JPWO2003007932A1 - 体脂肪量調整剤 - Google Patents

Abstract

本発明は、食事制限を伴わず、副作用の懸念なく簡便に使用できる中鎖トリグリセリドを含有する体脂肪量調整剤であって、中鎖トリグリセリドの構成脂肪酸の９０質量％以上が炭素数８及び１０の飽和脂肪酸であり、炭素数８および１０の飽和脂肪酸の質量比率が６０／４０〜８５／１５であり、且つ、トリグリセリドの２位に結合した全脂肪酸中の炭素数８の飽和脂肪酸割合が６０〜８５質量％である体脂肪量調整剤、及び該体脂肪量調整剤を含有する体脂肪量調整用食品に関する。

Description

発明の背景
本発明は、体脂肪量の調整を目的とした組成物に係わり、詳しくは人間の体脂肪量を安全にかつ容易に適量の範囲に低減できる体脂肪量調整剤及びこれを含有する体脂肪量調整用食品に関する。
過体重や体脂肪が過剰に蓄積した肥満は、糖尿病、高脂血症などの代謝異常や高血圧、虚血性心疾患など循環器疾患を始めとして、多くの疾病を伴いやすいことはよく知られている。厚生省が行っている国民栄養調査の結果によれば、成人の７人に１人は肥満者であることから、過体重や肥満は欧米だけでなく我が国においても身近な問題である。
逆に、体脂肪は少なすぎても、健康に悪影響を及ぼすことが知られている。たとえば、高血圧症や糖尿病などは、肥満度が高くても発症する頻度は高まるが、肥満度が低い、すなわち体脂肪量が少なすぎても、発症率が高まることが明らかにされている（肥満症：診断・治療・指導の手引き、日本肥満学会肥満症診断のてびき編集委員会、１１〜１２頁、医歯薬出版、１９９３年）。
このような現状から、ＢＭＩ（ｂｏｄｙ ｍａｓｓ ｉｎｄｅｘ（体格指数））を指標にした場合、ＢＭＩ２２がもっとも理想的であり、適正体重ｋｇは、（身長ｍ）×（身長ｍ）×２２とされている（同書、１７〜１８頁）。
ところで、肥満や過体重は、遺伝的あるいは病的なものを除けば、一般に摂取カロリーの過剰によってもたらされる（同書、１〜３頁）。このため従来の痩身方法の大半は、摂取カロリーを限定する食事制限によるものであるが、これには精神的困難さを伴い実行しがたく、またこれが過度になれば栄養障害を引き起こしたり、必要以上に体脂肪量を減少させてしまいかねない。さらに、場合によっては、拒食症といった病的症状を呈する危険性もある。また、薬剤投与による肥満防止もあるが、効能とともに副作用を考慮しなければならず、肥満の予防のために個人レベルにおいて安易かつ簡便に使用できる方法とはいいがたい。
このような状況を打開するため、例えば低カロリー油脂（脂肪代替品）が開発されている。しかし、これらの中には、安全性、物性、調理適性、風味の点から見て十分満足できるものはない状況である。例えば、ショ糖脂肪酸エステルは消化管で吸収されず糞便中に排泄されることから、低カロリー油として使用できる旨が開示されている（米国特許第３６００１８６号明細書）。米国内においては、塩味スナック菓子を対象に使用が許可され、ショ糖脂肪酸エステルを使用したポテトチップがすでに市販されているが、ショ糖脂肪酸エステルを使用した商品には、「腹部痙攣や軟便を引き起こす可能性があること」、「脂溶性ビタミンの吸収を阻害すること」を表示することが義務付けられている。蛋白質および炭水化物のエネルギー密度は、脂肪の半分以下である。そこで、蛋白質や炭水化物に脂肪様の物性や風味が出るように加工することによって、低カロリーの脂肪代替品を提供し得ることが知られている（栄養学レビュー、第４巻、第４号、２３〜３３頁、１９９６年）。これらの脂肪代替品を利用することにより、低カロリー化したアイスクリーム、デザート等を作ることが可能である。しかしながら、これらの脂肪代替品は、風味的に劣ること、熱に対する耐性がなく加熱調理に適さないなどの欠点がある。また、これら自身が、適正な体脂肪量を調節するといった機能を有していない。
中鎖トリグリセリドは、酸化安定性が高く凝固点や粘土が低いこと、無色透明に近く溶解性が高いことから、食品用油溶性香料・色素の溶剤、食品用離形油・潤滑油あるいは医薬品原料などに利用されてきた。また、吸収性が良く、糖類に比べてエネルギー比率が高いことから、効率のよいエネルギー補給を目的として経腸栄養剤原料にも利用されている。
動物飼料中の脂肪を中鎖トリグリセリドに置き換えることにより、体脂肪の蓄積は減少することが報告されている（Ａｎｄｒｅａら、Ｌｉｆｅ Ｓｃｉｅｎｃｅｓ、第６２巻、１２０３〜１２１５頁、１９９８年）。しかしながら、中鎖トリグリセリドが、体脂肪量調整機能を有することは明らかにされていない。さらに、剤中の中鎖トリグリセリド含有量や、中鎖トリグリセリドを構成する脂肪酸残基の種類とその比率、脂肪酸残基の結合位置による体脂肪量調整機能の発現については、まったく不明であった。
又、特開平２０００−３０９７９４号公報には、トリグリセリドからなる油脂組成物であって、全脂肪酸中に占める中鎖脂肪酸の割合が５〜２３質量％でかつ全トリグリセリドに占める中鎖脂肪酸残基を分子内に２つ有するトリグリセリドの割合が１〜２０質量％である油脂組成物が開示されているが、中鎖トリグリセリドを主成分とする体脂肪量調整剤については開示されていない。
