JPWO2008069195A1 - 回転陽極型x線管 - Google Patents

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Abstract

側面にラジアルすべり軸受面(S1)を有し、内部に冷却液(20)が流れる流路を有する固定体と、前記固定体の一端部と隙間をおいて嵌合される凹部51aを有し、陽極ターゲット(50)を構成する円盤状の径大部(610)と、前記固定体の側面を囲み、内面に前記ラジアルすべり軸受面に隙間を置いて対向するラジアルすべり軸受面(S2)を有し、一端部で前記径大部と一体化された径小部(620)と、を含む回転体(600)と、前記隙間に充填された潤滑剤と、前記径大部の陽極ターゲットに対向配置された陰極(80)と、前記固定体、回転体、潤滑剤及び陰極を収容し、前記固定体を、前記凹部に嵌合される前記固定体の一端部に対して反対側に位置する前記固定体の他端部で固定する真空外囲器(90)と、を備えている回転陽極型X線管。

Description

この発明は、回転陽極型X線管に関する。
一般に、X線管装置は、医療診断システムや工業診断システム等に用いられている。X線管装置は、X線を放射する回転陽極型X線管と、ステータコイルと、これら回転陽極型X線管及びステータコイルを収容した筐体と、を備えている。回転陽極型X線管は、固定シャフトと、この固定シャフトを軸に回転可能に設けられた回転体と、この回転体の端部に継手部を介して設けられた陽極ターゲットと、この陽極ターゲットに対向配置された陰極と、これらを収容した真空外囲器と、この真空外囲器内に充填された冷却液とを有している。固定シャフト及び回転体間の隙間には液体金属が充填されている。
上記X線管装置の動作状態において、ステータコイルは回転体に与える磁界を発生するため、回転体及び陽極ターゲットは回転する。また、陰極は陽極ターゲットに対して電子ビームを照射する。これにより、陽極ターゲットは、電子と衝突するときにX線を放出する。
X線管装置の動作時に、陽極ターゲットは、この陽極ターゲットへの熱入力により高温になる。すなわち、陽極ターゲットは、電子ビームが照射されることにより高温になる。特に、電子が衝突される電子衝撃面(焦点)の温度が高温になる。このため、電子衝撃面の温度は陽極ターゲット材質の溶解温度以下でなくてはならない。
上記したことから、陽極ターゲットを冷却させるための技術が開発されている。例えば、電子衝突面の近くで液体金属を熱伝達流体として用いて陽極ターゲットを冷却する技術がUSP5541975及びDE3644719に開示されている。上記技術を用いることにより、陽極ターゲットの高冷却が可能となる。
しかしながら、上記開示された技術において、液体金属のシール部は電子衝突面近くに形成されている。電子衝突面より発生した熱はシール部に伝導するため、シール部は高温となり変形してしまう。回転体と固定シャフトとの隙間が変形してしまうため、シール部によるシール性能を十分発揮するための隙間(クリアランス)の維持が困難となる。結果、液体金属の漏れにより、X線管に不良が生じる恐れがある。
なお、液体金属のシール部が高温にならない技術が、例えば、特公昭63−13302号公報、特開平5−258691号公報、特開平5−144395号公報に開示されている。
上記したように、陽極ターゲットの高冷却を可能とする技術及びシール部が高温にならない技術が開示されている。しかしながら、陽極ターゲットの高冷却を可能とし、且つ、シール部が高温にならない技術は開示されていない。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、陽極ターゲットの冷却率に優れ、製品寿命を長くすることができる回転陽極型X線管を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の態様に係る回転陽極型X線管は、
側面にラジアルすべり軸受面を有し、内部に冷却液が流れる流路を有する固定体と、
前記固定体の一端部と隙間をおいて嵌合される凹部を有し、陽極ターゲットを構成する円盤状の径大部と、前記固定体の側面を囲み、内面に前記ラジアルすべり軸受面に隙間を置いて対向するラジアルすべり軸受面を有し、一端部で前記径大部と一体化された径小部と、を含む回転体と、
前記隙間に充填された潤滑剤と、
前記径大部の陽極ターゲットに対向配置された陰極と、
前記固定体、回転体、潤滑剤及び陰極を収容し、前記固定体を、前記凹部に嵌合される前記固定体の一端部に対して反対側に位置する前記固定体の他端部で固定する真空外囲器と、を備えている回転陽極型X線管。
