JPWO2005085461A1 - 核酸の分解方法及びその用途 - Google Patents

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Abstract

本発明は、微生物の生産する各種有用物質を回収するうえで 、微生物細胞を分解または溶解した時に溶液の粘度上昇の原因となる核酸を簡便に効率よく分解する方法及びその用途を提供することにある。本発明の生産物の回収方法は、生菌を少量の次亜塩素酸又はその塩と接触させることにより、核酸の自己消化が誘導され、続く菌体の分解または溶解時に溶液の粘度上昇が抑制されるため、比較的穏和な条件で菌体内生産物の回収が容易になる方法である。本発明の方法は、微生物細胞中より生分解性ポリマーであるポリヒドロキシアルカノエートを回収する場合に特に好ましい。

Description

本発明は、微生物の核酸を効果的に分解し、該微生物の生産する有用物質の回収を容易にする方法及びその用途に関する。
近年、微生物あるいは組換え微生物を用いて、様々な種類の重要な製品が商業的規模で生産されている。これらの生産物は微生物細胞内で生産・蓄積される場合が多く、それらを取り出すためには、微生物細胞を分解又は溶解する工程が一般に必要である。この工程に関する問題の1つは、細胞を分解又は溶解した時に細胞外に遊離してくる核酸による溶液の粘度の上昇である。核酸は、溶液中に放出されるとほどけて網状組織を形成する。これにより細胞溶解物の粘度が著しく上昇し、例えば溶液全体がゲルになり固体/液体分離が極めて困難になる。そのため、核酸による粘度上昇は生産物の回収工程の大きな問題となり得る。
先行技術では、化学的あるいは物理的に核酸を分解する試みが今までになされてきた。
微生物細胞(以下、菌あるいは菌体ということもある)を化学的処理する方法としては、特許文献1に菌体懸濁液を大量の次亜塩素酸で処理して生産物以外の菌体構成成分を化学的に分解・可溶化し、生産物を得る方法が開示されている。この方法では、核酸の効率的な分解がなされるけれど、わずか1%の微生物濃度で次亜塩素酸処理を行わないと純度の高い生産物が得られず、従って大量の次亜塩素酸を必要とすること、また、生産物内に残留する塩素臭や生産物の分子量低下が引き起こされることが製品として好ましくないなどの理由で実用には適していない。
特許文献2には、核酸ではなく細胞壁の自己消化を誘導する物質として次亜塩素酸ナトリウムが紹介されている。しかし、発明の詳細な説明あるいは実施例がなく、発明が完成されているとは言い難い。
特許文献3には、細胞を界面活性剤で処理し遊離した核酸を過酸化物により分解する方法が開示されている。過酸化物として過酸化水素を使用し、核酸を化学的に分解するため室温では16時間を要している。また、界面活性剤や過酸化水素の使用量も比較的多いため、本法は工業的生産には不利である。
特許文献4には、熱処理と酵素、界面活性剤を併用した回収法が示されている。この方法では、予め微生物の懸濁液を100℃以上で加熱し核酸を分解したのち、各種酵素を用いてポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと略す。)以外の菌体構成物を分解した後PHAを回収する方法である。ところが、100℃以上での加熱によりPHAは著しく低分子量化してしまい、製品への応用ができなくなる。
その他にも、菌体の破砕法として、PHA含有微生物懸濁液をpH2未満の強酸性下50℃以上に熱した後PHAを分離する方法(特許文献5)、さらには、菌体にアルカリを添加後80℃に加熱し、1時間攪拌後ポリマーを遠心分離で回収する方法(特許文献6)、70℃で高圧破砕を行う方法(特許文献7)、アルカリを添加後に70℃以上で高圧破砕を行う方法(特許文献8)が開示されている。これらの方法では核酸の破砕も行われるが、酸、アルカリ、温度などの条件が厳しいため、生産物の分解が進むことが懸念される。
このように、培養後の菌体から生産物を回収する上で、生産物の分解を引き起こすことなく微生物細胞中の核酸を効率的に破砕することは極めて困難であることが分かる。従って、細胞分解あるいは溶解を含むプロセスは、その後の生産物の回収段階を効果的に又は実際に完全に実施しうるために、効果的な核酸の分解方法を必要とする。
米国特許第5110980号明細書 特開昭58−212792号公報 特表平8−502415号公報 特公平04−61638号公報 特開平11−266891号公報 特開平07−31487号公報 特開平07−31488号公報 特開平07−31489号公報
従って本発明の課題は、微生物を用いて該微生物の生産する各種有用物質を回収するうえで、微生物細胞を分解または溶解した時に溶液の粘度上昇の原因となる核酸を簡便に効率よく分解する方法及びその用途を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、意外にも培養終了後の生きた微生物を少量の次亜塩素酸又はその塩と接触させることにより、核酸が自己消化され、続く菌体の分解または溶解時に溶液の粘度上昇が抑制されるため、比較的穏和な条件で菌体内生産物の回収が容易になることを初めて発見し、ここに発明を完成させた。
すなわち、本発明は、微生物による生産物を微生物細胞内より回収する工程において、生きている微生物を、核酸の自己消化を誘導するのに適した量の次亜塩素酸又はその塩と接触させ、その後生産物回収工程を行うことを特徴とする生産物の回収方法である。本発明は、好ましくは、生きている微生物を乾燥微生物当たり有効塩素濃度0.3〜14重量%の次亜塩素酸又はその塩と10分〜5時間接触させることにより核酸を自己消化させ、続いて微生物を分解あるいは溶解し生産物を回収する方法である。また、本発明の方法は、微生物細胞中より生分解性ポリマーであるポリヒドロキシアルカノエートの回収に用いることが特に好ましい。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いる次亜塩素酸又はその塩は、工業的には次亜塩素酸ナトリウムあるいは次亜塩素酸カルシウム(さらし粉)として手に入れることができる。これらの内、次亜塩素酸ナトリウムの使用が安価な点、及び水への溶解時の安定性の点で好ましい。
本発明において菌体中の核酸が分解したかどうかの検定は、簡便には微生物をアルカリにより溶菌させ粘性を調べればよい。核酸が分解していないと、アルカリによる溶菌により核酸が遊離し、菌体懸濁液がゲル状になり流動性がなくなるが、核酸が分解していると、アルカリ添加後も該懸濁液は流動性があり、両者は容易に判別できる。また、大量実験の場合には、例えば粘度計などを用いて粘度を測定すればよい。
培養後の生きている菌(以下、生菌ということもある)を核酸の自己消化を誘導するのに適した量の次亜塩素酸又はその塩と接触させて処理し、アルカリを加えると、菌体懸濁液に流動性があるため核酸が分解していることがわかるが、生菌を加熱滅菌したのち同様に次亜塩素酸又はその塩で処理し、アルカリを加えると粘性の高いゲルになる。このことから、次亜塩素酸又はその塩での処理は生菌に対して有効であることが示される。
また、生菌への次亜塩素酸又はその塩での処理終了後の菌体を顕微鏡により観察しても溶菌は見られず、菌体は生菌と同じ形態を保っているので、次亜塩素酸又はその塩との接触により、細胞壁、細胞膜、不溶性蛋白質等は分解されていないと考えられ、これより次亜塩素酸又はその塩は、直接核酸に作用して化学的に分解しているのではなく、間接的に核酸の分解(自己消化)を誘導していることが示唆される。
本発明においては、菌体を熱処理やアルカリ、酸処理などの殺菌処理をすることなく、生菌の状態で次亜塩素酸又はその塩で処理をする必要がある。次亜塩素酸又はその塩は、微生物を培養後に直接該培養液に添加しても良いし、遠心分離や膜分離などの方法により菌体を回収した後に添加しても良い。
