JP2022065817A - 回転陽極型x線管 - Google Patents
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Abstract
【課題】信頼性の高い回転陽極型X線管を提供する。【解決手段】回転陽極型X線管は、陽極ターゲット10と、回転体と、固定体と、陰極と、外囲器と、を備える。陽極ターゲット10は、それぞれ外周面10cから回転軸aに向かって凹んで形成されターゲット面12Sを越え回転軸aの手前で終端した複数のスリット13を備える。各々のスリット13は、表面10aから裏面10bまで貫通し、回転軸に垂直な仮想平面に垂直投影された表面開口の長さをL1、仮想平面に垂直投影された裏面開口の長さをL2、とすると、L2<L1である。【選択図】図6
Description
本発明の実施形態は、回転陽極型X線管に関する。
X線管装置は、X線管を備えている。X線管は、陽極ターゲットに電子が衝突してX線を発生する構成になっている。このようなX線管装置は、医療用の診断装置あるいは工業用の非破壊検査装置や材料分析装置など、多くの用途に利用されている。以下では代表的な装置として回転陽極型X線管装置及び回転陽極型X線管について説明する。
回転陽極型X線管では、陰極から放射された電子は、陰極と陽極ターゲット間の電位勾配により加速され、また集束され、典型的には20乃至150keVのエネルギを持って、回転する陽極ターゲットのうちターゲット層のターゲット面にほぼ垂直(90°±10°)に衝突してX線発生源となる焦点を形成する。焦点は高いエネルギを持った電子ビームが衝突して形成されるが、電子ビームはターゲット層により急速に減速されるためX線が放出される。X線に変換される割合は、ターゲット層に衝突する電子の運動エネルギの中の1%以下とわずかである。残りのエネルギは熱に変換される。
回転陽極型X線管の使用時において、陽極ターゲットには、陽極ターゲット自体の回転に伴う遠心力と、陽極ターゲットの外周側のターゲット層に加速された電子ビームが衝突することによる陽極ターゲットの外周側及び内周側の温度差に基づく熱応力と、が作用し、陽極ターゲットの内周側に大きな引っ張り歪みがもたらされる。
この歪みは、陽極ターゲットの径が大きい程、また回転数が高い程、さらにまた電子ビームのパワーが高い程大きい。この歪みが許容限度を越えると、陽極ターゲット表面に亀裂が発生して陽極ターゲットが破壊される恐れがある。また、陽極ターゲットに永久変形が発生し、陽極ターゲットが不平衡状態となる結果、陽極ターゲットの回転軸は一層アンバランスとなってしまう。ひいては回転陽極型X線管の振動が増大し、回転陽極型X線管に許容できない振動が発生する恐れもある。この場合、回転陽極型X線管の性能が大きく劣化する恐れがある。
そこで、上記の問題を解決するため、陽極ターゲットの外周面から内側に向って形成された複数のスリットを有したスリット付き陽極ターゲットを採用することが有効であることが知られている。
本実施形態は、信頼性の高い回転陽極型X線管を提供する。
一実施形態に係る回転陽極型X線管は、
陽極ターゲット本体と、電子が入射されることによりX線を放射するターゲット面を含むターゲット層と、を有し、回転軸を中心に回転可能である陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットに接続され、前記陽極ターゲットとともに回転可能な回転体と、前記回転体を回転可能に支持する固定体と、前記ターゲット面に入射させる電子を放出する陰極と、前記陽極ターゲット及び前記陰極を収容した外囲器と、を備え、前記陽極ターゲットの外面は、前記ターゲット面を含む表面と、前記表面の反対側の裏面と、前記表面と前記裏面との間の外周面と、を有し、前記陽極ターゲットは、それぞれ前記外周面から前記回転軸に向かって凹んで形成され前記ターゲット面を越え前記回転軸の手前で終端した複数のスリットをさらに備え、各々の前記スリットは、前記表面から前記裏面まで貫通し、前記表面に開口した表面開口と、前記裏面に開口した裏面開口と、を有し、前記回転軸に垂直な仮想平面に垂直投影された前記表面開口の長さをL1、前記仮想平面に垂直投影された前記裏面開口の長さをL2、とすると、L2<L1である。