この発明の第1の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置を示す断面図である。 図1に示した回転陽極型X線管装置の一部を示す拡大断面図であり、特に、シール部を示す拡大断面図である。 この発明の第2の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置の主要部を示す断面図である。 この発明の第3の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置を示す断面図である。 図4に示した回転陽極型X線管装置の一部を示す拡大断面図であり、特に、スラスト軸受を示す拡大断面図である。 図4に示した回転陽極型X線管装置の一部を示す拡大断面図であり、特に、他のスラスト軸受を示す拡大断面図である。 この発明の第4の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置を示す断面図である。 図7に示した回転陽極型X線管装置の一部を示す拡大断面図であり、特に、2つのスラスト軸受を示す拡大断面図である。 この発明の第5の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置を示す断面図である。 この発明の第6の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置を示す断面図である。 この発明の第7の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置を示す断面図である。
以下、図面を参照しながらこの発明の第1の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置について詳細に説明する。
図1に示すように、回転陽極型X線管装置は、回転陽極型X線管1と、磁界を発生させるコイルとしてのステータコイル2と、図示しないが回転陽極型X線管及びステータコイルを収容した筐体とを備えている。
回転陽極型X線管1は、固定体としての固定シャフト10と、冷却液20と、管部30と、環部40と、陽極ターゲット50と、回転部60と、潤滑剤としての液体金属70と、陰極80と、真空外囲器90とを備えている。回転陽極型X線管1は動圧軸受を使っている。
固定シャフト10は、筒部11と、他の筒部としての筒部12と、環部13とを有している。固定シャフト10は、Fe(鉄)やMo(モリブデン)等の材料で形成されている。筒部11は、回転軸aに沿って延出して回転軸aを中心軸として筒状に形成されている。筒部11は、側面にラジアルすべり軸受面S1を有している。筒部12は、回転軸aに沿って延出して回転軸aを中心軸として筒状に形成されている。筒部12の一端部は閉塞されている。筒部12の他端部は、筒部11に密接に連通されている。より詳しくは、環部13が筒部11及び筒部12とそれぞれ密接に接合されて筒部11及び筒部12が連通されている。筒部11、筒部12及び環部13は一体に形成されている。固定シャフト10の内部は冷却液20で満たされている。この実施の形態において、冷却液20は水である。固定シャフト10は、この内部に冷却液20が流れる流路を形成している。固定シャフト10は、この他端部側に冷却液20を外部に吐出す吐出し口10bを有している。
管部30は、固定シャフト10の内部に設けられ、固定シャフトとともに流路を形成している。管部30の一端部は、固定シャフト10の他端部に形成された開口部10aを通って固定シャフト10の外部に延出している。管部30は、開口部10aに固定されている。管部30の側面は、開口部10aに密接している。
管部30は、この内部に冷却液20を取り入れる取り入れ口30aと、冷却液20を固定シャフト10の内部に吐出す吐出し口30bとを有している。取り入れ口30aは、固定シャフト10の外部に位置している。吐出し口30bは、固定シャフト10の一端部に隙間を置いて位置している。
環部40は、筒部12の内部に設けられ、管部30の側面を囲むように管部30と一体に形成されている。環部40は、筒部12の内部に隙間を置いて設けられている。管部30及び環部40は、固定シャフト10とともに流路を形成している。
上記したことから、回転陽極型X線管1外部からの冷却液20は、取り入れ口30aから取り入れられ、管部30内部を通って筒部12の内部に吐出され、筒部12及び環部40の間を通り、環部13及び環部40の間を通り、筒部11及び管部30の間を通り、吐出し口10bから回転陽極型X線管1外部に吐出される。
