本発明は、記録媒体上の未定着画像を加熱定着させる定着装置に関し、特に電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の画像形成装置に用いて有用な定着装置に関する。
この種の画像形成装置では、一般に加熱方式の定着装置が用いられている。この加熱方式の定着装置は、無端ベルト又はローラなどからなる発熱体、前記発熱体を加熱する加熱手段及び前記発熱体に圧接する加圧手段などを備えている。
前記加熱手段は、例えば、ハロゲンランプ又は電磁誘導加熱(IH;induction heating)装置などで構成されている。前記加圧手段は、ゴムローラ又はスポンジローラなどからなり、前記発熱体に当接回転して前記発熱体との間に形成されるニップで記録紙又はOHPシートなどの記録媒体を挟持搬送する。
この加熱方式の定着装置では、前記ニップで前記記録媒体を挟持搬送することにより前記発熱体の熱で前記記録媒体上に形成された未定着画像のトナーを溶融し、この溶融したトナーの粘着力により前記未定着画像を前記記録媒体上に定着させている。
このため、この定着装置においては、加熱により溶融したトナーの粘着力により前記記録媒体が前記発熱体に巻き付く現象が起こりやすい。このような現象は、加熱定着される記録媒体のシート搬送方向先端部にベタ画像が形成されている場合に発生しやすい。また、前記現象は、定着装置の電源投入時よりも定着装置がある程度使用されて暖まっている状態のときの方が発生しやすい。
そこで、この種の定着装置では、例えば、前記ニップよりも下流側の発熱体の表面にシート分離手段としての分離爪を当接するように配設し、加熱定着後の記録媒体を前記分離爪により前記発熱体から強制的に分離するようにしている(例えば、特許文献1など参照)。
ところが、前記シート分離手段として分離爪を用いた定着装置は、その発熱体に前記分離爪が当接した構成となるため、前記発熱体の表面に前記分離爪の当接痕が付きやすいという不具合がある。この不具合は、モノクロ画像用の定着装置のように前記発熱体の硬度を比較的高くできる場合には問題となることも少ないが、カラー画像用の定着装置のように前記発熱体に弾性層が形成されているような場合には前記発熱体の寿命及び定着画像の画質を著しく低下させる原因となる。
一方、前記シート分離手段として、分離爪の替わりにシート分離ガイド板を用い、このシート分離ガイド板により加熱定着後の記録媒体を前記発熱体から分離する定着装置が知られている(例えば、特許文献2など参照)。
図1は、前記シート分離手段としてシート分離ガイド板(以下、これを「セパレータ」という)を用いた定着装置における記録媒体(記録紙)の分離開始状態を示す概略断面図である。図1に示すように、この定着装置10は、前記発熱体としての定着ローラ11、前記加圧手段としての加圧ローラ12、記録紙Pの搬送経路を形成するシートガイド板13,14,15及びセパレータ16などを備えている。
図1において、記録紙Pは、図示しない画像形成手段により未定着のトナー像Tが形成された後、定着装置10に向けて搬送される。この記録紙Pは、定着装置10のシート搬入口に設けられた一対のシートガイド板13,14の間を通って、定着ローラ11と加圧ローラ12との圧接部である定着ニップ部Nにより挟持されて矢印方向に搬送される。定着ニップ部Nを通過した記録紙Pは、定着ローラ11の曲率により先端部Paが定着ローラ11の表面から離間される。
セパレータ16は、定着ローラ11の表面から離間された記録紙Pの先端部Paをガイド面16aによりガイドして記録紙Pを定着ローラ11の表面から分離する。
このように、この定着装置10においては、まず、記録紙Pの先端部Paを定着ローラ11の曲率によりその表面から離間させ、次いで、この定着ローラ11の表面から離間した記録紙Pの先端部Paをセパレータ16のガイド面16aによりガイドして記録紙Pを定着ローラ11から分離している。
従って、この定着装置10においては、図1に示すように、定着ローラ11の表面から記録紙Pを分離するセパレータ16を定着ローラ11に対して非接触となるように配設できるので、前記分離爪のように定着ローラ11に当接痕が付くことがなく、定着ローラ11の寿命低下及び定着画像の画質低下を招くことがなくなる。
特開2003−215967号公報 特開平07−181826号公報
しかしながら、前記従来の前記シート分離ガイド板を用いた加熱定着方式の定着装置は、加熱定着後の記録媒体が前記シート分離ガイド板に沿って分離搬送される過程でシートジャム及び画像乱れが発生しやすいという不具合がある。
すなわち、この種の定着装置では、記録媒体上の未定着画像(トナー像)が発熱体により加熱溶融されてから固化(記録媒体上に定着)するまでにある程度の時間を要する。このトナー像が溶融してから固化するまでに要する時間は、記録媒体の搬送速度、トナーの材質、記録媒体へのトナー付着量、発熱体の発熱温度、定着装置の内部温度及び環境温度などの種々の条件により微妙に変化する。
従って、このような加熱定着方式の定着装置においては、前記発熱体の加熱定着部位から前記シート分離ガイド板の上流端までの距離を前記記録媒体が移動する間に、前記記録媒体上のトナー像が必ずしも固化し終えているとは限らない。
このため、この種の定着装置では、例えば、図2に示すように、記録紙P上のトナー像が固化しきらない状態のままセパレータ16のガイド面16aに沿って記録紙Pが移動し、この半固化状態のトナー像がセパレータ16のガイド面16aに張り付いたり摺擦したりしてシートジャム及び画像乱れが発生することがある。
このようなシートジャム及び画像乱れは、前記記録媒体上に形成されたトナー像がベタ画像の場合に発生しやすい。これは、ベタ画像は通常の画像よりも付着トナー量が多くなるため溶融したトナーが固化するまでにより長い時間がかかることによる。
また、このシートジャム及び画像乱れは、前記ベタ画像が前記記録媒体のシート搬送方向後端部に形成されている場合に特に発生しやすい。これは、例えば、図3に示すように、記録紙Pの後端部Pbは、定着ローラ11と加圧ローラ12との定着ニップ部Nから抜け出した瞬間にフリーな状態になることによる。すなわち、記録紙Pの後端部Pbは、フリーな状態になった瞬間にセパレータ16のガイド面側に跳ね上がり、その全面がセパレータ16のガイド面16aに密着するようになる。このため、このセパレータ16のガイド面16aに密着した記録紙Pの後端部Pbにベタ画像が形成されていると、この後端部Pbがガイド面16aに張り付いてシートジャム及び画像乱れが発生しやすくなる。
また、このシートジャム及び画像乱れは、定着装置の内部温度が高くなり前記シート分離ガイド板が高温になった場合も、前記記録媒体上の加熱定着されたトナー像が固化しにくくなったり再溶融したりするため発生しやすい。
本発明の目的は、加熱定着後の記録媒体をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく発熱体から円滑に分離することができる定着装置を提供することである。
本発明の定着装置は、記録媒体上の未定着画像を加熱定着する発熱体と、前記発熱体を加熱する加熱手段と、前記未定着画像が加熱定着されて所定のシート経路に沿って搬送される前記記録媒体の加熱定着面を前記発熱体から分離する方向にガイドするガイド面を有するシート分離ガイド板と、を備え、前記シート分離ガイド板のガイド面に、前記ガイド面のガイド幅方向に沿って隆起した段差部を設けた構成を採る。
本発明によれば、加熱定着後の記録媒体をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく発熱体から円滑に分離することができる。
[図1]従来のセパレータを用いた定着装置における記録紙の分離開始時の状態を示す概略断面図
[図2]従来のセパレータを用いた定着装置における記録紙の分離途中の状態を示す概略断面図
[図3]従来のセパレータを用いた定着装置における記録紙の分離完了時の状態を示す概略断面図
[図4]本発明の実施の形態1に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の全体構成を示す概略断面図
[図5]本実施の形態1に係る定着装置の基本的な構成を示す概略断面図
[図6]本実施の形態1に係る定着装置におけるセパレータの構成を示す分解斜視図
[図7]本実施の形態1に係る定着装置における記録紙の分離開始時の状態を示す概略断面図
[図8]本実施の形態1に係る定着装置における記録紙の分離途中の状態を示す概略断面図
[図9]本発明の実施の形態2に係る定着装置におけるセパレータの構成を示す分解斜視図
[図10]本実施の形態2に係る定着装置におけるセパレータにより分離される記録紙の挙動を示す概略斜視図
[図11]本発明の実施の形態3に係る定着装置におけるセパレータの構成を示す分解斜視図
[図12]本実施の形態1に係る定着装置における記録紙の分離完了時の状態を示す概略断面図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一の構成又は機能を有する構成要素及び相当部分には、同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図4は、本発明の実施の形態1に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の構成を示す概略断面図である。図4に示すように、この画像形成装置100は、カラー画像の発色に寄与する4色のトナー像を4つの像担持体上に個別に形成し、これら4色のトナー像を中間転写体上に順次重ね合わせて一次転写した後、この一次転写像を記録媒体に一括転写(二次転写)するタンデム方式の画像形成装置である。
なお、本実施の形態1に係る定着装置は、前記タンデム方式の画像形成装置のみに限定されず、あらゆる方式の画像形成装置に搭載可能であることはいうまでもない。
また、図4において、画像形成装置100の各構成要素に付した符号の末尾の記号Y,M,C,Kは、Yはイエロー画像、Mはマゼンタ画像、Cはシアン画像、Kはブラック画像のそれぞれの画像形成に関与する構成要素を示しており、同一符号の構成要素はそれぞれ共通した構成を有している。
画像形成装置100は、前記4つの像担持体としての感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kの周囲に、帯電器120Y,120M,120C,120K、露光装置130、現像器140Y,140M,140C,140K、転写器150Y,150M,150C,150K、クリーニング装置160Y,160M,160C,160K及び中間転写ベルト(中間転写体)170をそれぞれ配置した画像形成ステーションSY,SM,SC,SKを有している。
図4において、各感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kは、それぞれ矢印方向に回転され、それぞれの表面が帯電器120Y,120M,120C,120Kにより一様に所定の電位に帯電される。
帯電された各感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kは、露光装置130により特定色の画像データに対応したレーザビームの走査線130Y,130M,130C,130Kが照射される。これにより、各感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kの表面に前記特定色毎の静電潜像が形成される。
