JPWO2008020594A1 - 変性液状エポキシ樹脂、並びにそれを用いたエポキシ樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ビスフェノール類とフェノールアラルキル樹脂との混合物をエピハロヒドリンと反応させ得られた、低粘度で且つ高性能の変性液状エポキシ樹脂を提供するものである。ここで、ビスフェノール類は、ビスフェノールFであることが好ましく、また、流動性の面から、UV254nmでのゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより検出した2官能体純度が95面積%以上であることが更に好ましい。更に、上記ビスフェノール類とフェノールアラルキル樹脂との混合物は、フェノールアラルキル樹脂の占める割合が10〜70質量%であることが好ましい。
Description
本発明は、低粘度で且つ高機能な変性液状エポキシ樹脂、並びに該変性液状エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物及び該エポキシ樹脂組成物の硬化物に関するものである。
エポキシ樹脂は、種々の硬化剤で硬化されることにより、一般に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料、レジストなどの幅広い分野に利用されている。近年、特に半導体関連材料の分野においては、カメラ付き携帯電話、超薄型の液晶やプラズマTV、軽量ノート型パソコンなど、軽・薄・短・小等の語がキーワードとして使用される電子機器があふれ、これによりエポキシ樹脂に代表されるパッケージ材料にも非常に高い特性が求められてきている。特に先端パッケージはその構造が複雑になり、液状封止材でなくては封止が困難な物が増加している。例えばEnhancedBGAのようなキャビティーダウンタイプの構造になっているものは部分封止を行う必要があり、トランスファー成型では対応できない。このようなことから高機能な液状エポキシ樹脂の開発が求められている。
また、コンポジット材、車の車体や船舶の構造材として、近年、その製造法の簡便さからRTM方式が使用されている。このような材料に使用される組成物においては、カーボンファイバー等への含浸のされやすさから、低粘度のエポキシ樹脂が望まれている。
従来、工業的に最も使用されている液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物が知られている。しかしながら、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、物性的にバランスは取れているものの、その硬化物の耐熱性、機械強度、耐湿性などにおいて不十分である点が指摘されている。
このような問題に対し、特開2004−269705号公報及び特開2004−35702号公報には、例えばビスフェノールF型エポキシ樹脂にフェノールアラルキル型エポキシ樹脂を添加、混合して使用する手法が報告されている。この手法により、耐衝撃性等の諸物性は改善されているものの、得られるエポキシ樹脂組成物の粘度は依然として高く、より低粘度で、且つ高機能性のエポキシ樹脂の開発が望まれている。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、低粘度で且つ高機能性の変性液状エポキシ樹脂を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる変性液状エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため、耐熱性及び機械強度が高い硬化物を与える液状芳香族エポキシ樹脂について鋭意検討した結果、特定の分子構造を含有することで低粘度で且つ高機能性の変性液状エポキシ樹脂が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.ビスフェノール類とフェノールアラルキル樹脂との混合物をエピハロヒドリンと反応させ得られることを特徴とする変性液状エポキシ樹脂。
2.前記ビスフェノール類がビスフェノールFであることを特徴とする上記1に記載の変性液状エポキシ樹脂。
3.前記ビスフェノール類とフェノールアラルキル樹脂との混合物は、フェノールアラルキル樹脂の占める割合が10〜70質量%であることを特徴とする上記1又は2に記載の変性液状エポキシ樹脂。
4.前記ビスフェノールFは、UV254nmでのゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより検出した2官能体純度が95面積%以上であることを特徴とする上記2又は3に記載の変性液状エポキシ樹脂。
5.上記1〜4のいずれかに記載の変性液状エポキシ樹脂及び硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
6.上記5に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂組成物の硬化物。
本発明によれば、ビスフェノール類とフェノールアラルキル樹脂とを混合し、その混合物をエピハロヒドリンと反応させ、エポキシ化をすることにより、高い硬化物性を保持しつつ、低粘度の変性液状エポキシ樹脂を提供することができる。また、かかる変性液状エポキシ樹脂を含有した、電気・電子材料、成型材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジスト、光学材料などの広範囲の用途にきわめて有用なエポキシ樹脂組成物及びその硬化物を提供することができる。
本発明の変性液状エポキシ樹脂は、ビスフェノール類とフェノールアラルキル樹脂とを混合し、その混合物をエピハロヒドリンと反応させ、エポキシ化をすることにより得られる。本発明の変性液状エポキシ樹脂は、従来、高機能化のため複数のエポキシ樹脂を混合して得ていたエポキシ樹脂と異なり、対応するエポキシ樹脂のフェノール体を混合し、その混合物をエポキシ化することを特徴とするが、これにより、得られるエポキシ樹脂の粘度は、上記したエポキシ樹脂そのものを混合して得たものに比べて低下する。このことは、ビスフェノール類とフェノールアラルキル樹脂が、部分的にエピハロヒドリンの開環結合、即ち−CH2CH(OH)CH2−結合を介して結合することに起因していると考えられる。なお、変性液状エポキシ樹脂は、室温(25℃)において液状である。