陽極ターゲット50は、陽極51と、この陽極の外面の一部に設けられたターゲット層52とを有している。陽極51は、円盤状に形成され、固定シャフト10と同軸的に設けられている。陽極51は、Mo等の材料で形成されている。陽極51は、回転軸aに沿った方向に凹んだ凹部51aを有している。凹部51aは、円盤状に窪めて形成されている。凹部51aには筒部12が嵌合されている。凹部51aは、筒部12に隙間を置いて形成されている。回転軸aに沿った方向において、凹部51aはターゲット層52全体に重なっている。ターゲット層52の真下(内側)に液体金属70の熱伝達流路が設けられている。ターゲット層52は、W(タングステン)等の材料で輪状に形成されている。ターゲット層52の表面は電子衝突面である。
筒部12は、スラスト軸受面S3を有している。陽極51は、スラスト軸受面S4を有している。軸受面S3及び軸受面S4は、回転軸aに沿った方向に互いに隙間を保持して対向している。軸受面S3及び軸受面S4は、スラスト軸受B2を形成している。
回転部60は、筒部11より径の大きい筒状に形成されている。回転部60は、固定シャフト10及び陽極ターゲット50と同軸的に設けられている。回転部60は、筒部11より短く形成されている。
回転部60は、FeやMo等の材料で形成されている。より詳しくは、回転部60は、筒部61と、筒部61の一端部の側面を囲むように筒部と一体に形成された環部62と、筒部61の他端部に設けられたシール部63と、筒部64とを有している。
筒部61は、筒部11の側面を囲んでいる。筒部61は、内面に軸受面S1に隙間を置いて対向したラジアルすべり軸受面S2を有している。軸受面S1及び軸受面S2は、ラジアルすべり軸受B1を形成している。ここで、軸受面S1及び軸受面S2にそれぞれ溝が付いている。回転部60の環部62は陽極ターゲット50と接合されている。回転部60は、固定シャフト10を軸に陽極ターゲット50とともに回転可能に設けられている。
シール部63は、軸受面S2に対して環部62(一端部)の反対側に位置している。シール部63は、筒部61の他端部に接合されている。シール部63は、環状に形成され、固定シャフト10の側面全周に亘って隙間を置いて設けられている。筒部64は、筒部61の側面と接合され、筒部61に固定されている。筒部64は、例えばCu(銅)で形成されている。
液体金属70は、筒部12及び凹部51a間の隙間、環部13及び環部62間の隙間、環部13及び筒部61間の隙間、並びに筒部11(軸受面S1)及び筒部61(軸受面S2)間の隙間に充填されている。なお、これらの隙間は全て繋がっている。この実施の形態において、液体金属70は、ガリウム・インジウム・錫合金(GaInSn)である。
図1及び図2に示すように、シール部63及び固定シャフト10間の隙間(クリアランス)cは、回転部60の回転を維持するとともに液体金属70の漏洩を抑制できる値に設定されている。上記したことから、隙間cはわずかである。この実施の形態において、隙間cは500μm以下である。このため、シール部63は、ラビリンスシールリング(labyrinth seal ring)として機能する。
また、シール部63は、複数の収容部63aを有している。ここでは、シール部63は、4つの収容部63aを有している。収容部63aは、シール部63の内側を円形枠状に窪めてそれぞれ形成されている。収容部63aは、万一隙間cから液体金属70が漏れた場合、漏れた液体金属70を収容する。
筒部11は、スラスト軸受面S5を有している。シール部63は、スラスト軸受面S6を有している。軸受面S5及び軸受面S6は、回転軸aに沿った方向に互いに隙間を保持して対向している。軸受面S5及び軸受面S6は、スラスト軸受B3を形成している。このスラスト軸受B3は、高温にならず、軸受面S5及び軸受面S6間の隙間を一定に維持できるため、ターゲットが高温になってもスラスト軸受B3を正常に機能させることができる。
上記した陽極ターゲット50及び回転部60は、回転体600を形成している。回転体600は、陽極ターゲット50及び回転部60により一体に形成されている。回転体600は、径大部610と、径大部610より径の小さい径小部620とを有している。この実施の形態において、径大部610が陽極ターゲット50であり、径小部620が回転部60である。
図1に示すように、陰極80は、陽極ターゲット50のターゲット層52に間隔を置いて対向配置されている。陰極80は、電子を放出するフィラメント81を有している。
