JPWO2007072980A1 - アペリンの新規用途 - Google Patents

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Abstract

本発明は、気分障害、薬物依存の予防・治療剤などを提供する。本発明のアペリン受容体APJの機能を促進する物質を含有してなる医薬組成物などは、気分障害、薬物依存などの予防・治療剤などとして有用である。

Description

本発明は、生理活性ペプチドであるアペリンの受容体であるAPJの機能を促進する物質の用途に関する。さらに詳しくは、本発明は、アペリン受容体APJの機能を促進する物質を含有してなる医薬組成物、該医薬組成物を用いることを特徴とする疾患、特に気分障害、薬物依存などの予防・治療剤などに関する。
気分障害は落ち込んだ気分が続いたり、普通ではない気分の高揚や異常が一定期間継続する精神障害を指す。一般的に知られている病名としては躁状態とうつ状態の両方が繰り返して出現する双極性障害と、うつ状態だけのうつ病に分類される。一方不安が長期間にわたり継続し、生活に支障をきたす場合不安症と診断されるが、不安とうつは全く異なるものではなく、密接に関係しているとされている。これらは過度の心配・焦燥感・集中困難などの精神的な症状以外にも身体的な症状、たとえば、睡眠障害や食欲不振、全身の倦怠感、疲労感などがあらわれることも多い。脳内の神経伝達物質であるセロトニンの濃度の低下、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの機能障害、コルチゾール系の分泌異常などがうつ病障害発症の原因と考えられているが、最近では海馬の異常、前頭葉・帯状回の血流低下など様々な生物学的要因も示唆されており、これらの改善を狙った薬物療法を中心とした治療が行われている。いくつかの抗うつ薬で不安症状の改善に効果が認められるようになり、不安症の治療にも抗うつ薬(うつ病障害の治療薬)が使用されている。特に選択的セロトニン再取込み阻害薬は、不安症の治療にも中心的に使用されている。しかし既存の抗うつ薬(うつ病障害の治療薬)は、肝心の抗うつ作用が現れる前に排尿困難や心臓障害などの副作用が現れることが知られ、副作用がなくかつ速効性のある薬剤の開発が望まれている。
一方、シンナー、麻薬、覚せい剤、睡眠薬、精神安定剤等の薬物を正当な目的から逸脱して、気分の転換や束の間の快楽のために使用した結果、生体がある薬物に対して精神依存および/または身体依存にある状態を薬物依存とよび、その結果として幻覚や妄想を含む精神障害が引き起こされる。通常は個人精神療法(カウンセリング)を中心として治療が行われている。その抑うつ症状などの精神障害を治療するための薬物療法は用いられているものの、直接薬物依存を治療するための薬剤は未だ皆無で、早期の開発が望まれている。
アペリンは、Gタンパク質共役型受容体の一つであるAPJの内因性リガンドとして単離された生理活性ペプチドである(WO99/33976号;Tatemoto et al.,Biochemical and Biophysical Research Communiations 251,471−476(1998))。アペリンは特異的かつ高親和性的にAPJに結合し、抑制性Gタンパク質(Gi)を介した細胞内シグナル伝達(cAMP産生の抑制等)を引き起こし、様々な生理活性を有することが明らかになっている。
APJが哺乳動物の脳に発現していること(Hosoya et al.,Journal of Biological Chemistry 275、21061−21067(2000))、とくにグリア細胞に発現していること(Medhurst et al.,Journal of Neurochemistry 84、1162−1172(2003))は明らかにされていたものの、アペリンとその受容体APJが気分障害や、薬物依存などの中枢性疾患の発症に関与していることは知られていなかった。
本発明はアペリンとその受容体APJの中枢神経系での機能を解明し、これらを介する新たな用途を提供することを課題とする。
本発明者らはアペリンの機能を解明するためにジーンチップ解析によって得られたヒトの各種中枢性疾患患者由来の脳サンプルにおけるAPJのmRNA発現変化を詳細に調べた。その結果、APJのmRNA発現がうつ病患者やコカインの乱用者の脳で減少していることを見出し、アペリンおよびAPJの機能を促進する物質(例、アゴニストなど)が気分障害、薬物乱用等の治療薬として使用できる可能性を見出した。本発明者らは、これらの知見を基に更に研究を進め、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)アペリン受容体の機能を促進する物質を含有する気分障害または薬物依存の予防・治療剤;
(2)アペリン受容体が、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質である上記(1)記載の剤;
(3)アペリン受容体が、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質である上記(1)記載の剤;
(4)アペリン受容体の機能を促進する物質が、アペリン受容体アゴニストである上記(1)記載の剤;
(5)アペリン受容体の機能を促進する物質が、(a)アペリン、(h)アペリンと同等以上の活性を有するアペリン誘導体または(c)アペリンとその受容体の結合を促進させる低分子合成化合物である上記(1)記載の剤;
(6)アペリンが、配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドである上記(5)記載の剤;
(7)アペリンが、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23または配列番号:24で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである上記(5)記載の剤;
(8)アペリンが、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:19または配列番号:23で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである上記(5)記載の剤;
(9)うつ病または不安症の予防・治療剤である上記(1)記載の剤;
(10)哺乳動物に対してアペリン受容体の機能を促進する物質を有効量投与することを特徴とする気分障害または薬物依存の予防・治療方法;
(11)アペリン受容体の機能を促進することを特徴とする気分障害または薬物依存の予防・治療方法;
(11a)アペリンとその受容体の結合を促進することを特徴とする気分障害または薬物依存の予防・治療方法;
(12)気分障害または薬物依存の予防・治療剤を製造するためのアペリン受容体の機能を促進させる物質の使用;
(13)アペリン受容体が、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質である上記(10)または(11)記載の方法;
(14)アペリン受容体が、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質である上記(10)または(11)記載の方法;
(15)アペリン受容体アゴニストを用いることを特徴とする、上記(10)または(11)記載の方法;
(16)(a)アペリン、あるいは(b)アペリンと同等以上の活性を有するアペリン誘導体または(c)アペリンとその受容体の結合を促進させる低分子合成化合物を用いることを特徴とする上記(10)または(11)記載の方法;
(17)アペリンが、配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドである上記(10)または(11)記載の方法;
(18)アペリンが、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23または配列番号:24で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである上記(10)または(11)記載の方法;
(19)アペリンが、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:19または配列番号:23で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである上記(10)または(11)記載の方法;
(19a)アペリン遺伝子またはアペリン遺伝子を含有する発現ベクターを用いることを特徴とする、上記(10)または(11)記載の方法;
(20)うつ病または不安症の予防・治療方法である上記(10)または(11)記載の方法;
(21)アペリンおよび/またはアペリン受容体を用いることを特徴とする気分障害または薬物依存の予防・治療剤のスクリーニング方法;
(22)アペリン遺伝子発現不全非ヒト動物を用いる上記(21)記載のスクリーニング方法;
(23)外来性の、アペリン受容体遺伝子またはその変異DNAを有するトランスジェニック非ヒト動物を用いる上記(21)記載のスクリーニング方法;
(24)アペリンおよび/またはアペリン受容体を含有する気分障害または薬物依存の治療剤のスクリーニング用キット
等を提供する。
図1は、オープンフィールド試験による野生型マウス(WT)およびアペリン遺伝子ノックアウトマウス(KO)の行動観察結果を示す。図1Aは、マウスを装置の底面の、一番中央の区画に置いた瞬間を0秒とし、そこから完全に隣接区画に移動するまでに要した時間(潜時、単位は秒)を示す。図1Bは、試験開始から5分間の総カウント数(総運動量)を示す。測定値はいずれも平均値±標準誤差で表した。1群当たりn=10。*はp<0.05、**はp<0.01(いずれも野生型マウス(WT)と比較)を示す。
図2は、尾懸垂試験による野生型マウス(WT)およびアペリン遺伝子ノックアウトマウス(KO)の無動時間(単位は秒)測定結果を示す。測定値はいずれも平均値±標準誤差で表した。1群当たりn=10。*はp<0.05(野生型マウス(WT)と比較)を示す。
本発明は、アペリン受容体APJの機能を促進する物質(以下、本発明の促進剤ともいう)を含有してなる医薬組成物、該医薬組成物を用いることを特徴とする疾患、特に気分障害、薬物依存などの予防・治療剤などを提供する。本発明の医薬組成物を構成するアペリン受容体の機能を促進する物質としては、例えば受容体に対してアゴニスト活性を有する化合物、ポリペプチドなどのアペリン受容体アゴニスト、アペリン、アペリンと同等以上の活性を有するアペリン誘導体(例、WO00/18793、WO01/70769などに記載のアペリン誘導体など)、もしくはアペリンの受容体であるAPJを活性化する低分子化合物もあげられる。また、アペリン受容体の機能を促進する物質としては、例えば、アペリン遺伝子(アペリンをコードするDNAなど)またはアペリン遺伝子を含有する発現ベクターなどであってもよく、アペリン受容体の機能を促進する物質と同様な目的で、アペリンとその受容体の結合を促進する物質を用いてもよい。
本明細書において「アペリン」とは、ヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)のあらゆる組織(たとえば、下垂体、膵臓、脳、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管、血管、心臓など)または細胞などに由来するペプチドであって、例えば、配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドを意味する。
