JP3758588B2 - スルホン酸基含有重合体の回収方法 - Google Patents

スルホン酸基含有重合体の回収方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一次電池用電解質、二次電池用電解質、燃料電池用高分子固体電解質、表示素子、各種センサー、信号伝達媒体、固体コンデンサー、イオン交換膜などに利用可能なスルホン酸基含有重合体の回収方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スルホン酸基含有重合体の製造方法としては、例えばPolymer Preprints, Japan, vol.42, No.3, p.730(1993); Polymer Preprints, Japan, vol.42, No.3, p.736(1994); Polymer Preprints, Japan, vol.42, No.7, p.2490(1993).等に開示されているように、スルホン酸基を有しない重合体を、無水硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、硫酸、亜硫酸水素ナトリウムなどのスルホン化剤を用いてスルホン化させることが知られている。特に、硫酸を用いてスルホン化する方法が簡便なスルホン化法として一般的に用いられている。しかしながら、この方法を用いる場合、反応条件によっては、反応溶液の溶液粘度が異常に高く、攪拌、取扱いが困難となり、反応器からの移送が困難であり、工業的なスケールでのスルホン重合体の回収等の後処理ができないという問題点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術的課題を背景になされたもので、スルホン化反応後の溶液粘度を適正な範囲にコントロールが可能で、スルホン酸基含有重合体の回収を工業的に容易に行うことができる方法を提供することにある。つまり、本発明の方法によれば、驚くべきことにスルホン化反応後、硫酸を水で希釈することにより重合体溶液がスラリー状となり、溶液粘度が極端に低下し、スルホン化重合体の回収が非常に容易に行うことができることを見出し本発明に至った。さらに、スルホン化反応後の硫酸/水の割合を本発明の範囲とすることによりスルホン化反応がそれ以上進行せず、反応液をクエンチするのに要した時間によってスルホン酸等量が変化する問題点も無くなることも合わせて見出した。
【0004】
【課題を解決する具体的手段】
本発明はスルホン化された重合体を回収する際に、(1)濃度95.5〜99.5重量%の硫酸中で、硫酸の1/5〜1/60重量倍の重合体のスルホン化を行う工程および(2)スルホン化後の反応液中の硫酸/水の割合を94/6〜90/10(重量比)とした後にスルホン化重合体を凝固する工程を含むことを特徴とするスルホン酸基含有重合体の回収方法を提供するものである。
本発明のスルホン化ポリマーの回収方法は、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリスチレン、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレン等のポリマーに好適に使用できるが、特にポリアリーレン系重合体に対して有効に使用することができる。
この際、本発明におけるポリアリーレン系重合体としては、下記一般式(A)で表されるモノマー(A)と、下記一般式(B−1)〜(B−4)から選ばれる少なくとも1種のモノマー(B)とを反応させて得られる重合体を用いることが好ましい。
【0005】
(A)
【化1】
Figure 0003758588
式(A)中、R〜R'は互いに同一でも異なっていてもよく、フッ素原子を除くハロゲン原子または−OSO2Z(ここで、Zはアルキル基、フッ素置換アルキル基またはアリール基を示す。)で表される基を示す。
Zが示すアルキル基としてはメチル基、エチル基などが挙げられ、フッ素置換アルキル基としてはトリフルオロメチル基などが挙げられ、アリール基としてはフェニル基、p−トリル基などが挙げられる。
1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基などが挙げられ、メチル基、エチル基などが好ましい。
フッ素置換アルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられ、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが好ましい。
アリル基としては、プロペニル基などが挙げられ、
アリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
Xは2価の電子吸引性基を示し、電子吸引性基としては、例えば−CO−、−CONH−、−(CF2p−(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CF32−、−COO−、−SO−、−SO2−などが挙げられる。
なお、電子吸引性基とは、ハメット(Hammett)置換基常数がフェニル基のm位の場合、0.06以上、p位の場合、0.01以上の値となる基をいう。
Yは2価の電子供与性基を示し、電子供与性基としては、例えば−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−および下記式
【化2】
Figure 0003758588
で表される基などが挙げられる。
【0006】
nは0または正の整数であり、上限は通常100、好ましくは80である。
