以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係る回転陽極型X線管及び回転陽極型X線管を備えた回転陽極型X線管装置について詳細に説明する。
図1に示すように、回転陽極型X線管装置は、回転陽極型X線管1及び磁界を発生させるコイルとしてのステータコイル2等を備えている。
回転陽極型X線管1は、陽極ターゲット50と、陰極60と、真空外囲器70とを備えている。さらに、回転陽極型X線管1は、回転軸10と、回転体20と、潤滑剤としての液体金属LMとを備え、すべり軸受を使っている。
図1及び図2に示すように、回転軸10は、第1円筒11、第2円筒12及び第3円筒13を具備している。
第1円筒11は、例えばMo(モリブデン)合金等の金属で形成されている。第1円筒11の内径は、全長にわたって同一である。第1円筒11は、径大部15、第1径小部16及び第2径小部17を具備している。径大部15、第1径小部16及び第2径小部17は、同軸的に一体に形成されている。
径大部15は、円筒状に形成され、一端に第1スラスト軸受面S15aを有し他端に第2スラスト軸受面S15bを有している。
第1径小部16は、径大部15より外径の小さい円筒状に形成され、径大部15の一端側に位置している。第1径小部16は、側面に形成されたラジアル軸受面S16aを有している。ラジアル軸受面S16aは、第1径小部16の側面に全周に亘って形成されている。
第2径小部17は、径大部15より外径の小さい円筒状に形成され、径大部15の他端側に位置している。
第2円筒12は、第1円筒11の一端部に連結されている。第3円筒13は、第1円筒11の他端部に連結されている。回転軸10の中心軸に沿った方向において、第2円筒12及び第3円筒13は、互いに間隔を置いて位置している。第2円筒12及び第3円筒13は、例えばFe(鉄)合金等の金属で形成されている。
また、この実施形態において、第2円筒12及び第3円筒13は、第1円筒11にそれぞれろう接により連結されている。このため、ろう材が、第1円筒11と第2円筒12との間の隙間に設けられ、第1円筒11と第2円筒12とを接合している。また、ろう材は、第1円筒11と第2円筒12との間の隙間を液密に閉塞している。
第1円筒11と第3円筒13との間の隙間にもろう材が設けられ、第1円筒11と第3円筒13とを接合している。また、ろう材は、第1円筒11と第3円筒13との間の隙間を液密に閉塞している。これにより、第1円筒11と第3円筒13との間の隙間を伝っての真空外囲器70の内部空間への冷却液Lの漏洩を防止することができる。
第1円筒11、第2円筒12及び第3円筒13は、内部に冷却液Lが流れる流路を形成している。このため、回転陽極型X線管1の発熱部(陽極ターゲット50)の冷却率を向上させることができる。さらに、陽極ターゲット50に対向した領域において、回転軸10は第1円筒11のみで形成されている。陽極ターゲット50に対向した領域の回転軸10の厚み(回転軸10の中心軸に垂直な方向における回転軸10の内周面と外周面との間の距離)を小さくすることができる。すなわち、陽極ターゲット50から回転軸10の内部を流れる冷却液Lまでの熱伝達パスを短くすることができる。
なお、第2円筒12及び第3円筒13は、回転体20の外側に突出している。ここでは、第1円筒11の一端部(第2径小部17)も、第2円筒12とともに回転体20の外側に突出している。
回転体20は、回転軸10の周囲で軸受により回転自在に支持されている。回転体20は、少なくとも第1円筒11に対向している。回転体20は、回転体20の中心軸に沿った方向に延出している。回転体20は、陽極ターゲット50と、第1円筒21と、第2円筒22と、第3円筒23とを備えている。陽極ターゲット50、第1円筒21、第2円筒22及び第3円筒23は、回転軸10と同軸的に設けられている。
陽極ターゲット50は、陰極60から放出された電子が衝突されることによりX線を放出する。陽極ターゲット50は、形状が円環状であり、重金属等の材料で形成されている。この実施形態において、陽極ターゲット50は、モリブデン合金で形成されている。
