JP4320151B2 - 新規ポリペプチドおよびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な生体機能調節ポリペプチドおよびそのDNAなどに関する。さらに詳しくは、神経変性疾患、脳機能障害などの予防・治療剤、診断薬などに関する。
【0002】
【従来の技術】
アルツハイマー病(Alzheimer's disease)は進行性痴呆および認知能力の失調を伴う神経変性疾患の代表的なものであるが、これまでに効果的な治療法は見出されていない。アルツハイマー病は高齢化社会を迎えつつある現在において最も重要な疾患の一つであることは言うまでもなくその治療薬の開発は医療経済的にも極めて大きな意義を有する。
最近、橋本らは、アルツハイマー病患者の後頭葉に病変が少ないことに着目して「デス・トラップ」法(L. D'Adamioら、Semin. Immunol.、9巻、17-23頁、1997年)により家族性アルツハイマー病の原因遺伝子を導入した神経細胞の細胞死を抑制する遺伝子を後頭葉よりクローニングした(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、98巻、6336−6341頁、2001年)。この遺伝子は、humanin(WO 01/21787)と名付けられた24残基からなるペプチドをコードしており、合成humaninペプチドは、家族性アルツハイマー病遺伝子を導入した神経細胞死を抑制したのみならず、アルツハイマー病の原因である可能性があると考えられているβアミロイド添加によって誘導される神経細胞死をも抑制した。こうした知見は、humaninまたはその誘導体がアルツハイマー病治療薬となる可能性があることを示唆するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
アルツハイマー病は進行性痴呆および認知能力の失調を伴う神経変性疾患の代表的なものであるが、これまでに効果的な治療法は見出されていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、こうした事実に着目して鋭意研究を重ねた結果、ヒトゲノム中にhumanin遺伝子に類似した遺伝子が存在することを予想し、humanin遺伝子配列を用いてヒトゲノムデータベース(GEMBLE)を検索することによってhumanin類似配列を見出した。さらにこの配列情報をもとにヒト脳cDNAライブラリーよりhumaninに類似のペプチドをコードする遺伝子をクローニングすることに成功した。新たに見出されたこのペプチドは、humaninと同様に24残基からなるペプチドであり、humaninと6残基が異なっていた。さらに、本発明者らは、このペプチドが神経細胞死抑制作用を有していることも見出した。これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有することを特徴とするポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(2)配列番号:4で表されるアミノ酸配列からなる上記(1)記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(3)上記(1)記載のポリペプチドの部分ペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(4)上記(1)記載のポリペプチドをコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(5)DNAである上記(4)記載のポリヌクレオチド、
(6)配列番号:3で表される塩基配列を有するポリヌクレオチドを含有する上記(4)記載のポリヌクレオチド、
(7)上記(3)記載の部分ペプチドをコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(8)上記(4)または(7)記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、
(9)上記(8)記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体、
(10)上記(9)記載の形質転換体を培養し、上記(1)記載のポリペプチドまたは上記(3)記載の部分ペプチドを生成・蓄積せしめることを特徴とする上記(1)記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、または上記(3)記載の部分ペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の製造法、
(11)上記(1)記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、または上記(3)記載の部分ペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、
(12)配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドまたはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドに相補もしくは実質的に相補な塩基配列またはその一部を有するポリヌクレオチド、
(13)上記(1)記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、または上記(3)記載の部分ペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を用いることを特徴とする上記(1)記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、または上記(3)記載の部分ペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(14)上記(1)記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、または上記(3)記載の部分ペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる上記(1)記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、または上記(3)記載の部分ペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
(15)上記(13)記載のスクリーニング方法または上記(14)記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、上記(1)記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、または上記(3)記載の部分ペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩、
(16)上記(13)記載のスクリーニング方法または上記(14)記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、上記(1)記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、または上記(3)記載の部分ペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の活性を阻害する化合物またはその塩、
(17)上記(15)記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
(18)上記(16)記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
(19)上記(1)記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、または上記(3)記載の部分ペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる医薬、
(20)上記(4)記載のポリヌクレオチドを含有してなる医薬、
(21)上記(4)記載のポリヌクレオチドを含有してなる診断薬、
(22)上記(11)記載の抗体を含有してなる医薬、
(23)上記(11)記載の抗体を含有してなる診断薬、
(24)上記(12)記載のポリヌクレオチドを含有してなる医薬、
(25)上記(12)記載のポリヌクレオチドを含有してなる診断薬、
(26)神経変性疾患または脳機能障害の予防・治療剤である上記(17)、(19)または(20)記載の医薬、
(27)アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、糖尿病性ニューロパチー、多発性硬化症、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、虚血性脳疾患、硬膜外血腫または硬膜下血腫の予防・治療剤である上記(26)記載の医薬、
(28)アルツハイマー病の予防・治療剤である上記(26)記載の医薬、
(29)細胞死抑制剤である上記(17)、(19)または(20)記載の医薬、
(30)神経変性を伴う疾病の診断薬である上記(21)、(23)または(25)記載の診断薬、
(31)アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、糖尿病性ニューロパチー、多発性硬化症、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、虚血性脳疾患、硬膜外血腫または硬膜下血腫の診断薬である上記(30)記載の診断薬、
(32)哺乳動物に対し、上記(1)記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、または上記(3)記載の部分ペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の有効量を投与することを特徴とする神経変性疾患または脳機能障害の予防・治療方法、
(33)哺乳動物に対し、上記(4)記載のポリヌクレオチドの有効量を投与することを特徴とする神経変性疾患または脳機能障害の予防・治療方法、
(34)哺乳動物に対し、上記(15)記載の化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする神経変性疾患または脳機能障害の予防・治療方法、
(35)神経変性疾患または脳機能障害の予防・治療剤を製造するための、上記(1)記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、または上記(3)記載の部分ペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の使用、
(36)神経変性疾患または脳機能障害の予防・治療剤を製造するための、上記(4)記載のポリヌクレオチドの使用、
(37)神経変性疾患または脳機能障害の予防・治療剤を製造するための、上記(15)記載の化合物またはその塩の使用などに関する。
【0006】
さらに、本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチド、本発明のポリペプチド(例、DNA)等は、分子量マーカー、組織マーカー、染色体マッピング、遺伝病の同定、病態の診断、プライマー、プローブの設計等の基礎研究にも利用できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド(以下、本発明のポリペプチドと称する場合がある。また、配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を総称して、本発明のポリペプチドと称する場合もある。)は、ヒトや非ヒト温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サル等)の細胞(例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞等)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、唾液腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、軟骨、関節、骨格筋等に由来するポリペプチドであってもよく、組換えポリペプチドであってもよく、合成ポリペプチドであってもよい。
【0008】
「実質的に同一」とはポリペプチドの活性、例えば、細胞死抑制作用(例、各種疾患に伴う細胞死に対する抑制作用)、細胞生存維持作用、または神経変性疾患、癌、免疫疾患、感染症、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患等の予防・治療活性(作用)など、生理的な特性などが、実質的に同じことを意味する。アミノ酸の置換、欠失、付加あるいは挿入が、ポリペプチドの生理的な特性や化学的な特性に大きな変化をもたらさない限り、当該置換、欠失、付加あるいは挿入を施されたポリペプチドは、当該置換、欠失、付加あるいは挿入のされていないものと実質的に同一である。該アミノ酸配列中のアミノ酸の実質的に同一な置換物としては、たとえばそのアミノ酸が属するところのクラスのうち他のアミノ酸類から選ぶことができる。
非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンなどがあげられる。極性(中性)アミノ酸としてはグリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンなどがあげられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としてはアルギニン、リジン、ヒスチジンなどがあげられる。負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などがあげられる。
【0009】
配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、該アミノ酸配列を含有するポリペプチドが、配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドと実質的に同一の活性(性質)を有する限り、特に限定されるものではなく、例えば配列番号:4で表されるアミノ酸配列と約80%以上、好ましくは約85%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列等が挙げられる。
【0010】
上記の実質的に同質の活性(性質)としては、例えば、配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドの有する細胞死抑制作用(例、各種疾患に伴う細胞死に対する抑制作用)、細胞生存維持作用、または神経変性疾患、癌、免疫疾患、感染症、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患等の予防・治療活性(作用)などが定性的に同質であることを示す。
【0011】
また、配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドとしてより具体的には、例えば、▲1▼配列番号:4で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜6個程度、好ましくは1〜3個程度、さらに好ましくは1または2個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、▲2▼配列番号:4で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜6個程度、好ましくは1〜3個程度、さらに好ましくは1または2個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、▲3▼配列番号:4で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは例えば1〜6個程度、好ましくは1〜3個程度、さらに好ましくは1または2個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または▲4▼それらを組合わせたアミノ酸配列を含有するポリペプチド等のいわゆるムテインも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置としては、特に限定されない。
【0012】
本発明のポリペプチドの部分ペプチド(本発明の部分ペプチド)としては、前記した本発明のポリペプチドの部分ペプチドであれば何れのものであってもよいが、例えば、本発明のポリペプチドと実質的に同質の活性(「実質的に同質の活性」は上記と同意義を示す)ものなどが好ましく用いられる。
しかし、本発明のポリペプチドとは異なり、本発明の部分ペプチドは抗体作成のための抗原として用いることができるので、必ずしも本発明のポリペプチドが有する活性を有する必要はない。
本発明の部分ペプチドとしてより具体的には、配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する本発明のポリペプチドの部分ペプチドなどがあげられる。
