JP2015041432A - 回転陽極型x線管及びx線管装置 - Google Patents

回転陽極型x線管及びx線管装置 Download PDF

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Mitsuhisa Iwase
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Abstract

【課題】良好な軸受動作を得ることができ、固定軸と回転体との間の隙間から外部への潤滑剤の漏洩を低減することができる回転陽極型X線管及び回転陽極型X線管を備えたX線管装置を提供する。
【解決手段】回転陽極型X線管は、ラジアル軸受面(S11a)を有した固定軸10と、他のラジアル軸受面を有した回転体と、固定軸及び回転体間の隙間に充填された潤滑剤と、陽極ターゲットと、陰極と、真空外囲器と、を備える。固定軸10は、シェルタ(15、16、17)と、循環孔(16a2)と、を有している。シェルタは、固定軸10の内部に設けられ潤滑剤を収容する。循環孔(16a2)は、シェルタ(16)に連通され固定軸10の側面に対する法線と交差して直線的に延在しそれぞれ上記側面に開口した両開口端を含んでいる。
【選択図】図5

Description

本発明の実施形態は、回転陽極型X線管及びX線管装置に関する。
一般に、X線管装置として、回転陽極型のX線管装置が使用されている。回転陽極型のX線管装置は、X線を放射する回転陽極型X線管と、ステータコイルと、これら回転陽極型X線管及びステータコイルを収容した筐体と、を備えている。回転陽極型X線管は、陽極ターゲットと、陰極と、真空外囲器と、を備え、動圧式のすべり軸受を使っている。
すべり軸受は、筒状の回転体と、この回転体の内部に嵌合され、回転体を回転可能に支持する円柱状の固定軸と、回転体及び固定軸間の隙間に充填された金属潤滑剤とを有している。
上記回転陽極型X線管装置の動作状態において、ステータコイルは回転体に与える磁界を発生するため、回転体及び陽極ターゲットは回転する。また、陰極は陽極ターゲットに対して電子ビームを照射する。これにより、陽極ターゲットは、電子と衝突するときにX線を放出する。
例えば、固定軸は、内部に金属潤滑剤を収容するシェルタと、シェルタに連通され固定軸の側面に対する法線に沿って直線的に延在し側面に開口した開口端を含んでいる循環穴と、を備えている。固定軸と回転体との隙間に充満した金属潤滑剤に遠心力が働くと、金属潤滑剤はすべり軸受(固定軸と回転体との間の隙間)へと移動する一方で、循環穴を経由してシェルタ内に収容される。このため、シェルタ及び循環穴により、固定軸と回転体との間の隙間に充満した金属潤滑剤に働く遠心力に起因した、固定軸と回転体との間の隙間から外部(真空外囲器内)への金属潤滑剤の噴出を防止することができる。
特開2005−69375号公報 特開2011−124151号公報 特開2011−233258号公報 特許第3410882号公報
ところで、稼動停止状態において、回転陽極型X線管の姿勢によっては、循環穴は、シェルタに収容された金属潤滑剤の液面より鉛直上方に位置している場合がある。シェルタ内の金属潤滑剤はシェルタ内に捕獲されたままとなる。金属潤滑剤がすべり軸受(固定軸と回転体との間の隙間)に供給されなくなり、すべり軸受に十分な金属潤滑剤を供給することが困難となる。このため、回転体の回転開始時に、固定軸と回転体との間の隙間に存在するべき金属潤滑剤の量が不足し、すべり軸受の不安定動作を引き起こす恐れがある。
なお、金属潤滑剤の偏在は、回転陽極型X線管の製造組立て工程で固定軸の中心軸を鉛直方向に平行にした場合や、金属潤滑剤を軸受内に注入した初期に起こり得る。その他、金属潤滑剤の偏在は、X線管装置をX線CT装置(X線コンピュータ断層撮影装置)の架台に取り付け、架台が任意の位置で停止した場合や、輸送や製造工程によっても起こり得る。