陽極ターゲット本体と、電子が入射されることによりX線を放射するターゲット面を含むターゲット層と、を有し、回転軸を中心に回転可能である陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットに接続され、前記陽極ターゲットとともに回転可能な回転体と、前記回転体を回転可能に支持する固定体と、前記ターゲット面に入射させる電子を放出する陰極と、前記陽極ターゲット及び前記陰極を収容した外囲器と、を備え、前記陽極ターゲットの外面は、前記ターゲット面を含む表面と、前記表面の反対側の裏面と、前記表面と前記裏面との間の外周面と、を有し、前記陽極ターゲットは、それぞれ前記外周面から前記回転軸に向かって凹んで形成され前記ターゲット面を越え前記回転軸の手前で終端した複数のスリットをさらに備え、各々の前記スリットは、前記表面から前記裏面まで貫通し、前記表面に開口した表面開口と、前記裏面に開口した裏面開口と、を有し、前記回転軸に垂直な仮想平面に垂直投影された前記表面開口の長さをL1、前記仮想平面に垂直投影された前記裏面開口の長さをL2、とすると、L2<L1である。
また、一実施形態に係る回転陽極型X線管は、
陽極ターゲット本体と、電子が入射されることによりX線を放射するターゲット面を含むターゲット層と、を有し、回転軸を中心に回転可能である陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットに接続され、前記陽極ターゲットとともに回転可能な回転体と、前記回転体を回転可能に支持する固定体と、前記ターゲット面に入射させる電子を放出する陰極と、前記陽極ターゲット及び前記陰極を収容した外囲器と、を備え、前記陽極ターゲットの外面は、前記ターゲット面を含む表面と、前記表面の反対側の裏面と、前記表面と前記裏面との間の外周面と、を有し、前記陽極ターゲットは、それぞれ前記外周面から前記回転軸に向かって凹んで形成され前記ターゲット面を越え前記回転軸の手前で終端した複数のスリットをさらに備え、各々の前記スリットは、前記表面から前記裏面の手前まで凹んでいる。
陽極ターゲット本体と、電子が入射されることによりX線を放射するターゲット面を含むターゲット層と、を有し、回転軸を中心に回転可能である陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットに接続され、前記陽極ターゲットとともに回転可能な回転体と、前記回転体を回転可能に支持する固定体と、前記ターゲット面に入射させる電子を放出する陰極と、前記陽極ターゲット及び前記陰極を収容した外囲器と、を備え、前記陽極ターゲットの外面は、前記ターゲット面を含む表面と、前記表面の反対側の裏面と、前記表面と前記裏面との間の外周面と、を有し、前記陽極ターゲットは、それぞれ前記外周面から前記回転軸に向かって凹んで形成され前記ターゲット面を越え前記回転軸の手前で終端した複数のスリットをさらに備え、各々の前記スリットは、前記表面から前記裏面の手前まで凹んでいる。
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る回転陽極型のX線管装置を示す構成図である。図2は、図1に示した回転陽極型のX線管1を示す断面図である。
まず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る回転陽極型のX線管装置を示す構成図である。図2は、図1に示した回転陽極型のX線管1を示す断面図である。
図1に示すように、回転陽極型のX線管装置は、回転陽極型のX線管1と、回転駆動機構として磁界を発生させるステータコイル(電磁コイル)6と、X線管1及びステータコイル6を収容した筐体2と、筐体2内に充填された冷却液としての絶縁油3と、冷却器7と、を備えている。
図1及び図2に示すように、X線管1は、陽極ターゲット10と、回転体30と、接続部40と、固定体50と、陰極60と、外囲器(真空外囲器)80と、締め具としてのナット100と、を備えている。
図2に示すように、陽極ターゲット10は、陽極ターゲット本体11と、電子が入射されることによりX線を放射するターゲット層12と、を有している。陽極ターゲット本体11は、金属として例えばモリブデン合金で形成されている。陽極ターゲット本体11には、孔部11bが形成されている。孔部11bは、断面形状が円形であり、回転軸aに沿った方向に延び、陽極ターゲット本体11を貫通して形成されている。ターゲット層12は、金属として例えばタングステン合金で形成されている。陽極ターゲット10は、回転軸aを中心に平衡状態にあり、回転軸aを中心に回転可能である。
回転体30は、この回転体の回転動作の中心軸となる回転軸aに沿って延出して筒状に形成されている。回転体30は、回転軸aを中心に回転可能である。回転体30は、Fe(鉄)合金やMo(モリブデン)合金等の材料で形成されている。
