JP5040996B2 - Euvリソグラフィ用反射型マスクブランク - Google Patents

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Description

本発明は、半導体製造等に使用されるEUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外)リソグラフィ用反射型マスクブランク(以下、本明細書において、「EUVマスクブランク」という。)に関する。
従来、半導体産業において、Si基板等に微細なパターンからなる集積回路を形成する上で必要な微細パターンの転写技術として、可視光や紫外光を用いたフォトリソグラフィ法が用いられてきた。しかし、半導体デバイスの微細化が加速している一方で、従来のフォトリソグラフィ法の限界に近づいてきた。フォトリソグラフィ法の場合、パターンの解像限界は露光波長の1/2程度であり、液浸法を用いても露光波長の1/4程度と言われており、ArFレーザ(193nm)の液浸法を用いても45nm程度が限界と予想される。そこで45nm以下の露光技術として、ArFレーザよりさらに短波長のEUV光を用いた露光技術であるEUVリソグラフィが有望視されている。本明細書において、EUV光とは、軟X線領域または真空紫外線領域の波長の光線をさし、具体的には波長10〜20nm程度、特に13.5±0.3nm程度の光線を指す。
EUV光は、あらゆる物質に対して吸収されやすく、かつこの波長で物質の屈折率が1に近いため、従来の可視光または紫外光を用いたフォトリソグラフィのような屈折光学系を使用することができない。このため、EUVリソグラフィでは、反射光学系、すなわち反射型フォトマスクとミラーとが用いられる。
マスクブランクは、フォトマスク製造用に用いられるパターニング前の積層体である。EUVマスクブランクの場合、ガラス等の基板上にEUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収体層とがこの順で形成された構造を有している。反射層としては、高屈折層と低屈折層とを交互に積層することで、EUV光を層表面に照射した際の光線反射率が高められた多層反射膜が通常使用される。吸収体層には、EUV光に対する吸収係数の高い材料、具体的にはたとえば、CrやTaを主成分とする材料が用いられる。
特許文献1には、タンタルホウ素合金の窒化物(TaBN)、タンタルホウ素合金の酸化物(TaBO)、およびタンタルホウ素合金の酸窒化物(TaBNO)が、EUV光に対する吸収係数が高いことに加えて、パターン検査光の波長域(190nm〜260nm)の深紫外光の反射率が低いことから、吸収体層の材料として好ましいとされている。
また、特許文献1には、吸収体層表面を平滑性に優れた面にするためには、吸収体層の結晶構造がアモルファスであることが好ましいとされており、TaBN膜、TaBO膜およびTaBNO膜の結晶構造をアモルファスとするためには、これらの膜におけるBの含有率が5〜25at%(atomic percent)であることが好ましいとされている。
特開2004−6799号公報
しかしながら、吸収体層をTaBO膜またはTaBNO膜とした場合、膜の酸素(O)の含有率が増加すると、該吸収体層の絶縁性が増し、該吸収体層に電子線描画する際にチャージアップが起こるので好ましくない。
一方、吸収体層をTaBN膜とした場合、電子線描画時にチャージアップが発生するおそれはない。
吸収体層をTaBN膜とする場合、欠点が発生しにくい方法であるマグネトロンスパッタリング法などを用いて成膜する。この際、例えば、TaターゲットおよびBターゲットを使用し、窒素雰囲気中でこれらターゲットを同時に放電させることによってTaBN膜を形成することができる。また、TaBの化合物ターゲットを用いて、該ターゲットを窒素雰囲気中で放電させることによってもTaBN膜を形成することができる。
しかしながら、例えば、TaターゲットおよびBターゲットを用いた手法の場合、Bターゲットは、抵抗値が高くかつ軽元素であるため、Taターゲットと比較して成膜速度が1/10以下であることが多い。そのため、特許文献1に記載されているように、膜の結晶構造をアモルファスにするのに必要なBの含有率(5at%以上)を添加するためには、Taターゲットの成膜速度を低下させる必要があるが、生産効率が著しく低下するため望ましくない。
一方、TaB化合物ターゲットを用いた手法において、例えばBを20at%、Taを80at%含む化合物ターゲットを使用した場合、実際に膜中に添加されるBの最大含有率は6at%程度であり、膜のBの含有率を5at%以上に制御するのは難しい。更に、窒素(N)を添加すると、膜のBの含有率は4at%以下になり、膜の結晶構造をアモルファスにすることができない。
この問題を解決するため、TaB化合物ターゲット中のB含有量を更に増やすこと(例えばBを50at%、Taを50at%)によって、膜のホウ素(B)の含有率の増加が期待されるが、TaBターゲット中のBの含有量が増すにつれて、TaBターゲットの抵抗値が大きくなり、放電が不安定になるとともに、成膜速度が遅くなる。放電が不安定になることによって、膜の組成や膜厚にばらつきが生じたり、場合によっては成膜不能となるおそれがある。
さらに、特許文献1では、吸収体層をTaBN膜またはTaBNO膜とすることにより(TaBにさらにNを含有させることにより)、吸収体層の平滑性を向上させ、表面粗さを小さくする効果が得られると記載されているが、その一方で、吸収体層にNを含有することにより、エッチング速度の低下やパターン検査光に対するコントラストの低下という問題がある。
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため、EUVマスクブランクとしての特性に優れ、特にEUV光およびパターン検査光の波長域の反射率が低く、かつ該所望の膜組成および膜厚に制御することが容易な吸収体層を有するEUVマスクブランクを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、吸収体層をタンタル(Ta)、ホウ素(B)およびケイ素(Si)を含有する膜(TaBSi膜)とし、さらに該吸収体層が窒素(N)を含有しないか、または該吸収体層のN含有率を10at%以下とすることにより、エッチング特性および光学特性に優れ、膜の結晶構造がアモルファスになるため表面の平滑性に優れ、かつ安定的に製造できる吸収体層が得られることを見出した。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、基板上に、EUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収体層とがこの順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク(以下、EUVマスクブランクと略記することもある。)であって、
前記吸収体層が、タンタル(Ta)、ホウ素(B)およびケイ素(Si)を含有し、
前記吸収体層におけるBの含有率が1at%以上5at%未満であり、Siの含有率が1〜25at%であり、
前記吸収体層が、Nを含有しないかまたはNを10at%以下含有することを特徴とするEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクを提供する。
本発明のEUVマスクブランクにおいて、前記吸収体層の結晶状態が、アモルファスであることが好ましい
本発明のEUVマスクブランクにおいて、前記吸収体層が、Nを含有しないかまたはNを5at%以下含有することが好ましい。
本発明のEUVマスクブランクにおいて、前記吸収体層表面の表面粗さ(自乗平均面粗さ)が0.5nm rms以下であることが好ましい。
本発明のEUVマスクブランクは、前記吸収体層上に、マスクパターンの検査に使用する検査光における低反射層が形成されており、
前記低反射層が、タンタル(Ta)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)および酸素(O)を含有し、
前記低反射層において、Bの含有率が1at%以上5at%未満であり、Siの含有率が1〜25at%であり、TaとOとの組成比(Ta:O)が7:2〜1:2であることが好ましい。
また、本発明のEUVマスクブランクは、前記吸収体層上に、マスクパターンの検査に使用する検査光における低反射層が形成されており、
