JPWO2004033700A1 - ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸の凝集方法 - Google Patents
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Abstract
ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸粒子を凝集させ、その粒度を高める方法を提供する。本発明は、ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸粒子を、親水性溶媒、又は、水と親水性溶媒との混合液体に懸濁し、該懸濁液の沸点以下の温度で攪拌することからなる、ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸の凝集方法である。
Description
本発明はポリ−3−ヒドロキシアルカン酸粒子を凝集させる方法に関する。
ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸(以後PHAと称す)は多くの微生物種の細胞にエネルギー蓄積物質として生成、蓄積される熱可塑性ポリエステルであり、生分解性を有している。現在プラスチック廃棄物は、焼却、埋立などにより処理されているが、これらの処理方法には地球の温暖化や埋立地の地盤弛緩等の問題点がある。そのためプラスチックリサイクルへの社会意識の高まりとともに、リサイクルシステム化が進みつつある。しかし、リサイクル可能な用途には限りがあり、実際には、プラスチック廃棄処理方法としては、焼却、埋立、リサイクルだけでは対応しきれず、自然界に放置されたままになるものも多いのが現状である。そこで、廃棄後は自然界の物質循環に取り込まれ、分解生成物が有害とならないPHAの様な生分解性プラスチックが注目されており、その実用化が切望されている。特に、微生物が菌体内で生成蓄積するPHAは、自然界の炭素循環プロセスに取り込まれることから生態系への悪影響がほとんどないと予想されている。また、医療分野においても、回収不要のインプラント材料や薬物担体としての利用が可能と考えられる。
微生物が生成するPHAは、通常直径1μm以下の顆粒体で菌体内に蓄積されるため、このPHAをプラスチックとして利用するためには、菌体内からPHAを分離して取り出すという工程が必要である。PHAを微生物菌体から分離精製する既知の方法として、大別すると、PHAが可溶である有機溶媒を用いて菌体からPHAを抽出する方法と、PHA以外の菌体構成成分を破砕もしくは可溶化させて除くことによりPHAを得る方法に分けられる。
有機溶媒による抽出を利用したPHAの分離精製方法では、PHAが可溶である溶媒として、例えば1,2−ジクロロエタンやクロロホルムといったハロゲン化炭化水素を用いて抽出する方法(特開昭55−118394号公報、特開昭57−65193号公報参照)、ジオキサン(特開昭63−198991号公報参照)またはプロパンジオール(特開平02−69187号公報参照)またはテトラヒドロフラン(特開平07−79788号公報参照)のような親水性溶媒を用いた抽出方法も提案されている。しかしこれらの方法でPHAを抽出した溶媒層は極めて粘稠性が高く、溶解しなかった菌体残渣とPHAを含む溶媒層との分離が非常に困難である。また溶媒の使用量が膨大なため、コストがかさむといった欠点がある。
一方PHA以外の菌体構成成分を、機械的処理、化学的処理、酵素的処理で可溶化させて除くことによりPHAを得る方法として、例えばJ.Gen.Microbiology,1958年,第19巻,p.198−209には、菌体懸濁液を次亜塩素酸ナトリウムで処理してPHA以外の菌体構成成分を可溶化しPHAを得る方法が記載されている。
特公平04−61638号公報には、PHAを含有する微生物菌体懸濁液を100℃以上で熱処理することで菌体構造を破壊し、次いでタンパク質分解酵素処理と、リン脂質分解酵素処理あるいは過酸化水素処理とを組み合わせてPHA以外の菌体構成成分を可溶化してPHAを得る方法が記載されている。
PHA含有菌体を界面活性化剤で処理した後に、菌体から放出された核酸を過酸化水素で処理して分解し、PHAを分離する方法も提案されている(特表平08−502415号公報参照)。
物理的処理方法としてPHA含有微生物菌体を高圧ホモジナイザーで破砕してPHAを分離する方法が提案されている(特開平07−177894号公報、特開平07−31488号公報参照)。
また、PHA含有微生物懸濁液にアルカリを添加して加熱し、細胞を破砕してPHAを分離する方法も提案されている(特開平07−31487号公報参照)。さらにアルカリ添加後に物理的破砕を行う方法がいくつか提案されている(Bioseparation,1991年,第2巻,p.95−105、特開平07−31489号公報参照)。
またPHA含有微生物懸濁液をpH2未満の酸性に調整し、50℃以上でPHA以外の菌体構成成分を可溶化してPHAを得る方法も提案されている(特開平11−266891号公報参照)。
このようにして製造されるPHAは、微生物菌体内で作られた直径1μm以下の微細な粒子そのままの形で得られる。これらのような微細な粒子を液体媒質から分離することは、より粒子が大きい場合に比べてしばしば困難である。
さらに、微粒子は爆発に必要なエネルギーが低いために粉塵爆発を起こす危険性、吸引した場合の肺での蓄積などが考えられ、取扱に注意が必要である。
このためPHAを凝集させる技術が検討されており、加熱、アルカリ金属塩による凝集、浮上・凝集させる方法などが開発されている。
加熱させて凝集させる方法としては、ポリ−3−ヒドロキシブチレート(以下PHB)含有懸濁液をPHBの融点付近まで加熱して凝集させる方法がある(Bailey,Neil A.;George,Neil;Niranjan,K.;Varley,Julie.Biochemical Engineering group,University Reading,「IChemE Res.Event,Eur.Conf.Young Res.Chem.Eng.」,(英国),第2版,Institution of Chemical Engineers,1996年,第1巻,p.196−198参照)。また、特表平07−509131号公報では、水に懸濁したPHBとD−3−ヒドロキシバレレート(3HV)の共重合体(以下PHBV)に、適切な温度と圧力の蒸気を直接注入し、120〜160℃で加熱攪拌することによりPHBVの粒度を高める方法を提案している。これらの方法は加熱・加圧された蒸気を注入して、非常に高い温度まで加熱する必要がある。このため、高温の加熱・保温が可能であり、さらに耐圧性を持った特別な装置を設置する必要がある。またかなりの高温で処理するために、分子量の低下が起こる可能性がある。