配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドとしては、配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、アペリン受容体の機能を促進する活性を有するペプチドが好ましい。配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドには、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドなども含まれる。すなわち、本明細書において、「アペリン」とは、(1)配列番号:3で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド、(2)配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド、(3)配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド、(4)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドなどを含む。
ここで、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9で表されるアミノ酸配列と「実質的に同一のアミノ酸配列」としては、(1)配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9で表されるアミノ酸配列中の1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9で表されるアミノ酸配列中に1個以上20個以下、好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下のアミノ酸が付加した(または挿入された)アミノ酸配列、(3)配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9で表されるアミノ酸配列中の1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を含有するペプチドなどがあげられる。
配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドとしては、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9で表されるアミノ酸配列と約50〜99.9%(好ましくは70〜99.9%、より好ましくは80〜99.9%、さらに好ましくは90〜99.9%)の相同性を有するアミノ酸配列を含有するポリペプチドがあげられる。
本発明の促進剤が対象とするアペリンとしては特に、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9で表されるアミノ酸配列を含有するアペリン(前駆体)が好ましく、さらには配列番号:7で表されるアミノ酸配列を含有するアペリン(ヒト型アペリン(前駆体))が好ましい。
また、配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドには、配列番号:13、配列番号:14または配列番号:15で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドなども含まれる。すなわち、本明細書において、「アペリン」とは、(1)配列番号:13で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド、(2)配列番号:14で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド、(3)配列番号:15で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドなどを含む。
ここで、配列番号:13、配列番号:14または配列番号:15で表されるアミノ酸配列と「実質的に同一のアミノ酸配列」としては、(1)配列番号:13、配列番号:14または配列番号:15で表されるアミノ酸配列中の1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下、特に好ましくは1個以上2個以下、最も好ましくは1個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号:13、配列番号:14または配列番号:15で表されるアミノ酸配列中に1個以上20個以下、好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、特に好ましくは1個以上7個以下、とりわけ好ましくは1個以上5個以下、最も好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が付加した(または挿入された)アミノ酸配列、(3)配列番号:13、配列番号:14または配列番号:15で表されるアミノ酸配列中の1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下、特に好ましくは1個以上2個以下、最も好ましくは1個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を含有するペプチドなどがあげられる。
配列番号:13、配列番号:14または配列番号:15で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドとしては、配列番号:13、配列番号:14または配列番号:15で表されるアミノ酸配列と約50〜99.9%(好ましくは70〜99.9%、より好ましくは80〜99.9%、さらに好ましくは90〜99.9%、特に好ましくは93〜99.9%、最も好ましくは95〜99.9%)の相同性を有するアミノ酸配列を含有するポリペプチドがあげられる。
本発明の促進剤が対象とするアペリンとしては特に、配列番号:13、配列番号:14または配列番号:15で表されるアミノ酸配列を含有するアペリン(アペリン−36)が好ましく、さらには配列番号:13で表されるアミノ酸配列を含有するアペリン(ヒトアペリン−36)が好ましい。
配列番号:13、配列番号:14または配列番号:15で表されるアミノ酸配列の第1番目〜25番目および第35番目〜36番目のアミノ酸配列中、(1)1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下、特に好ましくは1個以上2個以下、最も好ましくは1個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)1個以上20個以下、好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、特に好ましくは1個以上7個以下、とりわけ好ましくは1個以上5個以下、最も好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸のアミノ酸が付加した(または挿入された)アミノ酸配列、(3)1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下、特に好ましくは1個以上2個以下、最も好ましくは1個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を含有するペプチドなども、「アペリン」として好ましい。
さらに、配列番号:13、配列番号:14または配列番号:15の第2番目〜36番目、第3番目〜36番目、第4番目〜36番目、第5番目〜36番目、第6番目〜36番目、第7番目〜36番目、第8番目〜36番目、第9番目〜36番目、第10番目〜36番目、第11番目〜36番目、第12番目〜36番目、第13番目〜36番目、第14番目〜36番目、第15番目〜36番目、第16番目〜36番目、第17番目〜36番目、第18番目〜36番目、第19番目〜36番目、第20番目〜36番目、第21番目〜36番目(配列番号:20)、第22番目〜36番目(配列番号:19)、第23番目〜36番目(配列番号:18)、第24番目〜36番目(配列番号:12、アペリン−13)、第25番目〜36番目(配列番号:23)、第26番目〜36番目(配列番号:16)、第1番目〜35番目、第2番目〜35番目、第3番目〜35番目、第4番目〜35番目、第5番目〜35番目、第6番目〜35番目、第7番目〜35番目、第8番目〜35番目、第9番目〜35番目、第10番目〜35番目、第11番目〜35番目、第12番目〜35番目、第13番目〜35番目、第14番目〜35番目、第15番目〜35番目、第16番目〜35番目、第17番目〜35番目、第18番目〜35番目、第19番目〜35番目、第20番目〜35番目(配列番号:21)、第21番目〜35番目、第22番目〜35番目、第23番目〜35番目、第24番目〜35番目(配列番号:24)、第25番目〜35番目、第26番目〜35番目、第1番目〜34番目、第2番目〜34番目、第3番目〜34番目、第4番目〜34番目、第5番目〜34番目、第6番目〜34番目、第7番目〜34番目、第8番目〜34番目、第9番目〜34番目、第10番目〜34番目、第11番目〜34番目、第12番目〜34番目、第13番目〜34番目、第14番目〜34番目、第15番目〜34番目、第16番目〜34番目、第17番目〜34番目、第18番目〜34番目、第19番目〜34番目(配列番号:22)、第20番目〜34番目、第21番目〜34番目、第22番目〜34番目、第23番目〜34番目、第24番目〜34番目(配列番号:17)、第25番目〜34番目、第26番目〜34番目(配列番号:11)のアミノ酸配列からなるペプチド、特に、第21番目〜36番目(配列番号:20)、第22番目〜36番目(配列番号:19)、第23番目〜36番目(配列番号:18)、第24番目〜36番目(配列番号:12、アペリン−13)、第25番目〜36番目(配列番号:23)、第26番目〜36番目(配列番号:16)、第20番目〜35番目(配列番号:21)、第24番目〜35番目(配列番号:24)、第19番目〜34番目(配列番号:22)、第24番目〜34番目(配列番号:17)、第26番目〜34番目(配列番号:11)のアミノ酸配列からなるペプチドも、「アペリン」として好ましい。
また、配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドには、配列番号:12で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドなども含まれる。すなわち、本明細書において、「アペリン」とは、配列番号:12で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドなどを含む。
ここで、配列番号:12で表されるアミノ酸配列と「実質的に同一のアミノ酸配列」としては、(1)配列番号:12で表されるアミノ酸配列中の1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下、特に好ましくは1個以上2個以下、最も好ましくは1個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号:12で表されるアミノ酸配列中に1個以上20個以下、好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、特に好ましくは1個以上7個以下、とりわけ好ましくは1個以上5個以下、最も好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が付加した(または挿入された)アミノ酸配列、(3)配列番号:12で表されるアミノ酸配列中の1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下、特に好ましくは1個以上2個以下、最も好ましくは1個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を含有するペプチドなどがあげられる。
配列番号:12で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドとしては、配列番号:12で表されるアミノ酸配列と約50〜99.9%(好ましくは70〜99.9%、より好ましくは80〜99.9%、さらに好ましくは90〜99.9%、特に好ましくは93〜99.9%)の相同性を有するアミノ酸配列を含有するポリペプチドがあげられる。
本発明の促進剤が対象とするアペリンとしては特に、配列番号:12で表されるアミノ酸配列を含有するアペリン(アペリン−13)が好ましい。
