JPWO2003044509A1 - 熱分析方法および熱分析装置 - Google Patents
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Abstract
測定すべき試料の少なくとも一部に温度変化を与えつつ、該温度変化に基づく試料の微小部分の熱的特性を、赤外線を利用して測定する。試料の微小部分の熱分析を可能とする方法および装置が提供される。
Description
技術分野
本発明は、物質ないし材料を熱分析するための方法および装置に関し、特に、試料を微小部分に分割して熱分析するための方法および装置に関する。
背景技術
高分子、バイオマテリアル、半導体材料、セラミック材料、金属材料、更には近年のナノ・テクノロジーを始めとする複合物質ないし材料関連の幅広い技術分野において、微小領域で所望の物性を発現することが可能な材料を開発する要請が益々強まっている。このような材料の例としては、例えば、熱電素子、IC用絶縁塗膜、感熱記録紙、伝熱ペースト、薄膜断熱材、生体凍結保存液、炭素繊維強化複合材料等が挙げられる。上記した微小領域で所望の物性を発現する材料の開発には、当然ながら、微細な構造を精密に制御することが必要となる。更には、このような微細構造を有する材料の開発には、該材料の特性を精密に評価する分析技術が不可欠である。
材料の熱的挙動の分析に基づき、材料特性を評価する方法としては、従来より、DSC(示差走査熱量測定法)、DTA(示差熱分析法)等が広く用いられて来た。これらは、測定すべき試料における熱特性を鋭敏に検出することが可能という優れた特徴を有している。
しかしながら、DSCないしDTAによる分析データは、その性質上、DSCまたはDTA試料セルに収納された数ミリグラム程度の試料についての平均値として測定されるものとなる。したがって、これらの方法により、試料のサイズの点では1mmオーダー以下の微小部分の熱分析を行うことは困難であった。
赤外線放射温度計を利用して試料の熱物性を測定する方法として、特開平3−189547号公報がある。この方法においては、非接触で温度測定を行うことにより、膜厚が1μm以下のフィルムの熱拡散率を測定している。この方法によれば膜厚の薄いものの熱拡散率を測定できるが、測定部分の面積の平均値でしか物性を測定できないことでは、上記したDSCないしDTAと変わりはない。
上記したナノテクノロジー等における微細な構造制御が必要な材料の開発においては、試料のμmオーダー以下のレベルにおける熱的特性の分布が材料特性に大きく影響するが、従来においては、AFMを応用した熱分析法(熱伝導の分布を面内スキャンで求める方法)は存在する。しかし試料の微小部分の赤外線カメラを利用した二次元的熱分析を行う方法は存在しなかった。
発明の開示
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消し、試料の微小部分の熱分析を可能とする方法および装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、赤外線カメラを利用した試料の微小部分毎の熱分析と同時に交流的に与えた温度波の挙動を二次元的に解析し、熱伝導率・熱拡散率の情報を同時に得ることを可能とする方法および装置を提供することにある。
本発明者は鋭意研究の結果、従来の熱分析におけるように、測定すべき試料領域の熱的特性を「平均値」として測定するのではなく、該試料領域を構成する個々の1mm平方以下、更には0.1mm平方以下(特に10μm平方以下)である微小部分の熱的特性データ(ないしは熱的特性データの複数もしくは二次元的または擬似三次元的な集合)として測定することが、上記目的の達成のために極めて効果的なことを見出した。
本発明の熱分析方法は上記知見に基づくものであり、より詳しくは、測定すべき試料の少なくとも一部に温度変化を与えつつ、該温度変化に基づく加熱部を含む周辺にある試料の微小部分の熱的特性を赤外線センサーを利用して測定するものである。
本発明によれば、更に、測定すべき試料に温度変化を与えるための温度変化手段と、試料の微小部分を拡大するための赤外像拡大手段と、該微小部分の熱的特性を測定するための赤外線測定手段とを少なくとも含み;前記試料の少なくとも一部に温度変化を与えつつ、該温度変化に基づく試料の微小部分の熱的特性を赤外線を利用して測定する熱分析装置が提供される。
上記構成を有する本発明の熱分析方法においては、従来の熱分析におけるように、測定すべき試料領域の熱的特性を「平均値」ないし「バルク」として測定するのではなく、該試料領域を構成する個々の微小部分の熱的特性データ(ないしは熱的特性データないし「エレメント」の複数もしくは二次元的な集合)として測定している。これにより、熱的特性測定の迅速化が可能となり、しかも、試料の特定の領域内またはμmオーダーの微小部分における熱的特性データの微細なmsecオーダー程度以下の経時変化を追跡することも、極めて容易となる。
本発明における主な好ましい態様を例示すれば、以下の通りである。
(1)測定すべき試料を一定速度で昇温または降温させつつ、該試料の少なくとも一部を顕微システムにより拡大し、赤外線放射温度計により該拡大部分の温度分布を測定する。
(2)測定すべき試料および参照試料を一定速度で昇温または降温させつつ、該試料および参照試料の少なくとも一部を顕微鏡により拡大し、その際の温度変化を赤外線放射温度計により測定し、試料および温度と輻射料が較正された参照試料の温度変化の差を比較することにより、試料のDTA分析を行う。
(3)測定すべき試料を一定速度で昇温または降温させつつ、該試料の少なくとも一部を光照射またはジュール発熱で変調温度波を与え、その際の温度変化を赤外線放射温度計により測定し、直流部分の変化から試料の微小部分の潜熱を観測することにより、該微小部分の融解または固化の状態の分析を行い、また交流分の解析から熱拡散率を同時に計測する。
(4)試料の一部に交流熱源を設けて交流状の温度変化を発生させつつ、該試料を一定速度で昇温または隆温させつつ、試料の微小部分を顕微鏡で拡大し、そのときの温度変化を赤外線温度計で測定しつつ、別途設置した温度センサーでの試料の微小部分の交流状の温度変化の位相遅れを求めることにより試料の微小部分の熱拡散率を求める。
発明を実施するための最良の形態
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
(試料)
その熱的特性の測定が有用な試料である限り、特に制限されない。このような試料の例として、例えば、有機化合物、高分子化合物、有機色素、鉱石、ガラス、セラミックス、金属、水および水溶液、植物細胞、動物細胞等を挙げることができる。
本発明において好適な被測定試料としては、赤外カメラのみを用いた場合は特に制限はない。接触型温度センサーを併用した場合、フィルム、シートまたは板状の難導電性の物質あるいは液体状または液体状となしうる難導電性の物質が望ましい。また導電性物質の場合でも測定の厚さに対して無視しうる程の薄さの絶縁薄膜を電極にコーティングするか、あるいは塗膜分を補正する方法により測定可能である。測定対象となる物質の例としては、以下のものを例示することができる。
(1)フェノール、ユリア、メラミン、ポリエステル、エポキシ、ポリウレタン、セルロース、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニルデン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネイト、ポリサルホン、ABS、ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、アクリル、アクリルニトリル、ポリアクリルニトリル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリオレフィン等の高分子化合物。
(2)シアニン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ニッケル錯体、スピロ化合物、フェロセン、フルギド、イミダゾール等の有機色素、ノルマル・アルカン類、エタノール、メタノール、グリセリン等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、安息香酸等の環状類、などの有機化合物
(3)血管内皮細胞、植物表皮細胞、藻類、血液、臓器組織、木材などの生体関連物質
(4)金属類
(5)チーズ、食用油、豆腐、ゼリー、肉類などの食品
(6)食塩水など各種水溶液、グリース、潤滑油などの液体物質
(7)珪石、ダイアモンド、コランダム、ルビー、サファイア、めのう、雲母、岩塩、カオリン、大理石、石英、カンラン石、石膏、硫黄、重晶石、みょうばん石、蛍石、長石、滑石、石綿、石灰石、ドロマイト、方解石、水晶、こはく、スピネル、エメラルド、トパーズ、猫目石、ひすい、オパール等の鉱石。石英ガラス、フッ化物ガラス、ソーダガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、等のファインセラミックス等。
(8)炭素繊維強化プラスチック、タルク混入プラスチックなどの複合材料。(少なくとも一部)
その熱的特性の測定が有用な領域である限り、(例えば赤外線センサーに入力されるべき赤外線像の拡大倍率を調整する等の手段により)その領域のサイズは特に制限されない。使用する観察装置ないし測定装置のサイズ等にも依存するが、測定すべき領域のサイズは、通常、1000μm×1000μm程度、更には10μm×10μm程度であることが好ましい。可能な場合には、測定すべき試料の細分化された部分すべてであってもよい。
本発明においては、必要に応じて、測定すべき領域(A)を複数の微小領域(B)に分けて測定を行ってもよい。このように測定すべき領域を複数の微小領域に分ける場合、一つの測定すべき領域(A)中の微小領域(B)の数は、4以上であることが好ましく、更には1000以上(特に10000以上)であることが好ましい。熱的特性の測定が可能である限り、一つの測定すべき領域(A)中の微小領域(B)の数は特に制限されないが、通常は64×64以上であることが好ましく、更には128×128以上(特に256×256以上)であることが好ましい。
本発明においては、必要に応じて、測定すべき領域の経時的変化を追跡してもよい。このように経時的変化を追跡する場合、一回の測定に対応する時間は、0.5秒以下が好ましく、更には0.05秒以下、特に1ミリ秒以下であることが好ましい。
発明においては、必要に応じて、測定された熱的特性の複数の微小部分間における、または1または複数の微小部分での熱的特性の経時的変化における差または比を求めてもよい。微小部分の熱的性質は、代表的には、温度の経時変化を、直前のデータとの差として連続的に表現することもでき、および/又は、必要に応じて、変化部分のみを強調して描画し高感度化を図ることもできる。これらの手法とは独立に、または組み合わせて、「微分画像」の手法を用いてもよい。
(温度変化)
発明において、測定すべき試料の少なくとも一部に与えるべき温度変化は、特に制限されない。すなわち、該試料の少なくとも一部に均一または経時的変化として与えることができる。また必要に応じて、該試料を構成する微小部分の1つ以上に均一にまたは微小部分ごとに、および/又は経時的変化として与えてもよい。例えば、微小部分の温度変化は一定速度で昇温・降温または等温とすることが好ましい(図1)。必要に応じて、一定速度の昇温・降温の他に、交流的変化も同時に与えてもよい。また、交流的変化を単独で与えてよい。交流は一般に正弦波であることが好ましいが、三角波・矩形波など、任意波形を与えてフーリエ変換で解析することもできる。
このような温度変化としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
(1)試料台を一定速度で昇温または降温して、試料も同一速度で変化させる。
(2)(1)とは独立して試料の一部にレーザー光線または集光した光照射で点熱源とする。
(3)(2)の点熱源をチョッパーで断続光として交流点熱源とする。
(4)試料表面の一部に金属ワイヤー、リボン、ガラス板上に書いた金属薄膜などを接触設置し、交流を通電して正弦波状または階段状の温度波を発生させる。
更には、例えば試料を冷却しつつ、通電することなど上記(1)〜(4)の2以上を適宜組み合わせて、該試料に複数の規則性をもった温度変化を与えることも可能である。
(熱的特性)
本発明において利用可能な熱的特性としては、例えば、温度、温度変化、温度分布、潜熱、融解または固化の状態、変化の位相遅れ、および熱拡散率・熱伝導率・体積比熱;並びにこれらの熱的特性の経時変化、交流温度波を用いる場合は周波数依存性または複数の微小部分間のこれらの熱的特性の差または比からなる群から選ばれる1以上の特性が挙げられる。必要に応じて、これらのうち2以上の特性を組み合わせて測定してもよい。
(赤外線を利用する測定)
本発明において好適に利用可能な赤外線は、特に制限がない。この赤外線は、通常、波長3〜5μm、更には0.9〜12μmの範囲の電磁波であることが好ましい。この赤外線は、必要に応じて、半導体デバイス等から放射されるレーザー光であってもよい。