上記一般式(A)で表されるモノマーとして具体的には、例えば4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンズアニリド、ビス(クロロフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(4−クロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4−クロロ安息香酸−4−クロロフェニル、ビス(4−クロロフェニル)スルホキシド、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、これらの化合物において塩素原子が臭素原子またはヨウ素原子に置き換わった化合物、さらにこれらの化合物において4位に置換したハロゲン原子が3位に置換した化合物などが挙げられる。
また上記一般式(A)で表されるモノマーとして具体的には、例えば4,4'−ビス(4−クロロベンゾイル)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス(4−クロロベンゾイルアミノ)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス(4−クロロフェニル)ジフェニルエーテルジカルボキシレート、4,4'−ビス〔(4−クロロフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル〕ジフェニルエーテル、4,4'−ビス〔(4−クロロフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル〕ジフェニルエーテル、4,4'−ビス〔(4−クロロフェニル)テトラフルオロエチル〕ジフェニルエーテル、これらの化合物において塩素原子が臭素原子またはヨウ素原子に置き換わった化合物、さらにこれらの化合物において4位に置換したハロゲン原子が3位に置換した化合物、さらにこれらの化合物においてジフェニルエーテルの4位に置換した基の少なくとも1つが3位に置換した化合物などが挙げられる。
【0007】
さらに上記一般式(A)で表されるモノマーとしては、2,2−ビス[4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル]スルホン、および下記式で表される化合物が挙げられる。
【化3】
Figure 0003758588
【0008】
上記一般式(A)で表されるモノマーは、例えば以下に示す方法で合成することができる。
まず電子吸引性基で連結されたビスフェノールを対応するビスフェノールのアルカリ金属塩とするために、N−メチル−2−ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキサイドなどの誘電率の高い極性溶媒中でリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属炭酸塩などを加える。
通常、アルカリ金属はフェノールの水酸基に対し、過剰気味で反応させ、通常、1.1〜2倍当量を使用する。好ましくは、1.2〜1.5倍当量の使用である。この際、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、クロロベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールなどの水と共沸する溶媒を共存させて、電子吸引性基で活性化されたフッ素、塩素等のハロゲン原子で置換された芳香族ジハライド化合物、例えば、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−クロロフルオロベンゾフェノン、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、4−フルオロフェニル−4'−クロロフェニルスルホン、ビス(3−ニトロ−4−クロロフェニル)スルホン、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、ヘキサフルオロベンゼン、デカフルオロビフェニル、2,5−ジフルオロベンゾフェノン、1,3−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼンなどを反応させる。反応性から言えば、フッ素化合物が好ましいが、次の芳香族カップリング反応を考慮した場合、末端が塩素原子となるように芳香族求核置換反応を組み立てる必要がある。活性芳香族ジハライドはビスフェノールに対し、2〜4倍モル、好ましくは2.2〜2.8倍モルの使用である。芳香族求核置換反応の前に予め、ビスフェノールのアルカリ金属塩としていてもよい。反応温度は60℃〜300℃で、好ましくは80℃〜250℃の範囲である。反応時間は15分〜100時間、好ましくは1時間〜24時間の範囲である。最も好ましい方法としては、下記式
【化4】
Figure 0003758588
(式中、Yは一般式(A)に関して定義した通りである。)
で示される活性芳香族ジハライドとして反応性の異なるハロゲン原子を一個づつ有するクロロフルオロ体を用いることであり、フッ素原子が優先してフェノキシドと求核置換反応が起きるので、目的の活性化された末端クロロ体を得るのに好都合である。
【0009】
または特開平2−159号公報に記載のように求核置換反応と親電子置換反応を組み合わせ、目的の電子吸引性基、電子供与性基からなる屈曲性化合物の合成方法がある。