詳しくは、陰極60と対向した側において、陽極ターゲット50上には円環状のX線放射層51が形成されている。X線放射層51は、電子が入射されることによりX線を放射する。X線放射層51は、陽極ターゲット50を形成する材料より融点の高い金属として例えばタングステン合金で形成されている。
第1円筒21は、筒状であり、重金属等の材料で形成されている。この実施形態において、第1円筒21は、モリブデン合金で形成され、陽極ターゲット50に接合されている。第1円筒21と陽極ターゲット50とを同一材料で形成する場合、これらを同時に一体的に形成することができる。
第1円筒21のうち第3円筒13と対向した端部は円形枠状に窪められて形成されている。第1円筒21には、内周面側に円環状の凹部が形成されている。第1円筒21の凹部の内部に径大部15が嵌合された状態で、回転軸10は第1円筒21(回転体20)の内部に嵌合されている。径大部15及び第1円筒21の凹部は、回転軸10及び回転体20の上記中心軸に沿った方向への相対的なズレを規制するものである。
第1円筒21は、第1スラスト軸受面S21aと、第2スラスト軸受面S21bと、ラジアル軸受面S21cとを有している。第1スラスト軸受面S21aは、第1円筒21の凹部に形成され、回転軸10の第1スラスト軸受面S15aに対向している。第2スラスト軸受面S21bは、第1円筒21の凹部に形成され、回転軸10の第2スラスト軸受面S15bに対向している。ラジアル軸受面S21cは、上記凹部から外れた第1円筒21の内周面に形成され、回転軸10のラジアル軸受面S16aに対向している。
回転軸10及び第1円筒21(回転体20)は、全対向領域で、互いに隙間を置いて設けられている。第1スラスト軸受面S21a及び第1スラスト軸受面S15a間の隙間、第2スラスト軸受面S21b及び第2スラスト軸受面S15b間の隙間、並びにラジアル軸受面S21c及びラジアル軸受面S16a間の隙間は、20μm程度である。
第2円筒22は、筒状であり、金属等の材料で形成されている。この実施形態において、第2円筒22は、鉄合金で形成されている。第2円筒22は、第1円筒21の他端部の外周面に連結され固定されている。第2円筒22は、例えばろう接により第1円筒21に連結されている。
第3円筒23は、筒状であり、例えば銅で形成されている。第3円筒23は、第1円筒21及び第2円筒22の外周面と接合され、第1円筒21及び第2円筒22に固定されている。なお、ステータコイル2が発生する磁界は第3円筒23に与えられる。
第1円筒21、第2円筒22及び第3円筒23を互いに固定する手法としては、ろう接や、溶接や、外径の小さい方の円筒を冷却して行う冷やし嵌め、外径の大きい方の円筒を加熱して行う焼き嵌め、一方の円筒を他方の円筒に圧入して行う圧入嵌めなどの締り嵌めや、かしめや、ねじ締結や、ピン打ちなどを採ることができる。
図1に示すように、液体金属LMは、回転軸10と回転体20との間の隙間に充填されている。液体金属LMは、主に第1円筒11と第1円筒21との間の隙間に充填されている。このため、本実施形態に係る回転陽極型X線管1の軸受はすべり軸受である。液体金属LMは、GaIn(ガリウム・インジウム)合金又はGaInSn(ガリウム・インジウム・錫)合金等の材料を利用することができる。
液体金属LMは、第1スラスト軸受面S15a及び第1スラスト軸受面S21aとともに動圧形の第1スラストすべり軸受B1を形成している。液体金属LMは、第2スラスト軸受面S15b及び第2スラスト軸受面S21bとともに動圧形の第2スラストすべり軸受B2を形成している。液体金属LMは、ラジアル軸受面S16a及びラジアル軸受面S21cとともに動圧形のラジアルすべり軸受B3を形成している。
