JP5368707B2 - 液状エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、および硬化物 - Google Patents

液状エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、および硬化物 Download PDF

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Description

本発明は低粘度、低結晶性のハンドリング性の良好な液状エポキシ樹脂、該エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物及びその硬化物に関する。
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料、レジストなどの幅広い分野に利用されている。近年、特に半導体関連材料の分野においてはカメラ付き携帯電話、超薄型の液晶やプラズマTV、軽量ノート型パソコンなど軽・薄・短・小がキーワードとなるような電子機器があふれ、これによりエポキシ樹脂に代表されるパッケージ材料にも非常に高い特性が求められてきている。特に先端パッケージはその構造が複雑になり、液状封止でなくては封止が困難な物が増加している。例えばEnhanchedBGAのようなキャビティーダウンタイプの構造になっているものは部分封止を行う必要があり、トランスファー成型では対応できない。このようなことから高機能な液状エポキシ樹脂の開発が求められている。
またコンポジット材、車の車体や船舶の構造材として、近年、その製造法の簡便さからRTMが使用されている。このような組成物においてはカーボンファイバー等への含浸のされやすさから低粘度のエポキシ樹脂が望まれている。
従来、工業的に最も使用されている液状エポキシ樹脂としてはビスフェノールAにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物が知られている。しかしながら、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は物性的にバランスは取れているものの、粘度は高く、その硬化物の耐熱性、機械強度などにおいて不十分である点が指摘されている。
一般的に知られている液状エポキシ樹脂としてはもう一種、ビスフェノールFにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物が知られている。従来、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に比べ粘度が低いため、低粘度エポキシ樹脂が好適な分野においては重要な材料となっているが、未だその粘度は満足のいくものではなく、さらに低粘度のエポキシ樹脂が望まれている。
このような要求に対応できうるエポキシ樹脂としてビスフェノールF型のエポキシ樹脂の蒸留品がある。本化合物は分子蒸留により2核体のみが取り出されるため、非常に粘度が低い。しかしながら現実的には分子量がそろいすぎているために結晶性が高く、室温、冷蔵、いずれの条件においても結晶が析出し、結晶塊となってしまう。そこで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を数重量%添加し、結晶性を低下させた化合物も市販されているが、それでも結晶化を抑えることはできず、冷蔵(例えば5℃)であっても、1週間程度の保存で、結晶塊となってしまう。
別のアプローチとして、構造をパラ配向に制御した4,4’−ビス(ヒドロキシフェニル)メタンをエポキシ化した物があるが、同様に粘度は低下するものの結晶性が高すぎるため、性状を液状に保つことが難しく、保存中に結晶化してしまう。
また、4,4’−ビス(ヒドロキシフェニル)メタン骨格にメチル基を導入することにより結晶性を低下させることが試みられているが(特許文献1)、このような場合、得られるエポキシ樹脂の反応性が低下する恐れがある。
このようなことから低粘度でかつ結晶性の低いビスフェノールF型エポキシ樹脂の開発が望まれている。
特開昭61−112066号公報
本発明は低粘度、低結晶性のビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を提供することを目的とする。
本発明者らは前記したような実状に鑑み、耐熱性、機械強度が高い硬化物を与える液状芳香族エポキシ樹脂を求めて鋭意検討した結果、特定の分子構造を含有することで低粘度、低結晶性のビスフェノールF型液状エポキシ樹脂が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、
(1)ビスフェノールF型のエポキシ樹脂であって、5℃の温度条件下1週間以上液状を保ち、かつ、その粘度が25℃において500〜2000mm/s(ウベローデ粘度計)であることを特徴とするエポキシ樹脂、
(2)式(1)
Figure 0005368707
で表される骨格のエポキシ樹脂がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;UV 254nmで検出したときの面積%)で0〜5面積%であり、式(2)
Figure 0005368707
(式中、Xは水素原子またはグリシジル基を表す。)
で表される骨格のエポキシ樹脂の含有量がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;UV 254nm)で検出したときの面積%で0面積%を越え、20面積%以下である上記(1)に記載のエポキシ樹脂、
