JP5139841B2 - ポリ乳酸原着繊維、その製造方法及びその製造方法に用いるチップ - Google Patents
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Description
(ポリL−乳酸:A成分)
ポリL―乳酸は、主としてL−乳酸単位からなる。L−乳酸単位はL―乳酸由来の繰り返し単位である。ポリL―乳酸は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%のL−乳酸単位を含有する。他の繰り返し単位としてD−乳酸単位、乳酸以外の共重合単位がある。D−乳酸単位及び乳酸以外の共重合単位は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
ポリD―乳酸は、主としてD−乳酸単位からなる。D−乳酸単位はD―乳酸由来の繰り返し単位である。ポリD―乳酸は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%のD−乳酸単位を含有する。他の繰り返し単位としてL−乳酸単位、乳酸以外の共重合単位がある。L−乳酸単位及び乳酸以外の共重合単位は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
ポリL−乳酸又はポリD−乳酸は、L−乳酸又はD−乳酸を直接脱水縮合する方法で製造したり、L−乳酸又はD−乳酸を一度脱水環化してL−ラクチド又はD−ラクチドとした後に開環重合したりする方法で製造することができる。これらの方法に用いる触媒として、オクチル酸スズ、塩化スズ若しくはスズのジアルコキシド等の2価のスズ化合物、酸化スズ、酸化ジブチルスズ若しくは酸化ジエチルスズ等の4価のスズ化合物、金属スズ、亜鉛化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、又はランタニド化合物等を例示することが出来る。
X1−P(=O)m(OH)n(OX2)2−n (2)
[上記式中、mは0又は1、nは1又は2、X1及びX2は各々独立に炭素数1〜20の置換基を有していても良い炭化水素基を表す。]
ポリL−乳酸とポリD−乳酸を溶液あるいは溶融状態で混合を行い結晶化させると、ステレオコンプレックスポリ乳酸結晶のみが形成されるが、分子レベルでの十分な混合状態が達成できていないとポリL−乳酸の単独結晶あるいはポリD−乳酸の単独結晶を形成しうる前駆体が残留していることがあり、ステレオコンプレックスポリ乳酸結晶前駆体との溶融粘度差により、溶融紡糸時に繊度斑や吐出不良を起こすことがある。従って、ステレオコンプレックス生成をより安定化させるために、下記一般式(1)の構造式で示される燐酸エステル金属塩(C成分)を添加する方がより好ましい。燐酸エステル金属塩は1種類を用いても複数種類を併用してもよい。
原着繊維として用いる顔料は、ポリエステル原着繊維等で通常知られているものを用いてよい。無機顔料の例としては、二酸化チタン、亜鉛華(酸化亜鉛)、べんがら、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー等の酸化物、アルミナ白、黄色酸化鉄、ビリジアン等の水酸化物、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムイエロー、朱、カドミウムレッド等の硫化物、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート等のクロム酸塩、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青等の珪酸塩、沈降性硫酸バリウム、バライト粉等の硫酸塩、炭酸カルシウム、鉛白等の炭酸塩、フェロシアン化物(紺青)、燐酸塩(マンガンバイオレット)、炭素(カーボンブラック)等がある。有機顔料の例としては、ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の塩基性染料系顔料、オレンジII等の酸性染料系顔料、スルホン化銅フタロシアニンブルー等の直接染料系顔料、カーミン6B、レーキレッドC、ジスアゾイエロー、レーキレッド4R、クロモフタルイエロー3G、クロモフタルスカーレットRN、ニッケルアゾイエロー、パーマネントオレンジHL等のアゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、フラバンスロンイエロー、チオインジゴボルドー、ペリノンオレンジ、ペリレンレッド、ジオキサジンバイオレッド、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー等の縮合多環系顔料、ナフトールイエローS等のニトロ系顔料、ピグメントグリーンB等のニトロソ系顔料、ルモゲンイエロー、シグナルレッド等の昼光蛍光顔料、アルカリブルー、アニリンブラック等がある。