接続部40は、回転軸aに沿った方向に突出した突出部41を有している。突出部41は、陽極ターゲット10の孔部11bを通って孔部11bの外側に突出している。ナット100は、孔部11bの外側に突出した突出部41に嵌め合わされている。接続部40及びナット100は、陽極ターゲット10を締め付けている。このため、陽極ターゲット10は、接続部40及びナット100により固定されている。
回転体30は、陽極ターゲット10に接続され、陽極ターゲット10とともに回転可能である。回転体30は、一端部が閉塞された筒状の本体31と、蓋部32とで形成されている。蓋部32は、複数のネジ33により、本体31の他端部に取り外し可能にねじで固定されている。固定体50は、回転体30の内部に嵌合され、一端部が回転体30の外側に突出し露出している。この実施形態において、X線管1は、片端支持軸受構造を採用している。
回転体30及び固定体50は、互いに隙間を置いて設けられている。固定体50は、回転体30を回転可能に支持している。図示しないが、回転体30及び固定体50間の隙間には、金属潤滑剤が充填されている。回転体30、固定体50、及び金属潤滑剤は、ラジアルすべり軸受けを形成している。
蓋部32は、円環状に形成され、固定体50の側面全周に亘って隙間を置いて設けられている。蓋部32は、回転体30及び固定体50の回転軸aに沿った方向への相対的なズレを規制するものである。
蓋部32及び固定体50間の隙間(クリアランス)は、回転体30の回転を維持するとともに金属潤滑剤の漏洩を抑制できる値に設定されている。上記したことから、隙間は僅かである。また、回転軸aに沿った方向において、固定体50、蓋部32、及び金属潤滑剤は、スラスト軸受けを形成している。
固定体50は、固定シャフトであり、柱状に形成され、回転体30及び陽極ターゲット10と同軸的に設けられている。固定体50は、回転軸aに沿って延出して回転体30の内部に設けられている。固定体50は、Fe合金やMo合金等の材料で形成されている。固定体50は回転体30を回転可能に支持している。
陰極60は、陽極ターゲット10のターゲット層12に間隔を置いて対向配置されている。陰極60は、陰極構体70に取付けられている。陰極60は、ターゲット層12(後述するターゲット面12S)に入射させる電子を放出する電子放出源としてのフィラメント61を有している。陰極60は、ターゲット層12に電子を入射させ、ターゲット層12に焦点を形成するものである。
図1及び図2に示すように、外囲器80は、円筒状に形成されている。外囲器80は金属及びガラスで形成されている。外囲器80において、陽極ターゲット10と対向した個所の径は、回転体30と対向した個所の径より大きい。外囲器80は、内部の気密状態を維持するよう、固定体50の一端部及び陰極構体70と気密に接合されている。外囲器80は、陰極60と対向したターゲット層12付近にX線を透過させるX線透過窓81を有している。外囲器80は、密閉され、陽極ターゲット10、回転体30、接続部40、固定体50の一部、陰極60等を収容している。外囲器80の内部は減圧状態に維持されている。
ステータコイル6は、回転体30の側面に対向し外囲器80の外側を囲むように設けられている。ステータコイル6は、回転体30に与える磁界を発生して回転体30及び陽極ターゲット10を回転させるものである。ステータコイル6に所定の電流が供給されることで、回転体30及び陽極ターゲット10は所定の速度で回転する。
筐体2は、陰極60と対向したターゲット層12付近にX線を透過させるX線透過窓2aを有している。筐体2の内部には、X線管1及びステータコイル6が収容されている他、絶縁油3が充填されている。
冷却器7は、熱交換器7a及びポンプ(絶縁油循環ポンプ)7bを有している。筐体2内に供給される絶縁油3は、熱交換器7aにより冷却される。ポンプ7bは、絶縁油3を、熱交換器7aを循環させるとともに、筐体2に設けられた取入れ口及び取り出し口を介し、筐体2内に形成された循環路を循環させる。これにより、X線管1において発生する熱が、絶縁油3を媒介として、筐体2の外部へ放出される。
上記のように、回転陽極型のX線管装置が構成されている。
上記のように、回転陽極型のX線管装置が構成されている。
次に、上記X線管1について詳しく説明する。図3は、図1に示した陽極ターゲット10を示す斜視図である。図4は、陽極ターゲット10を示す平面図である。図5は、図4の線V-Vに沿った陽極ターゲット10を示す断面図であり、陽極ターゲット10の温度分布を等高線で示す図である。図5において、等高線を二点鎖線で示している。なお、図4において陽極ターゲット10を簡略的に示したため、図3と図4とでスリット13の個数が異なっている。