(3)ジグリシジルエーテルの含有量がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;UV 254nmで検出)で測定したときの面積%で95面積%以上である上記(1)または(2)に記載のエポキシ樹脂、
(4)下記式
Figure 0005368707
(式中 Gはグリシジル基を示す。)
で表される化合物A、B、Cの含有量(高速液体クロマトグラフィー(HPLC;UV 274nmで検出)で測定したときの面積%)および前記式(1)、(2)で表される化合物の含有量(前記GPC条件で測定した面積%)が下記式(α)
5≦{(2)−(1)}×{B/(A+C)}≦15 ・・・ (α)
A ;化合物Aの含有量
B ;化合物Bの含有量
C ;化合物Cの含有量
(1);式(1)で表される化合物の含有量
(2);式(2)で表される化合物の含有量
を満たす上記(1)に記載のエポキシ樹脂、
(5)2官能体純度が95面積%(GPC;UV 254nmで検出)以上であることを特徴とするビスフェノールFをグリシジル化して得られる上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂、
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂及び硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物、および
(7)上記(6)に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、
に関する。
本発明のエポキシ樹脂は低粘度かつ低結晶性の液状樹脂である。本発明のエポキシ樹脂は、従来取り扱いが煩雑であった低粘度ビスフェノールF型エポキシ樹脂に較べ、非常に扱いやすく有用な樹脂である。
本発明のビスフェノールF型エポキシ樹脂は、特定のビスフェノールFとエピハロヒドリンとを塩基性条件下、グリシジルエーテル化を行うことで得られる。製法については後述するが、本発明のエポキシ樹脂はその粘度が25℃において500〜2000mm/s(ウベローデ粘度計)、好ましくは750〜1950mm/s、更に好ましくは1000〜1900mm/sであるだけでなく、得られたエポキシ樹脂を冷蔵(例えば5℃)や冷凍(例えば−5℃)で1週間も放置しても結晶の析出は見られない。
本発明は、特定のビスフェノールFを原料として使用し、特定の骨格への制御、特定の分子量分布を持たせるということを行うことで低粘度化、低結晶化を両立させたものである。
本発明において使用する特定のビスフェノールFとは式(3)
Figure 0005368707
(式中、nは繰り返し数を示す。)
においてn≧1の化合物の量を5面積%以下、好ましくは2面積%以下、更に好ましくは検出限界以下(通常1面積%以下)にした化合物である(GPC;UV 254nmで検出、以下、特に指定の無い限り面積%はGPCでの測定値を示す。)。通常市販されているビスフェノールFは実質的に前記式(3)の構造式においてn≧1の化合物を5.5〜9.0面積%含有する。本発明においては式(3)の構造式においてn≧1の化合物の含有割合が5面積%以下、好ましくは2面積%以下、更に好ましくは検出限界以下(通常1面積%以下)であるビスフェノールFを使用し、グリシジル化することを特徴とする。式(3)におけるn≧1の化合物の割合を少なくすることで、式(3)におけるn=0の化合物の割合(つまり、2官能体純度)が高まり、結果として該n=0の化合物のグリシジルエーテル体の量が多くなる。
また、本発明のエポキシ樹脂は、そのメチレン基の結合位置について、下記のような特定の条件を満たすことを特徴とするエポキシ樹脂でもある。
すなわちエポキシ樹脂中の構造が、パラ配向性が強くても、オルト配向性が強くても、その結晶性が強くなり、貯蔵安定性に悪影響を及ぼす。
例えば、本発明のエポキシ樹脂中に含まれる、下記式
Figure 0005368707
(式中 Gはグリシジル基を示す。)
で表される化合物A、B及びCの含有量(高速液体クロマトグラフィー(HPLC;UV 274nmで検出)で測定したときの面積%)につき、本発明者らが得た知見は以下のとおりである。
分子骨格内に特に式Bの化合物が多いことが結晶性の低下に寄与する。しかしながらトータルの物性を考慮した場合、例えば硬化物の耐熱性(弾性率の保持)は式Aの化合物が多いことが好ましく、また、例えば耐湿性は、式Cの化合物がある程度含有されていることが好ましい。このようなことからA、B、Cの構造の含有割合のバランスを適度な範囲に保つことが好ましい。
また、前述のように式(3)において、n≧1の化合物の含有量を低下させた(つまり、2官能体純度を高めた)ビスフェノールFを使用する結果、得られるエポキシ樹脂は下記式(1)
Figure 0005368707
で表される化合物の含有量が低下し、好ましくは0〜5面積%、より好ましくは0〜2面積%、さらに好ましくは検出限界以下(通常は1面積%以下)となる。この含有量は、通常ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定可能であるが、高速液体クロマトグラフィーでも測定可能で、通常、前者の測定値に対して、後者の測定値が約0.5〜3ポイント低く測定される。また、結晶性の観点から上記式(2)のエポキシ樹脂の含有量は比較的多い方が好ましい。
このように、メチレン基の結合位置と低分子量物の含有割合を考慮すると、本発明のエポキシ樹脂は、両者が下記式(α−1)の関係を満たすものが好ましく、式(α−2)の関係を満たすものが特に好ましい。