配列番号:12で表されるアミノ酸配列の第1番目〜2番目および第12番目〜13番目のアミノ酸配列中、(1)1個以上4個以下、好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1個以上2個以下、特に好ましくは1個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)1個以上20個以下、好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、特に好ましくは1個以上7個以下、とりわけ好ましくは1個以上5個以下、最も好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が付加した(または挿入された)アミノ酸配列、(3)1個以上4個以下、好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1個以上2個以下、特に好ましくは1個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を含有するペプチドなども、「アペリン」として好ましい。
さらに、配列番号:12の第2番目〜13番目(配列番号:23)、第3番目〜13番目(配列番号:16)、第1番目〜12番目(配列番号:24)、第2番目〜12番目、第3番目〜12番目、第1番目〜11番目(配列番号:17)、第2番目〜11番目、第3番目〜11番目(配列番号:11)のアミノ酸配列からなるペプチド、特に、第2番目〜13番目(配列番号:23)、第3番目〜13番目(配列番号:16)、第1番目〜12番目(配列番号:24)、第1番目〜11番目(配列番号:17)、第3番目〜11番目(配列番号:11)のアミノ酸配列からなるペプチドも、「アペリン」として好ましい。
配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドには、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9のアミノ酸配列の第42番目〜77番目(配列番号:13、配列番号:14または配列番号:15)、第43番目〜77番目、第44番目〜77番目、第45番目〜77番目、第46番目〜77番目、第47番目〜77番目、第48番目〜77番目、第49番目〜77番目、第50番目〜77番目、第51番目〜77番目、第52番目〜77番目、第53番目〜77番目、第54番目〜77番目、第55番目〜77番目、第56番目〜77番目、第57番目〜77番目、第58番目〜77番目、第59番目〜77番目、第60番目〜77番目、第61番目〜77番目、第62番目〜77番目(配列番号:20)、第63番目〜77番目(配列番号:19)、第64番目〜77番目(配列番号:18)、第65番目〜77番目(配列番号:12、アペリン−13)、第66番目〜77番目(配列番号:23)、第67番目〜77番目(配列番号:16)、第42番目〜76番目、第43番目〜76番目、第44番目〜76番目、第45番目〜76番目、第46番目〜76番目、第47番目〜76番目、第48番目〜76番目、第49番目〜76番目、第50番目〜76番目、第51番目〜76番目、第52番目〜76番目、第53番目〜76番目、第54番目〜76番目、第55番目〜76番目、第56番目〜76番目、第57番目〜76番目、第58番目〜76番目、第59番目〜76番目、第60番目〜76番目、第61番目〜76番目(配列番号:21)、第62番目〜76番目、第63番目〜76番目、第64番目〜76番目、第65番目〜76番目(配列番号:24)、第66番目〜76番目、第67番目〜76番目、第42番目〜75番目、第43番目〜75番目、第44番目〜75番目、第45番目〜75番目、第46番目〜75番目、第47番目〜75番目、第48番目〜75番目、第49番目〜75番目、第50番目〜75番目、第51番目〜75番目、第52番目〜75番目、第53番目〜75番目、第54番目〜75番目、第55番目〜75番目、第56番目〜75番目、第57番目〜75番目、第58番目〜75番目、第59番目〜75番目、第60番目〜75番目(配列番号:22)、第61番目〜75番目、第62番目〜75番目、第63番目〜75番目、第64番目〜75番目、第65番目〜75番目(配列番号:17)、第66番目〜75番目、第67番目〜75番目(配列番号:11)のアミノ酸配列からなるペプチドが含まれる。配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドとしては、配列番号:3のアミノ酸配列の第42番目〜77番目(配列番号:14);配列番号:7のアミノ酸配列の第42番目〜77番目(配列番号:13);配列番号:9のアミノ酸配列の第42番目〜77番目(配列番号:15);配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9のアミノ酸配列の、第62番目〜77番目(配列番号:20)、第63番目〜77番目(配列番号:19)、第64番目〜77番目(配列番号:18)、第65番目〜77番目(配列番号:12、アペリン−13)、第66番目〜77番目(配列番号:23)、第67番目〜77番目(配列番号:16)、第61番目〜76番目(配列番号:21)、第65番目〜76番目(配列番号:24)、第60番目〜75番目(配列番号:22)、第65番目〜75番目(配列番号:17)、第67番目〜75番目(配列番号:11)のアミノ酸配列からなるペプチドが好ましい。
本発明の促進剤が対象とするアペリンの受容体(APJ)としては、例えば、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質が好ましい。ここで、「実質的に同一」とは、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と約50〜99.9%(好ましくは70〜99.9%、より好ましくは80〜99.9%、さらに好ましくは90〜99.9%)の相同性を有することを意味する。
また、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と「実質的に同一のアミノ酸配列」としては、(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号:1で表されるアミノ酸配列中に1個以上20個以下、好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下のアミノ酸が付加した(または挿入された)アミノ酸配列、(3)配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を含有するペプチドなども含まれる。
本明細書におけるポリペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)を示す。本発明のポリペプチドはC末端が通常カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート(−COO−)であるが、C末端がアミド(−CONH)またはエステル(−COOR)であってもよく、塩を形成していてもよい。エステルのRとしては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、ベンジル、フェネチル、ベンズヒドリルなどのフェニル−C1−2アルキル、もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキルなどのC7−14アラルキル基、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などがあげられる。本発明のポリペプチドがC末端以外にカルボキシル基またはカルボキシレートを有している場合、それらの基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のポリペプチドに含まれる。この時のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。本発明のポリペプチドにはまた、GlnのN端側が生体内で切断され、該Glnがピログルタミン酸化したものなども含まれる。
さらに本発明のポリペプチドはN末端にMetが付加したものも含まれる。また、これらの部分ペプチドであってもよい。
本発明のポリペプチドの塩としては、生理学的に許容される塩基(例えばアルカリ金属など)や酸(有機酸、無機酸)との塩が用いられるが、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。このような塩としては例えば無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明のポリペプチドは、ヒトや温血動物の組織または細胞からポリペプチドを精製する方法によって製造することもできるし、後述のポリペプチド合成法に準じて製造することもできる。また、後述するポリペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。
ヒトや温血動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや温血動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行い、該抽出液を、塩析、透析、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
上記したように本発明のポリペプチドは、公知のポリペプチドの合成法に従って、あるいは本発明のポリペプチドを含有するポリペプチドを適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明のポリペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としてはたとえば、以下の(a)〜(e)に記載された方法があげられる。
(a)M.BodanszkyおよびM.A.Ondetti、Peptide Synthesis,Interscience Publishers,New York(1966年)
(b)SchroederおよびLuebke、The Peptide,Academic Press,New York(1965年)
(c)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株)(1975年)
(d)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座1、タンパク質の化学IV、205、(1977年)
(e)矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻ヘフチド合成 広川書店
また、反応後は通常の精製法、たとえば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明のポリペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるポリペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
ポリペプチドのアミド体は、アミド形成に適した市販のペプチド合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などをあげることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするペプチドの配列通りに、公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、必要に応じて高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のポリペプチドを取得する。
