JPWO2008084680A1 - Euvリソグラフィ用反射型マスクブランク - Google Patents

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Abstract

EUV光およびパターン検査光の波長域の反射率が低く、かつ該所望の膜組成および膜厚に制御することが容易な吸収体層を有するEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクの提供。基板上に、EUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収体層と、がこの順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、前記吸収体層が、タンタル(Ta)およびハフニウム(Hf)を含有し、前記吸収体層における、Hfの含有率が20〜60at%であり、Taの含有率が40〜80at%であることを特徴とするEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。

Description

本発明は、半導体製造等に使用されるEUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外)リソグラフィ用反射型マスクブランク(以下、本明細書において、「EUVマスクブランク」という。)に関する。
従来、半導体産業において、Si基板等に微細なパターンからなる集積回路を形成する上で必要な微細パターンの転写技術として、可視光や紫外光を用いたフォトリソグラフィ法が用いられてきた。しかし、半導体デバイスの微細化が加速している一方で、従来のフォトリソグラフィ法の限界に近づいてきた。フォトリソグラフィ法の場合、パターンの解像限界は露光波長の1/2程度であり、液浸法を用いても露光波長の1/4程度と言われており、ArFレーザ(193nm)の液浸法を用いても45nm程度が限界と予想される。そこで45nm以降の露光技術として、ArFレーザよりさらに短波長のEUV光を用いた露光技術であるEUVリソグラフィが有望視されている。本明細書において、EUV光とは、軟X線領域または真空紫外線領域の波長の光線をさし、具体的には波長10〜20nm程度、特に13.5nm±0.3nm程度の光線を指す。
EUV光は、あらゆる物質に対して吸収されやすく、かつこの波長で物質の屈折率が1に近いため、従来の可視光または紫外光を用いたフォトリソグラフィのような屈折光学系を使用することができない。このため、EUV光リソグラフィでは、反射光学系、すなわち反射型フォトマスクとミラーとが用いられる。
マスクブランクは、フォトマスク製造用に用いられるパターニング前の積層体である。EUVマスクブランクの場合、ガラス等の基板上にEUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収体層とがこの順で形成された構造を有している。反射層としては、高屈折層と低屈折層とを交互に積層することで、EUV光を層表面に照射した際の光線反射率が高められた多層反射膜が通常使用される。吸収体層には、EUV光に対する吸収係数の高い材料、具体的にはたとえば、CrやTaを主成分とする材料が用いられる。
特許文献1には、タンタルホウ素合金の窒化物(TaBN)、タンタルホウ素合金の酸化物(TaBO)、及びタンタルホウ素合金の酸窒化物(TaBNO)が、EUV光に対する吸収係数が高いことに加えて、パターン検査光の波長域(190nm〜260nm)の深紫外光の反射率が低いことから、吸収体層の材料として好ましいとされている。
また、特許文献1,2には、吸収体層表面を平滑性に優れた面にするためには、吸収体層の結晶状態がアモルファスであることが好ましいとされており、TaBN膜、TaBO膜およびTaBNO膜の結晶状態をアモルファスとするためには、これらの膜におけるBの含有率が5〜25at%であることが好ましいとされている。
特開2004−6798号公報 特開2004−6799号公報
しかしながら、吸収体層をTaBO膜またはTaBNO膜とした場合、膜のOの含有率が増加すると、該吸収体層の絶縁性が増し、該吸収体層に電子線描画する際にチャージアップが起こるので好ましくない。
一方、吸収体層をTaBN膜とした場合、電子線描画時にチャージアップが発生するおそれはほとんどない。
吸収体層をTaBN膜とする場合、欠点が発生しにくい方法であるマグネトロンスパッタリング法などを用いて成膜することが多い。この際、例えば、TaターゲットおよびBターゲットを使用し、窒素雰囲気中でこれらターゲットを同時に放電させることによってTaBN膜を形成することができる。また、TaBの化合物ターゲットを用いて、該化合物ターゲットを窒素雰囲気中で放電させることによってもTaBN膜を形成することができる。
しかしながら、例えば、TaターゲットおよびBターゲットを用いた手法の場合、Bターゲットは、抵抗値が高くかつ軽元素であるため、Taターゲットと比較して成膜速度が1/10以下であることが多い。そのため、特許文献1に記載されているように、膜の結晶状態をアモルファスにするのに必要なBの含有率(5at%以上)を添加するためには、Taターゲットの成膜速度を低下させる必要があるが、生産効率が著しく低下するため望ましくない。
一方、TaB化合物ターゲットを用いた手法において、例えばBを20at%、Taを80at%含む化合物ターゲットを使用した場合、実際に膜中に添加されるBの最大含有率は6at%程度であり、膜のBの含有率を5at%以上に制御するのは難しい。更に、Nを添加すると、膜のBの含有率は4at%以下になり、膜の結晶状態をアモルファスにすることができない。
この問題を解決するため、TaB化合物ターゲット中のB含有量を更に増やすこと(例えばBを50at%、Taを50at%)によって、膜のBの含有率の増加が期待されるが、TaBターゲット中のBの含有量が増すにつれて、ターゲットの密度が低くなることにより、加工性が悪くなる。さらに、TaBターゲットの抵抗値が大きくなり、放電が不安定になるとともに、成膜速度が遅くなる。放電が不安定になることによって、膜の組成や膜厚にばらつきが生じたり、場合によっては成膜不能となるおそれがある。
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため、EUVマスクブランクとしての特性に優れ、特にEUV光およびパターン検査光の波長域の反射率が低く、かつ該所望の膜組成および膜厚に制御することが容易な吸収体層を有するEUVマスクブランクを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、吸収体層をTaおよびHfを含有する膜(TaHf膜)とすることにより、膜の結晶状態がアモルファスになり、かつエッチング特性および光学特性に優れた吸収層が得られることを見出した。さらに、このTaHf膜を吸収体層とした場合、成膜速度の低下を招かず、かつ安定的に製造できることを見出した。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、基板上に、EUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収体層と、がこの順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、
前記吸収体層が、タンタル(Ta)およびハフニウム(Hf)を含有し、
前記吸収体層における、Hfの含有率が20〜60at%であり、Taの含有率が40〜80at%であることを特徴とするEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクを提供する。
また、本発明は、基板上に、EUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収体層と、がこの順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、
前記吸収体層が、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)および窒素(N)を含有し、 前記吸収体層において、TaおよびHfの合計含有率が40〜70at%であり、TaとHfの組成比がTa:Hf=8:2〜4:6であり、Nの含有率が30〜60at%であることを特徴とするEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクを提供する。
前記吸収体層において、TaとHfの組成比が7:3〜4:6であることが好ましい。
本発明のEUVマスクブランクにおいて、前記吸収体層は、B、SiおよびGeの合計含有率が5at%以下であることが好ましい。
本発明のEUVマスクブランクにおいて、前記吸収体層が、Zrを0.1〜1.0at%含有してもよい。
本発明のEUVマスクブランクにおいて、前記吸収体層の結晶状態が、アモルファスであることが好ましい。
また、本発明のEUVマスクブランクにおいて、前記吸収体層表面の表面粗さ(rms)が0.5nm以下であることが好ましい。
また、本発明のEUVマスクブランクにおいて、前記吸収体層の膜厚が、50〜200nmであることが好ましい。
本発明のEUVマスクブランクは、前記吸収体層上に、マスクパターンの検査に使用する検査光における低反射層が形成されており、