5≦{(2)−(1)}×{B/(A+C)}≦15・・・ (α−1)
5≦{(2)−(1)}×{B/(A+C)}≦10・・・ (α−1)
A ;化合物Aの含有量
B ;化合物Bの含有量
C ;化合物Cの含有量
(1);式(1)で表される化合物の含有量
(2);式(2)で表される化合物の含有量
*A〜Cは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC;UV 274nmで検出)で測定したときの面積%。
(1)及び(2)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;UV 254nmで検出)で測定したときの面積%。
例えば結晶性という観点から見た場合、式α−1の値が5を下回ると結晶性が高くなったり、粘度が高くなりすぎたりする場合がある。また、15を越えると粘度が高くなりすぎる場合があり、特に下記式(α’)を満たすものが低粘度であり好ましい。
5≦{(2)−(1)}×{B/(A+C)}≦10 ・・・ (α’)
A ;化合物Aの含有量
B ;化合物Bの含有量
C ;化合物Cの含有量
(1);式(1)で表される化合物の含有量
(2);式(2)で表される化合物の含有量
*A〜C、(1)及び(2)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC;UV 274nmで検出)で測定したときの面積%。
つぎに、本発明のエポキシ樹脂における、特定の骨格の分子量分布について説明する。
本発明のエポキシ樹脂は、式(4)
Figure 0005368707
(式中、Xは水素原子またはグリシジル基を表す。また、nは繰り返し数であり、1〜5の数値を表す。)
に示される骨格のエポキシ樹脂を含有することを特徴とする。このうち本発明のエポキシ樹脂では、n=1の化合物(つまり、式(2)のエポキシ樹脂)が0面積%を超え、20面積%以下含有されているもの、好ましくは2〜20面積%、さらに好ましくは8〜15面積%含有されているものが好ましい。この含有量は、通常ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定可能であるが、高速液体クロマトグラフィーでも測定可能で、通常、前者の測定値に対して、後者の測定値が約0.5〜3ポイント低く測定される。また、本発明のエポキシ樹脂において、前記式(4)の成分中でn=1及び2の化合物が主成分であるものが好ましく、このうちXが水素原子であるジグリシジルエーテルが主成分であるものが特に好ましい。
本発明のエポキシ樹脂では、ジグリシジルエーテル(つまり式(4)において、全てのXが水素原子である化合物と化合物A、B、C)の含有量が80面積%以上、好ましくは90面積%以上、さらに好ましくは95面積%以上含有しているものが好ましい。しかしながら、ジグリシジルエーテルよりも硬化性を向上させる目的には、Xがグリシジル基となるように、グリシジルエーテル体のアルコール性水酸基をグリシジル化することもできる。また、式(4)のn=0の化合物(つまり化合物A、B、C)が高速液体クロマトグラフィーによる測定で、85面積%以上、好ましくは85〜95面積%である本発明のエポキシ樹脂は、粘度の点で特に好ましいものとなる。
前述のように本発明で原料として使用するビスフェノールFは前記式(3)のオリゴフェノール体の含有量が少ないため、高純度にグリシジル化を行うとビス(グリシジルオキシフェニル)メタンのみとなり、蒸留品同様、結晶性において問題が生じる場合がある。このような場合、かかる問題を前記式(4)のエポキシ樹脂の含有量を多くすることで解決できる。なお、通常のビスフェノールF型のエポキシ樹脂は前記式(3)のオリゴフェノール体のグリシジル化物も存在するため、結晶性は低下するものの、粘度が非常に高くなる。
以下に本発明のエポキシ樹脂の合成方法の一例を記載する。
本発明のエポキシ樹脂は前述のビスフェノールFを使用し、エピハロヒドリンと反応させることでグリシジル化する。主にエピハロヒドリンとアルカリ金属水酸化物の使用量が前記式(4)の構造の導入率を決めるファクターとなる。すなわち、ビスフェノールFの水酸基に対して、エピハロヒドリンの使用量が少ないと、式(4)において、nが大きい化合物の含有量が高くなり、また、アルカリ金属水酸化物の使用量が多くてもnが大きい化合物の含有量が高くなる。また、エピハロヒドリンの使用量が少なすぎると反応中の粘度上昇や暴走反応、ゲル化の恐れがある。アルカリ金属水酸化物の使用量が多すぎると、硬化物性に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明のエポキシ樹脂の原料となるビスフェノールF(以下、原料ビスフェノールFという)は、前記したとおり、式(3)のオリゴフェノール体の含有量が少ないものであるが、本発明のエポキシ樹脂のもう一方の側面である、式A、B、Cの化合物が特定の範囲にあるエポキシ樹脂を得るためには、下記式
Figure 0005368707
で表される化合物イ、ロ及びハの含有量(高速液体クロマトグラフィー(HPLC;UV 254nmで検出)で測定したときの面積%)が特定の範囲にあるビスフェノールFを使用する。すなわち、異性体イの含有量+異性体ハの含有量が2×異性体ロの含有量以下となる原料を使用する。
このような範囲の異性体の含有割合とするには、公知の方法が適応でき、例えば一般にビスフェノールFを調製する際の酸触媒の酸性度、温度等を適宜調整すればよい。すなわち、酸性度が高いほどパラ配向性が強くなり、弱いほどオルソ配向性が強くなる。また、さらに温度に関して言えば高温での反応はオルソ配向性が強くなり、低温での反応はパラ配向性が強くなる。