図2乃至図5に示すように、陽極ターゲット本体11は、回転軸aを中心軸とした円盤状に形成されている。陽極ターゲット本体11のうち、ターゲット層12側の前面の外周側は、環状の順テーパ面である。ターゲット層12は、環状であり、陽極ターゲット本体11の順テーパ面上に形成されている。ターゲット層12は、ターゲット面12Sを含んでいる。ターゲット面12Sには、電子が入射されることによりX線を放射する焦点Fが形成される。ターゲット層12の表面であるターゲット面12Sも順テーパ面である。
陽極ターゲット10の外面は、ターゲット面12Sを含む表面10aと、表面10aの反対側の裏面10bと、表面10aと裏面10bとの間の外周面10cと、を有している。ターゲット面12Sは、表面10aの外周側に位置している。
陽極ターゲット10は、複数のスリット13を有している。複数のスリット13は、それぞれ陽極ターゲット10の外周面10cから回転軸aに向かって凹んで形成されている。複数のスリット13は、それぞれターゲット面12Sを越え、回転軸aの手前で終端している。この実施の形態において、スリット13は、陽極ターゲット10の半径方向に直線的に延出している。スリット13は、回転軸aに同軸の周りで等間隔に位置している。なお、スリット13の個数は、8個又は12個に限定されるものではなく、種々変更可能である。
ここで、陽極ターゲット10が回転し、ターゲット面12Sに電子が衝突している期間の陽極ターゲット10の温度分布に注目する。図5には、陽極ターゲット10の温度分布を示すため、第1等高線C1及び第2等高線C2を二点鎖線で付している。
図5に示すように、陽極ターゲット10には、ターゲット面12Sに形成される焦点Fの近傍から熱が発生し拡散される。陽極ターゲット10のうち、焦点Fの近傍が最も高温になり、焦点Fから遠ざかる程、温度上昇が抑えられていることが分かる。言い換えると、陽極ターゲット10は、回転軸aに近づく程、温度上昇が抑えられ、また、裏面10bに近づく程、温度上昇が抑えられている。そこで、本実施形態において、スリット13は、陽極ターゲット10の温度分布を考慮して形成されている。
図5に示すように、陽極ターゲット10には、ターゲット面12Sに形成される焦点Fの近傍から熱が発生し拡散される。陽極ターゲット10のうち、焦点Fの近傍が最も高温になり、焦点Fから遠ざかる程、温度上昇が抑えられていることが分かる。言い換えると、陽極ターゲット10は、回転軸aに近づく程、温度上昇が抑えられ、また、裏面10bに近づく程、温度上昇が抑えられている。そこで、本実施形態において、スリット13は、陽極ターゲット10の温度分布を考慮して形成されている。
次に、本実施形態のスリット13の特徴について説明する。図6は、図4の線VI-VIに沿った陽極ターゲット10を示す断面図である。
図3乃至図6に示すように、各々のスリット13は、表面10aから裏面10bまで貫通している。各々のスリット13は、表面10aに開口した表面開口Oaと、裏面10bに開口した裏面開口Obと、を有している。
図3乃至図6に示すように、各々のスリット13は、表面10aから裏面10bまで貫通している。各々のスリット13は、表面10aに開口した表面開口Oaと、裏面10bに開口した裏面開口Obと、を有している。
回転軸aに垂直な仮想平面PPに垂直投影された表面開口Oaの長さをL1、仮想平面PPに垂直投影された裏面開口Obの長さをL2、とする。また、表面開口Oaが終端する位置を第1終点E1、裏面開口Obが終端する位置を第2終点E2、とする。すると、長さL1は、回転軸aに垂直な方向での、外周面10cから第1終点E1までの長さである。長さL2は、回転軸aに垂直な方向での、外周面10cから第2終点E2までの長さである。
本実施形態において、L2<L1である。
各々のスリット13が終端した位置におけるスリット13と陽極ターゲット10の中実部分との境界Bは、第1終点E1と第2終点E2とを結ぶ直線である。本実施形態において、境界Bは順テーパである。境界Bは、位置に関して、図5の順テーパ状の基準線RLと一致している。なお、基準線RLは、第2等高線C2より回転軸a側に位置し、第2等高線C2の近傍を通る線である。