前記低反射層が、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)および酸素(O)を含有し、 前記低反射層において、TaおよびHfの合計含有率が30〜80at%であり、TaとHfの組成比がTa:Hf=8:2〜4:6であり、Oの含有率が20〜70at%であることが好ましい。
前記低反射層において、TaとHfの組成比がTa:Hf=7:3〜4:6であることが好ましい。
また、本発明のEUVマスクブランクは、前記吸収体層上に、マスクパターンの検査に使用する検査光における低反射層が形成されており、
前記低反射層が、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、酸素(O)および窒素(N)を含有し、
前記低反射層において、TaおよびHfの合計含有率が30〜80at%であり、TaとHfの組成比がTa:Hf=8:2〜4:6であり、NおよびOの合計含有率が20〜70at%であり、NとOの組成比がN:O=9:1〜1:9であることが好ましい。
前記低反射層において、TaとHfの組成比が7:3〜4:6であることが好ましい。
また、本発明は、基板上に、EUV光を反射する反射層、EUV光を吸収する吸収体層、およびマスクパターンの検査に使用する検査光における低反射層がこの順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、
前記低反射層が、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)および酸素(O)を含有し、 前記低反射層において、TaおよびHfの合計含有率が30〜80at%であり、TaとHfの組成比がTa:Hf=8:2〜4:6であり、Oの含有率が20〜70at%であることを特徴とするEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクを提供する。
前記低反射層において、TaとHfの組成比がTa:Hf=7:3〜4:6であることが好ましい。
また、本発明は、基板上に、EUV光を反射する反射層、EUV光を吸収する吸収体層、およびマスクパターンの検査に使用する検査光における低反射層がこの順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、
前記低反射層が、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、酸素(O)および窒素(N)を含有し、
前記低反射層において、TaおよびHfの合計含有率が30〜80at%であり、TaとHfの組成比がTa:Hf=8:2〜4:6であり、NおよびOの合計含有率が20〜70at%であり、NとOの組成比がN:O=9:1〜1:9であることを特徴とするEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクを提供する。
前記低反射層において、TaとHfの組成比がTa:Hf=7:3〜4:6であることが好ましい。
吸収体層に低反射層が形成されている場合、前記低反射層が、Zrを0.1〜1.0at%含有することが好ましい。
また、吸収体層上に低反射層が形成されている場合、前記低反射層表面の表面粗さ(rms)が0.5nm以下であることが好ましい。
また、吸収体層上に低反射層が形成されている場合、前記低反射層の膜厚が5〜30nmであることが好ましい。
また、本発明のEUVマスクブランクは、前記反射層と前記吸収体層との間に、前記吸収体層へのパターン形成時に前記反射層を保護するための保護層が形成されており、
吸収体層に形成されるパターンの検査に用いられる光の波長に対する前記保護層表面での反射光と、前記低反射層表面での反射光と、のコントラストが、30%以上であることが好ましい。
反射層と吸収体層との間に保護層が形成されている場合、前記保護層が、Ru、Ru化合物、SiO2およびCrNからなる群のうちのいずれか1つで形成されることが好ましい。
吸収体層上に低反射層が形成されている場合、前記吸収体層に形成されるパターンの検査に用いられる光の波長に対する、前記低反射層表面の反射率が15%以下であることが好ましい。
本発明のEUVマスクブランクは、前記吸収体層が、TaHf化合物ターゲットを用いたスパッタリング法を行うことにより形成されることが好ましい。
また、吸収体層がタンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)および窒素(N)を含有する本発明のEUVマスクブランクにおいて、前記吸収体層が、窒素を含む雰囲気中でTaHf化合物ターゲットを用いたスパッタリング法を行うことにより形成されることが好ましい。
ここで、前記TaHf化合物ターゲットの組成が、Ta=30〜70at%、Hf=70〜30at%であることが好ましい。
また、前記TaHf化合物ターゲットが、Zrを0.1〜5.0at%含有してもよい。
吸収体層上にタンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)および酸素(O)を含有する低反射層が形成される場合、前記低反射層が、酸素を含む雰囲気中でTaHf化合物ターゲットを用いたスパッタリング法を行うことにより形成されることが好ましい。
また、吸収体層上にタンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、酸素(O)および窒素(N)を含有する低反射層が形成される場合、前記低反射層が、窒素及び酸素を含む雰囲気中でTaHf化合物ターゲットを用いたスパッタリング法を行うことにより形成されることが好ましい。
ここで、前記TaHf化合物ターゲットの組成が、Ta=30〜70at%、Hf=70〜30at%であることが好ましい。
また、前記TaHf化合物ターゲットが、Zrを0.1〜5.0at%含有してもよい。
本発明のEUVマスクブランクは、吸収体層が電気抵抗率が低いHfを含有するため、吸収体層が電気抵抗率が高く、絶縁性のBを含有する場合のように、吸収体層を成膜する際に成膜速度が低下したり、成膜時に放電が不安定になることがない。この結果、吸収体層を形成する際に膜組成や膜厚にばらつきが生じたり、さらには成膜不能になるといった問題が生じるおそれがない。
本発明のEUVマスクブランクは、吸収体層の結晶状態がアモルファスであるため、吸収体表面が平滑性に優れている。この結果、吸収体層に形成されるパターンのエッジラフネスが大きくなることがなく、パターンの寸法精度が悪化することがない。
また、吸収体層が、EUV光の光線反射率、およびパターン検査光の波長域の光線反射率が低い等、EUVマスクブランクとして優れた特性を有している。
また、TaおよびHfを含有する吸収体層は、TaBN膜に比べてエッチングレートが高いことから、エッチング時におけるレジストのダメージを低減する効果が期待される。また、レジストのダメージ低減により、レジストの薄膜化が期待される。
本発明のEUVマスクブランクにおいて、吸収体層上に低反射層を形成することにより、パターン検査光の波長域の光線反射率をさらに低くおさえることができ、該マスクブランクにパターン形成した後で実施されるパターン検査時のコントラストが良好である。さらに、前記低反射層の結晶構造がアモルファスであるため、吸収体表面が平滑性に優れている。この結果、吸収体層に形成されるパターンのエッジラフネスが大きくなることがなく、パターンの寸法精度が悪化することがない。
本発明のEUVマスクブランクにおいて、スパッタリング法によって吸収体層および低反射層を形成する際、特定の組成を有するTaHf化合物ターゲットを用いることにより、放電の不安定化や膜の組成や膜厚のばらつきを回避できる。
図1は、本発明のEUVマスクブランクの1実施形態を示す概略断面図である。 図2は、図1に示すEUVマスクブランク1の吸収体層14(および低反射層15)にパターン形成した状態を示している。
符号の説明
1:EUVマスクブランク
11:基板
12:反射層(多層反射膜)
13:保護層
14:吸収体層
15:低反射層
以下、図面を参照して本発明のEUVマスクブランクを説明する。
図1は、本発明のEUVマスクブランクの1実施形態を示す概略断面図である。図1に示すマスクブランク1は、基板11上にEUV光を反射する反射層12と、EUV光を吸収する吸収体層14とがこの順に形成されている。反射層12と吸収体層14との間には、吸収体層14へのパターン形成時に反射層12を保護するための保護層13が形成されている。吸収体層14上には、マスクパターンの検査に使用する検査光における低反射層15が形成されている。但し、本発明のEUVマスクブランク1において、図1に示す構成中、基板11、反射層12および吸収体層14のみが必須であり、保護層13および低反射層15は任意の構成要素である。
以下、マスクブランク1の個々の構成要素について説明する。
基板11は、EUVマスクブランク用の基板としての特性を満たすことが要求される。そのため、基板11は、低熱膨張係数(具体的には、20℃における熱膨張係数が0±0.05×10-7/℃であることが好ましく、特に好ましくは0±0.03×10-7/℃)を有し、平滑性、平坦度、およびマスクブランクまたはパターン形成後のフォトマスクの洗浄等に用いる洗浄液への耐性に優れたものが好ましい。基板11としては、具体的には低熱膨張係数を有するガラス、例えばSiO2−TiO2系ガラス等を用いるが、これに限定されず、β石英固溶体を析出した結晶化ガラスや石英ガラスやシリコンや金属などの基板を用いることもできる。
基板11は、表面粗さ(rms)0.15nm以下の平滑な表面と100nm以下の平坦度を有していることがパターン形成後のフォトマスクにおいて高反射率および転写精度が得られるために好ましい。
