JP2016046134A - 回転陽極型x線管 - Google Patents
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Abstract
【課題】製品寿命の長期化を図ることのできる回転陽極型X線管を提供する。【解決手段】筒状に形成された、中心軸に沿って並んだ厚肉領域R1、R3及び薄肉領域R2を有する固定軸10と、固定軸10の周囲で軸受により支持された回転体と、電子を放出する陰極と、回転体に接続され電子線の衝突によりX線を発生する陽極ターゲットとより構成され、固定軸10の内部に、薄肉領域R2の内面に接して、薄肉領域R2を支持する支持部材を備える。【選択図】図2
Description
本発明の実施形態は、回転陽極型X線管に関する。
従来、X線を使用して被写体を診断する医療用機器や工業用機器には、X線発生源としてX線管装置が使用されている。X線管装置として、回転陽極型のX線管を備えた回転陽極型X線管装置が知られている。
回転陽極型X線管装置は、X線を放射する回転陽極型X線管と、ステータコイルと、これら回転陽極型X線管及びステータコイルを収容した筐体と、を備えている。回転陽極型X線管は、固定軸と、電子を発生する陰極と、陽極ターゲットと、回転体と、真空外囲器と、を備えている。回転体は円筒を備えている。陽極ターゲットは回転体に接続されている。回転体はステータコイルから発生する磁界により陽極ターゲットとともに回転する。また、陰極は電子を放出する。陽極ターゲットに電子が衝突することによりX線が放出される。
例えば、上記の回転陽極型X線管の固定軸は、筒状に形成され、その内部に形成された冷却液用の流路を備える。陽極ターゲットを効率的に冷却するため、固定軸の一部の肉厚を薄く形成することにより、流路の内径が拡大された薄肉領域を形成する方法が用いられることがある。
しかし、固定軸のうち薄肉領域の強度は低く、回転時に薄肉領域に負荷がかかるとき、又は陽極ターゲットからの熱入力により薄肉領域が高温になったときに、固定軸が変形する恐れがある。固定軸が変形すると、固定軸と回転体との隙間が一定にならず、軸受の特性に悪影響を与え、回転体の回転動作が不安定になってしまう。ひいては、回転体の回転動作を停止しなければならない事態となる。
なお、固定軸の熱変形を抑制するために、陽極ターゲットへの熱入力を制限することは有効な手法である。しかしながら、この場合、陽極ターゲットへの熱入力を増大させることが困難となる。
本実施形態の目的は、製品寿命の長期化を図ることのできる回転陽極型X線管を提供することにある。
なお、固定軸の熱変形を抑制するために、陽極ターゲットへの熱入力を制限することは有効な手法である。しかしながら、この場合、陽極ターゲットへの熱入力を増大させることが困難となる。
本実施形態の目的は、製品寿命の長期化を図ることのできる回転陽極型X線管を提供することにある。
一実施形態に係る固定陽極型X線管は、中心軸を有する筒状に形成され、前記中心軸に沿って並んだ厚肉領域及び前記厚肉領域より肉厚の薄い薄肉領域を有する固定軸と、前記固定軸の周囲で軸受により支持された回転体と、電子を放出する陰極と、回転体に接続され、前記陰極から放出された電子が衝突しX線を発生する陽極ターゲットと、前記固定軸の内部に位置し、前記薄肉領域の内面に接し、前記薄肉領域を支持する支持部材と、を備える。
以下に、本発明の一実施形態及び各変形例について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
まず、一実施形態に係る回転陽極型X線管装置について説明する。図1は、本実施形態に係る回転陽極型X線管装置を概略的に示す断面図である。図1において、中心軸Aを中心に対称な回転体20の構造には、同一の符号及び名称を付すことができる。なお、図1では支持部材の図示を省略している。図2は、図1に示した固定軸及び支持部材を線II−IIに沿って半分に分断した際の片方を概略的に示す斜視図である。図2に示されていない固定軸10のもう一方は、断面に対して上記片方と対称の構造をとっている。
図1に示すように、回転陽極型X線管装置は、回転陽極型X線管1、磁界を発生させるコイルであるステータコイル2等を備えている。回転陽極型X線管1は、固定軸10と、回転体20と、陰極60と、陽極ターゲット50と、真空外囲器70と、支持部材30とを備えている。