また、第1円筒21(第1円筒21の円形枠状に窪められた端部)と、第3円筒13との間の隙間(クリアランス)は、回転体20の回転を維持するとともに液体金属LMの漏洩を抑制できる値に設定されている。同様に、第1円筒21と、第2径小部17(第1円筒11)との間の隙間(クリアランス)は、回転体20の回転を維持するとともに液体金属LMの漏洩を抑制できる値に設定されている。以上のことから、上記隙間は僅かであり、第1円筒21の両端部はラビリンスシールリング(labyrinth seal ring)として機能するものである。
陰極60は、X線放射層51(陽極ターゲット50)に間隔を置いて対向配置されている。陰極60は、真空外囲器70の内壁に取付けられている。陰極60は、X線放射層51に照射する電子を放出する電子放出源としてのフィラメント61を有している。
真空外囲器70は、円筒状に形成されている。真空外囲器70は例えばガラスで形成されている。真空外囲器70において、陽極ターゲット50と対向した個所の径は、第3円筒23と対向した個所の径より大きい。真空外囲器70は開口部71及び開口部72を有している。真空外囲器70は、密閉され、回転軸10、回転体20(陽極ターゲット50)及び陰極60等を収容している。真空外囲器70の内部は真空状態に維持されている。
真空外囲器70の密閉状態を維持するよう、開口部71は回転軸10の一端部に密着し、開口部72は回転軸10の他端部に密着している。ここでは、開口部72は第3円筒13の外周面に溶接されている。一方、開口部71は第2径小部17の外周面に気密にろう接されている。Mo合金で形成された第2径小部17の融点は高く、溶接し難いためである。この実施の形態において、回転陽極型X線管1は、両端支持軸受構造を採用している。真空外囲器70は、回転軸10の第2径小部17及び第3円筒13を固定している。すなわち、第2径小部17及び第3円筒13は、軸受の両持ち支持部として機能している。
ステータコイル2は、回転体20の側面、より詳しくは第3円筒23の側面に対向して真空外囲器70の外側を囲むように設けられている。ステータコイル2の形状は環状である。
X線管装置は、回転陽極型X線管1及びステータコイル2の他、図示しない筐体、導管、循環ポンプ及び熱交換器等を備えている。筐体は、回転陽極型X線管1及びステータコイル2を収容している。筐体と、回転陽極型X線管1及びステータコイル2との間の空間には冷却液(例えば冷却液L)が充填されている。導管は、回転軸10の流路に連結されている。循環ポンプは、導管に取り付けられ、冷却液Lを循環させる。循環ポンプは、回転軸10の流路に冷却液Lを吐き出し又は回転軸10の流路から冷却液Lを取り込む。熱交換器は、冷却液Lの循環路(例えば、上記導管)に取付けられ、冷却液Lの熱を外部に放出する。
上記のように回転陽極型X線管1等を備えたX線管装置が形成されている。
上記X線管装置の動作状態において、ステータコイル2は回転体20(特に第3円筒23)に与える磁界を発生するため、回転体20は回転する。これにより、陽極ターゲット50は回転する。また、陰極60に相対的に負の電圧が印加され、陽極ターゲット50に相対的に正の電圧が印加される。
これにより、陰極60及び陽極ターゲット50間に電位差が生じる。このため、フィラメント61は、電子を放出すると、この電子は、加速され、X線放射層51に衝突される。これにより、X線放射層51は、電子と衝突するときにX線を放出し、放出されたX線は真空外囲器70及び筐体のX線透過窓(図示せず)を透過し、筐体の外部に放出される。
上記のように構成された第1の実施形態に係る回転陽極型X線管1及びX線管装置によれば、回転陽極型X線管1は、回転軸10と、回転体20(陽極ターゲット50)と、液体金属LMと、陰極60と、真空外囲器70と、を備えている。回転軸10は、第1円筒11と、第1円筒11の一端部に連結された第2円筒12と、第1円筒11の他端部に連結され第2円筒12に間隔を置いて位置した第3円筒13と、を有している。
回転体20は、電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット50(X線放射層51)を有している。回転体20は、少なくとも第1円筒11に対向し、回転軸10の周囲で軸受(すべり軸受)により回転自在に支持されている。
