JPWO2006123574A1 - 土壌及び/又は地下水の浄化方法 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち本発明は、以下の(1)〜(7)に示す浄化方法に関する。
(1)土壌及び/又は地下水の浄化方法であって、下記一般式(1)で示されるジカルボキシメチルアミン系生分解性キレート剤を浄化対象中に存在する鉄イオンの0.5〜4.0倍のモル比で該浄化対象に添加して前記生分解性キレート剤と鉄イオンとの錯体を生成させる生分解性キレート剤添加工程と、前記錯体生成後に浄化対象をpH5−10に保ち酸化剤を添加する酸化剤添加工程とを含むことを特徴とする、浄化方法。
(2)前記一般式(1)におけるRが、−CH(CH3)COOX、−CH(COOX)C2H4COOX、−CH(COOX)CH2COOX、または−C2H4SO3X(XはH又はアルカリ金属)を表すものである、(1)記載の浄化方法。
(3)前記酸化剤添加工程において、浄化対象をpH7−9に保ち酸化剤を添加することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の浄化方法。
(4)前記酸化剤添加工程において、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種のpH緩衝剤を添加することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の浄化方法。
(5)酸化剤が過酸化水素である(1)〜(4)のいずれか1項に記載の浄化方法。
(6)生分解性キレート剤添加工程の前に、浄化対象のpHを6以上から5以上6未満に下げて土壌中の鉄イオンを地下水中に溶出させる前処理工程を含む、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の浄化方法。
(7)生分解性キレート剤添加工程の前に、浄化対象に鉄イオンを添加する前処理工程を含む、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の浄化方法。
(1)重金属の溶出しない高pH範囲において、分解剤(酸化剤及び触媒としての鉄キレート錯体)の反応を阻害することなく、著しく速い分解速度で汚染有機化合物を分解できる。
(2)触媒となる鉄などの金属イオンの高pH範囲での水酸化物生成及び沈殿を効果的に防止することができるため、該沈殿物による土壌及び/又は地下水の流路や配管に対する閉塞を生じさせることなく浄化作業を行うことができる。
(3)使用している薬剤は生分解性キレート剤であり、さらに酸化剤として過酸化水素、pH緩衝剤として炭酸塩など、環境負荷が極めて低いものを使用することができる。
(4)高濃度汚染に対しても浄化処理が可能である。
したがって、本発明によれば、有機化合物に汚染された土壌及び/又は地下水を短期間でかつ安全に浄化することが可能である。また、生態系などの周辺環境に大きく影響を与えることなく原位置での浄化が可能である。
本発明の過酸化水素と鉄イオンの反応によって生じるヒドロキシラジカルは酸化力が強く、有機塩素化合物だけでなくトルエン、ベンゼンや油系の土壌汚染にも適応可能である。
(1)生分解性キレート剤添加工程
浄化対象中に存在する鉄イオンは、酸化剤との反応によりヒドロキシラジカルを発生させて浄化対象中の有機汚染物質を酸化分解させる働きを有する。よって、効率的に酸化分解できる程度の濃度で浄化対象に含まれていればよい。好ましい浄化対象中の鉄イオン濃度は、汚染のレベルにもよるが、例えば15〜100mg/L程度である。
前記鉄イオンがもともと地下水及び/又は土壌中に適当量存在している場合は、別途添加する必要は無い。しかし、浄化期間などの条件によっては、前処理として予め浄化対象に鉄イオンを添加することにより、効果を向上させ、浄化処理期間を短縮することも可能である。鉄イオンを添加する場合は、浄化対象に鉄イオンを供給可能な化合物を添加することができる。鉄イオンを供給可能な化合の例としては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄などの鉄塩が挙げられる。鉄塩の使用量には特に制限がなく、必要とされる汚染のレベルにより適宜選択される。一般に鉄塩の添加量は硫酸第一鉄に換算して、浄化対象全量に対し0−0.1重量%である。鉄塩の供給方法としては、土壌中に設置した井戸等の設備により、水溶液とした鉄塩を土壌及び/又は地下水に供給する方法などを挙げることができる。鉄塩水溶液の濃度としては0〜10重量%が好ましい。