具体的には電子吸引性基で活性化された芳香族ビスハライド、例えば、ビス(4−クロロフェニル)スルホンをフェノールとで求核置換反応させてビスフェノキシ置換体とする。次いで、この置換体を例えば、4−クロロ安息香酸クロリドとのフリーデルクラフト反応から目的の化合物を得る。ここで用いる電子吸引性基で活性化された芳香族ビスハライドは上記で例示した化合物が適用できる。フェノール化合物は置換されていてもよいが、耐熱性や屈曲性の観点から、無置換化合物が好ましい。なお、フェノールの置換反応にはアルカリ金属塩とするのが、好ましく、使用可能なアルカリ金属化合物は上記に例示した化合物を使用できる。使用量はフェノール1モルに対し、1.2〜2倍モルである。反応に際し、上述した極性溶媒や水との共沸溶媒を用いることができる。ビスフェノキシ化合物を塩化アルミニウム、3フッ化ホウ素、塩化亜鉛などのルイス酸のフリーデルクラフト反応の活性化剤存在下に、アシル化剤として、クロロ安息香酸クロライドを反応させる。クロロ安息香酸クロライドはビスフェノキシ化合物に対し、2〜4倍モル、好ましくは2.2〜3倍モルの使用である。フリーデルクラフト活性化剤は、アシル化剤のクロロ安息香酸などの活性ハライド化合物1モルに対し、1.1〜2倍当量使用する。反応時間は15分〜10時間の範囲で、反応温度は−20℃から80℃の範囲である。使用溶媒は、フリーデルクラフト反応に不活性な、クロロベンゼンやニトロベンゼンなどを用いることができる。
【0010】
また、一般式(A)において、nが2以上であるモノマー(A)は、例えば、一般式(A)において電子供与性基Bであるエーテル性酸素の供給源となるビスフェノールと、電子吸引性基Aである、>C=O、−SO2−、および/または>C(CF32とを組み合わした、具体的には2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビスフェノールのアルカリ金属塩と過剰の4,4-ジクロロベンゾフェノン、ビス(4-クロロフェニル)スルホンなどの活性芳香族ハロゲン化合物との置換反応をN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホランなどの極性溶媒存在下で前記単量体の合成手法に順次重合して得られる。
このようなモノマー(A)の例示としては、下記式で表される化合物などを挙げることができる。
【0011】
【化5】
Figure 0003758588
【0012】
【化6】
Figure 0003758588
【0013】
【化7】
Figure 0003758588
上記において、nは2以上、好ましくは2〜100である。
【0014】
次に一般式(B−1)〜(B−4)で表されるモノマーについて説明する。
(B−1)
【化8】
Figure 0003758588
式中、RおよびR'は互いに同一でも異なっていてもよく、上記一般式(A)中のRおよびR'と同様の基を示す。
9〜R15は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子およびアルキル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。
9〜R15が示すアルキル基としては、上記一般式(A)中のR1〜R8が示すアルキル基と同様のものが挙げられる。
mは0、1または2を示す。
Xは上記一般式(A)でXとして示したものと同様の群から選ばれた2価の電子吸引性基を示す。
Yは上記一般式(A)でYとして示したものと同様の群から選ばれた2価の電子供与性基を示す。
Wはフェニル基、ナフチル基および下記式(C−1)〜(C−3)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示す。
【0015】
上から(C−1)、(C−2)、(C−3)
【化9】
Figure 0003758588
式中、Aは電子供与性基または単結合を示す。電子供与性基としては、上記一般式(A)でYとして示したものと同様の群から選ばれた2価の電子供与性基が挙げられる。
16およびR17は水素原子、アルキル基およびアリール基からなる群より選ばれる原子または基を示す。R16およびR17が示す、アルキル基およびアリール基としては、上記一般式(A)中のR1〜R8が示すアルキル基およびアリール基と同様のものが挙げられる。
18〜R26は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子およびアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示す。
qは0または1を示す。
上記一般式(B−1)で表されるモノマーとしては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【化10】
Figure 0003758588
より具体的には、一般式(B−1)で表される化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0016】
【化11】
Figure 0003758588
【0017】
【化12】
Figure 0003758588
【0018】
また、上記のような化合物において、塩素原子を臭素原子またはヨウ素原子に置き換えた化合物も例示することができる。
【0019】
上から(B−2)、(B−3)、(B−4)
【化13】
Figure 0003758588
【0020】
式(B−2)〜(B−4)中、RおよびR'は互いに同一でも異なっていてもよく、上記一般式(A)中のRおよびR'と同様の基を示す。
27〜R34は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基または下記一般式(D)で表される基を示す。
【0021】
(D)
【化14】
Figure 0003758588
