JPWO2005000801A1 - モノスルホニウム塩の製造方法、カチオン重合開始剤、硬化性組成物および硬化物 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、従来提案されているスルホニウム塩の製造方法、例えば、硫酸などの無機酸やメタンスルホン酸などの強有機酸の存在下、スルフィドとスルホキシドとを縮合させた後、アルカリ金属のBF4、PF6、AsF6あるいはSbF6塩などの水溶液中で複分解させる方法(例えば、特許文献1、2参照)では、1分子中に1個のスルホニオ基を有するモノスルホニウム塩以外に、1分子中に2個のスルホニオ基を有するビススルホニウム塩が生成する。
一般に、モノスルホニウム塩に比べてビススルホニウム塩は、光重合開始能は高いものの、カチオン重合性モノマーや必要に応じて使用される希釈溶剤に対する溶解度が低いため、これらに必要濃度のスルホニウム塩を添加し溶解した後、そのスルホニウム塩溶液からビススルホニウム塩が、経日的に析出、沈降するという問題が発生することがある。
また、ビススルホニウム塩を含むカチオン重合性組成物は、経日的に増粘し易く、長期間保存できないという問題もある。
かかる問題点は、有機溶剤からの再結晶等の手段により、モノスルホニウム塩とビススルホニウム塩の混在するスルホニウム塩から、ビススルホニウム塩を除去して精製することで解決できるが、かかる精製を行うと、所望のモノスルホニウム塩の収率が大きく低下するという問題がある。
この方法によって得られる生成物は、そのままでも光カチオン重合塗料の重合開始剤などとして十分使用できるものであるが、意外にも、該生成物を含む光重合組成物を紫外線等で硬化するとき、該生成物中の未反応原料によって硬化速度が阻害され、その結果、該光重合組成物の硬化物の硬度が不十分になるという問題が発生すること、さらに、この問題は、未反応原料の残存量が4%以下であれば起こらないことがわかった。
一方、未反応原料を含む生成物は、エタノール等の溶剤を用いた洗浄、再結晶により精製することができるが、このような精製を行うことにより、スルホニウム塩の収率が数%から10%程度低下するという問題がある。
(式中、Arは置換されていてもよいアリール基を表す。R1、R2は置換されていてもよい炭化水素基または複素環基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。X−はBF4 −、PF6 −、AsF6 −またはSbF6 −を表す。)
したがって、本発明の製造方法で得られるスルホニウム塩は、カチオン重合性の塗料、コーティング剤、インキ、レジストフィルム、液状レジスト、接着剤、成型材、注型材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め剤、および光造形用の樹脂などを、光、電子線、X線などの活性エネルギー線で硬化させるためのカチオン重合開始剤として好適である。
このアリール化合物(a)としては、単環式または縮合多環式の無置換のアリール化合物、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ピレン;アルキル基で置換されたアリール化合物、例えば、トルエン、クメン、tert−ブチルベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、ドデシルベンゼン、1−メチルナフタレン、1H−インデン;アリール基で置換されたアリール化合物、例えば、ビフェニル、ビフェニレン、1,2’−ビナフチル、2−フェニルナフタレン;ニトロ基、ニトリル基、ヒドロキシ基、ハロゲン等で置換されたアリール化合物、例えば、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、フェノール、クロロベンゼン、フルオロベンゼン;置換されていてもよいアルコキシ基で置換されたアリール化合物、例えば、アニソール、エトキシベンゼン、1−メトキシナフタレン、ベンジルフェニルエーテル、ベンゾフラン;置換されていてもよいアリールオキシ基で置換されたアリール化合物、例えば、ジフェニルエーテル、2−エトキシナフタレン、4−フェノキシフェノール、キサンテン;アルキルスルホニル基で置換されたアリール化合物、例えば、メチルフェニルスルホン;アリールスルホニル基で置換されたアリール化合物、例えば、ジフェニルスルホン;置換されていてもよいアシル基で置換されたアリール化合物、例えば、アセトフェノン、アセチルアセトフェノン、2−フェニルアセトフェノン;置換されていてもよいアロイル基で置換されたアリール化合物、例えば、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、キサントン;置換されていてもよいアルキルチオ基で置換されたアリール化合物、例えば、チオアニソール、エチルチオベンゼン、ベンゾチオフェン、ベンジルフェニルスルフィド、フェナシルフェニルスルフィド;置換されていてもよいアリールチオ基で置換されたアリール化合物、例えば、ジフェニルスルフィド、ジベンゾチオフェン、(2−メチルフェニル)フェニルスルフィド、(4−メチルフェニル)フェニルスルフィド、2,2’−ジトリルスルフィド、2,3’−ジトリルスルフィド、2−フェニルチオナフタレン、9−フェニルチオアントラセン、(3−クロロフェニル)フェニルスルフィド、(4−クロロフェニル)フェニルスルフィド、3,3’−ジクロロジフェニルスルフィド、(3−ブロモフェニル)フェニルスルフィド、2,2’−ジブロモジフェニルスルフィド、3,3’−ジブロモジフェニルスルフィド、(2−メトキシフェニル)フェニルスルフィド、フェノキサチイン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−メトキシチオキサントン、4,4’−ジフェニルチオベンゾフェノン、4,4’−ジフェニルチオジフェニルエーテル、4,4’−ジフェニルチオビフェニル、(4−フェニルチオフェニル)フェニルスルフィド、(4−ベンゾイルフェニル)フェニルスルフィド、(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニル)フェニルスルフィド、(2−メチルチオベンゾイルフェニル)フェニルスルフィド等が挙げられる。
特に、ベンゼン、フェノール、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、トルエン、tert−ブチルベンゼン、アニソール、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジフェニルスルフィド、(4−クロロフェニル)フェニルスルフィド、2−フェニルチオナフタレン、9−フェニルチオアントラセン、(4−フェニルチオフェニル)フェニルスルフィド、4,4’−ジフェニルチオビフェニル、(4−ベンゾイルフェニル)フェニルスルフィド、(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニル)フェニルスルフィド、4,4’−ジフェニルチオベンゾフェノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンが好ましい。これらのアリール化合物(a)は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
R1、R2は置換されていてもよい炭化水素基または複素環基を表し、互いに同一で あっても異なっていてもよい。R1、R2としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;ピリジル基、フルフリル基等の芳香族複素環基等が挙げられる。さらに、R1、R2は互いに結合して、テトラメチレン基のような環を形成していてもよい。
前記スルホキシド化合物(b)のうち好ましいものは、置換されていてもよいジアリールスルホキシド化合物、特に、ジフェニルスルホキシド、4,4’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジメトキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホキシド、4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシドである。
スルホキシド化合物(b)は、市販のものや別途合成したものを使用してもよく、また、必要により、反応系内で該当するスルフィド化合物と過酸化水素等の過酸化物との反応により発生させることもできる。
脱水剤(c)としては、五酸化リン等の無機酸化物、ポリリン酸等の無機酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水フタル酸等の有機酸無水物などが挙げられる。これらの脱水剤(c)は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。これらのうち好ましいものは、無水酢酸等の有機酸無水物、特に、無水酢酸である。
脱水剤(c)は、スルホニウム塩を高収率で得るために重要であり、その使用量は、(a)と(b)の反応時における反応系内の水分が、反応系全体の重量に対して3%以下、好ましくは1%以下になるように、理論量もしくは、それよりも少し過剰に使用する。例えば、無水酢酸を脱水剤として使用する場合、その使用量は、反応系内の水分1モルに対し、通常、1.0〜3.0モル、好ましくは1.0〜1.5モルの範囲である。ここで反応系内の水分とは、使用する無機酸(e)および溶媒中の水のほか、アリール化合物(a)とスルホキシド化合物(b)の脱水縮合により生成する水の合計量をいう。
