JPWO2004035660A1 - スルホアルキル基含有高分子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、イオン交換樹脂として利用されるスルホアルキル基含有高分子の製造法に関するもので、より詳しくは下記構造式(式中、Xは脱離基、nは0から6の整数を表す。)で示される脱離基Xを含む側鎖(I)を有する高分子のXをアシルチオ基で置換し、さらに酸化することによりスルホン酸基にすることを特徴とするスルホアルキル基含有高分子の製造方法であり、本発明方法によれば高分子マトリックスの中にある脱離基Xをもほぼ定量的にスルホン酸基に変えることができるので、イオン交換能の高いイオン交換樹脂を得ることができる。

Description

本発明は,スルホアルキル基をイオン交換基として有するイオン交換樹脂として利用されるスルホアルキル基含有高分子の製造方法に関するものである。
高分子内にイオン交換基を有するイオン交換樹脂は,分離精製膜等の機能性高分子として有用であり,特にスルホン酸基を有するイオン交換樹脂は,スルホン酸のプロトン解離性の高さゆえに性能が優れていることから広く利用されている。特に近年,水電解槽や燃料電池の隔膜など,高分子固体電解質のイオン伝導体として応用しようという試みがなされている。
高分子内にスルホン酸基を導入した樹脂としては,高分子中の芳香環を硫酸やクロロ硫酸などのスルホン化剤でスルホン化したスルホン化樹脂が,簡便なため用いられてきた。例えば,スルホン化ポリエーテルケトン(特開平6−93114号公報),スルホン化ポリスルホン(特開平9−245818号公報),スルホン化ポリエーテルスルホン(特開平9−245818号公報及び特開平11−116679号公報)等が報告されている。しかし,これらの例のように,芳香環をスルホン化した場合,高温酸性条件下における安定性が必ずしもよくない。これは,芳香環のスルホン化反応が可逆反応であるため,脱スルホン化反応が起こるためだと考えられる。したがって,芳香環を直接スルホン化したイオン交換膜では,安定性が悪いため電解質として用いるには,長期安定性に問題がある。
そこで,母剤となる高分子中にアルキル基を介してスルホン酸基を導入する方法がいくつか報告されている。例えば,ルイス酸とサルトンを用いて直接芳香族炭化水素系高分子の芳香環に炭素数3以上のスルホアルキル基を導入する方法(特開2002−110174号公報(第4〜5頁、実施例1等),Macromol.Chem.,Rapid Commun.,1,1980,297−302)または,ハロゲノメチル基,ハロゲノアルキル基を導入した後,ジメチルチオエーテルと亜硫酸ナトリウムや硫酸水素ナトリウムを用いてスルホン酸基を導入する方法(Macromol.Chem.,Rapid Commun.,1,1980,297−302)などが報告されている。
しかしながら,サルトンを用いる方法では,サルトンの反応性が低いため,目的のスルホアルキル化物が極微量,もしくは全く得られないため,実用的な方法ではない。また,後者のハロゲノメチル基を亜硫酸ナトリウムでスルホン化する方法では,本来水系で行う反応であるが,ほとんどのハロゲノアルキル化ポリマーが水には全く溶けないため,ハロゲノアルキル基が全く反応しないか,もしくは一部しか反応せず,高分子の表面のみがスルホン化されたものしか得られず、充分なイオン交換能を有するスルホアルキル側鎖を有する高分子を得ることが困難であった。このため,高分子マトリックスの中まで充分にスルホン酸基を導入することが困難であった。
上記のように、スルホアルキル基をイオン交換基として有するイオン交換樹脂は、母材の高分子にスルホアルキル基を直接入れる方法では非常に収率が悪く、また、脱離基を有するアルキル基を導入した後、その脱離基をスルホン酸基に変換する方法では脱離基、特に高分子マトリックス内の脱離基が充分にスルホン酸基に変換されないという問題あった。そこで本発明は脱離基含有アルキル基を導入した高分子において、該脱離基(高分子マトリックスの表面及び内部も含めた全ての脱離基)をほぼ定量的にスルホン酸基に変換することにより、高いイオン交換能を有する、スルホアルキル基含有高分子を、高収率でかつ安価に製造することを目的とするものである。