図1及び図2に示すように、固定軸10は、両端が開口した筒状に形成されている。固定軸10は、固定軸10の中心軸Aに沿って並んだ厚肉領域及び上記厚肉領域より肉厚の薄い薄肉領域を有している。本実施形態において、固定軸10は、厚肉領域R1と、中心軸Aに沿って厚肉領域R1に間隔を置いて位置した他の厚肉領域R3と、厚肉領域R1及び厚肉領域R3の間に位置し厚肉領域R1及び厚肉領域R3より肉厚の薄い薄肉領域R2と、を有している。例えば、薄肉領域R2の肉厚T2は、厚肉領域R1の肉厚T1及び厚肉領域R3の肉厚T3の半分又はそれ未満であると望ましい。この実施形態において、肉厚T1及び肉厚T3はそれぞれ7mmであり、肉厚T2は3mmである。
固定軸10は、外面に位置した第1ラジアル軸受面S10aを有している。第1ラジアル軸受面S10aは、固定軸10の外面に全周に亘って形成されている。ここでは、第1ラジアル軸受面S10aは、厚肉領域R1、薄肉領域R2及び厚肉領域R3の外面に形成されている。
固定軸10は、鍔部15を有している。鍔部15は、中心軸Aに平行な方向に第1ラジアル軸受面S10aに並んで設けられ、筒状に形成されている。鍔部15は、この一端に第1スラスト軸受面S15aを有し、この他端に第2スラスト軸受面S15bを有している。第1スラスト軸受面S15a及び第2スラスト軸受面S15bはそれぞれ環状に形成されている。
固定軸10は、内部に、中心軸Aに沿った冷却液Lの流路を形成している。図示した例では、冷却液Lは、固定軸10の一端10aから固定軸10の中に流入し、固定軸10の他端10bから流出する。このような冷却液Lの循環方向は特に限定されるものではなく、冷却液は固定軸10の他端10bから固定軸10の中に流入し、固定軸10の一端10aから流出してもよい。
回転体20は、固定軸10の周囲で軸受により支持されている。回転体20は、第1円筒21と、第2円筒22と、第3円筒23と、第4円筒24とを備えている。第1円筒21、第2円筒22、第3円筒23及び第4円筒24は、固定軸10と同軸的に設けられている。
第1円筒21は、両端が開口した筒状に形成されている。第1回転円筒は、例えばモリブデン若しくはタングステン、又はこれらを用いた合金にて形成されている。
第2円筒22は、両端が開口した筒状に形成されている。第2円筒22は、第1円筒21の外面及び端部に固定されている。第2円筒22は、例えば鉄合金等の金属材料で形成されている。
第3円筒23は、両端が開口した筒状に形成されている。第3円筒23は、第1円筒21の内面及び第2円筒22の内面に固定されている。
第2円筒22は、両端が開口した筒状に形成されている。第2円筒22は、第1円筒21の外面及び端部に固定されている。第2円筒22は、例えば鉄合金等の金属材料で形成されている。
第3円筒23は、両端が開口した筒状に形成されている。第3円筒23は、第1円筒21の内面及び第2円筒22の内面に固定されている。
第4円筒24は、両端が開口した筒状に形成されている。第4円筒24は、第2円筒22の外面に固定されており、真空外囲器70を挟んでステータコイル2に対向している。第4円筒は例えば銅又は銅合金等の金属材料で形成されている。
第1円筒21と、第2円筒22、第3円筒23、及び第4円筒24との固定方法は特に限定されるものではなく、種々の方法をとることができる。また、この実施形態において、第1円筒21には陽極ターゲット50が接続されるので、第1円筒21は耐熱性の高い材料で形成されている。第2円筒22、第3円筒23及び第4円筒24は第1円筒21に比べて耐熱性の低い材料を用いることが可能である。
第1円筒21は、第1ラジアル軸受面S10aに隙間を置いて対向した第2ラジアル軸受面S21aを有している。第2ラジアル軸受面S21aは、第1円筒21の内面に全周に亘って形成されている。第2ラジアル軸受面S21aの内径は、第1ラジアル軸受面S10aの直径より「わずかに」大きい。
第1円筒21は、第1スラスト軸受面S15aに隙間を置いて対向した環状の第3スラスト軸受面S21bを有している。第3円筒23は、第2スラスト軸受面S15bに隙間を置いて対向した環状の第4スラスト軸受面S23aを有している。回転体20及び固定軸10は、軸受面同士が対向した領域を含む全対向領域で、互いに隙間(微小な隙間)を置いて設けられている。
液体金属LMは、固定軸10と回転体20との間の隙間に充填されている。液体金属LMは、Galn(ガリウム・インジウム)合金またはGaInSn(ガリウム・インジウム・錫)合金等の材料を利用することができる。液体金属LMは、常温で液状となる特性を持っている。また、液体金属LMは、蒸気圧が低いという特性も持っている。このため、真空状態の回転陽極型X線管の内部で液体金属LMを使用することができる。