なお、ポリ乳酸はポリエチレンテレフタレートに比べて屈折率が低く、深色性が強く出るため、顔料濃度や顔料混合比は、目標とする色相に併せて微調整する必要がある。
本発明におけるポリ乳酸組成物を構成するポリL−乳酸(A成分)とポリD−乳酸(B成分)との比は、A成分/B成分(質量)で、好ましくは40/60〜60/40、より好ましくは45/55〜55/45、さらに好ましくは50/50である。この範囲を逸脱すると、ステレオコンプレックスポリ乳酸結晶以外にポリL−乳酸単独結晶あるいはポリD−乳酸単独結晶が生成しやすくなり、結果として耐熱性を下げる結果となってしまう。
なお、目標とする色相を達成するために、ポリ乳酸組成物に複数の顔料を適当な比率で含ませてもよい。
ポリL−乳酸(A成分)及びポリD−乳酸(B成分)に対して、顔料(D成分)及び燐酸エステル塩(C成分)を添加する方法としては、以下のような方法が挙げられる。
(1)ポリL−乳酸(A成分)ペレット、ポリD−乳酸(B成分)ペレット、燐酸エステル塩(C成分)粉体、顔料粉体あるいはマスターパウダー(ワックスや滑剤を含む)を水分が100ppm以下になるように乾燥し、所定の流量分を1軸又は2軸溶融押出機に投入し、溶融混練を行いながら紡糸口金から吐出して未延伸糸を得る方法
(2)ポリL−乳酸(A成分)ペレット、ポリD−乳酸(B成分)ペレット、燐酸エステル塩(C成分)粉体、顔料粉体あるいはマスターパウダー(ワックスや滑剤を含む)を、所定の流量分となるようベント付き1軸又は2軸溶融押出機に投入し、脱気と溶融混練を同時に行いながら、紡糸口金から吐出して未延伸糸を得る方法
(3)(1)又は(2)の方法において、口金の代りにペレタイザー(チップカッターあるいはホットカッター)を装着し、ストランド状に吐出された組成物をペレット状に一旦カットし、水分率が100ppm以下となるように乾燥したペレット(ベント装置付き溶融押出機を使用する場合は無乾燥でもよい)を公知の溶融紡糸機に供給して未延伸糸を得る方法
(4)(3)の方法において、A成分とB成分(及び必要に応じてC成分)を含有するベースペレットと、A成分、B成分、C成分及びD成分を含有するマスターチップを別々に作成し、ベースペレットとマスターチップを所定の流量に計量して一台の溶融押出機に供給して未延伸糸を得る方法
(5)(3)の方法において、A成分とB成分(及び必要に応じてC成分)を含有するベースペレットとA成分、B成分、C成分及びD成分を含有するマスターチップを別々に作成し、ベースペレットとマスターチップを所定の混率で予めブレンダーでチップブレンドしておき、溶融押出機に供給して未延伸糸を得る方法
(6)(3)の方法において、A成分とB成分(及び必要に応じてC成分)を含有するベースペレットとA成分、B成分、C成分及びD成分を含有するマスターチップを別々に作成し、ベースペレットとマスターチップを別々の溶融押出機で溶融し、ギアポンプで所定の流量に計量して溶融状態で合流させ、スタティックミキサーあるいはダイナミックミキサーで十分な混練を行い、紡糸口金から吐出させて未延伸糸を得る方法
(7)(3)の方法において、A成分、B成分、C成分及びD成分を含有するマスターチップを作成し、A成分ペレット、B成分ペレット、マスターチップの各々を所定の流量に計量して一台の溶融押出機に供給して未延伸糸を得る方法
(8)(3)の方法において、A成分、B成分、C成分及びD成分を含有するマスターチップを作成し、A成分ペレット、B成分ペレット、マスターチップを所定の混率で予めブレンダーでチップブレンドしておき、溶融押出機に供給して未延伸糸を得る方法
(9)(3)の方法において、A成分、B成分、C成分及びD成分を含有するマスターチップを作成し、A成分ペレット、B成分ペレット、マスターチップの各々を別々の溶融押出機で溶融し、ギアポンプで所定の流量に計量して溶融状態で合流させ、スタティックミキサーあるいはダイナミックミキサーで十分な混練を行い、紡糸口金から吐出させて未延伸糸を得る方法