上記課題を解決するために,本発明者らは鋭意検討した結果,脱離基含有側鎖を有する高分子における脱離基を、アシルチオ基に変換した後スルホン酸基に変換することにより、上記目的を達成することができることを見出し,発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(1)下記構造式
Figure 2004035660
(式中、Xは脱離基、nは0から6の整数を表す。)
で示される脱離基Xを含む側鎖(I)を有する高分子のXをアシルチオ基で置換し,さらに酸化することによりスルホン酸基にすることを特徴とするスルホアルキル基含有高分子の製造方法、
(2)上記側鎖(I)において、n=0である前項(1)に記載の製造方法、
(3)脱離基Xが,Cl,Br,I若しくは下記構造式(II)
Figure 2004035660
(式(II)中,Rは炭素数が1から6のアルキル基,パーフルオロ(C〜C)アルキル基又はアリール基を表す。)
で示される置換基である前項(1)もしくは(2)に記載のスルホアルキル基含有高分子の製造方法、
(4)アシルチオ基が下記構造式(III)
Figure 2004035660
(式(III)中,Rは炭素数が1から6のアルキル基,アリール基を表す。)
で示される前項(1)〜(3)のいずれか一項に記載のスルホアルキル基含有高分子の製造方法、
(5)高分子の主鎖骨格が下記構造式(IV)
Figure 2004035660
を表す。)
で示されるポリスルホン骨格である前項(1)〜(4)のいずれか一項に記載のスルホアルキル基含有高分子の製造方法、
(6)下記構造式(IV)
Figure 2004035660
を表す。)
で示されるポリスルホン系高分子の芳香環を(a)クロロメチル化し、(b)次いで該クロル原子をアセチルチオ化し、さらに酸化することによりスルホン酸基にすることを特徴とする下記式(V)
Figure 2004035660
を表し,R〜R38は各々独立に水素原子もしくはスルホメチル基を表す。)
で表されるスルホメチル化ポリスルホンの製造方法、
(7)スルホメチル化ポリスルホンの前駆体である下記構造式(VI)
Figure 2004035660
を表す。)
で示されるアセチルチオメチル基含有ポリスルホン、
に関するものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において,スルホアルキル基含有高分子の母材となる高分子は,前記脱離基Xを有する側鎖(I)を導入できる高分子であれば,いずれの高分子でもよい。耐久性の観点から,エンジニアリングプラスチックや架橋性高分子などの高耐久性高分子が好ましい。例えば,ポリエーテルスルホン,ポリスルホン,ポリエーテルケトン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリフェニレンオキサイド,ポリイミド,ポリイミダゾール,ポリオキサゾール,ポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの市販品や,これに順ずるものが挙げられる。母材となる高分子としては、通常芳香族環、好ましくはベンゼン環を含む構造単位を有する芳香族炭化水素系高分子が好ましい。より好ましくは構造単位中に芳香環を2〜4個有し、かつ少なくとも2個の芳香環がスルホニル(−SO−)基を介して結合されている構造単位を有するポリスルホンが好ましい。そのようなポリスルホン化合物は例えば特開平11−116679等に開示されている。本発明においてより好ましいポリスルホンとしては前記構造式(IV)で示されるポリスルホンを挙げることができる。構造式(IV)で示されるポリスルホンの中ではArがフェニレン基またはビフェニレン基のものがより好ましい。なお、前記側鎖(I)は通常これらの高分子のベンゼン環上に置換されている。