上記した保護されたアミノ酸の縮合に関しては、ペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としてはDCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなどがあげられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBtなど)とともに保護されたアミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護されたアミノ酸の活性化を行ったのちに樹脂に添加することができる。保護されたアミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、ペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。たとえばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジンなどの三級アミン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はペプチド結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5ないし4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化して、後の反応に影響を及ぼさないようにすることができる。
原料アミノ酸のアミノ基の保護基としては、たとえば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどがあげられる。カルボキシル基の保護基としては、たとえばRとして上記したC1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基、C7−14アラルキル基の他、2−アダマンチル、4−ニトロベンジル、4−メトキシベンジル、4−クロロベンジル、フェナシル基およびベンジルオキシカルボニルヒドラジド、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジドなどがあげられる。
セリンおよびスレオニンの水酸基は、たとえばエステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては例えばアセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素から誘導される基などがあげられる。また、エーテル化に適する基としては、たとえばベンジル基、テトラヒドロピラニル基、ターシャリーブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、たとえばBzl、Cl−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチルなどがあげられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどがあげられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、たとえば対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコール(たとえば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル]などがあげられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、たとえば対応するリン酸アミドがあげられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、たとえばPd黒あるいはPd炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元などもあげられる。上記酸処理による脱離反応は一般に−20℃〜40℃の温度で行われるが、酸処理においてはアニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護および保護基、ならびにその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基あるいは公知の手段から適宜選択しうる。
ポリペプチドのアミド体を得る別の方法としては、まず、カルボキシル末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化した後、アミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除いたペプチド(またはアミノ酸)とを製造し、この両ペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ポリペプチドを得ることができる。この粗ポリペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のポリペプチドのアミド体を得ることができる。
ポリペプチドのエステル体を得るにはカルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、ポリペプチドのアミド体と同様にして所望のポリペプチドのエステル体を得ることができる。
本発明のポリペプチドとしては、上記したポリペプチドと同様の作用(例、血管内皮細胞の遊走・増殖阻害作用、血管新生阻害作用など)を有しているものであれば、どのようなペプチドであってもよい。このようなペプチドとしては例えば、上記した配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9で表されるアミノ酸配列の部分配列などを含有するペプチドから1個以上のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列を含有するペプチドをあげることができる。具体的には、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9で表されるアミノ酸配列の部分配列を有するペプチドなどが好ましい。
本発明のポリペプチドはさらに、機能あるいは性質がよく知られているタンパク質との融合タンパク質であってもよい。
本発明のポリペプチドおよび後述の本発明のポリペプチドをコードするDNAは、公知の方法で標識化されていてもよく、具体的にはアイソトープ標識化されたもの、蛍光標識されたもの(例えば、フルオレセインなどによる蛍光標識)、ビオチン化されたものまたは酵素標識されたものなどがあげられる。
本発明のポリペプチド(中でもアペリン受容体)をコードするDNAとしては、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する受容体タンパク質に対する結合能を有するポリペプチドをコードする塩基配列を含有するDNAであればいかなるものであってもよい。具体的には、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した組織・細胞由来のcDNA、前記した組織・細胞由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターはバクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した組織・細胞よりRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、(1)配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8または配列番号:10で表される塩基配列、またはその部分配列を有するDNAを含有するDNA、(2)ストリンジェントな条件下で(1)で規定された配列とハイブリダイズする哺乳動物由来のDNA、(3)遺伝コードの縮重のため(1)および(2)に定められている配列とハイブリッド形成しないが、同一アミノ酸配列をもつポリペプチドをコードするDNAなどが用いられる。ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じた方法に従って行うことができる。上記ストリンジェントな条件としては、例えば42℃、50%ホルムアミド、4×SSPE(1×SSPE=150mMNaCl,10mM NaHPO・HO,1mM EDTA,pH7.4)、5×デンハート溶液、0.1%SDSである。
本発明のポリペプチドをコードするDNAは以下の遺伝子工学的手法によっても製造することができる。
本発明のポリペプチドを完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、(1)本発明のポリペプチドの部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いて公知のPCR法によって前記DNAライブラリー等から目的とするDNAを増幅する方法、または(2)適当なベクターに組み込んだDNAを例えば本発明のポリペプチドの一部あるいは全領域を有するDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別する方法があげられる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えばMolecular Cloning(2nd ed.;J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法などに従って行われる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行う。
クローン化された本発明のポリペプチドをコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することも
できる。
本発明のポリペプチドの発現ベクターは、例えば、(a)本発明のポリペプチドをコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(b)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。
形質転換する際の宿主が動物細胞である場合には、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどが利用できる。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、T7プロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADH1プロモーター、GALプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Ampと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neoと略称する場合がある、G418耐性)等があげられる。特に、CHO(dhfr)細胞を用いてDHFR遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、チミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、ポリペプチドのN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、メイテイングファクターα(MFα)・シグナル配列、インベルターゼ・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、例えばインシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築されたポリペプチドをコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