「実質的に同一」とは、上記本発明のポリペプチドの説明における「実質的に同一」と同意義を示す。
【0013】
また、配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する部分ペプチドとしてより具体的には、例えば、▲1▼配列番号:4で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例、1〜20個程度、好ましくは1〜15個程度、好ましくは1〜10個程度、好ましくは1〜5個程度、より好ましくは1または2個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、▲2▼配列番号:4で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例、1〜20個程度、好ましくは1〜15個程度、好ましくは1〜10個程度、好ましくは1〜5個程度、より好ましくは1または2個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、▲3▼配列番号:4で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例、1〜5個程度、より好ましくは1または2個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または▲4▼それらを組合わせたアミノ酸配列を含有する部分ペプチド等のいわゆるムテインも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置としては、特に限定されない。
本発明の部分ペプチドの具体例として、例えば、配列番号:4で表されるアミノ酸配列の第19番目〜24番目(配列番号:7)、第5番目〜24番目、第1番目〜20番目、第5番目〜20番目、第1番目〜21番目、または第5番目〜21番目のアミノ酸配列を有するペプチドなどが挙げられる。
また、本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドには、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
【0014】
さらに、本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドは、それぞれ単量体の他に、2量体、3量体、4量体などとして存在していてもよく、具体的には、本発明のポリペプチド同士で2量体を形成する場合、本発明の部分ペプチド同士で2量体を形成する場合、本発明のポリペプチドと本発明の部分ペプチドとで2量体を形成する場合などがあげられる。
さらに、本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドには、おのおののN末端またはC末端などにエピトープ(抗体認識部位)となりうる任意の外来ペプチド配列(例えば、FLAG、Hisタグ、HAタグ、HSVタグなど)を有しているものも含まれる。
【0015】
本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをはじめとする、本発明のポリペプチドは、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO-)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)であってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチル等のC1-6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル等のC3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチル等のC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチル等のフェニル−C1-2アルキル基もしくはα−ナフチルメチル等のα−ナフチル−C1-2アルキル基等のC7-14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基等が用いられる。
本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステル等が用いられる。
さらに、本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドには、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基等のC1-6アルカノイル等のC1-6アシル基等)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基等)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基等のC1-6アルカノイル基等のC1-6アシル基等)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ポリペプチド等の複合ポリペプチド等も含まれる。
【0016】
本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)等との塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩等が用いられる。
本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドは、前述したヒトや非ヒト温血動物の細胞または組織から公知のポリペプチド(タンパク質)の精製方法によって製造することもできるし、後述する本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドをコードするポリペプチド(DNA等)を含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後述のペプチド合成法に準じて製造することもできる。
ヒトや非ヒト哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや非ヒト哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸等で抽出を行ない、得られた抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0017】
本発明のポリペプチドもしくは本発明の部分ペプチドまたはその塩、またはそのアミド体の合成には、通常市販のポリペプチド(タンパク質)合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂等をあげることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするポリペプチドの配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からポリペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のポリペプチドまたはそれらのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、ポリペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミド等が用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対応する酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
【0018】
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、ポリペプチド(タンパク質)縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドン等の酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノール等のアルコール類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリル等のニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチル等のエステル類あるいはこれらの適宜の混合物等が用いられる。反応温度はポリペプチド(タンパク質)結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行なうことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することによって、後の反応に影響を与えないようにすることができる。
【0019】
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmoc等が用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチル等の直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、t−ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化等によって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基等の低級(C1-6)アルカノイル基、ベンゾイル基等のアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭酸から誘導される基等が用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t-ブチル基等である。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、t−ブチル等が用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmoc等が用いられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕等が用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素等の触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液等による酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジン等による塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元等も用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオール等のようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオール等の存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニア等によるアルカリ処理によっても除去される。
【0020】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化等は公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(ポリペプチド)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたポリペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したポリペプチドとを製造し、この両ポリペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ポリペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ポリペプチドを得ることができる。この粗ポリペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のポリペプチドのアミド体を得ることができる。
本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドのエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドのアミド体と同様にして、所望のポリペプチドのエステル体を得ることができる。
【0021】
本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドは、公知のペプチドの合成法に従って製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明の部分ペプチドを構成し得る部分ペプチド(本発明の部分ペプチドを構成し得る部分ペプチド)もしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の▲1▼〜▲5▼に記載された方法などが挙げられる。
▲1▼M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド・シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)、
▲2▼SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)、
▲3▼泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)、
▲4▼矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)、および
▲5▼矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店。
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶等を組み合わせて本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるポリペプチドが遊離体である場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
【0022】
本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド(以下、これらを総称して、本発明のポリヌクレオチドと称する場合がある)としては、前述した本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい(DNAまたはRNA、好ましくはDNA)。該ポリヌクレオチドとしては、本発明のレセプター蛋白質をコードするDNA、mRNA等のRNAであり、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(すなわち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(すなわち、非コード鎖)であってもよい。本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、ゲノムDNA、前記した細胞または組織由来のcDNA、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミド等いずれであってもよい。また、前記した細胞または組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
【0023】
本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、例えば、本発明のポリペプチドと実質的に同質の活性(性質)(例、細胞死抑制作用(例、各種疾患に伴う細胞死に対する抑制作用)、細胞生存維持作用;神経変性疾患、癌、免疫疾患、感染症、消化管疾患、循環器疾患または内分泌疾患の予防・治療活性(作用)等)を有するポリペプチドをコードするDNA等を有し、本発明のポリペプチドと実質的に同質の性質を有するポリペプチドをコードするDNAであれば何れのものでもよい。
本発明のポリペプチドをコードするDNAとして、具体的には、配列番号:3で表される塩基配列を有するDNAを含有するDNAなどがあげられる。
配列番号:3で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAも本発明のポリペプチドをコードするDNAとしてあげることができ、例えば、配列番号:3で表される塩基配列と約80%以上、好ましくは約85%以上、さらに好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNA等が用いられる。
【0024】
ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法等に従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。
配列番号:4で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:3で表される塩基配列を有するDNA等が挙げられる。