また、真空外囲器の真空排気時において、シェルタ内の空間が金属潤滑剤で満たされている場合、すべり軸受の内部と真空外囲器の内部との圧力差により、すべり軸受の内部(固定軸と回転体との間の隙間)から外部(真空外囲器の内部)に金属潤滑剤が漏れ出す恐れがある。これにより、すべり軸受における金属潤滑剤の不足や、漏れ出た金属潤滑剤が回転陽極型X線管の高電圧側に移動することによる耐電圧不良を引き起こす恐れがある。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、良好な軸受動作を得ることができ、固定軸と回転体との間の隙間から外部への潤滑剤の漏洩を低減することができる回転陽極型X線管及び回転陽極型X線管を備えたX線管装置を提供することにある。
一実施形態に係る回転陽極型X線管は、
円柱状に形成され、側面に形成されたラジアル軸受面と、シェルタと、循環孔と、を有した固定軸と、
前記固定軸と同軸的に延出して筒状に形成され、前記ラジアル軸受面に隙間を置いて対向した他のラジアル軸受面を有し、前記固定軸を中心に回転自在な回転体と、
前記固定軸及び回転体間の隙間に充填され、前記ラジアル軸受面及び他のラジアル軸受面とともに動圧形のラジアルすべり軸受を形成する潤滑剤と、
前記回転体に固定され、電子が入射されることによりX線を放出する陽極ターゲットと、
前記陽極ターゲットに照射する電子を放出する陰極と、
前記固定軸、回転体、陽極ターゲット及び陰極を収容し、前記固定軸を固定する真空外囲器と、を備え、
前記シェルタは、前記固定軸の内部に設けられ前記潤滑剤を収容し、
前記循環孔は、前記シェルタに連通され前記側面に対する法線と交差して直線的に延在しそれぞれ前記側面に開口した両開口端を含んでいることを特徴としている。
また、一実施形態に係るX線管装置は、
上記回転陽極型X線管と、
前記回転体に与える磁界を発生して前記回転体及び陽極ターゲットを回転させるコイルと、
前記回転陽極型X線管及びコイルを収容した筐体と、を備えていることを特徴としている。
図1は、一実施形態に係る回転陽極型X線管を備えたX線管装置を示す断面図である。 図2は、図1に示した回転陽極型X線管の一部を拡大して示す断面図である。 図3は、図1及び図2に示した固定軸を示す斜視図である。 図4は、上記固定軸を示す正面図である。 図5は、図4の線V−Vに沿った固定軸を示す断面図である。 図6は、図4の線VI−VIに沿った固定軸を示す断面図である。 図7は、図4の線VII−VIIに沿った固定軸を示す断面図である。 図8は、上記実施形態に係る固定軸の変形例を示す断面図である。
以下、図面を参照しながら一実施形態に係る回転陽極型X線管及び回転陽極型X線管を備えたX線管装置について詳細に説明する。
図1に示すように、回転陽極型X線管装置は、回転陽極型X線管1と、磁界を発生させるコイルとしてのステータコイル2と、回転陽極型X線管1及びステータコイル2を収容した筐体3と、筐体3と回転陽極型X線管1との間の空間に充填された冷却液7とを備えている。
回転陽極型X線管1は、陽極ターゲット50と、陰極60と、真空外囲器70とを備えている。さらに、回転陽極型X線管1は、固定軸10と、回転体(回転軸)20と、潤滑剤としての液体金属LMとを備え、すべり軸受を使っている。
図1及び図2に示すように、固定軸10は、円柱状に形成され、側面に形成されたラジアル軸受面と、シェルタと、循環孔と、を有している。固定軸10は、径大部11、第1径小部12及び第2径小部13を具備している。径大部11、第1径小部12及び第2径小部13は、同軸的に一体に形成されている。固定軸10は、Fe(鉄)合金やMo(モリブデン)合金等の金属で形成されている。
径大部11は、円柱状に形成され、それぞれ側面に位置した第1ラジアル軸受面S11a、第2ラジアル軸受面S11b、第1凹面11a、第2凹面11b及び第3凹面11cを有している。また、径大部11は、一端に第1スラスト軸受面S11cを有し他端に第2スラスト軸受面S11dを有している。第1ラジアル軸受面S11a及び第2ラジアル軸受面S11b、並びに及び第1凹面11a、第2凹面11b及び第3凹面11cは、それぞれ径大部11の側面に全周に亘って形成されている。
第1ラジアル軸受面S11a及び第2ラジアル軸受面S11bは、固定軸10の中心軸に沿った方向に間隔を置いて並べられている。第1凹面11a、第2凹面11b及び第3凹面11cは、第1ラジアル軸受面S11a及び第2ラジアル軸受面S11bに比べて窪んで形成されている。