基板11の大きさや厚みなどはマスクの設計値等により適宜決定されるものである。後で示す実施例では外形6インチ(152mm)角で、厚さ0.25インチ(6.3mm)のSiO2−TiO2系ガラスを用いた。
基板11の反射層12が形成される側の表面には欠点が存在しないことが好ましい。しかし、存在している場合であっても、凹状欠点および/または凸状欠点によって位相欠点が生じないように、凹状欠点の深さおよび凸状欠点の高さが2nm以下であり、かつこれら凹状欠点および凸状欠点の半値幅が60nm以下であることが好ましい。
反射層12は、EUVマスクブランクの反射層として所望の特性を有するものである限り特に限定されない。ここで、反射層12に特に要求される特性は、高EUV光線反射率であることである。具体的には、EUV光の波長領域の光線を入射角6度で反射層12表面に照射した際に、波長13.5nm付近の光線反射率の最大値が60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。また、反射層12の上に保護層13や低反射層15を設けた場合であっても、波長13.5nm付近の光線反射率の最大値が60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。
反射層12は、高EUV光線反射率を達成できることから、通常は高屈折層と低屈折率層を交互に複数回積層させた多層反射膜が反射層12として用いられる。反射層12をなす多層反射膜において、高屈折率層には、Moが広く使用され、低屈折率層にはSiが広く使用される。すなわち、Mo/Si多層反射膜が最も一般的である。但し、多層反射膜はこれに限定されず、Ru/Si多層反射膜、Mo/Be多層反射膜、Mo化合物/Si化合物多層反射膜、Si/Mo/Ru多層反射膜、Si/Mo/Ru/Mo多層反射膜、Si/Ru/Mo/Ru多層反射膜も用いることができる。
反射層12をなす多層反射膜を構成する各層の膜厚および層の繰り返し単位の数は、使用する膜材料および反射層に要求されるEUV光線反射率に応じて適宜選択することができる。Mo/Si反射膜を例にとると、EUV光線反射率の最大値が60%以上の反射層12とするには、多層反射膜は膜厚2.3±0.1nmのMo層と、膜厚4.5±0.1nmのSi層とを繰り返し単位数が30〜60になるように積層させればよい。
なお、反射層12をなす多層反射膜を構成する各層は、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法など、周知の成膜方法を用いて所望の厚さになるように成膜すればよい。例えば、イオンビームスパッタリング法を用いてSi/Mo多層反射膜を形成する場合、ターゲットとしてSiターゲットを用い、スパッタガスとしてArガス(ガス圧1.3×10-2Pa〜2.7×10-2Pa)を使用して、イオン加速電圧300〜1500V、成膜速度0.03〜0.30nm/secで厚さ4.5nmとなるようにSi膜を成膜し、次に、ターゲットとしてMoターゲットを用い、スパッタガスとしてArガス(ガス圧1.3×10-2Pa〜2.7×10-2Pa)を使用して、イオン加速電圧300〜1500V、成膜速度0.03〜0.30nm/secで厚さ2.3nmとなるようにMo膜を成膜することが好ましい。これを1周期として、Si膜およびMo膜を40〜50周期積層させることによりSi/Mo多層反射膜が成膜される。
反射層12表面が酸化されるのを防止するため、反射層12をなす多層反射膜の最上層は酸化されにくい材料の層とすることが好ましい。酸化されにくい材料の層は反射層12のキャップ層として機能する。キャップ層として機能する酸化されにくい材料の層の具体例としては、Si層を例示することができる。反射層12をなす多層反射膜がSi/Mo膜である場合、最上層をSi層とすることによって、該最上層をキャップ層として機能させることができる。その場合キャップ層の膜厚は、11±2nmであることが好ましい。
保護層13は、エッチングプロセス、通常はドライエッチングプロセスにより吸収体層14にパターン形成する際に、反射層12がエッチングプロセスによるダメージを受けないよう、反射層12を保護することを目的として設けられる。したがって保護層13の材質としては、吸収体層14のエッチングプロセスによる影響を受けにくい、つまりこのエッチング速度が吸収体層14よりも遅く、しかもこのエッチングプロセスによるダメージを受けにくい物質が選択される。この条件を満たす物質としては、たとえばCr、Al、Ta又はこれらの窒化物、Ru又はRu化合物(RuB、RuSi等)、ならびにSiO2、Si34、Al23やこれらの混合物が例示される。これらの中でも、Ru又はRu化合物(RuB、RuSi等)、CrN又はSiO2が好ましく、Ru又はRu化合物(RuB、RuSi等)が密着性や吸収性の点で特に好ましい。
保護層13の厚さは1〜60nmであることが好ましい。
保護層13は、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法など周知の成膜方法を用いて成膜する。マグネトロンスパッタリング法によりRu膜を成膜する場合、ターゲットとしてRuターゲットを用い、スパッタガスとしてArガス(ガス圧1.0×10-1Pa〜10×10-1Pa)を使用して投入電力30W〜500W、成膜速度5〜50nm/minで厚さ2〜5nmとなるように成膜することが好ましい。
吸収体層14に特に要求される特性は、EUV光線反射率が極めて低いことである。具体的には、EUV光の波長領域の光線を吸収体層14表面に照射した際に、波長13.5nm付近の最大光線反射率が0.5%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましい。
上記の特性を達成するため、EUV光の吸収係数が高い材料で構成されることが好ましい。
本発明のEUVマスクブランク1の吸収体層14は、タンタル(Ta)およびハフニウム(Hf)を以下に述べる特定の比率で含有することで上記の特性を達成する。
吸収体層14のHfの含有率は20〜60at%である。吸収体層14のHfの含有率が20at%未満だと、吸収体層14の結晶状態がアモルファスとなりにくい。吸収体層14のHfの含有率が60at%超だと、吸収体層のエッチング特性が悪化し、要求されるエッチング選択比を満足することが困難となる。
本発明のEUVマスクブランクは、吸収体層14のHf含有率が上記範囲であることにより、吸収体層の結晶状態がアモルファスとなりやすく、吸収体表面が平滑性に優れている。また、吸収体層14が、EUV光の光線反射率、およびパターン検査光の波長域の光線反射率が低い等、EUVマスクブランクとして優れた特性を有している。
吸収体層14のHfの含有率は、30〜50at%であることがより好ましく、30〜45at%であることがさらに好ましい。
なお、特許文献1には、極端紫外領域を含む短波長域の露光光の吸収体で構成する吸収体層を下層とし、マスクパターンの検査に使用する検査光の吸収体で構成する低反射層を上層とした二層構造の吸収体において、上層および下層に含まれる金属元素の一例としてHfが挙げられているが、TaおよびHfを含有する構成は全く記載されていない。また、特許文献1では、吸収体層をTaBN膜、TaBO膜およびTaBNO膜とした場合、結晶状態がアモルファスとなると記載されているが、Hfを含む構成とした場合に結晶状態がアモルファスになるとは一切記載されていない。
なお、BやSiなどの元素を混合することで、金属結晶をアモルファス化できることは広く知られており、特許文献1ではそれを使用して吸収体層をアモルファス化することで表面を平滑化している。しかし、TaとHfという2つの金属元素を同時に含有する膜がアモルファス化することは知られておらず、特許文献1においても、TaおよびHfは吸収体層に含有可能な数多くの金属元素の一例として挙げられているにすぎない。
本発明によれば、BやSiなど、従来金属結晶のアモルファス化に寄与することが公知の元素を用いることなしに、吸収体層の結晶状態をアモルファス化できる。なお、従来金属結晶のアモルファス化に寄与することが公知の元素としては、B、Si以外にGeが挙げられる。これらの元素は、金属結晶のアモルファス化に寄与するものであるが、吸収体層に含有させた場合に不可避な問題点も生じる。例えば、Bを含有させた場合、成膜に使用するターゲットの抵抗値が大きくなるため、放電が不安定になるとともに、成膜速度が遅くなる。放電が不安定になることによって、膜の組成や膜厚にばらつきが生じたり、場合によっては成膜不能となる等の問題が生じる。また、Siを含有させた場合、SiのEUV吸収係数が小さいため、吸収体層のEUV光の吸収特性を低下させるという等の問題が生じる。
したがって、吸収体層14は、これらB、SiおよびGeの元素を実質的に含有しないことが好ましく、B、SiおよびGeの元素の合計含有率が5at%以下であることが好ましい。これらの元素の合計含有率は4at%以下であることがより好ましく、3at%以下であることがさらに好ましい。
吸収体層14において、Hfを除いた残部はTaであることが好ましい。したがって、吸収体層14におけるTaの含有率は、40〜80at%であることが好ましい。吸収体層14におけるTaの含有率は50〜70at%であることがより好ましく、55〜70at%であることがさらに好ましい。
なお、吸収体層14は、必要に応じてTaおよびHf以外の元素を含んでいてもよい。この場合、吸収体層14に含める元素は、EUV光線の吸収特性等のマスクブランクとしての適性を満たす必要がある。