【0025】
本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、本発明の部分ペプチドをコードするDNAであれば何れのものでもよい。具体例としては、配列番号:8で表される塩基配列を含有するDNAなどが挙げられる。
【0026】
本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドを完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドの部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によってゲノムDNAやcDNAを増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNA(ライブラリー)を本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドの一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いてラジオアイソトープや酵素で標識したもの(DNAプローブ)とのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法等に従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
DNAの塩基配列の置換は、PCRや公知のキット、例えば、MutanTM-super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM-K(宝酒造(株))等を用いて、ODA-LA PCR法やGupped duplex法やKunkel法等の公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化されたポリペプチドをコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドの発現ベクターは、例えば、(イ)本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドをコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0027】
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージ等のバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルス等の動物ウイルス等の他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo等が用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーター、β−アクチン等が挙げられる。
これらのうち、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモーター等を用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーター等が、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等が好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーター等が好ましい。
【0028】
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)等を含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、Geneticin耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、組換え体細胞をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のポリペプチドのN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列等が、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列等が、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列等、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列等がそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドをコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
【0029】
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞等が用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ,(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology),120巻,517(1978)〕,HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕等が用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン,24巻,255(1983)〕,207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕等が用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R-,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)KM71等が用いられる。
【0030】
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、ヨトウガの幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞等が用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、カイコ由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)等が用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213-217,(1977))等が用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫等が用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr-)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3細胞,ヒトFL細胞等が用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)等に記載の方法に従って行なうことができる。
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)等に記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology),194巻,182−187(1991)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)等に記載の方法に従って行なうことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology),6, 47-55(1988)等に記載の方法に従って行なうことができる。動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。このようにして、ポリペプチドをコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖等、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、酵母エキス、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液等の無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子等を添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0031】
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace's Insect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたもの等が用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕等が用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外(好ましくは細胞外)に本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドを生成せしめることができる。
【0032】
上記培養物から本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドを分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドを培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解等によって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりポリペプチドの粗抽出液を得る方法等が適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジン等のタンパク質変性剤や、トリトンX−100TM等の界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にポリペプチドが分泌される場合には、培養終了後、公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれる本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドの精製は、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法等の溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法等の主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィー等の荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィー等の特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィー等の疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法等の等電点の差を利用する方法等が用いられる。
【0033】
かくして得られる本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドが遊離体で得られた場合には、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生する本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドを、精製前または精製後に適当なタンパク質修飾酵素またはタンパク質分解酵素等を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドを部分的に除去することもできる。これらの酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼ等が用いられる。
かくして生成する本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドの存在は、特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウエスタンブロット解析等により測定することができる。
また、上述のとおり、本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチドのN末端またはC末端などにエピトープ(抗体認識部位)となりうる任意の外来ペプチド配列(例えば、FLAG、HISタグ、mycタグ、HAタグ、HSVタグなど)を融合させ、該ペプチド配列を認識する抗体を用いて、化学発光等を検出することにより、本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドの存在を測定することも可能である。
【0034】
本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドに対する抗体(以下、本発明の抗体と称する場合がある)は、本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドを認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体(以下、本発明のポリクローナル抗体と称する場合がある)、モノクローナル抗体(以下、本発明のモノクローナル抗体)の何れであってもよい。
本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドに対する抗体は、本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドを抗原として用い、公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドは、温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原で免疫された温血動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化ポリペプチドと抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256、495 (1975)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルス等が挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
【0035】
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1等の温血動物の骨髄腫細胞が挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、約20〜40℃、好ましくは約30〜37℃で約1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、ポリペプチド抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素等で標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素等で標識したポリペプチドを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法等が挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、約1〜20%、好ましくは約10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、約1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))等を用いることができる。培養温度は、通常約20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0036】
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインG等の活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
【0037】
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、公知あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(ポリペプチド抗原)自体、あるいはそれとキャリアータンパク質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明のポリペプチドまたは本発明の部分ペプチドに対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造することができる。