ポリL−乳酸樹脂、ポリD−乳酸樹脂、ポリ乳酸組成物、燐酸エステル金属塩及び顔料並びにこれらからなるマスターチップとなるポリ乳酸チップは、溶融混練の前には水分率を100ppm以下とすることが好ましい。水分率が高いと混練した際に、ポリL−乳酸成分とポリD−乳酸成分の加水分解が促進され、分子量が著しく低下し、紡糸が困難になるばかりでなく、得られた糸の物性が低下し、好ましくない。
C成分及びD成分を含んだポリ乳酸組成物は、エクストルーダー型やプレッシャーメルター型の溶融押出し機で溶融された後、ギアポンプにより計量され、紡糸口金に設けられたノズルからモノフィラメント、マルチフィラメント等として吐出される。但し、溶融温度及び紡糸温度(輸送温度、紡糸口金温度)は220〜260℃、好ましくは225〜255℃の間に制限することが必要である。なぜならば、260℃を超えると、ポリL−乳酸及びポリD−乳酸が加水分解、熱分解を起こして、ラクチド等の低分子量物を発生し、220℃を下回ると、吐出前にステレオコンプレックスポリ乳酸結晶を形成し始め、ノズルや吐出ポリマー中で固化し、紡糸単糸切れになるからである。なお紡糸の際に用いるノズルの形状、ノズル数は特に制限されるものではなく、円形、異形、中実、中空等のいずれも採用することができる。
未延伸糸をボビンに一旦巻き取るか、缶等の容器内に収納した後、公知の別延用延伸機に供される。
延伸は、1段延伸でも2段以上の多段延伸でも良いが、ステレオコンプレックスポリ乳酸繊維の未延伸糸は降伏応力が高く、かつ脆い傾向があるため、通常の室温空気中での延伸(冷延伸)や延伸前あるいは延伸中の乾熱状態での加熱では単糸レベルでの破断を生じやすいため、水中等の液浴延伸が好ましい。延伸温度は、未延伸糸を延伸すると部分的にポリL−乳酸単独結晶あるいはポリD−乳酸単独結晶を生じるため、双方の結晶融点より十分に低い20〜150℃で好ましく行われる。50〜100℃で延伸処理を行うことがより好ましい。
延伸糸を緊張熱処理又は弛緩熱収縮させることにより、延伸後のポリL−乳酸単独結晶前駆体あるいはポリD−乳酸単独結晶前駆体をステレオコンプレックスポリ乳酸結晶へ転移させ、かつ非晶部の結晶化促進あるいは非晶部の歪を除去し熱収縮を下げることができる。緊張熱処理は、130〜200℃、好ましくは140〜190℃で行うことが好ましい。緊張熱処理温度が130℃未満では、延伸時に生成するポリL−乳酸又はポリD−乳酸単独の結晶からステレオコンプレックスポリ乳酸への結晶転移が進まない。緊張熱処理温度が200℃を超えると、ステレオコンプレックスポリ乳酸結晶の融解が始まり、熱収縮や繊維硬化が始まる。また一方、弛緩熱処理は、130〜165℃、好ましくは140〜160℃で行うことが好ましい。弛緩熱処理温度が130℃未満では、延伸時に生成するポリL−乳酸又はポリD−乳酸単独の結晶からステレオコンプレックスポリ乳酸結晶への転移が進まない。弛緩熱処理温度が165℃を超えると、延伸で生じたポリL−乳酸単独結晶あるいはポリD−乳酸単独結晶の融解が始まり、熱収縮や繊維硬化が始まる。
このように定長熱処理又は弛緩熱処理における延伸糸への加熱方法は、乾熱雰囲気中又は乾熱加熱体との接触によって行うことが好ましい。
なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
ポリマーサンプル0.12gを10mLのテトラクロロエタン/フェノール(容量比1/1)に溶解し、35℃における還元粘度(mL/g)を測定した。
ポリマーの重量平均分子量はGPC(カラム温度40℃、溶媒:クロロホルム)により、ポリスチレン標準サンプルとの比較で求めた。
理化学電気社製ROTA FLEX RU200B型X線回折装置用いて透過法により、以下条件でX線回折図形をイメージングプレートに記録した。得られたX線回折図形において赤道方向の回折強度プロファイルを求め、ここで2θ=12.0°、20.7°、24.0°付近に現れるステレオコンプレックスポリ乳酸結晶に由来する各回折ピークの積分強度の総和ΣISCiと、2θ=16.5°付近に現れるホモポリ乳酸結晶に由来する回折ピークの積分強度IHMから下式に従いステレオ化率(Sc化率)を求めた。尚、ΣISCi並びにIHMは図1に示すように、赤道方向の回折強度プロファイルにおいてバックグランドや非晶による散漫散乱を差し引くことによって見積もった。
X線源: Cu−Kα線(コンフォーカル ミラー)
出力: 45kV×70mA