また特開平04−264125号公報では、PHB含有菌体からPHBを塩化メチレンやクロロホルム、トリクロロエチレンのように水と混和しないかつ沸点が100℃未満であるような有機溶媒で、含水下、加熱攪拌を行いながら抽出し、抽出されたPHBを含む該有機相を熱水中に注入することで、PHBをフロック状態で析出させて回収する方法が提案されている。この方法はPHBの晶析方法の一つであって、実質的にはPHBを凝集させているわけではない。また、この方法は操作が非常に複雑であり、工業化は困難である。さらには乾燥菌体重量当たり、10〜30倍の有機溶剤が必要であり、加えて近年、環境保護の観点から有機ハロゲン化合物の使用は制限される方向にあるので、これらの使用は望ましくない。
アルカリ金属塩を添加してPHAを凝集させる方法として、2価の陽イオンで凝集させる方法(J.Biotechnol.,1998年,第65(2,3)巻,p.173−182)が知られており、特に塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウムをPHB懸濁液に添加して凝集させ、PHBを分離する方法が報告されている(特表平05−507410号公報)。しかし、この方法ではポリマーに金属塩が混入することになり、製品によっては望ましくない。
発明の要約
本発明の目的は、従来技術における上記の課題を解決し、PHAの分子量低下を抑制しながら、純度が高く、取扱が容易なPHA凝集体を得る方法を提供することにある。
本発明者らは、PHA凝集体を工業的に有利に得る方法を鋭意検討した。その結果、微細なPHA粒子を、親水性溶媒、又は、水と親水性溶媒との混合液体に懸濁させ、該懸濁液の沸点以下の温度で攪拌することでPHA粒子が凝集し、純度が高く、濾過性、取扱に優れたPHA凝集体が得られることを見いだし、本発明に達した。
本発明は、PHA粒子を、親水性溶媒、又は、水と親水性溶媒との混合液体に懸濁させ、攪拌することによって凝集させることからなる。親水性溶媒、又は、水と親水性溶媒との混合液体に懸濁させたPHAを凝集させる温度は該懸濁液の沸点以下であるが、より効率的に、十分に凝集したPHAを得るために、好ましくは該懸濁液の沸点で保温、攪拌する。本発明の凝集方法によると、PHAに含まれる不純物(脂質など)を溶解させて除去することができるので、PHAの純度を高めることが可能となる。さらに本発明の方法では、実施するのに特別な装置が必要となる高温や高圧の条件はかならずしも必要ではない。
微生物が生成するPHAは、通常直径1μm以下の顆粒体で菌体内に蓄積されるため、このPHAをプラスチックとして利用するためには、菌体内からPHAを分離して取り出すという工程が必要である。PHAを微生物菌体から分離精製する既知の方法として、大別すると、PHAが可溶である有機溶媒を用いて菌体からPHAを抽出する方法と、PHA以外の菌体構成成分を破砕もしくは可溶化させて除くことによりPHAを得る方法に分けられる。
有機溶媒による抽出を利用したPHAの分離精製方法では、PHAが可溶である溶媒として、例えば1,2−ジクロロエタンやクロロホルムといったハロゲン化炭化水素を用いて抽出する方法(特開昭55−118394号公報、特開昭57−65193号公報参照)、ジオキサン(特開昭63−198991号公報参照)またはプロパンジオール(特開平02−69187号公報参照)またはテトラヒドロフラン(特開平07−79788号公報参照)のような親水性溶媒を用いた抽出方法も提案されている。しかしこれらの方法でPHAを抽出した溶媒層は極めて粘稠性が高く、溶解しなかった菌体残渣とPHAを含む溶媒層との分離が非常に困難である。また溶媒の使用量が膨大なため、コストがかさむといった欠点がある。
一方PHA以外の菌体構成成分を、機械的処理、化学的処理、酵素的処理で可溶化させて除くことによりPHAを得る方法として、例えばJ.Gen.Microbiology,1958年,第19巻,p.198−209には、菌体懸濁液を次亜塩素酸ナトリウムで処理してPHA以外の菌体構成成分を可溶化しPHAを得る方法が記載されている。
特公平04−61638号公報には、PHAを含有する微生物菌体懸濁液を100℃以上で熱処理することで菌体構造を破壊し、次いでタンパク質分解酵素処理と、リン脂質分解酵素処理あるいは過酸化水素処理とを組み合わせてPHA以外の菌体構成成分を可溶化してPHAを得る方法が記載されている。
PHA含有菌体を界面活性化剤で処理した後に、菌体から放出された核酸を過酸化水素で処理して分解し、PHAを分離する方法も提案されている(特表平08−502415号公報参照)。
物理的処理方法としてPHA含有微生物菌体を高圧ホモジナイザーで破砕してPHAを分離する方法が提案されている(特開平07−177894号公報、特開平07−31488号公報参照)。
また、PHA含有微生物懸濁液にアルカリを添加して加熱し、細胞を破砕してPHAを分離する方法も提案されている(特開平07−31487号公報参照)。さらにアルカリ添加後に物理的破砕を行う方法がいくつか提案されている(Bioseparation,1991年,第2巻,p.95−105、特開平07−31489号公報参照)。
またPHA含有微生物懸濁液をpH2未満の酸性に調整し、50℃以上でPHA以外の菌体構成成分を可溶化してPHAを得る方法も提案されている(特開平11−266891号公報参照)。
このようにして製造されるPHAは、微生物菌体内で作られた直径1μm以下の微細な粒子そのままの形で得られる。これらのような微細な粒子を液体媒質から分離することは、より粒子が大きい場合に比べてしばしば困難である。
さらに、微粒子は爆発に必要なエネルギーが低いために粉塵爆発を起こす危険性、吸引した場合の肺での蓄積などが考えられ、取扱に注意が必要である。
このためPHAを凝集させる技術が検討されており、加熱、アルカリ金属塩による凝集、浮上・凝集させる方法などが開発されている。