本発明の実施態様によれば、次亜塩素酸又はその塩の濃度は、核酸の自己消化を誘導するのに適した量であれば制限はない。本発明では、次亜塩素酸又はその塩の濃度は有効塩素濃度に換算した値で示している。有効塩素濃度とは、次亜塩素酸又はその塩に酸を加えて発生する塩素(Cl2)の濃度である。以下、次亜塩素酸又はその塩の濃度は、有効塩素濃度に換算した乾燥菌体重量(g)当たりの重量%で表示する。微生物の種類によりその濃度は異なると考えられ、使用する微生物に合わせて濃度を決定すればよい。
一般的に使用する次亜塩素酸又はその塩の濃度としては、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.4重量%以上、さらにはより確実に核酸分解を誘導する点で0.5重量%以上が特に好ましい。次亜塩素酸又はその塩の濃度の上限は、濃すぎると菌が死滅するため好ましくは14重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらには経済的に安価なことを考慮すると8重量%以下が特に好ましい。例えば、次亜塩素酸ナトリウムは水溶液として入手可能であり、工業的には有効塩素濃度12重量%の溶液として供給されている。
次亜塩素酸又はその塩の濃度は、微生物量に対して規定されるため、微生物の溶液中の濃度には制限されない。
本発明の方法は、微生物細胞の化学的な溶解や分解(米国特許第5110980号明細書、特開昭58−212792号公報、特表平8−502415号公報)ではないため、比較的高い微生物濃度で行うことができる。次亜塩素酸又はその塩での処理の効果を考慮すると、微生物濃度は、乾燥菌体換算で好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらには8重量%以上が特に好ましい。また、上限は生菌が十分攪拌できればよく、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、特に30重量%以下が好ましい。
微生物と次亜塩素酸又はその塩との接触時間は、効果的な核酸分解酵素誘導と核酸の自己消化のために好ましくは10分以上、より好ましくは20分以上、さらに好ましくは30分以上である。処理時間の上限は、生産物の分解酵素が誘導され分解されてしまう可能性を考慮し、好ましくは5時間以内、より好ましくは3時間以内、さらには2時間以内が特に好ましい。
自己消化を誘導する温度は、使用する微生物の好適生育(培養)温度が好ましい。微生物により好適生育温度は異なるが、一般的に述べると、およそ15℃から40℃の範囲が好ましい。例えばアルカリゲネス・ユートロファスの場合20℃から35℃であり、大腸菌の場合20℃から37℃、酵母の場合25℃から37℃前後の温度が好ましい。
微生物と次亜塩素酸又はその塩との接触により自己消化を誘導するpHは、使用する微生物の好適生育(培養)pHが好ましい。一般的にはpH4からpH8が好ましいが、例えば、大腸菌の場合pH5からpH7、アルカリゲネス・ユートロファスの場合にはpH5からpH7、酵母の場合pH4からpH7が好ましい。尚、次亜塩素酸又はその塩は特表平8−502415号公報に開示されている過酸化物には当たらない。
本発明の方法において、微生物による生産物としては特に限定されず、例えば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、蛋白質、抗生物質、脂質、炭水化物等が挙げられるが、本発明は、微生物による生産物が特に生分解性ポリマーであるPHAである場合に特別の用途を有する。
本発明の好ましい実施態様によれば、PHAのヒドロキシアルカノエートの成分としては特に限定されないが、具体的には、3−ヒドロキシブチレート(3HB)、3−ヒドロキシバレレート(3HV)、3−ヒドロキシプロピオネート、4−ヒドロキシブチレート、4−ヒドロキシバレレート、5−ヒドロキシバレレート、3−ヒドロキシヘキサノエート(3HH)、3−ヒドロキシヘプタノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシノナノエート、3−ヒドロキシデカノエートなどが挙げられる。本発明におけるポリヒドロキシアルカノエートは、これらヒドロキシアルカノエートの単独重合体であってもよいし、2種以上が共重合した共重合体であってもよいが、2種以上が共重合した共重合体であることが好ましい。
PHAの具体例としては、3HBの単独重合体であるPHBや、3HBと3HVの2成分共重合体であるPHBV、3HBと3HHとの2成分共重合体であるPHBH(特許第2777757号公報参照)または、3HBと3HVと3HHとの3成分共重合体であるPHBHV(特許第2777757号公報参照)などが例示できる。特に、生分解性ポリマーとしての分解性と柔らかい性質を持つ点で、モノマー成分として3HHを有する共重合体が好ましく、より好ましくはPHBHである。
PHBHの場合、構成する各モノマーユニットの組成比については特に限定されるものではないが、好ましくは3HHユニットが40mol%以下であり、より好ましくは30mol%以下、とりわけ20mol%以下が好ましい。PHBHVの場合、構成する各モノマーユニットの組成比については特に限定されるものではないが、例えば、3HBユニットの含量は1〜95mol%、3HVユニットの含量は1〜96mol%、3HHユニットの含量は1〜30mol%といった範囲のものが好適である。
PHAを実用化するためには、PHAはゲルクロマトグラフィー法でポリスチレンを分子量標準とした重量平均分子量1万以上を有しなければならない。種々の用途により適切な分子量が異なるのは当然であるが、ペレット化やその後の加工段階での熱による低分子量化を考慮すると、本発明により回収し乾燥したPHAの重量平均分子量は、好ましくは20万以上、より好ましくは30万以上、特に40万以上である。
好ましい実施態様によれば、本発明に用いられる微生物としては、細胞内にPHAを含有することが可能な生物が好ましく、例えば、Alcaligenes lipolytica、Alcaligenes latus等のアルカリゲネス(Alcaligenes)属、Ralstonia eutrophaなどのラルストニア(Ralstonia)属、Psuedomonas oleovorance、Psuedomonas resinovorans等のシュウドモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属、アゾトバクター(Azotobacter)属、Nocardia salmonicolur等のノカルディア(Nocardia)属、Aeromonas caviae等のアエロモナス(Aeromonas)属、Rhodospirillum rubrum等のロドスピリリウム(Rhodospirillum)属、Zoogloea ramigera等のズーグロエア(Zoogloea)属、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属、パラコッカス(Paracoccus)属、クロストリジウム(Clostridium)属、ハロバクテリウム(Halobacterium)属、キャンディダ(Candida)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、ヤロウィア(Yarrowia)属などの微生物は、培養条件を調整することによってPHAを細胞内に蓄積することが可能である。上記微生物としては、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)が好ましい。