各々のスリット13が終端した位置におけるスリット13と陽極ターゲット10の中実部分との境界Bは、第1終点E1と第2終点E2とを結ぶ直線である。本実施形態において、境界Bは順テーパである。境界Bは、位置に関して、図5の順テーパ状の基準線RLと一致している。なお、基準線RLは、第2等高線C2より回転軸a側に位置し、第2等高線C2の近傍を通る線である。
各々のスリット13は、終端した位置に拡張部13aを含んでいる。拡張部13aは、円形の断面形状を有している。本実施形態において、拡張部13aは、楕円形の断面形状を有しているが、真円等の他の円形の断面形状を有してもよい。なお、拡張部13aの断面に角が形成されていない方が望ましい。これにより、拡張部13aの特定個所に応力が集中する事態を回避することができる。
また、拡張部13aは、第1終点E1から第2終点E2まで延在している。本実施形態において、拡張部13aは、境界Bに沿って直線状に延在した貫通孔である。陽極ターゲット10の半径方向に垂直な方向において、拡張部13aの幅をW1、スリット13のうち拡張部13aより外周面10c側の幅をW2、とする。
すると、W2<W1である。
すると、W2<W1である。
上記のように構成された第1の実施形態に係る回転陽極型のX線管装置によれば、回転陽極型のX線管1は、陽極ターゲット10、回転体30、固定体50、陰極60、外囲器80等を備えている。
陽極ターゲット10は、複数のスリット13を有している。そのため、X線管1の使用時において、陽極ターゲットに遠心力と熱応力とが作用しても、陽極ターゲット10の破壊を抑制又は防止することができ、陽極ターゲット10に発生する恐れのある永久変形を低減することができる。ひいてはX線管1に発生する恐れのある不所望な振動を低減することができる。
陽極ターゲット10は、複数のスリット13を有している。そのため、X線管1の使用時において、陽極ターゲットに遠心力と熱応力とが作用しても、陽極ターゲット10の破壊を抑制又は防止することができ、陽極ターゲット10に発生する恐れのある永久変形を低減することができる。ひいてはX線管1に発生する恐れのある不所望な振動を低減することができる。
また、スリット13を回転軸aの付近まで入れるほど、応力の緩和には有効であるが、陽極ターゲット10の剛性の低下を招いてしまう。そこで、陽極ターゲット10のスリット13は、L2<L1の関係を満たしている。図11に示すようにL1=L2である場合や、L1<L2である場合と比較して、陽極ターゲット10の中実部分の体積の減少を抑制できるため、陽極ターゲット10の剛性の低下を抑制することができる。陽極ターゲット10に遠心力等の応力がかかっても、陽極ターゲット10の破損を抑制することができる。
なお、L1=L2又はL1<L2である場合、境界Bが第2等高線C2より焦点F側に位置していれば剛性の低下を抑制することはできる。しかしながら、スリット13による応力の緩和が機能し難くなり、陽極ターゲットが破壊され易くなってしまう。
上記のことから、本実施形態において、信頼性の高い回転陽極型のX線管1を得ることができる。そして、X線管1は、低振動の安定した動作が可能であり、性能の劣化を低減することができる。
境界Bは、第1終点E1と第2終点E2とを結ぶ直線である。境界Bは応力の集中し易い角を有していないため、陽極ターゲット10の破壊を、一層、抑制することができる。そして、一層、製品信頼性の高いX線管1を得ることができる。
スリット13に関して、W2<W1である。これにより、スリット13の拡張部13aへの応力(熱応力及び遠心力)の集中を抑制することができる。拡張部13aは、断面形状が円形の貫通孔で形成されている。拡張部13aの断面形状を円形にすることにより、拡張部13aの特定個所への応力の集中を一層抑制することができる。
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。
(第1の実施形態の変形例1)
次に、第1の実施形態の変形例1について説明する。回転陽極型のX線管装置は、本変形例1で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。図7は、第1の実施形態の変形例1に係る陽極ターゲット10を示す断面図である。
(第1の実施形態の変形例1)
次に、第1の実施形態の変形例1について説明する。回転陽極型のX線管装置は、本変形例1で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。図7は、第1の実施形態の変形例1に係る陽極ターゲット10を示す断面図である。
