JPWO2007011057A1 - ポリシロキサンおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、環境に対する負荷を小さくするという観点からは、有機溶媒の使用は避けることが好ましく、また、製造工程から排出される廃液については、可能な限り少なくすることが望まれている。ポリシロキサンの製造においては、生成物が高粘度液体または固体の場合、操作性向上を目的として有機溶媒が使用されることが多い。この使用を回避する手法として、特公昭63−14013号公報に気体もしくは超臨界流体の二酸化炭素を重合時の媒体として使用する製造法が提案されている。この手法では、有機溶媒は使用しないものの、酸または塩基触媒を用いるため、生成物の塩基処理または酸処理が必要となる。また、特開2002−3529号公報には、超臨界二酸化炭素を反応溶媒とするシリル基含有化合物の製造方法が提案されている。この方法は、白金化合物等の触媒を利用したヒドロシリル化反応の媒体として超臨界二酸化炭素を使用するものである。さらに、特開2001−49026号公報および特開2001−81232号公報には、架橋シリコーン化合物の廃棄物を、アルコールと水の混合溶媒と加熱下で接触させて加水分解し、未架橋シリコーンコンパウンドまたはシリコーン油状物とする方法が提案されている。この方法では、シロキサン結合の分解を伴ってポリシロキサンを製造するため、生成物の珪素原子上の置換基は、出発物質である架橋シリコーン廃棄物の置換基(基本的にメチル基)に限定される。置換基が二種以上存在する場合も、生成物中でのその比率を制御することは難しく、また、一置換シロキサン単位、二置換シロキサン単位等の異なった結合様式を所望の比率で有するポリシロキサンを製造することはできない。さらに、生成物の詳細な化学構造、分子量についてはまったく言及されていない。現在までに、加水分解・縮合反応によるシロキサン結合の生成を伴う無溶媒、無触媒でのポリシロキサンの製造方法は提案されていない。
本発明の目的は、製造時の排出物が少なく、簡略化されたポリシロキサンの製造方法を提案することである。
(1)平均組成式(A):
R1 a(R2O)bSiO[(4−a−b)/2]
(式中、R1は同じかまたは異なる置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、R2は炭素数4以下の一価炭化水素基であり、a、bはそれぞれ0≦a≦3、0<b≦4、かつ0<a+b≦4を満たす数である。)
で表される含珪素化合物と水の混合物を200℃以上の温度、2.5MPa以上の圧力の条件下で加水分解・縮合反応することを特徴とする。
本願の請求項2に係る発明のポリシロキサンの製造方法は、平均組成式(B):
R1 c(R2O)d(HO)eSiO[(4−c−d−e)/2]
(式中、R1、R2は前記と同じであり、c、d、eはそれぞれ0≦c≦2、0<d≦3、0<e≦2、かつ0<c+d+e≦4を満たす数である。)
で表される含珪素化合物を、200℃以上の温度、0.5MPa以上の圧力の条件下で縮合反応することを特徴とする。
本願の請求項3に係る発明のポリシロキサンの製造方法は、平均組成式(B):
R1 c(R2O)d(HO)eSiO[(4−c−d−e)/2]
(式中、R1、R2、c、d、eは前記と同じである。)
で表される含珪素化合物と水の混合物を、200℃以上の温度、0.5MPa以上の圧力の条件下で加水分解・縮合反応することを特徴とする。
本願の請求項4に係る発明のポリシロキサンの製造方法は、平均組成式(A):
R1 a(R2O)bSiO[(4−a−b)/2]
(式中、R1、R2、a、bは前記と同じである。)
で表される含珪素化合物と平均組成式(C):
R1 f(HO)gSiO[(4−f−g)/2]
(式中、R1は前記と同じであり、f、gはそれぞれ0≦f≦3、0<g≦3、かつ0<f+g≦4を満たす数である。)
で表される含珪素化合物の混合物を、200℃以上の温度、0.5MPa以上の圧力の条件下で縮合反応することを特徴とする。
