JPWO2004030004A1 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
この種の固体電解コンデンサにおいて、小型、大容量用途としては、一般に、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔と陰極箔をセパレータを介在させて巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸し、アルミニウム等の金属製ケースや合成樹脂製のケースにコンデンサ素子を収納し、密閉した構造を有している。なお、陽極材料としては、アルミニウムを初めとしてタンタル、ニオブ、チタン等が使用され、陰極材料には、陽極材料と同種の金属が用いられる。
また、固体電解コンデンサに用いられる固体電解質としては、二酸化マンガンや7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られているが、近年、反応速度が緩やかで、かつ陽極電極の酸化皮膜層との密着性に優れたポリエチレンジオキシチオフェン(以下、PEDTと記す)等の導電性ポリマーに着目した技術(特開平2−15611号公報)が存在している。
このような巻回型のコンデンサ素子にPEDT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成するタイプの固体電解コンデンサは、以下のようにして作製される。まず、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔の表面を塩化物水溶液中での電気化学的なエッチング処理により粗面化して、多数のエッチングピットを形成した後、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して誘電体となる酸化皮膜層を形成する(化成)。陽極箔と同様に、陰極箔もアルミニウム等の弁作用金属からなるが、その表面にはエッチング処理を施すのみである。
このようにして表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔とエッチングピットのみが形成された陰極箔とを、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成する。続いて、修復化成を施したコンデンサ素子に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、EDTと記す)等の重合性モノマーと酸化剤溶液をそれぞれ吐出し、あるいは両者の混合液に浸漬して、コンデンサ素子内で重合反応を促進し、PEDT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を生成する。その後、このコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納し、ケースの開口部を封ロゴムで封止して固体電解コンデンサを作成する。
[解決すべき課題]
ところで、近年、上述したような固体電解コンデンサが車載用として用いられるようになってきている。通常、車載用回路の駆動電圧は12Vであり、固体電解コンデンサには25Vの高耐電圧が要求される。
従来、このような高耐電圧品を得るために以下のような方法が用いられてきた。すなわち、16WVまでは箔Vfsを上げることにより耐圧は向上してきたが、20W以上においては、箔Vfsに依存した形によっては、ショートが多発するため、耐圧の向上は困難であった。そこで、本発明者等はこの点について検討した結果、酸化剤の箔へのアタックと、ポリマー耐圧自体の限界(平均で20V程度)であるためと推定された。そこで、モノマーと酸化剤の配合比を変える方法や、セパレータを改良することで、20Wと25Wの製品化に成功した。
しかしながら、上記のような方法を用いても、近年、開発要求が高まっている30W、35Wの実現は困難であった。
また、従来の固体電解コンデンサには、上記のような問題点の他に、以下のような問題点もあった。
すなわち、近年、電子情報機器はデジタル化され、さらにこれらの電子情報機器の心臓部であるマイクロプロセッサ(MPU)の駆動周波数の高速化が進んでいる。これに伴って、消費電力の増大化が進み、発熱による信頼性の問題が顕在化してきたため、その対策として駆動電圧の低減化が図られてきた。
上記駆動電圧の低減化を図るため、マイクロプロセッサに高精度な電力を供給する回路として電圧制御モジュールと呼ばれるDC−DCコンバーターが広く使用されており、その出力側コンデンサには、電圧降下を防ぐためESRの低いコンデンサが多数用いられている。このような低ESR特性を有するコンデンサとして、上述したような固体電解コンデンサが実用化され、多用されている。