スリット: 1mmΦ〜0.8mmΦ
カメラ長: 120mm
積算時間: 10分
サンプル: 長さ3cm、35mg
Sc化率=ΣISCi/(ΣISCi+IHM)×100
ここで、ΣISCi=ISC1+ISC2+ISC3
ISCi(i=1〜3)はそれぞれ2θ=12.0°、20.7°、24.0°付近の各回折ピークの積分強度を
IHMは2θ=16.5°付近の回折ピークの積分強度をそれぞれ表す。
TAインストルメンツ製 TA−2920示差走査熱量測定計DSCを用いた。
測定は、試料10mgを窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温から260℃まで昇温し、結晶融解吸熱ピーク及び結晶化発熱ピークのピーク温度を各々融点及び結晶化点と定義した。
JIS L 1015:2005 8.5.1 A法に記載の方法により測定した。
JIS L 1015:2005 8.7.1法に記載の方法により測定した。
JIS L 1015:2005 8.4.1 C法に記載の方法により測定した。
JIS L 1015:2005 8.12に記載の方法により測定した。
JIS L 1015:2005 8.22 c)法において、試料量を9g、抽出用溶媒をメタノール(25℃)とし、油分抽出を25℃のメタノールで30分静置して行った以外は同様の方法により測定した。
JIS L 1015:2005 8.15 b)法に記載の方法により、150℃で測定した。
原綿から作成したニードルパンチ不織布を試験片とし、JIS L0809:2001記載の分光測色方法に従って、不織布のL*、a*、b*の値を測定した。
燐酸エステル金属塩の含有量はポリ乳酸チップ又はポリ乳酸繊維サンプルをスチール板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平坦面を有する試験成形体を作成した。この試験成形体を使って蛍光X線装置(理学電機工業株式会社製3270E型)を用いてリン元素及び金属元素含有量求めた。
また別にポリ乳酸チップ又はポリ乳酸繊維サンプルを、可溶な溶媒に溶解してメタノールにより再沈澱処理操作を行った。得られたポリ乳酸以外の成分から燐酸エステル金属塩成分を抽出した。得られた抽出成分を重水素化トリフルオロ酢酸/重水素化クロロホルム=1/1混合溶媒に溶解後、日本電子(株)製JEOL A−600 超伝導FT−NMRを用いて核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定した。そのスペクトルパターンから含有されている燐酸エステル金属塩の化学構造を特定した。これらの結果を総合的に評価して燐酸エステル金属塩含有量を算出した。
得られたポリ乳酸チップ又はポリ乳酸原着繊維サンプルをテトラクロロエタンに溶解した後、メタノールにより再沈殿操作を行って、顔料の溶液を得た。その溶液中の顔料の量から算出した。
光学純度99.8%のL−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)100質量%を重合容器に加え、重合容器内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.2質量%、触媒としてオクチル酸スズ0.05質量%を加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーを製造した。このポリマーを7%5N塩酸のアセトン溶液で洗浄し、触媒を除去し、ポリL−乳酸A1を得た。得られたポリL−乳酸A1の還元粘度は2.92(mL/g)、重量平均分子量は13万であった。融点(Tm)は168℃であった。結晶化点(Tc)は122℃であった。
光学純度99.8%のD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)100質量%を重合容器に加え、重合容器内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.2質量%、触媒としてオクチル酸スズ0.05質量%を加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーを製造した。このポリマーを7%5N塩酸のアセトン溶液で洗浄し、触媒を除去し、ポリD−乳酸B1を得た。得られたポリD−乳酸B1の還元粘度は2.65(mL/g)、重量平均分子量は13万であった。融点(Tm)は176℃であった。結晶化点(Tc)は139℃であった。
