JPWO2007132852A1 - 難水溶性医薬 - Google Patents

難水溶性医薬 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2007132852A1
JPWO2007132852A1 JP2007554780A JP2007554780A JPWO2007132852A1 JP WO2007132852 A1 JPWO2007132852 A1 JP WO2007132852A1 JP 2007554780 A JP2007554780 A JP 2007554780A JP 2007554780 A JP2007554780 A JP 2007554780A JP WO2007132852 A1 JPWO2007132852 A1 JP WO2007132852A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
drug
microchannel
laser light
administration
poorly water
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2007554780A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4204634B2 (ja
Inventor
加藤 弘之
弘之 加藤
勲 梅田
勲 梅田
和男 渡邉
和男 渡邉
平田 和也
和也 平田
明夫 石黒
明夫 石黒
徹 呉
徹 呉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ebara Corp
Original Assignee
Ebara Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ebara Corp filed Critical Ebara Corp
Application granted granted Critical
Publication of JP4204634B2 publication Critical patent/JP4204634B2/ja
Publication of JPWO2007132852A1 publication Critical patent/JPWO2007132852A1/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/14Particulate form, e.g. powders, Processes for size reducing of pure drugs or the resulting products, Pure drug nanoparticles
    • A61K9/141Intimate drug-carrier mixtures characterised by the carrier, e.g. ordered mixtures, adsorbates, solid solutions, eutectica, co-dried, co-solubilised, co-kneaded, co-milled, co-ground products, co-precipitates, co-evaporates, co-extrudates, co-melts; Drug nanoparticles with adsorbed surface modifiers
    • A61K9/146Intimate drug-carrier mixtures characterised by the carrier, e.g. ordered mixtures, adsorbates, solid solutions, eutectica, co-dried, co-solubilised, co-kneaded, co-milled, co-ground products, co-precipitates, co-evaporates, co-extrudates, co-melts; Drug nanoparticles with adsorbed surface modifiers with organic macromolecular compounds
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/33Heterocyclic compounds
    • A61K31/395Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins
    • A61K31/435Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins having six-membered rings with one nitrogen as the only ring hetero atom
    • A61K31/44Non condensed pyridines; Hydrogenated derivatives thereof
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/48Preparations in capsules, e.g. of gelatin, of chocolate
    • A61K9/50Microcapsules having a gas, liquid or semi-solid filling; Solid microparticles or pellets surrounded by a distinct coating layer, e.g. coated microspheres, coated drug crystals
    • A61K9/51Nanocapsules; Nanoparticles
    • A61K9/5107Excipients; Inactive ingredients
    • A61K9/513Organic macromolecular compounds; Dendrimers
    • A61K9/5161Polysaccharides, e.g. alginate, chitosan, cellulose derivatives; Cyclodextrin
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Optics & Photonics (AREA)
  • Nanotechnology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

