JPWO2005045778A1 - 作業機械の燃料管理システム及び燃料管理方法 - Google Patents
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Abstract
作業機械1の燃料タンク81からの燃料の盗難や、燃料タンクへの異物の混入などが行われた場合、これを検知して警報を発する燃料管理システムが開示される。作業機械1では、始動直後と停止直後に、作業機機械1の通算稼働時間と、燃料タンク81の内容物の実体積と実重量が計測され、計測結果がサーバ10に送信される。サーバ10は、通算稼働時間から作業機機械1の燃料消費量を計算し、燃料消費量から燃料タンク81に残存している筈の燃料の体積と重量を計算し、そして、計算した体積と重量を、作業機械1から送信された実体積と実重量と比較する。比較の結果、体積又は重量に大きな相違が見出された場合、燃料の盗難又は異物の混入などが行われた可能性があるので、警報をユーザ端末20及び作業機械1に送信する。
Description
本発明は、建設機械や運搬作業等の作業機械の燃料を管理するためのシステム及び方法に関する。
各地に存在する多数の建設機械や運搬車両等の作業機械の稼働状況を集中的に管理する管理システムが知られている(例えば、特許文献1)。この管理システムでは、各作業機械に種々のセンサが搭載され、それらセンサからの検出信号に基づきその作業機械の稼働データ(例えば、稼働時間、エンジン回転数、バッテリー電圧、エンジンの冷却水温、燃料の残量などのデータ)が生成される。それら作業機械の稼働データが、無線通信ネットワークを含むコンピュータネットワークを介して、サーバに収集される。サーバは、作業機械の稼働データを蓄積し、そして、稼働データのユーザ端末への提供や、稼働データに応じた作業機械の制御設定値の変更などを、上記コンピュータネットワークを介して自動的に行う。ユーザに提供された稼働データは、例えば燃料残量から燃料の給油時期を管理するなどの用途に利用され得る。
作業機械の多くは、所定の工事が完了するまで建設現場に置き去りにされることが多く、夜中に燃料が抜き取られたり、燃料タンクに土砂や水などの異物を入れられるなどの被害にあう場合がある。しかし、従来の管理システムは、最新の燃料の残量を示すことができるが、燃料の盗難などの被害にあったことを判断できるような情報を提供することはできない。
本発明の目的は、作業機械における燃料又は燃料タンクの異常をより確実に判断できる作業機械の燃料管理システムを提供することにある。
本発明の第1の側面に従う、作業機械の燃料を管理するためのシステムは、作業機械の燃料タンクの内容物の量を計測するタンク内容物量計測手段と、作業機械の燃料消費動作に関わる所定の動作値を計測する動作値計測手段と、動作値計測手段からの計測値に基づいて、燃料タンク内に存在する筈である残燃料の量である残燃料期待量を演算する残燃料量演算手段と、タンク内容物量計測手段により計測された前記内容物の量と、残燃料量演算手段により演算された前記残燃料期待量とを比較する量比較手段と、量比較手段に応答して警報を発生する警報発報手段とを備える。
好適な実施形態では、上記の構成に加え、燃料タンクへの給油が実際に実行されるとき又は実行される予定であるときに、実際の又は予定の給油量を求める給油量決定手段が更に備えられる。そして、上記残燃料量演算手段は、上記動作値計測手段からの計測値と、上記給油量決定手段により求められた給油量とに基づいて、前記残燃料期待量を演算するようになっている。
好適な実施形態では、前記動作値計測手段が、作業機械の稼働時間を計測する。そして、前記残燃料量演算手段が、計測された稼働時間から燃料消費量を演算し、演算された燃料消費量から前記残燃料期待量を演算する。変形例として、作業機械のエンジンの燃料噴射量が演算又は計測され、演算又は計測された燃料噴射量から燃料消費量が演算されるようになっていてもよい。
好適な実施形態では、上記タンク内容物量計測手段は、燃料タンクの内容物の体積を計測し、上記残燃料量演算手段は、燃料タンク内に存在する筈の残燃料の期待体積を演算する。よって、上記量比較手段は、計測されたタンク内容物の体積と、演算された残燃料期待体積とを比較する。その比較の結果、両体積の差が所定値より大きい場合、電子的な警報が発されて、その警報が作業機械のユーザや作業機械に送信される。さらに、タンク内容物の重量が計測され、上記計測されたタンク内容物の体積及び既知の燃料比重から残燃料の期待重量が演算され、そして、計測されたタンク内容物の重量と、演算された残燃料の期待重量とが比較される。そして、その比較の結果、上記両重量間の差が所定値より大きい場合にも、電子的な警報が発行される。