温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なわれる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水等、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0038】
本発明のポリヌクレオチドに相補的な、または実質的に相補的な塩基配列を有するアンチセンス・ポリヌクレオチドとしては、本発明のポリヌクレオチドに相補的な、または実質的に相補的な塩基配列を有し、該ポリヌクレオチド(DNA)の発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンス・ポリヌクレオチドであってもよい。
本発明のポリヌクレオチドに実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、本発明のポリヌクレオチドに相補的な塩基配列(例、本発明のDNAの相補鎖)の全塩基配列あるいは部分塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列等が挙げられる。特に、本発明のポリヌクレオチドの相補鎖の全塩基配列うち、本発明のポリペプチドのN末端部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列等)の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンス・ポリヌクレオチドが好適である。これらのアンチセンス・ポリヌクレオチドは、公知のDNA合成装置等を用いて製造することができる。
【0039】
本発明のポリペプチドがシグナルペプチドを有する場合は、細胞外に効率よく分泌され、液性因子として、シグナル伝達や自己防衛等のための重要な生物活性を発揮する。
以下に、本発明のポリペプチド、本発明の部分ペプチド(以下、本発明のポリペプチドと本発明の部分ペプチド、およびこれらの塩も合わせて本発明のポリペプチドと略記する場合がある)、上記本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(本発明のポリヌクレオチド)、上記本発明のポリペプチドに対する抗体(本発明の抗体)、および本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドの用途を説明する。
【0040】
(1)本発明のポリペプチドが関与する各種疾病の予防・治療剤
本発明のポリペプチドは生体内に存在し、細胞死抑制作用、細胞生存維持作用などを有する。本発明のポリペプチド、または本発明のポリヌクレオチド(例、DNA等)などに異常があったり、欠損している場合あるいは発現量が異常に減少または亢進している場合、例えば、神経変性を伴う疾病など、例えば、神経変性疾患〔例、アルツハイマー病(家族性アルツハイマー病、若年性アルツハイマー病、孤発性アルツハイマー病など)、パーキンソン病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、糖尿病性ニューロパチー、多発性硬化症など〕、脳機能障害(例、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、虚血性脳疾患、硬膜外血腫、硬膜下血腫など)、癌(例、星状細胞腫、乏枝神経膠腫など)、免疫疾患、感染症(例、髄膜炎、原虫感染症、リケッチア感染症、後生動物感染症、Borna病などの細菌性またはウイルス性髄膜炎、ワクチン接種後脳炎、AIDS脳症など)、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患などの種々の疾病が発症する。
したがって、本発明のポリペプチドおよび本発明のポリヌクレオチドは、例えば、細胞死抑制剤として、さらには、例えば神経変性を伴う疾病など、例えば、神経変性疾患〔例、アルツハイマー病(家族性アルツハイマー病、若年性アルツハイマー病、孤発性アルツハイマー病など)、パーキンソン病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、糖尿病性ニューロパチー、多発性硬化症など〕、脳機能障害(例、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、虚血性脳疾患、硬膜外血腫、硬膜下血腫など)、癌(例、星状細胞腫、乏枝神経膠腫など)、免疫疾患、感染症(例、髄膜炎、原虫感染症、リケッチア感染症、後生動物感染症、Borna病などの細菌性またはウイルス性髄膜炎、ワクチン接種後脳炎、AIDS脳症など)、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患等の種々の疾病の予防・治療剤、好ましくは神経変性疾患、脳機能障害の予防・治療剤として、さらに好ましくはアルツハイマー病の予防・治療剤として、低毒性で安全な医薬として使用することができる。
例えば、生体内において本発明のポリペプチドが減少あるいは欠損しているために、細胞における情報伝達が十分に、あるいは正常に発揮されない患者がいる場合に、(イ)本発明のポリヌクレオチドを該患者に投与し、生体内で本発明のポリペプチドを発現させることによって、(ロ)細胞に本発明のポリヌクレオチドを挿入し、本発明のポリペプチドを発現させた後に、該細胞を患者に移植することによって、または(ハ)本発明のポリペプチドを該患者に投与すること等によって、該患者における本発明のポリペプチドの役割を十分に、あるいは正常に発揮させることができる。
本発明のポリヌクレオチドを上記の医薬として使用する場合は、該ポリヌクレオチド(例、DNA)を単独またはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクター等の適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って、ヒトまたは温血動物に投与することができる。本発明のポリヌクレオチドは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤等の生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
【0041】
本発明のポリペプチドを上記の予防・治療剤として使用する場合は、少なくとも90%、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上に精製されたものを使用するのが好ましい。
本発明のポリペプチドは、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等として経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤等の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、本発明のポリペプチドを生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤等とともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤等に混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸等のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤等が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油等のような天然産出植物油等を溶解または懸濁させる等の通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウム等)等が挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノール等)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50等)等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等と併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液等)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン等)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコール等)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノール等)、酸化防止剤等と配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
本発明のポリヌクレオチドが挿入されたベクターも上記と同様に製剤化され、通常、非経口的に使用される。
【0042】
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル等)に対して投与することができる。
本発明のポリペプチドの投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルート等により差異はあるが、例えば、アルツハイマー病の治療目的で本発明のポリペプチドを経口投与する場合、一般的に成人(60kgとして)においては、一日につき本発明のポリペプチドを約1〜1000mg、好ましくは約10〜500mg、より好ましくは約10〜200mg投与する。非経口的に投与する場合は、本発明のポリペプチドの1回投与量は投与対象、対象疾患等によっても異なるが、例えば、アルツハイマー病のような神経変性疾患の治療目的で本発明のポリペプチドを注射剤の形で成人(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該ポリペプチドを約1〜1000mg程度、好ましくは約1〜200mg程度、より好ましくは約10〜100mg程度を患部に注射することにより投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0043】
(2)疾病に対する医薬候補化合物のスクリーニング
本発明のポリペプチドは生体内に存在するため、本発明のポリペプチドの機能を促進する化合物またはその塩は、例えば、細胞死抑制剤として、さらには、例えば神経変性を伴う疾病など、例えば、神経変性疾患〔例、アルツハイマー病(家族性アルツハイマー病、若年性アルツハイマー病、孤発性アルツハイマー病など)、パーキンソン病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、糖尿病性ニューロパチー、多発性硬化症など〕、脳機能障害(例、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、虚血性脳疾患、硬膜外血腫、硬膜下血腫など)、癌(例、星状細胞腫、乏枝神経膠腫など)、免疫疾患、感染症(例、髄膜炎、原虫感染症、リケッチア感染症、後生動物感染症、Borna病などの細菌性またはウイルス性髄膜炎、ワクチン接種後脳炎、AIDS脳症など)、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患等の種々の疾病の予防・治療剤、好ましくは神経変性疾患、脳機能障害の予防・治療剤として、さらに好ましくはアルツハイマー病の予防・治療剤として、低毒性で安全な医薬として使用できる。
一方、本発明のポリペプチドの機能を阻害する化合物またはその塩は、本発明のポリペプチドの産生過剰に起因する疾患(例、癌など)の予防・治療剤等の医薬として使用できる。
【0044】
したがって、本発明のポリペプチドは、本発明のポリペプチドの機能を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニングのための試薬として有用である。
すなわち、本発明は、(1)本発明のポリペプチドを用いることを特徴とする本発明のポリペプチドの活性(機能)を促進または阻害する化合物またはその塩(以下、促進剤または阻害剤と略記する場合がある)のスクリーニング方法を提供する。
具体的には、例えば、
(2)(i)本発明のポリペプチドを細胞に接触させた場合と、(ii)本発明のポリペプチドおよび試験化合物を細胞に接触させた場合との、該細胞の細胞死抑制活性の比較を行うことを特徴とする促進剤または阻害剤のスクリーニング方法を提供する。
具体的には、上記スクリーニング方法においては、例えば、(i)と(ii)の場合において、上記細胞を培養し、その生存率を測定する。
上記細胞としては、細胞死が誘発されるものが好ましく用いられる。例えば、ラット副腎髄質由来褐色細胞腫細胞(例、後述の実施例に記載のPC12h細胞など)、家族性アルツハイマー病原因遺伝子のDNAを含有するベクターで形質転換されたラットまたはマウス神経由来細胞株、マウス大脳皮質初代培養細胞などが用いられる。これらの細胞の細胞死は、グルタミン酸添加、血清除去、βアミロイドタンパク質の添加、または組み込んだ家族性アルツハイマー病原因遺伝子DNAの発現などにより、誘発される。
培地は、本発明のポリペプチドの有する細胞死抑制作用を阻害しない培地であればいずれのものでもよく、例えばDulbecco modified Eagle's medium(DMEM)などが用いられる。
生存率は、公知の方法、例えば、細胞抽出液の乳酸脱水酵素(LDH)を測定する方法、MTT(3-(4,5-dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide)アッセイ法、MTS(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-5-(3-carboxymethoxyphenyl)-2-(4-sulfophenyl)-2H-tetrazolium)アッセイ法、トリパンブルー染色法、カルセイン染色法などにより測定する(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、98巻、6336-6341頁、2001年、NeuroReport、13巻、903-907頁、2002年、WO 01/21787など)。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0045】
例えば、上記(ii)の場合における細胞死抑制活性(例、生存率)を、上記(i)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上促進する試験化合物を、本発明のポリペプチドの活性を促進する化合物またはその塩として選択することができる。
例えば、上記(ii)の場合における細胞死抑制活性(例、生存率)を、上記(i)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上阻害する試験化合物を、本発明のポリペプチドの活性を阻害する化合物またはその塩として選択することができる。
【0046】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチド遺伝子の発現を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニングのための試薬として有用である。
本発明は、(3)本発明のポリヌクレオチドを用いることを特徴とする本発明のポリペプチド遺伝子の発現を促進または阻害する化合物またはその塩(以下、それぞれ促進剤、阻害剤と略記する場合がある)のスクリーニング方法を提供し、より具体的には、例えば、
(4)(iii)本発明のポリペプチドを産生する能力を有する細胞を培養した場合と(iv)本発明のポリペプチドを産生する能力を有する細胞と試験化合物の混合物を培養した場合との比較を行うことを特徴とする促進剤または阻害剤のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法においては、例えば、(iii)と(iv)の場合における、本発明のポリペプチド遺伝子の発現量(例、本発明のポリペプチド遺伝子のプロモーター下流に挿入したアルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼなどの酵素活性、本発明のポリペプチドをコードするmRNA量など)を測定して、比較する。
本発明のポリペプチドを産生する能力を有する細胞としては、例えば、前述した本発明のポリペプチドをコードするDNAを含有するベクターで形質転換された宿主(形質転換体)が用いられる。宿主としては、例えば、CHO細胞などの動物細胞が好ましく用いられる。該スクリーニングには、例えば、前述の方法で培養することによって、本発明のポリペプチドを細胞内または培養上清中に産生する形質転換体が好ましく用いられる。さらに好ましくは、本発明のポリペプチド遺伝子のプロモーター下流に、分泌型アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼなどの遺伝子を挿入した形質転換体などが用いられる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記のスクリーニング方法を実施するには、本発明のポリペプチドを産生する能力を有する細胞をスクリーニングに適した培地で培養して調製する。
培地は、本発明のポリペプチドの産生を阻害しない培地であればいずれのものでもよく、例えばDMEM培地などが用いられる。