第1凹面11a、第2凹面11b及び第3凹面11cは、固定軸10の中心軸に沿った方向に互いに間隔を置いて位置し、第1ラジアル軸受面S11a及び第2ラジアル軸受面S11bから外れている。第1凹面11aは、第1ラジアル軸受面S11aと第2ラジアル軸受面S11bとの間に位置している。第2凹面11bは、第1凹面11aから向かって第1ラジアル軸受面S11aを越えて位置している。第3凹面11cは、第1凹面11aから向かって第2ラジアル軸受面S11bを越えて位置している。
第1径小部12は、径大部11より外径の小さい円柱状に形成され、径大部11の一端側に位置している。第1径小部12は、第1スラスト軸受面S11cより固定軸10の中心軸側に位置している。
第2径小部13は、径大部11より外径の小さい円柱状に形成され、径大部11の他端側に位置している。第2径小部13は、第2スラスト軸受面S11dより固定軸10の中心軸側に位置している。
図2乃至図7に示すように、固定軸10は、シェルタと、循環穴と、循環孔と、をさらに有している。シェルタは、固定軸10の内部に設けられ、液体金属LMを収容する。循環穴は、シェルタに連通され、固定軸10の側面に対する法線に沿って直線的に延在し、上記側面に開口した開口端を含んでいる。循環孔は、シェルタに連通され、固定軸10の側面に対する法線と交差して直線的に延在し、それぞれ上記側面に開口した両開口端を含んでいる。
この実施形態において、固定軸10は、第1シェルタ15と、循環穴15a1、15b1、15c1と、第1循環孔としての循環孔15c2と、第2シェルタ16と、循環穴16a1、16b1、16c1と、第2循環孔としての循環孔16a2と、第3シェルタ17と、循環穴17a1、17b1、17c1と、第3循環孔としての循環孔17b2と、をさらに有している。
第1シェルタ15、第2シェルタ16及び第3シェルタ17は、それぞれ、固定軸10の内部に設けられ、固定軸10の中心軸に沿った方向に直線的に延在した貫通穴で形成されている。第1シェルタ15、第2シェルタ16及び第3シェルタ17は、それぞれ第2凹面11bと重なる位置まで延在している。第2径小部13の一端面に開口した第1シェルタ15、第2シェルタ16及び第3シェルタ17の開口部は、液体金属LMが漏れ出さないようにしている。第1シェルタ15、第2シェルタ16及び第3シェルタ17は、固定軸10と同心円上に位置し、固定軸10の中心軸の周りに等間隔に形成されている。
循環穴15a1、15b1、15c1は、第1シェルタ15に連通され、固定軸10の側面に対する法線に沿って直線的に延在し、上記側面に開口した開口端を含んでいる。循環穴15a1の開口端は第1凹面11aに開口し、循環穴15b1の開口端は第2凹面11bに開口し、循環穴15c1の開口端は第3凹面11cに開口している。
循環孔15c2は、第1シェルタ15に連通され、固定軸10の側面に対する法線と交差して直線的に延在し、それぞれ第1凹面11a、第2凹面11b及び第3凹面11cの何れか1つに開口した両開口端を含んでいる。ここでは、循環孔15c2は、第3凹面11cに対する法線と直交して直線的に延在し、第3凹面11cに開口した両開口端を含んでいる。
循環穴15a1、15b1、15c1及び循環孔15c2は、固定軸10と回転体20との間の隙間と、第1シェルタ15と、の間で液体金属LMを循環させる。第1シェルタ15には、循環穴15a1、15b1、15c1だけではなく、循環孔15c2も連通している。このため、固定軸10の中心軸が鉛直方向に対して垂直となる如何なる姿勢を回転陽極型X線管1がとっても、第1シェルタ15に一時的に収容された液体金属LMを、固定軸10と回転体20との間の隙間に供給することができる。
すなわち、循環穴15a1、15b1、15c1が第1シェルタ15に収容された液体金属LMの液面より鉛直上方に位置していても、第1シェルタ15から循環孔15c2を通って固定軸10と回転体20との間の隙間に供給することができる。
循環穴16a1、16b1、16c1は、第2シェルタ16に連通され、固定軸10の側面に対する法線に沿って直線的に延在し、上記側面に開口した開口端を含んでいる。循環穴16a1の開口端は第1凹面11aに開口し、循環穴16b1の開口端は第2凹面11bに開口し、循環穴16c1の開口端は第3凹面11cに開口している。