(赤外線センサー)
本発明において利用可能な赤外線センサーないし赤外線測定手段は、特に制限されない。試料の微小部分における熱的特性の測定を出来る限り妨害しない点からは、非接触型の測定手段(例えば、赤外線放射温度計)を利用することが好ましい。
このような赤外線測定手段において使用すべき赤外線検出装置は、目的とする赤外線の検出が可能である限り特に制限されないが、CCD等のデバイスを有する装置が好ましい。このようなデバイスにおける画素数は、64×64以上、更には128×128以上(特に256×256以上)であることが好ましい。
(赤外像拡大手段)
本発明において、「赤外像拡大手段」ないし「顕微システム」とは、測定対象たる試料の微小部分の赤外線による微小部分の観察を可能とする(ないしは赤外線による拡大像を形成可能な)デバイスである限り、特に制限されない。この「赤外像拡大手段」は、必ずしも光学的要素としてのレンズないし鏡を有することを要しない。
顕微鏡による拡大倍率は、5倍以上であることが好ましく、更には10以上、特に40倍以上であることが好ましい。
(温度コントローラ・データ処理手段)
本発明において使用可能な温度コントローラおよび/又はデータ処理手段は、特に制限されない。これらは、必要に応じて、パーソナル・コンピュータ等のコンピュータにより制御し、および/又は得られたデータを処理することが好ましい。
本発明において利用可能なデータ処理方法は、特に制限されない。測定データは、通常のアナログ量、デジタル量として処理する以外に、ベクトル量等としての処理も可能である。更に、赤外線測定データを、他の任意のデータと組み合わせてもよい。これらのデータは、二次元的データを与えるように処理してもよく、または該二次元的データをNMR(ないしMRI)やX線CT等のように「輪切り」状に積算することにより擬似三次元的データを与えるように処理してもよい。
(測定原理・測定装置)
以下、本発明において好適に利用可能な測定原理および測定のための装置について詳細に説明する。
(熱伝導率・熱拡散率の定義)
図1に示すような面積A、板厚dの板状の試料において、試料の片面が温度T1、反対面が温度T2(T1>T2)の定常状態にあるとき、板厚方向の試料内部で一次元の熱伝導によってのみ熱量Qが流れる場合、この熱量Qは次式により表される。
このときの比例定数λが熱伝導率と定義される。
試料内の濃度が非定常のときを考えた場合、試料内の温度分布と温度の時間的変化の間は、試料の密度をp、定圧比熱をCpとすると、以下の熱拡散方程式で表される。
このときの比例定数αが熱拡散率として定義される。
熱拡散率αと熱伝導率λとは、次式に示す関係を有する。
(交流状熱的変化の際の測定理論)
本発明において、交流状熱的変化を試料に与える際の測定理論について説明する。
すなわち、試料の非定常熱伝導について、厚み方向(x軸方向)のみの一次元で考えると、前述の熱拡散方程式(2)は次式のようになる。
上記の(4)式を、図2に示すように以下の条件で解く。
(i)測定すべき試料片方の面で試料温度が交流状に変化する。
X=0、T=T0・cos(ωt)
(ii)温度波は無限に拡散する。
(iii)測定すべき試料が、下記式に示すように、熱的に厚い。
このとき、その解は次式により表される。
ここでωは変調周波数の角速度であり、変調周波数をfとすると、ω=2・π・fで表される。(5)式において、expの項が距離xにおける温度増幅で、cosの項がxにおける位相になる。したがって、試料の厚みdにおける温度の時間による変化は、次式により表される。
ここで温度の位相差にのみ着目すると、位相差Δθはx=0の面とx=dの面での位相の差分なので、
となり、ω=2・πfから、
と表される。図3(a)および(b)に、データの模式図を示す。
上記(8)式より、厚みdが既知の試料について、一方の面を変調周波数fを変化させて交流状に加熱し、そのときの裏面における温度変化の位相遅れΔθを測定することによって、熱拡散率αを求めることができる。このように、交流状の温度変化を試料に与える測定においては、試料の加熱面と裏面における温度変化の位相差により熱拡散率を求めるため、温度の絶対値による誤差がほとんど問題とならず、高精度な測定が可能である。
(熱拡散長)
前述した「熱的に厚い」という条件における
は長さの次元をもつことより、熱拡散長とよばれ、本測定法において重要なパラメーターの一つである。試料の厚みdと熱拡散長μの関係は、図4(a)および(b)に示すように、
d>μ: 熱的に厚い
d<μ: 熱的に薄い
と定義される。熱拡散長は温度変化の波長であるため、それが試料の厚みより大きい、すなわち熱的に薄い場合、試料全体が同じ周期で温度変動を起こしてしまう。この場合、試料表面と裏面における温度変動の位相差は0に近づき、熱拡散率は(8)式からは求められなくなる。したがって、(8)式が成立するために必要な「熱的に厚い」という条件は、最低1波長分以上の温度波が、試料内に存在する必要があるということを意味する。
(試料表面の加熱方法)
本発明において、試料表面に熱源を設ける好ましい一態様について、説明する。
このような態様においては、試料に金(Au)等の金属をスパッタリングして金属薄膜を作成し、それを交流ヒーターとして利用することが好ましい。このような交流ヒーターには、例えば、ファンクション・シンセサイザーにより変調した交流電流が通電され、そのときのジュール熱によって試料に交流状の温度波を発生させる。ジュール熱は電流の正負を問わず、そのピーク値において最大となるため、このときの温度変化の周期は、(10)式に示すように交流電流の2倍となる。
ここで、Vは電圧、Iは電流、Pは発熱量である。したがって、実際に加熱する周波数は、通電する変調周波数の2倍となる。この方法によると、交流ヒーターの熱容量が試料に比べて無視できるほど小さく、且つ試料に直接スパッタリングすることにより交流ヒーターを形成しているため、ヒーターと試料の間の熱損失を実質的に無視することができる。
(試料の裏面における温度変化の測定方法)
本発明の好ましい一態様においては、試料の裏面(交流ヒーター側と反対の面)に、ヒーターと同様に金(Au)等の金属をスパッタリングして金属薄膜を形成し、それを薄膜温度センサーとして利用することが好ましい。図5に、薄膜センサーの回路図の模式図を示す。試料の温度センサー側で温度が変化すると、金属薄膜の抵抗値もその温度依存性により温度に比例して変化する。薄膜温度センサーの回路には、直流電源とダミー抵抗が組み込んであり、金属薄膜の抵抗変化の交流成分を電圧の変化として、温度センサーと並列に組み込んだロックイン・アンプにより測定する。スパッタリングの条件等により、温度センサーの抵抗値の温度依存性も変化するが、温度の絶対値ではなく位相差により熱拡散率を求めるため、実質的に問題にならない。この方法によると、温度センサーの熱容量が試料に比べて無視できるほど小さく、試料に直接スパッタリングしているため、センサーと試料の間の熱損失を無視することができる。
(基本システム構成)
本発明の測定方法に好適に使用可能な基本的なシステム構成(本発明の測定装置)の一例を図6の模式図に示す。
このシステムは、試料を交流で加熱するためのファンクション・シンセサイザー、試料の裏面の温度変化を電流に変換するためのDCソース、試料裏面における温度変化の特定の周波数のみを測定するためのロックイン・アンプ、試料を加熱/冷却するためのホット・ステージ、および温度コントローラー、試料をホット・ステージに収納するためのサンプル・セル、薄膜温度センサーに流れるDCソース等をチェックするためのデジタル・マルチメーター、各装置の制御およびデータ処理を行うためのパーソナル・コンピューターにより構成される。
この図6のシステム構成による測定例を、図7および図8のグラフに模式的に示す。
(試料配置等の態様)
本発明において好適に使用可能な、試料、赤外像拡大手段(顕微鏡等)の配置の一例を、図9の模式斜視図に示す。この図9の例においては、例えば、図10(a)に模式的に示すような試料を、図11に模式的に示すような測定領域で測定することができる(図10(b)には、このような試料に上記した交流熱源を設ける例を模式的に示す)。また、図12(a)および(b)には、試料の拡大の態様の一例を示す。
図12(a)および(b)に、試料の領域と、拡大部分との関係の一例を示す。図12(b)に示した拡大部分を2500画素で測定する場合には、1点の測定サイズは、7.5μm×7.5μmとなる。
(測定条件の例)
図6のシステム構成において、好適に使用可能な条件の例は、以下の通りである。
(i)試料サイズ:□7.5μm〜20mm
(ii)試料厚み:0.1μm〜3mm
(iii)測定温度範囲:20℃〜350℃
(特別な仕様によれば、−269℃〜600℃)
(iv)昇温/降温速度 =0.1℃/分〜20℃/分(0.01℃/分〜2000℃/分)
(v)測定周波数範囲:0.01Hz〜10MH
(vi)交流加熱による試料の温度変化:0.1℃〜10℃
(他の測定条件)
(1)測定すべき試料を一定速度で昇温または降温させつつ、該試料の少なくとも一部を顕微鏡により拡大し、赤外線放射温度計により該拡大部分の温度分布を測定する態様において好適に使用可能な条件の例は、以下の通りである。
(i)試料サイズ:□7.5μm〜20mm
(ii)試料厚み:1μm〜3mm
(iii)拡大倍率:1倍〜100倍
(iv)測定範囲:□7.5μm〜□1mm
(v)赤外線放射温度計サンプリング間隔:1フレーム/秒〜5500フレーム/秒 特に遅い方は制限がない
(vi)赤外線放射温度計分解能:100画素〜50000画素/一平方ミリ当たり
(vii)昇温/降温速度 =0.05℃/分〜2000℃/分
(2)測定すべき試料および参照試料を一定速度で昇温または降温させつつ、該試料および参照試料の少なくとも一部を顕微鏡により拡大し、その際の温度変化を赤外線放射温度計により測定し、測定試料および参照試料の温度変化の差を比較することにより、試料のDTA分析を行う態様において好適に使用可能な条件の例は、以下の通りである。
(i)較正試料:サファイア、窒化ボロン、ガラス状炭素
(3)(2)の熱分析を行いながら、測定すべき試料の一部を交流状に加熱して、距離d離れた位置に到達した温度波の位相差の遅れから熱拡散率を測定する態様。
(i)接触型交流熱源の形成方法:スパッタリング、蒸着、接着等で金属抵抗または熱電対、サーミスタを取り付ける。
(ii)接触型交流熱源の種類:金、白金、銀、Ni、Al、Cr、Ni、C、Ti等
(導電性物質)
交流熱源に好適に使用可能な導電性物質は、電流を流すことでジュール熱により発熱するものである限り、特に制限されない。このような導電性物質の例としては、例えば、金、銀、白金、銅、鉄、亜鉛、アンチモン、イリジウム、クロメル、コンスタンタン、ニクロム、アルミニウム、クローム、ニッケル、カーボン等が挙げられる。
また、それらの交流熱源および抵抗式温度計に用いる導電性薄膜は、被測定試料との界面が無視できる程度に、その厚みは被測定試料に比べて充分薄く、その熱容量は被測定試料に比べて充分小さく、被測定試料に完全に密着していることが好ましい。このような場合、被測定試料の一方の面自体が交流熱源の変調周波数で交流発熱していると推定される(このような交流熱源の配置・利用の詳細に関しては、例えば特許第2591570号を参照することができる)。
(非接触型交流加熱)
本発明においては、試料の一部に交流温度波を与える方法として、光照射−吸収による方法も使用可能である。この場合、例えば、レーザー照射、集光した可視または赤外光をそのままあるいは光チョッパーで変調して当てる方法が使用可能である。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
実施例
実施例1
(温度波がフィルムの厚さ方向へ拡散するとき、その位相遅れの計測から、フィルムの厚さ方向の熱拡散率を求める例)
実験方法:2cm×3cm程度のパイレックスガラス(厚さ 0.5mm、
コーニング 社製、商品名パイレックス7740)上に、金スパッタリングにより、リボン形状の平面ヒーター電極(1mm×5mm、厚さ50nm、平面電極の抵抗50オーム)を形成した。この際に用いた金スパッタリング条件は、以下の通りである。
<金スパッタリング条件>
サンユウ電子 5mA、2kV、5分
上記により得た平面ヒーター電極に、周波数0.5Hzの交流を通電することにより、温度波を発生させた。この際に入力した交流電圧は、3Vp−p、平面電極の抵抗48オーム、波形サイン波であった。
試料:市販の食品用ラップフィルム(ポリ塩化ビニリデン、厚さ8μm、クレハ化学社製、商品名クレラップ)および市販の熱転写用インクリボン(フィルム厚さ6μm、インク層厚さ約0.5μm、商品名ALPS MDインクリボン)を上記の電極の上に、食品用ラップフィルムとインクリボンとが互いに重ならないように配置した。このように配置した二つの試料を同時に赤外線カメラ(レイセオン社製、商品名Radiance)で計測した。
赤外線カメラのシャッタースピードを1ms、1秒あたりのフレーム数を200枚、画素数を128×128とした。