無機酸(e)としては、硫酸、リン酸、塩酸等が挙げられる。なお、無機酸(e)の替わりに、メタンスルホン酸のような強有機酸を使ってもよいが、コストが高くなるため好ましくない。
無機酸(e)の濃度は、高濃度であることが好ましく、通常、50%以上、好ましくは80%以上、特に好ましくは95%以上である。具体的には、濃度98%以上の濃硫酸、リン酸、塩化水素ガスが好ましい。これらのうち、濃硫酸が取り扱い易く、特に好ましい。
本発明の製造方法において、反応系内に仕込むスルホキシド化合物(b)とアルカリ金属またはアルカリ土類金属のBF4、PF6、AsF6またはSbF6塩(d)のモル比は、通常、1:(0.9〜2.0)、好ましくは、1:(1.0〜1.5)である。1モルのスルホキシド化合物(b)に対してアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩(d)が0.9モル未満では、目的のモノスルホニウム塩の収率が低くなり、2.0モルを超えるとコスト高となる。
上記溶媒のうち好ましいものは、ジエチルエーテル等のエーテル類、ジクロロメタン等の塩素系有機溶剤、酢酸等の有機酸、および無水酢酸、無水プロピオン酸等の有機酸無水物、アセトニトリル等の極性有機溶剤、特に、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸、無水酢酸、アセトニトリルである。
上記溶媒は、無機酸(e)の投入前に他の原料と一緒に仕込んでよく、また、無機酸(e)の投入と同時に、あるいは無機酸(e)の投入後に仕込んでもよい。
上記溶媒の使用量は、アリール化合物(a)、スルホキシド化合物(b)、脱水剤(c)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のBF4、PF6、AsF6またはSbF6塩(d)、無機酸(e)、および該溶媒の合計質量に対して、通常、0〜80%、好ましくは20〜60%である。
これに対して、本発明の製造方法では、アリール化合物(a)、スルホキシド化合物(b)、脱水剤(c)とアルカリ金属またはアルカリ土類金属のBF4、PF6、AsF6またはSbF6 6塩(d)を反応系内に仕込んだ後に、無機酸(e)、好ましくは濃硫酸を滴下して、アリール化合物(a)とスルホキシド化合物(b)を脱水縮合させる。
この製造方法では、当初の反応系内にアリール化合物(a)やスルホキシド化合物(b)の副反応、例えば、スルホン化を誘発し得る無機酸(e)、例えば、硫酸が存在せず、また、滴下された無機酸(e)は直ちに強酸(h)発生に消費され、さらに、この強酸(h)が、直ちにアリール化合物(a)とスルホキシド化合物(b)との脱水縮合に供せられる。これらの結果、アリール化合物(a)とスルホキシド化合物(b)の副反応が抑制され、モノスルホニウム塩を高純度、高収率で得ることができる。
本発明の製造方法によれば、得られる生成物中のモノスルホニウム塩の含有量は、通常、96%以上、多くの場合97%以上であり、未反応原料、すなわち、アリール化合物(a)および/またはスルホキシド化合物(b)の残存量は、通常、4.0%以下、多くの場合3.0%以下である。この未反応のアリール化合物(a)および/またはスルホキシド化合物(b)の残存量が4.0%より多くなると、前記したように、得られた最終物をカチオン重合性モノマーに配合して硬化性組成物として使用する場合に光硬化性が低下し、また、十分な硬さをもった硬化物が得られないという問題が発生する。
なお、子細に見ると、本発明の製造方法において、極少量のビススルホニウム塩が生成することがあるが、その量は1%を超えることはない。
また、その反応時間は、反応温度、反応濃度、攪拌の程度によるが、通常、無機酸(e)の投入後、0.5〜24時間、好ましくは、1〜10時間である。
脱水剤(c)および溶媒を回収する際の温度は、通常、40〜120℃、好ましくは50〜80℃である。温度が120℃を超えると、目的のスルホニウム塩が分解する恐れがあり、40℃より低いと、脱水剤(c)や溶媒の回収率が低下する恐れがある。回収した脱水剤や溶媒は再使用することができる。
このため、モノスルホニウム塩を溶液として得るための溶剤としては、通常、沸点150℃以上の有機溶剤(g)、例えば、プロピレンカーボネート、カルビトール、カルビトールアセテート、γ−ブチロラクトンなどが好ましい。これらのうち、プロピレンカーボネートおよびγ−ブチロラクトンが、カチオン重合性を有するため、特に好ましい。