変形例として、上記タンク内容物量計測手段が、燃料タンクの内容物の重量を計測し、上記残燃料量演算手段が、燃料タンクに存在する筈の残燃料の期待重量を演算し、そして、計測されたタンク内容物の重量と演算された残燃料の期待重量とが比較されて、警報を発するか否か判断されるようになっていてもよい。さらに、タンク内容物の体積が計測され、上記タンク内容物量計測手段により計測された重量と既知の燃料比重とから残燃料の期待体積が演算され、そして、計測されたタンク内容物の体積と、演算された残燃料の期待体積とが比較されて、その結果に応じて警報が発されるか否か判断されるようになっていてもよい。
好適な実施形態では、作業機械の始動直後と停止直後に、上記の処理が行われる。変形例として、所定の時間間隔で定期的に上記処理が行われてもよい。
本発明の別の側面に従う、作業機械の燃料を管理するための方法は、作業機械の燃料タンクの内容物の量を計測するステップと、作業機械の燃料消費動作に関わる所定の動作値を計測するステップと、前記動作値の計測結果に基づいて、燃料タンク内に存在する筈である残燃料の量である残燃料期待量を演算するステップと、計測された前記内容物の量と、演算された前記残燃料期待量とを比較するステップと、比較結果に応答して警報を発生するステップとを有する。
本発明によれば、作業機械における燃料又は燃料タンクの異常をより確実に判断できる。
1…作業機械、11B…液面センサ、11C…重量センサ、54…残燃料体積予測処理、55…体積比較処理、56…残燃料重量予測処理、57…重量比較処理、58…警報発報処理、91…給油予定テーブル、92…燃料消費量テーブル。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る作業機械の燃料管理システムの概略構成を示す模式図である。
本実施形態での燃料管理システムは、作業機械1の燃料が盗難にあったかを判断し、盗難があった場合に警報を発報するようになっている。この燃料管理システムは、前日の作業終了時から翌日の作業開始時の間に燃料が抜き取られたり、給油予定があるにもかかわらず給油がされなかったり、あるいは、燃料抜き取りを隠すために燃料タンク内に異物が混入されたことを確実に検出する。
図1において、燃料管理システムは、作業機械1、作業機械メーカ側のネットワーク管制局5に設けられたサーバ10、作業機械1のユーザ側(或るいは、販売店側)に設けられたユーザ端末20、およびこれらを結ぶ通信網7を有する。ここで、通信網7は、作業機械1と衛星地球局6とを通信衛星8を介して結ぶ衛星通信回線、衛星地球局6とネットワーク管制局5のサーバ10を結ぶ専用の地上通信回線、サーバ10とユーザ端末20とを結ぶイントラネットあるいはインターネット等のコンピュータネットワークなどから構成される。
作業機械1及びユーザ端末20は、それぞれ1台しか図示してないが、実際には多数存在する。多数の作業機械1には、油圧ショベル、ホイルローダ、ブルドーザ、モータグレーダ、およびクレーン等の建設機械、ダンプトラック等の運搬車両、各種破砕機や発電機等の産業機械が含まれ得る。サーバ10は1台でもよいが、複数台あってもよい。1台又は少数のサーバ10による集中処理又は分散処理により、多数の作業機械1の監視及び多数のユーザ端末20への情報提供が行われる。
ユーザ端末20には、OS(Operating Systems)上において各種のアプリケーションソフトウェアが実行され得る汎用のパーソナルコンピュータが使用され得る。アプリケーションソフトウェアには、サーバ10が提供するWWW文書を表示するウェブブラウザや、電子メールの送受信を行う電子メーラ等がある。
図2は、作業機械1の燃料管理に関連する部分の構成を示す。
図2に示すように、作業機械1は、エンジン80、エンジン80のための燃料を蓄えた燃料タンク81、エンジン80を制御するエンジンコントローラ82、エンジン80により駆動される油圧システム(図示せず)を制御するバルブコントローラ83、エンジンコントローラ82やバルブコントローラ83やその他の電気部品に電力を供給するバッテリ84、及びオペレータによるイグニションキーの操作によりターンオンされるキースイッチ85などを備える。また、作業機械1は、車体内ネットワーク18を備える。車体内ネットワーク18は、作業機械1の各部の状態を計測する計測装置12、計測装置12に接続される通信コントローラ13、通信コントローラ13に接続されるGPS(Global Positioning System)センサ14、および通信コントローラ13に接続される衛星通信端末15などを含む。GPSセンサ14は、GPS衛星9(図1)からの電波を受信するためのGPSアンテナ16を有する。衛星通信端末15は、通信衛星8(図1)と通信するための衛星通信アンテナ17を有する。