平均直径50〜200nmの粒子状の難水溶性医薬、及びこの粒子状の難水溶性医薬と高分子電解質との平均直径50〜250nmの粒子状コンプレックス。

Description

本発明は、難水溶性の極微粒子状医薬、それと高分子電解質とのコンプレックスに関する。更に詳しくは、本発明は、レーザビームを照射することによって粒子を微粒子化した医薬の極微粒子、および極微粒子−高分子電解質コンプレックスに関する。
本願は、2006年5月15日に日本に出願された、特願2006−135677号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
溶媒に難溶性の医薬、例えば抗癌剤等の一部の医薬品は、難水溶性のため細胞に吸収され難く、バイオアベイラビリテイー(Bioavailability)が低い。そのため、注射剤として用いるために、難水溶性医薬品の溶解度を高めて水に溶けやすくしてバイオアベイラビリテイーを向上させる目的で溶解補助剤を用いることが多いが、この溶解補助剤の毒性が問題であった。
溶解補助剤を用いないで、難水溶性医薬品の細胞取り込み効率を向上させるためには、医薬品が患部の細胞膜を通過し易いサイズまで極微粒子化すればよい。このサイズは、凡そ200nm以下とされている。
有機物質について、微粒子化することによって、興味深い特性の向上・変化が期待されることから、有機化合物の微粒子化方法が提案されている。例えば、溶媒中に分散させた有機化合物にレーザ光を照射することによって有機化合物の微粒子を製造する方法が開示されている(例えば特許文献1を参照)。特許文献1に開示される方法は、有機化合物に、吸収帯波長の光を照射することにより、分子構造中の比較的に弱い化学結合部にて光線形吸収により熱応力破壊が生じて、微粒子を生成するものであり、同時に、一部、電子励起状態を経由して光化学反応が生じ、有機化合物の分解が起きるおそれがある。特に、有機化合物が、体内に投与する医薬品の場合に、その分解生成物が生体に悪影響を与えるおそれがあるため、このような事態は極力避けなければならない。
特許文献1に開示される方法を改良するために、被処理液中の有機化合物にその吸光帯より長い波長のレーザ光を被処理液に照射し、有機化合物を微粒子化する、微粒子の製造方法が提案された(例えば特許文献2を参照)。また、貧溶媒に分散させた有機バルク結晶に、超短パルスレーザを照射することにより非線形吸収によりアブレーションを誘起して有機バルク結晶を粉砕することによる、極微粒子の製造方法が提案された(例えば特許文献3を参照)。
これらの方法は、透明容器中に溶媒分散された有機化合物の粗粒子紛に外部から吸光帯より長い波長のレーザ光又は超短パルスレーザを照射して有機化合物を溶媒中で粉砕する方法である。これらの方法は、吸収帯波長の光を線形吸収させる方法に比べれば、比較的に温和な有機化合物の微粒子化が可能になり、有機化合物の分解が起きるおそれも比較的に少ないことから、少量の難溶性有機化合物、特に薬物の極微粒子化には、適した方法であると述べられている。
しかし、レーザ光照射による粉砕原理は、パルス入熱による短時間加熱に起因する熱応力破壊と想定されているが、薬物に変質を起こさずに極微粒子化するためには、薬物のレーザエネルギー吸収特性とレーザ照射時間の設定とが重要なパラメータとなる。バッチ方式は、薬物が容器内溶媒中に分散、攪拌されている状態でレーザビーム照射を行うため、レーザ光照射時間の設定や分散粒子にレーザを均一に照射する等の条件の制御が困難である。例えば、ある粒子は、レーザビーム照射を何回も受けたり、他の粒子は、レーザビーム照射を1回も受けなかったりして、粒度が目標とする均一な範囲に入りかつ変質のないバイオアベイラビリテイーの高い極微粒子薬物を工業レベルで生産するには至っていない。
特開2001−113159号公報 特開2004−267918号公報 特開2005−238342号公報
本発明の目的は、粒度が目標とする均一な範囲に入りかつ薬効に変化のないバイオアベイラビリテイーの高い、難水溶性粒子状抗医薬、およびこのような難水溶性粒子状医薬と高分子電解質とのコンプレックスを提供することである。
本発明者等は、上述した課題を解決すべく鋭意検討したところ、レーザアブレーション式極微粒子製造技術を用い、レーザ光照射条件を微細に制御することにより前記課題を達成できることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、以下の1〜10の発明が提供される。
1.平均直径50〜200nmの粒子状の難水溶性医薬。
2.構造中に多重結合を1個以上有する、前記1記載の難水溶性医薬。
3.医薬が抗癌剤である、前記1又は2記載の難水溶性医薬。
4.抗癌剤がカンプトテシン誘導体である、前記3記載の難水溶性医薬。
5.抗癌剤がエリプチシン誘導体である、前記3記載の難水溶性医薬。
6.抗癌剤がポドフィロトキシン誘導体である、前記3記載の難水溶性医薬。
7.前記1〜6のいずれか一記載の粒子状の難水溶性医薬と高分子電解質との平均直径50〜250nmの粒子状コンプレックス。
8.高分子電解質が、プロタミン、ゲラチンA、コラーゲン、アルブミン、カゼイン、キトサン、ポリ−(L)−リジン、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ヘパリン、ヒアルロニックアシッド、コンドロイチンサルフェート、ゲラチンB、カラギーナン、デキストランサルフェート、ポリ−(L)−グルタミックアシッドその他の生体適合性高分子、生分解性高分子、DNA、RNA、酵素若しくは抗体その他の生体高分子、ポリメタクリリックアシッド、ポリジアリールジメチルアンモニウム又はその他の合成高分子又はそれらが適当なリンカーでクロスリンクされた高分子からなる群より選ばれた、前記7記載のコンプレックス。
本発明の極微粒子状医薬、それと高分子電解質とのコンプレックスは、安定な汚染フリーの優れたコロイド分散液として調製可能であり、各種注射剤に対応できる。そのため、本発明の極微粒子状医薬、それと高分子電解質とのコンプレックスは、直接血管内に注入させることができる。経口投与の場合には、難水溶性のため吸収率が低いことから体内に少量しか移動できなかったり、胃液や酵素等によって薬物が変質し、効果が消失してしまうのに比べて、本発明の薬物は、血管内に注入され、非常に速いスピードで輸送が行われ、投与部位から目的部位への薬物の到達が非常に速い。
本発明の極粒子状医薬、特に抗癌剤、それと高分子電解質とのコンプレックスは、血管内皮細胞の組織間隙が比較的に狭い正常の血管内皮細胞を通過し難いが、血管内皮細胞の組織間隙が比較的に広く、粗い癌細胞から伸びる血管内皮細胞を容易に通過して、癌細胞に吸収される。このように、本発明の極微粒子状抗医薬、それと高分子電解質とのコンプレックスは、目的部位への輸送の間に正常の血管内皮細胞を通過し難いため、正常細胞に及ぼす悪影響が少なく、また、薬物の投与量も少量ですむため、抗癌剤の強い副作用も少なくてすむ。
また、本発明の極微粒子状医薬、特に抗癌剤、それと高分子電解質とのコンプレックスは、癌細胞に吸収される確率が従来の薬物に比べて高く、バイオアベイラビリテイーの向上及び薬物の吸収等の個人差の低減による影響が少ない。
図1は、本発明の粒子状の難水溶性薬物及びコンプレックスを調製するために使用したバッチ式微粒子化装置の全体を示す図である。 図2は、本発明の粒子状の難水溶性薬物を調製するために使用した連続式微粒子化装置の全体を示す図である。 図3は、光源10から発するレーザー光のパルス幅と強度とを示すグラフである。 図4は、マイクロ流路導入部50とマイクロ流路60との概略を示す拡大斜視図である。 図5Aは、マイクロ流路導入部50とマイクロ流路60との断面を示す断面図である。 図5Bは、マイクロ流路60を流れる有機物の速度分布を示す断面図である。 図5Cは、マイクロ流路導入部50とマイクロ流路60との間に遷移部64を設けたときの断面を示す断面図である。 図6は、シングルマイクロ流路を用いたコーティング部の1つの実施形態を示す図である。 図7は、マルチマイクロフローチャンネルを用いたコーティング部の1つの実施形態を示す図である。 図8は、微粒子懸濁液及び高分子電解質液の流れに沿って、本発明の微粒子のコーティング装置及びコーティング方法の1つの実施形態の全体を示した線図である。 図9は、レーザ光を照射する前及び照射した後のエリプチシンのエタノール溶液の吸収スペクトルの比較を示す図である。 図10は、レーザ光を照射した後のエリプチシンのエタノール溶液の液体クロマトグラムを示す図である。 図11は、エリプチシンを微粒子化する前のSEMの画像を示す図である。 図12は、エリプチシンを微粒子化した後のSEMの画像を示す図である。 図13は、エリプチシンを微粒子化した後の粒径分布分ヒストグラムを示す図である。 図14Aは、レーザー未照射のSN−38のクロマトグラム(展開溶媒:エタノール)及びHPLC分析結果である。 図14Bは、レーザー照射後のSN−38懸濁液の上澄み液のクロマトグラム(展開溶媒:エタノール)及びHPLC分析結果である。 図15は、SN−38のレーザー照射後及び遠心分離(2,000rpm,10分)後のSEM像、並びに粒径分布ヒストグラム(サンプル数:200,平均粒径:46nm,CV値:22%)である。 図16は、高分子電解質の添加に伴うSN−38ナノ粒子のゼータ電位変化を示すグラフである。 図17は、ヌードマウス移植ヒト癌を用いたSN−38ナノ粒子、SN−38ナノ粒子−硫酸プロタミン、SN−38ナノ粒子−コンドロイチン硫酸と塩酸イリノテカン(CPT−11)の抗腫瘍効果を示すグラフである。 図18Aは、レーザー未照射の10-Hydroxy-camptothecinのクロマトグラム(展開溶媒:エタノール)及びHPLC分析結果である。 図18Bは、レーザー照射後の10-Hydroxy-camptothecin懸濁液の上澄み液のクロマトグラム(展開溶媒:エタノール)及びHPLC分析結果である。 図19は、10-Hydroxy-camptothecinのレーザー照射後及び遠心分離(2,000rpm,10分)後のSEM像、並びに粒径分布ヒストグラム(サンプル数:150,平均粒径:68nm,CV値:25%)である。 図20は、ヌードマウス移植ヒト癌を用いた10-Hydroxycamptothecinナノ粒子と塩酸イリノテカン(CPT−11)の抗腫瘍効果を示すグラフである。
符号の説明
1 容器
2 懸濁液
3 攪拌機
4 レーザ光源
5 レーザ光
10 光源
40 ポンプ(流動手段)
50、150 マイクロ流路導入部
60、160、260、460、560 マイクロ流路
64 遷移部
100 微粒子化装置
120 高分子皮膜コーティング部
122a 微粒子懸濁液用マイクロ流路
122b 高分子電解質液用マイクロ流路
122c 合流マイクロ流路
124 高分子電解質液タンク
140 コンプレックス回収槽
本発明では、医薬にレーザビームを照射することによって粒子を微粒子化する。本発明において微粒子化するのに用いる医薬は、合成後の粗製粉末等任意のサイズ、形状の粉末固体でよいが、微粒子化するのに容易であり、微粒子化の効率が上がりかつ微粒子化したときの医薬のサイズを均一に調整し易いことから、あらかじめ平均直径をできるだけ微細なかつ狭い範囲、例えば1〜100μmの範囲に粉砕しておくのがよい。このような粗砕方法は、公知の方法を使用してよい。
本発明において微粒子化する医薬は、水に難水溶性の粒子状薬物である。本発明において言う難水溶性とは、その溶解性が日本薬局方に定義する、「水に対する溶解度が極めて溶けにくい」、「ほとんど溶けない」の範囲をいう。
また、本発明において微粒子化する粒子状薬物は、その構造中に多重結合を1個以上有するのが好ましい。これは、レーザ光が照射される場合に、多重結合部分がレーザ光を吸収し易く、光吸収部で急激に局所的な温度上昇が起こる。この光吸収部の温度上昇は、レーザ光照射後瞬間的に起こり、光吸収部と光非吸収部との間で急激な温度差が発生し破砕が起こるからである。本発明において言う多重結合とは、共役又は非共役の二重結合もしくは三重結合をいう。
更に、本発明において微粒子化する医薬とは、薬事法に定義する医薬品、人臨床試験段階でフェーズアウトした医薬候補化合物又は人臨床試験中で開発段階にある医薬候補化合物をいう。難水溶性薬物の例として、抗癌剤、抗真菌剤、ビタミン剤、鎮痛剤、抗炎症剤等を挙げることができる。
本発明の粒子状の難水溶性医薬は、抗癌剤であるのが特に好ましい。と言うのは、癌細胞から伸びる血管内皮細胞に存在する組織間隙は、正常の血管内皮細胞に存在する組織間隙に比べて、粗く50nm以上であると考えられる。よって、平均直径が50nm以上でありかつ200nm以下の難溶性粒子状抗癌剤であれば、各種注射剤に対応できるとともに、正常の血管内皮細胞を通過し難いが、癌細胞から伸びる血管内皮細胞を容易に通過できるからである。
本発明において言う抗癌剤とは、薬事法に定義する医薬品であって抗癌活性を有するもの、人臨床試験段階でフェーズアウトした抗癌活性を有する医薬候補化合物又は人臨床試験中で開発段階にある抗癌活性を有する医薬候補化合物をいう。
本発明において用いる抗癌剤の例として、カンプトテシン及びその誘導体、エリプチシン及びその誘導体、ポドフィロトキシン及びその誘導体を挙げることができる。これらの一般的な構造式を下記に示す。
下記の構造式で表される構造を有するカンプトテシン、及びその誘導体:
下記の構造式で表される構造を有するエリプチシン、及びその誘導体:
下記の構造式で表される構造を有するポドフィロトキシン、及びその誘導体:
カンプトテシン誘導体の具体例は、4(S)−エチル−4−ヒドロキシー1H−ピラノ[3’、4’:6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリンー3,14(4H,12H)−ジオン(カンプトテシン)、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(SN−38)、9−アミノカンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン5(R)−エチル−9,10−ジフルオロ−1,4,5,13−テトラヒドロ−5−ヒドロキシー3H,15H−オキセピノ[3’、4’:6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,15−ジオン(BN−80915)[Anti-cancer Drugs (2001), 12(1), 9-19]、(9S)−9−エチル−9−ヒドロキシ−1−ペンチル−1H,12H−ピラノ[3”,4”:6’,7’]インドリジノ[1’,2’:6,5]ピリド[4,3,2−de]キナゾリン−10,13(9H,15H)−ジオン
[Cancer Chemotherapy and Biotherapy: Principle and Practice, 第2版, Lippincott-Ravenmeans, p.463-484、(b)Biochim. Biophys. Acta (1998), 1400(1-3), 107-119]等であり、これらに限定しない。