本発明に使用できるビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールS、チオビスフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等の化合物が挙げられ、これらの中でも、ビスフェノールFが特に好ましい。本発明の変性液状エポキシ樹脂の原料としてビスフェノールFを使用すると、得られる変性液状エポキシ樹脂の粘度を大幅に低下させることができる。
本発明に使用することができるビスフェノールFとしては、一般に入手可能なビスフェノールFであれば特に制限されるものではないが、得られるエポキシ樹脂の流動性(低粘度化)の面から、UV254nmでのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により検出した2官能体純度が95面積%以上であるものが好ましい。なお、以下に示す「面積%」の語は、特に指定されない限り、UV254nmでのGPCにより検出した測定値を示す。また、上記ビスフェノールFには、製造時の不純物として、下記式(1):
(式中、nは繰り返し数を示し、1以上の整数である)で表される化合物が含まれ得るが、上記式(1)で表される化合物のうちnが1以上の整数であるものの含有率が2面積%以下であることが好ましく、nが1〜2の整数であるものの含有率が2面積%以下であることが更に好ましい。このようなビスフェノールFとしては、市販品が入手可能であり、例えば、三井化学(株)製BisF−ST(2官能体純度:>98面積%)、本州化学工業(株)製BPF−D(2官能体純度:>98面積%)等が挙げられる。なお、通常市販されているビスフェノールFは、上記式(1)で表される化合物のうちnが1以上の整数であるものを実質的に9〜11面積%含有する。
(式中、nは繰り返し数を示し、1以上の整数である)で表される化合物が含まれ得るが、上記式(1)で表される化合物のうちnが1以上の整数であるものの含有率が2面積%以下であることが好ましく、nが1〜2の整数であるものの含有率が2面積%以下であることが更に好ましい。このようなビスフェノールFとしては、市販品が入手可能であり、例えば、三井化学(株)製BisF−ST(2官能体純度:>98面積%)、本州化学工業(株)製BPF−D(2官能体純度:>98面積%)等が挙げられる。なお、通常市販されているビスフェノールFは、上記式(1)で表される化合物のうちnが1以上の整数であるものを実質的に9〜11面積%含有する。
本発明に使用できるフェノールアラルキル樹脂は、水酸基を有しない芳香環がメチレン結合、エチリデン結合、プロピリデン結合などを介してフェノール類、ナフトール類などと結合した分子構造を有する樹脂であり、具体例としては、ビフェニル型フェノールアラルキル樹脂(ビフェニルノボラック)、フェニル型フェノールアラルキル樹脂(ザイロック)、フルオレニル型フェノールアラルキル樹脂、ナフタレン型フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。また、上記フェノールアラルキル樹脂は、市販品として入手可能であり、具体例としては、三井化学(株)製XLCシリーズ、明和化成(株)製MEH−7851シリーズ、日本化薬(株)製KAYAHARD GPHシリーズ等を挙げることができる。
以下に本発明の変性液状エポキシ樹脂の合成方法を記載する。本発明の変性液状エポキシ樹脂は、上記したビスフェノール類とフェノールアラルキル樹脂との混合物(以下、フェノール混合物と表すことがある)を使用し、エピハロヒドリンと反応させることでエポキシ化(グリシジル化)することを要する。
上記ビスフェノール類とフェノールアラルキル樹脂との混合物は、フェノールアラルキル樹脂の占める割合が、10〜70質量%であることが好ましい。フェノールアラルキル樹脂の占める割合が10質量%未満では、粘度が高すぎるか、あるいは半固形から固形の樹脂となり、ハンドリング性において問題となり、一方、70質量%を超えると、低粘度の液状エポキシ樹脂となるが、その硬化物において熱による線膨張変化率が大きくなったり、弾性率が低くなるなどの点で好ましくない。また、フェノール混合物において、ビスフェノール類(A)とフェノールアラルキル樹脂(B)の混合割合は、エポキシ樹脂として換算した質量比(A/B)が、3/7〜8/2であることが更に好ましく、4/6〜8/2であることが一層好ましい。ビスフェノール類に対するフェノールアラルキル樹脂の使用量が多くなると、硬化物の吸水性及び耐熱性が改善される。
上記エポキシ化反応において使用するエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン、γ-メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられ、本発明においては、工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量は、原料フェノール混合物の水酸基1モルに対し通常3〜20モルであり、好ましくは4〜10モルである。
上記エポキシ化反応においては、アルカリ金属水酸化物を用いることが好ましい。該アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。なお、アルカリ金属水酸化物を、固形物として利用してもよいし、その水溶液として利用してもよい。例えば、アルカリ金属水酸化物を水溶液として使用する場合においては、アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に、減圧下又は常圧下で連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液して水を除去し、エピハロヒドリンを反応系内に連続的に戻す方法によりエポキシ化反応を行うことができる。アルカリ金属水酸化物の使用量は、原料フェノール混合物の水酸基1モルに対して通常0.90〜1.5モルであり、好ましくは0.95〜1.25モルであり、より好ましくは0.99〜1.15モルである。
上記エポキシ化反応においては、反応を促進するためにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加することが好ましい。4級アンモニウム塩の使用量は、原料フェノール混合物の水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。