加熱させて凝集させる方法としては、ポリ−3−ヒドロキシブチレート(以下PHB)含有懸濁液をPHBの融点付近まで加熱して凝集させる方法がある(Bailey,Neil A.;George,Neil;Niranjan,K.;Varley,Julie.Biochemical Engineering group,University Reading,「IChemE Res.Event,Eur.Conf.Young Res.Chem.Eng.」,(英国),第2版,Institution of Chemical Engineers,1996年,第1巻,p.196−198参照)。また、特表平07−509131号公報では、水に懸濁したPHBとD−3−ヒドロキシバレレート(3HV)の共重合体(以下PHBV)に、適切な温度と圧力の蒸気を直接注入し、120〜160℃で加熱攪拌することによりPHBVの粒度を高める方法を提案している。これらの方法は加熱・加圧された蒸気を注入して、非常に高い温度まで加熱する必要がある。このため、高温の加熱・保温が可能であり、さらに耐圧性を持った特別な装置を設置する必要がある。またかなりの高温で処理するために、分子量の低下が起こる可能性がある。
また特開平04−264125号公報では、PHB含有菌体からPHBを塩化メチレンやクロロホルム、トリクロロエチレンのように水と混和しないかつ沸点が100℃未満であるような有機溶媒で、含水下、加熱攪拌を行いながら抽出し、抽出されたPHBを含む該有機相を熱水中に注入することで、PHBをフロック状態で析出させて回収する方法が提案されている。この方法はPHBの晶析方法の一つであって、実質的にはPHBを凝集させているわけではない。また、この方法は操作が非常に複雑であり、工業化は困難である。さらには乾燥菌体重量当たり、10〜30倍の有機溶剤が必要であり、加えて近年、環境保護の観点から有機ハロゲン化合物の使用は制限される方向にあるので、これらの使用は望ましくない。
アルカリ金属塩を添加してPHAを凝集させる方法として、2価の陽イオンで凝集させる方法(J.Biotechnol.,1998年,第65(2,3)巻,p.173−182)が知られており、特に塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウムをPHB懸濁液に添加して凝集させ、PHBを分離する方法が報告されている(特表平05−507410号公報)。しかし、この方法ではポリマーに金属塩が混入することになり、製品によっては望ましくない。
発明の要約
本発明の目的は、従来技術における上記の課題を解決し、PHAの分子量低下を抑制しながら、純度が高く、取扱が容易なPHA凝集体を得る方法を提供することにある。
本発明者らは、PHA凝集体を工業的に有利に得る方法を鋭意検討した。その結果、微細なPHA粒子を、親水性溶媒、又は、水と親水性溶媒との混合液体に懸濁させ、該懸濁液の沸点以下の温度で攪拌することでPHA粒子が凝集し、純度が高く、濾過性、取扱に優れたPHA凝集体が得られることを見いだし、本発明に達した。
本発明は、PHA粒子を、親水性溶媒、又は、水と親水性溶媒との混合液体に懸濁させ、攪拌することによって凝集させることからなる。親水性溶媒、又は、水と親水性溶媒との混合液体に懸濁させたPHAを凝集させる温度は該懸濁液の沸点以下であるが、より効率的に、十分に凝集したPHAを得るために、好ましくは該懸濁液の沸点で保温、攪拌する。本発明の凝集方法によると、PHAに含まれる不純物(脂質など)を溶解させて除去することができるので、PHAの純度を高めることが可能となる。さらに本発明の方法では、実施するのに特別な装置が必要となる高温や高圧の条件はかならずしも必要ではない。
図1は、PHBH凝集体の走査型電子顕微鏡写真(倍率2,000倍)を示す。
図2は、1個のPHBH凝集体の走査型電子顕微鏡写真(倍率5,000倍)を示す。
図3は、PHBH凝集体の走査型電子顕微鏡写真(倍率50,000倍)を示す。
発明の詳細な開示
本発明におけるPHAとは、ヒドロキシアルカン酸の重合体の総称である。ヒドロキシアルカン酸成分としては特に限定されないが、具体的には、D−3−ヒドロキシブチレート(以下3HB)のホモポリマーや、3HBと他の3−ヒドロキシアルカン酸との共重合体、またはD−3−ヒドロキシヘキサノエート(以下3HH)と他のD−3−ヒドロキシアルカン酸との共重合体などが挙げられる。さらに、3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバレレート、3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシヘプタノエートおよび3−ヒドロキシオクタノエートからなる群より選択される少なくとも2種のモノマーから構成される共重合体なども挙げられる。なかでもモノマー成分として3HHを含む重合体、例えば、3HBと3HHとの2成分共重合体(PHBH)(Macromolecules,28,4822−4828(1995))または、3HBとD−3−ヒドロキシバレレート(以下3HV)と3HHとの3成分共重合体(PHBVH)(特許第277757号,特開平08−289797号)が、得られるポリエステルの物性の面からより好ましい。ここで3HBと3HHの2成分共重合体PHBHを構成する各モノマーユニットの組成比については特に限定されるものではないが、3HHユニットを1〜99モル%といった組成比のものが好適である。また、3HBと3HVと3HHとの3成分共重合体PHBVHを構成する各モノマーユニットの組成比については特に限定されるものではないが、例えば、3HBユニットの含量は1〜95モル%、3HVユニットの含量は1〜96モル%、3HHユニットの含量は1〜30モル%といった範囲のものが好適である。
本発明で使用する親水性溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、iso−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノールなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトニトリルやプロピオニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミドやアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ピペリジンなどが挙げられる。好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、iso−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、プロピオニトリルなどが除去性の面などから好適である。さらに好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、アセトンなどが入手が容易であることから好ましい。さらに好ましくは、メタノール、エタノール、アセトンである。