また、本発明に用いられる微生物としては、これら微生物のPHA合成に関与する遺伝子群を導入した形質転換体であっても良い。その場合、宿主としては特に限定されず、上記微生物の他、大腸菌や酵母(WO01/88144参照)などの微生物が挙げられる。このなかで、アエロモナス属のA.caviaeや、該A.caviaeのPHA合成酵素群の遺伝子を導入した形質転換菌体が、生分解性ポリマーとして優れたPHBHを合成できる能力があるという点で好ましい。特に、A.caviaeのPHA合成酵素群の遺伝子を導入したRalstonia eutrophaがより好ましく、該微生物の1例は、Alcaligenes eutrophus AC32(受託日:平成9年8月7日、受託番号:FERM BP−6038)として、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6にある独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、ブダペスト条約に基づいて国際寄託されている。
ここに挙げたPHA含有微生物の培養方法については特に限定されないが、例えば特開2001−340078号公報に示した当業者に周知の方法が用いられる。
本発明の方法は、微生物による生産物がPHAである場合、生きている微生物を、核酸の自己消化を誘導するのに適した量の次亜塩素酸又はその塩と接触させた後に行う生産物回収工程が、下記(a)及び(b)の工程からなるものであることが好ましい。
(a)PHA含有微生物細胞の水性懸濁液に、攪拌と物理的破砕処理を行いながらアルカリを添加し、該細胞を破砕すると共に、該細胞中のPHA以外の細胞物質を可溶化又は乳化させ、次いでPHAを懸濁液から分離する工程;
(b)分離されたPHAを、酵素及び/又は界面活性剤で処理し、PHAに付着した不純物を可溶化又は分解後可溶化し、続いて親水性溶媒及び/又は水でPHAを洗浄する工程。
すなわち、本発明の好ましい実施態様によれば、PHA含有微生物細胞から当該ポリマーを回収する時、次亜塩素酸又はその塩で処理し核酸を自己消化した後、工程(a)に進むことができる。本発明における工程(a)では、PHA含有微生物細胞の水性懸濁液の撹拌と物理的破砕処理を行いながら、該水性懸濁液にアルカリを添加することが重要である。すなわち、実際には、(1)PHA含有微生物細胞の水性懸濁液を調製し、(2)該水性懸濁液を攪拌しつつ、物理的破砕処理をまず開始し、(3)次に、攪拌と物理的破砕処理を継続しながらアルカリを添加する、というプロセスからなる。
アルカリ添加時の水性懸濁液の攪拌方法としては、特に限定されないが、アルカリを効率よく拡散し、且つ細胞から流出するポリマー以外の不溶物質を効率よく破砕するために、乳化分散機や超音波破砕機等を使用して攪拌することが好ましい。より好ましくは乳化分散機であり、例えば英国シルバーソン社製シルバーソンミキサー、日本国エムテック社製クリアミックス、日本国エバラ社製エバラマイルダー等が使用できるが、これらに限定されるわけではない。
工程(a)において、物理的破砕処理を行う装置としては、特に限定されないが、高圧ホモジナイザー、超音波破砕機、乳化分散機、ビーズミル等が挙げられる。中でも高圧ホモジナイザーが好ましく、微生物細胞の水性懸濁液が、微小開口部を有する耐圧性容器に導入され、高圧をかけられることにより開口部から押し出されるタイプがより好ましい。このような耐圧性容器と加圧機構からなる装置は、例えば、伊国ニロソアビ社製高圧ホモジナイザーが好ましく用いられる。また、ブランリューベ連続式細胞破砕機(独国Bran+Luebbe社製)、マイクロフルイダイザー(米国Microfluidics社製)等も用いることができるが、これらに限定されるわけではない。
このような高圧ホモジナイザーでは、微生物細胞が大きな剪断力を受けるため効率的に破壊され、PHAの分離が促進される。また、当該装置では開口部で高圧がかかり、瞬間的に高温になる。ポリマーは高温では分解し易いため、必要に応じて一般の低温恒温循環槽により水性懸濁液を冷却して、温度の上昇を防ぎ処理を行うのが好ましい。好ましい破砕圧力は300kgf/cm以上であり、より好ましくは400kgf/cm以上である。
本発明者らは、PHA回収時に、先にアルカリを添加して懸濁液のpHを10以上にした後、物理的破砕(例えば高圧ホモジナイザーによる菌体破砕と乳化)をすると、PHAの分解が生じやすいこと、逆に、アルカリ添加よりも物理的破砕を先に行うと、意外にもPHAの分解が生じにくいことを見いだした。しかし、この場合でも、未消化の核酸が存在すると、その未消化の核酸により粘度が高くなるため、PHAを回収し易くするためには徐々にアルカリを添加し、粘度が急激に上昇するのを避けながら核酸を時間をかけて何回も破砕する必要があった。このため、工業規模での生産の場合、ポリマー回収工程が長時間となるため、生産量を上げるには破砕機の台数を多くする必要があった。しかし、本発明の核酸自己消化法を用いることにより、物理的破砕の時間が大幅に短縮でき、従って破砕機の台数が削減でき、結果的に製造コストの削減に繋がることが明らかである。
工程(a)では、水性懸濁液のpHを9から13.5の間にコントロールしながら物理的破砕を行うことが好ましく、アルカリ添加時にpHをコントロールすることが好ましい。PHA以外の菌体由来の不溶物(細胞物質)をより効果的に可溶化又は乳化することができ、かつPHA自体には悪影響をほとんど与えない好ましいpHの範囲はpH9〜13.5であり、より好ましい下限はpH10、より好ましい上限はpH13である。pHが13.5より上ではPHAの分子量が低下し易くなり、pHが9未満では破砕効果が不十分となる。
工程(a)においては、次亜塩素酸又はその塩で処理後、菌体の物理的破砕を行いながら、徐々にあるいは段階的にアルカリを添加し所定のpHに調整し物理的破砕を継続するのが好ましく、特に、菌体全量の物理的破砕を少なくとも1回行った後で、水性懸濁液の攪拌を行いながらアルカリを添加してpH9〜13.5の任意のpHに調整し、且つpHをコントロールしながら物理的破砕を継続する方法がより好ましい。これにより、PHA以外の不溶物質(細胞物質)の可溶化あるいは乳化が短時間で実施でき、PHAが分解されることなく、水性懸濁液からPHAを容易に分離・回収できるようになる。
工程(a)を行う際の温度は、PHAの分子量低下をより効果的に防ぐ点から、好ましくは10〜45℃、より好ましくは20〜40℃である。本発明において、pHをコントロールすることによって、pHが高くなりすぎるのを防ぐと同時に、常にpH9〜13.5の間の任意のpHを維持することで不溶性蛋白質を可溶化状態に保てるため、懸濁液を高温にする必要がなくなり、結果として、PHAの分子量低下を、培養後に得られるものと比較して15%以下に防ぐことができる。物理的破砕処理に高圧ホモジナイザーを使用する場合、前記したように低温恒温循環槽により菌体懸濁液を冷却して行えばよい。このような好適なアルカリ環境下で微生物細胞を破砕すると、再現性のより高い結果を得ることができる。
工程(a)において、水性懸濁液は、次亜塩素酸又はその塩との接触を行った後のPHA含有微生物細胞を水性媒体に懸濁することにより調製することができる。また、微生物と次亜塩素酸又はその塩との接触を行った後の培養液をそのまま用いてもよいし、更に濃縮や希釈を行ってもよい。水性懸濁液中の菌体の濃度は、水性懸濁液1L中の乾燥菌体換算で500g以下が好ましく、水性懸濁液の攪拌のしやすさから、300g以下がより好ましい。下限としては、80g以上が好ましい。
工程(a)で使用するアルカリは、PHA含有微生物の細胞壁を破壊して、該細胞中のPHAを細胞外に流出できるものであれば特に限定されるものではない。上記アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;ホウ砂等のアルカリ金属のホウ酸塩;リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸3カリウム、リン酸水素2カリウム等のアルカリ金属のリン酸塩;水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア水等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。この中でも、工業生産に適し、また価格の点から、アルカリ金属の水酸化物やアルカリ金属の炭酸塩が好ましく、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウムである。