感光体ドラム110Y,110M,110C,110K上に形成された前記特定色毎の静電潜像は、現像器140Y,140M,140C,140Kにより顕像化される。これにより、各感光体ドラム110Y,110M,110C,110K上に、カラー画像の発色に寄与する4色の未定着画像が形成される。
感光体ドラム110Y,110M,110C,110K上に顕像化された4色のトナー像は、転写器150Y,150M,150C,150Kにより、前記中間転写体としての無端状の中間転写ベルト170に一次転写される。これにより、感光体ドラム110Y,110M,110C,110K上に形成された4色のトナー像が順次重ね合わされて中間転写ベルト170上にフルカラー画像が形成される。
各感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kは、中間転写ベルト170にトナー像を転写した後、クリーニング装置160Y,160M,160C,160Kにより、それぞれの表面に残っている残留トナーが除去される。
ここで、露光装置130は、感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kに対して所定の傾きをもって配置されている。また、中間転写ベルト170は、駆動ローラ171と従動ローラ172とに懸架されており、駆動ローラ171の回転により、図4において矢印A方向へ回動される。
一方、画像形成装置100の下部には、記録媒体としての印字用紙などの記録紙Pが収納された給紙カセット180が設けられている。記録紙Pは、給紙ローラ181により給紙カセット180から1枚ずつ所定のシート経路に送り出される。
前記シート経路に送り出された記録紙Pは、従動ローラ172に懸架された中間転写ベルト170の外周面と中間転写ベルト170の外周面に接触する二次転写ローラ190とで形成される転写ニップ部を通過する際に、中間転写ベルト170上に形成されたフルカラー画像(未定着画像)が二次転写ローラ190により一括転写される。
記録紙Pに一括転写された未定着のフルカラー画像は、図5に詳述する定着装置200の定着ローラ210及び加熱ローラ220に懸架された定着ベルト230の外周面と定着ベルト230の外周面に接触する加圧ローラ240とで形成される定着ニップ部Nを通過することにより、記録紙Pに加熱定着される。
なお、画像形成装置100には、その筐体の一部を成す開閉自在のドア101が設けられており、このドア101の開閉により、定着装置200の交換やメンテナンス及び前記用紙搬送路に詰まった記録紙Pのジャム処理などを行なうことができる。
次に、図5を参照して画像形成装置100に搭載されている本実施の形態1に係る定着装置200について説明する。
本実施の形態1に係る定着装置200は、電磁誘導加熱(IH;induction heating)方式の定着装置であって、図5に示すように、定着ローラ210、発熱体としての加熱ローラ220、発熱体としての定着ベルト230、加圧ローラ240、加熱手段としての誘導加熱装置250、シート分離ガイド板としてのセパレータ260及びシート搬送経路形成部材としてのシートガイド板281,282,283,284などを備えている。
この定着装置200は、誘導加熱装置250により生成した磁界の作用によって加熱ローラ220及び定着ベルト230を加熱し、シートガイド板281,282,283,284に沿って搬送される記録紙P上の未定着画像を、加熱された定着ベルト230と加圧ローラ240との定着ニップ部Nで加熱定着するものである。
なお、本発明に係る定着装置は、定着ベルト230を使用せず、定着ローラ210が加熱ローラ220を兼ねた構成とし、この定着ローラ210により記録紙P上の未定着画像を直接加熱定着するように構成したものであってもよい。また、前記加熱手段としては、ハロゲンランプなどを熱源とするものであってもよいことはいうまでもない。
図5において、発熱体としての加熱ローラ220は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル又はこれら金属の合金等の中空円筒状の磁性金属部材からなる回転体で構成され、図示しない支持側板に固定されたベアリングにより、その両端が回転可能に支持されており、図示しない駆動手段によって回転駆動される。また、加熱ローラ220は、外径が20mm、肉厚が0.3mmの低熱容量で昇温の速い構成となっており、そのキュリー点が300℃以上となるように調整されている。
定着ローラ210は、例えばステンレススチール等の金属製の芯金を、ソリッド状又は発泡状の耐熱性を有するシリコーンゴムからなる弾性部材で被覆して構成されており、その外径が30mm程度あり加熱ローラ220の外径よりも大きく形成されている。前記弾性部材は、その肉厚を3〜8mm程度、硬度を15〜50°(Asker硬度:JIS Aの硬度では6〜25°)程度としている。
また、定着ローラ210には、加圧ローラ240が圧接している。この定着ローラ210と加圧ローラ240との圧接により、その圧接部に所定幅の定着ニップ部Nが形成される。
定着ベルト230は、加熱ローラ220と定着ローラ210とに懸架された耐熱性ベルトで構成されている。この定着ベルト230は、後述する誘導加熱装置250により加熱ローラ220が誘導加熱されることで、この加熱ローラ220との接触部位で加熱ローラ220の熱が伝導され、その回転によってベルト全周に亘って加熱される。
このように構成した定着装置200は、加熱ローラ220の熱容量が定着ローラ210の熱容量よりも小さくなるので、加熱ローラ220が急速に加熱されるようになり、その加熱定着開始時におけるウォームアップ時間が短縮される。
また、定着ベルト230は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の磁性を有する金属又はそれらを基材とする合金を基材とした発熱層と、この発熱層の表面を被覆するようにして設けられたシリコーンゴム又はフッ素ゴム等の弾性部材からなる弾性層と、PTFE(Poly Tetra−Fluoro Ethylene)、PFY(Per Fluoro Alkoxy Fluoroplastics)、FEP(Fluorinated Etyiene Propylenecopolymer)、シリコーンゴム又はフッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂あるいはゴムを単独もしくは混合して形成された離型層とを備えた多層構造の耐熱性ベルトで構成されている。
この定着ベルト230は、仮に、定着ベルト230と加熱ローラ220との間に何らかの原因で異物が混入してギャップが生じたとしても、その発熱層を誘導加熱装置250により誘導加熱して定着ベルト自体を発熱させることができる。このように、この定着ベルト230は、それ自体を誘導加熱装置250により直接加熱でき、その発熱効率が良くなり、またレスポンスが速くなるので、温度ムラが少なく加熱定着手段としての信頼性が高くなる。
加圧ローラ240は、例えば、銅又はアルミ等の熱伝導性の高い金属製の円筒部材からなる芯金の表面に、耐熱性及びトナー離型性の高い弾性部材を設けて構成されている。前記芯金としては、上記金属以外にSUS(Steel Use Stainless)を使用してもよい。
この加圧ローラ240は、前述したように、定着ベルト230を介して定着ローラ210に圧接することにより、記録紙Pを挟持搬送する定着ニップ部Nを形成している。ここで、本実施の形態1に係る定着装置200においては、加圧ローラ240の硬度を定着ローラ210の硬度よりも硬くし、加圧ローラ240の周面が定着ベルト230を介して定着ローラ210の周面に食い込むようにして定着ニップ部Nを形成している。
このため、この加圧ローラ240は、その外径は定着ローラ210と同じ30mm程度であるが、その肉圧が0.52〜5mm程度と定着ローラ140よりも薄く、その硬度も20〜8060°(Asker硬度:JIS Aの硬度では6〜50°)程度と定着ローラ210よりも硬く構成されている。
このような構成の定着装置200においては、記録紙Pが加圧ローラ240の周面の表面形状に沿うように定着ニップ部Nにより挟持搬送されるので、記録紙Pの加熱定着面が定着ベルト230の表面から離れやすくなるという効果がある。
なお、定着ニップ部Nの入口側近傍の定着ベルト230の内周面には、サーミスタなどの熱応答性の高い感温素子からなる温度検出器270が当接配置されている。この定着装置200においては、温度検知器270が検知した定着ベルト230の内周面の温度に基づいて、定着ベルト230の表面温度、つまり前記未定着画像の加熱定着温度が所定の温度に維持されるように、誘導加熱装置250による加熱ローラ220及び定着ベルト230の加熱温度が制御されている。
次に、誘導加熱装置250の構成について説明する。誘導加熱装置250は、図5に示すように、定着ベルト230を介して加熱ローラ220の外周面に対向するように配置されている。誘導加熱装置250には、加熱ローラ220を覆うように湾曲形成された難燃性の樹脂からなるコイルガイド部材としての支持フレーム251が設けられている。
支持フレーム251の中心部には、サーモスタット252が、その温度検知部分を支持フレーム251から加熱ローラ220及び定着ベルト230に向けて一部表出させるようにして配設されている。このサーモスタット252は、加熱ローラ220及び定着ベルト230の温度を検知し、加熱ローラ220及び定着ベルト230の温度が異常高温度になったことを検知したときに、支持フレーム251の外周面に巻回された磁界発生手段としての励磁コイル253と図示しないインバータ回路との接続を強制遮断する。
励磁コイル253は、表面が絶縁された長い一本の励磁コイル線材を支持フレーム251に沿って加熱ローラ220の軸方向に交互に巻き付けて構成されている。この励磁コイル253の巻回部分の長さは、定着ベルト230と加熱ローラ220とが接する領域と略同じ長さになるように設定されている。
励磁コイル253は、図示しないインバータ回路に接続され、10kHz〜1MHz(好ましくは20kHz〜800kHz)の高周波交流電流が給電されることにより交番磁界を発生する。この交番磁界は、加熱ローラ220と定着ベルト230との接触領域及びその近傍部において加熱ローラ220及び定着ベルト230の発熱層に作用する。そして、この交番磁界の作用により、これらの発熱層の内部に前記交番磁界の変化を妨げる方向の渦電流が流れる。
この渦電流は、加熱ローラ220及び定着ベルト230の発熱層の抵抗に応じたジュール熱を発生させ、主として加熱ローラ220と定着ベルト230との接触領域及びその近傍部において加熱ローラ220及び定着ベルト230を電磁誘導加熱する。
一方、支持フレーム251には、励磁コイル253を囲むようにして、アーチコア254及びサイドコア255が設けられている。これらのアーチコア254及びサイドコア255は、励磁コイル253のインダクタンスを増大させ、励磁コイル253と加熱ローラ220との電磁結合を良好にする。従って、この定着装置200においては、アーチコア254及びサイドコア255の作用により、同じコイル電流でも多くの電力を加熱ローラ220へ投入することが可能となり、そのウォームアップ時間を短縮することができる。