これらの高分子(以下母材ということもある)に脱離基Xを有する側鎖を導入した高分子は公知であるか、公知方法に準じて、高分子反応を用いて母材となる高分子に脱離基を含む側鎖を導入することによって得ることができる。例えばスチレンジビニルベンゼン等に該側鎖を導入した化合物はMacromol.Chem.,Rapid Commun.1,297−302(1980)やMacromol.Chem.184,1585−1596(1983)等に開示されている。また、ポリスルホンに該側鎖を導入したものは例えば特開2002−110174等に開示されている。また、これらに開示されたされた方法に準じて、上記に開示されていない高分子に対して該側鎖を導入することにより、該側鎖を導入した高分子を得ることができる。より、詳しく、J.Org.Chem.,45,1980,2717−2719に記載されたポリスチレンへの該側鎖を導入する方法に準じて、母材の高分子をn−ブチルリチウムテトラメチレンジアミン等のリチウム化剤で、リチオ化し,ジハライドなどの脱離基を含むアルキル化剤で側鎖部を導入する方法や,Makromol.Chem.184,1983,1585−1596記載のスチレン−ジビニルベンゼンへの該側鎖の導入の方法に準じて、脱離基を有するアシル側鎖をフリーデルクラフツ反応で導入する方法(この場合は脱離基をスルホニル化した後カルボニル基の還元が必要)等が挙げられる。
また,本発明において好ましい側鎖である、ハロゲノメチル基を該高分子の芳香環に導入する場合,芳香環のハロゲノメチル化反応は,特に制限なく公知の広範囲の反応が使用できる。例えばクロルメチル化反応の場合、クロロメチル化剤として、クロロメチルメチルエーテル、1,4−ビス(クロロメトキシ)ブタン、1−クロロメトキシ−4−クロロブタンなどクロロメトキシ置換低級(C1〜C8)アルカン(クロロメトキシ以外に、更にクロルメチル化反応を阻害しない置換基を有してもよい)などを用い、触媒として塩化スズ、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化チタンなどのルイス酸やフッ化水素酸などを用いてクロロメチル化反応を行うことができる。溶媒は不活性な溶媒であれば特に制限はなく、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼンなどクロル置換脂肪族系もしくは芳香族系炭化水素溶媒または不活性なその他の芳香族系炭化水素溶媒を用い、均一系で反応を行うことが好ましい。また、パラホルムアルデヒドと塩化水素もしくは臭化水素などを用いてハロゲノメチル化反応を行うこともできる。反応温度はハロゲノメチル化できれば特に制限はなく、通常は0℃〜100℃程度の範囲で行うことができる。好ましくは20℃〜90℃程度である。
本発明で使用する脱離基Xを含む側鎖を導入した高分子において、該高分子への該側鎖の導入率は、適宜選択可能である。通常高分子の単位構造当たり該側鎖が0.1〜2個(導入率10〜200%という)程度導入されているものが使用され、0.1〜1個(導入率10〜100%)のものが好ましい。本発明の実施例記載の方法による場合、導入率20〜60%程度のものを得ることができる。なお、導入率10%というのは単位構造10個当たりに該側鎖が1つ導入されていることを意味し、導入率100%は単位構造当たり1個の該側鎖が導入されていることを意味する。他の導入率の数値も同様な意味を示す。該高分子が芳香環を有するものである場合、該側鎖で置換された芳香環の1個あたりの該側鎖の置換個数は1個から2個、好ましくは1個である。なお、後述するように脱離基からスルホアルキル基への変換は100%定量的に行うことができるので、スルホアルキル基の高分子中への導入率はおおよそ原料として使用する高分子における脱離基Xを含む側鎖の導入率と同じである。
前記脱離基Xを含む側鎖(I)を有する高分子において、脱離基Xはチオアシル化剤、好ましくはチオアセチル化剤と反応するものならば、特に制限が無い。具体例を挙げると、脱離基Xとしては、Cl、Br、I等のハロゲン原子若しくは前記構造式(II)で示される置換基等があげられる。構造式(II)におけるRとしてはメチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基などの炭素数1〜6のアルキル基、トリフルオロメチル基等のパーフルオロ(C1〜C3)アルキル基、(C1〜C3)アルキル又はハロゲンなどで置換されていてもよいフェニル基又はナフチル基などのアリール基を挙げることができる。