所望のサイズ及び厚みの第1円筒11、第2円筒12及び第3円筒13を組み合わせることにより、必要な機械的強度を有し、部分的に厚みの小さい回転軸10を形成することができる。中ぐり加工を利用すること無しに回転軸10を得ることができるため、所望の大きさの内径を有する回転軸10を得ることができる。
第1円筒11、第2円筒12及び第3円筒13は、内部に冷却液Lが流れる流路を形成している。このため、回転陽極型X線管1の発熱部(陽極ターゲット50)の冷却率を向上させることができる。さらに、陽極ターゲット50に対向した領域において、回転軸10は第1円筒11のみで形成されている。陽極ターゲット50に対向した領域の回転軸10の厚みを小さくすることができる。すなわち、陽極ターゲット50から回転軸10の内部を流れる冷却液Lまでの熱伝達パスを短くすることができる。
そして、陽極ターゲット50に対向した領域の回転軸10の厚みが小さい程、ラジアル軸受面S16a及びラジアル軸受面S21cの温度を下げることができる。これにより、ラジアル軸受面S16a、S21cの変形を抑制することができる。また、ラジアル軸受面S16a、S21cと液体金属LMとの反応を抑制することができる。
従って、回転軸10の軸受面と、回転体20の軸受面とのかじりを抑制することができ軸受性能の低下を低減することができる。すなわち、軸受の製品寿命を延ばすことができる。
ろう材は、第1円筒11と第3円筒13との間の隙間を液密に閉塞している。これにより、第1円筒11と第3円筒13との間の隙間を伝っての真空外囲器70の内部空間への冷却液Lの漏洩を防止することができる。
第1円筒11と、第2円筒12及び第3円筒13とは、互いに異なる材料で形成されている。軸受面を有する第1円筒11は、融点の高い高価なMo合金で形成されている。第2円筒12及び第3円筒13は、Mo合金より安価なFe合金で形成されている。回転軸10を、Mo合金だけでなく、鉄系の材料も利用して形成することができるため、回転軸10の製造コストの高騰を抑制することができる。
上記したことから、信頼性の高い回転軸10及び軸受を有する回転陽極型X線管1及び回転陽極型X線管1を備えたX線管装置を得ることができる。
次に、第2の実施形態に係る回転陽極型X線管及び回転陽極型X線管を備えた回転陽極型X線管装置について詳細に説明する。なお、この実施の形態において、他の構成は上述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図3に示すように、回転軸10は、円筒同士をねじで連結し、円筒同士をろう接して形成されている。
第1円筒11は、回転軸10の中心軸に沿った方向に互いに間隔を置いて位置した第1ねじ部11t1及び第2ねじ部11t2と、第1ねじ部11t1及び第2ねじ部11t2から外れて位置した第1接合面11s1及び第2接合面11s2と、を有している。第1ねじ部11t1、第2ねじ部11t2、第1接合面11s1及び第2接合面11s2は、第1円筒11の内周面に形成されている。
第1ねじ部11t1及び第2ねじ部11t2はめねじである。第1接合面11s1は、第1ねじ部11t1に対して第2ねじ部11t2の反対側に位置している。第2接合面11s2は、第2ねじ部11t2に対して第1ねじ部11t1の反対側に位置している。
第2円筒12は、第1ねじ部11t1に対向した第3ねじ部12tと、第3ねじ部12tから外れて位置し第1接合面11s1に対向した第3接合面12sと、を有している。第3ねじ部12t及び第3接合面12sは、第2円筒12の外周面に形成されている。
第3ねじ部12tはおねじである。第3ねじ部12tの有効径と、第1ねじ部11t1の有効径とは概ね同一である。第2円筒12を回して第3ねじ部12tを第1ねじ部11t1に締め付けることにより、第2円筒12は第1円筒11に連結される。
第1接合面11s1と第3接合面12sとの間の隙間にはろう材が設けられている。上記ろう材は、第1円筒11と第2円筒12とを接合し、第1円筒11と第2円筒12との間の隙間を液密に閉塞している。