目的のモノスルホニウム塩を沸点150℃以上の有機溶剤(g)の溶液として得る方法としては、例えば、アリール化合物(a)とスルホキシド化合物(b)を脱水縮合させた反応液に、水と、次いであるいは同時に、沸点100℃以下の有機溶剤(f)を仕込み、得られた有機層を中和、洗浄した後、沸点150℃以上の有機溶剤(g)を加え、前者の有機溶剤(f)を常圧または減圧下、通常、120℃以下の温度で留去することにより得られる。沸点150℃以上の有機溶剤(g)は、また、沸点100℃以下の有機溶剤(f)を留去しながら、徐々に加えてよく、また、反応液に沸点100℃以下の有機溶剤(f)を加えると同時に加えてもよい。この方法により、従来行っていたような、一度、目的物を固状または油状物として分離し、これを高沸点溶剤に再溶解するような工程が省略できる。
本発明で得られるモノスルホニウム塩を、沸点150℃以上の有機溶剤(g)の溶液として得るときのモノスルホニウム塩濃度は、通常、35〜75%、好ましくは40〜70%である。
他のカチオン重合開始剤としては、加熱または活性エネルギー線の作用によって強酸を発生する化合物であれば、特に限定なく使用することができ、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ピリジニウム塩あるいは鉄−アレーン錯体などの従来公知なものを挙げることができる。他のカチオン重合開始剤を併用する場合の割合は、本発明で得られるモノスルホニウム塩100質量部(以後、質量部を部と記す)に対して、他のカチオン重合開始剤1〜200部、好ましくは5〜100部である。
また、スルホニウム塩としてビス(4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネートなどのビススルホニウム塩を併用することもできる。但し、これらを大量に併用すると、カチオン重合性モノマーや溶剤への溶解度が低下したり、またカチオン重合性モノマーへの配合物の経時的な増粘が起きたりする。これらのビススルホニウム塩を併用する場合の使用割合は、モノスルホニウム塩100部に対して、通常100部以下、好ましくは20部以下、より好ましくは5部以下である。
他のカチオン重合開始剤である前記ピリジニウム塩としては、例えば、特許公報第2519480号、特開平5−222112号に記載のピリジニウム塩等を挙げることができる。
上記エポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリールグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキシド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−ドデシレンオキサイド、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンオキサイドなどの単官能エポキシ化合物、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−(3,4−エポキシシクロヘキシル)カルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−,m−,p−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリブタジエングリコールジグリシジルエーテル、メチルメタクリレートや2−エチルヘキシルメタクリレート等の(メタ)アクリレートとグリシジルメタアクリレートとの共重合物などの多官能エポキシ化合物が挙げられる。
これらの増感剤を併用する場合の配合量は、本発明のカチオン重合開始剤100部に対して、増感剤5〜100部、好ましくは10〜50部である。
本発明の硬化性組成物の具体的な用途としては、塗料、コーティング剤、インキ、レジストフィルム、液状レジスト、接着剤、成型材、注型材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め剤、および光造形などが挙げられる。
[実施例1]
100mlの反応容器に、ヘキサフルオロリン酸カリウム(KPF6)4.28g(23.3mmol)、アセトニトリル10ml、ジフェニルスルフィド3.61g(19.4mmol)、ジフェニルスルホキシド4.05g(20.0mmol)、および無水酢酸5.94g(58.2mmol)を仕込み、均一に混合した後、濃硫酸2.28g(23.3mmol)を室温で60分間かけて滴下した。途中発熱により温度が上昇したが、40℃を超えないように冷却した。40℃で1時間攪拌後、室温まで冷却し、水20mlを加えて10分間攪拌したところ、油状物が分離した。これに酢酸エチル20mlを加えて油状物を溶解させ、有機層を分液した。この有機層を20%苛性ソーダ10mlと、さらに水10mlで3回洗浄した後、アセトニトリルと酢酸エチルを減圧下で留去して、やや黄みをおびた固形物9.72g(収率:97%)を得た。