上記エポキシ化反応においては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが反応進行上好ましい。
上記アルコール類を使用する場合、その使用量は、エピハロヒドリンの使用量に対し通常2〜50質量%であり、好ましくは4〜20質量%である。一方、上記非プロトン性極性溶媒を用いる場合、その使用量は、エピハロヒドリンの使用量に対し通常5〜100質量%であり、好ましくは10〜80質量%である。
上記エポキシ化反応において、反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。一方、反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。これらのエポキシ化反応の反応物は、水洗後、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去することにより精製され得る。また、更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収した反応物をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて、副生成物の閉環反応を行い、副生成物であるハロヒドリンの閉環を確実なものにすることもできる。この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は、エポキシ化に使用した原料フェノール混合物の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モルであり、好ましくは0.05〜0.2モルである。また、反応温度は通常50〜120℃であり、反応時間は通常0.5〜2時間である。
上記エポキシ化反応においては、反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明の変性液状エポキシ樹脂を得ることができる。
本発明の変性液状エポキシ樹脂は、各種樹脂原料として使用できる。例えばエポキシアクリレートおよびその誘導体、オキサゾリドン系化合物、環状カーボネート化合物等が挙げられる。
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について記載する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記した本発明の変性液状エポキシ樹脂と、硬化剤とを必須成分として含有することを要する。本発明のエポキシ樹脂組成物においては、上記した変性液状エポキシ樹脂を単独で使用してもよいし、他のエポキシ樹脂と併用して使用することもできる。上記した変性液状エポキシ樹脂を他の樹脂と併用する場合、エポキシ樹脂の全体に占める上記変性液状エポキシ樹脂の含有率は、30質量%以上が好ましく、40質量%以上が更に好ましい。ただし、本発明のエポキシ樹脂組成物において、上記変性液状エポキシ樹脂を改質剤として使用する場合は、エポキシ樹脂の全体に占める変性液状エポキシ樹脂の含有率は、1〜30質量%であることが好ましい。
上記変性液状エポキシ樹脂と併用し得る他のエポキシ樹脂としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。用いうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルジアミノトルエン、アルキル(メチルもしくはエチル)アニリンとホルムアルデヒドの重縮合物、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体、テルペンとフェノール類の縮合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら硬化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルジアミノトルエン、アルキル(メチルもしくはエチル)アニリンとホルムアルデヒドの重縮合物、イソホロンジアミン等のアミン系の硬化剤が特に好ましく、さらに好ましくは、ジエチルジアミノトルエン、エチルアニリンとホルムアルデヒドの重縮合物等の液状のアミン硬化剤を少なくとも一成分として使用することが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対し、硬化剤の含有量が0.7当量未満であるか、1.2当量を超えると、いずれの場合においても変性エポキシ樹脂組成物の硬化が不完全となり、良好な硬化物性が得られないおそれがある。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、更に硬化促進剤を含有することができる。用い得る硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤の使用量は、必要に応じて適宜選択されるが、例えば、エポキシ樹脂の合計(上記変性液状エポキシ樹脂及び他のエポキシ樹脂、以下同じ)100質量部に対して0.1〜5.0質量部であることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては、反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と上記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量は、リン含有化合物/エポキシ樹脂の合計=0.1〜0.6(質量比)が好ましい。エポキシ樹脂の合計に対するリン含有化合物の質量比が0.1未満では、難燃性が不十分であり、一方、0.6を超えると、エポキシ樹脂組成物の硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす懸念がある。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じてバインダー樹脂を含有させることもできる。バインダー樹脂としては、ブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の含有量は、エポキシ樹脂化合物の硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、エポキシ樹脂の合計100質量部に対して通常0.05〜50質量部、好ましくは0.05〜20質量部が必要に応じて用いられる。