固定軸10、回転体20及び液体金属LMは、軸受B1,B2,B3を形成している。軸受B1,B2,B3は、潤滑剤としての液体金属LMを用いた動圧軸受である。軸受B1は、第1ラジアル軸受面S10aと、第2ラジアル軸受面S21aと、液体金属LMと、を有したラジアル動圧軸受である。軸受B2は、第1スラスト軸受面S15aと、第3スラスト軸受面S21bと、液体金属LMと、を有した第1スラスト動圧軸受である。軸受B3は、第2スラスト軸受面S15bと、第4スラスト軸受面S23aと、液体金属LMと、を有した第2スラスト動圧軸受である。軸受B2及び軸受B3は、固定軸10及び回転体20の中心軸Aに沿った方向への相対的なズレを規制するものである。また、第3円筒23と固定軸10との間の隙間(クリアランス)は、回転体20の回転を維持するとともに液体金属LMの漏洩を抑制できる値に設定されている。以上のことから、上記隙間は僅かであり、第3円筒23はラビリンスシールリング(labyrinth seal ring)として機能するものである。
図1に示すように、陰極60は、真空外囲器70の内壁に取り付けられている。陰極60は、電子を放出する電子放出源としてのフィラメント61を備えている。
陽極ターゲット50は回転体20に接続されている。陽極ターゲット50は、固定軸10等と同軸的に設けられている。陽極ターゲット50は、円環状に形成され、第1円筒21に接続されている。陽極ターゲット50は、例えばモリブデン又はタングステン、あるいはこれらを用いた合金で形成される。陽極ターゲット50は、回転体20と一体的に回転する。陽極ターゲット50は、円環状のX線放射層51を有している。X線放射層51は、陰極60から放出された電子が衝突することによりX線を発生する。X線放射層51は、融点の高い金属で形成されている。ここでは、X線放射層51は、タングステン合金で形成されている。
陽極ターゲット50は回転体20に接続されている。陽極ターゲット50は、固定軸10等と同軸的に設けられている。陽極ターゲット50は、円環状に形成され、第1円筒21に接続されている。陽極ターゲット50は、例えばモリブデン又はタングステン、あるいはこれらを用いた合金で形成される。陽極ターゲット50は、回転体20と一体的に回転する。陽極ターゲット50は、円環状のX線放射層51を有している。X線放射層51は、陰極60から放出された電子が衝突することによりX線を発生する。X線放射層51は、融点の高い金属で形成されている。ここでは、X線放射層51は、タングステン合金で形成されている。
本実施形態において、陽極ターゲット50は、第1円筒21と同一材料で一体に形成されている。なお、陽極ターゲット50は、第1円筒21の側面に接合されていてもよい。この場合、第1円筒21と陽極ターゲット50とは、同一材料により形成されていてもよく、又は、互いに異なる材料により形成されていてもよい。また、本実施形態における陽極ターゲット50の形状は一例であり、陽極ターゲット50は、円盤状等、種々の形状をとることが可能である。
回転体20は、陽極ターゲット50の熱が伝達される熱伝達領域を有している。この実施形態において、上記熱伝達領域は第1円筒21の一部である。薄肉領域R2は、上記熱伝達領域と対向している。
真空外囲器70は、固定軸10、回転体20及び陰極60等を収容している。真空外囲器70は密閉され、内部が真空状態に維持されている。真空外囲器70は、例えば、ガラスで形成されている。真空外囲器70は開口部71、72を有している。真空外囲器70の密閉状態を維持するよう、開口部71は固定軸10の一端部(一端10a側)に気密に接合され、開口部72は固定軸10の他端部(他端10b側)に気密に接合されている。この実施の形態において、回転陽極型X線管1は、両端支持軸受構造を採用している。真空外囲器70は、固定軸10の一端部及び他端部を固定している。すなわち、固定軸10の一端部及び他端部は、軸受の両持ち支持部として機能している。
ステータコイル2は、第4円筒24と対向し、真空外囲器70の外側を環状に囲むように設けられている。
X線管装置の動作において、ステータコイル2は第4円筒24に与える磁界を発生するため、回転体20は陽極ターゲット50とともに一体に回転する。また、陽極ターゲット50と陰極60との間には電圧(管電圧)が印加される。陰極60及び陽極ターゲット50に電位差が生じる。フィラメント61から放出された電子は、陽極ターゲット50に向かって加速され、X線放射層51に衝突する。これにより、X線放射層51から発生したX線は、真空外囲器70を透過し真空外囲器70の外部に放出される。