エリプチシン誘導体の具体例は、エリプチシン、9−ヒドロキシーエリプチシン、T−215(TANABE SEIYAKU Co. Ltd.)等であり、これらに限定しない。
抗癌活性を有するポドフィロトキシン誘導体の具体例は、ポドフィロトキシン、エトポシド、テニポシド等であり、これらに限定しない。
粒子状薬物を分散させるのに用いる水、アルコール溶液は、微粒子化する粒子状薬物が難溶性であり、人体に悪影響を与えずかつ照射するレーザ光を吸収しないものである。本発明において用いるアルコールの具体例として、エチルアルコール、グリコール、グリセロール等を挙げることができる。アルコール溶液は、アルコールが5質量%以下の水溶液が一般的である。
本発明の粒子状の難水溶性医薬は、平均直径50〜200nmを有する。粒子の平均直径は、個々の粒子の直径をスケール付き顕微鏡で測定し、全体の個数で割って求めた値である。
難水溶性の粒子状医薬は、水又はアルコール水溶液に粒子状抗癌剤を懸濁させ、懸濁させた医薬にレーザ光を照射して極微粒子化することによって製造する。水又はアルコール水溶液を、図1に示す容器1に入れ、これに粒子状医薬を混入して懸濁液2を生成する。懸濁液2の濃度は、混入する粒子状医薬の種類やサイズによって、異なるが、1〜10mg/mlが普通である。また、容器1は、レーザ光の照射を受ける面が平面であれば、任意の形状でよいが、略直方体が好ましく、処理する量に応じて大きさを決めてよい。容器1の材質は、レーザ光を透過するものであれば特に透明である必要は無く、かつレーザ光の照射に耐えるものであれば任意のものでよく、石英、ガラスが一般的である。
本発明の水又はアルコール水溶液に難水溶性の平均直径50〜200nmの粒子状医薬は、その表面エネルギーによって再凝縮しやすいことから、極微粒子にそれが有する電荷と反対の電荷を有する高分子電解質を静電的相互作用、疎水的相互作用によって結合させて高分子電解質とのコンプレックスを形成させることによって得られる安定な汚染フリーの優れたコロイド分散液として調製可能である。
本発明において、コンプレックスとは、極微粒子に高分子電解質が一層被覆したものを言い、平均直径50〜250nmの粒子状であるのが好ましい。
コンプレックスの調製は、コア物質となる極微粒子によって決まり、コア物質に応じて反応時間、懸濁液中の濃度、懸濁液のpH等の条件をその都度細かく設定することによって決まり、一義的に規定することはできない。
このようにして得られた高分子電解質とのコンプレックスは、各種注射剤に対応でき、直接血管内に注入させることができる。経口投与の場合には、難水溶性のため吸収率が低いことから体内に少量しか移動できなかったり、胃液や酵素等によって薬物が変質し、効果が消失してしまうのに比べて、本発明の薬物は、血管内に注入され、非常に速いスピードで輸送が行われ、投与部位から目的部位への薬物の到達は非常に速い。
レーザ光の照射によって微粒子化された極微粒子は、その表面エネルギーによって再凝縮しやすいことから、極微粒子の濃度が高いと、再凝縮しやすいため、懸濁液2に混入する薬物の濃度は、高くできない。そのため、レーザ光を照射して微粒子化する前に、微粒子化された極微粒子にそれが有する電荷と反対の電荷を有する高分子電解質を懸濁液2に、あらかじめ加えておくのが好ましい。これにより、微粒子化された極微粒子は、高分子電解質とコンプレックスを形成する。コンプレックスは、極微粒子のような高い表面エネルギーを持たないため、互いに再凝縮することなく、水又は希薄アルコール中に安定に懸濁される。すなわち、高分子電解質を懸濁液2に、あらかじめ加えておくことにより、混入する薬物の濃度を高くして、処理量の増大を図ることができる。このような目的で、懸濁液2に加える高分子電解質は、一種以上を用いてよい。加える高分子電解質の濃度は、1〜10%が普通である。
本発明において用いる高分子電解質とは、一般にポリマー鎖の成分又は置換基であってもよいイオン解離性基を有するポリマーと理解される。通常、高分子電解質中のこれらイオン解離性基の数は、解離された形のポリマーが水溶性であるような大きさである。この点で、高分子電解質には、イオン基の濃度が水溶性には十分でないが、自己集合を開始するために十分な電荷を有するイオノマーも含まれると理解される。解離性基の種類に応じて、高分子電解質は、ポリ酸及びポリ塩基に細分される。ポリ酸からは、解離の際にプロトンの脱離化によりポリアニオンが生じ、これは無機ポリマーであっても有機ポリマーであってもよい。ポリ酸の例は、ポリリン酸、ポリビニル硫酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルホスホン酸及びポリアクリル酸であり、これらの塩も含まれる。
ポリ塩基は、プロトンを例えば酸との反応により造塩下に取り込むことのできる基を含有する。連鎖位ないしは側鎖位の解離性基を有するポリ塩基の例は、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン及びポリビニルピリジンである。ポリ塩基は、プロトンを取り込むことによりポリカチオンを形成する。
本発明において用いるのに適した高分子電解質の例として、生体適合性高分子、生分解性高分子、生体高分子、合成高分子を挙げることができる。生体適合性高分子とは、毒性や損傷を生じたり拒否反応を起こすことなく生体組織・器官系と適合する高分子を言う。生分解性高分子とは、生体内で、あるいは微生物の作用により分解される高分子の総称であり、加水分解により、水、二酸化炭素、メタンなどに分解される。生体高分子とは、生体内で合成される高分子化合物の総称である。
生体適合性高分子の具体例は、プロタミン、ゲラチンA、コラーゲン、アルブミン、カゼイン、キトサン、ポリ−(L)−リジン、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ヘパリン、ヒアルロニックアシッド、コンドロイチンサルフェート、ゲラチンB、カラギーナン、デキストランサルフェート若しくはポリ−(L)−グルタミックアシッドである。生分解性高分子の具体例は、DNA、RNA、酵素若しくは抗体である。合成高分子の具体例は、ポリメタクリリックアシッド、ポリジアリールジメチルアンモニウム又はそれらが適当なリンカーでクロスリンクされた高分子である。高分子電解質は、これらに限定するものではない。
上述した高分子電解質の電荷は、pHを変えることで正に帯電したり、負に帯電したりするので、条件によって、使用する高分子電解質が変わる。
上記のようにして形成した懸濁液2を攪拌機3、好ましくはマグネチックスターラーを使用して攪拌して、薬物及び高分子電解質を均一に分散させる。
水又は希薄アルコール中に分散させた薬物に、レーザ光源4から吸収波長のレーザ光5を照射する。レーザ光源4は、実質的に一定の強度のレーザ光を連続的に発するものでも、間歇的にレーザ光を発するもの、例えばパルスレーザ光を発するものでもよい。
レーザ光源4から発するレーザ光は、微粒子化する薬物の吸収波長に合わせて選択すればよい。例えば、紫外レーザ光や、可視レーザ光や、近赤外レーザ光や赤外レーザ光がある。紫外光レーザ光を用いる場合には、エキシマーレーザ(193nm、248nm、308nm、351nm)や窒素レーザ(337nm)、YAGレーザの3倍波及び4倍波(355nm、266nm)等がある。また、可視光レーザ光を用いる場合には、YAGレーザの2倍波(532nm)、Arイオンレーザ(488nm又は514nm)、その他色素レーザ等がある。さらに、近赤外レーザ光を用いる場合には、種々の半導体レーザ、チタンサファイヤレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等がある。さらに、これらのレーザ光と光パラメトリック発振器を用いて、紫外から赤外領域の任意の波長の光を発振させて用いてもよい。
レーザ光源4から発せられるレーザ光は、パルスレーザ光であるものが好ましい。図2は、光源4から発せられるレーザ光のパルス幅と強度とを示すグラフである。図2に示したグラフは、横軸は、時間を示し、縦軸は、光源4から発せられるレーザ光の励起光強度を示す。図2に示すように、光源4から発せられるレーザ光は、パルス状のレーザ光である。すなわち、光源4は、レーザ光が発せられる点灯状態と、レーザ光が発せられない消灯状態とを交互に繰り返すもので、間歇的にレーザ光を発する。特に、レーザ光の強度がパルス状に変化するものが好ましい。以下では、1つのパルスのレーザ光をパルス光と称する。パルスレーザ光を用いたときには、1つのパルス光によって1回の照射が行われる。
光源4から発せられるレーザ光の励起光強度Pは、1〜1000mJ/cmが好ましく、30〜300mJ/cmがより好ましい。また、パルス光とパルス光との間のパルス周期Tは、0.1〜1000Hzが好ましい。ここで、パルス周期とは、ある一のパルス光の立ち上がりの時点から、一のパルス光と隣り合うパルス光の立ち上がりの時点までの時間、又はパルス光の立ち下がりの時点から、隣り合うパルス光の立ち下がりの時点までの時間をいう。さらに、パルス光の各々のパルス幅sが、10−15〜10−6秒であるものが好ましい。なお、パルス幅とは、ある一のパルス光の立ち上がりの時点から、立ち下がりの時点までの時間をいう。
パルスレーザ光を用いたときには、1つのパルス光によって薬物への1回の照射が行われる。本明細書では、ある対象となる薬物に対してレーザ光を照射することができる時間を照射時間tLとする。照射時間tLを長くした場合には、図2に示すように、パルスレーザ光の点灯状態と消灯状態との双方が含まれ得る。消灯状態では、レーザ光は発せられていないが、点灯状態となったときには、レーザ光が発せられて、ある対象となる有機物へレーザ光が照射される。このように、ある時間内に消灯状態が含まれていても、ある対象となる有機物に対してレーザ光を照射できる点灯状態が含まれていれば、その時間は、照射時間tLとなる。
より具体的には、ある対象となる薬物が流動しており、レーザ光の照射領域に入り、その後、レーザ光の照射領域から出るようにした場合に、その薬物がレーザ光の照射領域に存在している時間が長いときには、その薬物にパルス光が複数回照射されることになる。このように、薬物を流動させる場合には、上述した照射時間tLは、ある対象となる薬物が、レーザ光の照射領域に存在している時間とすることができる。上述したように、薬物にレーザ光を照射することで、薬物を微粒子化することができる。この微粒子化したときの大きさが所望するものとなるように、パルス光を薬物に照射する回数を定めることができる。パルス光を照射する回数は、上述したパルス周期Tや、薬物の流動速度等を調節することによって変更することができる。このようにすることで、レーザ光の照射領域では、少なくとも1回パルス光がその薬物に照射されることになる。なお、レーザ光の照射領域とは、レーザ光が点灯状態であるときに、レーザ光が照射される範囲をいう。
また、レーザ光の照射時間は、ナノ秒程度の短時間のパルス光を複数回照射することが好ましい。また、上述したパルス幅sの長さを変更することによって、薬物を微粒子化したときの粒径を制御することもできる。
本実施態様のように、バッチ式で撹拌槽を用いる場合には、撹拌している薬物は、何度もレーザ光の照射を受ける。そのため、薬物が何度もレーザ光の照射を受けることにより、微粒子化され過ぎて平均直径が50nmよりも小さい粒子が形成されたり、薬物が変質したりする恐れがあるため、レーザ光の総照射時間は重要な要因である。
レーザ光の総照射時間は、撹拌速度、薬物のサイズ、レーザ光源、パルス幅、光強度等の要因によって変わってくるが、数秒〜数分が一般的である。
レーザ光の照射を停止した後に、あらかじめ電解質を加えていない場合には、極微粒子間凝集を防止する目的で、直ちに電解質を加えてコンプレックスを形成して、極微粒子を水又は希薄アルコール中に安定に懸濁させる必要がある。
このようにして得られたコンプレックスを含有するコロイド溶液は、適宜溶媒で希釈するか又は濃縮することにより、目標とする濃度の注射剤として使用することができる。
また、コンプレックスを固体として得ることを所望する場合には、コロイド溶液をフィルターを通して固体を分離し、よく洗浄し、乾燥し或は水又は希薄アルコール中を蒸発させて固体を分離し、よく洗浄し、乾燥してもよい。後者の場合には、溶媒としてアルコール、液体窒素又は液体ヘリウムを用いるのが好ましい。
以上、本発明の薬物を、バッチ式で調製する場合について説明したが、連続して調製する場合について以下に説明することにする。
本発明の薬物を連続して調製する場合に使用する薬物の微粒子化装置100を図3に示す。
図3に示すように、供給部20は、水又は希薄アルコール中に薬物を分散させた薬物含有懸濁液を収容するための槽からなる。
供給部20は、所定の容積を有する。容積は、1回の処理をする所望の大きさにすればよい。また、供給部20は、注入された薬物含有懸濁液の濃度が変化しないように、密閉できるものが好ましい。
供給部20の下部には、配管30が接続されて、供給部20が、配管30と連通するようにされている。供給部20に注入された薬物含有懸濁液を配管30に排出することができる。
図3に示すように、配管30には、ポンプ40が設けられている。ポンプ40は、後述するマイクロ流路60へ薬物含有懸濁液を供給するためのものである。ここで、マイクロ流路とは、精密加工により形成されたミクロンオーダーの流路幅を有する流路である。ポンプ40は、マイクロ流路60を流れる薬物含有懸濁液の流速が所望する速度になるように制御できる。特に、マイクロ流路60で薬物含有懸濁液を連続的に流す場合には、マイクロ流路60における流速が一定になるように制御できるものが好ましい。また、マイクロ流路60で薬物含有懸濁液を間歇的に流す場合には、所望のタイミングで、マイクロ流路60において、薬物含有懸濁液を停止させたり流動させたり制御できるものが好ましい。マイクロ流路60において、薬物含有懸濁液を停止させた場合には、光源10から発せられたレーザ光を的確に薬物に照射することができる。
図3に示すように、配管30には、マイクロ流路導入部50が接続されて、配管30が、マイクロ流路導入部50と連通するようにされている。ポンプ40を駆動することで、供給部20に注入された薬物含有懸濁液を、配管30を介して、マイクロ流路導入部50に供給することができる。
マイクロ流路導入部50は、略直方体の形状を有する。マイクロ流路導入部50は、供給部20から供給された薬物含有懸濁液を、一時的に貯留することによって、後述するマイクロ流路60を流れる薬物含有懸濁液の流速を均一化するためのものである。このマイクロ流路導入部50の容積は、処理する薬物含有懸濁液や、ポンプ40によって生成される流速等に応じて適宜定めればよい。
なお、上述した例では、マイクロ流路導入部50の形状を、略直方体としたが、後述するマイクロ流路60を流れる薬物含有懸濁液の流速を均一に近づけることができるものであればよく、略円筒形状等の曲面で形成されたものでもよい。マイクロ流路導入部50の形状は、マイクロ流路60を流れる薬物含有懸濁液の流速や薬物含有懸濁液の種類や大きさによって適宜定めればよい。