第3円筒13は、第2ねじ部11t2に対向した第4ねじ部13tと、第4ねじ部13tから外れて位置し第2接合面11s2に対向した第4接合面13sと、を有している。第4ねじ部13t及び第4接合面13sは、第3円筒13の外周面に形成されている。
第4ねじ部13tはおねじである。第4ねじ部13tの有効径と、第2ねじ部11t2の有効径とは概ね同一である。第3円筒13を回して第4ねじ部13tを第2ねじ部11t2に締め付けることにより、第3円筒13は第1円筒11に連結される。
第2接合面11s2と第4接合面13sとの間の隙間にはろう材が設けられている。上記ろう材は、第1円筒11と第3円筒13とを接合し、第1円筒11と第3円筒13との間の隙間を液密に閉塞している。
ここで、第1ねじ部11t1及び第3ねじ部12tには、右ねじ又は左ねじを使用することができる。同様に、第2ねじ部11t2及び第4ねじ部13tには、右ねじ又は左ねじを使用することができる。この実施形態において、第1ねじ部11t1及び第3ねじ部12tに右ねじを使用し、第2ねじ部11t2及び第4ねじ部13tにも右ねじを使用している。
上記のように構成された第2の実施形態に係る回転陽極型X線管1及びX線管装置によれば、回転軸10は、第1円筒11と、第2円筒12と、第3円筒13と、を有している。回転体20は陽極ターゲット50(X線放射層51)を有している。回転体20は、少なくとも第1円筒11に対向し、回転軸10の周囲で軸受(すべり軸受)により回転自在に支持されている。このため、本実施形態に係る回転陽極型X線管1は、上記第1の実施形態に係る回転陽極型X線管1と同様の効果を得ることができる。
第2円筒12及び第3円筒13は、ろう接だけでなくねじも利用して第1円筒11に連結されている。このため、第2円筒12及び第3円筒13を第1円筒11に強固に連結することができる。
上記したことから、信頼性の高い回転軸10及び軸受を有する回転陽極型X線管1及び回転陽極型X線管1を備えたX線管装置を得ることができる。
次に、第3の実施形態に係る回転陽極型X線管及び回転陽極型X線管を備えた回転陽極型X線管装置について詳細に説明する。なお、この実施の形態において、他の構成は上述した第2の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図4に示すように、回転軸10は、円筒同士をねじのみで連結して形成されている。第2円筒12及び第3円筒13は、第1円筒11にろう接されていない。また、この実施形態において、回転軸10及び回転体20の形状を変形することにより、開口部72は第1円筒11の外周面にろう接されている。
上記のように構成された第3の実施形態に係る回転陽極型X線管1及びX線管装置によれば、回転軸10は、第1円筒11と、第2円筒12と、第3円筒13と、を有している。回転体20は陽極ターゲット50(X線放射層51)を有している。回転体20は、少なくとも第1円筒11に対向し、回転軸10の周囲で軸受(すべり軸受)により回転自在に支持されている。このため、本実施形態に係る回転陽極型X線管1は、上記第2の実施形態に係る回転陽極型X線管1と同様の効果を得ることができる。
第2円筒12及び第3円筒13は、ねじのみ利用して第1円筒11に連結されている。但し、開口部72は第1円筒11の外周面にろう接されている。このため、第1円筒11と第2円筒12との間の隙間を冷却液Lが伝う場合があっても、真空外囲器70の内部空間への冷却液Lの漏洩を防止することができる。
上記したことから、信頼性の高い回転軸10及び軸受を有する回転陽極型X線管1及び回転陽極型X線管1を備えたX線管装置を得ることができる。