宿主としては、たとえばエシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫または昆虫細胞、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,60巻,160(1968)〕,JM103〔Nucleic Acids Research,9巻,309(1981)〕,JA221〔Journal of Molecular Biology,120巻,517(1978)〕,HB101〔Journal of Molecular Biology,41巻,459(1969)〕,C600〔Genetics,39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、たとえばバチルス・サチルス(Bacillus subtilis)MI114〔Gene,24巻,255(1983)〕,207−21〔Journal of Biochemistry,95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、たとえばサッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R,NA87−11A,DKD−5D,20B−12などが用いられる。
昆虫としては、例えばカイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、Nature,315巻,592(1985)〕。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞〔以上、Vaughn,J.L.ら、In Vitro,13巻,213−217頁(1977年)〕などが用いられる。
動物細胞としては、たとえばサルCOS−7細胞,Vero細胞,チャイニーズハムスター細胞CHO,DHFR遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(dhfr CHO細胞),マウスL細胞,マウス3T3細胞、マウスミエローマ細胞,ヒトHEK293細胞、ヒトFL細胞、293細胞、C127細胞、BALB3T3細胞、Sp−2/O細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、たとえばProc.Natl.Acad.Sci.USA,69巻,2110(1972)やGene,17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なわれる。
バチルス属菌を形質転換するには、たとえばMolecular & General Genetics,168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行われる。
酵母を形質転換するには、たとえばProc.Natl.Acad.Sci.USA,75巻,1929(1978)に記載の方法に従って行なわれる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、たとえばBio/Technology,6巻,47−55頁(1988)などに記載の方法に従って行なわれる。
動物細胞を形質転換するには、たとえばVirology,52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なわれる。
発現ベクターの細胞への導入方法としては、例えば、リポフェクション法〔Felgner,P.L.et al.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,84巻,7413頁(1987年)〕、リン酸カルシウム法〔Graham,F.L.and van der Eb,A.J.Virology,52巻,456−467頁(1973年)〕、電気穿孔法〔Nuemann,E.et al.EMBO J.,1巻,841−845頁(1982年)〕等があげられる。
このようにして、本発明のポリペプチドをコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体が得られる。
なお、動物細胞を用いて、本発明のポリペプチドを安定に発現させる方法としては、上記の動物細胞に導入された発現ベクターが染色体に組み込まれた細胞をクローン選択によって選択する方法がある。具体的には、上記の選択マーカーを指標にして形質転換体を選択する。さらに、このように選択マーカーを用いて得られた動物細胞に対して、繰り返しクローン選択を行うことにより本発明のポリペプチドの高発現能を有する安定な動物細胞株を得ることができる。また、dhfr遺伝子を選択マーカーとして用いた場合、MTX濃度を徐々に上げて培養し、耐性株を選択することにより、dhfr遺伝子とともに、本発明のポリペプチドをコードするDNAを細胞内で増幅させて、さらに高発現の動物細胞株を得ることもできる。
上記の形質転換体を本発明のポリペプチドをコードするDNAが発現可能な条件下で培養し、本発明のポリペプチドを生成、蓄積せしめることによって、本発明のポリペプチドを製造することができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、たとえばグルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、たとえばアンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としてはたとえば塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがあげられる。また、酵母、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えばグルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔Miller,Journal of Experiments in Molecular Genetics,431−433,Cold Spring Harbor Laboratory,New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、たとえば3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行い、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行い、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、たとえばバークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian,K.L.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter,G.A.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81巻,5330(1984)〕があげられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace,T.C.C.,Nature,195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、たとえば約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔Science,122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔Virology,8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association 199巻,519(1967)〕,199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
特にCHO(dhfr)細胞およびdhfr遺伝子を選択マーカーとして用いる場合には、チミジンをほとんど含まない透析ウシ胎児血清を含むDMEM培地を用いるのが好ましい。
上記培養物から本発明のポリペプチドを分離精製するには、例えば下記の方法により行なうことができる。
本発明のポリペプチドを培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりポリペプチドの粗抽出液を得る方法などが適宜用い得る。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク変性剤や、Triton(登録商標)X−100などの界面活性剤が含まれていてもよい。
培養液中にポリペプチドが分泌される場合には、培養終了後、公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれる本発明のポリペプチドの精製は、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行うことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法やクロマトフォーカシングなどの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
このようにして得られる本発明のポリペプチドが遊離体で得られた場合には、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生する本発明のポリペプチドを、精製前または精製後に適当なタンパク修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。タンパク修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
このようにして生成する本発明のポリペプチドの存在は特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイなどにより測定することができる。
上記のようにして得られたアペリンおよび/またはその受容体を用いて、それらの結合を促進する物質を以下のようにして取得することができる。
本発明が提供するアペリンとその受容体の結合を促進する物質について、さらにアペリン受容体の機能を促進する物質としてのアペリン受容体アゴニスト(本発明のアゴニスト)について、詳細に説明する。
本発明のアゴニストとしては、例えばペプチド、タンパク質、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これらの物質は新規物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。本発明のアゴニストは塩を形成していてもよい。該アゴニストの塩としては、前記した本発明のポリペプチドの塩と同様のものが用いられる。
本発明のアゴニストは、アペリン受容体の機能を促進することができるので、アペリンとその受容体を用いてスクリーニングすることができる。以下に、スクリーニング方法について説明する。
本発明のアゴニストは、(i)アペリン受容体にアペリンを接触させた場合と(ii)アペリン受容体に試験化合物を接触させた場合との比較を行なうことを特徴とするアペリン受容体の機能を促進する物質のスクリーニング方法を用いて得ることができる。本発明のスクリーニング方法においては、(a)(i)アペリン受容体にアペリンを接触させた場合と(ii)アペリン受容体にアペリンおよび試験化合物を接触させた場合における、例えばアペリン受容体に対するアペリンの結合量などを測定して、その結果を比較する;または、(b)(i)アペリン受容体にアペリンを接触させた場合と(ii)アペリン受容体に試験化合物を接触させた場合における、例えばアペリン受容体を介した細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの変化などを促進する活性など)などを測定して、その結果を比較する。
本発明のアゴニストのスクリーニング方法は、具体的には、
(1)標識したアペリンをアペリン受容体に接触させた場合と、標識したアペリンおよび試験化合物をアペリン受容体に接触させた場合における、標識したアペリンのアペリン受容体に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするアペリン受容体の機能を促進する物質のスクリーニング方法;