13C−NMR、IRおよびHPLC(高速液体クロマトグラフ装置 L−7000使用、日立製作所製、商品名、以下、同様)による分析の結果、得られた生成物は、ヘキサフルオロリン酸(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムを98.0%、ビスヘキサフルオロリン酸チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)を0.8%、および未反応原料であるジフェニルスルフィド0.5%とジフェニルスルホキシド0.7%を含んでいた。
[実施例2]
13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、この溶液は、プロピレンカーボネートを50.1%含み、残りの49.9%の組成は、ヘキサフルオロリン酸(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウム97.7%、ビスヘキサフルオロリン酸チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)0.8%、および未反応原料のジフェニルスルフィド0.8%とジフェニルスルホキシド0.7%であった。
ジフェニルスルホキシドを4,4’−ジメチルジフェニルスルホキシド4.61g(20.0mmol)とした以外は、実施例1と同様にして、やや黄みをおびた固形物10.12g(収率:96%)を得た。
生成物は、13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、ヘキサフルオロリン酸(4−フェニルチオフェニル)−4,4’−ジメチルジフェニルスルホニウムを99.1%、ビスヘキサフルオロリン酸チオジ−p−フェニレンビス(4,4’−ジメチルジフェニルスルホニウム)を0.4%、および未反応原料のジフェニルスルフィド0.2%、4,4’−ジメチルジフェニルスルホキシド0.3%を含んでいた。
ジフェニルスルフィドを4−ベンゾイルジフェニルスルフィド5.63g(19.4mmol)とした以外は、実施例1と同様にして、やや黄みをおびた固形物11.37g(収率:96%)を得た。
生成物は、13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、ヘキサフルオロリン酸[4−(4−ベンゾイルフェニル)チオフェニル]−ジフェニルスルホニウムを98.6%、未反応原料の4−ベンゾイルジフェニルスルフィド0.8%、ジフェニルスルホキシド0.6%を含んでいた。
ジフェニルスルホキシドの量を3.80g(18.8mmol)とした以外は、実施例1と同様にして、やや黄味をおびた固形物9.42g(収率97%)を得た。
13C−NMR、IRおよびHPLC(高速液体クロマトグラフ装置 L−7000使用、日立製作所製、商品名、以下、同様)による分析の結果、得られた生成物は、ヘキサフルオロリン酸(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムを98.0%、ビスヘキサフルオロリン酸チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)を0.5%、および未反応原料であるジフェニルスルフィド1.2%とジフェニルスルホキシド0.3%を含んでいた。
ヘキサフルオロリン酸カリウムをヘキサフルオロアンチモン酸カリウム(KSbF6)5.86g(21.3mmol)、濃硫酸の量を2.08g(21.3mmol)とした以外は、実施例1と同様にして、やや黄みをおびた固形物11.31g(収率:96%)を得た。
生成物は、13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、ヘキサフルオロアンチモン酸(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムを98.5%、ビスヘキサフルオロアンチモン酸チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)を0.8%、および未反応原料のジフェニルスルフィド0.4%、ジフェニルスルホキシド0.3%を含んでいた。
ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF6)をヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム(NaSbF6)5.52g(21.3mmol)、濃硫酸の量を2.08g(21.3mmol)とした以外は、実施例2と同様にして、固形分濃度50%の淡黄色の溶液22.6g(収率:96%)を得た。