次に、第4の実施形態に係る回転陽極型X線管及び回転陽極型X線管を備えた回転陽極型X線管装置について詳細に説明する。なお、この実施の形態において、他の構成は上述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図5、図6、図7及び図8に示すように、回転陽極型X線管1は、中実円柱部80をさらに備えている。中実円柱部80は、回転軸10の内部に設けられている。回転軸10の中心軸に沿った方向において、中実円柱部80は、第2円筒12と第3円筒13との間に位置している。中実円柱部80は、第1円筒11の内周面との間に一定の隙間を置いている。
中実円柱部80は、回転軸10と同軸的に設けられ、回転軸10の一部に形成されている。また、中実円柱部80の両端部には、放射状の孔81が設けられている。孔81は、中実円柱部80の中心軸から外周面方向にかけて、複数設けられている。
さらに、中実円柱部80の中心軸に沿った方向において、中実円柱部80の両端部には、円形の穴82が設けられている。穴82は孔81に繋がっている。
そして、孔81の断面積の合計は、穴82の断面積や、第2円筒12及び第3円筒13の中空部の断面積や、中実円柱部80及び第1径小部16間の隙間の断面積(図8参照)と等しくなるように構成されている。すなわち、回転軸10の内部において、冷却液Lの流路の断面積は常に一定となる。
上記のように構成された第4の実施形態に係る回転陽極型X線管1及びX線管装置によれば、回転軸10は、第1円筒11と、第2円筒12と、第3円筒13と、を有している。回転体20は陽極ターゲット50(X線放射層51)を有している。回転体20は、少なくとも第1円筒11に対向し、回転軸10の周囲で軸受(すべり軸受)により回転自在に支持されている。このため、本実施形態に係る回転陽極型X線管1は、上記第1の実施形態に係る回転陽極型X線管1と同様の効果を得ることができる。
回転陽極型X線管1は、中実円柱部80を備えている。回転軸10の内部において、冷却液Lの流路の断面積は常に一定となる。スムースに冷却液Lを流入、排出することができ、高温な冷却液Lが回転軸10の内部において淀むことがない。したがって、熱伝達効率をさらに向上させ、高出力が可能な回転陽極型X線管1を得ることができる。
上記したことから、信頼性の高い回転軸10及び軸受を有する回転陽極型X線管1及び回転陽極型X線管1を備えたX線管装置を得ることができる。
次に、第5の実施形態に係る回転陽極型X線管及び回転陽極型X線管を備えた回転陽極型X線管装置について詳細に説明する。なお、この実施の形態において、他の構成は上述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図9及び図10に示すように、回転陽極型X線管1は、片端支持軸受構造を採用している。回転軸10は、第1円筒11及び第2円筒12を具備している。第1径小部16の一端部は径大部15に接続され、第1径小部16の他端部は液密に閉塞されている。
第2円筒12は、第1円筒11の一端部に連結され第1円筒11の一部に対向している。この実施形態において、第2円筒12は、第1円筒11にろう接により連結されている。ろう材は、第1円筒11と第2円筒12との間の隙間を液密に閉塞している。これにより、第1円筒11と第2円筒12との間の隙間を伝っての真空外囲器70の内部空間への冷却液Lの漏洩を防止することができる。
後述するが、第1円筒11及び第2円筒12は、内部に冷却液Lが流れる流路を形成している。このため、回転陽極型X線管1の発熱部(陽極ターゲット50)の冷却率を向上させることができる。さらに、陽極ターゲット50に対向した領域において、回転軸10は第1円筒11のみで形成されている。陽極ターゲット50に対向した領域の回転軸10の厚みを小さくすることができる。すなわち、陽極ターゲット50から回転軸10の内部を流れる冷却液Lまでの熱伝達パスを短くすることができる。
ここで、回転軸10の上記厚みとは、回転軸10の中心軸に垂直な方向における回転軸10の内周面と外周面との間の距離や、回転軸10の中心軸に沿った方向における第1円筒11の内面と外面との間の距離を言う。
なお、第2円筒12は、回転体20の外側に突出している。