前記低反射層が、タンタル(Ta)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、酸素(O)および窒素(N)を含有し、
前記低反射層において、Bの含有率が1at%以上5at%未満であり、Siの含有率が1〜25at%であり、TaとOおよびNとの組成比(Ta:(O+N))が7:2〜1:2であることが好ましい。
本発明のEUVマスクブランクにおいて、吸収体層上に低反射層が形成されている場合、前記低反射層表面の表面粗さが0.5nm rms以下であることが好ましい。
本発明のEUVマスクブランクにおいて、吸収体層上に低反射層が形成されている場合、前記低反射層の膜厚が5〜30nmであることが好ましい。
また、本発明のEUVマスクブランクは、前記反射層と前記吸収体層との間に、前記吸収体層へのパターン形成時に前記反射層を保護するための保護層が形成されており、
吸収体層に形成されるパターンの検査に用いられる光の波長に対する前記保護層表面での反射光と、前記低反射層表面での反射光と、のコントラストが、30%以上であることが好ましい。
反射層と吸収体層との間に保護層が形成されている場合、前記保護層が、Ru化合物、SiO2およびCrNのいずれか1つで形成されることが好ましい。
吸収体層上に低反射層が形成されている場合、前記吸収体層に形成されるパターンの検査に用いられる光の波長に対する、前記低反射層表面の反射率が15%以下であることが好ましい。
本発明のEUVマスクブランクは、前記吸収体層が、aBSi化合物ターゲットを用いたスパッタリング法を行うことにより形成されることが好ましい。
前記TaBSi化合物ターゲットの組成が、Ta=50〜94at%、Si=5〜30at%、B=1〜20at%であることが好ましい。
吸収層上に低反射層が形成される場合、前記低反射層が、酸素を含む雰囲気中でTaBSi化合物ターゲットを用いたスパッタリング法を行うことにより形成されることが好ましい。
前記TaBSi化合物ターゲットの組成が、Ta=50〜94at%、Si=5〜30at%、B=1〜20at%であることが好ましい。
本発明のEUVマスクブランクは、吸収体層におけるBの含有率が低い(5at%未満)ため、吸収体層を成膜する際に、成膜速度の低下や、成膜時に放電が不安定になることによって生じる問題、具体的には、膜組成や膜厚にばらつきが生じたり、さらには成膜不能になるといった問題が生じるおそれがない。
さらに、Nを含有しないか、またはNの含有率が低い(10at%以下)ので、エッチング速度の低下やパターン検査光に対するコントラストの低下という問題が生じるおそれがない。
本発明のEUVマスクブランクは、吸収体層の結晶構造がアモルファスであるため、吸収体表面が平滑性に優れている。
また、吸収体層が、EUV光の光線反射率、およびパターン検査光の波長域の光線反射率が低い等、EUVマスクブランクとして優れた特性を有している。
本発明のEUVマスクブランクにおいて、吸収体層上に低反射層を形成することにより、パターン検査光の波長域の光線反射率をさらに低くおさえることができ、該マスクブランクにパターン形成した後で実施されるパターン検査時のコントラストが良好である。
本発明のEUVマスクブランクにおいて、スパッタリング法によって吸収体層および低反射層を形成する際、特定の組成を有するTaBSi化合物ターゲットを用いることにより、放電の不安定化や膜の組成や膜厚のばらつきを回避できる。
本発明のEUVマスクブランクの1つの実施形態を示す概略断面図である。 図1に示すEUVマスクブランク1の吸収体層14(および低反射層15)にパターン形成した状態を示している。
符号の説明
1:EUVマスクブランク
11:基板
12:反射層(多層反射膜)
13:保護層
14:吸収体層
15:低反射層
以下、図面を参照して本発明のEUVマスクブランクを説明する。
図1は、本発明のEUVマスクブランクの1つの実施形態を示す概略断面図である。図1に示すマスクブランク1は、基板11上にEUV光を反射する反射層12と、EUV光を吸収する吸収体層14とがこの順に形成されている。反射層12と吸収体層14との間には、吸収体層14へのパターン形成時に反射層12を保護するための保護層13が形成されている。吸収体層14上には、マスクパターンの検査に使用する検査光における低反射層15が形成されている。但し、本発明のEUVマスクブランク1において、図1に示す構成中、基板11、反射層12および吸収体層14のみが必須であり、保護層13および低反射層15は任意の構成要素である。なお、本発明のEUVマスクブランクにおいては、上記膜以外の膜を設けることは任意である。
以下、マスクブランク1の個々の構成要素について説明する。
基板11は、EUVマスクブランク用の基板としての特性を満たすことが要求される。そのため、基板11は、低熱膨張係数(0±0.05×10-7/℃であることが好ましく、より好ましくは0±0.03×10-7/℃)を有し、平滑性、平坦度、およびマスクブランクまたはパターン形成後のフォトマスクの洗浄等に用いる洗浄液への耐性に優れたものが好ましい。基板11としては、具体的には低熱膨張係数を有するガラス、例えばSiO2−TiO2系ガラス等を用いるが、これに限定されず、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス、石英ガラス、シリコン、金属などの基板を用いることもできる。
基板11は、0.15nm rms以下の平滑な表面と100nm以下の平坦度を有していることがパターン形成後のフォトマスクにおいて高反射率および転写精度が得られるために好ましい。
基板11の大きさや厚みなどはマスクの設計値等により適宜決定されるものである。後で示す実施例では外形6インチ(152.4mm)角で、厚さ0.25インチ(6.3mm)のSiO2−TiO2系ガラスを用いた。
基板11の反射層12が形成される側の表面には欠点が存在しないことが好ましい。しかし、存在している場合であっても、凹状欠点および/または凸状欠点によって位相欠点が生じないように、凹状欠点の深さおよび凸状欠点の高さが2nm以下であり、かつこれら凹状欠点および凸状欠点の半値幅が60nm以下であることが好ましい。
反射層12は、EUVマスクブランクの反射層として所望の特性を有するものである限り特に限定されない。ここで、反射層12に特に要求される特性は、高EUV光線反射率であることである。具体的には、EUV光の波長領域の光線を反射層12の表面に照射した際に、波長13.5nm付近の光線反射率の最大値が60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。また、反射層12の上に保護層13や低反射層15を設けた場合であっても、波長13.5nm付近の光線反射率の最大値が60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。
反射層12としては、高EUV光線反射率を達成できることから、通常は高屈折層と低屈折率層を交互に複数回積層させた多層反射膜が用いられる。反射層12をなす多層反射膜において、高屈折率層には、Moが広く使用され、低屈折率層にはSiが広く使用される。すなわち、Mo/Si多層反射膜が最も一般的である。但し、多層反射膜はこれに限定されず、Ru/Si多層反射膜、Mo/Be多層反射膜、Mo化合物/Si化合物多層反射膜、Si/Mo/Ru多層反射膜、Si/Mo/Ru/Mo多層反射膜、Si/Ru/Mo/Ru多層反射膜なども用いることができる。
反射層12をなす多層反射膜を構成する各層の膜厚および層の繰り返し単位の数は、使用する膜材料および反射層に要求されるEUV光線反射率に応じて適宜選択することができる。Mo/Si反射膜を例にとると、EUV光線反射率の最大値が60%以上の反射層12とするには、多層反射膜は膜厚2.3±0.1nmのMo層と、膜厚4.5±0.1nmのSi層とを繰り返し単位数が30〜60になるように積層させればよい。