具体的には、例えば、特開2005−75938号公報に記載の方法や第55回ネットワークポリマー講演討論会 講演要旨集p53−56に記載の方法が適応可能である。
また、例えば、三井ファインケミカル株式会社製BisF−ST、本州化学工業株式会社製BPF−D等の市販品も入手可能である。
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において、エピハロヒドリンとしてはエピクロルヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン、γ-メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が使用でき、本発明においては工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量は原料ビスフェノールFの水酸基1モルに対し通常2〜20モル、好ましくは4〜10モルである。
上記反応において使用しうるアルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、固形物を利用してもよく、その水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に、減圧下または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液して水を除去し、エピハロヒドリンを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量は原料ビスフェノールFの水酸基1モルに対して通常0.3〜2.5モルであり、好ましくは0.5〜2.0モル、より好ましくは0.8〜1.3モルである。
反応を促進するためにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加することは好ましい。4級アンモニウム塩の使用量としては原料ビスフェノールFの水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。
この際、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが反応進行上好ましい。
アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの使用量に対し通常2〜50重量%、好ましくは4〜20重量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの使用量に対し通常5〜100重量%、好ましくは10〜80重量%である。
反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収したエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用した原料ビスフェノールFの水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下にて溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂が得られる。
また場合によっては前記式(2)の化合物量を調整するために、得られたエポキシ樹脂に対し、原料ビスフェノールFをさらに反応させる、または過剰の原料ビスフェノールF中、少量のエピハロヒドリンを添加し、1、3−ジオキシ−2−プロパノール結合を予め形成した後、前記処方によりグリシジル化するという方法なども使用することができる。さらにはこのようにして得られたアルコール性水酸基含有エポキシ樹脂を再度グリシジル化することでアルコール性水酸基のグリシジル化率を上げることもできる。
得られたエポキシ樹脂は各種樹脂原料として使用できる。例えばエポキシアクリレートおよびその誘導体、オキサゾリドン系化合物、環状カーボネート化合物等が挙げられる。
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について記載する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は本発明のエポキシ樹脂及び、硬化剤を必須成分として含有する。本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂は単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。併用する場合、本発明のエポキシ樹脂の全エポキシ樹脂中に占める割合は30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。ただし、本発明のエポキシ樹脂をエポキシ樹脂組成物の改質剤として使用する場合は、1〜30重量%の割合で添加する。
本発明のエポキシ樹脂と併用し得る他のエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。用いうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、本発明のフェノール樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体、テルペンとフェノール類の縮合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、硬化剤とともに硬化触媒を併用しても差し支えない。用い得る硬化触媒の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤を用いる場合は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量はリン含有化合物/エポキシ樹脂=0.1〜0.6(重量比)が好ましい。0.1以下では難燃性が不十分であり、0.6以上では硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす懸念がある。