この溶液は、13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、プロピレンカーボネートを49.8%含み、残りの50.2%中の組成は、ヘキサフルオロアンチモン酸(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウム98.2%、ビスヘキサフルオロアンチモン酸チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)1.0%、および未反応原料のジフェニルスルフィド0.2%、ジフェニルスルホキシド0.6%であった。
ジフェニルスルホキシドを3.80g(18.8mmol)、ヘキサフルオロリン酸カリウムをヘキサフルオロアンチモン酸カリウム(KSbF6)5.86g(21.3mmol)、濃硫酸の量を2.08g(21.3mmol)とした以外は、実施例1と同様にして、やや黄みをおびた固形物11.07g(収率:97%)を得た。
生成物は、13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、ヘキサフルオロアンチモン酸(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムを98.9%、ビスヘキサフルオロアンチモン酸チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)を0.4%、および未反応原料のジフェニルスルフィド0.5%、ジフェニルスルホキシド0.2%を含んでいた。
100mlの反応容器に、ヘキサフルオロリン酸カリウム(KPF6)5.36g(29.1mmol)と酢酸5.36gを仕込み、攪拌、混合した後、濃硫酸2.91g(29.1mmol)を仕込み、30分間攪拌した。
この溶液に、ジフェニルスルホキシド4.05g(20.0mmol)、ジフェニルスルフィド3.61g(19.4mmol)、および無水酢酸5.94g(58.1mmol)を予め均一に溶解しておいた溶液を室温で滴下し、30分間攪拌した。さらに、75℃で1時間熟成した後、同温度で減圧下、酢酸を主成分とする溶媒を留去した。
この反応液を室温まで冷却した後、20mlのジクロロメタンと20mlの水を加えて攪拌し、分液した。得られた有機層をさらに水10mlで3回洗浄した後、ジクロロメタンを留去して、やや黄みをおびた固形物9.62g(収率:96%)を得た。
生成物は、13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、ヘキサフルオロリン酸(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムを94.0%、ビスヘキサフルオロリン酸チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)を0.8%、および未反応原料のジフェニルスルフィド2.2%、ジフェニルスルホキシド3.0%を含んでいた。
比較例1で得られた固形物3.0gに、10mlのエタノールを加えて加熱攪拌した後、室温まで冷却すると結晶が析出した。この結晶をろ過で分離し、乾燥して2.2g(収率70%)の白色粉末を得た。
この白色粉末は、13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、ヘキサフルオロリン酸(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムを99.4%、ビスヘキサフルオロリン酸チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)を0.4%、および未反応原料のジフェニルスルフィド0.1%、ジフェニルスルホキシド0.1%を含んでいた。
ヘキサフルオロリン酸カリウム(KPF6)2.86g(17.0mmol)、濃硫酸1.70g(17.0mmol)とした以外は、比較例1と同様にして、やや黄みをおびた固形物8.12g(収率:93%)を得た。
この固形物は、13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、ヘキサフルオロリン酸(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムを83.3%、ビスヘキサフルオロリン酸チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)を1.0%、および未反応原料のジフェニルスルフィド6.7%、ジフェニルスルホキシド9.0%を含んでいた。