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤を含有させることができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら無機充填剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら無機充填剤の含有量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中において0〜95質量%が好ましい。また更に、本発明のエポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、顔料等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記変性液状エポキシ樹脂と、硬化剤と、必要に応じて適宜選択した各種成分とを、例えば、押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一に混合することにより得ることができる。また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、従来知られている方法と同様の方法により、上記エポキシ樹脂組成物を硬化することで容易に得ることができる。具体的には、上記変性液状エポキシ樹脂と、硬化剤と、必要に応じて適宜選択した各種成分とを、例えば、押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合しエポキシ樹脂組成物を得、そのエポキシ樹脂組成物を溶融した後、注型又はトランスファー成型機などを用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得ることができる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、上記したエポキシ樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、エポキシ樹脂組成物のワニスとし、次いでそのワニスをガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグをさらに熱プレス成形することにより得ることができる。なお、エポキシ樹脂組成物のワニスに使用される溶剤の使用量は、上記エポキシ樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70質量%であり、好ましくは15〜70質量%である。更に、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、上記エポキシ樹脂組成物を溶剤に溶解したまま、RTM(Resin Transfer Molding)方式にて、カーボン繊維等と複合体を形成したエポキシ樹脂組成物の硬化物として得ることもできる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物においては、上記した変性液状エポキシ樹脂をフィルム型のエポキシ樹脂組成物の改質剤として使用することができる。この場合、エポキシ樹脂の全体に占める変性液状エポキシ樹脂の含有率は、上記した通り、1〜30質量%であることが好ましい。上記変性液状エポキシ樹脂をフィルム型のエポキシ樹脂組成物の改質材として使用する場合、具体的には、B−ステージにおけるフレキ性等を向上させることができる。このようなフィルム型のエポキシ樹脂組成物は、上記したエポキシ樹脂組成物のワニスを剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去し、B−ステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得ることができる。このシート状接着剤は、多層基板などにおける層間絶縁層として使用することができる。
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物及びその硬化物は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が一般に使用される用途に使用することができ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止材等に使用することができ、更には、封止材、基板用のシアネート樹脂組成物やレジスト用硬化剤としてのアクリル酸エステル系樹脂等、他の樹脂等への添加剤等としても使用することができる。
上記接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
上記封止材としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSIなどに用いるポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TABなどに用いるポッティング封止、フリップチップなどに用いるアンダーフィル、QFP、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)などを挙げることができる。
<<実施例>>
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中、組成表示において、「部」は質量部を示す。また、エポキシ当量、水酸基当量、溶融粘度、軟化点及び2官能体純度は以下の方法で測定した。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中、組成表示において、「部」は質量部を示す。また、エポキシ当量、水酸基当量、溶融粘度、軟化点及び2官能体純度は以下の方法で測定した。
(1)エポキシ当量
JIS K 7236に準拠して、測定した。単位はg/eq.である。
JIS K 7236に準拠して、測定した。単位はg/eq.である。
(2)水酸基当量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの核体数のデータから算出した。
カラム:Shodex SYSTEM−21カラム KF−804L+KF−803L(×2本)
測定温度:40℃
連結溶離液:テトラヒドロフラン
FlowRate:1ml/min.