図7に示すように、境界Bは、第1終点E1と第2終点E2とを結び、ターゲット面12Sとは反対側に凹んだ曲線であってもよい。本変形例1においても、境界Bは角を有していない。
上記のように構成された変形例1に係る回転陽極型のX線管装置においても、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
上記のように構成された変形例1に係る回転陽極型のX線管装置においても、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第1の実施形態の変形例2)
次に、第1の実施形態の変形例2について説明する。回転陽極型のX線管装置は、本変形例2で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。図8は、第1の実施形態の変形例2に係る陽極ターゲット10を示す断面図である。
次に、第1の実施形態の変形例2について説明する。回転陽極型のX線管装置は、本変形例2で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。図8は、第1の実施形態の変形例2に係る陽極ターゲット10を示す断面図である。
図8に示すように、境界Bは、一以上の曲線と、上記曲線を介してつなげられる一以上の直線と、を有してもよい。境界Bにおいて、第1終点E1と第2終点E2との間の点をP1とする。すると、境界Bは、点P1と第2終点E2とを結ぶ一の曲線と、第1終点E1と点P1とを結ぶ一の直線と、を有している。点P1と第2終点E2とを結ぶ曲線は、例えば、ターゲット面12Sとは反対側に凹んだ円弧である。第1終点E1と点P1とを結ぶ直線は、例えば、回転軸aに平行である。
上記のように構成された変形例2に係る回転陽極型のX線管装置においても、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
上記のように構成された変形例2に係る回転陽極型のX線管装置においても、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第1の実施形態の変形例3)
境界Bは、角を有してもよい。
境界Bは、角を有してもよい。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。回転陽極型のX線管装置は、本第2の実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。図9は、第2の実施形態に係る回転陽極型のX線管1の陽極ターゲット10を示す斜視図である。図10は、図9に示した陽極ターゲット10を示す断面図である。図10は、陽極ターゲット10のうち、スリット13が形成された個所の断面を示している。
次に、第2の実施形態について説明する。回転陽極型のX線管装置は、本第2の実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。図9は、第2の実施形態に係る回転陽極型のX線管1の陽極ターゲット10を示す斜視図である。図10は、図9に示した陽極ターゲット10を示す断面図である。図10は、陽極ターゲット10のうち、スリット13が形成された個所の断面を示している。
本実施形態のスリット13の特徴について説明する。
図9及び図10に示すように、複数のスリット13は、それぞれ外周面10cから回転軸aに向かって凹んで形成され、ターゲット面12Sを越え、回転軸aの手前で終端している。各々のスリット13は、表面10aから裏面10bまで貫通していない。本実施形態において、各々のスリット13は、表面10aから裏面10bの手前まで凹んでいる。
図9及び図10に示すように、複数のスリット13は、それぞれ外周面10cから回転軸aに向かって凹んで形成され、ターゲット面12Sを越え、回転軸aの手前で終端している。各々のスリット13は、表面10aから裏面10bまで貫通していない。本実施形態において、各々のスリット13は、表面10aから裏面10bの手前まで凹んでいる。
各々の前記スリットは、表面10aに開口した表面開口Oaと、外周面10cに開口した外周面開口Ocと、を有している。表面開口Oaが終端する位置を第1終点E1、外周面開口Ocが終端する位置を第2終点E2、とする。第2終点E2は、表面10aから向かって裏面10bの手前の位置である。