また、支持フレーム251には、誘導加熱装置250の内部のアーチコア254及びサーモスタット252を覆うように屋根型に形成された樹脂製のハウジング256が取り付けられている。このハウジング256には、複数の放熱孔が形成されており、支持フレーム251、励磁コイル253及びアーチコア254等から発生した熱が外部に放出されるようになっている。なお、ハウジング256は、例えばアルミなどの樹脂以外の素材で形成されたものであってもよい。
また、支持フレーム251には、ハウジング256に形成された放熱孔を塞がないようにハウジング256の外面を覆うショートリング257が取り付けられている。このショートリング257は、アーチコア254の背面に位置しており、アーチコア254の背面から外部に漏れ出るわずかな漏れ磁束を打ち消す方向に渦電流が発生することで、前記漏れ磁束の磁界を打ち消す方向に磁界が発生して前記漏れ磁束による不要な輻射を防止する働きをしている。
次に、本実施の形態1に係る定着装置200の特徴部である前記シート分離ガイド板としてのセパレータ260について説明する。
図5及び図6に示すように、セパレータ260は、定着装置200の装置本体に装着された断面L字状の支持部材290に、ビス261,262により着脱自在に取り付けられている。このセパレータ260は、定着ベルト230と加圧ローラ240との定着ニップ部Nで加熱定着された記録紙Pの加熱定着面を、定着ベルト230から分離する方向にガイドするためのガイド面260aを有している。
セパレータ260のガイド面260aには、ガイド面260aのガイド幅方向に沿って隆起した2つの段差部(突出部)260b,260cが設けられており、段差部260b,260cの間には凹部260dが形成されている。これらの2つの段差部260b,260cは、図7及び図8に示すように、未定着のトナー像Tが加熱定着された記録紙Pの加熱定着面を定着ベルト230から分離する方向にガイドするように、それぞれの高さが設定されている。すなわち、ガイド方向の下流側に位置する段差部260cは、ガイド方向の上流側に位置する段差部260bに比べて、その頂点が、発熱体である定着ベルト230及び加圧ローラ240の位置よりも加熱手段である誘導加熱装置250側に位置するように設けられている。なお、図7は、記録紙Pの先端部Paの加熱定着面が定着ベルト230から分離し始める状態を示している。また、図8は、記録紙Pの加熱定着面がセパレータ260のガイド面260aにガイドされて定着ベルト230から分離搬送されている途中の状態を示している。
図7において、記録紙Pは、図4に示したように、画像形成装置100により未定着のトナー像Tが形成された後、定着装置200に向けて搬送される。定着装置200に搬送された記録紙Pは、定着装置200のシート搬入口に設けられた一対のシートガイド板281,282の間を通って、定着ベルト230と加圧ローラ240との圧接部である定着ニップ部Nにより挟持されて矢印方向に搬送される。この定着ニップ部Nを通過した記録紙Pは、定着ローラ210に懸架された定着ベルト230の曲率により先端部Paが定着ベルト230の表面から離間される。
そして、記録紙Pは、図8に示すように、セパレータ260のガイド面260aに設けた段差部260b,260cの頂点部分のみに接触するようにガイドされて定着ベルト230の表面から分離される。その後、この記録紙Pは、セパレータ260のシート搬送方向下流側のシート排出口に設けられたシート搬送経路形成部材としての一対のシートガイド板283,284の間を通って、定着装置200から排出される。
このように、この定着装置200においては、セパレータ260のガイド面260aに設けた段差部260b,260c、及び段差部260b,260c間の凹部260dによって、ガイド面260aに沿ってガイドされる記録紙Pの加熱定着面とガイド面260aとの間に隙間が生じ、記録紙Pの加熱定着面とガイド面260aとの接触面積が減少する。従って、この定着装置200においては、記録紙Pの加熱定着面がセパレータ260のガイド面260aに張り付きにくくなり、記録紙Pをシートジャム及び画像乱れを起こすことなく定着ベルト230から円滑に分離できるようになる。
また、定着装置200においては、ガイド方向の下流側に位置する段差部260cは、ガイド方向の上流側に位置する段差部260bに比べて、その頂点が、発熱体である定着ベルト230及び加圧ローラ240の位置よりも加熱手段である誘導加熱装置250側に位置するように設けられることによって、前記ガイド面260aに沿ってガイドされる記録紙Pの後端部の加熱定着面とガイド面260aとの間に隙間が生じ易くなり、録媒紙Pの後端部と加熱定着面とガイド面260aとの接触面積が減少する。従って、記録紙Pの後端部の加熱定着面がセパレータ260のガイド面260aへの張り付きがより起こりにくくなり、記録紙Pの後端部をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく定着ベルト230から円滑に分離できるようになる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る定着装置について説明する。図9は、本実施の形態2に係る定着装置におけるセパレータの構成を示す分解斜視図である。
図9に示すように、このセパレータ660は、図6に示したセパレータ260と同様、支持部材290に、ビス261,262により着脱自在に取り付けられている。また、このセパレータ660は、定着ベルト230と加圧ローラ240との定着ニップ部Nで加熱定着された記録紙Pの加熱定着面を、定着ベルト230から分離する方向にガイドするためのガイド面660aを有している。
さらに、セパレータ660のガイド面660aには、ガイド面660aのガイド幅方向に沿って隆起した2つの段差部(突出部)660b,660cが設けられており、段差部660b,660cの間には凹部660eが形成されている。そして、これらの2つの段差部660b,660cは、未定着のトナー像Tが加熱定着された記録紙Pの加熱定着面を定着ベルト230から分離する方向にガイドするように、それぞれの高さが設定されている。すなわち、ガイド方向の下流側に位置する段差部660cは、ガイド方向の上流側に位置する段差部660bに比べて、その頂点が、図5に示した発熱体である定着ベルト230及び加圧ローラ240の位置よりも加熱手段である誘導加熱装置250側に位置するように設けられている。
ところで、この種の加熱定着方式の定着装置においては、図10に示す加熱定着された記録紙Pの加熱定着面のシート幅方向両側部Pcが、加熱による収縮により定着ベルト230に対して接近する方向にカールしやすい。
特に、記録紙PがOHPシートの場合には、定着ベルト230の表面から支障なく分離されても、未定着のトナー像Tの加熱定着時の熱により記録紙Pが軟化するため、そのシート幅方向両側部Pcが定着ベルト230に対して張り付き気味な状態で搬送される。
このため、この種の定着装置では、記録紙Pのシート幅方向両側部Pcが他の部位よりも多く加熱され、記録紙Pのシート幅方向両側部Pcの未定着のトナー像Tが過剰に溶融して画像乱れを起こしやすくなる。
そこで、本実施の形態2に係る定着装置のセパレータ660は、図9に示すように、そのガイド面660aに設けたシート搬送方向下流側の段差部660cのガイド幅方向両端部660dの高さが、段差部660cのガイド幅方向中央部660eの高さよりも大きくなるように形成されている。
本実施の形態2に係る定着装置においては、記録紙Pがセパレータ660のガイド面660aによりガイドされることにより、図10に示すように、記録紙Pのシート幅方向両側部Pcの加熱定着面が、段差部660cのガイド幅方向両端部660dとガイド幅方向中央部660eとの高低差によって背面側に湾曲される。
本実施の形態2に係る定着装置においては、図10に示したように、記録紙Pのシート幅方向両側部Pcの加熱定着面が背面側に湾曲されるので、記録紙Pのシート幅方向両側部Pcが定着ベルト230から分離されやすくなり、前述したような画像乱れを防止できるようになる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る定着装置について説明する。図11は、本実施の形態3に係る定着装置におけるセパレータの構成を示す分解斜視図である。
図11に示すように、このセパレータ860は、図6に示したセパレータ260と同様、支持部材290に、ビス261,262により着脱自在に取り付けられている。また、このセパレータ860は、定着ベルト230と加圧ローラ240との定着ニップ部Nで加熱定着された記録紙Pの加熱定着面を、定着ベルト230から分離する方向にガイドするためのガイド面860aを有している。
さらに、セパレータ860のガイド面860aには、ガイド面860aのガイド幅方向に沿って隆起した2つの段差部860b,860cが設けられており、段差部860b,860cの間には凹部860fが形成されている。そして、これらの2つの段差部860b,860cは、未定着のトナー像Tが加熱定着された記録紙Pの加熱定着面を定着ベルト230から分離する方向にガイドするように、それぞれの高さが設定されている。すなわち、ガイド方向の下流側に位置する段差部860cは、ガイド方向の上流側に位置する段差部860bに比べて、その頂点が、図5に示した発熱体である定着ベルト230及び加圧ローラ240の位置よりも加熱手段である誘導加熱装置250側に位置するように設けられている。
ところで、この種の加熱定着方式の定着装置においては、前述したように、記録紙Pのシート幅方向両側部Pcが加熱定着面の加熱による収縮により定着ベルト230に対して接近する方向にカールしやすい。このため、この種の定着装置では、上述のようにカールした記録紙Pのシート幅方向両側部Pcがセパレータ860のガイド面860aの上流側端部に衝突してシートジャムを引き起こすおそれがある。
そこで、本実施の形態3に係る定着装置におけるセパレータ860は、その定着ベルト230と対向するガイド幅方向中央端部860dが、ガイド面860aのガイド幅方向両端部860eよりもシート搬送方向上流側に突出するように形成されている。
この定着装置においては、図11に示すように、記録紙Pのシート搬送方向中央部Pdの加熱定着面が、セパレータ860のガイド面860aのガイド幅方向中央端部860dにより、記録紙Pのシート幅方向両側部Pcの加熱定着面よりも先に確実にガイドされるようになる。
従って、本実施の形態3に係る定着装置においては、記録紙Pのシート幅方向両側部Pcがカールしている場合でも、シートジャムを起こすことなく、シート幅方向両側部Pcをセパレータ860のガイド面860aに沿うように確実にガイドできるようになる。
なお、本発明の各実施の形態に係る定着装置におけるセパレータ260,660,860は、金属板であることが好ましい。すなわち、金属板で構成したセパレータ260,660,860は、これらを樹脂板で構成した場合と比較して、それらの耐熱性が向上されるので、それらの熱変形による記録紙Pの分離不良を解消することができる。
また、金属板で構成したセパレータ260,660,860は、安価に製造できるとともに、段差部260b、260c、660b、660c、860b、860cにより、ガイド幅方向(長手方向)の機械的な曲げ強度が増大するので、組み立て位置精度を向上させることができる。