吸収体層14に含めることができる元素の一例として、窒素(N)が挙げられる。吸収体層14が微結晶構造であった場合、Nを含有させることにより、結晶粒径をさらに小さくすることが可能であり、吸収体層14表面の平滑性を向上させる効果を有する。また、吸収体層14にNを含有することにより、吸収体層14で発生する応力を低減する効果が期待される。
吸収体層14がNを含有する場合、吸収体層14におけるTaおよびHfの合計含有率が40〜70at%であり、TaとHfの組成比がTa:Hf=8:2〜4:6であることが好ましい。なお、本発明において、TaとHfの組成比とは、TaとHfの原子比での組成比を意味する。TaおよびHfの合計含有率が40at%未満であると、EUV光の光線反射率を十分低くすることができない。TaおよびHfの合計含有率が70at%超であると、平滑性の向上および応力低減の効果が小さい。また、Hfが上記組成比より低い場合、吸収体層14の結晶状態がアモルファスとなりにくい。吸収体層14のHfが上記組成比より高い場合、吸収体層のエッチング特性が悪化し、要求されるエッチング選択比を満足しにくくなる。
吸収体層14におけるNの含有率は30〜60at%であることが好ましい。Nの含有率が上記よりも高い場合、膜密度が下がり、EUV光の吸収係数が低下し、十分なEUV光線の吸収特性が得られない可能性がある。また、吸収体層14の耐酸性が低下する可能性がある。
TaおよびHfの合計含有率は、45〜80at%であることがより好ましく、45〜75at%であることがさらに好ましい。また、TaとHfの組成比は、7:3〜4:6であることがより好ましく、6.5:3.5〜4.5:5.5であることがさらに好ましく、6:4〜5:5であることが特に好ましい。N含有率は、20〜55at%であることがより好ましく、25〜55at%であることがさらに好ましい。
吸収体層14は、成膜時に使用するターゲットからのZrを0.1〜1.0at%含有してもよい。Zrの量を低く抑えることで、EUVの吸収性能を向上させる点で好ましい。
また、吸収体層14は、酸素(O)を20at%以下含むことがエッチングレートが良好となる点で好ましい。10at%以下がさらに好ましく、5at%以下が特に好ましい。また、吸収体層14は、炭素(C)を10at%以下含むことが好ましい。5at%以下がさらに好ましく、3at%以下が特に好ましい。
ただし、吸収層としての好ましいエッチングレートや密着性などを考慮すると、吸収体層14中に、Crは5at%以下含むことが好ましい。
さらに、EUV光の吸収係数の点からは、Si,Mo,B,Y,Zr,Nb,La,Tiからなる群から選ばれる1種以上の元素の合計量は、10at%以下が好ましく、5at%以下であることがさらに好ましい。
なお、上記添加金属の添加量の限定は、後述する低反射層にも適用できる。
吸収体層14は、上記の構成であることにより、その結晶状態はアモルファスであることが好ましい。本明細書において、「結晶状態がアモルファスである」と言った場合、全く結晶構造を持たないアモルファス構造となっているもの以外に、微結晶構造のものを含む。吸収体層14が、アモルファス構造の膜または微結晶構造の膜であれば、吸収体層14の表面が平滑性に優れている。
本発明のEUVマスクブランク1では、吸収体層14がアモルファス構造の膜または微結晶構造の膜であることにより、吸収体層14表面の表面粗さ(rms)が0.5nm 以下であることが好ましい。ここで、吸収体層14表面の表面粗さは原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)を用いて測定することができる。吸収体層14表面の表面粗さが大きいと、吸収体層14に形成されるパターンのエッジラフネスが大きくなり、パターンの寸法精度が悪くなる。パターンが微細になるに従いエッジラフネスの影響が顕著になるため、吸収体層14表面は平滑であることが要求される。
吸収体層14表面の表面粗さ(rms)が0.5nm以下であれば、吸収体層14表面が十分平滑であるため、エッジラフネスの影響によってパターンの寸法精度が悪化するおそれがない。吸収体層14表面の表面粗さ(rms)は0.4nm以下であることがより好ましく、0.3nm以下であることがさらに好ましい。
なお、吸収体層14の結晶状態がアモルファスであること、すなわち、アモルファス構造であること、または微結晶構造であることは、X線回折(XRD)法によって確認することができる。吸収体層14の結晶状態がアモルファス構造であるか、または微結晶構造であれば、XRD測定により得られる回折ピークにシャープなピークが見られない。
吸収体層14の厚さは、50〜200nmであることが好ましく、50〜100nmがさらに好ましい。
上記した構成の吸収体層14は、TaHf化合物ターゲットを用いたスパッタリング法、例えば、マグネトロンスパッタリング法またはイオンビームスパッタリング法を実施することにより形成することができる。
なお、吸収体層14がNを含有しない場合、すなわち、TaおよびHfのみを含有する場合、不活性ガス雰囲気中、例えば、アルゴン(Ar)雰囲気中でTaHf化合物ターゲットを放電することにより吸収体層14を形成する。
一方、吸収体層14がNを含有する場合、すなわち、Ta、HfおよびNを含有する場合、アルゴンで希釈した窒素(N2)雰囲気中でTaHf化合物ターゲットを放電させることによって吸収体層14を形成する。
TaHf化合物ターゲットは、その組成がTa=30〜70at%、Hf=70〜30at%であることが、所望の組成の吸収体層を得ることができ、かつ膜の組成や膜厚のばらつきを回避できる点で好ましい。TaHf化合物ターゲットは、Zrを0.1〜5.0at%含有してもよい。
なお、電気抵抗率が低いHfを含有するTaHf化合物ターゲットを使用するため、電気抵抗率が高く絶縁性のBを含有するTaB化合物ターゲットを使用した場合と違い、
成膜が非常に安定しており、膜組成や膜厚の制御を容易に行うことが可能である。
上記した方法で吸収体層14を形成するには、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
吸収体層(Nを含有しない)を形成する場合
スパッタガス:Arガス(ガス圧1.0×10-1Pa〜50×10-1Pa、好ましくは1.0×10-1Pa〜40×10-1Pa、より好ましくは1.0×10-1Pa〜30×10-1Pa。)
投入電力:30〜1000W、好ましくは50〜750W、より好ましくは80〜500W
成膜速度:2.0〜60nm/min、好ましくは3.5〜45nm/min、より好ましくは5〜30nm/min
吸収体層(Nを含有する)を形成する場合
スパッタガス:ArとN2の混合ガス(N2ガス濃度5〜80vol%、好ましくは10〜75vol%、より好ましくは20〜70vol%。ガス圧1.0×10-1Pa〜50×10-1Pa、好ましくは1.0×10-1Pa〜40×10-1Pa、より好ましくは1.0×10-1Pa〜30×10-1Pa。)
投入電力:30〜1000W、好ましくは50〜750W、より好ましくは80〜500W
成膜速度:2.0〜60nm/min、好ましくは3.5〜45nm/min、より好ましくは5〜30nm/min
低反射層15はマスクパターンの検査に使用する検査光において、低反射となるような膜で構成される。EUVマスクを作製する際、吸収体層にパターンを形成した後、このパターンが設計通りに形成されているかどうか検査する。このマスクパターンの検査では、検査光として通常257nm程度の光を使用した検査機が使用される。つまり、この257nm程度の光の反射率の差、具体的には、吸収体層14がパターン形成により除去されて露出した面と、パターン形成により除去されずに残った吸収体層14表面と、の反射率の差によって検査される。ここで、前者は反射層12表面または保護層13表面であり、通常は保護層13表面である。したがって、検査光の波長に対する保護層13表面と吸収体層14表面との反射率の差が小さいと検査時のコントラストが悪くなり、正確な検査が出来ないことになる。
上記した構成の吸収体層14は、EUV光線反射率が極めて低く、EUVマスクブランク1の吸収層として優れた特性を有しているが、検査光の波長について見た場合、光線反射率が必ずしも十分低いとは言えない。この結果、検査光の波長での吸収体層14表面の反射率と保護層13表面の反射率との差が小さくなり、検査時のコントラストが十分得られない可能性がある。検査時のコントラストが十分得られないと、マスク検査においてパターンの欠陥を十分判別できず、正確な欠陥検査を行えないことになる。
本発明のEUVマスクブランク1では、吸収体層14上に検査光における低反射層15を形成することにより、検査時のコントラストが良好となる、別の言い方をすると、検査光の波長での光線反射率が極めて低くなる。具体的には、検査光の波長領域の光線を低反射層15表面に照射した際に、該検査光の波長の最大光線反射率が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
低反射層15における検査光の波長の光線反射率が15%以下であれば、該検査時のコントラストが良好である。具体的には、保護層13表面における検査光の波長の反射光と、低反射層15表面における検査光の波長の反射光と、のコントラストが、30%以上となる。
本明細書において、コントラストは下記式(1)を用いて求めることができる。
コントラスト(%)=((R2−R1)/(R2+R1))×100 式(1)