式(D)中、R35〜R43は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基を示す。
27〜R34、R35〜R43が示すアルキル基、フッ素置換アルキル基としては、R1〜R8が示すアルキル基、フッ素置換アルキル基と同様の基が挙げられる。またR27〜R34が示すアリール基としては、R1〜R8が示すアリール基と同様の基が挙げられる。
Xは上記一般式(A)でXとして示したものと同様の群から選ばれた2価の電子吸引性基を示す。
Yは上記一般式(A)でYとして示したものと同様の群から選ばれた2価の電子供与性基を示す。
【0022】
上記一般式(B−2)で表されるモノマーとして具体的には、例えばp−ジクロロベンゼン、p−ジメチルスルフォニロキシベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジメチルスルフォニロキシベンゼン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、2,5−ジクロロベンゾトリフルオライド、1,4−ジクロロ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、およびこれらの化合物において塩素原子を臭素原子またはヨウ素原子に置き換えた化合物などが挙げられる。
上記一般式(B−3)で表されるモノマーとして具体的には、例えば4,4'−ジメチルスルフォニロキシビフェニル、4,4'−ジメチルスルフォニロキシ−3,3'−ジプロペニルビフェニル、4,4'−ジブロモビフェニル、4,4'−ジヨードビフェニル、4,4'−ジメチルスルフォニロキシ−3,3'−ジメチルビフェニル、4,4'−ジメチルスルフォニロキシ−3,3'−ジフルオロビフェニル、4,4'−ジメチルスルフォニロキシ−3,3'5,5'−テトラフルオロビフェニル、4,4'−ジブロモオクタフルオロビフェニル、4,4'−ジメチルスルフォニロキシオクタフルオロビフェニルなどが挙げられる。
上記一般式(B−4)で表されるモノマーとして具体的には、例えばm−ジクロロベンゼン、m−ジメチルスルフォニロキシベンゼン、2,4−ジクロロトルエン、3,5−ジクロロトルエン、2,6−ジクロロトルエン、3,5−ジメチルスルフォニロキシトルエン、2,6−ジメチルスルフォニロキシトルエン、2,4−ジクロロベンゾトリフルオライド、3,5−ジクロロベンゾトリフルオライド、1,3−ジブロモ−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼン、およびこれらの化合物において塩素原子を臭素原子またはヨウ素原子に置き換えた化合物などが挙げられる。
また、分子量調節剤としては4−クロロベンゾフェノンのような片末端ハロゲン化合物(フッ素を除く)を用いて、所定の分子量に調整できる。
【0023】
ポリアリーレン系重合体は上記モノマーを触媒の存在下に反応させるが、使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、▲1▼遷移金属塩および配位子となる化合物(以下、「配位子成分」という。)、または配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)、ならびに▲2▼還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために、「塩」を添加してもよい。
ここで、遷移金属塩としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセチルアセトナートなどのニッケル化合物;塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウムなどのパラジウム化合物;塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄などの鉄化合物;塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルトなどのコバルト化合物などが挙げられる。これらのうち特に、塩化ニッケル、臭化ニッケルなどが好ましい。
また、配位子成分としては、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンなどが挙げられる。これらのうち、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジンが好ましい。上記配位子成分である化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
【0024】
さらに、配位子が配位された遷移金属錯体としては、例えば、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、硝酸ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、臭化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ヨウ化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、硝酸ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどが挙げられる。これらのうち、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)が好ましい。