しかしながら、マイクロプロセッサの駆動周波数の高速化は著しく、それに伴って消費電力がさらに増大し、それに対応するために電圧降下を防ぐためのコンデンサからの供給電力のさらなる増大化が求められている。すなわち、大きな電力を短時間で供給することができなければならず、このために固体電解コンデンサには大容量化、小型化、低電圧化と共に、さらに優れたESR特性が要求されている。
なお、このような問題点は、重合性モノマーとしてEDTを用いた場合に限らず、他のチオフェン誘導体、ピロール、アニリン等を用いた場合にも同様に生じていた。
[発明の目的]
本発明の第1の目的は、耐圧の向上とリフロー後のLC変動の抑制を可能とした固体電解コンデンサの製造方法を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、静電容量の高い固体電解コンデンサを得ることができる固体電解コンデンサの製造方法を提供することにある。
また、本発明に係る第2の固体電解コンデンサの製造方法は、コンデンサ素子を修復化成した後、そのコンデンサ素子を、ポリイミドシリコン濃度が0.05wt%以上2.0wt%未満のケトン系溶液に浸漬し、その後に重合性モノマーと酸化剤を含浸させて、導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成することにより、接着性能を有するポリイミドシリコン層を形成することができるので、静電容量に優れた固体電解コンデンサを得ることができる。
本発明者等は、上記第1の目的である固体電解コンデンサの耐圧の向上とリフロー後のLC変動の抑制を図るべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明者等は電気伝導機構に着目し、導電性ポリマー等の固体電解質における電気伝導について検討した。
一般に、電子放出は、電子のトンネル電子と電位障壁の飛び越え(皮膜の破損に依存しない電子の飛び越し)の2種類に大別されるが、固体電解コンデンサにおける漏れ電流は、ショート状態ではない、電位障壁の飛び越しによるものと考えられる。
また、リフロー後のLCの上昇の原因としては、ガス発生によるリフロー中の機械的なストレス(物理的ストレス)と、化学ストレス(酸化剤のアタックや電子の飛び越しなど)が考えられる。
すなわち、固体電解コンデンサの高耐圧化において、ショートは電子が増大して、なだれ状態となって、トンネル状態になることであり、リフローでのLCの上昇においては、絶縁破壊によらない、電子の飛び越しによるもので、両者において共通することは電子である。従って、電子をブロッキングすることで、電位障壁の飛び越しを抑制し、高耐圧化、リフローでのLCの上昇の抑制を実現することができると考えられる。
これらの知見に基づいて、本発明者等は、電位障壁の飛び越えを防ぐことができる手段について種々検討を重ね、ポリイミドシリコンを用いることにより、製品の耐圧向上、リフロー後のLC上昇を抑制することができることを見出した。
(A−1)固体電解コンデンサの製造方法
第1実施形態における固体電解コンデンサの製造方法は以下の通りである。すなわち、表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔を、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に修復化成を施す。その後、このコンデンサ素子をポリイミドシリコンの10wt%以下、好ましくは2.0〜9wt%、さらに好ましくは5〜8wt%のケトン系溶媒に溶解した溶液に浸漬し、引き上げた後、40〜100℃で溶媒を蒸発させ、その後、150〜200℃で熱処理した。濃度がこの範囲未満では耐圧が十分ではなく、この範囲を超えると静電容量が低下する。
続いて、このコンデンサ素子を重合性モノマーと酸化剤の混合液に浸漬し、コンデンサ素子内で導電性ポリマーの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成する。そして、このコンデンサ素子を外装ケースに収納し、開口端部を封ロゴムで封止し、固体電解コンデンサを形成する。
(A−2)ポリイミドシリコン
ポリイミドシリコンを溶解する溶媒としては、ポリイミドシリコンの溶解性の良好なケトン系溶媒が好ましく、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン等を用いることができる。
また、ポリイミドシリコン溶液の濃度は、2〜10wt%、好ましくは2.0〜9wt%、さらに好ましくは5〜8wt%である。
(A−3)EDT及び酸化剤
重合性モノマーとしてEDTを用いた場合、コンデンサ素子に含浸するEDTとしては、EDTモノマーを用いることができるが、EDTと揮発性溶媒とを1:0〜1:3の体積比で混合したモノマー溶液を用いることもできる。