図4に示すように、マイクロ流路導入部50には、マイクロ流路60が接続されて、マイクロ流路導入部50が、マイクロ流路60と連通するようにされている。図4に示すように、マイクロ流路導入部50は、排出面52を有する。この排出面52には、開口54が形成されている。この開口54にマイクロ流路60が接続されている。このようにすることで、開口54を介して、マイクロ流路導入部50からマイクロ流路60へ薬物含有懸濁液を供給することができる。
光源10から発せられたレーザ光を、マイクロ流路60を流れる薬物含有懸濁液に照射することによって、薬物を微粒子化することができる。
マイクロ流路60は、長尺な直方体の形状を有し、マイクロ流路60の長手方向に対して垂直な面に沿った断面は略正方形である。この正方形の一辺の長さML(図4参照)を、薬物の最大直径の1.1倍〜200倍とするのが好ましく、3倍〜60倍とするのがより好ましい。このようにすることで、マイクロ流路60における薬物の流れを円滑にすることができ、薬物によって、マイクロ流路60が閉塞されることを防止して、薬物へのレーザ光の照射を的確に行うことができる。
なお、マイクロ流路60の形状は、直方体には限られず、光源10から発せられたレーザ光が照射される箇所(後述する照射領域LRに位置する箇所)が平坦であればよい。
また、上述した例では、マイクロ流路60の長手方向に対して垂直な面に沿った断面の形状を略正方形としたが、レーザ光を薬物に的確に照射することができればよく、断面の形状は矩形等の形状にしてもよい。
マイクロ流路60は、光源10から発せられたレーザ光を透過させることができるような材料、好ましくは透明な材料、例えば石英や、ガラスによって構成されている。
図4に示すように、光源10から発せられたレーザ光LAは、マイクロ流路60の上面62の一部に照射される。レーザ光LAの照射領域LR(図4で斜線を付した領域)は、略円形であり、その直径dLが、上面62の短手方向の長さMLよりも長くなるようにすることで、レーザ光をマイクロ流路60に十分に照射することができる。
上述したポンプ40を駆動することによって、薬物含有懸濁液が、マイクロ流路導入部50からマイクロ流路60へ流入し、有機物はマイクロ流路60内を流動する。ある所定の薬物に着目した場合に、マイクロ流路60内の薬物含有懸濁液の流れに従って、レーザ光LAの照射領域LRに至り、しばらくの間、照射領域LRに存在した後、照射領域LRから出る。
パルスレーザ光を用いたときに、薬物が照射領域LRに存在している時間が長い場合に、その薬物には、パルス光が複数回照射されることになる。薬物をマイクロ流路60内で流動させる場合には、上述したように、照射時間tLは、ある対象となる有機物が、照射領域LRに存在している時間とすることができる。
上述したように、薬物にレーザ光を照射することで、薬物を微粒子化することができる。この微粒子化したときの大きさが所望するものとなるように、パルス光を薬物に照射する回数を定めることができる。パルス光を照射する回数は、上述したパルス周期Tや、薬物の流動速度等を調節することによって変更することができる。このようにすることで、レーザ光の照射領域LRでは、少なくとも1回パルス光がその薬物に照射されることになる。
マイクロ流路導入部50の断面の大きさSA(図4参照)が、マイクロ流路60の長手方向に対して垂直な面に沿った断面の大きさSB(図4参照)の2倍以上とするのが好ましい。一般的に、マイクロ流路60を流れる有機物の流速VLは、マイクロ流路60の壁面近傍が最も遅く、マイクロ流路60の中心近傍が最も速くなるような速度の分布(以下、速度分布と称する。)が生ずる傾向がある(図5B参照)。このような速度分布が生じた場合には、マイクロ流路60の壁面近傍を流れる薬物は、流速が遅いので、照射領域LRに存在している時間が長くなり、マイクロ流路60の中心近傍を流れる薬物は、流速が速いので、照射領域LRに存在している時間が短くなる。このため、パルスレーザ光を照射したときには、マイクロ流路60の壁面近傍を流れる有機物にパルス光が照射される回数は、多くなり、マイクロ流路60の中心近傍を流れる有機物にパルス光が照射される回数は、少なくなる。また、連続的なレーザ光を照射する場合には、マイクロ流路60の壁面近傍を流れる有機物にレーザ光が照射される時間は、長くなり、マイクロ流路60の中心近傍を流れる有機物にレーザ光が照射される時間は、短くなる。このため、薬物が流れる場所によって、微粒子化の程度が異なり、微粒子化された後の薬物の大きさに不均一が生ずる可能性がある。このため、上述したように、マイクロ流路導入部50の断面の大きさSAを、マイクロ流路60の断面の大きさSBの2倍以上とすることによって、マイクロ流路60へ流入させた薬物の流速分布を小さくして、微粒子化された後の薬物の大きさに不均一化が生ずることを防止することができる。
上述したように、ポンプ40を駆動することによって、薬物含有懸濁液が、マイクロ流路導入部50からマイクロ流路60へ流入する。このマイクロ流路60における薬物の流速VL(図5A参照)は、VL<K×dL/tLとするのが好ましい。なお、ここで、流速VLは、上述した速度分布がない状態、又は速度分布を十分に無視できる状態での薬物の流速である。この流速VLを、この範囲にすることで、レーザ光を薬物に過不足なく照射することができ、所望する大きさに微粒子化することができる。例えば、パルス光を薬物に照射する場合には、適切な回数だけ、パルス光を薬物に照射することができる。
ここで、dLは、レーザ光が照射されるときのレーザ光の直径であり(図4参照)、tLは、上述した照射時間であり(図2参照)、Kは、1〜0.1の範囲の定数であり、薬物の種類に応じて定められる定数である。なお、Kは、上述した範囲に限定されるものではなく、薬物が、照射領域LRを通過するときに、薬物に照射されるパルス光の回数が、薬物を微粒子化するのに十分なものとなるように、Kの値を定めるのが好ましい。このようにして、微粒子化された薬物の大きさは、50〜200ナノメートルである。
図5Aは、マイクロ流路導入部50とマイクロ流路60との断面を示す断面図である。マイクロ流路60において、レーザ光LAを照射する箇所は、マイクロ流路導入部50の排出面52から、レーザ光LAの照射領域LRの中心LCまでの距離が、10×Dm以下となるようにするのが好ましい(図5A参照)。ここで、Dmは、マイクロ流路60における水力直径であり、Dm=4×(マイクロ流路60の断面の大きさSB)/(マイクロ流路60の断面の全周)である。例えば、マイクロ流路60の断面が、長さMLの正方形であるときには、Dm=4×ML/4ML=MLとなる。上述したマイクロ流路60の薬物の流速分布は、マイクロ流路導入部50の排出面52から離れるに従って大きくなる傾向があり、レーザ光LAを照射する箇所をこのような範囲にすることで、マイクロ流路60内を流れる薬物の流速分布が大きくなる前に、レーザ光LAを薬物に照射することができ、的確に薬物を微粒子化することができ、微粒子化された後の薬物の大きさを均一に近づけることができる。
上述した例では、マイクロ流路導入部50に形成された開口54に、直ちにマイクロ流路60が接続されている場合を示したが、図5Cに示すように、マイクロ流路導入部50とマイクロ流路60との間に、遷移部64を形成してもよい。遷移部64は、マイクロ流路導入部50に形成された開口54から離れるに従って、断面が徐々に小さくなるように形成されている。このようにすることで、遷移部64は助走区間として機能し、マイクロ流路60に流れ込む薬物の速度分布をより小さくすることができる。この遷移部64の形状は、薬物含有懸濁液の流速や粘性等に応じて適宜定めればよい。
図3に示すように、マイクロ流路60には、回収部70が接続されて、マイクロ流路60が、回収部70と連通するようにされている。回収部70は、マイクロ流路60でレーザ光が照射された薬物を含む懸濁液を収容できる槽からなる。
回収部70に、再凝集防止装置72を設けるのが好ましい。この再凝集防止装置72は、超音波振動子を含み、回収部70に収容された懸濁液に超音波を発する。この超音波が、懸濁液に伝播されることによって、微粒子化された薬物が、再凝集することを防止することができる。再凝集防止装置72から発する超音波の強度や波長は、微粒子化された薬物の大きさや種類等に応じて適宜定めればよい。また、上述した例では、再凝集防止装置72として超音波を発するものを示したが、微粒子化された薬物の再凝集を防止することができるものであれば他のものでもよい。
回収部70の槽内には、磁気駆動回転羽根車74を設けるようにしてもよい。この磁気駆動回転羽根車74は、回収部70の外側から磁場を印加することで回転させることができるもので、磁気駆動回転羽根車74を回転させることによって、回収部70に収容された懸濁液を攪拌することができ、微粒子化された薬物の再凝集を防止することができる。この磁気駆動回転羽根車74の大きさや回転数は、微粒子化された薬物の大きさや種類等に応じて適宜定めればよい。
次に、上述した通りにして得られた薬物の極微粒子が有する電荷を測定する。電荷は、ゼータ電位計で測定する。コア物質に応じて正であったり、負であったりする。極微粒子に、それが有する電荷と反対の電荷を有する一種以上の高分子電解質を静電的相互作用、疎水的相互作用によってコンプレックスを調製して、極微粒子が再凝集するのを防ぐ。
このようなコンプレックスを調製する方法及びそれに用いる装置を下記に説明することにする。
薬物の微粒子懸濁液と高分子電解質液を用いて、微粒子の外表面に高分子電解質の皮膜を形成する高分子皮膜コーティング部の1つの実施形態を、図6及び図7を用いて説明する。この高分子皮膜コーティング部は、本発明において用いる微粒子コーティング装置の主要構成機器の1つである。
本実施形態では、薬物の微粒子懸濁液の流れと高分子電解質液の流れとを合流させることによってコーティングを行なう。また、本実施形態では、微粒子懸濁液と高分子電解質液とが、共にマイクロフローチャンネルの中を流れるようになっている。図6には、微粒子懸濁液と高分子電解質液とが、各々1本のマイクロフローチャンネルの中を流れて合流するシングルマイクロフローチャンネルを用いた高分子皮膜コーティング部の実施形態を示し、図7には、図6に示すシングルマルチフローチャンネルを用いた高分子皮膜コーティング部が複数備えられたマルチマイクロフローチャンネルを用いた高分子皮膜コーティング部の実施形態を示す。
まず、図6に示すシングルマイクロフローチャンネルを用いた高分子皮膜コーティング部の実施形態の説明を行なう。図3における回収部70の槽のマイクロ流路60からの流入口の面に対して背面の下部に排出マイクロ流路76を設ける。ここで、このマイクロ流路は、微粒子製造装置によって微粒子化された極微粒子が、極微粒子懸濁液の中で再凝集することを防ぐために有効である。特に、マイクロ流路の流路幅を、極微粒子懸濁液の中で流動する極微粒子長径よりもわずかに大きい程度にすることが好ましい。ただし、粒径のばらつきや、マイクロ流路の加工精度等を考慮すると、流動する極微粒子長径の1.1〜500倍の範囲、好ましくは50〜500倍の範囲で定めることが望ましい。
次に、高分子電解質液が流れるマイクロ流路も、上述の極微粒子懸濁液が流れるマイクロ流路と同様の寸法に設定することができる。マイクロ流路を流れる高分子電解質液は、高分子電解質を結合させる又は高分子電解質でコーティングする極微粒子の最外層の電荷と反対の電荷を有する高分子電解質を含んでいる。つまり、微粒子懸濁液に含まれる極微粒子の最外層が負の電荷を有する場合には、正の電荷を有するカチオン性高分子電解質液をマイクロ流路に流す。同様に、極微粒子懸濁液に含まれる極微粒子の最外層が正の電荷を有する場合には、負の電荷を有するアニオン性高分子電解質液をマイクロ流路に流す。
また、極微粒子懸濁液が流れるマイクロ流路と、高分子電解質が流れるマイクロ流路とが合流する角度については、鋭角から鈍角まで幅広い角度を選択することができる。合流する角度は、0〜180度の範囲が好ましい。マルチマイクロフローチャンネルを用いる場合は0〜5度の範囲がより好ましい。
上述のように、各高分子皮膜コーティング部では、極微粒子懸濁液に対して、極微粒子の最外層の電荷と反対の電荷を有する高分子電解質液を用いるので、互いに引き付け合う静電気力によって、2つの液を合流させるだけで、強い皮膜を容易に形成することができる。
図6には、シングルマイクロ流路を用いた例を示したが、マルチマイクロ流路を用い、それぞれで上記と同様に高分子皮膜コーティングを実施することにより、コンプレックスを高い生産性で調製することができる。
次に、回収部70中の極微粒子懸濁液から、コンプレックスを一連の様式で調製するコーティング装置及びコーティング方法の全体を、図8に示した線図を用いて説明することにする。
本発明において用いる極微粒子のコーティング装置は、主に、高分子皮膜コーティング部120からなる。高分子皮膜コーティング部120は、コーティングする前の極微粒子の懸濁液を収容した微粒子懸濁槽70(前記回収部70)と、極微粒子懸濁液用マイクロ流路122aと、高分子電解質液用マイクロ流路122bと、それらが合流して形成される合流マイクロ流路122cと、高分子電解質液を貯蔵した高分子電解質液タンク124と、コーティング処理が終了した高分子皮膜極微粒子(形成されたコンプレックス)を回収するコンプレックス回収槽140と、ポンプ、配管、バルブ類から構成される。
なお、図を簡略化するため、マイクロ流路を用いた高分子皮膜コーティング部120は、シングルマイクロ流路の形で示されているが、実際には、微粒子の生産量に応じた本数のマイクロ流路を有するマルチマイクロ流路を用いることができる。
ここで、極微粒子懸濁液の流れに沿って説明すると、微粒子懸濁槽70に極微粒子懸濁液が収容されている。溶媒として水を用いた場合について説明すると、極微粒子が水に懸濁されており、極微粒子の外表面は水の中でイオン化して正又は負の電荷を有している。簡単にするために、極微粒子の外表面が負の電荷を有している場合について説明する。なお、この場合、高分子電解質としてはカチオン性高分子電解質液を用いる。
この状態において、ポンプ114を用いて、コーティング前の極微粒子懸濁液を、微粒子懸濁槽70から高分子皮膜コーティング部120内の極微粒子懸濁液用マイクロ流路122aへ送る。同様に、ポンプ126を用いて、高分子電解質液タンク124に貯蔵されたカチオン性高分子電解質液を、高分子電解質液タンク124から高分子電解質液用マイクロ流路122bへ送る。
そして、極微粒子懸濁液用マイクロ流路122aと高分子電解質液用マイクロ流路122bとが合流して、合流マイクロ流路122cを形成する。合流マイクロ流路122cにおいて、極微粒子懸濁液とカチオン性高分子電解質液とが混合し、極微粒子の外表面にカチオン性高分子電解質が接触してカチオン皮膜を有するコンプレックスが形成される。
そして、極微粒子懸濁液とカチオン性高分子電解質液との混合液であるカチオン性混合液が、形成されたコンプレックスを含んだ状態でコンプレックス回収槽140に回収される。
なお、極微粒子の外表面が正の電荷を有している場合も、高分子電解質液としてアニオン性高分子電解質液を用いる以外は上記と同様の方法でコンプレックスを形成することができる。
以下において、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明する。
<実施例1>
(1)レーザ照射条件:
光源は、Nd3+:YAGレーザ(Continuum, Surelite)を用い、OPO(Optical Parametric Oscillator : Continuum, SureliteOPO)システムでレーザ光をとりだした。レーザ光強度の調節は減光板とattenutorを用いて行った。光照射面積は石英セルの前面の感光紙にレーザ光を照射して見積もった。
レーザ:繰り返し周波数:10 Hz
パルス幅:7ns
励起波長:355nm
照射面積:0.28cm
エリプチシンの微粒子化:レーザ光強度:100mJ/cm
総照射時間:10秒
(2)エリプチシンサンプル:
試料は、エリプチシン(Fluka,>99%)を用い、これをおよそ1μm程度に粗粉砕して用いた。溶媒は、脱イオン水を用いた。
極微粒子作製には、試料懸濁液75mlに超音波(SHARP,UT-205,高周波数:最大200W)を照射したものを使用した。この試料懸濁液からマグネチックスターラーを用いて攪拌しながら3ml量り取り、光路長1cmの石英セル(1x1x5cm)に移し、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながらレーザ光を照射した。
生成した極微粒子は、あらかじめ添加した高分子電解質により、直ちにコーティングされ、安定化されて粒子間凝集を阻止する目的で(a)高分子電解質を添加したサンプルと
(b)高分子電解質非添加のサンプル
の二種で照射し両者を比較検討した。
(a)エリプチシン+高分子電解質+水分散液
高分子電解質:プロタミン(濃度:1x10−2g/ml)
抗癌剤としてエリプチシン4.1×10−3M(1.0mgml−1)を用い、レーザ光を照射して分散させた。照射後一時間放置して、生成した上澄みを評価した。
エリプチシン4.1×10−3M(1.0mgml−1)を用い、レーザ光を照射しないで分散させた。その上澄み部分をコントーロールとした。
上澄み液の濃度は、吸光度から見積もった。
(b)エリプチシン+水分散液
エリプチシン1.5×10−4M(3.6x10−2gl−1)を用い、レーザ光を照射して分散させた。照射後の上澄みを評価した。
エリプチシン1.5×10−4M(3.6x10−2gl−1)を用い、レーザ光を照射しないで分散させた。その上澄み部分をコントーロールとした。
上澄み液の濃度は、吸光度から見積もった。
その結果、高分子電解質存在下レーザ光を照射して分散させた後の上澄み濃度は高分子電解質非存在下でのものと比較して>100倍濃い値を示した。
高分子電解質存在下でレーザ光を照射して分散させた後の上澄み濃度:>1.8x10−5g/ml。
(3)極微粒子の評価
(3−1)生成した極微粒子の純度評価は、次の手順で行った。
照射後の懸濁液から上澄みを抜き取り、真空ポンプで溶媒を留去した後に、残渣にエタノールを加えて紫外、可視吸収スペクトル(SHIMADZU, UV-3100. HITACHI, F-4500)及び液体クロマトグラフィー(SHIMADZU,SPD-10)を測定した。
吸収スペクトルの比較 −未照射及び照射後のエタノール溶液−を図9に示す。図9では、未照射のエリプチシンエタノール溶液の吸収スペクトル(実線)及びレーザー照射(100mJ/cm、10秒間)後のエリプチシンエタノール溶液の吸収スペクトル(点線)が示されている。図9から、未照射の吸収スペクトル(実線)と照射後の吸収スペクトル(点線)とを比べて変化がほとんど認められない。これより、レーザ光照射により微粒子化されたエリプチシンは、ほとんど分解されていないことが分かる。
レーザ光を照射した後のエリプチシンのエタノール溶液の液体クロマトグラムを図10に示す。図10からも、レーザ光照射により微粒子化されたエリプチシンが、ほとんど分解していないことが分かる。
(3−2)エリプチシンを微粒子化する前のSEMの画像と、微粒子化した後のSEMの画像とをそれぞれ図11及び12に示す。微粒子化する前の粒子の平均直径は、1μm程度であり、これが機械的な微粒子化の限界である。
FEI, Strata DB235-51で観察。別添写真参照
(3−3)微粒子化した後の粒径分布分ヒストグラムを図13に示す。
図13から、本発明のコンプレックスは、そのほとんどが70〜130nmの粒度分布の中に入り、粒径が均一であることが分かり、平均直径は100nmであった。平均直径は、個々の粒子の直径をスケール付き顕微鏡で測定し、全体の個数で割って求めた。
FEI, Strata DB235-51で観察。MALVERNゼータサイザーNano-ZSで測定。
本例では、被膜の厚さは、3〜4nmであり、全体の粒径に及ぼす影響は、無視できる。
(3−4)細胞毒性試験
レーザ照射して微粒子化したエリプチシン(濃度2μg/ml)を下記細胞培養液で希釈して1μg/ml,0.5μg/ml,0.25μg/ml,0.125μg/mlの被検サンプルを調製した。対象細胞はMCF−7(MEM−(培地)及びL−1210(RPMI−1640培地)腫瘍細胞とし、細胞毒性はCell Counting Kit-8を用い、脱水素酵素活性を指標とするWST−8(特許2757348)の450nm発色測定で24hrs培養後の生細胞数を測定した。
バイアビリテイー(%)=(Asamples−Ablank)/(Ano−samples−Ablank)100%
(式中、Aは、UV特性の波長450nmにおける吸光度を表し、Asamplesは、試料が存在している場合の吸光度を表し、Ano−samplesは、試料が存在せず、高分子電解質が存在する場合の吸光度を表し、Ablankは、培地のみが存在する場合の吸光度を表す。)
細胞に対する50%阻害活性はそれぞれ
MCF−7 cell:0.21μg/ml
L−1210 cell:0.09μg/ml
であった。
なお、対照はエリプチシンが水に溶けないので評価不能である。文献で知られている値はジムソー等の有機溶媒を使用しているため直接比較はできない。
この結果より、本発明の極粒子状抗癌剤、及びそれと高分子電解質とのコンプレックスは、腫瘍細胞に対して阻害活性を示し、薬効を有することが立証された。
<実施例2>
SN−38ナノ粒子の調製
0.01NHClを100倍希釈して、pH=4.0の塩酸水溶液を調製した。この溶液20ml中に60mgのSN−38を混入し2時間以上超音波処理した。この懸濁液をマグネチックスターラーで良く攪拌しながら、懸濁液2.0mlを量り取り、光路長1cmの石英セルに入れた。これにpH=4.0の塩酸水溶液1mlを加えSN−38の濃度2mg/mlの懸濁液とした。マグネチックスターラーで良く攪拌しながら、レーザー(420nm励起,80mJ/cm,100分間)を照射した。レーザー照射後、1日室温で静置し、その上澄み液を取り、吸収スペクトル、HPLC、粒度分布及びSEM測定を行った。その結果、上記レーザー照射条件下ではSN−38の化学分解は起こらず、ナノ化が進んだ(図14A、図14B及び図15参照)。生成したナノ粒子の収率は50%以上で濃度は1mg/mlであった。
SN−38ナノ粒子−硫酸プロタミンとSN−38ナノ粒子−コンドロイチン硫酸の調製
SN−38ナノ粒子を安定化する目的(自己凝集を防ぐ目的)で、上記上澄み液1mg/mlに、ナノ粒子表面のゼータ電位が一定値に達するに十分量のプロタミン又はコンドロイチンサルフェートを添加し(1mg/ml微粒子化SN−38に対し、重量比で30wt%となるように10mg/mL硫酸プロタミン(pH4)または10mg/mLコンドロイチン硫酸(pH4)を加え)それぞれ一定のゼータ電位+19.9mV,−47.2mVに調製した(図16参照)。
SN−38ナノ粒子の細胞毒性試験
実施例1の(3−4)に記載のエリプチシンの細胞毒性試験と類似の方法で72hrs培養後の生細胞数を測定した。50%阻害活性は MCF−7 cellで100nMであった。対照として用いたレーザ未照射SN−38のDMSO溶液と水懸濁液はそれぞれ50%阻害活性が500nM,2000nMであった。
この結果より、対照と比較してナノ化試料のより高い細胞内移行性が示された。
ヌードマウス移植ヒト癌を用いたSN−38ナノ粒子、SN−38ナノ粒子−硫酸プロタミン、SN−38ナノ粒子−コンドロイチン硫酸と塩酸イリノテカン(CPT−11)の抗腫瘍効果の対比検討
試験施設
名称: 株式会社 実験癌化学療法研究所
住所: 大阪府箕面市白島3-13-1
材料および方法
1.被験物質:SN−38ナノ粒子
SN−38ナノ粒子−硫酸プロタミン
SN−38ナノ粒子-コンドロイチン硫酸
保存条件:気密容器に入れ遮光、室温(23℃)で保存した。
対比薬:塩酸イリノテカン(CPT−11)
2.使用ヒト癌株
胃癌H−23,中分化型腺癌 323代目
3.実験動物
BALB/cAJcl−nuヌードマウス(雄性、日本クレア株式会社)
4.移植方法
ヌードマウスを頚椎脱臼により屠殺後、皮下で継代している腫瘍を摘出して腫瘍から被膜と壊死部を除き、RPMIメディウムにて洗浄し、2〜3mm角の出来るだけ均等な立方状の腫瘍片を作製した。この腫瘍片を生後満6週齢のマウス背部皮下にtrocarを用い移植した(移植日:Day0)。
5.実験方法
ノギスを用いて腫瘍の最大径(L)と直交する横径(W)及び厚み(D)を0.5mm単位まで計測し、V=1/2xLxWxDの式で求めた推定腫瘍体積が約70mm前後に達した時(移植後7日)、1群5匹で、推定腫瘍体積の平均値、標準誤差とも出来る限り均等となるよう対照群と治療群を設定し、投与を開始した。
実験終了は投与開始日から4週間後とし、腫瘍径を週2回、体重を投与時に計測し、腫瘍増殖の状態と薬剤の投与による影響をモニターするとともに、その他の身体的変化を観察した。動物は腫瘍移植時、投与時及び計測時にスリーブを通じてクリーンベンチに移した以外は、実験終了時まで終始小型ビニールアイソレータ内で飼育した。
6.投与量及び投与スケジュール
(1)Control (薬剤無処置)
(2)CPT−11 60mg/kg (i.v.)q4d×4 計4回
(3)SN−38ナノ粒子 10mg/kg (i.v.)q4d×4 計4回
(4)SN−38ナノ粒子-プロタミン 3mg/kg (i.v.)q4d×4 計4回
(5)SN−38ナノ粒子-コンドロイチン硫酸 10mg/kg (i.v.) q4d×4 計4回
7.調製液の作製方法
SN−38ナノ粒子(1mg/ml)およびSN−38ナノ粒子−コンドロイチン硫酸(1mg/ml)原液(10mg/kg投与群用)、SN−38ナノ粒子−硫酸プロタミン(1mg/ml)を注射用蒸留水で0.3mg/ml(3mg/kg投与群用)となるよう希釈した。さらに投与直前に27%NaCl液を容積比1:30ずつ加えた。CPT−11は3mg/mlとなるよう生理食塩水を加え希釈した。
8.調製液の投与方法
SN−38ナノ粒、SN−38ナノ粒子-プロタミンおよびSN−38ナノ粒子−コンドロイチン硫酸 投与群には、各々調製液をNaClを加えた後、25分以内に投与した。マウス体重10gあたり0.1mlずつを1日に1回、4日目毎に計4回(q4dx4)静脈内投与した。
CPT−11投与群は、3mg/ml調製液を1日2回(60mg/kg投与群)、マウス体重10g当たり0.1mlずつ、4日目毎に計4回(q4dx4)静脈内投与した。Control群には薬剤投与を行わなかった。
9.効果判定法
実験終了日に摘出した対照群(C)と治療群(T)の平均腫瘍重量から腫瘍増殖抑制率(IR)を次式により求め、IRが58%に達しない時は「無効」、IR≧58%の時に「有効」、IR≧80%の時に「著効」と判定した。
IR=(1−T/C)x100(%)
各群間の腫瘍重量による統計学的有意差はStudent’s t検定(両側)で求めた。
さらに、実験期間中の対照群(C)と治療群(T)の平均推定腫瘍体積を経時的に計測し、同様にtumor volume IRを求めて実験期間中の最大増殖抑制率(max. IR)を求めた。さらに、実験終了時の平均推定腫瘍体積が投与開始時のそれよりも小さい時、縮小効果ありと判定する。
なお、薬剤の宿主への影響は、体重の変化と症状の出現により検討した。
結果
ヌードマウス移植ヒト胃癌H−23(中分化型腺癌)の323代目を用いてSN−38ナノ粒子、SN−38ナノ粒子-硫酸プロタミンおよびSN−38ナノ粒子−コンドロイチン硫酸の腫瘍増殖抑制効果をCPT−11の腫瘍増殖抑制効果と対比検討した。
1.腫瘍増殖抑制効果
1)CPT−11 60mg/kg投与群
投与回数が増すにつれ、tumor volume IRは高くなり、4回目投与の2日後(d21)に、実験期間中の最大腫瘍増殖抑制率(max. IR) 69.1%を示し、有効が認められた。しかし、その後は徐々にtumor volume IRは低下し、実験終了日(d35)のtumor weight IRは22.4%で無効と判定された。腫瘍重量によるt-testでもcontrol群と推計学的有意差は認められなかった。
2)SN−38ナノ粒子 10mg/kg投与群
初回投与の4日後(d11)に、治療群の中で最大のtumor volume IR 57.7%を示した。2回目投与の3日後(d14)には唯一、腫瘍の縮小傾向も認められた(生データ参照)。その結果、tumor volume IR 59.9%を示し、2回目投与後早くも、治療群の中で唯一有効が認められた。3回目投与の3日後(d18)には73.4%を示し、一段と高くなった。4回目投与の2日後(d21)にはmax. IR 74.7%を示し、腫瘍増殖抑制効果が目立った。4回目の投与から9日後(d28)にはまだtumor volume IRは61.1%を示し、治療群の中で唯一まだ有効が認められていたが、その後は徐々に低下し、実験終了日(d35)のtumor weight IRは45.9%で無効と判定された。しかし、腫瘍重量によるt-testではcontrol群とp<1%で推計学的有意差があり、CPT−11 60mg/kg投与群よりもp<5%の推計学的有意差をもって勝っていた。
3)SN−38ナノ粒子−硫酸プロタミン 3mg/kg投与群
3回投与の3日後(d18)にはtumor volume IR 57.5%を示し、CPT−11 60mg/kg投与群より僅かに高い腫瘍増殖抑制効果が認められた。
4回目投与の2日後(d21)にはmax. IR 62.1%を示し、有効が認められた。その後は徐々にtumor volume IRは低下した。実験終了日(d35)のtumor weight IRは38.9%で無効と判定されたが、腫瘍重量によるt-testではcontrol群とp<1%で推計学的有意差があった。さらにCPT−11 60mg/kg投与群よりIRは勝っていた。
4)SN−38ナノ粒子−コンドロイチン硫酸 10mg/kg投与群
3回目投与の3日後(d18)にはtumor volume IR 65.3%で有効を示し、SN−38 10mg/kg投与群に次いで高い腫瘍増殖抑制効果が認められた。しかし、4回目投与の2日後(d21)にmax. IR 65.4%を示した後は、IRが急速に低下した。実験終了日(d35)のtumor weight IRは28.5%で無効と判定されたが、腫瘍重量によるt-testではcontrol群とp<5%で推計学的有意差があった。
結論
