JP2017043706A - 化学物質分解組成物及び化学物質の分解処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】既存の酸化分解法では分解が困難な四塩化炭素等の難分解性の有機ハロゲン化合物を十分に分解することができる化学物質分解組成物を提供すること。【解決手段】過硫酸塩と、水溶性の不飽和カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸類、単糖類、及び二糖類から選択される少なくとも一種以上を含有する化学物質分解組成物とする。この化学物質分解組成物を、化学物質に汚染された土壌・地下水等と接触させることにより、当該化学物質を効率よく分解処理することができる。【選択図】なし

Description

本発明は化学物質によって汚染された土壌・地下水等に添加することで、当該化学物質を効率よく分解処理することができる化学物質分解組成物及び、それを用いた化学物質の分解処理方法に関する。
従来、有機塩素化合物などの化学物質が洗浄剤などとして半導体工場やクリーニング店(工場)などで広く使用されてきたが、環境負荷が大きいため、近年はその使用が敬遠されている。
しかしながら、既に使用されたこれらの化学物質が、土壌や地下水に混入している場合も多く、土地を再利用するに際し大きな社会問題となっている。そこで様々な手段で、汚染土壌や汚染水を浄化する試みがなされている。
汚染土壌や汚染水を物理的に除去する方法や、汚染物質を生物的あるいは化学的に分解する方法が知られているが、物理的な方法により、汚染土壌の搬出を伴う場合は二次的な処理が必要となる欠点がある。また、生物的に汚染物質を分解する方法も検討されているが、環境への負荷が小さいという利点はあるものの、高濃度の有機塩素化合物等の汚染物質の分解には長期間を要するため適用が難しいという課題がある。これに対して化学的に分解する方法では、現地で汚染物質の分解が可能であるため二次的な処理は不要であり、高濃度の有機塩素化合物等の汚染を短期間で分解可能である。化学的に分解する方法としては、過酸化水素や過硫酸塩あるいはそれらと鉄系触媒等を用いて汚染物質を酸化分解処理する方法が知られている(特許文献1〜5を参照)。
特開2010-149083号公報 特開2011-173089号公報 特開2011-245458号公報 特開2012-246434号公報 特開2008-246414号公報
しかしながら、過酸化水素や過硫酸塩、それらと鉄系触媒に代表される既存の方法では、有機ハロゲン化合物の中でも四塩化炭素などの難分解性物質の分解は難しかった。
そこで本発明は、既存の酸化分解法では分解が困難であった四塩化炭素等の難分解性物質を酸化分解することができる化学物質分解組成物を提供することを目的とする。
鋭意検討した結果、有機塩素化合物等の有機ハロゲン化合物の中でも難分解性の物質を分解できる組成物を見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は(A)少なくとも一種の過酸化物と、(B)不飽和カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸類、単糖類、二糖類から選択される少なくとも一種以上を含有し、鉄触媒を含まないことを必須とする化学物質分解組成物を提供する。
本発明はまた、上記(A)及び(B)成分に加えて、更に(C)アスコルビン酸を含有する化学物質分解組成物を提供する。
本発明の態様は以下のとおりである。
<1>
(A)少なくとも一種の過酸化物と、(B)不飽和カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸類、単糖類、及び二糖類からなる群より選択される少なくとも一種以上を含有し、鉄触媒を含まないことを特徴とする、化学物質分解組成物。
<2>
更に(C)アスコルビン酸を含有することを特徴とする、上記<1>記載の化学物質分解組成物。
<3>
分解すべき化学物質が、浄化対象中に存在する有機ハロゲン化合物を含む、上記<1>または<2>記載の化学物質分解組成物。
<4>
上記<1>〜<3>のいずれか1に記載の化学物質分解組成物を、化学物質に汚染された土壌または水と接触させて、当該化学物質を分解処理することを特徴とする汚染土壌または汚染水中の化学物質の分解処理方法。
<5>
鉄イオンを利用せずに化学物質を分解処理することを特徴とする、上記<4>記載の化学物質の分解処理方法。
これまでの酸化剤あるいは過酸化物、あるいはこれらと鉄系触媒を用いた化学分解では分解が困難であった四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタンなどの難分解性有機塩素化合物を含む有機ハロゲン化合物に対して十分な分解能を有する化学物質分解組成物を提供することができる。
本発明の化学物質分解組成物は(A)少なくとも一種の過酸化物と、(B)不飽和カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸類、単糖類、及び二糖類からなる群より選択される少なくとも一種以上を含有し、鉄触媒を含まない。好ましくは更に(C)アスコルビン酸を含有する組成物である。
分解の対象となる化学物質は四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタンなどの難分解性有機塩素化合物等を含む有機ハロゲン化合物が挙げられる。