Detection:UV 254nm
検量線:Shodex製標準ポリスチレン使用
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの核体数のデータから算出した。
カラム:Shodex SYSTEM−21カラム KF−804L+KF−803L(×2本)
測定温度:40℃
連結溶離液:テトラヒドロフラン
FlowRate:1ml/min.
Detection:UV 254nm
検量線:Shodex製標準ポリスチレン使用
(3)軟化点
JIS K 7234に準拠して、測定した。
JIS K 7234に準拠して、測定した。
(4)溶融粘度
E型粘度計で測定した。単位はPa・sである。
E型粘度計で測定した。単位はPa・sである。
(5)2官能体純度
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、下記の条件で、2官能体純度(ビス(ヒドロキシフェニル)メタンの含有量)を求めた。なお、測定結果のデータは、面積%(G)で示す。
カラム:Shodex SYSTEM−21カラム KF−804L+KF−803L(×2本)
測定温度:40℃
連結溶離液:テトラヒドロフラン
FlowRate:1ml/min.
Detection:UV 254nm
検量線:Shodex製標準ポリスチレン使用
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、下記の条件で、2官能体純度(ビス(ヒドロキシフェニル)メタンの含有量)を求めた。なお、測定結果のデータは、面積%(G)で示す。
カラム:Shodex SYSTEM−21カラム KF−804L+KF−803L(×2本)
測定温度:40℃
連結溶離液:テトラヒドロフラン
FlowRate:1ml/min.
Detection:UV 254nm
検量線:Shodex製標準ポリスチレン使用
(フェノールアラルキル樹脂の合成例1)
温度計、冷却管、分留管、撹拌機を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、フェノール426部を仕込み、80℃に保持した後、4,4’−ビスクロロメチルビフェニル251部を4時間かけて分割添加した。さらに反応温度100℃にて4時間反応させた。副生する塩酸を反応系外に窒素雰囲気下で除去しながら、反応を行った。反応終了後、冷却し、トルエン300部を加え、水洗を行った後、油層からトルエン及び過剰のフェノールを加熱減圧下留去することによりフェノールアラルキル樹脂(PA1)を得た。なお、PA1の軟化点は63℃であり、水酸基当量は200g/eq.であった。
温度計、冷却管、分留管、撹拌機を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、フェノール426部を仕込み、80℃に保持した後、4,4’−ビスクロロメチルビフェニル251部を4時間かけて分割添加した。さらに反応温度100℃にて4時間反応させた。副生する塩酸を反応系外に窒素雰囲気下で除去しながら、反応を行った。反応終了後、冷却し、トルエン300部を加え、水洗を行った後、油層からトルエン及び過剰のフェノールを加熱減圧下留去することによりフェノールアラルキル樹脂(PA1)を得た。なお、PA1の軟化点は63℃であり、水酸基当量は200g/eq.であった。
(実施例1)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらビスフェノールF(ビス(ヒドロキシフェニル)メタン含有量 ≧99面積%(G),三井化学(株)製,BisF−ST)89.7部、合成例1で得られたフェノールアラルキル樹脂(PA1)46.9部(ここで、ビスフェノールFとフェノールアラルキル樹脂との仕込み比は、反応終了後のビスフェノールF型エポキシ樹脂(A)とフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(B)に換算した質量比(A:B)が7:3となるように調整した)、エピクロロヒドリン628部、メタノール66部を加え、撹拌下で溶解し、70℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム48.0部を90分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間反応を行った。反応終了後、水200部で水洗を行い、油層からロータリーエバポレーターを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン400部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30質量%の水酸化ナトリウム水溶液12部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下、メチルイソブチルケトン等を留去することにより、本発明の変性液状エポキシ樹脂(EP1)189部を得た。得られた変性液状エポキシ樹脂は、エポキシ当量が180g/eq.であり、30℃における粘度が9.5Pa・sであった。