SN−38ナノ粒子10mg/kg投与群はCPT−11投与群より明らかに高い腫瘍増殖抑制効果を示した。また、CPT−11投与群は投与休止により腫瘍増殖抑制効果が目立って低下するのに対し、SN−38ナノ粒子10mg/kg投与群は、投与休止により腫瘍増殖抑制効果は低下するものの、その程度はCPT−11投与群に比べてかなり小さかった。SN−38ナノ粒子10mg/kg投与群では実験期間中に体重減少もなく、特に重篤な副作用も見られなかった。
SN−38ナノ粒子−硫酸プロタミン 3mg/kg投与群、SN−38ナノ粒子−コンドロイチン硫酸 10mg/kg投与群はいずれもCPT−11投与群と同様な腫瘍増殖抑制効果を示した。特に3回目投与の3日後(d18)までとd32〜d35(実験終了日)においてCPT−11投与群に優っていた(図17参照)。
<実施例3>
10-Hydroxy-camptothecinナノ粒子の調製
SN−38ナノ粒子の調製と同様の手順で10-Hydroxy-camptothecinの濃度0.5mg/mlの懸濁液とした。
マグネチックスターラーで良く攪拌しながら、レーザー(430nm励起,40mJ/cm2,60分間)を照射した。レーザー照射後、遠心分離し、その上澄み液を取り、吸収スペクトル、HPLC、粒度分布及びSEM測定を行った(図18A、図18B及び図19参照)。その結果、生成したナノ化粒子の収率は50%以上で濃度は0.25mg/mlであった。
10-Hydroxy-camptothecinナノ粒子の細胞毒性試験
実施例1の(3−4)に記載のエリプチシンの細胞毒性試験と類似の方法で72hrs培養後の生細胞数を測定した。50%阻害活性は MCF-7 cellで100nMであった。対照として用いたレーザ未照射10-Hydroxy-camptothecinのDMSO溶液と水懸濁液はそれぞれ50%阻害活性が100nM,500nMであった。
この結果より、対照と比較してナノ化試料のより高い細胞内移行性が示された。
ヌードマウス移植ヒト癌を用いた10-Hydroxycamptothecinナノ粒子と塩酸イリノテカン(CPT−11)の抗腫瘍効果
試験施設
名称: 株式会社 実験癌化学療法研究所
住所: 大阪府箕面市白島3-13-1
材料および方法
1.被験物質:10-Hydroxycamptothecinナノ粒子
対比薬:塩酸イリノテカン(CPT−11)
2.使用ヒト癌株
胃癌H-23, 中分化型腺癌
3.実験動物
BALB/cAJcl−nuヌードマウス(雄性、日本クレア株式会社)
4.移植方法
ヌードマウスを頚椎脱臼により屠殺後、皮下で継代している腫瘍を摘出して腫瘍から被膜と壊死部を除き、RPMIメディウムにて洗浄し、2〜3mm角の出来るだけ均等な立方状の腫瘍片を作製した。この腫瘍片を生後満5週齢のマウス背部皮下にtrocarを用い移植した(移植日:Day0)。
5.実験方法
ノギスを用いて腫瘍の最大径(L)と直交する横径(W)及び厚み(D)を0.5mm単位まで計測し、V=1/2xLxWxDの式で求めた推定腫瘍体積が約100mm前後に達した時(移植後7日)、1群5匹で、推定腫瘍体積の平均値、標準誤差とも出来る限り均等となるよう対照群と治療群を設定し、投与を開始した。
実験終了は投与開始日から4週間後とし、腫瘍径を週2回、体重を投与時に計測し、腫瘍増殖の状態と薬剤の投与による影響をモニターするとともに、その他の身体的変化を観察した。動物は腫瘍移植時、投与時及び計測時にスリーブを通じてクリーンベンチに移した以外は、実験終了時まで終始小型ビニールアイソレータ内で飼育した。
6.投与量及び投与スケジュール
(1)Control 生理食塩水0.1ml/マウス体重10g(i.v.)
d7,d11,d14 計3回
(2)CPT−11 60mg/kg(i.v.) d7,d11,d14 計3回
(3)10-Hydroxycamptothecinナノ粒子
5mg/kg(i.v.) d7,d8,d11,d12,d14,d15 計6回
(4)10-Hydroxycamptothecinナノ粒子
2.5mg/kg(i.v.) d7,d8,d11,d12,d14,d15 計6回
7.調製液の作製方法
10-Hydroxycamptothecinナノ粒子溶液(0.25mg/ml)に1.8%NaCl液を同量加え、0.125mg/ml調製液とする。CPT−11は3mg/mlとなるよう生理食塩水を加える。
8.調製液の投与方法
10-Hydroxycamptothecinナノ粒子投与群には、0.125mg/ml調製液を調製後25分以内に投与した。5mg/kg投与群にはマウス体重10gあたり0.2mlずつを1日2回、2.5mg/kg投与群にはマウス体重10gあたり0.2mlずつを1日に1回、d7,d8,d11,d12,d14,d15の計6日静脈内投与した。
CPT−11投与群は、3mg/ml調製液を1日2回(60mg/kg投与群)、マウス体重10g当たり0.1mlずつ、d7,d11,d14の計3日静脈内投与した。Control群には生理食塩水をCPT−11と同様に計3回静脈内投与した。
9.効果判定法
実験終了日に摘出した対照群(C)と治療群(T)の平均腫瘍重量から腫瘍増殖抑制率(IR)を次式により求め、IRが58%に達しない時は「無効」、IR≧58%の時に「有効」、IR≧80%の時に「著効」と判定した。
IR=(1−T/C)x100(%)
各群間の腫瘍重量による統計学的有意差はStudent’s t検定(両側)で求めた。
さらに、実験期間中の対照群(C)と治療群(T)の平均推定腫瘍体積を経時的に計測し、同様にtumor volume IRを求めて実験期間中の最大増殖抑制率(max. IR)を求めた。さらに、実験終了時の平均推定腫瘍体積が投与開始時のそれよりも小さい時、縮小効果ありと判定する。
なお、薬剤の宿主への影響は、体重の変化と症状の出現により検討した。
結果
ヌードマウス移植ヒト胃癌H−23(中分化型腺癌)の317代目を用いて10-Hydroxycamptothecinナノ粒子の腫瘍増殖抑制効果をCPT−11の腫瘍増殖抑制効果と対比検討した。
1.腫瘍増殖抑制効果
1)CPT−11 60mg/kg投与群
投与開始後、腫瘍の増殖抑制が目立ち、3回目投与時(d14)にtumor volume IR 60.7%を示し、有効となった。さらに、3回目投与の4日後(d18)にmax. IR 69.0%を示した。Tumor volumeによるt-testではcontrol群とp<0.1%で推計学的有意差があった。しかし、それ以後は腫瘍の増殖が速くなり、3日後(d21)には50.7%と無効になった。その後は益々、増殖速度を速め、投与開始から18日後(d25)のtumor volume IRは、腫瘍の表面が潰瘍化し、増殖が頭打ちになったCPT−11 30mg/kg投与群よりも低下した。実験終了日(d35)のtumor volume IRは14.1%であった。Tumor weight IRは14.1%で無効と判定された。腫瘍重量によるt-testでもcontrol群と推計学的有意差がなかった。
2)10-Hydroxycamptothecinナノ粒子5mg/kg投与群
投与開始後、腫瘍の縮小が見られ、3回目投与日(d11)にはtumor volume IRは63.2%で、この時点で治療群中唯一、有効が認められた。その後は徐々に再増殖を始めたが、control群の増殖に比べると顕著に抑制効果が認められ、Tumor volume IRは高くなった。6回投与終了の3日後(d18)にはtumor volume IR 85.4%(max. IR)で著効と認められた。Tumor volumeによるt-testではcontrol群とp<0.1%で推計学的有意差が認められた。しかし、その後は再増殖の速度を速めてtumor volume IRは徐々に低下した。それでも6回投与終了の10日後(d25)にはtumor volume IR 62.3%を示し、治療群で唯一有効が認められた。しかし、それ以後control群の腫瘍増殖が頭打ちになったため、10-Hydroxycamptothecinナノ粒子投与群の腫瘍増殖速度は目立って速くなり、tumor volume IRは急激に低下した。実験終了日(d35)のtumor volume IRは23.1%であった。Tumor weight IRは19.4%で無効と判定された。腫瘍重量によるt-testでもcontrol群と推計学的有意差は認められなかった。
3)10-Hydroxycamptothecinナノ粒子2.5mg/kg投与群
投与開始後、腫瘍の増殖は緩やかで、著しい増殖抑制効果が見られた。4回投与の2日後(d14)にはtumor volume IRは68.0%で有効と認められた。6回投与の3日後(d18)にはmax. IR 76.4%を示した。Tumor volumeによるt-testではcontrol群とp<0.1%で推計学的有意差が認められた。さらに3日後(d21)にも68.0%で有効が認められた。終盤は腫瘍の表面が潰瘍化する動物も増えたためか、腫瘍の増殖も頭打ちとなり、5mg/kg投与群よりもtumor volume IRは高くなった。実験終了日(d35)のtumor volume IRは28.7%、tumor weight IRは25.5%で、無効と判定されたが、治療群の中では最も高かった。しかし、腫瘍重量によるt-testではcontrol群と推計学的有意差は認められなかった。
2.副作用
各治療群の最大体重減少率(max. wt. loss)はCPT−11 60mg/kgが0.4%で軽微、10-Hydroxycamptothecinナノ粒子2.5mg/kg投与群では、実験開始日からの体重の減少は見られなかった。
10-Hydroxycamptothecinナノ粒子5mg/kg投与群では6回投与終了日(d15)の3日後(d18)にmax. wt. loss 9.1%の中等度の体重減少が見られ、1群5匹中1匹(No.5)では軟便が認められた。しかし、その3日後(d21)には体重が回復し、以後は実験終了日まで増加し続けた。他の特に目立った副作用は見られなかった。Control群では、群の平均では実験開始日からの体重減少はなかったが、終盤は増大した腫瘍の重量を含んでいるにも拘らず、体重は低下の傾向があった。特に1群5匹中の1匹(No.2)の体重減少が著しく、全実験動物30匹中、唯一、実験終了日の体重が投与開始日の体重を下回った。Control群およびCPT−11 60mg/kg投与群の全身状態も良好ではなかった。
3.10-Hydroxycamptothecinナノ粒子とCPT−11の対比
CPT−11 60mg/kg投与群と10-Hydroxycamptothecinナノ粒子5mg/kg投与群を比較すると、いずれも投与終了後3あるいは2日後(d18)にmax. IRを示し、CPT−11投与群は69.0%(有効)、レーザー微粒子化10−ハイドロオキシカンプトテシンは85.4%(著効)であった。推定腫瘍体積によるt-testでp<5%で推計学的有意差をもって10-Hydroxycamptothecinナノ粒子が勝っていた。実験終了日(d35)の腫瘍重量における推計学的有意差はなかったが、IRはCPT−11が8.9%、10-Hydroxycamptothecinナノ粒子が19.4%で、10-Hydroxycamptothecinナノ粒子のIRが上回った。
10-Hydroxycamptothecinナノ粒子2.5mg/kg投与群でさえ、d18に示したmax. IRは76.4%で著効に近く、実験終了日(d35)の腫瘍重量によるIRは25.5%で、CPT−11 60mg/kg投与群のIRを上回った。
結論
今回のヌードマウス移植ヒト胃癌H−23を用いた抗腫瘍効果の検討では、10-Hydroxycamptothecinナノ粒子投与群の腫瘍増殖抑制効果がCPT−11投与群のそれを上回った(図20参照)。
本発明の水又はアルコール水溶液に難溶性の極粒子状抗癌剤、及びそれと高分子電解質とのコンプレックスは、注射剤として使用可能であり、バイオアベイラビリティーの向上を図り、副作用を低減するものである。
接着因子その他の特定組織細胞表面を認識する高分子電解質で特定組織ターゲテイング療法への応用も期待される。
抗癌剤を長時間にわたってゆっくりと外部へ放出でき、一度に多量の薬物が体内に入る場合に引き起こされる悪い副作用を抑制することも期待される。
また、粒径サイズを200nm〜50nmに調製することで、EPR効果(Enhancement Permeability and Retention Effect)を持たせてより癌細胞に選択的に取り込ませ安全かつ効果的な癌治療が期待される。
かくして本発明によれば、以下の1〜の発明が提供される。
1.平均直径50〜200nmで構造中に多重結合を1個以上有する粒子状の抗癌剤と、高分子電解質との、平均直径50〜250nmの粒子状コンプレックス。
2.抗癌剤がカンプトテシン誘導体である、請求項1記載の粒子状コンプレックス。
3.抗癌剤がエリプチシン誘導体である、請求項1記載の粒子状コンプレックス。
4.抗癌剤がポドフィロトキシン誘導体である、請求項1記載の粒子状コンプレックス。
5.高分子電解質が、プロタミン、ゲラチンA、コラーゲン、アルブミン、カゼイン、キトサン、ポリ−(L)−リジン、カルボキシメシルセルロース、アルギネート、ヘパリン、ヒアルロニックアシッド、コンドロイチンサルフェート、ゲラチンB、カラギーナン、デキストランサルフェート、ポリ−(L)−グルタミックアシッドその他の生体適合性高分子、生分解性高分子、DNA、RNA、酵素若しくは抗体その他の生体高分子、ポリメタクリリックアシッド、ポリジアリールジメチルアンモニウム又はその他の合成高分子又はそれらが適当なリンカーでクロスリンクされた高分子からなる群より選ばれた、請求項1記載の粒子状コンプレックス。
6.構造中に多重結合を1個以上有し、レーザ光を照射することにより平均直径50〜200nmに微細化した粒子状の抗癌剤。
7.抗癌剤がカンプトテシン誘導体である、請求項6記載の粒子状の抗癌剤。
8.抗癌剤がエリプチシン誘導体である、請求項6記載の粒子状の抗癌剤。
9.抗癌剤がポドフィロトキシン誘導体である、請求項6記載の粒子状の抗癌剤。
かくして本発明によれば、以下の1〜の発明が提供される。
1.構造中に多重結合を1個以上有し、吸光帯の範囲内で吸収曲線の長波長側の付け根付近における低吸収部位の波長のレーザ光を照射することにより平均直径50〜200nmに微細化した粒子状の難水溶性抗癌剤。
2.抗癌剤がカンプトテシン誘導体である、前記1記載の粒子状の難水溶性抗癌剤。
3.抗癌剤がエリプチシン誘導体である、前記1記載の粒子状の難水溶性抗癌剤。
4.抗癌剤がポドフィロトキシン誘導体である、前記1記載の粒子状の難水溶性抗癌剤。
5.前記1〜4のいずれか一に記載の粒子状の難水溶性抗癌剤に、高分子電解質を一層被覆した、平均直径50〜250nmの粒子状コンプレックス。
6.高分子電解質が、プロタミン、ゲラチンA、コラーゲン、アルブミン、カゼイン、キトサン、ポリ−(L)−リジン、カルボキシメシルセルロース、アルギネート、ヘパリン、ヒアルロニックアシッド、コンドロイチンサルフェート、ゲラチンB、カラギーナン、デキストランサルフェート、ポリ−(L)−グルタミックアシッド、ポリメタクリリックアシッド、ポリジアリールジメチルアンモニウムからなる群より選ばれた、前記5記載の粒子状コンプレックス。