なお、反射層12をなす多層反射膜を構成する各層は、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法など、周知の成膜方法を用いて所望の厚さになるように成膜すればよい。例えば、イオンビームスパッタリング法を用いてSi/Mo多層反射膜を形成する場合、ターゲットとしてSiターゲットを用い、スパッタガスとしてArガス(ガス圧1.3×10-2Pa〜2.7×10-2Pa)を使用して、イオン加速電圧300〜1500V、成膜速度0.03〜0.30nm/secで厚さ4.5nmとなるようにSi膜を成膜し、次に、ターゲットとしてMoターゲットを用い、スパッタガスとしてArガス(ガス圧1.3×10-2Pa〜2.7×10-2Pa)を使用して、イオン加速電圧300〜1500V、成膜速度0.03〜0.30nm/secで厚さ2.3nmとなるようにMo膜を成膜することが好ましい。これを1周期として、Si膜およびMo膜を40〜50周期積層させることによりSi/Mo多層反射膜が成膜される。
反射層12の表面が酸化されるのを防止するため、反射層12をなす多層反射膜の最上層は酸化されにくい材料の層とすることが好ましい。酸化されにくい材料の層は反射層12のキャップ層として機能する。キャップ層として機能する酸化されにくい材料の層の具体例としては、Si層を例示することができる。反射層12をなす多層反射膜がSi/Mo膜である場合、最上層をSi層とすることによって、該最上層をキャップ層として機能させることができる。その場合キャップ層の膜厚は、11.0±1.0nmであることが好ましい。
保護層13は、エッチングプロセス、通常はドライエッチングプロセスにより吸収体層14にパターン形成する際に、反射層12がエッチングプロセスによるダメージを受けないよう、反射層12を保護することを目的として設けられる。したがって保護層13の材質としては、吸収体層14のエッチングプロセスによる影響を受けにくい、つまりこのエッチング速度が吸収体層14よりも遅く、しかもこのエッチングプロセスによるダメージを受けにくい物質が選択される。この条件を満たす物質としては、たとえばCr、Al、Ru、Taおよびこれらの窒化物、ならびにSiO2、Si34、Al23やこれらの混合物が例示される。これらの中でも、Ru化合物(RuやRuB)、CrNおよびSiO2が好ましく、Ru化合物(RuやRuB)が特に好ましい。
保護層13の厚さは1〜60nmであることが好ましく、1〜10nmがより好ましい。
保護層13は、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法など周知の成膜方法を用いて成膜する。マグネトロンスパッタリング法によりRu膜を成膜する場合、ターゲットとしてRuターゲットを用い、スパッタガスとしてArガス(ガス圧1.0×10-1Pa〜10×10-1Pa)を使用して投入電力30W〜500W、成膜速度5〜50nm/minで厚さ2〜5nmとなるように成膜することが好ましい。
吸収体層14に特に要求される特性は、EUV光線反射率が極めて低いことである。具体的には、EUV光の波長領域の光線を吸収体層14の表面に照射した際に、波長13.5nm付近の最大光線反射率が0.5%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましい。
上記の特性を達成するため、EUV光の吸収係数が高い材料で構成されることが好ましい。
本発明のEUVマスクブランク1の吸収体層14は、タンタル(Ta)、ホウ素(B)およびケイ素(Si)を以下に述べる特定の比率で含有することで上記の特性を達成する。
吸収体層14のBの含有率は1at%以上5at%未満である。従来、吸収体層として、TaとBを含む膜(TaB膜、TaBN膜、TaBO膜、TaBNO膜など)を使用した場合、膜の結晶状態をアモルファスとするには、膜のBの含有率を5at%以上にする必要があった。しかしながら、前述したように、膜のBの含有率を5at%以上とした場合、成膜速度が遅くなることや、膜のBの含有率や膜厚を制御することが困難になるという問題があった。
本発明のEUVマスクブランク1では、吸収体層14がTa、BおよびSiを特定の比率で含有することにより、吸収体層14のBの含有率が5at%未満であっても、吸収体層14の結晶状態がアモルファスとなる。
吸収体層14のBの含有率が1at%未満だと、吸収体層14の結晶状態をアモルファスとするのにSiの添加量を増やす必要がある。具体的には、Siの含有率を25at%超とする必要があり、EUV光線反射率を0.5%以下とするのに必要な吸収体層の膜厚が厚くなってしまうため好ましくない。吸収体層14のBの含有率が5at%以上であると、成膜速度が遅くなること等の上記した問題が生じる。
吸収体層14のBの含有率は、1〜4.5at%であることがより好ましく、1.5〜4at%であることがさらに好ましい。1.5〜4at%であれば、成膜を安定的に行うことができるほか、マスクの必要とされる特性である平滑性等にも優れ、これらがよいバランスとなるため、非常に好ましい。
吸収体層14のSiの含有率は1〜25at%である。吸収体層14のSiの含有率が1at%未満であると、吸収体層14の結晶状態がアモルファスにならないため好ましくない。SiはEUV光の吸収係数が低い材料であるため、吸収体層14のSiの含有率が25at%超であると、EUV光線反射率を0.5%以下とするのに必要な吸収体層の膜厚が厚くなってしまうため好ましくない。
吸収体層14のSiの含有率は、1〜20at%であることがより好ましく、2〜15at%更に2〜8%であることがさらに好ましい。
吸収体層14において、BおよびSiを除いた残部はTa元素であることが好ましい。吸収体層14のTaの含有率は、60〜85at%であることが好ましく、65〜80at%であることがより好ましい。
なお、吸収体層14はTa、B、Si以外の元素を含んでいてもよいが、EUV光線の吸収特性等のマスクブランクとしての適性を満たす必要がある。この点から、吸収体層14は、窒素(N)を含有しないことが好ましい。具体的には、吸収体層14は、Nを含有しないか、またはNの含有率が10at%以下である。吸収体層14のN含有率が10at%超であると、エッチング速度の低下やパターン検査光に対するコントラストの低下という問題が生じる可能性がある。吸収体層14のNの含有率は、5at%以下であることがより好ましく、3at%以下であることがさらに好ましく、不可避的に含有されるものを除くと実質的にNを含有しないことが絶縁性の点で特に好ましい。
吸収体層14は、上記の構成であることにより、その結晶状態はアモルファスである。本明細書において、「結晶状態がアモルファスである」と言った場合、全く結晶構造を持たないアモルファス構造となっているもの以外に、微結晶構造のものを含む。吸収体層14が、アモルファス構造の膜または微結晶構造の膜であれば、吸収体層14の表面が平滑性に優れている。
本発明のEUVマスクブランク1では、吸収体層14がアモルファス構造の膜または微結晶構造の膜であることにより、吸収体層14の表面の表面粗さが0.5nm rms以下である。吸収体層14の表面の表面粗さが大きいと、吸収体層14に形成されるパターンのエッジラフネス(Edge Roughness)が大きくなり、パターンの寸法精度が悪くなる。パターンが微細になるに従いエッジラフネスの影響が顕著になるため、吸収体層14の表面は平滑であることが要求される。
吸収体層14の表面の表面粗さが0.5nm rms以下であれば、吸収体層14の表面が十分平滑であるため、エッジラフネスの影響によってパターンの寸法精度が悪化するおそれがない。吸収体層14の表面の表面粗さは0.4nm rms以下であることがより好ましく、0.3nm rms以下であることがさらに好ましい。
なお、吸収体層14の結晶状態がアモルファスであること、すなわち、アモルファス構造であること、または微結晶構造であることは、X線回折(XRD)法によって確認することができる。吸収体層14の結晶状態がアモルファス構造であるか、または微結晶構造であれば、XRD測定により得られる回折ピークにシャープなピークが見られない。
吸収体層14の厚さは、50〜100nmであることが好ましく、50〜70nmがより好ましい。上記した構成の吸収体層14は、マグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法のようなスパッタリング法など、周知の成膜方法を用いて形成することができる。マグネトロンスパッタリング法を用いる場合、下記(1)〜(3)の方法で吸収体層14を形成することができる。
(1)Taターゲット、BターゲットおよびSiターゲットを使用し、アルゴン(Ar)雰囲気中でこれらの個々のターゲットを同時に放電させることによって吸収体層14を形成する。
(2)TaB化合物ターゲットおよびSiターゲットを用いて、これらのターゲットをアルゴン雰囲気中で同時放電させることによって吸収体層14を形成する。