懸濁液中のPHAの濃度としては特に限定されないが、好ましくは1g/L以上、より好ましくは10g/L以上、さらに好ましくは30g/L以上である。また、好ましくは500g/L以下、より好ましくは300g/L以下、さらに好ましくは200g/L以下である。PHA濃度が極端に高い場合、懸濁液の粘度が増し、実質的に非流動性となる傾向がある。
懸濁液は、その媒質として、親水性溶媒のみからなるものであってもよいし、水と親水性溶媒との混合液体からなるものであってもよい。混合液体中の親水性溶媒の濃度としては、使用する親水性溶媒の水への溶解度以下であれば特に限定されないが、より十分な凝集効果を得るために、好ましくは10%v/v以上、より好ましくは20%v/v以上である。
本発明の凝集方法においては、PHA粒子を、親水性溶媒、又は、水と親水性溶媒との混合液体に懸濁させてなる懸濁液を、該懸濁液の沸点以下の温度で攪拌することによって、PHA粒子を凝集させる。攪拌する手段としては、攪拌槽など、乱流を生じさせるものが挙げられるが、特に限定されるものではない。
攪拌時の温度は、室温以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、更には60℃以上が好ましいが、凝集の効率性の観点から、懸濁液の沸点に近い温度ほど好ましく、懸濁液の沸点が最も好ましい。本願明細書において、懸濁液の沸点とは、懸濁液が沸騰を開始する温度のことをいう。本発明の方法では、一般的に100℃以下でPHA粒子を凝集させることができる。さらに本発明の凝集方法は、加圧下で行ってもよいが、加圧する必要はなく、常圧下で行うことができる。
凝集に要する時間は温度や濃度などの条件によって異なるが、一般に数分〜数時間程度で十分に凝集を起こさせることができる。
本発明の凝集方法によって、PHA凝集体の粒径を高めることが可能となる。例えば、体積平均直径が20μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上の凝集体を得ることができる。上限は特に限定されないが、体積平均直径が1000μm以下、好ましくは500μm以下の凝集体を得ることができる。粒径の増大に伴い濾過による回収が容易になり、工業生産において設備費が軽減できることになる。
本発明の凝集方法は、微生物によって産生されたPHAを当該微生物菌体から分離精製してなるPHAに対して、好適に適用することができる。この場合、少なくともPHA粒子がお互いに懸濁液中で接触しうるのに十分な程度に、粒子を取り巻く菌体構成物質が分解されている必要がある。
最初に回収されたPHA粒子が可溶性の菌体構成物質及び分解生成物その他PHA以外の物質で汚染されている場合は、特にそれらを第2液体媒質に再懸濁させ、攪拌による洗浄、化学処理などの後続加工(たとえば漂白剤、たとえば過酸化水素、あるいは次亜塩素酸ソーダによる処理)を行い、粒子をこの新たな液体媒質から回収することも可能である。本発明の凝集方法は、このプロセスのいかなる時点で行うこともできる。
上記微生物は、細胞内にPHAを蓄積している微生物であれば特に限定されない。例えばアルカリゲネス属(Alcaligenes)、ラルストニア属(Ralstonia)、シュウドモナス属(Pseudomonas)、バチルス属(Bacillus)、アゾトバクター属(Azotobacter)、ノカルディア属(Nocardia)、アエロモナス属(Aeromonas)の菌が挙げられる。特に、アルカリゲネス・リポリティカ(A.lipolytica)、アルカリゲネス・ラトゥス(A.latus)、アエロモナス・キャビエ(A.caviae)、アエロモナス・ハイドロフィラ(A.hydrophila)、ラルストニア・ユートロファ(R.eutropha)等の菌株、更には、アエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素群の遺伝子を導入したラルストニア・ユートロファ(R.eutropha)(旧名Alcaligenes eutrophus AC32)(ブダペスト条約に基づく国際寄託、国際寄託当局:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地 中央第6)、寄託日1997年8月7日、寄託番号FERM BP−6038、原寄託FERM P−15786より移管)(J.Bacteriol.,179,4821−4830頁(1997))等がより好ましい。これら微生物を適切な条件で培養して菌体内にPHAを蓄積させた微生物菌体が用いられる。その培養方法については特に限定されないが、例えば特開平05−93049号等に挙げられる方法が用いられる。
本発明の凝集方法において用いられるPHA粒子は、従来の技術の項で記載したような公知の方法によってPHA含有菌体から得られる任意のPHA粒子を用いることができる。また、PHA含有菌体からPHA粒子を分離する好ましい方法として、PHA含有菌体の懸濁液を攪拌しつつ、物理的破砕と同時にアルカリを添加することによりPHA以外の菌体構成物質を可溶化してPHAを分離する方法が挙げられる。これによって、PHA含有菌体からPHA粒子の凝集体を、非常に簡便な方法で、かつ効率よく得ることが可能となる。
菌体の懸濁液とは、培養終了後の培養懸濁液そのまま、又は、培養液から遠心分離等で分離した菌体を水に懸濁させた水性の懸濁液である。ここでの菌体の懸濁濃度は、乾燥菌体換算で500g/L以下が好ましく、より好ましくは300g/L以下である。
物理破砕処理としては、アルカリ処理により菌体内より溶出し、主に粘度の上昇の原因となる核酸を効率よく破砕し、かつ、菌体細胞壁や細胞膜や不溶性蛋白質などのポリマー以外の不溶性物質を十分に分散できるものであればこれらに限定されるものではない。具体的には、超音波による破砕、乳化分散機、高圧ホモジナイザーやミル等による破砕が挙げられる。