前処理の為の酸成分の供給方法としては、土壌中に設置した井戸等の設備により、水溶液とした酸成分を土壌及び/又は地下水に供給する方法などを挙げることができる。酸成分水溶液の濃度としては0〜10重量%が好ましい。
好ましくは、Rは窒素原子を含まない炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4の有機基を表す。より好ましくは、Rは窒素原子を含まない有機基であって、−COOX及び−SO3Xからなる群から選択される少なくとも1つを含むものを表す。さらに好ましくは、Rは窒素原子を含まない炭素数1〜4の有機基であって、−COOX及び−SO3Xからなる群から選択される少なくとも1つを含むものを表す。
上記一般式(1)で表されるジカルボキシメチルアミン系生分解性キレート剤のうち、特に好ましいのは、上記一般式(1)中のRが−CH(CH3)COOX、−CH(COOX)C2H4COOX、−CH(COOX)CH2COOX、または−C2H4SO3X(XはH又はアルカリ金属)を表すものである。
このようなジカルボキシメチルアミン系生分解性キレート剤の例として、メチルグリシン2酢酸、グルタミン酸2酢酸、アスパラギン酸2酢酸、2−アミノエタンスルホン酸2酢酸、及びこれらのナトリウム塩等が挙げられる。キレート剤の添加により、浄化対象に存在している鉄イオンの錯体を生成させて、水酸化鉄の生成及び沈殿を防ぐことができる。
キレート剤の添加が不足すると水酸化鉄の沈殿を生じ、過剰な添加では浄化を阻害するため、鉄イオン1molに対しキレート剤0.5−4.0倍のmol比で使用することが好ましい。特に鉄イオン1molに対しキレート剤1.0−2.0倍のmol比がキレート剤の添加効果の高く、好ましい。キレート剤の供給方法としては、土壌中に設置した井戸等の設備により、水溶液としたキレート剤を土壌もしくは地下水に供給する方法などを挙げることができる。供給は連続的もしくは断続的に実施することができる。キレート剤水溶液の濃度としては50〜5000mg/Lが好ましい。
本発明の浄化方法においては、前記錯体生成後に浄化対象をpH5−10に保ち酸化剤を添加する(酸化剤添加工程)。生分解性キレート剤と鉄イオンとの錯体生成後に浄化対象を高pH範囲に保って汚染有機物の分解を行うため、重金属の溶出を抑え、且つ水酸化鉄の生成及び沈殿を抑えることができる。
酸化剤としては、過酸化水素、過炭酸塩、過炭酸、過ホウ酸塩、過ホウ酸、過酢酸、過酢酸塩等が挙げられるが、周辺環境への影響、操作性、価格、汎用性の点から過酸化水素が最も望ましい。過酸化水素注入濃度は、汚染の程度、土壌中への注入水量、揚水量によっても異なるが、注入水量に対し0.5−5wt%が望ましい。一般的に過酸化水素の使用量に制限は無く、汚染状況、周辺環境、浄化期間によって適宜選択される。酸化剤の供給方法としては、土壌中に設置した井戸等の設備により、水溶液とした酸化剤を土壌及び/又は地下水に供給する方法などを挙げることができる。供給は連続的もしくは断続的に実施することができる。酸化剤水溶液の濃度としては0−35wt%が好ましい。
pH緩衝剤は、炭酸系、リン酸系、酢酸系など適宜選択して用いることができるが、最も効果の高いpH7−9に制御しうる点、さらに環境負荷を考慮すると、炭酸系緩衝剤が好ましい。炭酸系緩衝剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が使用できる。リン酸系緩衝剤としてはリン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸2水素カリウム等が使用できる。酢酸系緩衝剤としては酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム等が使用できる。
このうち、コストや溶解度、pHの観点からは炭酸水素ナトリウムを単独で使用するか、もしくは炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムとを併用することが望ましい。また、酢酸と酢酸ナトリウムとを併用するのも好ましい。
浄化対象のpHが5−10の範囲であれば、pHの低下が生じても、必ずしもpH緩衝剤の添加は必要ではないが、浄化期間短縮のためにはpH緩衝剤を添加してpH7−9に制御することが望ましい。緩衝剤の供給方法としては、土壌中に設置した井戸等の設備により、目的pHとした水溶液を土壌もしくは地下水に供給する方法などを挙げることができる。