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としては、ブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、樹脂総重量100重量部に対して通常0.05〜50重量部、好ましくは0.05〜20重量部が必要に応じて用いられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤の含有量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中において0〜95重量%を占める量が用いられる。更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、顔料等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば本発明のエポキシ樹脂と硬化剤並びに必要により硬化触媒、リン含有化合物、バインダー樹脂、無機充填材及び配合剤とを必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物を得、そのエポキシ樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファー成型機などを用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することにより本発明の硬化物を得ることができる。
また本発明のエポキシ樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、エポキシ樹脂組成物ワニスとし、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。また液状組成物のままRTM方式でカーボン繊維を含有するエポキシ樹脂硬化物を得ることもできる。
また本発明のエポキシ樹脂をフィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的にはB−ステージにおけるフレキ性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物を得る場合は、本発明のエポキシ樹脂組成物を剥離フィルム上に前記ワニスを塗布し加熱下で溶剤を除去、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤を得る。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することが出来る。
更に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される一般の用途が挙げられ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止材の他、封止材、基板用のシアネート樹脂組成物や、レジスト用硬化剤としてアクリル酸エステル系樹脂等、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
封止剤としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSI用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TAB用といったポッティング封止、フリップチップ用のアンダーフィル、QFP、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)などを挙げることができる。
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において「部」は特に断わりのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また実施例において、軟化点、エポキシ当量、粘度、および面積%は以下の条件で測定した。
・軟化点
JIS K−7234に記載された方法で測定した。
・エポキシ当量
JIS K−7236に記載された方法で測定し、単位はg/eqである。
・粘度
JIS K−2283の記載に準じて測定した。
・面積%
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(測定結果データには面積%(G)で示す)
カラム:Shodex SYSTEM−21カラム KF−804L+KF−803L(×2本) 40℃
連結溶離液:テトラヒドロフラン
FlowRate:1ml/min.
Detection:UV 254nm
検量線:Shodex製標準ポリスチレン使用
(2)高速液体クロマトグラフィー(測定結果データは面積%(H)で示す)
カラム:Intersil ODS−2,5μm,2.1×250mm 40℃
MobilPhaseA:アセトにトリル(AN)
MobilPhaseB:水(W)
TimeProgram:
0−20min.AN/W=50%/50%→90%/10%
20−40min.AN/W=90%/10%
FlowRate:0.2mL/min.