上記触媒系に使用することができる還元剤としては、例えば、鉄、亜鉛、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウムなどが挙げられる。これらのうち、亜鉛、マグネシウム、マンガンが好ましい。これらの還元剤は、有機酸などの酸に接触させることにより、より活性化して用いることができる。
【0025】
また、上記触媒系において使用することのできる「塩」としては、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどのナトリウム化合物、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウムなどのカリウム化合物;フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウムなどのアンモニウム化合物などが挙げられる。これらのうち、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウムが好ましい。
【0026】
各成分の使用割合は、遷移金属塩または遷移金属錯体が、上記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.0001〜10モル、好ましくは0.01〜0.5モルである。0.0001モル未満では、重合反応が十分に進行しないことがあり、一方、10モルを超えると、分子量が低下することがある。
触媒系において、遷移金属塩および配位子成分を用いる場合、この配位子成分の使用割合は、遷移金属塩1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、触媒活性が不十分となることがあり、一方、100モルを超えると、分子量が低下することがある。
また、還元剤の使用割合は、上記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、重合が十分進行しないことがあり、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難になることがある。
さらに、「塩」を使用する場合、その使用割合は、上記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.001〜100モル、好ましくは0.01〜1モルである。0.001モル未満では、重合速度を上げる効果が不十分であることがあり、、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難となることがある。
使用することのできる重合溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。これらのうち、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。これらの重合溶媒は、十分に乾燥してから用いることが好ましい。
重合溶媒中における上記モノマーの総計の濃度は、通常、1〜90重量%、好ましくは5〜40重量%である。
また、重合する際の重合温度は、通常、0〜200℃、好ましくは50〜120℃である。また、重合時間は、通常、0.5〜100時間、好ましくは1〜40時間である。
このようにして上記一般式(A)で表されるモノマー(A)と、上記一般式(B−1)〜(B−4)で表されるモノマーから選ばれる少なくとも1種のモノマー(B)を重合させることにより、ポリアリーレンを含む重合溶液が得られる。
【0027】
次に、スルホン化反応は、スルホン酸基を有しない上記共重合体に、硫酸をスルホン化剤として用い、スルホン酸基を導入することにより得ることができる。
【0028】
このスルホン化の反応条件としては、上記スルホン酸基を有しない共重合体を、無溶剤下、あるいは溶剤存在下で、上記スルホン化剤と反応させる。溶剤としては、例えばn−ヘキサンなどの炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、N、N−ジメチルアセトアミド、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドのような非プロトン系極性溶剤のほか、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。反応温度は特に制限はないが、通常、−50〜200℃、好ましくは−10〜100℃である。また、反応時間は、通常、0.5〜1,000時間、好ましくは1〜200時間である。
【0029】
このようにして得られる、スルホン酸基含有共重合体中の、スルホン酸基量は、0.5〜3ミリグラム当量/g、好ましくは0.8〜2.8ミリグラム当量/gである。0.5ミリグラム当量/g未満では、プロトン伝導性が上がらず、一方3ミリグラム当量/gを超えると、親水性が向上し、水溶性ポリマーとなってしまうか、また水溶性に至らずとも耐久性が低下する。
上記のスルホン酸基量は、モノマー(A)とモノマー(B)の使用割合、さらにモノマー(A)の種類、組合せを変えることにより、容易に調整することができる。
【0030】
また、このようにして得られる本発明のスルホン酸基含有共重合体のスルホン化前の前駆体のポリマーの分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜50万、好ましくは2万〜40万、更に好ましくは5万〜30万である。1万未満では、成形フィルムにクラックが発生するなど、塗膜性が不十分であり、また強度的性質にも問題がある。一方、50万を超えると、スルホン化及び回収時の溶液粘度が高く取扱いが困難となり、また、スルホン酸基含有共重合体の加工性が不良となる問題がある。