構造式(II)で示される脱離基の具体例としては、パラトルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などが挙げられる。本発明において好ましい脱離基はハロゲン原子であり、特に好ましいものはClである。該側鎖において、脱離基Xと高分子母材をつなぐ側鎖部はポリメチレン基が好ましく、例えば、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、ヘキサメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数1〜6のものであり、好ましくは1〜3程度である。特に好ましいものはメチレン基である。脱離基Xを含む側鎖としてはハロゲノメチル基が好ましく、クロロメチル基はより好ましい。
本発明のスルホアルキル基含有高分子の製造方法は、脱離基を含む側鎖を有する高分子において、脱離基をアシルチオ基で置換し、さらに酸化することによりスルホン酸基に変換し、スルホアルキル基を高分子中に導入することを特徴とする。中間体としてチオアシル化体を経由することにより、高分子マトリックスに置換している該側鎖の脱離基を、マトリックスの表面及び内部も含め、ほぼ定量的にスルホン酸基に変えることができる。
なお、本発明において、アシル基としては炭素数1〜10の脂肪族又は芳香族カルボニル基が挙げられ、脂肪族カルボニル基としてはアセチル基、プロピオニル基またはブタノイル基等の基が挙げられ、芳香族カルボニル基としてはベンゾイル基、メチル置換ベンゾイル基等の置換基(例えば炭素数1〜3のアルキルまたはハロゲン置換)を有してもよい炭素数6〜10の芳香族カルボニル基を挙げることができる。
脱離基Xのアシルチオ化は、該脱離基Xにアシルチオ化剤例えば上記アシル基を有するチオ酸、具体的にはチオ酢酸、チオプロパン酸、チオブタン酸、チオ安息香酸、チオトルエン酸などのチオカルボン酸、好ましく炭素数1〜10のチオカルボン酸もしくはその塩、好ましくはナトリウム塩やカリウム塩などアルカリ金属塩を作用させることによって定量的に行うことができる。用いるアシルチオ化剤の量は、脱離基Xに対して当量もしくは少過剰用いれば十分である。
脱離基Xのアシルチオ化の反応温度は、高分子の種類、脱離基の種類、アシルチオ化剤等の種類などで異なるので一概には言えないが0℃〜100℃程度の範囲で、適宜選択すれよく、一般的には10℃〜90℃程度ある。アシルチオ化剤の種類や高分子の種類等により室温でよく、また、場合により反応を完全に進行させるために80℃程度に加温してもよい。
脱離基Xのアシルチオ化反応の溶媒としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアムド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶媒を広範囲に用いることができる。
アシルチオ体の酸化には、有機もしくは無機過酸化物、例えば過酸化水素水や過酢酸等の酸化剤を広範囲に用いることができる。酸化剤の量は、当量もしくは少過剰用いればよい。場合によってはアシルチオ基に対して5当量以上10当量程度まで用いてもよい。
アシルチオ基の酸化の反応温度は、通常20℃〜90℃程度であり、40℃から80℃が好ましく、反応中は温度をできるだけ一定に保つことが好ましい。
アシルチオ基の酸化反応の溶媒としては、酢酸やジクロロメタンなど通常酸化反応に用いる溶媒を広範囲に用いることができる。
本発明の製法において、脱離基Xからスルホアルキル基への変換は100%定量的に行うことができるので、得られたスルホアルキル基含有高分子のイオン交換当量重量(EW)は、前駆体の脱離基の量を調整することで制御できる。したがって、原料化合物として使用する高分子における脱離基を含む側鎖の含量を適宜選択することにより、任意のイオン交換当量を有するスルホアルキル基含有高分子の合成が可能である。