真空外囲器90は、固定シャフト10、冷却液20、管部30、環部40、陽極ターゲット50、回転部60、液体金属70及び陰極80を収容している。真空外囲器90は、X線透過窓90a及び開口部90bを有している。X線透過窓90aは、回転軸aに対して直交した方向にターゲット層52と対向している。固定シャフト10の他端部は、開口部90bを通って真空外囲器90の外部に露出されている。開口部90bは、固定シャフト10を固定している。固定シャフト10の側面は、開口部90bに密接している。
陰極80は、真空外囲器90の内壁に取付けられている。真空外囲器90は密閉されている。真空外囲器90の内部は真空状態に維持されている。
ステータコイル2は、回転部60の側面、より詳しくは筒部64の側面に対向して真空外囲器90の外側を囲むように設けられている。ステータコイル2の形状は環状である。
筐体内部に、回転陽極型X線管1及びステータコイル2が収容されている他、図示しない冷却液が充填されている。
上記X線管装置の動作状態において、ステータコイル2は回転部60(特に筒部64)に与える磁界を発生するため、回転体600は回転する。これにより、陽極ターゲット50は回転する。また、陰極80に相対的に負の電圧が印加され、陽極ターゲット50に相対的に正の電圧が印加される。例えば、陰極80に−150kVの電圧が印加され、陽極ターゲット50は接地されている。
これにより、陰極80及び陽極ターゲット50間に電位差が生じる。このため、陰極80は、電子を放出すると、この電子は、加速され、ターゲット層52に衝突される。すなわち、陰極80は、ターゲット層52に電子ビームを照射する。これにより、ターゲット層52は、電子と衝突するときにX線を放出し、放出されたX線はX線透過窓90aを介して真空外囲器90外部、ひいては筐体外部に放出される。
上記したように構成された回転陽極型X線管装置によれば、陽極ターゲット50は、ターゲット層52に重なった凹部51aを有し、固定シャフト10は凹部51aに嵌合されている。ターゲット層52及び冷却液20の流路を一層近接させている。
X線を放出する際、回転体600の回転時の遠心力は強く、液体金属70がターゲット層52(陽極ターゲット50の焦点軌道面)の真下まで流れて充満し、液体金属70の層を形成する。X線を放出する際、陽極ターゲット50、特にターゲット層52の電子衝突面は高温になるが、ターゲット層52の熱は、陽極51及び液体金属70を伝導して固定シャフト10に伝導され、固定シャフト10の内部の流路を流れる冷却液20に放射される。この際、液体金属70は熱伝達流体として機能する。ターゲット層52から冷却液20の流路までの熱伝導パスは短い。上記したことから、陽極ターゲット50の冷却率の一層優れた回転陽極型X線管1を得ることができる。
これにより、陽極ターゲット50の溶融等、陽極ターゲット50に生じる不良を抑制することができる。陽極ターゲット50の許容できる熱入力を大きくすることができるため、回転陽極型X線管1の出力を向上させることもできる。その他、回転陽極型X線管1の製品寿命を長くする効果を得ることができる。
また、冷却液20を水としたことも陽極ターゲット50の冷却率の向上、ひいては回転陽極型X線管1の高出力化に寄与している。すなわち、冷却液20は電熱界面で沸騰状態となり、冷却に寄与する。このように、沸騰冷却は、沸騰を伴わない冷却より冷却効率が良く、一層ターゲット層52の温度を低減させることができる。上記したことから、陽極ターゲット50の高冷却が可能となる。
シール部63は、軸受面S2に対して環部62(一端部)の反対側に位置している。シール部63はターゲット層52の電子衝突面の近くに設けられていない。シール部63は熱経路上電子衝突面から遠いため、電子衝突による熱の影響を受けない。すなわち、シール部63が高温となって生じるシール部63の変形を抑制することができる。従って、シール部63の熱変形を無視して隙間cを小さくすることができるとともに、シール部63からの液体金属70の漏洩を抑制することができる。
例えば、回転体600が静止状態から回転状態に移行する際に、径大部610付近の隙間での液体金属70の移動にともない、液体金属70のはねかえりが発生した場合であっても、このはねかえりによる悪影響がシール部63に及ぶことはない。このため、シール部63が液体金属70で濡らされることがなく、液体金属70の真空空間への漏洩が防止される。
回転陽極型X線管1が固体潤滑剤を使用した玉軸受を採用した場合、液体金属が玉軸受内に流入して残留・付着することにより、固体潤滑剤の塑性流動を妨げてしまう恐れがある。しかしながら、上記回転陽極型X線管1は、液体金属70自体を潤滑剤とする動圧軸受を採用している。このため、潤滑性能の低下が生じることはなく、長時間安定に陽極ターゲット50を回転させることができ、回転陽極型X線管1の製品寿命を長くする効果を得ることができる。