また、これらのセパレータ260,660,860は、それぞれのガイド面260a,660a,860aを低摩擦部材で被覆した構成とすることが好ましい。すなわち、ガイド面260a,660a,860aを低摩擦部材で被覆したセパレータ260,660,860は、それぞれのガイド面260a,660a,860aに対する記録紙Pの加熱定着面の付着力が低減されるので、ガイド面260a,660a,860aへの記録紙Pの張り付きがより起こりにくくなる。
一方、本実施の形態1に係る定着装置200は、図12に示すように、セパレータ260のシート搬送方向下流側に配設したシート搬送経路形成部材としてのシートガイド板284が、定着ベルト230から分離してセパレータ260のガイド面260aによりガイドされる記録紙Pを加熱定着面側に湾曲させるように構成されている。
この定着装置200においては、図12に示すように、定着ローラ230から分離してセパレータ260のガイド面260aによりガイドされる記録紙Pが、シートガイド板284により画像定着面側に湾曲される。これにより、前記画像定着面側に湾曲した記録紙Pは、その腰の強さによって湾曲する前の状態に復帰しようとし、記録紙Pの上流側部分にセパレータ260のガイド面260aから離間する向きの力が生じる。
従って、本実施の形態1に係る定着装置200においては、セパレータ260のガイド面260aに対する記録紙Pの加熱定着面の付着力がより低減され、ガイド面260aへの記録紙Pの加熱定着面の張り付きがより起こりにくくなる。
なお、上記実施の形態1から実施の形態3では、セパレータ260,660,860のガイド面260a,660a,860aに、ガイド幅方向に沿って隆起した2つの段差部(突出部)260b、260c、660b、660c、860b、860cを設けた場合を示したが、段差部を3つ以上複数設けるようにしてもよい。複数の段差部を設けることによっても、記録紙の加熱定着面とガイド面との接触面積が減少し、記録紙の加熱定着面がセパレータのガイド面に張り付きにくくなり、記録紙をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく定着ベルトから円滑に分離できるようになる。
本発明の定着装置の第1の態様は、記録媒体上の未定着画像を加熱定着する発熱体と、前記発熱体を加熱する加熱手段と、前記未定着画像が加熱定着されて所定のシート経路に沿って搬送される前記記録媒体の加熱定着面を前記発熱体から分離する方向にガイドするガイド面を有するシート分離ガイド板と、を備え、前記シート分離ガイド板のガイド面に、前記ガイド面のガイド幅方向に沿って隆起した段差部を設けた構成を採る。
この構成によれば、前記シート分離ガイド板のガイド面に設けた段差部によって、前記ガイド面に沿ってガイドされる前記記録媒体の加熱定着面と前記ガイド面との間に隙間が生じ、前記記録媒体の加熱定着面と前記ガイド面との接触面積が減少する。従って、この構成においては、前記記録媒体の加熱定着面が前記シート分離ガイド板のガイド面に張り付きにくくなり、前記記録媒体をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく前記発熱体から円滑に分離できるようになる。
本発明の定着装置の第2の態様は、上記第1の態様に記載の定着装置において、前記段差部は、シートのガイド幅方向に設けられる、複数の突出部と、前記突出部の間に形成される凹部とから成る構成を採る。
この構成によれば、段差部を複数の突出部と、前記突出部の間に形成される凹部とから構成することによって、前記ガイド面に沿ってガイドされる前記記録媒体の加熱定着面と前記ガイド面との間に隙間が生じ、前記記録媒体の加熱定着面と前記ガイド面との接触面積が減少する。従って、この構成においては、前記記録媒体の加熱定着面が前記シート分離ガイド板のガイド面に張り付きにくくなり、前記記録媒体をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく前記発熱体から円滑に分離できるようになる。
本発明の定着装置の第3の態様は、上記第2の態様に記載の定着装置において、シートのガイド幅方向の下流側に位置する前記突出部は、シートのガイド幅方向の上流側に位置する前記突出部に比べて、その頂点が、前記発熱体の周面よりも前記加熱手段側に位置するように設定された構成を採る。
この構成によれば、シートのガイド幅方向の下流側に位置する前記突出部の頂点を、上流側に位置する前記突出部に比べて前記発熱体の周面よりも前記加熱手段側に位置するように設定することによって、前記ガイド面に沿ってガイドされる前記記録媒体の後端部の加熱定着面と前記ガイド面との間に隙間が生じ易くなり、前記記録媒体の後端部と加熱定着面と前記ガイド面との接触面積が減少する。従って、この構成においては、前記記録媒体の後端部の加熱定着面が前記シート分離ガイド板のガイド面への張り付きがより起こりにくくなり、前記記録媒体の後端部をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく前記発熱体から円滑に分離できるようになる。
本発明の定着装置の第4の態様は、上記第1の態様に記載の定着装置において、前記シート分離ガイド板のシート搬送方向下流側に、前記発熱体から分離して前記シート分離ガイド板のガイド面によりガイドされる前記記録媒体を前記加熱定着面側に湾曲させるシート搬送経路形成部材を配設した構成を採る。
この構成によれば、第1の態様に記載の定着装置の効果に加えて、前記発熱体から分離して前記シート分離ガイド板のガイド面によりガイドされる前記記録媒体が、前記シート搬送経路形成部材により前記画像定着面側に湾曲される。これにより、前記画像定着面側に湾曲した記録媒体は、その腰の強さによって湾曲する前の状態に復帰しようとし、前記記録媒体の上流側部分に前記シート分離ガイド板のガイド面から離間する向きの力が生じる。従って、この構成においては、前記シート分離ガイド板のガイド面に対する前記記録媒体の加熱定着面の付着力がより低減され、前記ガイド面への前記記録媒体の加熱定着面の張り付きがより起こりにくくなる。
本発明の定着装置の第5の態様は、上記第1の態様の定着装置において、前記シート分離ガイド板のガイド面に設けた段差部のガイド幅方向両端部の高さを、前記段差部のガイド幅方向中央部の高さよりも大きく形成した構成を採る。
この構成によれば、第1の態様に記載の定着装置の効果に加えて、前記記録媒体が前記シート分離ガイド板のガイド面によりガイドされることにより、前記記録媒体のシート幅方向両側部の加熱定着面が、前記ガイド面に設けた段差部のガイド幅方向両端部とガイド幅方向中央部との高低差によって背面側に湾曲される。このように、前記記録媒体のシート幅方向両側部の加熱定着面を背面側に湾曲させることによって、前記記録媒体のシート幅方向両側部の画像乱れを防止することができる。すなわち、この種の定着装置においては、加熱定着された記録媒体の加熱定着面のシート幅方向両側部が、加熱による収縮により前記発熱体に対して接近する方向にカールしやすい。特に、記録媒体がOHPシートの場合には、前記発熱体の表面から支障なく分離されても、未定着画像の加熱定着時の熱により記録媒体が軟化するため、そのシート幅方向両側部が前記発熱体に対して張り付き気味な状態で搬送される。このため、この種の定着装置では、前記記録媒体のシート幅方向両側部が他の部位よりも多く加熱され、前記記録媒体のシート幅方向両側部の未定着画像が過剰に溶融して画像乱れを起こしやすくなる。この構成においては、前記記録媒体のシート幅方向両側部の加熱定着面が背面側に湾曲されるので、前記記録媒体のシート幅方向両側部が前記発熱体から分離されやすくなり、前記画像乱れが防止されるようになる。
本発明の定着装置の第6の態様は、上記第1の態様に記載の定着装置において、前記シート分離ガイド板の前記ガイド面の前記発熱体と対向するガイド幅方向中央端部を、前記ガイド面のガイド幅方向両端部よりもシート搬送方向上流側に突出するように形成した構成を採る。
この構成によれば、第1の態様に記載の定着装置の効果に加えて、前記記録媒体のシート搬送方向中央部の加熱定着面が、前記シート分離ガイド板のガイド面のガイド幅方向中央端部により、前記記録媒体のシート幅方向両側部の加熱定着面よりも先に確実にガイドされるようになる。すなわち、この種の加熱定着方式の定着装置においては、前記記録媒体のシート幅方向両側部が加熱定着面の加熱による収縮により前記発熱体に対して接近する方向にカールしやすい。このため、この種の定着装置では、上述のようにカールした前記記録媒体のシート幅方向両側部が前記シート分離ガイド板のガイド面の上流側端部に衝突してシートジャムを引き起こすおそれがある。この構成によれば、前記記録媒体のシート搬送方向上流側に突出した前記シート分離ガイド板のガイド面のガイド幅方向中央端部によって、前記記録媒体のシート幅方向中央部の加熱定着面を確実にガイドすることができる。従って、この構成においては、前記記録媒体のシート幅方向両側部がカールしている場合でも、シートジャムを起こすことなく前記シート幅方向両側部を前記ガイド面に沿うように確実にガイドできるようになる。
本発明の定着装置の第7の態様は、上記第1の態様に記載の定着装置において、前記シート分離ガイド板のガイド面を低摩擦部材で被覆した構成を採る。
この構成によれば、第1の態様に記載の定着装置の効果に加えて、前記シート分離ガイド板のガイド面に対する前記記録媒体の加熱定着面の付着力が低減されるので、前記ガイド面への前記記録媒体の張り付きがより起こりにくくなる。
本発明の定着装置の第8の態様は、上記第1の態様に記載の定着装置において、前記シート分離ガイド板は、金属板である構成を採る。
この構成によれば、第1の態様に記載の定着装置の効果に加えて、前記シート分離ガイド板を樹脂板で構成した場合と比較して前記シート分離ガイド板の耐熱性が向上されるので、前記シート分離ガイド板の熱変形による前記記録媒体の分離不良を解消することができる。また、この構成においては、前記シート分離ガイド板を安価に製造できるとともに、前記段差部により前記シート分離ガイド板のガイド幅方向(長手方向)の機械的な曲げ強度が増大するので、前記シート分離ガイド板の組み立て位置精度が向上する。このシート分離ガイド板の耐熱性及び組み立て位置精度は、定着装置における記録媒体の分離性能を左右するため極めて重要となる。
本発明の画像形成装置の第9の態様は、記録媒体上に未定着画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段により前記記録媒体上に形成された未定着画像を加熱された発熱体により加熱定着する定着手段とを備え、前記定着手段として、上記第1の態様から上記第8の態様のいずれかに記載の定着装置を用いる構成を採る。
この構成によれば、前記発熱体により前記未定着画像が加熱定着された前記記録媒体をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく前記発熱体から円滑に分離することができるので、画像品質の高いプリントを無駄なく得ることができる。
本明細書は、2004年1月23日出願の特願2004−016168に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
本発明は、記録媒体上の未定着画像を加熱定着させる定着装置、特に電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の画像形成装置に用いられる定着装置の加熱定着後の記録媒体をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく発熱体から円滑に分離することを可能にすることである。