ここで、検査光の波長におけるR2は保護層13表面での反射率であり、R1は低反射層15表面での反射率である。なお、上記R1およびR2は、図2に示すように、図1に示すEUVマスクブランク1の吸収体層14(および低反射層15)にパターンを形成した状態で測定する。上記R2は、図2中、パターン形成によって吸収体層14および低反射層15が除去され、外部に露出した反射層12表面または保護層13表面で測定した値であり、R1はパターン形成によって除去されずに残った低反射層15表面で測定した値である。
本発明において、上記式(1)で表されるコントラストが45%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
低反射層15は、上記の特性を達成するため、検査光の波長の屈折率が吸収体層14よりも低い材料で構成され、その結晶状態がアモルファスであることが好ましい。
本発明のEUVマスクブランク1の低反射層15では、Ta、Hfおよび酸素(O)を以下に述べる特定の比率で含有することで上記の特性を達成する。
低反射層15は、TaおよびHfの合計含有率が30〜80at%であり、TaとHfの組成比が8:2〜4:6であることが好ましい。TaおよびHfの合計含有率が30at%未満であると、低反射層15の導電性が低下し低反射層15に電子線描画する際にチャージアップの問題が生じる可能性がある。TaおよびHfの合計含有率が80at%超であると、パターン検査光の光線反射率を十分低くすることができない。また、Hfが上記組成比より低い場合、低反射層15の結晶状態がアモルファスとなりにくい。低反射層15のHfが上記組成比より高い場合、低反射層のエッチング特性が悪化し、要求されるエッチング選択比を満足することができない可能性がある。
低反射層15における、Oの含有率は20〜70at%であることが好ましい。Oの含有率が20at%より低い場合、パターン検査光の波長域の光線反射率を十分低くすることができない可能性がある。Oの含有率が70at%より高い場合、低反射層15の耐酸性が低下し、低反射層15の絶縁性が増し低反射層15に電子線描画する際にチャージアップが起こる等の問題が生じる可能性がある。
TaおよびHfの合計含有率は、35〜80at%であることがより好ましく、35〜75at%であることがさらに好ましい。また、TaとHfの組成比は、Ta:Hf=7:3〜4:6であることがより好ましく、6.5:3.5〜4.5:5.5であることがさらに好ましく、6:4〜5:5であることが特に好ましい。Oの含有率は、20〜65at%であることがより好ましく、25〜65at%であることがさらに好ましい。
なお、低反射層15は、必要に応じてTa、HfおよびO以外の元素を含んでいてもよい。この場合、低反射層15に含める元素は、EUV光線の吸収特性等のマスクブランクとしての適性を満たす必要がある。
低反射層15に含めることができる元素の一例として、窒素(N)が挙げられる。低反射層15がNを含有することにより、低反射層15表面の平滑性が向上すると考えられる。
低反射層15がNを含有する場合、低反射層15のTaおよびHfの合計含有率は30〜80at%であり、TaとHfの組成比がTa:Hf=8:2〜4:6であり、NおよびOの合計含有率は20〜70at%であり、NとOの組成比が9:1〜1:9であることが好ましい。なお、本発明において、NとOの組成比とは、NとOの原子比での組成比を意味する。TaおよびHfの合計含有率が30at%未満であると、低反射層15の導電性が低下し低反射層15に電子線描画する際にチャージアップの問題が生じる可能性がある。TaおよびHfの合計含有率が80at%超であると、パターン検査光の光線反射率を十分低くすることができない。低反射層15のHfが上記組成比より低い場合、低反射層15の結晶状態がアモルファスとならない可能性がある。低反射層15のHfが上記組成比より高い場合、低反射層のエッチング特性が悪化し、要求されるエッチング選択比を満足することができない可能性がある。また、NおよびOの含有率が20at%より低い場合、パターン検査光の波長域の光線反射率を十分低くすることができない可能性がある。NおよびOの含有率が70at%より高い場合、低反射層15の耐酸性が低下し、低反射層15の絶縁性が増し低反射層15に電子線描画する際にチャージアップが起こる等の問題が生じる可能性がある。
TaおよびHfの合計含有率は、35〜80at%であることがより好ましく、35〜75at%であることがさらに好ましい。また、TaとHfの組成比は、Ta:Hf=7:3〜4:6であることがより好ましく、6.5:3.5〜4.5:5.5であることがさらに好ましく、6:4〜5:5であることが特に好ましい。NおよびOの合計含有率は、20〜65at%であることがより好ましく、25〜65at%であることがさらに好ましい。
低反射層15は、上記の構成であることにより、その結晶状態はアモルファスであり、その表面が平滑性に優れている。具体的には、低反射層15表面の表面粗さ(rms)が0.5nm以下であることが好ましい。
上記したように、エッジラフネスの影響によってパターンの寸法精度の悪化が防止するため、吸収体層14表面は平滑であることが要求される。低反射層15は、吸収体層14上に形成されるため、同様の理由から、その表面は平滑であることが要求される。
低反射層15表面の表面粗さ(rms)が0.5nm以下であれば、低反射層15表面が十分平滑であるため、エッジラフネスの影響によってパターンの寸法精度が悪化するおそれがない。低反射層15表面の表面粗さ(rms)は0.4nm以下であることがより好ましく、0.3nm以下であることがさらに好ましい。
なお、表面粗さの低減という点では、低反射層15にNを含有させることが好ましい。
なお、低反射層15の結晶状態がアモルファスであること、すなわち、アモルファス構造であること、または微結晶構造であることは、X線回折(XRD)法によって確認することができる。低反射層15の結晶状態がアモルファス構造であるか、または微結晶構造であれば、XRD測定により得られる回折ピークにシャープなピークが見られない。
吸収体層14上に低反射層15を形成する場合、吸収体層14と低反射層15との合計膜厚が55〜130nmであることが好ましい。また、低反射層15の膜厚が吸収体層14の膜厚よりも大きいと、吸収体層14でのEUV光吸収特性が低下するおそれがあるので、低反射層15の膜厚は吸収体層の膜厚よりも小さいことが好ましい。このため、低反射層15の厚さは5〜30nmであることが好ましく、10〜20nmであることがより好ましい。
上記した構成の低反射層15は、TaHf化合物ターゲットを用いたスパッタリング法、例えば、マグネトロンスパッタリング法またはイオンビームスパッタリング法を実施することにより形成することができる。
なお、低反射層15がNを含有しない場合、すなわち、Ta、HfおよびOを含有する場合、不活性ガス、例えばアルゴン、で希釈した酸素(O2)雰囲気中でTaHf化合物ターゲットを放電させることによって低反射層15を形成する。または、不活性ガス雰囲気中でTaHf化合物ターゲットを放電させてTaおよびHfを含有する膜を形成した後、例えば酸素プラズマ中にさらしたり、酸素を用いたイオンビームを照射することによって、形成された膜を酸化することにより、Ta、HfおよびOを含有する低反射層15としてもよい。
一方、低反射層15がNを含有する場合、すなわち、Ta、Hf、OおよびNを含有する場合、アルゴンで希釈した酸素(O2)・窒素(N2)混合ガス雰囲気中でTaHf化合物ターゲットを放電させることによって低反射層15を形成する。または、アルゴンで希釈した窒素(N2)雰囲気中でTaHf化合物ターゲットを放電させることによってTa、HfおよびNを含有する膜を形成した後、例えば酸素プラズマ中にさらしたり、酸素を用いたイオンビームを照射することによって、形成された膜を酸化することにより、Ta、Hf、OおよびNを含有する低反射層15としてもよい。
TaHf化合物ターゲットは、その組成がTa=30〜70at%、Hf=70〜30at%であることが、所望の組成の低反射層を得ることができ、かつ膜の組成や膜厚のばらつきを回避できる点で好ましい。TaHf化合物ターゲットは、Zrを0.1〜5.0at%含有してもよい。
上記した方法で吸収体層14を形成するには、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
吸収体層(Nを含有しない)を形成する場合
スパッタガス:Arガス(ガス圧1.0×10-1Pa〜50×10-1Pa、好ましくは1.0×10-1Pa〜40×10-1Pa、より好ましくは1.0×10-1Pa〜30×10-1Pa。)
投入電力:30〜1000W、好ましくは50〜750W、より好ましくは80〜500W
成膜速度:2.0〜60nm/min、好ましくは3.5〜45nm/min、より好ましくは5〜30nm/min
低反射層(Nを含有しない)を形成する場合
スパッタガス:ArとO2の混合ガス(O2ガス濃度3〜80vol%、好ましくは5〜60vol%、より好ましくは10〜40vol%。ガス圧1.0×10-1Pa〜50×10-1Pa、好ましくは1.0×10-1Pa〜40×10-1Pa、より好ましくは1.0×10-1Pa〜30×10-1Pa。)
投入電力:30〜1000W、好ましくは50〜750W、より好ましくは80〜500W
成膜速度:2.0〜60nm/min、好ましくは3.5〜45nm/min、より好ましくは5〜30nm/min
低反射層(Nを含有する)を形成する場合