(2)標識したアペリンをアペリン受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、標識したアペリンおよび試験化合物をアペリン受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、標識したアペリンの該細胞または該膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするアペリン受容体の機能を促進する物質のスクリーニング方法;
(3)標識したアペリンを、アペリン受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したアペリン受容体に接触させた場合と、標識したアペリンおよび試験化合物をアペリン受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したアペリン受容体に接触させた場合における、標識したアペリンの該アペリン受容体に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするアペリン受容体の機能を促進する物質のスクリーニング方法;
などがあげられる。
さらに具体的には、アペリンとアペリン受容体との結合を促進する物質のスクリーニングを行うには、まずアペリン受容体を含有する細胞または細胞の膜画分を、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することによりレセプター標品を調製する。バッファーには、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのアペリンとアペリン受容体との結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによるアペリン受容体やアペリンの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E−64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。0.01ml〜10mlの該アペリン受容体溶液に、一定量(5000cpm〜500000cpm)の標識したアペリンまたはその修飾体を添加し、同時に10−4〜10−1μMの試験化合物を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識のアペリンまたはその修飾体を加えた反応チューブも用意する。反応は約0℃〜約50℃、望ましくは約4℃〜約37℃で約20分〜約24時間、望ましくは約30分〜約3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで計測する。拮抗する物質がない場合のカウント(B)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B−NSB)を100%としたとき、特異的結合量(B−NSB)が、例えば100%以上になる試験化合物を候補物質として選択することができる。
試験化合物としては、例えばペプチド、タンパク質、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これらの物質は新規物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。試験化合物は塩を形成していてもよい。試験化合物の塩としては、前記した本発明のポリペプチドの塩と同様のものが用いられる。
このようにして得られたアゴニストは、アペリンが有する生理活性を促進することができるので、アペリンの活性を促進する安全で低毒性な医薬として有用である。
[本発明のアゴニストを含有してなる医薬組成物]
上記の記載に基づいて製造される本発明のアゴニストを含有してなる医薬組成物は、常套手段に従って製造・使用することができる。例えば、必要に応じて糖衣や腸溶性被膜を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、徐放剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤や徐放剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物またはその塩を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められる単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるように調整する。本発明のアゴニストは単独でも用いられるが、組成物として用いる場合、有効成分として製剤中に10%から90%配合される。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施にしたがって処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などがあげられ、適当な溶解補助剤、たとえばアルコール(たとえばエタノール)、ポリアルコール(たとえばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(たとえばポリソルベート80(TM)、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油などがあげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えばヒトや哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヒッジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
本発明の医薬組成物の投与量は、症状などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人の双極性障害患者(体重60kgとして)においては、一日につき有効成分(すなわち本発明のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩)を約0.1から100mg、好ましくは約1.0から50mg、より好ましくは約1.0から20mgとなるよう投与する。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、たとえば注射剤の形では成人の双極性障害患者(体重60kgとして)への投与においては、一日につき有効成分(すなわち本発明のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩)を約0.01から30mg程度、好ましくは約0.1から20mg程度、より好ましくは約0.1から10mg程度となるように静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
本発明のアペリン、アペリンと同等以上の活性を有するアペリン誘導体あるいはアペリン受容体であるAPJを活性化する低分子化合物などのアペリン受容体の機能を促進する物質またはアペリンとその受容体の結合を促進する物質は、例えば、安全で低毒性な、気分障害、薬物依存の予防・治療薬または治療補助薬として使用することができる。
気分障害としては、例えば、双極性障害、うつ病、躁病、反復性うつ病、持続性気分感情障害(例、気分循環症、気分変調症など)、抑うつ神経症、不安症(例、全般性不安障害、社会不安障害、強迫性障害、パニック障害、外傷後ストレス障害など)、睡眠障害、摂食障害、自閉症、老人性痴呆、統合失調症、注意欠陥多動性障害、心身症などが挙げられる。
[アペリン遺伝子発現不全動物、APJ遺伝子トランスジェニック動物]
本発明のアペリン遺伝子発現不全非ヒト動物(以下、遺伝子発現不全非ヒト動物と称す場合がある)とは、例えば、前記のアペリン遺伝子が不活性化された哺乳動物ES細胞由来の細胞を用いて遺伝子工学的に作出されたものであり、例えば、生殖細胞および体細胞に胚形成初期に不活性化アペリン遺伝子配列を導入された非ヒト動物である。
該非ヒト動物としては、アペリンを有するヒト以外の動物ならば、いかなる動物でもよいが、非ヒト哺乳動物が好ましい。非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。非ヒト哺乳動物のなかでも、病態動物モデル系の作製の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F1系統,BDF1系統,B6D2F1系統,BALB/c系統,ICR系統など(なかでも好ましくは、純系として、C57BL/6系統など、交雑系として、BDF1系統またはICR系統など))またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが特に好ましい。
アペリン遺伝子をノックアウトさせるには、前記のターゲティングベクターを非ヒト動物ES細胞または非ヒト動物卵細胞に公知の方法(例えば、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、凝集法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法など)によって導入し(好ましい導入法としては、ES細胞に導入する場合にはエレクトロポレーション法、卵細胞に導入する場合にはマイクロインジェクション法などがあげられる)、ターゲティングベクターの不活性化されたアペリン遺伝子配列を相同組換えにより、非ヒト動物ES細胞または非ヒト動物卵細胞の染色体上のアペリン遺伝子と入れ換えることにより行うことができる。
アペリン遺伝子がノックアウトされた細胞は、アペリン遺伝子上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲティングベクター上のDNA配列と、ターゲティングベクターに使用したマウス由来のアペリン遺伝子以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。
非ヒト動物ES細胞を用いた場合は、相同組換えにより、アペリン遺伝子が不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を胚形成の初期の適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト動物胚または胚盤胞に注入し(注入法)、またはアペリン遺伝子が不活性化されたES細胞塊を2個の8細胞期胚ではさみ込む(集合キメラ法)ことにより作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト動物の子宮に移植する。
作出された動物は正常なアペリン遺伝子座をもつ細胞と人為的に変異したアペリン遺伝子座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。
該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異したアペリン遺伝子座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えたアペリン遺伝子座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、アペリンヘテロ発現不全個体であり、アペリンまたはAPJヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔からアペリンホモ発現不全個体を得ることができる。
アペリン遺伝子発現不全非ヒト動物は、該動物のmRNA量を公知の方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