ヘキサフルオロリン酸カリウム(KPF6)をヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム(NaSbF6)5.86g(21.3mmol)とした以外は、比較例1と同様にして、やや黄みをおびた固形物10.72g(収率:92%)を得た。
この固形物は、13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、ヘキサフルオロアンチモン酸(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムを93.0%、ビスヘキサフルオロアンチモン酸チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)を1.0%、および未反応原料のジフェニルスルフィド3.0%、ジフェニルスルホキシド3.0%を含んでいた。
比較例3で得られた固形物3.0gを、10mlのエタノールに加熱溶解した後、室温まで冷却すると結晶が析出した。この結晶をろ過で分離し、乾燥して2.0g(収率64%)の白色粉末を得た。
得られた白色粉末は、13C−NMR、IRおよびHPLC分析の結果によると、ヘキサフルオロアンチモン酸(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムを99.4%、ビスヘキサフルオロアンチモン酸チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)を0.4%、および未反応原料のジフェニルスルフィド0.2%を含み、ジフェニルスルホキシドは検出されなかった。
市販のヘキサフルオロリン酸(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムとビスヘキサフルオロリン酸チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)の混合物のプロピレンカーボネート溶液であるUVI−6990(DOW社製)を、カチオン重合開始剤として以下の比較評価に用いた。
この開始剤の固形分は44.0%、HPLCによる分析の結果、固形分中に、ヘキサフルオロリン酸(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムを25.4%、ビスヘキサフルオロリン酸チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)を61.4%、同定できない化合物13.2%を含んでいた。
市販のヘキサフルオロアンチモン酸(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムとビスヘキサフルオロアンチモン酸チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)の混合物のプロピレンカーボネート溶液であるUVI−6974(DOW社製)を、カチオン重合開始剤として以下の比較評価に用いた。
この開始剤の固形分は49.8%、HPLCによる分析の結果、固形分中に、ヘキサフルオロアンチモン酸(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムを28.7%、ビスヘキサフルオロアンチモン酸チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)を63.5%、同定できない化合物7.8%を含んでいた。
実施例1、3〜6、8および比較例1〜5については、各例で得た生成物10部を、プロピレンカーボネート10部に加えて加温し、50%プロピレンカーボネート溶液を調製した。実施例2、7については、得られた50%プロピレンカーボネート溶液をそのまま用いた。
(1)試験例1〜9
実施例1〜5および比較例1〜3で得た生成物(主成分:モノスルホニウムPF6塩)の50%プロピレンカーボネート溶液5部を、カチオン重合性化合物であるUVR−6110[UCC社製、商品名、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(脂環式エポキシ樹脂)]100部に配合して、配合液を調製した。試験例9については、比較例6に記載の市販のカチオン重合開始剤(PF6塩)5部を、100部のUVR−6110に配合して、配合液を調製した。
(2)試験例10〜15
実施例6〜8および比較例4、5で得た生成物(主成分:モノスルホニウムSbF6塩)の50%プロピレンカーボネート溶液1部を、UVR−6110(前出)100部に均一混合して、配合液を調製した。試験例15については、比較例7に記載の市販のカチオン重合開始剤(SbF6塩)1部を、100部のUVR−6110に配合して、配合液を調製した。