上記したことから、陽極ターゲット50の冷却率に優れ、製品寿命を長くすることができる回転陽極型X線管1および回転陽極型X線管1を備えた回転陽極型X線管装置を得ることができる。
次に、この発明の第2の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置について詳細に説明する。なお、この実施の形態において、他の構成は上述した第1の実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図3に示すように、回転体600は、径大部610と、径小部620とを有している。径大部610及び径小部620は、接続面無しに一体に形成されている。凹部51aはターゲット層52全体に重なっている。ターゲット層52の真下(内側)に液体金属70の熱伝達流路が設けられている。
上記したように構成された回転陽極型X線管装置によれば、陽極ターゲット50は、ターゲット層52に重なった凹部51aを有し、固定シャフト10は凹部51aに嵌合されている。ターゲット層52及び冷却液20の流路を近接させている。このため、ターゲット層52から冷却液20の流路までの熱伝導パスは短い。
上記したことから、陽極ターゲット50の冷却率に優れ、製品寿命を長くすることができる回転陽極型X線管1および回転陽極型X線管1を備えた回転陽極型X線管装置を得ることができる。
次に、この発明の第3の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置について詳細に説明する。なお、この実施の形態において、他の構成は上述した第1の実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図4及び図5に示すように、径大部610と径小部620の境界付近において、回転体600(筒部61)は、スラスト軸受面S8を有している。固定シャフト10(環部13)は、スラスト軸受面S7を有している。軸受面S7及び軸受面S8は、回転軸aに沿った方向に互いに隙間を保持して対向している。軸受面S7及び軸受面S8は、スラスト軸受B4を形成している。
このスラスト軸受B4は、高温にならず、軸受面S7及び軸受面S8間の隙間を一定に維持できるため、ターゲットが高温になってもスラスト軸受B4を正常に機能させることができる。
図4及び図6に示すように、固定シャフト10は、環部14をさらに有している。環部14は、ラジアルすべり軸受面S1を挟んで筒部12(径大部610)と反対側の筒部11の側面を囲んでいる。筒部11及び環部14は、接続面無しに一体に形成されている。
筒部61は、ラジアルすべり軸受面S2を挟んで径大部610と反対側に、内面を凹ませた段差部61aを有している。環部14は、段差部61a及びシール部63で囲まれたスペースに嵌合されている。
環部14は、スラスト軸受面S9を有している。筒部61は、スラスト軸受面S10を有している。軸受面S9及び軸受面S10は、回転軸aに沿った方向に互いに隙間を保持して対向している。軸受面S9及び軸受面S10は、スラスト軸受B5を形成している。このスラスト軸受B5は、高温にならず、軸受面S9及び軸受面S10間の隙間を一定に維持できるため、ターゲットが高温になってもスラスト軸受B5を正常に機能させることができる。
上記したように構成された回転陽極型X線管装置によれば、陽極ターゲット50は、ターゲット層52に重なった凹部51aを有し、固定シャフト10は凹部51aに嵌合されている。ターゲット層52及び冷却液20の流路を近接させている。このため、ターゲット層52から冷却液20の流路までの熱伝導パスは短い。
スラスト軸受B4、B5は、高温にはならない。ターゲット層52からの熱伝導によるスラスト軸受B4、B5の変形を防止でき、スラスト軸受B4、B5の隙間を一定に維持でき、スラスト軸受B4、B5としての機能を保持できるため、回転体600の回転動作を維持することができる。
上記したことから、陽極ターゲット50の冷却率に優れ、製品寿命を長くすることができる回転陽極型X線管1および回転陽極型X線管1を備えた回転陽極型X線管装置を得ることができる。
次に、この発明の第4の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置について詳細に説明する。なお、この実施の形態において、他の構成は上述した第1及び第3の実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図7及び図8に示すように、固定シャフト10は、環部14をさらに有している。筒部61は、段差部61aを有している。環部14は、段差部61a及びシール部63で囲まれたスペースに嵌合されている。