アルカリとしては特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの有機酸のアルカリ金属塩;ほう砂等のアルカリ金属のホウ酸塩;リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸3カリウム、リン酸水素2カリウムなどのアルカリ金属のリン酸塩;あるいはアンモニア水などが挙げられる。この中でも、工業生産に適し、また価格の点で、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムなどが好ましい。
アルカリを添加する際には、当該アルカリの添加によって懸濁液のpHをコントロールすることが好ましい。特に、pH8〜13.5、更にはpH10〜13、より好ましくはpH11〜13の範囲でコントロールするのが好ましい。pHをコントロールするために、アルカリは、懸濁液のpHを測定しつつ、連続的又は断続的に添加するのが好ましい。
物理的破砕とアルカリ処理を行う際の温度としては特に限定されないが、室温から50℃の範囲が好ましく、30℃から40℃の範囲がより好ましい。
図1は本発明の一実施態様にかかるPHAの凝集体の様子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影したものである。当該凝集体は、1個の粒径が約0.1μmから約1.5μmのPHBH微粒子が多数接着することにより1個の凝集体を形作っていることがわかる。ここで微粒子径の求め方は走査型電子顕微鏡写真を用いる当業者に周知の方法で行った。すなわち、微粒子径はPHA凝集塊の表面写真を5000倍の解像度で撮影し、得られた写真から直接個々の微粒子の直径を読み取ることにより得られる。
図2は、1個のPHBH凝集体の走査型電子顕微鏡写真(倍率5,000倍)を示す。
図3は、PHBH凝集体の走査型電子顕微鏡写真(倍率50,000倍)を示す。
発明の詳細な開示
本発明におけるPHAとは、ヒドロキシアルカン酸の重合体の総称である。ヒドロキシアルカン酸成分としては特に限定されないが、具体的には、D−3−ヒドロキシブチレート(以下3HB)のホモポリマーや、3HBと他の3−ヒドロキシアルカン酸との共重合体、またはD−3−ヒドロキシヘキサノエート(以下3HH)と他のD−3−ヒドロキシアルカン酸との共重合体などが挙げられる。さらに、3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバレレート、3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシヘプタノエートおよび3−ヒドロキシオクタノエートからなる群より選択される少なくとも2種のモノマーから構成される共重合体なども挙げられる。なかでもモノマー成分として3HHを含む重合体、例えば、3HBと3HHとの2成分共重合体(PHBH)(Macromolecules,28,4822−4828(1995))または、3HBとD−3−ヒドロキシバレレート(以下3HV)と3HHとの3成分共重合体(PHBVH)(特許第277757号,特開平08−289797号)が、得られるポリエステルの物性の面からより好ましい。ここで3HBと3HHの2成分共重合体PHBHを構成する各モノマーユニットの組成比については特に限定されるものではないが、3HHユニットを1〜99モル%といった組成比のものが好適である。また、3HBと3HVと3HHとの3成分共重合体PHBVHを構成する各モノマーユニットの組成比については特に限定されるものではないが、例えば、3HBユニットの含量は1〜95モル%、3HVユニットの含量は1〜96モル%、3HHユニットの含量は1〜30モル%といった範囲のものが好適である。
本発明で使用する親水性溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、iso−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノールなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトニトリルやプロピオニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミドやアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ピペリジンなどが挙げられる。好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、iso−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、プロピオニトリルなどが除去性の面などから好適である。さらに好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、アセトンなどが入手が容易であることから好ましい。さらに好ましくは、メタノール、エタノール、アセトンである。
懸濁液中のPHAの濃度としては特に限定されないが、好ましくは1g/L以上、より好ましくは10g/L以上、さらに好ましくは30g/L以上である。また、好ましくは500g/L以下、より好ましくは300g/L以下、さらに好ましくは200g/L以下である。PHA濃度が極端に高い場合、懸濁液の粘度が増し、実質的に非流動性となる傾向がある。
懸濁液は、その媒質として、親水性溶媒のみからなるものであってもよいし、水と親水性溶媒との混合液体からなるものであってもよい。混合液体中の親水性溶媒の濃度としては、使用する親水性溶媒の水への溶解度以下であれば特に限定されないが、より十分な凝集効果を得るために、好ましくは10%v/v以上、より好ましくは20%v/v以上である。
本発明の凝集方法においては、PHA粒子を、親水性溶媒、又は、水と親水性溶媒との混合液体に懸濁させてなる懸濁液を、該懸濁液の沸点以下の温度で攪拌することによって、PHA粒子を凝集させる。攪拌する手段としては、攪拌槽など、乱流を生じさせるものが挙げられるが、特に限定されるものではない。
攪拌時の温度は、室温以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、更には60℃以上が好ましいが、凝集の効率性の観点から、懸濁液の沸点に近い温度ほど好ましく、懸濁液の沸点が最も好ましい。本願明細書において、懸濁液の沸点とは、懸濁液が沸騰を開始する温度のことをいう。本発明の方法では、一般的に100℃以下でPHA粒子を凝集させることができる。さらに本発明の凝集方法は、加圧下で行ってもよいが、加圧する必要はなく、常圧下で行うことができる。