本願の請求項5に係る発明のポリシロキサンの製造方法は、平均組成式(A):
R1 a(R2O)bSiO[(4−a−b)/2]
(式中、R1、R2、a、bは前記と同じである。)
で表される含珪素化合物と平均組成式(C):
R1 f(HO)gSiO[(4−f−g)/2]
(式中、R1、f、gは前記と同じである。)
で表される含珪素化合物と水の混合物を、200℃以上の温度、0.5MPa以上の圧力の条件下で加水分解・縮合反応することを特徴とする。
本願の請求項6に係る発明のポリシロキサンの製造方法は、請求項1、3、5のいずれか1項に記載の方法において、含珪素化合物と水をそれぞれ反応容器に連続的に供給しながら反応させることを特徴とする。
本願の請求項7に係る発明のポリシロキサンの製造方法は、請求項2、4のいずれか1項に記載の方法において、含珪素化合物を反応容器に連続的に供給しながら反応させることを特徴とする。
本願の請求項8に係る発明のポリシロキサンは、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とする。
本願の請求項9に係る発明は、請求項8記載のポリシロキサンが含珪素無機化合物の前駆体であることを特徴とする。
[発明の効果]
本発明のポリシロキサンの製造方法では、ポリシロキサンの製造方法で通常使用される酸または塩基性化合物触媒を使用しないため、製造時の中和工程が不要となり、プロセスが簡略化される。この結果、製造に要する時間も短縮され、製造コストの低減にも有効である。
図1中、1は含珪素化合物用貯槽、2は送液ポンプ、3は水用貯槽、4は送液ポンプ、5は熱交換器、6は温度計、7は予熱部、8はサンドバス、9は反応容器、10は捕集容器、11はインラインフィルター、12は背圧調節器を示す。
R1 a(R2O)bSiO[(4−a−b)/2]
で表される含珪素化合物を200℃以上の温度、2.5MPa以上の圧力の条件下で加水分解・縮合反応することを特徴とする。式中、R1は同じかまたは異なる置換もしくは非置換の一価炭化水素基である。具体的には、珪素原子に結合した炭素原子数1〜6の一価脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の一価芳香族炭化水素基、炭素原子数1〜6の一価置換脂肪族炭化水素基、および炭素原子数6〜10の一価置換芳香族炭化水素基から選ばれる1種または2種以上の1価炭化水素基である。具体例を挙げると、炭素原子数1〜6の一価飽和脂肪族炭化水素基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基が例示されるが、メチル基が好ましい。一価不飽和脂肪族炭化水素基として、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基が例示される。一価芳香族炭化水素基として、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基が例示されるが、フェニル基が好ましい。一価置換脂肪族炭化水素基として、クロロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシ置換炭化水素基が例示され、一価置換芳香族炭化水素基として、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−クロロナフチル基等のハロゲン置換炭化水素基が例示される。また、式中、R2は炭素数4以下の一価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ターシャリーブチル基が例示され、特に、メチル基が好ましい。また、式中、a、bはそれぞれ0≦a≦3、0<b≦4、かつ0<a+b≦4を満たす数である。bが大きくなるに従い、生成物となるポリシロキサンの分子量が大きくなる傾向がある。