計測装置12は、作業機械1のエンジン80、燃料タンク81、バッテリ84及びその他の種々の部品に取り付けられた種々のセンサと接続される。それら種々のセンサには、サービスメータ(稼働時間積算器)11A、液面センサ11B及び燃料重量センサ11Cが含まれる。サービスメータ11Aは、作業機械1の稼働時間をカウントし積算して通算稼働時間を示す検出信号を出力する。液面センサ11Bは、燃料タンク81の内容物の液面高さを測って燃料タンク81の内容物の実体積(これを、この明細書では「タンク内容物実体積」という)を示す検出信号を出力する。重量センサ11Cは、燃料タンク81の実重量を測って燃料タンク81の内容物の実重量(これを、この明細書では「タンク内容物実重量」という)を示す検出信号を出力する。ここで、燃料タンク81には通常は燃料のみが入っているが、これに異物が混入されることがある。従って、液面センサ11B及び燃料重量センサ11Cにより検出されるタンク内容物実体積及びタンク内容物実重量は、通常は、燃料タンク81内に残燃料の実体積及び実重量をそれぞれ示すことになるが、異物が混入された場合には、当然に、残燃料の実体積及び実重量とは異なる値になる。計測装置12に接続されるセンサには、さらに、図示してないが、エンジン80の冷却水温を検出する温度冷却水温度センサ、エンジン80の回転数を検出するエンジン回転数センサ、エンジン80のガバナラック位置信号に基づいてエンジン80の燃料噴射量を計測する燃料噴射量センサ、バッテリ84の出力電圧を検出するバッテリ電圧センサなどが含まれる。
計測装置12は、衛星通信端末15を用いて、衛星通信回線を通じてサーバ10と双方向通信を行うことができる。計測装置12は、上述した各種のセンサからの検出信号を受けて、作業機械1の各種の状態を示す情報を生成する。計測装置12で生成される情報には、通算稼働時間を示す稼働時間情報、タンク内容物実体積を示す体積情報、タンク内容物実重量を示す重量情報、エンジン冷却水温度を示す温度情報、エンジン回転数を示す回転数情報、燃料噴射量を示す噴射量情報、及びバッテリ電圧を示す電圧情報などがある。これらの情報を、以下の説明では、「機械情報」と総称する。
計測装置12は、定期的に、最新の機械情報を生成してそれを通信コントローラ13に送る。また、エンジンコントローラ82やバルブコントローラ83は、計測装置12から機械情報のうちの所定の幾つかの情報を取得し、それらの情報を処理することにより、それぞれの制御動作を行う。
通信コントローラ13は、例えばマイクロコンピュータであり、計測装置12は、衛星通信端末15を制御して、衛星通信回線を通じてサーバ10と双方向通信を行うことができる。通信コントローラ13は、計測装置12から定期的に又は随時に最新の上記機械情報を受けて、それをサーバ10に宛てて、衛星通信端末15を通じて衛星通信回線に出力する機能を有する。通信コントローラ13は、GPSセンサ14から受信した現在の現在位置を示す位置情報も、機械情報と一緒にサーバ10へ送る。
計測装置12、液面センサ11B、重量センサ11C、通信コントローラ13、GPSセンサ14及び衛星通信端末15は、キースイッチ85を介さずに、常時、バッテリ84からの電力を供給されるようになっている。従って、上述した機械情報のうち特に、タンク内容物実体積と実重量を示す体積情報と重量情報は、エンジン80が作動しているか否かに関わらず、何時でも、計測装置12により把握され、通信コントローラ13に通知され、そして、衛星通信網を通じてサーバ10に通知されることができる。本実施形態では、通信コントローラ13は、少なくともエンジン始動直後およびエンジン停止直後に、最新の体積情報及び重量情報を計測装置12から取得して、これをサーバ10に送信するようになっている。
通信コントローラ13は、記憶装置13Aを備え、そこには、作業機械1のユーザ名、予め設定されている作業エリア、ならびに、上述した機械情報及び位置情報の最近過去一定期間の履歴などが記憶されている。ここで、作業エリアとは、その作業機械1が存在することが許可された所定の地域範囲である。作業機械1が作業エリアの外で出たということは、作業機械1が盗難にあった可能性があることを意味する。作業エリアは、作業機械1内の通信コントローラ13だけでなく、サーバ10及びユーザ端末20においても、作業機械1と関連付けられて記憶される。サーバ10は、作業機械1から受信した位置情報に基づいて、作業エリアの外に作業機械1が存在するか否かを判断する。その結果、作業エリアの外に作業機械1が存在すると判断された場合には、サーバ10は、必要に応じて、ロック指令を衛星通信回線を通じて作業機械1に送信することで、作業機械1をロックする(例えば、イグニションキーを入れて起動しようとしても起動できないようにする)ことができる。