(3)TaBSi化合物ターゲットを用いて、この3元素が一体化されたターゲットをアルゴン雰囲気中で放電させることによって吸収体層14を形成する。
上記(1)〜(3)の方法において、アルゴン雰囲気中とは、窒素原子を含有するガス(例えば、N2、NO等。)が実質的に存在しない環境であり、具体的には、窒素原子を含有するガスの合計分圧が1×10-4Pa以下の環境である。
なお、上述した方法のうち、2以上のターゲットを同時に放電させる方法((1)、および(2))では、各ターゲットの投入電力を調節することによって、形成される吸収体層14の組成を制御することができる。
上記の中でも(2)および(3)の方法が、放電の不安定化や膜の組成や膜厚のばらつきを回避できる点で好ましく、(3)の方法が特に好ましい。TaBSi化合物ターゲットは、その組成がTa=50〜94at%、Si=5〜30at%、B=1〜20at%であることが、放電の不安定化や膜の組成や膜厚のばらつきを回避できる点で特に好ましい。
上記例示した方法で吸収体層14を形成するには、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
TaB化合物ターゲットおよびSiターゲットを使用する方法(2)
スパッタガス:Arガス(ガス圧1.0×10-1Pa〜50×10-1Pa、好ましくは1.0×10-1Pa〜40×10-1Pa、より好ましくは1.0×10-1Pa〜30×10-1Pa。)。
投入電力(各ターゲットについて):30〜1000W、好ましくは50〜750W、より好ましくは80〜500W。
成膜速度:2.0〜60nm/min、好ましくは3.5〜45nm/min、より好ましくは5〜30nm/min。
TaBSi化合物ターゲットを使用する方法(3)
スパッタガス:Arガス(ガス圧1.0×10-1Pa〜50×10-1Pa、好ましくは1.0×10-1Pa〜40×10-1Pa、より好ましくは1.0×10-1Pa〜30×10-1Pa。)。
投入電力:30〜1000W、好ましくは50〜750W、より好ましくは80〜500W。
成膜速度:2.0〜60nm/min、好ましくは3.5〜45nm/min、より好ましくは5〜30nm/min。
低反射層15はマスクパターンの検査に使用する検査光において、低反射となるような膜で構成される。EUVマスクを作製する際、吸収体層にパターンを形成した後、このパターンが設計通りに形成されているかどうか検査する。このマスクパターンの検査では、検査光として通常257nm程度の光を使用した検査機が使用される。つまり、この257nm程度の光の反射率の差、具体的には、吸収体層14がパターン形成により除去されて露出した面と、パターン形成により除去されずに残った吸収体層14の表面と、の反射率の差によって検査される。ここで、前者は反射層12の表面または保護層13の表面であり、通常は保護層13の表面である。したがって、検査光の波長に対する保護層13の表面と吸収体層14の表面との反射率の差が小さいと検査時のコントラストが悪くなり、正確な検査が出来ないことになる。
上記した構成の吸収体層14は、EUV光線反射率が極めて低く、EUVマスクブランク1の吸収体層として優れた特性を有しているが、検査光の波長について見た場合、光線反射率が必ずしも十分低いとは言えない。この結果、検査光の波長での吸収体層14の表面の反射率と保護層13の表面の反射率との差が小さくなり、検査時のコントラストが十分得られない可能性がある。検査時のコントラストが十分得られないと、マスク検査においてパターンの欠陥を十分判別できず、正確な欠陥検査を行えないことになる。
本発明のEUVマスクブランク1では、吸収体層14上に検査光における低反射層15を形成することにより、検査時のコントラストが良好となる、別の言い方をすると、検査光の波長での光線反射率が極めて低くなる。具体的には、検査光の波長領域の光線を低反射層15の表面に照射した際に、該検査光の波長の最大光線反射率が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
低反射層15における検査光の波長の光線反射率が15%以下であれば、該検査時のコントラストが良好である。具体的には、保護層13の表面における検査光の波長の反射光と、低反射層15の表面における検査光の波長の反射光と、のコントラストが、40%以上となる。
本明細書において、コントラストは下記式を用いて求めることができる。
コントラスト(%)=((R2−R1)/(R2+R1))×100
ここで、検査光の波長におけるR2は保護層13の表面での反射率であり、R1は低反射層15の表面での反射率である。なお、上記R1およびR2は、図2に示すように、図1に示すEUVマスクブランク1の吸収体層14(および低反射層15)にパターンを形成した状態で測定する。上記R2は、図2中、パターン形成によって吸収体層14および低反射層15が除去され、外部に露出した反射層12の表面または保護層13の表面で測定した値であり、R1はパターン形成によって除去されずに残った低反射層15の表面で測定した値である。
本発明において、上記式で表されるコントラストが50%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
低反射層15は、上記の特性を達成するため、検査光の波長の屈折率が吸収体層14よりも低い材料で構成され、その結晶状態がアモルファスであることが好ましい。
上記特性を達成すれば、その組成は特に限定されないが、本発明のEUVマスクブランク1の低反射層15の第1実施形態では、Ta、B、Siおよび酸素(O)を以下に述べる特定の比率で含有することで上記の特性を達成する。
低反射層15のBの含有率は1at%以上5at%未満である。吸収体層について上述したように、TaとBを含む膜(TaB膜、TaBN膜、TaBO膜、TaBNO膜など)を使用した場合、膜の結晶状態をアモルファスとするには、膜のBの含有率を5at%以上にする必要があった。
本発明のEUVマスクブランク1では、低反射層15がタンタル(Ta)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)および酸素(O)を特定の比率で含有することにより、低反射層15のBの含有率が5at%未満であっても該低反射層の結晶状態がアモルファスとなる。
低反射層15のBの含有率が1at%未満だと、低反射層15の結晶状態をアモルファスとするのにSiの添加量を増やす必要がある。具体的には、Siの含有率を25at%超とする必要があり、吸収体層14のSiの含有率や膜厚にもよるが、EUV光線反射率を0.5%以下とするのに必要な吸収体層14および低反射層15の膜厚の合計が大きくなってしまうため好ましくない。低反射層15のBの含有率が5at%以上であると、成膜速度が遅くなること等、吸収体層14について記載したのと同様の問題が生じる。
低反射層15のBの含有率は、1〜4.5at%であることがより好ましく、1.5〜4at%であることがさらに好ましい。
低反射層15のSiの含有率は1〜25at%である。低反射層15のSiの含有率が1at%未満であると、低反射層15の結晶状態がアモルファスにならない。SiはEUV光の吸収係数が低い材料であるため、低反射層15のSiの含有率が25at%超であると、吸収体層14のSiの含有率や膜厚にもよるが、EUV光線反射率を0.5%以下とするのに必要な吸収体層14および低反射層15の膜厚の合計が大きくなってしまうため好ましくない。
低反射層15のSi濃度は、1〜20at%であることがより好ましく、2〜10at%であることがさらに好ましい。
上記の低反射層15において、BおよびSiを除いた残部はTaおよびOである。低反射層15におけるTaとOとの組成比(Ta:O)は7:2〜1:2である。上記組成比よりもTaの割合が高いと、パターン検査光の波長域の光線反射率を十分低くすることができない。一方、上記組成比よりもOの割合が高い場合、絶縁性が高くなり、電子線照射によりチャージアップ(帯電)が生じる。膜密度が下がり、低反射層15の絶縁性が増し、低反射層15に電子線描画する際にチャージアップが起こるので好ましくない。なお、低反射層15は、吸収体層14よりも膜厚が薄く、チャージアップは比較的起こりにくい。このため、吸収体層14に比べてOの含有率の上限が緩やかである。