本発明は、記録媒体上の未定着画像を加熱定着させる定着装置に関し、特に電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の画像形成装置に用いて有用な定着装置に関する。
この種の画像形成装置では、一般に加熱方式の定着装置が用いられている。この加熱方式の定着装置は、無端ベルト又はローラなどからなる発熱体、前記発熱体を加熱する加熱手段及び前記発熱体に圧接する加圧手段などを備えている。
前記加熱手段は、例えば、ハロゲンランプ又は電磁誘導加熱(IH;induction heating )装置などで構成されている。前記加圧手段は、ゴムローラ又はスポンジローラなどからなり、前記発熱体に当接回転して前記発熱体との間に形成されるニップで記録紙又はOHPシートなどの記録媒体を挟持搬送する。
この加熱方式の定着装置では、前記ニップで前記記録媒体を挟持搬送することにより前記発熱体の熱で前記記録媒体上に形成された未定着画像のトナーを溶融し、この溶融したトナーの粘着力により前記未定着画像を前記記録媒体上に定着させている。
このため、この定着装置においては、加熱により溶融したトナーの粘着力により前記記録媒体が前記発熱体に巻き付く現象が起こりやすい。このような現象は、加熱定着される記録媒体のシート搬送方向先端部にベタ画像が形成されている場合に発生しやすい。また、前記現象は、定着装置の電源投入時よりも定着装置がある程度使用されて暖まっている状態のときの方が発生しやすい。
そこで、この種の定着装置では、例えば、前記ニップよりも下流側の発熱体の表面にシート分離手段としての分離爪を当接するように配設し、加熱定着後の記録媒体を前記分離爪により前記発熱体から強制的に分離するようにしている(例えば、特許文献1など参照)。
ところが、前記シート分離手段として分離爪を用いた定着装置は、その発熱体に前記分離爪が当接した構成となるため、前記発熱体の表面に前記分離爪の当接痕が付きやすいという不具合がある。この不具合は、モノクロ画像用の定着装置のように前記発熱体の硬度を比較的高くできる場合には問題となることも少ないが、カラー画像用の定着装置のように前記発熱体に弾性層が形成されているような場合には前記発熱体の寿命及び定着画像の画質を著しく低下させる原因となる。
一方、前記シート分離手段として、分離爪の替わりにシート分離ガイド板を用い、このシート分離ガイド板により加熱定着後の記録媒体を前記発熱体から分離する定着装置が知られている(例えば、特許文献2など参照)。
図1は、前記シート分離手段としてシート分離ガイド板(以下、これを「セパレータ」という)を用いた定着装置における記録媒体(記録紙)の分離開始状態を示す概略断面図である。図1に示すように、この定着装置10は、前記発熱体としての定着ローラ11、前記加圧手段としての加圧ローラ12、記録紙Pの搬送経路を形成するシートガイド板13,14,15及びセパレータ16などを備えている。
図1において、記録紙Pは、図示しない画像形成手段により未定着のトナー像Tが形成された後、定着装置10に向けて搬送される。この記録紙Pは、定着装置10のシート搬入口に設けられた一対のシートガイド板13,14の間を通って、定着ローラ11と加圧ローラ12との圧接部である定着ニップ部Nにより挟持されて矢印方向に搬送される。定着ニップ部Nを通過した記録紙Pは、定着ローラ11の曲率により先端部Paが定着ローラ11の表面から離間される。
セパレータ16は、定着ローラ11の表面から離間された記録紙Pの先端部Paをガイド面16aによりガイドして記録紙Pを定着ローラ11の表面から分離する。
このように、この定着装置10においては、まず、記録紙Pの先端部Paを定着ローラ11の曲率によりその表面から離間させ、次いで、この定着ローラ11の表面から離間した記録紙Pの先端部Paをセパレータ16のガイド面16aによりガイドして記録紙Pを定着ローラ11から分離している。
従って、この定着装置10においては、図1に示すように、定着ローラ11の表面から記録紙Pを分離するセパレータ16を定着ローラ11に対して非接触となるように配設できるので、前記分離爪のように定着ローラ11に当接痕が付くことがなく、定着ローラ11の寿命低下及び定着画像の画質低下を招くことがなくなる。
特開2003−215967号公報
特開平07−181826号公報
しかしながら、前記従来の前記シート分離ガイド板を用いた加熱定着方式の定着装置は、加熱定着後の記録媒体が前記シート分離ガイド板に沿って分離搬送される過程でシートジャム及び画像乱れが発生しやすいという不具合がある。
すなわち、この種の定着装置では、記録媒体上の未定着画像(トナー像)が発熱体により加熱溶融されてから固化(記録媒体上に定着)するまでにある程度の時間を要する。このトナー像が溶融してから固化するまでに要する時間は、記録媒体の搬送速度、トナーの材質、記録媒体へのトナー付着量、発熱体の発熱温度、定着装置の内部温度及び環境温度などの種々の条件により微妙に変化する。
従って、このような加熱定着方式の定着装置においては、前記発熱体の加熱定着部位から前記シート分離ガイド板の上流端までの距離を前記記録媒体が移動する間に、前記記録媒体上のトナー像が必ずしも固化し終えているとは限らない。
このため、この種の定着装置では、例えば、図2に示すように、記録紙P上のトナー像が固化しきらない状態のままセパレータ16のガイド面16aに沿って記録紙Pが移動し、この半固化状態のトナー像がセパレータ16のガイド面16aに張り付いたり摺擦したりしてシートジャム及び画像乱れが発生することがある。
このようなシートジャム及び画像乱れは、前記記録媒体上に形成されたトナー像がベタ画像の場合に発生しやすい。これは、ベタ画像は通常の画像よりも付着トナー量が多くなるため溶融したトナーが固化するまでにより長い時間がかかることによる。
また、このシートジャム及び画像乱れは、前記ベタ画像が前記記録媒体のシート搬送方向後端部に形成されている場合に特に発生しやすい。これは、例えば、図3に示すように、記録紙Pの後端部Pbは、定着ローラ11と加圧ローラ12との定着ニップ部Nから抜
け出した瞬間にフリーな状態になることによる。すなわち、記録紙Pの後端部Pbは、フリーな状態になった瞬間にセパレータ16のガイド面側に跳ね上がり、その全面がセパレータ16のガイド面16aに密着するようになる。このため、このセパレータ16のガイド面16aに密着した記録紙Pの後端部Pbにベタ画像が形成されていると、この後端部Pbがガイド面16aに張り付いてシートジャム及び画像乱れが発生しやすくなる。
また、このシートジャム及び画像乱れは、定着装置の内部温度が高くなり前記シート分離ガイド板が高温になった場合も、前記記録媒体上の加熱定着されたトナー像が固化しにくくなったり再溶融したりするため発生しやすい。
本発明の目的は、加熱定着後の記録媒体をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく発熱体から円滑に分離することができる定着装置を提供することである。
本発明の定着装置は、記録媒体上の未定着画像を加熱定着する発熱体と、前記発熱体を加熱する加熱手段と、前記未定着画像が加熱定着されて所定のシート経路に沿って搬送される前記記録媒体の加熱定着面を前記発熱体から分離する方向にガイドするガイド面を有するシート分離ガイド板と、を備え、前記シート分離ガイド板のガイド面に、前記ガイド面のガイド幅方向に沿って隆起した段差部を設けた構成を採る。
本発明によれば、加熱定着後の記録媒体をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく発熱体から円滑に分離することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図にお
いて同一の構成又は機能を有する構成要素及び相当部分には、同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図4は、本発明の実施の形態1に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の構成を示す概略断面図である。図4に示すように、この画像形成装置100は、カラー画像の発色に寄与する4色のトナー像を4つの像担持体上に個別に形成し、これら4色のトナー像を中間転写体上に順次重ね合わせて一次転写した後、この一次転写像を記録媒体に一括転写(二次転写)するタンデム方式の画像形成装置である。
なお、本実施の形態1に係る定着装置は、前記タンデム方式の画像形成装置のみに限定されず、あらゆる方式の画像形成装置に搭載可能であることはいうまでもない。
また、図4において、画像形成装置100の各構成要素に付した符号の末尾の記号Y,M,C,Kは、Yはイエロー画像、Mはマゼンタ画像、Cはシアン画像、Kはブラック画像のそれぞれの画像形成に関与する構成要素を示しており、同一符号の構成要素はそれぞれ共通した構成を有している。
画像形成装置100は、前記4つの像担持体としての感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kの周囲に、帯電器120Y,120M,120C,120K、露光装置130、現像器140Y,140M,140C,140K、転写器150Y,150M,150C,150K、クリーニング装置160Y,160M,160C,160K及び中間転写ベルト(中間転写体)170をそれぞれ配置した画像形成ステーションSY,SM,SC,SKを有している。
図4において、各感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kは、それぞれ矢印方向に回転され、それぞれの表面が帯電器120Y,120M,120C,120Kにより一様に所定の電位に帯電される。
帯電された各感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kは、露光装置130により特定色の画像データに対応したレーザビームの走査線130Y,130M,130C,130Kが照射される。これにより、各感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kの表面に前記特定色毎の静電潜像が形成される。
感光体ドラム110Y,110M,110C,110K上に形成された前記特定色毎の静電潜像は、現像器140Y,140M,140C,140Kにより顕像化される。これにより、各感光体ドラム110Y,110M,110C,110K上に、カラー画像の発色に寄与する4色の未定着画像が形成される。
感光体ドラム110Y,110M,110C,110K上に顕像化された4色のトナー像は、転写器150Y,150M,150C,150Kにより、前記中間転写体としての無端状の中間転写ベルト170に一次転写される。これにより、感光体ドラム110Y,110M,110C,110K上に形成された4色のトナー像が順次重ね合わされて中間転写ベルト170上にフルカラー画像が形成される。
各感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kは、中間転写ベルト170にトナー像を転写した後、クリーニング装置160Y,160M,160C,160Kにより、それぞれの表面に残っている残留トナーが除去される。
ここで、露光装置130は、感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kに