本発明のポリペプチド遺伝子の発現量は、本発明のポリペプチド遺伝子のプロモーター下流に挿入したアルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼなどの酵素活性を、公知の方法に従い、測定することができる。
本発明のポリペプチド遺伝子の発現量は、さらに、公知の方法、例えば、ノーザンブロッティングやReverse transcription-polymerase chain reaction(RT−PCR)、リアルタイムPCR解析システム(ABI社製、TaqMan polymerase chain reaction)などの方法あるいはそれに準じる方法にしたがって測定することもできる。
例えば、上記(iv)の場合における本発明のポリペプチド遺伝子の発現を、上記(iii)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上促進する試験化合物を本発明のポリペプチド遺伝子の発現を促進する化合物またはその塩として選択することができる。
例えば、上記(iv)の場合における本発明のポリペプチド遺伝子の発現を、上記(iii)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上阻害する試験化合物を本発明のポリペプチド遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩として選択することができる。
【0047】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチド遺伝子の活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニングのための試薬としても有用である。
すなわち、本発明は、(5)本発明のポリヌクレオチドを用いることを特徴とする本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物またはその塩(以下、促進剤または阻害剤と略記する場合がある)のスクリーニング方法を提供する。
具体的には、例えば、
(6)(v)本発明のポリペプチドを産生する能力を有する細胞を、別の細胞に接触させて培養した場合と(vi)本発明のポリペプチドを産生する能力を有する細胞と試験化合物の混合物を、別の細胞に接触させて培養した場合との、該別の細胞の細胞死抑制活性の比較を行うことを特徴とする本発明のポリペプチドの有する細胞死抑制活性の促進剤または阻害剤のスクリーニング方法を提供する。
具体的には、上記スクリーニング方法においては、例えば、(v)と(vi)の場合において、上記細胞を培養し、その生存率を測定する。
本発明のポリペプチドを産生する能力を有する細胞としては、上記(4)に記載の細胞が用いられる。別の細胞としては、上記(2)に記載の細胞が用いられる。試験化合物、培養法、細胞死抑制活性の測定法などは、上記(2)に準じる。
例えば、上記(vi)の場合における細胞死抑制活性(例、生存率)を、上記(v)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上促進する試験化合物を、本発明のポリペプチドの活性を促進する化合物またはその塩として選択することができる。
例えば、上記(vi)の場合における細胞死抑制活性(例、生存率)を、上記(v)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上阻害する試験化合物を、本発明のポリペプチドの活性を阻害する化合物またはその塩として選択することができる。
【0048】
本発明は、(7)本発明の抗体を用いることを特徴とする本発明のポリペプチドの発現(産生)を促進または阻害する化合物またはその塩(以下、それぞれ促進剤、阻害剤と略記する場合がある)のスクリーニング方法を提供する。
具体的には、例えば、
(8)(vii)本発明のポリペプチドを産生する能力を有する細胞を培養した場合と(viii)本発明のポリペプチドを産生する能力を有する細胞と試験化合物の混合物を培養した場合との比較を、本発明の抗体を用いて行うことを特徴とする促進剤または阻害剤のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法においては、例えば、本発明の抗体を用いて(vii)と(viii)の場合における、本発明のポリペプチドの産生量(具体的には、本発明のポリペプチド量)を測定して、比較する。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記のスクリーニング方法を実施するには、本発明のポリペプチドを産生する能力を有する細胞をスクリーニングに適した培地で培養して行う。培地は、本発明のポリペプチドの産生を阻害しない培地であればいずれのものでもよく、例えばDMEM培地などが用いられる。
本発明のポリペプチドを産生する能力を有する細胞としては、例えば、前述した本発明のポリペプチドをコードするDNAを含有するベクターで形質転換された宿主(形質転換体)が用いられる。宿主としては、例えば、CHO細胞などの動物細胞が好ましく用いられる。該スクリーニングには、例えば、前述の方法で培養することによって、本発明のポリペプチドを細胞内または培養上清中に産生する形質転換体が好ましく用いられる。
本発明のポリペプチド量の測定は、公知の方法、例えば、本発明のポリペプチドを認識する抗体を用いて、細胞抽出液中などに存在する前記ポリペプチドを、ウェスタン解析、ELISA法などの方法またはそれに準じる方法に従い測定することができる。
例えば、上記(viii)の場合における本発明のポリペプチドの産生量(発現量)を、上記(vi)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上促進する試験化合物を本発明のポリペプチドの発現を促進する化合物またはその塩として選択することができる。
例えば、上記(viii)の場合における本発明のポリペプチドの産生量(発現量)を、上記(vi)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上阻害する試験化合物を本発明のポリペプチドの発現を阻害する化合物またはその塩として選択することができる。
本発明のスクリーニング用キットは、本発明のポリペプチドまたはその塩を含有するものである。
【0049】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿等から選ばれた化合物であり、本発明のポリペプチドの機能を促進または阻害する化合物、本発明のポリペプチド遺伝子の発現を促進する化合物またはその塩、本発明のポリペプチドの発現を促進する化合物またはその塩である。
該化合物の塩としては、前記した本発明のポリペプチドの塩と同様のものが用いられる。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる、 本発明のポリペプチドの機能を促進する化合物またはその塩、本発明のポリペプチド遺伝子の発現を促進する化合物またはその塩、本発明のポリペプチドの発現を促進する化合物またはその塩は、例えば、細胞死抑制剤として、さらには、例えば神経変性を伴う疾病など、例えば、神経変性疾患〔例、アルツハイマー病(家族性アルツハイマー病、若年性アルツハイマー病、孤発性アルツハイマー病など)、パーキンソン病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、糖尿病性ニューロパチー、多発性硬化症など〕、脳機能障害(例、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、虚血性脳疾患、硬膜外血腫、硬膜下血腫など)、癌(例、星状細胞腫、乏枝神経膠腫など)、免疫疾患、感染症(例、髄膜炎、原虫感染症、リケッチア感染症、後生動物感染症、Borna病などの細菌性またはウイルス性髄膜炎、ワクチン接種後脳炎、AIDS脳症など)、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患等の種々の疾病の予防・治療剤、好ましくは神経変性疾患、脳機能障害の予防・治療剤として、さらに好ましくはアルツハイマー病の予防・治療剤として、低毒性で安全な医薬として使用できる。
一方、本発明のポリペプチドの機能を阻害する化合物またはその塩、本発明のポリペプチド遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、本発明のポリペプチドの発現を阻害する化合物またはその塩は、本発明のポリペプチドの産生過剰に起因する疾患(例、癌など)の予防・治療剤等の医薬として使用できる。
【0050】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物を上述の予防・治療剤として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、前記した本発明のポリペプチドを含有する医薬と同様にして、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤等とすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル等)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、投与ルート等により差異はあるが、例えば、アルツハイマー病の治療の目的で本発明のポリペプチドの活性や機能を促進する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患等によっても異なるが、例えば、アルツハイマー病の治療の目的で本発明のポリペプチドの活性や機能を促進する化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
一方、本発明のポリペプチドの活性や機能を阻害する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患等によっても異なるが、本発明のポリペプチドの活性や機能を阻害する化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0051】
(3)本発明の抗体を用いるポリペプチドの定量および診断方法
本発明の抗体は、本発明のポリペプチドを特異的に認識することができるので、被検液中の本発明のポリペプチドの定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定量等に使用することができる。
すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化された本発明のポリペプチドとを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化された本発明のポリペプチドの割合を測定することを特徴とする被検液中の本発明のポリペプチドの定量法、および
(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の別の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明のポリペプチドの定量法を提供する。
【0052】
また、本発明のモノクローナル抗体を用いて本発明のポリペプチドの定量を行なえるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab')2 、Fab'、あるいはFab画分を用いてもよい。
本発明の抗体を用いる本発明のポリペプチドの定量法は、特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、本発明のポリペプチド量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質等が用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕等が用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等が用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等が用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等が用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
【0053】
抗原あるいは抗体の不溶化にあたっては、物理吸着を用いてもよく、また通常ポリペプチドあるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロース等の不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等が挙げられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の本発明のポリペプチド量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
本発明のサンドイッチ法による本発明のポリペプチドの測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、本発明のポリペプチドの結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、本発明のポリペプチドのC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
【0054】
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリー等に用いることができる。競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体等を用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリー等が好適に用いられる。
【0055】
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明のポリペプチドの測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書等を参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D: Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E: Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)等を参照することができる。
以上のようにして、本発明の抗体を用いることによって、本発明のポリペプチドを感度良く定量することができる。
さらには、本発明の抗体を用いて本発明のポリペプチドの濃度を定量することによって、本発明のポリペプチドの濃度の増加または減少が検出された場合、例えば、神経変性を伴う疾病など、例えば、神経変性疾患〔例、アルツハイマー病(家族性アルツハイマー病、若年性アルツハイマー病、孤発性アルツハイマー病など)、パーキンソン病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、糖尿病性ニューロパチー、多発性硬化症など〕、脳機能障害(例、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、虚血性脳疾患、硬膜外血腫、硬膜下血腫など)、癌(例、星状細胞腫、乏枝神経膠腫など)、免疫疾患、感染症(例、髄膜炎、原虫感染症、リケッチア感染症、後生動物感染症、Borna病などの細菌性またはウイルス性髄膜炎、ワクチン接種後脳炎、AIDS脳症など)、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患等の疾病である、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、本発明の抗体は、体液や組織等の被検体中に存在する本発明のポリペプチドを検出するために使用することができる。また、本発明のポリペプチドを精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発明のポリペプチドの検出、被検細胞内における本発明のポリペプチドの挙動の分析等のために使用することができる。
【0056】
(4)本発明のポリヌクレオチドを含有する診断薬
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、プローブとして使用することにより、哺乳動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル等)における本発明のポリペプチドをコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多等の遺伝子診断薬として有用である。