凝集に要する時間は温度や濃度などの条件によって異なるが、一般に数分〜数時間程度で十分に凝集を起こさせることができる。
本発明の凝集方法によって、PHA凝集体の粒径を高めることが可能となる。例えば、体積平均直径が20μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上の凝集体を得ることができる。上限は特に限定されないが、体積平均直径が1000μm以下、好ましくは500μm以下の凝集体を得ることができる。粒径の増大に伴い濾過による回収が容易になり、工業生産において設備費が軽減できることになる。
本発明の凝集方法は、微生物によって産生されたPHAを当該微生物菌体から分離精製してなるPHAに対して、好適に適用することができる。この場合、少なくともPHA粒子がお互いに懸濁液中で接触しうるのに十分な程度に、粒子を取り巻く菌体構成物質が分解されている必要がある。
最初に回収されたPHA粒子が可溶性の菌体構成物質及び分解生成物その他PHA以外の物質で汚染されている場合は、特にそれらを第2液体媒質に再懸濁させ、攪拌による洗浄、化学処理などの後続加工(たとえば漂白剤、たとえば過酸化水素、あるいは次亜塩素酸ソーダによる処理)を行い、粒子をこの新たな液体媒質から回収することも可能である。本発明の凝集方法は、このプロセスのいかなる時点で行うこともできる。
上記微生物は、細胞内にPHAを蓄積している微生物であれば特に限定されない。例えばアルカリゲネス属(Alcaligenes)、ラルストニア属(Ralstonia)、シュウドモナス属(Pseudomonas)、バチルス属(Bacillus)、アゾトバクター属(Azotobacter)、ノカルディア属(Nocardia)、アエロモナス属(Aeromonas)の菌が挙げられる。特に、アルカリゲネス・リポリティカ(A.lipolytica)、アルカリゲネス・ラトゥス(A.latus)、アエロモナス・キャビエ(A.caviae)、アエロモナス・ハイドロフィラ(A.hydrophila)、ラルストニア・ユートロファ(R.eutropha)等の菌株、更には、アエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素群の遺伝子を導入したラルストニア・ユートロファ(R.eutropha)(旧名Alcaligenes eutrophus AC32)(ブダペスト条約に基づく国際寄託、国際寄託当局:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地 中央第6)、寄託日1997年8月7日、寄託番号FERM BP−6038、原寄託FERM P−15786より移管)(J.Bacteriol.,179,4821−4830頁(1997))等がより好ましい。これら微生物を適切な条件で培養して菌体内にPHAを蓄積させた微生物菌体が用いられる。その培養方法については特に限定されないが、例えば特開平05−93049号等に挙げられる方法が用いられる。
本発明の凝集方法において用いられるPHA粒子は、従来の技術の項で記載したような公知の方法によってPHA含有菌体から得られる任意のPHA粒子を用いることができる。また、PHA含有菌体からPHA粒子を分離する好ましい方法として、PHA含有菌体の懸濁液を攪拌しつつ、物理的破砕と同時にアルカリを添加することによりPHA以外の菌体構成物質を可溶化してPHAを分離する方法が挙げられる。これによって、PHA含有菌体からPHA粒子の凝集体を、非常に簡便な方法で、かつ効率よく得ることが可能となる。
菌体の懸濁液とは、培養終了後の培養懸濁液そのまま、又は、培養液から遠心分離等で分離した菌体を水に懸濁させた水性の懸濁液である。ここでの菌体の懸濁濃度は、乾燥菌体換算で500g/L以下が好ましく、より好ましくは300g/L以下である。
物理破砕処理としては、アルカリ処理により菌体内より溶出し、主に粘度の上昇の原因となる核酸を効率よく破砕し、かつ、菌体細胞壁や細胞膜や不溶性蛋白質などのポリマー以外の不溶性物質を十分に分散できるものであればこれらに限定されるものではない。具体的には、超音波による破砕、乳化分散機、高圧ホモジナイザーやミル等による破砕が挙げられる。
アルカリとしては特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの有機酸のアルカリ金属塩;ほう砂等のアルカリ金属のホウ酸塩;リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸3カリウム、リン酸水素2カリウムなどのアルカリ金属のリン酸塩;あるいはアンモニア水などが挙げられる。この中でも、工業生産に適し、また価格の点で、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムなどが好ましい。
アルカリを添加する際には、当該アルカリの添加によって懸濁液のpHをコントロールすることが好ましい。特に、pH8〜13.5、更にはpH10〜13、より好ましくはpH11〜13の範囲でコントロールするのが好ましい。pHをコントロールするために、アルカリは、懸濁液のpHを測定しつつ、連続的又は断続的に添加するのが好ましい。
物理的破砕とアルカリ処理を行う際の温度としては特に限定されないが、室温から50℃の範囲が好ましく、30℃から40℃の範囲がより好ましい。
図1は本発明の一実施態様にかかるPHAの凝集体の様子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影したものである。当該凝集体は、1個の粒径が約0.1μmから約1.5μmのPHBH微粒子が多数接着することにより1個の凝集体を形作っていることがわかる。ここで微粒子径の求め方は走査型電子顕微鏡写真を用いる当業者に周知の方法で行った。すなわち、微粒子径はPHA凝集塊の表面写真を5000倍の解像度で撮影し、得られた写真から直接個々の微粒子の直径を読み取ることにより得られる。
本実施例ではPHAとしてPHBHを用いた。本発明での実施はPHBHになんら限られるものではない。