X線管装置の動作において、ステータコイル2は第4円筒24に与える磁界を発生するため、回転体20は陽極ターゲット50とともに一体に回転する。また、陽極ターゲット50と陰極60との間には電圧(管電圧)が印加される。陰極60及び陽極ターゲット50に電位差が生じる。フィラメント61から放出された電子は、陽極ターゲット50に向かって加速され、X線放射層51に衝突する。これにより、X線放射層51から発生したX線は、真空外囲器70を透過し真空外囲器70の外部に放出される。
図3は、図1の線III−IIIに沿った回転陽極型X線管装置の一部を示す断面図であり、固定軸10及び支持部材30を示す図である。図1乃至図3に示すように、支持部材30は、固定軸10の内部に位置し、薄肉領域R2の内面に接し、薄肉領域R2を支持している。支持部材30は、固定軸10とともに冷却液Lの流路を形成している。
支持部材30は、複数の板部31を有している。複数の板部31は、長方形の板状に形成され、放射状に中心軸Aから薄肉領域R2に突出し、薄肉領域R2の内面に接し、中心軸Aに平行な方向に延出し、互いに固定されている。本実施形態において、支持部材30は、6個の板部31を有している。板部31は中心軸Aの周りに略等間隔に設けられている。隣合う板部31同士が内側に成す角度は略60°である。このため、支持部材30は、薄肉領域R2の6個所を均一に支持することができ得る。
支持部材30は種々の方法を用いて形成され得る。この実施形態において、支持部材30は、精密鋳造により固定軸10と一体に形成されている。板部31は固定軸10に固定されている。
なお、図3に示した例では、支持部材30は、6個の板部31を有しているが、板部31の個数は特に限定されるものではなく、種々変形可能である。また、支持部材30は、1個の板部を有していてもよい。この場合、上記板部は、中心軸Aを通り、中心軸Aに平行な方向に延出している。上記板部のうち中心軸Aに直交する方向の両側縁部は薄肉領域R2の内面に接している。
上記のように構成された一実施形態に係る回転陽極型X線管装置によれば、回転陽極型X線管1は、固定軸10、回転体20、陰極60、陽極ターゲット50、及び支持部材30を備えている。固定軸10は、中心軸Aを有する筒状に形成され、中心軸Aに沿って並んだ厚肉領域R1,R3及び厚肉領域より肉厚の薄い薄肉領域R2を有している。
薄肉領域R2は、厚肉領域R1,R3と比べて、外部から入力された熱を冷却液Lに伝達し易い。固定軸10に薄肉領域R2が形成されることで、固定軸10から冷却液Lへの熱伝達を促進することができる。本実施形態では、回転体20は陽極ターゲット50の熱が伝達される熱伝達領域を有し、薄肉領域R2は上記熱伝達領域と対向している。陽極ターゲット50で発生する熱が冷却液Lに伝わりやすくなる。よって陽極ターゲット50の冷却効率が高まり、例えば、陽極ターゲット50への熱入力量を増やすことができる。
しかし、固定軸10に薄肉領域R2が形成されることで、薄肉領域R2の強度が低くなる。回転体20及び陽極ターゲット50の回転時にかかる負荷や熱入力によって、薄肉領域R2が変形する恐れがある。
そこで、本実施形態では、回転陽極型X線管1は、支持部材30を備えている。支持部材30は、固定軸10の内部に位置し、薄肉領域R2の内面に接し、薄肉領域R2を支持している。このため、固定軸10の薄肉領域R2は内側から補強される。支持部材30は、固定軸10に外部から応力が加わった場合における薄肉領域R2の変形を抑制することができる。さらに、支持部材30は薄肉領域R2の熱による変形を抑制することができる。よって陽極ターゲット50からの熱入力時や回転陽極型X線管装置をX線CT装置に搭載した場合におけるガントリの回転時においても、固定軸10と回転体20との間の隙間を一定に保持することができ、回転体20を長期間にわたって安定して回転させることができる。また、陽極ターゲット50への熱入力量を増大させることができる。つまり、より高出力のX線管を提供することが可能となる。
さらに、固定軸10が薄肉領域R2を有していることから、第1ラジアル軸受面S10a及び第2ラジアル軸受面S21aの温度の上昇を抑制することができる。これにより、液体金属LMと軸受面(第1ラジアル軸受面S10a、第2ラジアル軸受面S21a)との反応が抑制されるので、軸受(軸受B1)の寿命を延ばすことが可能となる。
上記のことから、製品寿命の長期化を図ることのできる回転陽極型X線管1を得ることができる。