低反射層15におけるTaとOとの含有比(Ta:O)は7:2〜1:1であることが好ましく、2:1〜1:1であることがさらに好ましい。
本発明のEUVマスクブランク1において、低反射層15はTa、B、SiおよびOに加えてNを含有してもよい。
すなわち、本発明のEUVマスクブランク1において、低反射層15の第2実施形態は、Ta、B、Si、OおよびNを以下に述べる特定の比率で含有することで上記の特性を達成する。
なお、低反射層15がNを含有することにより、低反射層15の表面の平滑性が向上すると考えられる。
以下、本明細書において、低反射層の第1実施形態を低反射層(TaBSiO)、第2実施形態を低反射層(TaBSiON)と記載することで両者を区別する。なお、低反射層の材料であるTaBSiOは絶縁性であるが、低反射層は通常膜厚が薄いので、電子線描画におけるチャージアップの問題はほとんど生じない。
低反射層(TaBSiON)のBの含有率は1at%以上5at%未満である。低反射層15のBの含有率が1at%未満だと、低反射層15の結晶状態をアモルファスとするのにSiの添加量を増やす必要がある。具体的には、Siの含有率を25at%超とする必要があり、吸収体層14のSiの含有率や膜厚にもよるが、EUV光線反射率を0.5%以下とするのに必要な吸収体層14および低反射層15の膜厚の合計が大きくなってしまうため好ましくない。低反射層15のBの含有率が5at%以上であると、成膜速度が遅くなること等、吸収体層14について記載したのと同様の問題が生じる。
低反射層(TaBSiON)のBの含有率は、1〜4.5at%であることがより好ましく、2〜4at%であることがさらに好ましい。
低反射層(TaBSiON)のSiの含有率は1〜25at%である。低反射層(TaBSiON)のSiの含有率が1at%未満であると、低反射層(TaBSiON)の結晶状態がアモルファスにならない。SiはEUV光の吸収係数が低い材料であるため、低反射層15のSiの含有率が25at%超であると、吸収体層14のSiの含有率や膜厚にもよるが、EUV光線反射率を0.5%以下とするのに必要な吸収体層14および低反射層15の膜厚の合計が大きくなってしまうため好ましくない。
低反射層(TaBSiON)のSiの含有率は、1〜20at%であることがより好ましく、2〜10at%であることがさらに好ましい。
低反射層(TaBSiON)において、BおよびSiを除いた残部はTa、OおよびNである。低反射層(TaBSiON)におけるTaとOおよびNとの組成比(Ta:(O+N))は7:2〜1:2である。上記組成比よりもTaの割合が高いと、パターン検査光の波長域の光線反射率を十分低くすることができない。一方、上記組成比よりもOおよびNとの割合が高い場合、低反射層(TaBSiON)の耐酸性が低下する、低反射層(TaBSiON)の絶縁性が増し低反射層(TaBSiON)に電子線描画する際にチャージアップが起こる等の問題が生じる。
低反射層(TaBSiON)におけるTaとOおよびNとの組成比(Ta:(O+N))は7:2〜1:1であることが好ましく、2:1〜1:1であることがさらに好ましい。
低反射層(TaBSiO),低反射層(TaBSiON)は、上記の構成であることにより、その結晶状態はアモルファスであり、その表面が平滑性に優れている。具体的には、低反射層(TaBSiO),低反射層(TaBSiON)の表面の表面粗さが0.5nm rms以下である。
上記したように、エッジラフネスの影響によってパターンの寸法精度の悪化が防止するため、吸収体層表面は平滑であることが要求される。低反射層(TaBSiO),低反射層(TaBSiON)は、該吸収体層上に形成されるため、同様の理由から、その表面は平滑であることが要求される。
低反射層(TaBSiO),低反射層(TaBSiON)の表面の表面粗さが0.5nm rms以下であれば、低反射層(TaBSiO),低反射層(TaBSiON)の表面が十分平滑であるため、エッジラフネスの影響によってパターンの寸法精度が悪化するおそれがない。低反射層15の表面の表面粗さは0.4nm rms以下であることがより好ましく、0.3nm rms以下であることがさらに好ましい。
低反射層として、Nを含有させること、すなわち低反射層(TaBSiO)よりも低反射層(TaBSiON)が平滑性の点で好ましい。
なお、低反射層(TaBSiO),低反射層(TaBSiON)の結晶状態がアモルファスであること、すなわち、アモルファス構造であること、または微結晶構造であることは、X線回折(XRD)法によって確認することができる。低反射層(TaBSiO),低反射層(TaBSiON)の結晶状態がアモルファス構造であるか、または微結晶構造であれば、XRD測定により得られる回折ピークにシャープなピークが見られない。
吸収体層上に低反射層(TaBSiO),低反射層(TaBSiON)を形成する場合、吸収体層と低反射層(TaBSiO),低反射層(TaBSiON)との合計膜厚が55〜130nmであることが好ましい。また、低反射層(TaBSiO),低反射層(TaBSiON)の膜厚が吸収体層の膜厚よりも大きいと、吸収体層でのEUV光吸収特性が低下するおそれがあるので、低反射層(TaBSiO),低反射層(TaBSiON)の膜厚は吸収体層の膜厚よりも小さいことが好ましい。このため、低反射層(TaBSiO),低反射層(TaBSiON)の厚さは5〜30nmであることが好ましく、10〜20nmであることがより好ましい。
低反射層(TaBSiO),低反射層(TaBSiON)は、マグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法のようなスパッタリング法など、周知の成膜方法を用いて形成することができる。マグネトロンスパッタリング法を用いる場合、下記(1)〜(3)の方法で低反射層(TaBSiO)を形成することができる。
(1)Taターゲット、BターゲットおよびSiターゲットを使用し、アルゴン(Ar)で希釈した酸素(O2)雰囲気中でこれらの個々のターゲットを同時に放電させることによって低反射層(TaBSiO)を形成する。
(2)TaB化合物ターゲットおよびSiターゲットを用いて、これらのターゲットをアルゴンで希釈した酸素雰囲気中で同時放電させることによって低反射層(TaBSiO)を形成する。
(3)TaBSi化合物ターゲットを用いて、この3元素が一体化されたターゲットをアルゴンで希釈した酸素雰囲気中で放電させることによって低反射層(TaBSiO)を形成する。
なお、上述した方法のうち、2以上のターゲットを同時に放電させる方法((1)、および(2))では、各ターゲットの投入電力を調節することによって、形成される低反射層(TaBSiO)の組成を制御することができる。
上記の中でも(2)および(3)の方法が、放電の不安定化や膜の組成や膜厚のばらつきを回避できる点で好ましく、(3)の方法が特に好ましい。TaBSi化合物ターゲットは、その組成がTa=50〜94at%、Si=5〜30at%、B=1〜20at%であることが、放電の不安定化や膜の組成や膜厚のばらつきを回避できる点で特に好ましい。
低反射層(TaBSiON)を形成する場合、アルゴンで希釈した酸素雰囲気の代わりにアルゴンで希釈した酸素・窒素混合ガス雰囲気で、上記と同様の手順を実施すればよい。これによって、上記したのと同様に、TaBSiON膜の生産性を向上でき、かつ組成や膜厚のばらつきを最小限に抑えることが可能となる。
上記の方法で低反射層(TaBSiO)を形成するには、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
TaB化合物ターゲットおよびSiターゲットを使用する方法(2)
スパッタガス:ArとO2の混合ガス(O2ガス濃度3〜80vol%、好ましくは5〜30vol%、より好ましくは8〜15vol%。ガス圧1.0×10-1Pa〜50×10-1Pa、好ましくは1.0×10-1Pa〜40×10-1Pa、より好ましくは1.0×10-1Pa〜30×10-1Pa。)。
投入電力(各ターゲットについて):30〜1000W、好ましくは50〜750W、より好ましくは80〜500W。
成膜速度:2.0〜60nm/min、好ましくは3.5〜45nm/min、より好ましくは5〜30nm/min。
TaBSi化合物ターゲットを使用する方法(3)
スパッタガス:ArとO2の混合ガス(O2ガス濃度3〜80vol%、好ましくは5〜30vol%、より好ましくは8〜15vol%。ガス圧1.0×10-1Pa〜50×10-1Pa、好ましくは1.0×10-1Pa〜40×10-1Pa、より好ましくは1.0×10-1Pa〜30×10-1Pa。)。