スパッタガス:ArとO2とN2の混合ガス(O2ガス濃度5〜40vol%、N2ガス濃度5〜40vol%、好ましくはO2ガス濃度6〜35vol%、N2ガス濃度6〜35vol%、より好ましくはO2ガス濃度10〜30vol%、N2ガス濃度10〜30vol%。ガス圧1.0×10-1Pa〜50×10-1Pa、好ましくは1.0×10-1Pa〜40×10-1Pa、より好ましくは1.0×10-1Pa〜30×10-1Pa。)
投入電力:30〜1000W、好ましくは50〜750W、より好ましくは80〜500W
成膜速度:2.0〜60nm/min、好ましくは3.5〜45nm/min、より好ましくは5〜30nm/min
なお、本発明のEUVマスクブランク1において、吸収体層14上に低反射層15を形成することが好ましいのは、パターンの検査光の波長とEUV光の波長とが異なるからである。したがって、パターンの検査光としてEUV光(13.5nm付近)を使用する場合、吸収体層14上に低反射層15を形成する必要はないと考えられる。検査光の波長は、パターン寸法が小さくなるに伴い短波長側にシフトする傾向があり、将来的には193nm、さらには13.5nmにシフトすることも考えられる。
本発明のEUVマスクブランク1は、反射層12、保護層13、吸収体層14および低反射層15以外に、EUVマスクブランクの分野において公知の機能膜を有していてもよい。このような機能膜の具体例としては、例えば、特表2003−501823号公報に記載されているものように、基板の静電チャッキングを促すために、基板の裏面側に施される高誘電性コーティングが挙げられる。ここで、基板の裏面とは、図1の基板11において、反射層12が形成されている側とは反対側の面を指す。このような目的で基板の裏面に施す高誘電性コーティングは、シート抵抗が100Ω/□以下となるように、構成材料の電気伝導率と厚さを選択する。高誘電性コーティングの構成材料としては、公知の文献に記載されているものから広く選択することができる。例えば、特表2003−501823号公報に記載の高誘電率のコーティング、具体的には、シリコン、TiN、モリブデン、クロム、TaSiからなるコーティングを適用することができる。高誘電性コーティングの厚さは、例えば10〜1000nmとすることができる。
高誘電性コーティングは、公知の成膜方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法といったスパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、電解メッキ法を用いて形成することができる。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに説明する。
実施例1
本実施例では、図1に示すEUVマスクブランク1を作製した。但し、実施例1のEUVマスクブランク1では、吸収体層14上に低反射層15を形成しなかった。
成膜用の基板11として、SiO2−TiO2系のガラス基板(外形6インチ(152mm)角、厚さが6.3mm)を使用した。このガラス基板の熱膨張率は0.2×10-7/℃、ヤング率は67GPa、ポアソン比は0.17、比剛性は3.07×1072/s2である。このガラス基板を研磨により、表面粗さ(rms)が0.15nm以下の平滑な表面と100nm以下の平坦度に形成した。
基板11の裏面側には、マグネトロンスパッタリング法を用いて厚さ100nmのCr膜を成膜することによって、シート抵抗100Ω/□の高誘電性コーティングを施した。
平板形状をした通常の静電チャックに、形成したCr膜を用いて基板11(外形6インチ(152mm)角、厚さ6.3mm)を固定して、該基板11の表面上にイオンビームスパッタリング法を用いてSi膜およびMo膜を交互に成膜することを40周期繰り返すことにより、合計膜厚272nm((4.5nm+2.3nm)×40)のSi/Mo多層反射膜(反射層12)を形成した。
さらに、Si/Mo多層反射膜(反射層12)上に、イオンビームスパッタリング法を用いてRu膜(膜厚2.5nm)と成膜することにより、保護層13を形成した。
Si膜、Mo膜およびRu膜の成膜条件は以下の通りである。
Si膜の成膜条件
ターゲット:Siターゲット(ホウ素ドープ)
スパッタガス:Arガス(ガス圧0.02Pa)
電圧:700V
成膜速度:0.077nm/sec
膜厚:4.5nm
Mo膜の成膜条件
ターゲット:Moターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧0.02Pa)
電圧:700V
成膜速度:0.064nm/sec
膜厚:2.3nm
Ru膜の成膜条件
ターゲット:Ruターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧0.02Pa)
電圧:500V
成膜速度:0.023nm/sec
膜厚:2.5nm
次に、保護層13上に、TaおよびHfを含有する吸収体層14(TaHf膜)を、マグネトロンスパッタリング法を用いて形成することにより、基板11上に反射層12、保護層13および吸収体層14がこの順で形成されたEUVマスクブランク1を得た。
吸収体層14の成膜条件は以下の通りである。
吸収体層14(TaHf膜)の成膜条件
ターゲット:TaHf化合物ターゲット(組成比:Ta55at%、Hf45at%)
スパッタガス:Arガス(ガス圧:0.3Pa)
投入電力:150W
成膜速度:0.29nm/sec
膜厚:60nm
上記の手順で得られるEUVマスクブランクの吸収体層に対し下記の評価(1)〜(4)を実施した。
(1)膜組成
吸収体層14(TaHf膜)の組成を、X線光電子分光装置(X−ray Photoelectron Spectrometer)(PERKIN ELEMER−PHI社製:番号5500)を用いて測定した。吸収体層14(TaHf膜)の組成比(at%)は、Ta:Hf=55:45(Taの含有率が55at%、Hfの含有率が45at%)である。Zrの含有率は0.3〜0.7at%である。
(2)結晶状態
吸収体層14(TaHf膜)の結晶状態を、X線回折装置(X−Ray Diffractmeter)(RIGAKU社製)で確認した。得られる回折ピークにはシャープなピークが見られないことから、吸収体層14(TaHf膜)の結晶状態がアモルファス構造または微結晶構造であることを確認した。
(3)表面粗さ
吸収体層14(TaHf膜)の表面粗さは、原子間力顕微鏡(SII社製、SPI−3800)を用いて、dynamic force modeで測定した。表面粗さの測定領域は1μm×1μmであり、カンチレバーには、SI−DF40(SII社製)を用いた。
吸収体層の表面粗さ(rms)は0.10nmであった。
(4)抵抗値
吸収体層14(TaHf膜)の抵抗値を四探針測定器(三菱油化社製:LorestaAP MCP−T400)を用いて測定したところ1.8×10-4Ω・cmであった。
実施例2
本実施例では、吸収体層14上にTa、Hf、OおよびNを含有する低反射層15(TaHfON膜)が形成されたEUVマスクブランク1を作製した。
本実施例において、保護層13上に吸収体層14を形成する手順までは実施例1と同様に実施した。吸収体層14上に、波長257nmの検査光に対する低反射層15としてTa、Hf、OおよびNを含有する低反射層(TaHfON膜)を、マグネトロンスパッタリング法を用いて形成した。低反射層の組成比(at%)は、実施例1と同様の方法で測定した結果、Ta:Hf:N:O=35:15:15:35である。
低反射層15(TaHfON膜)の成膜条件は以下の通りである。
低反射層15(TaHfON膜)の成膜条件
ターゲット:TaHf化合物ターゲット(組成比:Ta55at%、Hf45at%)
スパッタガス:ArとN2とO2の混合ガス(Ar:45体積%、N2:23体積%、O2:32体積%、ガス圧:0.3Pa)
投入電力:150W
成膜速度:0.13nm/sec
膜厚:10nm
上記の手順で得られるEUVマスクブランクの低反射層15(TaHfON膜)に対し下記の評価(5)を実施した。
(5)反射特性(コントラスト評価)
実施例1において、保護層13(Ru膜)まで形成した段階で、該保護層13表面におけるパターン検査光(波長257nm)の反射率を分光光度計を用いて測定した。また、実施例2で低反射層15(TaHfON膜)を形成した後、該低反射層表面におけるパターン検査光の反射率を測定した。その結果、保護層13層表面での反射率は60.0%であり、低反射層15(TaHfON膜)表面の反射率は1.8%であった。これらの結果と上記した式を用いてコントラストを求めたところ94.1%であった。
得られたEUVマスクブランク1について、低反射層15(TaHfON膜)表面にEUV光(波長13.5nm)を照射してEUV光の反射率を測定した。その結果、EUV光の反射率は0.4%であり、EUV吸収特性に優れていることが確認された。
また、上記手順で得られるEUVマスクブランクの吸収体層(TaHf膜)のエッチング特性を以下の手順で評価した。
(6)エッチング特性
エッチング特性については、上記手順で作製されたEUVマスクブランクを用いて評価する代わりに以下の方法で評価した。
RFプラズマエッチング装置の試料台(4インチ石英基板)上に、試料として下記に記載の方法でRu膜またはTaHf膜が各々成膜されたSiチップ(10mm×30mm)を設置した。この状態で試料台に設置されたSiチップのRu膜またはTaHf膜を以下の条件でプラズマRFエッチングした。
バイアスRF:50W
エッチング時間:120sec
トリガー圧力:3Pa
エッチング圧力:1Pa
エッチングガス:Cl2/Ar