134mlのバイアルビンに、あらかじめFeSO4・7H2Oを15mg−Fe/Lと、キレート剤を鉄イオンに対して等mol添加し、鉄キレート錯体を生成させる。その後、揮発性有機化合物としてテトラクロロエチレン(PCE)を19−28mg/Lの濃度で溶解させた模擬汚染水、過酸化水素を680mg/L(pH範囲5−6の場合)、もしくは63mg/L(pH範囲7−8での条件)、もしくは660mg/L(pH範囲9−10での条件)、及び反応液中のpHを一定に保つため炭酸水素ナトリウム/炭酸ナトリウムもしくは酢酸/酢酸ナトリウムの組合せによる緩衝剤を入れた後、密閉して浄化試験を実施した。反応開始から一定時間(1h)経過後、液中のPCE濃度を測定し、浄化の進行を確認した。キレート剤としてメチルグリシン2酢酸(ナトリウム塩;商品名「Trilon M」(登録商標)、BASFジャパン(株)提供)、L−グルタミン酸2酢酸(ナトリウム塩;東京化成製試薬)を用いた結果を表1中の実施例1−6に、比較としてキレート剤を添加しない場合、生分解性を有するが本願の請求範囲外であるグルコン酸、エチレンジアミン2コハク酸を用いた結果を表1中の比較例1−9に示す。
134mlのバイアルビンに、あらかじめFeSO4・7H2Oを15mg−Fe/Lと、キレート剤を添加し、鉄キレート錯体を生成させる。キレート剤は添加した鉄イオンに対するモル比で添加量を変化させた。その後、揮発性有機化合物としてテトラクロロエチレン(PCE)を26−52mg/Lの濃度で溶解させた模擬汚染水、反応液中のpHを7−9の一定に保つため炭酸水素ナトリウム/炭酸ナトリウムの組合せによる緩衝剤、および過酸化水素を65mg/L入れた後、密閉して浄化試験を実施した。反応開始から一定時間(1h)経過後、液中のPCE濃度を測定し、浄化の進行を確認した。キレート剤としてメチルグリシン2酢酸、グルタミン酸2酢酸を用いた結果を表2中の実施例7−11、12−14に、本特許の請求範囲外の添加モル比での結果を表2中の比較例10−12に、難生分解性であり、本特許範囲外であるエチレンジアミン4酢酸を用いた結果を表2中の比較例13−16に示す。
グルタミン酸2酢酸を用いた実施例12−14では、メチルグリシン2酢酸を使用したときと同様に、本願の請求範囲内の添加モル比では残存PCE濃度が低く、PCEの分解が十分進行していた。特にキレート剤の添加モル比が鉄イオンに対して2以下で55%以上の高い分解率を示した。しかし、本願の請求範囲外のキレート剤の添加量では、PCE分解率の減少が確認された(比較例12)。
以上の結果から、本発明で規定される構造と性能をもつキレート剤は本願の請求範囲内である鉄イオンに対する添加モル比0.5−4.0倍で、有機塩素化合物の分解において極めて有効であることが示された。
よって、有機化合物に汚染された土壌及び/又は地下水を短期間で効率的にかつ安全に浄化することが可能であり、特に生態系などの周辺環境に大きく影響を与えることなく原位置での浄化を行うことできる。また、高濃度汚染に対する浄化処理にも極めて有効である。
Claims (7)
- 前記一般式(1)におけるRが、−CH(CH3)COOX、−CH(COOX)C2H4COOX、−CH(COOX)CH2COOX、または−C2H4SO3X(XはH又はアルカリ金属)を表すものである、請求項1記載の浄化方法。
- 前記酸化剤添加工程において、浄化対象をpH7−9に保ち酸化剤を添加することを特徴とする、請求項1又は2に記載の浄化方法。
- 前記酸化剤添加工程において、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種のpH緩衝剤を添加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の浄化方法。
- 酸化剤が過酸化水素である請求項1〜4のいずれか1項に記載の浄化方法。
- 生分解性キレート剤添加工程の前に、浄化対象のpHを6以上から5以上6未満に下げて土壌中の鉄イオンを地下水中に溶出させる前処理工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の浄化方法。
- 生分解性キレート剤添加工程の前に、浄化対象に鉄イオンを添加する前処理工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の浄化方法。
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