上記の化学物質が混入した対象物を浄化する目的で、本発明の化学物質分解組成物は使用されるが、こうした対象物としては、例えば、土壌、汚泥、工場排水、生活排水、河川、湖沼水、地下水、廃棄物等が挙げられる。
<過酸化物(A)>
本発明の化学物質分解組成物に使用される過酸化物(A)とは、ペルオキシ基(-O-O-)を有する化合物である。土壌等の浄化対象中の汚染物質、主に有機ハロゲン化合物、ベンゼン、ガソリン、軽油等を酸化して分解するための薬剤である。
(A)成分として、過酸化水素、過硫酸塩、過炭酸塩、及び過酢酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましく、過硫酸塩であることがより好ましい。過硫酸塩としては例えば過硫酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金塩が挙げられ、過炭酸塩としては過炭酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が挙げられ、過酢酸塩としては過酢酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が挙げられる。
過硫酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金塩としては、例えば過硫酸リチウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウム等が挙げられる。これらの中でも、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムが好ましく、経済的に安価で水溶性の高い過硫酸ナトリウムが更に好ましい。上記した過硫酸塩は、単独でもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
<不飽和カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸類、単糖類、及び二糖類(B)>
本発明の化学物質組成物に使用される(B)不飽和カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸類、単糖類、及び二糖類からなる群より選択される少なくとも一種以上の化合物は、種類を選ばないが、地盤中に注入することから、有害性がなく、地中へ拡散する上で水溶性のものが好ましい。
不飽和カルボン酸類としては、アクリル酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸類としては、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、タルトロン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、リシノール酸が挙げられる。また、加水分解してヒドロキシカルボン酸が得られるラクトンやラクチドを用いても良い。
単糖類としては、グリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース、ジヒドロキシアセトン、エリトルロース、キシリロース、リブロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトースが挙げられる。
またこれらの単糖類から構成される二糖類を使用することもできる。
<(C)アスコルビン酸>
本発明の化学物質分解組成物に使用される(C)アスコルビン酸にはL体とD体の光学異性体が存在するが、安全性が高く、安価であることからL-アスコルビン酸が好ましい。
本発明の化学物質分解組成物に使用される(A)成分と(B)成分の配合比は特に規定されないが、化学物質を効率的に分解する点から、(A)成分1モルに対して、(B)を0.001〜0.05モル、好ましくは0.002〜0.02モル、より好ましくは0.003〜0.007モル配合することが好ましい。また、(B)成分に加えて更に(C)成分を0.001〜0.1モル、好ましくは0.005〜0.05、より好ましくは0.008〜0.012モル配合することが好ましい。
(B)成分が0.001モルより少ないと分解が進まない場合があり、0.05モルを超えると(A)成分が必要以上に消費されて配合量に見合った効果が得られない場合がある。
また、(C)成分を0.001モルより多く添加すると分解が進みやすくなり、0.1モルを超えると(A)成分が必要以上に消費されて配合量に見合った効果が得られない場合がある。
(B)又は(C)成分の働きを阻害する物質が対象とする土壌・地下水等に存在する場合には、(B)成分については0.05モル以上、(C)成分については0.1モル以上配合することも可能である。
本発明の化学物質分解組成物の添加量は、化学物質の種類や量によって適宜決めればよく、具体的には、化学物質1モルに対して、本発明の化学物質分解組成物中の(A)成分である過硫酸塩が5〜100モルになるように添加するのが好ましく、25〜75モルがより好ましく、40〜60モルが更に好ましい。