本発明のポリヌクレオチドを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America),第86巻,2766〜2770頁(1989年))等により実施することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションにより発現低下が検出された場合やPCR−SSCP法によりDNAの突然変異が検出された場合は、例えば、神経変性を伴う疾病など、例えば、神経変性疾患〔例、アルツハイマー病(家族性アルツハイマー病、若年性アルツハイマー病、孤発性アルツハイマー病など)、パーキンソン病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、糖尿病性ニューロパチー、多発性硬化症など〕、脳機能障害(例、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、虚血性脳疾患、硬膜外血腫、硬膜下血腫など)、癌(例、星状細胞腫、乏枝神経膠腫など)、免疫疾患、感染症(例、髄膜炎、原虫感染症、リケッチア感染症、後生動物感染症、Borna病などの細菌性またはウイルス性髄膜炎、ワクチン接種後脳炎、AIDS脳症など)、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患等の疾病である可能性が高いと診断することができる。
【0057】
(5)アンチセンス・ポリヌクレオチドを含有する医薬および診断薬
本発明のポリヌクレオチドに相補的に結合し、該ポリヌクレオチドの発現を抑制することができるポリヌクレオチド(アンチセンス・ポリヌクレオチド)は、生体内における本発明のポリペプチドまたは本発明のポリヌクレオチドの機能を抑制することができるので、例えば、本発明のポリペプチドの発現過多に起因する疾患の(例、癌など)予防・治療剤として使用することができる。
上記アンチセンス・ポリヌクレオチドを上記の予防・治療剤として、前記した本発明のDNAを含有する各種疾病の予防・治療剤と同様に使用することができる。
例えば、該アンチセンス・ポリヌクレオチドを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクター等の適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って投与することができる。該アンチセンス・ポリヌクレオチドは、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤等の生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
さらに、該アンチセンス・ポリヌクレオチドは、組織や細胞における本発明のDNAの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとして使用することもできる。例えば、神経変性を伴う疾病など、例えば、神経変性疾患〔例、アルツハイマー病(家族性アルツハイマー病、若年性アルツハイマー病、孤発性アルツハイマー病など)、パーキンソン病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、糖尿病性ニューロパチー、多発性硬化症など〕、脳機能障害(例、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、虚血性脳疾患、硬膜外血腫、硬膜下血腫など)、癌(例、星状細胞腫、乏枝神経膠腫など)、免疫疾患、感染症(例、髄膜炎、原虫感染症、リケッチア感染症、後生動物感染症、Borna病などの細菌性またはウイルス性髄膜炎、ワクチン接種後脳炎、AIDS脳症など)、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患等の疾病の診断に使用することができる。
【0058】
(6)本発明の抗体を含有する医薬
本発明のポリペプチドの活性を中和する作用を有する本発明の抗体は、例えば、本発明のポリペプチドの発現過多に起因する疾患(例、癌など)の予防・治療剤等の医薬として使用することができる。
本発明の抗体を含有する上記疾患の予防・治療剤は、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、哺乳動物(例、ヒト、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル等)に対して経口的または非経口的に投与することができる。投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルート等によっても異なるが、例えば、本発明の抗体を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
本発明の抗体は、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
すなわち、例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等があげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウム等が用いられる。
【0059】
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含する。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記抗体またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記抗体またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤等が例示され、それぞれの投薬単位剤形当たり通常5〜500mg程度、とりわけ注射剤では5〜100mg程度、その他の剤形では10〜250mg程度の上記抗体が含有されていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
【0060】
(7)DNA導入動物
本発明は、外来性の本発明のポリペプチドをコードするDNA(以下、本発明の外来性DNAと略記する)またはその変異DNA(本発明の外来性変異DNAと略記する場合がある)を有する非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
(1)本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、
(2)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(1)記載の動物、
(3)ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第(2)記載の動物、および
(4)本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを含有し、哺乳動物において発現しうる組換えベクターを提供するものである。
本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、本発明のDNA導入動物と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞等に対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法等により目的とするDNAを導入することによって作出することができる。また、該DNA導入方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞等に目的とする本発明の外来性DNAを転移し、細胞培養、組織培養等に利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と公知の細胞融合法により融合させることにより本発明のDNA導入動物を作出することもできる。
【0061】
非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラット等が用いられる。なかでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統等、交雑系として、B6C3F1系統,BDF1系統,B6D2F1系統,BALB/c系統,ICR系統等)またはラット(例えば、Wistar,SD等)等が好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒト等が挙げられる。
本発明の外来性DNAとは、非ヒト哺乳動物が本来有している本発明のDNAではなく、いったん哺乳動物から単離・抽出された本発明のDNAをいう。
本発明の変異DNAとしては、元の本発明のDNAの塩基配列に変異(例えば、突然変異等)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換等が生じたDNA等が用いられ、また、異常DNAも含まれる。
該異常DNAとしては、異常な本発明のポリペプチドを発現させるDNAを意味し、例えば、正常な本発明のポリペプチドの機能を抑制するポリペプチドを発現させるDNA等が用いられる。
本発明の外来性DNAは、対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物由来のものであってもよい。本発明のDNAを対象動物に導入するにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本発明のヒトDNAを導入する場合、これと相同性が高い本発明のDNAを有する各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウス等)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、本発明のヒトDNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクター等)を対象哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによって本発明のDNAを高発現するDNA導入哺乳動物を作出することができる。
【0062】
本発明のポリペプチドの発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージ等のバクテリオファージ、モロニー白血病ウィルス等のレトロウィルス、ワクシニアウィルスまたはバキュロウィルス等の動物ウイルス等が用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミド等が好ましく用いられる。
上記のDNA発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、▲1▼ウイルス(例、シミアンウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルス、ポリオウイルス等)に由来するDNAのプロモーター、▲2▼各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウス等)由来のプロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存タンパク質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ポリペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎タンパク質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシン等のプロモーター等が用いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサイトメガロウイルスプロモーター、ヒトポリペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβアクチンプロモーター等が好適である。
【0063】
上記ベクターは、DNA導入哺乳動物において目的とするmRNAの転写を終結する配列(一般にターミネターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウィルス由来および各種哺乳動物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウィルスのSV40ターミネーター等が用いられる。その他、目的とする外来性DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部等をプロモーター領域の5’上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3’下流 に連結することも目的により可能である。
該翻訳領域はDNA導入動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの導入は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。DNA導入後の作出動物の胚芽細胞において、本発明の外来性DNAが存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを保持することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを有する。
【0064】
本発明の外来性正常DNAを導入した非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの導入は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。DNA導入後の作出動物の胚芽細胞において本発明の外来性DNAが過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有する。
導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するように繁殖継代することができる。
本発明の正常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を促進することにより最終的に本発明のポリペプチドの機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA導入動物を用いて、本発明のポリペプチドの機能亢進症や、本発明のポリペプチドが関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、本発明の外来性正常DNAを導入した哺乳動物は、遊離した本発明のポリペプチドの増加症状を有することから、本発明のポリペプチドに関連する疾患に対する治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
【0065】
一方、本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とする外来DNAを前述のプラスミドに組み込んで原科として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの導入は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA導入後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的に本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA導入動物を用いて、本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症における本発明の異常ポリペプチドによる正常ポリペプチドの機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。
また、本発明の外来異常DNAを導入した哺乳動物は、遊離した本発明のポリペプチドの増加症状を有することから、本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症に対する治療薬スクリーニング試験にも利用可能である。
【0066】
また、上記2種類の本発明のDNA導入動物のその他の利用可能性として、例えば、
▲1▼組織培養のための細胞源としての使用、
▲2▼本発明のDNA転移動物の組織中のDNAもしくはRNAを非導入動物(対照群)のものと比較分析するか、またはポリペプチド組成を比較分析することによる、本発明のポリペプチドにより特異的に発現あるいは活性化あるいは不活性化する遺伝子やポリペプチドの解析、
▲3▼DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、
▲4▼上記▲3▼記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬剤のスクリーニング、および
▲5▼本発明の変異ポリペプチドを単離精製およびその抗体作製等が考えられる。さらに、本発明のDNA導入動物を用いて、本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症等を含む、本発明のポリペプチドに関連する疾患の臨床症状を調べることができ、また、本発明のポリペプチドに関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。