通信コントローラ13には更にモニタ13Bが接続される。モニタ13Bは、例えば、GPSセンサ14からの位置情報に基づくカーナビゲーションのための地図表示などに利用され得る。
ネットワーク管制局5(図1)のサーバ10は、作業機械1の始動直後及び停止直後に通信網7を通じて作業機械1から送られてくる機械情報を受信し、記憶し、そして、その機械情報(とりわけ、上述した体積情報と重量情報)を分析することにより、作業機械1から燃料が抜き取られたり、給油予定に従った給油が行われなかったり、あるいは、燃料抜き取りを隠すために燃料タンク内に異物が混入されたりした可能性を判断するようになっている。そして、サーバ10は、そのような可能性があると判断した場合には、通信網7を通じてユーザ端末20に警報を送信するようになっている。
図3は、サーバ10の機能的構成を示す。
図3に示すように、サーバ10は、通信網7との通信を制御する通信制御部41と、通信制御部41を介して受送信される情報を処理する例えばマイクロプロセッサを含む演算処理部42と、磁気記憶装置等から構成される記憶装置43とを備えている。
記憶装置43には、図示されてないが、演算処理部42により実行されるコンピュータプログラム、および、作業機械1から受信された機械情報や機械情報の分析結果などが登録されるデータベースが格納されている。そして、記憶装置43内のデータベースには、図3に示すように、前回体積記憶部43A、給油予定テーブル91、および燃料消費量テーブル92などが含まれている。前回体積記憶部43A、給油予定テーブル91、および燃料消費量テーブル92は、作業機械1ごとに設けられる。前回体積記憶部43Aには、作業機械1から前回に受信された稼動情報中の体積情報、つまり、前回の機械情報の受信時におけるタンク内容物実体積が記録される。なお、後述するように、前回体積記憶部43Aに登録された前回のタンク内容物実体積の値は、給油予定日が来る都度に予定給油量の分だけ増加するよう更新される。給油予定テーブル91と燃料消費量テーブル92は、以下に説明するようなものである。
図4は、給油予定テーブル91の一例を示す。
給油予定テーブル91には、作業機械1への給油予定を示す給油予定情報が登録される。給油予定情報には、例えば、図4示すように、作業機械1への給油予定日、および予定給油量(燃料タンク81に供給される予定の燃料の体積(「満タン」は燃料タンク81が満杯になるまで給油することを意味する)等が含まれる。作業機械1のユーザは、ユーザ端末20に作業機械1の給油予定情報を入力すると、入力された給油予定情報がユーザ端末20からサーバ10へ送信される。サーバ10は、ユーザ端末20から受信された給油予定情報を、作業機械1に対応付けられた給油予定テーブル91に登録する。
図5は、燃料消費量テーブル92の一例を示す。
燃料消費量テーブル92には、作業機械1での消費される燃料の体積(燃料消費量)が、稼働時間の関数として定義されている。燃料消費量テーブル92は、作業機械1から送信された稼働時間情報に基づいて、前回の機械情報受信時から今回の受信時までの間に作業機械1で消費された筈の燃料の体積(つまり、燃料消費量の期待値)を計算するために用いられる。なお、燃料消費量の期待値を計算する方法として、燃料消費量テーブル92のようなルックアップテーブルを用いる代わりに、予め設定された演算関数(例えば、単位時間当たりの標準的な燃料消費量を示す所定の係数を、計測された稼働時間長に乗算する演算式)を用いてもよい。
再び図3を参照して、演算処理部42は、記憶装置43内のコンピュータプログラムを実行することにより、給油予定登録処理51、機械情報登録処理52、給油予定確認処理53、残燃料体積演算処理54、体積比較処理55、残燃料重量演算処理56、重量比較手段57、警報発報手段58、および前回体積更新処理59を行う。以下では、上述した処理51〜59について説明する。
給油予定登録処理51は、ユーザ端末20から送信される給油予定情報(給油予定日や予定給油量など)を受信して、その給油予定情報を給油予定テーブル91に登録する機能である。