このような含珪素化合物(A)として、具体的には、トリメチルメトキシシラン、ジメチルフェニルメトキシシラン、メチルジフェニルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、両末端ジメトキシ官能性ポリジメチルシロキサン、両末端メチルジメトキシ官能性ポリジメチルシロキサン、両末端トリメトキシ官能性ポリジメチルシロキサン、メトキシ官能性シリケートオリゴマーが例示される。含珪素化合物(A)としては、これらの化合物を単独で用いても良いし、二種以上の混合物を用いても良い。
この含珪素化合物(A)と反応させる際の水の量は、特に制限はないが、含珪素化合物(A)中のR2Oで表される基の50モル%以上、1500モル%以下となるような量であることが好ましい。これは、水の量が50モル%未満であると、生成物であるポリシロキサン中に残存するR2Oで表される基およびシラノール基濃度が著しく高くなるため好ましくない。また、1500モル%を超える量を使用すると、反応系内の圧力が高くなりすぎたり、回収される過剰量の水の量が多すぎるためこれもまた好ましくない。
この含珪素化合物(A)と水を反応させる際の条件としては、反応温度が200℃以上、反応圧力が2.5MPa以上であることが必要である。温度、圧力のどちらかもしくは両者がこれらの値未満であると、反応が十分進行しない。温度、圧力の厳密な上限はないが、反応基質および生成物であるポリシロキサンの熱安定性を考慮すると上限温度は400℃である。また、反応圧力が高すぎると、生成物であるポリシロキサンの分子量を高くすることが難しくなるため、30MPa程度が上限である。好ましい温度領域は、230℃以上、370℃以下、より好ましい温度領域は、250℃以上、350℃以下である。一方、好ましい圧力領域は、2.8MPa以上、25MPa以下、より好ましい圧力領域は、3.0MPa以上、22MPa以下である。
この含珪素化合物(A)と水とを反応させる時間についても大きな制限はないが、基質である混合物が設定した反応温度に到達した後、30秒以上、30分以下が推奨される範囲である。反応時間が短すぎると、ポリシロキサン形成のための縮合反応が十分に進行せず、また、反応時間が長すぎるとエネルギーの無駄となるので好ましくない。
この含珪素化合物(A)と水を反応させる際の反応様式についても制限はなく、バッチ式反応、流通式反応のいずれも適用することができる。バッチ式反応においては、含珪素化合物(A)と水を反応容器に投入後、設定した温度、圧力に所定時間保つ操作が一般的である。一方、流通式反応においては、例えば、図1で示される装置を用いることができる。この装置において、含珪素化合物(A)と水を別々の貯槽1、3から送液ポンプ2、4を用いて連続的に反応容器9に導入し、流通させながら混合、反応させる方法が一般的である。この際、両成分を常温のまま導入することも可能であるが、水のみを予熱部7で反応温度まで加熱したり、あるいは含珪素化合物(A)を熱交換器5で冷却して反応させることも可能である。生成物は捕集容器10で捕集され、固形生成物はインラインフィルター11で捕集することができる。また、反応容器の材質に関しては、本発明の製造法が塩素系ガスの発生を伴わないことから、大きな制限はない。通常の圧力容器に用いられる素材であるステンレス、チタン合金等が好ましく使用される。さらに加熱媒体に関しても制限はなく、高温反応で通常使用される熱媒体が使用可能である。具体的には、電気炉、ダウケミカル社製ダウサーム等の有機熱交換流体、松村石油株式会社製バーレルサーム等の有機熱媒体油、アルカリ金属硝酸塩等の無機溶融塩、サンドバスとして使用される砂等が挙げられる。なお、図1で示される流通式反応装置では加熱手段としてサンドバス8を用いているが、これに限定されるものではない。
本発明のポリシロキサンの製造方法では、上記化合物(A)と水を所定の温度、圧力、時間の条件下、加水分解・縮合反応させた後に冷却し、反応生成物からポリシロキサンを単離する。ポリシロキサン以外の生成物としては、アルコールが挙げられる。
また、別の本発明のポリシロキサンの製造方法は、平均組成式(B):
R1 c(R2O)d(HO)eSiO[(4−c−d−e)/2]