Detection:UV 254nm, TOF MS
実施例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらビスフェノールF(三井ファインケミカル株式会社製BisF−ST(ビス(ヒドロキシフェニル)メタン含有量 ≧99面積%(GPCにて測定)、異性体イ;28面積%、ロ;51面積%、ハ;19面積%(異性体イ、ロ、ハ共にHPLCにて測定)))100部、エピクロロヒドリン555部、メタノール56部を加え、撹拌下で溶解し、70℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム41部を90分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間、反応を行った。反応終了後、水300部で水洗を行い、油層からロータリーエバポレーターを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン600部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂(EP1)147部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は167g/eq.、25℃における粘度は1036mm/s(ウベローデ粘度計 25℃)であった。
実施例2
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらビスフェノールF(BisF−ST)100部、エピクロロヒドリン555部、ジメチルスルホキシド140部を加え、撹拌下で溶解し、40℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム41部を90分かけて分割添加した後、40℃で2時間、更に70℃で1時間、反応を行った。反応終了後、水300部で水洗を行い、油層からロータリーエバポレーターを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン600部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で48重量%の水酸化ナトリウム水溶液5部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂(EP2)140部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は164g/eq.、25℃における粘度は1670mm/s(ウベローデ粘度計 25℃)であった。
実施例3
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらビスフェノールF(BisF−ST)100部、t−ブタノール100部、エピクロロヒドリン1部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液1部を加え、80℃で1時間撹拌し、部分的に1、3−ジオキシ−2−プロパノール結合を形成させた。さらに40℃まで冷却後、エピクロロヒドリン925部を加え、70℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム40部を90分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間、反応を行った。反応終了後、水300部で水洗を行い、油層からロータリーエバポレーターを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン600部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で48重量%の水酸化ナトリウム水溶液5部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂(EP3)137部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は168g/eq.、25℃における粘度は1645mm/s(ウベローデ粘度計 25℃)であった。
比較例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらビスフェノールF(ビス(ヒドロキシフェニル)メタン含有量 93面積%(GPCにて測定))100部、エピクロロヒドリン555部、ジメチルスルホキシド140部を加え、撹拌下で溶解し、40℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム41部を90分かけて分割添加した後、40℃で2時間、更に70℃で1時間、反応を行った。反応終了後、水300部で水洗を行い、油層からロータリーエバポレーターを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン600部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で48重量%の水酸化ナトリウム水溶液5部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで目的とするエポキシ樹脂(EP4)142部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は170g/eq.、25℃における粘度は4520mm/s(ウベローデ粘度計 25℃)であった。
比較例2
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらビスフェノールF(4、4’−ビス(ヒドロキシフェニル)メタン 含有量 ≧99面積%(GPCにて測定))100部、エピクロロヒドリン555部、ジメチルスルホキシド140部を加え、撹拌下で溶解し、40℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム41部を90分かけて分割添加した後、40℃で2時間、更に70℃で1時間、反応を行った。反応終了後、水300部で水洗を行い、油層からロータリーエバポレーターを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン600部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で48重量%の水酸化ナトリウム水溶液5部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで比較用のエポキシ樹脂(EP5)140部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は163g/eq.、25℃における粘度は測定中に結晶化してしまったため正確には測定できなかった(ただし500〜1000mm/s)。
比較例3