結果:図13および図14に、ラップおよびインクリボンの温度分布(図中、右の部分が電極の金、左上部がラップ、左下がインクリボン)を示す。
図15および図16には写真中の各ポイントにおける温度の時間変化を示す。試料上で電極の側と少し離れた点(100μm)では、位相遅れが遅れており、熱拡散方程式から求めた位相と熱拡散率の関係から、計算されたインクリボンの熱拡散率は、0.11mm2 s−1であった。ラップの熱拡散率は、0.09mm2 s−1であった。この二枚の熱拡散率の差は、面情報としても確認できる。また、図13および図14の差は、観測時間が異なるが、計算された熱拡散率は上記の値と同じであった。
実施例2
(植物内皮細胞の冷却過程の解析−細胞間、細胞内の結晶化速度解析および温度伝播の解析)
実験方法:氷水上においた冷却板の上にペルチエ素子を設置した試料台に、スライドガラスに密着させたタマネギ内皮細胞の冷却過程を、実施例1で用いたものと同様の赤外線カメラで計測した。冷却過程においては、室温から−30℃付近まで、冷却速度約200℃/分で冷却した。赤外線カメラのシャッタースピードは、2ms、フレーム数は200枚/秒、画素数は128×128とした。
試料:新鮮なタマネギの外側から、1層または2層目の芽および根の位置からほぼ中心の位置の外皮を採取し、スライドガラス上に密着させたものを試料とした。外皮の厚さは約75μm、細胞1つの大きさは、約100μm×300μmの楕円形であった。
結果:図17〜図28にタマネギ細胞を冷却する過程を時系列で示した。タマネギに限らず、水溶液が凝固する時は、一般に過冷却を起こし、結晶化が始まると潜熱によっていったん昇温する。これらの図においては、明るい個所が凝固をしている部分であり、温度が周囲よりも高い。凝固が完了すると、周囲の温度と同じになり、図では暗くなる。細胞内、および隣り合う細胞間の指定した場所での温度変化を測定した。図29は、図20の拡大図である。
図15中の+印の各位置について、細胞内(短軸、長軸方向)および細胞間の温度プロフィールを図30〜図33に示した。
図30および図31は、細胞内短軸方向に選定した点について、温度変化を比較したものである(図30は細胞内の凝固発熱現象を捉えた例であり、図31は その立ち上がり部分の拡大図である)。潜熱の発生開始点(1)から距離が離れるほど、潜熱発生の立ち上がり時間ならびに最初の極大をとる時間に数十ミリ秒の遅れが生じていることがわかる。これから細胞内短軸方向の温度伝播速度を見積もると、およそ5μm/msとなる。これは氷の成長速度である。また、潜熱のプロフィールは、主ピークとは別の極大をもち、この極大においても、主ピークとほぼ同様の時間遅れを示す。
図34および図35の結果と照らし合わせると、図29中の(10)および(11)の点の極大の時間にほぼ一致し、このことは、この細胞が長軸を接する両隣の細胞の潜熱の影響(これらの熱伝導による温度上昇)であることを観測している。
図32および33は、細胞内長軸方向に温度変化を比較したものであるが、潜熱の発生開始点(1)から両端方向へ距離が離れるほど、潜熱の立ち上がり時間に遅れが生じることが観察される。これから細胞内長軸方向の温度伝播速度を見積もると、およそ10μm/msとなる。潜熱は、2つまたは3つの極大をもち、長軸方向の端に近い位置では、3つの極大を有する。図34および図35の結果と照らし合わせると、例えばこれらの図のグラフ(16)の3つめの極大はグラフ(12)の極大の時間にほぼ等しく、このことは、この細胞が長軸の端と接する隣の細胞からの潜熱の影響を受けていることを示す。
図34および図35は、この細胞と接点を持つ周囲7つの細胞を、ほぼ中心位置の温度プロファイルとの比較として示している。各細胞中心の温度はそれぞれ複数の極大を持つが、もっとも大きい極大を示す時間は細胞自信が凝固する時であり、細胞間で時間は一致していない。その他の極大は、周囲の細胞の潜熱の影響の結果である。長辺を接する2つずつの隣り合う細胞間の、もっとも大きい極大を与える時間の遅れ幅は、ほぼ一定で約20msであった。このように本法では、細胞内、細胞間の熱移動に関する情報が細胞単位で観測・解析することができる。
実施例3
(黒体を用いた温度校正法)
実験方法:1cm×1cmの大きさのテフロンシート(厚さ200μm)を測定用試料とした。その平板状試料(大きさ:1cm×1cm)の一部に、カーボンスプレー(放射率0.94;厚さ1μm)でコートし、擬似黒体とする。この擬似黒体面に、校正済の直径25μmのクロメル・アルメル熱電対(商品名:SPAL−001−50、SPCH−001−50、OMEGA ENGINEERING INC.社製)を取り付け、該熱電対から所定のインターフェイス(商品名:AT−GPIB、NATIONAL INSTRUMENTS社製)を介して、パーソナルコンピュータ(商品名:INSPIRON3000、DELL社製)に温度を取り込んだ。この際の温度データの取り込み条件は、以下の通りであった。
<温度データの取り込み条件>1000points/s
試料の底部(下側)には、1cm×1cmの大きさのセラミクスヒーター(商品名、坂口電熱社製)を銀ペーストを用いて密着させ、直流電源により5.9V、0.11Aの電流を加えて発熱させ、試料の温度を室温(約26℃)から、150℃付近までゆっくりと変化させた。
上記熱電対を含む、擬似黒体面とテフロン面の界面近傍を、実施例1で用いたものと同様の赤外線カメラで計測した。赤外線カメラのシャッタースピード0.5ms、1秒あたりのフレーム数120枚、画素数256×256とした。
結果:図36に測定面の画像の例を示す。図中、左半分が擬似黒体面、左下に熱電対、右半分がテフロン面である。本測定では、毎分1度程度で各部分の温度は一定とみなすことができる。図37は、擬似黒体面内の熱電対近傍位置(図中+2)と、テフロン面内の位置(+9)の放射率強度の時間変化を示す。放射率強度は、黒体面内において高い傾向を示す。図38には、黒体面内の放射率と熱電対による温度の時間変化を示す。両者の時間に対する変化率に時間的な遅れは観察されない。図39は、以上の結果から求めた擬似黒体面およびテフロン面の放射率強度と温度の関係のグラフである。このように赤外カメラ視野内に擬似黒体をおくことで、同時測定することで高速スキャンの場合でも温度を較正することができる。
実施例4
(植物内皮細胞の冷却過程解析−交流変調温度を与えながら冷却したときの細胞間、細胞内の凝固熱および熱拡散率同時観測法)
実験方法:氷水で片面を冷却したアルミ製のヒートシンク上にペルチエ素子(商品名:MO−40)を銀ペーストを用いて設置し、その上のパイレックスガラス上に金スパッタリングにより、平面電極(1mm×5mm、厚さ50nm、平面電極の抵抗 50オーム)を取り付けた。
このようにして形成した平面電極上に、下記のタマネギ内皮細胞を直接設置し、平面電極に対する0.5Hz(3Vp−p、平面電極の抵抗48オーム、波形サイン波)の周波数の交流通電により温度波を発生させた。このように温度波を発生させつつ、上記ペルチエ素子に通電することにより、試料系全体を室温から−30℃付近まで冷却速度約200℃/分で冷却し、細胞内の交流温度場での温度分布を実施例1で用いたものを同様の赤外線カメラで計測した。赤外線カメラのシャッタースピードは、2ms、フレーム数は400枚/秒、画素数は128×128とした。
試料:新鮮なタマネギの外側から、1層または2層目の芽および根の位置からほぼ中心の位置の外皮を採取し、スライドガラス上に展開したものを試料とした。厚さは約75μm、細胞1つの大きさは、約50μm×300μmであった。
結果:図40に、交流温度を与えながら冷却したタマネギのある瞬間における温度分布の例を示す。図中、温度の高い領域(左の緑色)の下面で、たまねぎと平面電極が接している。画像では、その境界付近の細胞が凝固する時を撮影した。図41は平面電極に接する細胞内の2点(+13と+14)と、その細胞に接しかつ平面電極に接しない細胞内の2点(+7と+6)の温度プロフィールを示す。ただし(+14)は平面電極に接していない。平面電極に接する位置から、距離が離れるにしたがい、位相に遅れが生じ、上述した式(数8)から計算した熱拡散率は、約0.15mm2 s−1であった。
図42および図43は交流通電下でのタマネギ細胞の潜熱による発熱の様子を示す。交流温度を加えても、細胞は冷却過程で細胞単位の潜熱発生を示し、またその発生過程は隣り合う細胞の順に凝固することはない。図44には、図42中に記した点の温度変化のプロフィールを示す。平面電極に接する場合も、接しない場合も潜熱発生の際に交流温度場に影響し、形が乱れることがわかる。図45には、細胞内長軸方向に異なる位置での交流温度変化を示す。同一細胞内であっても、潜熱の影響は位置により異なることがわかる。
実施例5
(超配向ポリエチレン−フィブリルのミクロ界面における温度拡散異方性の測定)
実験方法:下記により作成した超配向ポリエチレンフィルム上に、延伸方向、ならびにその垂直方向に金スパッタリングにより平面電極(1mm×5mm、厚さ50nm、平面電極の抵抗50オーム)および、リード部をとりつけ、さらにサファイアガラス上に、上記ポリエチレンフィルムを圧着固定した後、0.05Hzから300Hzの周波数の交流通電(交流電圧は3〜10Vp−p、波形はサイン波およびその合成波)により、温度波を発生させた。温度分布を測定する顕微赤外カメラ(商品名:Radiance HS、レイセオン社製)のシャッタースピードは、1ms、フレーム数は200枚/秒、画素数は128×128とした。
試料:ゲル延伸法により作成した超配向ポリエチレンフィルム(倍率50倍)。厚さは20μm、1cm×1cm角(このゲル延伸法により作成した超配向ポリエチレンフィルムの詳細については、文献J.Mater.Sci.、1980、15、505 を参照することができる)。
結果:図46は、室温で交流温度を与えながら、顕微赤外カメラで観察したポリエチレンフィブリルの温度分布を示す。図中、黒く見える部分がスパッタリング電極である。平板電極の長軸とフィブリルの配向方向は垂直となっている。温度はフィブリルの方向に伝播し、フィブリル間のミクロ界面では、温度が伝わっていない様子がわかる。平板電極からフィブリル方向に等しい距離にある3点(図46に示す+5、+9、+18)と電極上の1点(+20)の温度プロファイルを図47に示す。試料が均質の場合には、交流熱源から等しい距離においては、等しい位相遅れを示すはずであるが、図47では、電極上の波形を基準とすると、同じ距離であっても、位相遅れが異なり、熱拡散率に異方性があることを示す。図49では、さらに等距離の1点(+7)を加えて、発熱面から等距離における位相遅れ分布の拡大図を示したものである。図48は図46と同じ試料を同一条件で異なる瞬間に撮影したものである。フィブリル間の温度分布が明瞭に観察される。以上の結果は、顕微赤外カメラを用いた交流場の温度分布観察により、材料内の配向あるいはミクロ界面の熱伝達不均一などについて、定量的な観測が可能であることを示す。
一方、フィブリルの配向方向と平行電極の長軸方向が平行である場合の交流温度場でのフィブリルの温度分布の結果を図50に示す。交流温度場の進行波面は電極の長軸に平行であるが、その波面に平行なフィブリル1本の温度はほぼ均一である様子と、隣り合うフィブリル間のミクロ界面においては、温度場の不均一が生じている様子がわかる。図51に平行電極から等距離の位置、すなわち1本のフィブリル内の位置(+19、+22、+23)および電極上の1点(+28)の温度プロフィールを示す。この場合は、1本のフィブリル内では、等しい位相遅れを示す。図51の拡大図を図52に示す。フィブリル内での位相遅れの差は認められない。
図49および図52の結果から、フィブリル方向およびその垂直方向の熱拡散係数を求めるとフィブリル方向には3.4mm2 s−1、その垂直方向には0.67mm2 s−1となり、ミクロ界面での熱伝達の不均一性を評価できることがわかる。
実施例6
(フィルム平面方向の熱拡散率測定)
試料および実験方法:ガラス(商品名: パイレックス7740、コーニング社製)上に設置したポリイミド(厚さ3.7μm)表面に直接金スパッタリングにより平面電極(1mm×5mm、平面電極の抵抗50オーム)および、リード部をとりつけ、サファイアガラス(商品名:43629、エドモンド社製)上にアロンα201でフィルムを固定した後、0.1Hzから10Hzの周波数の交流通電(交流電圧は3〜5Vp−p、)により、温度波を発生させた。温度分布を測定すべき赤外線カメラ(商品名:RadianceHS、レイセオン社製)のシャッタースピードは、0.5ms、フレーム数は1500枚/秒、画素数は64×64とした。
結果:図53は平面電極およびフィルム面内の2次元温度分布を示す。図中、下の部分が平面電極による交流温度波の発生源である。温度波の進行方向に対する波面は平行電極の長軸方向に平行である様子が観察される。平行電極から距離の異なる位置(図53中、+1〜+6)において、交流温度の時間変化を計測した例を図54に示す。平行電極からの距離が離れるほど位相が遅れていく様子がわかる。位相遅れΔθを、電極位置からの距離dに対してプロットすると直線関係を示す例を図55に示す。このプロットの勾配は、熱拡散率と周波数の関数となるから、周波数が既知であれば熱拡散率を算出できる。図55の場合の熱拡散率は0.28mm2 s−1と計算された。