このようにしてアペリン遺伝子がノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該遺伝子がノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従って行うことができる。即ち、該不活化遺伝子配列の保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化遺伝子配列を相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得することができる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化遺伝子配列を有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代することができる。このようにして得られた該不活化遺伝子配列を有する動物の子孫も本発明のアペリン遺伝子発現不全非ヒト動物に含まれる。
このようにアペリン遺伝子が不活性化された哺乳動物ES細胞は、アペリン遺伝子発現不全非ヒト動物を作出する上で、非常に有用である。また、アペリン遺伝子発現不全非ヒト動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞は、アペリンの欠損に起因する疾病、例えば、アペリンにより誘導され得る種々の生物活性の欠失に基づく、アペリンの生物活性の不活性化に起因する疾病(例えば、気分障害(例えば、双極性障害、うつ病、躁病、反復性うつ病、持続性気分感情障害(例、気分循環症、気分変調症など)、抑うつ神経症、不安症(例、全般性不安障害、社会不安障害、強迫性障害、パニック障害、外傷後ストレス障害など)、睡眠障害、摂食障害、自閉症、老人性痴呆、統合失調症、注意欠陥多動性障害、心身症など);薬物依存など)のより良いモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明および治療法の検討に有用である。
このように、本発明のアペリン遺伝子発現不全非ヒト動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞を、該疾病の予防および/または治療薬などのスクリーニングに用いることができる。ここで、上記組織やそれに由来する細胞の例としては、たとえば、下垂体、膵臓、脳、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管、血管、心臓など、またはそれらに由来する細胞などが挙げられる。本発明の遺伝子発現不全非ヒト動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞は、脳、肝臓や腎臓などのホモジネートを用いて特定の活性を測定する、あるいは、腹腔マクロファージを用いて特定産物の活性や産生量を測定することでスクリーニングに用いることができる。また、本発明のアペリン遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞に試験化合物を投与し、活性等を測定することでスクリーニングに用いることもできる。
APJ遺伝子トランスジェニック非ヒト動物(以下、トランスジェニック非ヒト動物と称す場合がある)とは、例えば、APJ遺伝子またはその変異DNAを哺乳動物の受精卵へマイクロインジェクションすることによって遺伝子工学的に作出した非ヒト動物である。動物としては、非ヒト哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)など(以下、動物と略記する場合がある)が挙げられる、特に、マウス、ウサギなどが好適である。
APJ遺伝子またはその変異DNAを対象動物に導入するにあたっては、APJ遺伝子またはその変異DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合した遺伝子コンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、APJ遺伝子またはその変異DNAをウサギに導入する場合、これと相同性が高い動物由来のAPJ遺伝子またはその変異DNAを動物細胞で発現させうる各種プロモーターの下流に結合した遺伝子コンストラクトを、例えば、ウサギ受精卵へマイクロインジェクションすることによってAPJタンパク質等を高産生するDNA導入動物(すなわち、本発明のトランスジェニック非ヒト動物)を作出できる。このプロモーターとしては、例えば、ウイルス由来プロモーター、メタロチオネイン等のユビキアスな発現プロモーターも使用しうるが、好ましくは脳で特異的に発現するNGF遺伝子プロモーターやエノラーゼ遺伝子プロモーターなどが用いられる。
受精卵細胞段階におけるAPJ遺伝子またはその変異DNAの導入により、対象動物の胚芽細胞および体細胞の全てに導入したDNAが存在することとなる。DNA導入後の作出動物の胚芽細胞においてAPJが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てにAPJタンパク質等を有することを意味する。遺伝子を受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てにAPJタンパク質等を有する。
このようにして得られたAPJ遺伝子またはその変異DNAを有するトランスジェニック非ヒト動物は、交配により遺伝子を安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で飼育継代を行うことができる。さらに、目的DNAを保有する雌雄の動物を交配することにより、導入遺伝子を相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
このように、APJ遺伝子またはその変異DNAを有するトランスジェニック非ヒト動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞を、該疾病の予防および/または治療薬などのスクリーニングに用いることができる。ここで、上記組織やそれに由来する細胞の例としては、たとえば、下垂体、膵臓、脳、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管、血管、心臓など、またはそれらに由来する細胞などが挙げられる。本発明のトランスジェニック非ヒト動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞は、脳、肝臓や腎臓などのホモジネートを用いて特定の活性を測定する、あるいは、腹腔マクロファージを用いて特定産物の活性や産生量を測定することでスクリーニングに用いることができる。また、本発明のAPJ遺伝子またはその変異DNAを有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞に試験化合物を投与し、活性等を測定することでスクリーニングに用いることもできる。
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものである。その例を以下に記載する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
Y :チミンまたはシトシン
N :チミン、シトシン、アデニンまたはグアニン
R :アデニンまたはグアニン
M :シトシンまたはアデニン
W :チミンまたはアデニン
S :シトシンまたはグアニン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
TFA :トリフルオロ酢酸
EIA :エンザイムイムノアッセイ
GlyまたはG :グリシン
AlaまたはA :アラニン
ValまたはV :バリン
LeuまたはL :ロイシン
IleまたはI :イソロイシン
SerまたはS :セリン
ThrまたはT :スレオニン
CysまたはC :システイン
MetまたはM :メチオニン
GluまたはE :グルタミン酸
AspまたはD :アスパラギン酸
LysまたはK :リジン
ArgまたはR :アルギニン
HisまたはH :ヒスチジン
PheまたはF :フェニルアラニン
TyrまたはY :チロシン
TrpまたはW :トリプトファン
ProまたはP :プロリン
AsnまたはN :アスパラギン
GlnまたはQ :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Bom :ベンジルオキシメチル
PAM :フェニルアセトアミドメチル
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Tos :p−トルエンスルフォニル
HONB :N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
Bzl :ベンジル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロルベンジルオキシカルボニル
Boc :t−ブチルオキシカルボニル
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
DCC :N、N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェニル
Bum :ターシャリーブトキシメチル
Trt :トリチル
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
Gタンパク質共役型受容体ヒト型タンパク質(APJ)cDNAにコードされるGタンパク質共役型受容体タンパク質の全アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕
Gタンパク質共役型受容体ヒト型タンパク質(APJ)cDNAの全塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
マウス型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〕
マウス型アペリン(前駆体)をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
ラット型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:6〕
ラット型アペリン(前駆体)をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
ヒト型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:8〕
ヒト型アペリン(前駆体)をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕
ウシ型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:10〕
ウシ型アペリン(前駆体)をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕
ヒト型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列の第67番目〜75番目のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:12〕
ヒト型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列の第65番目〜77番目のアミノ酸配列を示す。(アペリン−13;ヒトアペリン−13、マウスアペリン−13、ラットアペリン−13、ウシアペリン−13)
〔配列番号:13〕
ヒト型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列の第42番目〜77番目のアミノ酸配列を示す。(ヒトアペリン−36)
〔配列番号:14〕
マウス型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列の第42番目〜77番目のアミノ酸配列を示す。(マウスアペリン−36、ラットアペリン−36)
〔配列番号:15〕
ウシ型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列の第42番目〜77番目のアミノ酸配列を示す。(ウシアペリン−36)