で表される含珪素化合物を、200℃以上の温度、0.5MPa以上の圧力の条件下で縮合反応することを特徴とする。式中、R1およびR2は前記と同様である。また、式中、c、d、eはそれぞれ0≦c≦2、0<d≦3、0<e≦2、かつ0<c+d+e≦4を満たす数であり、好ましくは、1≦c≦2、0.1≦d≦2、0.05<e≦2、かつ1.15<c+d+e≦4を満たす数である。
この含珪素化合物(B)として、具体的には、ジメチルジメトキシシランの部分加水分解物、ジメチルジエトキシシランの部分加水分解物、メチルフェニルジメトキシシランの部分加水分解物、メチルビニルジメトキシシランの部分加水分解物、ジフェニルジメトキシシランの部分加水分解物、両末端OH官能性ポリジメチルシロキサンの部分メトキシ化反応生成物、両末端メトキシ官能性ポリジメチルシロキサンの部分加水分解物、両末端ジメトキシ官能性ポリジメチルシロキサンの部分加水分解物、両末端トリメトキシ官能性ポリジメチルシロキサンの部分加水分解物、メチルトリメトキシシランの部分加水分解物、メチルトリエトキシシランの部分加水分解物、フェニルトリメトキシシランの部分加水分解物、ビニルトリメトキシシランの部分加水分解物、テトラメトキシシランの部分加水分解物、テトラエトキシシランの部分加水分解物、メトキシ官能性シリケートオリゴマーの部分加水分解物が例示される。含珪素化合物(B)として、これら化合物を単独で用いても良いし、二種以上の混合物を用いても良い。
さらに、この含珪素化合物(B)は単独で反応させても良いし、水の存在下で加水分解・縮合反応させてもよい。この場合、含珪素化合物(B)の構造によっては、水とともに反応させることにより分子量の高いポリシロキサンを製造することができる場合がある。この際の水の量は特に制限はないが、含珪素化合物(B)中のR2Oで表される基の10モル%以上、1500モル%以下であることが好ましい。これは、水の量が10モル%未満であると、分子量増大の効果が小さく、また、1500モル%を超える量を使用すると、反応系内の圧力が高くなりすぎるためこれもまた好ましくない。
含珪素化合物(B)を反応させる際の条件としては、反応温度が200℃以上、反応圧力が0.5MPa以上であることが必要である。温度、圧力のどちらかもしくは両者がこれらの値未満であると、反応が十分進行しない。温度、圧力の厳密な上限はないが、反応基質および生成物であるポリシロキサンの熱安定性を考慮すると上限温度は400℃である。また、反応圧力が高すぎると、生成物であるポリシロキサンの分子量を高くすることが難しくなるため、30MPa程度が上限である。好ましい温度領域は、230℃以上、370℃以下、より好ましい温度領域は、250℃以上、350℃以下である。一方、好ましい圧力領域は、0.8MPa以上、25MPa以下、より好ましい圧力領域は、1.0MPa以上、22MPa以下である。さらに、この含珪素化合物(B)の反応時間、反応様式、反応容器の材質、加熱時の加熱媒体、得られるポリシロキサンの単離方法に関しても制限はなく、前記と同様の条件を適用することができる。なお、この含珪素化合物(B)の反応を流通式で行う場合には、例えば、図1で示される装置において、水用貯槽3、送液ポンプ4、および予熱部7を除く装置を用いることができる。
さらに、別の本発明のポリシロキサンの製造方法は、平均組成式(A):
R1 a(R2O)bSiO[(4−a−b)/2]
で表される含珪素化合物と平均組成式(C):
R1 f(HO)gSiO[(4−f−g)/2]
で表される含珪素化合物の混合物を、200℃以上の温度、0.5MPa以上の圧力の条件下で縮合反応させることを特徴とする。式中、R1、R2は前記と同様の基である。また、式中、f、gはそれぞれ0≦f≦3、0<g≦3、かつ0<f+g≦4を満たす数である。