【0031】
本発明のスルホン酸基含有共重合体の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、2万〜100万、好ましくは5万〜80万、更に好ましくは10万〜60万である。
【0032】
本発明において、スルホン化反応は濃度95.5〜99.5重量%の硫酸中で実施する。
硫酸濃度が95.5重量%未満ではスルホン化反応速度が極端に遅く、目的のスルホン酸等量のポリマーを得ることが困難であり、99.6重量%以上の濃度の硫酸中では、スルホン化速度が速すぎ、スルホン酸等量のコントロールが困難である。
スルホン化の際の重合体/硫酸比は1/5〜1/60の重量比で反応を行うことが好ましい。硫酸量が5重量倍未満では、反応溶液の粘度が高すぎ取扱いが困難であり、60重量倍を超えると硫酸量が多すぎるため、後処理の負荷が大きくなる。
【0033】
スルホン化工程の後、水あるいは希硫酸を用いて、スルホン化後の反応液中の硫酸/水の割合が94/6〜85/15(重量比)、好ましくは94/6〜90/10(重量比)、更に好ましくは94/6〜92/8(重量比)となるように、硫酸を希釈する。この際、希釈熱が発生するが、反応液の温度は25℃以下に制御することが必要である。
希釈工程において、水あるいは希硫酸を一気に添加するとポリマーが部分的に凝固してしまうため、少量ずつ添加することが好ましい。
上記のとおり適切に希釈されたスルホン化後の反応液はスラリー状となる。通常、スルホン化反応液の粘度は数万〜数十万mPa・S以上であるが、本発明の方法により反応後の硫酸濃度を希釈することにより、反応液の粘度は数千mPa・s以下となる。
このように、スラリー状となった反応液は溶液粘度が極端に低下するため、反応器からの移送が容易となる。
この反応液をイオン交換水等の大量の水、メタノールなどの貧溶剤中に添加することによりポリマーを凝固させ、回収することができる。
【0034】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【実施例】
[測定]
スルホン酸等量
得られたスルホン酸基含有重合体の水洗水が中性になるまで洗浄し、フリーの残存している酸を除いて充分に水洗し、乾燥後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解し、フェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液を用いて滴定を行い、中和点から、スルホン酸等量を求めた。
分子量の測定
スルホン化前の前駆体重合体の重量平均分子量は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
スルホン化物の分子量は、溶剤として臭化リチウムと燐酸を添加したN−メチルー2−ピロリドン(NMP)を溶離液として用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
【0035】
[参考例 ポリアリーレンの合成]
(オリゴマーの調製)
撹拌機、温度計、冷却管、Dean-Stark管、窒素導入の三方コックをとりつけた1Lの三つ口のフラスコに、2.2−ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノールAF)67.3g(0.20モル)、4,4'-ジクロロベンゾフェノン(4,4'-DCBP)60.3g(0.24モル)、炭酸カリウム71.9g(0.52モル)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)300mL、トルエン150mLをとり、オイルバス中、窒素雰囲気下で加熱し撹拌下130℃で反応させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean-Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。反応温度を130℃から徐々に150℃まで上げた。その後、反応温度を徐々に150℃まで上げながら大部分のトルエンを除去し、150℃で10時間反応を続けた後、4,4'-DCBP10.0g(0.040モル)を加え、さらに5時間反応した。得られた反応液を放冷後、副生した無機化合物の沈殿物を濾過除去し、濾液を4Lのメタノール中に投入した。沈殿した生成物を濾別、回収し乾燥後、テトラヒドロフラン300mLに溶解した。これをメタノール4Lに再沈殿し、目的の化合物95g(収率85%)を得た。
得られた重合体のGPC(THF溶媒)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は4,200、重量平均分子量は8,300であった。また、得られた重合体はTHF、NMP、DMAc、スルホランなどに可溶で、Tgは110℃、熱分解温度は498℃であった。
得られた重合体は式(I):
Figure 0003758588
Figure 0003758588
で表される構造を有することが推定され、該構造と上記の数平均分子量とから、nの平均値は7.8と求められた。
(ポリアリーレン系共重合体の合成)