ガス流量(Cl2/Ar):20/80sccm
電極基板間距離:55mm
Ru膜の成膜は、マグネトロンスパッタリング法により、以下の成膜条件で実施した。
Ru膜の成膜条件
ターゲット:Ruターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:0.3Pa)
出力:150W
成膜速度:0.25nm/sec
膜厚:2.5nm
TaHf膜は、マグネトロンスパッタリング法を用いて、TaHf化合物ターゲットをAr雰囲気下で放電させることにより成膜した。なお、成膜は以下の2通りの条件で実施した。
TaHf膜の成膜条件(1)
ターゲット:TaHf化合物ターゲット(組成比:Ta55at%、Hf45at%)
スパッタガス:Arガス(ガス圧:0.3Pa)
投入電力:150W
成膜速度:0.29nm/sec
膜厚:60nm
TaHf膜の成膜条件(2)
ターゲット:TaHf化合物ターゲット(組成比:Ta45at%、Hf55at%)
スパッタガス:Arガス(ガス圧:0.3Pa)
投入電力:150W
成膜速度:0.35nm/sec
膜厚:60nm
上記条件で成膜したRu膜、およびTaHf膜(1)、(2)についてエッチング速度を求め、下記式を用いてエッチング選択比を求めた。
エッチング選択比
=(TaHf膜のエッチング速度)/(Ru膜のエッチング速度)
TaHf膜(1),(2)のエッチング選択比は以下の通りである。
TaHf膜(1)
TaHf膜のエッチング速度:19.8(nm/min)
Ru膜のエッチング速度:1.48(nm/min)
エッチング選択比:13.3
TaHf膜(2)
TaHf膜のエッチング速度:19.0(nm/min)
Ru膜のエッチング速度:1.48(nm/min)
エッチング選択比:12.8
保護層13とのエッチング選択比は10以上が望ましいが、TaHf膜(1),(2)はいずれも十分なエッチング選択比を有していた。また、TaHf膜(1),(2)はエッチングレートが、後述する比較例1のTaBN膜に比べて高いことから、エッチング時におけるレジストのダメージを低減する効果が期待される。また、レジストのダメージ低減により、レジストの薄膜化が期待される。
実施例3
本実施例では、吸収体14上にTa、HfおよびOを含有する低反射層15(TaHfO膜)が形成されたEUVマスクブランク1を作製した。
本実施例において、保護層13上に吸収体層14を形成する手順までは実施例1と同様に実施した。吸収体層14上に、波長257nmの検査光に対する低反射層15としてTa、HfおよびOを含有する低反射層(TaHfO膜)を、マグネトロンスパッタリング法を用いて形成した。低反射層の組成比(at%)は、実施例1と同様の方法で測定した結果、Ta:Hf:O=40:20:40である。
低反射層15(TaHfO膜)の成膜条件は以下の通りである。
低反射層15(TaHfO膜)の成膜条件
ターゲット:TaHf化合物ターゲット(Ta55at%、Hf45at%)
スパッタガス:ArとO2の混合ガス(Ar:70vol%、O2:30vol%、ガス圧:0.3Pa)
投入電力:150W
成膜速度:0.43nm/sec
膜厚:10nm
得られた低反射層15(TaHfO膜)のコントラスト評価を実施例2と同様の手順で実施した。その結果、保護層13層表面での反射率は60.0%であり、低反射層15(TaHfO膜)表面の反射率は2.6%であった。これらの結果と上記した式を用いてコントラストを求めたところ91.7%であった。
また、低反射層15(TaHfO膜)表面のEUV光の反射率を測定した。その結果、EUV光の反射率は0.4%であり、EUV吸収特性に優れていることが確認された。
比較例1
比較例1は、吸収体層がタンタルホウ素合金の窒化物(TaBN)膜であること以外は、実施例1と同様の手順で実施した。TaBN膜は、TaBターゲット(Ta:B=50at%:50at%)を用いて以下の条件で成膜した。
TaBN層の成膜条件
ターゲット:TaBターゲット(組成比:Ta50at%、B50at%)
スパッタガス:Arガス、N2ガス(Ar:86体積%、N2:14体積%、ガス圧:0.3Pa)
投入電力:150W
成膜速度:0.05nm/sec
膜厚:60nm
得られたTaBN膜の組成(at%)を、X線光電子分光装置を用いて測定したところ、Bの含有率は5at%以上であった。
成膜後のTaBN膜の結晶状態を、X線回折装置で確認したところ、得られる回折ピークにはシャープなピークが見られないことから、吸収体層の結晶状態がアモルファス構造または微結晶構造であることを確認した。
また、成膜後のTaBN膜表面の表面粗さ(rms)を、実施例1と同様の方法で確認したところ、0.2nmであった。
また、吸収体層14上に低反射層としてタンタルホウ素合金の酸窒化物(TaBON)を形成し、実施例2と同様の手順で、保護層13(Ru膜)およびTaBON層表面におけるパターン検査光(波長257nm)の反射率を測定した。TaBON膜は、TaBターゲット(Ta:B=50at%:50at%)を用いて以下の条件で成膜した。
TaBON層の成膜条件
ターゲット:TaBターゲット(組成比:Ta50at%、B50at%)
スパッタガス:Arガス、N2ガス、O2ガス(Ar:60体積%、N2:20体積%、O2:20体積%、ガス圧:0.3Pa)
投入電力:150W
成膜速度:0.05nm/sec
膜厚:10nm
その結果、吸収体層14表面での反射率は60.0%であり、TaBON層表面の反射率は9.9%であった。これらの結果と上記した式を用いてコントラストを求めたところ71.7%であり、実施例2と比較してコントラストは低いことが確認された。
TaBN膜について、上記と同様の手順でエッチング特性を評価した。その結果、TaBN膜のエッチング選択比は10.4であった(TaBN膜のエッチング速度:15.4(nm/min)、Ru膜のエッチング速度:1.48(nm/min))。
なお、比較例1のTaBN層の成膜速度は、実施例1の成膜速度の1/6程度とかなり遅かった。また、再現性を確認するため、比較例1の条件で複数回実施したが、放電が不安定であり、成膜ができない場合があったり、膜組成や膜厚の制御が著しく困難であることが確認された。
比較例2
比較例2は、吸収体層(TaHf膜)におけるHf含有率が20at%未満(たとえば10at%)であること以外、実施例1と同様の手順で実施する。なお、Hf含有率が20at%未満の吸収体層(TaHf膜)は、Hf含有率が20at%未満のTaHf化合物ターゲットを用いてマグネトロンスパッタリング法を実施することにより形成する。
得られる吸収体層(TaHf膜)の結晶状態をX線回折装置を用いて確認すると、得られる回折ピークにシャープなピークが見られることから、吸収体層(TaHf膜)が結晶質であることが確認される。また、表面粗さ(rms)は0.6nmである。
比較例3
比較例3は、吸収体層(TaHf膜)におけるHf含有率が60at%超(たとえば70at%)であること以外、実施例1と同様の手順で実施する。なお、Hf含有率が60at%超の吸収体層(TaHf膜)は、Hf含有率が60at%超のTaHf化合物ターゲットを用いてマグネトロンスパッタリング法を実施することにより形成する。
得られる吸収体層(TaHf膜)の結晶状態をX線回折装置を用いて確認すると、得られる回折ピークにシャープなピークが見られないことから、吸収体層(TaHf膜)がアモルファス構造または微結晶構造であることを確認できる。また、表面粗さ(rms)も0.1nmである。
吸収体層(TaHf膜)について、実施例2と同様の手順でエッチング特性を評価する。その結果、TaHf膜のエッチング選択比は5以下(TaHf膜のエッチング速度:5.18(nm/min)、Ru膜のエッチング速度:1.48(nm/min))であり、実施例2と比較して、エッチング選択比が低いことが確認できる。
本発明のEUVマスクブランクは、特にEUV光およびパターン検査光の波長域の反射率が低く、かつ該所望の膜組成および膜厚に制御することが容易な吸収体層を有するので、半導体産業において、フォトマスク製造用に有用である。

なお、2006年12月27日に出願された日本特許出願2006−350932号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (31)

  1. 基板上に、EUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収体層と、がこの順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、
    前記吸収体層が、タンタル(Ta)およびハフニウム(Hf)を含有し、
    前記吸収体層における、Hfの含有率が20〜60at%であり、Taの含有率が40〜80at%であることを特徴とするEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  2. 基板上に、EUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収体層と、がこの順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、