対して所定の傾きをもって配置されている。また、中間転写ベルト170は、駆動ローラ171と従動ローラ172とに懸架されており、駆動ローラ171の回転により、図4において矢印A方向へ回動される。
一方、画像形成装置100の下部には、記録媒体としての印字用紙などの記録紙Pが収納された給紙カセット180が設けられている。記録紙Pは、給紙ローラ181により給紙カセット180から1枚ずつ所定のシート経路に送り出される。
前記シート経路に送り出された記録紙Pは、従動ローラ172に懸架された中間転写ベルト170の外周面と中間転写ベルト170の外周面に接触する二次転写ローラ190とで形成される転写ニップ部を通過する際に、中間転写ベルト170上に形成されたフルカラー画像(未定着画像)が二次転写ローラ190により一括転写される。
記録紙Pに一括転写された未定着のフルカラー画像は、図5に詳述する定着装置200の定着ローラ210及び加熱ローラ220に懸架された定着ベルト230の外周面と定着ベルト230の外周面に接触する加圧ローラ240とで形成される定着ニップ部Nを通過することにより、記録紙Pに加熱定着される。
なお、画像形成装置100には、その筐体の一部を成す開閉自在のドア101が設けられており、このドア101の開閉により、定着装置200の交換やメンテナンス及び前記用紙搬送路に詰まった記録紙Pのジャム処理などを行なうことができる。
次に、図5を参照して画像形成装置100に搭載されている本実施の形態1に係る定着装置200について説明する。
本実施の形態1に係る定着装置200は、電磁誘導加熱(IH;induction heating )方式の定着装置であって、図5に示すように、定着ローラ210、発熱体としての加熱ローラ220、発熱体としての定着ベルト230、加圧ローラ240、加熱手段としての誘導加熱装置250、シート分離ガイド板としてのセパレータ260及びシート搬送経路形成部材としてのシートガイド板281,282,283,284などを備えている。
この定着装置200は、誘導加熱装置250により生成した磁界の作用によって加熱ローラ220及び定着ベルト230を加熱し、シートガイド板281,282,283,284に沿って搬送される記録紙P上の未定着画像を、加熱された定着ベルト230と加圧ローラ240との定着ニップ部Nで加熱定着するものである。
なお、本発明に係る定着装置は、定着ベルト230を使用せず、定着ローラ210が加熱ローラ220を兼ねた構成とし、この定着ローラ210により記録紙P上の未定着画像を直接加熱定着するように構成したものであってもよい。また、前記加熱手段としては、ハロゲンランプなどを熱源とするものであってもよいことはいうまでもない。
図5において、発熱体としての加熱ローラ220は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル又はこれら金属の合金等の中空円筒状の磁性金属部材からなる回転体で構成され、図示しない支持側板に固定されたベアリングにより、その両端が回転可能に支持されており、図示しない駆動手段によって回転駆動される。また、加熱ローラ220は、外径が20mm、肉厚が0.3mmの低熱容量で昇温の速い構成となっており、そのキュリー点が300℃以上となるように調整されている。
定着ローラ210は、例えばステンレススチール等の金属製の芯金を、ソリッド状又は発泡状の耐熱性を有するシリコーンゴムからなる弾性部材で被覆して構成されており、そ
の外径が30mm程度あり加熱ローラ220の外径よりも大きく形成されている。前記弾性部材は、その肉厚を3〜8mm程度、硬度を15〜50°(Asker硬度:JIS A の硬度では6〜25°)程度としている。
また、定着ローラ210には、加圧ローラ240が圧接している。この定着ローラ210と加圧ローラ240との圧接により、その圧接部に所定幅の定着ニップ部Nが形成される。
定着ベルト230は、加熱ローラ220と定着ローラ210とに懸架された耐熱性ベルトで構成されている。この定着ベルト230は、後述する誘導加熱装置250により加熱ローラ220が誘導加熱されることで、この加熱ローラ220との接触部位で加熱ローラ220の熱が伝導され、その回転によってベルト全周に亘って加熱される。
このように構成した定着装置200は、加熱ローラ220の熱容量が定着ローラ210の熱容量よりも小さくなるので、加熱ローラ220が急速に加熱されるようになり、その加熱定着開始時におけるウォームアップ時間が短縮される。
また、定着ベルト230は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の磁性を有する金属又はそれらを基材とする合金を基材とした発熱層と、この発熱層の表面を被覆するようにして設けられたシリコーンゴム又はフッ素ゴム等の弾性部材からなる弾性層と、PTFE(PolyTetra-Fluoro Ethylene )、PFY(Per Fluoro Alkoxy Fluoroplastics )、FEP(FluorinatedEtyienePropylenecopolymer )、シリコーンゴム又はフッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂あるいはゴムを単独もしくは混合して形成された離型層とを備えた多層構造の耐熱性ベルトで構成されている。
この定着ベルト230は、仮に、定着ベルト230と加熱ローラ220との間に何らかの原因で異物が混入してギャップが生じたとしても、その発熱層を誘導加熱装置250により誘導加熱して定着ベルト自体を発熱させることができる。このように、この定着ベルト230は、それ自体を誘導加熱装置250により直接加熱でき、その発熱効率が良くなり、またレスポンスが速くなるので、温度ムラが少なく加熱定着手段としての信頼性が高くなる。
加圧ローラ240は、例えば、銅又はアルミ等の熱伝導性の高い金属製の円筒部材からなる芯金の表面に、耐熱性及びトナー離型性の高い弾性部材を設けて構成されている。前記芯金としては、上記金属以外にSUS(Steel Use Stainless )を使用してもよい。
この加圧ローラ240は、前述したように、定着ベルト230を介して定着ローラ210に圧接することにより、記録紙Pを挟持搬送する定着ニップ部Nを形成している。ここで、本実施の形態1に係る定着装置200においては、加圧ローラ240の硬度を定着ローラ210の硬度よりも硬くし、加圧ローラ240の周面が定着ベルト230を介して定着ローラ210の周面に食い込むようにして定着ニップ部Nを形成している。
このため、この加圧ローラ240は、その外径は定着ローラ210と同じ30mm程度であるが、その肉圧が0.52〜5mm程度と定着ローラ140よりも薄く、その硬度も20〜8060°(Asker硬度:JIS A の硬度では6〜50°)程度と定着ローラ210よりも硬く構成されている。
このような構成の定着装置200においては、記録紙Pが加圧ローラ240の周面の表面形状に沿うように定着ニップ部Nにより挟持搬送されるので、記録紙Pの加熱定着面が定着ベルト230の表面から離れやすくなるという効果がある。
なお、定着ニップ部Nの入口側近傍の定着ベルト230の内周面には、サーミスタなどの熱応答性の高い感温素子からなる温度検出器270が当接配置されている。この定着装置200においては、温度検知器270が検知した定着ベルト230の内周面の温度に基づいて、定着ベルト230の表面温度、つまり前記未定着画像の加熱定着温度が所定の温度に維持されるように、誘導加熱装置250による加熱ローラ220及び定着ベルト230の加熱温度が制御されている。
次に、誘導加熱装置250の構成について説明する。誘導加熱装置250は、図5に示すように、定着ベルト230を介して加熱ローラ220の外周面に対向するように配置されている。誘導加熱装置250には、加熱ローラ220を覆うように湾曲形成された難燃性の樹脂からなるコイルガイド部材としての支持フレーム251が設けられている。
支持フレーム251の中心部には、サーモスタット252が、その温度検知部分を支持フレーム251から加熱ローラ220及び定着ベルト230に向けて一部表出させるようにして配設されている。このサーモスタット252は、加熱ローラ220及び定着ベルト230の温度を検知し、加熱ローラ220及び定着ベルト230の温度が異常高温度になったことを検知したときに、支持フレーム251の外周面に巻回された磁界発生手段としての励磁コイル253と図示しないインバータ回路との接続を強制遮断する。
励磁コイル253は、表面が絶縁された長い一本の励磁コイル線材を支持フレーム251に沿って加熱ローラ220の軸方向に交互に巻き付けて構成されている。この励磁コイル253の巻回部分の長さは、定着ベルト230と加熱ローラ220とが接する領域と略同じ長さになるように設定されている。
励磁コイル253は、図示しないインバータ回路に接続され、10kHz〜1MHz(好ましくは20kHz〜800kHz)の高周波交流電流が給電されることにより交番磁界を発生する。この交番磁界は、加熱ローラ220と定着ベルト230との接触領域及びその近傍部において加熱ローラ220及び定着ベルト230の発熱層に作用する。そして、この交番磁界の作用により、これらの発熱層の内部に前記交番磁界の変化を妨げる方向の渦電流が流れる。
この渦電流は、加熱ローラ220及び定着ベルト230の発熱層の抵抗に応じたジュール熱を発生させ、主として加熱ローラ220と定着ベルト230との接触領域及びその近傍部において加熱ローラ220及び定着ベルト230を電磁誘導加熱する。
一方、支持フレーム251には、励磁コイル253を囲むようにして、アーチコア254及びサイドコア255が設けられている。これらのアーチコア254及びサイドコア255は、励磁コイル253のインダクタンスを増大させ、励磁コイル253と加熱ローラ220との電磁結合を良好にする。従って、この定着装置200においては、アーチコア254及びサイドコア255の作用により、同じコイル電流でも多くの電力を加熱ローラ220へ投入することが可能となり、そのウォームアップ時間を短縮することができる。
また、支持フレーム251には、誘導加熱装置250の内部のアーチコア254及びサーモスタット252を覆うように屋根型に形成された樹脂製のハウジング256が取り付けられている。このハウジング256には、複数の放熱孔が形成されており、支持フレーム251、励磁コイル253及びアーチコア254等から発生した熱が外部に放出されるようになっている。なお、ハウジング256は、例えばアルミなどの樹脂以外の素材で形成されたものであってもよい。
また、支持フレーム251には、ハウジング256に形成された放熱孔を塞がないようにハウジング256の外面を覆うショートリング257が取り付けられている。このショートリング257は、アーチコア254の背面に位置しており、アーチコア254の背面から外部に漏れ出るわずかな漏れ磁束を打ち消す方向に渦電流が発生することで、前記漏れ磁束の磁界を打ち消す方向に磁界が発生して前記漏れ磁束による不要な輻射を防止する働きをしている。
次に、本実施の形態1に係る定着装置200の特徴部である前記シート分離ガイド板としてのセパレータ260について説明する。