また、本発明のDNA導入動物から各臓器を取り出し、細切後、トリプシン等のポリペプチド(タンパク質)分解酵素により、遊離したDNA導入細胞の取得、その培養またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さらに、本発明のポリペプチド産生細胞の特定化、アポトーシス、分化あるいは増殖との関連性、またはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べること等ができ、本発明のポリペプチドおよびその作用解明のための有効な研究材料となる。
さらに、本発明のDNA導入動物を用いて、本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症を含む、本発明のポリペプチドに関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法等を用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。また、本発明のDNA導入動物または本発明の外来性DNA発現ベクターを用いて、本発明のポリペプチドが関連する疾患のDNA治療法を検討、開発することが可能である。
【0067】
(8)ノックアウト動物
本発明は、本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
(1)本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
(2)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された第(1)項記載の胚幹細胞、
(3)ネオマイシン耐性である第(1)項記載の胚幹細胞、
(4)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(1)項記載の胚幹細胞、
(5)ゲッ歯動物がマウスである第(4)項記載の胚幹細胞、
(6)本発明のDNAが不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
(7)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる第(6)項記載の非ヒト哺乳動物、
(8)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(6)項記載の非ヒト哺乳動物、
(9)ゲッ歯動物がマウスである第(8)項記載の非ヒト哺乳動物、および
(10)第(7)項記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
【0068】
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしている本発明のポリペプチドの活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的に本発明のポリペプチドの発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部または全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナル等)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
【0069】
また、相同組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知のEvansとKaufmanの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得する等の目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)を用いて樹立したもの等も良好に用いうる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスと戻し交配(バッククロス)することでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例として挙げることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
【0070】
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1−10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、約5%炭酸ガス、約95%空気または約5%酸素、約5%炭酸ガス、約90%空気)で約37℃で培養する等の方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常約0.001−0.5%トリプシン/約0.1−5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/約1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法等がとられる。このような継代は、通常1−3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋等の種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. EvansおよびM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおける本発明のポリペプチドの細胞生物学的検討において有用である。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知の方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
【0071】
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲッティングベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックアウトさせることができる。
本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、本発明のポリペプチドのヘテロ発現不全個体であり、本発明のポリペプチドのヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔から本発明のポリペプチドのホモ発現不全個体を得ることができる。
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
【0072】
このようにして本発明のDNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のポリペプチドにより誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、本発明のポリペプチドの生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明および治療法の検討に有用である。
【0073】
(8a)本発明のDNAの欠損や損傷等に起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAの欠損や損傷等に起因する疾病、例えば神経変性を伴う疾病など、例えば、神経変性疾患〔例、アルツハイマー病(家族性アルツハイマー病、若年性アルツハイマー病、孤発性アルツハイマー病など)、パーキンソン病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、糖尿病性ニューロパチー、多発性硬化症など〕、脳機能障害(例、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、虚血性脳疾患、硬膜外血腫、硬膜下血腫など)、癌(例、星状細胞腫、乏枝神経膠腫など)、免疫疾患、感染症(例、髄膜炎、原虫感染症、リケッチア感染症、後生動物感染症、Borna病などの細菌性またはウイルス性髄膜炎、ワクチン接種後脳炎、AIDS脳症など)、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患等に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニングに用いることができる。すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、本発明のDNAの欠損や損傷等に起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが挙げられる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿等が挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
具体的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、疾病の症状等の変化を指標として試験化合物の治療・予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射等が用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質等にあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質等にあわせて適宜選択することができる。
【0074】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のポリペプチドの欠損や損傷等によって引き起こされる疾患、例えば神経変性を伴う疾病など、例えば、神経変性疾患〔例、アルツハイマー病(家族性アルツハイマー病、若年性アルツハイマー病、孤発性アルツハイマー病など)、パーキンソン病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、糖尿病性ニューロパチー、多発性硬化症など〕、脳機能障害(例、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、虚血性脳疾患、硬膜外血腫、硬膜下血腫など)、癌(例、星状細胞腫、乏枝神経膠腫など)、免疫疾患、感染症(例、髄膜炎、原虫感染症、リケッチア感染症、後生動物感染症、Borna病などの細菌性またはウイルス性髄膜炎、ワクチン接種後脳炎、AIDS脳症など)、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患等に対して治療・予防効果を有するので、該疾患に対する安全で低毒性な予防・治療剤等の医薬として使用することができる。さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例アルカリ金属)等との塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩等が用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した本発明のポリペプチドを含有する医薬と同様にして製造することができる。このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル等)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルート等により差異はあるが、例えば、アルツハイマー病の治療目的で該化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患等によっても異なるが、例えば、アルツハイマー病の治療目的で該化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0075】
(8b)本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物をスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、本発明のDNAがレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものが挙げられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子等が好適である。
本発明のDNAをレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
【0076】
例えば、本発明のポリペプチドをコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、本発明のポリペプチドの発現する組織で、本発明のポリペプチドの代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便に本発明のポリペプチドの動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、本発明のポリペプチド欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒド等で固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
【0077】
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物である。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸)や塩基(例、有機酸)等との塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩等が用いられる。
本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、本発明のポリペプチドの発現を促進し、該ポリペプチドの活性・機能を促進することができるので、例えば、細胞死抑制剤として、さらには、例えば神経変性を伴う疾病など、例えば、神経変性疾患〔例、アルツハイマー病(家族性アルツハイマー病、若年性アルツハイマー病、孤発性アルツハイマー病など)、パーキンソン病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、糖尿病性ニューロパチー、多発性硬化症など〕、脳機能障害(例、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、虚血性脳疾患、硬膜外血腫、硬膜下血腫など)、癌(例、星状細胞腫、乏枝神経膠腫など)、免疫疾患、感染症(例、髄膜炎、原虫感染症、リケッチア感染症、後生動物感染症、Borna病などの細菌性またはウイルス性髄膜炎、ワクチン接種後脳炎、AIDS脳症など)、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患等の種々の疾病の予防・治療剤、好ましくは神経変性疾患、脳機能障害の予防・治療剤として、さらに好ましくはアルツハイマー病の予防・治療剤等の医薬として有用である。
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
【0078】
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した本発明のポリペプチドまたはその塩を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、哺乳動物(例えば、ラット、ヒト、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル等)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルート等により差異はあるが、例えば、アルツハイマー病の治療目的で本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患等によっても異なるが、例えば、アルツハイマー病の治療目的で本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0079】
一方、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)のアルツハイマー病患者においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患等によっても異なるが、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)のアルツハイマー病患者に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のDNA発現不全に起因する各種疾患、例えば、神経変性を伴う疾病など、例えば、神経変性疾患〔例、アルツハイマー病(家族性アルツハイマー病、若年性アルツハイマー病、孤発性アルツハイマー病など)、パーキンソン病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、糖尿病性ニューロパチー、多発性硬化症など〕、脳機能障害(例、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、虚血性脳疾患、硬膜外血腫、硬膜下血腫など)、癌(例、星状細胞腫、乏枝神経膠腫など)、免疫疾患、感染症(例、髄膜炎、原虫感染症、リケッチア感染症、後生動物感染症、Borna病などの細菌性またはウイルス性髄膜炎、ワクチン接種後脳炎、AIDS脳症など)、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患等の原因究明または予防・治療薬の開発に大きく貢献することができる。