工程(a)において、PHAの水性懸濁液からの分離は、例えば、遠心分離、膜分離、フィルター濾過等により行うことができる。
なお、本発明においては、工程(a)の後、得られたPHAをエマルジョンとして回収することもできる。
以下、工程(a)を行うための好ましい装置の概略図である図1を用いて、工程(a)をより詳細に説明する。勿論、本発明はこれら装置例に限定されるものではない。
図1における符号1は、全体で本発明の菌体破砕装置を示している。符号6はアルカリの薬剤を貯留するためのpH調整剤貯留槽であり、該pH調整剤貯留槽6内の薬剤が、ポンプ4によって管路5を介して菌体破砕槽11に供給され、菌体破砕槽11内の微生物細胞の水性懸濁液のpHを必要に応じて調整する。さらに、菌体破砕槽11にはpH調整剤貯留槽6より供給されたpH調整剤を、菌体破砕槽11内の微生物細胞の水性懸濁液に均一に攪拌混合するための撹拌装置2が付設されている。また、菌体破砕槽11には、菌体破砕槽11内の微生物細胞懸濁液のpHを検知して、所定のpHとなるように、ポンプ4の供給量を制御するために、pH計7とpH検知制御装置3から構成されるpH検知制御手段が付設されている。ここで菌体破砕槽11は低温恒温循環槽を兼ねており、微生物細胞の水性懸濁液を所望の温度に一定に保つことができる。
図1において、菌体破砕槽11内の微生物細胞の水性懸濁液は、ポンプ10を介して破砕装置9に供給され、該破砕装置9により粘度上昇の原因となる未消化の核酸を効率よく破砕し、管路8を介して菌体破砕槽11内へ供給するようになっている。撹拌装置2によって、添加されたアルカリは速やかに拡散し、微生物細胞の水性懸濁液が均一となり、微生物細胞の水性懸濁液のpHを厳密に調整できるようになっている。ここで、アルカリ濃度が部分的に高濃度となりポリマーが加水分解を受けないように、攪拌を十分に行うことが好ましい。なお、コントロールするpHの上下幅としては、設定値の上下それぞれ1以内が好ましく、より好ましくは上下それぞれ0.5以内であり、当該上下幅を見込んだpHが、上記好ましいpH範囲9〜13.5となるように制御することが好ましい。
破砕装置9には、上述したような高圧ホモジナイザー、超音波破砕機、乳化分散機、ビーズミル等の装置を使用できる。また、同種あるいは異種の破砕機を2基以上、並列或いは直列に設置しても良い。撹拌装置2には、添加したアルカリを効率よく拡散し、且つ細胞から流出した未消化の核酸や細胞壁、その他の不溶性物質なども効率よく破砕するため、上述したような乳化分散機や超音波破砕機等の使用が好ましい。これら機器にはインラインミキサータイプのものも製造されており、例えば、これらは図1のポンプ10と撹拌装置2を兼用することもでき、この場合には構造が簡便になる利点がある。また、pH計7やpH検知制御装置3は汎用機器を使用すればよい。
本発明においては、工程(a)で得られた比較的純度の低いPHAに対して、工程(b)の処理を行うことにより、後述するようなより顕著な効果が得られる。
工程(a)で得られるPHA粒子には、蛋白質類、菌体細胞壁成分であるペプチドグリカン、脂質類、多糖類、核酸類、その他の炭水化物類が少量付着していると考えられる。本発明における工程(b)では、上記付着成分の少なくとも幾つかを除去し、PHAの純度を高めることを目的として行うことができる。
すなわち工程(b)は、酵素及び界面活性剤のいずれか、あるいはこれらを併用して、PHAに付着した不純物を可溶化又は分解後可溶化処理するPHAの精製法である。
本発明においては、工程(b)での処理効果をより高めるために、工程(a)で分離されたPHAを乾燥させて用いるのではなく、工程(a)で分離されたPHAを水に懸濁したまま、あるいは、例えば遠心分離や膜分離により分離回収した後の水に湿潤した状態のまま、次の工程(b)に用いるのが好ましい。
工程(b)において酵素による処理を行う場合、使用される酵素としては、蛋白質分解酵素、脂肪酸類分解酵素、細胞壁分解酵素、核酸分解酵素等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの酵素の具体例としては下記のものが挙げられる。蛋白質分解酵素(プロテアーゼ)としては、アルカラーゼ、ペプシン、トリプシン、パパイン、キモトリプシン、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ等が挙げられる。脂肪酸類分解酵素としては、リパーゼ類、ホスホリパーゼ類、コリンエステラーゼ類、ホスファターゼ類等が挙げられる。細胞壁分解酵素としては、リゾチーム、アミラーゼ、セルラーゼ、マルターゼ、サッカラーゼ、α及びβ−グリコシナーゼ等が挙げられる。核酸分解酵素としては、リボヌクレアーゼ類等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本工程で用いられる酵素は、上記のものに限定されるわけではなく、工業的な製品に用いられ得るものであれば、任意の酵素であってよい。また、一般に市販されている酵素入り洗濯用酵素洗剤等も用いることができる。さらには、例えば酵素と、酵素の安定化剤や再汚染防止剤等を含有する酵素組成物であってもよく、酵素のみには限定されない。
酵素として、特にPHAに付着した不溶性蛋白質や不溶性の細胞壁を分解除去する目的においては、蛋白質分解酵素及び細胞壁分解酵素から選ばれる少なくとも1種が好ましく、蛋白質分解酵素がより好ましい。好ましい蛋白質分解酵素としては、上記例示に含まれるもののうち、プロテアーゼA、プロテアーゼP、プロテアーゼN(以上、商品名、全て天野エンザイム社製)、アルカラーゼ、ザビナーゼ、エバラーゼ(以上、商品名、全てノボザイム社製)等が工業的に使用可能なものとして挙げられ、分解活性の点からも好適に使用できる。また、好ましい細胞壁分解酵素としては、上記例示のうちリゾチームが挙げられる。しかし、これらに限られるものではない。
酵素処理を行う場合の温度は、当然のごとく選択した酵素の至適温度が好ましい。しかし、高温ではPHAの分子量低下が生じるため、上限は50℃以下がより好ましい。下限は一般的には20℃以上が好ましい。酵素処理時間は、所要の処理度を達成するまで行うのが好ましく、通常0.5〜2時間である。酵素の使用量は、酵素の種類及び活性に依存し、特に制限はされないが、ポリマー重量に対して、0.001〜10重量%が好ましく、さらにはコストの点から0.001〜5重量%がより好ましい。
本発明の方法は、PHAを含有する菌体そのものを酵素処理して、菌体を破砕する従来の方法(特公平04−61638号公報)に比較して、PHA中にわずかに残った不溶物を可溶化するに足る酵素量を添加すれば良いため、経済的に安価に製造できる利点がある。
工程(b)において、酵素処理はいくつかの段階に分けて実施してよく、例えば最初の段階では1つの酵素を用い、次いで同一又は異なる酵素を用いて処理を行ってもよい。また二種以上の酵素を使用する場合には、互いに消化し合わなければそれらを混合した酵素を用いて1段階でPHAを処理するのが便利である。
本発明における工程(b)では、PHA粒子に付着した不純物を除去するために、可溶化剤として界面活性剤を使用することも可能である。本発明で使用する界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
陰イオン界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸エステル塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸塩又はこのエステル、α−スルホ脂肪酸塩又はこのエステル、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤等が挙げられる。中でも、アルキル基の炭素数が12〜14のアルキル硫酸塩、アルキル基の炭素数が12〜16の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル基の炭素数が10〜18のアルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましい。また、対イオンとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム等のアルカリ土類金属、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンが好ましいが、これらに限られるわけではない。
陽イオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、カルボベタイン型、スルホベタイン型の界面活性剤等が挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン(好ましくはオキシエチレン)アルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレン(好ましくはオキシエチレン)アルキル又はアルケニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、高級脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグルコシド、アルキルグルコースアミド、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。中でも、親水性の高いもの、及び、水と混和した際に生じる液晶の形成能の低いもの若しくは液晶を生じないものが好ましく、また、生分解性が比較的良好である点で、炭素数10〜14のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコール等の使用が好ましく、炭素数10〜14のポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては炭素数10〜14のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましいが、これに限られるわけではない。
上記界面活性剤において、具体的には、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ポリオキシエチレングリコール、炭素数10〜14のポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤が、価格、使用量、添加効果の点で好ましい。またこれらを2種以上併用することも好ましい。
以上挙げた界面活性剤は、一般に市販されている洗濯用洗剤にも使用されているものであり、適当な洗濯用洗剤を界面活性剤として使用することができる。
なお、洗浄性の点では、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤が好ましい。蛋白質等を洗浄・除去する目的においては、陰イオン界面活性剤を用いることが好ましく、また、脂肪酸や油脂を洗浄・除去する目的、あるいは、酵素を併用する場合には、非イオン界面活性剤を用いることが好ましい。また、陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の両方を含有してもかまわない。両方を含有する場合、陰イオン界面活性剤/非イオン界面活性剤の重量比は、1/100〜100/10が好ましく、5/100〜100/20がより好ましく、5/100〜100/100がさらに好ましく、5/100〜50/100が特に好ましい。
界面活性剤の添加量は、特に制限されないが、ポリマー重量に対して、0.001〜10重量%が好ましく、さらにはコストの点から、0.001〜5重量%が好ましい。
また、界面活性剤処理における処理温度は特に限定されないが、PHA以外の菌体構成成分の可溶化を促進させる観点から、20〜50℃の範囲が好ましい。また、処理時間は通常0.5〜2時間が好ましい。
本発明の好ましい実施態様として、より高い精製効果が得られる点から、酵素と界面活性剤を併用することが挙げられる。酵素と界面活性剤を併用する場合、酵素の使用量及び界面活性剤の使用量は、それぞれ上記と同じである。また、当該併用の場合、処理温度は、好ましくは20〜50℃であり、処理時間は、好ましくは0.5〜2時間である。酵素処理、界面活性剤処理ともに、攪拌しながら行うことが好ましい。
本発明者らは、2剤併用の顕著な効果を認めている。その理由は、酵素分解により遊離し不溶性となった分解物を、界面活性剤が効果的に除去するため、あるいは、界面活性剤により蛋白質の構造が変化して酵素分解を受けやすくなるためと考えられる。この場合、界面活性剤と酵素を別々に調製し、適宜混合して用いることができるが、市販の酵素配合洗濯用洗剤は界面活性剤と酵素の混合物であることから、これをそのまま使用することもできる。
本発明の(b)工程において、酵素、界面活性剤のどの処理を行うかは、特に除去したい不純物の種類、コスト、その他プロセス上の制約、目的とするPHAの純度等の理由や目的によって適宜自由に選択できる。
本発明では、工程(b)において、上記酵素及び/又は界面活性剤処理により得られたPHA粒子は、脱脂・脱臭・脱色など夾雑物の更なる除去のために、親水性溶媒及び/又は水による洗浄を行うことが好ましい。本工程により、より純度の向上したPHAを単離することができる。本工程で用いられる親水性溶媒としては特に限定されないが、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これら親水性溶媒の中では、経済的に安価で洗浄効果のあるメタノールとエタノールが特に好ましい。また、上記親水性溶媒は、水と混合して使用することもできる。水と親水性溶媒の混合溶媒を用いる場合、その混合体積比(水/親水性溶媒)は9.5/0.5〜0.5/9.5程度が好ましい。洗浄に用いる上記溶媒の量としては、特に限定されないが、好ましくはポリマー体積と等量以上の量である。洗浄時の温度は、好ましくは20℃以上60℃未満である。さらに、本洗浄は水のみで行っても良い。
本発明においては、この工程(b)が終了した段階で、高純度のPHAを回収することができ、成形材料等として使用することが可能である。特に、この時点でのPHAは平均粒径0.7ミクロンの微粒子からなるエマルジョンを形成するため、例えば紙などへのコーティング材としての用途に好適に使用できる。しかし、これに限られるわけではない。
本発明の好ましい実施態様によれば、工程(b)で得られたPHAは粒径が数ミクロン程度という微粒子であるため、分離性、取り扱い性等の点から、さらに以下の工程(c)において、PHAを適当な粒径にまで凝集させてもよい。
(c)洗浄されたPHAを親水性溶媒及び/又は水に懸濁し、該懸濁液の沸点以下の温度で攪拌することにより、PHAを凝集させて粒度を大きくし、次いで凝集したPHAを懸濁液から分離する工程。
本発明の工程(c)は、工程(b)によって精製されたPHAを、親水性溶媒及び/又は水に懸濁し、該懸濁液をその沸点以下の温度で撹拌するという簡便な操作によって、PHA粒子を凝集させ、その粒径を大きくする工程である。
工程(c)で使用する親水性溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、アセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド、ピリジン、ピペリジン等が挙げられる。中でも、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、プロピオニトリル等が、溶媒の除去性が良好である点から好ましい。また、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリルが、入手が容易である点からより好ましい。さらに好ましくは、工程(b)のPHA洗浄に用いた溶媒を使用することであり、これにより連続的に凝集操作に移れること、溶媒槽が1種類で賄えることから設備費の削減等ができる。従って、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフランがさらに好ましい溶媒として挙げられる。これらの中でも、経済的に安価でかつ洗浄効果のあるメタノールとエタノールが特に好ましい。
また、上記親水性溶媒は、水と混合して使用することもできる。つまり、懸濁液は、その分散媒として、親水性溶媒のみ、水のみ、親水性溶媒と水との混合溶媒、のいずれであってもよく、好ましくは親水性溶媒と水との混合溶媒である。混合溶媒中の親水性溶媒の濃度は、より十分な凝集効果を得るために、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。また、親水性溶媒の上限は、好ましくは99重量%以下、より好ましくは98重量%以下、更に好ましくは97重量%以下である。
工程(c)の懸濁液中のPHAの濃度は特に限定されないが、好ましくは1g/L以上、より好ましくは10g/L以上、さらに好ましくは30g/L以上である。また、上限はPHA懸濁液の流動性を確保する点から、好ましくは500g/L以下、より好ましくは300g/L以下、さらに好ましくは200g/L以下である。本発明の工程(c)において、攪拌する手段としては、攪拌槽等、乱流を生じさせるものが挙げられるが、特に限定されるものではない。本発明の工程(c)における凝集時の温度としては、室温(約24℃)以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。上限は特に限定されず、該懸濁液の沸点までの任意の温度を選択できる。また、工程(c)は、常圧あるいは高圧いずれの条件でも行うことができる。
本発明の工程(c)では、通常、数分程度の極めて短時間で凝集を起こさせることができるため、凝集後すぐに濾過等によりPHAを単離すれば、温度によるPHAの分子量低下については心配する必要がない。
本発明の工程(c)の凝集方法によって、PHAの粒径を大きくすることが可能となる。例えば、重量平均直径が10μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上の凝集体を得ることができる。上限は特に限定されないが、重量平均直径が5000μm以下、好ましくは3000μm以下の凝集体である。粒径の増大に伴い、濾過による回収が容易になり、工業生産において設備費が軽減できることになる。ここで、濾過の方法については特に限定はないが、例えば、フィルター濾過機、バスケット型分離機等を用いて行うことができる。また、回収方法としてより好ましいのは、凝集PHAを噴霧乾燥により直接乾燥粉体として回収する方法であり、濾過後に乾燥する方法と比較して設備費が軽減できる。
本発明によって得られるPHAには、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤;無機系または有機系粒子、ガラス繊維、ウイスカー、雲母などの充填剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤;滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤その他の副次的添加剤を配合し、組成物を調製することができる。
本発明の方法によって得られるPHAやその組成物は、各種繊維、糸、ロープ、織物、編物、不織布、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器、袋、部品、発泡体などの形状に成形できる。また、2軸延伸フィルムにも加工できる。成形品は、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、衣料、非衣料、包装、その他の分野に好適に用いることができる。特に、本発明の方法によって得られるPHAは高純度であることから、今までの方法では使用できなかった高い純度を要求される分野、例えばフィルム、医学、衛生品などに好適に利用できるという点で優れている。
本発明の方法により、微生物による生産物を工業的に安価に生産、提供できるようになり、特に今まで非常に困難であったPHA含有微生物細胞中より、高純度PHAを効率よく回収することができ、工業的に安価に生産、提供できるようになる。
生産物としてPHBHを用い、以下の実施例で本発明の生産物の回収・精製方法を更に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。
(次亜塩素酸塩での処理後の粘性の評価)
次亜塩素酸塩での処理後の水性懸濁液の粘性を目視で判定し、以下の4段階で評価した。
大:全体がゲル化
中:部分的にゲル有り
小:ゲル少量有り
なし:ゲルなし
(粘度の測定)
菌体懸濁液の粘度は株式会社トキメック社製のB型粘度計により、添付の使用説明書に従って測定した。
(PHAの重量平均分子量の測定方法)
回収した乾燥PHA10mgを、クロロホルム5mlに溶解したのち、不溶物を濾過により除いた。この溶液をShodex K806L(300×8mm、2本連結)(昭和電工社製)を装着した島津製作所製GPCシステムを用いクロロホルムを移動相として分析した。分子量標準サンプルには市販の標準ポリスチレンを用いた。培養終了後の微生物細胞中のPHAの重量平均分子量については、後述の3HHmol%の測定と同じく、PHA含有微生物細胞からクロロホルム抽出とヘキサン晶析によりPHAを回収して、同様に測定した。
(3HHmol%及びPHBH純度の測定方法)
培養終了後の微生物細胞中のPHA(PHBH)を、クロロホルム抽出とヘキサン晶析により回収後、解析に供した。3HHmol%の測定は特開2001−340078号公報の実施例1に記載の方法で行った。すなわち、PHBH20mgを2mlの硫酸−メタノール混合液(15:85)に懸濁させ、クロロホルム2mlを加え、100℃、140分間加熱した。冷却後、1mlの蒸留水を添加し、攪拌後クロロホルム層を回収した。これを島津製作所製ガスクロマトグラフGC−17A(GLサイエンス社製NEUTRA BONDカラム)を用いて組成分析を行った。同様に本法を用いPHBHの総純度を測定した。
(PHA中の蛋白質換算純度の測定方法)
回収したPHA(PHBH)を測定直前に50℃で5時間減圧乾燥し、ダイヤインスツルメンツ社製の微量窒素分析装置TN−10を用いて全窒素量を測定した。本発明では、測定した窒素濃度に6.38を乗じて蛋白質換算純度とした。
(粒度の測定)
PHA粒子の平均粒径は、マイクロトラック粒度計(日機装製FRA)を用い、PHAの水懸濁液を所定濃度に調整し、全粒子の50%蓄積量に対応する粒径を平均粒径とした。
(実施例1)次亜塩素酸塩処理1
アエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素群遺伝子を導入した、Alcaligenes eutrophus AC32(受託番号:FERM BP−6038)として平成9年8月7日付で国際寄託されているR.eutrophaを特開2001−340078号公報の実施例1に記載した方法で培養を行い、PHBHの生産を行った。培養終了後、遠心分離により微生物細胞を回収し、乾燥菌体重量で100g/Lの水性懸濁液とした。水性懸濁液中の回収微生物は乾燥重量で10重量%、細胞中のPHBH含量は60重量%であった。この細胞懸濁液50mlに、表1に示すように有効塩素濃度12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液0.1〜5ml(乾燥菌体重量に対して0.3〜14重量%)を加え、室温で2時間攪拌した。反応終了後、5N−NaOHを加えpHを11.7にした。また、対照として、次亜塩素酸未処理でアルカリ処理のみ実施した。また、別の対照として、細胞懸濁液を60℃で20分滅菌処理した後、水性懸濁液中で有効塩素濃度が1.4重量%となるように次亜塩素酸ナトリウムを加え室温で2時間攪拌し、アルカリ添加後粘性をみた。溶液の粘性は目視で見計らった。結果を表1に示した。
Figure 2005085461
この結果から、乾燥菌体重量当たり有効塩素濃度0.3重量%で核酸の分解が既に認められ、0.7重量%から粘性がほとんどなくなった。2.8重量%であればほとんど核酸は分解しており、核酸の分解には十分な濃度であった。また、次亜塩素酸未処理あるいは菌体を滅菌した場合には、溶液はゲル状になり次亜塩素酸の効果はみられなかった。
(実施例2)次亜塩素酸塩処理2
実施例1で用いた培養細胞の水性懸濁液800mlを遠心し、上清400mlを捨て菌体の2倍濃縮懸濁液(乾燥菌体濃度20重量%)400mlとした。この培養細胞の水性懸濁液に次亜塩素酸ナトリウムを8ml加え、有効塩素濃度1.4重量%溶液とした。pHは、6.5であった。室温で2時間攪拌し、反応終了後5N−NaOHによりpH8.2に調整した。この水性懸濁液を図1の菌体破砕槽11に入れ、反応槽を伊国ニロソアビ社製高圧ホモジナイザーモデルPA2K型(破砕装置9)と連結し400〜500kgf/cmの圧力でホモジナイズを1回行った。続いて、400ml全量を通すたびに10%の水酸化ナトリウムを添加し、懸濁液のpHを10.0、11.0、12.5、12.5、12.5に調整し、pHを調整するごとに破砕を1回ずつ実施した。破砕ごとに水性懸濁液の粘度を測定した。結果を表2に示した。
Figure 2005085461
破砕後の各粘度は低く、破砕機に懸濁液を問題なく通すことができた。pH12.5での3回目の破砕により粘度は18.2mPa.sと、破砕前と殆ど変わらなくなった。
(比較例1)
比較例1では、次亜塩素酸ナトリウム処理をすることなくアルカリ条件での菌体の破砕を行い、粘度を調べた。
実施例1で用いた乾燥菌体濃度10重量%の懸濁液800mlを図1の菌体破砕槽11に入れ10%NaOHによりpHを9.1に調整した。反応槽を伊国ニロソアビ社製高圧ホモジナイザーモデルPA2K型(破砕装置9)と連結し400〜500kgf/cmの圧力で破砕を1回行った。この破砕終了後の粘度は123mPa.sであった。さらにpHを11.0に調整し破砕したところ粘度は1325mPa.sと急激に上昇し、ゲルの一部が攪拌軸に絡みつき破砕機への導入に問題があった。粘度が30mPa.sになるまでに11回の破砕を要した。
(実施例3)
実施例3では、次亜塩素酸処理後、早期にpHをアルカリにし、PHBHの分子量低下度を調べた。また、酵素/界面活性剤処理を行い、水洗後の品質を評価した。
アエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素群遺伝子を導入した、Alcaligenes eutrophus AC32(受託番号:FERM BP−6038)として平成9年8月7日付で国際寄託されているR.eutrophaを特開2001−340078号公報の実施例1に記載した方法で培養を行い、PHBHの生産を行った。培養終了後の菌体含量は9.9重量%、重量平均分子量207万、ポリマー含量62重量%、3HHは4.5mol%であった。この培養ブロス1.2Lに次亜塩素酸ナトリウム溶液12ml(有効塩素濃度で1.4重量%)を加え、30℃、2時間撹拌した。pHは6.5であった。反応終了後、遠心分離(8000rpm、20分)を行い上清0.6Lを除去した。残りの菌体懸濁液(乾燥菌体換算で20重量%)のpHを10%水酸化ナトリウムによりpH8.0に調整し、400〜500kg/cmで高圧破砕を1回行った。続いてpHを一段階で12.5に調整し、このpHに維持しながら高圧破砕を5回実施した。各破砕後に粘度、蛋白質換算純度、PHBHの総純度及び重量平均分子量の測定を行った。粘度は、pH12.5に調整した直後に上昇したが、破砕は問題なく続けることができた。破砕ごとにサンプリングし遠心によりポリマーを回収し、新たに水を加え、攪拌と遠心により水洗を行った。洗浄ポリマーに水15.8gを加え懸濁させた。これらサンプルについてエスペラーゼ(Esperase、ノボザイムス社製アルカラーゼ)0.02gと界面活性剤(AC3S、Stepan Company社)0.125gを加え、酵素/界面活性剤処理を40℃で1時間行った。サンプルを水で4回洗浄した。この時点でのポリマーの粒度を測定したところ、平均粒径0.7ミクロンの微細な粒子(図2)からなるエマルジョンであることがわかった。このエマルジョンをエタノールで2回洗浄し、遠心分離により回収した後、50℃で6時間減圧乾燥した。得られたポリマーの窒素量を測定した。結果を表3に示した。
Figure 2005085461
その結果、各pHでの分子量低下はなく、純度も蛋白質換算で99.3%、総純度が98%と十分なものが得られた。以上の結果から、生菌の次亜塩素酸ナトリウム処理は、破砕時の粘度低減効果があり、得られるPHAの分子量の低下も見られないこと、品質も概ね良好であることが確認できた。
(実施例4)
PHBHを凝集させて粒度を大きくし、PHBHを回収した。
実施例3と同様にして得られた、エタノール洗浄後のポリマーを200g/Lの水性懸濁液とした。当該懸濁液に95%エタノール280mlを加えて懸濁させ、続いて遠心分離によりPHBHを沈殿させた。上清280mlを除去し、ポリマー画分に再度95%エタノール280mlを加えてPHBHを懸濁させた。このエタノール洗浄を計2回行った後、95%エタノール280mlを加えた懸濁液とした。該PHBH懸濁液を70℃の95%エタノール290mlに15分間で徐々に加え、添加終了時からさらに10分攪拌を行いPHBHを凝集させた。凝集PHBHを濾過により回収した。濾過器でPHBHを95%エタノール120ml(PHBH容量と等量)で2回洗浄した。得られた凝集PHBHを50℃で真空乾燥した。蛋白質換算純度99.9%、総純度99%のPHBHが65g(回収率93%)得られた。凝集ポリマーの粒度は50μmであった。また、重量平均分子量は197万と、培養終了後からわずか5%減少したのみであった。
本発明の、微生物の次亜塩素酸処理による核酸の自己消化の誘導により、続く菌体の分解または溶解時に溶液の粘度上昇が抑制されるため、比較的穏和な条件で菌体内生産物の回収が容易になるため、微生物による生産物を工業的に安価に生産、提供できるようになる。
特に、微生物により生産された有用物質が生分解性ポリマーであるポリヒドロキシアルカノエートである場合に効果があり、当該物質を工業的に安価に生産、提供できるようになる。
本発明の方法において、PHAの分離精製を実施するための菌体破砕装置の説明図である。 実施例3で得られたPHA粒子の粒度を分析したグラフである。
符号の説明
1 菌体破砕装置
2 撹拌装置
3 pH検知制御装置
4 ポンプ
5 管路
6 pH調整剤貯留槽
7 pH計
8 管路
9 破砕装置
10 ポンプ
11 菌体破砕槽(低温恒温循環槽)

Claims (24)

  1. 微生物による生産物を微生物細胞内より回収する工程において、生きている微生物を、核酸の自己消化を誘導するのに適した量の次亜塩素酸又はその塩と接触させ、その後生産物回収工程を行うことを特徴とする生産物の回収方法。
  2. 微生物細胞中の核酸の自己消化を誘導する次亜塩素酸又はその塩の濃度が、有効塩素濃度換算にして菌体乾燥重量あたり0.3重量%〜14重量%であることを特徴とする請求項1に記載の生産物の回収方法。
  3. 微生物と次亜塩素酸又はその塩との接触が15〜40℃の温度において実施されることを特徴とする請求項1又は2に記載の生産物の回収方法。
  4. 微生物と次亜塩素酸又はその塩との接触がpH4〜8で行われることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
  5. 微生物による生産物が生分解性ポリマーのポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
  6. ポリヒドロキシアルカノエートが、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバレレート、3−ヒドロキシプロピオネート、4−ヒドロキシブチレート、4−ヒドロキシバレレート、5−ヒドロキシバレレート、3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシヘプタノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシノナノエート及び3−ヒドロキシデカノエートからなる群から選択されるモノマーのうち少なくとも2種が共重合した共重合体であることを特徴とする請求項5に記載の生産物の回収方法。
  7. ポリヒドロキシアルカノエートが、3−ヒドロキシヘキサノエートと、他のヒドロキシアルカノエートの少なくとも1種との共重合体であることを特徴とする請求項5又は6に記載の生産物の回収方法。
  8. ポリヒドロキシアルカノエートが、3−ヒドロキシヘキサノエートと3−ヒドロキシブチレートとの共重合体であることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
  9. 微生物が、アエロモナス(Aeromonas)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アゾトバクター(Azotobacter)属、バチルス(Bacillus)属、キャンディダ(Candida)属、クロストリジウム(Clostridium)属、ハロバクテリウム(Halobacterium)属、ノカルディア(Nocardia)属、ロドスピリリウム(Rhodospirillum)属、シュウドモナス(Psuedomonas)属、ラルストニア(Ralstonia)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、ズーグロエア(Zoogloea)属、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属及びパラコッカス(Paracoccus)属からなる群より選択されるポリヒドロキシアルカノエートを含有する微生物であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
  10. 微生物が、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)である請求項1から9のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
  11. 微生物が、アエロモナス・キャビエ由来のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素群遺伝子を導入された形質転換体である請求項1から10のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
  12. 微生物が、アエロモナス・キャビエ由来のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素群遺伝子を導入されたラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)である請求項11に記載の生産物の回収方法。
  13. 生きている微生物を、核酸の自己消化を誘導するのに適した量の次亜塩素酸又はその塩と接触させた後に行う生産物回収工程が、下記(a)及び(b)の工程からなることを特徴とする請求項5から12のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
    (a)ポリヒドロキシアルカノエートを含有する微生物細胞の水性懸濁液に、攪拌と物理的破砕処理を行いながらアルカリを添加し、該細胞を破砕すると共に、該細胞中のポリヒドロキシアルカノエート以外の細胞物質を可溶化又は乳化させ、次いでポリヒドロキシアルカノエートを懸濁液から分離する工程;
    (b)分離されたポリヒドロキシアルカノエートを、酵素及び/又は界面活性剤で処理し、ポリヒドロキシアルカノエートに付着した不純物を可溶化又は分解後可溶化し、続いて親水性溶媒及び/又は水でポリヒドロキシアルカノエートを洗浄する工程。
  14. さらに下記(c)の工程を有してなる、請求項13記載の生産物の回収方法。
    (c)洗浄されたポリヒドロキシアルカノエートを親水性溶媒及び/又は水に懸濁し、該懸濁液の沸点以下の温度で攪拌することにより、ポリヒドロキシアルカノエートを凝集させて粒度を大きくし、次いで凝集したポリヒドロキシアルカノエートを懸濁液から分離する工程。
  15. 工程(a)において、物理的破砕処理を高圧ホモジナイザーで行うことを特徴とする請求項13又は14に記載の生産物の回収方法。
  16. 工程(a)において、水性懸濁液のpHを9から13.5の間にコントロールしながら物理的破砕を行うことを特徴とする請求項13から15のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
  17. 工程(a)において使用するアルカリが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及び炭酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項13から16のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
  18. 工程(b)において使用する酵素が、蛋白質分解酵素、脂肪酸類分解酵素、細胞壁分解酵素及び核酸分解酵素からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項13から17のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
  19. 工程(b)において使用する界面活性剤が、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項13から18のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
  20. 工程(b)において、洗浄に用いる親水性溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル及びテトラヒドロフランからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項13から19のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
  21. 工程(c)において使用する親水性溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル及びテトラヒドロフランからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項14から20のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
  22. 工程(a)又は工程(b)の後、得られたポリヒドロキシアルカノエートをエマルジョンとして回収することを特徴とする請求項13から20のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
  23. 工程(c)の後、ポリヒドロキシアルカノエートを噴霧乾燥により乾燥粉体として回収することを特徴とする請求項13から21のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
  24. 次亜塩素酸の塩が次亜塩素酸ナトリウムであることを特徴する請求項1から23のいずれか1項に記載の生産物の回収方法。
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