図5及び図6に示すように、セパレータ260は、定着装置200の装置本体に装着された断面L字状の支持部材290に、ビス261,262により着脱自在に取り付けられている。このセパレータ260は、定着ベルト230と加圧ローラ240との定着ニップ部Nで加熱定着された記録紙Pの加熱定着面を、定着ベルト230から分離する方向にガイドするためのガイド面260aを有している。
セパレータ260のガイド面260aには、ガイド面260aのガイド幅方向に沿って隆起した2つの段差部(突出部)260b,260cが設けられており、段差部260b,260cの間には凹部260dが形成されている。これらの2つの段差部260b,260cは、図7及び図8に示すように、未定着のトナー像Tが加熱定着された記録紙Pの加熱定着面を定着ベルト230から分離する方向にガイドするように、それぞれの高さが設定されている。すなわち、ガイド方向の下流側に位置する段差部260cは、ガイド方向の上流側に位置する段差部260bに比べて、その頂点が、発熱体である定着ベルト230及び加圧ローラ240の位置よりも加熱手段である誘導加熱装置250側に位置するように設けられている。なお、図7は、記録紙Pの先端部Paの加熱定着面が定着ベルト230から分離し始める状態を示している。また、図8は、記録紙Pの加熱定着面がセパレータ260のガイド面260aにガイドされて定着ベルト230から分離搬送されている途中の状態を示している。
図7において、記録紙Pは、図4に示したように、画像形成装置100により未定着のトナー像Tが形成された後、定着装置200に向けて搬送される。定着装置200に搬送された記録紙Pは、定着装置200のシート搬入口に設けられた一対のシートガイド板281,282の間を通って、定着ベルト230と加圧ローラ240との圧接部である定着ニップ部Nにより挟持されて矢印方向に搬送される。この定着ニップ部Nを通過した記録紙Pは、定着ローラ210に懸架された定着ベルト230の曲率により先端部Paが定着ベルト230の表面から離間される。
そして、記録紙Pは、図8に示すように、セパレータ260のガイド面260aに設けた段差部260b,260cの頂点部分のみに接触するようにガイドされて定着ベルト230の表面から分離される。その後、この記録紙Pは、セパレータ260のシート搬送方向下流側のシート排出口に設けられたシート搬送経路形成部材としての一対のシートガイド板283,284の間を通って、定着装置200から排出される。
このように、この定着装置200においては、セパレータ260のガイド面260aに設けた段差部260b,260c、及び段差部260b,260c間の凹部260dによって、ガイド面260aに沿ってガイドされる記録紙Pの加熱定着面とガイド面260aとの間に隙間が生じ、記録紙Pの加熱定着面とガイド面260aとの接触面積が減少する。従って、この定着装置200においては、記録紙Pの加熱定着面がセパレータ260のガイド面260aに張り付きにくくなり、記録紙Pをシートジャム及び画像乱れを起こすことなく定着ベルト230から円滑に分離できるようになる。
また、定着装置200においては、ガイド方向の下流側に位置する段差部260cは、ガイド方向の上流側に位置する段差部260bに比べて、その頂点が、発熱体である定着ベルト230及び加圧ローラ240の位置よりも加熱手段である誘導加熱装置250側に位置するように設けられることによって、前記ガイド面260aに沿ってガイドされる記録紙Pの後端部の加熱定着面とガイド面260aとの間に隙間が生じ易くなり、録媒紙Pの後端部と加熱定着面とガイド面260aとの接触面積が減少する。従って、記録紙Pの後端部の加熱定着面がセパレータ260のガイド面260aへの張り付きがより起こりにくくなり、記録紙Pの後端部をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく定着ベルト230から円滑に分離できるようになる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る定着装置について説明する。図9は、本実施の形態2に係る定着装置におけるセパレータの構成を示す分解斜視図である。
図9に示すように、このセパレータ660は、図6に示したセパレータ260と同様、支持部材290に、ビス261,262により着脱自在に取り付けられている。また、このセパレータ660は、定着ベルト230と加圧ローラ240との定着ニップ部Nで加熱定着された記録紙Pの加熱定着面を、定着ベルト230から分離する方向にガイドするためのガイド面660aを有している。
さらに、セパレータ660のガイド面660aには、ガイド面660aのガイド幅方向に沿って隆起した2つの段差部(突出部)660b,660cが設けられており、段差部660b,660cの間には凹部660eが形成されている。そして、これらの2つの段差部660b,660cは、未定着のトナー像Tが加熱定着された記録紙Pの加熱定着面を定着ベルト230から分離する方向にガイドするように、それぞれの高さが設定されている。すなわち、ガイド方向の下流側に位置する段差部660cは、ガイド方向の上流側に位置する段差部660bに比べて、その頂点が、図5に示した発熱体である定着ベルト230及び加圧ローラ240の位置よりも加熱手段である誘導加熱装置250側に位置するように設けられている。
ところで、この種の加熱定着方式の定着装置においては、図10に示す加熱定着された記録紙Pの加熱定着面のシート幅方向両側部Pcが、加熱による収縮により定着ベルト230に対して接近する方向にカールしやすい。
特に、記録紙PがOHPシートの場合には、定着ベルト230の表面から支障なく分離されても、未定着のトナー像Tの加熱定着時の熱により記録紙Pが軟化するため、そのシート幅方向両側部Pcが定着ベルト230に対して張り付き気味な状態で搬送される。
このため、この種の定着装置では、記録紙Pのシート幅方向両側部Pcが他の部位よりも多く加熱され、記録紙Pのシート幅方向両側部Pcの未定着のトナー像Tが過剰に溶融して画像乱れを起こしやすくなる。
そこで、本実施の形態2に係る定着装置のセパレータ660は、図9に示すように、そのガイド面660aに設けたシート搬送方向下流側の段差部660cのガイド幅方向両端部660dの高さが、段差部660cのガイド幅方向中央部660eの高さよりも大きくなるように形成されている。
本実施の形態2に係る定着装置においては、記録紙Pがセパレータ660のガイド面660aによりガイドされることにより、図10に示すように、記録紙Pのシート幅方向両
側部Pcの加熱定着面が、段差部660cのガイド幅方向両端部660dとガイド幅方向中央部660eとの高低差によって背面側に湾曲される。
本実施の形態2に係る定着装置においては、図10に示したように、記録紙Pのシート幅方向両側部Pcの加熱定着面が背面側に湾曲されるので、記録紙Pのシート幅方向両側部Pcが定着ベルト230から分離されやすくなり、前述したような画像乱れを防止できるようになる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る定着装置について説明する。図11は、本実施の形態3に係る定着装置におけるセパレータの構成を示す分解斜視図である。
図11に示すように、このセパレータ860は、図6に示したセパレータ260と同様、支持部材290に、ビス261,262により着脱自在に取り付けられている。また、このセパレータ860は、定着ベルト230と加圧ローラ240との定着ニップ部Nで加熱定着された記録紙Pの加熱定着面を、定着ベルト230から分離する方向にガイドするためのガイド面860aを有している。
さらに、セパレータ860のガイド面860aには、ガイド面860aのガイド幅方向に沿って隆起した2つの段差部860b,860cが設けられており、段差部860b,860cの間には凹部860fが形成されている。そして、これらの2つの段差部860b,860cは、未定着のトナー像Tが加熱定着された記録紙Pの加熱定着面を定着ベルト230から分離する方向にガイドするように、それぞれの高さが設定されている。すなわち、ガイド方向の下流側に位置する段差部860cは、ガイド方向の上流側に位置する段差部860bに比べて、その頂点が、図5に示した発熱体である定着ベルト230及び加圧ローラ240の位置よりも加熱手段である誘導加熱装置250側に位置するように設けられている。
ところで、この種の加熱定着方式の定着装置においては、前述したように、記録紙Pのシート幅方向両側部Pcが加熱定着面の加熱による収縮により定着ベルト230に対して接近する方向にカールしやすい。このため、この種の定着装置では、上述のようにカールした記録紙Pのシート幅方向両側部Pcがセパレータ860のガイド面860aの上流側端部に衝突してシートジャムを引き起こすおそれがある。
そこで、本実施の形態3に係る定着装置におけるセパレータ860は、その定着ベルト230と対向するガイド幅方向中央端部860dが、ガイド面860aのガイド幅方向両端部860eよりもシート搬送方向上流側に突出するように形成されている。
この定着装置においては、図11に示すように、記録紙Pのシート搬送方向中央部Pdの加熱定着面が、セパレータ860のガイド面860aのガイド幅方向中央端部860dにより、記録紙Pのシート幅方向両側部Pcの加熱定着面よりも先に確実にガイドされるようになる。
従って、本実施の形態3に係る定着装置においては、記録紙Pのシート幅方向両側部Pcがカールしている場合でも、シートジャムを起こすことなく、シート幅方向両側部Pcをセパレータ860のガイド面860aに沿うように確実にガイドできるようになる。
なお、本発明の各実施の形態に係る定着装置におけるセパレータ260,660,860は、金属板であることが好ましい。すなわち、金属板で構成したセパレータ260,660,860は、これらを樹脂板で構成した場合と比較して、それらの耐熱性が向上され
るので、それらの熱変形による記録紙Pの分離不良を解消することができる。
また、金属板で構成したセパレータ260,660,860は、安価に製造できるとともに、段差部260b、260c、660b、660c、860b、860cにより、ガイド幅方向(長手方向)の機械的な曲げ強度が増大するので、組み立て位置精度を向上させることができる。
また、これらのセパレータ260,660,860は、それぞれのガイド面260a,660a,860aを低摩擦部材で被覆した構成とすることが好ましい。すなわち、ガイド面260a,660a,860aを低摩擦部材で被覆したセパレータ260,660,860は、それぞれのガイド面260a,660a,860aに対する記録紙Pの加熱定着面の付着力が低減されるので、ガイド面260a,660a,860aへの記録紙Pの張り付きがより起こりにくくなる。
一方、本実施の形態1に係る定着装置200は、図12に示すように、セパレータ260のシート搬送方向下流側に配設したシート搬送経路形成部材としてのシートガイド板284が、定着ベルト230から分離してセパレータ260のガイド面260aによりガイドされる記録紙Pを加熱定着面側に湾曲させるように構成されている。
この定着装置200においては、図12に示すように、定着ローラ230から分離してセパレータ260のガイド面260aによりガイドされる記録紙Pが、シートガイド板284により画像定着面側に湾曲される。これにより、前記画像定着面側に湾曲した記録紙Pは、その腰の強さによって湾曲する前の状態に復帰しようとし、記録紙Pの上流側部分にセパレータ260のガイド面260aから離間する向きの力が生じる。