発明の開示
本発明は、食事制限を伴わず、副作用の懸念がなくかつ簡便に使用できる体脂肪量調整剤を提供することを目的とする。
本発明は又、上記体脂肪量調整剤を含有する体脂肪量調整用食品を提供することを目的とする。
本発明は、中鎖トリグリセリドに理想的な体脂肪量になるような体脂肪の調整機能が存在するとの知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、中鎖トリグリセリドを含有する体脂肪量調整剤であって、中鎖トリグリセリドの構成脂肪酸の９０質量％以上が炭素数８及び１０の飽和脂肪酸であり、炭素数８および１０の飽和脂肪酸の質量比率が６０／４０〜８５／１５であり、且つ、トリグリセリドの２位に結合した全脂肪酸中の炭素数８の飽和脂肪酸割合が６０〜８５質量％であることを特徴とする体脂肪量調整剤を提供する。
本発明は、又、中鎖トリグリセリドを４０質量％以上含有することを特徴とする体脂肪量調整剤を提供する。
本発明は、又、ＢＭＩ値が２３以上の人の体脂肪蓄積量調整するための上記体脂肪量調整剤の使用を提供する。
本発明は、又、上記体脂肪量調整剤を含有することを特徴とする体脂肪量調整用食品を提供する。
発明を実施するための最良の形態
本発明における中鎖トリグリセリドは、中鎖脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリド、すなわち、トリアシルグリセロールのことである。本発明で中鎖脂肪酸としては、炭素数が６〜１２の脂肪酸、特に飽和脂肪酸であるのが好ましく、さらに偶数の炭素数の飽和脂肪酸であるのが好ましい。例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸が挙げられ、炭素数が８〜１０の飽和脂肪酸であるカプリル酸およびカプリン酸が好ましい。また、中鎖トリグリセリドの構成脂肪酸の９０質量％以上（より好ましくは９５〜１００％）が炭素数８及び１０の飽和脂肪酸であって、炭素数８および１０の飽和脂肪酸の質量比率が６０／４０〜８５／１５（より好ましくは７：３〜８：２）であり、且つ、トリグリセリドの２位に結合した脂肪酸組成において、炭素数８の飽和脂肪酸の割合が６０〜８５質量％（より好ましくは６５〜８０％）であることがより好ましい。
このような中鎖トリグリセリドの製造方法は特に限定されないが、例えばパーム核油やヤシ油由来の中鎖脂肪酸とグリセリンを原料として、エステル結合反応を行うことにより得ることができる。エステル結合反応の条件も特に限定されないが、例えば無触媒かつ無溶剤にて、加圧下で反応して得ることができる。もちろん、触媒や溶剤を用いた反応によっても、このような中鎖トリグリセリドを得ることが可能である。混合比率を工夫した中鎖トリグリセリドと中鎖脂肪酸を混合し、位置特異性を有するリパーゼ、例えば、名糖産業製「リパーゼＰＬ」を用いることにより、構成脂肪酸の９０質量％以上が炭素数８及び１０の飽和脂肪酸であって、炭素数８および１０の飽和脂肪酸の質量比率が６０／４０〜８５／１５であり、且つ、トリグリセリドの２位に結合した脂肪酸組成において、炭素数８の飽和脂肪酸の割合が６０〜８５質量％である中鎖トリグリセリドを得ることができる。また、遺伝子組み換え植物の油糧種子から中鎖トリグリセリド自体を得る、または、遺伝子組み換え植物の油糧種子から得られた中鎖脂肪酸を原料にして、中鎖トリグリセリドを製造することも可能である。
本発明における体脂肪量調整とは、体脂肪が過剰に蓄積した場合には体脂肪量を減少させ、体脂肪量が適正な場合には体脂肪量に影響を及ぼさず、体脂肪量が不足している場合には体脂肪量を増加させるといった、体脂肪量の調整機能のことを示す。
本発明の体脂肪量調整剤は、上記中鎖トリグリセリドを５質量％以上含有するのが好ましく、特に５〜１００質量％が好ましく、さらに４０〜９９．９５質量％含有するのが好ましい。
本発明は、又、一般的な中鎖トリグリセリドを４０質量％以上含有することを特徴とする体脂肪量調整剤を提供する。この体脂肪量調整剤では、４０〜９９．９５質量％含有するのが好ましく、特に４８〜９９．９５質量％含有するのが好ましい。
本発明品である体脂肪量調整剤は、中鎖トリグリセリド以外の成分を含有することができる。このような成分としては、特に限定されないが、通常の食用油、例えば大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、ゴマサラダ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米糠油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、牛脂、ラード、鶏脂、乳脂、魚油、アザラシ油、藻類油、品種改良によって低飽和化されたこれらの油脂およびこれらの水素添加油脂、分別油脂等があげられる。また、ビタミンＥや植物ステロールを始めとして、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、コエンザイムＱ、リン脂質、オリザノール、ジグリセリド等も添加することができる。