境界Bは、角を有していない。境界Bは、一以上の曲線と、上記曲線を介してつなげられる一以上の直線と、を有している。境界Bにおいて、第1終点E1と第2終点E2との間の点をP1とし、点P1と第2終点E2との間の点をP2とする。すると、境界Bは、第1終点E1と点P1とを結ぶ直線と、点P1と点P2とを結ぶ曲線と、点P2と第2終点E2とを結ぶ直線と、を有している。点P1と点P2とを結ぶ曲線は、例えば、ターゲット面12Sとは反対側に凹んだ円弧である。第1終点E1と点P1とを結ぶ直線は、例えば、回転軸aに平行である。点P2と第2終点E2とを結ぶ直線は、例えば、陽極ターゲット10の半径方向に平行である。各々のスリット13は、終端した位置に拡張部(13a)を含んでいない。
上記のように構成された第2の実施形態に係る回転陽極型のX線管装置によれば、回転陽極型のX線管1は、陽極ターゲット10、回転体30、固定体50、陰極60、外囲器80等を備えている。
陽極ターゲット10は、複数のスリット13を有している。各々のスリット13は、表面10aから裏面10bの手前まで凹んでいる。スリット13が表面10aから裏面10bまで貫通している場合と比較し、陽極ターゲット10の剛性の低下を抑制することができる。
そのため、本第2の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
陽極ターゲット10は、複数のスリット13を有している。各々のスリット13は、表面10aから裏面10bの手前まで凹んでいる。スリット13が表面10aから裏面10bまで貫通している場合と比較し、陽極ターゲット10の剛性の低下を抑制することができる。
そのため、本第2の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、第2の実施形態の変形例について説明する。
(第2の実施形態の変形例1)
境界Bは、第1終点E1と第2終点E2とを結ぶ直線であってもよい。
(第2の実施形態の変形例1)
境界Bは、第1終点E1と第2終点E2とを結ぶ直線であってもよい。
(第2の実施形態の変形例2)
境界Bは、第1終点E1と第2終点E2とを結び、ターゲット面12Sとは反対側に凹んだ曲線であってもよい。
境界Bは、第1終点E1と第2終点E2とを結び、ターゲット面12Sとは反対側に凹んだ曲線であってもよい。
(第2の実施形態の変形例3)
境界Bは、角を有してもよい。
例えば、図10に示した境界Bのうち、点P1と点P2と間の区間を、90°の角度を成した一対の線分で構成してもよい。
境界Bは、角を有してもよい。
例えば、図10に示した境界Bのうち、点P1と点P2と間の区間を、90°の角度を成した一対の線分で構成してもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、各々のスリット13は、拡張部13aを含んでいてもよく、含んでいなくともよい。
この発明は、上記回転陽極型のX線管1及び回転陽極型のX線管装置に限らず、各種の回転陽極型のX線管及び回転陽極型のX線管装置に適用することができる。
この発明は、上記回転陽極型のX線管1及び回転陽極型のX線管装置に限らず、各種の回転陽極型のX線管及び回転陽極型のX線管装置に適用することができる。
1…X線管、2…筐体、6…ステータコイル、10…陽極ターゲット、10a…表面、
10b…裏面、10c…外周面、11…陽極ターゲット本体、12…ターゲット層、
12S…ターゲット面、13…スリット、13a…拡張部、30…回転体、
40…接続部、50…固定体、60…陰極、80…外囲器、B…境界、E1…第1終点、
E2…第2終点、F…焦点、Oa…表面開口、Ob…裏面開口、Oc…外周面開口、
PP…仮想平面、a…回転軸。
10b…裏面、10c…外周面、11…陽極ターゲット本体、12…ターゲット層、
12S…ターゲット面、13…スリット、13a…拡張部、30…回転体、
40…接続部、50…固定体、60…陰極、80…外囲器、B…境界、E1…第1終点、
E2…第2終点、F…焦点、Oa…表面開口、Ob…裏面開口、Oc…外周面開口、
PP…仮想平面、a…回転軸。
Claims (8)
- 陽極ターゲット本体と、電子が入射されることによりX線を放射するターゲット面を含むターゲット層と、を有し、回転軸を中心に回転可能である陽極ターゲットと、
前記陽極ターゲットに接続され、前記陽極ターゲットとともに回転可能な回転体と、
前記回転体を回転可能に支持する固定体と、
前記ターゲット面に入射させる電子を放出する陰極と、
前記陽極ターゲット及び前記陰極を収容した外囲器と、を備え、
前記陽極ターゲットの外面は、前記ターゲット面を含む表面と、前記表面の反対側の裏面と、前記表面と前記裏面との間の外周面と、を有し、