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらビスフェノールF(ビス(ヒドロキシフェニル)メタン含有量 ≧99面積%(G),三井化学(株)製,BisF−ST)89.7部、合成例1で得られたフェノールアラルキル樹脂(PA1)46.9部(ここで、ビスフェノールFとフェノールアラルキル樹脂との仕込み比は、反応終了後のビスフェノールF型エポキシ樹脂(A)とフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(B)に換算した質量比(A:B)が7:3となるように調整した)、エピクロロヒドリン628部、メタノール66部を加え、撹拌下で溶解し、70℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム48.0部を90分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間反応を行った。反応終了後、水200部で水洗を行い、油層からロータリーエバポレーターを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン400部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30質量%の水酸化ナトリウム水溶液12部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下、メチルイソブチルケトン等を留去することにより、本発明の変性液状エポキシ樹脂(EP1)189部を得た。得られた変性液状エポキシ樹脂は、エポキシ当量が180g/eq.であり、30℃における粘度が9.5Pa・sであった。
(実施例2)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらビスフェノールF(ビス(ヒドロキシフェニル)メタン含有量 ≧99面積%(G),三井化学(株)製,BisF−ST)76.9部、合成例1で得られたフェノールアラルキル樹脂(PA1)62.5部(ここで、ビスフェノールFとフェノールアラルキル樹脂との仕込み比は、反応終了後のビスフェノールF型エポキシ樹脂(A)とフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(B)に換算した質量比(A:B)が6:4となるように調整した)、エピクロロヒドリン600部、メタノール60部を加え、撹拌下で溶解し、70℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム45.9部を90分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間反応を行った。反応終了後水200部で水洗を行い、油層からロータリーエバポレーターを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン400部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30質量%の水酸化ナトリウム水溶液11部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下、メチルイソブチルケトン等を留去することにより、本発明の変性液状エポキシ樹脂(EP2)190部を得た。得られた変性液状エポキシ樹脂は、エポキシ当量が190g/eq.であり、30℃における粘度が21.0Pa・sであった。
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらビスフェノールF(ビス(ヒドロキシフェニル)メタン含有量 ≧99面積%(G),三井化学(株)製,BisF−ST)76.9部、合成例1で得られたフェノールアラルキル樹脂(PA1)62.5部(ここで、ビスフェノールFとフェノールアラルキル樹脂との仕込み比は、反応終了後のビスフェノールF型エポキシ樹脂(A)とフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(B)に換算した質量比(A:B)が6:4となるように調整した)、エピクロロヒドリン600部、メタノール60部を加え、撹拌下で溶解し、70℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム45.9部を90分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間反応を行った。反応終了後水200部で水洗を行い、油層からロータリーエバポレーターを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン400部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30質量%の水酸化ナトリウム水溶液11部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下、メチルイソブチルケトン等を留去することにより、本発明の変性液状エポキシ樹脂(EP2)190部を得た。得られた変性液状エポキシ樹脂は、エポキシ当量が190g/eq.であり、30℃における粘度が21.0Pa・sであった。