上記のことから、製品寿命の長期化を図ることのできる回転陽極型X線管1を得ることができる。
次に、上述した実施形態に係る回転陽極型X線管1の変形例について説明する。
まず、上記実施形態に係る回転陽極型X線管1の固定軸10の変形例について説明する。図4は、上記実施形態の固定軸10の変形例を概略的に示す断面図である。
まず、上記実施形態に係る回転陽極型X線管1の固定軸10の変形例について説明する。図4は、上記実施形態の固定軸10の変形例を概略的に示す断面図である。
図4に示すように、固定軸10は、第1円筒11と、第2円筒12と、第3円筒13と、を備えている。
第1円筒11は、厚肉領域R1に位置した第1端部11aと、厚肉領域R3に位置した第2端部11bと、厚肉領域R1と厚肉領域R3との間の薄肉領域R2を形成する中間部11cと、を有している。
第1円筒11は、厚肉領域R1に位置した第1端部11aと、厚肉領域R3に位置した第2端部11bと、厚肉領域R1と厚肉領域R3との間の薄肉領域R2を形成する中間部11cと、を有している。
第2円筒12は、第1補強部と、第1延出部と、を有している。第2円筒12の第1補強部は、第1端部11aによって取り囲まれ、第1端部11aを補強し、第1端部11aとともに厚肉領域R1を形成している。第2円筒12の第1延出部は、第1円筒11の外側に位置し、鍔部15を含んでいる。第2円筒12と第1円筒11との間の隙間は、冷却液Lの漏れがないように液密に閉塞されている。第2円筒12は第1円筒11に固定されている。
上記固定の手段又は手法としては、各種の手段又は手法を挙げることができる。例えば2つの円筒のうち内側に位置する円筒を冷やして収縮させ、当該円筒を外側に位置する円筒に嵌め込む冷やし嵌め、2つの円筒のうち外側に位置する円筒を加熱して膨張させ、当該円筒に内側に位置する円筒を嵌め込む焼き嵌め、或いは、2つの円筒のうち内側に位置する円筒を外側に位置する円筒に圧入する圧入嵌め等の締り嵌めを利用できる。また、上記固定の手段又は手法として、溶接、ろう付け、かしめ、ねじ締結、ねじ連結、或いはピン打ち等を利用してもよい。ねじ連結を利用する場合にあっては、2つの円筒のうち外側の円筒の内壁を雌ねじとし、内側の円筒の外壁を雄ねじとし、これら雌ねじと雄ねじを螺合させればよい。
第3円筒13は、中心軸Aに沿って、第1円筒11に間隔を置いて位置している。第3円筒13は、第2補強部と、第2延出部と、を有している。第3円筒13の第2補強部は、第2端部11bによって取り囲まれ、第2端部11bを補強し、第2端部11bとともに厚肉領域R3を形成している。第3円筒13の第2延出部は、第1円筒11の外側に位置している。第3円筒13と第1円筒11との間の隙間は、冷却液Lの漏れがないように液密に閉塞されている。第3円筒13は、各種の手段又は手法を利用することにより、第1円筒11に固定されている。
上述したように、固定軸10は複数の円筒で形成されているが、この場合も固定軸10は厚肉領域R1,R3及び薄肉領域R2を有している。このため、上述した固定軸10を利用した場合においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
所望のサイズ及び所望の肉厚の第1円筒11、第2円筒12及び第3円筒13を組み合わせることにより、必要な機械的強度を有し、部分的に厚みの小さい固定軸10を形成することができる。中ぐり加工を利用すること無しに固定軸10を得ることができるため、所望の大きさの内径を有する固定軸10を得ることができる。例えば、薄肉領域R2の内径を、厚肉領域R1の内径及び厚肉領域R3の内径の2倍以上に設定することもでき得る。
第1円筒11、第2円筒12及び第3円筒13は、同一材料、又は互いに異なる材料で形成することができ得る。例えば、第1ラジアル軸受面S10aを有する第1円筒11は、融点の高い高価なMo合金で形成されている。第2円筒12及び第3円筒13は、Mo合金より安価で融点の低いFe合金で形成されている。固定軸10を、Mo合金だけでなく、鉄系の材料も利用して形成することができるため、固定軸10の製造コストの高騰を抑制することができる。
さらに、固定軸10が3つの部材に分かれていることで、第1円筒11と支持部材30とを鋳造により一体に形成したり、完成した支持部材30を固定軸10の内部に設けたりすることが容易になる。例えば、完成した支持部材30を固定軸10の内部へ組み込むときは、第1円筒11の内部に支持部材30を入れ、第2円筒12と第3円筒13を両側から固定する。支持部材30は固定軸10に接合されてもよい。支持部材30を固定軸10へ接合する方法としては、ろう接、溶接、ネジ締結などを用いることができる。
