JP4553733B2 - 生分解性ポリエステル水性分散液およびその製造方法 - Google Patents

生分解性ポリエステル水性分散液およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、生分解性ポリエステル水性分散液およびその製造方法、さらに詳しくは、3−ヒドロキシブチレート(以下、3HBと記載する)と3−ヒドロキシヘキサノエート(以下、3HHと記載する)との共重合体(以下、PHBHと記載する)を含有する生分解性ポリエステル水性分散液およびその製造方法に関する。
樹脂の水性分散液は、塗料、接着剤、繊維加工、シート・フィルム加工、紙加工などに広く用いられており、溶剤溶液に比べて取り扱い易さ、作業環境上の安全性に優れている。既存の水性分散液中の樹脂は、でんぷん系やゴムラテックスを除きほとんどが非生分解性で、廃棄処理上環境負荷が大きい問題がある。
近年、廃棄プラスチックが引き起こす環境問題がクローズアップされ、地球規模での循環型社会の実現が切望される中で、そのプラスチックの使用後に微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解される生分解性プラスチックが注目を集めている。すでに、シート、フィルム、繊維、成型品などが国内外で製品化されているが、エマルジョンまたはラテックスと称される樹脂の水性分散液で生分解性のものは数少ない。
たとえば、ポリ乳酸を含む水系紙塗工用組成物は、微粒子の水性分散液とするために樹脂を溶媒に加熱溶解後晶析させ、さらに硝子ビーズと共に高速撹拌して粉砕して製造されている(たとえば、特許文献1(段落番号[0008])参照)。また、脂肪族ポリエステルエマルジョンの水性分散液は、溶融状態の樹脂と乳化剤の水溶液を混合混練して製造されている(たとえば、特許文献2(段落番号[0006])、特許文献3(段落番号[0006])参照)。その他、樹脂を冷凍粉砕する方法もあるが、いずれも微粒子の水性分散液とするために多大の労力を要し経済的に不利である。
微生物産生のポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと記載する)の例としては、3HBのホモポリマー(以下、PHBと記載する)、および3HBと3−ヒドロキシバリレート(以下、3HVと記載する)との共重合体(以下、PHBVと記載する)が開示されているが、これらの樹脂の欠点は伸びが少なく脆い点である(たとえば、特許文献4(4欄、5〜23行)、特許文献5(7頁、21〜22行)参照)。したがって、このような樹脂を含む水性分散液を塗工して形成される塗膜も伸びが少なくて脆くなり、たとえば、シート、フィルムまたは紙に塗工した場合には、折り曲げによってクラックを生じる問題があった。
特開平9−78494号公報 特開平11−92712号公報 特開2001−354841号公報 米国特許第5,451,456号明細書 特表平11−500613号公報
本発明の目的は、成膜性に優れた生分解性ポリエステル水性分散液であって、塗料、接着剤、繊維加工、シート・フィルム加工、紙加工などに適用する際、柔軟で伸びがよく、折り曲げに対して強い樹脂塗膜を与える生分解性ポリエステル水性分散液、および樹脂を溶媒に加熱溶解後晶析させたり、溶融状態の樹脂と乳化剤の水溶液を混合混練したり、または冷凍粉砕したりすることなく、容易に微粒子の生分解性ポリエステル水性分散液を製造する方法を提供することである。
すなわち、本発明は、曲げ弾性率が100〜1500MPaであり、重量平均分子量が5万〜300万である、3HBと3HHとの共重合体からなり、水性分散液中の該共重合体の平均粒径が0.1〜50μmである生分解性ポリエステル水性分散液に関する。
前記水性分散液中の共重合体の固形分濃度が5〜70重量%であることが好ましい。
前記水性分散液中に乳化剤を含有することがより好ましい。
また、本発明は、前記共重合体が微生物から産生されるものであって、その共重合体を含有する微生物菌体を水性分散体の状態で破砕して菌体内の共重合体を分離する工程を含む生分解性ポリエステル水性分散液の製造方法に関する。
前記水性分散液に機械的剪断を与え、一部凝集した前記共重合体の粒子を相互に分離させる工程を含むことが好ましい。
以上説明した通り、本発明のPHBHを含有する生分解性ポリエステル水性分散液は、成膜性に優れ、塗料、接着剤、繊維加工、シート・フィルム加工、紙加工などに適用した際、柔軟で伸びがよく、折り曲げに対して強い樹脂塗膜を与える。さらに、微生物産生PHBHを用いた場合には、水系においてPHBHが蓄積された菌体を破砕してPHBHを分離する方法により、PHBHを溶媒に加熱溶解後晶析させたり、溶融状態の樹脂と乳化剤の水溶液を混合混練したり、または冷凍粉砕したりすることなく、微粒子の水性分散液を容易に得ることができる。
本発明は、曲げ弾性率が100〜1500MPaであり、重量平均分子量が5万〜300万である、3HBと3HHとの共重合体からなり、水性分散液中のこの共重合体の平均粒径が0.1〜50μmである生分解性ポリエステル水性分散液に関する。
前記共重合体は、微生物から産生する方法または化学合成法のいずれの方法によって得られてもよく、とくに限定されるものではない。なかでも、微生物から産生されるPHBHが、微粒子である点で好ましい。
PHBHを産生する微生物としては、細胞内にPHBHを蓄積する微生物であればとくに限定されないが、A.lipolytica、A.eutrophus、A.latusなどのアルカリゲネス属(Alcaligenes)、シュウドモナス属(Pseudomonas)バチルス属(Bacillus)、アゾトバクター属(Azotobacter)、ノカルディア属(Nocardia)、アエロモナス属(Aeromonas)などの菌があげられる。なかでも、PHBHの生産性の点で、とくにアエロモナス・キャビエなどの菌株、さらにはPHA合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユウトロファス AC32(受託番号FERM BP−6038(平成8年8月12日に寄託された原寄託(FERM P−15786)より移管)(平成9年8月7日、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名;日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6))(J.Bacteriol., 179, 4821-4830頁(1997))などが好ましい。また、アエロモナス属の微生物であるアエロモナス・キャビエ(Aeromonas.caviae)からPHBHを得る方法は、たとえば、特開平5−93049号公報に開示されている。なお、これらの微生物は、適切な条件下で培養して、菌体内にPHBHを蓄積させて用いられる。
培養に用いる炭素源、培養条件は、特開平5−93049号公報、特開2001−340078号公報記載の方法にしたがい得るが、これらには限定されない。
PHBHの組成比は、3HB/3HH=97〜75/3〜25(モル%)が好ましく、3HB/3HH=95〜85/5〜15(モル%)がより好ましい。3HHの組成が3モル%未満ではPHBHの特性が3HBホモポリマーの特性に近くなり柔軟性が失われるとともに成膜加工温度が高くなりすぎて好ましくない傾向がある。3HHの組成が25モル%をこえると結晶化速度が遅くなりすぎ成膜加工に適さず、また、結晶化度が下がることで、樹脂が柔軟になり曲げ弾性率が低下する傾向がある。3HHの組成は、水性分散液を遠心分離したのち、乾燥させて得られたパウダーをNMR分析により測定した。
こうして得られた微生物産生PHBHはランダム共重合体である。3HHの組成を調整するために、菌体の選択、原料となる炭素源の選択、異なる3HH組成のPHBHのブレンド、3HBホモポリマーのブレンドなどの方法がある。
本発明の水性分散液から柔軟な物性を有する塗膜を得るために、PHBHの曲げ弾性率は100〜1500MPaである。200〜1300MPaが好ましく、200〜1000MPaがより好ましい。曲げ弾性率が100MPa未満でも軟らかすぎることはないが、3HH組成との関係で結晶化が遅くなる。1500MPaをこえると樹脂の剛性が高くなり、加工時のPHBH塗膜が硬くなりすぎる。ここでいう曲げ弾性率の値は、水性分散液から得られたPHBHパウダーから作製したプレスシートを、JIS K7171に準拠して測定した値である。PHBHの重量平均分子量(以下、Mwと記載する)は、5万〜300万である。Mwは10万〜200万が好ましい。Mwが5万未満ではPHBHを含有する水性分散液から形成される塗膜が脆くなりすぎて実用に適さない。300万をこえるとPHBHを含有する水性分散液の粘度が高くなりすぎて塗布などの加工が困難になる上、形成される塗膜にボイドが生じて欠陥のあるものとなる。前記Mwは、PHBHを含有する水性分散液を遠心分離したのち、乾燥させて得られたパウダーを溶離液としてクロロフォルムを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算分子量分布より測定した値をいう。
本発明の水性分散液中のPHBHの平均粒径は、0.1〜50μmである。平均粒径は0.5〜10μmが好ましい。平均粒径が0.1μm未満ではPHBHが微生物産生であるときは困難であり、また、化学合成法で得る場合にも、微粒子化するという操作が必要となる。平均粒径が50μmをこえるとPHBHを含有する水性分散液を塗布した場合に表面に塗布むらが起こる。PHBHの平均粒径は、マイクロトラック粒度計(日機装製、FRA)など汎用の粒度計を用い、PHBHの水懸濁液を所定濃度に調整し、正規分布の全粒子の50%蓄積量に対応する粒径をいう。
前記水性分散液中のPHBHの固形分濃度は、5〜70重量%が好ましく、10〜50重量%がより好ましい。固形分濃度が5重量%未満では塗膜の形成がうまくいかない傾向がある。70重量%をこえると水性分散液の粘度が高くなりすぎ、塗工が困難になる傾向がある。
本発明の水性分散液は、ポリマーの粒径が小さいため、乳化剤を添加しなくても分散液が比較的安定であるが、さらに分散液を安定化させるため乳化剤を含むことが好ましい。乳化剤としては、ラウリル硫酸ソーダ、オレイン酸ソーダなどのアニオン性界面活性剤、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン性界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子などがあげられる。前記乳化剤の添加量はPHBHの固形分に対し、1〜10重量%が好ましい。乳化剤の添加量が1重量%より少ないと乳化剤による安定化効果が発現しにくい傾向があり、10重量%をこえるとポリマーへの乳化剤混入量が多くなり、物性低下、着色などを引き起こす傾向がある。乳化剤は、微生物菌体の破砕・アルカリ処理後、遠心分離、水洗浄を行った後の水性分散液に添加することができる。メタノール洗浄を行う場合は、メタノール洗浄後、適当量の水を添加して固形分濃度を調整する前または調整した後に添加することができる。
本発明の水性分散液は、必要に応じて、顔料、可塑剤、粘着付与剤、フィラー、薬剤などを添加することができる。
本発明の生分解性ポリエステル水性分散液の製造方法には、微生物菌体を水性分散体の状態で破砕して菌体内のPHBHを分離する工程を含むことが好ましい。クロロフォルムなどの有機溶剤を用いてPHBHを溶解させ、メタノール、ヘキサンなどのPHBH不溶性溶媒でPHBHを沈殿回収する方法では得られるPHBHが微粒子状にならず、PHBHを微粒子状にする工程が必要となり経済的に不利である。本発明の製造方法では、微生物菌体内に産生したPHBHの、微細な粒径をかなりの程度維持した微粒子の水性分散液を得ることができる。
PHBHを含有する微生物菌体を水性分散体の状態で破砕して菌体内のPHBHを分離する工程においては、PHBHを含有する微生物菌体を撹拌しながら、破砕とアルカリ添加を同時に行うことが好ましい。この方法の利点は、微生物菌体から漏洩したPHBH以外の菌体構成成分による分散液の粘度上昇を防げること、菌体分散液の粘度上昇を防ぐことによってpHのコントロールが可能になり、さらにアルカリを連続的あるいは断続的に添加することにより低いアルカリ濃度で処理を行うことができること、およびPHBHの分子量低下を抑制でき、高純度のPHBHが分離できることである。アルカリ添加後の菌体分散液のpHは9〜13.5が好ましい。pHが9より低いとPHBHが菌体から分離し難い傾向がある。pHが13.5をこえるとPHBHの分解が激しくなる傾向がある。
微生物菌体の破砕には、超音波で破砕する方法や、乳化分散機、高圧ホモジナイザー、ミルなどを用いる方法がある。なかでも、アルカリ処理によりPHBHを菌体内から溶出させ、主に粘度上昇の原因となる核酸を効率よく破砕し、細胞壁、細胞膜、不溶性蛋白質などのポリマー以外の不溶性物質を充分に分散できるという点で、乳化分散機、たとえば、シルバーソンミキサー(シルバーソン社製)、クリアーミックス(エムテック社製)、エバラマイルダー(エバラ社製)などを用いることが好ましいが、これらに限定されるものではない。また、微生物菌体の破砕とアルカリ添加の好ましい温度条件は室温から50℃の範囲である。温度条件が50℃をこえるとPHBHポリマーの分解が起こりやすくなるため室温付近が好ましい。また、室温以下にしようとすると冷却操作が必要となるので経済的ではない。
微生物菌体を破砕およびアルカリ処理することにより得られた分散液から遠心分離により沈殿物を得、この沈殿物を水洗浄、必要であればメタノール洗浄を行ない、最後に水を適当量添加して所望の固形分濃度のPHBHの水性分散液を得ることができる。
本発明では、前記工程のあとに、水性分散液に機械的剪断を与え、一部凝集したPHBHの粒子を相互に分離させる工程を含むことが好ましい。機械的剪断を与えることは凝集物をなくし、均一な粒径のポリマー水性分散液を得ることができるという点で好ましい。水性分散液の機械的剪断は、攪拌機、ホモジナイザー、超音波などを用いて行うことができる。この時点では、ポリマー粒子の凝集はそれほど強固ではないので、簡便性の点から、通常の撹拌翼を有する撹拌機を用いて行うことが好ましい。
以下、実施例および比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
本実施例で用いた微生物は、アエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素群遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユウトロファス AC32(受託番号FERM BP−6038(平成8年8月12日に寄託された原寄託(FERM P−15786)より移管)(平成9年8月7日、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名;日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6))である。これを、J.Bacteriol., 179, 4821-4830頁(1997)に記載の方法で、炭素源としてパーム油を用いて培養した。培養は、撹拌機を備えた3Lジャーにて、温度35℃、撹拌数500rpm、培養時間60時間で行ない、Mw100万のPHBHを約60重量%含有する菌体を得た。つぎに、この培養液を遠心分離(5000rpm、10分間)することによってペースト状菌体を得、これに水を加えて50g菌体/Lの水性分散液とした。
この菌体水性分散液500mlを、攪拌機を備えた1Lの容器に入れ撹拌して35℃に保温し、水酸化ナトリウム水溶液を菌体分散液のpHが11.8に保たれるように添加しながら、容器に装着した乳化分散機を作動させ2時間撹拌し、菌体を破砕した。処理後の菌体分散液を遠心分離して沈殿物を得、沈殿物を水で1回、メタノールで2回洗浄し、適当量の水を加えてPHBHの固形分濃度が20重量%の水性分散液とした。この水性分散液中のPHBHの平均粒径は1.17μmであった。この水性分散液を減圧下で乾燥して得たパウダーの、3HH組成は6モル%、Mwは87万であった。
また、得られたPHBHの水性分散液を遠心分離したのち、乾燥して得たパウダーから作製したプレスシートの曲げ弾性率を、JIS K7171に準拠して測定した。曲げ弾性率は1200MPaであった。
得られたPHBHの水性分散液の10gを清浄なガラス面に注ぎ、その後、乾燥機に入れて120〜200℃で10〜30分乾燥させ、生成した塗膜フィルムをガラス面から剥離して、50〜60μm厚みのフィルムを得た。このフィルムの引張り破壊伸びをJIS K7127に準拠して測定した。また、フィルムを折り畳んだときの折り畳み部のクラックを観察した。クラックが見られないものを○、一部にクラックが入っているものを△、折り畳み部の大部分にクラックが入っているものを×とした。また、生分解性については、塗膜フィルムを活性汚泥中に浸して調べた。結果を表1に示す。塗膜フィルムの破壊伸びは100%であった。
実施例2
炭素源としてヤシ油を用いた以外は実施例1と同様にして培養を行ない、固形分濃度20重量%の水性分散液を得た。この水性分散液中のPHBHの平均粒子径は1.69μmであった。この水性分散液を減圧下で乾燥して得たパウダーの、3HH組成は10モル%、Mwは76万であった。また、実施例1と同様にして曲げ弾性率、塗膜フィルムの破壊伸びを測定し、フィルムの折り畳み部のクラック、および生分解性を観察した。曲げ弾性率は500MPaであった。塗膜フィルムの破壊伸びは400%であった。結果を表1に示す。
実施例3
炭素源としてヤシ油を用い、培養温度を30℃とした以外は実施例1と同様にして培養を行ない、固形分濃度20重量%の水性分散液を得た。この水性分散液中のPHBHの平均粒子径は1.95μmであった。この水性分散液を減圧下で乾燥して得たパウダーの、3HH組成は15モル%、Mwは96万であった。また、実施例1と同様にして曲げ弾性率、塗膜フィルムの破壊伸びを測定し、フィルムの折り畳み部のクラック、および生分解性を観察した。曲げ弾性率は300MPaであった。塗膜フィルムの破壊伸びは760%であった。結果を表1に示す。
実施例4
実施例1において、得られた固形分濃度20重量%の水性分散液に乳化剤として部分鹸化ポリビニルアルコール(クラレ社製、クラレポバールPVA205)を3重量部添加し、撹拌機にて30分間撹拌して乳化剤を含有する水性分散液を得た。実施例1と本実施例で得られた水性分散液を室温で3ヵ月間放置して放置安定性を比べたところ、実施例1の水性分散液はわずかに沈殿物が見られたが、本実施例の水性分散液は沈殿物が見られず変化しなかった。
実施例5
実施例3で得られた水性分散液を撹拌機を備えた1Lの容器に入れ、撹拌数500rpmで1時間撹拌した。得られた水性分散液中のPHBHの平均粒子径は、1.02μmとなり、もとの平均粒子径である1.95μmよりさらに微粒化されていた。
比較例1
酪酸を炭素源として用い、培養温度を30℃とした以外は実施例1と同様にして、固形分濃度20重量%のPHBの水性分散液を得た。この水性分散液中のPHBの平均粒径は1.12μmであった。この水性分散液を減圧下で乾燥して得たパウダーのMwは60万であった。また、実施例1と同様にして曲げ弾性率、塗膜フィルムの破壊伸びを測定し、フィルムの折り畳み部のクラック、および生分解性を観察した。曲げ弾性率は2600MPaであった。塗膜フィルムの破壊伸びは8%であった。結果を表1に示す。
比較例2
酪酸および吉草酸の混合比が、酪酸/吉草酸=92/8である炭素源を用い、培養温度を30℃とした以外は実施例1と同様にして、固形分濃度20重量%のPHBVの水性分散液を得た。この水性分散液中のPHBVの平均粒径は1.35μmであった。この水性分散液を減圧下で乾燥して得たパウダーの、Mwは59万、3HV組成は10モル%であった。また、実施例1と同様にして曲げ弾性率、塗膜フィルムの破壊伸びを測定し、フィルムの折り畳み部のクラック、および生分解性を観察した。曲げ弾性率は1800MPaであった。塗膜フィルムの破壊伸びは20%であった。結果を表1に示す。
比較例3
酪酸および吉草酸の混合比が、酪酸/吉草酸=83/17である炭素源を用い、培養温度を30℃とした以外は実施例1と同様にして、固形分濃度20重量%のPHBVの水性分散液を得た。この水性分散液中のPHBVの平均粒径は1.54μmであった。この水性分散液を減圧下で乾燥して得たパウダーの、Mwは57万、3HV組成は20モル%であった。また、実施例1と同様にして曲げ弾性率、塗膜フィルムの破壊伸びを測定し、フィルムの折り畳み部のクラック、および生分解性を観察した。曲げ弾性率は1600MPaであった。塗膜フィルムの破壊伸びは50%であった。結果を表1に示す。
Figure 0004553733
PHBHを含有する水性分散液から得られた塗膜フィルムは柔軟で伸びがよく、フィルムを折り畳んだとき、折り畳み部にクラックが起こりにくいことが分かる。
PHB、PHBVの場合は、完全に分解するのに4〜6週間要したが、PHBHの場合は2〜3週間と分解時間が大幅に短縮された。実施例1〜3および比較例1〜3の塗膜フィルムはともに生分解性は良好であるが、PHBHを用いたフィルムの方がより分解し易い。

Claims (5)

  1. 曲げ弾性率が100〜1500MPaであり、重量平均分子量が5万〜300万である、3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシヘキサノエートとの共重合体からなり、水性分散液中の該共重合体の平均粒径が0.1〜50μmであり、3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシヘキサノエート比が97〜75/3〜25モル%である生分解性ポリエステル水性分散液。
  2. 前記水性分散液中の共重合体の固形分濃度が5〜70重量%である請求項1記載の生分解性ポリエステル水性分散液。
  3. 前記水性分散液中に乳化剤を含有する請求項1または2記載の生分解性ポリエステル水性分散液。
  4. 前記共重合体が微生物から産生されるものであって、該共重合体を含有する微生物菌体を水性分散体の状態で破砕して菌体内の該共重合体を分離する工程を含む請求項1、2または3記載の生分解性ポリエステル水性分散液の製造方法。
  5. 前記水性分散液に機械的剪断を与え、一部凝集した前記共重合体の粒子を相互に分離させる工程を含む請求項4記載の生分解性ポリエステル水性分散液の製造方法。
JP2004549611A 2002-11-08 2003-11-05 生分解性ポリエステル水性分散液およびその製造方法 Expired - Fee Related JP4553733B2 (ja)

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