実施例7
(空気中の水滴の冷却、結晶化過程の潜熱の観測)
実験方法: ドライアイス上においた冷却板の上にペルチエ素子(商品名:MO−40)を銀ペーストを用いて設置し、室温から−30℃付近まで、冷却速度約200℃/分で冷却する過程で付着し、冷却結晶化する水滴の凝固潜熱を計測した。赤外線カメラ(商品名:RadianceHS、レイセオン社製)のシャッタースピードは、1ms、フレーム数は400枚/秒、画素数は128×128とした。
結果:図57に水滴の潜熱発生の瞬間をとらえた画像を、図57には、図56に示す位置で潜熱が発生した場合の温度変化のプロフィールを示す。
実施例8
(ミクロな定常熱流の観測と熱伝導率測定)
試料および実験方法:図58に示すように、試料sが標準試料r1、r2に挟み込まれ、一次元定常熱流を仮定できる場合(真空中、一定の断面積)、周辺への熱損失の影響が無いとすると、試料の熱伝導率λsは、標準試料内の温度勾配との比から、次式(12)によって求められる。
上記式中、λr1、λr2は、標準試料の熱伝導率である。
標準試料として厚さ0.6mmのセラミック板(商品名マコール・石原薬品(株)製、セラミックの種類:SiO2・Al2O3混合系)を選び、熱電材料ビスマス・テルル・セレン焼結体(厚さ0.7mm;ビスマス・テルル・セレンのモル比率=40:59.5:0.5)2個の間に、このセラミック板をサンドイッチ状に成形させた。
上記により得られたサンドイッチ状の成形体について、一方の側面(一方のビスマス・テルル・セレン焼結体の、セラミック板に接触しない側の面)にカーボン抵抗と、均熱化のための銅板を取り付けた。この際に用いたカーボン抵抗は、大きさ1.5×1.5mm、厚さ0.1mm、抵抗値100オームのものであった。また、銅板は、大きさ1×1mm、厚さ0.5mmのものであった。これらは、サンドイッチ状の成形体の上記側面に銅板を耐熱性シリコーン(サンハヤト社製)を用いて貼り付け、更に、該銅板の表面にカーボン抵抗を耐熱性シリコーンを用いて貼り付けた。
サンドイッチ状の成形体他方の面には、アルミニュームの放熱板(大きさ1×1mm、厚さ2mm)を、耐熱性シリコーン(サンハヤト社製)を用いて密着させた。
上記の系で、カーボン抵抗に通電(3ボルト、0.1アンペア)して、銅板の温度が10℃程度上昇して、且つ該温度が安定化するのを待った(通電開始から5分程度)。この際の温度は、該銅板に耐熱性シリコーン(サンハヤト社製)を用いて取り付けた温度センサー(サーモテック社製、商品名:クロメルアルメル熱電対)により測定した。
上記した系では、マコール、試料、マコールの断面積を一定(約0.7×0.7mm)とし、周囲への対流による熱損、また輻射による熱損を小さくすることで、単位面積あたりの熱流をまとめることができた。
上記測定において、定常状態で得られた赤外線温度観測結果を図59および図60に示す。図59および図60において、右側が発熱、左が低温のヒートシンクである。図中の横線は、温度勾配を観測した線である。図59の測定結果は、いくつかの解析結果から得られたものであり、図60の測定結果は、平均的な値を示す。図60の温度勾配から求めた熱伝導率は,1.25−1.88W/mKで従来の定常法で知られた値1.60とぼぼ一致していた。
加えて、図59および図60においては、ヒーターと試料の接触界面での温度低下が明瞭に観測された。この結果から、本発明の測定方法は、界面熱抵抗測定にも適していることが判明した。
実施例9
(三次元表示および微分画像)
試料および実験方法:実施例4に準じた。
結果:タマネギの冷却凝固過程の温度を面情報として高速撮影し、メモリーへ保存しておいた。いま凝固過程のある時刻の温度表示を、xy面でz軸に温度を取った3次元的に表示する(図61および図63)と同時に、1ないし数フレーム前の画像を差し引き、差分画像としてやはり3次元的に再プロットする(図62および図64)。ここでは撮影開始から125ミリ秒後(図61および図62)と、355ミリ秒後(図63および図64)の状態を示した。
温度(図61および図63)と微分温度(図62および図64)の両方の図をそれぞれの比較から明らかなように、微分画像はノイズが減少し、凝固による発熱が、より明確になることが判明した。更に、これらの各時間の画像を連続的に描画し、凝固過程を3次元動画として描くことも可能であった。
産業上の利用可能性
上述したように本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)微小部分を観察するため、迅速な温度変化の測定が容易である。
(2)微小部分を観察するため、迅速な赤外線(熱)分析が容易である。
(3)必要に応じて、二次元的(ないしは擬似三次元的)な赤外線(熱)分析が容易である。
(4)必要に応じて、交流熱源からの温度波拡散を観測することで熱拡散率が同時測定できる。
本発明の分析方法および分析装置は、赤外線センサーによる微小部分の熱的特性分析が有用な用途に、特に制限なく利用可能である。このような用途としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)生体物質等の凍結プロセス(従来はシミュレーションによった)等の詳細な実測に基づく解析;
(2)冷凍食品の凍結解凍プロセス等の詳細な実測に基づく解析;
(3)ペルチエ素子の通電による吸発熱をミクロンオーダーで観測することができる
(4)複合材や発泡材など複雑な系での伝熱、融解現象が解明できる
(5)ミクロな部分での化学反応に基づく温度変化の追尾
(6)化学反応、潜熱などでの発熱の周囲への拡散過程
(7)応力下での材料の変形または破壊に伴う吸発熱の観察
(8)物質表面からの水の蒸発過程の熱的な観察
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明における熱伝導率等の定義を説明するための、試料の模式斜視図である。
図2は、本発明における非定常の熱伝導を説明するための、試料の模式斜視図である。
図3は、交流状の温度変化を試料に与えた際の温度変化測定例を示す模式的なグラフ(a)および模式的な位相差グラフ(b)である。
図4は、「熱的に厚い」、および「熱的に薄い」の概念を説明するための模式断面図である。
図5は、薄膜温度センサーの回路図の例を示す図である。
図6は、本発明の方法に使用可能なシステムの例を示す模式図である。
図7は、交流電源電圧および測定シグナルの例を示す模式的グラフである。
図8は、位相遅れ(a)および振幅(b)の例を示す模式的グラフである。
図9は、本発明の方法に使用可能な顕微鏡等の配置例を示す模式斜視図である。
図10は、本発明の方法に使用可能な試料の測定領域(a)、および交流熱源の配置の例(b)を示す模式平面図である。
図11は、本発明の方法に使用可能な試料の微小部分の例を示す模式平面図である。
図12は、本発明の方法に使用可能な試料領域(a)と、拡大部分(b)との関係の例を示す模式平面図である。
図13は、温度分布および温度の時間変化を示す図である。
図14は、温度分布および温度の時間変化を示す図である。
図15は、温度分布および温度の時間変化を示すグラフである。
図16は、温度分布および温度の時間変化を示すグラフである。
図17は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図18は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図19は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図20は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図21は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図22は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図23は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図24は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図25は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図26は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図27は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図28は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図29は、細胞における温度分布を平面的に示す図である。
図30は、細胞内温度分布を、各軸方向の変化で示すグラフである。
図31は、細胞内温度分布を、各軸方向の変化で示すグラフである。
図32は、細胞内温度分布を、各軸方向の変化で示すグラフである。
図33は、細胞内温度分布を、各軸方向の変化で示すグラフである。
図34は、細胞間温度分布を示すグラフである。
図35は、細胞間温度分布を示すグラフである。
図36は、黒体面の温度分布および放射率強度の変化を示す図である。
図37は、黒体面の温度分布および放射率強度の変化を示す図である。
図38は、黒体面の温度分布および放射率強度の変化を示す図である。
図39は、黒体面の温度分布および放射率強度の変化を示す図である。
図40は、タマネギ細胞の温度分布を示す図である。
図41は、タマネギ細胞の温度分布を示す図である。
図42は、タマネギ細胞の温度分布を示す図である。
図43は、タマネギ細胞の温度分布を示す図である。
図44は、タマネギ細胞の温度分布を示す図である。
図45は、タマネギ細胞の温度分布を示す図である。
図46は、ポリエチレン・フィブリルの温度拡散異方性の測定例を示す図である。
図47は、ポリエチレン・フィブリルの温度拡散異方性の測定例を示す図である。
図48は、ポリエチレン・フィブリルの温度拡散異方性の測定例を示す図である。
図49は、ポリエチレン・フィブリルの温度拡散異方性の測定例を示す図である。
図50は、ポリエチレン・フィブリルの温度拡散異方性の測定例を示す図である。
図51は、ポリエチレン・フィブリルの温度拡散異方性の測定例を示す図である。
図52は、ポリエチレン・フィブリルの温度拡散異方性の測定例を示す図である。
図53は、フィルム平面方向の熱拡散の測定例を示す図である。
図54は、フィルム平面方向の熱拡散の測定例を示す図である。
図55は、フィルム平面方向の熱拡散の測定例を示す図である。
図56は、空気中の水滴の冷却・結晶化過程の測定例を示す図である。
図57は、空気中の水滴の冷却・結晶化過程の測定例を示す図である。
図58は、実施例で用いたサンドイッチ状サンプルの構成の模式断面図である。
図59は、サンドイッチ状サンプルの温度勾配観測結果を示すグラフである。
図60は、サンドイッチ状サンプルの温度勾配観測結果を示すグラフである。
図61は、サンプルの温度を三次元的に示すグラフである。
図62は、サンプルの温度を差分画像として三次元的に示すグラフである。
図63は、サンプルの温度を三次元的に示すグラフである。
図64は、サンプルの温度を差分画像として三次元的に示すグラフである。
本発明は、物質ないし材料を熱分析するための方法および装置に関し、特に、試料を微小部分に分割して熱分析するための方法および装置に関する。
背景技術
高分子、バイオマテリアル、半導体材料、セラミック材料、金属材料、更には近年のナノ・テクノロジーを始めとする複合物質ないし材料関連の幅広い技術分野において、微小領域で所望の物性を発現することが可能な材料を開発する要請が益々強まっている。このような材料の例としては、例えば、熱電素子、IC用絶縁塗膜、感熱記録紙、伝熱ペースト、薄膜断熱材、生体凍結保存液、炭素繊維強化複合材料等が挙げられる。上記した微小領域で所望の物性を発現する材料の開発には、当然ながら、微細な構造を精密に制御することが必要となる。更には、このような微細構造を有する材料の開発には、該材料の特性を精密に評価する分析技術が不可欠である。
材料の熱的挙動の分析に基づき、材料特性を評価する方法としては、従来より、DSC(示差走査熱量測定法)、DTA(示差熱分析法)等が広く用いられて来た。これらは、測定すべき試料における熱特性を鋭敏に検出することが可能という優れた特徴を有している。
しかしながら、DSCないしDTAによる分析データは、その性質上、DSCまたはDTA試料セルに収納された数ミリグラム程度の試料についての平均値として測定されるものとなる。したがって、これらの方法により、試料のサイズの点では1mmオーダー以下の微小部分の熱分析を行うことは困難であった。