Claims (8)

  1. 平均直径50〜200nmの粒子状の難水溶性医薬。
  2. 構造中に多重結合を1個以上有する、請求項1記載の難水溶性医薬。
  3. 医薬が抗癌剤である、請求項1又は2記載の難水溶性医薬。
  4. 抗癌剤がカンプトテシン誘導体である、請求項3記載の難水溶性医薬。
  5. 抗癌剤がエリプチシン誘導体である、請求項3記載の難水溶性医薬。
  6. 抗癌剤がポドフィロトキシン誘導体である、請求項3記載の難水溶性医薬。
  7. 請求項1〜6のいずれか一記載の粒子状の難水溶性医薬と高分子電解質との平均直径50〜250nmの粒子状コンプレックス。
  8. 高分子電解質が、プロタミン、ゲラチンA、コラーゲン、アルブミン、カゼイン、キトサン、ポリ−(L)−リジン、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ヘパリン、ヒアルロニックアシッド、コンドロイチンサルフェート、ゲラチンB、カラギーナン、デキストランサルフェート、ポリ−(L)−グルタミックアシッドその他の生体適合性高分子、生分解性高分子、DNA、RNA、酵素若しくは抗体その他の生体高分子、ポリメタクリリックアシッド、ポリジアリールジメチルアンモニウム又はその他の合成高分子又はそれらが適当なリンカーでクロスリンクされた高分子からなる群より選ばれた、請求項7記載のコンプレックス。
JP2007554780A 2006-05-15 2007-05-15 難水溶性医薬 Expired - Fee Related JP4204634B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006135677 2006-05-15
JP2006135677 2006-05-15
PCT/JP2007/059967 WO2007132852A1 (ja) 2006-05-15 2007-05-15 難水溶性医薬