この含珪素化合物(A)としては、前記と同様の化合物が例示され、この化合物は単独で用いても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。また、含珪素化合物(C)として、具体的には、トリメチルシラノール、ジメチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、ジフェニルシランジオール、ヘキサフェニルトリシロキサン−1,5−ジオール、両末端OH官能性ポリジメチルシロキサン、両末端OH官能性ポリメチルフェニルシロキサン、フェニルシラントリオール、メチルトリメトキシシランの加水分解物、メチルトリエトキシシランの加水分解物、フェニルトリメトキシシランの加水分解物、ビニルトリメトキシシランの加水分解物、水分散コロイダルシリカが例示される。含珪素化合物(C)として、これらの化合物を単独で用いても良いし、二種以上の混合物を用いても良い。
この含珪素化合物(A)と含珪素化合物(C)の混合物はこのまま反応に供することもできるが、水の存在下で加水分解・縮合反応させてもよい。含珪素化合物(A)と含珪素化合物(C)の構造およびその混合比率によっては、水とともに反応させることにより分子量の高いポリシロキサンを製造することができる場合がある。この際の水の量は特に制限はないが、(A)中のR2Oで表される基の10モル%以上、1500モル%以下であることが好ましい。これは、水の量が10モル%未満であると、分子量増大の効果が小さく、また、1500モル%を超える量を使用すると、反応系内の圧力が高くなりすぎたり、回収される過剰量の水の量が多すぎるためこれもまた好ましくない。
この含珪素化合物(A)と含珪素化合物(C)の混合物を反応させる際の条件としては、上述した理由で化合物(A)の場合と同様に反応温度が200℃以上、反応圧力が0.5MPa以上であることが必要である。好ましい温度領域は、230℃以上、370℃以下、より好ましい温度領域は、250℃以上、350℃以下である。一方、好ましい圧力領域は、0.8MPa以上、25MPa以下、より好ましい圧力領域は、1.0MPa以上、22MPa以下である。また、この含珪素化合物(A)と含珪素化合物(C)の混合物の反応時間、反応様式、反応容器の材質、加熱時の加熱媒体、得られるポリシロキサンの単離方法に関しても制限はなく、前記と同様の条件を適用することができる。
本発明のポリシロキサンは、上記の方法により製造されたことを特徴とする。このようなポリシロキサンは、ポリシロキサンの製造方法で通常使用される酸または塩基性化合物触媒を使用しないため、製造時の中和工程が不要であるばかりか、その触媒残渣や中和塩を含有することがないので、耐熱性や電気特性が優れることが期待される。
[ポリシロキサンの分子量]
生成物であるポリシロキサンの分子量は、東ソー株式会社製の高速GPC装置HLC−8020を用い、クロロフォルムを溶出液とし、重量平均分子量のポリスチレン標準サンプルに対する相対値として算出した。
[ポリシロキサンの耐熱性]
生成物であるポリシロキサンの耐熱性は、島津製作所製の熱重量減少測定装置TGA−50を用い、空気中、10℃/分の速度で800℃まで昇温した後の残渣重量の割合(%)で評価した。
[ポリシロキサンの化学構造]
生成物であるポリシロキサンの化学構造は、日本分光株式会社製のフーリエ変換赤外分光光度計FT/IR−5300を用いる赤外吸収スペクトル測定、およびブルカーバイオスピン株式会社製の高分解能核磁気共鳴装置ACP300を用いて、重水素化アセトン中での13C−NMR、29Si−NMRスペクトル測定により行った。NMR測定での共鳴周波数シフト値を算出する基準物質にはテトラメチルシランを使用した。
[実施例1]
圧力センサーを備え付けた内径10mm、内容積9.6cm3のSUS316製反応管にフェニルトリメトキシシラン3ml、水1.5mlを仕込み、閉栓した。この混合物を250℃に加熱したサンドバスに投入し、15分間加熱後水浴にて急冷し、開栓した。加熱時の反応管内圧は3.7MPaであった。生成物は白色固体と無色透明液体の相分離混合物であった。この無色透明液体はメタノール水溶液であった。また、この固体生成物は、下記にまとめたIRおよびNMRスペクトルデータから、OH基、メトキシ基を含有するフェニルシルセスキオキサンであることが確認された。出発原料の重量から換算したこの生成物の単離収率は92%、また分子量は9,700であった。