前記揮発性溶媒としては、ペンタン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、アセトニトリル等の窒素化合物等を用いることができるが、なかでも、メタノール、エタノール、アセトン等が好ましい。
また、酸化剤としては、エタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸もしくはヨウ素酸の水溶液を用いることができ、酸化剤の溶媒に対する濃度は40〜65wt%が好ましく、45〜57wt%がより好ましい。酸化剤の溶媒に対する濃度が高い程、ESRは低減する。なお、酸化剤の溶媒としては、上記モノマー溶液に用いた揮発性溶媒を用いることができ、なかでもエタノールが好適である。酸化剤の溶媒としてエタノールが好適であるのは、蒸気圧が低いため蒸発しやすく、残存する量が少ないためであると考えられる。
(A−4)修復化成の化成液
修復化成の化成液としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液を用いることができるが、なかでも、リン酸二水素アンモニウムを用いることが望ましい。また、浸漬時間は、5〜120分が望ましい。
(A−5)他の重合性モノマー
本発明に用いられる重合性モノマーとしては、上記EDTの他に、EDT以外のチオフェン誘導体、アニリン、ピロール、フラン、アセチレンまたはそれらの誘導体であって、所定の酸化剤により酸化重合され、導電性ポリマーを形成するものであれば適用することができる。なお、チオフェン誘導体としては、図1に示す構造式のものを用いることができる。図1において、XはO又はSを示す。XがOのとき、Aはアルキレン、又はポリオキシアルキレンである。また、Xの少なくとも一方がSのとき、Aはアルキレン、ポリオキシアルキレン、置換アルキレン、又は置換ポリオキシアルキレンである。ここで、置喚基はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基である。
(A−6)第1実施形態の作用・効果
本発明の構成で、耐電圧の向上とリフロー後のLC変動の抑制効果が得られる理由は、以下の通りと考えられる。
すなわち、修復化成後にコンデンサ素子をポリイミドシリコン溶液に浸漬することにより、酸化皮膜の表面に上記電子の飛び越えを防ぐ皮膜(以下、電子ブロック層という)が形成されると考えられる。
そして、この電子ブロック層により、耐圧が上昇し、酸化剤の箔へのアタックを防止することができ、初期のLCが低減される。また、タブコートも行え、リフローでのLCの上昇抑制効果が得られる。さらに、静電容量、ESRに影響をあまり与えにくく、この電子ブロック層の膜厚をコントロールすることにより、耐電圧もコントロールできると考えられる。また、現在用いられている箔のVFを下げることができることから、固体電解コンデンサの小型化、容量UP等に効果を発揮する。
(A−7)第1実施形態に関する実施例
続いて、以下のようにして製造した実施例A1〜A3及び従来例に基づいて、第1実施形態の発明をさらに詳細に説明する。
続いて、所定の容器に、EDTとp−トルエンスルホン酸第二鉄の40wt%ブタノール溶液を、その重量比が1:3となるように注入して混合液を調製し、コンデンサ素子を上記混合液に10秒間浸漬してコンデンサ素子にEDTと酸化剤を含浸した。そして、このコンデンサ素子を120℃の恒温槽内に1時間放置して、コンデンサ素子内でPEDTの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成した。その後、このコンデンサ素子を有底筒状のアルミニウムケースに収納し、封ロゴムで封止し、固体電解コンデンサを形成した。
(従来例)
コンデンサ素子をポリイミドシリコンのシクロヘキサノン溶液に浸漬することなく、実施例1と同様の条件及び工程で固体電解コンデンサを作成した。
[比較結果1]
上記の方法により得られた実施例A2及び従来例について、リフロー前後の耐圧の変化について調べたところ、図2に示すような結果が得られた。図2から分かるように、リフロー後の耐圧も向上している。
[比較結果2]
上記の方法により得られた実施例A1〜A3及び従来例について、ポリイミドシリコンの濃度と初期容量の減少率を調べたところ、図3に示すような結果が得られた。なお、初期容量の減少率はブランク(従来例)に対する百分率で示した。
また、上記の方法により得られた実施例A1〜A3について、ポリイミドシリコンの濃度とESRの関係を調べたところ、図4に示すような結果が得られた。
[比較結果3]