環部14は、スラスト軸受面S9を有している。筒部61は、スラスト軸受面S10を有している。軸受面S9及び軸受面S10は、回転軸aに沿った方向に互いに隙間を保持して対向している。軸受面S9及び軸受面S10は、スラスト軸受B5を形成している。
環部14は、スラスト軸受面S11を有している。シール部63は、スラスト軸受面S12を有している。軸受面S11及び軸受面S12は、回転軸aに沿った方向に互いに隙間を保持して対向している。軸受面S11及び軸受面S12は、スラスト軸受B6を形成している。
これらスラスト軸受B5、B6は、高温にならず、軸受面S9及び軸受面S10間の隙間、並びに軸受面S11及び軸受面S12間の隙間を一定に維持できるため、ターゲットが高温になってもスラスト軸受B5を正常に機能させることができる。
上記したように構成された回転陽極型X線管装置によれば、陽極ターゲット50は、ターゲット層52に重なった凹部51aを有し、固定シャフト10は凹部51aに嵌合されている。ターゲット層52及び冷却液20の流路を近接させている。このため、ターゲット層52から冷却液20の流路までの熱伝導パスは短い。
スラスト軸受B5、B6は、高温にはならない。ターゲット層52からの熱伝導によるスラスト軸受B5、B6の変形を防止でき、スラスト軸受B5、B6の隙間を一定に維持でき、スラスト軸受B5、B6としての機能を保持できるため、回転体600の回転動作を維持することができる。
上記したことから、陽極ターゲット50の冷却率に優れ、製品寿命を長くすることができる回転陽極型X線管1および回転陽極型X線管1を備えた回転陽極型X線管装置を得ることができる。
次に、この発明の第5の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置について詳細に説明する。なお、この実施の形態において、他の構成は上述した第1及び第4の実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図9に示すように、固定シャフト10は、環部14をさらに有している。筒部61は、段差部61aを有している。環部14は、段差部61a及びシール部63で囲まれたスペースに嵌合されている。回転陽極型X線管1は、スラスト軸受B5、B6を形成している。
回転軸aに沿った方向において、凹部51aはターゲット層52の一部、より詳しくは、ターゲット層52の内側領域にのみ重なっている。このため、ターゲット層52の内側領域の真下(内側)にのみ液体金属70の熱伝達流路が設けられている。径大部610の内径(凹部51aの直径)は、上述した第5の実施の形態の径大部610の内径(凹部51aの直径)より小さい。
上記したように構成された回転陽極型X線管装置によれば、陽極ターゲット50は、ターゲット層52に重なった凹部51aを有し、固定シャフト10は凹部51aに嵌合されている。ターゲット層52及び冷却液20の流路を近接させている。このため、ターゲット層52から冷却液20の流路までの熱伝導パスは短い。
ターゲット層52の一部の真下(内側)に液体金属70の熱伝達流路が設けられているため、液体金属70の熱伝達流路が設けられていない場合に比べて陽極ターゲット50の冷却率を向上させることができる。
径大部610の内径は小さいため、液体金属70のせん断応力により生じる発熱を抑制することができる。
ここで、液体金属70のせん断応力により生じる発熱が回転陽極型X線管装置に与える悪影響について説明する。液体金属70のせん断応力により生じる発熱の大きさは、径大部610の内径が大きいほど大きくなる。液体金属70の発熱が大きくなると、必要な回転数で回転体600を回転させる回転トルクも大きくなる。このため、回転体600を回転させるステータコイル2(モータ)も大きくなってしまう。従って、回転陽極型X線管装置の重量及び寸法が大きくなってしまい、回転陽極型X線管装置を高速回転するCT装置への搭載が困難となる。
上記したことから、陽極ターゲット50の冷却率に優れ、製品寿命を長くすることができる回転陽極型X線管1および回転陽極型X線管1を備えた回転陽極型X線管装置を得ることができる。