機械情報登録処理52は、作業機械1から送信される機械情報を受信し、受信した機械情報を記憶装置43内のデータベースに登録する機能である。受信された機械情報中、とりわけ、稼働時間情報と体積情報と重量情報は、燃料タンク81からの燃料の盗難や燃料タンク81への異物混入の有無を判断するために、サーバ10により分析されることになる。
給油予定確認処理53は、給油予定テーブル91に基づいて各給油予定日が過ぎたか否かを判定し、各給油予定日が過ぎた都度に、前回体積更新処理59を起動する機能である。前回体積更新処理59は、前回体積記憶部43Aに登録されている前回のタンク内容物実体積に、その給油予定日に対応する予定給油量を加算して、その加算値を前回体積記憶部43Aに再登録することで前回体積記憶部43Aを更新する機能である。予定給油量が「満タン」である場合には、燃料タンク81の最大容量に等しい値が前回体積記憶部43Aに再登録されることになる。
残燃料体積演算処理54は、作業機械1から機械情報が受信される都度、その受信された機械情報中の稼働時間情報に基づき、前回の受信時から今回の受信時までの間におけるd作業機械1の稼働時間長を計算し、計算された稼働時間長に基づき、燃料消費量テーブル92を参照して、前回受信時から今回受信時までの間に作業機械1で消費された筈の燃料の体積(燃料消費量)を求め、そして、計算された燃料消費量を、前回体積記憶部43Aに登録されている前回タンク内容物体積値から差し引いて、燃料タンク81内の残燃料の体積を計算する機能である。残燃料体積演算処理54により上記のようにして計算された残燃料体積を、この明細書では「残燃料期待体積」と呼ぶ。この残燃料期待体積は、燃料タンク81からの燃料の盗難や燃料タンク81への異物混入が行われず、且つ、給油が予定通りに行われる限り、作業機械1から受信された体積情報が示すタンク内容物実体積と一致する筈である。
体積比較処理55は、残燃料体積演算処理54で算出された残燃料期待体積と、作業機械1から受信された体積情報が示すタンク内容物実体積とを比較する機能である。この比較の結果、残燃料期待体積とタンク内容物実体積との間に或る程度に大きい相違が見出された場合、燃料タンク81から燃料が盗難されたか、又は、給油が予定通りに行われなかった可能性がある。
残燃料重量演算処理56は、作業機械1から受信された体積情報が示すタンク内容物実体積に、予め設定されている燃料の比重値を乗算することにより、燃料タンク81内の残燃料の重量を計算する機能である。残燃料体積演算処理54により上記のようにして計算された残燃料重量を、この明細書では「残燃料期待重量」と呼ぶ。この残燃料期待重量は、燃料タンク81の内容物が燃料のみである限り、作業機械1から受信された重量情報が示すタンク内容物実重量と一致する筈である。
重量比較処理57は、前記残燃料重量演算処理56で算出された残燃料期待重量と、作業機械1から受信された重量情報が示すタンク内容物実重量とを比較する機能である。この比較の結果、残燃料期待重量とタンク内容物実重量との間に或る程度に大きい相違が見出された場合、燃料タンク81内に異物が混入された可能性がある。
警報発報処理58は、体積比較処理55の結果及び重量比較処理57の結果に応答して、残燃料期待体積とタンク内容物実体積間、又は残燃料期待重量とタンク内容物実重量間に所定値以上に大きい相違が見出された場合、ユーザ端末20に対して通信網7を通じ、電子メールやその他の方法で、電子的な警報を送信する機能である。警報発報処理58は、ユーザ端末20だけでなく、作業機械1にも衛星通信網を通じて電子的な警報を送信して、作業機械1のモニタ13Bに警報の内容を表示させるようになっていてもよい。
図6は、サーバ10により行われる制御の流れを示す。
ステップS1、S2:ユーザによりユーザ端末20に給油予定情報が入力されると、給油予定情報登録処理51が、ユーザ端末20から給油予定情報を受信して、受信された給油予定情報を給油予定テーブル91に登録すことで、給油予定テーブル91を更新する。
ステップS3、S4:前回体積更新処理59が、給油予定テーブル91を参照して、給油予定日が過ぎたかをチェックする。チェックの結果、給油予定日が過ぎたときには、前回体積更新処理59は、その給油予定日に対応する予定給油量を給油予定テーブル91から読み、その予定給油量を前回残量記憶部43Aに記憶されている前回タンク内容物体積に加算し、その加算値を前回タンク内容物体積として前回残量記憶部43Aに再登録することで、前回残量記憶部43Aに登録された前回タンク内容物体積を更新する。