これらのうち、動植物油、ビタミンＥ及び植物ステロールから選ばれる１種以上を含有することが好ましい。動植物油を含有する場合には、全体の６０質量％以下であるのが好ましく、より好ましくは、５〜５５質量％、特に好ましくは、５〜５０質量％である。又、ビタミンＥを含有する場合には、全体の０．０１〜５質量％であるのが好ましく、より好ましくは、０．０１〜２質量％である。又、植物ステロールを含有する場合には、全体の０．５〜６質量％であるのが好ましく、より好ましくは、１〜４質量％である。
本発明の体脂肪量調整剤の形態は、特に限定されないが、カプセルや錠剤などの形態でよく、又、食品、加工食品、飲料、調味料、菓子などに添加してもよく、例えば、ゼラチンカプセル、食用油、ドレッシング、マーガリン、調製マーガリン、ファットスプレッド、クリーム、アイスクリーム、マヨネーズ、パン、ケーキ、ドーナツ、マフィン、スコーン、フライ食品、スナック菓子、流動食などに添加することができる。
本発明は、有効性が高く、安全で、なおかつ実施が容易な体脂肪量調整剤および食品を提供することができる。
本発明の体脂肪量調整剤を用いることにより、例えば、ヒトの体脂肪量をＢＭＩ（体格指数）で見たときに、２１．５〜２２．５程度、特に約２２に調整することができる。ＢＭＩは、医学的に肥満判定に用いられる数値であり、「肥満症：診断・治療・指導の手引き」（日本肥満学会肥満症診断のてびき編集委員会編、医歯薬出版、１９９３年）の１４〜２４頁に詳細が記載されている。体脂肪量の測定には、体密度法（水中法、空気置換法）、体内Ｋ^４０測定法、インピーダンス法、骨密度測定法など様々な方法があるが、測定に時間や設備を要することから、体重と身長の測定値を用いるＢＭＩが一般的に行われているものである。ＢＭＩは、体重ｋｇ／（身長ｍ）／（身長ｍ）から求められる数値であり、数値が低いほど、「やせ」すなわち体脂肪量が少ないことを示し、数値が多いほど、ＢＭＩが２２の場合がもっとも理想的である。
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例１
日清製油製の中鎖トリグリセリド（商品名：ＯＤＯ）５００ｇに、日清製油製の菜種油５００ｇを混合し、体脂肪量調整剤１を得た。また、日清製油製の中鎖トリグリセリド（商品名：ＯＤＯ）９００ｇに、雪印製のラードを１００ｇ混合し、体脂肪量調整剤２を得た。この中鎖トリグリセリドの構成脂肪酸の９９．９質量％が炭素数８及び１０の飽和脂肪酸であり、炭素数８および１０の飽和脂肪酸の質量比率は、７．４：２．６であった。また、トリグリセリドの２位に結合した脂肪酸組成において、炭素数８の飽和脂肪酸の割合は７３質量％であった。なお、トリグリセリドの２位に結合した脂肪酸の割合は、Ｂｒｏｃｋｅｒｈｏｆｆ法（Ｂｒｏｃｋｅｒｈｏｆｆ，Ｈ．，Ｊｏｕｒｎａｌ ｏｆ Ｌｉｐｉｄ Ｒｅｓｅａｒｃｈ，Ｖｏｌ．６，ｐ１０，１９６５）により求めた。
実施例２
日清製油製の中鎖トリグリセリド（商品名：ＯＤＯ）９９９ｇに、日清製油製のトコフェロール（商品名：トコフェロール８５）を１ｇ添加し、十分に攪拌・溶解し、体脂肪量調整剤３を得た。中鎖トリグリセリドの構成脂肪酸の９９．９質量％が炭素数８及び１０の飽和脂肪酸であり、炭素数８および１０の飽和脂肪酸の質量比率は、７．４：２．６であった。また、トリグリセリドの２位に結合した脂肪酸組成において、炭素数８の飽和脂肪酸の割合は、７３質量％であった。
実施例３
９８０ｇの体脂肪量調整剤１に、米油由来の植物ステロールを２０ｇ添加し、十分に攪拌・混合し、体脂肪量調整剤４を得た。
実施例４
実施例２の体脂肪量調整剤３を用いてロールパン（体脂肪量調製食品１）を以下の要領により調製した。なお、この体脂肪量調製食品１個あたり体脂肪量調整剤３を５ｇ含有している。
配合割合（質量部）
強力粉９０部、薄力粉１０部、上砂糖１２部、食塩１．７部、全卵１５部、脱脂粉乳４部、イースト４部、乳化剤０．５部、体脂肪量調製剤２４部及び水４１部
製造方法
調製法：ストレート法、捏ね上げ温度：２８℃、発酵時間：６０分、分割：４２ｇ、ベンチタイム：２０分、ホイロ：３７℃で５０分、焼成：２０５℃で１０分
実施例５
実施例４の体脂肪量調製食品１を用いて、体脂肪量調整効果試験を行った。７８名の被験者を２群に分け、体脂肪量調整食品１を毎朝２個１２週間摂取させた。対照として、同量の調合サラダ油を含有するロールパンを用いた。試験期間中の総エネルギー摂取量は２２００キロカロリー、総脂質摂取量は６０ｇを目標に食事指導を行った。試験前、試験後８週および１２週間後に体重、体脂肪、ウエスト、内臓脂肪測定を行った。体脂肪は、日本光電製ＭＡＢ−１０００を使用し、内臓脂肪量は胴体を輪切りにしたＣＴスキャンの画像より脂肪面積を求めた。試験結果を表１に示す。なお、結果はＢＭＩ２３以上と２３未満に分けて、統計処理を行った。