循環孔16a2は、第2シェルタ16に連通され、固定軸10の側面に対する法線と交差して直線的に延在し、それぞれ第1凹面11a、第2凹面11b及び第3凹面11cの残りの2つの何れか1つに開口した両開口端を含んでいる。ここでは、循環孔16a2は、第1凹面11aに対する法線と直交して直線的に延在し、第1凹面11aに開口した両開口端を含んでいる。
循環穴16a1、16b1、16c1及び循環孔16a2は、固定軸10と回転体20との間の隙間と、第2シェルタ16と、の間で液体金属LMを循環させる。第2シェルタ16には、循環穴16a1、16b1、16c1だけではなく、循環孔16a2も連通している。このため、固定軸10の中心軸が鉛直方向に対して垂直となる如何なる姿勢を回転陽極型X線管1がとっても、第2シェルタ16に一時的に収容された液体金属LMを、固定軸10と回転体20との間の隙間に供給することができる。
すなわち、循環穴16a1、16b1、16c1が第2シェルタ16に収容された液体金属LMの液面より鉛直上方に位置していても、第2シェルタ16から循環孔16a2を通って固定軸10と回転体20との間の隙間に供給することができる。
循環穴17a1、17b1、17c1は、第3シェルタ17に連通され、固定軸10の側面に対する法線に沿って直線的に延在し、上記側面に開口した開口端を含んでいる。循環穴17a1の開口端は第1凹面11aに開口し、循環穴17b1の開口端は第2凹面11bに開口し、循環穴17c1の開口端は第3凹面11cに開口している。
循環孔17b2は、第3シェルタ17に連通され、固定軸10の側面に対する法線と交差して直線的に延在し、それぞれ第1凹面11a、第2凹面11b及び第3凹面11cの残りの1つに開口した両開口端を含んでいる。ここでは、循環孔17b2は、第2凹面11bに対する法線と直交して直線的に延在し、第2凹面11bに開口した両開口端を含んでいる。
循環穴17a1、17b1、17c1及び循環孔17b2は、固定軸10と回転体20との間の隙間と、第3シェルタ17と、の間で液体金属LMを循環させる。第3シェルタ17には、循環穴17a1、17b1、17c1だけではなく、循環孔17b2も連通している。このため、固定軸10の中心軸が鉛直方向に対して垂直となる如何なる姿勢を回転陽極型X線管1がとっても、第3シェルタ17に一時的に収容された液体金属LMを、固定軸10と回転体20との間の隙間に供給することができる。
すなわち、循環穴17a1、17b1、17c1が第3シェルタ17に収容された液体金属LMの液面より鉛直上方に位置していても、第3シェルタ17から循環孔17b2を通って固定軸10と回転体20との間の隙間に供給することができる。
固定軸10は、冷却液の流路を形成する熱伝達部をさらに有している。熱伝達部は、内部を流れる冷却液に熱を伝達する。熱伝達部は、上記シェルタ、循環穴及び循環孔から外れて位置し、内部を固定軸10の中心軸に沿って延在し、両端部の少なくとも一方に開口している。ここでは、熱伝達部は、熱伝達穴10aであり、第1径小部12側の端部に開口している。熱伝達穴10aを流れる冷却液に、冷却液7を利用したり、冷却液7以外の冷却液を利用したりすることができる。これにより、回転陽極型X線管1の発熱部の冷却率を向上させることができる。
図1及び図2に示すように、回転体20は、両端部が円形枠状に窪められた筒状に形成され、固定軸10と同軸的に延出して筒状に形成されている。回転体20は、回転体20の中心軸に沿った方向に延出している。この実施形態において、回転体20は、筒状の本体21と、本体21の他端部に取り外し可能にねじ留めされた円環状の蓋部22とで形成されている。回転体20は、Fe合金やMo合金等の金属で形成されている。
回転体20は、凹部20aを形成している。径大部11が凹部20aの内部に嵌合された状態で、固定軸10は回転体20の内部に嵌合されている。回転体20は、固定軸10を中心に回転自在である。径大部11及び凹部20aは、固定軸10及び回転体20の上記中心軸に沿った方向への相対的なズレを規制するものである。また、回転体20は、筒部25を有している。筒部25は、本体21の側面と接合され、本体21に固定されている。筒部25は、例えばCu(銅)で形成されている。