ポリL−乳酸A1及びポリD−乳酸B1のチップを作成し、ポリL−乳酸A1/ポリD−乳酸B1=50/50(質量比)及びA成分とB成分の合計に対して燐酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウム塩(平均粒径5μm)0.1質量%とカーボンブラック(C.I.ピグメント・ブラック7)30質量%を水分率が50ppm以下となるように乾燥後、各々ロスインウェート式振動フィーダーで2軸ルーダー溶融紡糸機に供給し、ベント使用の状態で230℃で溶融し、ペレタイザーにより、2mm径、2mm長の原着マスターチップを作成した。この原着マスターチップは示差走査熱量計(DSC)で217℃にステレオコンプレックスに由来する単一の結晶融解ピークを有していた。
その後、口金下30mmの位置で25℃の空気を吹き付けて冷却固化させながら、450m/分の速度で未延伸糸を巻き取った。この未延伸糸はSc化率0%で、示差走査熱量計(DSC)で217℃にステレオコンプレックスに由来する単一の結晶融解ピークを有していた。
マスターチップ中の燐酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウム塩を0質量%とした以外は実施例1と同様に実施したが、溶融粘度斑に基づく吐出不良(五月雨状の吐出状態)となり、未延伸糸を得ることができなかった。
ノズルから吐出されたポリ乳酸組成物のDSCを測定した結果、217℃のステレオコンプレックス由来の結晶融解ピーク以外に168℃のポリL−乳酸単独結晶あるいはポリD−乳酸単独結晶に由来するピークが見られた。
ポリL−乳酸(融点168℃)をベースチップとし、顔料をカーボンブラック(C.I.ピグメント・ブラック7)とするマスターチップを実施例1と同様の要領で作成(顔料濃度30質量%)し、マスターチップ5質量%とポリL−乳酸ペレット95質量%を各々110℃の減湿空気を循環して5時間乾燥を行い、別々にロスインウェート式重量フィーダーから2軸溶融押出機(ベント使用)に供給し、0.5Φの吐出孔を420ホールもつ口金から500g/分で吐出させた。顔料濃度は1.5質量%であった。
その後、口金下30mmの位置で25℃の空気を吹き付けて冷却固化させながら、450m/分の速度で未延伸糸を巻き取った。この未延伸糸はSc化率0%で、示差走査熱量計(DSC)で168℃にポリL−乳酸に由来する単一の結晶融解ピークを有していた。
マスターバッチの顔料を弁柄(酸化鉄:C.I.ピグメント・ブラウン6)、顔料濃度を5質量%とし、マスターバッチ:ベースチップ混率=0.4:99.6(質量比)とした他は、実施例1と同様に実施した。顔料濃度は0.02質量%(色相:アイボリー)、延伸糸のSc化率100%、融点217℃、繊度6.44デシテックス、強度2.9cN/dtex、伸度49%、150℃乾熱収縮率5.4%、色相は、L*=85.65、a*=2.56、b*=10.58であった。
マスターバッチの顔料をキナクリドンレッド(C.I.ピグメント・レッド122)/フタロシアニンブルー(C.I.ピグメント・ブルー15:3)/カーボンブラック(C.I.ピグメント・ブラック7)=28.4/69.0/2.6(質量比)、顔料濃度を25質量%とし、マスターバッチ:ベースチップ混率=14.4:85.6(質量比)とした他は、実施例1と同様に実施した。顔料濃度は3.6質量%(色相:濃紺)、延伸糸のSc化率100%、融点217℃、繊度6.51デシテックス、強度2.3cN/dtex、伸度42%、150℃乾熱収縮率5.1%、色相は、L*=15.60、a*=−0.46、b*=−15.01であった。
マスターバッチの顔料濃度を60質量%、マスターバッチ:ベースチップ混率=11.7:88.3(質量比)とした他は、実施例1と同様に実施した。顔料濃度は7.0質量%(色相:黒)、延伸糸のSc化率100%、融点217℃、繊度6.51デシテックス、強度2.1cN/dtex、伸度38%、150℃乾熱収縮率4.3%、色相は、L*=6.17、a*=−0.36、b*=0.15であった。
マスターチップ中及びベースチップ中の燐酸エステル金属塩をアルミニウムビス(2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート)ハイドロキサイドとした以外は実施例1と同様に実施した。顔料濃度は1.5質量%(色相:黒)、延伸糸のSc化率100%、融点217℃、繊度6.46デシテックス、強度2.5cN/dtex、伸度42%であり、150℃乾熱収縮率は4.8%、色相は、L*=11.27、a*=−0.23、b*=0.09であった。