次に、上記実施形態に係る回転陽極型X線管1の支持部材30の第1の変形例について説明する。図5は、上記実施形態の支持部材30の第1の変形例を概略的に示す斜視図である。
図5及び図1に示すように、支持部材30は中心軸Aを中心に旋回し螺旋状に形成されている。支持部材30の外周部は固定軸10の薄肉領域R2の内周面に接する。支持部材30は固定軸10に接合されてもよい。冷却液Lは螺旋状の支持部材30の間を流れる。このため、上記支持部材30を利用した場合においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
本変形例の支持部材30を使用する場合、図3に示した上記実施形態の支持部材30を使用する場合に比べて、薄肉領域R2の内部全体に冷却液Lを積極的に流すことができ、また、薄肉領域R2の内周面に冷却液Lを積極的に衝突させることができる。なお、本変形例の支持部材30を使用しても、高温の冷却液Lが固定軸10の内部において淀むことはない。このため、本変形例の支持部材30は、固定軸10から冷却液Lへの熱伝達効率が高くなるように、冷却液Lの流路の形成に寄与することができる。
次に、上記実施形態に係る回転陽極型X線管1の支持部材30の第2の変形例について説明する。図6は、上記実施形態の支持部材30の第2の変形例を概略的に示す断面図である。
図6に示すように、支持部材30は、中央部32と、複数の突出部33と、を有している。中央部32は、薄肉領域R2の内面に隙間を置いて設けられている。この例では、中央部32は、中心軸Aに平行な方向に延出した円筒状に形成されている。複数の突出部33は、それぞれ、中央部32に固定され、薄肉領域R2の内面に接している。この例では、支持部材30は3個の突出部33を有している。各突出部33は、中心軸Aに平行な方向に延出した長方形の板部であり、中央部32から薄肉領域R2に向かって放射状に突出している。突出部33は中央部32の周りに略等間隔に位置している。このため、支持部材30は、薄肉領域R2の3個所を均一に支持することができ得る。上記のことから、上記支持部材30を利用した場合においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、上記中央部32の形状は筒状に限定されるものではなく、中心軸Aに平行な方向に延出した枠部又はロッドであってもよい。中心軸Aに直交する枠部又はロッドの断面形状は、正多角形等の多角形であってもよく、楕円形であってもよい。上記多角形としては、正三角形等の三角形、正四角形等の四角形等である。
また、上記突出部33は、長方形の板部に限定されるものではなく種々変形可能である。例えば、上記突出部33は、ロッドであってもよい。この場合、所定の個数の突出部33が中央部32に分散して固定されていればよい。
次に、上記実施形態に係る回転陽極型X線管1の支持部材30の第3及び第4の変形例について説明する。図7は、上記実施形態の支持部材の第3の変形例を概略的に示す断面図である。図8は、上記実施形態の支持部材の第4の変形例を概略的に示す断面図である。
図7及び図8に示すように、支持部材30は、3個以上の板部34を組み合わせて形成されていてもよい。図7及び図8に示す例では、支持部材30は、3個の板部34を組み合わせて形成されている。図7に示した支持部材30は中央に三角形を形成し、図8に示した支持部材30は外形が三角形である。図7及び図8に示した支持部材30を利用した場合においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、支持部材30は、3個以上のロッドを組み合わせて形成されていてもよく、この場合も上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、支持部材30は、3個以上のロッドを組み合わせて形成されていてもよく、この場合も上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、上記実施形態に係る回転陽極型X線管1の支持部材30の第5の変形例について説明する。図9は、上記実施形態の支持部材30の第5の変形例を概略的に示す斜視図である。