回転体20は、ラジアル軸受面に隙間を置いて対向した他のラジアル軸受面を有している。この実施形態において、回転体20は、第1ラジアル軸受面S11a及び第2ラジアル軸受面S11bに隙間を置いて対向した第3ラジアル軸受面S21aを有している。また、回転体20は、第1スラスト軸受面S11cに隙間を置いて対向した第3スラスト軸受面S22と、第2スラスト軸受面S11dに隙間を置いて対向した第4スラスト軸受面S21bと、を有している。
固定軸10及び回転体20は、全対向領域で、互いに隙間を置いて設けられている。径大部11は回転体20で覆われている。第1径小部12及び第2径小部13は回転体20の外側に突出している。固定軸10は回転体20を回転可能に支持している。
液体金属LMは、固定軸10及び回転体20間の隙間に充填されている。詳しくは、液体金属LMは、径大部11と回転体20との間の隙間に充填されている。液体金属LMは、固定軸10及び回転体20間の隙間だけでなく、シェルタ内にも適量充填されている。この実施の形態において、液体金属LMは、第1シェルタ15、第2シェルタ16及び第3シェルタ17の少なくとも1つに適量充填されている。また、第1シェルタ15、第2シェルタ16及び第3シェルタ17の少なくとも1つには固定軸10及び回転体20の中心軸が鉛直方向に直交する姿勢で、液体金属LMが充填されていない空間が設けられている。
液体金属LMは、GaIn(ガリウム・インジウム)合金又はGaInSn(ガリウム・インジウム・錫)合金等の材料を利用することができる。液体金属LMは、上記循環穴及び循環孔を介して固定軸10の内部及び外部に出入り可能である。
液体金属LMは、固定軸10の軸受面及び回転体20の軸受面とともに動圧形のすべり軸受を形成している。この実施形態において、液体金属LMは、第1ラジアル軸受面S11a及び第3ラジアル軸受面S21aとともに動圧形の第1ラジアルすべり軸受B1を形成している。液体金属LMは、第2ラジアル軸受面S11b及び第3ラジアル軸受面S21aとともに動圧形の第2ラジアルすべり軸受B2を形成している。液体金属LMは、第1スラスト軸受面S11c及び第3スラスト軸受面S22とともに動圧形の第1スラストすべり軸受B3を形成している。液体金属LMは、第2スラスト軸受面S11d及び第4スラスト軸受面S21bとともに動圧形の第2スラストすべり軸受B4を形成している。
陽極ターゲット50は、円環状に形成され、固定軸10及び回転体20と同軸的に設けられている。陽極ターゲット50は、接続部80を介して回転体20の一部(一端部)に固定されている。なお、陽極ターゲット50は接続部80と同一材料で一体に形成されていてもよい。
陽極ターゲット50は、陽極本体51と、陽極本体51の外面の一部に設けられたターゲット層52とを有している。陽極ターゲット50は、回転体20とともに回転可能である。陽極ターゲット50は、ターゲット層52に電子が入射されることによりX線を放出するものである。
陰極60は、陽極ターゲット50のターゲット層52に間隔を置いて対向配置されている。陰極60は、真空外囲器70の内壁に取付けられている。陰極60は、ターゲット層52に照射する電子を放出する電子放出源としてのフィラメント61を有している。
真空外囲器70は、円筒状に形成されている。真空外囲器70はガラス及び金属で形成されている。真空外囲器70において、陽極ターゲット50と対向した個所の径は、回転体20と対向した個所の径より大きい。真空外囲器70は開口部71、72を有している。真空外囲器70は、密閉され、固定軸10、回転体20、陽極ターゲット50及び陰極60等を収容している。真空外囲器70の内部は真空状態に維持されている。
真空外囲器70の密閉状態を維持するよう、開口部71は固定軸10の一端部(第1径小部12)に気密に接合され、開口部72は固定軸10の他端部(第2径小部13)に気密に接合されている。この実施の形態において、回転陽極型X線管1は、両端支持軸受構造を採用している。真空外囲器70は、固定軸10の第1径小部12及び第2径小部13を固定している。すなわち、第1径小部12及び第2径小部13は、軸受の両持ち支持部として機能している。
ステータコイル2は、回転体20の側面、より詳しくは筒部25の側面に対向して真空外囲器70の外側を囲むように設けられている。ステータコイル2の形状は環状である。ステータコイル2は、筒部25(回転体20)に与える磁界を発生して回転体20及び陽極ターゲット50を回転させる。