赤外線放射温度計を利用して試料の熱物性を測定する方法として、特開平3−189547号公報がある。この方法においては、非接触で温度測定を行うことにより、膜厚が1μm以下のフィルムの熱拡散率を測定している。この方法によれば膜厚の薄いものの熱拡散率を測定できるが、測定部分の面積の平均値でしか物性を測定できないことでは、上記したDSCないしDTAと変わりはない。
上記したナノテクノロジー等における微細な構造制御が必要な材料の開発においては、試料のμmオーダー以下のレベルにおける熱的特性の分布が材料特性に大きく影響するが、従来においては、AFMを応用した熱分析法(熱伝導の分布を面内スキャンで求める方法)は存在する。しかし試料の微小部分の赤外線カメラを利用した二次元的熱分析を行う方法は存在しなかった。
発明の開示
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消し、試料の微小部分の熱分析を可能とする方法および装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、赤外線カメラを利用した試料の微小部分毎の熱分析と同時に交流的に与えた温度波の挙動を二次元的に解析し、熱伝導率・熱拡散率の情報を同時に得ることを可能とする方法および装置を提供することにある。
本発明者は鋭意研究の結果、従来の熱分析におけるように、測定すべき試料領域の熱的特性を「平均値」として測定するのではなく、該試料領域を構成する個々の1mm平方以下、更には0.1mm平方以下(特に10μm平方以下)である微小部分の熱的特性データ(ないしは熱的特性データの複数もしくは二次元的または擬似三次元的な集合)として測定することが、上記目的の達成のために極めて効果的なことを見出した。
本発明の熱分析方法は上記知見に基づくものであり、より詳しくは、測定すべき試料の少なくとも一部に温度変化を与えつつ、該温度変化に基づく加熱部を含む周辺にある試料の微小部分の熱的特性を赤外線センサーを利用して測定するものである。
本発明によれば、更に、測定すべき試料に温度変化を与えるための温度変化手段と、試料の微小部分を拡大するための赤外像拡大手段と、該微小部分の熱的特性を測定するための赤外線測定手段とを少なくとも含み;前記試料の少なくとも一部に温度変化を与えつつ、該温度変化に基づく試料の微小部分の熱的特性を赤外線を利用して測定する熱分析装置が提供される。
上記構成を有する本発明の熱分析方法においては、従来の熱分析におけるように、測定すべき試料領域の熱的特性を「平均値」ないし「バルク」として測定するのではなく、該試料領域を構成する個々の微小部分の熱的特性データ(ないしは熱的特性データないし「エレメント」の複数もしくは二次元的な集合)として測定している。これにより、熱的特性測定の迅速化が可能となり、しかも、試料の特定の領域内またはμmオーダーの微小部分における熱的特性データの微細なmsecオーダー程度以下の経時変化を追跡することも、極めて容易となる。
本発明における主な好ましい態様を例示すれば、以下の通りである。
(1)測定すべき試料を一定速度で昇温または降温させつつ、該試料の少なくとも一部を顕微システムにより拡大し、赤外線放射温度計により該拡大部分の温度分布を測定する。
(2)測定すべき試料および参照試料を一定速度で昇温または降温させつつ、該試料および参照試料の少なくとも一部を顕微鏡により拡大し、その際の温度変化を赤外線放射温度計により測定し、試料および温度と輻射料が較正された参照試料の温度変化の差を比較することにより、試料のDTA分析を行う。
(3)測定すべき試料を一定速度で昇温または降温させつつ、該試料の少なくとも一部を光照射またはジュール発熱で変調温度波を与え、その際の温度変化を赤外線放射温度計により測定し、直流部分の変化から試料の微小部分の潜熱を観測することにより、該微小部分の融解または固化の状態の分析を行い、また交流分の解析から熱拡散率を同時に計測する。
(4)試料の一部に交流熱源を設けて交流状の温度変化を発生させつつ、該試料を一定速度で昇温または隆温させつつ、試料の微小部分を顕微鏡で拡大し、そのときの温度変化を赤外線温度計で測定しつつ、別途設置した温度センサーでの試料の微小部分の交流状の温度変化の位相遅れを求めることにより試料の微小部分の熱拡散率を求める。
発明を実施するための最良の形態
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
(試料)
その熱的特性の測定が有用な試料である限り、特に制限されない。このような試料の例として、例えば、有機化合物、高分子化合物、有機色素、鉱石、ガラス、セラミックス、金属、水および水溶液、植物細胞、動物細胞等を挙げることができる。
本発明において好適な被測定試料としては、赤外カメラのみを用いた場合は特に制限はない。接触型温度センサーを併用した場合、フィルム、シートまたは板状の難導電性の物質あるいは液体状または液体状となしうる難導電性の物質が望ましい。また導電性物質の場合でも測定の厚さに対して無視しうる程の薄さの絶縁薄膜を電極にコーティングするか、あるいは塗膜分を補正する方法により測定可能である。測定対象となる物質の例としては、以下のものを例示することができる。
(1)フェノール、ユリア、メラミン、ポリエステル、エポキシ、ポリウレタン、セルロース、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニルデン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネイト、ポリサルホン、ABS、ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、アクリル、アクリルニトリル、ポリアクリルニトリル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリオレフィン等の高分子化合物。
(2)シアニン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ニッケル錯体、スピロ化合物、フェロセン、フルギド、イミダゾール等の有機色素、ノルマル・アルカン類、エタノール、メタノール、グリセリン等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、安息香酸等の環状類、などの有機化合物
(3)血管内皮細胞、植物表皮細胞、藻類、血液、臓器組織、木材などの生体関連物質
(4)金属類
(5)チーズ、食用油、豆腐、ゼリー、肉類などの食品
(6)食塩水など各種水溶液、グリース、潤滑油などの液体物質
(7)珪石、ダイアモンド、コランダム、ルビー、サファイア、めのう、雲母、岩塩、カオリン、大理石、石英、カンラン石、石膏、硫黄、重晶石、みょうばん石、蛍石、長石、滑石、石綿、石灰石、ドロマイト、方解石、水晶、こはく、スピネル、エメラルド、トパーズ、猫目石、ひすい、オパール等の鉱石。石英ガラス、フッ化物ガラス、ソーダガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、等のファインセラミックス等。
(8)炭素繊維強化プラスチック、タルク混入プラスチックなどの複合材料。(少なくとも一部)
その熱的特性の測定が有用な領域である限り、(例えば赤外線センサーに入力されるべき赤外線像の拡大倍率を調整する等の手段により)その領域のサイズは特に制限されない。使用する観察装置ないし測定装置のサイズ等にも依存するが、測定すべき領域のサイズは、通常、1000μm×1000μm程度、更には10μm×10μm程度であることが好ましい。可能な場合には、測定すべき試料の細分化された部分すべてであってもよい。
本発明においては、必要に応じて、測定すべき領域(A)を複数の微小領域(B)に分けて測定を行ってもよい。このように測定すべき領域を複数の微小領域に分ける場合、一つの測定すべき領域(A)中の微小領域(B)の数は、4以上であることが好ましく、更には1000以上(特に10000以上)であることが好ましい。熱的特性の測定が可能である限り、一つの測定すべき領域(A)中の微小領域(B)の数は特に制限されないが、通常は64×64以上であることが好ましく、更には128×128以上(特に256×256以上)であることが好ましい。
本発明においては、必要に応じて、測定すべき領域の経時的変化を追跡してもよい。このように経時的変化を追跡する場合、一回の測定に対応する時間は、0.5秒以下が好ましく、更には0.05秒以下、特に1ミリ秒以下であることが好ましい。
発明においては、必要に応じて、測定された熱的特性の複数の微小部分間における、または1または複数の微小部分での熱的特性の経時的変化における差または比を求めてもよい。微小部分の熱的性質は、代表的には、温度の経時変化を、直前のデータとの差として連続的に表現することもでき、および/又は、必要に応じて、変化部分のみを強調して描画し高感度化を図ることもできる。これらの手法とは独立に、または組み合わせて、「微分画像」の手法を用いてもよい。
(温度変化)
発明において、測定すべき試料の少なくとも一部に与えるべき温度変化は、特に制限されない。すなわち、該試料の少なくとも一部に均一または経時的変化として与えることができる。また必要に応じて、該試料を構成する微小部分の1つ以上に均一にまたは微小部分ごとに、および/又は経時的変化として与えてもよい。例えば、微小部分の温度変化は一定速度で昇温・降温または等温とすることが好ましい(図1)。必要に応じて、一定速度の昇温・降温の他に、交流的変化も同時に与えてもよい。また、交流的変化を単独で与えてよい。交流は一般に正弦波であることが好ましいが、三角波・矩形波など、任意波形を与えてフーリエ変換で解析することもできる。
このような温度変化としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
(1)試料台を一定速度で昇温または降温して、試料も同一速度で変化させる。
(2)(1)とは独立して試料の一部にレーザー光線または集光した光照射で点熱源とする。
(3)(2)の点熱源をチョッパーで断続光として交流点熱源とする。
(4)試料表面の一部に金属ワイヤー、リボン、ガラス板上に書いた金属薄膜などを接触設置し、交流を通電して正弦波状または階段状の温度波を発生させる。
更には、例えば試料を冷却しつつ、通電することなど上記(1)〜(4)の2以上を適宜組み合わせて、該試料に複数の規則性をもった温度変化を与えることも可能である。
(熱的特性)
本発明において利用可能な熱的特性としては、例えば、温度、温度変化、温度分布、潜熱、融解または固化の状態、変化の位相遅れ、および熱拡散率・熱伝導率・体積比熱;並びにこれらの熱的特性の経時変化、交流温度波を用いる場合は周波数依存性または複数の微小部分間のこれらの熱的特性の差または比からなる群から選ばれる1以上の特性が挙げられる。必要に応じて、これらのうち2以上の特性を組み合わせて測定してもよい。
(赤外線を利用する測定)
本発明において好適に利用可能な赤外線は、特に制限がない。この赤外線は、通常、波長3〜5μm、更には0.9〜12μmの範囲の電磁波であることが好ましい。この赤外線は、必要に応じて、半導体デバイス等から放射されるレーザー光であってもよい。
(赤外線センサー)
本発明において利用可能な赤外線センサーないし赤外線測定手段は、特に制限されない。試料の微小部分における熱的特性の測定を出来る限り妨害しない点からは、非接触型の測定手段(例えば、赤外線放射温度計)を利用することが好ましい。
このような赤外線測定手段において使用すべき赤外線検出装置は、目的とする赤外線の検出が可能である限り特に制限されないが、CCD等のデバイスを有する装置が好ましい。このようなデバイスにおける画素数は、64×64以上、更には128×128以上(特に256×256以上)であることが好ましい。
(赤外像拡大手段)
本発明において、「赤外像拡大手段」ないし「顕微システム」とは、測定対象たる試料の微小部分の赤外線による微小部分の観察を可能とする(ないしは赤外線による拡大像を形成可能な)デバイスである限り、特に制限されない。この「赤外像拡大手段」は、必ずしも光学的要素としてのレンズないし鏡を有することを要しない。
顕微鏡による拡大倍率は、5倍以上であることが好ましく、更には10以上、特に40倍以上であることが好ましい。
(温度コントローラ・データ処理手段)
本発明において使用可能な温度コントローラおよび/又はデータ処理手段は、特に制限されない。これらは、必要に応じて、パーソナル・コンピュータ等のコンピュータにより制御し、および/又は得られたデータを処理することが好ましい。
本発明において利用可能なデータ処理方法は、特に制限されない。測定データは、通常のアナログ量、デジタル量として処理する以外に、ベクトル量等としての処理も可能である。更に、赤外線測定データを、他の任意のデータと組み合わせてもよい。これらのデータは、二次元的データを与えるように処理してもよく、または該二次元的データをNMR(ないしMRI)やX線CT等のように「輪切り」状に積算することにより擬似三次元的データを与えるように処理してもよい。