図9に示すように、支持部材30は、複数の分割部35を有している。この例では、支持部材30は、2個の円盤状の分割部35を有している。分割部35は中心軸Aに平行な方向に間隔を置いて位置している。薄肉領域R2の内面に、分割部35の外周面が接している。分割部35には冷却液Lを通すための複数の貫通孔35hが形成されている。このため、上記支持部材30を利用した場合においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、上記実施形態に係る回転陽極型X線管1の支持部材30の第6の変形例について説明する。図10は、上記実施形態の支持部材30の第6の変形例を概略的に示す斜視図である。
図10に示すように、支持部材30は、複数の分割部36を有している。この例では、支持部材30は、2個の分割部36を有している。分割部36は中心軸Aに平行な方向に間隔を置いて位置している。各分割部36は、円環部37と、この円環部37を内側から支持する複数のロッド38,39と、の組合せで形成されている。薄肉領域R2の内面に、円環部37の外周面が接している。このため、上記支持部材30を利用した場合においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、上記実施形態の回転陽極型X線管装置の変形例について説明する。図11は、上記実施形態の回転陽極型X線管装置の変形例を概略的に示す断面図である。
図11に示すように、本変形例の回転陽極型X線管1は、上述した実施形態に係る回転陽極型X線管1と比較して、固定軸10の流路が真空外囲器70を貫通していないという点で相違している。回転体20が備えている第1円筒21は、片側が閉塞し、もう片側が開口した筒状に形成されている。固定軸10は、中心軸Aに沿って並んだ厚肉領域及び上記厚肉領域より肉厚の薄い薄肉領域を有している。この変形例において、固定軸10は、厚肉領域R1と、薄肉領域R2と、を有している。固定軸10の第1円筒21側の一端は閉塞している。
図11に示すように、本変形例の回転陽極型X線管1は、上述した実施形態に係る回転陽極型X線管1と比較して、固定軸10の流路が真空外囲器70を貫通していないという点で相違している。回転体20が備えている第1円筒21は、片側が閉塞し、もう片側が開口した筒状に形成されている。固定軸10は、中心軸Aに沿って並んだ厚肉領域及び上記厚肉領域より肉厚の薄い薄肉領域を有している。この変形例において、固定軸10は、厚肉領域R1と、薄肉領域R2と、を有している。固定軸10の第1円筒21側の一端は閉塞している。
固定軸10は、円筒状に形成されている。固定軸10の一端部は、真空外囲器70の開口部71を通り、真空外囲器70の外側に延出している。固定軸10は、真空外囲器70に気密に接続されている。この例において、回転陽極型X線管1は、片端支持軸受構造を採用している。真空外囲器70は、固定軸10の一端部を固定している。すなわち、固定軸10の一端部は、軸受の片持ち支持部として機能している。
回転陽極型X線管1は、固定軸10の内部に管部40を備えている。円環部16は、固定軸10の一端部に液密に接合されている。管部40は、外周面が円環部16の開口部に液密に接合され、固定軸10の外部に延出している。固定軸10は、管部40とともに冷却液Lの流路を形成している。
管部40は、この内部に冷却液を取り入れる取入口40aと、冷却液Lを固定軸10の内部に吐き出す吐出口40bを有している。取入口40aは、固定軸10の一端部から外部に延出した側に位置している。また吐出口40bは、固定軸10の他端部に隙間を置いて位置している。
固定軸10の一端部には、開口部が形成され、この開口部には管部45が液密に接合されている。管部45は、冷却液Lを外部に取り出す取出口45aを有している。以上のことから、回転陽極型X線管1の内部を循環する冷却液Lは、取入口40aから取り入れられ、管部40の内部を通り、吐出口40bから固定軸10の内部に吐出され、管部40及び固定軸10の間を通り、管部45の取出口45aから取り出される。なお、上記冷却液Lは、逆方向に循環してもよい。この場合、管部45が冷却液の取入口を形成し、管部40が冷却液の取出口を形成する。
図11に示すように固定軸10の内側に管部40を有する構造において、薄肉領域R2を支持する支持部材30としては、薄肉領域R2の内面に接し、管部40を利用して薄肉領域R2を支持する種々の形態が適用可能である。さらに、固定軸10の内部にて冷却液Lが淀むことがないように、支持部材30及び管部40は形成されている。このため、上記回転陽極型X線管1を利用した場合においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