筐体3は、陰極60と対向したターゲット層52付近にX線を透過させるX線透過窓3aを有している。筐体3の内部には、回転陽極型X線管1及びステータコイル2が収容されている他、冷却液7が充填されている。
上記のように回転陽極型X線管1を備えたX線管装置が形成されている。
上記X線管装置の動作状態において、ステータコイル2は回転体20(特に筒部25)に与える磁界を発生するため、回転体20は回転する。これにより、陽極ターゲット50は回転する。また、陰極60に相対的に負の電圧が印加され、陽極ターゲット50に相対的に正の電圧が印加される。
これにより、陰極60及び陽極ターゲット50間に電位差が生じる。このため、フィラメント61は、電子を放出すると、この電子は、加速され、ターゲット層52に衝突する。これにより、ターゲット層52は、電子と衝突するときにX線を放出し、放出されたX線は真空外囲器70及びX線透過窓3aを透過し、筐体3の外部に放出される。
上記のように構成された一実施形態に係る回転陽極型X線管1及びX線管装置によれば、回転陽極型X線管1は、固定軸10と、回転体20と、液体金属LMと、陽極ターゲット50と、陰極60と、真空外囲器70と、を備えている。固定軸10の内部には、液体金属LMを収容する第1シェルタ15、第2シェルタ16及び第3シェルタ17を有している。循環穴(15a1、15b1、15c1、16a1、16b1、16c1、17a1、17b1、17c1)は、シェルタ(15、16、17)に連通され、凹面(11a、11b、11c)に対する法線に沿って直線的に延在し、上記凹面に開口した開口端を含んでいる。
循環孔(15c2、16a2、17b2)は、シェルタ(15、16、17)に連通され、固定軸10の上記凹面に対する法線と交差して直線的に延在し、それぞれ上記凹面に開口した両開口端を含んでいる。
すべり軸受がどのような方向に配置されてもシェルタ内に液体金属LMが留まることなく液体金属LMを循環孔から軸受面に供給することが可能となるため、すべり軸受において液体金属LMが枯渇する不具合を防止することができる。また、シェルタ内が液体金属LMで密封されることもなくなるため、すべり軸受内の残存ガスを効果的に排気することが可能となる。
また、真空外囲器70の真空排気時において、シェルタ内の空間が液体金属LMで満たされる事態を回避することができるため、すべり軸受の内部と外部(真空外囲器70の内部)との圧力差を緩和することができ、すべり軸受の内部(固定軸と回転体との間の隙間)から外部(真空外囲器の内部)への液体金属LMの噴出を防止することができる。これにより、すべり軸受における液体金属LMの不足や、漏れ出た液体金属LMが回転陽極型X線管1の高電圧側に移動することによる耐電圧不良の発生を防止することができる。
上記シェルタは、第3凹面11cと重なる位置から第2凹面11bと重なる位置まで延在している。上記循環穴や循環孔は、固定軸10の中心軸に沿った方向に間隔を置いて設けられている。液体金属LMは、上記シェルタ、循環穴及び循環孔を通って軸受全体に移動されるため、固定軸と回転体との間の隙間における液体金属LMの偏在を防止することができる。
固定軸10は、冷却液の流路を形成する熱伝達穴10aを有している。すべり軸受で発生する熱や、陽極ターゲット50への熱入力で発生する熱を冷却液に伝達することができる。回転陽極型X線管1の発熱部の冷却率を向上させることができるため、軸受の回転数を上げて使用したり、陽極ターゲット50への熱入力を高くしたりしても軸受の破損を防止することができる。
上記のことから、良好な軸受動作を得ることができ、固定軸10と回転体20との間の隙間から外部への液体金属LMの漏洩を低減することができる回転陽極型X線管1及び回転陽極型X線管を備えたX線管装置を得ることができる。
本発明の一実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、固定軸10は、それぞれシェルタ(15、16、17)に連通された複数の循環孔を有していてもよい。
例えば、シェルタ(15、16、17)の端部は第1凹面11bまで延在していなくてもよく、またその位置がシェルタ毎に異なっていてもよい。