ステップS5:作業機械1から機械情報が送信されると、機械情報登録処理52がその機械情報を受信し、これをデータベースに登録する。前述したように、作業機械1は、例えばエンジン始動直後とエンジン停止直後に、機械情報を送信する。よって、ほぼ毎日2回から数回(例えば、午前の作業の開始時と終了時、及び午後の作業の開始と終了時に)、作業機械1からの機械情報がサーバ10に受信されることになる。
ところで、上述したステップS3の給油予定確認処理53は、ステップS5で機械情報が受信されたことに応答して実行されるようになっていてもよい。給油は通常、エンジンを停止した状態で行われる。給油が行われた翌日最初にエンジンが始動された時にステップS4の前回残量記憶部43Aの更新が行われることになる。
ステップS6:ステップS5で作業機械1から機械情報が受信されると、残燃料体積演算処理54が、残燃料期待体積を次のようにして計算する。すなわち、ステップS5で受信された機械情報中の稼働時間情報から、前回の機械情報受信時から今回の機械情報受信時までの間における作業機械1の稼働時間長が計算される。計算された稼働時間長に対応する燃料消費量が、燃料消費量テーブル92を参照することで算出される。算出された燃料消費量が、前回体積記憶部43Aに記憶されている前回タンク内容物体積から差し引かれ、残った値が残燃料期待体積とされる。前述したように、作業機械1からの燃料の盗難や、給油のし忘れなどがない限り、残燃料期待体積は、受信された機械情報中の体積情報により示されるタンク内容物実体積とほぼ一致する筈である。
ステップS7:残燃料期待体積が計算されると、体積比較処理55が、残燃料期待体積と、受信された体積情報により示されるタンク内容物実体積とを比較する。その結果、両者間に所定値以上の大きな違いがある場合(特に、残燃料期待体積が、タンク内容物実体積よりも所定値以上に多い場合)、これは、燃料タンク81から燃料が抜き取られたか、給油予定日に給油が行われなかった可能性があることを意味する。このような異常が検知された場合、制御はステップS10に進む。
ところで、上記比較の結果、残燃料期待体積がタンク内容物実体積よりも少ない場合には、その差が所定値以上であっても、とりあえずは異常とは判断しないようにしてもよい。給油予定日に給油が行われた場合、その給油予定日中は、このような比較結果が出るからである。このような比較結果が出た場合、翌日最初に機械情報が受信されたときに、上記差が給油によるものか、異常によるものかが判明することになる。
ステップS8:また、ステップS5で作業機械1から機械情報が受信されると、残燃料重量演算処理56が、残燃料期待重量を次のようにして計算する。すなわち、受信された体積情報により示されるタンク内容物実体積に、予め設定されている燃料の比重値が乗算され、その積値が残燃料期待重量とされる。前述したように、燃料タンク81の内容物が燃料だけである限り、この残燃料期待重量は、受信された機械情報中の重量情報により示されるタンク内容物実重量と一致する筈である。
ステップS9:残燃料期待重量が計算されると、重量比較処理57が、残燃料期待重量と、作業機械1から受信された重量情報により示されるタンク内容物実重量とを比較する。比較の結果、両者間に所定値以上の大きな違いがある場合、これは、燃料タンク81内に異物が混入された可能性があることを意味する。このような異常が検知された場合、制御はステップS10に進む。
ステップS10:上述したステップS7又はS9で、異常が検知された場合、予測残量と実残量とが合わない場合、警報発報処理58が、検知された異常の内容を表す電子的な警報をユーザ端末20や作業機械1に送信する。警報の内容は、ユーザ端末20の表示スクリーンや、作業機械1のモニタ13Bに表示される。
ステップS11:上述したステップS7又はS9で異常が検知された場合であっても検知されなかった場合であっても、制御はステップS11に進み、ここでは、前回体積更新処理59が、受信された体積情報により示されるタンク内容物実体積を、前回体積記憶部43Aに、前回タンク内容物実体積の新たな値として登録する。
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)燃料タンク81の内容物の実体積と、作業機械1の燃料消費動作から計算された本来残っているべき燃料の期待体積とが比較されることにより、燃料が燃料タンク81から抜き取られた事実を検知することが可能である。燃料漏れがある場合も、これを検知することができる。
(2)燃料タンク81内の内容物の実重量と、その内容物が燃料のみであるならばもつはずの期待重量とが比較されることにより、燃料タンクから燃料が抜かれた後に代わりに異物が混入された場合でも、この事実を検知することができる。