IR(cm−1):3,650、3,050、1,595、1,420、1,100;
13C−NMR(ppm):50.9、128.4、131.3、134.5;
29Si−NMR(ppm):−77.7、−69.4
[実施例2]
実施例1において、反応温度を300℃、反応時間を10分間とした以外は実施例1と同様に反応を行った。加熱時の反応管内圧は4.3MPaであった。実施列1と同様の相分離混合物が得られ、固体生成物のIRおよびNMRスペクトルも実施例1と同様であり、この固体生成物はOH基、メトキシ基を含有するフェニルシルセスキオキサンであることが確認された。単離収率は92%、また分子量は13,600であった。
[実施例3]
実施例1において、フェニルトリメトキシシランの量を4ml、水の量を2ml、反応温度を350℃、反応時間を10分間とした以外は実施例1と同様に反応を行った。加熱時の反応管内圧は14.3MPaであった。実施例1と同様の相分離混合物が得られ、固体生成物のIRおよびNMRスペクトルも実施例1と同様であり、この固体生成物はOH基、メトキシ基を含有するフェニルシルセスキオキサンであることが確認された。単離収率は82%、また分子量は2,900であった。
[実施例4]
実施例1において、反応基質をテトラメトキシシラン2.5ml、水の量を1.83mlとし、反応時間を10分間とした以外は実施例1と同様に反応を行った。加熱時の反応管内圧は13.5MPaであった。実施例1と同様の相分離混合物が得られ、固体生成物は有機溶媒に不溶であった。この生成物のIRおよびNMRスペクトルから、この生成物はOH基を含有する二酸化ケイ素であることが確認された。単離収率は99%であった。
IR(cm−1):3,410、1,100、965;
29Si−NMR(ppm):−107.4,−97.9,−88.6
[実施例5]
実施例1において、メチルトリメトキシシラン0.51mlおよびフェニルトリメトキシシラン2mlの混合物を反応基質とし、水の量を1.16mlとし、反応温度を300℃とし、反応時間を10分間とした以外は実施例1と同様に反応を行った。加熱時の反応管内圧は12.0MPaであった。実施例1と同様の相分離混合物が得られ、下記にまとめたIRおよびNMRスペクトルデータから、この固体生成物はOH基、メトキシ基を含有するメチルシルセスキオキサン/フェニルシルセスキオキサン共重合体[共重合組成比(モル比):25/75]であることが確認された。単離収率は89%、また分子量は1,780であった。
IR(cm−1):3,650、3,050、2,970、1,595、1,420、1,100;
13C−NMR(ppm):−3.1、50.7、128.5、131.3.134.5;
29Si−NMR(ppm):−79.6、−71.0、−65.1、−56.2
[実施例6]
実施例1において、反応基質を平均組成式:
(C6H5)1(CH3O)1(HO)2/3SiO2/3
で表されるシロキサン7mlとし、反応温度を300℃とし、反応時間を10分間とした以外は実施例1と同様に反応を行った。加熱時の反応管内圧は3.5MPaであった。実施例1と同様の相分離混合物が得られ、固体生成物のIRおよびNMRスペクトルも実施例1と同様であり、この固体生成物はOH基、メトキシ基を含有するフェニルシルセスキオキサンであることが確認された。単離収率は95%、また分子量は2,100であった。
[実施例7]
実施例1において、反応基質を平均組成式:
(C6H5)1(CH3O)1(HO)2/3SiO2/3
で表されるシロキサン6mlとし、水の量を1mlとし、反応温度を300℃とし、反応時間を10分間とした以外は実施例1と同様に反応を行った。加熱時の反応管内圧は8.0MPaであった。実施例1と同様の相分離混合物が得られ、固体生成物のIRおよびNMRスペクトルも実施例1と同様であり、この固体生成物はOH基、メトキシ基を含有するフェニルシルセスキオキサンであることが確認された。単離収率は92%、また分子量は3,400であった。
[実施例8]