ポリL−乳酸A1及びポリD−乳酸B1のチップを作成し、ポリL−乳酸A1/ポリD−乳酸B1=50/50(質量比)及びA成分とB成分の合計に対して燐酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウム塩(平均粒径5μm)9質量%とカーボンブラック(C.I.ピグメント・ブラック7)30質量%を水分率が50ppm以下となるように乾燥後、各々ロスインウェート式振動フィーダーで2軸ルーダー溶融紡糸機に供給し、ベント使用の状態で230℃で溶融し、ペレタイザーにより、2mm径、2mm長の原着マスターチップを作成した。この原着マスターチップは示差走査熱量計(DSC)で217℃にステレオコンプレックスに由来する単一の結晶融解ピークを有していた。
その後、口金下30mmの位置で25℃の空気を吹き付けて冷却固化させながら、1000m/分の速度で未延伸糸を巻き取った。この未延伸糸はSc化率0%で、示差走査熱量計(DSC)で217℃にステレオコンプレックスに由来する単一の結晶融解ピークを有していた。
Claims (7)
- L乳酸を主成分とする重量平均分子量5万〜30万のポリL−乳酸とD乳酸を主成分とする重量平均分子量5万〜30万のポリD−乳酸からなるポリ乳酸組成物A、燐酸エステル金属塩及び顔料からなるポリ乳酸チップであって、式(1)で表される燐酸エステル金属塩がポリ乳酸組成物重量に対して0.05〜10.0質量%、顔料がポリ乳酸組成物重量に対して0.1〜70質量%含有するポリ乳酸チップを、L乳酸を主成分とする重量平均分子量5万〜30万のポリL−乳酸とD乳酸を主成分とする重量平均分子量5万〜30万のポリD−乳酸からなり実質的に顔料を含まないポリ乳酸組成物Bに溶融混合した後、ノズルから吐出させ、溶融紡糸法によって未延伸糸を得て該未延伸糸に対して延伸処理を行った後、緊張熱処理及び/又は弛緩熱処理を行うポリ乳酸繊維の製造方法であって、L乳酸を主成分とする重量平均分子量5万〜30万のポリL−乳酸とD乳酸を主成分とする重量平均分子量5万〜30万のポリD−乳酸からなるポリ乳酸組成物100質量%あたりに対して、式(1)で表される燐酸エステル金属塩を0.05〜5.0質量%及び顔料を0.01〜10.0質量%含む組成物であって、L乳酸を主成分とする重量平均分子量5万〜30万のポリL−乳酸、D乳酸を主成分とする重量平均分子量5万〜30万のポリD−乳酸及び燐酸エステル金属塩からなる組成物がステレオコンプレックスポリ乳酸を形成しているポリ乳酸繊維の製造方法。
- ポリ乳酸チップを構成している、ポリ乳酸組成物A及び燐酸エステル金属塩からなる組成物がステレオコンプレックスポリ乳酸を形成している請求項1記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
- 緊張熱処理が定長熱処理であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
- 緊張熱処理又は弛緩熱処理を行うポリ乳酸繊維の製造方法であって、緊張熱処理温度が130〜200℃、弛緩熱処理温度が130〜165℃である請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
- 緊張熱処理又は弛緩熱処理を行うポリ乳酸繊維の製造方法であって、緊張熱処理温度が140〜190℃、弛緩熱処理温度が140〜160℃である請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
- 緊張熱処理及び弛緩熱処理を行うポリ乳酸繊維の製造方法であって、緊張熱処理温度が130〜200℃、弛緩熱処理温度が40〜160℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
- 溶融紡糸において、紡糸口金下5〜200mmの位置で紡出糸条に10〜40℃の空気を送風して冷却固化させ、100〜3000m/分の紡糸速度で引き取ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のポリ乳酸繊維の製造方法。
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