(3)上記検知結果に応答して自動的に電子的な警報が通信網を通じてユーザ端末20や作業機械1に送信され表示されるから、防犯効果がある。
(2)上記検知動作は、エンジン始動直後および停止直後の両時点で行われるから、上記盗難が発覚した場合、それが作業機械1のエンジン駆動中に行われたのか、また、作業機械1の休止中に行われたのかも特定でき、その情報は事後の捜査に役立つ。
(4)上記検知動作における計算では、給油予定テーブル91に記憶された給油予定に従った予定給油量も算入されるので、給油忘れも検知できる。この検知結果に応答して自動的に警報がユーザ端末20や作業機械1に送信され表示されるから、給油忘れがあった場合でも大きい遅れなしに給油をオペレータに行わせることができる。
(5)作業機械1は、エンジンが停止している間も、上記検知のための機械情報を生成してサーバ10に送信でき、サーバ10からの警報を表示することができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
作業機械1は、エンジンの起動直後および停止直後だけでなく、或いはこれに代えて、所定の時間間隔で定期的に機械情報をサーバ10に送信してもよい。特に、作業機械1の休止中、例えば数分程度の短い間隔で機械情報の送信を繰り返すと、燃料が抜き取られている最中にそれを検知して警報を出すことができるので、より防犯効果が高い。このような短周期の機械情報に基づいて、タンク内容物の体積又は重量の変化速度を計算して、その変化速度から燃料の盗難か燃料漏れかの判定を行うことも出来る。
警報はユーザ端末20や作業機械1だけでなく、販売代理店など他の関係者にも送信されてよい。
サーバ10で実行されていた上記の処理51〜59の一部または全部が、作業機械1又はユーザ端末20で実行されてもよい。例えば、作業機械1に搭載された演算処理装置(これは、通信コントローラ13又は計測装置12と同じ装置であってもよいし、それらとは別の装置であってもよい)が、上記処理51〜59の全てを実行し、異常を検知した場合に警報をモニタ13Bに表示させたり、衛星通信端末15からユーザ端末20やサーバ10に送信するようになっていてもよい。
作業機械1とサーバ10との間の通信は衛星通信網だけでなく、他の移動体通信網、例えば携帯電話通信網、を用いて行われても良い。
作業機械1の燃料消費量を計算する方法として、稼働時間に基づく方法に代えて、または併用して、他の方法を用いてもよい。例えば、エンジンコントローラ82からエンジン80へ送られる燃料噴射制御信号に基づいて燃料噴射量を計算し積算する方法を用いてもよく、それにより、より精度良く燃料消費量を計算できる。
給油が行われたとき、オペレータが実際の給油量や給油日時などの正確な給油情報を作業機械1に入力し(例えば、モニタ13Bとして入力装置付きのものを用い、その入力装置から入力する)、その入力された給油情報を作業機械1からサーバ10に送信し、そして、サーバ10がその給油情報を上記検知のための計算で使用するようにしてもよい。
上記実施形態では、燃料タンク81内に存在する筈の残燃料の期待量が期待体積の値で演算され、その期待体積が、計測された実体積と比較され、その比較結果に応じて警報が出力される。また、計測された実体積に燃料の比重が乗算されることで、残燃料の期待重量が演算され、その期待重量が、計測された実重量と比較され、その比較結果に応じて警報が出力される。しかし、変形例として、上記実施形態とは体積と重量の取り扱いが逆である次のような処理が行われてもよい。すなわち、燃料タンク81内に残存している筈の燃料の期待量が期待重量の値で演算され、その期待重量が、計測された実重量と比較され、その比較結果に応じて警報が発される。また、計測された実重量が燃料の比重で除算されることで、残燃料の期待体積が演算され、その期待体積が、計測された実体積と比較され、その比較結果に応じて警報が発される。
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、方法、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した方法、数量などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの方法、数量などの限定の一部もしくは全部の限定を外した記載は、本発明に含まれるものである。
Claims (10)
- 作業機械(1)の燃料を管理するためのシステムであって、
前記作業機械(1)の燃料タンク(81)の内容物の量を計測するタンク内容物量計測手段(11B)と、
前記作業機械(1)の燃料消費動作に関わる所定の動作値を計測する動作値計測手段(11A)と、