実施例1において、平均重合度13の両末端水酸基官能性ポリジメチルシロキサン4.08mlおよびメチルフェニルジメトキシシラン0.97mlの混合物を反応基質とし、反応温度を300℃とし、反応時間を10分間とした以外は実施例1と同様に反応を行った。加熱時の反応管内圧は0.9MPaであった。均一なオイル状生成物が得られ、下記にまとめたIRおよびNMRスペクトルデータから、この固体生成物はポリマー末端にOH基、メトキシ基を有するジメチルシロキサン/フェニルメチルシロキサン共重合体[共重合組成比(モル比):91/9]であることが確認された。単離収率は99%、また分子量は2,100であった。
IR(cm−1):3,650、3,050、2,970、1,595、1,420、1,100;
13C−NMR(ppm):1.2、50.9、128.4、131.3、134.5;
29Si−NMR(ppm):−24.7、−21.8、−20.7、−19.0、−14.0、−11.5
[実施例9]
実施例1において、平均重合度13の両末端水酸基官能性ポリジメチルシロキサン0.81mlおよびフェニルトリメトキシシラン2mlの混合物を反応基質とし、水の量を0.87mlとし、反応温度を300℃とし、反応時間を10分間とした以外は実施例1と同様に反応を行った。加熱時の反応管内圧は9.0MPaであった。実施例1と同様の相分離混合物が得られ、下記にまとめたIRおよびNMRスペクトルデータから、この固体生成物はOH基、メトキシ基を含有するジメチルシロキサン/フェニルシルセスキオキサン共重合体[共重合組成比(モル比):50/50]であることが確認された。単離収率は88%、また分子量は3,280であった。
IR(cm−1):3,650、3,050、2,970、1,595、1,420、1,100;
13C−NMR(ppm):1.1、50.9、128.4、131.3、134.5;
29Si−NMR(ppm):−79.0、−71.2.−21.7、−13.9、−11.4
[実施例10]
図1に示す流通式反応装置を用い、250℃、6MPaに保たれた内容積15mlの反応容器にフェニルトリメトキシシランを1ml/min、水を2ml/minの速度で別々に導入した。20分間送液を続け、反応を停止した。生成物は白色固体と無色透明液体の相分離混合物であった。固体生成物のIRおよびNMRスペクトルも実施例1と同様であり、この固体生成物はOH基、メトキシ基を含有するフェニルシルセスキオキサンであることが確認された。分子量は4,100であった。
[実施例11]
実施例1および2で得られたフェニルシルセスキオキサンを800℃まで加熱した。加熱後の残渣重量の割合は、加熱前の重量のそれぞれ47.5%および46.5%であった。これらの値は、ポリシロキサンの化学構造から計算した酸化ケイ素へ転換率の値とよく一致した。
[比較例1]
実施例1において、水を加えずフェニルトリメトキシシラン3mlのみを仕込み、反応温度を300℃とした以外は実施例1と同様にした。加熱時の反応管内圧は0.4MPaであった。生成物はフェニルトリメトキシシランであり、反応が起こらないことが確認された。
[比較例2]
実施例1において、フェニルトリメトキシシランの量を2ml、水の量を1ml、反応温度を300℃とした以外は実施例1と同様に反応を行った。加熱時の反応管内圧は1.1MPaであった。生成物は二液からなる相分離混合物であり、その有機相からは、分子量が1,500のポリマーの生成が認められた。しかしながら、ガスクロマトグラフィー分析から、多量のフェニルトリメトキシシランが残存することが確認され、加水分解の進行が不十分であることがわかった。
[比較例3]
フェニルトリメトキシシランを出発物質とし、特開2005−179541号公報の実施例に記載の合成方法に準じた方法により分子量11,000のフェニルシルセスキオキサンを得た。このフェニオルシルセスキオキサンを800℃まで加熱した。加熱後の残渣重量の割合は、加熱前の重量の28.0%であり、化学構造から計算した酸化ケイ素へ転換率に比べて著しく低く、耐熱性に劣ることがわかった。