回転体20は、回転軸10の周囲で軸受により回転自在に支持されている。回転体20は、第1円筒11に対向している。回転体20は、回転体20の中心軸に沿った方向に延出している。回転体20は、陽極ターゲット50と、第1円筒21と、第3円筒23とを備えている。陽極ターゲット50、第1円筒21及び第3円筒23は、回転軸10と同軸的に設けられている。
陽極ターゲット50は、円盤状に形成されている。陽極ターゲット50は、回転軸10の延出した方向に凹んだ凹部50aを有している。凹部50aは、円盤状に窪めて形成されている。凹部50aには第1径小部16(第1円筒11)が嵌合されている。凹部50aは、第1径小部16に隙間を置いて形成されている。
第1円筒21は、筒状であり、陽極ターゲット50に接合されている。第1円筒21の内周面と凹部50aの内周面とは形状及びサイズが同一である。第1円筒21と陽極ターゲット50とを同一材料で形成する場合、これらを同時に一体的に形成することができる。
第1円筒21には、内周面側に円環状の凹部が形成されている。第1円筒21は、第1スラスト軸受面S21aと、第2スラスト軸受面S21bと、ラジアル軸受面S21cとを有している。第1円筒11(回転軸10)及び回転体20は、全対向領域で、互いに隙間を置いて設けられている。第1スラスト軸受面S21a及び第1スラスト軸受面S15a間の隙間、第2スラスト軸受面S21b及び第2スラスト軸受面S15b間の隙間、並びにラジアル軸受面S21c及びラジアル軸受面S16a間の隙間は、20μm程度である。
第3円筒23は、筒状であり、例えば銅で形成されている。第3円筒23は、第1円筒21の外周面に接合され、第1円筒21に固定されている。なお、ステータコイル2が発生する磁界は第3円筒23に与えられる。
図1に示すように、液体金属LMは、回転軸10(第1円筒11)と回転体20(陽極ターゲット50及び第1円筒21)との間の隙間に充填されている。このため、回転陽極型X線管1は、第1スラストすべり軸受B1、第2スラストすべり軸受B2及びラジアルすべり軸受B3を使用している。
また、第1円筒21と、第2径小部17(第1円筒11)との間の隙間(クリアランス)は、回転体20の回転を維持するとともに液体金属LMの漏洩を抑制できる値に設定されている。以上のことから、上記隙間は僅かであり、第1円筒21の一端部はラビリンスシールリングとして機能するものである。
陰極60は、X線放射層51(陽極ターゲット50)に間隔を置いて対向配置されている。
真空外囲器70は、円筒状に形成されている。真空外囲器70において、陽極ターゲット50と対向した個所の径は、第3円筒23と対向した個所の径より大きい。真空外囲器70は開口部71を有している。真空外囲器70は、密閉され、回転軸10、回転体20(陽極ターゲット50)及び陰極60等を収容している。真空外囲器70の内部は真空状態に維持されている。
真空外囲器70の密閉状態を維持するよう、開口部71は回転軸10の一端部に密着している。ここでは、開口部71は第2円筒12の外周面に気密に溶接されている。この実施の形態において、真空外囲器70は、回転軸10の他端部を支持していない。すなわち、第2円筒12は、軸受の片持ち支持部として機能している。
円環部40は、第2円筒12(回転軸10)の一端部に液密に接合されている。
管部30は、回転軸10の内部に設けられ、回転軸10とともに冷却液Lの流路を形成している。管部30の一端部は、円環部40の開口部を通って回転軸10の外部に延出している。管部30の外周面は、円環部40の開口部に液密に接合されている。これにより、管部30は、円環部40に固定されている。
管部30は、この内部に冷却液Lを取り入れる取り入れ口30aと、冷却液Lを回転軸10の内部に吐出す吐出し口30bとを有している。取り入れ口30aは回転軸10の外部に位置している。吐出し口30bは回転軸10の他端部に隙間を置いて位置している。
第2円筒12の一端部には開口部が形成され、上記開口部には管部35が液密に接続されている。管部35は冷却液Lを外部に取り出す取り出し口35aを有している。