本発明の製造方法においては、スルホアルキル基含有高分子を製造する際に、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤などの添加剤を本発明の目的に反しない範囲内で使用できる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例における滴定法によるイオン交換容量の測定は下記のようにして行った。
樹脂Wgを1規定の水酸化ナトリウム水溶液10mlに1晩浸漬してイオン交換を行った後、ろ過で樹脂を取り除いた。水溶液2mlをホールピペットで取って、自動滴定装置(HIRANUMA,COM−555)を用いて0.1規定の塩酸で滴定を行った。1規定の水酸化ナトリウム2mlを滴定したときの滴定量をQ0ml、イオン交換後の水溶液2mlを滴定したときの滴定量をQwmlとして、次式でイオン交換容量を求めた。なお、式中Fは水酸化ナトリウム水溶液の力価を示す。
イオン交換容量(meq/g)=(Q0−Qw)×0.1×F×5/W
スルホメチル化ポリフェニレンエーテルスルホン(式(V)でAr=B2)の合成;
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの4ツ口丸底フラスコに、ポリフェニレンエーテルスルホン(Aldrich製、商品名:Polyphenylsulfone)30g、テトラクロロエタン250mlを入れ、さらにクロロメチルメチルエーテル50mlを加えた後、無水塩化スズ(IV)1mlとテトラクロロエタン20mlの混合溶液を滴下し、80℃に加熱して90分加熱撹拌した。次いで、メタノール1l中に溶液を落とし、ポリマーを析出させた。析出させた沈殿をミキサーで粉砕し、酸成分が抜けるまでメタノールで洗浄し、加熱乾燥してクロロメチル化ポリフェニレンエーテルスルホン(式(VI)でAr’=B2’)34gを得た。得られた化合物はNMRにより同定することができ、クロロメチル基のメチレンプロトンのケミカルシフトは4.64ppmであった。また、クロロメチル基の導入率はNMRのプロトン積分比より算出することができ、36%だった。
次に、得られたクロロメチル化ポリフェニレンエーテルスルホンを撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた1000mlの4ツ口丸底フラスコに入れ、N−メチルピロリドン(NMP)600mlを加えた。これに、チオ酢酸カリウム9gとNMP50mlの溶液を加え、80℃に加熱し3時間加熱撹拌した。次いで、水1l中に溶液を落とし、ポリマーを析出させた。析出させた沈殿をミキサーで粉砕し、水で洗浄した後、加熱乾燥してアセチルチオ化ポリフェニレンエーテルスルホン31gを得た。
次に、得られたアセチルチオ化ポリフェニレンエーテルスルホン20gを撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの4ツ口丸底フラスコに入れ、さらに酢酸300ml加えた。過酸化水素水20mlを加え、45℃に加熱し4時間加熱撹拌した。次いで、6規定の水酸化ナトリウム水溶液1lに、冷却しながら反応溶液を加えしばらく撹拌した。ポリマーをろ過し、アルカリ成分が抜けるまで水で洗浄した。その後、1規定の塩酸300mlにポリマーを加え、しばらく撹拌した。ポリマーをろ過し、酸成分が抜けるまで水で洗浄し、減圧乾燥することで、スルホメチル化ポリフェニレンエーテルスルホン20gを得た(クロルメチル化体からの収率 約91%)。NMRのメチレンプロトンのケミカルシフトが3.78ppmにシフトしていることにより、スルホメチル基の存在を確認した。また、滴定法によりイオン交換容量を測定したところ、0.83meq/gであった。
スルホメチル化ポリエーテルスルホン(式(V)でAr=B3)の合成;
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの4ツ口丸底フラスコに、ポリエーテルスルホン(商品名;スミカエクセルPES7600p、住友化学工業(株)製)23g、ニトロベンゼン330mlを入れ、さらにクロロメチルメチルエーテル40gと無水塩化スズ(IV)7.8gの混合溶液を滴下し、50℃に加熱して8時間加熱撹拌した。次いで、メタノール1l中に溶液を落とし、ポリマーを析出させた。析出させた沈殿をミキサーで粉砕し、酸成分が抜けるまでメタノールで洗浄し、加熱乾燥してクロロメチル化ポリエーテルスルホン(式(VI)でAr’=B3’)25gを得た。得られた化合物はNMRにより同定することができ、クロロメチル基のメチレンプロトンのケミカルシフトは4.8ppmであった。また、クロロメチル基の導入率はNMRのプロトン積分比より算出することができ、34%だった。