例えば、固定軸10は、次に挙げる複数の循環孔を有している。
・第1シェルタ15に連通され第1凹面11aに開口した両開口端を含む循環孔。
・第1シェルタ15に連通され第2凹面11bに開口した両開口端を含む循環孔。
・第1シェルタ15に連通され第3凹面11cに開口した両開口端を含む循環孔。
・第2シェルタ16に連通され第1凹面11aに開口した両開口端を含む循環孔。
・第2シェルタ16に連通され第2凹面11bに開口した両開口端を含む循環孔。
・第2シェルタ16に連通され第3凹面11cに開口した両開口端を含む循環孔。
・第3シェルタ17に連通され第1凹面11aに開口した両開口端を含む循環孔。
・第3シェルタ17に連通され第2凹面11bに開口した両開口端を含む循環孔。
・第3シェルタ17に連通され第3凹面11cに開口した両開口端を含む循環孔。
図8に示すように、第1凹面11aに着目すると、固定軸10は、第1シェルタ15に連通され第1凹面11aに開口した循環孔15a2と、第2シェルタ16に連通され第1凹面11aに開口した循環孔16a2と、第3シェルタ17に連通され第1凹面11aに開口した循環孔17a2とを有している。
固定軸10の有する循環孔の個数及び位置は、特に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、適切に設計した場合、上記循環孔は、第1ラジアル軸受面S11aや第2ラジアル軸受面S11bに開口するものであってもよい。
上記シェルタの個数は、3個に限定されるものではなく、2個以下であってもよく、4個以上であってもよい。
固定軸10は、熱伝達部(熱伝達穴10a)無しに形成されていてもよい。また、固定軸10の熱伝達部は、固定軸10を貫通した熱伝達孔であってもよい。
回転陽極型X線管1は、片端支持軸受構造を採用した場合であっても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、固定軸10は第2径小部13無しに形成されている。真空外囲器70は、固定軸10の第1径小部12のみを固定している。回転体20は、径大部11の他端と対向した側が閉塞された筒状に形成されている。シェルタは径大部11の他端側に開口すること無しに形成されている。
この発明の実施形態は、上記回転陽極型X線管1及びX線管装置に限らず、各種の回転陽極型X線管及びX線管装置に適用することができる。
1…回転陽極型X線管、2…ステータコイル、3…筐体、7…冷却液、10…固定軸、11a…第1凹面、11b…第2凹面、11c…第3凹面、15…第1シェルタ、16…第2シェルタ、17…第3シェルタ、15a1,15b1,15c1,16a1,16b1,16c1,17a1,17b1,17c1…循環穴、15a2,15c2,16a2,17a2,17b2…循環孔、20…回転体、50…陽極ターゲット、60…陰極、70…真空外囲器、LM…液体金属、S11a…第1ラジアル軸受面、S11b…第2ラジアル軸受面、S11c…第1スラスト軸受面、S11d…第2スラスト軸受面、S21a…第3ラジアル軸受面、S22…第3スラスト軸受面、S21b…第4スラスト軸受面、B1…第1ラジアルすべり軸受、B2…第2ラジアルすべり軸受、B3…第1スラストすべり軸受、B4…第2スラストすべり軸受。

Claims (8)

  1. 円柱状に形成され、側面に形成されたラジアル軸受面と、シェルタと、循環孔と、を有した固定軸と、
    前記固定軸と同軸的に延出して筒状に形成され、前記ラジアル軸受面に隙間を置いて対向した他のラジアル軸受面を有し、前記固定軸を中心に回転自在な回転体と、
    前記固定軸及び回転体間の隙間に充填され、前記ラジアル軸受面及び他のラジアル軸受面とともに動圧形のラジアルすべり軸受を形成する潤滑剤と、
    前記回転体に固定され、電子が入射されることによりX線を放出する陽極ターゲットと、
    前記陽極ターゲットに照射する電子を放出する陰極と、
    前記固定軸、回転体、陽極ターゲット及び陰極を収容し、前記固定軸を固定する真空外囲器と、を備え、
    前記シェルタは、前記固定軸の内部に設けられ前記潤滑剤を収容し、
    前記循環孔は、前記シェルタに連通され前記側面に対する法線と交差して直線的に延在しそれぞれ前記側面に開口した両開口端を含んでいることを特徴とする回転陽極型X線管。