(測定原理・測定装置)
以下、本発明において好適に利用可能な測定原理および測定のための装置について詳細に説明する。
(熱伝導率・熱拡散率の定義)
図1に示すような面積A、板厚dの板状の試料において、試料の片面が温度T1、反対面が温度T2(T1>T2)の定常状態にあるとき、板厚方向の試料内部で一次元の熱伝導によってのみ熱量Qが流れる場合、この熱量Qは次式により表される。
このときの比例定数λが熱伝導率と定義される。
試料内の濃度が非定常のときを考えた場合、試料内の温度分布と温度の時間的変化の間は、試料の密度をp、定圧比熱をCpとすると、以下の熱拡散方程式で表される。
このときの比例定数αが熱拡散率として定義される。
熱拡散率αと熱伝導率λとは、次式に示す関係を有する。
(交流状熱的変化の際の測定理論)
本発明において、交流状熱的変化を試料に与える際の測定理論について説明する。
すなわち、試料の非定常熱伝導について、厚み方向(x軸方向)のみの一次元で考えると、前述の熱拡散方程式(2)は次式のようになる。
上記の(4)式を、図2に示すように以下の条件で解く。
(i)測定すべき試料片方の面で試料温度が交流状に変化する。
X=0、T=T0・cos(ωt)
(ii)温度波は無限に拡散する。
(iii)測定すべき試料が、下記式に示すように、熱的に厚い。
このとき、その解は次式により表される。
ここでωは変調周波数の角速度であり、変調周波数をfとすると、ω=2・π・fで表される。(5)式において、expの項が距離xにおける温度増幅で、cosの項がxにおける位相になる。したがって、試料の厚みdにおける温度の時間による変化は、次式により表される。
ここで温度の位相差にのみ着目すると、位相差Δθはx=0の面とx=dの面での位相の差分なので、
となり、ω=2・πfから、
と表される。図3(a)および(b)に、データの模式図を示す。
上記(8)式より、厚みdが既知の試料について、一方の面を変調周波数fを変化させて交流状に加熱し、そのときの裏面における温度変化の位相遅れΔθを測定することによって、熱拡散率αを求めることができる。このように、交流状の温度変化を試料に与える測定においては、試料の加熱面と裏面における温度変化の位相差により熱拡散率を求めるため、温度の絶対値による誤差がほとんど問題とならず、高精度な測定が可能である。
(熱拡散長)
前述した「熱的に厚い」という条件における
は長さの次元をもつことより、熱拡散長とよばれ、本測定法において重要なパラメーターの一つである。試料の厚みdと熱拡散長μの関係は、図4(a)および(b)に示すように、
d>μ: 熱的に厚い
d<μ: 熱的に薄い
と定義される。熱拡散長は温度変化の波長であるため、それが試料の厚みより大きい、すなわち熱的に薄い場合、試料全体が同じ周期で温度変動を起こしてしまう。この場合、試料表面と裏面における温度変動の位相差は0に近づき、熱拡散率は(8)式からは求められなくなる。したがって、(8)式が成立するために必要な「熱的に厚い」という条件は、最低1波長分以上の温度波が、試料内に存在する必要があるということを意味する。
(試料表面の加熱方法)
本発明において、試料表面に熱源を設ける好ましい一態様について、説明する。
このような態様においては、試料に金(Au)等の金属をスパッタリングして金属薄膜を作成し、それを交流ヒーターとして利用することが好ましい。このような交流ヒーターには、例えば、ファンクション・シンセサイザーにより変調した交流電流が通電され、そのときのジュール熱によって試料に交流状の温度波を発生させる。ジュール熱は電流の正負を問わず、そのピーク値において最大となるため、このときの温度変化の周期は、(10)式に示すように交流電流の2倍となる。
ここで、Vは電圧、Iは電流、Pは発熱量である。したがって、実際に加熱する周波数は、通電する変調周波数の2倍となる。この方法によると、交流ヒーターの熱容量が試料に比べて無視できるほど小さく、且つ試料に直接スパッタリングすることにより交流ヒーターを形成しているため、ヒーターと試料の間の熱損失を実質的に無視することができる。
(試料の裏面における温度変化の測定方法)
本発明の好ましい一態様においては、試料の裏面(交流ヒーター側と反対の面)に、ヒーターと同様に金(Au)等の金属をスパッタリングして金属薄膜を形成し、それを薄膜温度センサーとして利用することが好ましい。図5に、薄膜センサーの回路図の模式図を示す。試料の温度センサー側で温度が変化すると、金属薄膜の抵抗値もその温度依存性により温度に比例して変化する。薄膜温度センサーの回路には、直流電源とダミー抵抗が組み込んであり、金属薄膜の抵抗変化の交流成分を電圧の変化として、温度センサーと並列に組み込んだロックイン・アンプにより測定する。スパッタリングの条件等により、温度センサーの抵抗値の温度依存性も変化するが、温度の絶対値ではなく位相差により熱拡散率を求めるため、実質的に問題にならない。この方法によると、温度センサーの熱容量が試料に比べて無視できるほど小さく、試料に直接スパッタリングしているため、センサーと試料の間の熱損失を無視することができる。
(基本システム構成)
本発明の測定方法に好適に使用可能な基本的なシステム構成(本発明の測定装置)の一例を図6の模式図に示す。
このシステムは、試料を交流で加熱するためのファンクション・シンセサイザー、試料の裏面の温度変化を電流に変換するためのDCソース、試料裏面における温度変化の特定の周波数のみを測定するためのロックイン・アンプ、試料を加熱/冷却するためのホット・ステージ、および温度コントローラー、試料をホット・ステージに収納するためのサンプル・セル、薄膜温度センサーに流れるDCソース等をチェックするためのデジタル・マルチメーター、各装置の制御およびデータ処理を行うためのパーソナル・コンピューターにより構成される。
この図6のシステム構成による測定例を、図7および図8のグラフに模式的に示す。
(試料配置等の態様)
本発明において好適に使用可能な、試料、赤外像拡大手段(顕微鏡等)の配置の一例を、図9の模式斜視図に示す。この図9の例においては、例えば、図10(a)に模式的に示すような試料を、図11に模式的に示すような測定領域で測定することができる(図10(b)には、このような試料に上記した交流熱源を設ける例を模式的に示す)。また、図12(a)および(b)には、試料の拡大の態様の一例を示す。
図12(a)および(b)に、試料の領域と、拡大部分との関係の一例を示す。図12(b)に示した拡大部分を2500画素で測定する場合には、1点の測定サイズは、7.5μm×7.5μmとなる。
(測定条件の例)
図6のシステム構成において、好適に使用可能な条件の例は、以下の通りである。
(i)試料サイズ:□7.5μm〜20mm
(ii)試料厚み:0.1μm〜3mm
(iii)測定温度範囲:20℃〜350℃
(特別な仕様によれば、−269℃〜600℃)
(iv)昇温/降温速度 =0.1℃/分〜20℃/分(0.01℃/分〜2000℃/分)
(v)測定周波数範囲:0.01Hz〜10MH
(vi)交流加熱による試料の温度変化:0.1℃〜10℃
(他の測定条件)
(1)測定すべき試料を一定速度で昇温または降温させつつ、該試料の少なくとも一部を顕微鏡により拡大し、赤外線放射温度計により該拡大部分の温度分布を測定する態様において好適に使用可能な条件の例は、以下の通りである。
(i)試料サイズ:□7.5μm〜20mm
(ii)試料厚み:1μm〜3mm
(iii)拡大倍率:1倍〜100倍
(iv)測定範囲:□7.5μm〜□1mm
(v)赤外線放射温度計サンプリング間隔:1フレーム/秒〜5500フレーム/秒 特に遅い方は制限がない
(vi)赤外線放射温度計分解能:100画素〜50000画素/一平方ミリ当たり
(vii)昇温/降温速度 =0.05℃/分〜2000℃/分
(2)測定すべき試料および参照試料を一定速度で昇温または降温させつつ、該試料および参照試料の少なくとも一部を顕微鏡により拡大し、その際の温度変化を赤外線放射温度計により測定し、測定試料および参照試料の温度変化の差を比較することにより、試料のDTA分析を行う態様において好適に使用可能な条件の例は、以下の通りである。
(i)較正試料:サファイア、窒化ボロン、ガラス状炭素
(3)(2)の熱分析を行いながら、測定すべき試料の一部を交流状に加熱して、距離d離れた位置に到達した温度波の位相差の遅れから熱拡散率を測定する態様。
(i)接触型交流熱源の形成方法:スパッタリング、蒸着、接着等で金属抵抗または熱電対、サーミスタを取り付ける。
(ii)接触型交流熱源の種類:金、白金、銀、Ni、Al、Cr、Ni、C、Ti等
(導電性物質)
交流熱源に好適に使用可能な導電性物質は、電流を流すことでジュール熱により発熱するものである限り、特に制限されない。このような導電性物質の例としては、例えば、金、銀、白金、銅、鉄、亜鉛、アンチモン、イリジウム、クロメル、コンスタンタン、ニクロム、アルミニウム、クローム、ニッケル、カーボン等が挙げられる。
また、それらの交流熱源および抵抗式温度計に用いる導電性薄膜は、被測定試料との界面が無視できる程度に、その厚みは被測定試料に比べて充分薄く、その熱容量は被測定試料に比べて充分小さく、被測定試料に完全に密着していることが好ましい。このような場合、被測定試料の一方の面自体が交流熱源の変調周波数で交流発熱していると推定される(このような交流熱源の配置・利用の詳細に関しては、例えば特許第2591570号を参照することができる)。
(非接触型交流加熱)
本発明においては、試料の一部に交流温度波を与える方法として、光照射−吸収による方法も使用可能である。この場合、例えば、レーザー照射、集光した可視または赤外光をそのままあるいは光チョッパーで変調して当てる方法が使用可能である。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
実施例
実施例1
(温度波がフィルムの厚さ方向へ拡散するとき、その位相遅れの計測から、フィルムの厚さ方向の熱拡散率を求める例)
実験方法:2cm×3cm程度のパイレックスガラス(厚さ 0.5mm、
コーニング 社製、商品名パイレックス7740)上に、金スパッタリングにより、リボン形状の平面ヒーター電極(1mm×5mm、厚さ50nm、平面電極の抵抗50オーム)を形成した。この際に用いた金スパッタリング条件は、以下の通りである。
<金スパッタリング条件>
サンユウ電子 5mA、2kV、5分
上記により得た平面ヒーター電極に、周波数0.5Hzの交流を通電することにより、温度波を発生させた。この際に入力した交流電圧は、3Vp−p、平面電極の抵抗48オーム、波形サイン波であった。
試料:市販の食品用ラップフィルム(ポリ塩化ビニリデン、厚さ8μm、クレハ化学社製、商品名クレラップ)および市販の熱転写用インクリボン(フィルム厚さ6μm、インク層厚さ約0.5μm、商品名ALPS MDインクリボン)を上記の電極の上に、食品用ラップフィルムとインクリボンとが互いに重ならないように配置した。このように配置した二つの試料を同時に赤外線カメラ(レイセオン社製、商品名Radiance)で計測した。
赤外線カメラのシャッタースピードを1ms、1秒あたりのフレーム数を200枚、画素数を128×128とした。
結果:図13および図14に、ラップおよびインクリボンの温度分布(図中、右の部分が電極の金、左上部がラップ、左下がインクリボン)を示す。
図15および図16には写真中の各ポイントにおける温度の時間変化を示す。試料上で電極の側と少し離れた点(100μm)では、位相遅れが遅れており、熱拡散方程式から求めた位相と熱拡散率の関係から、計算されたインクリボンの熱拡散率は、0.11mm2 s−1であった。ラップの熱拡散率は、0.09mm2 s−1であった。この二枚の熱拡散率の差は、面情報としても確認できる。また、図13および図14の差は、観測時間が異なるが、計算された熱拡散率は上記の値と同じであった。
実施例2
(植物内皮細胞の冷却過程の解析−細胞間、細胞内の結晶化速度解析および温度伝播の解析)
実験方法:氷水上においた冷却板の上にペルチエ素子を設置した試料台に、スライドガラスに密着させたタマネギ内皮細胞の冷却過程を、実施例1で用いたものと同様の赤外線カメラで計測した。冷却過程においては、室温から−30℃付近まで、冷却速度約200℃/分で冷却した。赤外線カメラのシャッタースピードは、2ms、フレーム数は200枚/秒、画素数は128×128とした。
試料:新鮮なタマネギの外側から、1層または2層目の芽および根の位置からほぼ中心の位置の外皮を採取し、スライドガラス上に密着させたものを試料とした。外皮の厚さは約75μm、細胞1つの大きさは、約100μm×300μmの楕円形であった。
結果:図17〜図28にタマネギ細胞を冷却する過程を時系列で示した。タマネギに限らず、水溶液が凝固する時は、一般に過冷却を起こし、結晶化が始まると潜熱によっていったん昇温する。これらの図においては、明るい個所が凝固をしている部分であり、温度が周囲よりも高い。凝固が完了すると、周囲の温度と同じになり、図では暗くなる。細胞内、および隣り合う細胞間の指定した場所での温度変化を測定した。図29は、図20の拡大図である。