次に、得られたクロロメチル化ポリエーテルスルホン25gを撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた1000mlの4ツ口丸底フラスコに入れ、N−メチルピロリドン375mlを加えた。これに、撹拌しながらチオ酢酸カリウム4.3gを添加し、室温で1時間撹拌した。次いで、水3l中に溶液を落とし、ポリマーを析出させた。析出させた沈殿をミキサーで粉砕し、水で洗浄した後、加熱乾燥してアセチルチオ化ポリポリエーテルスルホン24gを得た。
次に、得られたアセチルチオ化ポリエーテルスルホン24gを撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの4ツ口丸底フラスコに入れ、さらに酢酸350ml加えた。30%過酸化水素水18mlを加え、70℃に加熱し8時間加熱撹拌した。内容物をろ過回収して、酸成分が抜けるまで水で洗浄し、減圧乾燥することで、スルホメチル化ポリエーテルスルホン23gを得た(クロルメチル化体からの収率 約92%)。NMRのメチレンプロトンのケミカルシフトが3.85ppmにシフトしていることにより、スルホメチル基の存在を確認した。また、滴定法によりイオン交換容量を測定したところ、1.29meq/gであった。
スルホメチル化ポリスルホン(式(V)でAr=B4)の合成;
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの4ツ口丸底フラスコに、ポリスルホン(アモコ製、商品名ユーデル、P−1700NT11)31g、テトラクロロエタン300mlを入れ、さらにクロロメチルメチルエーテル18gを加えた後、無水塩化スズ(IV)1mlとテトラクロロエタン20mlの混合溶液を滴下し、60℃に加熱して120分加熱撹拌した。次いで、メタノール1l中に溶液を落とし、ポリマーを析出させた。析出させた沈殿をミキサーで粉砕し、酸成分が抜けるまでメタノールで洗浄し、加熱乾燥してクロロメチル化ポリスルホン(式(VI)でAr’=B4’)33gを得た。得られた化合物はNMRにより同定することができ、クロロメチル基のメチレンプロトンのケミカルシフトは4.53ppmであった。また、クロロメチル基の導入率はNMRのプロトン積分比より算出することができ、38%だった。
次に、得られたクロロメチル化ポリスルホン15gを撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの4ツ口丸底フラスコに入れ、N−メチルピロリドン200mlを加えた。これに、チオ酢酸カリウム4.6gを加え、80℃に加熱し3時間加熱撹拌した。次いで、水1l中に溶液を落とし、ポリマーを析出させた。析出させた沈殿をミキサーで粉砕し、水で洗浄した後、加熱乾燥してアセチルチオ化ポリスルホン17gを得た。
次に、得られたアセチルチオ化ポリスルホン17gを撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの4ツ口丸底フラスコに入れ、さらに酢酸200ml加えた。過酸化水素水50mlを加え、65℃に加熱し4時間加熱撹拌した。次いで、6規定の水酸化ナトリウム水溶液1lに、冷却しながら反応溶液を加えしばらく撹拌した。ポリマーをろ過し、アルカリ成分が抜けるまで水で洗浄した。その後、1規定の塩酸300mlにポリマーを加え、しばらく撹拌した。ポリマーをろ過し、酸成分が抜けるまで水で洗浄し、減圧乾燥することで、スルホメチル化ポリスルホン15gを得た(クロルメチル化体からの収率 約99%)。NMRのメチレンプロトンのケミカルシフトが4.06ppmにシフトしていることにより、スルホメチル基の存在を確認した。また、滴定法によりイオン交換容量を測定したところ、0.80meq/gであった。
比較例1