  2. 前記固定軸は、前記シェルタに連通され、前記法線に沿って直線的に延在し、前記側面に開口した開口端を含んでいる循環穴をさらに有していることを特徴とする請求項1に記載の回転陽極型X線管。
  3. 前記固定軸は、内部に設けられ前記シェルタから離間し前記潤滑剤を収容する他のシェルタと、前記他のシェルタに連通され前記側面に対する他の法線と交差して直線的に延在しそれぞれ前記側面に開口した両開口端を含んでいる他の循環孔と、をさらに有していることを特徴とする請求項1に記載の回転陽極型X線管。
  4. 前記固定軸は、前記ラジアル軸受面から外れて上記側面に位置し前記ラジアル軸受面に比べて窪んで形成された凹面をさらに有し、
    前記循環孔の両開口端は、前記凹面に開口していることを特徴とする請求項1に記載の回転陽極型X線管。
  5. 前記固定軸は、前記シェルタ及び循環孔から外れて位置し内部を中心軸に沿って延在し両端部の少なくとも一方に開口し内部を流れる冷却液に熱を伝達する熱伝達部をさらに有していることを特徴とする請求項1に記載の回転陽極型X線管。
  6. 前記固定軸の両端部は、それぞれ前記回転体の外側に突出し前記真空外囲器に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の回転陽極型X線管。
  7. 円柱状に形成され、それぞれ側面に位置した第1ラジアル軸受面、第2ラジアル軸受面、第1凹面、第2凹面及び第3凹面と、第1シェルタと、第2シェルタと、第3シェルタと、第1循環孔と、第2循環孔と、第3循環孔と、を有した固定軸と、
    前記固定軸と同軸的に延出して筒状に形成され、前記第1ラジアル軸受面及び第2ラジアル軸受面に隙間を置いて対向した第3ラジアル軸受面を有し、前記固定軸を中心に回転自在な回転体と、
    前記固定軸及び回転体間の隙間に充填され、前記第1ラジアル軸受面及び第3ラジアル軸受面とともに動圧形の第1ラジアルすべり軸受を形成し、前記第2ラジアル軸受面及び第4ラジアル軸受面とともに動圧形の第2ラジアルすべり軸受を形成する潤滑剤と、
    前記回転体に固定され、電子が入射されることによりX線を放出する陽極ターゲットと、
    前記陽極ターゲットに照射する電子を放出する陰極と、
    前記固定軸、回転体、陽極ターゲット及び陰極を収容し、前記固定軸を固定する真空外囲器と、を備え、
    前記第1ラジアル軸受面及び第2ラジアル軸受面は、前記固定軸の中心軸に沿った方向に間隔を置いて並べられ、
    前記第1凹面、第2凹面及び第3凹面は、前記第1ラジアル軸受面及び第2ラジアル軸受面に比べて窪んで形成され、
    前記第1凹面は、前記第1ラジアル軸受面と前記第2ラジアル軸受面との間に位置し、
    前記第2凹面は、前記第1凹面から向かって前記第1ラジアル軸受面を越えて位置し、
    前記第3凹面は、前記第1凹面から向かって前記第2ラジアル軸受面を越えて位置し、
    前記第1シェルタ、第2シェルタ及び第3シェルタは、前記固定軸の内部に設けられ、前記固定軸と同心円上に位置し、前記固定軸の中心軸の周りに等間隔に形成され、それぞれ前記潤滑剤を収容し、
    前記第1循環孔は、前記第1シェルタに連通され前記側面に対する法線と交差して直線的に延在しそれぞれ前記第1凹面、第2凹面及び第3凹面の何れか1つに開口した両開口端を含み、
    前記第2循環孔は、前記第2シェルタに連通され前記側面に対する法線と交差して直線的に延在しそれぞれ前記第1凹面、第2凹面及び第3凹面の残りの2つの何れか1つに開口した両開口端を含み、
    前記第3循環孔は、前記第3シェルタに連通され前記側面に対する法線と交差して直線的に延在しそれぞれ前記第1凹面、第2凹面及び第3凹面の残りの1つに開口した両開口端を含んでいることを特徴とする回転陽極型X線管。
  8. 請求項1乃至7の何れか1項に記載の回転陽極型X線管と、
    前記回転体に与える磁界を発生して前記回転体及び陽極ターゲットを回転させるコイルと、
    前記回転陽極型X線管及びコイルを収容した筐体と、を備えていることを特徴とするX線管装置。
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