次に、この発明の第6の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置について詳細に説明する。なお、この実施の形態において、他の構成は上述した第1の実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図10に示すように、回転陽極型X線管1は、固定シャフト10と、冷却液20と、管部30と、陽極ターゲット50と、回転部60と、潤滑剤としての液体金属70と、陰極80と、真空外囲器90とを備えている。液体金属70の熱伝達流路は、ターゲット層52の真下(内側)から外れて設けられている。回転陽極型X線管1は、ラジアルすべり軸受B1、スラスト軸受B2及びスラスト軸受B3を有している。
液体金属70は、固定シャフト10の一端部及び凹部51a間の隙間、並びに固定シャフト10(軸受面S1)及び筒部61(軸受面S2)間の隙間に充填されている。なお、これらの隙間は全て繋がっている。
回転体600は、径大部610と、径大部610より径の小さい径小部620とを有している。この実施の形態において、径大部610の内径(凹部51aの直径)と、径小部620の内径(筒部61の内径)はほぼ同じである。
上記したように構成された回転陽極型X線管装置によれば、陽極ターゲット50は、ターゲット層52に重なった凹部51aを有し、固定シャフト10は凹部51aに嵌合されている。ターゲット層52及び冷却液20の流路を近接させている。このため、ターゲット層52から冷却液20の流路までの熱伝導パスは短い。
陽極51に凹部51aが形成され、凹部51aに液体金属70の熱伝達流路が設けられているため、陽極51に凹部51aが形成されていない場合に比べて陽極ターゲット50の冷却率を向上させることができる。
径大部610の内径は、径小部620の内径とほぼ同一であり、小さいため、液体金属70のせん断応力により生じる発熱を抑制することができる。
上記したことから、陽極ターゲット50の冷却率に優れ、製品寿命を長くすることができる回転陽極型X線管1および回転陽極型X線管1を備えた回転陽極型X線管装置を得ることができる。
次に、この発明の第7の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置について詳細に説明する。なお、この実施の形態において、他の構成は上述した第1の実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図11に示すように、冷却液20の循環方向は逆向きでも良い。固定シャフト10は、この他端部側に冷却液20を取り入れる取り入れ口10cを有している。管部30は、外部に冷却液20を吐出す吐出し口30cと、冷却液20を管部30の内部に取り入れる取り入れ口30dとを有している。吐出し口30cは、固定シャフト10の外部に位置している。取り入れ口30dは、固定シャフト10の一端部に隙間を置いて位置している。
上記したことから、回転陽極型X線管1外部からの冷却液20は、取り入れ口10cから取り入れられ、固定シャフト10及び回転体600の間を通り、管部30の内部を通り、吐出し口30cから回転陽極型X線管1外部に吐出される。
上記したように構成された回転陽極型X線管装置によれば、陽極ターゲット50は、ターゲット層52に重なった凹部51aを有し、固定シャフト10は凹部51aに嵌合されている。ターゲット層52及び冷却液20の流路を近接させている。このため、ターゲット層52から冷却液20の流路までの熱伝導パスは短い。
冷却液20の循環方向が逆向きであっても、冷却液20を良好に循環させることができる。管部30内部を通って加熱された冷却液20を固定シャフト10に与えるのではなく、冷却液20を、直接、固定シャフト10に与えるように構成されている。このため、固定シャフト10を十分に冷却でき、これにより、回転体600を安定に回転させることができる。
上記したことから、陽極ターゲット50の冷却率に優れ、製品寿命を長くすることができる回転陽極型X線管1および回転陽極型X線管1を備えた回転陽極型X線管装置を得ることができる。
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、冷却液20は、水及び不凍液の混合液であっても良い。そして、この冷却液20を用いて沸騰冷却を行い、ターゲット層52の温度を低減させても良い。この場合でも、陽極ターゲット50の高冷却が可能となる。
固定シャフト10の厚みは、適切な値であれば良い。液体金属70及び液体金属70に接する金属は、これらの接触面で温度が上がると、これらの間で反応生成物を作り出す。反応生成物は、回転体60と固定シャフト10との隙間を埋め、回転体60が回転するとき抵抗となり、回転体としての機能を損ねる。従って、液体金属70とそれに接する金属の接触面の温度をある程度低減させる必要がある。