図15中の+印の各位置について、細胞内(短軸、長軸方向)および細胞間の温度プロフィールを図30〜図33に示した。
図30および図31は、細胞内短軸方向に選定した点について、温度変化を比較したものである(図30は細胞内の凝固発熱現象を捉えた例であり、図31は その立ち上がり部分の拡大図である)。潜熱の発生開始点(1)から距離が離れるほど、潜熱発生の立ち上がり時間ならびに最初の極大をとる時間に数十ミリ秒の遅れが生じていることがわかる。これから細胞内短軸方向の温度伝播速度を見積もると、およそ5μm/msとなる。これは氷の成長速度である。また、潜熱のプロフィールは、主ピークとは別の極大をもち、この極大においても、主ピークとほぼ同様の時間遅れを示す。
図34および図35の結果と照らし合わせると、図29中の(10)および(11)の点の極大の時間にほぼ一致し、このことは、この細胞が長軸を接する両隣の細胞の潜熱の影響(これらの熱伝導による温度上昇)であることを観測している。
図32および33は、細胞内長軸方向に温度変化を比較したものであるが、潜熱の発生開始点(1)から両端方向へ距離が離れるほど、潜熱の立ち上がり時間に遅れが生じることが観察される。これから細胞内長軸方向の温度伝播速度を見積もると、およそ10μm/msとなる。潜熱は、2つまたは3つの極大をもち、長軸方向の端に近い位置では、3つの極大を有する。図34および図35の結果と照らし合わせると、例えばこれらの図のグラフ(16)の3つめの極大はグラフ(12)の極大の時間にほぼ等しく、このことは、この細胞が長軸の端と接する隣の細胞からの潜熱の影響を受けていることを示す。
図34および図35は、この細胞と接点を持つ周囲7つの細胞を、ほぼ中心位置の温度プロファイルとの比較として示している。各細胞中心の温度はそれぞれ複数の極大を持つが、もっとも大きい極大を示す時間は細胞自信が凝固する時であり、細胞間で時間は一致していない。その他の極大は、周囲の細胞の潜熱の影響の結果である。長辺を接する2つずつの隣り合う細胞間の、もっとも大きい極大を与える時間の遅れ幅は、ほぼ一定で約20msであった。このように本法では、細胞内、細胞間の熱移動に関する情報が細胞単位で観測・解析することができる。
実施例3
(黒体を用いた温度校正法)
実験方法:1cm×1cmの大きさのテフロンシート(厚さ200μm)を測定用試料とした。その平板状試料(大きさ:1cm×1cm)の一部に、カーボンスプレー(放射率0.94;厚さ1μm)でコートし、擬似黒体とする。この擬似黒体面に、校正済の直径25μmのクロメル・アルメル熱電対(商品名:SPAL−001−50、SPCH−001−50、OMEGA ENGINEERING INC.社製)を取り付け、該熱電対から所定のインターフェイス(商品名:AT−GPIB、NATIONAL INSTRUMENTS社製)を介して、パーソナルコンピュータ(商品名:INSPIRON3000、DELL社製)に温度を取り込んだ。この際の温度データの取り込み条件は、以下の通りであった。
<温度データの取り込み条件>1000points/s
試料の底部(下側)には、1cm×1cmの大きさのセラミクスヒーター(商品名、坂口電熱社製)を銀ペーストを用いて密着させ、直流電源により5.9V、0.11Aの電流を加えて発熱させ、試料の温度を室温(約26℃)から、150℃付近までゆっくりと変化させた。
上記熱電対を含む、擬似黒体面とテフロン面の界面近傍を、実施例1で用いたものと同様の赤外線カメラで計測した。赤外線カメラのシャッタースピード0.5ms、1秒あたりのフレーム数120枚、画素数256×256とした。
結果:図36に測定面の画像の例を示す。図中、左半分が擬似黒体面、左下に熱電対、右半分がテフロン面である。本測定では、毎分1度程度で各部分の温度は一定とみなすことができる。図37は、擬似黒体面内の熱電対近傍位置(図中+2)と、テフロン面内の位置(+9)の放射率強度の時間変化を示す。放射率強度は、黒体面内において高い傾向を示す。図38には、黒体面内の放射率と熱電対による温度の時間変化を示す。両者の時間に対する変化率に時間的な遅れは観察されない。図39は、以上の結果から求めた擬似黒体面およびテフロン面の放射率強度と温度の関係のグラフである。このように赤外カメラ視野内に擬似黒体をおくことで、同時測定することで高速スキャンの場合でも温度を較正することができる。
実施例4
(植物内皮細胞の冷却過程解析−交流変調温度を与えながら冷却したときの細胞間、細胞内の凝固熱および熱拡散率同時観測法)
実験方法:氷水で片面を冷却したアルミ製のヒートシンク上にペルチエ素子(商品名:MO−40)を銀ペーストを用いて設置し、その上のパイレックスガラス上に金スパッタリングにより、平面電極(1mm×5mm、厚さ50nm、平面電極の抵抗 50オーム)を取り付けた。
このようにして形成した平面電極上に、下記のタマネギ内皮細胞を直接設置し、平面電極に対する0.5Hz(3Vp−p、平面電極の抵抗48オーム、波形サイン波)の周波数の交流通電により温度波を発生させた。このように温度波を発生させつつ、上記ペルチエ素子に通電することにより、試料系全体を室温から−30℃付近まで冷却速度約200℃/分で冷却し、細胞内の交流温度場での温度分布を実施例1で用いたものを同様の赤外線カメラで計測した。赤外線カメラのシャッタースピードは、2ms、フレーム数は400枚/秒、画素数は128×128とした。
試料:新鮮なタマネギの外側から、1層または2層目の芽および根の位置からほぼ中心の位置の外皮を採取し、スライドガラス上に展開したものを試料とした。厚さは約75μm、細胞1つの大きさは、約50μm×300μmであった。
結果:図40に、交流温度を与えながら冷却したタマネギのある瞬間における温度分布の例を示す。図中、温度の高い領域(左の緑色)の下面で、たまねぎと平面電極が接している。画像では、その境界付近の細胞が凝固する時を撮影した。図41は平面電極に接する細胞内の2点(+13と+14)と、その細胞に接しかつ平面電極に接しない細胞内の2点(+7と+6)の温度プロフィールを示す。ただし(+14)は平面電極に接していない。平面電極に接する位置から、距離が離れるにしたがい、位相に遅れが生じ、上述した式(数8)から計算した熱拡散率は、約0.15mm2 s−1であった。
図42および図43は交流通電下でのタマネギ細胞の潜熱による発熱の様子を示す。交流温度を加えても、細胞は冷却過程で細胞単位の潜熱発生を示し、またその発生過程は隣り合う細胞の順に凝固することはない。図44には、図42中に記した点の温度変化のプロフィールを示す。平面電極に接する場合も、接しない場合も潜熱発生の際に交流温度場に影響し、形が乱れることがわかる。図45には、細胞内長軸方向に異なる位置での交流温度変化を示す。同一細胞内であっても、潜熱の影響は位置により異なることがわかる。
実施例5
(超配向ポリエチレン−フィブリルのミクロ界面における温度拡散異方性の測定)
実験方法:下記により作成した超配向ポリエチレンフィルム上に、延伸方向、ならびにその垂直方向に金スパッタリングにより平面電極(1mm×5mm、厚さ50nm、平面電極の抵抗50オーム)および、リード部をとりつけ、さらにサファイアガラス上に、上記ポリエチレンフィルムを圧着固定した後、0.05Hzから300Hzの周波数の交流通電(交流電圧は3〜10Vp−p、波形はサイン波およびその合成波)により、温度波を発生させた。温度分布を測定する顕微赤外カメラ(商品名:Radiance HS、レイセオン社製)のシャッタースピードは、1ms、フレーム数は200枚/秒、画素数は128×128とした。
試料:ゲル延伸法により作成した超配向ポリエチレンフィルム(倍率50倍)。厚さは20μm、1cm×1cm角(このゲル延伸法により作成した超配向ポリエチレンフィルムの詳細については、文献J.Mater.Sci.、1980、15、505 を参照することができる)。
結果:図46は、室温で交流温度を与えながら、顕微赤外カメラで観察したポリエチレンフィブリルの温度分布を示す。図中、黒く見える部分がスパッタリング電極である。平板電極の長軸とフィブリルの配向方向は垂直となっている。温度はフィブリルの方向に伝播し、フィブリル間のミクロ界面では、温度が伝わっていない様子がわかる。平板電極からフィブリル方向に等しい距離にある3点(図46に示す+5、+9、+18)と電極上の1点(+20)の温度プロファイルを図47に示す。試料が均質の場合には、交流熱源から等しい距離においては、等しい位相遅れを示すはずであるが、図47では、電極上の波形を基準とすると、同じ距離であっても、位相遅れが異なり、熱拡散率に異方性があることを示す。図49では、さらに等距離の1点(+7)を加えて、発熱面から等距離における位相遅れ分布の拡大図を示したものである。図48は図46と同じ試料を同一条件で異なる瞬間に撮影したものである。フィブリル間の温度分布が明瞭に観察される。以上の結果は、顕微赤外カメラを用いた交流場の温度分布観察により、材料内の配向あるいはミクロ界面の熱伝達不均一などについて、定量的な観測が可能であることを示す。
一方、フィブリルの配向方向と平行電極の長軸方向が平行である場合の交流温度場でのフィブリルの温度分布の結果を図50に示す。交流温度場の進行波面は電極の長軸に平行であるが、その波面に平行なフィブリル1本の温度はほぼ均一である様子と、隣り合うフィブリル間のミクロ界面においては、温度場の不均一が生じている様子がわかる。図51に平行電極から等距離の位置、すなわち1本のフィブリル内の位置(+19、+22、+23)および電極上の1点(+28)の温度プロフィールを示す。この場合は、1本のフィブリル内では、等しい位相遅れを示す。図51の拡大図を図52に示す。フィブリル内での位相遅れの差は認められない。
図49および図52の結果から、フィブリル方向およびその垂直方向の熱拡散係数を求めるとフィブリル方向には3.4mm2 s−1、その垂直方向には0.67mm2 s−1となり、ミクロ界面での熱伝達の不均一性を評価できることがわかる。
実施例6
(フィルム平面方向の熱拡散率測定)
試料および実験方法:ガラス(商品名: パイレックス7740、コーニング社製)上に設置したポリイミド(厚さ3.7μm)表面に直接金スパッタリングにより平面電極(1mm×5mm、平面電極の抵抗50オーム)および、リード部をとりつけ、サファイアガラス(商品名:43629、エドモンド社製)上にアロンα201でフィルムを固定した後、0.1Hzから10Hzの周波数の交流通電(交流電圧は3〜5Vp−p、)により、温度波を発生させた。温度分布を測定すべき赤外線カメラ(商品名:RadianceHS、レイセオン社製)のシャッタースピードは、0.5ms、フレーム数は1500枚/秒、画素数は64×64とした。
結果:図53は平面電極およびフィルム面内の2次元温度分布を示す。図中、下の部分が平面電極による交流温度波の発生源である。温度波の進行方向に対する波面は平行電極の長軸方向に平行である様子が観察される。平行電極から距離の異なる位置(図53中、+1〜+6)において、交流温度の時間変化を計測した例を図54に示す。平行電極からの距離が離れるほど位相が遅れていく様子がわかる。位相遅れΔθを、電極位置からの距離dに対してプロットすると直線関係を示す例を図55に示す。このプロットの勾配は、熱拡散率と周波数の関数となるから、周波数が既知であれば熱拡散率を算出できる。図55の場合の熱拡散率は0.28mm2 s−1と計算された。
実施例7
(空気中の水滴の冷却、結晶化過程の潜熱の観測)
実験方法: ドライアイス上においた冷却板の上にペルチエ素子(商品名:MO−40)を銀ペーストを用いて設置し、室温から−30℃付近まで、冷却速度約200℃/分で冷却する過程で付着し、冷却結晶化する水滴の凝固潜熱を計測した。赤外線カメラ(商品名:RadianceHS、レイセオン社製)のシャッタースピードは、1ms、フレーム数は400枚/秒、画素数は128×128とした。
結果:図57に水滴の潜熱発生の瞬間をとらえた画像を、図57には、図56に示す位置で潜熱が発生した場合の温度変化のプロフィールを示す。
実施例8
(ミクロな定常熱流の観測と熱伝導率測定)
試料および実験方法:図58に示すように、試料sが標準試料r1、r2に挟み込まれ、一次元定常熱流を仮定できる場合(真空中、一定の断面積)、周辺への熱損失の影響が無いとすると、試料の熱伝導率λsは、標準試料内の温度勾配との比から、次式(12)によって求められる。
上記式中、λr1、λr2は、標準試料の熱伝導率である。
標準試料として厚さ0.6mmのセラミック板(商品名マコール・石原薬品(株)製、セラミックの種類:SiO2・Al2O3混合系)を選び、熱電材料ビスマス・テルル・セレン焼結体(厚さ0.7mm;ビスマス・テルル・セレンのモル比率=40:59.5:0.5)2個の間に、このセラミック板をサンドイッチ状に成形させた。
上記により得られたサンドイッチ状の成形体について、一方の側面(一方のビスマス・テルル・セレン焼結体の、セラミック板に接触しない側の面)にカーボン抵抗と、均熱化のための銅板を取り付けた。この際に用いたカーボン抵抗は、大きさ1.5×1.5mm、厚さ0.1mm、抵抗値100オームのものであった。また、銅板は、大きさ1×1mm、厚さ0.5mmのものであった。これらは、サンドイッチ状の成形体の上記側面に銅板を耐熱性シリコーン(サンハヤト社製)を用いて貼り付け、更に、該銅板の表面にカーボン抵抗を耐熱性シリコーンを用いて貼り付けた。