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらビスフェノールF(2、2’−ビス(ヒドロキシフェニル)メタン 含有量 ≧99面積%(GPCにて測定))100部、エピクロロヒドリン555部、ジメチルスルホキシド140部を加え、撹拌下で溶解し、40℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム41部を90分かけて分割添加した後、40℃で2時間、更に70℃で1時間、反応を行った。反応終了後、水300部で水洗を行い、油層からロータリーエバポレーターを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン600部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で48重量%の水酸化ナトリウム水溶液5部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液をロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで比較用のエポキシ樹脂(EP6)129部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は166g/eq.、25℃における粘度は結晶化のため測定できなかった。融点は70℃(DSC法)であった。
試験例1〜10
前記、実施例、比較例およびその混合体、さらにビスフェノールF型エポキシ樹脂の分子蒸留体についてその貯蔵安定性(結晶性)について評価を行った結果を下記表2に示す。
Figure 0005368707
実施例4、比較例4
エポキシ樹脂として実施例1、比較例2で得られたエポキシ樹脂EP1、EP4、硬化剤としてKAYAHARD A−A(PT)(日本化薬製 ビス(3−エチル−4−アミノフェニル)メタン)を表3に示す割合(重量部)で配合した。
Figure 0005368707
実施例4、比較例4について注型法により樹脂成形体を調製し、120℃で2時間、更に150℃で6時間かけて硬化させた。
このようにして得られた硬化物の物性を測定した結果を表4に示す。
尚、物性値の測定は以下の方法で行った。
・ガラス転移温度(TMA):真空理工(株)製 TM−7000
昇温速度 2℃/min.(値:1の位を四捨五入)
・IZOD衝撃試験:JIS K−6911に準拠。
Figure 0005368707
表4より本発明の硬化物は、比較用の硬化物に比べその耐熱性を損なうことなく、靭性(IZOD)において優れた物性を有することがわかる。
本発明のエポキシ樹脂を含む本発明のエポキシ樹脂組成物は電気・電子材料、成型材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジスト、光学材料などの広範囲の用途にきわめて有用である。

Claims (5)

  1. 式(1)
    Figure 0005368707
    で表される骨格のエポキシ樹脂がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;UV 254nm)で検出したときの面積%で0〜5面積%であり、式(2)
    Figure 0005368707
    (式中、Xは水素原子またはグリシジル基を表す。)
    で表される骨格のエポキシ樹脂の含有量がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;UV 254nm)で検出したときの面積%で0面積%を越え、20面積%以下であり、ビス(グリシジルオキシフェニル)メタンが高速液体クロマトグラフィー(HPLC;UV 274nm)で検出したときの面積%で89.4以上であり、下記式
    Figure 0005368707
    (式中 Gはグリシジル基を示す。)
    で表される化合物A、B、Cの含有量(高速液体クロマトグラフィー(HPLC;UV 274nm)で検出したときの面積%)および前記式(1)、(2)で表される化合物の含有量(前記GPC条件で測定した面積%)が下記式(α)
    5≦{(2)−(1)}×{B/(A+C)}≦10 ・・・ (α)
    A ;化合物Aの含有量
    B ;化合物Bの含有量
    C ;化合物Cの含有量
    (1);式(1)で表される化合物の含有量
    (2);式(2)で表される化合物の含有量
    を満たすビスフェノールF型のエポキシ樹脂であって、5℃の温度条件下1週間以上液状を保ち、かつ、その粘度が25℃において500〜2000mm/s(ウベローデ粘度計)であることを特徴とするエポキシ樹脂。
  2. ジグリシジルエーテルの含有量がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;UV 254nmで検出)で測定したときの面積%で95面積%以上である請求項に記載のエポキシ樹脂。
  3. 2官能体純度が95面積%(GPC;UV 254nmで検出)以上であるビスフェノールFをグリシジル化して得られる請求項1または2に記載のエポキシ樹脂。
  4. 式(1)
    Figure 0005368707
    で表される骨格のエポキシ樹脂がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;UV 254nm)で検出したときの面積%で0〜5面積%であり、式(2)
    Figure 0005368707
    (式中、Xは水素原子またはグリシジル基を表す。)
    で表される骨格のエポキシ樹脂の含有量がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;UV 254nm)で検出したときの面積%で0面積%を越え、20面積%以下であり、下記式
    Figure 0005368707
    (式中 Gはグリシジル基を示す。)
    で表される化合物A、B、Cの含有量(高速液体クロマトグラフィー(HPLC;UV 274nm)で検出したときの面積%)および前記式(1)、(2)で表される化合物の含有量(前記GPC条件で測定した面積%)が下記式(α)
    5≦{(2)−(1)}×{B/(A+C)}≦10 ・・・ (α)
    A ;化合物Aの含有量
    B ;化合物Bの含有量
    C ;化合物Cの含有量
    (1);式(1)で表される化合物の含有量
    (2);式(2)で表される化合物の含有量
    を満たすビスフェノールF型のエポキシ樹脂及び硬化剤を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
  5. 請求項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
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