前記陽極ターゲットは、それぞれ前記外周面から前記回転軸に向かって凹んで形成され前記ターゲット面を越え前記回転軸の手前で終端した複数のスリットをさらに備え、
各々の前記スリットは、前記表面から前記裏面まで貫通し、前記表面に開口した表面開口と、前記裏面に開口した裏面開口と、を有し、
前記回転軸に垂直な仮想平面に垂直投影された前記表面開口の長さをL1、前記仮想平面に垂直投影された前記裏面開口の長さをL2、とすると、
L2<L1である、
回転陽極型X線管。 - 各々の前記スリットが終端した位置における前記スリットと前記陽極ターゲットの中実部分との境界は、角を有していない、
請求項1に記載の回転陽極型X線管。 - 前記表面開口が終端する位置を第1終点、前記裏面開口が終端する位置を第2終点、とすると、
前記境界は、
前記第1終点と前記第2終点とを結ぶ直線である、又は
前記第1終点と前記第2終点とを結び、前記ターゲット面とは反対側に凹んだ曲線である、又は
一以上の曲線と、前記曲線を介してつなげられる一以上の直線と、を有する、
請求項2に記載の回転陽極型X線管。 - 各々の前記スリットは、終端した位置に拡張部を含んでいる、
請求項1に記載の回転陽極型X線管。 - 前記表面開口が終端する位置を第1終点、前記裏面開口が終端する位置を第2終点、とすると、
前記拡張部は、前記第1終点から前記第2終点まで延在している、
請求項4に記載の回転陽極型X線管。 - 陽極ターゲット本体と、電子が入射されることによりX線を放射するターゲット面を含むターゲット層と、を有し、回転軸を中心に回転可能である陽極ターゲットと、
前記陽極ターゲットに接続され、前記陽極ターゲットとともに回転可能な回転体と、
前記回転体を回転可能に支持する固定体と、
前記ターゲット面に入射させる電子を放出する陰極と、
前記陽極ターゲット及び前記陰極を収容した外囲器と、を備え、
前記陽極ターゲットの外面は、前記ターゲット面を含む表面と、前記表面の反対側の裏面と、前記表面と前記裏面との間の外周面と、を有し、
前記陽極ターゲットは、それぞれ前記外周面から前記回転軸に向かって凹んで形成され前記ターゲット面を越え前記回転軸の手前で終端した複数のスリットをさらに備え、
各々の前記スリットは、前記表面から前記裏面の手前まで凹んでいる、
回転陽極型X線管。 - 各々の前記スリットが終端した位置における前記スリットと前記陽極ターゲットの中実部分との境界は、角を有していない、
請求項6に記載の回転陽極型X線管。 - 各々の前記スリットは、前記表面に開口した表面開口と、前記外周面に開口した外周面開口と、を有し、
前記表面開口が終端する位置を第1終点、前記外周面開口が終端する位置を第2終点、とすると、
前記境界は、
前記第1終点と前記第2終点とを結ぶ直線である、又は
前記第1終点と前記第2終点とを結び、前記ターゲット面とは反対側に凹んだ曲線である、又は
一以上の曲線と、前記曲線を介してつなげられる一以上の直線と、を有する、
請求項7に記載の回転陽極型X線管。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020174545A JP2022065817A (ja) | 2020-10-16 | 2020-10-16 | 回転陽極型x線管 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020174545A JP2022065817A (ja) | 2020-10-16 | 2020-10-16 | 回転陽極型x線管 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2022065817A true JP2022065817A (ja) | 2022-04-28 |
Family
ID=81387971
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2020174545A Pending JP2022065817A (ja) | 2020-10-16 | 2020-10-16 | 回転陽極型x線管 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2022065817A (ja) |
-
2020
- 2020-10-16 JP JP2020174545A patent/JP2022065817A/ja active Pending
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