過硫酸の量が5モル未満の場合は化学物質の分解が完全に終了しない場合があり、50モルを超えると添加量に見合った効果が得られない場合がある。尚、過硫酸塩が5モル未満であっても、必要量の薬剤をその後に追加添加することで化学物質を分解処理することが可能である。また、対象とする土壌・地下水等に過硫酸塩と反応して化学物質の分解を阻害する物質が存在する場合には100モル以上添加することも可能である。
本発明の化学物質分解組成物には鉄触媒を含まない。従来、過酸化物と鉄触媒を併用することにより、有機汚染物質を分解する方法が知られている。しかしながら、本発明の化学物質分解組成物に鉄触媒を加えると、浄化対象中の難分解性有機塩素化合物等の有機ハロゲン化合物の分解率が低くなってしまい、(B)成分添加の効力が見られない。
地盤中の土壌・地下水等に注入する本発明の化学物質分解組成物は、注入後に土壌中へ広がりやすくするために水溶液の様態にすることが好ましく、具体的には、(A)成分である過硫酸塩が1〜20質量%の水溶液になるように本発明の化学物質分解組成物を水で希釈して使用するのが好ましい。
対象とする土壌・地下水等に既に(B)成分の不飽和カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、単糖類、二糖類等の化学物質が含まれている場合には、薬剤の配合を本発明の範囲内になるように適用すればよい。
本発明の化学物質の分解処理方法は、上述した本発明の化学物質分解組成物と、化学物質に汚染された土壌または水とを接触させることにより行う。接触方法は、限定されないが、上述したように、例えば水溶液にした組成物を土壌や水中に、注入等することにより行うことができる。
本発明の化学物質の分解処理方法は、鉄イオンを利用せずに化学物質を分解処理する方法である。すなわち、化学物質分解組成物が鉄イオンを発生する化合物を含まないというのみではなく、本発明の方法では、本発明の化学物質分解組成物と鉄イオンとを併用(例えば連続的注入)しないことを意味する。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
下記試験方法に従い、四塩化炭素(CTC)のモデル汚染水に対して本発明の化学物質分解組成物を使用してCTCの分解試験を行った。
<試験方法>
120mLの遮光バイアル瓶にCTC濃度が4mg/Lの水溶液を50g入れた。表1及び表2に記載のモル比で各成分を配合し、過硫酸塩の濃度が10000mg/Lとなるように水で希釈して各薬剤(実施例1〜5及び比較例1〜5)を調整した。これらの薬剤50gをCTC水溶液が入った遮光バイアル瓶にそれぞれ添加した。その後、遮光バイアル瓶を上下に振って内容物を均一化し、25℃の恒温槽に静置した。この時点(分解前)でのCTC濃度は2mg/Lである。
14日間静置後、遮光バイアル瓶中の水を10mL採取し、ガスクロマトグラフィーを用いて残存CTC量を測定した。ガスクロマトグラフィーの条件は下記のとおりである。14日後のデータを表1に、比較例を表2に示す。
<ガスクロマトグラフィー条件>
機器:GC-2014(島津製作所株式会社製)
カラム:InerCap1(内径0.25mm、長さ30m、膜厚1.5μm、GLサイエンス社製)
カラム温度:40℃から200℃に昇温(5℃/min)
インジェクション温度:200℃
ディテクター温度:250℃
注入量:0.1mL
スプリット比:1:50
下記表1及び2において、各成分の数字はモル比であり、過硫酸ナトリウム1モルに対するその他の化合物の配合モル数である。
Figure 2017043706
Figure 2017043706
表1及び表2から明らかなとおり、四塩化炭素(CTC)のモデル汚染水に対して本発明の組成物を用いた場合には、CTC濃度がいずれも低く、四塩化炭素の分解効果に非常に優れていた(実施例1〜6)。また(B)成分であるフルクトースあるいはクエン酸と、L−アスコルビン酸を併用すると、四塩化炭素の分解が(B)成分単独で用いた場合よりも高い効果を奏した。(実施例4及び6)。
一方、従来の過硫酸ナトリウム(過酸化物(A))のみを使用した場合には、CTC濃度は2.00mg/Lと高く、四塩化炭素の分解除去の観点からは不十分であった(比較例1)。さらに、(A)成分と(B)成分を併用する場合、さらに(C)成分を用いた場合でも、硫酸鉄(II)を併用するといずれも四塩化炭素の分解が十分に起こらず、高い濃度で残存してしまった(比較例2〜7)。

Claims (5)

  1. (A)少なくとも一種の過酸化物と、(B)不飽和カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸類、単糖類、及び二糖類からなる群より選択される少なくとも一種以上を含有し、鉄触媒を含まないことを特徴とする、化学物質分解組成物。
  2. 更に(C)アスコルビン酸を含有することを特徴とする、請求項1記載の化学物質分解組成物。
  3. 分解すべき化学物質が、浄化対象中に存在する有機ハロゲン化合物を含む、請求項1または2記載の化学物質分解組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学物質分解組成物を、化学物質に汚染された土壌または水と接触させて、当該化学物質を分解処理することを特徴とする、汚染土壌または汚染水中の化学物質の分解処理方法。
  5. 鉄イオンを利用せずに化学物質を分解処理することを特徴とする、請求項4記載の化学物質の分解処理方法。
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