上記で得られた式(I)のオリゴマー28.4g(2.87mmol)、2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシ)フェノキシベンゾフェノン(DCPPB)29.2g(67.1mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド1.37g(2.1mmol)、よう化ナトリウム1.36g(9.07mmol)、トリフェニルホスフィン7.34g(28.0mmol)、亜鉛末11.0g(168mmol)をフラスコにとり、乾燥窒素置換した。N-メチル−2−ピロリドン130mlを加え、80℃に加熱し、4時間攪拌し、重合をおこなった。重合溶液をTHFで希釈し、塩酸/メタノールで凝固回収し、メタノール洗滌を繰り返し、THFで溶解、メタノールへ再沈殿による精製し、濾集した重合体を真空乾燥し目的の共重合体50.7g(96%)を得た。 GPC(THF)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は40000、重量平均分子量は145000であった。
【0036】
実施例1
上記で得た共重合体25gを攪拌装置、温度計を取り付けた1000mlのセパラブルフラスコに入れ、濃度96.4%硫酸250mlを加え、内温を25℃に保ちながら窒素気流下で24時間攪拌した。反応時間中、反応溶液の粘度が非常に高く、反応時間6時間の時点で反応溶液の粘度を測定(25℃)したところ500000mPa・sであった。24時間の反応終了後、濃度88%の硫酸150mlを加え、反応後の重合体溶液中の硫酸/水の割合が93/7(重量比)となる様に希釈した。希釈後、重合体溶液はスラリー状となり、溶液粘度は1000mPa・s以下となった。
得られた溶液を大量のイオン交換水の中に注ぎ入れ、重合体を沈殿させた。この際、重合体溶液がスラリー状となり、溶液粘度が低下したことにより、重合体の沈殿操作は容易であった。洗浄水のpHが5になるまで重合体の洗浄を繰り返した。乾燥して、29g(96%)のスルホン酸基含有重合体を得た。スルホン酸基含有重合体のGPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は67,000、重量平均分子量は277,000であった。本スルホン酸基含有重合体のスルホン酸等量は2.1mg等量/gであった。
なお、スルホン化反応後、硫酸希釈後のポリマー溶液の一部をサンプリングし、更に12時間内温を25℃に保ちながら、窒素気流下で攪拌し、反応させた。この溶液を大量のイオン交換水の中に投入し、重合体を沈殿させ、上記と同様にして、洗浄・乾燥を実施した。このスルホン酸基含有重合体のGPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は67,000、重量平均分子量は276,000であり、スルホン酸等量は2.1mg等量/gであり、硫酸希釈後はスルホン化反応は進行していないことが確認された。
【0037】
比較例1
参考例で得た共重合体25gを攪拌装置、温度計を取り付けた1000mlのセパラブルフラスコに入れ、濃度96.4%硫酸250mlを加え、内温を25℃に保ちながら窒素気流下で24時間攪拌した。反応時間中、反応溶液の粘度が非常に高く、反応時間6時間の時点で反応溶液の粘度を測定(25℃)したところ500000mPa・sであった。24時間の反応終了後、重合体を沈殿させるため、イオン交換水に重合体溶液移液させようとしたが、粘度が高く非常に操作が困難であり、移液に1時間以上を要した。イオン交換水中で凝固させ、洗浄水のpHが5になるまで重合体の洗浄を繰り返した。こうして得られた、スルホン酸基含有重合体のGPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は67,000、重量平均分子量は280,000であった。本スルホン酸基含有重合体のスルホン酸等量は2.1mg等量/gであった。
なお、24時間スルホン化反応後のポリマー溶液の一部をサンプリングし、更に12時間内温を25℃に保ちながら、窒素気流下で攪拌し、反応させた。この溶液を大量のイオン交換水の中に投入し、重合体を沈殿させ、上記と同様にして、洗浄・乾燥を実施した。このスルホン酸基含有重合体のGPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は70,000、重量平均分子量は305,000、スルホン酸等量は2.5g等量/gであり、スルホン化反応が更に進行していることが確認された。
【0038】
比較例2
参考例で得た共重合体25gを攪拌装置、温度計を取り付けた1000mlのセパラブルフラスコに入れ、濃度96.4%硫酸250mlを加え、内温を25℃に保ちながら窒素気流下で24時間攪拌した。反応時間中、反応溶液の粘度が非常に高く、反応時間6時間の時点で反応溶液の粘度を測定(25℃)したところ500000mPa・sであった。24時間の反応終了後、濃度60重量%の硫酸150mlを加え、反応後の重合体溶液の硫酸/水の割合を83/17(重量比)となるように希釈した。希釈の間に、重合体が沈殿し、膨潤した塊となり後処理が不可能となった。
【0039】
【発明の効果】
本発明によると、スルホン化反応後の溶液粘度を適正な範囲にコントロールが可能で、スルホン酸基含有重合体の回収を工業的に容易に行うことができる。また、本発明の方法により、スルホン化反応を完全に停止させることができる。

Claims (2)

  1. (1)濃度95.5〜99.5重量%の硫酸中で、硫酸の1/5〜1/60重量倍の重合体のスルホン化を行う工程および(2)スルホン化後の反応液中の硫酸/水の割合を94/6〜85/15(重量比)とした後にスルホン化重合体を凝固する工程を含むことを特徴とするスルホン酸基含有重合体の回収方法。
  2. スルホン化される重合体が重量分子量500,000以下のポリアリーレン系重合体であることを特徴とする請求項1記載のスルホン酸基含有重合体の回収方法。
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