従って、本実施の形態1に係る定着装置200においては、セパレータ260のガイド面260aに対する記録紙Pの加熱定着面の付着力がより低減され、ガイド面260aへの記録紙Pの加熱定着面の張り付きがより起こりにくくなる。
なお、上記実施の形態1から実施の形態3では、セパレータ260,660,860のガイド面260a,660a,860aに、ガイド幅方向に沿って隆起した2つの段差部(突出部)260b、260c、660b、660c、860b、860cを設けた場合を示したが、段差部を3つ以上複数設けるようにしてもよい。複数の段差部を設けることによっても、記録紙の加熱定着面とガイド面との接触面積が減少し、記録紙の加熱定着面がセパレータのガイド面に張り付きにくくなり、記録紙をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく定着ベルトから円滑に分離できるようになる。
本発明の定着装置の第1の態様は、記録媒体上の未定着画像を加熱定着する発熱体と、前記発熱体を加熱する加熱手段と、前記未定着画像が加熱定着されて所定のシート経路に沿って搬送される前記記録媒体の加熱定着面を前記発熱体から分離する方向にガイドするガイド面を有するシート分離ガイド板と、を備え、前記シート分離ガイド板のガイド面に、前記ガイド面のガイド幅方向に沿って隆起した段差部を設けた構成を採る。
この構成によれば、前記シート分離ガイド板のガイド面に設けた段差部によって、前記ガイド面に沿ってガイドされる前記記録媒体の加熱定着面と前記ガイド面との間に隙間が生じ、前記記録媒体の加熱定着面と前記ガイド面との接触面積が減少する。従って、この構成においては、前記記録媒体の加熱定着面が前記シート分離ガイド板のガイド面に張り付きにくくなり、前記記録媒体をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく前記発熱体から円滑に分離できるようになる。
本発明の定着装置の第2の態様は、上記第1の態様に記載の定着装置において、前記段差部は、シートのガイド幅方向に設けられる、複数の突出部と、前記突出部の間に形成される凹部とから成る構成を採る。
この構成によれば、段差部を複数の突出部と、前記突出部の間に形成される凹部とから構成することによって、前記ガイド面に沿ってガイドされる前記記録媒体の加熱定着面と前記ガイド面との間に隙間が生じ、前記記録媒体の加熱定着面と前記ガイド面との接触面積が減少する。従って、この構成においては、前記記録媒体の加熱定着面が前記シート分離ガイド板のガイド面に張り付きにくくなり、前記記録媒体をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく前記発熱体から円滑に分離できるようになる。
本発明の定着装置の第3の態様は、上記第2の態様に記載の定着装置において、シートのガイド幅方向の下流側に位置する前記突出部は、シートのガイド幅方向の上流側に位置する前記突出部に比べて、その頂点が、前記発熱体の周面よりも前記加熱手段側に位置するように設定された構成を採る。
この構成によれば、シートのガイド幅方向の下流側に位置する前記突出部の頂点を、上流側に位置する前記突出部に比べて前記発熱体の周面よりも前記加熱手段側に位置するように設定することによって、前記ガイド面に沿ってガイドされる前記記録媒体の後端部の加熱定着面と前記ガイド面との間に隙間が生じ易くなり、前記記録媒体の後端部と加熱定着面と前記ガイド面との接触面積が減少する。従って、この構成においては、前記記録媒体の後端部の加熱定着面が前記シート分離ガイド板のガイド面への張り付きがより起こりにくくなり、前記記録媒体の後端部をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく前記発熱体から円滑に分離できるようになる。
本発明の定着装置の第4の態様は、上記第1の態様に記載の定着装置において、前記シート分離ガイド板のシート搬送方向下流側に、前記発熱体から分離して前記シート分離ガイド板のガイド面によりガイドされる前記記録媒体を前記加熱定着面側に湾曲させるシート搬送経路形成部材を配設した構成を採る。
この構成によれば、第1の態様に記載の定着装置の効果に加えて、前記発熱体から分離して前記シート分離ガイド板のガイド面によりガイドされる前記記録媒体が、前記シート搬送経路形成部材により前記画像定着面側に湾曲される。これにより、前記画像定着面側に湾曲した記録媒体は、その腰の強さによって湾曲する前の状態に復帰しようとし、前記記録媒体の上流側部分に前記シート分離ガイド板のガイド面から離間する向きの力が生じる。従って、この構成においては、前記シート分離ガイド板のガイド面に対する前記記録媒体の加熱定着面の付着力がより低減され、前記ガイド面への前記記録媒体の加熱定着面の張り付きがより起こりにくくなる。
本発明の定着装置の第5の態様は、上記第1の態様の定着装置において、前記シート分離ガイド板のガイド面に設けた段差部のガイド幅方向両端部の高さを、前記段差部のガイド幅方向中央部の高さよりも大きく形成した構成を採る。
この構成によれば、第1の態様に記載の定着装置の効果に加えて、前記記録媒体が前記シート分離ガイド板のガイド面によりガイドされることにより、前記記録媒体のシート幅方向両側部の加熱定着面が、前記ガイド面に設けた段差部のガイド幅方向両端部とガイド幅方向中央部との高低差によって背面側に湾曲される。このように、前記記録媒体のシート幅方向両側部の加熱定着面を背面側に湾曲させることによって、前記記録媒体のシート幅方向両側部の画像乱れを防止することができる。すなわち、この種の定着装置においては、加熱定着された記録媒体の加熱定着面のシート幅方向両側部が、加熱による収縮によ
り前記発熱体に対して接近する方向にカールしやすい。特に、記録媒体がOHPシートの場合には、前記発熱体の表面から支障なく分離されても、未定着画像の加熱定着時の熱により記録媒体が軟化するため、そのシート幅方向両側部が前記発熱体に対して張り付き気味な状態で搬送される。このため、この種の定着装置では、前記記録媒体のシート幅方向両側部が他の部位よりも多く加熱され、前記記録媒体のシート幅方向両側部の未定着画像が過剰に溶融して画像乱れを起こしやすくなる。この構成においては、前記記録媒体のシート幅方向両側部の加熱定着面が背面側に湾曲されるので、前記記録媒体のシート幅方向両側部が前記発熱体から分離されやすくなり、前記画像乱れが防止されるようになる。
本発明の定着装置の第6の態様は、上記第1の態様に記載の定着装置において、前記シート分離ガイド板の前記ガイド面の前記発熱体と対向するガイド幅方向中央端部を、前記ガイド面のガイド幅方向両端部よりもシート搬送方向上流側に突出するように形成した構成を採る。
この構成によれば、第1の態様に記載の定着装置の効果に加えて、前記記録媒体のシート搬送方向中央部の加熱定着面が、前記シート分離ガイド板のガイド面のガイド幅方向中央端部により、前記記録媒体のシート幅方向両側部の加熱定着面よりも先に確実にガイドされるようになる。すなわち、この種の加熱定着方式の定着装置においては、前記記録媒体のシート幅方向両側部が加熱定着面の加熱による収縮により前記発熱体に対して接近する方向にカールしやすい。このため、この種の定着装置では、上述のようにカールした前記記録媒体のシート幅方向両側部が前記シート分離ガイド板のガイド面の上流側端部に衝突してシートジャムを引き起こすおそれがある。この構成によれば、前記記録媒体のシート搬送方向上流側に突出した前記シート分離ガイド板のガイド面のガイド幅方向中央端部によって、前記記録媒体のシート幅方向中央部の加熱定着面を確実にガイドすることができる。従って、この構成においては、前記記録媒体のシート幅方向両側部がカールしている場合でも、シートジャムを起こすことなく前記シート幅方向両側部を前記ガイド面に沿うように確実にガイドできるようになる。
本発明の定着装置の第7の態様は、上記第1の態様に記載の定着装置において、前記シート分離ガイド板のガイド面を低摩擦部材で被覆した構成を採る。
この構成によれば、第1の態様に記載の定着装置の効果に加えて、前記シート分離ガイド板のガイド面に対する前記記録媒体の加熱定着面の付着力が低減されるので、前記ガイド面への前記記録媒体の張り付きがより起こりにくくなる。
本発明の定着装置の第8の態様は、上記第1の態様に記載の定着装置において、前記シート分離ガイド板は、金属板である構成を採る。
この構成によれば、第1の態様に記載の定着装置の効果に加えて、前記シート分離ガイド板を樹脂板で構成した場合と比較して前記シート分離ガイド板の耐熱性が向上されるので、前記シート分離ガイド板の熱変形による前記記録媒体の分離不良を解消することができる。また、この構成においては、前記シート分離ガイド板を安価に製造できるとともに、前記段差部により前記シート分離ガイド板のガイド幅方向(長手方向)の機械的な曲げ強度が増大するので、前記シート分離ガイド板の組み立て位置精度が向上する。このシート分離ガイド板の耐熱性及び組み立て位置精度は、定着装置における記録媒体の分離性能を左右するため極めて重要となる。
本発明の画像形成装置の第9の態様は、記録媒体上に未定着画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段により前記記録媒体上に形成された未定着画像を加熱された発熱体により加熱定着する定着手段とを備え、前記定着手段として、上記第1の態様から上記
第8の態様のいずれかに記載の定着装置を用いる構成を採る。
この構成によれば、前記発熱体により前記未定着画像が加熱定着された前記記録媒体をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく前記発熱体から円滑に分離することができるので、画像品質の高いプリントを無駄なく得ることができる。
本明細書は、2004年1月23日出願の特願2004−016168に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
本発明は、記録媒体上の未定着画像を加熱定着させる定着装置、特に電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の画像形成装置に用いられる定着装置の加熱定着後の記録媒体をシートジャム及び画像乱れを起こすことなく発熱体から円滑に分離することを可能にすることである。
従来のセパレータを用いた定着装置における記録紙の分離開始時の状態を示す概略断面図
従来のセパレータを用いた定着装置における記録紙の分離途中の状態を示す概略断面図
従来のセパレータを用いた定着装置における記録紙の分離完了時の状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の全体構成を示す概略断面図
本実施の形態1に係る定着装置の基本的な構成を示す概略断面図
本実施の形態1に係る定着装置におけるセパレータの構成を示す分解斜視図
本実施の形態1に係る定着装置における記録紙の分離開始時の状態を示す概略断面図
本実施の形態1に係る定着装置における記録紙の分離途中の状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態2に係る定着装置におけるセパレータの構成を示す分解斜視図
本実施の形態2に係る定着装置におけるセパレータにより分離される記録紙の挙動を示す概略斜視図
本発明の実施の形態3に係る定着装置におけるセパレータの構成を示す分解斜視図
本実施の形態1に係る定着装置における記録紙の分離完了時の状態を示す概略断面図