Claims (9)
- 平均組成式(A):
R1 a(R2O)bSiO[(4−a−b)/2]
(式中、R1は同じかまたは異なる置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、R2は炭素数4以下の一価炭化水素基であり、a、bはそれぞれ0≦a≦3、0<b≦4、かつ0<a+b≦4を満たす数である。)
で表される含珪素化合物と水の混合物を、200℃以上の温度、2.5MPa以上の圧力の条件下で加水分解・縮合反応することを特徴とするポリシロキサンの製造方法。 - 平均組成式(B):
R1c(R2O)d(HO)eSiO[(4−c−d−e)/2]
(式中、R1は同じかまたは異なる置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、R2は炭素数4以下の一価炭化水素基であり、c、d、eはそれぞれ0≦c≦2、0<d≦3、0<e≦2、かつ0<c+d+e≦4を満たす数である。)
で表される含珪素化合物を、200℃以上の温度、0.5MPa以上の圧力の条件下で縮合反応することを特徴とするポリシロキサンの製造方法。 - 平均組成式(B):
R1 c(R2O)d(HO)eSiO[(4−c−d−e)/2]
(式中、R1は同じかまたは異なる置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、R2は炭素数4以下の一価炭化水素基であり、c、d、eはそれぞれ0≦c≦2、0<d≦3、0<e≦2、かつ0<c+d+e≦4を満たす数である。)
で表される含珪素化合物と水の混合物を、200℃以上の温度、0.5MPa以上の圧力の条件下で加水分解・縮合反応することを特徴とするポリシロキサンの製造方法。 - 平均組成式(A):
R1 a(R2O)bSiO[(4−a−b)/2]
(式中、R1は同じかまたは異なる置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、R2は炭素数4以下の一価炭化水素基であり、a、bはそれぞれ0≦a≦3、0<b≦4、かつ0<a+b≦4を満たす数である。)
で表される含珪素化合物と平均組成式(C):
R1 f(HO)gSiO[(4−f−g)/2]
(式中、R1は前記と同じであり、f、gはそれぞれ0≦f≦3、0<g≦3、かつ0<f+g≦4を満たす数である。)
で表される含珪素化合物の混合物を、200℃以上の温度、0.5MPa以上の圧力の条件下で縮合反応することを特徴とするポリシロキサンの製造方法。 - 平均組成式(A):
R1 a(R2O)bSiO[(4−a−b)/2]
(式中、R1は同じかまたは異なる置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、R2は炭素数4以下の一価炭化水素基であり、a、bはそれぞれ0≦a≦3、0<b≦4、かつ0<a+b≦4を満たす数である。)
で表される含珪素化合物と平均組成式(C):
R1 f(HO)gSiO[(4−f−g)/2]
(式中、R1は前記と同じであり、f、gはそれぞれ0≦f≦3、0<g≦3、かつ0<f+g≦4を満たす数である。)
で表される含珪素化合物と水の混合物を、200℃以上の温度、0.5MPa以上の圧力の条件下で加水分解・縮合反応することを特徴とするポリシロキサンの製造方法。 - 含珪素化合物と水をそれぞれ反応容器に連続的に供給しながら反応させることを特徴とする、請求項1、3、5のいずれか1項に記載のポリシロキサンの製造方法。
- 含珪素化合物を反応容器に連続的に供給しながら反応させることを特徴とする、請求項2、4のいずれか1項に記載のポリシロキサンの製造方法。
- 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法で製造されたポリシロキサン。
- ポリシロキサンが含珪素無機化合物の前駆体である、請求項8記載のポリシロキサン。
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