実施例2で合成したクロロメチル化ポリエーテルスルホン20gを撹拌機、温度計、還流冷却器をつけた1000mlの4ツ口丸底フラスコに入れ、水500mlを加えた。これに、亜硫酸水素ナトリウム25gを加え、24時間加熱還流した。次いで、ポリマーをろ過し、1N塩酸、水で洗浄した後、加熱乾燥してスルホメチル化ポリエーテルスルホン19gを得た。NMRで確認したところ、クロロメチル基はほとんど反応していなかった。また、イオン交換能もほとんど示さなかった。
比較例2
実施例3で合成したクロロメチル化ポリスルホン0.5gを撹拌機、温度計、還流冷却器をつけた100mlの4ツ口丸底フラスコに入れ、水40mlを加えた。これに、亜硫酸ナトリウム15gを加え、80℃に加熱し8時間加熱還流させた。次いで、ポリマーをろ過し、1N塩酸、水で洗浄した後、加熱乾燥してスルホメチル化ポリスルホン0.5gを得た。NMRで確認したところ、クロロメチル基はほとんど反応していなかった。また、イオン交換能もほとんど示さなかった。
比較例3
実施例3で合成したクロロメチル化ポリスルホン1gを撹拌機、温度計、還流冷却器をつけた100mlの4ツ口丸底フラスコに入れ、クロロホルム20mlを加え溶解させた。これに、硫酸ナトリウム0.7gを水20mlに溶かした溶液とテトラブチルアンモニウムブロミド50mgを加え、70℃で3時間、2相系で加熱撹拌した。次いで、ポリマーをろ過し、1N塩酸、水で洗浄した後、加熱乾燥してスルホメチル化ポリスルホン0.5gを得た。NMRで確認したところ、クロロメチル基はほとんど反応していなかった。また、イオン交換能もほとんど示さなかった。
以上説明してきたように、本発明方法によれば、脱離基を含む側鎖を含有する高分子の側鎖上の脱離基を、ほぼ定量的にスルホン酸基に変えることができるもので、高分子マトリックスの表面ばかりでなく内部における側鎖上の脱離基もスルホン酸基に変えることができ、スルホアルキル基をイオン交換基として有するイオン交換能の高いイオン交換樹脂を安価に製造しうるものである。

Claims (7)

  1. 下記構造式で示される脱離基Xを含む側鎖(I)を有する高分子のXをアシルチオ基で置換し,さらに酸化することによりスルホン酸基にすることを特徴とするスルホアルキル基含有高分子の製造方法。
    Figure 2004035660
    (式中、Xは脱離基、nは0から6の整数を表す。)
  2. 上記側鎖(I)において、n=0である請求の範囲第1項に記載の製造方法。
  3. 脱離基Xが,Cl,Br,I若しくは下記構造式(II)で示される置換基である請求項1もしくは2に記載のスルホアルキル基含有高分子の製造方法。
    Figure 2004035660
    (式(II)中,Rは炭素数が1から6のアルキル基,パーフルオロ(C〜C)アルキル基又はアリール基を表す。)
  4. アシルチオ基が下記構造式(III)
    Figure 2004035660
    (式(III)中,Rは炭素数が1から6のアルキル基,アリール基を表す。)
    で示される請求の範囲第1項〜第3項のいずれか一項に記載のスルホアルキル基含有高分子の製造方法。
  5. 側鎖(I)を有する高分子の主鎖骨格が下記構造式(IV)
    Figure 2004035660
    を表す。)
    で示されるポリスルホン骨格である請求の範囲第1項〜第4項のいずれか一項に記載のスルホアルキル基含有高分子の製造方法。
  6. 下記構造式(IV)
    Figure 2004035660
    を表す。)
    で示されるポリスルホン系高分子の芳香環を(a)クロロメチル化し、(b)次いで該クロル原子をアセチルチオ化し、さらに酸化することによりスルホン酸基にすることを特徴とする下記式(V)
    Figure 2004035660
    を表し,R〜R38は各々独立に水素原子もしくはスルホメチル基を表す。)
    で表されるスルホメチル化ポリスルホンの製造方法。
  7. 下記構造式(VI)
    Figure 2004035660
    を表す。)
    で示されるアセチルチオメチル基含有ポリスルホン。
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