投入電力:30〜1000W、好ましくは50〜750W、より好ましくは80〜500W。
成膜速度:2.0〜50nm/min、好ましくは2.5〜35nm/min、より好ましくは5〜25nm/min。
上記の方法で低反射層(TaBSiON)を形成するには、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
TaB化合物ターゲットおよびSiターゲットを使用する方法(2)
スパッタガス:ArとO2とN2の混合ガス(O2ガス濃度5〜30体積%、N2ガス濃度5〜30体積%、好ましくはO2ガス濃度6〜25体積%、N2ガス濃度6〜25体積%、より好ましくはO2ガス濃度10〜20体積%、N2ガス濃度15〜25体積%。ガス圧1.0×10-2Pa〜50×10-2Pa、好ましくは1.0×10-2Pa〜40×10-2Pa、より好ましくは1.0×10-2Pa〜30×10-2Pa。)。
投入電力(各ターゲットについて):30〜1000W、好ましくは50〜750W、より好ましくは80〜500W。
成膜速度:2.0〜50nm/min、好ましくは2.5〜35nm/min、より好ましくは5〜25nm/min。
TaBSi化合物ターゲットを使用する方法(3)
スパッタガス:ArとO2とN2の混合ガス(O2ガス濃度5〜30体積%、N2ガス濃度5〜30体積%、好ましくはO2ガス濃度6〜25体積%、N2ガス濃度6〜25体積%、より好ましくはO2ガス濃度10〜20体積%、N2ガス濃度15〜25体積%。ガス圧1.0×10-2Pa〜50×10-2Pa、好ましくは1.0×10-2Pa〜40×10-2Pa、より好ましくは1.0×10-2Pa〜30×10-2Pa。)。
投入電力:30〜1000W、好ましくは50〜750W、より好ましくは80〜500W。
成膜速度:2.0〜50nm/min、好ましくは2.5〜35nm/min、より好ましくは5〜25nm/min。
なお、本発明のEUVマスクブランク1において、吸収体層14上に低反射層15を形成することが好ましいのは、パターンの検査光の波長とEUV光の波長とが異なるからである。したがって、パターンの検査光としてEUV光(13.5nm付近)を使用する場合、吸収体層14上に低反射層15を形成する必要はないと考えられる。検査光の波長は、パターン寸法が小さくなるに伴い短波長側にシフトする傾向があり、将来的には193nm、さらには13.5nmにシフトすることも考えられる。検査光の波長が13.5nmである場合、吸収体層14上に低反射層15を形成する必要はないと考えられる。
本発明のEUVマスクブランク1は、反射層12、保護層13、吸収体層14および低反射層15以外に、EUVマスクブランクの分野において公知の機能膜を有していてもよい。このような機能膜の具体例としては、例えば、特表2003−501823号公報に記載されているものように、基板の静電チャッキングを促すために、基板の裏面側に施される高誘電性コーティングが挙げられる。ここで、基板の裏面とは、図1の基板11において、反射層12が形成されている側とは反対側の面を指す。このような目的で基板の裏面に施す高誘電性コーティングは、シート抵抗が100Ω/□以下となるように、構成材料の電気伝導率と厚さを選択する。高誘電性コーティングの構成材料としては、公知の文献に記載されているものから広く選択することができる。例えば、特表2003−501823号公報に記載の高誘電率のコーティング、具体的には、シリコン、TiN、モリブデン、クロム、またはTaSiからなるコーティングを適用することができる。高誘電性コーティングの厚さは、例えば10〜1000nmとすることができる。
高誘電性コーティングは、公知の成膜方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法といったスパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、電解メッキ法を用いて形成することができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明するが、これらに限定して解釈されるものではない。
実施例1
本実施例では、図1に示すEUVマスクブランク1を作製した。但し、実施例1のEUVマスクブランク1では、吸収体層14上に低反射層15を形成しなかった。
成膜用の基板11として、SiO2−TiO2系のガラス基板(外形6インチ(152.4mm)角、厚さが6.3mm)を使用した。このガラス基板の熱膨張率は0.02×10-7/℃、ヤング率は67GPa、ポアソン比は0.17、比剛性は3.07×1072/s2である。このガラス基板を研磨により、表面粗さが(自乗平均面粗さ)が0.15nm rms以下の平滑な表面と100nm以下の平坦度にした。
基板11の裏面側には、マグネトロンスパッタリング法を用いて厚さ100nmのCr膜を成膜することによって、シート抵抗100Ω/□の高誘電性コーティングを施した。
平板形状をした通常の静電チャックに、形成したCr膜を用いて基板11(外形6インチ(152.4mm)角、厚さ6.3mm)を固定して、該基板11の表面上にイオンビームスパッタリング法を用いてSi膜およびMo膜を交互に成膜することを40周期繰り返すことにより、合計膜厚272nm((4.5nm+2.3nm)×40)のSi/Mo多層反射膜(反射層12)を形成した。
さらに、Si/Mo多層反射膜(反射層12)上に、イオンビームスパッタリング法を用いてRu膜(膜厚2.5nm)と成膜することにより、保護層13を形成した。
Si膜、Mo膜およびRu膜の成膜条件は以下の通りである。
Si膜の成膜条件
ターゲット:Siターゲット(ホウ素ドープ)
スパッタガス:Arガス(ガス圧0.02Pa)
電圧:700V
成膜速度:0.077nm/sec
膜厚:4.5nm
Mo膜の成膜条件
ターゲット:Moターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧0.02Pa)
電圧:700V
成膜速度:0.064nm/sec
膜厚:2.3nm
Ru膜の成膜条件
ターゲット:Ruターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧0.02Pa)
電圧:500V
成膜速度:0.023nm/sec
膜厚:2.5nm
次に、保護層13上に、吸収体層14としてTaBSi層を、マグネトロンスパッタリング法を用いて形成することにより、基板11上に反射層12、保護層13および吸収体層14がこの順で形成されたEUVマスクブランク1を得た。
TaBSi層の成膜条件は以下の通りである。
TaBSi層の成膜条件
ターゲット:TaBSi化合物ターゲット(組成比:Ta80at%、B10at%、Si10at%)
スパッタガス:Arガス(ガス圧:0.3Pa)
投入電力:150W
成膜速度:0.10nm/sec
膜厚:60nm
上記の手順で得られるEUVマスクブランクの吸収体層に対し下記の評価(1)〜(4)を実施した。
(1)膜組成
吸収体層(TaBSi膜)の組成を、X線光電子分光装置(X−ray Photoelectron Spectrometer)(PERKIN ELEMER−PHI社製:番号5500)を用いて測定した。吸収体層の組成比(at%)は、Ta:B:Si=92:3:5(Taの含有率が92at%、Bの含有率が3at%、Siの含有率が5at%)である。なお、Nは検出されなかった。
(2)結晶構造
吸収体層(TaBSi膜)の結晶構造を、X線回折装置(X−Ray Diffractmeter)(RIGAKU社製)で確認した。得られる回折ピークにはシャープなピークが見られないことから、吸収体層の結晶構造がアモルファス構造または微結晶構造であることを確認した。
(3)表面粗さ
吸収体層(TaBSi膜)の表面粗さを、JIS−B0601(1994年)に準拠して、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)(セイコーインスツルメンツ社製:番号SPI3800)を用いて確認した。吸収体層の表面粗さは0.15nm rmsであった。
(4)抵抗値
吸収体層(TaBSi膜)の抵抗値を四探針測定器(三菱油化社製:LorestaAP MCP−T400)を用いて測定したところ2.0×10-4Ω・cmであった。
実施例2