サンドイッチ状の成形体他方の面には、アルミニュームの放熱板(大きさ1×1mm、厚さ2mm)を、耐熱性シリコーン(サンハヤト社製)を用いて密着させた。
上記の系で、カーボン抵抗に通電(3ボルト、0.1アンペア)して、銅板の温度が10℃程度上昇して、且つ該温度が安定化するのを待った(通電開始から5分程度)。この際の温度は、該銅板に耐熱性シリコーン(サンハヤト社製)を用いて取り付けた温度センサー(サーモテック社製、商品名:クロメルアルメル熱電対)により測定した。
上記した系では、マコール、試料、マコールの断面積を一定(約0.7×0.7mm)とし、周囲への対流による熱損、また輻射による熱損を小さくすることで、単位面積あたりの熱流をまとめることができた。
上記測定において、定常状態で得られた赤外線温度観測結果を図59および図60に示す。図59および図60において、右側が発熱、左が低温のヒートシンクである。図中の横線は、温度勾配を観測した線である。図59の測定結果は、いくつかの解析結果から得られたものであり、図60の測定結果は、平均的な値を示す。図60の温度勾配から求めた熱伝導率は,1.25−1.88W/mKで従来の定常法で知られた値1.60とぼぼ一致していた。
加えて、図59および図60においては、ヒーターと試料の接触界面での温度低下が明瞭に観測された。この結果から、本発明の測定方法は、界面熱抵抗測定にも適していることが判明した。
実施例9
(三次元表示および微分画像)
試料および実験方法:実施例4に準じた。
結果:タマネギの冷却凝固過程の温度を面情報として高速撮影し、メモリーへ保存しておいた。いま凝固過程のある時刻の温度表示を、xy面でz軸に温度を取った3次元的に表示する(図61および図63)と同時に、1ないし数フレーム前の画像を差し引き、差分画像としてやはり3次元的に再プロットする(図62および図64)。ここでは撮影開始から125ミリ秒後(図61および図62)と、355ミリ秒後(図63および図64)の状態を示した。
温度(図61および図63)と微分温度(図62および図64)の両方の図をそれぞれの比較から明らかなように、微分画像はノイズが減少し、凝固による発熱が、より明確になることが判明した。更に、これらの各時間の画像を連続的に描画し、凝固過程を3次元動画として描くことも可能であった。
産業上の利用可能性
上述したように本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)微小部分を観察するため、迅速な温度変化の測定が容易である。
(2)微小部分を観察するため、迅速な赤外線(熱)分析が容易である。
(3)必要に応じて、二次元的(ないしは擬似三次元的)な赤外線(熱)分析が容易である。
(4)必要に応じて、交流熱源からの温度波拡散を観測することで熱拡散率が同時測定できる。
本発明の分析方法および分析装置は、赤外線センサーによる微小部分の熱的特性分析が有用な用途に、特に制限なく利用可能である。このような用途としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)生体物質等の凍結プロセス(従来はシミュレーションによった)等の詳細な実測に基づく解析;
(2)冷凍食品の凍結解凍プロセス等の詳細な実測に基づく解析;
(3)ペルチエ素子の通電による吸発熱をミクロンオーダーで観測することができる
(4)複合材や発泡材など複雑な系での伝熱、融解現象が解明できる
(5)ミクロな部分での化学反応に基づく温度変化の追尾
(6)化学反応、潜熱などでの発熱の周囲への拡散過程
(7)応力下での材料の変形または破壊に伴う吸発熱の観察
(8)物質表面からの水の蒸発過程の熱的な観察
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明における熱伝導率等の定義を説明するための、試料の模式斜視図である。
図2は、本発明における非定常の熱伝導を説明するための、試料の模式斜視図である。
図3は、交流状の温度変化を試料に与えた際の温度変化測定例を示す模式的なグラフ(a)および模式的な位相差グラフ(b)である。
図4は、「熱的に厚い」、および「熱的に薄い」の概念を説明するための模式断面図である。
図5は、薄膜温度センサーの回路図の例を示す図である。
図6は、本発明の方法に使用可能なシステムの例を示す模式図である。
図7は、交流電源電圧および測定シグナルの例を示す模式的グラフである。
図8は、位相遅れ(a)および振幅(b)の例を示す模式的グラフである。
図9は、本発明の方法に使用可能な顕微鏡等の配置例を示す模式斜視図である。
図10は、本発明の方法に使用可能な試料の測定領域(a)、および交流熱源の配置の例(b)を示す模式平面図である。
図11は、本発明の方法に使用可能な試料の微小部分の例を示す模式平面図である。
図12は、本発明の方法に使用可能な試料領域(a)と、拡大部分(b)との関係の例を示す模式平面図である。
図13は、温度分布および温度の時間変化を示す図である。
図14は、温度分布および温度の時間変化を示す図である。
図15は、温度分布および温度の時間変化を示すグラフである。
図16は、温度分布および温度の時間変化を示すグラフである。
図17は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図18は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図19は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図20は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図21は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図22は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図23は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図24は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図25は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図26は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図27は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図28は、温度分布の経時的変化を示す図である。
図29は、細胞における温度分布を平面的に示す図である。
図30は、細胞内温度分布を、各軸方向の変化で示すグラフである。
図31は、細胞内温度分布を、各軸方向の変化で示すグラフである。
図32は、細胞内温度分布を、各軸方向の変化で示すグラフである。
図33は、細胞内温度分布を、各軸方向の変化で示すグラフである。
図34は、細胞間温度分布を示すグラフである。
図35は、細胞間温度分布を示すグラフである。
図36は、黒体面の温度分布および放射率強度の変化を示す図である。
図37は、黒体面の温度分布および放射率強度の変化を示す図である。
図38は、黒体面の温度分布および放射率強度の変化を示す図である。
図39は、黒体面の温度分布および放射率強度の変化を示す図である。
図40は、タマネギ細胞の温度分布を示す図である。
図41は、タマネギ細胞の温度分布を示す図である。
図42は、タマネギ細胞の温度分布を示す図である。
図43は、タマネギ細胞の温度分布を示す図である。
図44は、タマネギ細胞の温度分布を示す図である。
図45は、タマネギ細胞の温度分布を示す図である。
図46は、ポリエチレン・フィブリルの温度拡散異方性の測定例を示す図である。
図47は、ポリエチレン・フィブリルの温度拡散異方性の測定例を示す図である。
図48は、ポリエチレン・フィブリルの温度拡散異方性の測定例を示す図である。
図49は、ポリエチレン・フィブリルの温度拡散異方性の測定例を示す図である。
図50は、ポリエチレン・フィブリルの温度拡散異方性の測定例を示す図である。
図51は、ポリエチレン・フィブリルの温度拡散異方性の測定例を示す図である。
図52は、ポリエチレン・フィブリルの温度拡散異方性の測定例を示す図である。
図53は、フィルム平面方向の熱拡散の測定例を示す図である。
図54は、フィルム平面方向の熱拡散の測定例を示す図である。
図55は、フィルム平面方向の熱拡散の測定例を示す図である。
図56は、空気中の水滴の冷却・結晶化過程の測定例を示す図である。
図57は、空気中の水滴の冷却・結晶化過程の測定例を示す図である。
図58は、実施例で用いたサンドイッチ状サンプルの構成の模式断面図である。
図59は、サンドイッチ状サンプルの温度勾配観測結果を示すグラフである。
図60は、サンドイッチ状サンプルの温度勾配観測結果を示すグラフである。
図61は、サンプルの温度を三次元的に示すグラフである。
図62は、サンプルの温度を差分画像として三次元的に示すグラフである。
図63は、サンプルの温度を三次元的に示すグラフである。
図64は、サンプルの温度を差分画像として三次元的に示すグラフである。
Claims (19)
- 測定すべき試料の少なくとも一部に温度変化を与えつつ、該温度変化に基づく試料の微小部分の熱的特性を赤外線センサーを利用して測定する熱分析方法。
- 複数の微小部分ごとの熱的特性を同時測定する請求項1記載の熱分析方法。
- 赤外線放射温度計または赤外線CCDカメラにより前記測定を行う請求項1または2記載の熱分析方法。
- 前記温度変化が、試料の一定速度の昇温または降温である請求項1〜3のいずれかに記載の熱分析方法。
- 前記試料の微小部分を、赤外像拡大手段により拡大しつつ、該部分の測定を行う請求項1〜4のいずれかに記載の熱分析方法。
- 前記赤外像拡大手段が、顕微レンズまたは反射鏡である請求項5に記載の熱分析方法。
- 前記試料の微小部分と、同一の昇温または降温変化を与えられた準黒体と見なすことができる参照試料の微小部分との熱的特性を比較する請求項1〜7のいずれかに記載の熱分析方法。
- 前記試料の一部に、レーザー光線を含む光照射、または通電ジュール発熱による部分ヒーター(熱源)を配置する請求項1〜7のいずれかに記載の熱分析方法。
- 前記部分ヒーターが交流熱源であり、これにより交流状の温度変化を試料の少なくとも一部に与えて、その拡散を観測する請求項1〜8のいずれかに記載の熱分析方法。
- 前記熱的特性が、温度、温度変化、温度分布、潜熱、融解または固化の状態、温度波の位相遅れから求まる熱拡散率、温度波の減衰から求まる熱伝導率;並びにこれらの熱的特性の経時変化、または複数の微小部分間のこれらの熱的特性の差または比からなる群から選ばれる1以上の特性である請求項1〜9のいずれかに記載の熱分析方法。
- 前記部分ヒーターに局部的交流温度を与え、該ヒーターから距離d離れた位置に取り付けた接触センサー、または赤外計測される微小部分の温度変化から熱拡散率を求める請求項9の熱分析方法。
- 前記局部的交流温度による温度波の周波数を変化させて、試料の周波数特性を求める請求項11の熱分析方法。
- 測定すべき試料に温度変化を与えるための温度変化手段と、
試料の微小部分を拡大するための赤外像拡大手段と、
該微小部分の熱的特性を測定するための赤外線測定手段とを少なくとも含み;
前記試料の少なくとも一部に温度変化を与えつつ、該温度変化に基づく試料の微小部分の熱的特性を赤外線を利用して測定する熱分析装置。 - 前記温度変化手段が、測定すべき試料に全体を一定速度で昇温降温する手段と、該試料に交流的に温度変化を与えるための手段とを含む請求項13記載の熱分析装置。
- 前記温度変化に基づく試料の微小部分の熱的特性を赤外線センサーおよび微小な接触型温度センサーを利用して測定する請求項13または14記載の熱分析装置。
- 前記微小な接触型温度センサーが、熱電対、サーミスタ、または金属抵抗温度計から選ばれる請求項13〜15のいずれかに記載の熱分析装置。
- 前記微小な接触型温度センサーが、平板状サンプルの上下、平面上の少なくとも1点以上に取り付けられて、熱源からの温度の拡散を計測できるものである請求項15記載の熱分析装置。
- 更に、前記温度変化手段により試料全体に与えられるべき温度を制御する温度コントローラーを含む請求項13〜17のいずれかに記載の熱分析装置。
- 更に、測定した温度変化に基づき、潜熱、比熱、熱拡散率、熱伝導率、熱抵抗、熱コンダクタンス、熱伝達率から選ばれる1種以上のデータへの変換を処理するためのデータ処理手段を含む請求項13〜16のいずれかに記載の熱分析装置。
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