計含有量が100〜10000ppmである請求の範囲第1項記載のポリ乳酸組成物。
- ポリ乳酸組成物の製造方法であって、
(1)乳酸(A)またはラクチド(A)を重合してプレポリマーを得る工程、
(2)プレポリマー中の残留ラクチドを除去する工程、
(3)プレポリマーの存在下で、乳酸(B)またはラクチド(B)を重合しポリ乳酸組成物を得る工程、および
(4)ポリ乳酸組成物中の残留ラクチドを除去する工程、
を含み、乳酸(A)またはラクチド(A)を構成する乳酸単位と、ラクチド(B)を構成する乳酸単位とは、光学対掌体であり、
工程(2)〜(4)を、下記(ア)〜(オ)
(ア)両端部近傍にある反応物質の入口と出口、
(イ)反応装置内部の両端にそれぞれ対向して設けられた回転自在の端部円板、
(ウ)端部円板間に配置され、その中央部に開口を有する開口円板、
(エ)端部円板と開口円板の間、および開口円板同士の間に架設されるとともに、無軸籠型反応装置の長手方向に沿って反応装置の内周壁面と密接または近接して設けられた攪拌翼、および、
(オ)攪拌翼の反応装置内部に向けた延長線上に設けられた自由表面形成部材、
を有する円筒状の無軸籠型反応装置を使用し、
工程(2)および(4)を、180℃以上260℃以下で、1KPa以上13.3KPa以下で行い、工程(3)を、190℃以上280℃以下で、10分以上10時間以下行うことを特徴とするポリ乳酸組成物の製造方法。 - プレポリマーの反応性末端基がヒドロキシル基およびまたはカルボキシル基であり、重量平均分子量が3万〜20万であり、L−乳酸およびD−乳酸の合計含有量が500ppm以下、L−ラクチドおよびD−ラクチドの合計含有量が1〜10000ppmである、請求の範囲第6項記載のポリ乳酸組成物の製造方法。
- 工程(1)は、乳酸の直接重縮合またはラクチドの溶融開環重合によりプレポリマーを得る工程である請求の範囲第6項記載の製造方法。
- 請求の範囲第1項〜第5項のいずれか一項記載のポリ乳酸組成物よりなる成形品。
- 成形品がフィルム、シート、繊維からなる群から選ばれる請求の範囲第9項記載の成形品。
- 請求の範囲第1項に記載のポリ乳酸組成物からなり、示差走査熱量計(DSC)測定において、ステレオコンプレックス結晶に由来する単一融解ピークのみを示し、融解熱が40から80J/g、融解ピーク温度が195℃以上で、且つ下記要件をみたすポリ乳酸繊維。
1)繊維長1000m換算での毛羽数が10未満であること。
2)175℃、耐アイロン性を満たすこと。
3)強度が3.5cN/dTex以上、伸度が25から50%であること。
4)広角X線回折法(XRD)測定によるステレオコンプレックス結晶化比率(Cr)が90%以上であること。
ここにおいてステレオコンプレックス結晶化比率(Cr)は:
Cr率(%)=ΣISCi/(ΣISCi+IHM)×100 (1)
[式中ΣISCi=ISC1+ISC2+ISC3,ISCi(i=1〜3)はそれぞれ2θ=12.0°,20.7°,24.0°付近の各回折ピークの積分強度、IHMはポリ乳酸ホモ結晶に由来する回折ピークの積分強度を表す。] - 請求の範囲第1項に記載のポリ乳酸組成物を溶融紡糸して得られた、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)が90%以上であり、(XRD)測定によるステレオコンプレックス結晶化比率(Cr)が実質的に0である請求の範囲第11項に記載のポリ乳酸繊維。
- ステレオコンプレックス結晶含有率(S)が実質的に100%であり、(XRD)測定によるステレオコンプレックス結晶化比率(Cr)が実質的に0である、請求の範囲第12項に記載のポリ乳酸繊維。
- 含有金属元素の総量が100ppm以下である請求の範囲第11項に記載のポリ乳酸繊維。
- 請求の範囲第11項から14項の何れかに記載のポリ乳酸繊維を含有してなる繊維製品。
- 請求の範囲第1項に記載のポリ乳酸組成物を溶融紡糸するにあたり、口金温度を220〜290℃で設定し、口金下3mでの糸条の温度が結晶化温度以下となるように、40℃以下の冷風で急冷し、紡糸速度300から5000m/分で紡糸して未延伸糸を得る、請求の範囲第12項に記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
- 請求の範囲第16項に記載の未延伸糸を、ポリ乳酸のガラス転移温度〜170℃の温度範囲内で3倍から10倍延伸した後、170℃〜220℃の温度範囲内で熱固定して延伸糸を得る、請求の範囲第11項に記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
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