本実施例では、吸収体層14上に低反射層15が形成されたEUVマスクブランク1を作製した。
本実施例において、保護層13上に吸収体層14を形成する手順までは実施例1と同様に実施した。吸収体層14上に、波長257nmの検査光に対する低反射層15としてTaBSiON膜を、マグネトロンスパッタリング法を用いて形成した。低反射層の組成比(at%)は、実施例1と同様の方法で測定した結果、Ta:B:Si:N:O=40:3:10:10:37である。
TaBSiON膜の成膜条件は以下の通りである。
TaBSiON層の成膜条件
ターゲット:TaBSiターゲット(組成比:Ta80at%、B10at%、Si10at%)
スパッタガス:ArとN2とO2の混合ガス(Ar:55体積%、N2:19体積%、O2:26体積%、ガス圧:0.3Pa)
投入電力:150W
成膜速度:0.06nm/sec
膜厚:10nm
上記の手順で得られるEUVマスクブランクの低反射層に対し下記の評価(5)および(6)を実施した。
(5)反射特性(コントラスト評価)
実施例1において、保護層(Ru層)13まで形成した段階で、該保護層13の表面におけるパターン検査光(波長257nm)の反射率を、分光光度計を用いて測定した。また、実施例2で低反射層(TaBSiON)15を形成した後、該低反射層表面におけるパターン検査光の反射率を測定した。その結果、保護層13の表面での反射率は60.0%であり、低反射層15の表面の反射率は1.3%であった。これらの結果と上記した式を用いてコントラストを求めたところ95.7%であり、検査光に対するコントラストに優れていることが確認された。
得られたEUVマスクブランク1について、低反射層15の表面にEUV光(波長13.5nm)を照射してEUV光の反射率を測定した。その結果、EUV光の反射率は0.4%であり、EUV吸収特性に優れていることが確認された。
(6)エッチング特性
エッチング特性については、上記手順で作製されたEUVマスクブランクを用いて評価する代わりに以下の方法で評価した。
RFプラズマエッチング装置の試料台(4インチ石英基板)上に、試料として下記に記載の方法でRu膜またはTaBSi膜が各々成膜されたSiチップ(10mm×30mm)を設置した。この状態で試料台に設置されたSiチップのRu膜またはTaNBSi膜を以下の条件でRFプラズマエッチングした。
バイアスRF:50W
エッチング時間:120sec
トリガー圧力:3Pa
エッチング圧力:1Pa
エッチングガス:Cl2/Ar
ガス流量(Cl2/Ar):20/80sccm
電極基板間距離:55mm
Ru膜の成膜は、イオンビームスパッタリング法により、以下の成膜条件で実施した。
Ru膜の成膜条件
ターゲット:Ruターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧:2mTorr、流量:15sccm)
出力:150W
成膜速度:0.023nm/sec
膜厚:2.5nm
TaBSi膜は、TaBSiターゲットを用いてマグネトロンスパッタリング法を実施することにより成膜した。
TaBSi膜の成膜条件は以下の通りである。
TaBSi層の成膜条件
ターゲット:TaBSi化合物ターゲット(組成比:Ta80at%、B10at%、Si10at%)
スパッタガス:Arガス(ガス圧:0.3Pa)
投入電力:150W
成膜速度:0.10nm/sec
膜厚:60nm
上記条件で成膜したRu膜、およびTaBSi膜についてエッチング速度を求め、下記式を用いてエッチング選択比を求めた。

エッチング選択比
=(TaBSi膜のエッチング速度)/(Ru膜のエッチング速度)

Ru層のエッチング速度は1.4nm/minであり、TaBSi膜のエッチング速度は18.7nm/minであった。保護層13とのエッチング選択比は、10以上が望ましいが、上記式から求めたエッチング選択比は13.4であり、十分な選択比を有していた。
実施例3
本実施例では、吸収体層14を、ターゲット組成を変えて作製した以外は実施例1と同様である。但し、実施例3のEUVマスクブランク1では、吸収体層14上に低反射層15を形成しなかった。
実施例1と同様に、保護層13まで成膜した基板上に、吸収体層14としてTaBSi層を、マグネトロンスパッタリング法を用いて形成することにより、基板11上に反射層12、保護層13および吸収体層14がこの順で形成されたEUVマスクブランク1を得た。
TaBSi層の成膜条件は以下の通りである。
TaBSi層の成膜条件
ターゲット:TaBSi化合物ターゲット(組成比:Ta85at%、B10at%、Si5at%)
スパッタガス:Arガス(ガス圧:0.3Pa)
投入電力:150W
成膜速度:0.10nm/sec
膜厚:60nm
上記の手順で得られるEUVマスクブランクの吸収体層に対し下記の評価(1)〜(4)を実施した。
(1)膜組成
吸収体層(TaBSi膜)の組成を、実施例1と同様の方法で測定した結果、吸収体層の組成比(at%)は、Ta:B:Si=94:3:3(Taの含有率が94at%、Bの含有率が3at%、Siの含有率が3at%)である。なお、Nは検出されなかった。
(2)結晶構造
吸収体層(TaBSi膜)の結晶構造を、実施例1と同様の方法で測定した結果、得られる回折ピークにはシャープなピークが見られないことから、吸収体層の結晶構造がアモルファス構造または微結晶構造であることを確認した。
(3)表面粗さ
吸収体層(TaBSi膜)の表面粗さを、実施例1と同様の方法で測定した結果、吸収体層の表面粗さは0.20nm rmsであった。
(4)抵抗値
吸収体層(TaBSi膜)の抵抗値を実施例1と同様の方法で測定した結果、1.5×10-4Ω・cmであった。
実施例4
本実施例では、吸収体14上に低反射層15が形成されたEUVマスクブランク1を作製した。
本実施例において、保護層13上に吸収体層14を形成する手順までは実施例3と同様に実施した。吸収体層14上に、波長257nmの検査光に対する低反射層15としてTaBSiON膜を、マグネトロンスパッタリング法を用いて形成した。低反射層の組成比(at%)は、実施例1と同様の方法で測定した結果、Ta:B:Si:N:O=45:3:5:10:37である。
TaBSiON膜の成膜条件は以下の通りである。
TaBSiON層の成膜条件
ターゲット:TaBSiターゲット(組成比:Ta85at%、B10at%、Si5at%)
スパッタガス:ArとN2とO2の混合ガス(Ar:55体積%、N2:19体積%、O2:26体積%、ガス圧:0.3Pa)
投入電力:150W
成膜速度:0.06nm/sec
膜厚:10nm
上記の手順で得られるEUVマスクブランクの低反射層に対し下記の評価(5)および(6)を実施した。
(5)反射特性(コントラスト評価)
実施例3において、反射特性を実施例2と同様の方法で測定した結果、保護層13層表面での反射率は60.0%であり、低反射層15表面の反射率は1.5%であった。これらの結果と上記した式を用いてコントラストを求めたところ95.1%であり、検査光に対するコントラストに優れていることが確認された。
得られたEUVマスクブランク1について、実施例2と同様の方法で測定した結果、EUV光の反射率は0.3%であり、EUV吸収特性に優れていることが確認された。
(6)エッチング特性
エッチング特性は、実施例2と同様の方法で評価した。
TaBSi膜の成膜条件は以下の通りである。
TaBSi層の成膜条件
ターゲット:TaBSi化合物ターゲット(組成比:Ta85at%、B10at%、Si5at%)
スパッタガス:Arガス(ガス圧:0.3Pa)
投入電力:150W
成膜速度:0.10nm/sec
膜厚:60nm
上記条件で成膜したRu膜、およびTaBSi膜についてエッチング速度を求め、下記式を用いてエッチング選択比を求めた。
Ru層のエッチング速度は1.4nm/minであり、TaBSi膜のエッチング速度は19.0nm/minであった。保護層13とのエッチング選択比は、10以上が望ましいが、上記式から求めたエッチング選択比は13.6であり、十分な選択比を有していた。
比較例1
比較例1は、吸収体層が窒素(N)を含むタンタルホウ素ケイ素合金の窒化物(TaBSiN)膜であること以外は、実施例1と同様の手順で実施した。TaBSiN膜は、TaBSiターゲット(Ta:B:Si=80at%:10at%:10at%)を用い、以下の条件で成膜した。
TaBSiN層の成膜条件
ターゲット:TaBSi化合物ターゲット(組成比:Ta80at%、B10at%、Si10at%)