薄肉領域R2が形成される位置は、特に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、回転体20が陽極ターゲット50の熱が伝達される熱伝達領域を有している場合、薄肉領域R2は、上記熱伝達領域から外れて位置していてもよい。
本発明の実施形態は、上述した回転陽極型X線管1及び回転陽極型X線管装置に限定されるものではなく、各種の回転陽極型X線管及び回転陽極型X線管装置に適用可能である。
本発明の実施形態は、上述した回転陽極型X線管1及び回転陽極型X線管装置に限定されるものではなく、各種の回転陽極型X線管及び回転陽極型X線管装置に適用可能である。
1…X線管、10…固定軸、11…第1円筒、11a…第1端部、11b…第2端部、11c…中間部、12…第2円筒、13…第3円筒、20…回転体、30…支持部材、31…板部、32…中央部、33…突出部、34…板部、35…分割部、35h…貫通孔、36…分割部、37…円環部、38,39…ロッド、50…陽極ターゲット、60…陰極、61…フィラメント、70…真空外囲器、R1,R3…厚肉領域、R2…薄肉領域、L…冷却液、LM…液体金属、B1,B2,B3…軸受、A…中心軸、T1,T2,T3…肉厚。
Claims (11)
- 中心軸を有する筒状に形成され、前記中心軸に沿って並んだ厚肉領域及び前記厚肉領域より肉厚の薄い薄肉領域を有する固定軸と、
前記固定軸の周囲で軸受により支持された回転体と、
電子を放出する陰極と、
回転体に接続され、前記陰極から放出された電子が衝突しX線を発生する陽極ターゲットと、
前記固定軸の内部に位置し、前記薄肉領域の内面に接し、前記薄肉領域を支持する支持部材と、を備える回転陽極型X線管。 - 前記軸受は潤滑剤を用いた動圧軸受である請求項1に記載の回転陽極型X線管。
- 前記潤滑剤は液体金属である請求項2に記載の回転陽極型X線管。
- 前記回転体は、前記陽極ターゲットの熱が伝達される熱伝達領域を有し、
前記薄肉領域は、前記熱伝達領域と対向している請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転陽極型X線管。 - 前記固定軸は、
前記厚肉領域に位置した第1端部と、前記固定軸が有し前記薄肉領域より厚肉である他の厚肉領域に位置した第2端部と、前記厚肉領域と前記他の厚肉領域との間の前記薄肉領域を形成する中間部と、を具備する第1円筒と、
前記第1端部によって取り囲まれ前記第1端部を補強し前記第1端部とともに前記厚肉領域を形成する第1補強部と、前記第1円筒の外側に位置した第1延出部と、を具備し、前記第1円筒に固定された第2円筒と、
前記第2端部によって取り囲まれ前記第2端部を補強し前記第2端部とともに前記他の厚肉領域を形成する第2補強部と、前記第1円筒の外側に位置した第2延出部と、を具備し、前記第1円筒に固定された第3円筒と、を有する請求項1乃至4の何れか1項に記載の回転陽極型X線管。 - 前記支持部材は、前記固定軸に接合されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の回転陽極型X線管。
- 前記固定軸は、内部に前記支持部材とともに冷却液の流路を形成する請求項1乃至6の何れか1項に記載の回転陽極型X線管。
- 前記支持部材は、前記中心軸を通り、前記薄肉領域の内面に接し、前記中心軸に平行な方向に延出した板部を有している請求項1乃至7の何れか1項に記載の回転陽極型X線管。
- 前記支持部材は、放射状に前記中心軸から前記薄肉領域に突出し前記薄肉領域の内面に接し前記中心軸に平行な方向に延出し互いに固定された複数の板部を有している請求項1乃至7の何れか1項に記載の回転陽極型X線管。
- 前記支持部材は、前記薄肉領域の内面に隙間を置いて設けられた中央部と、それぞれ前記中央部に固定され前記薄肉領域の内面に接した複数の突出部と、を有している請求項1乃至7の何れか1項に記載の回転陽極型X線管。
- 前記支持部材は、前記中心軸を中心に旋回し螺旋状に形成されている請求項1乃至7の何れか1項に記載の回転陽極型X線管。
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JP2014170290A JP2016046134A (ja) | 2014-08-25 | 2014-08-25 | 回転陽極型x線管 |
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2014
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