上記の方法により得られた実施例A2、実施例A3及び従来例について、ポリイミドシリコンの濃度とリフロー前後のLCの挙動について調べたところ、図5に示すような結果が得られた。なお、リフローの条件は、鉛フリー条件下においてサンプル数が10であり、ピーク温度250℃、230℃以上の滞留時間は40秒とした。また、図中、「初期」とあるのは初期特性であり、「1回」とあるのは、上記のリフロー試験を1回行った後のLCの値、「2回」とあるのは、その後さらにもう1回リフロー試験を行った後のLCの値を示したものである。
図5から分かるように、リフロー後の漏れ電流も向上している。ここで、6wt%の漏れ電流は、2wt%に比べて10μA以下に抑えられており、より良好な特性を得ている。
[比較結果4]
上記の方法により得られた実施例A1〜A3及び従来例について、電気的特性を調べたところ、表1に示したような結果が得られた。
表1から明らかなように、修復化成後にコンデンサ素子をポリイミドシリコン溶液に浸漬した実施例A1〜A3においては、いずれも従来例に比べて耐圧は向上し、リフロー後のLCは、大幅に低減された。
(B)第2実施形態(静電容量の向上)
本発明者等は、上記第2の目的である固体電解コンデンサの静電容量の向上を図るべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明者等は、ポリイミドシリコンの接着性に着目し、この接着性をより効果的に発現し得るポリイミドシリコン処理の条件について検討したところ、ポリイミドシリコンの濃度を0.05wt%以上、2wt%未満とすると良好な結果が得られることを見出したものである。
(B−1)固体電解コンデンサの製造方法
第2実施形態における固体電解コンデンサの製造方法は以下の通りである。すなわち、表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔を、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に修復化成を施す。その後、このコンデンサ素子を、濃度を0.05wt%以上、2wt%未満に調製したポリイミドシリコンのケトン系溶液に浸漬し、引き上げた後、40〜100℃で溶媒を蒸発させ、その後、150〜200℃で熱処理した。濃度がこの範囲未満では耐圧が十分ではなく、この範囲を超えると静電容量が低下する。
続いて、このコンデンサ素子を重合性モノマーと酸化剤の混合液に浸漬し、コンデンサ素子内で導電性ポリマーの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成する。そして、このコンデンサ素子を外装ケースに収納し、開口端部を封ロゴムで封止し、固体電解コンデンサを形成する。
(B−2)ポリイミドシリコン
ポリイミドシリコンを溶解する溶媒としては、ポリイミドシリコンの溶解性の良好なケトン系溶媒が好ましく、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン等を用いることができる。
また、ポリイミドシリコン溶液の濃度は、0.05wt%以上、2wt%未満が好ましい。ポリイミドシリコンの濃度が2wt%以上であると、形成されるポリイミドシリコン層の絶縁性が高くなるため、静電容量は低下する。一方、0.05wt%未満では、十分な静電容量が得られない。
(B−3)EDT及び酸化剤
重合性モノマーとしてEDTを用いた場合、コンデンサ素子に含浸するEDTとしては、EDTモノマーを用いることができるが、EDTと揮発性溶媒とを1:0〜1:3の体積比で混合したモノマー溶液を用いることもできる。
前記揮発性溶媒としては、ペンタン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、アセトニトリル等の窒素化合物等を用いることができるが、なかでも、メタノール、エタノール、アセトン等が好ましい。
また、酸化剤としては、エタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸もしくはヨウ素酸の水溶液を用いることができ、酸化剤の溶媒に対する濃度は40〜65wt%が好ましく、45〜57wt%がより好ましい。酸化剤の溶媒に対する濃度が高い程、ESRは低減する。なお、酸化剤の溶媒としては、上記モノマー溶液に用いた揮発性溶媒を用いることができ、なかでもエタノールが好適である。酸化剤の溶媒としてエタノールが好適であるのは、蒸気圧が低いため蒸発しやすく、残存する量が少ないためであると考えられる。
(B−4)修復化成の化成液
修復化成の化成液としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液を用いることができるが、なかでも、リン酸二水素アンモニウムを用いることが望ましい。また、浸漬時間は、5〜120分が望ましい。
(B−5)他の重合性モノマー