表１に示したように、体重、体脂肪、ウエストおよび腹部脂肪面積は、ＢＭＩ２３以上の被験者に対して、本発明の体脂肪量調整食品摂取より有意に減少することがわかる。このことから、本発明の体脂肪量調整剤を含有する体脂肪量調整食品１は、ＢＭＩ２３以上の人に対して体脂肪蓄積量を調整できることが明らかとなった。

Claims (9)

1. 中鎖トリグリセリドを含有する体脂肪量調整剤であって、中鎖トリグリセリドの構成脂肪酸の９０質量％以上が炭素数８及び１０の飽和脂肪酸であり、炭素数８および１０の飽和脂肪酸の質量比率が６０／４０〜８５／１５であり、且つ、トリグリセリドの２位に結合した全脂肪酸中の炭素数８の飽和脂肪酸割合が６０〜８５質量％であることを特徴とする体脂肪量調整剤。
2. 中鎖トリグリセリドの含量が５質量％以上である請求項１記載の体脂肪量調整剤。
3. 中鎖トリグリセリドを４０質量％以上含有することを特徴とする体脂肪量調整剤。
4. 動植物油を含有する請求項１〜３のいずれか１項記載の体脂肪量調整剤。
5. さらに、ビタミンＥを含有する請求項１〜４のいずれか１項記載の体脂肪量調整剤。
6. さらに、植物ステロールを含有する請求項１〜５のいずれか１項記載の体脂肪量調整剤。
7. ＢＭＩ値が２３以上の人の体脂肪蓄積量を調整するための請求項１〜６のいずれか１項記載の体脂肪量調整剤の使用。
8. 請求項１〜６のいずれか１項記載の体脂肪量調整剤を含有することを特徴とする体脂肪量調整用食品。
9. 食品が、食用油、マヨネーズ、マーガリン、調製マーガリン、ファットスプレッド、ドレッシング、パン、アイスクリーム、クリーム、菓子、ドーナツ、マフィン、スコーンまたはフライ食品である請求項８記載の体脂肪量調整用食品。