(比較例1)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらビスフェノールF型エポキシ樹脂(RE−304S,日本化薬株式会社製エポキシ樹脂,エポキシ当量:180g/eq.,25℃における粘度:3900mPa・s)160部、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000,日本化薬株式会社製,エポキシ当量:277g/eq.)40部、メチルエチルケトン300部を加え、70℃で加熱溶融した。得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下、メチルエチルケトンを留去することにより、比較用のエポキシ樹脂(EP3)200部を得た。得られたエポキシ樹脂は、エポキシ当量が192g/eq.であり、30℃における粘度が10.1Pa・sであった。
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらビスフェノールF型エポキシ樹脂(RE−304S,日本化薬株式会社製エポキシ樹脂,エポキシ当量:180g/eq.,25℃における粘度:3900mPa・s)160部、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000,日本化薬株式会社製,エポキシ当量:277g/eq.)40部、メチルエチルケトン300部を加え、70℃で加熱溶融した。得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下、メチルエチルケトンを留去することにより、比較用のエポキシ樹脂(EP3)200部を得た。得られたエポキシ樹脂は、エポキシ当量が192g/eq.であり、30℃における粘度が10.1Pa・sであった。
(比較例2)
比較例1におけるビスフェノールF型エポキシ樹脂の使用量を140部に、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂の使用量を60部に変えた以外は、比較例1と同様に行い、比較用のエポキシ樹脂(EP4)200部を得た。得られたエポキシ樹脂は、エポキシ当量が245g/eq.であり、30℃における粘度が30.4Pa・sであった。
比較例1におけるビスフェノールF型エポキシ樹脂の使用量を140部に、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂の使用量を60部に変えた以外は、比較例1と同様に行い、比較用のエポキシ樹脂(EP4)200部を得た。得られたエポキシ樹脂は、エポキシ当量が245g/eq.であり、30℃における粘度が30.4Pa・sであった。
結果を下記に示す表1にまとめるが、実施例1と比較例2の比較から、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とフェノールアラルキル型エポキシ樹脂の混合比率が同じであっても、本発明の変性液状エポキシ樹脂(EP1)は、EP4に比べて粘度が低くなることが分かる。また、実施例1と比較例1の比較から、本発明の変性液状エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の粘度を同程度に合わせた場合、より多くのフェノールアラルキル型エポキシ樹脂骨格を導入することができることが分かる。
(実施例3〜4及び比較例3)
エポキシ樹脂として実施例1、実施例2及び比較例1のエポキシ樹脂EP1、EP2及びEP3と、硬化剤としてKAYAHARD MCD(日本化薬株式会社製,メチルナジック酸無水物)と、硬化触媒(硬化促進剤)としてイミダゾール系触媒(四国化成株式会社製,2E4MZ)を用い、表2に示す配合処方(質量部)で、本発明及び比較用のエポキシ樹脂組成物を調製した。
エポキシ樹脂として実施例1、実施例2及び比較例1のエポキシ樹脂EP1、EP2及びEP3と、硬化剤としてKAYAHARD MCD(日本化薬株式会社製,メチルナジック酸無水物)と、硬化触媒(硬化促進剤)としてイミダゾール系触媒(四国化成株式会社製,2E4MZ)を用い、表2に示す配合処方(質量部)で、本発明及び比較用のエポキシ樹脂組成物を調製した。
実施例3〜4及び比較例3のエポキシ樹脂組成物を使用して、注型法により樹脂成形体を調製し、120℃で2時間、更に150℃で6時間かけて硬化させ、硬化物を得た。
このようにして得られた硬化物の物性を、下記の方法で測定した。結果を表3に示す。
(6)ガラス転移温度(DMA)
JIS K 7244に準拠して、測定した。
JIS K 7244に準拠して、測定した。
(7)熱変形温度(HDT)
JIS K 7191に準拠して、測定した。
JIS K 7191に準拠して、測定した。
(8)IZOD衝撃試験
JIS K 6911に準拠して、測定した。
JIS K 6911に準拠して、測定した。
(9)吸湿率
直径5cm×厚み4mmの円盤状の試験片を85℃、湿度85%の条件下、72時間放置した後、該試験片の重量増加率(%)を求めた。
直径5cm×厚み4mmの円盤状の試験片を85℃、湿度85%の条件下、72時間放置した後、該試験片の重量増加率(%)を求めた。
(10)吸水率
直径5cm×厚み4mmの円盤状の試験片を100℃の水中で72時間煮沸した後、該試験片の重量増加率(%)を求めた。
直径5cm×厚み4mmの円盤状の試験片を100℃の水中で72時間煮沸した後、該試験片の重量増加率(%)を求めた。
表3から、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とフェノールアラルキル型エポキシ樹脂とを混合して得たエポキシ樹脂を用いた比較用のエポキシ樹脂組成物の硬化物と比べて、使用したエポキシ樹脂の粘度が同程度である場合(EP1とEP3)、その耐熱性を損なうことなく、靭性(IZOD)及び吸湿(水)性において優れた物性を有することが分かる。また、実施例4のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、実施例3のエポキシ樹脂組成物の硬化物に比べて、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂骨格の導入量が多く、吸水性及び耐熱性を向上させることができることが分かる。