    前記吸収体層が、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)および窒素(N)を含有し、 前記吸収体層において、TaおよびHfの合計含有率が40〜70at%であり、TaとHfの組成比がTa:Hf=8:2〜4:6であり、Nの含有率が30〜60at%であることを特徴とするEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  3. 前記吸収体層において、TaとHfの組成比がTa:Hf=7:3〜4:6であることを特徴とする請求項2に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  4. 前記吸収体層は、B、SiおよびGeの合計含有率が5at%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  5. 前記吸収体層が、Zrを0.1〜1.0at%含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  6. 前記吸収体層が、Crを5at%以下含有する請求項1ないし5のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  7. 前記吸収体層の結晶状態が、アモルファスであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  8. 前記吸収体層表面の表面粗さ(rms)が、0.5nm以下であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  9. 前記吸収体層の膜厚が、50〜200nmであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  10. 前記吸収体層上に、マスクパターンの検査に使用する検査光における低反射層が形成されており、
    前記低反射層が、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)および酸素(O)を含有し、 前記低反射層において、TaおよびHfの合計含有率が30〜80at%であり、TaとHfの組成比が8:2〜4:6であり、Oの含有率が20〜70at%であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  11. 前記低反射層において、TaとHfの組成比がTa:Hf=7:3〜4:6であることを特徴とする請求項10に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  12. 前記吸収体層上に、マスクパターンの検査に使用する検査光における低反射層が形成されており、
    前記低反射層が、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、酸素(O)および窒素(N)を含有し、
    前記低反射層において、TaおよびHfの合計含有率が30〜80at%であり、TaとHfの組成比がTa:Hf=8:2〜4:6であり、NおよびOの合計含有率が20〜70at%であり、NとOの組成比がN:O=9:1〜1:9であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  13. 前記低反射層において、TaとHfの組成比がTa:Hf=7:3〜4:6であることを特徴とする請求項12に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  14. 基板上に、EUV光を反射する反射層、EUV光を吸収する吸収体層、およびマスクパターンの検査に使用する検査光における低反射層がこの順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、
    前記低反射層が、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)および酸素(O)を含有し、 前記低反射層において、TaおよびHfの合計含有率が30〜80at%であり、TaとHfの組成比がTa:Hf=8:2〜4:6であり、Oの含有率が20〜70at%であることを特徴とするEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  15. 前記低反射層において、TaとHfの組成比がTa:Hf=7:3〜4:6であることを特徴とする請求項14に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  16. 基板上に、EUV光を反射する反射層、EUV光を吸収する吸収体層、およびマスクパターンの検査に使用する検査光における低反射層がこの順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、
    前記低反射層が、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、酸素(O)および窒素(N)を含有し、
    前記低反射層において、TaおよびHfの合計含有率が30〜80at%であり、TaとHfの組成比がTa:Hf=8:2〜4:6であり、NおよびOの合計含有率が20〜70at%であり、NとOの組成比がN:O=9:1〜1:9であることを特徴とするEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  17. 前記低反射層において、TaとHfの組成比がTa:Hf=7:3〜4:6であることを特徴とする請求項16に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  18. 前記低反射層が、Zrを0.1〜1.0at%含有することを特徴とする請求項10ないし17のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  19. 前記低反射層表面の表面粗さ(rms)が、0.5nm以下であることを特徴とする請求項10ないし18のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  20. 前記低反射層の膜厚が、5〜30nmであることを特徴とする請求項10ないし19のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  21. 前記反射層と前記吸収体層との間に、前記吸収体層へのパターン形成時に前記反射層を保護するための保護層が形成されており、
    吸収体層に形成されるパターンの検査に用いられる光の波長に対する前記保護層表面での反射光と、前記低反射層表面での反射光と、のコントラストが、30%以上であることを特徴とする請求項10ないし20のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  22. 前記保護層が、Ru、Ru化合物、SiO2およびCrNからなる群のうちのいずれか1つで形成されることを特徴とする、請求項21に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  23. 前記吸収体層に形成されるパターンの検査に用いられる光の波長に対する、前記低反射層表面の反射率が15%以下であることを特徴とする請求項10ないし22のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  24. 前記吸収体層が、TaHf化合物ターゲットを用いたスパッタリング法を行うことにより形成されることを特徴とする請求項1に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  25. 前記吸収体層が、窒素を含む雰囲気中でTaHf化合物ターゲットを用いたスパッタリング法を行うことにより形成されることを特徴とする請求項2に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  26. 前記TaHf化合物ターゲットの組成が、Ta=30〜70at%、Hf=70〜30at%であることを特徴とする請求項24または25に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  27. 前記TaHf化合物ターゲットが、Zrを0.1〜5.0at%含有する請求項24ないし26のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  28. 前記低反射層が、酸素を含む雰囲気中でTaHf化合物ターゲットを用いたスパッタリング法を行うことにより形成されることを特徴とする請求項10または14に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  29. 前記低反射層が、窒素及び酸素を含む雰囲気中でTaHf化合物ターゲットを用いたスパッタリング法を行うことにより形成されることを特徴とする請求項12または16に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  30. 前記TaHf化合物ターゲットの組成が、Ta=30〜70at%、Hf=70〜30at%であることを特徴とする請求項28または29に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  31. 前記TaHf化合物ターゲットが、Zrを0.1〜5.0at%含有する請求項29ないし30のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
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