PHBHの懸濁液は、アエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素群遺伝子を導入したR.eutropha(上述の寄託番号FERM BP−6038)をJ.Bacteriol.,179,4821−4830頁(1997)に記載の方法で培養し、PHBHを約67wt%含有した菌体を得た。遠心(5000rpm、10min)により培養液から分離したペースト状の菌体に水を加えて75g乾燥菌体/Lの水性懸濁液とし、アルカリとして水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH11.7に保ちながら攪拌と物理的破砕とを行うことでPHBH以外の菌体構成物質を可溶化し、遠心分離(3000rpm、10min)を行って沈殿物を得た。沈殿物はさらに水洗を行い、平均分子量約140万、3HHモル分率7%、純度97%のPHBHを分離した。得られたPHBHを20%w/vの水性懸濁液とし、以後の実験に使用した。
各実施例で使用したPHBHの純度は以下のようにして決定した(但し、実施例3と実施例4は後述するHPLC法で純度を決定した)。PHBHの粉体10mgを、クロロホルム1mlに溶解したのち、メタノール0.85mlと濃硫酸0.15mlを加えて100℃で140分間処理した。これを冷却後、硫酸アンモニア飽和水溶液0.5mlを加えて激しく攪拌した後静置した。下層部をキャピラリーガスクロマトグラフィーにて分析して、分離物中のPHBHの純度およびPHBH中の3HB、3HHのモル分率を求めた。
菌体から分離して得られたPHBHの分子量は、菌体より分離して得られた沈殿物10mgを、クロロホルム1mlに溶解したのち、不溶物を濾過により除いた。この溶液をShodex K805L(300×8mm、2本連結)を装着したSHIMADZU社製GPCシステムを用いクロロホルムを移動相として分析した。
PHA粒子の粒径は日機装社製マイクロトラック粒度計を用いて測定を行った。該装置によって測定した粒径値は体積平均粒径として得られる。体積平均粒径は、一般的に粒径を表すときに用いられ、粒子の体積によって重み付けられた平均粒径を意味している。
PHBHの懸濁液は、アエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素群遺伝子を導入したR.eutropha(上述の寄託番号FERM BP−6038)をJ.Bacteriol.,179,4821−4830頁(1997)に記載の方法で培養し、PHBHを約67wt%含有した菌体を得た。遠心(5000rpm、10min)により培養液から分離したペースト状の菌体に水を加えて75g乾燥菌体/Lの水性懸濁液とし、アルカリとして水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH11.7に保ちながら攪拌と物理的破砕とを行うことでPHBH以外の菌体構成物質を可溶化し、遠心分離(3000rpm、10min)を行って沈殿物を得た。沈殿物はさらに水洗を行い、平均分子量約140万、3HHモル分率7%、純度97%のPHBHを分離した。得られたPHBHを20%w/vの水性懸濁液とし、以後の実験に使用した。
各実施例で使用したPHBHの純度は以下のようにして決定した(但し、実施例3と実施例4は後述するHPLC法で純度を決定した)。PHBHの粉体10mgを、クロロホルム1mlに溶解したのち、メタノール0.85mlと濃硫酸0.15mlを加えて100℃で140分間処理した。これを冷却後、硫酸アンモニア飽和水溶液0.5mlを加えて激しく攪拌した後静置した。下層部をキャピラリーガスクロマトグラフィーにて分析して、分離物中のPHBHの純度およびPHBH中の3HB、3HHのモル分率を求めた。
菌体から分離して得られたPHBHの分子量は、菌体より分離して得られた沈殿物10mgを、クロロホルム1mlに溶解したのち、不溶物を濾過により除いた。この溶液をShodex K805L(300×8mm、2本連結)を装着したSHIMADZU社製GPCシステムを用いクロロホルムを移動相として分析した。
PHA粒子の粒径は日機装社製マイクロトラック粒度計を用いて測定を行った。該装置によって測定した粒径値は体積平均粒径として得られる。体積平均粒径は、一般的に粒径を表すときに用いられ、粒子の体積によって重み付けられた平均粒径を意味している。
実施例1で用いたPHBHスラリーを、PHBH10gを含む懸濁液100mL中のエタノール量がそれぞれ80mL、70mLとなるようにPHBH水性懸濁液を調整し(それぞれの懸濁液のpHは、7.62と7.36)、バス温90℃の攪拌槽内で、加熱攪拌を行った。懸濁液から適時サンプルを採取し、これを攪拌しながら室温まで冷却した。これを遠心分離(2400rpm、15min)にて回収し、再度水に懸濁させて粒径を測定した結果を表3に示す。
この結果から、水と親水性溶媒の混合液体からなる懸濁液を加熱・攪拌すると、PHAの分子量は大きく低下することなく、PHA粒子が凝集し、粒径が増大することが分かった。またPHAの純度が向上することも分かった。
この結果から、水と親水性溶媒の混合液体からなる懸濁液を加熱・攪拌すると、PHAの分子量は大きく低下することなく、PHA粒子が凝集し、粒径が増大することが分かった。またPHAの純度が向上することも分かった。
実施例1と同様な方法で菌体から分離されたPHBH(分子量156万、純度99%)を加熱・減圧乾燥した。得られた乾燥PHBH8gをエタノールに十分に懸濁させ、80mLのPHBHエタノール懸濁液(pH7.05)を得た。これを実施例1と同様な方法で加熱・攪拌し、冷却後、水に懸濁させて粒径を測定した結果を表4に示す。
この結果から、親水性溶媒からなる懸濁液を加熱・攪拌すると、PHAの分子量は低下することなく、PHA粒子が凝集し、粒径が増大することが分かった。またPHAの純度が向上することも分かった。
なお実施例3及び実施例4において、処理後のPHBHの純度は以下のようにして測定した。
処理後のPHBH懸濁液を遠心分離して上清を除去し、回収したPHBHに対し、上記PHBH懸濁液と同容量に達するまでエタノールを加えることで2回洗浄した。洗浄後、加熱(50℃)減圧乾燥して得られたPHBHの純度を、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
高速液体クロマトグラフィーの条件:
カラム:資生堂 カプセルパックUG80 4.6mm×250mm
移動相:20mmolリン酸バッファー(pH3.0):メタノール=80:20(リン酸1カリウム+リン酸で調整)
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
なお、ポリマー約25mg、メタノール4mL、メタンスルホン酸300μLを混合し100℃で3時間加熱した後、室温まで冷却し、10mLにメタノールでメスアップしたもの10μLを、高速液体クロマトグラフィーに注入した。