固定シャフト10の厚みが大きすぎると、固定シャフト10の厚み方向の温度差が大きくなってしまう。その結果、液体金属70と固定シャフト10の伝熱面における温度が高くなり、反応生成物を作り出す恐れがある。
従って、固定シャフト10の厚みをある程度小さくすることにより、この伝熱面の温度を低減することができる。好ましい固定シャフト10の厚みは0.05mm以上5mm以下であり、これにより、回転体としての機能を長時間維持させることが可能となる。
固定シャフト10は、少なくとも低炭素鋼、モリブデン又はモリブデン合金の材料で形成され、固定シャフト10の表面は、液体金属70との反応温度の高い金属で被覆されていれば良い。上記のようにして反応生成物を作り出さないようにすることにより、回転体としての機能を長時間維持させることが可能となる。なお、固定シャフト10の表面を被覆する際、金属をメッキ又は溶射等の手段を用いて行えば良い。
また、固定シャフト10の表面は、セラミック等の無機材料で被覆されていても良い。上記のようにして反応生成物を作り出さないようにすることにより、回転体としての機能を長時間維持させることが可能となる。
固定シャフト10は、低炭素鋼で形成され、固定シャフト10の表面は、モリブデンで被覆されていても良い。なお、モリブデンで被覆する際、例えば溶射を用いて行えば良い。低炭素鋼は、高強度であり、他の金属との接合が容易である利点を有している。モリブデンは、液体金属70との反応速度が比較的遅い。このため、回転体としての機能を長時間維持させることが可能となる。
上記したように、固定シャフト10の表面を、液体金属70と反応しない材料で被覆するか、又は固定シャフト10自体を液体金属70と反応しない材料で形成することにより、長時間安定に陽極ターゲット50を回転させることができ、製品寿命を長くすることができる。
この発明によれば、陽極ターゲットの冷却率に優れ、製品寿命を長くすることができる回転陽極型X線管を提供することができる。

Claims (13)

  1. 側面にラジアルすべり軸受面を有し、内部に冷却液が流れる流路を有する固定体と、
    前記固定体の一端部と隙間をおいて嵌合される凹部を有し、陽極ターゲットを構成する円盤状の径大部と、前記固定体の側面を囲み、内面に前記ラジアルすべり軸受面に隙間を置いて対向するラジアルすべり軸受面を有し、一端部で前記径大部と一体化された径小部と、を含む回転体と、
    前記隙間に充填された潤滑剤と、
    前記径大部の陽極ターゲットに対向配置された陰極と、
    前記固定体、回転体、潤滑剤及び陰極を収容し、前記固定体を、前記凹部に嵌合される前記固定体の一端部に対して反対側に位置する前記固定体の他端部で固定する真空外囲器と、を備えている回転陽極型X線管。
  2. 前記回転体は、前記径小部のラジアルすべり軸受面に対して前記径大部の反対側の前記径小部に設けられ、前記回転体の回転を維持するとともに前記潤滑剤の漏洩を抑制するシール部を有している請求項1に記載の回転陽極型X線管。
  3. 前記シール部は、環状に形成され、前記固定体の側面全周に亘って隙間を置いて設けられている請求項2に記載の回転陽極型X線管。
  4. 前記固定体の内部に設けられ、前記固定体とともに前記流路を形成する管部をさらに備えている請求項1に記載の回転陽極型X線管。
  5. 前記径大部の内部に設けられ、前記管部の側面を囲むように前記管部と一体に形成された環部をさらに備え、
    前記管部及び環部は、前記固定体とともに前記流路を形成する請求項4に記載の回転陽極型X線管。
  6. 前記冷却液は、水である請求項1に記載の回転陽極型X線管。
  7. 前記冷却液は、水及び不凍液の混合液である請求項1に記載の回転陽極型X線管。
  8. 前記潤滑剤は、液体金属である請求項1に記載の回転陽極型X線管。
  9. 前記固定体の厚みは、0.05mm以上5mm以下である請求項1に記載の回転陽極型X線管。
  10. 前記固定体は、低炭素鋼、モリブデン又はモリブデン合金の材料で形成され、前記固定体の表面は、前記液体金属との反応温度の高い金属で被覆されている請求項1に記載の回転陽極型X線管。
  11. 前記固定体の表面は、無機材料で被覆されている請求項10に記載の回転陽極型X線管。
  12. 前記固定体の表面は、セラミックで被覆されている請求項11に記載の回転陽極型X線管。
  13. 前記固定体は、低炭素鋼で形成され、前記固定体の表面は、モリブデンで被覆されている請求項1に記載の回転陽極型X線管。
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