【0080】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸等を略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
【0081】
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
【0082】
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
Tos :p−トルエンスルフォニル
CHO :ホルミル
Bzl :ベンジル
Cl2−Bzl:2,6−ジクロロベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc :t−ブトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェニル
Trt :トリチル
Bum :t−ブトキシメチル
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン
HONB :1-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
Pbf :2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル
tBu : 第3ブチル
TFA :トリフルオロ酢酸
HOAt : 1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
PyAop : 7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリスピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェイト
DIPCDI :1,3−ジイソプロピルカルボジイミド
Fmoc-Leu-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OH:(4S)-3-(Fmoc-Leu)-2,2,-ジメチルオキサゾリジン-4-カルボン酸[(4S)-3-(Fmoc-Leu)-2,2-dimethyloxazolidine-4-carboxylic acid)]
【0083】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:2〕
実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
実施例1で得られた本発明のポリペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:4〕
実施例1で得られた本発明のポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:5〕
実施例1で用いられたクエリーの塩基配列を示す。
〔配列番号:6〕
実施例1で得られた配列番号:3を含むDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
実施例1で得られた本発明のポリペプチド(配列番号:4)の部分ペプチドのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:8〕
配列番号:7をコードするDNAの塩基配列を示す。
【0084】
後述の実施例1で得られた形質転換体 Escherichia coli TOP10/pcDNA-hn3 は、2001年7月19日から日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号 FERM BP−7674として、2001年7月3日から日本国大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号(郵便番号532−8686)の財団法人発酵研究所(IFO)に受託番号IFO 16673として寄託されている。
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作法は、モレキュラー・クローニング(Molecular cloning)に記載されている方法に従った。
【0085】
実施例1
配列番号:5で表されるヒトhumanin遺伝子コード領域をクエリーにしてGEMBLEに対してデータベースサーチを行ったところ、アクセッション番号AL356135の配列中にhumanin遺伝子のコード領域に対応した開始および終止コドンを含むhumanin遺伝子に類似した遺伝子領域が存在することが見出された。この遺伝子が実際に存在し、また転写されて機能していることを確認するため、ヒト全脳polyA+ RNA (クロンテック社) 1.0μgを鋳型に、SuperScript reversetranscriptase (ギブコ BRL社)を用い、マニュアルにしたがって、oligo (dT)プライマーを用いて逆転写を行ってcDNAを作成し、アクセッション番号AL356135の配列中のhumanin類似配列のコード領域の5’上流および3’下流に相当する、順に、TACCCTAACCGTGCAAAGGTAGCATG(配列番号:1)、GTGGGCTTATTGGGTGTTGTTTGCATTGG(配列番号:2)のプライマーを設定して20μlの液量でPCR反応を行った。組成は、cDNA調製液から10ng mRNA相当分を鋳型に両primer 0.5μM、2.5mM MgCl2、 dNTP 0.2mM, AmpliTaq Gold (パーキンエルマー社) 1/100 volume 、10倍濃縮AmpliTaq Gold Buffer 1/10 volumeで行った。反応は、95℃で10分保温した後、95℃15秒、67℃15秒、72℃15秒のサイクルを40回繰り返した後、72℃で5分保温した。得られた反応液を用い、Eukaryotic TOPO TA cloning kit (インビトロジェン社)を用いてプラスミドベクターpcDNA3.1/V5/His-TOPOへサブクローニングし、大腸菌TOP10へ導入した。生じた形質転換体からQIA prep8 mini prep (キアゲン社)を用いてプラスミドDNAを精製した。塩基配列決定のための反応は、BigDye Terminator Cycle Sequence Ready Reaction Kit(パーキンエルマー社)を用いて行い、蛍光式自動シーケンサーを用いて解読した。その結果、検索で見出されたhumanin類似配列のコード領域(配列番号:3)を含む配列番号:6で表される塩基配列が得られたことから、この遺伝子がヒト全脳において発現していることが確認された。
この配列には、humanin類似配列のコード領域全長が含まれていたので、上記プラスミドで大腸菌TOP10を形質転換して、Escherichia coli TOP10/pcDNA-hn3を得た。
【0086】
実施例2
配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドを、humanin類似ペプチドと称することがある。
Humanin類似ペプチドを以下の方法で製造した。
市販の2-chlorotrityl resin (Clt resin、1.33 mmol/g) にFmoc-Thr(tBu)-OHを導入したFmoc-Thr(tBu)-O-Clt resin (0.527 mmol/g) 0.25 mmol分をペプチド合成機ABI 433A の反応槽に入れ、Fmoc/ DCC/ HOBt法を用い、固相合成を行なった。Fmocアミノ酸の側鎖保護基はArgにはPbf基、LysにBoc基、Asp、Thr、SerにtBu基、CysにTrt基を用いた。他のアミノ酸は側鎖無保護のものを用い、上記に示す配列の13位Thrまでペプチド鎖を伸長した。得られたFmoc- humanin類似ペプチド(13-24)-O-Clt resinにFmoc-Leu-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OH(NOVA社製、製品番号05-20-1004)をDIPCDI/HOAtで導入した後、10位LeuからN末端側へ配列順にDCC/ HOBtで導入し、目的の保護ペプチド樹脂を得た。
この樹脂100 mgをTFA、thioanisole、m-cresol、水、triisopropylsilane、ethandithiol(80:5:5:5:2.5:2.5)の混合液(total 1.5 ml)で室温、1.5時間攪拌した後、反応溶液にエーテルを加え、白色粉末を析出させ遠心分離後、上清を除く操作を3回繰り返した。残渣を水で抽出後、凍結乾燥し白色粉末を得た。得られた粗ペプチドをYMC Pack R&D-ODS-5-B S-5、120Aカラム(30 x 250mm)を用いた分取HPLCで、A液: 0.1%TFA-水、B液: 0.1%TFA含有アセトニトリルによるA/B: 78/22〜68/32への直線型濃度勾配溶出(60分)を行ない、目的物を含む分画を集め凍結乾燥し白色粉末21.8 mgを得た。
ESI-MS: M+ 2692.8 (理論値 2692.5)
HPLC溶出時間 10.5分
溶出条件
カラム YMC AM 301 (4.6 x 100mm)
溶離液 A液: 0.1%TFA-水、B液: 0.1%TFA含有アセトニトリルを用い、A/B: 80/20〜30/70へ 直線型濃度勾配溶出(25分)
流速 1.0ml/分
【0087】
実施例3
Humanin類似ペプチドによるラット副腎髄質由来褐色細胞腫細胞PC12hに対するグルタミン酸誘発細胞死抑制活性
コラーゲンコート済み96ウェルプレート(IWAKI)に10%ウシ胎児血清および5%馬血清を含むDulbecco modified Eagle's medium(以下、DMEM)を培地としてPC12h細胞(大阪大学蛋白質研究所・畠中寛教授より供与、Hatanaka, H.、Brain Research、222巻、225-233頁、1981年)を2 x 104 cells/cm2の細胞密度でまいた。24時間後に100μlの20 mM HEPES (pH 7.5)を含むDMEMに培地を交換し、同時に、各種濃度の実施例2で製造したhumanin類似ペプチド(配列番号:4)および添加後の濃度が1 mMとなるようにグルタミン酸を添加した。72時間後に0.2% Tween20を含むphosphate buffered saline 100μlを用いて細胞を溶解し、抽出液の乳酸脱水酵素(LDH)活性をLDH Cytotoxic Test WAKO(和光純薬)によって測定した。
結果を図1に示す。
グルタミン酸処理72時間後において、humanin類似ペプチド無添加区の細胞生存率が34.0%であったのに対し、humanin類似ペプチドを1μMまたは10μM添加することにより、細胞生存率は、それぞれ59.3%または74.6%に上昇した。なお、細胞生存率は、グルタミン酸無添加区を100%としたときの比率によって表わす。これより、humanin類似ペプチドにより、ラット副腎髄質由来褐色細胞腫細胞PC12hのグルタミン酸誘発細胞死が抑制されることが明らかである。
【0088】
実施例4
Humanin類似ペプチド(19−24)(配列番号:7):Pro-Val-Lys-Arg-Arg-Thrの製造
Fmoc-Thr(tBu)-O-Clt resinを用い、目的配列の保護ペプチド樹脂を調製し、実施例2に記載のhumanin類似ペプチドの精製法と同様の方法により精製して白色粉末29 mgを得た。
ESI-MS: M+ 756.5 (理論値 756.5)
HPLC溶出時間 10.2分
溶出条件
カラム YMC AM 301 (4.6 x 100mm)
溶離液 A液: 0.1%TFA-水、B液: 0.1%TFA含有アセトニトリルを用い、A/B: 80/20〜30/70へ 直線型濃度勾配溶出(25分)
流速 1.0ml/分
【0089】
【発明の効果】
本発明のポリペプチドおよび本発明のポリヌクレオチドは、例えば、神経変性を伴う疾病など、例えば、神経変性疾患〔例、アルツハイマー病(家族性アルツハイマー病、若年性アルツハイマー病、孤発性アルツハイマー病など)、パーキンソン病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、糖尿病性ニューロパチー、多発性硬化症など〕、脳機能障害(例、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、虚血性脳疾患、硬膜外血腫、硬膜下血腫など)、癌(例、星状細胞腫、乏枝神経膠腫など)、免疫疾患、感染症(例、髄膜炎、原虫感染症、リケッチア感染症、後生動物感染症、Borna病などの細菌性またはウイルス性髄膜炎、ワクチン接種後脳炎、AIDS脳症など)、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患等の種々の疾病の診断、治療または予防剤、または細胞死抑制剤などとして使用することができる。また、本発明のポリペプチドは、本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニングなどのための試薬として有用である。さらに、本発明のポリペプチドに対する抗体は、本発明のポリペプチドを特異的に認識することができるので、被検液中の本発明のポリペプチドの検出、定量、中和等に使用することができ、例えば、神経変性を伴う疾病など、例えば、神経変性疾患〔例、アルツハイマー病(家族性アルツハイマー病、若年性アルツハイマー病、孤発性アルツハイマー病など)、パーキンソン病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン舞踏病、糖尿病性ニューロパチー、多発性硬化症など〕、脳機能障害(例、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、虚血性脳疾患、硬膜外血腫、硬膜下血腫など)、癌(例、星状細胞腫、乏枝神経膠腫など)、免疫疾患、感染症(例、髄膜炎、原虫感染症、リケッチア感染症、後生動物感染症、Borna病などの細菌性またはウイルス性髄膜炎、ワクチン接種後脳炎、AIDS脳症など)、消化管疾患、循環器疾患、内分泌疾患等の種々の疾病の診断に有用である。
【0090】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 各種濃度のHumanin類似ペプチドによるラット副腎髄質由来褐色細胞腫細胞PC12hに対するグルタミン酸誘発細胞死抑制活性を示す。細胞の生存率は、グルタミン酸無添加区を100%としたときの比率によって表わした。*はHumanin類似ペプチド無添加区に対して有意な(p<0.05)差であることを示す。
Claims (12)
- 配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩。
- 配列番号:4で表されるアミノ酸配列からなる請求項1記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩。
- 請求項1または2に記載のポリペプチドをコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
- DNAである請求項3記載のポリヌクレオチド。
- 配列番号:3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する請求項3記載のポリヌクレオチド。
- 請求項3〜5のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
- 請求項6記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体。
- 請求項7記載の形質転換体を培養し、請求項1または2に記載のポリペプチドを生成・蓄積せしめることを特徴とする請求項1または2に記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の製造法。
- 請求項1または2に記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体。
- 配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド。
- 請求項1または2に記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
- 請求項1または2に記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる請求項1または2に記載のポリペプチド、そのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
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