〔配列番号:16〕
ヒト型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列の第67番目〜77番目のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:17〕
ヒト型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列の第65番目〜75番目のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:18〕
ヒト型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列の第64番目〜77番目のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:19〕
ヒト型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列の第63番目〜77番目のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:20〕
ヒト型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列の第62番目〜77番目のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:21〕
ヒト型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列の第61番目〜77番目のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:22〕
ヒト型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列の第60番目〜77番目のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:23〕
ヒト型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列の第66番目〜77番目のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:24〕
ヒト型アペリン(前駆体)のアミノ酸配列の第65番目〜76番目のアミノ酸配列を示す。
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1
うつ病患者およびコカイン乱用者のブロードマン領域10野におけるAPJのmRNA発現低下
男性のうつ病患者(16例)、コカイン依存症患者(14例)、およびそれぞれの障害を発症していない健常者の脳のサンプル(32例)由来のRNAサンプルにおけるAPJのmRNA発現量は、アフィメトリクス社のヒト用ジーンチップセット(HG_U133 A,HG_U133 B)を用いて測定した。脳サンプルの取得、ジーンチップによる解析はジーンロジック社(Santa Clara、CA)が実施した。データの標準化にはAffimetrix Microarray Suit software(MAS)を用いて、それぞれの測定値についての信頼度検定を実施し、発現ありと認められたサンプルについての発現量を相対値の平均値として求めた。その結果、相対的な発現量と発現の頻度は、健常者由来の脳では発現量が141.5、発現頻度は32例中の7例であったのに対し、うつ病患者では発現頻度が16例中0例であったため発現量は0であり、またコカイン乱用者では発現頻度が14例中1例のみでその発現量は80.7となり、うつ病患者とコカイン乱用者で健常者に対してAPJ mRNAの発現量と発現頻度の低下が検出された。
実施例2
アペリンの抗うつ作用の評価
アペリンの側脳室内投与によるうつに及ぼす影響は強制水泳試験にて評価できる。成熟雄性C57BL/6Nマウス(9週齢、日本チャールズリバー社)を試験2日前にエーテル麻酔下で頭皮を切開し、2段針((株)トップ)を用いて左側室脳室(PaxinosとWatson(1986)のアトラスに従いブレグマよりAP:2mm,lateral:1mm)に向けて頭蓋骨へ穴を開ける。試験の1時間前にエーテル麻酔下にて測定用マグネットをマウス両前肢にビニールテープおよび瞬間接着剤アロンアルファー(株東亜合成)を用いて接着し、試験の20分前に2段針と250μLシリンジを用いて、リン酸緩衝生理食塩水またはアペリン(0.3,1,3nmol/マウス)を約2秒間で投与する。透明なシリンダー(高さ:18cm,直径:11.5cm)内に、高さ10cmまで水(24±1℃)の入った水槽にマウスを入れて6分間強制水泳試験を行い、6分間のうち後半4分間の無動時間およびもがき時間の長さで評価する。
実施例3
オープンフィールド試験
動物は、WO 2006/019193号公報の実施例2記載の雄性アペリン遺伝子ノックアウトマウス(以下、KO)、およびこのKOマウスとC57BL/6J系マウス(日本クレア株式会社)を交配させ得られた雄性野生型マウス(以下、WT)(18週齢、体重27−34g、1群当たりn=10)を使用した。本試験は、照度を180ルクスに設定した遮音室(室温25℃)内で行った。試験開始前に、マウスをその部屋で一時間以上馴化させておいた。行動観察は、オープンフィールド装置を用いて行った。この装置は、灰色塩化ビニール製のプレートに、黒いテープで覆ったプラスチックの円筒を載せたもので、高さ50cm、底面の直径は60cmになっている。底面のプレートの運動野はほぼ等面積の19区画に分けられている。マウスがある区画から隣の区画へ移動した時、すなわち、四肢がすべて隣の区画に入った(これを完全に隣接区画に移動した、と定義する)とき、運動量1カウントとした。マウスを装置の底面の、一番中央の区画に置いた瞬間を0秒(これを試験開始とする)とし、そこから完全に隣接区画に移動するまでに要した時間(以下、潜時)をストップウォッチで測定し、また、試験開始から5分間の運動量の総カウント数(以下、総運動量)を算出した。平均値の差の検定にはstudent’s t testを用いた。
結果を図1に示す。
図1Aに示すように、KOはWTに比較して潜時が有意に延長した。また、図1Bに示すように、KOはWTに比較して総運動量が有意に減少した。
実施例4
尾懸垂試験
動物は実施例3と全く同じ動物を、実施例3の試験終了後1週間以上経過してから使用した。本試験は遮音室(室温25℃)内で行った。試験開始前に、マウスをその部屋で一時間以上馴化させておいた。尾懸垂試験装置および解析システムは、ニューロサイエンス・イデア社のMicroActテールサスペンションVer.4.1を用いて行った。装置には動物を吊り下げるための個室があり天井から重量センサーに連結したフックがぶら下がっている。動物の尾の先端より約2cmの部位にテープを巻き、テープをフックで貫通させて動物を10分間吊り下げた。動物の動きは重量センサーで検出し、重量の変動が体重の10%に満たない状態が1秒以上続いた場合を無動状態と判断し、10分間の無動状態の総和を無動時間とした。測定値の統計解析にはstudent’s t testを用いた。
結果を図2に示す。
図2に示されるように、KOはWTに比較して無動時間が有意に延長した。
本発明によれば、優れた気分障害または薬物依存の予防・治療剤を提供できる。さらには、アペリンとその受容体APJの中枢神経系での機能の解明および、これらを介する新たな用途を提供することができる。
[配列表]
Figure 2007072980
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Claims (24)

  1. アペリン受容体の機能を促進する物質を含有する気分障害または薬物依存の予防・治療剤。
  2. アペリン受容体が、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質である請求項1記載の剤。
  3. アペリン受容体が、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質である請求項1記載の剤。
  4. アペリン受容体の機能を促進する物質が、アペリン受容体アゴニストである請求項1記載の剤。
  5. アペリン受容体の機能を促進する物質が、(a)アペリン、(b)アペリンと同等以上の活性を有するアペリン誘導体または(c)アペリンとその受容体の結合を促進させる低分子合成化合物である請求項1記載の剤。
  6. アペリンが、配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドである請求項5記載の剤。
  7. アペリンが、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23または配列番号:24で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである請求項5記載の剤。
  8. アペリンが、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:19または配列番号:23で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである請求項5記載の剤。
  9. うつ病または不安症の予防・治療剤である請求項1記載の剤。
  10. 哺乳動物に対してアペリン受容体の機能を促進する物質を有効量投与することを特徴とする気分障害または薬物依存の予防・治療方法。
  11. アペリン受容体の機能を促進することを特徴とする気分障害または薬物依存の予防・治療方法。
  12. 気分障害または薬物依存の予防・治療剤を製造するためのアペリン受容体の機能を促進させる物質の使用。
  13. アペリン受容体が、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質である請求項10または11記載の方法。
  14. アペリン受容体が、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質である請求項10または11記載の方法。
  15. アペリン受容体アゴニストを用いることを特徴とする、請求項10または11記載の方法。
  16. (a)アペリン、(b)アペリンと同等以上の活性を有するアペリン誘導体または(c)アペリンとその受容体の結合を促進させる低分子合成化合物を用いることを特徴とする請求項10または11記載の方法。
  17. アペリンが、配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドである請求項10または11記載の方法。
  18. アペリンが、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23または配列番号:24で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである請求項10または11記載の方法。
  19. アペリンが、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:19または配列番号:23で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである請求項10または11記載の方法。
  20. うつ病または不安症の予防・治療方法である請求項10または11記載の方法。
  21. アペリンおよび/またはアペリン受容体を用いることを特徴とする気分障害または薬物依存の予防・治療剤のスクリーニング方法。
  22. アペリン遺伝子発現不全非ヒト動物を用いる請求項21記載のスクリーニング方法。
  23. 外来性の、アペリン受容体遺伝子またはその変異DNAを有するトランスジェニック非ヒト動物を用いる請求項21記載のスクリーニング方法。
  24. アペリンおよび/またはアペリン受容体を含有する気分障害または薬物依存の治療剤のスクリーニング用キット
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