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP4204634B2 JP4204634B2 (ja) 2009-01-07
JPWO2007132852A1 true JPWO2007132852A1 (ja) 2009-09-24

Family

ID=38685436

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007554780A Expired - Fee Related JP4204634B2 (ja) 2006-05-15 2007-05-15 難水溶性医薬

Country Status (4)

Country Link
US (2) US20070264350A1 (ja)
EP (1) EP2018875A1 (ja)
JP (1) JP4204634B2 (ja)
WO (1) WO2007132852A1 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2172193A1 (en) * 2008-10-02 2010-04-07 Capsulution Nanoscience AG Improved nanoparticulate compositions of poorly soluble compounds
JP5677409B2 (ja) * 2010-03-11 2015-02-25 浜松ホトニクス株式会社 微粒子分散液製造方法および微粒子分散液製造装置
CN102349871B (zh) * 2011-10-20 2013-07-31 中国科学院过程工程研究所 一种10-羟基喜树碱的纳微给药体系及其制备方法
WO2015088990A1 (en) 2013-12-09 2015-06-18 Durect Corporation Pharmaceutically active agent complexes, polymer complexes, and compositions and methods involving the same
JP6612081B2 (ja) * 2015-07-31 2019-11-27 東洋精糖株式会社 α−グルコシルルチン含有プテリジン誘導体ナノ粒子の製造方法およびα−グルコシルルチン含有プテリジン誘導体ナノ粒子
WO2019082991A1 (ja) * 2017-10-25 2019-05-02 メディギア・インターナショナル株式会社 生体分解性及び生体代謝性の腫瘍封止剤
CN113750255B (zh) * 2021-09-30 2023-10-31 大连民族大学 环境响应型透明质酸-鬼臼毒素前药胶束及其制备方法和应用

Family Cites Families (33)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2248828B1 (ja) * 1973-10-29 1977-04-15 Anvar
JPS6125041A (ja) 1984-07-13 1986-02-03 Sapporo Breweries Ltd 壜検査装置
US5399363A (en) * 1991-01-25 1995-03-21 Eastman Kodak Company Surface modified anticancer nanoparticles
JPH05125091A (ja) 1991-10-30 1993-05-21 Suntory Ltd 9−o−グリコシルエリプチシン誘導体
US5510118A (en) * 1995-02-14 1996-04-23 Nanosystems Llc Process for preparing therapeutic compositions containing nanoparticles
JP2757348B2 (ja) 1996-04-18 1998-05-25 株式会社同仁化学研究所 新規水溶性テトラゾリウム塩化合物
JPH1149679A (ja) 1997-08-07 1999-02-23 Tanabe Seiyaku Co Ltd G1期特異的に腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する方法
JP2001038246A (ja) 1999-08-02 2001-02-13 Japan Science & Technology Corp 生体微小成分の分離方法と分離装置
JP4457439B2 (ja) 1999-10-14 2010-04-28 Dic株式会社 有機化合物の微粒子の製造方法
ES2240222T3 (es) * 1999-12-20 2005-10-16 Nicholas J. Kerkhof Procedimiento para producir particulas nanometricas mediante secado por pulverizacion en lecho fluidizado.
JP2002142763A (ja) 2000-11-10 2002-05-21 Japan Science & Technology Corp 化学物質導入方法及び装置
FI20010115A0 (fi) 2001-01-18 2001-01-18 Orion Corp Menetelmä nanopartikkelien valmistamiseksi
PT1443912E (pt) 2001-10-12 2007-11-28 Elan Pharma Int Ltd Composições tendo uma combinação de características de libertação imediata e de libertação controlada
JP4293586B2 (ja) * 2002-08-30 2009-07-08 浜松ホトニクス株式会社 ナノ粒子の製造方法及び製造装置
AU2003287526A1 (en) * 2002-11-06 2004-06-03 Protein-stabilized liposomal formulations of pharmaceutical agents
JP4116404B2 (ja) 2002-11-18 2008-07-09 浜松ホトニクス株式会社 ナノ粒子化処理に用いるレーザ光照射条件の決定方法及び決定装置並びにナノ粒子の製造方法
JP4344153B2 (ja) 2003-03-07 2009-10-14 浜松ホトニクス株式会社 微粒子の製造方法及び製造装置、並びに注射剤の製造方法
JP4398182B2 (ja) 2003-06-16 2010-01-13 浜松ホトニクス株式会社 微粒子の製造方法、並びに注射剤の製造方法
WO2004080586A1 (ja) * 2003-03-07 2004-09-23 Hamamatsu Photonics K.K. 微粒子、その製造方法及び製造装置、並びに注射剤及びその製造方法
US20040247624A1 (en) * 2003-06-05 2004-12-09 Unger Evan Charles Methods of making pharmaceutical formulations for the delivery of drugs having low aqueous solubility
WO2004110405A1 (ja) * 2003-06-11 2004-12-23 Nara Machinery Co., Ltd. 薬物ナノ粒子、その粒子を使用した薬剤の製造方法および薬剤の製造装置
JP4287727B2 (ja) 2003-10-22 2009-07-01 浜松ホトニクス株式会社 微粒子の製造方法、及び製造装置
JP2005125258A (ja) 2003-10-24 2005-05-19 Hamamatsu Photonics Kk 微粒子、微粒子の製造方法、及び製造装置
JP4523386B2 (ja) 2003-11-17 2010-08-11 財団法人神奈川科学技術アカデミー マイクロチャンネル内表面の部分化学修飾方法とマイクロチャンネル構造体
WO2005049213A1 (ja) 2003-11-20 2005-06-02 Hamamatsu Photonics K.K. 微粒子、微粒子の製造方法、及び製造装置
JP4482322B2 (ja) 2003-12-18 2010-06-16 浜松ホトニクス株式会社 微粒子の製造方法、及び製造装置
JP4643155B2 (ja) 2004-02-24 2011-03-02 株式会社ABsize 薬効成分の超微粒子の製造方法
JP4398280B2 (ja) 2004-02-26 2010-01-13 浜松ホトニクス株式会社 微粒子の製造方法
JP4593144B2 (ja) 2004-03-26 2010-12-08 浜松ホトニクス株式会社 微粒子化条件の決定方法、決定装置、及び微粒子の製造方法、製造装置
JP4717376B2 (ja) 2004-05-27 2011-07-06 浜松ホトニクス株式会社 微粒子の製造方法、及び製造装置
JP4408245B2 (ja) * 2004-07-14 2010-02-03 浜松ホトニクス株式会社 微粒子の製造方法、及び製造装置
JP2006135677A (ja) 2004-11-05 2006-05-25 Nec Corp 光ネットワークのセンタ側終端装置
JP4142675B2 (ja) 2005-08-10 2008-09-03 株式会社ABsize フラーレン分散液の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP4204634B2 (ja) 2009-01-07
US20070264350A1 (en) 2007-11-15
US20110059183A1 (en) 2011-03-10
WO2007132852A1 (ja) 2007-11-22
US8399024B2 (en) 2013-03-19
EP2018875A1 (en) 2009-01-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Huang et al. Advances and perspectives in carrier-free nanodrugs for cancer chemo-monotherapy and combination therapy
Yu et al. Sequentially responsive biomimetic nanoparticles with optimal size in combination with checkpoint blockade for cascade synergetic treatment of breast cancer and lung metastasis
Hao et al. Supramolecular chemotherapy: carboxylated pillar [6] arene for decreasing cytotoxicity of oxaliplatin to normal cells and improving its anticancer bioactivity against colorectal cancer
JP4204634B2 (ja) 難水溶性医薬
Karaosmanoglu et al. Carrier-free nanodrugs for safe and effective cancer treatment
Mei et al. Carrier-free nanodrugs with efficient drug delivery and release for cancer therapy: from intrinsic physicochemical properties to external modification
Wu et al. Ultrasound-responsive polymeric micelles for sonoporation-assisted site-specific therapeutic action
Rahikkala et al. Mesoporous silica nanoparticles for targeted and stimuli‐responsive delivery of chemotherapeutics: A review
Ding et al. Plasmon‐driven catalytic chemotherapy augments cancer immunotherapy through induction of immunogenic cell death and blockage of IDO pathway
Pan et al. Nuclear-targeted drug delivery of TAT peptide-conjugated monodisperse mesoporous silica nanoparticles
Lima et al. Temperature-responsive polymeric nanospheres containing methotrexate and gold nanoparticles: A multi-drug system for theranostic in rheumatoid arthritis
Xu et al. A switchable NO-releasing nanomedicine for enhanced cancer therapy and inhibition of metastasis
Valencia-Lazcano et al. 5-Fluorouracil nano-delivery systems as a cutting-edge for cancer therapy
Voliani et al. Smart delivery and controlled drug release with gold nanoparticles: new frontiers in nanomedicine
Shen et al. A self-assembly nanodrug delivery system based on amphiphilic low generations of PAMAM dendrimers-ursolic acid conjugate modified by lactobionic acid for HCC targeting therapy
CA2699140A1 (en) Nanoparticles for cancer sonodynamic and photodynamic therapy
Wei et al. Construction of surface-modified polydopamine nanoparticles for sequential drug release and combined chemo-photothermal cancer therapy
Wang et al. Lipoyl ester terminated star PLGA as a simple and smart material for controlled drug delivery application
CN107812008A (zh) 一种近红外荧光成像小分子抗癌纳米药物的制备方法
Aghda et al. Design of smart nanomedicines for effective cancer treatment
Padya et al. Stimuli-responsive and cellular targeted nanoplatforms for multimodal therapy of skin cancer
Ni et al. Artificial cell-mediated photodynamic therapy enhanced anticancer efficacy through combination of tumor disruption and immune response stimulation
Harvey et al. Recent advances in nanoscale metal–organic frameworks towards cancer cell cytotoxicity: an overview
Saadh et al. Nanotechnology in drug delivery
Meng et al. Facile and one-step direct synthesis of poly (valine) as a robust drug nanocarrier for enhanced breast cancer therapy

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080916

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20081014

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111024

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121024

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131024

Year of fee payment: 5

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees