JP6172795B2 - ポリエステル樹脂組成物およびその製造方法、並びに該樹脂組成物から形成される成形体 - Google Patents

ポリエステル樹脂組成物およびその製造方法、並びに該樹脂組成物から形成される成形体 Download PDF

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本発明は、ポリエステル樹脂組成物に関するものであり、特に微生物の働きによって分解される生分解性ポリエステル樹脂を、種々の産業用資材として適用するためのポリエステル樹脂組成物およびその製造方法、並びにそれから形成される成形体に関するものである。
近年、プラスチック廃棄物が、生態系への影響、燃焼時の有害ガス発生、大量の燃焼熱量による地球温暖化等、地球環境への大きな負荷を与える原因となっている問題を解決できるものとして、生分解性プラスチックの開発が盛んになっている。
中でも植物由来の生分解性プラスチックを燃焼させた際に出る二酸化炭素は、もともと空気中にあったもので、大気中の二酸化炭素は増加しない。このことをカーボンニュートラルと称し、二酸化炭素削減目標値を課した京都議定書の下、重要視され、積極的な使用が望まれている。
最近、生分解性およびカーボンニュートラルの観点から、植物由来のプラスチックとして脂肪族ポリエステル樹脂が注目されており、特にポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと称する場合がある)樹脂、さらにはPHA樹脂の中でもポリ(3−ヒドロキシブチレート)単独重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバリレート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)共重合樹脂およびポリ乳酸等が注目されている。
しかしながら、前記ポリヒドロキシアルカノエートは、結晶化速度が遅いことから、成形加工に際し、加熱溶融後、固化のための冷却時間を長くする必要があり、生産性が悪い、成形後に起こる2次結晶化により機械物性(特に、引張破断伸度などの靭性)が経時変化する、という問題点がある。
このため、従来から、ポリヒドロキシアルカノエートに、窒化ホウ素、酸化チタン、タルク、層状ケイ酸塩、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、金属リン酸塩などの無機物を配合して結晶化を促進しようとする提案があった。しかし、得られた成形体の引張伸びが低下する、成形体表面外観が悪化する、フィルムにした場合の透明性が損なわれる、などの弊害が多く、効果は不十分であった。
また、無機物を用いないでポリヒドロキシアルカノエートの結晶化を促進する試みとして、ポリヒドロキシブチレートを添加する方法(特許文献1、特許文献2)が挙げられている。しかしながら、当該特許文献1で用いられているポリヒドロキシブチレートは融点がおおよそ174℃でありかつ分子量は20万以上であり、また実施例で用いているポリヒドロキシブチレートは融点180.5℃、分子量59.2万である。すなわち、180℃以上にならないと溶融しないし、また分子量が高いので溶融したとしても粘度が高い。そのため、ポリヒドロキシアルカノエート中に分散させるためにはポリヒドロキシブチレートの粘度を下げなければならないが、そのためには溶融温度を180℃から更に上げる必要がある。一方でポリヒドロキシアルカノエートはおおよそ180℃以上では短時間で熱分解が進行する。すなわち、当該先行文献の方法では、ポリヒドロキシアルカノエートが劣化してしまう。特許文献2についても、当該文献で用いられるポリヒドロキシブチレートの融点は175〜176℃であるので、特許文献1と同様の問題があり、実質的に効果の高い結晶核剤は未だ見出されていないのが現状である。
一方、樹脂組成物に低分子量のブチレートを混合した樹脂組成物が知られている(特許文献3〜5)。
特許文献3には、分子量5万以上を有する生分解性の微生物学的に製造された少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)およびヒドロキシアルカノエート、ラクチド、カプロラクトンおよびそれらのコオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1種のオリゴマーを含むポリマ一組成物が開示されている。しかしながら、当該先行発明におけるオリゴマーのガラス転移温度(Tg)はおおよそ−78℃〜−100℃であり、またポリマー組成物のTgはおおよそ−20℃を示す。すなわち、可塑化効果を与え、衝撃強度や柔軟性を与える目的で用いているものであり、本発明のポリエステル組成物で用いられる低融点ポリヒドロキシブチレートは、ポリヒドロキシアルカノエートとの加工に適した特定の融点を示しかつ組成物に均一かつ高い結晶性を付与する点で、先行発明とは異なる。
特許文献4には、分子量約500から約50,000の生分解性ポリヒドロキシアルカノエートを含むポリヒドロキシアルカノエート組成物が開示されている。しかしながら、当該先行発明の効果は接着加工性を改善するものであって、結晶化促進に関しては記載も示唆もされていない。
特許文献5には、二塩基酸と二価アルコールとから得られる数平均分子量500〜10000のポリエステル化合物であり、酸価が0.7以下、水酸基価が5.0以下、揮発減量(300℃)が2.5重量%以下で、かつ3000cps(25℃)以下の低粘度の液状もしくは100℃以上の高融点の固体であることを特徴とする結晶化促進剤が開示されているが、本発明のポリヒドロキシアルカノエートとポリ低融点ポリヒドロキシブチレートとは構成成分が異なる。
特表平08−510498号公報 特開2004−161802号公報 特表平08−503723号公報 特表2004−512419号公報 特開平09−255856号公報
本発明は、微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解される生分解性ポリエステルの中でも、特にポリヒドロキシアルカノエートの欠点である結晶化の速度が著しく改善され、射出成形やブロー成形の成形加工における固化性が改善されて加工速度を向上することを目的とする。
本発明者らは、ポリヒドロキシアルカノエートに対して、低分子量・低融点ポリヒドロキシブチレートを配合することにより、ポリヒドロキシアルカノエートの結晶化の速度を著しく改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一は、ポリヒドロキシアルカノエートと低融点ポリヒドロキシブチレートを含有するポリエステル樹脂組成物であって、該低融点ポリヒドロキシブチレートが以下(i)〜(ii)の条件を満たす、ポリエステル樹脂組成物である。
(i)GPCで測定するポリスチレン換算の重量平均分子量が5,000〜50,000である。
(ii)DSCで測定される融点が140℃〜170℃である。
低融点ポリヒドロキシブチレートの酸価が10ミリ当量/kg以下であることが好ましい。低融点ポリヒドロキシブチレートの末端が下記一般式(1)で示される構造を含むことが好ましい。
[−CO−O−R] (1)
(式中、Rは炭素数が1〜22の炭化水素基である。)、
ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)および/またはポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)であることが好ましい。また、本発明の第二は、低融点ポリヒドロキシブチレートの融点以上で溶融混錬する、前記に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法である。さらに、本発明の第三は、前記に記載のポリエステル樹脂組成物を含むポリエステル樹脂成形体である。
本発明によれば、ポリヒドロキシアルカノエートの欠点である結晶化の速度が著しく改善され、射出成形やブロー成形の成形加工における固化性が改善されて加工速度を向上することができる。
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
[ポリヒドロキシアルカノエート]
本発明に用いるPHAは、式(2):[−CHR−CH−CO−O−](式中、RはC2n+1で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数である。)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステルである。
前記PHAは、例えば、Alcaligenes eutrophusにAeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32株(ブダペスト条約に基づく国際寄託、国際寄託当局:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)、原寄託日:平成8年8月12日、平成9年8月7日に移管、寄託番号FERM BP−6038(原寄託FERM P−15786より移管))(J.Bacteriol.,179,4821(1997))等の微生物によって産生される。
本発明で用いられるPHAは、微生物から生産される微生物産生PHAから選択される1種以上である。
PHAは、3−ヒドロキシブチレートが80mol%以上からなる重合樹脂であることが好ましく、より好ましくは85mol%以上からなる重合樹脂であり、微生物によって生産された物が好ましい。具体例としては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)単独重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシプロピオネート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバリレート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3-ヒドロキシバリレートコ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘプタノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシノナノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシデカノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシウンデカノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)共重合樹脂等が挙げられる。この中でも、成形加工性および成形体物性の観点から、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)単独重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバリレート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバリレートコ−3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)共重合樹脂が好適に使用し得る。
さらに、PHAは、結晶化促進の効果が得られ易いことから、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)およびポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)の何れか一方、または、両方からなる重合樹脂であることが好ましい。
前記PHAにおいて、3−ヒドロキシブチレート(以下、3HBと称する場合がある)と、共重合しているコモノマー(例えば、3−ヒドロキシバリレート(以下、3HVと称する場合がある)、3−ヒドロキシヘキサノエート(以下、3HHと称する場合がある)、4−ヒドロキシブチレート(以下、4HBと称する場合がある))との構成比、即ち共重合樹脂中のモノマー比率としては、成形加工性および成形体品質等の観点から、3−ヒドロキシブチレート/コモノマー=97/3〜80/20(mol%/mol%)であることが好ましく、95/5〜85/15(mol%/mol%)であることがより好ましい。コモノマー比率が3mol%未満であると、成形加工温度と熱分解温度が近接するため成形加工し難い場合がある。コモノマー比率が20mol%を超えると、PHAの結晶化が遅くなるため生産性が悪化する場合がある。前記コモノマーは1種類であってもよいが、2種類以上を使用することもできる。前記コモノマーを2種類以上使用する場合であっても、共重合樹脂中のモノマー比率(3−ヒドロキシブチレート/コモノマー)の好ましい範囲は上記と同様である。
前記PHAの共重合樹脂中の各モノマー比率は、以下のようにガスクロマトグラフィーによって測定できる。乾燥PHA約20mgに、2mlの硫酸/メタノール混液(15/85(重量比))と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱して、PHA分解物のメチルエステルを得る。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生が止まるまで放置する。4mlのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、上清中のPHA分解物のモノマーユニット組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析することにより、共重合樹脂中の各モノマー比率を求められる。
前記ガスクロマトグラフとしては、島津製作所社製「GC−17A」を用い、キャピラリーカラムにはGLサイエンス社製「NEUTRA BOND−1」(カラム長:25m、カラム内径:0.25mm、液膜厚:0.4μm)を用いる。キャリアガスとしてHeを用い、カラム入口圧を100kPaとし、サンプルは1μl注入する。温度条件は、8℃/分の速度で初発温度100℃から200℃まで昇温し、さらに200〜290℃まで30℃/分の速度で昇温する。
本発明のPHAの重量平均分子量(以下、Mwと称する場合がある)は、20万〜250万が好ましく、25万〜200万がより好ましく、30万〜100万がさらに好ましい。重量平均分子量が20万未満では、機械物性等が劣る場合があり、250万を超えると、成形加工が困難となる場合がある。
前記重量平均分子量の測定方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(昭和電工社製「Shodex GPC−101」)を用い、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K−804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。この際、検量線は重量平均分子量31400、197000、668000、1920000のポリスチレンを使用して作成する。
[低融点ポリヒドロキシブチレート]
本発明に用いるポリヒドロキシブチレートは、(i)GPCで測定するポリスチレン換算の重量平均分子量が5,000〜50,000、および(ii)DSCで測定される融点が140℃〜170℃の条件を満たす低融点ポリヒドロキシブチレートである。
前記低融点ポリヒドロキシブチレートは、3−ヒドロキシブチレートを主単位とする重合体である。ここで、「主単位とする」とは、重合体を構成する総モノマー単位のうち、97.5mol%以上、好ましくは98mol%以上、更に好ましくは98.5mol%以上を3−ヒドロキシブチレートが占めていることをいう。
本発明に用いられるポリヒドロキシブチレートは、3−ヒドロキシブチレート単位からなるホモポリマーが最も好ましいが、3−ヒドロキシブチレート単位からなるホモポリマーに加えて、主に3−ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位を共重合させた共重合体であってもよい。
このような共重合可能な単位としては、例えば3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシバリレート、3−ヒドロキシカプロレート、3−ヒドロキシヘプタノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、ω−フルオロ−3−ヒドロキシヘプタノエート、ω−フルオロ−3−ヒドロキシノナノエート、ω−クロロ−3−ヒドロキシオクタノエート等の3−ヒドロキシアルカノエート;ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ(2−ヒドロキシブチレート)、ポリ(2−ヒドロキシイソブチレート)、ポリ(2−ヒドロキシ−2−メチルブチレート)、ポリ(2−ヒドロキシバリレート)、ポリ(2−ヒドロキシカプロエート)、ポリ(2−ヒドロキシ−2−エチルブチレート)等の2−ヒドロキシアルカノエート;4−ヒドロキシブチレート等の4−ヒドロキシアルカノエート;5−ヒドロキシバリレート等の5−ヒドロキシアルカノエート等が挙げられる。
前記低融点ポリヒドロキシブチレートは、ポリヒドロキシブチレートを特定の分子量にまで下げることによって得られる。そのような方法としては、例えば、微生物から生産される微生物産生ポリヒドロキシブチレートを酸もしくはアルカリ加水分解、又はメタノールやエタノールなどのアルコールとエステル交換反応させることによって得ることが出来る。特に、溶融加工中の劣化を低減できるため、エステル交換反応させることによって得ることが好ましい。
エステル交換反応は公知の方法で実施できる。すなわち、硫酸や塩酸などの酸、あるいは水酸化ナトリウムなどの塩基を触媒として、ポリヒドロキシブチレートとアルコールを反応させることによって得られる。
なお、ポリヒドロキシブチレートは、例えば、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)生産菌としては、1925年に発見されたBacillus megateriumが最初で、他にもカプリアビダス・ネケイター(Cupriavidus necator)(旧分類:アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus、ラルストニア・ユートロフア(Ralstonia eutropha))、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)などの天然微生物が知られており、これらの微生物ではポリヒドロキシブチレートが菌体内に蓄積されることによって産生される。
本発明に用いる低融点ポリヒドロキシブチレートの分子量(Mw)の上限値は50,000であり、好ましくは48,000であり、更に好ましくは45,000である。分子量が50,000より大きいと溶融粘度が高まるので均一微分散させ難くなる。分子量の下限値は5,000であり、好ましくは5,500であり、更に好ましくは6,000である。5,000より小さいと結晶性を失い液状になる場合があるので好ましくない。
また、本発明に用いる低融点ポリヒドロキシブチレートの融点の上限値は170℃であり、好ましくは168℃であり、更に好ましくは166℃である。融点が170℃より高いと低融点ポリヒドロキシブチレートを均一微分散するために高温を要するので、マトリクスとなるポリヒドロキシアルカノエートの劣化を招く場合があり好ましくない。融点の下限値は特にないが、140℃であり、好ましくは143℃であり、更に好ましくは145℃である。140℃より低いくらいに分子量が低くなると液状になる場合があり、制御が難しいので、140℃より低くする必要は無い。
低融点ポリヒドロキシブチレートは、マトリクスとなるポリヒドロキシアルカノエートの加工温度で溶融し、かつ粘度が低いので溶融混錬の剪断力を高くしなくてもポリヒドロキシアルカノエート中に均一に分散して、結晶化の効果を効率的に得ることが出来る。このため、加工中の劣化を低減することができ、これにより成形後に起こる機械物性の経時変化を抑制することができる。
ここで、ポリヒドロキシアルカノエートの加工温度とは、ポリヒドロキシアルカノエートの融点を含む、軟化または流動し可塑化可能となる温度をいう。
本発明における低融点ポリヒドロキシブチレートの使用量は、ポリヒドロキシアルカノエート100重量部に対して、0.1〜15重量部である。上記使用量は、0.3〜10重量部が好ましく、0.5〜8重量部がより好ましい。低融点ポリヒドロキシブチレートの使用量が0.1重量部未満では、結晶化を促進する効果が劣り、15重量部を超えると、成形体の引張伸びが低下する、成形体表面外観が悪化する、フィルムにした場合の透明性が損なわれるなど、物性が低くなる傾向がある。
(低融点ポリヒドロキシブチレートの酸価)
本発明に用いる低融点ポリヒドロキシブチレートの酸価は、結晶化の速度が著しく改善され、射出成形やブロー成形の成形加工における固化性が改善されて加工速度を向上することができれば特に制限されない。しかし、低融点ポリヒドロキシブチレートの酸価が10ミリ当量/kgより大きいとマトリクスとなるポリヒドロキシアルカノエートが、溶融加工中に分解劣化してしまい、成形後には目的とする機械物性などが保持できない場合がある。このため、低融点ポリヒドロキシブチレートの酸価は、10ミリ当量/kgを上限とし、好ましくは9ミリ当量/kgである。また、酸価の下限値は特にないがゼロである。
(低融点ポリヒドロキシブチレートの末端構造)
また、本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、低融点ポリヒドロキシブチレートの末端構造が、下記一般式(1)
[−CO−O−R] (1)
(式中、Rは炭素数が1〜22の炭化水素基である。)、
で示される構造を含むことが好ましい。
式(1)で表される低融点ポリヒドロキシブチレートは、ポリヒドロキシブチレートを
エステル交換反応させることによって、得ることができる。低融点ポリヒドロキシブチレートは、末端構造を式(1)で示されるものにすると、マトリクスとなるポリヒドロキシアルカノエートの溶融加工中の劣化を低減することができ、成形後の機械物性の安定性を高めることができる。式(1)で表される末端構造のうち、Rの炭素数は、1以上22以下が好ましい。また、式(1)で表される低融点ポリヒドロキシブチレートはポリエステル樹脂組成物中、0.1〜15重量部が好ましく、0.3〜10重量部がより好ましい。
[ポリエステル樹脂組成物の製造方法]
本発明にかかるポリエステル樹脂組成物は、ポリヒドロキシアルカノエートの融点以上にまで加熱し混錬できる装置であれば公知の溶融混錬機により容易に製造できる。例えば、ポリヒドロキシアルカノエートと低融点ポリヒドロキシブチレートと、さらに必要であれば他の成分とを溶融混練してペレット状とした後、成形に供する方法などが利用できる。
ペレット化するには、例えば、バンバリーミキサー、ロールミル、ニーダー、単軸又は多軸の押出機等の公知の装置を用い、適当な温度で加熱しながら機械的に混練することで、ペレット状に賦形することができる。その混練時の温度は、使用する重合体の溶融温度等に応じて調整すればよいが、ポリヒドロキシアルカノエートの結晶化を促進する本発明の効果を得るためには、185℃程度を上限とすることが好ましい。したがって、例えば100〜185℃程度でよい。また、溶融混練物の樹脂温度が低融点ポリヒドロキシブチレートの融点未満であると、低融点ポリヒドロキシブチレートの結晶化の効果が均一に得られない場合があるため、低融点ポリヒドロキシブチレートの融点以上の温度で混練するのがさらに好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、各種添加剤を含有しても良い。ここで添加剤とは、たとえば、滑剤、結晶核剤、可塑剤、加水分解抑制剤、酸化防止剤、離形剤、紫外線吸収剤、染料、顔料などの着色剤、無機充填剤等を目的に応じて使用できるが、それらの添加剤は、生分解性を有することが好ましい。
なお、本発明において、結晶核剤とは、ポリヒドロキシアルカノエートを結晶化する際の核として作用するものをいう。
他の添加剤としては、炭素繊維等の無機繊維や、人毛、羊毛等の有機繊維が挙げられる。また、竹繊維、パルプ繊維、ケナフ繊維や、類似の他の植物代替種、アオイ科フヨウ属1年草植物、シナノキ科一年草植物等の天然繊維も使用することが出来る。二酸化炭素削減の観点からは、植物由来の天然繊維が好ましく、特に、ケナフ繊維が好ましい。
[ポリエステル樹脂組成物からなる成形体]
本発明のポリエステル樹脂組成物からなる成形体の製造方法を以下に例示する。
前記方法によって作製されたペレットを、40〜80℃で十分に乾燥させて水分を除去した後、公知の成形加工方法で成形加工でき、任意の成形体を得ることができる。成形加工方法としては、例えば、フィルム成形、シート成形、射出成形、ブロー成形、ブロー成形、繊維の紡糸、押出発泡、ビーズ発泡等が挙げられる。
フィルム成形体の製造方法としては、例えば、Tダイ押出し成形、カレンダー成形、ロール成形、インフレーション成形が挙げられる。ただし、フィルム成形法はこれらに限定されるものではない。フィルム成形時の成形温度は140〜190℃が好ましい。また、本発明のポリエステル樹脂組成物から得られたフィルムは、加熱による熱成形、真空成形、プレス成形が可能である。
射出成形体の製造方法としては、例えば、熱可塑性樹脂を成形する場合に一般的に採用される射出成形法、ガスアシスト成形法、射出圧縮成形法等の射出成形法を採用することができる。また、その他目的に合わせて、上記の方法以外でもインモールド成形法、ガスプレス成形法、2色成形法、サンドイッチ成形法、PUSH−PULL、SCORIM等を採用することもできる。ただし、射出成形法はこれらに限定されるものではない。射出成形時の成形温度は140〜190℃が好ましく、金型温度は20〜80℃が好ましく、30〜70℃であることがより好ましい。
本発明の成形体は、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、食品産業、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野に好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲を限定されるものではない。
<製造例1>低融点ポリヒドロキシブチレートA1
(ポリヒドロキシブチレートの製造)
まず、重合度が高いポリヒドロキシブチレートは以下の方法で製造した。
種母培地の組成は1w/v%Meat−extract、1w/v%Bacto−Trypton、0.2w/v%Yeast−extract、0.9w/v%NaHPO・12HO、0.15w/v%KHPO、5×10−6w/v%カナマイシンとした。
前培養培地の組成は1.1w/v%NaHPO・12HO、0.19w/v%KHPO、1.29w/v%(NHSO、0.1w/v%MgSO・7HO、2.5w/v%パームWオレイン油、0.5v/v%微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v%FeCl・6HO、1w/v%CaCl・2HO、0.02w/v%CoCl2・6HO、0.016w/v%CuSO・5HO、0.012w/v%NiCl・6HOを溶かしたもの。)とした。
PHB生産培地の組成は0.385w/v%NaHPO・12HO、0.067w/v%KHPO、0.291w/v%(NHSO、0.1w/v%MgSO・7HO、0.5v/v%微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v%FeCl・6HO、1w/v%CaCl・2HO、0.02w/v%CoCl・6HO、0.016w/v%CuSO・5HO、0.012w/v%NiCl・6HOを溶かしたもの。)とした。炭素源はパーム核油を分別した低融点画分であるパーム核油オレインを単一炭素源として用いた。
Cupriavidus necator H16(ATCC17699)株のグリセロールストック(50μl)を種母培地(10ml)に接種して24時間培養し、1.8Lの前培養培地を入れた3Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製MDL−300型)に1.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度30℃、攪拌速度500rpm、通気量1.8L/minとし、pHは6.7〜6.8の間でコントロールしながら28時間培養した。pHコントロールには7%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。
PHB生産培養は6LのPHB生産培地を入れた10Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製MDL−1000型)に前培養種母を5.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度28℃、攪拌速度400rpm、通気量3.6L/minとし、pHは6.7〜6.8の間でコントロールした。pHコントロールには7%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。培養は約65時間行い、培養終了後、遠心分離によって菌体を回収、メタノールで洗浄、凍結乾燥し、乾燥菌体を得た。
得られた乾燥菌体約1gに100mlのクロロホルムを加え、室温で一昼夜攪拌して、菌体内のPHBを抽出した。菌体残渣をろ別後、エバポレーターで総容量が約30mlになるまで濃縮後、約90mlのヘキサンを徐々に加え、ゆっくり攪拌しながら、1時間放置した。析出した樹脂をろ別後、50℃で3時間真空乾燥し、ポリヒドロキシブチレートを得た。
(低融点ポリヒドロキシブチレートの製造)
ポリヒドロキシブチレート1gをクロロホルム50mlに溶解させた。硫酸/メタノール(15vol:85vol)混合溶液2.5mlを加えて、37℃で8時間撹拌することによって反応させた。反応後、クロロホルムの10倍量のメタノール中に溶液を注ぎ、樹脂を析出させた。
析出した樹脂をろ過により回収し、室温で恒量になるまで減圧乾燥を行った。
得られた樹脂である低融点ポリヒドロキシブチレート(A1)のポリスチレン換算のMwは7,200であった。
<製造例2>低融点ポリヒドロキシブチレートA2
37℃で3時間撹拌することによって反応させた以外は、製造例1と同様の方法で低融点ポリヒドロキシブチレート(A2)を製造した。得られた低融点ポリヒドロキシブチレート(A2)のポリスチレン換算のMwは45,200であった。
<製造例3>低融点ポリヒドロキシブチレートA3
製造例1と同じ方法で得られたポリヒドロキシブチレート1gをクロロホルム50mlに溶解させた。硫酸/エタノール(15vol:85vol)混合溶液2.5mlを加えて、40℃において4時間撹拌することによって反応させた。反応後、クロロホルムの10倍量のメタノール中に溶液を注ぎ、樹脂を析出させた。析出した樹脂をろ過により回収し、室温で恒量になるまで減圧乾燥を行った。得られた樹脂である低融点ポリヒドロキシブチレート(A3)のポリスチレン換算のMwは6,400であった。
<製造例4>低融点ポリヒドロキシブチレートA4
40℃で3時間撹拌することによって反応させた以外は、製造例1と同様の方法で低融点ポリヒドロキシブチレート(A4)を製造した。得られた樹脂である低融点ポリヒドロキシブチレートのポリスチレン換算のMwは17,100であった。
<製造例5>低融点ポリヒドロキシブチレートA5
製造例1と同じ方法で得られたポリヒドロキシブチレート1gをクロロホルム50mlに溶解させた。硫酸/ヘキサノール(15vol:85vol)混合溶液2.5mlを加えて、50℃において3時間撹拌することによって反応させた。反応後、クロロホルムの10倍量のメタノール中に溶液を注ぎ、樹脂を析出させた。析出した樹脂をろ過により回収し、室温で恒量になるまで減圧乾燥を行った。得られた樹脂である低融点ポリヒドロキシブチレート(A5)のポリスチレン換算のMwは27,600であった。
<製造例6>低融点ポリヒドロキシブチレートA6
製造例1と同じ方法で得られたポリヒドロキシブチレート1gをクロロホルム50mlに溶解させた。硫酸/ラウリルアルコール(ドデカノール)(15vol:85vol)混合溶液2.0mlを加えて、60℃において2時間撹拌することによって反応させた。反応後、クロロホルムの10倍量のメタノール中に溶液を注ぎ、樹脂を析出させた。析出した樹脂をろ過により回収し、室温で恒量になるまで減圧乾燥を行った。得られた樹脂である低融点ポリヒドロキシブチレート(A6)のポリスチレン換算のMwは28,000であった。
<製造例7>低融点ポリヒドロキシブチレートA7
製造例1と同じ方法で得られたポリヒドロキシブチレート1gをクロロホルム50mlに溶解させた。硫酸/ステアリルアルコール(15vol:85vol)混合溶液2.0mlを加えて、60℃において2時間撹拌することによって反応させた。反応後、クロロホルムの10倍量のメタノール中に溶液を注ぎ、樹脂を析出させた。析出した樹脂をろ過により回収し、室温で恒量になるまで減圧乾燥を行った。得られた樹脂である低融点ポリヒドロキシブチレート(A7)のMwは30,700であった。
<製造例8>低分子量ポリヒドロキシブチレート(C1)
37℃で20時間撹拌することによって反応させた以外は、製造例1と同様の方法で低分子量ポリヒドロキシブチレート(C1)を製造した。ポリスチレン換算のMwは3,400であった。製造例8で得られた低分子量ポリヒドロキシブチレートは室温で液状であった。
<製造例9>ポリヒドロキシブチレート(C2)
37℃で1時間撹拌することによって反応させ、ポリスチレン換算のMwは152,500のポリヒドロキシブチレート(C2)を得た。製造例9で得られたポリヒドロキシブチレートの融点は174.3℃であった。
<製造例10>酸価が高い低融点ポリヒドロキシブチレート(C3)
製造例1と同じ方法で得られたポリヒドロキシブチレート1gをクロロホルム120mLに溶解させた。3規定に調製した水酸化カリウム(KOH)水溶液40mLと、相間移動触媒として18−クラウン−6−エーテル800mgを、ポリヒドロキシブチレート/クロロホルム溶液に添加し、37℃において24時間撹拌した。反応後、分液ロートにてクロロホルム相を回収し、硫酸マグネシウム(無水)50mgを添加して脱水後、ろ過にした。ろ液を3倍程度まで濃縮後、5倍量のメタノール中に注ぎ、樹脂を析出させた。樹脂をろ過により回収し、室温で恒量になるまで減圧乾燥を行った。得られた樹脂である低分子量ポリヒドロキシブチレート(C3)のポリスチレン換算のMwは32,600であった。製造例10で得られたポリヒドロキシブチレートの融点は158℃であった。
<製造例11>低分子量PHBV(C4)
シグマ・アルドリッチ社製のポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバリレート)(PHBV)(3−ヒドロキシバリレート(3HV)組成は5mol%)1gをクロロホルム50mlに溶解させた。硫酸とメタノール(15vol:85vol)混合溶液2.5mlを加えて、37℃で8時間撹拌することによって反応させた。反応後、クロロホルムの10倍量のメタノール中に溶液を注ぎ、低分子量のPHBV(C4)を析出させた。析出した樹脂をろ過により回収し、室温で恒量になるまで減圧乾燥を行った。得られた樹脂である低分子量PHBVのポリスチレン換算のMwは34,700であった。製造例11で得られた低分子量PHBVの融点は160.8℃であった。
<製造例12>ポリヒドロキシアルカノエート(B1)
培養生産にはKNK−005株(米国特許US7384766参照)を用いた。
種母培地の組成は1w/v% Meat−extract、1w/v% Bacto−Tryptone、0.2w/v% Yeast−extract、0.9w/v% NaHPO・12HO、0.15w/v% KHPO、(pH6.8)とした。
前培養培地の組成は1.1w/v% NaHPO・12HO、0.19w/v% KHPO、1.29w/v% (NHSO、0.1w/v% MgSO・7HO、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの。)、とした。炭素源はパーム油を10g/Lの濃度で一括添加した。
PHA生産培地の組成は0.385w/v% NaHPO・12HO、0.067w/v% KHPO、0.291w/v% (NHSO、0.1w/v% MgSO・7HO、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N 塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの。)、0.05w/v% BIOSPUREX200K(消泡剤:コグニスジャパン社製)とした。
まず、KNK−005株のグリセロールストック(50μl)を種母培地(10ml)に接種して24時間培養し種母培養を行なった。次に種母培養液を1.8Lの前培養培地を入れた3Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製MDL−300型)に1.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度33℃、攪拌速度500rpm、通気量1.8L/minとし、pHは6.7〜6.8の間でコントロールしながら28時間培養し、前培養を行なった。pHコントロールには14%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。
次に、前培養液を6Lの生産培地を入れた10Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製MDS−1000型)に1.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度28℃、攪拌速度400rpm、通気量6.0L/minとし、pHは6.7〜6.8の間でコントロールした。pHコントロールには14%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。炭素源としてパーム油、を使用した。培養は64時間行い、培養終了後、遠心分離によって菌体を回収、メタノールで洗浄、凍結乾燥し、乾燥菌体重量を測定した。
得られた乾燥菌体1gに100mlのクロロホルムを加え、室温で一昼夜攪拌して、菌体内のPHAを抽出した。菌体残渣をろ別後、エバポレーターで総容量が30mlになるまで濃縮後、90mlのヘキサンを徐々に加え、ゆっくり攪拌しながら、1時間放置した。析出したPHAをろ別後、50℃で3時間真空乾燥し、PHAを得た。得られたPHAの3HH組成分析は以下のようにガスクロマトグラフィーによって測定した。乾燥PHA20mgに2mlの硫酸−メタノール混液(15:85)と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱して、PHA分解物のメチルエステルを得た。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生がとまるまで放置した。4mlのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、遠心して、上清中のポリエステル分解物のモノマーユニット組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析した。ガスクロマトグラフは島津製作所GC−17A、キャピラリーカラムはGLサイエンス社製NEUTRA BOND−1(カラム長25m、カラム内径0.25mm、液膜厚0.4μm)を用いた。キャリアガスとしてHeを用い、カラム入口圧100kPaとし、サンプルは1μlを注入した。温度条件は、初発温度100から200℃まで8℃/分の速度で昇温、さらに200から290℃まで30℃/分の速度で昇温した。上記条件にて分析した結果、化学式(2)に示すようなPHA、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(以下、P(3HB−co−3HH)と称する場合がある。)であった。3−ヒドロキシヘキサノエート(3HH)組成は5.6mol%であった。GPCで測定した重量平均分子量Mwは61万であった。製造例12で得られたP(3HB−co−3HH)の融点は141℃であった。
<製造例13>ポリヒドロキシアルカノエート(B2)
KNK−005株の代わりにKNK−631株(WO2009/145164参照)を用い、炭素源としてパーム核油を用いた以外は、製造例1と同様の方法でポリヒドロキシアルカノエート、P(3HB−co−3HH)を得た。重量平均分子量Mwは65万、3−ヒドロキシヘキサノエート(3HH)組成は11.4mol%であった。製造例13で得られたP(3HB−co−3HH)の融点は130℃であった。
(酸価の測定)
サンプル約0.5gを精秤し、試験管に入れた。次いで、約195℃に加熱したベンジルアルコール(試薬特級)25ml中で溶解させ、冷却後、2mlのエタノールを加えることによってサンプル溶液を調整し、サンプル溶液に0.01規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定した。ベンジルアルコールのみのブランク値をもとめ、下記式から酸価を求めた。測定した各酸価を、表1に示した。
酸価(μeq/g)=(A−B)×0.01×F×1000/W
ただし、A:測定滴定量(ml)
B:ブランク滴定量(ml)
F:0.01規定水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価
W:サンプル樹脂量(g)
(融点の測定)
融点の測定には日立ハイテクサイエンス社の示差走査熱量計(DSC7020)を用いた。試料約5mgを精秤し、昇温速度10℃/分で得られる吸熱ピークを融点とした。測定した各融点を、表1に示した。
Figure 0006172795
<実施例1〜11、比較例1〜4>
(ポリエステル樹脂組成物の製造)
表2に示した配合で、小型2軸混錬機(レオ・ラボ社製、Xplore MC5)を用いて、設定温度160℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬してポリエステル樹脂組成物を得た。これらの混練機内の樹脂温度は、いずれも実測値として168〜172℃であった。樹脂温度はK型熱電対を吐出口に挿入して測定した。樹脂温度は168℃〜172℃であった。当該ポリエステル樹脂組成物はダイスからストランド状に引き取り、ペレット状にカットした。
Figure 0006172795
(結晶化の評価)
偏光顕微鏡で結晶化を目視評価した。まず、得られたポリエステル樹脂組成物をLINKAM社製 顕微鏡用急冷加熱ステージLK300Bを用いて、190℃で溶融させて5分間保持した。その後、60℃に急冷した。急冷した直後から、偏光顕微鏡にて倍率400倍で目視観察を行い、結晶が認められた時間を結晶開始時間とし、また結晶成長が完了した時間を結晶化完了時間とした。測定は3回繰り返し、値は3回の平均値とした。結果は表2に示した。ここで、「結晶成長が完了した時間」とは、400倍の偏光顕微鏡を用いて目視で観察し、球晶がこれ以上大きくならないと判断した時間のことをいう。
表2から判るように、低融点ポリヒドロキシブチレートがない場合(比較例1)、ポリヒドロキシブチレートの分子量が低すぎて融点をもたず液状である場合(比較例2)は結晶化が開始するにも完了するにも長時間を要した。また、ポリヒドロキシブチレートの分子量が高すぎる場合は(比較例3)、結晶化が開始する時間は比較的早いが、均一に分散していないために、結晶化効果が不均一になるために結晶化が完了するのに長時間を要した。また、PHBVの低分子量体を添加した場合は(比較例4)、結晶化が開始するのも完了するのにも長時間要した。
<実施例12、13>
表3に示す配合で、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を作製した。
Figure 0006172795
(溶融熱安定性)
日立ハイテクサイエンス社の示差走査熱量計(DSC7020)を用い、得られたポリエステル樹脂組成物を、175℃で、5分間、10分間、20分間保持し、それぞれについて、GPCで重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表3に示した。
表3に示したように、酸価が10ミリ当量/kg以下であることによってポリヒドロキシアルカノエート樹脂の劣化を低減するという効果が得られることがわかる。
<実施例14、比較例5〜7>
表4に示す配合で、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を作製し、結晶化を評価した。結果を表4に示した。
Figure 0006172795
表4から判るように、低融点ポリヒドロキシブチレートがない場合(比較例5)、ポリヒドロキシブチレートの分子量が低すぎて融点をもたず液状である場合(比較例6)は結晶化が開始するにも完了するにも長時間を要した。また、ポリヒドロキシブチレートの分子量が高すぎる場合は(比較例7)、結晶化が開始する時間は比較的早いが、均一に分散していないために、結晶化効果が不均一になるために結晶化完了に長時間を要した。
<実施例15、比較例8〜10>
表5に示す配合で、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を作製し、結晶化を評価した。結果を表5に示した。
ここで、表5中ポリヒドロキシアルカノエートB3は、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4-ヒドロキシブチレート)(ECOMANN社製、EM5400)(4−ヒドロキシブチレート組成は14.4mol%、重量平均分子量Mwは109万、融点は149℃)を用いた。
Figure 0006172795
表5から判るように、低融点ポリヒドロキシブチレートがない場合(比較例8)、ポリヒドロキシブチレートの分子量が低すぎて融点をもたず液状である場合(比較例9)は結晶化が開始するにも完了するにも長時間を要した。また、ポリヒドロキシブチレートの分子量が高すぎる場合は(比較例10)、結晶化が開始する時間は比較的早いが、均一に分散していないために、結晶化効果が不均一になるために結晶化が完了するのに長時間を要した。
<実施例16、比較例11〜13>
(ポリエステル樹脂組成物の製造)
100重量部のポリヒドロキシアルカノエート原料B1に対して、1重量部の低融点ポリヒドロキシブチレートを、同方向噛合型2軸押出機(東芝機械社製:TEM26)を用いて、設定温度140〜160℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬してポリエステル樹脂組成物を得た。樹脂温度はダイスから出てくる溶融した樹脂を直接K型熱電対で測定した。当該ポリエステル樹脂組成物はダイスからストランド状に引き取り、ペレット状にカットした。
(Tダイ成形によるシート生産性)
シート生産性は次のように評価した。得られたペレットを原料として、Tダイシート成形機(東洋精機製作所社製:ラボプラストミル)を用い、ダイスリップ厚=250μm、ダイスリップ幅=150mm、シリンダー設定温度=120〜140℃、ダイス設定温度=150〜160℃、冷却ロール設定温度60℃にて、100mm幅のシートを成形した。Tダイからシート状にでてきた溶融樹脂は冷却ロールに接触することで結晶化し、厚さ100μmのシートに成形される。樹脂が十分に結晶化した場合は、成形されたシートは冷却ロールから離型され、巻き取られるが、シートの線速が早まると冷却ロールに接触している時間が短くなるので結晶化せずに十分に固化しないのでロールから離型できなくなる。シートが離型できる最大のシート線速をシート生産性と定義した。線速値が高いほどシート生産性は優れることを意味する。なお、樹脂温度はTダイから出てくる樹脂を直接K型熱電対で測定した。結果は表6に示した。
Figure 0006172795
表6から判るように、低融点ポリヒドロキシブチレートがない場合(比較例11)、ポリヒドロキシブチレートの分子量が低すぎて融点をもたず液状である場合(比較例12)、またポリヒドロキシブチレートの分子量が高すぎる場合(比較例13)のシート生産性は低かった。

Claims (6)

  1. ポリヒドロキシアルカノエートと低融点ポリヒドロキシブチレートを含有するポリエステル樹脂組成物であって、
    低融点ポリヒドロキシブチレートの含有量は、ポリヒドロキシアルカノエート100重量部に対して0.1〜15重量部であり、
    該低融点ポリヒドロキシブチレートが以下(i)〜(ii)の条件を満たす、ポリエステル樹脂組成物。
    (i)GPCで測定するポリスチレン換算の重量平均分子量が5,000〜50,000である。
    (ii)DSCで測定される融点が140℃〜170℃である。
  2. 低融点ポリヒドロキシブチレートの酸価が10ミリ当量/kg以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
  3. 低融点ポリヒドロキシブチレートの末端が下記一般式(1)
    [−CO−O−R] (1)
    (式中、Rは炭素数が1〜22の炭化水素基である。)、
    で示される構造を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物。
  4. ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)および/またはポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のポリエステル樹脂組成物。
  5. 低融点ポリヒドロキシブチレートの融点以上で溶融混錬することを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載のポリエステル樹脂組成物を成形してなるポリエステル樹脂成形体。
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