スパッタガス:ArとN2の混合ガス(Ar:86体積%、N2:14体積%、ガス圧:0.3Pa)
投入電力:150W
成膜速度:0.095nm/sec
膜厚:60nm
上記の手順で得られる吸収体層(TaBSiN膜)に対し下記の評価(1)〜(4)を実施した。
(1)膜組成
吸収体層(TaBSiN膜)の組成を、X線光電子分光装置(X−ray Photoelectron Spectrometer)(PERKIN ELEMER−PHI社製:番号5500)を用いて測定した。吸収体層の組成比(at%)は、Ta:B:Si:N=70:3:10:17(Taの含有率が70at%、Bの含有率が3at%、Siの含有率が10at%、Nの含有率が17at%)である。
(2)結晶構造
吸収体層(TaBSiN膜)の結晶構造を、X線回折装置(X−Ray Diffractmeter)(RIGAKU社製)で確認した。得られる回折ピークにはシャープなピークが見られないことから、吸収体層の結晶構造がアモルファス構造または微結晶構造であることを確認した。
(3)表面粗さ
吸収体層(TaBSiN膜)の表面粗さを、JIS−B0601(1994年)に準拠して、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)(セイコーインスツルメンツ社製:番号SPI3800)を用いて確認した。吸収体層の表面粗さは0.16nm rmsであった。
実施例2と同様の手順で、吸収体層(TaBSiN膜)14上に低反射層(TaBSiON)15が形成されたEUVマスクブランク1を作製し、パターン検査光(257nm)の反射率を測定した。その結果、保護層13の表面での反射率は60.0%であり、低反射層15の表面の反射率は6.9%であった。これらの結果と上記した式を用いてコントラストを求めたところ79.4%であり、実施例2と比較して、パターン検査光に対するコントラストは低かった。
得られたEUVマスクブランク1について、低反射層15の表面にEUV光(波長13.5nm)を照射してEUV光の反射率を測定した。その結果、EUV光の反射率は0.4%であった。
また、実施例2と同様の手法を用いて、TaBSiN層とRu膜とのエッチング選択比を求めて、エッチング特性を評価した。
Ru層のエッチング速度は1.4nm/minであり、TaBSiN膜のエッチング速度は、14.3nm/minであった。これらの結果と上記した式を用いてエッチング選択比を求めたところ、10.2であり、実施例2と比較して、エッチング選択比は低かった。
本発明により、放電の不安定化や膜の組成や膜厚のばらつきを回避できるEUVマスクブランクとしての特性に優れ、特にEUV光およびパターン検査光の波長域の反射率が低く、かつ該所望の膜組成および膜厚に制御することが容易な吸収体層を有するEUVマスクブランクが提供され、このマスクブランクは微細パターンの転写技術としてのEUV光を用いたフォトリソグラフィ法において有用である。

なお、2007年4月17日に出願された日本特許出願2007−108042号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (15)

  1. 基板上に、EUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収体層と、がこの順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、
    前記吸収体層が、タンタル(Ta)、ホウ素(B)およびケイ素(Si)を含有し、
    前記吸収体層におけるBの含有率が1at%以上5at%未満であり、Siの含有率が1〜25at%であり、
    前記吸収体層が、窒素(N)を含有しないかまたはNを10at%以下含有することを特徴とするEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  2. 記吸収体層の結晶状態が、アモルファスであることを特徴とする請求項1に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  3. 前記吸収体層が、窒素(N)を含有しないかまたはNを5at%以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  4. 前記吸収体層表面の表面粗さが、0.5nm rms以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  5. 前記吸収体層上に、マスクパターンの検査に使用する検査光における低反射層が形成されており、
    前記低反射層が、タンタル(Ta)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)および酸素(O)を含有し、
    前記低反射層において、Bの含有率が1at%以上5at%未満であり、Siの含有率が1〜25at%であり、TaとOとの組成比(Ta:O)が7:2〜1:2であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  6. 前記吸収体層上に、マスクパターンの検査に使用する検査光における低反射層が形成されており、
    前記低反射層が、タンタル(Ta)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、酸素(O)および窒素(N)を含有し、
    前記低反射層において、Bの含有率が1at%以上5at%未満であり、Siの含有率が1〜25at%であり、TaとOおよびNとの組成比(Ta:(O+N))が7:2〜1:2であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  7. 前記低反射層表面の表面粗さが、0.5nm rms以下であることを特徴とする請求項5または6に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  8. 前記低反射層の膜厚が、5〜30nmであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  9. 前記反射層と前記吸収体層との間に、前記吸収体層へのパターン形成時に前記反射層を保護するための保護層が形成されており、
    吸収体層に形成されるパターンの検査に用いられる光の波長に対する前記保護層表面での反射光と、前記低反射層表面での反射光と、のコントラストが、30%以上であることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  10. 前記保護層が、Ru化合物、SiO2およびCrNのいずれか1つで形成されることを特徴とする、請求項9に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  11. 前記吸収体層に形成されるパターンの検査に用いられる光の波長に対する、前記低反射層表面の反射率が15%以下であることを特徴とする請求項5乃至10のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  12. 前記吸収体層が、aBSi化合物ターゲットを用いたスパッタリング法を行うことにより形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  13. 前記TaBSi化合物ターゲットの組成が、Ta=50〜94at%、Si=5〜30at%、B=1〜20at%であることを特徴とする請求項12に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  14. 前記低反射層が、酸素を含む雰囲気中でTaBSi化合物ターゲットを用いたスパッタリング法を行うことにより形成されることを特徴とする請求項5または6に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
  15. 前記TaBSi化合物ターゲットの組成が、Ta=50〜94at%、Si=5〜30at%、B=1〜20at%であることを特徴とする請求項14に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
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