前記動作値計測手段(11A)からの計測値に基づいて、前記燃料タンク(81)内に存在する筈である残燃料の量である残燃料期待量を演算する残燃料量演算手段(54)と、
タンク内容物量計測手段(11B)により計測された前記内容物の量と、前記残燃料量演算手段(54)により演算された前記残燃料期待量とを比較する量比較手段(55)と、
前記量比較手段(55)に応答して警報を発生する警報発報手段(58)と
を備えた燃料管理システム。 - 請求項1記載の燃料管理システムにおいて、
前記燃料タンク(81)への給油が実際に実行されるとき又は実行される予定であるときに、実際の又は予定の給油量を求める給油量決定手段(53、59)を更に備え、
前記残燃料量演算手段(54)は、前記動作値計測手段(11A)からの計測値と、前記給油量決定手段(53、59)により求められた前記給油量とに基づいて前記残燃料期待量を演算する燃料管理システム。 - 請求項1又は2記載の燃料管理システムにおいて、
前記動作値計測手段(11A)が、前記作業機械(1)の稼働時間を計測し、
前記残燃料量演算手段(54)が、前記動作値計測手段(11A)により計測された前記稼働時間から前記作業機械(1)の燃料消費量を演算し、演算された前記燃料消費量から前記残燃料期待量を演算する燃料管理システム。 - 請求項1又は2記載の燃料管理システムにおいて、
前記動作値計測手段が、前記作業機械(1)のエンジンの燃料噴射量を演算又は計測し、
前記残燃料量演算手段(54)が、前記動作値計測手段(11A)により演算又は計測された前記燃料噴射量から前記作業機械(1)の燃料消費量を演算し、演算された前記燃料消費量から前記残燃料期待量を演算する燃料管理システム。 - 請求項1記載の燃料管理システムにおいて、
タンク内容物量計測手段(11B)は、前記燃料タンク(81)の前記内容物の体積を計測し、
前記残燃料量演算手段(54)は、前記燃料タンク(81)に存在する筈の前記残燃料の期待体積を演算する燃料管理システム。 - 請求項5記載の燃料管理システムにおいて、
前記燃料タンク(81)の内容物の重量を計測するタンク内容物重量計測手段(11C)と、
前記タンク内容物量計測手段(11B)により計測された前記内容物の体積と、前記燃料の比重とに基づいて、前記燃料タンク(81)内に存在する筈である残燃料の重量である残燃料期待重量を演算する残燃料重量演算手段(56)と、
前記タンク内容物重量計測手段(11C)により計測された前記内容物の重量と、前記残燃料重量演算手段(56)により演算された前記残燃料期待重量とを比較する重量比較手段(57)と
をさらに備え、
前記警報発報手段(58)が、前記重量比較手段(57)にも応答して警報を発生する燃料管理システム。 - 請求項1記載の燃料管理システムにおいて、
前記タンク内容物量計測手段は、前記燃料タンク(81)の前記内容物の重量を計測し、
前記残燃料量演算手段は、前記燃料タンク(81)に存在する筈の前記残燃料の期待重量を演算する燃料管理システム。 - 請求項7記載の燃料管理システムにおいて、
前記燃料タンク(81)の内容物の体積を計測するタンク内容物体積計測手段と、
前記タンク内容物量計測手段により計測された前記内容物の重量と、前記燃料の比重とに基づいて、前記燃料タンク(81)内に存在する筈である残燃料の体積である残燃料期待体積を演算する残燃料体積演算手段と、
前記タンク内容物体積計測手段により計測された前記内容物の体積と、前記残燃料体積演算手段により演算された前記残燃料期待体積とを比較する体積比較手段と
をさらに備え、
前記警報発報手段(58)が、前記体積比較手段にも応答して警報を発生する燃料管理システム。 - 請求項1記載の燃料管理システムにおいて、
前記作業機械(1)の始動直後と停止直後に、前記タンク内容物量計測手段(11B)が前記内容物の量を計測するとともに、前記動作値計測手段(11A)が前記動作値を計測する燃料管理システム。 - 作業機械(1)の燃料を管理するための方法であって、
前記作業機械(1)の燃料タンク(81)の内容物の量を計測するステップと、
前記作業機械(1)の燃料消費動作に関わる所定の動作値を計測するステップと、
前記動作値の計測結果に基づいて、前記燃料タンク(81)内に存在する筈である残燃料の量である残燃料期待量を演算するステップと、
計測された前記内容物の量と、演算された前記残燃料期待量とを比較するステップと、
比較結果に応答して警報を発生するステップと
を有する燃料管理方法。
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