この結果から、親水性溶媒からなる懸濁液を加熱・攪拌すると、PHAの分子量は低下することなく、PHA粒子が凝集し、粒径が増大することが分かった。またPHAの純度が向上することも分かった。
なお実施例3及び実施例4において、処理後のPHBHの純度は以下のようにして測定した。
処理後のPHBH懸濁液を遠心分離して上清を除去し、回収したPHBHに対し、上記PHBH懸濁液と同容量に達するまでエタノールを加えることで2回洗浄した。洗浄後、加熱(50℃)減圧乾燥して得られたPHBHの純度を、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
高速液体クロマトグラフィーの条件:
カラム:資生堂 カプセルパックUG80 4.6mm×250mm
移動相:20mmolリン酸バッファー(pH3.0):メタノール=80:20(リン酸1カリウム+リン酸で調整)
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
なお、ポリマー約25mg、メタノール4mL、メタンスルホン酸300μLを混合し100℃で3時間加熱した後、室温まで冷却し、10mLにメタノールでメスアップしたもの10μLを、高速液体クロマトグラフィーに注入した。
実施例2のメタノール凝集で得られた凝集体の走査型電子顕微鏡写真を撮影した(図1〜3)。凝集体を分散法によりサンプリングし、表面を日立S−4000走査型電子顕微鏡にて加速電圧3kVで観察した結果、凝集体はサブミクロンオーダーの丸みを帯びたPHBH粒子が凝集し、不定形の2次凝集体を形成していることが判明した(図1、2)。さらに日立S−5000走査型電子顕微鏡にて加速電圧1kVで高倍率観察した結果、粒子と粒子が接合している部分が存在することが明らかとなった(図3)。
本発明によるPHAの凝集方法は、極めて簡便な方法によって、PHAの分子量低下を抑制しながら、純度の高いPHAの凝集体を得ることが可能である。この方法によりPHAは、濾過性や取扱に優れた粒径の粒子となる。
Claims (13)
- 液体に懸濁させたポリ−3−ヒドロキシアルカン酸を凝集させる方法であって、ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸粒子を、親水性溶媒、又は、水と親水性溶媒との混合液体に懸濁し、該懸濁液の沸点以下の温度で攪拌することを特徴とする、ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸の凝集方法。
- ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸が、3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバレレート、3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシヘプタノエートおよび3−ヒドロキシオクタノエートからなる群より選択される少なくとも2種のモノマーから構成される共重合体である請求項1記載の凝集方法。
- ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸が、D−3−ヒドロキシヘキサノエートと他のD−3−ヒドロキシアルカン酸との共重合体である請求項1記載の凝集方法。
- ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸が、D−3−ヒドロキシヘキサノエートとD−3−ヒドロキシブチレートとの2成分共重合体、または、D−3−ヒドロキシヘキサノエートとD−3−ヒドロキシブチレートとD−3−ヒドロキシバレレートとの3成分共重合体である請求項3記載の凝集方法。
- ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸が、微生物によって産生され、当該微生物菌体から分離精製されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の凝集方法。
- ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸を産生する微生物がアエロモナス属である請求項5記載の凝集方法。
- ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸を産生する微生物が、アエロモナス・キャビエ又はアエロモナス・ハイドロフィラである請求項6記載の凝集方法。
- ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸を産生する微生物が、アエロモナス・キャビエ由来のポリ−3−ヒドロキシアルカン酸合成酵素群遺伝子を導入された菌株である請求項5記載の凝集方法。
- ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸を含有する微生物が、アエロモナス・キャビエ由来のポリ−3−ヒドロキシアルカン酸合成酵素群遺伝子を導入されたラルストニア・ユートロファである請求項5記載の凝集方法。
- ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸粒子が、ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸含有菌体の懸濁液を攪拌しつつ、物理的破砕と同時にアルカリを添加することによりポリ−3−ヒドロキシアルカン酸以外の菌体構成物質を可溶化してポリ−3−ヒドロキシアルカン酸を分離したものである請求項1〜9のいずれかに記載の凝集方法。
- 親水性溶媒が、アルコール類、ケトン類、ニトリル類、アミド類及びエーテル類からなる群より選択されたものである請求項1〜10のいずれかに記載の凝集方法。
- アルコール類が、メタノール又はエタノールであり、ケトン類がアセトンであり、ニトリル類がアセトニトリルであり、アミド類がジメチルホルムアミドであり、エーテル類がテトラヒドロフランである請求項11記載の凝集方法。
- 粒径0.1μm以上、1.5μm以下のポリ−3−ヒドロキシアルカン酸微粒子同士が接着してなることを特徴とする、ポリ−3−ヒドロキシアルカン酸の凝集体。
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