上記したことから、回転陽極型X線管1の外部からの冷却液Lは、取り入れ口30aから取り入れられ、管部30の内部を通り、吐出し口30bから回転軸10の内部(第1円筒11の他端部側)に吐出され、管部30及び第2円筒12の間を通り、管部35の取り出し口35aから回転陽極型X線管1の外部に取り出される。
なお、上記冷却液Lを逆方向に循環させてもよい。この場合、管部35が冷却液Lの取り入れ口を形成し、管部30が冷却液Lの取り出し口を形成する。
上記のように構成された第5の実施形態に係る回転陽極型X線管1及びX線管装置によれば、回転陽極型X線管1は、回転軸10と、回転体20(陽極ターゲット50)と、液体金属LMと、陰極60と、真空外囲器70と、を備えている。回転軸10は、第1円筒11と、第1円筒11に連結され第1円筒11の一部に対向した第2円筒12と、を有している。第2円筒12は、第1円筒11の一端部に連結されている。第1円筒11の他端部は閉塞されている。
回転体20は、電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット50(X線放射層51)を有している。回転体20は、第1円筒11に対向し、回転軸10の周囲で軸受(すべり軸受)により回転自在に支持されている。
所望のサイズ及び厚みの第1円筒11及び第2円筒12を組み合わせることにより、必要な機械的強度を有し、部分的に厚みの小さい回転軸10を形成することができる。中ぐり加工を利用すること無しに回転軸10を得ることができるため、所望の大きさの内径を有する回転軸10を得ることができる。
第1円筒11及び第2円筒12は、内部に冷却液Lが流れる流路を形成している。このため、回転陽極型X線管1の発熱部(陽極ターゲット50)の冷却率を向上させることができる。さらに、陽極ターゲット50に対向した領域において、回転軸10は第1円筒11のみで形成されている。陽極ターゲット50に対向した領域の回転軸10の厚みを小さくすることができる。すなわち、陽極ターゲット50から回転軸10の内部を流れる冷却液Lまでの熱伝達パスを短くすることができる。
そして、陽極ターゲット50に対向した領域の回転軸10の厚みが小さい程、ラジアル軸受面S16a及びラジアル軸受面S21c等の温度を下げることができる。これにより、ラジアル軸受面S16a、S21c等の変形を抑制することができる。また、ラジアル軸受面S16a、S21c等と液体金属LMとの反応を抑制することができる。
従って、回転軸10の軸受面と、回転体20の軸受面とのかじりを抑制することができ軸受性能の低下を低減することができる。すなわち、軸受の製品寿命を延ばすことができる。
さらに、本実施形態において、陽極ターゲット50は凹部50aを有し、回転軸10は凹部50aに嵌合されている。X線放射層51及び冷却液Lの流路を一層近接させている。X線放射層51から冷却液Lの流路までの熱伝導パスを一層短くすることができる。上記のことから、陽極ターゲット50の冷却率の向上を図ることができる。
ろう材は、第1円筒11と第2円筒12との間の隙間を液密に閉塞している。これにより、第1円筒11と第2円筒12との間の隙間を伝っての真空外囲器70の内部空間への冷却液Lの漏洩を防止することができる。
第1円筒11と、第2円筒12とは、互いに異なる材料で形成されている。第1円筒11はMo合金で形成され、第2円筒12はFe合金で形成されている。回転軸10を、Mo合金だけでなく、鉄系の材料も利用して形成することができるため、回転軸10の製造コストの高騰を抑制することができる。
上記したことから、信頼性の高い回転軸10及び軸受を有する回転陽極型X線管1及び回転陽極型X線管1を備えたX線管装置を得ることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、回転軸10は、4個以上の円筒を組み合わせて形成されていてもよい。
本発明の実施形態は、上述した回転陽極型X線管に限定されるものではなく、各種の回転陽極型X線管に適用可能である。