本発明に用いられる重合性モノマーとしては、上記EDTの他に、EDT以外のチオフェン誘導体、アニリン、ピロール、フラン、アセチレンまたはそれらの誘導体であって、所定の酸化剤により酸化重合され、導電性ポリマーを形成するものであれば適用することができる。なお、チオフェン誘導体としては、図1に示す構造式のものを用いることができる。
(B−6)第2実施形態の作用・効果
本発明の構成で、静電容量の向上効果が得られる理由は、以下の通りと考えられる。
すなわち、ポリイミドシリコンの濃度が0.05wt%以上、2wt%未満の範囲内の場合に静電容量が増大する理由は、以下の通りであると考えられる。すなわち、ポリイミドシリコンを構成するポリイミドとPEDT等の導電性ポリマーは共に有機化合物なので接着性が良く、また、ポリイミドシリコン中のSiと誘電体酸化皮膜(Al2O3)は共に無機化合物なので接着性が良いため、結果として、ポリイミドシリコン層を介して導電性ポリマーと誘電体酸化皮膜との接着性が向上して、静電容量が増大すると考えられる。
(B−9)第2実施形態に関する実施例
続いて、以下のようにして製造した実施例及び比較例に基づいて本実施形態の発明をさらに詳細に説明する。
続いて、所定の容器に、EDTとp−トルエンスルホン酸第二鉄の45wt%ブタノール溶液を、そのモル比が6:1となるように注入して混合液を調製し、コンデンサ素子を上記混合液に10秒間浸漬してコンデンサ素子にEDTと酸化剤を含浸した。そして、このコンデンサ素子を120℃の恒温槽内に1時間放置して、コンデンサ素子内でPEDTの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成した。その後、このコンデンサ素子を有底筒状のアルミニウムケースに収納し、封ロゴムで封止し、固体電解コンデンサを形成した。なお、この固体電解コンデンサの定格電圧は25WV、定格容量は10μFである。
(比較例)
ポリイミドシリコン処理を施すことなく、他の条件は上記実施例B1と同様にして固体電解コンデンサを作成した。
[比較結果]
上記の方法により得られた実施例及び比較例について、静電容量を調べたところ、表2に示したような結果が得られた。
表2から明らかなように、ポリイミドシリコンの濃度を0.5〜1.5wt%とした実施例B1〜実施例B3においては、ポリイミドシリコン処理を行わなかった比較例に比べて、静電容量は5〜12%上昇した。
また、第2実施形態に示した発明によれば、修復化成後にコンデンサ素子を、濃度が0.05wt%以上、2wt%未満のポリイミドシリコン溶液に浸漬することにより、静電容量の向上を可能とした固体電解コンデンサの製造方法を提供することができる。
このように、本発明によれば、静電容量特性が必要な場合には、修復化成後に浸漬するポリイミドシリコン溶液の濃度を0.05wt%以上、2wt%未満に調製し、静電容量特性が重要でない場合には、ポリイミドシリコン溶液の濃度を2〜10wt%の範囲に調製することにより、耐圧の向上とリフロー後のLC変動の抑制を可能とした固体電解コンデンサを得ることができる。
Claims (6)
- 表面に酸化皮膜を形成した弁金属からなる陽極体と固体電解質からなる固体電解コンデンサの製造方法において、
前記固体電解質を形成した素子を、ポリイミドシリコン溶液に浸漬して、電子をブロックする皮膜を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。 - 陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成する固体電解コンデンサの製造方法において、
前記コンデンサ素子をポリイミドシリコン溶液に浸漬して、電子をブロックする皮膜を形成し、その後に前記導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。 - 前記ポリイミドシリコン溶液の濃度が、2.0wt%〜10wt%であることを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記ポリイミドシリコン溶液の濃度が、0.05wt%以上2.0wt%未満であることを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記重合性モノマーが、チオフェン誘導体であることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第4項のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記チオフェン誘導体が、3,4−エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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