#16のバーコーターを用いて、上記の配合液を膜厚約35μmでポリエステルフィルム(フィルム厚80μm)に塗布した。これを下記条件で光硬化させ、塗膜の硬化速度と鉛筆硬度を試験した。
<条件>
・紫外線照射装置:ベルトコンベア式UV照射装置(アイグラフィック社製)
・ランプ:メタルハライドランプ(120w/cm、1.5kW、照射距離18cm)
・紫外線の照射条件:コンベアスピード4.5m/分、照射回数1回
上記の速度で移動するコンベアに、前記配合液を塗布したポリエステルフィルムを載せて、紫外線照射を行い、その後、塗膜の鉛筆硬度がHBに到達するまでの時間(表1中の硬化時間)により、硬化速度を評価した。この時間が短いほど、高速硬化すること、すなわち、使用したスルホニウム塩の光重合開始剤としての能力が優れていることを示す。
(2)塗膜硬度試験
上記の硬化塗膜を室温に放置後、塗膜硬度が一定になったときの鉛筆硬度(表1中の塗膜硬度)を測定した。鉛筆硬度が高いほど、光カチオン重合性モノマーの重合率が良好であることを示す。
試験例16、17
試験例5および9で使用したカチオン重合開始剤のプロピレンカーボネート溶液20部を、各種有機溶剤100部に添加したときの溶解状態で評価した。結果を表2に示す。
評価基準A:透明で均一に溶解、B:わずかに濁りがある、C:白濁または2層に分離
貯蔵安定性の促進試験として、カチオン重合開始剤溶液とカチオン重合性化合物との配合液を、80℃の貯蔵温度で保管したときの粘度変化を測定することで評価した。
試験例18、19
試験例5、9で使用したカチオン重合開始剤のプロピレンカーボネート溶液5部を、100部のUVR−6110(前出の脂環式エポキシ樹脂)に配合し、配合液200gを、250mlの褐色ポリビンに入れ、80℃の恒温槽に貯蔵した。
試験例20、21
試験例12、15で使用したカチオン重合開始剤のプロピレンカーボネート溶液3部を、100部のUVR−6110に配合し、配合液200gを、250mlの褐色ポリビンに入れ、80℃の恒温槽に貯蔵した。
貯蔵開始時、1週間目、2週間目、4週間目、6週間目に、25℃に温調した恒温槽で前記配合液を25℃に温調し、該配合液の粘度を測定した。結果を表3に示す。粘度上昇が小さいほど、カチオン重合性組成物として安定で、長期間保管ができることがわかる。
上記試験例において、モノスルホニウム塩を主体とする生成物中に未反応原料が多いほど、本生成物とカチオン重合性化合物の配合物において、塗膜の鉛筆硬度、特に、紫外線による硬化速度が低下する傾向がある。
そこで、未反応原料の影響を系統的に把握するため、試験例1の生成物のプロピレンカーボネート溶液とUVR−6110(前出)の配合物に、少量のジフェニルスルフィドとジフェニルスルホキシドを、いずれか単独または両方同時に加え、未反応原料(ジフェニルスルフィドとジフェニルスルホキシド)による上記配合物の硬化速度と塗膜硬度に対する影響を調べた。その結果を表4に示す。
なお、ジフェニルスルフィドとジフェニルスルホキシドの添加量(w)は、この添加量(w)と、元々、生成物中に存在する未反応の原料の量(x)との合計(y)が、当初、UVR−6110に配合した生成物の量(z)と、ジフェニルスルフィドとジフェニルスルホキシドの添加量(w)との合計に対し、3%、4%、6%になるようにした。
硬化性試験用の配合液は、プロピレンカーボネート50%のカチオン重合開始剤溶液3部を100部のUVR−6110に配合し、調製したものを用いた。
硬化性は、前述の硬化性試験方法に記載の条件で、上記の配合液を塗布したポリエステルフィルムを載せて、紫外線照射を行い、その後、塗膜の鉛筆硬度がHBに到達するまでの時間(表4中の硬化時間)、および紫外線照射して10分後の塗膜の鉛筆硬度(表4中の10分後の塗膜硬度)を測定することで、評価した。参考例1、10は、それぞれ、試験例1の生成物を用いた場合、試験例8の生成物を用いた場合の評価結果を示す。
Claims (6)
- 無機酸(e)が硫酸である請求項1記載の製造方法。
- アリール化合物(a)とスルホキシド化合物(b)の脱水縮合によって得られた反応液に、沸点100℃以下の有機溶剤(f)および沸点150℃以上の有機溶剤(g)を添加し、該反応液に添加した有機溶剤(f)を留去する請求項1記載の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法で得られるモノスルホニウム塩からなることを特徴とするカチオン重合開始剤。
- 請求項4記載のカチオン重合開始剤とカチオン重合性化合物とからなることを特徴とする硬化性組成物。
- 請求項5記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
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