(実施例5〜8)
反応終了後のビスフェノールF型エポキシ樹脂(A)とフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(B)に換算した質量比(A:B)を、下記の表4に示す質量比とした以外は、実施例1と同様にして反応を行い、本発明の変性液状エポキシ樹脂(EP5)〜(EP8)を得た。得られた変性液状エポキシ樹脂の樹脂物性を併せて表4に記載する。
反応終了後のビスフェノールF型エポキシ樹脂(A)とフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(B)に換算した質量比(A:B)を、下記の表4に示す質量比とした以外は、実施例1と同様にして反応を行い、本発明の変性液状エポキシ樹脂(EP5)〜(EP8)を得た。得られた変性液状エポキシ樹脂の樹脂物性を併せて表4に記載する。
(比較例4〜5)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂とフェノールアラルキル型エポキシ樹脂の質量比を、下記の表4に示す質量比とした以外は、比較例1と同様に行い、比較用のエポキシ樹脂(EP9)〜(EP10)を得た。得られたエポキシ樹脂の樹脂物性を併せて表4に記載する。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂とフェノールアラルキル型エポキシ樹脂の質量比を、下記の表4に示す質量比とした以外は、比較例1と同様に行い、比較用のエポキシ樹脂(EP9)〜(EP10)を得た。得られたエポキシ樹脂の樹脂物性を併せて表4に記載する。
(実施例9〜12及び比較例6)
エポキシ樹脂として実施例5〜8及び比較例4のエポキシ樹脂EP5〜9と、硬化剤としてKAYAHARD A−A(日本化薬株式会社製,エチルアニリンとホルムアルデヒドの重縮合物)を用い、表5に示す配合処方(質量部)で、本発明及び比較用のエポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物を使用して、注型法により樹脂成形体を調製し、120℃で2時間、更に150℃で6時間かけて硬化させ、硬化物を得た。
エポキシ樹脂として実施例5〜8及び比較例4のエポキシ樹脂EP5〜9と、硬化剤としてKAYAHARD A−A(日本化薬株式会社製,エチルアニリンとホルムアルデヒドの重縮合物)を用い、表5に示す配合処方(質量部)で、本発明及び比較用のエポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物を使用して、注型法により樹脂成形体を調製し、120℃で2時間、更に150℃で6時間かけて硬化させ、硬化物を得た。
また、硬化物性については、下記の方法で測定した。結果を表5に示す。
(11)ガラス転移温度(TMA、線膨張率)
JIS K 7244に準拠して、測定した。
JIS K 7244に準拠して、測定した。
(12)曲げ試験(曲げ強度、弾性率、最大点エネルギー)
JIS K 6911に準拠して、測定した。
JIS K 6911に準拠して、測定した。
表5の結果から、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とフェノールアラルキル型エポキシ樹脂とを混合して得たエポキシ樹脂を用いた比較用のエポキシ樹脂組成物の硬化物と比べて、同じ比率で配合されているものを比較した場合、耐熱性に優れ、低線膨張率であり、かつ曲げ試験における最大点エネルギーが大きく、撓みに対する耐性があり、靭性にすぐれる硬化物と言える。
Claims (6)
- ビスフェノール類とフェノールアラルキル樹脂との混合物をエピハロヒドリンと反応させ得られることを特徴とする変性液状エポキシ樹脂。
- 前記ビスフェノール類がビスフェノールFであることを特徴とする請求項1に記載の変性液状エポキシ樹脂。
- 前記ビスフェノール類とフェノールアラルキル樹脂との混合物は、フェノールアラルキル樹脂の占める割合が10〜70質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の変性液状エポキシ樹脂。
- 前記ビスフェノールFは、UV254nmでのゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより検出した2官能体純度が95面積%以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載の変性液状エポキシ樹脂。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の変性液状エポキシ樹脂及び硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
- 請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂組成物の硬化物。
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